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JP2005288552A - 研磨工具およびそれを用いた研磨方法 - Google Patents

研磨工具およびそれを用いた研磨方法 Download PDF

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JP2005288552A
JP2005288552A JP2004102478A JP2004102478A JP2005288552A JP 2005288552 A JP2005288552 A JP 2005288552A JP 2004102478 A JP2004102478 A JP 2004102478A JP 2004102478 A JP2004102478 A JP 2004102478A JP 2005288552 A JP2005288552 A JP 2005288552A
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polishing
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polished
tool
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Akira Nagata
晃 永田
Junji Ishizaki
順二 石崎
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Noritake Co Ltd
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Noritake Co Ltd
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Abstract

【課題】 研磨能率が高く且つ良好な表面粗さが得られ、しかも端面ダレの小さい研磨加工を可能とするコランダム用研磨工具を提供する。
【解決手段】 研磨工具10が、平坦な取着面を備えた金属製台板(工具本体)14と、砥粒が所定の結合剤で結合されることにより構成され、ワーク28の一面に摺接させられる複数個の砥石片16と、一面においてそれら複数個の砥石片16が配設され、他面において金属製台板14の取着面に固着された弾性変形可能な弾性シート17とを備え、その弾性シート17が、20.4kPaすなわち200g/cm2 の面圧が加えられたときの弾性変形量が5乃至25μmの範囲内の弾性、換言すれば0.25乃至1.235μm/kPaの圧縮弾性変形率を備えたものであるので、コランダム結晶体の鏡面研磨に際して、高い研磨能率が得られるとともに端面ダレが十分に小さくされる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、被研磨部材の一面を高精密に鏡面研磨するための研磨工具、およびその研磨工具を用いて被研磨部材の一面を鏡面に仕上げ研磨する方法に関する。
半導体素材や光学部品等の材料、たとえばハードディスクの基板に用いられるガラス、半導体基板として用いられるサファイア、ルビー等として知られるコランダム結晶体等の被研磨部材は、その一面( 例えば基板においてはその両面) が所謂鏡面に高精密で研磨加工されることが要求される。このような被研磨部材は、機械的特性、化学的安定性、透光性等に優れたものが多いことから、一般的に硬く且つ高い脆性を備えており、従来、そのような被研磨部材を鏡面加工するに際しては、シリカ系砥粒を含むスラリーを用いた遊離砥粒加工が行われていた( 例えば特許文献1を参照) 。
また、上記遊離砥粒加工に代えて、無機砥粒の焼結体のみにより構成した砥石を用いることも提案されている( 例えば特許文献2を参照) 。上記無機砥粒としては、ダイヤモンド砥粒、炭化硼素砥粒、立方晶窒化硼素砥粒等種々のものが用いられ、例えば鋳込み成形および焼成処理等を経て砥石が製造される。
特開平8−95233号公報 特開平10−337669号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載されている遊離砥粒研磨は、コロイダルシリカ( シリコン乳剤) を研磨材として用いた湿式加工であり、良い表面粗さが得られるものの研磨能率( すなわち単位時間当りの除去量) が低く、被研磨部材(ワーク)の被加工面すなわち仕上げ面の端部が中央部よりも低くなる端面ダレが大きいという不都合があった。また、前記特許文献2に記載されている仕上げ研磨砥石によれば、例えばRaで3(nm) 程度の更に良好な表面粗さが得られるが、研磨能率が著しく低い不都合があった。特に、被研磨部材が単結晶サファイアから成る基板のような鋼玉と称されるようにコランダム結晶体の一種である場合には、そのような不都合が顕著であった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、鏡面仕上げ研磨に際して研磨能率が高く且つ良好な表面粗さが得られ、しかも端面ダレの小さい研磨加工を可能とする研磨工具および研磨方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明者等は、被研磨部材として単結晶サファイア等のコランダム結晶体を選択し、その鏡面仕上げ研磨に用い得る種々の工具構造を用意して湿式固定砥粒仕上げ加工試験を行った結果、仕上げ研磨のための複数個の砥石片を個々独立に弾性的に支持すると、複数個の砥石片を支持する弾性シートを軟らかくする程格段に高い研磨効率が得られる反面で端面ダレが大きくなり、その硬い弾性シートを硬くするほど端面ダレが小さくなるので、鏡面とするための研磨能率とを端面ダレが両立する弾性シートの硬さの範囲が存在することを見いだした。すなわち、20.4kPaすなわち208g/cm2 程度の面圧が加えられたときの弾性変形量が5乃至25μmの範囲内の弾性シートであれば、上記研磨能率とを端面ダレが両立することを見いだした。本発明は斯かる知見に基づいて為されたものである。
すなわち、前記目的を達成するための請求項1に係る発明は、被研磨部材の一面を所定の表面粗さに研磨するための研磨工具であって、(a) 平坦な取着面を備えた工具本体と、(b) 砥粒が所定の結合剤で結合されることにより構成され、前記被研磨部材一面に摺接させられる複数個の砥石片と、(c) 一面において前記複数個の砥石片が配設され、他面において前記工具本体の取着面に固着された弾性変形可能な弾性シートとを、含み、(d) その弾性シートは、20.4kPaの面圧が加えられたときの弾性変形量が5乃至25μmの範囲内の弾性を備えたものであることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明において、(e) その工具本体は、一回転軸心を中心とする円形の取着面を備えて該一回転軸心まわりに回転させられるものであり、(f) 前記弾性シートは、該円形の取着面に固着され、該円形の取着面の径と同じ径の円形の外周円を有する合成ゴム製のシートであり、(g) 前記複数個の砥石片は、矩形状であって、該弾性シートの一面において5乃至20mmの一定のピッチで縦列方向および横列方向に配置されたものであることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2に係る発明において、(h) 前記複数個の砥石片は、アルコレートを出発原料としてゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナ製砥粒が樹脂結合剤によって結合されることにより構成されたレジノイド砥石であることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至3のいずれかに係る発明において、(i) 前記複数個の砥石片は、5μm以下の平均粒径を備えた砥粒が熱硬化性樹脂結合剤によって結合されたものであることを特徴とする。
また、請求項5に係る発明は、上記請求項1乃至4のいずれかに係る発明において、(j) 前記被研磨部材は、多結晶或いは単結晶サファイヤ基板等のコランダム結晶体であることを特徴とする。
また、請求項6に係る発明は、上記請求項1乃至6のいずれかに係る発明の研磨工具を用いて被研磨部材を研磨することを特徴とする。
請求項1に係る発明では、研磨工具が、平坦な取着面を備えた工具本体と、砥粒が所定の結合剤で結合されることにより構成され、前記被研磨部材の一面に摺接させられる複数個の砥石片と、一面において前記複数個の砥石片が配設され、他面において前記工具本体の取着面に固着された弾性変形可能な弾性シートとを備え、その弾性シートが、20.4kPaすなわち208g/cm2 の面圧が加えられたときの弾性変形量が5乃至25μmの範囲内の弾性、換言すれば0.25乃至1.235μm/kPaの圧縮弾性変形率を備えたものであるので、被研磨部材の鏡面研磨に際して、高い研磨能率が得られるとともに端面ダレが十分に小さくされる。
また、請求項2に係る発明では、前記工具本体は、一回転軸心を中心とする円形の取着面を備えて該一回転軸心まわりに回転させられるものであり、前記弾性シートは、該円形の取着面に固着され、その円形の取着面の径と同じ径の円形の外周円を有する合成ゴム製のシートであり、前記複数個の砥石片は、矩形状であって、その弾性シートの一面において5乃至20mmの一定のピッチで縦列方向および横列方向に配置されたものであるので、被研磨部材の鏡面研磨に際して、高い研磨能率が得られるとともに端面ダレが十分に小さくされる。上記のような複数の砥石片は、弾性シートの一面に個々に固着される結果、複数の砥石片の間には多数の溝が備えられるので、その複数の砥石片の端部の角が研磨能率向上に好適に寄与すると共に、溝が加工液や切り粉等の排出路として好適に機能する。
また、請求項3に係る発明では、前記複数個の砥石片は、アルコレートを出発原料としてゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナ製砥粒が樹脂結合剤によって結合されることにより構成されたレジノイド砥石である。このように、コランダム用研磨工具の砥石片に用いられている砥粒が、アルコレートからゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナすなわち六方晶系酸化アルミニウムから成ることから、被研磨部材特に多結晶或いは単結晶サファイア等のコランダム結晶体を研磨するに際して、高い研磨能率および良好な表面粗さを共に得ることができる。上記アルコレートからゾル−ゲル法を用いて製造されα型アルミナの表面活性が高いためであると推測される。
また、請求項4に係る発明では、前記複数個の砥石片は、5μm以下の平均粒径を備えた砥粒が熱硬化性樹脂結合剤によって結合されたものである。このようにすれば、平均粒径の十分に小さい砥粒が用いられることから、砥粒による表面傷が生じ難いので一層良い表面粗さを得ることができる。しかも、平均粒径が小さくなるほどその比表面積が増大してケミカル作用が顕著となるので、それにより研磨能率が向上する利点もある。
また、請求項5に係る発明では、前記被研磨部材は多結晶或いは単結晶サファイヤ等のコランダム結晶体であるので、コランダム結晶体の鏡面研磨に際して、高い研磨能率が得られるとともに端面ダレが十分に小さくされる。
また、請求項6に係る発明方法では、上記請求項1乃至6のいずれかに係る発明の用研磨工具を用いてコランダム結晶体等の被研磨部材を研磨するので、その被研磨部材の鏡面研磨に際して、高い研磨能率が得られるとともに端面ダレが十分に小さくされる。
ここで、好適には、前記研磨工具は、単結晶サファイヤだけでなく、単結晶ルビー、多結晶サファイヤ、多結晶ルビー等の鋼玉として知られるコランダム(1酸化アルミニウム:Al2 3 )結晶体を鏡面研磨するために好適に用いられるが、ハードディスクのガラス基板やガラス製光学部品等の鏡面研磨にも好適に用いられる。
また、前記研磨工具は、被研磨部材材に対して回転駆動されるものだけでなく、往復駆動されるものであってもよい。
また、前記弾性シートとしては、ネオプレン、ウレタンゴム等の合成ゴムが好適に用いられる。ネオプレンの場合、ゴム硬度が85乃至95且つ厚みが2乃至5mm程度が好適に用いられる。
また、前記α型アルミナ製砥粒の出発原料であるアルコレートは、アルコールのヒドロキシ基の水素を金属元素で置換した化合物の総称であり、アルコキシド或いは金属アルコキシドとも称される。本発明に用い得るアルコレートは特に限定されず、種々のヒドロキシ基を備えたアルコレートを砥粒の出発原料とすることができる。
また、前記砥石片に含まれる砥粒は平均粒径が5(μm)以下であることがよいが、好適には、砥粒の平均粒径は、0.01( μm)以上であるとよい。このようにすれば、十分に大きい砥粒が用いられるため、一層高い研磨能率が得られる。すなわち、0.01( μm)未満では良好な研磨面は得られるものの研磨能率が低下するので、砥粒の平均粒径は、0.01〜5(μm)の範囲内が好ましい。更に好適には、砥粒の平均粒径は0.1 〜3(μm)の範囲内である。
また、好適には、前記砥石片の結合剤は合成樹脂結合剤がよいが、その結合剤は、合成樹脂結合剤に限られず、ガラス質結合剤や金属質結合剤などであってもよいが、このようにすれば、弾性率の比較的低いすなわち容易に弾性変形する合成樹脂結合剤で砥粒が結合させられていることから、単結晶サファイアの被研磨面から押圧力を受けた際にその被研磨面から容易に後退させられる。そのため、被研磨面に傷などを生じさせることが好適に抑制され、一層高品質の被研磨面が得られる。
また、前記砥石片の結合剤は熱硬化性樹脂であることが望ましいが、液状エポキシ樹脂を用いると更によい。被研磨面の高い平坦度を得るためには、研磨砥石の研磨面形状が加工中に維持されることが望ましいが、エポキシ樹脂は適度な弾性率を備えているので、表面粗さおよび平坦度を両立させるために好適である。特に、液状エポキシ樹脂が用いられる場合には、これに混合された砥粒が高い一様性を以て分散されるので、砥粒が一様に分散した組織の均一性の高い研磨砥石が得られ、一層優れた表面粗さや平坦度などを得ることができる。
また、前記研磨工具は、軸心部に厚み方向に貫通する取付孔を備えた円板状の台板の上面に所定厚さ寸法の砥石片が弾性シートを介して固着された形態が考えられ、種々の研磨装置に用いられる研磨砥石および研磨方法に適用され得るが、片面ポリシング・マシンに使用されるこのような研磨砥石およびこれを用いた研磨方法に特に好適に適用される。上記台板は、例えばアルミニウム合金から成るものであるが、スチールや樹脂等で構成することもできる。
また、前記研磨工具の研磨砥石片は、前記砥粒を10〜60( %) の範囲内の砥粒率で含むものが好適である。このようにすれば、加工作用面に寄与する砥粒数が多くなり且つ結合剤量とのバランスもとれるため、高い研磨能率が得られる。なお、砥粒率が60( %) を越えると、結合剤の割合が著しく低くなるので、砥留保持力が不十分となって砥石摩耗が著しくなり、延いては砥石寿命が短くなる不都合がある。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例のコランダム用研磨工具( 以下、単に研磨工具という) 10の全体を示す斜視図である。図において、研磨工具10は、平坦な取着面を備えた工具本体である取付孔12を備えた円板状の金属製台板14と、砥粒が所定の結合剤で結合されることにより構成され、ウエハ状のワークすなわち被研磨部材である単結晶サファイヤ板28の仕上げ面に摺接させられる複数個の砥石片16と、一面においてその複数個の砥石片16が配設され、他面において上記金属製台板14の取着面にたとえば両面接着テープ等の接着剤を介して固着された弾性変形可能な円形の弾性シート17とを備えている。この弾性シート17は台板14と同様な外径寸法および内径寸法を備えている。上記研磨工具10は、砥石片16が上側に位置する向きで、その取付孔12において片面( 一面) ラップ盤の回転軸に取り付けられてその垂直軸心まわりに回転駆動される。
上記台板14は、例えばアルミニウム合金等の金属材料で構成されるものであって,例えば外径327(mm) ×内径110(mm) ×厚み20(mm)程度の寸法に構成されている。台板14の表面すなわち上面には平坦に加工された円形の取着面が備えられ、前記複数個の砥石片16はその平坦な取着面に弾性シート17を介してエポキシ樹脂等の接着剤を用いて固着されている。
上記弾性シート17は、ゴム硬度(A)が60乃至100程度の緻密な無気孔の合成ゴムであって、この弾性シートは、砥石片16に対して20.4kPaの垂直方向の面圧が加えられたときの弾性変形量が5乃至25μmの範囲内の弾性を備えたもの、換言すれば0.25乃至1.235μm/kPaの圧縮弾性変形率を備えたものから構成される。この弾性シート17としては、たとえばよく知られたEPT65、ネオプレン90等が好適に用いられる。
上記砥石片16は、例えば、砥粒が熱硬化性樹脂等の樹脂結合剤によって結合された矩形板状すなわちタイル状の所謂レジノイド砥石であり、上記弾性シート17の一面上において10乃至20mmの範囲内で定められた一定のピッチで縦列方向および横列方向に配置され、弾性シート17に対して個々独立に接着されている。この結果、砥石片16の相互間には、砥石片16の厚みと同様の深さが1乃至5mm程度、中心間隔が10乃至20mm程度、且つ溝幅寸法が1乃至3mm程度の溝20が縦横方向にすなわち格子状に形成されている。それら砥石片16の上面が研磨工具10の平坦な研磨加工面18を構成している。
上記砥石片16は、砥粒率Vgが40( 容積%) 程度、結合剤率Vbが15( 容積%) 程度、気孔率Vpが45( 容積%) 程度の組織を備えており、その組織内に砥粒が略一様に分散させられている。この砥石片16に含まれる砥粒は、例えば平均粒径が0.1 〜5(μm)の範囲内、例えば0.6(μm)程度、比表面積が1 〜200(m2/g) の範囲内、例えば5.9(m2/g) 程度のα型アルミナから成るものである。この砥粒は、例えばアルミニウム・アルコキシドを出発原料としてゾル−ゲル法で製造されたものである。また、上記結合剤は、例えばエポキシ樹脂である。
このような砥石片16は、例えば、液状エポキシ樹脂中に上記砥粒を混合して攪拌することによって略一様に分散させ、次いで成形型内に充填された状態で硬化させることによって、前述の矩形板状に製造される。或いは長手板状に成形且つ硬化されてからタイル状に分割されて製造される。次いで、必要に応じて寸法および形状を整えるための仕上げ加工が施された後、弾性シート17を介してエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂接着剤を用いて台板14に接着することで、前記研磨工具10が製造される。
図2は、上記研磨工具10の使用状態の一例であって片面ラップ盤22に取り付けられている状態を模式的に表した斜視図である。図2において、研磨工具10は、砥石片16が上側に位置する向きで、前記取付孔12においてその垂直軸心回りの回転可能に図示しない回転軸に取り付けられており、位置固定の垂直軸心まわりに回転させられるキャリア24の下面に固着されることにより保持されて研磨工具10の周方向の移動が抑制され且つ一定の荷重を以てその上面すなわち研磨加工面18に押し付けられた図示しないワークが、その上面の例えば三箇所に配置されている。このワークは、たとえば円形の単結晶サファイヤ製基板であり、上記キャリア24の下面において1乃至複数個固着されている。上記研磨工具10の上方にはノズル26が備えられており、その研磨加工面18に向かって例えば水などの研磨液が供給されるようになっている。なお、ラップ盤22にはキャリア24を一定の位置に保つためのアーム等が備えられているが、図2においてはこれが省略されている。
[実験例1]
以下、単結晶サファイヤ製基板を能率良く且つ端面ダレを少なく鏡面研磨するために上記弾性シート17が備える物性を確認するために行われた種々の実験例を順次説明する。この実験に際しては、表1に示すように、前述の研磨工具10と同じ構造ではあるが弾性シート17の材料を変更した研磨工具A、B、C、D、Eと弾性シート17を備えない研磨工具Fとが用意された。次いで、上記研磨工具A、C、D、E、Fについて、試験条件1に示す条件下で研磨荷重に対する弾性変形量が求められた。図3にその実験結果が示されている。そして、それら研磨工具A、C、D、E、Fを用いて試験条件2に示す共通の研磨条件下でφ2(inch) の径を備えた単結晶サファイア基板が研磨されたときの研磨能力と端面ダレとが測定され、測定結果が図4および図5に示されている。この端面ダレは、単結晶サファイヤ製基板の研磨前および後の変化を面で評価するダブオフ( Dub off)変化率が用いられる。たとえば、研磨前において単結晶サファイヤ製基板の端部が中央部よりも3.9μm低いものであったとき、研磨後においてその値が3.4μmであれば、Dub off 変化率は(3.4/3.9)×100=87%となる。Dub off 変化率が100%よりも小さい値であれば研磨前よりも端面ダレが改善されていることを示している。
[表1]
研磨工具 弾性シートの材質
A ネオフ゜レンコ゛ム
B EPT コ゛ム
C マイクロセルウレタン
D 発泡ウレタン
E マイクロセルウレタン
F 無し
[試験条件1]
・測定機:インストロン強度試験機(圧縮変形)
・測定荷重:10〜50N(圧力100 〜500g/cm2
・加圧面積:50mmφ
・砥石: AKP3000 中硬度品
・研磨工具寸法75mmφ
・検討項目:押付荷重に対する弾性変形量(μm)
[試験条件2]
・試験ワーク:2インチ φの単結晶サファイヤ基板
・研磨試験機:エンギス社製片面ポリシングマシンEJ−380
・砥石工具寸法:外径327mmφ×穴110mmφ
・研磨枚数:キャリアの下面にワーク3枚固定
・研磨荷重:208g/cm2
・工具プレート回転数:90rpm
・ルブリカント:水(流量は10ml/min.)
・ワーク加工時間:60分
・検討項目:1)研磨削除量(研磨能力)mg/60min.
2)端面ダレ(Dub off 変化率)
・端面ダレ測定器:トロペル平面度測定器
本実験において研磨工具A、C、D、E、Fが共通の研磨荷重208g/cm2 にて単結晶サファイヤ基板の表面を鏡面研磨したとき、図4に示すように、研磨工具Aでは弾性シートを備えない研磨工具Fに比較して2倍程度の研磨能力が得られた。その研磨工具Aよりも弾性シートの変形量が順次大きい研磨工具C、D、Eによれば、その研磨工具Aの場合に比較してさらに大きな研磨能力が順次得られる。すなわち、図4は各研磨工具A、C、D、E、Fの研磨能力に対応する60分当たりの累積削除量と弾性変形量との関係を示しており、同じ研磨荷重においては、弾性シートの存在によって研磨能力が高くなり且つその弾性シートの弾性変形量が大きくなるほど、研磨能力が高くなることを示している。なお、本実験では、研磨荷重が208g/cm2 であったが、必ずしも研磨荷重がその値でなくてもよく、たとえば100乃至420g/cm2 すなわち9.8乃至41.2kPaの範囲、好適には160乃至260g/cm2 すなわち15.7乃至25.4kPaの範囲、さらに好適には190乃至230g/cm2 すなわち18.6乃至22.5kPaの範囲内の面圧であっても好適に研磨される。
本実験により測定されたデータに基づいて、図5は上記各研磨工具A、C、D、E、Fの端面ダレ改善能力と研磨能力とをそれぞれ示し、図6は各研磨工具A、C、D、E、Fの端面ダレ改善能力と弾性シートの弾性変形量との関係を示している。図5、図6、および図7中の1点鎖線は、従来の標準的な遊離砥粒式鏡面研磨によるDub off 変化率値を示している。これによれば、研磨工具D、Eのように、弾性変形量が25μmを超える軟質の弾性シート程、端面ダレが大きくなって従来の標準的な遊離砥粒式鏡面研磨によるDub off 変化率値よりも大幅に大きく、実用上不適となるので、その端面ダレが許容される範囲は、208g/cm2 研磨荷重印加時の弾性シートの弾性変形量で表現すると、5μm乃至25μmの範囲内が好適であることが図6により示される。25μmを超えると、従来の標準的な遊離砥粒式鏡面研磨による端面ダレよりも大きくなって固定砥粒型とした意味が失われ、5μmを下まわると、十分な研磨能力が得られ難くなるからである。上記の研磨工具AおよびBがこの範囲内に該当する。
[実験例2]
次に、ゴム硬度(A)が90である弾性シートを備えた研磨工具すなわち前述の研磨工具Aにおいて矩形の砥石片16の縦横方向の配列ピッチを3種類(10mm、15mm、20mm)に設定した研磨工具A1、A2、A3と、前述の研磨工具Dにおいて矩形の砥石片の縦横方向の配列ピッチを2種類(10mm、15mm)に設定した研磨工具D1、D2とについて、前述の実験例1と同様の試験条件下において研磨し且つその実験例1と同様の測定条件下で測定した研磨能力(60分当たりの累積削除量)および端面ダレ(Dub off 変化率)をそれぞれ測定した。図7は、上記研磨工具A1、A2、A3、D1、D2についての研磨能力と端面ダレとを示している。図7から明らかなように、弾性シートが柔らかな場合は研磨工具D1、D2で示されるように砥石片16の配列ピッチが短くなるほど端面ダレが小さくなるが、208g/cm2 研磨荷重印加時の弾性シートの弾性変形量が25μm以下の比較的硬い弾性シートでは、研磨工具A1、A2、A3で示されるように、端面ダレが1点鎖線に示される従来の標準的な遊離砥粒式鏡面研磨による値より小さくなるとともに、配列ピッチによる差はそれ程なく、配列ピッチが小さくなるほど研磨能力が高くなる傾向がある。なお、上記配列ピッチは、研磨対象となる単結晶サファイア基板の大きさに応じて適宜変更してもよく、5乃至20mmの範囲において好適が結果が得られることが確認されている。
[実験例3]
次いで、砥石片16に含まれる砥粒の材質について以下に示すように評価した。図8および図9は、前記のようなラップ盤22を用いてφ2(inch) 程度の大きさの単結晶サファイア基板を前述の実施例の研磨工具10( 以下、実施例1とする) で仕上げ研磨した場合の研磨能率を評価した結果を、従来の遊離砥粒式鏡面研磨加工( 比較例1) および他の砥粒を用いた研磨工具10a,10bによる鏡面研磨加工( 比較例2,3) と比較して示す図である。なお、実施例2は、平均粒径が0.6(μm)程度で比表面積が4.8(m2/g) 程度のアルミナ砥粒を用い、砥粒率Vgが30.5( 容積%) 程度、結合剤率Vbが16.7( 容積%) 程度、気孔率Vpが52.8( 容積%) 程度とされた他は研磨工具10と略同様に構成されたものである。また、実施例3は、平均粒径が0.4(μm)程度で比表面積が4.9(m2/g) 程度のアルミナ砥粒を用い、砥粒率Vgが28,9( 容積%) 程度、結合剤率Vbが15.9( 容積%) 程度、気孔率Vpが55.2( 容積%) 程度とされた他は研磨工具10の砥石片16と略同様に構成されたものである。これら実施例2,3に用いた砥粒は、何れもアルミニウム・アルコキシドを出発原料としてゾル−ゲル法で製造されたα型アルミナである。
また、比較例1は、研磨工具10に代わる研磨工具としてパッド( 例えばロデール・ニッタ( 株) 製IC1000) を用い、シリカ系砥粒を含むスラリ( 例えば( 株) フジミインコーポレーテッド製コンポールEX−3) を供給して研磨したものである。上記パッドは、発泡ウレタン系多孔質体である。また、比較例2の研磨工具10aは、砥石片がアルミナ砥粒に代えて例えば平均粒径が1.0(μm)程度のシリカ系砥粒( 例えば( 株) 龍森製) を軟結合度で結合した他は研磨工具10と同様に構成されたものである。また、比較例3の研磨工具10bは、砥石片が砥粒として例えば平均粒径が2.0(μm)程度の合成マイカ( 雲母)(例えばコープケミカル製) を用いた他は研磨工具10と同様に構成されたものである。
また、この評価試験においては、片面ラップ盤22として、エンギス社製片面ポリシングマシンEJ-380を用い、実施例1〜3および比較例1〜3共に、研磨砥石或いはパッドおよびワークの回転数を何れも90(r.p.m.)、同時に研磨するワーク枚数を3枚とした。また、ワークに印加される研磨面への押付け荷重は例えば208(g/cm2)程度に設定し、研磨液として水を10(ml/min)の流量で供給しつつ研磨した。ワークは、鏡面研磨品とラップ品とを用意し、加工時間をそれぞれ60分、210分とした。図8が鏡面研磨品の加工結果を表したものであり、図9がラップ品( すなわちすりガラス状の表面を有するもの) の加工結果を表したものである。これらは加工時間が異なる他は同様な条件で仕上げ研磨を施した。なお、実施例2,3については、鏡面研磨品の加工のみを評価した。
上記の図8に示されるように、鏡面加工品を研磨した場合には、実施例1の研磨工具10を用いた仕上げ研磨によれば、累積削除重量が30分の研磨時間で1.9(mg) 程度、60分の研磨時間で2.8(mg) 程度の極めて高い研磨能率が得られた。これは、比較例1すなわち従来の遊離砥粒による研磨加工が30分で1.05(mg)程度、60分で1.65(mg)程度であったのに比較して、1.6 〜1.8 倍もの値である。なお、60分の研磨後にも、研磨工具10の砥石片の磨耗は僅か1(μm)に留まり、加工後のワーク表面の面粗度はRaで0.986(nm) 程度、Rmaxで5.943(nm) 程度であって、従来の遊離砥粒加工の場合と同等以上であった。因みに、従来の遊離砥粒加工の場合すなわち比較例1における面粗度は、Raで0.97(nm)程度、Rmaxで6.48(nm)程度である。
また、実施例2の砥石片を有する研磨工具を用いた仕上げ研磨では、累積削除重量が30分の研磨時間で1.05(mg)程度、60分の研磨時間で2.2(mg) 程度の比較的高い研磨能率が得られた。これは、従来の遊離砥粒加工に比較して30分の研磨時間では同程度、60分の研磨時間では1.3 倍程度の値である。また、この実施例2においても、60分の研磨後の砥石摩耗は殆ど無く、ワーク表面の面粗度は実施例1と同程度であった。また、時間経過に伴う研磨能力の低下は見られず、むしろ、研磨能力が向上する傾向が見られる。
また、実施例3の砥石片を備えた研磨工具を用いた仕上げ研磨では、累積削除重量が30分の研磨時間で0.8(mg) 程度、60分の研磨時間で1.3(mg) 程度と比較的高い値を示した。これは、比較例1にはやや劣るものの略同程度の結果であり、遊離砥粒加工に比較して実施例3のような固定砥粒加工の方が対環境性に優れることを考慮すれば、十分に使用する価値がある。なお、この実施例3においても、60分の研磨後の砥石摩耗は殆ど無く、ワーク表面の面粗度は実施例1,2と同程度であった。
これに対して、対照のために同時に評価した比較例2,3においては、60分の研磨後でも、比較例2で0.2(mg) 程度、比較例3で0.3(mg) 程度と極めて低い値に留まった。しかも、砥石磨耗量が比較例2では数( μm)、比較例3では1(μm)程度であり、研磨能率に対して著しく砥石磨耗が大きいことが確認できた。上記実施例3の研磨工具の砥石片は、これら比較例2,3すなわち従来の研磨用砥石に比較すれば極めて高い研磨能率を有している。
また、図9に示されるように、ラップ品の研磨においては、60分後の累積削除重量が実施例1の研磨工具10の砥石片が11(mg)程度であるのに対し、比較例1が2(mg) 程度、比較例2が5(mg) 程度、比較例3が略零(1(mg)未満) であった。すなわち、上記鏡面加工品の研磨と同様に、比較例1〜3に比較して2〜10倍以上の研磨能率を有することが確かめられた。しかも、実施例1の研磨工具10の砥石片は、研磨時間が長くなっても研磨能力( 研磨能率) の低下が殆ど認められず、累積削除重量が210時間で26(mg)にもなるが、比較例1〜4は研磨時間が増加するに従って研磨能力が次第に低下し、これらの差は拡大する傾向にある。
また、この試験においても、実施例1の研磨工具10の砥石片の磨耗量は著しく小さく、210時間後に4(μm)程度に留まったのに対し、比較例2では60時間後に163(μm)程度と著しい磨耗が認められた。なお、比較例3は60時間では磨耗が見られなかった。
上述のように本実施例では、研磨工具10が、平坦な取着面を備えた金属製台板(工具本体)14と、砥粒が所定の結合剤で結合されることにより構成され、単結晶サファイヤ板(ワーク)28の一面に摺接させられる複数個の砥石片16と、一面においてそれら複数個の砥石片16が配設され、他面において金属製台板14の取着面に固着された弾性変形可能な弾性シート17とを備え、その弾性シート17が、20.4kPaすなわち200g/cm2 の面圧が加えられたときの弾性変形量が5乃至25μmの範囲内の弾性、換言すれば0.25乃至1.235μm/kPaの圧縮弾性変形率を備えたものであるので、コランダム結晶体の鏡面研磨に際して、高い研磨能率が得られるとともに端面ダレが十分に小さくされる。
また、本実施例では、工具本体として機能する金属製台板14は、一回転軸心を中心とする円形の取着面を備えてその一回転軸心まわりに回転させられるものであり、弾性シート17は、その円形の取着面に固着され、その円形の取着面の径と同じ径の円形の外周円を有する合成ゴム製のシートであり、前記複数個の砥石片17は、矩形状であって、その弾性シート17の一面において5乃至20mmの一定のピッチで縦列方向および横列方向に配置されたものであるので、単結晶サファイヤ板28の鏡面研磨に際して、高い研磨能率が得られるとともに端面ダレが十分に小さくされる。また、複数の砥石片16は、弾性シート17の一面に個々に固着される結果、複数の砥石片16の間には多数本の溝20が格子状に備えられるので、その複数の砥石片17の端部の角が研磨能率向上に好適に寄与すると共に、溝20が加工液や切り粉等の排出路として好適に機能する。
また、本実施例によれば、複数個の砥石片16は、アルコレートを出発原料としてゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナ製砥粒が樹脂結合剤によって結合されることにより構成されたレジノイド砥石である。このように、コランダム用研磨工具の砥石片に用いられている砥粒が、アルコレートからゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナすなわち六方晶系酸化アルミニウムから成ることから、単結晶サファイアを研磨するに際して、高い研磨能率および良好な表面粗さを共に得ることができる。上記アルコレートからゾル−ゲル法を用いて製造されα型アルミナの表面活性が高いためであると推測される。
また、本実施例では、複数個の砥石片17は、5μm以下の平均粒径を備えた砥粒が熱硬化性樹脂結合剤によって結合されたものであって、平均粒径の十分に小さい砥粒が用いられることから、砥粒による表面傷が生じ難いので一層良い表面粗さを得ることができる。しかも、平均粒径が小さくなるほどその比表面積が増大してケミカル作用が顕著となるので、それにより研磨能率が向上する利点もある。
また、本実施例では、単結晶サファイヤ板28はコランダム結晶体である単結晶サファイヤであるので、単結晶サファイヤの鏡面研磨に際して、高い研磨能率が得られるとともに端面ダレが十分に小さくされる。
また、本実施例では、研磨工具10を用いて単結晶サファイヤ板28が研磨されるので、コランダム結晶体の鏡面研磨に際して、高い研磨能率が得られるとともに端面ダレが十分に小さくされる。この場合、190乃至230g/cm2 すなわち18.6乃至22.5kPaの面圧が好適に適用される。
また、本実施例においては、研磨工具10の砥石片に用いられている砥粒は、アルコレートからゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナから成ることから、単結晶サファイア基板を研磨するに際して、高い研磨能率および良好な表面粗さを共に得ることができる。
しかも、本実施例の研磨工具10の砥石片には、平均粒径が0.6(μm)程度の微細な砥粒が用いられるので、一層良い表面粗さを得ることができる。
また、本実施例の研磨工具10の砥石片には、弾性率の低いエポキシ樹脂が結合剤として用いられることから、単結晶サファイアの被研磨面から押圧力を受けた際にその被研磨面から容易に後退させられる。そのため、被研磨面に傷などを生じさせることが好適に抑制され、一層高品質の被研磨面が得られる。
ところで、本実施例において研磨工具10を構成する砥粒は、以下に説明する実験に基づいて決定されたものである。
図10は、従来の遊離砥粒加工に用いられていたシリカ系砥粒を含む種々の砥粒の研磨能率を評価するために、同様な遊離砥粒加工をそれらの砥粒で行った結果を示したものである。評価した砥粒は、平均粒径が0.8(μm)程度の酸化セリウム、平均粒径が2.0(μm)程度の合成マイカ、平均粒径が1.0(μm)程度のシリカ、平均粒径が0.6(μm)程度のアルミナ( 例えばWA#10000) 、平均粒径が2.1(μm)程度の水酸化アルミニウム、平均粒径が1.5(μm)程度の弗化カルシウム、および、従来から用いられているコロイダルシリカ( 例えば前記コンポールEX−3の2.5 倍希釈スラリー) である。なお、上記のうち合成マイカは近年学会で注目されているものであり、シリカは過去の文献で研削能力が最も高いとされているものである。
なお、ワークおよび試験装置( ラップ盤) は前述した評価と同一のものを用い、研磨工具10に代えてφ300(mm) のパッド(IC1000)を回転軸に取付け、水道水に3(vol %) の濃度で上記砥粒を添加したスラリーを10(ml/min)の流量でパッド上に供給した。回転数その他の条件は、前述した評価と同様である。
上記図10は、このような評価試験において、30分後および60分後の累積削除重量を測定した結果を表したものである。図から明らかなように、唯一アルミナのみが従来のコロイダルシリカに対して優位性を示し、累積削除重量で約2.3倍もの結果を得た。なお、酸化セリウムは全く研磨できなかったために図に表示されていない。
図11は、上記図10の結果を受け、アルミナ砥粒に絞って複数のメーカの種々の砥粒を上記と同様な試験条件で評価した結果を表したものである。各砥粒の種別、平均粒径等を下記の表1に示す。表1の記号欄の英字が図11の各データに付した記号に対応する。なお、表2において、結晶系が六方晶のものはα型、六方晶+正方晶のものおよび正方晶のものはγ型、単斜晶+斜方晶のものはδ型、単斜晶+六方晶のものはθ型と称されるものである。この図11に示されるように、アルミナ砥粒は、種類によって著しく異なるが、殆どのアルミナ砥粒は従来から使用されているコロイダルシリカよりも高い研磨能力を有する。
[表2]
記号 種別 平均粒径 比表面積 結晶系
A社 a WA#10000 0.7(μm) 21.6(m 2 /g) 六方晶
B社 b アルコキシド細粒 0.3 82.8 六方晶+正方晶
c アルコキシド中粒 0.4 24.3 六方晶
d アルコキシド粗粒 0.6 5.9 六方晶
C社 e 球状アルミナ 0.7 5.8 単斜晶+斜方晶
f アルコキシド細粒 0.3 7.1 六方晶
g アルコキシド粗粒 0.6 4.8 六方晶
h アルコキシド微粉 0.1 以下 73.7 単斜晶+六方晶
D社 i アルコキシド超微粉 0.1 以下 134.9 正方晶
j アルコキシド中微粉 0.2 12.3 六方晶
k 易焼結細粒 0.4 4.9 六方晶
l 易焼結粗粒 0.8 2.5 六方晶
m バイヤー法 0.4 7.4 六方晶
上記砥粒のうち、B社の3種( b〜d) は、何れもアルコキシドから製造されたものであるが、アルミナbはα化しておらず、アルミナc,dは粒径が相互に異なるので、焼成度合いが異なるものと推定される。
また、アルミナeは、アルコキシドを出発原料とするものでは無く、α化もしていないものである。
また、D社8種のうちf〜iの4種は、アルコキシドから製造されたものであって、アルミナh,iはα化しておらず、アルミナf,gは相互に粒径が異なるので、これらは相互に焼成度合いが異なるものと推定される。また、アルミナjはアルミナf,gと同様にアルコキシドから製造されたものであるが、粗粒品をカットして粒度分布をシャープにした微粉である。また、アルミナk、lは、アルコキシドから製造されたものであるが、工程の相違により形状が球形に近いものである。また、アルミナmは、バイヤー法で製造された一般的なアルミナである。
なお、上記の評価において、コロイダルシリカよりも研磨能力が低いのはγ型のアルミナiおよびδ型のアルミナeである。また、コロイダルシリカよりは高い研磨能力を有しているが、θ型のアルミナh、γ型のアルミナb、α型のアルミナfおよびアルミナa(WA#10000)は、他のα型のものに比較して低い特性に留まっている。
図12は、上記のうち研磨能力が著しく低い( すなわち図に破線で示すコロイダルシリカよりも低い) アルミナi ,eを除く11種類の砥粒を用いた遊離砥粒加工試験結果を、研磨加工後のワークの表面粗さを横軸に、60分後の研磨削除重量を縦軸にとってそれらの相関を見たものである。この図12から明らかなように、面粗度と研磨削除重量との相関は余り強くなく、どちらかといえば逆相関の傾向にある。機械的な作用による研削加工の場合の面粗度と研磨削除重量との一般的な相関傾向は、右上に向かって伸びる矢印のように正相関の傾向を示すことから、化学的な作用が研磨能力( 研磨能率) に影響を及ぼしていることが推定される。
また、上記の図12において、○は加工傷がワーク表面に生じた砥粒を、●は加工傷が生じなかった砥粒を区別したものである。また、砥粒はよい面粗度が得られ且つ削除重量が多いものが好ましいので、この評価結果によれば、左上に位置するアルミナc,d,g,kの4つの砥粒が特に好ましいことが判る。
図13は、砥粒の比表面積と研磨削除重量との相関を見たものである。この図において、白抜き印( ○□◇△) はα型アルミナを表しており、黒塗り印( ●◆★) はそれ以外すなわちγ型、δ型、およびθ型アルミナを表している。また、各印の形状はアルミナの製造方法および種類に対応しており、○および●がゾル−ゲル法で製造されたD社アルミナf〜j、□がゾル−ゲル法で製造されたD社易焼結アルミナk、l、◇および◆がゾル−ゲル法で製造されたB社アルミナb〜d、△がバイヤー法で製造された粉砕型アルミナ(WA およ
びD社アルミナm) 、★がC社アルミナeである。
上記の図13に示されるアルミナの結晶系の相違と研磨削除重量との関係から、α型アルミナが他の結晶系に比較して研磨能力の高い傾向が明らかである。また、比表面積の小さいものの方が研磨能力が高い傾向が見られる。
また、製造方法との関連で見ると、α型のうちゾル−ゲル法で製造したものがD社アルミナfを除いて左上に集中しており、これらの研磨能力が最も高いことが明らかである。このような結果が得られたのは、斯かる製造方法で製造されたアルミナが高い焼結性を有することで知られるように、高い表面活性を有するため、化学的研磨作用で研磨能率が高められているためと考えられる。
以上の図12、図13に示される削除重量、面粗度、比表面積( 粒径) の相互の関係から、α型アルミナであって、アルコキシドからゾル−ゲル法で製造された砥粒がサファイアに代表されるコランダム結晶体の鏡面研磨に好適であることが明らかである。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
研磨工具の全体を示す斜視図である。 図1の研磨工具を用いた単結晶サファイアの仕上げ鏡面研磨の実施状態を示す図である。 図1の研磨工具の弾性シートを表1に示す材質とすることにより硬さが異なる複数種類の研磨工具についてその弾性シートの変形量の測定値を各面圧荷重について示す図である。 図3の各研磨工具の研磨能力に対応する累積削除量をその弾性シートの弾性変形量とともに示す図である。 図3の各研磨工具の研磨能力に対応する累積削除量とその各研磨工具の研磨によるワークの端面ダレとを示す図である。 図3の各研磨工具の弾性シートの変形量とその各研磨工具の研磨によるワークの端面ダレとを示す図である。 図3の研磨工具A、Dについて砥石片の配列ピッチを替えた研磨工具A1、A2、A3、D1、D2のそれぞれの研磨能力に対応する累積削除量と、その各研磨工具の研磨時によるワークの端面ダレとを示す図である。 図1の研磨砥石の試験結果を比較例と共に示す図である。 図1の研磨砥石の他の試験結果を示す図である。 各種砥粒の研磨能率を比較した試験結果を示す図である。 各種アルミナ砥粒の研磨能率を比較した試験結果を示す図である。 図11の試験結果において被研磨面の面粗度と研磨能率との関係を表した図である。 図11の試験結果において砥粒の比表面積と研磨能率との関係を表した図である。
符号の説明
10:研磨工具
14:金属製台板(工具本体)
16:砥石片
17:弾性シート
28:単結晶サファイヤ板(ワーク)

Claims (6)

  1. 被研磨部材の一面を所定の表面粗さに研磨するための研磨工具であって、
    平坦な取着面を備えた工具本体と、
    砥粒が所定の結合剤で結合されることにより構成され、前記コランダムの一面に摺接させられる複数個の砥石片と、
    一面において前記複数個の砥石片が配設され、他面において前記工具本体の取着面に固着された弾性変形可能な弾性シートとを、含み、
    該弾性シートは、20.4kPaの面圧が加えられたときの弾性変形量が5乃至25μmの範囲内の弾性を備えたものであることを特徴とする研磨工具。
  2. 前記工具本体は、一回転軸心を中心とする円形の取着面を備えて該一回転軸心まわりに回転させられるものであり、
    前記弾性シートは、該円形の取着面に固着され、該円形の取着面の径と同じ径の円形の外周円を有する合成ゴム製のシートであり、
    前記複数個の砥石片は、矩形状であって、該弾性シートの一面において5乃至20mmの一定のピッチで縦列方向および横列方向に配置されたものである請求項1の研磨工具。
  3. 前記複数個の砥石片は、アルコレートを出発原料としてゾル−ゲル法を用いて製造されたα型アルミナ製砥粒が樹脂結合剤によって結合されることにより構成されたレジノイド砥石である請求項1または2の研磨工具。
  4. 前記複数個の砥石片は、5μm以下の平均粒径を備えた砥粒が熱硬化性樹脂結合剤によって結合されたものである請求項1乃至3のいずれかの研磨工具。
  5. 前記被研磨部材は、コランダム結晶体である請求項1乃至5のいずれかの研磨工具。
  6. 請求項1乃至5のいずれかの研磨工具を用いて、被研磨部材の一面を所定の表面粗さに仕上げ研磨する研磨方法。
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