JP2005183515A - 点火コイル - Google Patents

Abstract

【課題】 熱応力の繰り返し作用により充填された絶縁樹脂に発生するクラックを防止することができる点火コイルを提供する。
【解決手段】 １次コイル１・２次コイル２が巻装されたセンターコア３と、サイドコア４からなるトランス１０が、ケース６に絶縁樹脂８により固定され、サイドコア４と２次コイル２との間に絶縁樹脂８と密着する素材のコアカバー５ａと、逆に絶縁樹脂８と剥離する素材のコアカバー５ｂを配置するように構成する。
【選択図】図１

Description

この発明は、主として車両の内燃機関に用いられる点火コイルに関する。

点火コイルは、１次コイルを中心に、外側に２次コイル、内側にセンターコアが配置されトランスを構成している。センターコアの外側に配置されたサイドコアはセンターコアと組合わせることで磁気回路を構成している。これらの部品をケースに収納し、車輌ハーネスとの接続用コネクタを形成したコネクタアッセンブリにより内部部品を接続した後、絶縁樹脂により固定し絶縁される。一般にセンターコアおよびサイドコアには電磁鋼板が用いられ、絶縁樹脂にはエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。ケースには出力端子が構成され、高圧コードにより内燃機関の点火プラグに接続される。

上述のように構成された点火コイルは、内燃機関のコントロールユニットの制御信号によりコネクタアッセンブリを介して、１次コイルに流れる１次電流の通電、遮断を制御される。制御信号により内燃機関の所定の点火時期で１次コイルに流れる１次電流を遮断すると、１次コイルに逆起電力が発生し、２次コイルに高電圧を発生する。発生した高電圧は高圧コードを介して接続された内燃機関の点火プラグに印加される。

特開平６−１１２０６９号公報

電磁鋼板からなるサイドコアは、線膨張係数の異なる絶縁樹脂の中に存在し、熱応力が加わると絶縁樹脂に歪が発生する。そして、繰り返し熱応力が加わった場合は、絶縁樹脂に剥離やクラックが発生する可能性がある。そこで、サイドコアにコアカバーを装着し、サイドコアを起点とした絶縁樹脂のクラックを防止していた。しかし、サイドコアにより発生した絶縁樹脂のクラックは、サイドコアに対面する部品にも影響を与える。例えば、サイドコアに近い位置に配置され絶縁樹脂と密着性のよい素材からなる２次コイルのボビンなどの近傍では、２次コイル（特にボビン）に対して歪を生じさせる可能性がある。その結果生ずる剥離・クラックは内部リークの原因となり、また歪はコイル断線の原因となり、内燃機関用点火装置の出力電圧の低下、又は発生しない現象が生ずるという問題があった。

この発明は、１次コイルと２次コイルと、１次コイルの内側に配置されたセンターコアとで構成されたトランスと、２次コイルの外側に配置されセンターコアで発生した磁束を回帰させるサイドコアと、サイドコアの周囲に配置されたカバーと、これら部品類を収納するケースと、ケース内で部品類を固定するための絶縁樹脂とを備えた点火コイルにおいて、カバーは、絶縁樹脂と密着する素材のコアカバーと、絶縁樹脂と剥離する素材のコアカバーで構成されている。

この発明によれば、カバーが絶縁樹脂と密着する素材のコアカバーと逆に絶縁樹脂と剥離する素材のコアカバーで構成されているので、絶縁樹脂と剥離しやすい部分による緩衝作用となり、必要な部分での絶縁樹脂の剥離やクラックを防止でき、部品への歪を緩和でき、耐久性があり信頼性に優れた点火コイルを提供することができる。

実施の形態１．
本発明の実施の形態１について説明する。図１は点火コイルの平面図で、図２は図１のＡ−Ａ断面図である。１次コイル１と２次コイル２とセンターコア３からなるトランスと、サイドコア４とサイドコア４の周囲に配置されたカバー５は、樹脂製容器状のケース６に内蔵されている。それぞれの部品はコネクタアッセンブリ７により電気的に接続され、熱硬化性のエポキシ樹脂からなる絶縁樹脂８を充填することにより固定される。コネクタアッセンブリ７は、車輌ハーネス（図示せず）との接続用コネクタと、部品間の接続用端子と、コントロールユニットの制御信号（図示せず）により１次コイル１に流れる１次電流を通電、遮断するスイッチングモジュール７ａを備えたものである。カバー５は、絶縁樹脂８と密着する素材のコアカバー５ａと、絶縁樹脂８と剥離する素材のコアカバー５ｂで構成されている。

絶縁樹脂８と密着する素材のコアカバー５ａは、１次コイル１、又は２次コイル２のボビン（１ａ、２ａ）と同様のＰＢＴ樹脂を用いている。コアカバー５ａは１次コイル１のボビン１ａに固定され、２次コイル２との間の絶縁樹脂８と密着している。絶縁樹脂８と剥離する素材のコアカバー５ｂはシリコーン樹脂からなり、サイドコア４とコアカバー５ａとの間に配置されている。コアカバー５ｂとサイドコア４、コアカバー５ｂとコアカバー５ａ、及びコアカバー５ａと２次コイル２とのそれぞれのすきまには、絶縁樹脂８が流入し、硬化後は薄い絶縁樹脂８の層を形成している。そのため熱応力が加わった場合、剥離層をなしているコアカバー５ｂが緩衝材としての役目をし、サイドコア４を起点とする絶縁樹脂８のクラックを抑制することになる。またサイドコア４に対面する部品（２次コイル２）への歪の緩衝も可能となる。その結果信頼性の優れた製品を得ることができる。

サイドコア４、絶縁樹脂８、コアカバー５ｂ、絶縁樹脂８、コアカバー５ａ、絶縁樹脂８、２次コイル２の関係のみならず、絶縁樹脂８の介在を変更しても効果がある。つまり、コアカバー５ａ、５ｂが接触し絶縁樹脂８が介在していない構造、さらにはサイドコア４とコアカバー５ｂが接触する構造であっても同様の効果がある。すなわちサイドコア４、剥離素材、密着素材、２次コイル２の順に配置されていれば、絶縁樹脂はそれらのどの間に存在してもクラック防止機能を有するものである。。

図２では絶縁樹脂８と密着する素材のコアカバー５ａは、２次コイルボビン２ａを覆うよう断面がコの字形状をなしている。図３では剥離する素材のコアカバー５ｂも同様にコの字形状をなし、密着素材と同等の形状をなすことにより、その効果をより発揮できるものとしている。また、カバーはサイドコア４とケース６との間に配置しても効果が発揮でき、クラック発生を抑制できる。なお、センターコア３、サイドコア４はそれぞれ略Ｉ字状、略Ｃ字状で構成したが、この形状にこだわるものではなく、２個のＣ字状、又は２個のＥの字状であってもよい。また、閉磁路構造のコアである必要もなく、開磁路構造の点火コイルであっても、２次コイルの周辺に線膨張係数の異なるコアが配置されており、絶縁樹脂で覆われている構造であれば、適用できることは言うまでもない。

実施の形態２．
次に実施の形態２について図３を用いて説明する。ケース６と２次コイル２との間に絶縁樹脂８をはさんだ位置に配置される部品で、絶縁樹脂８と線膨張係数の異なる場合においては、部品の周囲にカバーを配置でき、例えば、スイッチングモジュール７ａに用いるカバーなどにも広く適用することができる。図３の９ａは絶縁樹脂と密着する素材のカバーであり、９ｂは剥離する素材のカバーを示している。２次コイル２側には絶縁樹脂と密着する素材のカバー９ａを配置し、スイッチングモジュール７ａ側には剥離する素材９ｂを配置している。このため２次コイル側に絶縁樹脂のクラックを防止できるとともに、スイッチングモジュールに絶縁樹脂歪による応力を緩和できる効果がある。また密着する素材のカバー９ａは、工作性を考慮して一部をボビン１ａに係止させている。なお、スイッチングモジュール全体を覆うような袋状のカバーであってもよい。

実施の形態３．
次に実施の形態３について図４を用いて説明する。図４（ａ）は、ケース６の開口面側の絶縁樹脂（図中上側）とサイドコア４との間にもカバー１５を配置している。カバー１５は前記同様、絶縁樹脂と密着する素材のコアカバー１５ａと、絶縁樹脂と剥離する素材のコアカバー１５ｂで構成されている。密着する素材のコアカバー１５ａは、ケース６の開口面側の絶縁樹脂とも密着している。一方、絶縁樹脂と剥離する素材のコアカバー１５ｂはシリコーン樹脂からなり、サイドコア４と密着する素材のコアカバー１５ａとの間に配置されている。前記実施の形態１ではサイドコア４と２次コイル２、又はケース６の間にコアカバー５を配置したものであり、これを縦置きと称すると、実施の形態２は横置きとなり方向が異なっているものである。

図４（ａ）は、コアカバー１５ａがサイドコア４の少なくとも図中２面を覆うように構成され、剥離する素材のコアカバー１５ｂがコアカバー１５ａとサイドコア４との間に配置されている。これによりサイドコア４と絶縁樹脂８との線膨張係数の大きく異なる材料による熱応力を緩和できるように作用し、絶縁樹脂のクラックを抑制できる。

なお、剥離する素材のコアカバー１５ｂをシート状の形態でサイドコア４と密着する素材のコアカバー１５ａの間に配置した。しかし、剥離する素材のコアカバー１５ｂは密着する素材のコアカバー１５ａまたは、サイドコア４と一体成形したり、係止部を設けて勘合してもよい。また、テープ状の形態で貼り付けたり、シリコーン樹脂系塗料を用いて塗装することでも、剥離する素材のコアカバー１５ｂを形成することが可能である。剥離する素材のコアカバー１５ｂに用いる剥離する素材は、シリコーン樹脂に限られることはなく、ＥＰＤＭなどのゴム、ふっ素樹脂、熱可塑性エラストマーなど絶縁樹脂８と容易に剥離する素材であればよい。逆に密着する素材は化学的に結合しやすい分子構造を有する素材、例えばカルボキシル基を持つ樹脂（ＰＥＴ、ＰＢＴ、ＵＰ等）、又はカルボキシル基が配合された樹脂であればよい。これらは実施の形態１及び２についても同様に適用できる。

また、剥離素材のコアカバー１５ｂをケース開口面側に配置したが、逆にケース開口面と反対側に配置したり、又は両側に配置することも可能である。図４（ｂ）は密着素材のコアカバー１６ａがコの字状であり、剥離素材のコアカバー１６ｂはサイドコア４の上下２面に配置されているものである。図４（ｃ）ではコアカバーの密着素材１７ａ、及び剥離素材１７ｂもコの字状でサイドコア４を覆っているものである。

この発明は車両用の内燃機関の点火コイルのみならず、熱、水分等が存在する雰囲気中で使用される船舶、航空機等の点火コイルにも用いることができる。

この発明の実施の形態１を示す点火コイルの全体断面図である。 この発明の実施の形態１の点火コイルの要部を示す概略図である。 この発明の実施の形態１及び２の点火コイルの要部を示す概略図である。 この発明の実施の形態３の点火コイルの要部を示す概略図である。

符号の説明

１ １次コイル、２ ２次コイル、３ センターコア、４ サイドコア、
５、１５ カバー、５ａ、１５ａ、１６ａ、１７ａ、 密着素材のコアカバー、
５ｂ、１５ｂ、１６ｂ、１７ｂ 剥離素材のコアカバー、８ 絶縁樹脂、９ａ 密着素材のカバー、９ｂ 剥離素材のカバー

Claims (11)

1. １次コイルと２次コイルと、前記１次コイルの内側に配置されたセンターコアとで構成されたトランスと、前記２次コイルの外側に配置され前記センターコアで発生した磁束を回帰させるサイドコアと、前記サイドコアの周囲に配置されたカバーと、前記部品類を収納するケースと、前記ケース内で部品類を固定するための絶縁樹脂とを備えた点火コイルにおいて、
   前記カバーは、前記絶縁樹脂と密着する素材のコアカバーと、前記絶縁樹脂と剥離する素材のコアカバーで構成されたことを特徴とする点火コイル。
2. カバーは、トランスとサイドコアとの間に配置されたことを特徴とする請求項１記載の点火コイル。
3. サイドコア側に剥離する素材のコアカバー、トランス側に密着する素材のコアカバーを配置し、サイドコアとトランスとの間に少なくとも１層の絶縁樹脂が充填されたことを特徴とする請求項２記載の点火コイル。
4. 密着する素材のコアカバーは、トランスで保持されたことを特徴とする請求項２記載の点火コイル。
5. カバーは、ケース開口面側、又はその反対側の少なくとも一方の絶縁樹脂とサイドコアとの間に配置されたことを特徴とする請求項１記載の点火コイル。
6. 剥離する素材のコアカバーは、密着する素材のコアカバー、又はサイドコアに保持されたことを特徴とする請求項１記載の点火コイル。
7. 剥離する素材のコアカバーはテープ状の形態で、密着する素材のコアカバー、又はサイドコアに貼り付けて形成されたことを特徴とする請求項６記載の点火コイル。
8. 剥離する素材のコアカバーは、密着する素材のコアカバー、又はサイドコアに塗装して形成されたことを特徴とする請求項６記載の点火コイル。
9. １次コイルと２次コイルと、前記１次コイルの内側に配置されたセンターコアとで構成されたトランスと、前記２次コイルの外側に配置され前記センターコアで発生した磁束を回帰させるサイドコアと、前記１次コイルに流れる通電電流を供給・遮断を行うスイッチングモジュールと、前記部品類を収納するケースと、前記ケース内で部品類を固定するための絶縁樹脂とを備えた点火コイルにおいて、
   前記スイッチングモジュールは、前記絶縁樹脂と密着する素材のカバーと、前記絶縁樹脂と剥離する素材のカバーで構成されたことを特徴とする点火コイル。
10. カバーは、密着する素材のカバーと、剥離する素材のカバーを、一体成形して形成したことを特徴とする請求項１、又は請求項９記載の点火コイル。
11. 剥離する素材のカバーはテープ状の形態で、密着する素材のカバー、又はスイッチングモジュールに貼り付けて形成されたことを特徴とする請求項９記載の点火コイル。
    
    

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