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JP2005170960A - 摺動部材、潤滑性被膜、潤滑性被膜用塗料および摺動部材の表面被覆方法 - Google Patents

摺動部材、潤滑性被膜、潤滑性被膜用塗料および摺動部材の表面被覆方法 Download PDF

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JP2005170960A
JP2005170960A JP2003408024A JP2003408024A JP2005170960A JP 2005170960 A JP2005170960 A JP 2005170960A JP 2003408024 A JP2003408024 A JP 2003408024A JP 2003408024 A JP2003408024 A JP 2003408024A JP 2005170960 A JP2005170960 A JP 2005170960A
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Takaaki Baba
敬明 馬場
Toshihisa Shimo
俊久 下
Kimitoshi Murase
仁俊 村瀬
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Abstract

【課題】摺動特性に優れた潤滑性被膜を提供する。
【解決手段】本発明の潤滑性被膜は、固体潤滑剤とこの固体潤滑剤を基材表面上に保持するバインダとからなり、このバインダは、バインダ樹脂とこのバインダ樹脂中に分散した窒化ケイ素の微粒子(強化粒子)との複合材料からなる。潤滑性被膜中の固体潤滑剤は、バインダ樹脂100重量部に対して30〜120重量部含まれている。この潤滑性被膜は、多量の固体潤滑剤が強固なバインダによって安定的に保持されているため、耐焼付性、低摩擦係数化のみならず、耐摩耗性にも優れる。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体潤滑剤からなる潤滑性被膜、その潤滑性被膜の形成に適した潤滑性被膜用塗料、その潤滑性被膜を基材表面に設けた摺動部材およびその表面被覆方法に関する。
二部材が摺接しつつ相対運動を行う場合、耐焼付性や低摩擦係数化等の観点から、それら部材間には高い潤滑性が要求される。この潤滑性の程度は、機器の種類、使用環境、摺動部材の表面性状等によって異なるが、高荷重で高速運転される苛酷な部材ほど、高い潤滑性が要求される。例えば、機械装置等の場合、潤滑油やグリース等によって摺動部材間の潤滑性が確保されることが多い。しかし、使用環境によっては潤滑油やグリース等を使用できなかったり、それらだけでは十分な摺動特性を確保できない場合もある。そこで、摺動部材間の摺動特性の確保やその向上等を図るために、基材の表面に固体潤滑剤からなる潤滑性被膜を設けることも多い。もっとも、固体潤滑剤単体を基材表面へ十分に密着させることは困難なため、通常、バインダ樹脂によって固体潤滑剤を基材表面に固着、保持させて潤滑性被膜を形成してる。このような潤滑性被膜等に関する開示は、例えば、下記の特許文献1〜3にある。
特開平11−13638号公報 特開2001−158855号公報 特開2001−11372号公報
特許文献1には、摺接層および中間層の2層構造からなる潤滑性被膜が開示されている。この潤滑性被膜によると、最表面の摺接層が摩滅しても中間層が基材表面に残存するため、摺動特性の低下が防止される。しかし、摺接層自体の耐摩耗性は不十分であるため、全体的に摩耗性し易いことに変わりない。
特許文献2には、特定の樹脂中に繊維状補強剤を添加したバインダで、固体潤滑剤を保持した精密摺動部品およびその樹脂組成物が開示されている。特許文献2の明細書中には繊維状補強剤として窒化ケイ素の繊維でも良い旨の記載があるが、その実施例はなく、実際に使用されている繊維状補強剤は繊維径が10μmで繊維長が3mm程度のガラス繊維等である。また、特許文献2の場合に繊維状補強剤がバインダ樹脂中に添加されているのは、上記組成物からなる部品の寸法安定性つまりは線膨張係数の低減を図るためである。さらに特許文献2では、比較的低荷重、低速度で常温域で使用される部品を対象にしており、苛酷な条件下における摺動特性については想定されていない。
特許文献3には、固体潤滑剤であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とバインダ樹脂であるポリアミドイミド(PAI)とチッ化ケイ素のウィスカーとからなり、PTFEとPAIの組成が重量比で5〜10/95〜90であって、かつPTFEとPAIの合計量100重量部に対してチッ化ケイ素のウィスカーを1〜10重量部含む塗料組成物が開示されている。特許文献3の潤滑性被膜は、十分な耐摩耗性を発揮するとしても、固体潤滑剤であるPTFEの配合量が非常に少ないため、高い耐焼付性や低摩擦係数化の達成は望めず、苛酷な摺動条件下での使用には向かない。なお、前記チッ化ケイ素のウィスカーに替えて、平均粒子径が0.1〜5.0μm程度のチッ化ケイ素の粒子を使用しても良い旨が特許文献3には記載されているが、それに関する実施例は一切ない。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものである。つまり、苛酷な摺動条件下で使用した場合であっても、耐摩耗性、耐焼付性および低摩擦係数化等の摺動特性に優れた潤滑性被膜を提供することを目的とする。また、その潤滑性被膜の形成に好適な潤滑性被膜用塗料およびその潤滑性被膜を基材表面に設けた摺動部材を提供することを目的とする。さらに、その潤滑性被膜を基材表面に形成する摺動部材の表面被覆方法も併せて提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、固体潤滑剤を保持するバインダをバインダ樹脂と窒化ケイ素の微粒子との複合材料で形成することを思いつき、これに基づき本発明を完成するに至った。
(摺動部材)
すなわち、本発明の摺動部材は、基材と、該基材の表面に形成され摺動特性に優れた潤滑性被膜とからなる摺動部材であって、
前記潤滑性被膜は、固体潤滑剤と、該固体潤滑剤を前記基材表面上に保持するバインダとからなり、
前記バインダは、バインダ樹脂と、窒化ケイ素(Si34)の微粒子からなり該バインダ樹脂中に分散して該バインダ樹脂を強化する強化粒子との複合材料からなり、前記潤滑性被膜は、前記バインダ樹脂100重量部に対して前記固体潤滑剤を30〜120重量部含むことを特徴とする。
本発明の摺動部材は、耐焼付性、耐摩耗性および低摩擦係数化等の摺動特性に優れた潤滑性被膜を備える。それ故、本発明の摺動部材は各種装置に利用され得るが、特に、苛酷な摺動条件下で使用される装置に好適である。
ところで、上記潤滑性被膜が何故優れた摺動特性を発現するかは必ずしも定かではないが、現状次のように考えられる。
先ず、本発明の潤滑性被膜では、固体潤滑剤の含有量が比較的多い。このため、摺動部における潤滑性に優れ、苛酷な摺動条件下であっても、高い耐焼付性と摩擦係数の低減が図られる。なお、摩擦係数の低減は、各種損失低減による効率化、発熱による摺動部の昇温抑制等の効果にもつながる。
次に、このように潤滑性被膜中の固体潤滑剤の含有量が増加すると、相対的にその固体潤滑剤を保持するバインダ量は減少するため、従来ならば、固体潤滑剤を安定して保持できずに、潤滑性被膜の耐摩耗性が大きく低下する可能性もある。しかし、本発明の潤滑性被膜では、固体潤滑剤を保持するバインダが、単にバインダ樹脂のみからなるのではなく、そのバインダ樹脂中に強化粒子を分散させて強化された複合材料からなる。つまり、バインダの主体となるバインダ樹脂が強化粒子によって補強された状態となっている。従って、固体潤滑剤量が増加してバインダ量が相対的に減少したとしても、固体潤滑剤を強固に保持できる。
このような強化粒子として種々のものが考えられ、本発明者が種々の強化粒子について試したところ、窒化ケイ素の微粉末が好適であることがわかった。すなわち、バインダ樹脂と窒化ケイ素の微粒子との複合材料からなるバインダによれば、多量の固体潤滑剤も強固に安定的して保持されて容易に脱落せず、潤滑性被膜の耐焼付性を損うことなく、その耐摩耗性も大きく向上することがわかった。ちなみに、窒化ケイ素同様の無機粒子であるアルミナ粒子、シリカ粒子または炭化ケイ素粒子を強化粒子として用いた場合、得られた潤滑性被膜の耐摩耗性は良好であるものの、耐焼付性を低下させる結果となった。こうして本発明の摺動部材は、その潤滑性被膜によって、優れた耐焼付性、低摩擦係数化および耐摩耗性を発現するようになったと考えられる。
(潤滑性被膜)
本発明は、上記摺動部材としてのみならず、上述した潤滑性被膜としても把握することができる。
すなわち、本発明は、基材の表面に形成され摺動特性に優れた潤滑性被膜であって、
固体潤滑剤と該固体潤滑剤を前記基材表面上に保持するバインダとからなり、
前記バインダは、バインダ樹脂と、窒化ケイ素(Si34)の微粒子からなり該バインダ樹脂中に分散して該バインダ樹脂を強化する強化粒子との複合材料からなり、前記固体潤滑剤は前記バインダ樹脂100重量部に対して30〜120重量部含まれることを特徴とする潤滑性被膜としても把握できる。
(潤滑性被膜用塗料)
本発明は、さらに、その潤滑性被膜を形成するのに適した塗料(または塗料組成物)としても把握できる。
すなわち、本発明は、基材の表面に塗布されて摺動特性に優れた潤滑性被膜を形成する潤滑性被膜用塗料であって、
バインダ樹脂と、該バインダ樹脂100重量部に対して30〜120重量部の固体潤滑剤と、窒化ケイ素(Si34)の微粒子からなる強化粒子とを含むことを特徴とする潤滑性被膜用塗料としても把握できる。
(摺動部材の表面被覆方法)
また本発明は、前述した摺動部材の基材表面に潤滑性被膜を形成するための表面被覆方法としても把握できる。
すなわち、本発明は、バインダ樹脂のワニス中に該バインダ樹脂100重量部に対して30〜120重量部の固体潤滑剤および窒化ケイ素(Si34)の微粒子からなる強化粒子を分散させた潤滑性被膜用塗料を基材の表面に塗布する塗布工程と、該塗布工程程後に形成された塗膜を加熱して焼成する焼成工程とを備えてなり、
前記強化粒子によって強化された前記バインダ樹脂によって前記固体潤滑剤が保持されてなる潤滑性被膜を前記基材の表面に形成し得ることを特徴とする摺動部材の表面被覆方法としても把握できる。
発明の実施形態を挙げて、本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含め、本明細書で説明する内容は、本発明に係る潤滑性被膜やそれを備えた摺動部材のみならず、潤滑性被膜用塗料や摺動部材の表面被覆方法にも、適宜適用できるものであることを断っておく。また、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なることを断っておく。
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
(1)固体潤滑剤
本発明の潤滑性被膜中には、バインダ樹脂100重量部に対して30〜120重量部の固体潤滑剤が含まれ、その含有量が35〜55重量部であるとより好ましい。潤滑性被膜全体を100質量%としていい替えれば、固体潤滑剤は20〜50質量%、20〜30質量%含まれると好ましい。固体潤滑剤量が過少であると、潤滑性被膜の耐焼付性や低摩擦係数化が劣り、固体潤滑剤量が過多になると、潤滑性被膜中のバインダ量が相対的に減少して固体潤滑剤の脱落等によりその耐摩耗性が低下する。もっとも、最適な固体潤滑剤の範囲は、固体潤滑剤の種類、潤滑性被膜の用途や仕様によっても異なるため、前記範囲内で適宜調整するのが好ましい。
このような固体潤滑剤には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、二硫化モリブデン(MoS2)、二硫化タングステン(WS2)、フッ化カルシウム(CaF2)、グラファイト(C)、窒化ホウ素(BN)等がある。なお、上記の固体潤滑剤の含有量は、PTFEを固体潤滑剤として使用した場合に特に好適な範囲であり、その範囲内でPTFEの一部を他の上記固体潤滑剤で置換しても良い。また、固体潤滑剤は、その平均粒子径が0.01〜10μm、さらには0.1〜1μmの粉末状であると、潤滑性被膜用塗料中における固体潤滑剤の分散性が高まり、得られた被膜表面も平滑となる。
また、固体潤滑剤は、バインダ樹脂との密着性やバインダ樹脂中への分散性等を向上させるために、カップリング剤によって予め処理されたものであっても良い。さらに、潤滑性被膜は、その摺動特性を向上させるために、固体潤滑剤と併せて種々の添加剤を含有していても良い。
(2)バインダ
(a)バインダ樹脂
バインダ樹脂は、固体潤滑剤を基材表面に保持するバインダの主体となる。バインダ樹脂は、苛酷な摺動条件下でも潤滑性被膜が安定した摺動特性を発現できるように、耐熱性樹脂、特に熱硬化性樹脂が好ましい。このようなバインダ樹脂として、例えば、ポリアミドイミド(PAI)やポリイミド(PI)等のポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等がある。中でも、コストや摺動特性の点からPAIが好適である。
(b)強化粒子
本発明の強化粒子は、主に窒化ケイ素の微粒子からなり、バインダ樹脂中に分散して強固な複合材料からなるバインダを形成する。これにより、固体潤滑剤は安定的に保持され、さらに、強化粒子はそれ自身硬質であるためバインダ層自体の耐摩耗性も向上し、潤滑性被膜の耐摩耗性は相乗的に高められる。
この強化粒子の平均一次粒径(特に、窒化ケイ素の平均一次粒径)は、1μm以下、0.5μm以下さらには0.1μm以下であると好ましい。より具体的には、その平均一次粒径が25nm、40nmまたは80nm程度であると好ましい。この平均一次粒径が小さいと、強化粒子がバインダ樹脂中に微細に分散してバインダが均一に強化されると共に潤滑性被膜の表面が平滑となり易い。但し、平均一次粒径があまりに過小になると、製造困難で高コストとなる。また、取扱いも難しくなったり、凝集等して2次粒子を形成し易くなったりするため好ましくない。逆に、この平均一次粒径が過大になると、相手攻撃性が高まり好ましくない。特に、摺動相手部材が軟質な材質(例えば、Al、Mgまたはそれらの合金)からなる場合、本発明の摺動部材との間で良好な摺動特性を維持できなくなる。なお、ここで平均一次粒径とは、単一粒子の粒径であり、レーザー回折法などによる計測、または電子顕微鏡などによる観察像から求められる。
また、強化粒子は微粉末であるため、その凝集や取扱性の低下を回避するために、予め溶剤等に分散させたものを使用すると好ましい。このような溶剤として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、キシレン、トルエン、γ−ブチロ−ラクトン、ダイアセトンアルコール等がある。なお、このとき使用した溶剤は、後述の乾燥工程や焼成工程で排気除去される。
強化粒子は、潤滑性被膜中に、バインダ樹脂100重量部に対して1〜100重量部、5〜50重量部さらには15〜20重量部含まれると好適である。強化粒子が過少であると上述した効果に乏しく、強化粒子が過多となると相対的に主体となるバインダ樹脂が減少して良好なバインダが形成されない。
本発明の強化粒子は、主に窒化ケイ素の微粒子からなるが、その一部は上記範囲内で他の微粒子に置換されても良い。
なお、強化粒子はバインダ樹脂中との密着性やバインダ樹脂中への安定した分散性等を向上させるために、カップリング剤によって予め処理されたものであっても良い。
(c)カップリング剤
カップリング剤をバインダ樹脂中に含有させることで、潤滑性被膜(特にバインダ樹脂)と基材または強化粒子との密着性または強化粒子のバインダ樹脂中への分散性が向上する。使用するカップリング剤の種類は、バインダ樹脂、強化粒子、固体潤滑剤または基材の材質を考慮して適宜選択されるが、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等が代表的なものである。本発明者の行った試験によると、中でもシランカップリング剤が最適であった。ちなみに、シランカップリング剤には、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等がある。
特に、バインダ樹脂としてポリアミドイミドを用いた場合、好ましいシランカップリング剤は、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン及び/又は3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランである。特に、官能基にエポキシ基をもつ2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。ちなみに、これら4点は保存安定性にも優れている。
ところで、カップリング剤はバインダ樹脂100重量部に対して1〜15重量部、1〜10重量部さらには1〜4重量部含まれると好ましい。カップリング剤が過少では上述した効果に乏しく、カップリング剤が過多になると相対的にバインダ樹脂量が減少して潤滑性被膜の摺動特性(耐摩耗性等)や密着性が低下するからである。
カップリング剤は、前述したように、固体潤滑剤や強化粒子の前処理に使用されても良いが、バインダ樹脂中にカップリング剤が添加されて、固体潤滑剤や強化粒子と共に混練されるとより好ましい。これにより、バインダ樹脂と固体潤滑剤や強化粒子との密着性のみならず、バインダ樹脂と基材との間の密着性も同時に確保されるからである。
(3)基材および摺動部材
摺動部材を構成する基材は、少なくとも一面に摺動面を備え、その摺動面が潤滑性被膜で被覆されて、本発明の摺動部材を構成する。その基材の材質は、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鉄鋼、鋳鉄、樹脂等、いずれの材質でも良く、板状、円筒状、球面状等、いずれの形状でも良い。
本発明の摺動部材やそれが組込まれる装置の種類や使用環境等も問わない。もっとも、本発明の摺動部材は優れた摺動特性を発現する潤滑性被膜を有するため、苛酷な摺動条件下で使用される部材として好適である。具体例を挙げると、例えば、内燃機関のピストン、エアコン用斜板式コンプレッサーの斜板やシュー、シャフト、軸受のレース等である。
摺動部材の用途に応じて要求される摺動特性は異なるが、本発明の潤滑性被膜の厚みは0.1〜120μm、10〜100μmさらには20〜60μmであると好適である。潤滑性被膜を薄くし過ぎると長期的に安定した摺動特性を確保し得ず、潤滑性被膜を厚くし過ぎると潤滑性被膜の形成に長時間を要し高コストとなるため好ましくない。
(4)表面被覆方法
本発明の表面被覆方法は、バインダ樹脂のワニス中に、固体潤滑剤および強化粒子を分散させた塗料を摺動部材の基材へ塗布、焼成させる工程からなる。使用する塗料は、適当なカップリング剤が適量添加され、溶剤等によって塗布方法に応じた粘度に調整されると好ましい。
塗布工程は、刷毛塗り、スプレー塗布、塗料浴への浸漬等によって行える。より具体的には、例えば、ローラー、ロールコーター、エアースプレー、エアレススプレー、静電塗装、電着塗装、スクリーン印刷など公知の塗布方法を使用すれば良い。
焼成工程は、基材表面に塗布した塗膜を所定条件下で加熱して、強固な潤滑性被膜を形成すると共にその潤滑性被膜を基材表面に密着させる工程である。この焼成工程は、塗布工程後の塗膜を乾燥させる乾燥工程を兼ねるものであっても良い。また、熱硬化性樹脂からなるバインダ樹脂は、この焼成工程で架橋等が進み、硬化する。
実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(実施例)
(1)潤滑性被膜用塗料の調製
バインダ樹脂であるPAIの樹脂ワニスに、固体潤滑剤であるPTFE粉末(平均一次粒径:0.3μm)と、窒化ケイ素粉末(平均一次粒径:40nm)と、シランカップリング剤とを添加した。
配合割合は、形成される潤滑性被膜全体を100質量%(以下、単に「%」で表す。)としたときに、PAI:60%、PTFE:27%、窒化ケイ素:11%、シランカップリング剤:2%となるようにした。これをPAI100重量部としたときの割合で示すと、PTFE:45重量部、窒化ケイ素:18重量部、シランカップリング剤:3重量部となる。
なお、上記PAIの樹脂ワニスは、溶剤にPAI樹脂を溶解させたものである。その割合は、ワニス全体を100質量%としたときに、溶剤:70質量%(n−メチル−2−ピロリドン56質量%、キシレン14質量%)、PAI樹脂:30質量%とした。また、シランカップリング剤には、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランを用いた。さらに、窒化ケイ素粉末が偏在する場合は、このシランカップリング剤で窒化ケイ素粉末予め処理しておいても良いし、窒化ケイ素粉末を下記の溶剤等に予め分散させておいても良い。
上記混合物をよく撹拌して、窒化ケイ素粉末およびシランカップリング剤をPAI樹脂ワニス中に十分に分散させた。そこへ溶剤(n−メチル−2−ピロリドン、キシレン又はこれらの混合物)を適当に加えて粘度調整を行い潤滑性被膜用塗料を得た。
(2)表面処理
炭素鋼(S55C)の丸棒(φ19mm)を用意し、脱脂したその外周面にエアースプレーにより上記潤滑性被膜用塗料を塗布した(塗布工程)。そして、その塗布した丸棒を80℃の大気雰囲気からなる加熱炉中に入れ、排気しつつ乾燥させ、その丸棒の表面に塗膜を形成した(乾燥工程)。これをさらに同加熱炉で230℃x1時間加熱して、PAI樹脂を焼成させた(焼成工程)。こうして丸棒の表面には本発明でいう潤滑性被膜が形成された。但し、本実施例では、得られたその潤滑性被膜の表面をさらに機械加工して、潤滑性被膜の厚みを30μmに調整した。
(比較例)
上記窒化ケイ素およびシランカップリング剤をPAI樹脂ワニス中に含まない潤滑性被膜用塗料を用意した。これを用いて、上記実施例と同様に丸棒の表面に潤滑性被膜を形成した。なお、PAI樹脂ワニス100重量部に対する固体潤滑剤(PTFE)の配合割合は上記実施例の場合と同様である。
(評価)
上記の実施例および比較例で得られた試験片(潤滑性被膜を施した丸棒)を用いて、ジャーナル試験機により摺動評価試験を行った。その摺動相手材には、ハイシリコンのアルミニウム合金(A390)からなる半円弧状の軸受を用いた。その摺動面には切削加工を施し、その表面粗さをRz(10点平均粗さ):3.2以下とした(実測値はRz:2.5〜3.0)。ちなみに、試験片の表面に形成した潤滑性被膜の表面粗さはRz1.5〜2.5であった。
この摺動相手材および各試験片を用いて、図1に模式的に示すような評価試験を行った。すなわち、潤滑性被膜を設けた試験片2の外周面に、2つの軸受1の内周面1aをそれぞれ接触させて保持し、その軸受1に荷重を印加させつつ、丸棒を回転させた。このときの試験条件は、すべり速度:6.0m/s、荷重:2000N、潤滑状態:潤滑油塗布、試験時間:20秒とした。
この試験終了後、潤滑性被膜の表面粗さを表面粗さ計により測定し、最大摩耗深さを求めた。その結果、実施例では最大摩耗深さが4.2μmであったのに対し、比較例では最大摩耗深さが28.3μmと大きなものとなった。つまり、本発明の潤滑性被膜を表面に備えた試験片(摺動部材)の場合、従来の潤滑性被膜を備えたものに対して、格段に耐摩耗性が向上することが確認された。
ジャーナル軸受試験機の要部斜視図である。
符号の説明
1 摺動相手材
2 試験片(摺動部材)

Claims (12)

  1. 基材と、
    該基材の表面に形成され摺動特性に優れた潤滑性被膜とからなる摺動部材であって、
    前記潤滑性被膜は、固体潤滑剤と、該固体潤滑剤を前記基材表面上に保持するバインダとからなり、
    前記バインダは、バインダ樹脂と、窒化ケイ素(Si34)の微粒子からなり該バインダ樹脂中に分散して該バインダ樹脂を強化する強化粒子との複合材料からなり、
    前記潤滑性被膜は、前記バインダ樹脂100重量部に対して前記固体潤滑剤を30〜120重量部含むことを特徴とする摺動部材。
  2. 前記強化粒子は、平均一次粒径が1μm以下である請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記平均一次粒径は、100nm以下である請求項2に記載の摺動部材。
  4. 前記潤滑性被膜は、前記バインダ樹脂100重量部に対して、前記強化粒子を1〜100重量部含む請求項1に記載の摺動部材。
  5. 前記バインダ樹脂は主にポリアミドイミドからなり、
    前記固体潤滑剤は主にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる請求項1に記載の摺動部材。
  6. 前記潤滑性被膜は、さらに、前記バインダ樹脂と前記基材または前記強化粒子との間の密着性を向上させるカップリング剤を含む請求項1に記載の摺動部材。
  7. 前記潤滑性被膜は、前記バインダ樹脂100重量部に対して、前記カップリング剤を1〜50重量部含む請求項6に記載の摺動部材。
  8. 前記カップリング剤は主にシランカップリング剤からなる請求項6または7に記載の摺動部材。
  9. 前記潤滑性被膜は、厚みが0.1〜120μmである請求項1に記載の摺動部材。
  10. 基材の表面に形成され摺動特性に優れた潤滑性被膜であって、
    固体潤滑剤と該固体潤滑剤を前記基材表面上に保持するバインダとからなり、
    前記バインダは、バインダ樹脂と、窒化ケイ素(Si34)の微粒子からなり該バインダ樹脂中に分散して該バインダ樹脂を強化する強化粒子との複合材料からなり、
    前記固体潤滑剤は前記バインダ樹脂100重量部に対して30〜120重量部含まれることを特徴とする潤滑性被膜。
  11. 基材の表面に塗布されて摺動特性に優れた潤滑性被膜を形成する潤滑性被膜用塗料であって、
    バインダ樹脂と、
    該バインダ樹脂100重量部に対して30〜120重量部の固体潤滑剤と、
    窒化ケイ素(Si34)の微粒子からなる強化粒子とを含むことを特徴とする潤滑性被膜用塗料。
  12. バインダ樹脂のワニス中に該バインダ樹脂100重量部に対して30〜120重量部の固体潤滑剤および窒化ケイ素(Si34)の微粒子からなる強化粒子を分散させた潤滑性被膜用塗料を基材の表面に塗布する塗布工程と、
    該塗布工程程後に形成された塗膜を加熱して焼成する焼成工程とを備えてなり、
    前記強化粒子によって強化された前記バインダ樹脂によって前記固体潤滑剤が保持されてなる潤滑性被膜を前記基材の表面に形成し得ることを特徴とする摺動部材の表面被覆方法。
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