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JP4767234B2 - 摺動用被覆構造 - Google Patents

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Description

本発明は、金属基材と、該金属基材の表面を覆う被膜とから成る摺動用被覆構造に関し、特に、ガソリンエンジン等の内燃機関ピストンのスカート、リング溝、ピン穴等の摺動部位に適した摺動用被覆構造に関する。
近年、ガソリンエンジン等の内燃機関においては、高回転、高圧縮比、軽量化及び燃費向上を実現するために、部品サイズの小型化と併せて部品材質の軽合金化が進められている。軽合金を代表するアルミニウム材料は鉄系材料と比べて、耐摩耗性、耐焼付き性等が低いため、摺動部の表面に潤滑被膜を形成することが提案されている。
特許文献1には、結合剤としてのポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂のうちの少なくとも一方50〜73wt%と、固体潤滑剤としてのポリテトラフルオロエチレン3〜15wt%、二硫化モリブデン20〜30wt%及びグラファイト2〜8wt%とからなり、前記固体潤滑剤の総和が27〜50wt%であることを特徴とする摺動用樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、母材と、該母材の摺動面となる表面の少なくとも一部に形成されている乾性被膜潤滑剤よりなる被覆層とを有する摺動部材であって、前記乾性被膜潤滑剤が、ポリアミドイミド樹脂と、エポキシシランおよびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の塗膜改質剤と、窒化珪素およびアルミナから選ばれる少なくとも1種の硬質粒子とを有し、さらに、ポリテトラフルオロエチレン、二硫化モリブデン、グラファイトから選ばれる少なくとも1種の固体潤滑剤を含むことを特徴とする摺動部材が開示されている。
しかし、特許文献1、2に記載された摺動用樹脂組成物等を適用しても、その潤滑効果は未だ不十分であり、更に改良が望まれていた。
特許第3017626号 特開2004−149622号公報
本発明は、上記従来技術に比べて更に潤滑効果を高め、優れた摺動特性を有する摺動用被覆構造を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、金属基材と、該金属基材の表面を覆う潤滑被膜とから成る摺動用被覆構造であって、
上記潤滑被膜は、ポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂と二硫化モリブデン粒子とから成り、上記潤滑被膜中の耐熱性樹脂の重量百分率が52〜84wt%であり、二硫化モリブデン粒子の重量百分率が48〜16wt%であり、かつ、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した前記二硫化モリブデン粒子の平均粒子径が0.7〜2.7μmの範囲であり、および
上記金属基材は、中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜0.6μmの範囲であることを特徴とする摺動用被覆構造を提供する。
本発明によれば、潤滑被膜の組成を規定量のポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂と二硫化モリブデン(MoS2)粒子のみにより構成し、更に前記二硫化モリブデンの平均粒子径と、金属基材の表面粗さとを規定して微細化したことにより、従来技術では得られない低い摩擦係数(μ)と低摩耗量とを達成できる。
本発明の摺動用被覆構造の各構成をそれぞれ限定した理由を説明する。
以下、単に「粒子径」とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した体積累積平均粒子径(D50)を表すものであり、
「表面粗さRa」または「下地粗さRa」は、JIS B0601−1994に準じて測定された中心線平均粗さ(Ra)を表すものである。
〔潤滑被膜の構成成分および該各成分の含有量〕の限定理由
本発明の第一の特徴は、本発明の潤滑被膜が規定量のポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂と二硫化モリブデン粒子のみから成る点である。これが前記従来技術との基本的な相違点である。
まず従来技術のうち特許文献1ではポリアミドイミドと、二硫化モリブデン粒子、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト(C)の3種の固体潤滑剤とを用いている。本発明者は、後出の実施例にて詳述するように、上記3種の固体潤滑剤のうち潤滑被膜の摩擦係数μの値を最小とする固体潤滑剤である二硫化モリブデン粒子のみを選択的に用いることにより、3種の固体潤滑剤を併用した特許文献1では得られない低い摩擦係数μおよび低摩耗量が得られることを見出した。
また、特許文献2では上記3種の固体潤滑剤のいずれか1種の他に、硬質粒子として窒化珪素および/またはアルミナを用いていた。しかしながら、本発明の摺動用被覆構造において、潤滑被膜の構成成分をポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂と二硫化モリブデン粒子のみに限定することにより、特許文献2に記載された摺動部材の特性に比して、低い摩擦係数μおよび優れた耐焼き付き性が実現されるものである。
次に,本発明の構成のもう一つの特徴は、潤滑被膜を構成するポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂と二硫化モリブデン粒子の重量百分率を特定の範囲内に限定した点である。すなわち、潤滑被膜中のポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂の重量百分率を52〜84wt%の範囲に、二硫化モリブデン粒子の重量百分率を48〜16wt%の範囲に限定したことにより、基材との良好な密着性を確保することができ、従来に比べて潤滑被膜の摩擦係数μおよび摩耗量を安定して低減することができる。
〔レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した前記二硫化モリブデンの平均粒子径が、0.7〜2.7μmの範囲であり〕の限定理由
本発明の構成は、小粒径の固体潤滑剤である二硫化モリブデン(MoS2)粒子を使用することを特徴とする。すなわち、該二硫化モリブデン(MoS2)粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した体積累積平均粒子径D50(=粒子径)は0.7〜2.7μmの範囲であることが必要である。かかる微細な粒子径を有する二硫化モリブデン(MoS2)のみを使用することにより、得られる潤滑被膜の基材への密着性に優れ、被膜の表面粗さRaおよび摩擦係数μの値を低減することができる。
該二硫化モリブデンの粒子径は0.7〜2.7μmの範囲であるが、樹脂組成物への配合性および二硫化モリブデン(MoS2)粒子の入手しやすさの見地から、その粒子径が1.3〜2.1μmの範囲にあることが特に好ましい。なお、かかる小粒径の二硫化モリブデン(MoS2)粒子は、市販の二硫化モリブデン(MoS2)粒子等を機械力を用いて粉砕することにより、容易に調製することができる。
〔上記金属基材は、中心線平均粗さ(Ra)が、0.2〜0.6μmの範囲である〕の限定理由
潤滑被膜を形成させる金属基材表面(下地)の中心線平均粗さ(Ra)が、0.2〜0.6μmの範囲に限定して基材表面の平滑度を高めたことにより、その上に形成した潤滑被膜もこれを反映して高い平滑度が確保され、潤滑被膜の中心線平均粗さ(Ra)を減少させ、摩擦係数μおよび摩耗量を低減することができる。
本発明の摺動用被覆構造は、前記の特定の中心線平均粗さ(Ra)を有する金属基材表面(下地)上に、ポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂と二硫化モリブデン粒子とから成り、潤滑被膜中の耐熱性樹脂の重量百分率が52〜84wt%であり、二硫化モリブデン粒子の重量百分率が48〜16wt%であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した前記二硫化モリブデンの平均粒子径が、0.7〜2.7μmの範囲であるような潤滑被膜を形成させることにより得ることができる。
該金属基材はその表面(下地)の中心線平均粗さ(Ra)が、0.2〜0.6μmの範囲であれば、その種類や形状についていかなる限定もされるものではなく、本発明の摺動用被覆構造を形成させる摺動部材の種類に応じて適宜選択することができる。特に、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、クロム、チタン等から選択される1種類以上の金属を含む金属基材であることが好ましく、これらを含む合金からなる金属基材であっても良い。さらに、所望であればアルカリ脱脂等の表面処理を行なった金属基材であっても良い。
本発明の摺動用被覆構造にかかる潤滑被膜は、該潤滑被膜を構成する成分が重量百分率で52〜84wt%のポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂と48〜16wt%の二硫化モリブデン粒子とから実質的に成り、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した前記二硫化モリブデンの平均粒子径が、0.7〜2.7μmの範囲にある潤滑被覆組成物を硬化させてなることを特徴とするものである。
ここで、前記の「潤滑被膜を形成する成分」は、前記ポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂および二硫化モリブデン粒子等の不揮発性成分であって、硬化前にこれらの成分を分散させるための溶媒を含まない。
ポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂は潤滑被膜を形成する結合剤であり、耐熱性に優れる潤滑被膜を形成する。該耐熱性樹脂は実質的にポリアミドイミド樹脂のみからなることが好ましいが、所望により任意の1種類または2種類以上の他の耐熱性樹脂を含む混合物であってもよい。他の耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、フェノール樹脂又はエポキシ樹脂からなる群から選択される耐熱性樹脂の1種類または2種類以上を好適に用いることができる。ポリアミドイミド樹脂と他の耐熱性樹脂の混合比は重量部で100:0〜80:20の範囲にあることが好ましく、混合比が100:0、すなわち、耐熱性樹脂が実質的にポリアミドイミド樹脂のみからなることが最も好ましい。また、該耐熱性樹脂は有機溶媒に溶解した形態で前記潤滑被覆組成物に配合することが好ましい。該有機溶媒の種類および、耐熱性樹脂の濃度は任意であるが、有機溶媒は揮発性の非プロトン系極性溶剤類等であることが好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂は10〜50wt%の濃度で有機溶媒に分散させた状態で部材上に塗布して潤滑被膜を形成させることが好ましく、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を選択することが、得られる潤滑被膜の均一性の点から特に好ましい。
本発明の摺動用被覆構造を形成するために用いる潤滑被覆組成物は、前記のポリアミドイミド樹脂および粒子径が0.7〜2.7μmの範囲である二硫化モリブデンを所定の量調合し、適宜の有機溶剤を溶媒とし、機械力を用いて均一に攪拌・混合することにより調製することができる。なお、該組成物の製造時に、ポリアミドイミド樹脂は予め有機溶剤中に溶解した形態で潤滑被覆組成物に配合することが好ましい。
該潤滑被覆組成物の調製に供される有機溶剤としては、揮発性の非プロトン系極性溶剤類等が好適に用いられる。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルクロロホルム、トリクロロエチレン、トリクロロトリフルオロエタン等の有機ハロゲン化合物類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メチルイソピロリドン(MIP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)が例示され、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が特に好ましく使用できる。また、これら有機溶剤は単独あるいは混合して使用することができる。
該潤滑被覆組成物を調製するための機械力を得るための装置、均一に攪拌・混合するために必要な処理時間は、該潤滑被覆組成物の製造量、工程に応じて適宜選択することができ、溶解・分散に用いられる装置として、ニーダー、ディゾルバー、ミキサー、高速ディスパーザー、サンドミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ダイノミル、GPミル、ホモジナイザー、超音波分散機、ビーズミル、バンバリーミキサー、石臼式ミルが例示できる。これらの装置は単独あるいは組み合わせて使用することができる。ニーダー等の装置により、0.5〜3時間の攪拌・混合処理を行うことが特に好ましい。
なお、本発明の摺動用被覆構造を構成する潤滑被膜は、ポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂と二硫化モリブデン粒子とからなるものである。一方、潤滑被膜を該形成するために用いる潤滑被覆組成物は、本発明の目的を損なわない範囲において、保存安定性や被覆適性等改善のための添加剤(分散剤、沈澱防止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤等)を適量添加することができる。また、これらの添加剤が得られた潤滑被膜全体質量に対して0〜5wt%の範囲内で残存することを妨げない。しかし、粒子径が3.0μmをこえる固体潤滑剤等の粒子成分(特に粒子径が3.0μmをこえるグラファイトからなる固体潤滑剤)を添加した場合、該摺動部材被覆組成物から形成される樹脂被覆層の表面粗さが増加し、摩擦係数の増加や摩耗量の増加という問題が発生する。このため、かかる大粒子径の成分の添加は本発明の技術的効果を損なう場合があり、本発明の潤滑被覆組成物に配合することができない。
本発明の摺動用被覆構造を形成するために用いる潤滑被覆組成物は、金属基材表面に塗工して硬化させることにより、該基材表面に潤滑被膜を形成することができる。金属基材表面への塗工は、刷毛塗り、スプレー塗布、ロール塗布、スクリーン印刷による塗布、ナイフコーティング、パッド法による塗布または浸漬塗布等の公知の方法により行うことができ、工業的にはエアースプレーにより塗布することが好ましい。
本発明の摺動用被覆構造を形成するために用いる潤滑被覆組成物は、金属基材表面に塗工した後、加熱処理を行うことにより、組成物中の有機溶媒を除去し、金属基材表面に潤滑被膜を形成することができる。本実施の形態に係る潤滑被膜を形成する条件は、100〜280℃で60〜240分間加熱処理することが好適であり、150〜200℃で加熱処理を行うことが好ましい。さらに、本実施の形態に係る潤滑被膜を形成する際に、60〜100℃で5〜120分間して前記有機溶媒を除去した後、さらに100〜280℃で60〜240分間加熱処理して潤滑被膜を形成することができる。
本実施の形態に係る潤滑被膜の膜厚は任意であるが、4〜15μmとするのが好ましく、4〜12μmとすることが特に好ましい。潤滑被膜の膜厚が4〜15μmの範囲にあるとき、潤滑被膜と基材の密着性が高い摺動用被覆構造を得ることができる。
以下、実施例および比較例を示して本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、下記実施の形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
本実施例等において、二硫化モリブデン粒子等の固体潤滑剤の平均粒子径の測定は、以下に示す機器および測定条件により、レーザー回折散乱式粒度分布測定法で体積累積平均粒子径(D50)を測定することにより行なった。
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置:モデルLS−230(ベックマンコールター社製)
測定値:体積累積平均粒子径(D50
測定方法:PIDS(偏光散乱強度差計測)
分散媒:キシレン
サンプル濃度:0.5wt%
[固体潤滑剤の平均粒子径の測定条件]
測定用サンプルとして、各固体潤滑剤のキシレン分散液(0.5wt%濃度)を調製した。
室温下、上記測定用サンプルをレーザー回折散乱式粒度分布測定装置:モデルLS−230のフローセル内に循環させ、固体潤滑剤サンプルの体積累積平均粒子径(D50)を測定した。
〔試験例1〕
以下に示す方法により、アルミニウム基材の表面にポリアミドイミド樹脂(PAI)と二硫化モリブデン(MoS2)とから成る潤滑被膜を備えた試験板を作成した。また、各表面粗さRaは、JIS B0601−1994の中心線平均粗さ(Ra)の測定方法に準じて測定した。
[潤滑被膜を備えた試験板の作成]
アルカリ脱脂したAC8Bアルミニウム坂(表面粗さRa 0.2μm)表面に、表1に示す潤滑被膜を形成する各潤滑被覆組成物をナイフコーティングし、80℃×30分にて乾燥した後、180℃×90分によるの条件で該アルミニウム基材上に潤滑被膜を形成させることにより試験板を作成した。該潤滑被膜の厚さは13μmであった。
表1に示すように、潤滑被膜の組成および潤滑被膜を構成する二硫化モリブデン粒子の粒子径を種々に変えた。基材表面は研削により表面粗さRa 0.4μmに揃えた。ただし、サンプルNo.3は研削後さらにラッピング仕上げを施して表面粗さRa 0.2μmとした。
なお、表1中、PAIはポリアミドイミド樹脂を表す。
Figure 0004767234
このようにして作製した各試験板サンプルについて、以下に示す荷重往復動試験を行なった。試験結果を表1に示す。
[荷重往復動試験]
作成した試験板の表面にエンジンオイル5W−20を1.0mg塗布し、ローラーをセットし、以下の条件で荷重往復動を行なうことにより、該試験板の摩擦係数(μ)を測定した。
<軽荷重往復軌試験の試験条件>
荷重:9.8N、29.4N
往復勤速度:120cpm
ストローク:100mm
繰了:7200サイクル
試験温度:25℃(室温)
オイル:浸漬または塗布
試験ローラー:φ7mmローラー
表1に示したように、本発明の被膜組成(PAI:MoS2=52:48〜84:16)の範囲内であり、二硫化モリブデン(MoS2)の粒子径が0.7〜2.7μmの範囲であるサンプルNo.1、2、3、5は、摩擦係数(μ)値が0.025〜0.033の範囲内であり、その他のサンプルに比して、0.040以下の低い摩擦係数(μ)の値を実現していた。
これに対して、被膜組成または二硫化モリブデン(MoS2)の粒子径の少なくともいずれか一方が本発明の範囲外であるサンプルNo.4、6、7、8、9は、摩擦係数(μ)が0.046〜0.075の範囲内であり、0.040以下の低い摩擦係数(μ)の値を実現できなかった。
なお、表1中に示した各サンプルの潤滑被膜の表面粗さRaは、被膜を構成する二硫化モリブデン(MoS2)の粒子径と金属基材(下地)の表面粗さRaとの複合した結果であろうと考えられる。本発明の範囲内のサンプルNo.1、2、3、5は潤滑被膜の表面粗さRaが0.14〜0.21(μm)と小さい値であるのに対して、被膜組成または二硫化モリブデン(MoS2)の粒子径の少なくともいずれか一方が本発明の範囲外であるサンプルNo.4、6、7、8、9は被膜表面粗さRaが0.53〜1.85(μm)と非常に大きい値となっており、被膜の表面粗さRaと摩擦係数(μ)の間に強い相関性が認められた。
〔試験例2〕
試験例1のサンプルNo.2と同じ被膜組成および二硫化モリブデン(MoS2)の粒子径を有する潤滑被膜を有し、基材の表面粗さRaを表2に示す通り、0.2〜1.6(μm)の範囲で種々に変えた試験板を試験例1同様の方法により作成した。これらのサンプルについて、試験例1と同様の方法で、該試験板の摩擦係数(μ)を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0004767234
表2に示すように、試験した範囲全体に亘って、基材の表面粗さRaが大きくなるに従って摩擦係数(μ)は増加し、Raが0.4μmから0.8μmまで増大するのに伴い、摩擦係数(μ)が0.035から0.045に上昇している。この区間(Ra=0.4〜0.8μm)でRaの増大と摩擦係数(μ)の上昇とを直線関係で近似すると、基材の表面粗さRaが0.6(μm)以下であれば、摩擦係数(μ)が0.040以下の低い値になると考えられる。
〔試験例3〕
試験例1のサンプルNo.2を、特許文献1に開示された従来技術に従って作製したサンプルと比較して、摩擦係数(μ)と摩耗量(μm)について試験した結果を表3に示す。
[摩耗量]
各摺動部材被覆組成物(試料)から形成される被覆樹脂層を有するアルミニウム合金AC8Bの試験板に対し、前記の摩擦係数測定(荷重往復動試験)の前後で、該被覆樹脂層の表面粗さRaを上記の方法により測定した。さらに、試験前後の表面粗さRaの差から該被覆樹脂層の摩耗量(μm)を測定した。
Figure 0004767234
表3の結果から、固体潤滑剤として粒子径が1.7μmである二硫化モリブデン(MoS2)を含む潤滑被膜を有する試験板(サンプルNo.2)は、固体潤滑剤として粒子径が9.4μmである二硫化モリブデン(MoS2)、グラファイトおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の3種類を含む潤滑被膜を有する試験板(サンプルNo.31)に比して、摩擦係数(μ)および摩耗量(μm)のいずれも大幅に低減されていた。
比較例のサンプルNo.32、33はそれぞれ固体潤滑剤としてグラファイトのみ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のみからなる潤滑被膜を有する試験板の特性値である。粒子径が1.7μmである二硫化モリブデン(MoS2)を含む潤滑被膜を有する試験板(サンプルNo.2)に比べて、グラファイトのみのサンプルNo.32は摩擦係数(μ)および摩耗量(μm)のいずれも大幅に劣る結果を得た。また、PTFEのみを用いたサンプルNo.33は摩擦係数(μ)の値はサンプルNo.2と同等であったが、摩耗量(μm)が大幅に劣った。
〔試験例4〕
試験例1のサンプルNo.2(本発明の被覆構造)および試験例3のサンプルNo.31(従来の被覆構造)と同じ基材表面粗さおよび同じ潤滑被膜をガソリンエンジンのピストンスカートに適用して実機試験を行ない、燃料消費率、モータリングフリクション、ファイヤリングフリクションを測定した結果を、それぞれ図1、図2、図3に示す。試験条件は下記のとおりであった。
<実機試験条件>
単気筒エンジンを使用し、排気量は約660cc/シリンダ、ボアー径94mm、ストローク95mm、エンジンオイルは0W−20を使用し、油水温は80℃±1℃に設定。燃費およびファイヤリングフリクション測定時のエンジン回転数は2000rpmとし、負荷を変化させて試験を行なった。
図示したように、本発明は従来技術に比べて、試験したトルク値またはエンジン回転数の全域において、燃料消費率、モータリングフリクション、ファイヤリングフリクションがいずれも大幅に向上していることが確認された。
本発明によれば、従来技術に比べて更に潤滑効果を高め、優れた摺動特性を有する摺動用被覆構造が提供される。
本発明の被覆構造と従来の被覆構造をそれぞれガソリンエンジンのピストンスカートに適用した際の燃料消費率とトルクとの関係を示すグラフ。 本発明の被覆構造と従来の被覆構造をそれぞれガソリンエンジンのピストンスカートに適用した際のモータリングフリクションとエンジン回転数との関係を示すグラフ。 本発明の被覆構造と従来の被覆構造をそれぞれガソリンエンジンのピストンスカートに適用した際のファイヤリングフリクションとトルクとの関係を示すグラフ。

Claims (1)

  1. 金属基材と、該金属基材の表面を覆う潤滑被膜とから成る摺動用被覆構造であって、
    上記潤滑被膜は、ポリアミドイミド樹脂を有する耐熱性樹脂と二硫化モリブデン粒子とから成り、上記潤滑被膜中の耐熱性樹脂の重量百分率が52〜84wt%であり、二硫化モリブデン粒子の重量百分率が48〜16wt%であり、かつ、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した前記二硫化モリブデン粒子の平均粒子径が0.7〜2.7μmの範囲であり、および
    上記金属基材は、その中心線平均粗さRaが0.2〜0.6μmの範囲であることを特徴とする摺動用被覆構造。
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