以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部41と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部41のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部41のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられおり、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図7中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図3乃至図5)、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、紙搬送方向という。)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部41は、各印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部41は、印字ヘッド12K,12C,12M,12Yごとに備えられたラインセンサ41K,41C,41M,41Yを含んだ構成であり、各ラインセンサ41K,41C,41M,41Yは各印字ヘッド間の紙搬送方向下流側に配置される。各ラインセンサは各印字ヘッド間中間位置よりも、読み取る色のセンサ側に寄せて置かれる態様が好ましい。
また、ラインセンサ(イメージセンサ)41K,41C,41M,41Yは、少なくとも各印字ヘッドによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサ41K,41C,41M,41Yは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサは白黒対応センサでもよく、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部41は、各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。吐出検出の詳細については後述する。
印字検出部41の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの、実技プリント)とテスト印字とは、搬送切り替え47により排紙経路が切り替えられ、分別される。実技プリントは集積トレイ26Aに搬送され、テスト印字はゴミトレイ26Bに排出される。
なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の集積トレイ26Aには、オーダ別に画像を集積するソーターが設けられる。
また、本インクジェット記録装置10には、印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに回復処理を施すメンテナンスユニット(回復ユニット)69を備えている。図1ではメンテナンスユニット69を印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの記録紙搬送方向下流側に図示しているが、メンテナンスユニット69は印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのインク吐出面直下の回復動作実行位置と退避位置との間を移動可能に構成されている。
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3(a)は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図である。また、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3中4−4線に沿う断面図)である。記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3及び図4に示したように、インク滴が吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
即ち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP)で直線状に配列されているものとして説明する。
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン又は1個の帯状を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン又は1個の帯状の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
即ち、用紙の幅方向に1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインを印字するようなノズル駆動を主走査といい、前記主走査で形成された1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインの印字を繰り返し行うことを副走査という。
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニット(回復ユニット)69は、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。もちろん、印字ヘッド50を移動させる移動機構を備え、印字ヘッド50がメンテナンスユニット69の位置へ移動するように構成してもよい。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル51面(インク吐出面)をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き)が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによってノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部41は、図1で説明したように、ラインセンサ41K,41C,41M,41Yを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80内の画像補正制御部87に提供する。
即ち、プリント制御部80では、印字検出部41の検出結果に基づいて吐出不良ノズルを検出し、該吐出不良ノズルには回復ユニット69を用いて回復動作を実行するようにノズル回復処理が施される。言い換えると、印字検出部41は吐出不良ノズルを検出する検出手段として機能する。
また、画像補正制御部87では、必要に応じて印字検出部41から得られる情報に基づいて、画像補正や吐出不良ノズル以外のノズルを用いて代用吐出を行う吐出補正などの印字ヘッド50に対する各種補正を行い、吐出不良ノズルの発生による画像劣化を抑制する。
なお、図1に示した例では、印字検出部41が印字面側に設けられており、ラインセンサ41K,41C,41M,41Yの近傍に配置された冷陰極管などの光源(不図示)によって印字面を照明し、その反射光をラインセンサで読み取る構成になっているが、本発明の実施に際しては、例えば、図8に示すように、記録紙16の搬送路を挟んでラインセンサ41K,41C,41M,41Yと光源92とを対向して配置し、記録紙16の裏側(インク打滴面の反対側)から光源92の光を照射して、その透過光量をラインセンサ41K,41C,41M,41Yによって読み取る構成も可能である。図8に示した透過型検出の構成は、反射型検出の構成と比較して、ラインセンサによって取り込む像のボケを少なくできるという利点がある。
ただし、透過型の場合、反射型よりもラインセンサへの入射光量が少なくなる。また、反射型においても入射光量が少ない場合が想定される。何れにしても、ラインセンサへの入射光量が少ないと十分な検出信号が得られなくなるが、ラインセンサによる画像読み取りの際に、紙送り方向の解像度は要求されないため、センサの電荷蓄積時間を長くするか、或いは読み取りデータを紙送り方向に積分することによって対応できる。
また、ラインセンサの読み取り開始タイミングは、センサとノズル間の距離及び記録紙16の搬送速度から決定される。
なお、本例では、ラインセンサ41K,41C,41M,41Yごとに光源92を備える態様を示したが、1つの光源を各ラインセンサの検出位置に移動させるように構成してもよいし、各ラインセンサ41K,41C,41M,41Yの検出位置に対応した大型の光源を用いてもよい。
〔第1実施形態〕
次に、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置における吐出不良ノズルの検出とその補正処理について説明する。
フルラインヘッド型のインクジェット記録装置では、紙搬送方向の1ラインは同じノズルによってインク滴が打滴されるため、不吐出、吐出方向異常、吐出量異常などの吐出不良ノズルがあると、その印字結果には紙搬送方向のスジ、ムラが発生することがある。スジ、ムラなどによる印字品質の低下を抑制するために、吐出不良ノズルを素早く検出し、吐出不良に応じた補正処理を行う必要がある。
まず、テスト印字による吐出不良ノズルの検出方法を説明する。
図9は、記録紙16にロール紙を用い、記録紙16のテスト印字領域16Aにテストパターン100および102を印字した例を示している。図9の矢印は、紙搬送方向を示している。
テストパターン100および102は色ごとに主走査方向に沿って1ラインを形成するように、全ノズルからインク滴が打滴される。テストパターンの打滴は、検出結果を素早く吐出不良対処手段にフィードバックするために、また、色間の誤検出を防止するために色ごとに打滴が行なわれる。
また、テストパターン100および102に適用されるドットサイズは最小ドット間隔以下のサイズである。ただし、最小ドットサイズのよりも大きいサイズのドットを印字し、打滴ノズルを変えながら、複数列に分けてテストパターンを印字する態様がある。これは、ドットの誤検出を防ぐ目的で行なわれ、隣接する各ドットが重ならないように各ドットが印字されなければならない。
ここで言う最小ドット間隔とは、図16(a) 、(b) に示すように、主走査方向では、主走査方向に並ぶように投影された投影ノズル列300のノズル間ピッチ (図16(a) 、(b) 中、Pmin )を示す。
例えば、図16(a) に示すように、最小ドット間隔Pmin の2倍の大きさ(直径D)のドット302、304、306、…、312、314、316、…、を印字する場合(直径D=2×Pmin のドットを印字する場合)、主走査方向に並ぶように投影した投影ノズル列300の隣接ノズル(例えば、ノズル321とノズル322等)に対して奇数ノズル(例えばノズル321、323、325)で主走査方向にドット302、304、306、…、を打滴し、次に、副走査方向に記録紙16を最小ドット間隔Pmin のn倍(但し、nは2以上の整数)だけ搬送したタイミングで、偶数ノズル(例えば、ノズル322、324、326)によって主走査方向にドット312、314、316、…、を打滴する。
言い換えると、副走査方向のドット列を形成する打滴では、1(=n−1)ノズルおきに同一タイミングで打滴を行い、主走査方向に2(=n)列のドット列を形成する。
また、図16(b) に示すように、最小ドット間隔Pmin の3倍の直径を有するドット342、344,346、…、352、354、356、…、362、364、366、…、を印字する場合、先ず、ノズル321、324、327、…、といったように2(=n−1)ノズルおきのノズルからドット342、344、346、…、を同時に(同一打滴タイミングで)打滴する。
次に、記録紙16を副走査方向に最小ドット間隔Pmin の3倍だけ搬送したタイミングにおいて、先の打滴に用いられたノズルと隣り合うノズル322、325、328、からドット352、354、356、…、を同時に打滴する。
更に、記録紙16を副走査方向に最小ドット間隔Pmin の3倍だけ搬送したタイミングにおいて、先の打滴に用いられたノズルと隣り合うノズル323、326、329、からドット362、364、366、…、を同時に打滴する。
即ち、最小ドット間隔Pmin のn倍(但し、nは2以上の整数)の直径Dを有するドットを打滴する場合には、副走査方向には、(n−1)ノズルおきに同一タイミングで打滴を行い、主走査方向にn列のドット列を形成する。したがって、各ドットを千鳥状(斜めに)に配置するようにインクの打滴を行うので、サイズが大きなドット径でも互いに重なり合うことがなく、誤検出を防止することができる。
更に、上記を拡張して言うと、最小ドット間隔のn倍の大きさのドット径で印字する場合、主走査方向に並ぶように投影したときに、隣接ノズルに対してn−1個ノズルおきに主走査方向にドットを打滴し、上記n=2の場合と同様に、副走査方向にnライン状のドットを千鳥状に打滴することで、大きなドット径でも互いに重なることがなく、誤検出を防止できる。
テストパターン100は4色すべての印字ヘッドからインク滴が打滴され、テストパターン102は4色のうち印字からインク滴が打滴されている。テストパターン102には3色の印字ヘッドからインク滴を打滴する態様を示したが、2色の印字ヘッドによりテストパターンを形成してもよいし、1色でもよい。4色から1乃至3色の選択は、ノズルの使用頻度などに合わせて任意に制御できるとよい。
即ち、頻繁に使用しているノズルは、ノズル近傍のインク粘度が増加する可能性は低く、また、ノズルから気泡が混入する可能性も低いので、吐出不良となる確率は低くなり、使用頻度の高い色のヘッドは、テスト(パターン)印字を省略するとインク消費量が低減できる。また、色ごとのヘッド単位ではなく、使用頻度の低いノズルのみテスト(パターン)印字を行うとより好ましい。この場合、テスト印字するべく使用頻度の低いノズルから打滴されるドットのみに対してラインセンサ41K,41C,41M,41Yで吐出、不吐出を判定する。
テストパターン102のように4色中3色だけテスト印字を行うと、インクの消費量を低減することができる。1回のテスト印字を2色や1色にすると、更にインク消費量を抑えることができる。
テスト印字領域16Aは、実技印字領域16Bの記録紙16搬送方向前方側に配置されてもよいし、後方側に配置されてもよい。また、図9に示すように、1つの実技印字領域16Bに1つ配置されてもよいし、複数の印字領域に1つ配置されてもよい。なお、符号16Cは記録紙16の縁部分余白領域を示している。
図10には縁なしプリント時のテストパターン104および106を示している。図9に示した縁部分余白領域16Cがない縁なしプリント時にも、図9と同様に、テストパターン104及び106をテスト印字領域16Aに印字可能である。
このように記録紙16に印字されたテストパターン100、102、104、106は、各印字ヘッドに備えられたラインセンサ41K,41C,41M,41Yによって色ごとに読み取られる。
ラインセンサ41K,41C,41M,41Yには、それぞれ照明手段(不図示)が備えられており、該照明手段によって照明光がテストパターン100に照射され、反射された光をラインセンサ41K,41C,41M,41Yの各受光素子によって読み取ることができる。照明手段は、ラインセンサと別に備えられていてもよいが、近隣に備えられることが好ましい。
また、読み取り開始タイミングはセンサとノズル間の距離及び記録紙16の搬送速度から決められる。
テストパターン100を1ドットずつ精度よく読み取るために、ラインセンサ41K,41C,41M,41Yの読み取り解像度は記録紙16上の印字解像度より十分に大きいことが好ましい。更に、ラインセンサ41K,41C,41M,41Yの読み取り解像度は印字解像度のm倍(mは正の整数)とする態様が好ましい。
ラインセンサ41K,41C,41M,41Yに、印字可能幅より小さい幅を持つセンサを、記録紙16の幅方向に走査(走行)させる走行手段により移動させながらテストパターン100を読み取るシャトルスキャン型を適用すれば、センサの読取解像度が印字解像度より十分に大きくない場合にも、センサの走査分解能を細かくすることによってセンサの読取解像度を補うことができる。
該走行手段は、図7に示したシステムコントローラ72等の制御によって制御されるモータ、該モータの駆動によりセンサを取り付けたキャリッジ走行(移動)させるボールネジや搬送ベルト等の搬送手段、該走行手段を指示するガイド部材等から構成される。
このようにしてラインセンサ41K,41C,41M,41Yによって、少なくともドットの位置、ドットの大きさが読み取られ、このドット情報は、図7に示したプリント制御部80に送られる。プリント制御部80では、すべてのドットについて本来打滴される計算上のドットと実際に打滴されたドットとが比較され、この比較結果に基づいて吐出不良ノズルが検出される。
吐出不良ノズルには、インク滴を吐出しない不吐出、インク滴の吐出量が本来の吐出量と異なる吐出量異常、インク滴の飛翔方向が本来の飛翔方向と異なる吐出方向異常がある。もちろん、これ以外の吐出不良を検出してもよい。
吐出不良ノズルが検出されると、吐出不良モードや吐出不良の程度に応じて、好ましい補正処理が施される。
補正処理には、次の印字において画像の補正が行なわれる画像補正、次の印字が停止され、該吐出不良(不吐出)ノズルには回復動作が施されるノズル回復動作などがある。
画像補正では他の正常なノズルから代用打滴する態様がある。代用打滴は、近接ノズルから本来打滴される大きさより大きいドット打滴する態様や、近接ノズルの吐出方向を変える態様がある。画像補正後には、適当な時期にノズルの回復動作が行なわれる態様が好ましい。
また、回復動作には、ノズル51内に詰ったインクをキャップ64に吐出させるつばはき、ノズル面の拭き取り清掃を行うワイピング、吸引ポンプ67により詰ったインクを吸い出すインク吸引などがある。所定の回復動作が終了すると、次の印字が可能になる。
吐出不良ノズルが検出された場合には、テスト印字直前の実技プリントにはスジ、ムラなどが起きている可能性がある。したがって、テスト印字直前の実技プリントは再印字されるように構成することが好ましい。再印字を適用する実技プリントはテスト印字の直前に限らず、前回のテスト印字後の任意の実技プリントまで適用可能である。
図11は、インクジェット記録装置10の吐出不良ノズル検出制御の流れを示したフローチャートである。
システムコントローラ72からプリント制御部80へプリント指示が送られると(ステップS10)、第1ヘッド12)から記録紙16のテスト印字領域16Aに黒色テストパターンが印字される(ステップS12)。ラインセンサ41Kによって黒色テストパターンが読み取られ(ステップS14)、読み取り結果の判定(印字判定)が行なわれる(ステップS16)。ステップS16において第1ヘッド内に吐出不良ノズルがあると判断されると(NO判定)、ドット補正が可能か否かが判断される(ステップS18)。
ドット補正が可能か否かの判断基準の一例は、主走査方向に並ぶように投影されたノズル配列において、吐出異常ノズルが2個以下であればドット補正を可能と判断する。吐出異常ノズルが3個以上連続して存在すると、吐出異常ノズルに隣接する正常ノズルにより打滴されるドット径を大きくすることで代替打滴をすることが非常に困難になる。吐出異常ノズルが2個以下であれば、隣接する正常ノズルのドット径を大きくすることで代替打滴をすることが比較的容易である。
ステップS18では、不吐出ノズルであるか、吐出量異常や吐出方向異常ノズルであるかが判断され、ドット補正動作が不可能(不吐出ノズル)と判断されると(NO判定)、第2ヘッド(印字ヘッド12C)、第3ヘッド(印字ヘッド12M)、第4ヘッド(印字ヘッド12Y)においてテスト印字のみが実行され、ヘッドごとにテストパターンが読み取られ、各ヘッド内の吐出不良ノズルが判断される(ステップS20)。
ステップS20が終了すると、記録紙16は紙搬送方向に送られ、カッター48によってテスト印字領域16Aがカットされ(ステップS22)、搬送切り替え47により搬送方向がゴミトレイ26B側に切り替えられ(ステップS24)、切り取られたテスト印字領域16Aはゴミトレイ26Bに収納される(ステップS28)。
各ヘッド内のノズルにおいて吐出不良ノズルと判断されたノズルには、前述した回復動作が施され(ステップS28)、ステップS30に進む。
ステップS30において、再印字をするか否かが判断され、再印字を行なわない場合には(NO判定)、ステップS48に進み、次の印字があるか否かが判断される。
また、ステップS30において再印字を行う場合には(YES判定)、再印字が実行され(ステップS32)、ステップS48に進む。
ステップS48では、後続の印字データがない場合には(NO判定)、該プリントジョブが終了され(ステップS31)、後続のプリントデータが送られている場合には(YES判定)、ステップS12に進み、次のプリントを実行する。
一方、ステップS18において、補正動作が可能と判断された場合にはプリント制御部80において補正計算が行なわれ(ステップS34)、第1ヘッドによる黒の印字が行なわれる(ステップS36)。
また、ステップS16において、第1ヘッドに吐出不良ノズルと判断されたノズルがない場合には(YES判定)、第1ヘッドによる黒の印字が実行される(ステップS36)。
続いて、第2ヘッドのテスト印字が行なわれる(ステップS38)。以降、第1ヘッドにおける制御と同様の制御が、第3ヘッド、第4ヘッドにおいて行われる。
なお、図11のフローチャートには省略されているが、ステップS38における第2のテスト印字で補正が不可能と判断された場合には、ステップS20に相当するように、第3ヘッド以降のテスト印字の実施と判断へ進む。
第4ヘッドによりシアンの印字が実行されると(ステップS40)、実技プリントが終了し、記録紙16は紙搬送方向に送られ、カッター48により所定の大きさにカットされる(ステップS42)。このとき、搬送切り替え47が集積トレイ26A側に切り替えられ(ステップS44)、集積トレイ26Aには実技プリントが排出される(ステップS46)。
ノズルの回復動作を行なった後、再度テスト印字からの工程を実行するように構成したが、ノズルの回復動作が行われた場合には、テスト印字を行なわず実技プリントを実行するように構成してもよい。
図4に示したアクチュエータ58にピエゾ圧電素子を用いた態様では、ドットの大きさをインク滴の吐出量により段階的に変えることができる。小滴が吐出できれば、大滴も吐出できるので、小滴だけを検出すればよい。ただし、この場合、ラインセンサが高分解能(高密度)でなければならない。
一方、大滴で判断する場合には、ドットが重ならないようにテストパターン102を構成する必要があるが、この場合にはラインセンサは高分解能でなくともよい。
本実施形態では読み取り手段であるラインセンサ41K,41C,41M,41Yを各色に対応した印字ヘッドごとに備えたが、2色以上の読み取りを共通のラインセンサで行なってもよい。この場合、各印字ヘッドとラインセンサ41K,41C,41M,41Yとの間隔が画像間の距離より短い場合には、印字停止、再印字、ノズル回復動作は可能であるが、ドット(画像)補正はできない。
本実施形態ではテスト印字を行なって吐出不良ノズルを検出する態様を示したが、実技プリントを読み取り、吐出不良ノズルを検出する態様も可能である。
実技プリントを読み取る場合には、印字検出部41の読み取りセンサには複数色(RGB)のラインセンサを適用する。黒(K)の検出は、RGB全センサの出力平均値を使い、シアン(C)の検出には、Kが本来打滴されていない領域を対象としてRセンサの出力を使用する。更に、マゼンダ(M)の検出にはK及びCが本来打滴されない領域を対象としてGセンサの出力を使用する。黄色(Y)の検出には、K、C、及びMとが本来打滴されない領域を対象としてBセンサの出力を使用する。
KインクはRGB各センサにほぼ同一の出力変化を与える。したがって、これらの平均値を利用して最初に処理を行うことで正確な検出が可能になる。また、色材は通常、短波長側に副吸収を持つので、CインクはRのところに吸収を持つとともに、これよりも短波長側、即ちGやBの領域に吸収がでる。つまり、CインクはMインク及びYインクの検出に影響を与える。したがって、かかる影響を排除すべく、影響範囲の広い順に(即ち、長波長側から順に)処理を行うことが好ましい。こうすることで、色間の処理を効率的に行うことができる。なお、上述した実技プリントの検出方法はあくまでも一例であり、他の検出方法を用いてもよい。
吐出不良ノズルが検出されると、上述したテスト印字を読み取る場合と同様の補正動作が行なわれる。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、各色の印字ヘッドには、その紙搬送方向の下流側にラインセンサ41K,41C,41M,41Yを備え、各色ごとに印字されたテストパターンを各色の印字ヘッドに備えられたラインセンサ41K,41C,41M,41Yによって読み取り、その読み取り結果から、吐出不良ノズルを判断する。吐出不良ノズルを直ちに判断することができ、後続のプリントに対して印字の変更指示を実施可能である。ドットの読み取り、吐出不良ノズルの検出、補正動作のよる一連の制御は各色ごとに行うことが可能である。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。
図12は、第2実施形態に係るインクジェット記録装置200の要部構成図である。なお、図12には、インクジェット記録装置200の要部が示されており、図12に示されていない部分は原則として図1と同一であり、図12中図1と同一又は類似する部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
インクジェット記録装置200は、インクの色ごとに印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、印字ヘッドごとに、各印字ヘッドのノズル面に対向する位置に設けられ、テスト印字時に各印字ヘッドからインク滴が打滴されるテストパターン印字媒体202(202K,202C,202M,202Y)と、テストパターン印字媒体202に打滴されたインク滴(ドット)を読み取るイメージセンサ204(204K,204C.204M,204Y)を含み、読み取った画像からノズルの吐出不良を判断する印字検出部41と、給紙部(給紙トレイ)18に充填された記録紙(カット紙)16を紙搬送方向下流側へ搬送させる(図12の左から右へ)搬送部210と、印画済みの記録物(プリント物)を収納する集積トレイ26Aと、を備えている。
また、図12には図示しないが、テストパターン印字媒体202に打滴されたインクを清掃する清掃手段(図13の符号220)がテストパターン印字媒体202に近接して備えられている。
記録紙16にはカット紙を適用したが、もちろんロール紙も適用可能である。ロール紙を用いた場合には、所定の位置にロール紙をカットするカッターが必要である。カッターの詳細は図1により説明したとおりである。
図12には、印字ヘッド12Cにおいてテスト印字が行われている様子を示している。インクジェット記録装置200では、各印字ヘッドにおいて、前の記録紙に対する印字が終了し、該記録紙が下流方向へ搬送され、次の記録紙が該ヘッド下へ到着するまでの間に、テスト印字が実行される。
即ち、実技プリントが終わり、次の実技プリントが実行される前にテスト印字が行なわれ、該テスト印字によりテストパターン印字媒体202Cに打滴されたドットを印字検出部41に備えられたイメージセンサ204Cにより読み取り、印字ヘッド12C内のノズルの吐出不良ノズルを検出することができる。もちろん、印字ヘッド12K,12M,12Yにおいても、同様のテスト印字が行なわれ、各印字ヘッド内の吐出不良ノズルが検出される。
イメージセンサ204にはラインセンサを用いてもよいし、エリアセンサを用いてもよい。また、複数のセンサを主走査方向に並べて構成してもよい。
搬送部210は、駆動ローラ212、214と、従動ローラ216、218と、を含んだ構成になっている。駆動ローラ212および駆動ローラ214は、図7に示したモータ88の駆動力により回動し、駆動ローラ212と駆動ローラ214とにより記録紙16を挟んだ状態で紙搬送方向下流側へ送り出す機構になっている。
従動ローラ216、218は、上流側駆動ローラ212A,214Aと下流側駆動ローラ212B,214Bとの間に配置され、記録紙16のたわみや搬送方向のずれが起こらないように記録紙16の搬送を補助するために設けられている。駆動ローラ212、214と同様に、従動ローラ216と218とにより記録紙16を挟みながら搬送する。
また、図12には図示していないが、搬送部210には、記録紙16の印字部12及び印字検出部41に対向する部分の平面性を確保するために、ガイドなどの支持部材が備えられている。
本実施形態では、搬送部210にローラ・ ニップ搬送を適用したが、ローラ・ニップ搬送以外のフィード搬送を適用してもよい。ただし、上述した記録紙16の平面性が確保される必要がある。また、記録紙16の両縁部を保持しながら搬送する態様や、インク滴を通過させるスリットを備えた搬送ベルトによるベルト搬送なども適用可能である。
図13を用いて、インクジェット記録装置200の印字検出部41の詳細を説明する。なお、各色の印字検出部は同一の構成である。
印字検出部41は、テスト印字時にインク滴が打滴されるテストパターン印字媒体202と、テストパターン印字媒体202に打滴されたインク滴によって形成されたドットを読み取るイメージセンサ204、テストパターン印字媒体202上のインク滴を除去する清掃手段220と、から構成されている。
イメージセンサ204には、テストパターンに照明光を照射する照明手段(不図示)が含まれている。なお、照明手段は印字ヘッド側に設けられていてもよい。
清掃手段220は、コンプレッサ222からエアーノズル223を介して送り出されるエアーにより飛ばされたテストパターン印字媒体202上のインク滴が集められるインク受け224と、エアーをコンプレッサ222に回収する機構に備えられたフィルタ226、チューブ228を含んだ構成になっている。なお、コンプレッサ222にエアーを回収する機構が必要なければ、フィルタ226およびチューブ228は不要である。
テストパターン印字媒体202には、その表面に打滴されたインクを裏面側のイメージセンサ204で読み取ることができるように、ガラスや樹脂などの透明部材や光の透過性がよい半透明部材が用いられる。また、イメージセンサ204による読み取り時にはテストパターン印字媒体202上にインク滴が定着し、清掃手段220による清掃時にはインク滴が容易に除去できる材質を用いることが好ましい。
本実施形態では、清掃手段220にはエアーによってテストパターン印字媒体202表面のインク滴を飛ばす態様を示したが、テストパターン印字媒体202表面をブレードなどにより拭き取る態様でもよい。
本実施形態における吐出不良ノズル検出制御は、前述した第1実施形態と同様の制御、処理が行なわれる。即ち、テストパターンの打滴制御、テストパターンの読み取り制御、イメージセンサ204の分解能、吐出不良ノズルの判断、補正動作は第1実施形態と同様であり、ここでの説明は省略する。
図14には、第2実施形態に係る印字検出部41の変形例を示している。本実施形態では、読取手段であるイメージセンサ204が、印字ヘッドと対向し、テストパターン印字媒体202の裏面側(印字ヘッドの反対側)に設けられた態様を示したが、イメージセンサ204は、テストパターン印字媒体202の紙搬送方向下流側(又は上流側)に備えてもよいし、紙搬送方向と略直交するようにテストパターン印字媒体202の側面側に備えてもよい。図14には、テストパターン印字媒体202の紙搬送方向下流側に備えた態様を示している。
本変形例では、テストパターン印字媒体202は、記録紙16の印刷面に平行な面240から角度θだけ傾けて設けられており、紙搬送方向下流側に備えられたイメージセンサ204によってテストパターン印字媒体202上に打滴されたインク滴を読み取ることができる。
また、テストパターン印字媒体202表面からインク滴が落ちないように角度θを設定する必要がある。好ましい角度θの範囲は5度から30度程度である。また、インク滴がテストパターン印字媒体202から落ちないように親インク性を強くすると、清掃時にインク滴がテストパターン印字媒体202から除去できなくなるので、テストパターン印字媒体202とインク滴の接触角は30度から150度程度が好ましい。なお、接触角は、インク滴の親水性の度合いを示し、接触角が大きいと親インク性が低いことを示し、接触角が小さいと親水性が高いことを示す。
テストパターン印字媒体202表面に二次元的に着弾したインク滴を、イメージセンサ204を用いて読み取る場合には、図15に示すように、打滴位置によってインク滴(ドット)248とイメージセンサ204との距離が異なりピントが合わないので、テストパターン印字媒体202とイメージセンサ204の間に光学補正手段(補正板)250を備える必要がある。
図15は、テストパターン印字媒体202、イメージセンサ204、光学補正手段250を印字ヘッド側から見た様子を示している。
テストパターン印字媒体202は、テスト印字時以外は所定の待避位置に移動できるように、図示せぬ待避機構を備える態様が好ましい。該待避機構は支持ガイド、キャリッジなどの機構系をモータやベルトなどから構成される駆動系により動作させ、CPUやメモリなどから構成される制御系により駆動系の制御を行なうように構成すればよい。
本実施形態では、テストパターン印字媒体202は各色ヘッドにそれぞれ備える態様を例示したが、これらを一体構成とすることも可能である。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置200では、印字ヘッドの真下に印字検出部41を備え、実技プリント画像と実技プリント画像との間にテスト印字を行ない、吐出不良ノズを検出することができる。テスト印字に記録紙16を使用しないので、記録紙16を無駄に消費しない。
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、検出用に打滴されるインク滴は1適でなくてもよく、読み取り精度を上げるために(S/N向上のために)、複数滴のインクを打滴してもよい。紙送りを停止することのできない第1実施形態に示したインクジェット記録装置10では、打滴結果はだ円状になり、印字ヘッドと読み取り手段(イメージセンサ)204との位置が変らない第2実施形態に示したインクジェット記録装置200では、その印字結果は隣の液滴との間隔が重ならない範囲で1点状になる。
本実施形態ではピエゾ素子を用いてインク吐出制御を行うピエゾ型のインクジェット記録装置を例示したが、本発明はバブル方式のインクジェット記録装置にも適用可能である。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、16…記録紙、22,210…搬送部、24…印字検出部、41,204…イメージセンサ、50…印字ヘッド、51…ノズル、202…テストパターン印字媒体、220…清掃手段、206…システムコントローラ、208…プリント制御部