JP2005042828A - 無段変速機を備えた車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 無段変速機における挟圧力を、その無段変速機に連結されたクラッチの動作状態を適正に反映させて制御することにより、車両の燃費や無段変速機の耐久性を向上させることのできる制御装置を提供する。
【解決手段】 トルク伝達部材を挟み付ける挟圧力に応じて伝達トルク容量が変化する無段変速機に、係合圧に応じて伝達トルク容量が変化するクラッチが直列に連結されるとともに、前記挟圧力を、車両が走行している路面状態に応じて補正する無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記クラッチの動作状態を判断する動作状態判断手段(ステップS101,S104,S202,S204)と、前記動作状態判断手段により判断した動作状態に基づいて、前記路面状態に応じて補正する補正圧を求める路面対応補正圧導出手段と(ステップS105,S201)を備えている。
【選択図】 図1
【解決手段】 トルク伝達部材を挟み付ける挟圧力に応じて伝達トルク容量が変化する無段変速機に、係合圧に応じて伝達トルク容量が変化するクラッチが直列に連結されるとともに、前記挟圧力を、車両が走行している路面状態に応じて補正する無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記クラッチの動作状態を判断する動作状態判断手段(ステップS101,S104,S202,S204)と、前記動作状態判断手段により判断した動作状態に基づいて、前記路面状態に応じて補正する補正圧を求める路面対応補正圧導出手段と(ステップS105,S201)を備えている。
【選択図】 図1
Description
この発明は、挟圧力に応じてトルク容量の変化する無段変速機を備えた車両の制御装置に関するものである。
クラッチやブレーキあるいはベルト式無段変速機、さらにはトラクションオイルのせん断力を利用してトルクを伝達するトラクション式無段変速機などの動力伝達装置が従来知られている。その伝達トルク容量は、エンジンなどの動力源から出力されるトルクを必要十分に伝達できる容量である必要がある。しかしながら、伝達トルク容量を増大させると、垂直荷重もしくは押圧力を発生させるために多くの動力を消費して燃費が悪化したり、あるいは動力の伝達効率が低下して燃費が悪化し、さらには装置の耐久性が低下するなどの不都合がある。したがって、無段変速機などの動力伝達装置の伝達トルク容量あるいはその伝達トルク容量を決定する挟圧力は、入力トルクを必要十分に伝達でき、かつ、ベルトやパワーローラなどのトルクの伝達を媒介する部材に滑りが生じない範囲で可及的に小さいことが好ましい。
しかしながら、無段変速機が搭載されている車両の駆動状態や路面の状態などは必ずしも一定ではなく、例えば、車両が悪路などを走行している際には、駆動輪がグリップ力を瞬間的に失って空転(スリップ)し、その直後に接地してグリップ力を回復するなどの事態が生じることがある。このような場合、エンジンなどの動力源から駆動輪に到る駆動系統に大きな慣性力が作用する。また、車両の走行中には、アクセルペダルを急激かつ大きく踏み込む急加速操作や、ブレーキペダルを急激かつ大きく踏み込む急制動操作などがおこなわれることがあり、このような場合にも、駆動系統に大きなトルクが作用する。そのため、無段変速機における上述した伝達トルク容量あるいは挟圧力を一定に維持していたのでは、無段変速機に作用するトルクに相対的に過大になって、無段変速機における回転部材とトルク伝達部材との間で過剰な滑りが生じることがある。
このような事態を回避するために、動力源の出力するトルクに加えて、駆動輪側から作用するトルクをも考慮して伝達トルク容量あるいは挟圧力を設定する必要がある。その場合、路面状態や駆動状態などの影響により無段変速機に滑りが生じないように、ある程度の安全率を見込んで挟圧力を設定することが知られている。すなわち、無段変速機での挟圧力は、無段変速機での滑りを生じさせずに入力トルクを伝達できる最低の圧力である理論挟圧力(基本挟圧力)に、その滑りに対する所定の安全率を乗じて算出される安全率相当分と、路面状態や駆動状態の変化によって発生する、路面入力や動力源の慣性力などの影響を見込んで設定される外乱対応相当分(路面入力対応分もしくは悪路対応分)とが付加されて設定される。
その一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された発明では、いわゆる悪路対応分の挟圧力を、動力源側から入力されるトルクに相当するベルト挟圧力に付加するように構成されている。すなわち、車両が駆動状態か被駆動状態かを判定し、駆動状態と被駆動状態とのそれぞれに応じた安全率を設定するように構成されている。また、特許文献2には、無段変速機の滑りに対応した制御をおこなうことのできる検出装置の一例が記載されている。
特開2001−330126号公報(段落番号0017〜0019)
特開平4−285361号公報(段落番号0041、図10)
上述した特許文献1に記載された装置では、車両が悪路を走行する場合などの、路面状態の変化による駆動輪側からの逆入力を、ベルト挟圧力の設定時に考慮される安全率に反映させて、ベルト挟圧力が設定される。ところが、無段変速機のベルト挟圧力は、上述した路面状態や車両の駆動状態などのほかに、一般に無段変速機と動力源との間に配置されトルクコンバータに備えられる、ロックアップクラッチの動作状態によっても影響を受ける場合がある。例えば、ロックアップクラッチが完全に係合している場合と解放している場合とでは、トルクコンバータによるトルクの伝達容量が異なり、またロックアップダンパのばねにより、無段変速機に対するエンジンによる慣性力の作用の仕方が相違する。そのため、路面状態に応じて駆動輪側(あるいは出力側)から入力されるトルクに応じて無段変速機に作用するトルクが、ロックアップクラッチの動作状態によって異なることになる。その結果、路面状態を見込んだ安全率をもってベルト挟圧力を設定しても、無段変速機での滑りが生じたり、あるいは反対に挟圧力が過剰になる可能性がある。
このように、無段変速機の挟圧力が、トルクコンバータのロックアップクラッチの動作状態の変化によって影響を受けるにも関わらず、一律に無段変速機の滑りに対する安全率を設定するとすれば、挟圧力を不必要に増大させて動力損失が生じ、車両の燃費が低下したり、また反対に、挟圧力が不足してベルト滑りが生じ易くなり、無段変速機の耐久性が低下する可能性がある。
しかしながら、上記の特許文献1および特許文献2に記載された発明では、トルクコンバータのロックアップクラッチの動作状態による影響に関しての考慮はされておらず、この点で未だ改良の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、無段変速機における挟圧力を、その無段変速機に連結されたクラッチの動作状態を適正に反映させて制御することにより、車両の燃費や無段変速機の耐久性を向上させることのできる無段変速機を備えた車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
この発明は、上記の目的を達成するために、無段変速機に連結されたクラッチの動作状態を判断し、その動作状態に応じた適切な挟圧力低下制御をおこなうように構成したことを特徴とするものである。すなわち、請求項1の発明は、トルク伝達部材を挟み付ける挟圧力に応じて伝達トルク容量が変化する無段変速機に、係合圧に応じて伝達トルク容量が変化するクラッチが直列に連結されるとともに、前記挟圧力を、車両が走行している路面状態に応じて補正する無段変速機を備えた車両の制御装置において、前記クラッチの動作状態を判断する動作状態判断手段と、前記路面状態に応じて補正される前記挟圧力の補正圧を、前記動作状態判断手段により判断した動作状態に基づいて求める路面対応補正圧導出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記路面対応補正圧導出手段は、前記クラッチの動作状態が変化の過渡状態にある場合に、変化前の動作状態に対応する前記補正圧と変化後の動作状態に対応する前記補正圧とのうち、大きい方を選択して前記補正圧を求めるように構成されていることを特徴とする制御装置である。
請求項1の発明によれば、無段変速機の挟圧力低下制御が実行され、その挟圧力が車両が走行している路面状態に応じて補正される場合に、無段変速機に直列に連結されているクラッチの動作状態を判断して、その動作状態に基づいて、挟圧力の補正圧を求めることができる。そのため、クラッチの動作状態を適切に反映させた挟圧力低下制御を実行することができ、挟圧力が過剰になることを回避して、動力損失を低減し、車両の燃費を向上させることができる。
また、請求項2の発明によれば、トルクコンバータに備えられたロックアップクラッチなどの、クラッチの動作状態が変化の過渡状態であると判断された場合に、クラッチの動作状態の変化前における挟圧力の補正圧と、クラッチの動作状態の変化後における挟圧力の補正圧との大小が比較され、それらのうち大きい方、すなわち滑りに対する余裕が大きくなる方の補正圧が選択されて、挟圧力の補正圧を設定することができる。そのため、クラッチの動作状態が変化の過渡状態にある場合においても、適切な挟圧力の補正圧を設定することができ、無段変速機での過剰な滑りを防止もしくは抑制し、耐久性を向上させることができる。
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする動力源および無段変速機を含む駆動系統の一例を説明すると、図5は、ベルト式無段変速機1を含む駆動系統の一例を模式的に示しており、その無段変速機1は、前後進切換機構2およびロックアップクラッチ3付きの流体伝動機構4を介して動力源5に連結されている。
その動力源5は、内燃機関、あるいは内燃機関と電動機、もしくは電動機などによって構成されている。なお、以下の説明では、動力源5をエンジン5と記す。また、流体伝動機構4は、例えば従来のトルクコンバータと同様の構成であって、エンジン5によって回転させられるポンプインペラとこれに対向させて配置したタービンランナと、これらの間に配置したステータとを有し、ポンプインペラで発生させたフルードの螺旋流をタービンランナに供給することよりタービンランナを回転させ、トルクを伝達するように構成されている。
このような流体を介したトルクの伝達では、ポンプインペラとタービンランナとの間に不可避的な滑りが生じ、これが動力伝達効率の低下要因となるので、ポンプインペラなどの入力側の部材とタービンランナなどの出力側の部材とを直接連結するロックアップクラッチ3が設けられている。このロックアップクラッチ3は、油圧によって制御するように構成され、完全係合状態および完全解放状態、ならびにこれらの中間の状態であるスリップ状態に制御され、さらにそのスリップ回転数を適宜に制御できるようになっている。また、このロックアップクラッチ3と流体伝動機構4との間には、ロックアップクラッチ3が完全係合された場合に、伝達されるトルクの変動によって生じる振動や衝撃を緩和するためにダンパ(ロックアップダンパ)3’が設けられている。
前後進切換機構2は、エンジン5の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図5に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、サンギヤ6と同心円上にリングギヤ7が配置され、これらのサンギヤ6とリングギヤ7との間に、サンギヤ6に噛合したピニオンギヤ8とそのピニオンギヤ8およびリングギヤ7に噛合した他のピニオンギヤ9とが配置され、これらのピニオンギヤ8,9がキャリヤ10によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ6とキャリヤ10と)を一体的に連結する前進用クラッチ11が設けられ、またリングギヤ7を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ12が設けられている。
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリ13と従動プーリ14とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ15,16によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリ13,14の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリ13,14に巻掛けたベルト17の巻掛け半径(プーリ13,14の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリ13が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ10に連結されている。
なお、従動プーリ14における油圧アクチュエータ16には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリ14における各シーブがベルト17を挟み付けることにより、ベルト17に張力が付与され、各プーリ13,14とベルト17との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。これに対して駆動プーリ13における油圧アクチュエータ15には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径)に設定するようになっている。
上記の従動プーリ14が、ギヤ対18を介してディファレンシャル19に連結され、このディファレンシャル19から駆動輪20にトルクを出力するようになっている。したがって上記の駆動機構では、エンジン5と駆動輪20との間に、ロックアップクラッチ3と無段変速機1とが直列に配列されている。
上記の無段変速機1およびエンジン5を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、無段変速機1に対する入力回転数(前記タービンランナーの回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー21、駆動プーリ13の回転数を検出して信号を出力する入力回転数センサー22、従動プーリ14の回転数を検出して信号を出力する出力回転数センサー23、ベルト挟圧力を設定するための従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16の圧力を検出する油圧センサー24が設けられている。また、特には図示しないが、アクセルペダルの踏み込み量を検出して信号を出力するアクセル開度センサー、スロットルバルブの開度を検出して信号を出力するスロットル開度センサー、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に信号を出力するブレーキセンサーなどが設けられている。
上記の前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12の係合・解放の制御、および前記ベルト17の挟圧力の制御、ならびに変速比の制御、さらにはロックアップクラッチ3の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)25が設けられている。この電子制御装置25は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定、ロックアップクラッチ3の係合・解放ならびにスリップ回転数などの制御を実行するように構成されている。
ここで、変速機用電子制御装置25に入力されているデータ(信号)の例を示すと、無段変速機1の入力回転数(入力回転速度)Ninの信号、無段変速機1の出力回転数(出力回転速度)No の信号が、それぞれに対応するセンサから入力されている。また、エンジン5を制御するエンジン用電子制御装置(E/G−ECU)26からは、エンジン回転数Ne の信号、エンジン(E/G)負荷の信号、スロットル開度信号、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度信号などが入力されている。
無段変速機1によれば、入力回転数であるエンジン回転数を無段階に(言い換えれば、連続的に)制御できるので、これを搭載した車両の燃費を向上できる。例えば、アクセル開度などによって表される要求駆動量と車速とに基づいて目標駆動力が求められ、その目標駆動力を得るために必要な目標出力が目標駆動力と車速とに基づいて求められ、その目標出力を最適燃費で得るためのエンジン回転数が予め用意したマップに基づいて求められ、そして、そのエンジン回転数となるように変速比が制御される。
そのような燃費向上の利点を損なわないために、無段変速機1における動力の伝達効率が良好な状態に制御される。具体的には、無段変速機1のトルク容量すなわちベルト挟圧力が、エンジントルクに基づいて決まる目標トルクを伝達でき、かつベルト17の滑りが生じない範囲で可及的に低いベルト挟圧力になるよう制御される。例えば、加減速が比較的頻繁におこなわれたり、路面の凹凸もしくは起伏がある悪路を走行している場合などのいわゆる非定常走行状態では、ベルト挟圧力が、無段変速機1を制御する油圧系統における全体の元圧となるライン圧もしくはその補正圧程度の相対的に高い圧力に設定する。
これに対して平坦路をある程度以上の車速で定速走行しているなどの定常走行状態もしくはこれに準ずる準定常走行状態では、滑りを生じずに入力トルクを伝達できる最低の圧力すなわち限界挟圧力を検出するために、ベルト挟圧力が徐々に低下される。そしてそのベルト挟圧力が、検出された限界挟圧力に所定の安全率もしくは滑りに対する余裕伝達トルクを設定する圧力を加えたベルト挟圧力に設定される。
車両が走行している際に、エンジン5が出力するトルクや駆動輪20から入力されるトルクあるいは変速比などは、走行路の勾配や凹凸、加減速操作などに基づいて多様に変化する。そして、そのような変化に応じて、エンジン5と無段変速機1とを連結している流体伝動機構4に備えられたロックアップクラッチ3の動作状態も、完全係合状態、完全解放状態、あるいはトルクヒューズ制御状態などと変化する。この時、ロックアップクラッチ3の動作状態の変化に伴って、無段変速機1の入力側の回転数が変化し、それに起因してエンジン5による慣性トルクが発生したり、無段変速機1に作用するその慣性トルクの影響が変化する場合がある。
例えば、ロックアップクラッチ3が完全解放状態の場合は、エンジン5と無段変速機1との連結状態が完全に一体ではなく、路面状態の変化などに起因して駆動輪20側の回転速度に変化が生じても、流体伝動機構4で滑りが生じることによって、その変化がエンジン5まで伝わりにくくなり、したがって出力側の回転変化に対してエンジン5による慣性トルクが作用しにくくなっている。
一方、ロックアップクラッチ3が完全係合状態の場合は、エンジン5と無段変速機1とがほぼ一体となって回転するため、駆動輪20側の回転速度が変化すると、それに対応してエンジン5の回転速度も変化しようとするが、エンジン5の慣性質量が大きいため、無段変速機1にエンジン5による大きな慣性トルクが作用する。そして、この慣性トルクが無段変速機1の入力トルクに対する反力となり、無段変速機1で滑りが発生する場合がある。
このようなロックアップクラッチ3の動作状態の変化に伴って発生する慣性トルクなどの外乱に対応して、無段変速機1のベルト挟圧力を設定すれば、それらの外乱による無段変速機1での過剰な滑りを防ぐために、ベルト挟圧力を不必要に高くする事態を回避することができる。そこで、この発明に係る制御装置は、流体伝動機構4に設けられたロックアップクラッチ3の動作状態に応じて(もしくは基づいて)ベルト挟圧力を制御するように構成されている。その制御の具体例を以下に説明する。
図1はその一例を示すフローチャートである。図1において、先ず、ロックアップクラッチ3の動作状態が検出される(ステップS101)。この発明に係る制御例において判断されるロックアップクラッチ3の動作状態には、ロックアップクラッチ3が完全係合されている「ロックアップON」の状態と、ロックアップクラッチ3が完全解放されている「ロックアップOFF」の状態と、ロックアップクラッチ3がトルクヒューズとして機能している「トルクヒューズ制御」の状態とがある。
この流体伝動機構4に備えられたロックアップクラッチ3は、一般に、低速走行時や急加速時などの、流体伝動機構4がトルク増幅をおこなうトルクコンバータとして作用する、いわゆるコンバータ領域においては解放されて、高速安定走行時などの、流体伝動機構4が係合状態の流体クラッチとして作用し、トルク増幅作用を必要としない、いわゆるカップリング領域においては係合され、エンジン5からの出力を直接無段変速1へ伝達し、流体伝動機構4での動力損失を防止する役目を果たしている。
また、このロックアップクラッチ3は、無段変速機1に対するいわゆるトルクヒューズとして機能させるトルクヒューズ制御をおこなうように構成されている。トルクヒューズ制御とは、ロックアップクラッチ3によって、無段変速機1に作用するトルクを制限する制御であり、駆動系統に作用するトルクが増大した場合に、例えば無段変速機1よりも先にロックアップクラッチ3に滑りが生じるように、ロックアップクラッチ3の伝達トルク容量すなわち係合圧を設定する制御である。言い換えれば、滑りが生じるまでの伝達トルク容量の余裕を、無段変速機1におけるよりもロックアップクラッチ3で小さくなるように設定する制御である。
ステップS101でロックアップクラッチ3の動作状態が検出されると、続いて、無段変速機1の入力軸回転速度Ninと、無段変速機1の出力軸回転速度Nout とが計測されて、そのNinとNout とから無段変速機1の変速比γが算出される(ステップS102)。続いて、限界挟圧力を検出するため挟圧力が低下される挟圧力低下制御が実行中であるか否かが判断される(ステップS103)。挟圧力低下制御が実行中でないことによって、ステップS103で否定的に判断された場合は、ステップS108へ進み、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、無段変速機1が挟圧力低下制御中であることによって、ステップS103で肯定的に判断された場合は、ステップS104へ進み、ロックアップクラッチ3の動作状態が、変化の過渡状態であるか否かが判断される。ロックアップクラッチ3の動作状態が変化の過渡状態ではないことによって、ステップS104で否定的に判断された場合は、ステップS105へ進み、そのロックアップクラッチ3の動作状態と、前述のステップS102で算出した無段変速機1の変速比γとに基づいて、悪路対応分の補正油圧が算出される。そして、ステップS105で算出された悪路対応分の補正油圧をもとに補正された、低下させる低下挟圧力が算出され(ステップS106)、その後、このルーチンを一旦終了する。
上記のステップS105およびS106で算出される、悪路対応分の補正油圧および低下挟圧力は、それぞれ、次の計算式によって求められる。
悪路対応分の補正油圧=(悪路対応分SF−1)×理論挟圧力
低下挟圧力=理論挟圧力+悪路対応分の補正油圧
−(遠心油圧+リターンスプリング相当油圧)
理論挟圧力=正入力トルク・cosα/(2・μ・Rin・Ap )
ここで、αは駆動プーリ13、従動プーリ14でのベルト17の侠角、Rinは駆動プーリ13におけるベルト17の掛かり径(巻掛け半径)、Ap は油圧アクチュエータ16のピストン面積である。また、無段変速機1の滑りに対する安全率である悪路対応分SFは、例えば、図3にその一例を示す、変速比γによる悪路対応分SFの設定を示す概略図(マップ)と、図4にその一例を示す、ロックアップ状態による悪路対応分SFの設定を示す概略図(マップ)などを重畳的に用いることにより定めることができる。
低下挟圧力=理論挟圧力+悪路対応分の補正油圧
−(遠心油圧+リターンスプリング相当油圧)
理論挟圧力=正入力トルク・cosα/(2・μ・Rin・Ap )
ここで、αは駆動プーリ13、従動プーリ14でのベルト17の侠角、Rinは駆動プーリ13におけるベルト17の掛かり径(巻掛け半径)、Ap は油圧アクチュエータ16のピストン面積である。また、無段変速機1の滑りに対する安全率である悪路対応分SFは、例えば、図3にその一例を示す、変速比γによる悪路対応分SFの設定を示す概略図(マップ)と、図4にその一例を示す、ロックアップ状態による悪路対応分SFの設定を示す概略図(マップ)などを重畳的に用いることにより定めることができる。
一方、ロックアップクラッチ3の動作状態が変化の過渡状態であることによって、前述のステップS104で肯定的に判断された場合は、ステップS107へ進み、図2のフローチャートにその一例を示している、「所定制御1」が実行される。図2においてその制御例を説明すると、先ず、ステップS201で、無段変速機1の変速比γに応じた各悪路対応分の補正油圧が算出される。すなわち、前述のステップS105と同様に図3および図4に示すマップなどから、ロックアップクラッチ3の動作状態が「ロックアップON」の場合、および「ロックアップOFF」の場合における変速比γに応じた各悪路対応分SFが設定され、悪路対応分の補正油圧がそれぞれ算出される。
次に、ロックアップクラッチ3の動作状態が、「ロックアップOFF」から「ロックアップON」、もしくは「ロックアップON」から「ロックアップOFF」への過渡状態であるか否かが判断される(ステップS202)。ロックアップクラッチ3の動作状態が、「ロックアップOFF」から「ロックアップON」への過渡状態ではなく、かつ、「ロックアップON」から「ロックアップOFF」への過渡状態ではないことによって、ステップS202で否定的に判断された場合は、ステップS204へ進み、ロックアップクラッチ3の動作状態が、「トルクヒューズ制御」から「ロックアップON」、もしくは「ロックアップON」から「トルクヒューズ制御」への過渡状態であるか否かが判断される。
ロックアップクラッチ3の動作状態が、「トルクヒューズ制御」から「ロックアップON」、もしくは「ロックアップON」から「トルクヒューズ制御」への過渡状態であることによって、ステップS204で肯定的に判断された場合は、ステップS205へ進み、前述のステップS201で算出された、ロックアップクラッチ3の動作状態が「ロックアップON」時の悪路対応分の補正油圧が選択される。そして、その後、図1に示すフローチャートのステップS106へ戻る。
一方、ロックアップクラッチ3の動作状態が、「トルクヒューズ制御」から「ロックアップON」への過渡状態ではなく、かつ、「ロックアップON」から「トルクヒューズ制御」への過渡状態ではないことによって、ステップS204で否定的に判断された場合は、ステップS206へ進み、ステップS201で算出された、ロックアップクラッチ3の動作状態が「ロックアップOFF」時の悪路対応分の補正油圧が選択される。そして、その後、この図2に示す所定制御1のルーチンを一旦終了して、図1に示すフローチャートのステップS106へ戻る。
これに対して、ロックアップクラッチ3の動作状態が、「ロックアップOFF」から「ロックアップON」、もしくは「ロックアップON」から「ロックアップOFF」への過渡状態であることによって、前述のステップS202で肯定的に判断された場合は、ステップS203へ進み、ステップS201で算出された、ロックアップクラッチ3の動作状態が「ロックアップOFF」の場合と「ロックアップON」の場合の悪路対応分の補正油圧の大きさが比較され、そのうち大きい方の悪路対応分の補正油圧が選択される。
これは、図4のロックアップ状態による悪路対応分SFの設定を示す概略図(マップ)に例示されているように、ロックアップクラッチ3の動作状態が「ロックアップON」の場合と「ロックアップOFF」の場合とにおけるそれぞれの悪路対応分SFは、無段変速機1のセカンダリ軸トルクの大きさによって、それらの大小関係が異なっているからである。具体的には、セカンダリ軸トルクが小さい領域、いわゆるコンバータ領域においては、「ロックアップON」状態の悪路対応分SFの方が、「ロックアップOFF」状態の悪路対応分SFよりも大きく設定されているのに対して、セカンダリ軸トルクが大きい領域、いわゆるカップリング領域では、「ロックアップOFF」状態の悪路対応分SFの方が、「ロックアップON」状態の悪路対応分SFよりも大きく設定されていて、それらの大小が逆転しているからである。
したがって、このステップS203のように制御されることによって、ロックアップクラッチ3の動作状態が、「ロックアップOFF」から「ロックアップON」、もしくは「ロックアップON」から「ロックアップOFF」への過渡状態にある場合においても、低下挟圧力を設定するために求められる悪路対応分の補正油圧が、「ロックアップOFF」時の悪路対応分の補正油圧と「ロックアップON」時の悪路対応分の補正油圧とのうちで、その時のセカンダリ軸トルクの大小に関わらず常に大きい方を選択して求められる。言い換えると、悪路対応分の補正油圧が、常に安全率が大きい側、すなわち無段変速機1での滑りに対する余裕が大きくなる安全側の悪路対応分の補正油圧を選択して設定されるため、無段変速機1での過剰なベルト滑りを防止もしくは抑制することができる。
ステップS203で悪路対応分の補正油圧が選択されると、この図2に示す所定制御1のルーチンを一旦終了して、図1に示すフローチャートのステップS106へ戻る。
このように、上記の図1および図2に示す制御を実行するよう構成したこの発明に係る制御装置によれば、無段変速機1の挟圧力が、車両が走行している路面状態に応じて挟圧力が補正されて挟圧力低下制御が実行される場合、ロックアップクラッチ3の動作状態が判断され、その判断された動作状態に応じて(もしくは基づいて)適切な悪路対応分SFが設定され、悪路対応分の補正油圧が算出される。その結果、ロックアップクラッチ3の動作状態が変化しても、その動作状態を適切に反映させた挟圧力低下制御を実行することができ、挟圧力を可及的に低下させ、挟圧力が過剰になることを回避して車両の燃費を向上させることができる。また、ロックアップクラッチ3の動作状態が変化の過渡状態にある場合においても、悪路対応分の補正油圧が、常に無段変速機1での滑りに対する余裕が大きくなる安全側の悪路対応分の補正油圧を選択して設定されるため、無段変速機1での過剰なベルト滑りを防止もしくは抑制し、無段変速機の耐久性を向上させることができる。
ここで上記の各具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS101,S104,S202,S204の各機能的手段が、この請求項1の発明における動作状態判断手段に相当し、ステップS105,S201の各機能的手段が、この請求項1の発明における路面対応補正圧導出手段に相当する。また、ステップS203の機能的手段が、この請求項2の発明における、請求項1の路面対応補正圧導出手段に付加された機能的手段に相当する。
なお、この発明は上記の具体例に限定されないのであって、ベルト式無段変速機以外にトラクション式の無段変速機を対象とする制御装置にも適用することができる。またこの発明におけるクラッチは、無段変速機に対して直列に配列され、係合・解放を含むトルク容量の可変なクラッチであればよく、したがってロックアップクラッチ以外に、発進時にスリップ状態を経て完全に係合させられるいわゆる発進クラッチであってもよく、要は、トルクの伝達状態を変更できるクラッチであればよい。さらに、それらのクラッチは、ダンパを備えていてもよく、この発明における動作状態判断手段はそのダンパの特性をも伝達トルク容量などを判断するものとしてもよい。
また、上記の具体例ではロックアップクラッチ3の動作状態が変化の過渡状態にある場合に、低下挟圧力を設定するために求められる悪路対応分の補正油圧を、図4の「ロックアップOFF」時および「ロックアップON」時の悪路対応SFを示す線図より大きい方を選択して求められる値としたが、これに替えて、上記の「ロックアップOFF」時および「ロックアップON」時の悪路対応SFを示す線図より、それらの大きい方の値を選択して予め定めたマップを用いて求められる値としてもよい。
さらに、上記の具体例では、悪路対応分SFや、ロックアップクラッチ3の各動作状態あるいはその変化の過渡状態における悪路対応分の補正油圧を、図3,図4に一例を示すようなマップなどを用いて求められる値としたが、例えば図3,図4を併せて一つの図に表した三次元的なマップを用いて求められる値としてもよく、あるいは、車両の走行状態、車両が走行している路面状態、ロックアップクラッチ3の動作状態などに基づいて演算され求められる値としてもよい。またさらに、上記の具体例では、悪路対応分の補正油圧を、マップを用いて求められた悪路対応分SFなどのパラメータから算出される値としたが、この発明における悪路対応分の補正油圧は、演算して求める以外に、マップなどから求めた値であってもよい。
1…無段変速機、 3…ロックアップクラッチ、 5…エンジン(動力源)、13…駆動プーリ、 14…従動プーリ、 15,16…油圧アクチュエータ、 17…ベルト、 20…駆動輪、 25…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)。
Claims (2)
- トルク伝達部材を挟み付ける挟圧力に応じて伝達トルク容量が変化する無段変速機に、係合圧に応じて伝達トルク容量が変化するクラッチが直列に連結されるとともに、前記挟圧力を、車両が走行している路面状態に応じて補正する無段変速機を備えた車両の制御装置において、
前記クラッチの動作状態を判断する動作状態判断手段と、
前記路面状態に応じて補正される前記挟圧力の補正圧を、前記動作状態判断手段により判断した動作状態に基づいて求める路面対応補正圧導出手段と
を備えていることを特徴とする無段変速機を備えた車両の制御装置。 - 前記路面対応補正圧導出手段は、前記クラッチの動作状態が変化の過渡状態にある場合に、変化前の動作状態に対応する前記補正圧と変化後の動作状態に対応する前記補正圧とのうち、大きい方を選択して前記補正圧を求めるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機を備えた車両の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003277867A JP2005042828A (ja) | 2003-07-22 | 2003-07-22 | 無段変速機を備えた車両の制御装置 |
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ID=34264456
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009090931A (ja) * | 2007-10-11 | 2009-04-30 | Honda Motor Co Ltd | 車両の制御装置 |
US10571021B2 (en) | 2017-11-13 | 2020-02-25 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Control device of vehicle power transmission device |
-
2003
- 2003-07-22 JP JP2003277867A patent/JP2005042828A/ja active Pending
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