JP2005017380A - 光ファイバケーブルおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】損失特性、側圧特性と光ファイバ心線の口出し性を向上せしめる光ファイバケーブルおよびその製造法を提供することにある。
【解決手段】単数または複数の光ファイバ心線3の周囲に第1シース5で一括し、この周囲に第2シース7で一括してなる光ファイバケーブル1において、前記第1シース5が発泡性の樹脂、前記第2シース7が非発泡性の樹脂からなり、第2シース7の融点は第1シース5の融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内であり、かつ前記第1シース5と前記第2シース7とが接合されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】単数または複数の光ファイバ心線3の周囲に第1シース5で一括し、この周囲に第2シース7で一括してなる光ファイバケーブル1において、前記第1シース5が発泡性の樹脂、前記第2シース7が非発泡性の樹脂からなり、第2シース7の融点は第1シース5の融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内であり、かつ前記第1シース5と前記第2シース7とが接合されていることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、損失特性を向上せしめるようにした光ファイバケーブルおよびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバケーブルに要求される重要な項目として、側圧印加時に損失増が生じにくいケーブルであることが挙げられる。この要求条件を満たす構造としての光ファイバケーブル101は、図6に示されているように、複数の光ファイバ心線103と光エレメント用抗張力体105(テンションメンバ)とが引き揃えられた状態で、その周囲に発泡樹脂からなる第1シース107で一括シースし、この第1シース107の外周に第2シース109でシースした構造が有効な手段の一つとして考えられる。このとき、第1シース107は光ファイバ心線105に対してクッションの役目を果たしている。前記第2シース109の外周部の一部にノッチ部111が形成されている。
【0003】
また、発泡樹脂からなる第1シース107としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂またはポリウレタンなどの熱硬化樹脂に発泡剤を混入し押出時の温度で発泡させる化学発泡を利用したものや押出の際にガスを注入するガス発泡を利用したものなどが好適に使用される。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−83385号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した光ファイバケーブル101でも良好な機能を達成できるが、シースが第1シース107と第2シース109による2層構造になっていると共に第1シース107と第2シース109とは接着されていないため、作業者がノッチ部111より引き裂いて口出しを行った際に第1シース107が残ってしまうため、再度第1シース107の引き裂き作業を行わなければならず、口出しが困難という欠点がある。
【0006】
この発明は上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、損失特性、側圧特性と光ファイバ心線の口出し性を向上せしめる光ファイバケーブルおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1によるこの発明の光ファイバケーブルは、単数または複数の光ファイバ心線の周囲に第1シースで一括し、この周囲に第2シースで一括してなる光ファイバケーブルにおいて、前記第1シースが発泡性の樹脂、前記第2シースが非発泡性の樹脂からなり、第2シースの融点は第1シースの融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内であり、かつ前記第1シースと前記第2シースとが接合されていることを特徴とするものである。
【0008】
したがって、前記第1シースに発泡性の樹脂を使用することにより側圧特性が向上される。かつ前記第1シースと前記第2シースとが接合されているから、第2シースを引き裂くと第1シースも同時に引き裂かれるので、口出し性が向上されると共に良好な損失特性が得られる。また、第2シースの融点は第1シースの融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内の樹脂であるから、第1シースと第2シースとが容易に接合される。
【0009】
請求項2によるこの発明の光ファイバケーブルは、請求項1記載の光ファイバケーブルにおいて、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
したがって、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されているから、ノッチ部から第2シースの引き裂きが容易に行われるので、第1シースと第2シースとが一緒に引き裂けて容易に口出しされる。
【0011】
請求項3によるこの発明の光ファイバケーブルは、請求項1または2記載の光ファイバケーブルにおいて、前記第1シースの発泡度が10〜60%であるを特徴とするものである。
【0012】
したがって、前記第1シースの発泡度を10〜60%としたことにより、外部応力に対する緩衝作用が十分で、損失特性、側圧特性および光ファイバ心線の口出し性のすべての特性が良好である。
【0013】
請求項4によるこの発明の光ファイバケーブルの製造方法は、単数または複数の光ファイバ心線の周囲に発泡性の樹脂からなる第1シースで一括する工程と、この第1シースの周囲に非発泡性の樹脂からなり、前記第1シースの融点よりも高い融点を有し、かつ融点の差が30℃以内の第2シースで一括する工程とからなり、前記第1シースと前記第2シースとが接合されて、光ファイバケーブルを製造することを特徴とするものである。
【0014】
したがって、単数または複数の光ファイバ心線の周囲に発泡性の樹脂からなる第1シースで一括シースされているから、側圧特性が向上される。かつ第1シースの周囲に非発泡性の樹脂からなる第2シースで一括すると共に前記第1シースと前記第2シースとが接合されているから、第2シースを引き裂くと第1シースも同時に引き裂かれるので、口出し性が向上されると共に良好な損失特性が得られる。
【0015】
また、第2シースの融点は第1シースの融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内の樹脂であるから、第1シースと第2シースとが容易に接合される。
【0016】
請求項5によるこの発明の光ファイバケーブルの製造方法は、請求項4記載の光ファイバケーブルの製造方法において、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
したがって、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されているから、ノッチ部から第2シースの引き裂きが容易に行われる。
【0018】
請求項6によるこの発明の光ファイバケーブルの製造方法は、請求項4または5記載の光ファイバケーブルにおいて、前記第1シースの発泡度が10〜60%であることを特徴とするものである。
【0019】
したがって、前記第1シースの発泡度を10〜60%としたことにより、外部応力に対する緩衝作用が十分で、損失特性、側圧特性および光ファイバ心線の口出し性のすべての特性が良好である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1を参照するに、この実施の形態に係る光ファイバケーブル1としては、単数又は複数例えば4心の0.25mmφの光ファイバ心線3を備えており、この複数の光ファイバ心線3を断面が円形形状の発泡樹脂からなる第1シース5で一括シースし、さらに、この第1シース5を断面が円形形状の非発泡樹脂からなる第2シース7で一括シースされている。また、前記第1シース5の近傍における第2シース7内には平行で両脇(図1において上下)に配置された例えば鋼線又はFRP、ガラス繊維、アラミド繊維からなる抗張力体9が設けられている。
【0022】
図2には図1に代わる他の実施の形態が示されている。図2において図1における部品と同じ部品には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
図2において、前記第2シース7内に抗張力体9が設けられず、光ファイバ心線3にガラス繊維、アラミド繊維などの抗張力繊維11が引き揃えた状態で第1シース5の内側に設けられている。
【0024】
図3には図1に代わる他の実施の形態が示されている。図3において図1における部品と同じ部品には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
図3において、前記第2シース7内に抗張力体9が設けられず、光ファイバ心線3に例えば鋼線又はFRPからなる抗張力体9が引き揃えた状態で第1シース5の内側に設けられている。しかも、前記第2シース7の外周の一部にはノッチ部13が形成されている。
【0026】
図4には図1に代わる他の実施の形態が示されている。図4において図1における部品と同じ部品には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】
図4において、図1における0.25mmφの光ファイバ心線3の代わりに例えば6心の光ファイバテープ心線15が設けられ、この光ファイバテープ心線15の周囲にガラス繊維、アラミド繊維などの抗張力繊維11が設けられ、これらを断面が矩形形状の発泡樹脂からなる第1シース5で一括シースし、さらに、この第1シース5を断面が矩形形状の非発泡樹脂からなる第2シース7で一括シースされている。
【0028】
上記図1〜図4において、第1シース5の外周と第2シース7の内周とが接合(接着)されている。前記第1シース5は上述したごとく発泡樹脂からなっていて、この発泡樹脂としては例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂に、発泡剤を混入し押出時の温度で発泡させる化学発泡を利用したものや押出の際にガスを注入するガス発泡を利用したものなどが好適に使用される。
【0029】
前記第2シース7は前記第1シース5よりも融点が高く、かつ両者の融点の差が30℃以内の樹脂を用いるのが有効である。樹脂は同じ材料でも分子鎖の分岐状態あるいは分子量を変えたもの、あるいは異なる材料の樹脂を用いたり、あるいはまたベース樹脂にカーボン、シリカなど無機フィラーを混入させる等により得ることができる。
【0030】
すなわち、ケーブルシース工程で、その熱で第1シース5(ユニットシース)の表面を融解し、第2シース7(ケーブルシース)と接着させる。ここで、第2シース7(ケーブルシース)に比べ第1シース5(ユニットシース)の融点が同じか高すぎると、ケーブルシース時に第1シース5(ユニットシース)が溶解しないあるいは溶解しにくくなるため、接着が達成されない。一方、低すぎると第1シース5(ユニットシース)が多量に溶解してしまい発泡構造が壊れてしまうため、側圧特性の効果がなくなってしまうばかりか、場合によっては損失特性が劣化する可能性がある。実験の結果、第1シースは第2シースよりも融点が低く、かつ、両者の融点の差がおおよそ30℃以内の樹脂を用い、しかも、第2シース7(ケーブルシース)の樹脂をシースする際に、第1シース5(ユニットシース)をその融点以上の温度で加熱せしめることにより、良好な融着性を得ることがわかった。
【0031】
材料の組み合わせとしては、例えば第1シースが低密度ポリエチレン(融点100℃)の場合は第2シースは直鎖状低密度ポリエチレン(融点120℃)、第1シースが直鎖状ポリエチレン(融点120℃)の場合は、第2シースは高密度ポリエチレン(融点130℃)、第1シースが高密度ポリエチレン(融点130℃)の場合は第2シースはポリプロピレン(融点160℃)の組合わせが有効である。
【0032】
上記構成により、前記第1シース5に発泡性の樹脂を使用することにより側圧特性を向上させることができる。かつ前記第1シース5と前記第2シース7とが接合(接着)されているから、第2シース7を引き裂くと第1シース5も同時に引き裂かれるので、口出し性を向上させることができると共に良好な損失特性を得ることができる。図3に示されているように、第2シース7の外周の一部にノッチ部13が形成されていると、第2シース7を容易に引き裂くことができる。また、第1シース5の融点は第2シース7よりも低く、両者の融点の差を30℃以内の樹脂とすることにより、容易に接合(接着)せしめることができる。
【0033】
つぎに、光ファイバケーブルの製造方法について説明する。
【0034】
図5(a),(b)には光ファイバケーブル1の製造ラインが示されている。例えば、図3に示す光ファイバケーブル1を製造する場合は、図5(a)に示す工程において例えば鋼線又はFRP、ガラス繊維、アラミド繊維からなる抗張力体9が複数のボビン17から引き出されると共に光ファイバ心線3がボビン19から引き出されて集合し、押出し機の押出しヘッド21に送り込まれると共に例えば発泡性ポリエチレンP1が供給されると、この押出しヘッド21で第1シース5が前記光ファイバ心線3と抗張力体9の周囲に被覆されボビン23に巻き取られる。ついで、図5(b)に示す工程で押出し機の押出しヘッド25に送り込まれると共に例えば第1シース5より融点の高いポリエチレンP2が供給されると、この押出しヘッド25では第2シース7(ケーブルシース)が一体被覆されて図3に示されているような光ファイバケーブル1がボビン27に巻き取られて、光ファイバ1を得ることができる。そして、第2シース7には第2押出しヘッド25のニップル部においてノッチ部13が形成される。
【0035】
(実施例1)
図2に示すように4本のSM0.25mmφ素線からなる光ファイバ心線3と、アラミド繊維からなる抗張力繊維11を引きそろえ、発泡性の第1シース5をシースしたユニットを作製した。
【0036】
発泡性の第1シース5は低密度ポリエチレンに発泡剤を混入した材料を用いた。第1シース厚は0.5mmである。
【0037】
第2シース7には種々の融点の材料(種々の分子量を有するポリエチレンまたはポリプロピレ)を用い、第2シース7の厚さは1mm、外径は約4mmに仕上げた。
【0038】
表1に試作した光ファイバケーブル1の損失特性、側圧特性、心線口出し性、外観、製造性について調査した結果を示す。
【0039】
損失特性については○印はケーブル化後の損失が0.25dB/km(1.55μm)以下と良好なものであり、×印は0.25dB/km(1.55μm)を超え実用上問題のあるものである。側圧特性については○印は荷重50kg/100mm幅において損失増が0.1dB以下(1.55μm)と良好なものであり、×印は0.1dBを超え、実用上問題のあるものである。
【0040】
【表1】
試作例1〜11は第1シース5の発泡度を40%とし、第2シース7の融点を変化させた場合の結果である。
【0041】
試作例1〜3は第2シース7の融点が第1シース5の融点に等しいか低い場合で、第1シース5と第2シース7とが接合されておらず、第2シース7を引き裂こうとしても第1シース5を同時に引き裂くことができず口出し性に問題があった。
【0042】
試作例4〜9は第2シース7の融点が第1シース5の融点よりも高くその差が30℃以内の場合で、上記のすべての特性に問題はなかった。
【0043】
試作例10〜11は第2シース7の融点が第1シース5の融点より高くその差が30℃を超える場合で、発泡層が融けて第1シース5内面の表面状態が悪くなるため損失特性が悪くなり、発泡層が融けて外観が悪くなり、また、第1シース5の発泡層が融けてしまうため製造性にも問題がある。
【0044】
以上の結果から第2シース7の融点は第1シース5の融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内であることにより良好な特性が得られることが明らかになった。
【0045】
試作例12〜13は押出し温度を第2シース7の融点よりも40〜45℃高く設定した場合であるが、すべての特性に問題はなかった。
【0046】
試作例7、14〜22は第2シース7の融点を第1シース5の融点よりも20℃高くし、第1シース5の発泡度は0〜80%に変化させて試作した結果である。
【0047】
試作例14〜15は第1シース5の発泡度が0〜5%と10%未満の場合で側圧特性において0.3dBの損失が発生した。発泡度が10%未満であると外部応力に対する緩衝作用が不十分であり、側圧特性が低下してしまうためである。
【0048】
試作例16〜20は第1シース5の発泡度が10〜60%の場合で、すべての特性が良好であった。
【0049】
試作例21〜22は第1シース5の発泡度が70〜80%と60%を超える場合で、空隙部が多すぎるため均一な形状が得られないようになって製造が困難であり製造性に問題があった。
【0050】
以上の結果から第1シース5の発泡度は10〜60%が好適であることが明らかになった。
【0051】
(実施例2)
図3に示すように、4本のSM0.25mmφ素線からなる光ファイバ心線3と3本のFRPからなる抗張力体とを引きそろえ、発泡性の第1シース5をシースしたユニットを作製した。
【0052】
発泡性の第1シース5は高密度ポリエチレンに発泡剤を混入した材料を用いた。第1シース厚は0.5mmである。
【0053】
第2シース7には種々の融点の材料(種々の分子量を有するポリエチレンまたはポリプロピレ)を用い、第2シース7の厚さは1mm、外径は約4mmに仕上げた。
【0054】
表2に試作した光ファイバケーブルについて同様に損失特性、側圧特性、心線口出し性、外観、製造性について調査した結果を示す。
【0055】
損失特性については○印はケーブル化後の損失が0.25dB/km(1.55μm)以下と良好なものであり、×印は0.25dB/km(1.55μm)を超え実用上問題のあるものである。側圧特性については○印は荷重50kg/100mm幅において損失増が0.1dB以下(1.55μm)と良好なものであり、×印は0.1dBを超え、実用上問題のあるものである。
【0056】
【表2】
試作例23〜33は第1シース5の発泡度を40%とし、第2シース7の融点を変化させた場合の結果である。
【0057】
試作例23〜25は第2シース7の融点が第1シース5の融点に等しいか低い場合で、第1シース5と第2シース7とが接合されておらず、第2シース7を引き裂こうとしても第1シース5を同時に引き裂くことができず口出し性に問題があった。
【0058】
試作例26〜31は第2シース7の融点が第1シース5の融点よりも高くその差が30℃以内の場合で、上記のすべての特性に問題はなかった。
【0059】
試作例32〜33は第2シース7の融点が第1シース5の融点より高くその差が30度を超える場合で、発泡層が融けて第1シース5内面の表面状態が悪くなるため損失特性が悪くなり、発泡性が融けて外観が悪くなり、また、第1シース5の発泡層が融けてしまうため製造性にも問題がある。
【0060】
以上の結果から第2シース7の融点は第1シース5の融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内であることにより良好な特性が得られることが明らかになった。
【0061】
試作例29、34〜42は第2シース7の融点を第1シース5の融点よりも20℃高くし、第1シース5の発泡度は0〜80%に変化させて試作した結果である。
【0062】
試作例35〜36は第1シース5の発泡度が0〜5%と10%未満の場合で側圧特性において0.3dBの損失が発生した。発泡度が10%未満であると外部応力に対する緩衝作用が不十分であり、側圧特性が低下してしまうためである。
【0063】
試作例37〜40は第1シース5の発泡度が10〜60%の場合で、すべての特性が良好であった。
【0064】
試作例41〜42は第1シース5の発泡度が70〜80%と60%を超える場合で、空隙部が多すぎるため均一な形状が得られないようになって製造が困難であり製造性に問題があった。
【0065】
表2から第2シース7の融点は第1シース5の融点よりも高く、両者の差が30℃以内であることにより良好な特性が得られることが明らかになった。
【0066】
また、第1シース5の発泡度は10〜60%が好適であることが明らかになった。
【0067】
なお、第1シース5の発泡度が10〜60%の範囲であれば、第1シース5の肉厚は0.2mm以上において良好な損失特性、側圧特性、心線口出し性が得られる。また肉厚の上限は大きいほど良好な特性が得られるが、ケーブルの外径が大きくなりすぎるため、1.5mm程度までが好適である。したがって、発泡度は10〜60%、肉厚0.2〜1.5mm程度が好適である。
【0068】
なお、この発明は前述した実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことによりその他の態様で実施し得るものである。
【0069】
【発明の効果】
以上のごとき発明の実施の形態の説明から理解されるように、請求項1の発明によれば、前記第1シースに発泡性の樹脂を使用することにより、側圧特性を向上させることができる。かつ前記第1シースと前記第2シースとが接合されているから、第2シースを引き裂くと第1シースも同時に引き裂かれるので、口出し性を向上させることができると共に良好な損失特性を得ることができる。
【0070】
また、前記第1シースと前記第2シースとに同じ組成の材料を用い、かつ、両者の融点の差が30℃以内の樹脂であるから、第1シースと第2シースとを容易に接合することができる。
【0071】
請求項2の発明によれば、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されているから、ノッチ部から第2シースの引き裂きを容易に行うことができるので、第1シースと第2シースとが一緒に引き裂けて容易に口出しを行うことができる。
【0072】
請求項3の発明によれば、前記第1シースの発泡度を10〜60%としたことにより、外部応力に対する緩衝作用が十分で、損失特性、側圧特性および光ファイバ心線の口出し性のすべての特性を良好にすることができる。
【0073】
請求項4の発明によれば、単数または複数の光ファイバ心線の周囲に発泡性の樹脂からなる第1シースで一括シースされているから、側圧特性を向上させることができる。かつ第1シースの周囲に非発泡性の樹脂からなる第2シースで一括すると共に前記第1シースと前記第2シースとが接合されているから、第2シースを引き裂くと第1シースも同時に引き裂かれるので、口出し性を向上させることができると共に良好な損失特性を得ることができる。
【0074】
また、前記第1シースと前記第2シースとに同じ組成の材料を用い、かつ、両者の融点の差が30℃以内の樹脂であるから、第1シースと第2シースとを容易に接合することができる。
【0075】
請求項5の発明によれば、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されているから、ノッチ部から第2シースの引き裂きを容易に行うことができる。
【0076】
請求項6の発明によれば、前記第1シースの発泡度を10〜60%としたことにより、外部応力に対する緩衝作用が十分で、損失特性、側圧特性および光ファイバ心線の口出し性のすべての特性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。
【図2】図1に代わる別の光ファイバケーブルの断面図である。
【図3】図1に代わる別の光ファイバケーブルの断面図である。
【図4】図1に代わる別の光ファイバケーブルの断面図である。
【図5】(a),(b)は光ファイバケーブルを製造する製造ラインの第1、第2工程を示した図である。
【図6】光ファイバケーブルの断面図である。
【符号の説明】
1 光ファイバケーブル
3 光ファイバ心線
5 第1シース
7 第2シース
9 抗張力体
11 抗張力繊維
13 ノッチ部
15 光ファイバテープ心線
17、19、23、27 ボビン
21 第1押出しヘッド
25 第2押出しヘッド
【発明の属する技術分野】
この発明は、損失特性を向上せしめるようにした光ファイバケーブルおよびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバケーブルに要求される重要な項目として、側圧印加時に損失増が生じにくいケーブルであることが挙げられる。この要求条件を満たす構造としての光ファイバケーブル101は、図6に示されているように、複数の光ファイバ心線103と光エレメント用抗張力体105(テンションメンバ)とが引き揃えられた状態で、その周囲に発泡樹脂からなる第1シース107で一括シースし、この第1シース107の外周に第2シース109でシースした構造が有効な手段の一つとして考えられる。このとき、第1シース107は光ファイバ心線105に対してクッションの役目を果たしている。前記第2シース109の外周部の一部にノッチ部111が形成されている。
【0003】
また、発泡樹脂からなる第1シース107としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂またはポリウレタンなどの熱硬化樹脂に発泡剤を混入し押出時の温度で発泡させる化学発泡を利用したものや押出の際にガスを注入するガス発泡を利用したものなどが好適に使用される。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−83385号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した光ファイバケーブル101でも良好な機能を達成できるが、シースが第1シース107と第2シース109による2層構造になっていると共に第1シース107と第2シース109とは接着されていないため、作業者がノッチ部111より引き裂いて口出しを行った際に第1シース107が残ってしまうため、再度第1シース107の引き裂き作業を行わなければならず、口出しが困難という欠点がある。
【0006】
この発明は上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、損失特性、側圧特性と光ファイバ心線の口出し性を向上せしめる光ファイバケーブルおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1によるこの発明の光ファイバケーブルは、単数または複数の光ファイバ心線の周囲に第1シースで一括し、この周囲に第2シースで一括してなる光ファイバケーブルにおいて、前記第1シースが発泡性の樹脂、前記第2シースが非発泡性の樹脂からなり、第2シースの融点は第1シースの融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内であり、かつ前記第1シースと前記第2シースとが接合されていることを特徴とするものである。
【0008】
したがって、前記第1シースに発泡性の樹脂を使用することにより側圧特性が向上される。かつ前記第1シースと前記第2シースとが接合されているから、第2シースを引き裂くと第1シースも同時に引き裂かれるので、口出し性が向上されると共に良好な損失特性が得られる。また、第2シースの融点は第1シースの融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内の樹脂であるから、第1シースと第2シースとが容易に接合される。
【0009】
請求項2によるこの発明の光ファイバケーブルは、請求項1記載の光ファイバケーブルにおいて、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
したがって、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されているから、ノッチ部から第2シースの引き裂きが容易に行われるので、第1シースと第2シースとが一緒に引き裂けて容易に口出しされる。
【0011】
請求項3によるこの発明の光ファイバケーブルは、請求項1または2記載の光ファイバケーブルにおいて、前記第1シースの発泡度が10〜60%であるを特徴とするものである。
【0012】
したがって、前記第1シースの発泡度を10〜60%としたことにより、外部応力に対する緩衝作用が十分で、損失特性、側圧特性および光ファイバ心線の口出し性のすべての特性が良好である。
【0013】
請求項4によるこの発明の光ファイバケーブルの製造方法は、単数または複数の光ファイバ心線の周囲に発泡性の樹脂からなる第1シースで一括する工程と、この第1シースの周囲に非発泡性の樹脂からなり、前記第1シースの融点よりも高い融点を有し、かつ融点の差が30℃以内の第2シースで一括する工程とからなり、前記第1シースと前記第2シースとが接合されて、光ファイバケーブルを製造することを特徴とするものである。
【0014】
したがって、単数または複数の光ファイバ心線の周囲に発泡性の樹脂からなる第1シースで一括シースされているから、側圧特性が向上される。かつ第1シースの周囲に非発泡性の樹脂からなる第2シースで一括すると共に前記第1シースと前記第2シースとが接合されているから、第2シースを引き裂くと第1シースも同時に引き裂かれるので、口出し性が向上されると共に良好な損失特性が得られる。
【0015】
また、第2シースの融点は第1シースの融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内の樹脂であるから、第1シースと第2シースとが容易に接合される。
【0016】
請求項5によるこの発明の光ファイバケーブルの製造方法は、請求項4記載の光ファイバケーブルの製造方法において、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
したがって、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されているから、ノッチ部から第2シースの引き裂きが容易に行われる。
【0018】
請求項6によるこの発明の光ファイバケーブルの製造方法は、請求項4または5記載の光ファイバケーブルにおいて、前記第1シースの発泡度が10〜60%であることを特徴とするものである。
【0019】
したがって、前記第1シースの発泡度を10〜60%としたことにより、外部応力に対する緩衝作用が十分で、損失特性、側圧特性および光ファイバ心線の口出し性のすべての特性が良好である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1を参照するに、この実施の形態に係る光ファイバケーブル1としては、単数又は複数例えば4心の0.25mmφの光ファイバ心線3を備えており、この複数の光ファイバ心線3を断面が円形形状の発泡樹脂からなる第1シース5で一括シースし、さらに、この第1シース5を断面が円形形状の非発泡樹脂からなる第2シース7で一括シースされている。また、前記第1シース5の近傍における第2シース7内には平行で両脇(図1において上下)に配置された例えば鋼線又はFRP、ガラス繊維、アラミド繊維からなる抗張力体9が設けられている。
【0022】
図2には図1に代わる他の実施の形態が示されている。図2において図1における部品と同じ部品には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
図2において、前記第2シース7内に抗張力体9が設けられず、光ファイバ心線3にガラス繊維、アラミド繊維などの抗張力繊維11が引き揃えた状態で第1シース5の内側に設けられている。
【0024】
図3には図1に代わる他の実施の形態が示されている。図3において図1における部品と同じ部品には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
図3において、前記第2シース7内に抗張力体9が設けられず、光ファイバ心線3に例えば鋼線又はFRPからなる抗張力体9が引き揃えた状態で第1シース5の内側に設けられている。しかも、前記第2シース7の外周の一部にはノッチ部13が形成されている。
【0026】
図4には図1に代わる他の実施の形態が示されている。図4において図1における部品と同じ部品には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0027】
図4において、図1における0.25mmφの光ファイバ心線3の代わりに例えば6心の光ファイバテープ心線15が設けられ、この光ファイバテープ心線15の周囲にガラス繊維、アラミド繊維などの抗張力繊維11が設けられ、これらを断面が矩形形状の発泡樹脂からなる第1シース5で一括シースし、さらに、この第1シース5を断面が矩形形状の非発泡樹脂からなる第2シース7で一括シースされている。
【0028】
上記図1〜図4において、第1シース5の外周と第2シース7の内周とが接合(接着)されている。前記第1シース5は上述したごとく発泡樹脂からなっていて、この発泡樹脂としては例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂に、発泡剤を混入し押出時の温度で発泡させる化学発泡を利用したものや押出の際にガスを注入するガス発泡を利用したものなどが好適に使用される。
【0029】
前記第2シース7は前記第1シース5よりも融点が高く、かつ両者の融点の差が30℃以内の樹脂を用いるのが有効である。樹脂は同じ材料でも分子鎖の分岐状態あるいは分子量を変えたもの、あるいは異なる材料の樹脂を用いたり、あるいはまたベース樹脂にカーボン、シリカなど無機フィラーを混入させる等により得ることができる。
【0030】
すなわち、ケーブルシース工程で、その熱で第1シース5(ユニットシース)の表面を融解し、第2シース7(ケーブルシース)と接着させる。ここで、第2シース7(ケーブルシース)に比べ第1シース5(ユニットシース)の融点が同じか高すぎると、ケーブルシース時に第1シース5(ユニットシース)が溶解しないあるいは溶解しにくくなるため、接着が達成されない。一方、低すぎると第1シース5(ユニットシース)が多量に溶解してしまい発泡構造が壊れてしまうため、側圧特性の効果がなくなってしまうばかりか、場合によっては損失特性が劣化する可能性がある。実験の結果、第1シースは第2シースよりも融点が低く、かつ、両者の融点の差がおおよそ30℃以内の樹脂を用い、しかも、第2シース7(ケーブルシース)の樹脂をシースする際に、第1シース5(ユニットシース)をその融点以上の温度で加熱せしめることにより、良好な融着性を得ることがわかった。
【0031】
材料の組み合わせとしては、例えば第1シースが低密度ポリエチレン(融点100℃)の場合は第2シースは直鎖状低密度ポリエチレン(融点120℃)、第1シースが直鎖状ポリエチレン(融点120℃)の場合は、第2シースは高密度ポリエチレン(融点130℃)、第1シースが高密度ポリエチレン(融点130℃)の場合は第2シースはポリプロピレン(融点160℃)の組合わせが有効である。
【0032】
上記構成により、前記第1シース5に発泡性の樹脂を使用することにより側圧特性を向上させることができる。かつ前記第1シース5と前記第2シース7とが接合(接着)されているから、第2シース7を引き裂くと第1シース5も同時に引き裂かれるので、口出し性を向上させることができると共に良好な損失特性を得ることができる。図3に示されているように、第2シース7の外周の一部にノッチ部13が形成されていると、第2シース7を容易に引き裂くことができる。また、第1シース5の融点は第2シース7よりも低く、両者の融点の差を30℃以内の樹脂とすることにより、容易に接合(接着)せしめることができる。
【0033】
つぎに、光ファイバケーブルの製造方法について説明する。
【0034】
図5(a),(b)には光ファイバケーブル1の製造ラインが示されている。例えば、図3に示す光ファイバケーブル1を製造する場合は、図5(a)に示す工程において例えば鋼線又はFRP、ガラス繊維、アラミド繊維からなる抗張力体9が複数のボビン17から引き出されると共に光ファイバ心線3がボビン19から引き出されて集合し、押出し機の押出しヘッド21に送り込まれると共に例えば発泡性ポリエチレンP1が供給されると、この押出しヘッド21で第1シース5が前記光ファイバ心線3と抗張力体9の周囲に被覆されボビン23に巻き取られる。ついで、図5(b)に示す工程で押出し機の押出しヘッド25に送り込まれると共に例えば第1シース5より融点の高いポリエチレンP2が供給されると、この押出しヘッド25では第2シース7(ケーブルシース)が一体被覆されて図3に示されているような光ファイバケーブル1がボビン27に巻き取られて、光ファイバ1を得ることができる。そして、第2シース7には第2押出しヘッド25のニップル部においてノッチ部13が形成される。
【0035】
(実施例1)
図2に示すように4本のSM0.25mmφ素線からなる光ファイバ心線3と、アラミド繊維からなる抗張力繊維11を引きそろえ、発泡性の第1シース5をシースしたユニットを作製した。
【0036】
発泡性の第1シース5は低密度ポリエチレンに発泡剤を混入した材料を用いた。第1シース厚は0.5mmである。
【0037】
第2シース7には種々の融点の材料(種々の分子量を有するポリエチレンまたはポリプロピレ)を用い、第2シース7の厚さは1mm、外径は約4mmに仕上げた。
【0038】
表1に試作した光ファイバケーブル1の損失特性、側圧特性、心線口出し性、外観、製造性について調査した結果を示す。
【0039】
損失特性については○印はケーブル化後の損失が0.25dB/km(1.55μm)以下と良好なものであり、×印は0.25dB/km(1.55μm)を超え実用上問題のあるものである。側圧特性については○印は荷重50kg/100mm幅において損失増が0.1dB以下(1.55μm)と良好なものであり、×印は0.1dBを超え、実用上問題のあるものである。
【0040】
【表1】
試作例1〜11は第1シース5の発泡度を40%とし、第2シース7の融点を変化させた場合の結果である。
【0041】
試作例1〜3は第2シース7の融点が第1シース5の融点に等しいか低い場合で、第1シース5と第2シース7とが接合されておらず、第2シース7を引き裂こうとしても第1シース5を同時に引き裂くことができず口出し性に問題があった。
【0042】
試作例4〜9は第2シース7の融点が第1シース5の融点よりも高くその差が30℃以内の場合で、上記のすべての特性に問題はなかった。
【0043】
試作例10〜11は第2シース7の融点が第1シース5の融点より高くその差が30℃を超える場合で、発泡層が融けて第1シース5内面の表面状態が悪くなるため損失特性が悪くなり、発泡層が融けて外観が悪くなり、また、第1シース5の発泡層が融けてしまうため製造性にも問題がある。
【0044】
以上の結果から第2シース7の融点は第1シース5の融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内であることにより良好な特性が得られることが明らかになった。
【0045】
試作例12〜13は押出し温度を第2シース7の融点よりも40〜45℃高く設定した場合であるが、すべての特性に問題はなかった。
【0046】
試作例7、14〜22は第2シース7の融点を第1シース5の融点よりも20℃高くし、第1シース5の発泡度は0〜80%に変化させて試作した結果である。
【0047】
試作例14〜15は第1シース5の発泡度が0〜5%と10%未満の場合で側圧特性において0.3dBの損失が発生した。発泡度が10%未満であると外部応力に対する緩衝作用が不十分であり、側圧特性が低下してしまうためである。
【0048】
試作例16〜20は第1シース5の発泡度が10〜60%の場合で、すべての特性が良好であった。
【0049】
試作例21〜22は第1シース5の発泡度が70〜80%と60%を超える場合で、空隙部が多すぎるため均一な形状が得られないようになって製造が困難であり製造性に問題があった。
【0050】
以上の結果から第1シース5の発泡度は10〜60%が好適であることが明らかになった。
【0051】
(実施例2)
図3に示すように、4本のSM0.25mmφ素線からなる光ファイバ心線3と3本のFRPからなる抗張力体とを引きそろえ、発泡性の第1シース5をシースしたユニットを作製した。
【0052】
発泡性の第1シース5は高密度ポリエチレンに発泡剤を混入した材料を用いた。第1シース厚は0.5mmである。
【0053】
第2シース7には種々の融点の材料(種々の分子量を有するポリエチレンまたはポリプロピレ)を用い、第2シース7の厚さは1mm、外径は約4mmに仕上げた。
【0054】
表2に試作した光ファイバケーブルについて同様に損失特性、側圧特性、心線口出し性、外観、製造性について調査した結果を示す。
【0055】
損失特性については○印はケーブル化後の損失が0.25dB/km(1.55μm)以下と良好なものであり、×印は0.25dB/km(1.55μm)を超え実用上問題のあるものである。側圧特性については○印は荷重50kg/100mm幅において損失増が0.1dB以下(1.55μm)と良好なものであり、×印は0.1dBを超え、実用上問題のあるものである。
【0056】
【表2】
試作例23〜33は第1シース5の発泡度を40%とし、第2シース7の融点を変化させた場合の結果である。
【0057】
試作例23〜25は第2シース7の融点が第1シース5の融点に等しいか低い場合で、第1シース5と第2シース7とが接合されておらず、第2シース7を引き裂こうとしても第1シース5を同時に引き裂くことができず口出し性に問題があった。
【0058】
試作例26〜31は第2シース7の融点が第1シース5の融点よりも高くその差が30℃以内の場合で、上記のすべての特性に問題はなかった。
【0059】
試作例32〜33は第2シース7の融点が第1シース5の融点より高くその差が30度を超える場合で、発泡層が融けて第1シース5内面の表面状態が悪くなるため損失特性が悪くなり、発泡性が融けて外観が悪くなり、また、第1シース5の発泡層が融けてしまうため製造性にも問題がある。
【0060】
以上の結果から第2シース7の融点は第1シース5の融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内であることにより良好な特性が得られることが明らかになった。
【0061】
試作例29、34〜42は第2シース7の融点を第1シース5の融点よりも20℃高くし、第1シース5の発泡度は0〜80%に変化させて試作した結果である。
【0062】
試作例35〜36は第1シース5の発泡度が0〜5%と10%未満の場合で側圧特性において0.3dBの損失が発生した。発泡度が10%未満であると外部応力に対する緩衝作用が不十分であり、側圧特性が低下してしまうためである。
【0063】
試作例37〜40は第1シース5の発泡度が10〜60%の場合で、すべての特性が良好であった。
【0064】
試作例41〜42は第1シース5の発泡度が70〜80%と60%を超える場合で、空隙部が多すぎるため均一な形状が得られないようになって製造が困難であり製造性に問題があった。
【0065】
表2から第2シース7の融点は第1シース5の融点よりも高く、両者の差が30℃以内であることにより良好な特性が得られることが明らかになった。
【0066】
また、第1シース5の発泡度は10〜60%が好適であることが明らかになった。
【0067】
なお、第1シース5の発泡度が10〜60%の範囲であれば、第1シース5の肉厚は0.2mm以上において良好な損失特性、側圧特性、心線口出し性が得られる。また肉厚の上限は大きいほど良好な特性が得られるが、ケーブルの外径が大きくなりすぎるため、1.5mm程度までが好適である。したがって、発泡度は10〜60%、肉厚0.2〜1.5mm程度が好適である。
【0068】
なお、この発明は前述した実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことによりその他の態様で実施し得るものである。
【0069】
【発明の効果】
以上のごとき発明の実施の形態の説明から理解されるように、請求項1の発明によれば、前記第1シースに発泡性の樹脂を使用することにより、側圧特性を向上させることができる。かつ前記第1シースと前記第2シースとが接合されているから、第2シースを引き裂くと第1シースも同時に引き裂かれるので、口出し性を向上させることができると共に良好な損失特性を得ることができる。
【0070】
また、前記第1シースと前記第2シースとに同じ組成の材料を用い、かつ、両者の融点の差が30℃以内の樹脂であるから、第1シースと第2シースとを容易に接合することができる。
【0071】
請求項2の発明によれば、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されているから、ノッチ部から第2シースの引き裂きを容易に行うことができるので、第1シースと第2シースとが一緒に引き裂けて容易に口出しを行うことができる。
【0072】
請求項3の発明によれば、前記第1シースの発泡度を10〜60%としたことにより、外部応力に対する緩衝作用が十分で、損失特性、側圧特性および光ファイバ心線の口出し性のすべての特性を良好にすることができる。
【0073】
請求項4の発明によれば、単数または複数の光ファイバ心線の周囲に発泡性の樹脂からなる第1シースで一括シースされているから、側圧特性を向上させることができる。かつ第1シースの周囲に非発泡性の樹脂からなる第2シースで一括すると共に前記第1シースと前記第2シースとが接合されているから、第2シースを引き裂くと第1シースも同時に引き裂かれるので、口出し性を向上させることができると共に良好な損失特性を得ることができる。
【0074】
また、前記第1シースと前記第2シースとに同じ組成の材料を用い、かつ、両者の融点の差が30℃以内の樹脂であるから、第1シースと第2シースとを容易に接合することができる。
【0075】
請求項5の発明によれば、前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されているから、ノッチ部から第2シースの引き裂きを容易に行うことができる。
【0076】
請求項6の発明によれば、前記第1シースの発泡度を10〜60%としたことにより、外部応力に対する緩衝作用が十分で、損失特性、側圧特性および光ファイバ心線の口出し性のすべての特性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。
【図2】図1に代わる別の光ファイバケーブルの断面図である。
【図3】図1に代わる別の光ファイバケーブルの断面図である。
【図4】図1に代わる別の光ファイバケーブルの断面図である。
【図5】(a),(b)は光ファイバケーブルを製造する製造ラインの第1、第2工程を示した図である。
【図6】光ファイバケーブルの断面図である。
【符号の説明】
1 光ファイバケーブル
3 光ファイバ心線
5 第1シース
7 第2シース
9 抗張力体
11 抗張力繊維
13 ノッチ部
15 光ファイバテープ心線
17、19、23、27 ボビン
21 第1押出しヘッド
25 第2押出しヘッド
Claims (6)
- 単数または複数の光ファイバ心線の周囲に第1シースで一括し、この周囲に第2シースで一括してなる光ファイバケーブルにおいて、前記第1シースが発泡性の樹脂、前記第2シースが非発泡性の樹脂からなり、第2シースの融点は第1シースの融点よりも高く、かつ、両者の融点の差が30℃以内であり、かつ前記第1シースと前記第2シースとが接合されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
- 前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
- 前記第1シースの発泡度が10〜60%であることを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバケーブル。
- 単数または複数の光ファイバ心線の周囲に発泡性の樹脂からなる第1シースで一括する工程と、この第1シースの周囲に非発泡性の樹脂からなり、前記第1シースの融点よりも高い融点を有し、かつ、融点の差が30℃以内の第2シースで一括する工程とからなり、第2シース工程は第2シースの融点よりも40℃〜50℃高い温度で押出し、前記第1シースと前記第2シースとが接合されて、光ファイバケーブルを製造することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。
- 前記第2シースの外周部にノッチ部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の光ファイバケーブルの製造方法。
- 前記第1シースの発泡度が10〜60%であることを特徴とする請求項4または5記載の光ファイバケーブルの製造方法。
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- 2003-06-23 JP JP2003178395A patent/JP2005017380A/ja active Pending
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