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JP2004507495A - 認知機能改善のためのアルドステロン受容体拮抗薬の使用 - Google Patents

認知機能改善のためのアルドステロン受容体拮抗薬の使用 Download PDF

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JP2004507495A
JP2004507495A JP2002522869A JP2002522869A JP2004507495A JP 2004507495 A JP2004507495 A JP 2004507495A JP 2002522869 A JP2002522869 A JP 2002522869A JP 2002522869 A JP2002522869 A JP 2002522869A JP 2004507495 A JP2004507495 A JP 2004507495A
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spiro
solvent
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JP2002522869A
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フェデ,ケントン・エヌ
ペレス,アルフォンソ・ティー
トゥーリー,ジョセフ・エフ
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ファルマシア・コーポレーション
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Abstract

認知機能障害の予防および治療のためのアルドステロン受容体拮抗薬を開示する。

Description

【0001】
発明の背景
関連する出願の引照
本出願は2000年8月28日に出願された米国仮特許出願第60/228,738号に基づく優先権を主張する。
【0002】
関連技術の説明
認知および気分の機能不全は錯乱、見当識障害、記憶障害、行動秩序の破壊、鬱、および自律神経機能障害(活動リズム、睡眠および食欲の変調)のいずれかを特徴とする一群の障害である。多くの場合明確な神経病理学的障害または代謝障害がこれらの症状の根底にある;それ以外の場合については病因学的基準は明らかにされていない。歴史上重要なものとして、抗高血圧薬、例えばレセルピンによる心血管疾患の治療が鬱の原因となることがしばしばあり、精神の疾患におけるアドレナリン作用システムの役割の仮説へと研究者を導くことになった。
【0003】
これまでの研究によりアルドステロンレベルと気分との関連が示された(Birmingham MK, Barta A, Solyom L, Lehoux JG, Vecsei P. 産後鬱の既往および毎月の精神病エピソードの患者における気分のスコア、LH,副腎皮質ステロイド、および尿量間の相関。Endocrin Res 1998; 24: 595−599)。
【0004】
アルドステロン受容体拮抗薬のスピロノラクトンは、生理前症候群の気分障害のための有効な治療であることが示された。二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験において、PMSの女性35名に100mgスピロノラクトンまたはプラセボ1日1錠が、生理周期の14日目から次の生理初日まで毎日与えられた(Wang M et al.;Acta Obstet Gynecol Scand. 1995; 74: 803−8)。治療前2周期を各女性の診断のための観察期間とし、続いて最初の3ヶ月または次の3ヶ月のいずれかに、スピロノラクトンおよびプラセボが6治療周期投与された。スピロノラクトンによる治療をプラセボと比較して、負の気分の症状のスコア(mood symptom scores)(p<0.001)および身体の症状のスコア(somatic symptom scores)(p<0.001)の有意な減少から判断し、PMS症候群の改善に関連づけることができた。スピロノラクトンはプラセボと比較して、いらいら、鬱、腫脹感、乳房圧痛、異常な空腹感を有意に改善した。スピロノラクトンの効果の持続は、スピロノラクトンにて開始した女性において、プラセボにクロスオーバーした後も観察された。さらに他の研究者も同様の有効性を示した(Hellberg D et al. Int J Gynaecol Obstet; 1991; 34: 243−8)。
【0005】
RAAS系もまた認知機能に関与しているようである。これを示す一つの試験では、食塩誘導型高血圧遺伝モデルの食塩感受性ダール(DS)ラットを用いた。これらのラットは低塩食餌で正常血圧を維持し、受動的回避となる抗高血圧薬の低量投与または非投与での、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬シラザプリル、またはアンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬(E4177)の効果を調べた(Hirawa N et al. Hypertension 1999; 34: 496−502)。シラザプリルの治療は投与量に依存して記憶機能を改善し、海馬CA1細胞およびCA1領域の毛細管密度の有意な増加に関連づけられた。同様に、E4177は加齢のDSに観察された記憶機能不全をわずかに改善し、海馬CA1領域の細胞のわずかな保存が認められたが、毛細管密度は受容体拮抗薬による影響は受けなかった。これらの結果はRAAS系、すなわちACEの下流を遮断することで、記憶機能不全が改善されることを示した。
【0006】
有効に認知機能が作用しているかどうかは、環境変化に対処する能力で証明される。逆に新しい刺激に繰り返し暴露されることで高められる反応性(例えば不安)は正の認知機能に負の相関をする。例えば、モリス水迷路の成績の悪化、迷路での探索行動の低減、砂糖を加えた時のミルク消費の低下、およびホットプレート試験での新奇さへの反応性増大を示す、加齢、障害のロング・エバンスラットがそうである。(Rowe WB, Spreekmeester E, Mesnsy MJ,Quirion R, Rochford J. 認知障害のあるおよび障害のない加齢ラットおよび若いラットにおける新奇さへの反応性 Neuroscience 1998 Apr; 83 (3): 669−80)スコポラミンによる中枢のコリン作動遮断は、ヒトおよび動物の被験者において著明な認知障害をもたらした。ラットにおいて新奇さへの反応性の増大はスピロノラクトンで前処置することにより改善することができる。(Smythe JW, Murpphy D, Timothy C, Gul GH, Costall B. スコポラミンにより誘発される認知機能不全は、全身または海馬内ミネラルコルチコイド受容体の遮断により低減される。 Phrmacol Biochm Behav 1997 Apr; 56(4): 613−21)。
【0007】
コルチコステロンは中枢のミネラルコルチコイド受容体に高いアフィニティーで結合し、グルココルチコイド受容体には10分の1のアフィニティーで結合する。コルチコステロイドホルモンは電流または神経伝達物質により誘発される神経膜特性における変化を貯留することができる。ミネラルコルチコイド受容体は細胞の興奮を高めるステロイドの作用を仲介し、一方活性化されたグルココルチコイド受容体は一時的に高められた神経の活性を抑制することができる。(Joels M et al. Trends Neurosci 1992; 15:25−30)
Oitzl らは雄ウィスターラットの空間的な新奇さに対する行動反応のコントロールに関する、コルチコステロンのミネラルコルチコイド受容体を介しての効果を、オープンフィールドの中央に目的物を設けたモデルを用いて調べた。(Oitzl MS et al. Eur J Neurosci 1994; 6: 1072−9)副腎摘出はラットの目的物に対する行動の反応性を増大させ、コルチコステロン投与(50マイクログラム/kg皮下注)により反応は遮断された。ラットを選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬RU28318の大脳室への注射による前処置で、コルチコステロンによって誘発される行動の反応性の増大は抑えられたが、一方拮抗薬RU38486(100mg/マイクロリットル)によるグルココルチコイド受容体の遮断は有効ではなかった。
【0008】
カプトプリル(ACE阻害薬)に関する高血圧のヒトの臨床試験は、精神明瞭度および仕事の満足度−モラルにおけるRAASの負の効果を示した。(Croog SH, Sudilovsky A, Levine S, Testa MA. 仕事の行動、長期欠勤および抗高血圧薬剤 J Hypertens Suppl 1987 FEb; 5(1): S47−54)。嗜眠および疲労感による同試験からの脱落は、カプトプリル投与の患者よりメチルドパおよびプロプラノールの患者のほうが有意に多かった。各群間での高血圧は同レベルでコントロールされていることから、RAASはこの効果とは独立した認知機能のこれらパラメータを修飾するものと思われる。
【0009】
RAAS、またはより特異的にはACEの遮断による認知機能改善の基底となる機序の洞察は、いわゆる向知性薬、ピラセタムを用いた比較研究から得られた。受動回避状態にマウスを訓練し、次に電気的ショックで記憶喪失を誘発させた。これらのマウスをACE遮断薬またはピラセタムで前処置しておくと、行動の貯留が有意に改善された。ピラセタムの貯留−節約効果はアルドステロン受容体拮抗薬、エポキシメクスレノン(epoxy−mexrenone)により妨げられた;エポキシメクスレノンはACEを阻害したマウスには効果がなかった。(Mondadori C. and Etienne P.マウスにおけるACE阻害薬の向知性効果 Psychopharmacology (1990) 100: 301−307)。これらの結果はACE阻害薬およびピラセタムの記憶改善効果は2つの別個の機序を通して作用することを示す。
【0010】
認知機能に関するRAASの負の効果はまた、アルツハイマー病にも関与し得る。事実、ある試験はアルツハイマー患者における尾状核、前部皮質、海馬傍回、および海馬内側におけるACEの有意な増加を発見した。(Arregui A, Perry EK, Rossor M, Tomlinson BE. アルツハイマー病においてアンジオテンシン変換酵素は尾状核および皮質領域の活性を増加させた。J Neurochem 1982 May; 38(5): 1490−2)。
【0011】
心不全(HF)は、心臓に関するクオリティーオブライフ(HRQOL)および機能状態にかなりの影響をもたらす一般的な臨床症候群である。(Leidy NK, Rentz AM, Zyczynski TM. うっ血性心不全患者における心臓に関するクオリティーオブライフの結果の評価:最近の無作為コントロール試験のまとめ。 Pharmaco Economics 1999; 15: 19−46)。治療の一次目標は病気の進行の阻止および症状の改善である。患者の症状および機能状態の改善の評価には、健康状態およびHRQOLの自己報告による測定が必要である。健康の喪失に関する臨床的実践ガイドラインは、HRQOLの測定を医学的治療の有効性の評価に使用できることを示唆している。(Konstam M, Dracup K, Baker D, et al. 左心室不全の患者の評価およびケア。AHCPR Publication No 94−0612 1994)。
【0012】
鬱は致死率の重要なリスク因子である。青年期に鬱および不安の障害を認識することは、精神病および不適応な行動に関する罹患率、致死率、および生涯のリスクを低下させることになる。(Reeve A. Med Clin North Am 2000; 84: 891−905)。鬱は高齢者における一般的な臨床症状であり、しばしば自殺の試みおよび/または実行に至る。Roynerらによる1年間の試験は、バルチモア地域の養護老人ホーム(nursing home)8施設に新たに入所した454名の患者を調査した。(Am J Med 1993; 94: 19S−22S)重症の鬱の障害が12.6%の患者にあった;さらに18.1%に鬱の症状があった。鬱のほとんどの症例は認識されておらず、したがって養護老人ホームの医師による治療も行われていなかった。重症の鬱の障害は診断後1年で59%まで死亡の可能性を増加させる、致死の独立したリスク因子であることが見出された。
【0013】
Schulz R らは試験に参加した米国の4地域の65歳およびそれ以上の男女総計5201名を調査した。(Arch Intern Med. 2000; 160: 1761−8)ベースラインの高い鬱の症状(23.9%)は、ベースラインの低い鬱のスコア(17.7%)に比してより高い致死率に関与していた。鬱はまた、社会人口統計学因子、一般的臨床疾患、不顕性疾患指標、または生物学的もしくは行動的リスク因子を調整する際の、致死の独立した予測変量でもあった。変数の4クラスすべてから最も良い予測変量を共変数として含めた場合にも、鬱の症状の高い数値は依然として致死の独立した予測変量であった。
【0014】
Herrmann らによるもう一つの試験は、鬱の気分が医療入院患者における全死亡の独立したリスク因子であることを示した。(Psychosom Med 1998; 60: 570−7)同試験はまたリスクの状態の患者の同定には、正式な精神医学的診断は必要ではなく、短い決まった形式で行われる自己評価アンケートで行うことができることを示した。
【0015】
同様にGranzini は大学系列のVeterans Affairs Medical Center の患者を調査した。(J Am Geriatr Soc 1997; 45: 307−12)調査開始から30ヶ月の追跡期間に、1990−1991年の医療および外科病棟の入院患者から100名の退役軍人(この半数は鬱障害を有していた)が対象となった。最初の評価で、すべての患者は65歳以上、認知正常、および医学的には末期の病気ではないものとした。30ヶ月で被験者100名のうち36名が死亡した。2因子のみ、すなわち重症の医学的疾患および鬱が致死的因子と推論された。したがって医学的疾患のある高齢の入院退役軍人における重症の鬱は、診断以後死亡に至る30ヶ月間継続してリスク因子であったことになる。
【0016】
鬱はまた、発作後の生存患者の罹患率および致死率の増加に寄与する、発作の有意な後遺症でもある。(Bush. Brain Inj. 1999 13: 131−7)
【0017】
発明の概要
本発明は被験者の認知機能不全を予防または治療する方法を含む。当該方法は、認知機能不全に罹りやすいまたは罹っている被験者へのアルドステロン拮抗薬の投与を含み、その際アルドステロン拮抗薬は、認知機能改善または認知機能不全の進行の抑制に治療的に有効な量で投与される。
【0018】
好ましい態様の詳細な説明
本発明による1つまたはそれ以上のアルドステロン受容体拮抗薬の投与は、1つまたはそれ以上の認知機能不全のある被験者の治療に有効であることが発見された。本発明に従って有効に治療することのできるこのような認知不全は、精神病、認知障害、気分障害、不安障害、および人格の障害を含むがこれに限定されない。一つの態様において被験者は哺乳類の被験者である。もう一つの態様において被験者はヒトの被験者である。
【0019】
本発明による治療の有益となり得る被験者は、精神病の被験者を含む。このような精神病は、行動の障害および明瞭な思考、現実の把握、またはこれらの異常の存在を洞察することができないという症状を含むが、これに限定されない。精神病は誤った確信および異常な感覚の症状を含んでも含まなくてもよい。
【0020】
本発明による治療の有益となり得る被験者は、認知障害のある被験者を含む。このような認知障害は、錯乱、見当識障害、記憶障害、または行動秩序の破壊の1つまたはそれ以上の症状を特徴とする症状を含む。
【0021】
本発明による治療の有益となり得る被験者は、気分障害のある被験者を含む。このような気分障害は、鬱、二極性障害、持続的な気分の異常、および自律神経機能の障害、例えば活動リズム、睡眠、食欲の変調の1つまたはそれ以上の症状を特徴とする症状を含む。
【0022】
本発明による治療の有益となり得る被験者は、不安障害のある被験者を含む。このような不安障害は、不安、パニック、不快、強迫観念、不合理な恐れ、儀式もしくは強迫行為、行動パターンの障害の1つまたはそれ以上の症状を特徴とする症状を含む。このような行動パターンの障害はアルコールもしくは他の物質の乱用、異常な摂食パターン、心気症、および抗社会的行動を含む。
【0023】
本発明によるアルドステロン受容体拮抗薬の投与はまた、著明な認知機能不全のない個人の認知機能の改善に有効であることもまた発見された。このような改善は、短期間および長期間の記憶、睡眠パターン、環境への反応性、恐れの加速、および不安の加速を含むがこれに限定されない。
【0024】
本発明による治療の有益となり得る被験者は、心臓、腎臓、および血管系に影響する1つまたはそれ以上の病理学的症状のある被験者を含み、その場合、本発明による1つまたはそれ以上のアルドステロン受容体拮抗薬を標準的な治療に追加することが、1つまたはそれ以上の認知機能不全のある被験者の治療に有効となる。
【0025】
投与量
第II相の投与量範囲に関する試験は、エプレレノンが軽度から中程度の高血圧の患者に安全で有効であることを示した。この平行デザイン8週間二重盲検プラセボ対照試験は、3種類のエプレレノンの1日総投与量(50、100、または400mg)の1日1回投与もしくは分与、スピロノラクトン50mgBID、またはプラセボに417名の患者を無作為に割付けた。
【0026】
ベースラインから最後の通院までの拡張期血圧(DBP)および収縮期血圧(SBP)の変化の補正平均(mmHgにて)を表1Aに示す。
表1A
【0027】
【表1】
Figure 2004507495
【0028】
エプレレノンは十分忍容性があり、女性化乳房をふくむ副作用の発生率はプラセボと同様であった。一過性高カリウム血症(すなわち5.4mmol/L以上)の頻度の増加がエプレレノン200mgBIDおよび400mgQD治療群で認められた。これらカリウムレベルの上昇は、副作用イベントに関連するいかなる心疾患にも関与せず、介入なしに自然に解消した。1日の投与量400mg程の高量でさえも驚くことに重症の高カリウム血症のイベントに至らなかったことから、本発明により投与できるエポキシステロイド系化合物の投与量の範囲は非常に広い。
【0029】
したがって本発明により治療する被験者には、最初に1日当たり0.25mgから100mgの範囲;好ましくは1日あたり5mgから50mgの範囲の量のアルドステロン受容体拮抗薬を投与する。
【0030】
最初の評価期間(すなわち被験者がアルドステロン受容体拮抗薬を最初の1日投与量で受け取る期間)は約1から4週間の間とする;好ましくは1から2週間である。
【0031】
最初の評価期間後、血液および尿のサンプルを決まった形式の評価(すなわち一般的な公知の血液および尿生化学検査)用に採取する。さらに認知機能不全を評価する。投与量増加に対する禁忌(例えば高カリウム血症)がなければ、アルドステロン受容体拮抗薬の1日の投与量を1日あたり10から100mgまで、好ましくは1日あたり20から50mgまで増加する。
【0032】
本発明の1つの態様において、アルドステロン受容体拮抗薬の投与量は、1日あたり400mgの投与量に達するまで、または高カリウム血症が検出されるまで、または他の禁忌が観察されるまで、段階的に増加する。
【0033】
適当な投与量はまた、血漿レニン活性をモニターすることにより決定することができる。図1−1に示したように、エプレレノン投与量の増加は血漿レニン活性レベルの増加をもたらす。したがって被験者は血漿レニン活性が最大レベルに達するまで、ただし同時にカリウムの血清レベルが正常範囲に維持されている状態で、本発明による1つまたはそれ以上のアルドステロン受容体拮抗薬の投与量を段階的に増加させることにより、同拮抗薬による治療を行うことができる。
【0034】
適当な投与量はまた、血清アルドステロンレベルをモニターすることにより決定することができる。図1−1に示したように、エプレレノンの投与量の増加は血清アルドステロンレベルの増加をもたらす。したがって被験者は血清アルドステロンが最大レベルに達するまで、ただし同時にカリウムの血清レベルが正常範囲に維持されている状態で、本発明による1つまたはそれ以上のアルドステロン受容体拮抗薬の投与量を段階的に増加させることにより、同拮抗薬による治療を行うことができる。
【0035】
適当な投与量はまた、収縮期血圧をモニターすることにより決定することができる。図1−2に示したように、エプレレノンの投与量の増加は収縮期血圧の低下をもたらす。したがって被験者の収縮期血圧レベルの降下に至るまで、ただし同時にカリウムの血清レベルが正常範囲に維持されている状態で、本発明による1つまたはそれ以上のアルドステロン受容体拮抗薬の投与量を段階的に増加させることにより、同拮抗薬による治療を行うことができる。
【0036】
適当な投与量はまた、拡張期血圧をモニターすることにより決定することができる。図1−3に示したように、エプレレノンの投与量の増加は拡張期血圧の低下をもたらす。したがって拡張期血圧レベルの低下が起こるまで、ただし同時にカリウムの血清レベルは正常範囲に維持されている状態で、本発明による1つまたはそれ以上のアルドステロン受容体拮抗薬の投与量を段階的に増加させることにより、同拮抗薬による治療を行うことができる。
【0037】
生物学的評価
化合物
“アルドステロン拮抗薬”という用語は、アルドステロンの受容体を介しての活性を修飾するように、受容体部位でアルドステロン自体の作用を競合的に阻害する物質として、アルドステロン受容体に結合することのできる化合物を示す。
【0038】
多くのアルドステロン受容体遮断薬が知られている。例えばスピロノラクトンは、アルドステロンの結合を競合的に阻害することによりミネラルコルチコイド受容体レベルで作用する薬剤である。このステロイド化合物は、浮腫の低減ならびに本態性高血圧および原発性高アルドステロン症を治療する目的で、腎臓の遠位尿細管内のアルドステロン依存性ナトリウムの移送を遮断するために使用されてきた[F.Mantero et al, Clin. Sci. Mol.Med., 45(Suppl 1),219s−224s (1973)]。スピロノラクトンはまた一般に、他の高アルドステロン症に関連する疾患、例えば肝硬変およびうっ血性心不全の治療にも使用されている[F.J. Saunders et al, Aldactone; Spironolactone: A Comprehensive Review, Searle, New York(1978)]。スピロノラクトンの1日あたり1mgから400mgへの漸増投与[すなわち1mg/日、5mg/日、20mg/日]は、スピロノラクトン不耐性患者の肝硬変に関連する腹水の治療にて行われた[P.A. Greenberger et al, N. Eng. Reg. Allergy Proc., 7(4), 343−345(Jul−Aug, 1986) ]。心筋の線維化の発症は、アンジオテンシンIIおよびアルドステロン双方の循環レベルに感受性があり、アルドステロン拮抗薬スピロノラクトンは動物モデルにおいて心筋の線維化を抑制し、それによりアルドステロンが過剰なコラーゲン沈着にリンクすることが認められた[D.Klug et al, Am. J. Cardiol., 71(3),46A−54A (1993) ]。スピロノラクトンは左心室肥大の絶対的発症および高血圧の動物モデルにおいて線維化を抑制することが示された[C.G.Brilla et al, J. Mol. Cell. Cardiol., 25(5), 563−575 (1993) ]。1日あたり25mgから100mgの用量範囲のスピロノラクトンは利尿により誘発される低カリウム血症の治療で、カリウムサプリメント経口投与または他のカリウム節約処方が不適当を思われる場合に使用される[Physicians’Desk Reference, 46th Edn., p.2153, Medical Economics Company Inc., Montvale, N.J. (1992)]。
【0039】
もう1つの一連のステロイド系タイプのアルドステロン受容体拮抗薬は、エポキシを含むスピロノラクトン誘導体(“エポキシステロイド性化合物”)で例示される。例えば Grob らに対して発行された米国特許第4,559,332号は利尿薬として有用なアルドステロン拮抗薬として、9a,11a−エポキシを含むスピロノラクトン誘導体について記載している。これら9a,11a−エポキシステロイドは、スピロノラクトンと比較しての内分泌効果が評価された[M.de Gasparo et al, J. Pharm. Exp. Ther., 240(2), 650−656 (1987)]。
【0040】
誘導体は、アルドステロン拮抗薬と構造的に関連のある、または実質上等価な生物活性を有するあらゆる化合物を包含するものとする。例として、このような阻害薬はそれらのプロドラッグを含むことができるが、これに限定されない。
【0041】
本方法の使用に適する非エポキシステロイド系アルドステロン拮抗薬は、式Iで定義されるスピロラクトンタイプの化合物のグループを含む。
【0042】
【化1】
Figure 2004507495
【0043】
式中Rは炭素原子5個までの低級アルキルであり、
【0044】
【化2】
Figure 2004507495
【0045】
低級アルキル基は分枝鎖のある基および分枝鎖のない基を含み、好ましくはメチル、エチルおよびn−プロピルである。
式Iに含まれる興味深い具体的な化合物を以下に示す:
7α−アセチルチオ−3−オキソ−4,15−アンドロスタジエン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
3−オキソ−7α−プロピオニルチオ−4,15−アンドロスタジエン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
6β,7β−メチレン−3−オキソ4,15−アンドロスタジエン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
15α,16α−メチレン−3−オキソ−4,7α−プロピオニルチオ−4−アンドロステン[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
6β,7β,15α,16α−ジメチレン−3−オキソ−4−アンドロステン[17(β−1’)−スピロ−5’]−ペルヒドロフラン−2’−オン;
7α−アセチルチオ−15β,16β−メチレン−3−オキソ−4−アンドロステン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
15β,16β−メチレン−3−オキソ−7β−プロピオニルチオ−4−アンドロステン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;および
6β,7β,15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−4−アンドロステン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン。
【0046】
式Iの化合物を製造する方法は、1978年12月12日に発行されたWiechart らに対する米国特許第4,129,564号に記載されている。
興味深い非エポキシステロイド系化合物のもう1つのグループを式IIで定義する:
【0047】
【化3】
Figure 2004507495
【0048】
式中RはC1−3アルキルまたはC1−3アシルであり、RはHまたはC1−3アルキルである。
式IIに含まれる興味深い具体的な化合物を以下に示す:
1α−アセチルチオ−15β,16β−メチレン−7α−メチルチオ−3−オキソ−17α−プレグン(pregn)−4−エン(ene)−21,17−カルボラクトン;および
15β,16β−メチレン−1α,7α−ジメチルチオ−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−21,17−カルボラクトン。
【0049】
式IIの化合物を製造する方法は、1988年12月6日に発行されたNickischらに対する米国特許第4,789,668号に記載されている。
興味深い非エポキシステロイド系化合物のなおもう1つのグループを式IIIの構造で定義する。
【0050】
【化4】
Figure 2004507495
【0051】
式中Rは低級アルキルであり、好ましい低級アルキル基はメチル、エチル、プロピルおよびブチルである。興味深い具体的な化合物は:
3β,21−ジヒドロキシ−17α−プレグナ−5,15−ジエン−17−カルボン酸γ−ラクトン;
3β,21−ジヒドロキシ−17α−プレグナ−5,15−ジエン−17−カルボン酸γ−ラクトン3−アセテート;
3β,21−ジヒドロキシ−17α−プレグン−5−エン−17−カルボン酸γ−ラクトン;
3β,21−ジヒドロキシ−17α−プレグン−5−エン−17−カルボン酸γ−ラクトン3−アセテート;
21−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−17−カルボン酸γ−ラクトン;
21−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグナ−4,6−ジエン−17−カルボン酸γ−ラクトン;
21−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグナ−1,4−ジエン−17−カルボン酸γ−ラクトン;
7α−アシルチオ−21−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−17−カルボン酸γ−ラクトン;および
7α−アセチルチオ−21−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−17−カルボン酸γ−ラクトン。
【0052】
式IIIの化合物を製造する方法は、1966年6月21日に発行されたPatchettらに対する米国特許第3,257,390号に記載されている。
興味深い非エポキシステロイド系化合物のさらにもう1つのグループを式IVで表す。
【0053】
【化5】
Figure 2004507495
【0054】
式中E’はエチレン、ビニレンおよび(低級アルカノイル)チオエチレン基からなる群から選択され、E”はエチレン、ビニレン、(低級アルカノイル)チオエチレンおよび(低級アルカノイル)チオエチレン基からなる群から選択される;E’およびE”が各々エチレンおよび(低級アルカノイル)チオエチレン基である場合を除いてRはメチル基であり、その場合にはRは水素およびメチル基からなる群から選択される;そしてE’およびE”の選択にあたって少なくとも1つの(低級アルカノイル)チオ基が存在するようにする。
【0055】
式IVに含まれる非エポキシステロイド系化合物の好ましいグループを式Vで表す:
【0056】
【化6】
Figure 2004507495
【0057】
式Vのより好ましい化合物は1−アセチルチオ−17α−(2−カルボキシエチル)−17β−ヒドロキシ−アンドロスト−4−エン−3−一ラクトンである。
【0058】
式IVに含まれる非エポキシステロイド系化合物のもう1つの好ましいグループを式IVで表す:
【0059】
【化7】
Figure 2004507495
【0060】
式VIに含まれるより好ましい化合物は以下を含む:
7α−アセチルチオ−17α−(2−カルボキシエチル)−17β−ヒドロキシ−アンドロスト−4−エン−3−オンラクトン;
7β−アセチルチオ−17α−(2−カルボキシエチル)−17β−ヒドロキシ−アンドロスト−4−エン−3−オンラクトン;
1α,7α−ジアセチルチオ−17α−(2−カルボキシエチル)−17β−ヒドロキシ−アンドロスタ−4,6−ジエン−3−オンラクトン;
7α−アセチルチオ−17α−(2−カルボキシエチル)−17β−ヒドロキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−3−オンラクトン;
7α−ジアセチルチオ−17α−(2−カルボキシエチル)−17β−ヒドロキシ−19−ノルアンドロスト−4−エン−3−オンラクトン;および
7α−アセチルチオ−17α−(2−カルボキシエチル)−17β−ヒドロキシ−6α−メチルアンドロスト−4−エン−3−オンラクトン;
式IV−VIにおいて、“アルキル”という用語は1個から約8個の炭素を含む直鎖および分枝鎖のアルキル基を包含するものとする。“(低級アルカノイル)チオ”という用語は、以下の式
【0061】
【化8】
Figure 2004507495
【0062】
を包含する。
特に興味深いものとして、以下の構造を持ち
【0063】
【化9】
Figure 2004507495
【0064】
正式名:“スピロノラクトン”:17ヒドロキシ−7α−メルカプト−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−21−カルボン酸γ−ラクトンアセテートの化合物スピロノラクトンがある。
【0065】
式IV−VIの化合物を製造する方法は、1961年12月12日に発行されたCellaらに対する米国特許第3,013,012号に記載されている。スピロノラクトンはG.D.Searle & Co.,Skokie, Illinoisより登録商標“ALDACTONE”で、1錠あたり25mg、50mg、100mgの投与量の錠剤投与の形で販売されている。
【0066】
本方法において特に興味深いアルドステロン拮抗薬のもう1つの群は、エポキシステロイド系アルドステロン拮抗薬で、ステロイドの核の“C”環に縮合したエポキシ部分を有する化合物のグループを含む。9α,11α位がエポキシ部分で置換されていることを特徴とする、20−スピロキサン化合物が特に好ましい。以下の表の化合物1から11は、本方法で使用することのできる9α,11α−エポキシステロイド系化合物を表す。これらのエポキシステロイドはGrob らの米国特許第4,559,332号に記載されている方法で製造することができる。9,11エポキシステロイド系化合物およびそれらの塩のさらなる製造方法は、Ng らのWO97/21720およびNg らのWO98/25948に開示されている。
【0067】
本発明の使用に適するエポキシステロイド系化合物は、エポキシタイプ部分で置換されたステロイド核を有する化合物、1つまたはそれ以上から成る。“エポキシタイプ”部分という用語は、2つの炭素原子間を架橋する酸素原子を有することを特徴とするあらゆる部分を包含するものとし、その例として以下の部分を含む:
【0068】
【化10】
Figure 2004507495
【0069】
【化11】
Figure 2004507495
【0070】
【化12】
Figure 2004507495
【0071】
“ステロイド系”という用語は、“エポキシステロイド系”という用語で使用される場合、従来の“A”“B”“C”および“D”環を有するシクロペンテノフェナントレン部分により提供される核を示す。エポキシタイプ部分は、あらゆる結合可能なまたは置換可能な位置でシクロペンテノフェナントレン核に結合する、すなわちステロイド核の環の1つに縮合することができる、または同部分は環状構造の環を構成する原子上で置換することができる。“エポキシステロイド系”という用語は、ステロイドの核に結合した1つまたは複数のエポキシ型の部分を有するステロイドの核を包含するものとする。
【0072】
本発明の使用に適するエポキシステロイド系化合物は、ステロイドの核の“C”環に縮合した1つのエポキシ部分を有する化合物のグループを含む。特に好ましいのは、9α,11α位がエポキシ部分で置換されていることを特徴とする20−スピロキサン化合物である。以下の表Iに、治療に使用することのできる一連の9α,11α−エポキシステロイド系化合物を示す。表Iのこれらの化合物で特に好ましいのは、一般名エポキシメクスレノン(epoxymexrenone)、そしてまたUSAN名エプレレノンとして知られている化合物#1である。これらのエポキシステロイドは1985年12月17日に発行されたGrob らに対する米国特許第4,559,332号に記載されている方法により製造することができる。
【0073】
【表2】
Figure 2004507495
【0074】
【表3】
Figure 2004507495
【0075】
【表4】
Figure 2004507495
【0076】
【表5】
Figure 2004507495
【0077】
【表6】
Figure 2004507495
【0078】
【表7】
Figure 2004507495
【0079】
投与は経口ルート、または靜注、筋注もしくは皮下注で行うことができる。製剤は、ボーラスの形、または水溶性もしくは非水溶性の等張滅菌注射溶液または懸濁液の形とすることができる。これらの溶液および懸濁液は、1つまたはそれ以上の医薬的に受容可能な担体もしくは希釈剤、または結合剤、例えばゼラチンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースを、1つまたはそれ以上の滑剤、保存剤、界面活性剤または分散剤と共に有する滅菌粉末または顆粒から製造することができる。
【0080】
経口投与用に、医薬組成物を例えば、錠剤、カプセル、懸濁液または液体の形にすることができる。医薬組成物は好ましくは、特定量の活性成分を含む投与ユニットの形に製造する。このような投与ユニットの例は、錠剤またはカプセルである。哺乳類に適する1日の投与量は、患者の症状および他の因子に依存して広範囲に変わり得る。1つまたはそれ以上のエポキシステロイド系化合物は、選択された特異的なエポキシステロイド系化合物および標的である特異的疾患の状態に依存して、約1から400mg、好ましくは約2から150mgの量とすることができる。
【0081】
高カリウム血症の発症していない心血管系疾患の状態の予防、軽減または治療を必要とする疾患の状態に対して、例えば1つまたはそれ以上のエポキシステロイド系化合物、典型的にはエプレレノンは1投与あたり約5mgから約200mgの範囲とする。エプレレノンの好ましい範囲は1投与あたり約25mgから50mgとなる。より好ましくは1日1投与あたり約10mgから15mgの範囲となる。
【0082】
活性成分は組成物として注射で投与することもでき、その場合例えば生理食塩水、ブドウ糖または水を適切な担体として使用することができる。
病気の症状を治療する投与計画は、患者の人種、年齢、体重、性別および医学的症状、疾患の重症度、投与ルート、および使用する特定の化合物を含む様々な因子により選択され、したがって広範に多様となり得る。
【0083】
治療目的用に、本発明の活性化合物は指示された投与ルートに適当な1つまたはそれ以上のアジュバントと通常組み合わせる。経口投与する場合は、当成分をラクトース、スクロース、スターチ粉末、アルカノン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/またはポリビニルアルコールと混合させ、次に投与に便利なように錠剤化またはカプセル化することができる。このようなカプセルまたは錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中に活性化合物を分散させて提供する場合、コントロールされて放出する製剤を含むことができる。非経口投与用製剤は、水溶性または非水溶性の等張滅菌注射溶液または懸濁液の形にすることができる。これらの溶液および懸濁液は、経口投与用製剤での使用に関して述べた1つまたはそれ以上の担体または希釈剤を有する、滅菌粉末または顆粒から製造することができる。この成分を水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、および/または様々なバッファーに溶かすことができる。これ以外のアジュバントおよび投与方法についても、医薬業者には十分に広範に知られている。
【0084】
本発明の治療法に使用する医薬化合物は、経口の形または靜脈内投与により投与することができる。経口投与の治療が好ましい。経口投与の用量は、1日1回投与、隔日1回投与、または1日を通して複数回間隔を置いての投与に見合う投与計画に順ずる。複数回摂取の時間間隔は、各活性物質の特性、例えば同物質の力価、溶解度、生体内での利用可能性、血漿での半減期および力学的特徴に依存して、ならびに患者の年齢および症状に依存して、数分から数時間の範囲とすることができる。経口投与用活性成分を含む適切な医薬的に受容可能な製剤の例を以下に示す。
【0085】
実施例1
経口投与薬剤はふるいにかけた後、以下の成分リストの指示量を合わせて混合することにより製造することができる。この投与薬剤を次にハードゼラチンカプセルに充填することができる。
成分             量
エプレレノン         12.5mg
ステアリン酸マグネシウム   10mg
ラクトース         100mg
【0086】
実施例2
経口投与薬剤は10%ゼラチン溶液と顆粒状物質を合わせて混合することにより製造することができる。この湿った顆粒をふるいにかけ、乾燥し、スターチ、タルクおよびステアリン酸と混合し、ふるいにかけ、錠剤に圧縮する。
成分             量
エプレレノン         12.5mg
硫酸カルシウム二水和物   100mg
スクロース          15mg
スターチ            8mg
タルク             4mg
ステアリン酸          2mg
【0087】
実施例3
経口投与薬剤は、ふるいにかけた後、以下の成分リストの指示量を合わせて混合することにより製造することができる。この投与薬剤を次にハードゼラチンカプセルに充填することができる。
成分             量
エプレレノン         12.5mg
ステアリン酸マグネシウム   10mg
ラクトース         100mg
【0088】
実施例4
経口投与薬剤は10%ゼラチン溶液と顆粒状物質を合わせて混合することにより製造することができる。この湿った顆粒をふるいにかけ、乾燥し、スターチ、タルクおよびステアリン酸と混合し、ふるいにかけ、錠剤に圧縮する。
成分             量
エプレレノン         12.5mg
硫酸カルシウム二水和物   100mg
スクロース          15mg
スターチ            8mg
タルク             4mg
ステアリン酸          2mg
【0089】
ユニット投与
医薬化合物の投与ユニットの形は典型的には例えば、エプレレノンを0.5,1,5,10,20,25,37.5,50,75,100,125,150,175,200,250,300,350または400mg含むことができる。好ましい投与ユニットの形はエプレレノンを約1,25,50,100または150mg含む。投与ユニットの形は特定の1日の投与量に達するように、使用する所望の投与頻度に合わせて選択することができる。投与される医薬組成物のユニット投与の形のに含まれる量、および症状または障害を治療する投与計画は、被験者の年齢、体重、性別および医学的症状、症状または障害の重症度、投与ルートおよび投与頻度を含む様々な因子に依存し、したがって広範に多様となり得る。
【0090】
しかし本発明の医薬化合部の必要とされる1日の投与量の有効性は、本出願に記載した化合物に関しては、1日1回の投与が1日2回の投与に実質的に比して著しく変わることはないらしいことが見出された。本発明の化合物は、アルドステロン受容体部位に結合するアルドステロンに起因する、一定時間のゲノムの応答を阻害するに十分なエプレレノン量を送達すると仮定される。エプレレノンによりアルドステロンの結合を阻止することで、アルドステロンに誘発される遺伝子産生物の合成を妨げ、持続的な血漿エプレレノン濃度の保持を必要としない、アルドステロン受容体の機能を長時間遮断するに至る。したがって1日1回の投与が、投与の簡便さからもこのような錠剤として好ましい。
【0091】
医薬化合物の形
本発明の医薬化合物は、エプレレノンを1つまたはそれ以上の非毒性の医薬的に受容可能な担体、添加物および/またはアジュバント(本明細書ではまとめて“担体物質”という)と組み合わせて含む。担体物質は組成物の他の成分と共存できるという意味で受容可能でなければならず、またレシピエントに有毒であってはならない。本発明の医薬化合物は、適当な担体物質および意図する治療に有効なエプレレノンの投与量を選択することにより、あらゆる適切なルートでの投与に適応できる。例えばこれらの化合物は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内(IM)または直腸からの投与に適する形で製造することができる。
【0092】
したがって使用する担体物質は、固体または液体、またはその双方が可能であり、好ましくはユニット投与組成物、例えば錠剤として化合物と共に製剤化する。錠剤の場合、エプレレノンを重量比で約1%から約95%、好ましくは約10%から約75%、より好ましくは約20%から約60%、そしてなおより好ましくは約20%から約40%含むことができる。本発明のこのような医薬化合物は、本質的には成分を混合することである、薬学の公知のいかなる技術でも製造することができる。
【0093】
エポキシステロイド系アルドステロン受容体拮抗薬の固体状態の形
本発明の方法は、エポキシステロイド系アルドステロン受容体拮抗薬、特にエプレレノンの治療有効量の投与を含む。この場合エプレレノンはあらゆる固体状態の形、すなわちエプレレノン自体が1つまたはそれ以上の固体状態の形、またはエプレレノンの1つまたはそれ以上の固体状態の形を含む医薬組成物の形のいずれかでもよい。これらの新しい固体状態の形は、溶媒和結晶エプレレノン、非溶媒和結晶エプレレノン、およびアモルファスエプレレノンを含むが、これに限定されない。
【0094】
1つの態様において本発明の方法に従って投与されるエプレレノンは、以下の表1Cに示す粉末X線回折パターンを有するエプレレノンの非溶媒和結晶形(当明細書では“高融点の多形”または“H型”という)である。
【0095】
本発明のもう1つの態様において、本発明の方法に従って投与されるエプレレノンは、以下の表1Dに示す粉末X線回折パターンを有するエプレレノンの非溶媒和結晶形(当明細書では“低融点の多形”または“L型”という)である。
【0096】
定形を持たないH型は、例えば定形を持たないL型と比較して、より低い温度(すなわち後述の互変温度以下の温度)でより速い溶解速度(約30%高い)を示す。消化管内でのエプレレノンの溶解が標的細胞へのエプレレノンの送達の律速段階である場合、より速い溶解は一般に生体内での利用可能性の改善することになる。したがってH型は、L型と比較して生体内での利用可能性が改善されているという特性を提供することができる。加えてより速い溶解速度を有するエプレレノンの固体状態の形を選択することは、より遅い溶解速度を有する他の固体の状態と比較して、速放性の医薬組成物のための添加物の選択において、そしてその製剤においてより大きな柔軟性をさらに提供する。
【0097】
L型は例えばH型と比較して、より低い温度(すなわち後述の互変温度以下の温度)でより高い物理的安定性を有する。特別な加工条件または保管条件を使用する必要のない、そして在庫を頻繁に入れ替える必要のない、L型のようなエプレレノンの固体状態の形は望ましいものである。例えば製造過程の間(例えば粒度を小さくし表面積を増やした材料を得るためにエプレレノンを挽く間)、物理的に安定なエプレレノンの固体状態の形を選択することで、特別な加工条件そして特別な加工条件に一般に付随するコストの増加の必要性を排除することができる。同様に、様々な保管条件で(特にエプレレノン製品の有効期間中の様々な保管条件の可能性が考えられる)物理的に安定なエプレレノンの固体状態の形を選択することは、製品の損失または製品の有効性の悪化をもたらし得る、エプレレノンの多形の変化またはその他の劣化を避ける一助となり得る。したがってより大きな物理的安定性をもつL型のようなエプレレノンの固体状態の形を選択することは、安定性のより低いエプレレノンの形に勝る意味ある利点を提供することになる。
【0098】
本発明のもう1つの態様において、本発明の方法に従って投与されるエプレレノンはエプレレノンの溶媒和結晶形である。好ましくは溶媒和結晶形は、医薬的に受容可能でない溶媒は実質的に除外する。H型およびL型は典型的には室温および大気圧下において、結晶溶媒和物より物理的に安定であるため、このような組成物に使用される溶媒和結晶形は一般に、医薬的に受容可能なより高沸点および/または水素結合の溶媒、例えばブタノールを含むが、これに限定されない。溶媒和結晶形はH型およびL型と比較して集合的に様々な溶解速度の範囲を提供し、そして消化管内でのエプレレノンの溶解が標的細胞へのエプレレノンの送達の律速段階である場合は、生物学的な利用可能性を提供できると考えられる。
【0099】
本発明のもう1つの態様において、本発明の方法に従って投与されるエプレレノンはアモルファスエプレレノンである。アモルファスエプレレノンはH型およびL型と比較して様々な溶解速度を有し、そして消化管内でのエプレレノンの溶解が標的細胞へのエプレレノンの送達の律速段階となっている場合は、生物学的な利用可能性を有すると仮定される。
【0100】
もう1つの態様において、本発明の方法に従って投与されるエプレレノンは、エプレレノンの第一の固体状態の形およびエプレレノンの第二の固体状態の形を含む混合物である。一般にエプレレノンの第一および第二の固体状態の形はH型、L型、溶媒和エプレレノンおよびアモルファスエプレレノンから選択される。このような組み合わせは、エプレレノンの付加的な固体状態の形をさらに含むことができ、例えば徐放性(controlled release)の組成物を含む、様々な溶解特性を有する医薬組成物の製造において有用である。一般に、前記の第一の固体状態の形 対 前記の第二の固体状態の形の重量比は、好ましくは少なくとも約1:9、より好ましくは少なくとも約1:1、なおより好ましくは少なくとも約2:1、なおより好ましくは少なくとも約5:1、そしてなおより好ましくは少なくとも約9:1である。
【0101】
もう1つの態様において、エプレレノンは医薬組成物の形で投与され、組成物に含まれるエプレレノンの全量は純粋な相(pure phase)のH型として存在する。
もう1つの態様において、エプレレノンは医薬組成物の形で投与され、同組成物に含まれるエプレレノンの全量は純粋な相のL型として存在する。
【0102】
もう1つの態様において、エプレレノンは医薬組成物の形で投与され、同組成物に含まれるエプレレノンの全量は純粋な相の溶媒和結晶エプレレノンとして存在する。
【0103】
もう1つの態様において、エプレレノンは医薬組成物の形で投与され、同組成物に含まれるエプレレノンの全量はアモルファスエプレレノンとして存在する。
もう1つの態様において、エプレレノンは医薬組成物の形で投与され、同組成物はエプレレノンの第一の固体状態の形およびエプレレノンの第二の固体状態の形を含み、エプレレノンの第一および第二の固体状態の形はH型、L型、溶媒和エプレレノンおよびアモルファスエプレレノンから選択される。一般に前記の第一の固体状態の形 対 前記の第二の固体状態の形の重量比は、好ましくは少なくとも約1:9、好ましくは約1:1、より好ましくは少なくとも約2:1、より好ましくは少なくとも約5:1、そしてなおより好ましくは少なくとも約9:1である。
【0104】
もう1つの態様において、エプレレノンは医薬組成物の形で投与され、同組成物はH型およびL型双方を含む。同組成物中のL型 対 H型の重量比は、一般に約1:20から約20:1の間である。他の態様において、例えばこの比率は約10:1から約1:10の間;約5:1から約1:5の間;約2:1から約1:2の間;または約1:1である。
【0105】
上記の各態様は、エプレレノンの粒度が広範囲にわたっているエプレレノンの固体状態の形の投与を含むことができるが、エプレレノンの固体状態の形の選択とエプレレノンの粒度の微小化とを結びつけることで、不定形のエプレレノンおよびエプレレノンの固体状態の形を含む医薬組成物の生体内での利用可能性を改善できることが見出された。
【0106】
1つのこのような態様において、不定形のエプレレノンまたは医薬組成物の出発材料として使用されるエプレレノンのD90粒度は、約400ミクロン未満、好ましくは約200ミクロン未満、より好ましくは約150ミクロン未満、なおより好ましくは約100ミクロン未満、そしてなおより好ましくは約90ミクロン未満である。もうひとつの態様において、D90粒度は約40ミクロンから約100ミクロンの間である。もうひとつの態様において、D90粒度は約30ミクロンから約50ミクロンの間である。もうひとつの態様において、D90粒度は約50ミクロンから約150ミクロンの間である。もうひとつの態様において、D90粒度は約75ミクロンから約125ミクロンの間である。
【0107】
もう1つのこのような態様において、不定形のエプレレノンまたは医薬組成物の出発材料として使用されるエプレレノンのD90粒度は、約15ミクロン未満、好ましくは約1ミクロン未満、より好ましくは約800nm未満、なおより好ましくは約600nm未満、そしてなおより好ましくは約400nm未満である。もうひとつの態様において、D90粒度は約10nmから約1ミクロンの間である。もうひとつの態様において、D90粒度は約100nmから約800nmの間である。もうひとつの態様において、D90粒度は約200nmから約600nmの間である。もうひとつの態様において、D90粒度は約400nmから約800nmの間である。
【0108】
粒度約15ミクロン未満のエプレレノンの固体状態の形は、当該技術分野に公知の適用可能な粒度の細粒化技術に従って製造することができる。このような技術は、米国特許5,145,684、5,318,767、5,384,124、および5,747,001に記載されているがこれに限定されない。米国特許5,145,684、5,318,767、5,384,124、および5,747,001はその全文を記載するものとして明確に参照として援用する。米国特許5,145,684の方法に従って、例えば液体分散媒体中にエプレレノンを分散させ、粒度を所望のサイズに細粒化するため研磨用媒体の存在下で、その混合物を湿った状態ですりつぶすことにより、適切なサイズの粒子を製造することができる。必要があればまたは有利であれば、粒子は表面調節剤の存在下で細粒化することができる。
【0109】
定義
“アモルファス”という用語はエプレレノンに適用される場合、エプレレノン分子が無秩序な配列で存在し、識別可能な結晶格子または単位胞を形成しない固体状態であることをいう。粉末X線回折では、アモルファスエプレレノンは何の特徴的な結晶ピークも表れない。
【0110】
本出願において物質または溶液の“沸点”を参照する場合、“沸点”という用語は、適用可能な方法の条件下での物質または溶液の沸点を意味する。
“結晶形”という用語はエプレレノンに適用される場合、エプレレノン分子が配列して(i)識別可能な単位胞を含む、および(ii)X線照射で回折ピークを生じる、識別可能な結晶格子を形成する固体状態の形をいう。
【0111】
“結晶化”という用語は本出願を通して使用される場合、エプレレノン出発物質の製造に関する適用可能な状況に依存する結晶化および/または再結晶化をいうことができる。
【0112】
“温浸”という用語は、溶媒または溶媒混合液中の固体のエプレレノンのスラリーを、適用可能な方法の条件下で溶媒または溶媒混合液の沸点に過熱する方法を意味する。
【0113】
“直接結晶化”という用語は当明細書で使用される場合、エプレレノンの中間体の溶媒和結晶の固体状態の形の形成および脱溶媒和をせずに、適切な溶媒からエプレレノンを直接結晶化させることをいう。
【0114】
“粒度”という用語は当明細書で使用する場合、当該技術分野に公知の従来の粒度測定技術、例えばレーザー回折散乱式測定法、沈降場流動分画法、光子相関分光法、またはディスク遠心法により測定される粒度をいう。
【0115】
“D90粒度”という用語は、前記の従来の粒度測定技術により測定される粒子の少なくとも90%の粒度を意味する。
“純度”は従来のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析によるエプレレノンの化学的純度を意味する。当明細書で使用する場合“低純度のエプレレノン”は一般に、H型成長促進物質および/またはL型成長阻害物質の有効量を含むエプレレノンを意味する。当明細書で使用する場合“高純度のエプレレノン”は一般に、H型の成長促進物質および/またはL型成長阻害物質を含まない、または有効量未満を含むエプレレノンを意味する。
【0116】
“相の純度”という用語は、当明細書で述べる赤外分光分析法により決定されるエプレレノンの特定の結晶またはアモルファスの形に関する、エプレレノンの固体状態の純度を意味する。
【0117】
“XPRD”という用語は粉末X線回折を意味する。
“T”という用語は融点を意味する。
“被験者”という用語は当明細書で使用する場合、治療、観察または実験の対象となった動物、好ましくはヒトをいう。
【0118】
“治療”および“治療する”という用語は、ヒトを含む被験者の症状を直接的にもしくは間接的に改善する、または同被験者の症状もしくは障害の進行を遅らせることを目的として、同被験者に医学的援助を提供する、あらゆる方法、活動、適用、治療法等をいう。
【0119】
“治療に有効な”という表現は、代替療法に典型的に伴う副作用を避ける一方で、症状または障害の改善の目標を達成するアルドステロン拮抗薬の量とみなす。
【0120】
“医薬的に受容可能な”という用語は当明細書では形容詞的に使用され、修飾される名詞が医薬生成物における使用に適当であることを意味する。医薬的に受容可能なカチオンは金属イオンおよび有機物イオンを含む。より好ましい金属イオンは適当なアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびその他の生理学的に受容可能な金属イオンを含むが、これに限定されない。代表的なイオンは、通常の原子価を持つアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛を含む。好ましい有機イオンはプロトン化した第三級アミンおよび第四級アンモニウムカチオンを含み、その一部としてトリメチルアミン、ジメチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)およびプロカインを含む。代表的な医薬的に受容可能な酸は非限定的に、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、ギ酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、コハク酸、酪酸、グルコン酸、グルクロン酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、フマル酸、プロピオン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸等を含む。
【0121】
“アルドステロン拮抗薬”という用語は、アルドステロンの効果に対抗する薬剤または化合物を含む。このような薬剤および化合物、例えばメスピレノン(mespirenone)は受容体の上流のメカニズムを通してアルドステロンの作用に拮抗することができる。他の薬剤および化合物、例えばエプレレノンおよびスピロノラクトンはアルドステロン受容体拮抗薬として知られるグループに一般に属し、典型的には腎臓尿細管内に見出されるようにアルドステロン受容体に結合し、受容体の下流の事象の本来のリガンドの活性化を抑制する。
【0122】
“腎臓”および“腎臓の”という用語は疾患名と並記される場合、あらゆる種類の腎臓機能不全を意味する。このような機能不全は、腎硬化症、クレアチニンのクリアランスの障害、微少アルブミン尿症、タンパク尿症、および末期の腎疾患を含むが、これに限定されない。
【0123】
“心臓”“心臓の”および“心血管の”という用語は疾患名と並列して使用される場合、あらゆる種類の心臓および血管の機能不全を意味する。
【0124】
固体状態の形の特徴
1.分子の立体配座
単結晶X線分析は、エプレレノン分子の立体配座が特にステロイド環の7位のエステル基の配向に関して、H型およびL型間で異なることを示す。エステル基の配向はC8−C7−C23−02のねじれ角により定義することができる。
【0125】
H型結晶格子においてエプレレノン分子は、エステルのメトキシ基が7位のC−H結合にほぼ並び、カルボニル基はBステロイド環中心上部にほぼ位置する立体配座をとる。この立体配座においてC8−C7−C23−02ねじれ角は約−73.0°である。この配向においてエステル基(01)のカルボニルの酸素原子は、9,11エポキシド環(04)の酸素原子に近接している。01−04の距離は約2.97Åであり、この値はファンデルワールスの接触距離3Å(酸素のファンデルワールス半径は1.5Åと仮定する)をかろうじて下回る。
【0126】
L型結晶格子においてエプレレノン分子は、エステル基がH型に比して約150°回転しており、C8−C7−C23−02のねじれ角が約+76.9°となる立体配座をとる。この配向においてエステルのメトキシ基はAステロイド環の4,5アルケン部分の方向に位置する。この配向においてエステル基のいずれかの酸素原子(01,02)と9,11エポキシド環の酸素原子との距離は、H型で決定された距離に比して長い。02−04間の距離は約3.04Åであり、ファンデルワールスの接触距離をかろうじて上回る。01−04間の距離は約3.45Åである。
【0127】
エプレレノン分子は、現在までに単結晶X線回折により分析された溶媒和結晶形において、L型の特徴を持つ立体配座をとるようである。
【0128】
2.粉末X線回折
エプレレノンの様々な結晶形をSiemens D5000 粉末回折計、またはInel Multipurpose Diffractometer のいずれかにより分析した。Siemens D5000 粉末回折計で、生データは2q値=2から50、ステップ0.020およびステップ間隔2秒で測定した。Inel Multipurpose Diffractometerでは、サンプルをアルミニウムサンプルホルダー内に設置し、生データは30分間すべての2シータ値で同時に集積した。
【0129】
表1C,1D,1Eは2q値および強度に関する主要なピークの重要なパラメータをエプレレノンのH型(低純度のエプレレノンの温浸により得られたエタノール溶媒和物の脱溶媒和により製造)、L型(高純度エプレレノンの再結晶により得られたエチルケトン溶媒和物の脱溶媒和により製造)、メチルエチルケトン溶媒和物(メチルエチルケトン中の高純度のエプレレノンの室温でのスラリーの転化により製造)の各結晶形について示した(1.54056オングストロームの波長でのX線照射)。
【0130】
H型とL型の製造ルート(すなわち溶媒和物の脱溶媒和)による結晶回折面の格子面間隔の不完全さの結果として、H型とL型の回折パターンにピークの位置のマイナーなシフトが存在し得る。さらにH型は粗製エプレレノンの温浸により製造された溶媒和物から単離されている。この方法のためH型は全体により低い化学的純度(約90%)となる。最後にエプレレノンの溶媒和した形は、結晶格子中の溶媒チャンネル内の溶媒分子のゆらぎの増加により、回折ピークの位置が多少シフトすることが予想される。
表1C:H型のデータ
【0131】
【表8】
Figure 2004507495
【0132】
【表9】
Figure 2004507495
【0133】
表1D:L型のデータ
【0134】
【表10】
Figure 2004507495
【0135】
【表11】
Figure 2004507495
【0136】
表1E:メチルエチルケトン溶媒和物のデータ
【0137】
【表12】
Figure 2004507495
【0138】
【表13】
Figure 2004507495
【0139】
エプレレノンのH型、L型、およびメチルエチルケトン溶媒和結晶の形に関するX線回折パターンの図例を、各々図1−A、1−B、1−Cに示す。H型は2シータ=7.0±0.2、8.3±0.2、および12.0±0.2度に顕著なピークを示す。L型は2シータ=8.0±0.2、12.4±0.2、12.8±0.2および13.3±0.2度に顕著なピークを示す。メチルエチルケトン溶媒和結晶形は2シータ=7.6±0.2、7.8±0.2、および13.6±0.2度に顕著なピークを示す。
【0140】
3.融解/分解温度
非溶媒和エプレレノン結晶形の融解および/または分解温度は、TA Instruments 2920示差走査熱量計を用いて測定した。各サンプル(1−2mg)はシールしたまたはしていないどちらかの状態でアルミニウムパンに設置し、10℃/分で加熱した。融解/分解の範囲は、外挿した開始温度から、融解/分解の最大吸熱までと定義した。
【0141】
非溶媒和エプレレノン結晶形(H型およびL型)の融解は、化学的分解およびトラップされた溶媒が結晶格子から失われることに関与する。融解/分解温度はまた、分析前の固体の処理法により影響を受ける。例えば適当な溶媒から直接結晶化する、または適当な溶媒もしくは溶媒混合液中の高純度のエプレレノンの結晶化により得られた溶媒和物を脱溶媒和することにより製造された、ミルで粉砕していないL型(およそのD90粒度は約180−450ミクロン)は、一般に融解範囲は約237−242℃であった。ミルで粉砕したL型(およそのD90粒度は約80−100ミクロン)(適当な溶媒または溶媒混合液中の高純度のエプレレノン溶液から溶媒和物を結晶化し、その溶媒和物を脱溶媒和してL型を得、得られたL型をミルで粉砕することにより製造されたL型)は一般に、約223−234℃のより低いより広範な融解/分解範囲を示した。低純度エプレレノンの温浸により得られた溶媒和物の脱溶媒和により製造された、ミルで粉砕していないH型(およそのD90粒度は約180−450ミクロン)は一般に、約247−251℃のより高い融解/分解範囲を示した。(a)メチルエチルケトンから直接結晶化した、ミルで粉砕していないL型、(b)メチルエチルケトンからの高純度のエプレレノンの結晶化により得られた溶媒和物の脱溶媒和により製造された、ミルで粉砕していないL型、(c)メチルエチルケトンからの高純度のエプレレノンの結晶化により得られた溶媒和物を脱溶媒和物してミルで粉砕することにより製造されたL型、および(d)メチルエチルケトンからの低純度のエプレレノンの温浸により得られた溶媒和物の脱溶媒和により製造された、ミルで粉砕していないH型、のDSCサーモグラムの例を、各々図2−A、2−B、2−Cおよび2−Dに示す。
【0142】
エプレレノンの溶媒和した形のDSCサーモグラムは、Perkin Elmer Pyris 1 示差走査熱量計を用いて測定した。各サンプル(1−10mg)はシールせずにアルミニウムパンに設置し、10℃/分で加熱した。より低い温度での1回またはそれ以上の吸熱事象は、溶媒和結晶格子から溶媒が失われる時に起こるエンタルピー変化に関与していた。最も高温の1回または複数回の吸熱はL型またはH型エプレレノンの融解/分解に関与していた。
【0143】
4.赤外線吸収分光法
エプレレノンの溶媒和していない形(H型およびL型)の赤外線吸収スペクトはNicolet DRIFT(フーリエ変換型赤外拡散反射)Magana System550分光光度計で得た。Spectra−Tech Collector システムおよびマイクロサンプルカップを使用した。サンプル(5%)は臭化カリウム中で分析し、400−4000cm−1でスキャンした。希釈クロロホルム溶液(3%)中のエプレレノンまたは溶媒和結晶形のエプレレノンの赤外線吸収スペクトルは、Bio−rad FTS−45分光光度計で得た。クロロホルム溶液のサンプルは、塩化ナトリウム塩プレートのパスレングス0.2mmの溶液セルを用いて分析した。溶媒和FTIRスペクトルはIBM micro−MIR(多重内部反射)アクセサリーにより集積した。サンプルは400−4000cm−1でスキャンした。(a)H型(b)L型(c)メチルエチルケトン溶媒和物、および(d)クロロホルム溶液中のエプレレノンの赤外線吸収スペクトルの例を各々図3−A、3−B、3−Cおよび3−Dに示す。
【0144】
表2にH型、L型、およびメチルエチルケトン溶媒和結晶形のエプレレノンの赤外線吸収のバンドの実例を示す。クロロホルム溶液中のエプレレノンの赤外線吸収のバンドの実例も比較のため示す。H型と、L型またはメチルエチルケトン溶媒和物のいずれかとの相違点が、例えばスペクトルのカルボニル領域に観察された。H型はおよそ1739cm−1にエステルのカルボニルの伸縮があるが、一方L型およびメチルエチルケトン溶媒和物は相応する伸縮は各々1724および1722cm−1にある。クロロホルム溶液中のエプレレノンはおよそ1727cm−1にエステルのカルボニルの伸縮を生じる。H型とL型とのエステルのカルボニルの伸縮頻度の違いは、両結晶形間のエステル基の配向の違いを反映している。加えて、Aステロイド環に結合したケトンのエステルの伸縮は、H型またはメチルエチルケトン溶媒和物のいずれかのおよそ1664−1667cm−1から、L型のおよそ1655cm−1にシフトしている。相応するカルボニルの伸縮は、希釈溶液中ではおよそ1665cm−1に生じる。
【0145】
H型とL型のもう1つの相違点は、C−H変角領域に見られた。H型はおよそ1399cm−1に吸収があるが、その吸収はL型、メチルエチルケトン溶媒和物、またはクロロホルム溶液中のエプレレノンでは観察されていない。1399cm−1の伸縮は、カルボニル基に隣接するC2およびC21のメチレン基のCHの開閉 (scissoring)領域で生じる。
表2
【0146】
【表14】
Figure 2004507495
【0147】
5.核磁気共鳴
13C NMRスペクトルは31.94MHzの磁場で測定した。H型およびL型エプレレノンの13C NMRスペクトルの例を各々図4および5に示す。H型エプレレノンを分析し図4に反映されたデータから分析したH型エプレレノンは、純粋な相ではなく、少量のL型エプレレノンを含むことを反映していた。H型は炭素原子の共鳴により64.8ppm、24.7ppmおよび19.2ppm付近で最も明確に識別される。L型は炭素原子の共鳴により67.1ppmおよび16.0ppm付近で最も明確に識別される。
【0148】
6.熱重量法
溶媒和物の熱重量分析をTA Instruments TGA 2950熱量分析計で行った。サンプルは窒素ガスのパージ下でシールしないアルミニウムパンに設置した。出発温度を25℃とし、約10℃/分のペースで昇温した。メチルエチルケトン溶媒和物の熱重量分析の図例を、図6−Aに示す。
【0149】
7.単位胞パラメータ
以下の表3A、3Bおよび3Cに、H型、L型、および数種類の溶媒和結晶形について決定された単位胞パラメータを示す。
表3A
【0150】
【表15】
Figure 2004507495
【0151】
表3B
【0152】
【表16】
Figure 2004507495
【0153】
【表17】
Figure 2004507495
【0154】
表3C
【0155】
【表18】
Figure 2004507495
【0156】
エプレレノンの選択された溶媒和結晶形の付加的な情報を、以下の表4に記す。メチルエチルケトン溶媒和物に関する上の表3Aに示した単位胞のデータはまた、これら付加的なエプレレノン結晶溶媒和物の多くの単位胞のパラメータを代表しているともいえる。調べたエプレレノン結晶溶媒和物のほとんどは実質的に互いに等構造(isostructural)である。組み入れられた溶媒分子のサイズにより、ある溶媒和結晶形と次の結晶形に粉末X線回折ピークのマイナーなシフトも存在するが、全体の回折パターンは大体同じであり、単位胞のパラメータおよび分子の位置は、調べた溶媒和物のほとんどについて大体等しい。
表4
【0157】
【表19】
Figure 2004507495
【0158】
溶媒和物の単位胞は4つのエプレレノン分子からなる。多数の溶媒和物に関する、単位胞内のエプレレノン分子と溶媒分子の数量的関係も表4に記す。H型の単位胞は4つのエプレレノン分子で構成される。L型の単位胞は2つのエプレレノン分子で構成される。エプレレノン分子が並進および回転運動をして、溶媒分子により残されていた空間が満たされる時、溶媒和物の単位胞はH型および/またはL型単位胞に、脱溶媒和中に変換される。表4はまた多数の様々な溶媒和物の脱溶媒和温度も示す。
【0159】
5.不純物分子の結晶特性
エプレレノン中の選択された不純物は、溶媒和物の脱溶媒和中にH型の生成を誘発することができる。特に以下の2つの不純物分子の効果が評価された:7−メチル水素4α,5α:9α,11α−ジエポキシ−17−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグナン−7α,21−ジカルボキシラート,γ−ラクトン 3(“ジエポキシド”);および7−メチル水素11α,12α−エポキシ−17−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−7α,21−ジカルボキシラート,γ−ラクトン 4(“11,12−エポキシド”)。
【0160】
【化13】
Figure 2004507495
【0161】
【化14】
Figure 2004507495
【0162】
脱溶媒和の結果得られるエプレレノン結晶形に関するこれらの不純物分子の効果は、本出願の実施例にてより詳細に述べる。
7−メチル水素17−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグナ−4,9(11)−ジエン−7α,21−ジカルボキシラート,γ−ラクトン 5(“9,11−オレフィン”)とH型の単結晶構造の類似性が得られたことから、9,11−オレフィンもまた、溶媒和物の脱溶媒和中にH型の生成を誘発できると仮定される。
【0163】
【化15】
Figure 2004507495
【0164】
ジエポキシド、11,12−エポキシドおよび9,11−オレフィンは、例えばNgらによるWO98/25948の各実施例47C、47Bおよび37Hに記載されているように製造することができる。
【0165】
各不純物化合物として単結晶形を単離した。ジエポキシド、11,12−エポキシドおよび9,11−オレフィンとして単離された結晶形の代表的な粉末X線回折パターンを各々図7,8,および10に示す。各不純物分子の粉末X線回折パターンはH型の粉末X線回折パターンと類似しており、H型と3つの不純物化合物が類似する単結晶構造であることを示唆する。
【0166】
各不純物化合物の単結晶をまた単離してX線構造決定を行い、これら3つの化合物がH型と類似する単結晶構造をとることを実証した。ジエポキシドの単結晶は、メチルエチルケトンより単離した。11,12−エポキシドの単結晶はイソプロパノールより単離した。9,11−オレフィンの単結晶はn−ブタノールより単離した。各不純物化合物の結晶形に対して決定された結晶構造データを表5に示す。得られた結晶系および単位胞パラメータは、H型、ジエポキシド、11,12−エポキシドおよび9,11−オレフィン結晶形で大体等しかった。
表5
【0167】
【表20】
Figure 2004507495
【0168】
表5に示した4つの化合物は同じ空間群にて結晶化し、類似の単位胞パラメータを有する(すなわちこれらは等構造である)。ジエポキシド、11,12−エポキシドおよび9,11−オレフィンはH型の立体配座をとると仮定される。各不純物化合物を取り込んだH型の単離(溶液から直接)が比較的容易なことは、H型の格子がこの一連の類似する構造の化合物の取り込みに安定な状態であることを示す。
【0169】
エプレレノンの製造
本発明の新しい結晶形の製造に使用するエプレレノン出発物質は、NgらのWO97/21720;およびNgらのWO98/25948の方法、特にWO97/21720およびWO98/25948に記載のスキーム1を用いて製造することができる。
【0170】
結晶形の製造
1.溶媒和結晶形の製造
エプレレノンの溶媒和結晶形は、適切な溶媒または適切な複数の溶媒の混合液からのエプレレノンの結晶化により製造することができる。適切な溶媒または適切な溶媒の混合液は一般に、温度を上昇させるとあらゆる不純物と共にエプレレノンを溶解するが、冷却時には優先的に溶媒和物を結晶化する有機溶媒または有機溶媒の混合液を含む。このような溶媒または溶媒混合液中のエプレレノンの溶解度は一般に、室温で約5から約200mg/mLである。溶媒または溶媒混合液は好ましくは、エプレレノン出発物質を製造する過程で既に使用した溶媒、エプレレノン結晶形を含む最終的な医薬組成物に含まれる場合には、特に医薬的に受容可能となる溶媒から選択する。例えば塩化メチレンを含む溶媒和物を生成する塩化メチレンを含む溶媒系は、一般に望ましくない。
【0171】
使用する各溶媒は好ましくは医薬的に受容可能な溶媒であり、特に”Impurities: Guideline For Residual Solvents”, International Conference On Harmonisation Of Technical Requirements For Registration Of Pharmaceuticals For Human Use (Recommended for Adoption at Step 4 of the ICH Process on July 17, 1997 by the ICH Steering Committee)に定義されたクラス2またはクラス3の溶媒である。なおより好ましくは溶媒または溶媒混合液は、メチルエチルケトン、1−プロパノール、2−ペンタノン、酢酸、アセトン、酢酸ブチル、クロロホルム、エタノール、イソブタノール、酢酸イソブチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、n−ブタノール、n−オクタノール、イソプロパノール、酢酸プロピル、プロピレングリコール、t−ブタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、メタノールおよびt−酢酸ブチルから成る群から選択される。なおより好ましくは溶媒はメチルエチルケトンおよびエタノールから成る群から選択される。
【0172】
エプレレノンの溶媒和結晶形を製造するため、ある量のエプレレノン出発物質を、ある量の溶媒に溶解させ、結晶が形成されるまで冷却する。エプレレノンを溶媒に加える際の溶媒温度は、一般に溶媒または溶媒混合液の溶解度曲線に基づいて選択する。当明細書で述べたほとんどの溶媒については、例えばこの溶媒温度は典型的には少なくとも約25℃、好ましくは約30℃から溶媒の沸点まで、そしてより好ましくは溶媒の沸点より約25℃低い温度から溶媒の沸点までである。
【0173】
あるいは加熱した溶媒をエプレレノンに加え、この混合液を結晶が形成されるまで冷却することができる。エプレレノンに加える時の溶媒温度は、一般に溶媒または溶媒混合液の溶解度曲線に基づいて選択されることになる。当明細書で述べたほとんどの溶媒については、例えばこの溶媒温度は典型的には少なくとも約25℃、好ましくは約50℃から溶媒の沸点まで、そしてより好ましくは溶媒の沸点より約15℃低い温度から溶媒の沸点までである。
【0174】
一定量の溶媒に混合するエプレレノン出発物質の量は、同様に溶媒または溶媒混合液に溶解度曲線に依存することになる。典型的には溶媒に加えるエプレレノンの量は、室温ではその体積の溶媒に完全には溶解しない。当明細書で述べたほとんどの溶媒について、例えば一定量の溶媒に混合するエプレレノン出発物質の量は、通常室温でその体積の溶媒に溶解するエプレレノンの量の、少なくとも約1.5から約4.0倍、好ましくは約2.0から約3.5倍、そしてより好ましくは約2.5倍である。
【0175】
エプレレノン出発物質を溶媒に完全に溶解させた後、典型的には溶液をゆっくり冷却し、エプレレノンの溶媒和結晶形を結晶化させる。当明細書で述べたほとんどの溶媒については、例えば溶液を約20℃/分より遅い速度で、好ましくは約10℃/分またはそれより遅い速度で、より好ましくは約5℃/分またはそれより遅い速度で、そしてなおより好ましくは約1℃/分またはそれより遅い速度で冷却する。
【0176】
溶媒和結晶形を採集するエンドポイント温度は、溶媒または溶媒混合液の溶解度曲線に依存することになる。当明細書で述べたほとんどの溶媒については、例えばエンドポイント温度は典型的には約25℃未満、好ましくは約5℃未満、そしてより好ましくは約−5℃未満である。エンドポイント温度を低くすることは一般に溶媒和結晶形の形成に好ましい。
【0177】
あるいは溶媒和物の製造に他の技術を使用することもできる。このような技術の例として(i)エプレレノン出発物質を1種類の溶媒に溶解し、溶媒和結晶形の結晶化の手助けとなる補助溶媒(co−solvent)を加える方法、(ii)蒸気拡散法による溶媒和物の成長、(iii)蒸発による溶媒和物の単離、例えばロータリーエバポレーターによる方法、および(iv)スラリーの転化、を含むが、これに限定されない。
【0178】
上述のように製造した溶媒和結晶形の結晶は、あらゆる適切な従来の方法、例えば濾過または遠心分離により溶媒から分離することができる。結晶化の際に溶媒系の撹拌が強すぎると、一般により小さい結晶粒度になる。
【0179】
2.溶媒和物からのL型の製造
L型エプレレノンは溶媒和結晶形から脱溶媒和により直接製造することができる。脱溶媒和はあらゆる適切な脱溶媒和技術、例えば溶媒和物の加熱、溶媒和物の周りの周囲圧の減圧、またはそれらの組み合わせにより行うことができるが、これに限定されない。溶媒和物を加熱して(例えばオーブン中で)溶媒を除去する場合、この方法の間の溶媒和物の温度は、典型的にはH型およびL型の互変温度を越えないものとする。この温度は好ましくは、約150℃を越えない。
【0180】
脱溶媒和圧および脱溶媒和の時間は非常に厳密ではない。脱溶媒和圧は好ましくは約1気圧またはそれ未満である。しかし脱溶媒和圧を減圧すると、脱溶媒和が起こり得る温度および/または脱溶媒和の時間は、さらに低下する。特により高い脱溶媒和温度の溶媒では、減圧下で乾燥することでより低温の乾燥温度が可能となる。脱溶媒和の時間は、脱溶媒和してL型を生成し、それをを完了させるのに十分な時間のみが必要となる。
【0181】
ほとんどすべてL型の生成物の製造を確実にするためには、エプレレノン出発物質は典型的には高純度のエプレレノン、好ましくはほぼ純粋なエプレレノンである。L型エプレレノンの製造に使用するエプレレノン出発物質は、一般に少なくとも90%の純度、好ましくは少なくとも95%の純度、そしてより好ましくは少なくとも99%の純度である。より詳細には本出願の他の項目で述べるように、エプレレノン出発物質中のある種の不純物は、当方法から得られる生成物の収量およびL型の含有量に逆効果となり得る。
【0182】
高純度のエプレレノン出発物質から当方法で製造される結晶化エプレレノン生成物は、少なくとも10%のL型、好ましくは少なくとも50%のL型、より好ましくは少なくとも75%のL型、なおより好ましくは少なくとも90%のL型、なおより好ましくは少なくとも95%のL型、そしてなおより好ましくはほぼ純粋な相のL型を含む。
【0183】
2.溶媒和物からのH型の製造
H型を含む生成物は、L型の製造に関して上に述べたものと大体同じ方法で、(i)高純度のエプレレノン出発物質の代わりに低純度のエプレレノン出発物質を使用する、(ii)純粋な相のH型結晶を種として溶媒系に加える、または(iii)(i)および(ii)の組み合わせにより、製造することができる。
【0184】
A.成長促進物質および阻害物質としての不純物の使用
エプレレノン出発物質中のすべての不純物の総量よりむしろ、エプレレノン出発物質中の選択された不純物の存在および量が、溶媒和物の脱溶媒和中のH型結晶形生成の可能性に影響を与える。選択される不純物は一般に、H型成長促進物質またはL型成長阻害物質である。不純物はエプレレノン出発物質に含む、エプレレノン出発物質を加える前に溶媒もしくは溶媒混合液に含む、および/またはエプレレノン出発物質を加えた後に溶媒もしくは溶媒混合液に含むことができる。Bonafede et al. J Amer Chem Soc 1995; 117:30 に多形系における成長促進物質および成長阻害物質の使用について考察されており、ここに参照として援用する。本発明に関しては、不純物は一般にH型の単結晶構造と大体同じ単結晶構造を持つ化合物を含む。不純物は好ましくはH型の粉末X線回折パターンと大体同じ粉末X線回折パターンを持つ化合物であり、より好ましくはジエポキシド、11,12−エポキシド、9,11−オレフィンおよびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0185】
H型結晶の製造に必要な不純物の量は典型的には、溶媒もしくは溶媒混合液およびエプレレノンに対する不純物の相対的に溶解度に部分的に依存し得る。メチルエチルケトン溶媒からのH型の結晶化において、例えばジエポキシド 対 低純度のエプレレノン出発物質の重量比は、典型的には少なくとも約1:100、好ましくは少なくとも約3:100、より好ましくは約3:100と約1:5の間、なおより好ましくは約3:100と約1:10の間である。11,12−エポキシドは、ジエポキシドに比してメチルエチルケトンへのより高い溶解度を有し、一般により多量の11,12−エポキシドがH型結晶の製造に必要である。不純物が11,12−エポキシドを含む場合、11,12−エポキシド 対 低純度のエプレレノン出発物質の重量比は典型的には少なくとも約1:5、より好ましくは少なくとも約3:25、そしてなおより好ましくは約3:25と約1:5の間である。ジエポキシドおよび11,12−エポキシド双方の不純物をH型結晶の製造に使用する場合、各不純物 対 エプレレノン出発物質の重量比は、1つの不純物だけをH型結晶の製造に使用する場合の相応する比率より低くすることができる。
【0186】
選択された不純物を含む溶媒和物を脱溶媒和する場合、H型およびL型の混合物が一般に得られる。溶媒和物の最初の脱溶媒和から得られる生成物中のH型の重量比率は、典型的には約50%未満である。以下に述べるように、この生成物を結晶化または温浸によりさらに処理することで、一般に生成物中のL型の重量比率を上げることができる。
【0187】
種結晶
H型結晶はまた、エプレレノンの結晶化の前に種として純粋な相のH型結晶(または先に既に述べたようにH型成長促進物質および/またはL型成長阻害物質)を溶媒系に加えることにより、製造することができる。エプレレノン出発物質は低純度のエプレレノンまたは高純度のエプレレノンのいずれかとすることができる。どちらの出発物質から製造して得られた溶媒和物を脱溶媒和する場合も、生成物中のH型の重量比率は典型的には少なくとも約70%であり、ほとんど約100%にすることができる。
【0188】
溶媒系に加えるH型種結晶 対 溶媒系に加えるエプレレノン出発物質の重量比は、一般に少なくとも約0.75:100、好ましくは約0.75:100と約1:20の間、そしてより好ましくは約1:100と約1:50の間である。H型種結晶は、H型結晶の製造について本出願に述べたいかなる方法でも製造することができ、特に以下に述べる温浸によるH型結晶の製造方法により製造することができる。
【0189】
H型種結晶は一度に、複数回の添加、または一定時間をかけてほぼ継続的に加えることができる。しかしH型種結晶の添加は、一般にエプレレノンが溶液から結晶化し始める前に完了する、すなわち曇り点(準安定領域の低温末端)に達する前に種結晶の添加が完了する。種の添加は典型的には、溶液温度が曇り点より約0.5℃上から曇り点より約10℃上の範囲にある時、好ましくは曇り点より約2℃上から約3℃上の範囲内にある時に行う。種を加える温度が曇り点より高くなる程、H型結晶の結晶化に必要な種の量は一般に増加する。
【0190】
種の添加は好ましくは曇り点より高いだけでなく、準安定領域の範囲内で行う。曇り点および準安定領域の双方とも、溶媒または溶媒混合液中のエプレレノンの溶解度および濃度に依存する。メチルエチルケトン12倍希釈溶液に関して、例えば準安定領域の高温末端は一般に約70℃と約73℃の間であり、準安定領域の低温末端(すなわち曇り点)は約57℃と約63℃の間である。メチルエチルケトン8倍希釈溶液に関しては、溶液が過飽和になるため準安定領域はいっそう狭くなる。この濃度で溶液の曇り点は約75℃から約76℃に生じる。メチルエチルケトンの沸点は周囲状態で約80℃であるため、この溶液への種の添加は典型的には約76.5℃と沸点との間で行う。
【0191】
H型を種として加える方法を説明する非限定的実施例を、以下の実施例11に記載する。
H型成長促進物質もしくはL型成長阻害物質、および/またはH型種結晶を用いて得られる結晶化エプレレノン生成物は、一般に少なくとも2%のH型、好ましくは少なくとも5%のH型、より好ましくは少なくとも7%のH型、そしてなお好ましくは少なくとも10%のH型を含む。結晶化エプレレノン生成物の残り部分は一般にL型である。
【0192】
粉砕されたエプレレノンにより製造されるH型
さらのもう1つの代替法として、適切な粉砕されたエプレレノンにより少量のH型を製造できることが発見された。粉砕されたエプレレノン中のH型の濃度は約3%程度であることが認められた。
【0193】
4.低純度エプレレノンから製造された溶媒和物からのL型エプレレノンの製造
先に述べたように、低純度のエプレレノンを結晶化して溶媒和物を形成した後、その溶媒和物を脱溶媒和することで、一般にH型およびL型双方を含む生成物が得られる。L型含有量のより多い生成物は、上述のH型の製造について述べたものと大体同じ方法で低純度のエプレレノンから製造する、すなわち純粋な相のL型結晶を種として溶媒系に加えることにより、またはL型成長促進物質および/またはH型成長阻害物質を用いることにより製造することができる。種の添加のプロトコールおよび、溶媒系に加えるL型種結晶の量 対 溶媒系に加えるエプレレノン出発物質の重量比は、純粋な相のH型種結晶の添加によるH型エプレレノンの製造について既に述べた比率と一般に等しい。
【0194】
この方法で製造した結晶化エプレレノン生成物は、一般に少なくとも10%のL型、好ましくは少なくとも50%のL型、より好ましくは少なくとも75%のL型、より好ましくは少なくとも90%のL型、なおより好ましくは少なくとも約95%のL型、そしてなおより好ましくはほぼ純粋な相のL型を含む。
【0195】
このセクションおよび、H型エプレレノンの製造に関する先のセクションで述べた種の添加のプロトコールもまた、結晶化エプレレノンの粒度のコントロールの改善を検討することができる。
【0196】
5.溶液からの直接のL型の結晶化
L型エプレレノンはまた、中間生成物である溶媒和物の生成およびそれに伴う脱溶媒和をせずに、適切な溶媒または溶媒混合液からエプレレノンを直接結晶化することにより製造することができる。典型的には(i)溶媒が、溶媒和物結晶格子内にあるチャンネルススペースに合わない分子サイズを有する、(ii)エプレレノンおよびあらゆる不純物が昇温時に溶媒に溶解する、および(iii)冷却化、により非溶媒和L型エプレレノンの結晶化が可能となる。溶媒または溶媒混合液中のエプレレノンの溶解度は、一般に室温で約5から約200mg/mLである。溶媒または溶媒混合液は好ましくは、メタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、ニトロベンゼン、水およびエチルベンゼンから成る群から選択される1つまたはそれ以上の溶媒を含む。
【0197】
L型エプレレノンを溶液から直接結晶化するため、ある量のエプレレノン出発物質を、ある量の溶媒に溶解させ、結晶が形成されるまで冷却する。エプレレノンを溶媒に加える際の溶媒温度は、溶媒または溶媒混合液の溶解度曲線に基づいて選択することになる。当明細書で述べたほとんどの溶媒については、例えばこの溶媒温度は典型的には少なくとも約25℃、好ましくは約30℃から溶媒の沸点まで、そしてより好ましくは溶媒の沸点より約25℃低い温度から溶媒の沸点までである。
【0198】
あるいは加熱した溶媒をエプレレノンに加え、その混合液を結晶が形成されるまで冷却することができる。エプレレノンに加える時の溶媒温度は、一般に溶媒または溶媒混合液の溶解度曲線に基づいて選択されることになる。当明細書で述べたほとんどの溶媒については、例えばこの溶媒温度は典型的には少なくとも約25℃、好ましくは約50℃から溶媒の沸点まで、そしてより好ましくは溶媒の沸点の約15℃低い温度から溶媒の沸点までである。
【0199】
一定量の溶媒に混合するエプレレノン出発物質の量は、同様に溶媒または溶媒混合液の溶解度曲線に依存することになる。典型的には溶媒に加えるエプレレノンの量は、室温ではその体積の溶媒に完全には溶解しない。当明細書で述べたほとんどの溶媒について、例えば一定量の溶媒に混合するエプレレノン出発物質の量は、通常室温でその体積の溶媒に溶解するエプレレノンの量の、通常少なくとも約1.5から約4.0倍、好ましくは約2.0から約3.5倍、そしてより好ましくは約2.5倍である。
【0200】
ほぼ純粋な相のL型を含む生成物の製造を確実にするため、エプレレノン出発物質は一般に高純度のエプレレノンである。エプレレノン出発物質は好ましくは少なくとも65%の純度、より好ましくは少なくとも90%の純度、なおより好ましくは少なくとも98%の純度、そしてなおより好ましくは少なくとも99%の純度である。
【0201】
エプレレノン出発物質を溶媒に完全に溶解させた後、典型的には溶液をゆっくり冷却し、エプレレノンの溶媒和結晶形を結晶化させる。当明細書で述べたほとんどの溶媒については、例えば溶液を約1.0℃/分より遅い速度で、好ましくは約0.2℃/分またはそれより遅い速度で、より好ましくは約5℃/分と約0.1℃/分の間の速度で冷却する。
【0202】
L型結晶を採集するエンドポイント温度は、溶媒または溶媒混合液の溶解度曲線に依存することになる。当明細書で述べたほとんどの溶媒については、例えばエンドポイント温度は典型的には約25℃未満、好ましくは約5℃未満、そしてより好ましくは約−5℃未満である。
【0203】
あるいは、L型結晶の製造に他の技術を使用することもできる。このような技術の例として(i)エプレレノン出発物質を1種類の溶媒に溶解し、L型エプレレノンの結晶化の手助けとなる補助溶媒を加える、(ii)蒸気拡散法によるL型エプレレノンの成長、(iii)蒸発によるL型エプレレノンの単離、例えばロータリーエバポレーターによる方法、および(iv)スラリーの転化を含むが、これに限定されない。
【0204】
上述のように製造した溶媒和結晶形の結晶は、あらゆる適切な従来の方法、例えば濾過または遠心分離により溶媒から分離することができる。
さらにL型エプレレノンはまた、メチルエチルケトン中の高純度のエプレレノンのスラリーを温浸し(以下に記載)、スラリーの沸点で温浸したエプレレノンを濾過することにより、製造することもできる。
【0205】
5.溶液からの直接のH型の製造
H型およびL型の互変温度(Tt)より高い温度で結晶化を行う場合、特にH型成長促進物質もしくはL型成長阻害物質が存在するか、あるいは溶媒に純粋な相のH型種結晶を加える場合には、H型はこのようなより高い温度でより安定であるため、溶液から直接H型が結晶化するであろう。使用する溶媒系は好ましくは高沸点溶媒、例えばニトロベンゼンを含む。適切なH型成長促進物質は、ジエポキシドおよび11,12−オレフィンを含むことになるが、これに限定されない。
【0206】
6.溶媒によるエプレレノンの温浸
エプレレノンの溶媒和結晶形、エプレレノンのH型およびL型はまた、適切な溶媒または溶媒混合液中のエプレレノン出発物質の温浸により製造することができる。温浸法では、エプレレノンのスラリーを溶媒または溶媒混合液の沸点に加熱する。例えばある量のエプレレノン出発物質をある体積の溶媒または溶媒混合液に混ぜ合わせ、過熱して還流し、留出物の除去に伴い同時に付加的な量の溶媒を補いながら、留出物を除去する。あるいは温浸法の間に新しい溶媒は補わずに、留出物を貯留して再利用することもできる。典型的には一度本来の体積に当たる溶媒が除去された後、または溶媒が貯留および再利用された後、スラリーを冷却し、溶媒和結晶を形成させる。溶媒和結晶はいかなる適切な従来の方法でも、例えば濾過または遠心分離により溶媒から分離することができる。先に述べたように溶媒和物を脱溶媒和することで、溶媒和結晶中の選択された不純物の存在の有無に依存して、H型またはL型エプレレノンのいずれかを得る。適切な溶媒または溶媒混合液は、一般に当明細書で先に述べた1つまたはそれ以上の溶媒を含む。溶媒は例えば、メチルエチルケトンおよびエタノールから成る群から選択することができる。
【0207】
温浸法で使用する溶媒に加えるエプレレノン出発物質の量は、一般に溶媒または溶媒混合液の沸点でスラリーを維持するのに十分な量である(すなわち溶媒または溶媒混合液中のエプレレノンは完全には溶解しない)。実例の値として、4mLメチルエチルケトン当たり約1gのエプレレノン、および8mLエタノール当たり約1gのエプレレノンを含むが、これに限定されない。
【0208】
一度溶媒の一巡が完了した後、一般には溶液をゆっくり冷却してエプレレノンの溶媒和結晶形を結晶化させる。調査した溶媒に関しては、例えば溶液は約20℃/分より遅い速度で、好ましくは約10℃/分またはそれより遅い速度で、より好ましくは約5℃/分またはそれより遅い速度で、そしてなおより好ましくは約1℃/分またはそれより遅い速度で冷却する。
【0209】
溶媒和結晶形を採集するエンドポイント温度は、溶媒または溶媒混合液の溶解度曲線に依存することになる。当明細書で述べたほとんどの溶媒については、例えばエンドポイント温度は典型的には約25℃未満、好ましくは約5℃未満、そしてより好ましくは約−5℃未満である。
【0210】
主としてL型を含むまたはL型のみを含む生成物を所望する場合、典型的には高純度のエプレレノン出発物質を温浸する。高純度のエプレレノン出発物質は、好ましくは少なくとも98%の純度、より好ましくは少なくとも99%の純度、そしてなおより好ましくは少なくとも99.5%の純度である。この方法で製造する温浸法によるエプレレノン生成物は、一般に少なくとも10%のL型、好ましくは少なくとも50%のL型、より好ましくは少なくとも75%のL型、より好ましくは少なくとも90%のL型、なおより好ましくは少なくとも約95%のL型、そしてなおより好ましくはほぼ純粋な相のL型を含む。
【0211】
主としてH型を含むまたはH型のみを含む生成物を所望する場合、典型的には低純度のエプレレノン出発物質を温浸する。低純度のエプレレノン出発物質は、一般にH型生成に必要な量と同量のH型成長促進物質および/またはL型成長阻害物質のみを含む。好ましくは低純度のエプレレノン出発物質は、少なくとも65%の純度、より好ましくは少なくとも75%の純度、そしてなおより好ましくは少なくとも80%の純度である。この方法で製造する温浸法によるエプレレノン生成物は、一般に少なくとも10%のH型、好ましくは少なくとも50%のH型、より好ましくは少なくとも75%のH型、より好ましくは少なくとも90%のH型、なおより好ましくは少なくとも約95%のH型、そしてなおより好ましくはほぼ純粋な相のH型を含む。
【0212】
8.アモルファスエプレレノンの製造
アモルファスエプレレノンは固体エプレレノンの適切な粉末化、例えば押しつぶす、すりつぶす、および/または微粉状にすることにより、少量製造することができる。純粋な相のアモルファスエプレレノンは、例えばエプレレノン溶液、特にエプレレノン水溶液の凍結乾燥により製造することができる。これらの方法は以下の実施例17および18に説明する。
【0213】
実施例
以下の実施例は本出願で述べたエプレレノンの様々な固体状態の形の製造法の詳細な記述を含む。これらの詳細な記述は本発明の範囲内であり、本発明の例示に役立つものである。これらの詳細な記述は目的の説明のみのためであり、本発明の範囲を制限する意図はない。指示がない限り、すべての割合は重量比であり、温度は摂氏である。以下の各実施例で使用されるエプレレノン出発物質は、NgらのWO98/25948に記載されたスキーム1に従って製造した。
【0214】
実施例5:(a)高純度エプレレノン出発物質からのメチルエチルケトン溶媒和物の製造および(b)得られた溶媒和物からのL型結晶エプレレノンの製造
A.メチルエチルケトン溶媒和物の製造:
高純度のエプレレノン(437mg;0.2%未満のジエポキシドおよび11,12エポキシドの存在を含む、99%以上の純度)を10mLのメチルエチルケトン中に、マグネティックスターラーにて900rpmで撹拌しながら、ホットプレート上で加熱沸騰させることにより溶解させた。得られた溶液を継続的にスターラーで撹拌しながら室温まで冷却させた。一度溶液が室温になった後、1℃の水浴に移し、1時間撹拌を続けた。1時間後、固体のメチルエチルケトン溶媒和物を減圧濾過により集めた。
【0215】
B.L型結晶エプレレノンの製造
上のステップAで製造した固体のメチルエチルケトン溶媒和物を、100℃のオーブン中、周囲圧で4時間乾燥させた。乾燥した固体は、DSCおよびXPRD分析により純粋なL型であることが決定された。
【0216】
実施例6:高純度エプレレノン出発物質からの付加的な溶媒和物の製造
付加的な溶媒和物結晶形は、メチルエチルケトンを以下の溶媒:n−プロパノール、2−ペンタノン、酢酸、アセトン、酢酸ブチル、クロロホルム、エタノール、イソブタノール、酢酸イソブチル、イソプロパノール、酢酸メチル、プロピオン酸エチル、n−ブタノール、n−オクタノール、酢酸プロピル、プロピレングリコール、t−ブタノール、テトラヒドロフラン、およびトルエンの1つに置き換え、大体上の実施例5のステップAで述べたように結晶化を行うことにより製造した。L型エプレレノンは、大体実施例5のステップBで述べたように、各溶媒和物から形成させた。
【0217】
実施例7:蒸気拡散法の結晶の成長によるメチルエチルケトン溶媒和物の製造
エプレレン(400mg:純度99.9%以上)を20mLメチルエチルケトンに、ホットプレート上で温めることにより溶解させ、ストック溶液を作成した。ストック溶液8mLを第1の20mLシンチレーションバイアルに移し、メチルエチルケトンで10mLに希釈した(80%)。ストック溶液10mLを第2の20mLシンチレーションバイアルに移し、メチルエチルケトンで10mLに希釈した(40%)。最後の2mLのストック溶液をメチルエチルケトンで10mLに希釈した(20%)。希釈液を含む4本のバイアルを、貧溶媒として少量のヘキサンを含むデシケータージャーに移した。デシケータージャーを密封し、ヘキサン蒸気をメチルエチルケトン溶液中に拡散させた。メチルエチルケトン溶媒和物結晶が、翌日までに80%希釈サンプル中に成長した。
【0218】
実施例8:ロータリーエバポレーター法によるメチルエチルケトン溶媒和物の製造
約400mgのエプレレノン(純度99.9%以上)を250mL丸底フラスコに量りとる。溶媒(150mL)をフラスコに加え、必要があれば固体が溶けるまで溶液を緩やかに加熱する。得られた透明な溶液を湯浴温度約85℃でBuchi ロータリーエバポレーターに入れ、溶媒を真空下で除去する。約10mLの溶媒が丸底フラスコに残っている時点で、溶媒除去を中止する。得られた固体は形を決定するため適当な方法(XPRD、DSC、TGA、顕微鏡等)で分析する。
【0219】
実施例9:スラリーの転化
およそ150mgのL型エプレレノンおよび150mgのH型エプレレノンを5mL酢酸エチルに加えた。得られたスラリーを300rpm(マグネティックスターラー)でオーバーナイト撹拌した。翌日固体のサンプルを濾過して集めた。XPRDによるサンプルの分析により、サンプルがすべてL型エプレレノンであることが示された。
【0220】
実施例10:(a)低純度エプレレノン出発物質からの溶媒和物の製造および(b)得られた溶媒和物からのH型結晶エプレレノンの製造
様々な量の不純物7−メチル水素4α,5α:9α,11α−ジエポキシ−17−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグナン−7α,21−ジカルボキシラート,γ−ラクトン(“ジエポキシド”);または不純物7−メチル水素11α,12α−エポキシ−17−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−7α,21−ジカルボキシラート,γ−ラクトン(“11,12−エポキシド”)を含むサンプルは、総サンプル量100mgを得るのに十分な量のエプレレノンと共に、所望の不純物の量を7mLシンチレーションバイアルに加えることにより製造した。各サンプル中のジエポキシドまたは11,12−エポキシドの重量パーセントを各々表6Aおよび6Bに示す。マイクトフレア(micro−flea )マグネティックスターラーを1mLのメチルエチルケトンと共に各シンチレーションバイアルに加えた。バイアルは緩くふたをして、ホットプレート上でマグネテティックスターラーで撹拌しながら加熱、還流することにより固体を溶解させた。一度固体が溶解した後、溶液をホットプレート上で室温まで冷却させた。冷却中もスターラーの撹拌は継続した。溶液が室温に達した後、固体を減圧濾過して集め、直ちに粉末X線回折(XPRD)により分析した。固体を次に100℃のオーブンに入れ、周囲圧で1時間乾燥させた。乾燥した固体をXPRDにより、2シータ=約12.1度のH型の回折ピーク領域をモニターすることによりH型含有量を分析した。XPRD回折パターンはすべてInel Multipurpose Diffractometer を用いて記録した。
表6A
【0221】
【表21】
Figure 2004507495
【0222】
表6B
【0223】
【表22】
Figure 2004507495
【0224】
A.ジエポキシドの結果
(a)0%、(b)1%、(c)3%、および(d)5%のジエポキシドを添加したメチルエチルケトンの結晶化から得られた湿ったケーキ(メチルエチルケトン溶媒和物)の、粉末X線回折パターンを図10に示す。比較しやすいようにピークの強度を正規化し(normalize)た。H型またはジエポキシドの特徴を示すピークは回折パターンには表れていない。このパターンはエプレレノンのメチルエチルケトン溶媒和物の特徴を示している。
【0225】
(a)0%、(b)1%、(c)3%、および(d)5%のジエポキシドを添加したメチルエチルケトンの結晶化から得られた乾燥固体の、粉末X線回折パターンを図11に示す。比較しやすいようにピークの強度を正規化した。0および1%の添加濃度で行ったメチルエチルケトンの結晶化に相当する乾燥サンプルには、H型は検出されなかった。3および5%の添加濃度で行ったメチルエチルケトンの結晶化に相当する乾燥サンプル中にH型が検出された。各サンプルの2シータ=約12.1度のH型の回折ピーク領域、および各サンプルに対するH型含有量推定値を以下の表6Cに示す。
表6C
【0226】
【表23】
Figure 2004507495
【0227】
表6Cに示した結果は、ジエポキシドの存在が脱溶媒和中のH型の形成に影響を与えることを立証する。これらの結果は、ジエポキシドがメチルエチルケトン溶媒和物結晶に組み入れられる、および/または吸着される時に、H型エプレレノンの形成の誘導にジエポキシドが有効であることを示す。
【0228】
脱溶媒和中に形成されるH型の量に関する製造ルートの影響を分析するため、3%ジエポキシド添加の実施例を再度行った。この実験では、添加による結晶化から得られたメチルエチルケトン溶媒和物を、2つに分けた。第1の部分は未処置のままとし、第2の部分はより高比率の結晶の欠陥を誘導するため、モーターで軽く粉砕し乳鉢ですりつぶした。2つの部分を双方とも100℃、周囲圧で1時間乾燥させた。乾燥した固体をXPRDで分析した。(a)乾燥前に溶媒和物を粉砕していない、および(b)乾燥前に溶媒和物を粉砕した、ジエポキシドを3%添加したメチルエチルケトンの結晶化から得られた乾燥固体について、XPRDパターンを図12に示した。XPRDパターンは、粉砕していないサンプルに比して粉砕したサンプル中により多量のH型を示した。これらの結果は、メチルエチルケトン溶媒和物を単離し処理する条件が、脱溶媒和から得られる結晶形に影響し得ることを示唆する。
【0229】
A.11,12−エポキシドの結果
(a)0%、(b)1%、(c)5%、および(d)10%の11,12−エポキシドを添加したメチルエチルケトンの結晶化から得られた湿ったケーキ(メチルエチルケトン溶媒和物)の、粉末X線回折パターンを図13に示す。比較しやすいようにピークの強度を正規化した。H型または11,12−エポキシドの特徴を示すピークは、回折パターンには表れていない。このパターンはエプレレノンのメチルエチルケトン溶媒和物の特徴を示している。
【0230】
(a)0%、(b)1%、(c)5%、および(d)10%の11,12−エポキシドを添加したメチルエチルケトンの結晶化から得られた乾燥固体の、粉末X線回折パターンを図14に示す。比較しやすいようにピークの強度を正規化した。0、1%および5%の添加濃度で行ったメチルエチルケトンの結晶化に相当する乾燥サンプルには、H型は検出されなかった。10%の添加濃度で行ったメチルエチルケトンの結晶化に相当する乾燥サンプル中にH型が検出された。各サンプルの2シータ=約12.1°のH型の回折ピークの領域、およびH型含有量推定値を以下の表6Dに記す。
表6D
【0231】
【表24】
Figure 2004507495
【0232】
表6Dに示した結果は、11,12−エポキシドの存在が脱溶媒和中のH型の形成に影響を与えることを立証する。H型エプレレノンの形成の誘導に必要なメチルエチルケトン結晶化における不純物の割合は、ジエポキシドより11,12−エポキシドのほうがより高いようである。
【0233】
実施例11:最終的な結晶形における結晶化および乾燥の効果
最終的な結晶形における結晶化および乾燥の効果を分析する、次の4つの実験を行った:(i)エプレレノンのメチルエチルケトン結晶化(2+3統計デザインの実験)、(ii)低品質の母液残渣の結晶化、(iii)H型を種としての高純度エプレレノンの結晶化、および(iv)L型を種としての低純度エプレレノンの結晶化。実験のデザインの変数として、冷却速度、出発物質の純度レベル、および結晶化のエンドポイント温度を含む。この実施例の目的に関して、高純度エプレレノンは極めて純粋な粉砕エプレレノン(HPLC分析はこの物質の純度を100.8%と示した)と定義し、低純度エプレレノンは純度89%のエプレレノンと定義した。低純度エプレレノンを製造するため、エプレレノン製造過程からのストリッピング濃縮した母液を分析し、混合して、61.1%エプレレノン、12.8%ジエポキシドおよび7.6%11,12−エポキシドの物質を得た。次にこの物質を89%エプレレノンを得るのに、十分な量の高純度エプレレノンと混合した。
【0234】
メチルエチルケトンの結晶化
メチルエチルケトンの結晶化実験では、すべての実験を高純度エプレレノン60gを用いて行った。高温のエンドポイントは45℃、低温のエンドポイントは5℃と定義した。高速の冷却速度は3℃/分の冷却、低速の冷却速度は0.1℃/分の冷却と定義した。中心点は1.5℃/分の冷却、エプレレノンの純度94.5%、およびエンドポイント25℃であった。
【0235】
FTIRでバックグラウンドを読んだ後、250mLのメチルエチルケトンを1L Mettler RC−1, MP10 反応器に入れ、100rpmで撹拌した。数回スキャンした後エプレレノンを反応器に入れ、続いてさらに470mLのメチルエチルケトンを加えた。固体を懸濁させるため撹拌速度を500rpmに上げ、バッチ温度を80℃に上げた。バッチ温度を80℃に維持し、エプレレノンを確実に溶解させた。得られた透明溶液中に黒色または白色の微小片が一般に観察された。その後バッチ温度を所望の冷却速度で所望のエンドポイントまで漸時(傾斜的に)冷却し、その温度で1時間維持した後、移動用フラスコ(transfer flask)内に吸引(pull)し、濾過した。反応器、移動用フラスコおよびケーキを減圧し、120mLメチルエチルケトンで洗浄した。ケーキに通して一度洗浄液を吸引して、洗浄終了とした。約10gの湿った各ケーキを、軽く窒素ガスを流しながら、75℃の設定された条件の真空オーブン中で乾燥させた。以下に述べる“高(冷却速度)、高(エンドポイント)、高(不純物濃度)”および“低、低、低”の条件の実験を行うため、高速および低速の条件で液層の乾燥 (fluid bed drying)を行った。高速液層乾燥(high fluid bed drying)は送風装置の設定“4”で100℃、また低速(low)液層乾燥は送風装置の設定“1”で40℃と定義した。
【0236】
低品質母液残液の結晶化
低品質母液残液の結晶化実験では、純度61.1%の物質60gおよびメチルエチルケトン720mLを直接1L Mettler RC−1,MP10 反応器に入れた。純度61.1%の物質は、反応器に入れる前に高純度エプレレノンとの混合は行わなかった。得られた混合物を80℃に加熱し、同温度で不透明なスラリーとなった。結晶化を継続し、混合物を高速冷却条件で45℃とし、濾過した。
【0237】
H型種結晶
H型を種結晶とする実験では、純粋なエプレレノン(100.8%)60gおよびメチルエチルケトン720mLを1L Mettler RC−1, MP10 反応器に入れた。混合物を80℃まで加熱した後、1.5℃/分の速度で25℃まで冷却した。溶液を62℃まで冷却した時点で、純粋な相のH型結晶3gを種として加え、結晶化を開始させた。H型種結晶は以下の実施例13に述べる温浸法により製造した。
【0238】
L型種結晶
L型を種結晶とする実験では、純度89.3%のエプレレノン66.6g(100%エプレレノン48.3gと61.1%エプレレノン18.3gとの混合により製造)およびメチルエチルケトン720mLを1L Mettler RC−1, MP10 反応器に入れた。混合物を80℃まで加熱した後、1.5℃/分の速度で25℃まで冷却した。溶液を63℃まで冷却した時点で、純粋な相のL型結晶3gを種として加え、結晶化を開始させた。L型種結晶は先の実施例5に述べた結晶化および脱溶媒和の方法により製造した。
【0239】
実験で得られた結果を表7Aに示す。n+1結晶化実験において、H型は低純度のエプレレノンを用いた実験でしか検出されず、その生成物はジエポキシドを含んでいた。最終生成物中のジエポキシドの濃度の増加はまた、より速い冷却速度で観察された。
【0240】
低品質母液残液の結晶化実験では、粉末X線回折の分析によりジエポキシドとH型の混合物であると思われる、低品質の物質が得られた。
(高純度のエプレレノンにH型を種として加える)H型を種とする実験では、粉末X回折分析に基づき77%のH型の生成物を得たが、DSCによれば100%H型であった。しかし粉末X線回折モデルの約15%以上のH型での測定値の直線性(linearity)ついては検討していない。この実験は本実施例の4実験のうち、ジエポキシド不在下でH型が生成されたた唯一の実験であった。
【0241】
(低純度のエプレレノンにL型を種として加える)L型を種とする実験では100%L型の生成物が得られた。
エプレレノンの高速液層乾燥で得られたデータは、真空オーブンの乾燥で得られたデータと一致するようである。低速液層乾燥では真空オーブンの乾燥とは異なる結果を得た。
【0242】
【表25】
Figure 2004507495
【0243】
【表26】
Figure 2004507495
【0244】
A.材料物質の純度
表7Aに示したデータに基づいた、生成物の純度、出発物質の純度、冷却速度およびエンドポイント温度のキューブプロットを図15に示す。キューブプロットは、結晶化開始時により高純度な物質を使用することがより高純度の生成物を得ることになることを示唆する。結晶化のエンドポイント温度は生成物の純度には大きく影響しないようである。しかし冷却速度に関しては、より速い冷却速度の結果、多少純度のより低い生成物を得ることになるという効果があるようである。事実、より速い冷却速度により、ジエポキシドの比率は一般により高くなる。
【0245】
もしあるとすればどの変数が生成物の純度に統計的に有意な効果を持つかを決定するため、キューブプロットの結果を用いて作成した半正規プロットを、図16に示す。冷却速度および、冷却速度と出発物質の純度との相互作用もまた統計的に有意な効果が認められるが、出発物質の純度が生成物の純度に最も統計的に有意な効果を示した。
【0246】
図17はこれらの結果に基づいた相互作用のグラフであり、生成物の純度における出発物質の純度と冷却速度との相互作用を示す。高純度のエプレレノン(100.8%エプレレノン出発物質)を用いた場合、冷却速度は最終的な純度にほとんどまたは全く影響しないようである。しかし低純度のエプレレノン(89.3%エプレレノン出発物質)を用いた場合には、冷却速度が増加すると生成物の純度は低下する。この結果は、より速い冷却速度で行ったエプレレノンの結晶化において、より多くの不純物が析出することを示唆する。
【0247】
H型含有量
表7Aに示したデータに基づく、H型の重量比率、出発物質の純度、冷却速度およびエンドポイント温度のキューブプロットを図18に示す。キューブプロットは、結晶化開始時のより高い純度の物質を使用することがより低量のH型を得ることになることを示唆する。結晶化のエンドポイント温度もまた、最終生成物の型に影響するようである。不純物の存在下で低温のエンドポイントでのより速い冷却により得られるH型もあるが、冷却速度はH型の形成に大きく影響することはないようである。
【0248】
もしあるとすればどの変数が最終物質中のH型の量に統計的に有意な効果を持つかを決定するため、キューブプロットの結果を用いて作成した半正規プロットを、図19に示す。出発物質の純度、結晶化のエンドポイント温度、および両変数間の相互作用が、統計的に有意な効果があることが認められた。
【0249】
図20はこれらの結果に基づいた相互作用のグラフであり、最終的なH型の含有量における出発物質の純度とエンドポイント温度との相互作用を示す。高純度のエプレレノン(100.8%エプレレノン出発物質)を用いた場合は、エンドポイント温度はH型含有量にほとんど影響しないようである。純粋なエプレレノンを用いたどちらのケースもH型は得られなかった。しかし低純度のエプレレノン(89.3%エプレレノン出発物質)を用いた場合は双方のケースにH型が存在し、より高いエンドポイント温度で有意に多くのH型の存在が認められた。
【0250】
表7Bは液層(LAB−LINE/P.R.L. Hi−Speed Fluid Bed Dryer, Lab−Line Instruments, Inc.)または真空オーブン(Baxter Scientific Products Vacuum Drying Oven, Model DP−32)のいずれかを用いて乾燥した物質中に測定された、H型の重量比率を示す。高速液層または真空オーブンのいずれかで乾燥した相応の物質について、同様のH型含有量が観察された。しかし真空オーブンに対して低速液層で乾燥した物質を真空オーブンと比較すると、違いが認められた。
表7B
【0251】
【表27】
Figure 2004507495
【0252】
実施例12:(a)溶媒和物を生成するための、メチルエチルケトンからのH型およびL型混合物の結晶化、および(b)L型を製造するための同溶媒和物の脱溶媒和
H型エプレレノン(10g)をメチルエチルケトン80mLに混合した。この混合物を加熱、還流(79℃)し、同温度で約30分間撹拌した。得られたスラリーを次に65℃、50℃、35℃、および25℃の各温度で90分間維持する、段階的に温度を維持する方法で冷却した。このスラリーを濾過し、約20mLのメチルエチルケトンを注いで洗浄した。単離した固体は最初にフィルター上で乾燥し、次に40−50℃の真空オーブン中で乾燥した。90−100℃の真空オーブン中で乾燥を完了させた。溶媒和した固体は82%の回収率で得られた。XPRD、MIRおよびDSCでこの固体がL型結晶構造をもつことを確認した。
【0253】
実施例13:H型を製造するための、低純度エプレレノン出発物質の溶媒によ る温浸
エタノール溶媒による温浸:
低純度エプレレノン(24.6g;64% HPLCによる重量分析にて)を126mLのエタノール3Aに混合した。このスラリーを過熱、還流し、留出物を除去した。大気圧での蒸留により126mLの溶媒を除去しながら、同時にさらに126mLのエタノール3Aを加えて補充した。溶媒の一巡が完了したところで、混合物を25℃に冷却し、1時間撹拌した。固体を濾過しエタノール3Aを注いで洗浄した。この固体を空気乾燥させ、エタノール溶媒和物を得た。この溶媒和物を90−100℃の真空オーブン中でさらに6時間乾燥させ、H型エプレレノン14.9gを得た。
【0254】
メチルエチルケトン溶媒による温浸
代替の温浸法として、低純度エプレレノン1g(純度約65%)をメチルエチルケトン4mL中で温浸した。2時間後、混合液を室温まで冷却させた。一度室温まで冷却した後、この固体を吸引濾過で集め、XPRD分析によりメチルエチルケトン溶媒和物であることが決定された。この固体を100℃で30から60分間乾燥させた。乾燥した固体はXPRDにより純粋なH型であることが決定された。
【0255】
実施例14:L型を製造するための、高純度エプレレノン出発物質の溶媒による温浸
エタノール溶媒による温浸:
高純度エプレレノン(1g)をエタノール8mL中で約2時間温浸した。この溶液を室温まで冷却させ、固体を吸引濾過で集めた。濾過直後のXPRD分析による固体の分析は、この固体が溶媒和物(おそらくエタノール溶媒和物)であることを示した。この固体を続いて大気圧下100℃で30分間乾燥させた。乾燥した固体をXPRDにより分析し、優先的にL型であることが決定された(H型は検出されなかった)。
【0256】
メチルエチルケトン溶媒による温浸:
高純度エプレレノン(1g)をメチルエチルケトン4mL中で約2時間温浸した。2時間後、この溶液を室温まで冷却させ、固体を吸引濾過で集めた。直ちに固体をXPRDにより分析し、エプレレノンの溶媒和物(おそらくメチルエチルケトン溶媒和物)であることが決定された。この溶媒和物をその後周囲圧下100℃で30から60分間乾燥させた。乾燥した固体をXPRDにより分析し、H型の回折ピークを含まない主としてL型であることが決定された。
【0257】
実施例15:溶液から直接のL型の結晶化
方法A:エプレレノン(2.5g)を酢酸エチルに、75℃まで過熱することにより溶解させた。一度エプレレノンが溶解した後、この溶液を75℃に30分間維持し、確実に溶解を完了させた。この溶液を次に1℃/分で13℃まで冷却した。一度13℃になった後、このスラリーを上部から撹拌するスターラーで750rpmで2時間撹拌した。結晶を吸引濾過して集め、40℃の真空オーブンで1時間乾燥させた。固体のXPRDパターンおよびDSCサーモグラムは、L型エプレレノンの特徴を示した。この固体の熱重量分析(TGA)は200℃までに固体からの重量の喪失はないことを示した。
【0258】
方法B:代替法として、エプレレノン2gを15/85%アセトニトリル/水350mLに、マグネティックスターラーで撹拌しながらホットプレート上で加熱することにより溶解させた。一度エプレレノンが溶解した後、この溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながらオーバーナイトで室温まで冷却させた。得られた個体を吸引濾過して集めた。結晶は複屈折で、三角形平板状の結晶特性を有した。固体はL型エプレレノンに特徴的なXPRDおよびDSCを示した。TGAは200℃までに重量の喪失がないことを示した。
【0259】
方法C:代替法として、エプレレノン640mgをエチルベンゼン20mLを含む50mLフラスコに入れた。得られたスラリーを116℃まで加熱し、透明溶液を得た。この透明溶液を30分かけて25℃まで冷却した。冷却中に84℃で核生成が始まった。得られた固体を溶液から濾過し、空気乾燥により530mgの固体(回収率83%)を得た。加熱ステージの顕微鏡およびXPRDによりこの固体がL型であることを確認した。
【0260】
方法D:代替法として、エプレレノン1.55gを2.0mLニトロベンゼンに加え200℃に加熱した。得られたスラリーを200℃でオーバーナイト撹拌した。翌日この溶液を室温まで冷却し(自然の空気の流れにより)、固体を単離した。固体はXPRDおよび偏光顕微鏡によりL型エプレレノンであることが決定された。
【0261】
方法E:代替法として、エプレレノン5.0g(純度99%以上)をメタノール82g(104mL)に加えた。撹拌しながら(210rpm)この溶液を60℃に加熱し、同温度で20分間維持して確実に溶解を完了させた。次にこの溶液を撹拌しながら0.16℃/分の速度で−5℃まで冷却した。結晶を濾過して集め、真空オーブン中で40℃にて20時間乾燥させた。乾燥した固体はDSCおよびXPRD分析により純粋なL型エプレレノンであることが決定された。
【0262】
方法F:代替法として、エプレレノン6.0g(9%エタノールを含む溶媒和物で補正純度95.2%)をメタノール82g(104mL)に加えた。撹拌しながら(210rpm)この溶液を60℃まで加熱し、同温度で20分間維持して確実に溶解を完了させた。次にこの溶液を0.14/分の速度で50℃まで冷却し、同温度で約2.5時間維持した。次にこの溶液を撹拌しながら0.13℃/分の速度で−5℃まで冷却させた。結晶を濾過して集め、真空オーブン中で40℃にて16時間乾燥させた。乾燥した固体はDSCおよびXPRD分析により、純粋なL型エプレレノンであることが決定された。
【0263】
実施例16:溶液からの直接のH型の結晶化
ジエポキシド150.5mgおよびエプレレノン2.85gを、1.5mLニトロベンゼンに加えた。この混合物を200℃で数時間マグネティックスターラーで撹拌した。次にスラリーを自然な空気の流れにより室温まで冷却させた。サンプルを乾燥し、偏光顕微鏡およびXPRDで分析した。XPRDはサンプルがH型およびL型の混合物であることを示した。結晶は顕微鏡では半透明で、脱溶媒和および(H型またはL型のいずかへの変換)は起こっていないことを示した。
【0264】
実施例17:粉砕によるアモルファスエプレレノンの製造
スチール製Wig−L−Bug 容器の約2分の1をエプレレノン(純度99.9%以上)約60gで満たした。スチール製のボールとキャップをサンプル容器にセットし、Wig−L−Bug装置で30秒間振動させた。エプレレノンをWig−L−Bug容器表面から擦り取り、さらに30秒間容器を振動させた。得られた固体をXPRDおよびDSCで分析し、アモルファスエプレレノンおよびL型結晶エプレレノンの混合物であることが決定された。
【0265】
実施例18:凍結乾燥によるアモルファスの製造
粗製エプレレノン約100mgを、水400mLを含むビーカーに量りとった。この溶液を5分間わずかに加熱し、次に超音波をあて、さらに5分間撹拌しながら加熱した。このエプレレノン溶液約350mLを、HPLCの水50mLを含む1000mL丸底フラスコに満たした。この溶液をドライアイス/アセトン浴中で、1から2分間で瞬間凍結した。フラスコをLabconco Freezone 4.5凍結乾燥機に装着し、オーバーナイト乾燥させた。フラスコ中の固体を小さな褐色瓶に移した。少量のアリコートを10X、1.25X、オプティバーの偏光顕微鏡にてカーギルオイル(1.404)中で観察し、少なくとも95%のアモルファスエプレレノンであることが認められた。アモルファスエプレレノンのXPRDパターンおよびDSCサーモグラムを図21および22に示す。図21中の2シータ=39度で観察されたピークはアルミニウムのサンプル容器に起因するものである。
【0266】
実施例19:エプレレノン多形組成物
25mg、50mg、100mg、および200mg投与量のL型エプレレノンを含む、以下の組成を有する錠剤を製造する。
【0267】
【表28】
Figure 2004507495
【0268】
【表29】
Figure 2004507495
【0269】
実施例20:エプレレノン多形組成物
100mg投与量のエプレレノンを含む、以下の組成を有するカプセル(ハードゼラチンカプセル、#0)を製造する。
【0270】
【表30】
Figure 2004507495
【0271】
実施例21:エプレレノン多形組成物
200mg投与量のエプレレノンを含む、以下の組成を有するカプセル(ハードゼラチンカプセル、#0)を製造する。
【0272】
【表31】
Figure 2004507495
【0273】
【表32】
Figure 2004507495
【0274】
実施例22:粉砕されたエプレレノンの製造
乾燥したメチルエチルケトン溶媒和物をまずFitzmillの20メッシュスクリーンを通して、粉末化(delump)する。粉末化した固体を次に250kg/時間の供給速度での液体窒素冷却下でアルピネ・ホソカワのスタッドピンミル装置を用いてピンミル処置を行った。ピンミル処置によりD90粒度約65−100ミクロンの粉末エプレレノンを生成する。
【0275】
以下の実施例は本発明の側面を説明するものであり、限定するものと解釈すべきではない。ここに示すデータを得るために使用する実施例の方法について、以下でより詳細に述べる。これら実施例で使用する記号および規定は現在薬学文献で使用されているものと等しい。他に記載がなければ、(i)本実施例に引用するすべてのパーセントは総組成物重量に対する重量パーセントである、(ii)カプセルの組成物総重量は、カプセル充填物質の総重量であり、実際に使用するカプセルの重量は含まない、および(iii)糖衣錠剤は従来のコーティング物質、例えばOpadry White YS−1−18027Aにてコーティングし、コーティングの重量比率は糖衣錠剤総重量の約3%である。
【0276】
実施例23:25Mg投与量速放性錠剤
25mg投与量の速放性錠剤(錠剤直径7/32”)を以下の組成で製造した:
表8
【0277】
【表33】
Figure 2004507495
【0278】
【表34】
Figure 2004507495
【0279】
実施例24:50Mg投与量速放性錠剤
50mg投与量の速放性錠剤(錠剤直径9/32”)を以下の組成で製造した:
表9
【0280】
【表35】
Figure 2004507495
【0281】
【表36】
Figure 2004507495
【0282】
実施例25:100Mg投与量速放性錠剤
100mg投与量の速放性錠剤(錠剤直径12/32”)を以下の組成で製造した:
【0283】
【表37】
Figure 2004507495
【0284】
【表38】
Figure 2004507495
【0285】
実施例26:10mg投与量速放性カプセル
10mg投与量の速放性カプセル製剤を以下の組成で製造した:
表10
【0286】
【表39】
Figure 2004507495
【0287】
【表40】
Figure 2004507495
【0288】
実施例27:25mg投与量速放性カプセル
25mg投与量の速放性カプセル製剤を以下の組成で製造した:
表11
【0289】
【表41】
Figure 2004507495
【0290】
実施例28:50mg投与量速放性カプセル
50mg投与量の速放性カプセル製剤を以下の組成で製造した:
表12
【0291】
【表42】
Figure 2004507495
【0292】
実施例29:100mg投与量速放性カプセル
100mg投与量の速放性カプセル製剤を以下の組成で製造した:
表13
【0293】
【表43】
Figure 2004507495
【0294】
【表44】
Figure 2004507495
【0295】
実施例30:200mg投与量速放性カプセル
200mg投与量の速放性カプセル製剤を以下の組成で製造した:
表14
【0296】
【表45】
Figure 2004507495
【0297】
【表46】
Figure 2004507495
【0298】
実施例31
心疾患の患者の臨床試験
患者:重症の心不全の患者1,663名が本試験に登録された。患者は無作為抽出前の6ヶ月以内に(ただし6週間以上経過している)New York Heart Association (NYHA)のクラスIVの心不全の既往があり、登録時にNYHAのクラスIIIまたはIVであった場合に、本試験の登録の対象となり得るとみなした。対象となり得る患者は左心室拍出率が35パーセント以下であり、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、そして忍容性がある場合にはループ利尿薬による治療も受ける。ジギタリスおよび血管拡張薬による治療は認められたが、カリウム保持性利尿薬は許可されなかった。低カリウム血症(血清カリウム<3.5nmol/L)を発症した場合以外は、経口カリウムサプリメントは推奨されなかった。すべての患者は低塩食(100−200mEg/日、ナトリウム)が推奨された。患者が臨床的に重要な手術可能な弁疾患(僧帽弁または三尖弁逆流以外)、先天性心疾患、不安定狭心症、原発性肝不全、活動性悪性疾患、心移植もしくは心移植の待機者、またはあらゆる生命にかかわる疾患(心不全以外)を有する場合は、本試験より除外した。他の除外基準は血清クレアチニン濃度>2.5mg/dL(>220μmol/L)または血清カリウム濃度>5.0mmol/Lとした。本プロトコールはすべての参加施設のthe Institutional Review Boards またはEthics Committees の承認を得た。すべての患者から文書のインフォームドコンセントを受け取った。
【0299】
試験群:被験者は、スピロノラクトン1日25mgまたはプラセボのいずれかを受けるように無作為割付けされた。2参加国の被験者90例のサブサンプルについて、Medical Outcomes Trust Short−Form 36−item Health Survey(SF−36)を用いてHRQOLの評価が行われた。評価はベースライン、治療開始後1,2,3および6ヶ月で行われるものとした。
【0300】
HRQOL評価:HRQOLはthe Short−Form 36−item Health Survey(SF−36)を用いて評価を行った (Ware JE, Snow KK, Kosinski M, Gandek B. SF−36 Health Survey: Manual and Interpretation Guide. Boston, MA: The Health Institute, 1993)。評価はベースライン、治療開始後1,2,3,6および12ヶ月によていされた。本明細書に示した分析は、12ヶ月追跡データのある被験者が50%未満であるため、6ヶ月追跡に限定されている。
【0301】
統計分析:ベースラインからの変化を、SF−36の8次元スコア、ならびにPhysical Composite Summary (PCS)スコアおよびMental Composite Summary(MCS) スコアについて評価した。( Ware JE, Kosinski M, Keller SD. SF−36 Physical and Mental Health Summary Scales: A User’s Manual. Boston, MA: The Health Institute, 1994)PCSおよびMCSはSF−36の4つの身体的機能スケールおよび4つの精神的機能スケールの加重をかけたサマリースコアを表すために作成されたものである。サマリースコアはSF−36項目に含まれる非常により多数の健康状態に基づいているため、一般に信頼性および正確さが改善されているとみなされている(Ware JE, Kosinski M, Keller SD. SF−36 Physical and Mental Health Summary Scales: A User’s Manual. Boston, MA: The Health Institute, 1994)。ベースラインのスコアからの変化を、無方向性(non−directional)独立群t検定により両群間で比較した。アルファレベル0.05は統計的に有意であると考察した。重症の心不全患者の健康に関するクオリティーオブライフの変化に対するSF−36スケールの応答性の指標として、効果量の推定値も算出した。効果量推定値は[平均(スピロノラクトン)−平均(プラセボ)]/(ベースラインでのSDプラセボ)として算出した。(Hays RD, Anderson R, Revicki D. 健康に関するクオリティーオブライフの評価における計量心理学的考察。Quality of Life Research 1993; 2: 441−449; Samsa G, Edelman D, Rothman ML, et al. 健康状態の測定における臨床的に重要な差異の決定。the Health Utilities Index Mark II の例証による一般的アプローチ。Pharmaco Economics 1999; 15: 141−155)。すべての分析はSAS System for Windows, Release 6.12.(SAS version 6.12, SAS Institute Inc., North Carolina, 1996)にて行った。
【0302】
患者背景:HRQOLのベースラインは2参加国(すなわちブラジルおよびカナダ)の被験者90例のサブサンプルにおいて評価を行った。被験者46例がスピロノラクトンに無作為抽出され、44例がプラセボ群に無作為抽出された。被験者60例は6ヶ月追跡のデータを完了した。HRQOL試験の6ヶ月間の観察を完了した患者背景を表15に示す。
表15
【0303】
【表47】
Figure 2004507495
【0304】
【表48】
Figure 2004507495
【0305】
ベースラインでのデモグラフィックスまたはSF−36スコアにおいて、活性治療群とプラセボ群間に優位な差異は認められなかった(表16)。
表16
【0306】
【表49】
Figure 2004507495
【0307】
【表50】
Figure 2004507495
【0308】
脱落:6ヶ月追跡期間を完了していない被験者30例(スピロノラクトン14例/プラセボ16例)は年齢、性別、心不全の病因において、追跡を完了できた患者と差はなかった。6ヶ月追跡試験を完了した患者(33.3%)と比較して、完了していない患者の比率(56.7%)のほうが大きかった(p=0.042)のは、ベースラインでNYHAクラスIVの群において認められた。しかしNYHAクラスIVの分布はスピロノラクトン群とプラセボ群間で有意差はなく、6ヶ月の追跡を完了していない患者は、プラセボ群の50.0%に比してスピロノラクトンに無作為抽出された患者の64.3%であった。
【0309】
HRQOLに関するスピロノラクトンの効果:6次元のみのプラセボ群と比較して、スピロノラクトン群のSF−36の8次元スコアすべてのベースラインからの統計的に有意な変化は、3および6ヶ月で観察された(表17)。スピロノラクトン治療群はプラセボ群と比較して、3ヶ月で有意に大きな改善(平均±標準偏差)が、Mental Healthスコア(スピロノラクトン=19.9±21.1対プラセボ=3.1±20.9;p=0.004)およびMSCスコア(スピロノラクトン=13.2±11.8対プラセボ=5.3±11.6;p=0.016)において得られた。
【0310】
Mental Healthサブスケールスコアのベースラインからの変化におけるスピロノラクトン治療のプラスの影響は、6ヶ月でも引き続き十分に有意であった。(スピロノラクトン=17.5±22.9対プラセボ=4.5±25.7;p=0.044)。MSC全体への有益な効果の傾向は6ヶ月でもまだ明らかだった(スピロノラクトン=10.3±12.8対プラセボ=4.5±14.0)が、その差は統計的に有意ではなかった(p=0.418)。
表17
【0311】
【表51】
Figure 2004507495
【0312】
効果量の統計:3および6ヶ月でのSF−36スケールおよびサマリースコアの効果量の統計は0.03から0.86の範囲であった(表18)。統計的な比較の結果により最大の効果量推定値は、3ヶ月でのMental HealthおよびMSCの変化(各々0.76および0.86)について認められた。効果量の統計はこれらの患者のSF−36の身体的次元において最小となった。
表18
【0313】
【表52】
Figure 2004507495
【0314】
結果:被験者60例(スピロノラクトン32例、プラセボ28例)が6ヶ月追跡データを完了した。ベースラインのSF−36において、活性治療群とプラセボ群間に有意差は認められなかった。3ヶ月でスピロノラクトン治療群はプラセボ群と比較して、Mental Health(スピロノラクトン=19.9±21.2対プラセボ=3.1±20.9;p=0.004)およびMental Composite Summary(スピロノラクトン=13.2±11.8対プラセボ=5.3±11.6;p=0.016)スコアにおいて有意に大きな改善を示した。Mental Healthサブスケールスコアに関してはベースラインからの変化におけるスピロノラクトン治療のプラスの効果は、6ヶ月でも引き続き統計的に有意であった(スピロノラクトン=17.5±22.9対プラセボ=4.5±25.7;p=0.044)。
【0315】
結論:重症の心不全患者において、従来の心不全治療にアルドステロン受容体拮抗薬スピロノラクトンを追加することは、自己報告のHRQOLにプラスの影響を与えるようである。特に重症HFのこの小さなサンプルにおいては、スピロノラクトン治療の追加治療は、身体的健康または機能に有害な影響を及ぼすことなく、精神的健康状態に強いプラスの効果があったようだ。
【0316】
実施例32
急性心筋梗塞に続発する心不全の患者におけるエプレレノンの安全性および有効性を評価する、二重盲検無作為抽出プラセボ対照試験のための臨床プロトコール
【0317】
概要
本試験の目的はエプレレノンを標準的治療に加えた効果を、プラセボを標準的治療に加えた療法に対して、急性心筋梗塞(AMI)後の心不全(HF)の患者の全死亡率において比較することである。二次エンドポイントは心血管疾患の罹患率および致死率およびクオリティーオブライフを含む。クオリティーオブライフはThe Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire (KCCQ)、the Short Form−12 Health Survey(SF−12)、the EuroQoL Health Rating Scale、the Medical Outcomes Study Depression Scale(MOS−D)およびBrief Symptom Inventory−Anxiety( BSI−A)により評価される、気分、鬱、不安、精神的健康状態、および認知機能に関するすべてのパラメータを含む。
【0318】
この多施設無作為抽出二重盲検プラセボ対照二種類の平行群の試験は、1,012例の死亡が発生するまで継続され、そのため約6,200例の無作為抽出患者を平均約2.5年間追跡する必要があると推定される。
【0319】
本試験の対象となり得る患者は以下の条件を有する:
・以下により規定されるAMI(指標イベント):
−心筋酵素の異常(クレアチンホスホキナーゼ[CPK]>2×正常範囲上限[ULN]、および/またはCPK−MB>総CPKの10%);および
−MI(病的Q波の存在にかかわらずAMIに矛盾しないSTセグメントおよびT波の進行的変化)と診断される心電図(ECG)が得られること、および
・AMI以降無作為抽出以前に測定された、左心室拍動率(LVEF)<40%により規定される、左心室機能不全、および
・少なくとも以下の1項目により規定される、HFの臨床的エビデンス:
−肺水腫(重要な慢性肺疾患の不在下で、漱咳後のクラックルが両側性に肺野に至るまでの少なくとも1/3に広がっている);または
−間質性水腫または肺胞水腫を伴う肺静脈うっ血を示す胸部X線写真;または
−持続的頻脈(>100拍/分)を伴う第3心音(S)の聴診によるエビデンス。
【0320】
患者は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬、硝酸塩、およびβ遮断薬を含み得る標準的治療を受けるが、抗凝固薬および抗血小板薬をこれまでに投与されていてもよく、また血栓融解薬または救急の血管形成術をこれまでに受けていてもよい。
【0321】
対象となり得る患者は、HFを伴うAMIとの救急室での評価およびとりあえずの診断以降、随時含まれるものと同定することができる。本試験の対象となり得る患者は、患者の臨床的状態が安定している、例えば血管収縮薬、筋収縮薬、大動脈内バルーンポンプを使用していない、低血圧(収縮期血圧[SBP]<90mmHg)または緊急の冠動脈造影に至るような再発性胸部疼痛がない場合、AMI後3日(>48時間)から10日の間に無作為抽出される。心臓除細動器を埋め込んだ患者は除外される。
【0322】
患者を無作為抽出され、エプレレノン25mgQD(1日1回)またはプラセボを供与される。4週間目に血清カリウムが<5.0mEq/Lの場合は、試験薬の投与量を50mgQD(2錠)に増加する。試験中いかなる時でも、血清カリウムが>5.5mEq/Lただし<6.0mEq/Lとなる場合は、試験薬の投与量を次に低い投与量レベルに、すなわち50mgQDから25mgQD(1錠)に、25mgQDから25mgQOD(隔日)に、または25mgQODから一時保留に減量する。試験中いかなる時でも、血清カリウムが6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤は一時保留にすべきであり、血清カリウムが<5.5mEq/Lの時点で、25mgQODで再開できる。試験中いかなる時でも、血清カリウムが持続的に6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤は永久に中止すべきである。患者が試験薬剤に忍容できなくなる場合は、試験薬剤の投与量を調整する前に併用薬剤の投与量での代替を考慮することが望ましい。血清カリウムは治療開始後48時間、1および5週間、試験のためのすべての予定通院時、およびあらゆる投与量変更後1週間以内に測定を行う。
【0323】
試験のための通院は、スクリーニング時、ベースライン(無作為抽出時)、その後の1および4週、3ヶ月、および3ヶ月毎に、試験が終了するまで行う。既往歴、心筋酵素、Killipクラス、再灌流時間(適応可能であれば)、AMIおよびHFの規定、LVEFの決定、および出産能力のある女性の血清妊娠検査をスクリーニング時に行う。理学的診察および12誘導ECGをスクリーニング時および最後の通院(試験薬中止)時に行う。安全のため血算および生化学検査および尿検査をスクリーニング時、その後4週、3および6ヶ月、および6ヶ月毎に、試験が終了するまで行う。DNA分析用の付加的な血液サンプルをスクリーニング中に採血する。バイタルサイン(座位での心拍およびBP)、New York Heart Association (NYHA)機能クラス、副作用、および選択された併用薬剤を通院毎に記録する。クオリティーオブライフの評価はスクリーニング中、4週、3、6、および12ヶ月、ならびに最後の通院時に完成させる。無作為抽出されたすべての患者は、エンドポイント(以下参照)について本試験が終了するまで3ヶ月毎に追跡する。
【0324】
一次エンドポイントは全死亡である。本試験は全死亡の18.5%低減を検出できるように設計され、したがって試験終了前に1,012例の死亡を必要とする。二次エンドポイントは以下を含む:
1.心血管による死亡;
2.心臓による突然の死亡;
3.進行性HFによる死亡;
4.すべての原因による入院;
5.心血管による入院;
6.HFによる入院;
7.全死亡プラスすべての原因による入院;
8.心血管による死亡プラス心血管による入院;
9.心血管による死亡プラスHFによる入院;
10.心房細動の新たな診断;
11.再発性非致死的AMIおよび致死的AMIのための入院;
12.発作のための入院;および
13.クオリティーオブライフ。
【0325】
安全性は、副作用、臨床的検査結果、理学的診察、バイタルサイン、および心電図検査により評価する。
【0326】
RALES試験の結果に基づき、エプレレノン25から50mgQDは、AMI後のHFの患者の致死率および罹患率を低減すると仮定される。本試験における投与量の選択は、第II相エプレレノンのHFおよび高血圧試験の結果に基づいて行う。この場合25から50mgQDのエプレレノンは、血漿レニンおよびアルドステロンレベルを増加させ血漿BNPレベルを低下させたが、利尿作用も血行力学作用も認められなかった。本試験はAMI後のHFの患者における、拡大的なエプレレノン治療の効果を評価するためにデザインされている。
【0327】
調査者(Investigator)は本試験開始前にEplerenone Investigation Brochure(エプレレノン調査パンフレット)の全セクションに精通することを義務とする。
【0328】
2.0目的
2.1一次目的
本試験の一次目的は、エプレレノンを標準的治療に加えた効果を、プラセボを標準的治療に加えた療法に対して、AMI後のHFの患者の全死亡率において比較することである。
【0329】
2.2二次目的
本試験の二次目的は、2つの治療群を以下の項目について比較することである:
1.心血管による死亡;
2.心臓による突然の死亡;
3.進行性HFによる死亡;
4.すべての原因による入院;
5.心血管による入院;
6.HFによる入院;
7.全死亡プラスすべての原因による入院;
8.心血管による死亡プラス心血管による入院;
9.心血管による死亡プラスHFによる入院;
10.心房細動の新たな診断;
11.再発性非致死的AMIおよび致死的AMIのための入院;
12.発作のための入院;および
13.クオリティーオブライフ。
【0330】
すべてのエンドポイントのイベントは内容を知らされていないCrinical Events Committe(以下のセクション5.5b参照)により裁定される。
3.0物質および方法
3.1試験デザインおよび方法
この多施設無作為抽出二重盲検プラセボ対照二種類平行群の試験は、1,012例の死亡が発生するまで継続され、約6,200例の無作為抽出患者を平均約2.5年間追跡する必要があると推定される。
対象となり得る患者は、HFを伴うAMIとの救急室での評価およびとりあえずの診断以降随時含まれるものと同定することができる。本試験の対象となり得る患者は以下の条件を有する:
・以下により規定されるAMI(指標イベント):
−心筋酵素の異常(クレアチンホスホキナーゼ[CPK]>2×正常範囲上限[ULN]、および/またはCPK−MB[CPK MBアイソザイムバンド]>総CPKの10%);および
−MI(すなわち病的Q波の存在にかかわらずAMIに矛盾しないSTセグメントおよびT波の進行的変化)と診断される心電図(ECG)が得られること、および
・指標となるAMI以降無作為抽出以前に測定された、心エコー図、放射性核種血管造影、またはLV血管造影による、左心室拍動率(LVEF)<40%により規定される、左心室機能不全。
・少なくとも以下の1項目により規定される、HFの臨床的エビデンス:
−肺水腫(重要な慢性肺疾患の不在下で、漱咳後のクラックルが両側性に肺野に至るまでの少なくとも1/3に広がっている);または
−間質性水腫または肺胞水腫を伴う肺静脈うっ血を示す胸部X線写真;または
−持続的頻脈(>100拍/分)を伴う第3心音(S)の聴診によるエビデンス。
【0331】
患者は、ACE−I、利尿薬、硝酸塩、およびβ遮断薬を含み得る標準的治療を受けるが、抗凝固薬および抗血小板薬をこれまでに投与されていてもよく、また血栓融解薬または救急の血管形成術をこれまでに受けていてもよい。
【0332】
対象となり得る患者は、HFを伴うAMIとの救急室での評価およびとりあえずの診断以降随時含まれるものと同定することができる。本試験の対象となり得る患者は、患者の臨床的状態が安定している、例えば血管収縮薬、筋収縮薬、大動脈内バルーンポンプ[LABP]を使用していない、低血圧SBP<90mmHg)または緊急の冠動脈造影に至るような再発性胸部疼痛がない場合、AMI後3日(>48時間)から10日の間に無作為抽出される。心臓除細動器を埋め込んだ患者は除外される。無作為抽出は好ましくはできるだけ退院前に行うものとする。
【0333】
患者は無作為抽出され、エプレレノン25mgQD(1日1回)またはプラセボを供与される。4週間目に血清カリウムが<5.0mEq/Lの場合は、試験薬の投与量を50mgQD(2錠)に増加する。試験中いかなる時でも、血清カリウムが>5.5mEq/Lただし<6.0mEq/Lとなる場合は、試験薬の投与量を次に低い投与量レベルに、すなわち50mgQDから25mgQD(1錠)に、25mgQDから25mgQOD(隔日)に、または25mgQODから一時保留に減量する。(詳細な投与指示に関するセクション3.6参照のこと)試験中いかなる時でも、血清カリウムが6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤は一時保留にすべきであり、血清カリウムが<5.5mEq/Lの時点で、25mgQODで再開し、セクション3.6、表19に示すスキームに従って増加することができる。試験中いかなる時でも、血清カリウムが持続的に6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤は永久に中止すべきである。カリウムの増加が偽性(すなわち、溶血またはカリウムサプリメントの最近の投与による)と考えられる場合には、カリウムレベルを繰り返し測定することができる。患者が試験薬剤に忍容できなくなる場合は、試験薬剤の投与量を調整する前に併用薬剤の投与量での代替を考慮することが望ましい。血清カリウムは治療開始後48時間、1、4および5週間、試験のためのすべての予定通院時、およびあらゆる投与量変更後1週間以内に測定を行う。投与量の調整は、セクション3.6に記載したように最も新しいカリウムデータに基づいて行う。
【0334】
試験のための通院は、スクリーニング時、ベースライン(無作為抽出時)、その後の1および4週、3ヶ月、および3ヶ月毎に、試験が終了するまで行う。既往歴、心筋酵素、Killipクラス、再灌流時間(適応可能であれば)、AMIおよびHFの規定、LVEFの決定、および出産能力のある女性の血清妊娠検査をスクリーニング時に行う。理学的診察をスクリーニング時および最後の通院(試験薬中止)時に行う。安全のため血算および生化学検査および尿検査をスクリーニング時、その後4週、3および6ヶ月、および6ヶ月毎に、試験が終了するまで行う。DNA分析用の付加的な血液サンプルをスクリーニング中に採血する。バイタルサイン(座位での心拍およびBP)、New York Heart Association (NYHA)機能クラス、副作用、および選択された併用薬剤を通院毎に記録する。クオリティーオブライフ(QOL)の評価はスクリーニング中、4週、3、6、および12ヶ月、ならびに最後の通院時に完成させる。無作為抽出されたすべての患者は、試験のすべてのエンドポイント(セクション2.0参照)について本試験が終了するまで3ヶ月毎に追跡する。
【0335】
【表53】
Figure 2004507495
【0336】
Figure 2004507495
【0337】
3.2試験参加数
3.2.a 患者の登録
試験コースを通して総計1,012の死亡例が発生することを確実にするため、十分な数の患者を登録する(セクション5.0参照)。
【0338】
3.2.b 登録基準
1.患者は以下により規定されるAMIを有した:
a.心筋酵素の増加(総[CPK]>2×[ULN]および/またはCPK−MB>総CPKの10%);および
b.MI(すなわち、病的Q波の存在にかかわらずAMIに矛盾しないSTセグメントおよびT波の進行的変化)と診断されるECG得られること、および
2.患者は指標となるAMI以降、無作為抽出以前に測定された、心エコー図、放射性核種血管造影、またはLV血管造影による、左心室拍動率(LVEF)<40%により規定される、LV機能不全を有する。
3.患者は少なくとも以下の1項目により規定される、HFの臨床的エビデンスを有する:
a.肺水腫(重要な慢性肺疾患の不在下で、漱咳後のクラックルが両側性に肺野に至るまでの少なくとも1/3に広がっている);または
b.間質性水腫または肺胞水腫を伴う肺静脈うっ血を示す胸部X線写真;または
c.持続的頻脈(>100拍/分)を伴う第3心音(S)の聴診によるエビデンス。
AMI後のHFの臨床的エビデンスは一過性であり、指標となるAMIの開始から無作為抽出前まで、随時起こり得る。HFのエビデンスは無作為抽出時に必ずしも存在しなくてもよい。
4.AMI以降3日(>48時間)から10日の無作為抽出時の安定な臨床状態。安定な臨床状態は、血管収縮薬および筋収縮薬の使用を除外する。安定な状態はまたIABPの使用、低血圧(SBP<90mmHg)および緊急の冠動脈造影に至るような再発性胸部疼痛も除外する。
5.患者は21歳以上の男性または妊娠していない女性である。
6.患者が女性の場合は閉経後である、または出産能力がある場合は、適当な避妊(ホルモンによる、例えば経口避妊薬もしくはホルモンインプラント、または物理的方法、例えば避妊ペッサリー、IUD等)を使用している、または不妊手術をしている、および授乳していない。禁欲は受容可能な避妊の形ではない。
7.患者が出産能力のある女性の場合、二重盲検試験薬の最初の投与予定前72時間以内の血清妊娠検査が陰性であった。
8.患者は、調査者の見解において本試験への安全な参加から除外されるような、臨床検査値の臨床的に有意な異常を有していない。
9.患者は試験期間への参加に同意しており、また参加することができる。
10.患者は、この試験に関して行われるあらゆる検査もしくは方法、または薬剤の変更の前に、文書によるインフォームドコンセントを提供されている。
【0339】
3.2.c 除外基準
1.患者は弁の原発性病因または先天的病因によるHFである。
2.患者は臨床的に不安定なエビデンス(例えば心房細動以外の不整脈、心臓性発作等)を現在有している。
3.患者は、緊急の冠状動脈造影に至るような梗塞後狭心症を有している。
4.冠動脈バイパス移植(CABD)が指標のAMIについて計画されている。
5.患者は心臓除細動器(ICD)を埋め込んでいる。
6.患者は低血圧のコントロールができていない(SBP<90mmHg)。
7.患者はカリウム保持性利尿薬またはスピロノラクトンの使用を必要としている。
8.患者はスクリーニング期間中の血清クレアチニンレベルが>2.5mg/dLである。
9.患者はスクリーニング期間中の血清カリウムレベルが>5.0mEq/Lである。
10.患者は心移植が計画されている。
11.患者は、調査者の見解において試験への参加から除外される、アルコールまたは麻薬乱用のエビデンスが現在ある。
12.患者は、調査者の見解において本研究への参加が患者の最善の利益にならない何らかの症状を有している。
13.患者はエプレレノンまたはスピロノラクトン過敏性であることを知っていた。
14.患者は重症の器官障害がある、または調査者の見解において試験薬剤の吸収、薬物動態、または排泄を妨げ得る胃腸管の手術を行った、もしくは胃腸管の疾患があった。
15.患者は、慢性精神病であるまたは調査者の見解において本試験の要求に応じられる患者の能力を限定すると思われる行動の症状を有する。
16.患者は免疫抑制療法または抗新生物療法を受けていることを含む、今後3年間に死亡に至ると予測される共存する症状(例えば末期癌、AIDS等)を有する。
17.患者は、本試験薬剤の最初の投与前30日以内に何らかの調査用薬剤もしくは調査用器具を受けている、または何らかの調査用薬剤もしくは器具の試験に実際に参加している、または本試験のコース中にエプレレノン以外の調査用薬剤を供与される予定がある、もしくは調査用器具による治療を受ける予定がある。18.患者は既に本試験を許可されている。
【0340】
3.3無作為抽出の方法
患者は、無作為抽出の基準を満たした者から順に、各施設で二重盲検治療群に割付けられる(セクション3.2.bおよび3.2.c参照)。患者は、本試験の開始前にSearleで作成したコンピューターによる無作為抽出計画に従って、割り当てられた治療を受ける。
【0341】
3.3.a無作為抽出コードの作成
Searle臨床データベースの管理者は、Searleの標準的な無作為抽出プログラムを用いて患者の無作為抽出計画を作成する。Searleの統計家は薬剤キット同定番号の無作為抽出計画を作成し、患者の無作為抽出計画とは分離する。無作為抽出コードは薬剤包装の請負業者、および薬剤の割付けを行うInteractive Voice Response System(IVRS)センターに提供される。Searleの統計家は患者の参加開始後は無作為抽出コードを入手することはできない。Searle臨床データベース管理者は、患者の無作為抽出計画と薬剤同定計画の双方を、試験期間中ロックされたファイルに保管する。患者の無作為抽出計画のコピーを封印して、試験開始前にU. S. Food and Drug Administration(FDA)に提出される。無作為抽出計画はまた、Data Safety Monitoring Board (DSMB)に関する統計分析を行う、内容をオープンにされた統計グループにもまた入手可能となる。Searle製薬会社の試験設計担当の社員は、薬剤の包装の目的に限ってのみ薬剤キット同定の無作為抽出コードを入手することができる。その他のSearleの社員は本試験が完了するまで、無作為抽出計画を入手することはできない。
【0342】
一般に試験を行う施設の職員は無作為抽出コードを入手することはできない。しかし特定の患者に試験内容をオープンにする医学的必要がある場合には、封印された治療割付けが、各試験薬剤の包装と共に提供される(セクション3.5参照)。
【0343】
3.3.b Interactive Voice Randomization System(IVRS)
24時間稼動のIVRSは、患者に患者番号および内容を伏せた試験薬剤を割付け、施設の試験薬剤の在庫管理、および患者の新規登録および進行の管理のために使用される。
【0344】
施設の職員はIVRSセンターに電話して各患者の無作為抽出を行う。調査者はIVRSセンターに各患者の様々な識別子を提供し、登録/除外基準を満たすことを確認する。IVRSセンターは、先に述べた患者の無作為抽出計画に従って患者を治療に割付ける。次にIVRSシステムは、試験施設にある番号から患者の治療割付けに適当な、内容を伏せてある薬剤の同定番号を選択する。
【0345】
無作為抽出以降、施設は試験薬を配布する時には必ず、IVRSセンターに連絡する。IVRSセンターにはまた、患者が治療を中止したり内容をオープンにする場合にも通知しなければならない。さらにIVRSセンターには、試験薬供与の受け取りを確認するための連絡をしなければならない。
【0346】
IVRSシステムおよび方法の付加的な詳細は、別冊のIVRSマニュアルに提供されている。
【0347】
3.3.c 緊急のコードの開放
緊急のイベントにおいて、施設は本試験の盲検をオープンにすることを要求するために連絡する電話番号を提供される。調査者の見解においてコードを知る必要がある緊急の状況が起こった場合には、コードを開放することができる。この場合調査者はコードを解放する前に、できる限りスポンサーにコンタクトを取るよう試みるものとする。コードを開放する日付および理由は適当なCRFにて、調査者によりできるだけ速やかにデータを管理センターに提出されなければならない。
【0348】
3.4臨床的供給の説明
Searleはエプレレノン25mg錠剤およびエプレレノン25mg錠剤とマッチするプラセボを以下のように提供する:
初期の試験薬剤(0週から4週まで)
ベースラインで配布される、小児の開閉しにくいタイプの40錠ボトル(第0日)。
【0349】
維持療法期の試験薬剤(4週以後)
本試験の残りの期間に配布される、小児の開閉しにくいタイプの200錠ボトル。
【0350】
二重盲検のエプレレノンおよびマッチするプラセボの本試験薬剤は、各治療用の適当なキット番号を予めラベルに表示したボトルにて供給される。配布前、すべての試験薬剤はラベルに表示されている保存条件に従って、出入りを限定した安全な場所に保管されなければならない。家庭では患者は、極端な環境を避けて薬剤を保管しなければならない。本試験が完了または中止した時点で、すべての使用済みおよび未使用の供給された薬剤は、Searle Monitorまたは Searleにより設定されたモニター(監督者)に指示されたように、返却または処分されなければならない。
【0351】
3.5臨床用供給物のラベル表示
本盲検試験用に2つの部分からなるラベルをコンピューターにより作成する。試験および患者の情報を含むラベルの一部は容器に貼り付けられる;残りの部分派は同じ情報に加えて、割付けられた治療を同定するものを含む封をした小袋を含む、切り取られる部分である。この切取られる紙片を薬剤の配布時に切り取り、患者の適当なCRFに貼り付け調査者の試験用ファイルに保存する。
【0352】
以下の投与指示は、その薬剤が使用される国に適した言語でラベルに表示する:
初期治療のボトル
“毎朝1錠、水と共に服用しなさい、さもなければ主治医の指示どおりに服用しなさい。”
維持療法期のボトル
“毎朝2錠、水と共に服用しなさい、さもなければ主治医の指示どおりに服用しなさい。”
無作為抽出および盲検のセーフガードに関する詳細な情報についてはセクション3.3およびセクション3.0を参照のこと。
【0353】
3.6試験薬の投与
患者は治療の最初の4週間はエプレレノン25mgQDまたはプラセボ(1錠)を与えられる。4週間目に血清カリウム<5.0mEq/Lであれば、試験薬の投与量を50mgQD(2錠)に増加する。血清カリウムが第4週に5.0mEg/L以上、ただし第5週に<5.0mEq/Lであれば、試験薬の投与量は50mgQD(2錠)に増加する。この場合、血清カリウムは第6週にチェックすることになる。
【0354】
表20に血清カリウムレベルに対する指定の投与量の変更をまとめる。血清カリウムは治療開始後48時間、1および5週、およびいかなる投与量の変更後も1週間以内に測定する。試験中いかなる時でも、血清カリウムが>5.5mEq/Lとなる場合は、試験薬の投与量を次に低い投与量レベルに、すなわち50mgQDから25mgQD、25mgQDから25mgQOD、または25mgQODから一次停止に減量する。試験薬剤は血清カリウムレベルが<5.5mEq/Lの時点で、25mgで再開し、表20に示したスキームに従って増加する。カリウムレベルは、カリウムの増加が偽性(すなわち、溶血またはカリウムサプリメントを最近投与したことによる)と考えられる場合には、そのカリウムレベルを繰り返すことができる。
【0355】
患者が試験薬剤忍容できなくなる場合には、試験薬剤の投与量を調整する前に併用薬剤の投与量での代替を考慮すべきである。試験中いかなる時でも、血清カリウムレベルが6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤を一時保留とする血清カリウムレベルが持続的に6.0mEq/L以上となる場合は、その患者は試験薬剤を中止する。上昇したカリウムレベルが<6.0mEq/Lと観察された場合、カリウムサプリメントは、いずれにしても中止すべきであり、患者は試験薬剤を継続して受け取ることが望ましい。試験薬剤を中止する場合は併用薬剤を見直し、可能であれば良好な臨床処置に従ってその投与量を調整することが望ましい。
表20
【0356】
【表54】
Figure 2004507495
【0357】
4.0試験計画
観察および処置の計画
スクリーニング期間
スクリーニング期間はAMI以後、無作為抽出以前の期間と定義される。このセクションはスクリーニング期間に行わなければならない処置について述べる: 試験に関連するあらゆる処置または本試験の目的のための薬剤の変更を行う前に、各患者に文書によるインフォームドコンセントが実施されなければならない。
【0358】
登録/除外基準を検討し、各患者が本試験の対象となり得るかどうかを決定する。
登録可能であれば、AMI後の再灌流時間を記録する。
【0359】
4.2.a既往歴、理学的診察、バイタルサイン、および心電図
既往歴には基底となる心疾患を同定できる特異的な質問を含む。
理学的診察は体重および身長の測定、および持続的頻脈を伴う肺のラ音、ギャロップ音(S)、および末梢の浮腫の有無の評価を含む。
【0360】
バイタルサインは座位での心拍およびカフ(血圧計)による血圧測定を含む。
12誘導ECGを行う。
【0361】
4.2.b 急性心筋梗塞、左心室機能不全および心不全の規定
指標のAMIの規定は以下を含む:
1.心筋酵素の増加:
・総CPK>2xULNおよび/または
・CPK−MB>総CPKの10%、および
2.MIとのECG診断(すなわち、病理学的Q波の存在にかかわらずAMIと矛盾しないのST部分およびT波の進行性の変化)
LV機能不全は、指標となるAMI以後および無作為抽出以前に決定された、心エコー図、放射性核種血管造影、またはLV血管造影による、LVEF40%以下により規定される
HFの規定は以下の少なくとも1つを含む:
1.肺水腫(重要な慢性肺疾患の不在下で、漱咳後のクラックルが両側性に肺野に至るまでの少なくとも1/3に広がっている);
2.間質性水腫または肺胞水腫を伴う肺静脈うっ血を示す胸部X線写真;または
3.定常的頻脈(>100拍/分)を伴う第3心音(S)の聴診によるエビデンス。
【0362】
AMI後のHFの臨床的エビデンスは一過性であり、指標となるAMIの開始から無作為抽出前まで随時起こり得る。HFのエビデンスは、無作為抽出時には必ずしも必要ではない。
【0363】
4.2.c 臨床検査室データ
臨床的に安全な検査室データは以下のパラメータについて行う。可能であれば採血は午前中に行うべきである:
血算
白血球数および分画   血小板数(推定は認められない)
赤血球数
ヘモグロビン
ヘマトクリット
生化学
ナトリウム       グルコース
カリウム        アルカリホスファターゼ
塩素          ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(γ−GT)
カルシウム       SGOT(AST)
マグネシウム      SGPT(ALT)
リン酸塩(無機)    LDH
BUN(尿素)          クレアチンホスホキナーゼ(CPK)
クレアチニン           CPK−MB(スクリーニングのみ)
総タンパク質           総コレステロール
総ビリルビン(直接および間接)  LDLコレステロール
アルブミン            HDLコレステロール
尿酸               中性脂肪
出産能力のある女性の血清妊娠検査
尿検査
pH         タンパク質
比重         グルコース
ケトン体       血液
調査者はすべての検査室の結果および最初の各検査室の報告を検討する。臨床的介入を必要とする、または調査者が臨床的に重要であると思えるいかなる治療前の異常値でも、患者を研究への参加から除外する。検査室のすべての検査は、設定された中央検査室または適当な地域の検査室で行われる。中央検査室を利用する施設には、サンプルの採集および輸送用の指示書および材料は、中央検査室より各試験施設に提供される。
【0364】
4.2.d Killipクラス
患者のその時点のKillipクラスは以下のように決定される。
クラスI:ラ音および第3音がない
クラスII:各肺野の50%までのラ音または第3音の存在
クラスIII:各肺野の50%以上にラ音
クラスIV:心原性ショック(重大な心疾患、通常AMIに二次的に起こる心拍出低下に起因する)
【0365】
4.2.e New York Heart Association(NYHA)の機能の分類
患者のその時点のNYHAの機能の分類は以下のように決定される。
クラスI:通常の身体活動に伴う症状がない
クラスII:安静時にはないが、通常の身体活動に伴う症状がある
クラスIII:安静時にはないが、通常より控えめの身体活動に伴う症状があるクラスIV:安静時に症状がある
【0366】
4.2.f クオリティーオブライフの評価
アメリカ、イギリス、スペイン、カナダ、ブラジル、ドイツ、ベルギー、フランス、オランダおよびアルゼンチンの本試験に登録された患者は、スクリーニング期間中および試験薬剤の最初の投与前に、以下のQOL評価を完了させる。
【0367】
1.The Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire(KCCQ):HFの患者に関する疾患特異的なこの質問表はこれまで広く検査が行われ、その評価の正確さが確実であると評価されている。同質問表は健康状態の全範囲をHFの症状により影響を受けたものとして定量化する。23項目のKCCQは症状(一定期間にわたるその頻度、重症度および変化)、機能(身体的および社会的)、およびクオリティーオブライフを特異的に定量化する。疾患特異的なこの測定が、一般的な健康状態の測定に比べ臨床的変化に対してより感受性が高いことは繰り返し示されており、KCCQは患者の健康状態におけるエプレレノンの影響の確かな評価を提供するであろう。(Spertus JA, et al. Am J Cardiol 1994; 74: 1240−1244)
【0368】
2.The Short Form−12 Health Survey(SF−12):SF−12は身体的および精神的健康の全体のサマリースコアを得ることのできる、一般的な12項目のアンケートである。(Jenkinson C et al. J Public Health Med 1997; 19: 179−186)KCCQとは異なりこの質問表はHFに特異的ではなく、その他の共存する症状によって起こる健康を制限するものを捉える。それにもかかわらず、この質問表に関する一般人の母集団の正常データがあるので、他の試験(異なる疾患の治療に関するものを含む)に対して患者の母集団の尺度とすることができる。
【0369】
3.The EuroQoL Health Rating Scale:EuroQoLは5つの異なる一般的な領域における機能を3段階のレベルに定量化する。(Kind P. The EuroQoL instrument:健康に関するクオリティーオブライフの指標。著者Spilker B, 臨床試験におけるクオリティーオブライフおよび薬理経済学。第2版。Philadelphia: Lippincott−Raven; 1996: 191−201)“感覚的な指標(feeling of thermometer)”を含む:質問表は6つの質問から構成され、本試験で計画されていの経済的分析に使用される1つの数字(有用性)に健康状態の範囲を効果的に合成することができる。(Torrence GW. J Health Econ 1986; 5: 1−30)
【0370】
4.The Medical Outcomes Study Depression Scale(MOS−D):MOS−Dは医学上の患者母集団における鬱障害のためのスクリーニング手段として、the National Study of Medical Outcomes で用いるために開発された。(Burnham MA et al. Med Care 1988; 26: 775−789) この質問表は、Diagnostic Interview Schedule (DIS)および the Center for Epidemiological Studies Depression Scale(CES−D)からの項目を組み入れた8項目から成り、鬱の身体的指標を使用していないため、HFの患者の鬱にも可能な複合的マーカーとなる。MOS−Dは非常に高い感受性(93%(95%CI86−97))および良好な特異性(72%(95%CI68−76))を有する。エプレレノンがより有益となる(致死率および健康状態の結果の双方)ベースラインの予定変量を定義する二次および三次目標のため、臨床的に関与するサブセットをベースラインで識別すること(すなわち鬱の患者  対 鬱でない患者)、そしてエプレレノンによる治療に対する鬱の反応を評価すること(本試験の付加的な二次目標)、の双方のためにMOS−Dを使用する。
【0371】
5.Brief Symptom Inventory−Anxiety( BSI−A):BSI−Aはthe Symptom Checklist 90 改訂版に代わるより短い形式である。この質問表は不安を測定する6項目からなる。(Derogatis LR, Melisaratos N. Psychol Med 1983; 13: 595−605)MOS−Dと同様にこの質問表は感情状態に身体的指標を使用しない点で有利であるが、心血管疾患の患者の気分の状態のレベルを過大評価する可能性がある。BSI−Aは高い内部一貫性(クロンバッハのアルファ計数=0.85)および十分に確立された構成、収斂、識別、および予想正当性を有する。不安と心血管疾患との関係について報告されている文献を参照し、ベースラインの不安を、健康状態および致死率の結果(本試験の二次および三次目標)におけるエプレレノン治療の様々な効果を評価するために使用する。BSI−Aの簡潔さおよび優れた計量心理学的特性により、この測定は新たな調査分野を切り出すための例外的な一手法となるだろう。
【0372】
4.2.g DNA分析用血液サンプル
DNA分析用の30mL血液サンプルを採血する。このサンプルから20mLをEDTAを含む試験管に、10mLをクエン酸ナトリウムを含む試験管に入れる。これらの試験管は宅配業者が集めに来るまで4℃で保管し、宅配業者により直ちに設定された検査室に搬送される。
【0373】
4.2.h 患者の試験への加入
スクリーニング後、対象となり得る患者は続きの試験番号を与えられる。さらに患者はファースト、ミドル、ラストネームのイニシャルで同定される。患者にミドルネームのイニシャルがない場合は、ダッシュを使用する。
【0374】
4.3治療期間
4.3.a 併用薬剤
カリウム保持性利尿薬およびスピロノラクトンは、本試験期間中は禁止される。本試験において他の併用薬剤の制限はない。調査者の見解において必要であれば、いかなる薬剤も許可される。患者は調査者に事前の承認がなければ、いかなる付加的な薬剤(市販薬[OTC]を含む)も避けるべきである。
【0375】
すべての併用薬剤について、開始および中止の日付、ならびに使用理由を適当なCRFに記録しなければならない。選択された併用薬剤(ACE−I、AII阻害薬、抗不整脈、抗凝固薬、抗血小板薬、β遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、ジゴキシン、利尿薬、マグネシウムサプリメント、カリウムサプリメント、およびα遮断薬を含む)について、投与量、ならびに開始および中止の日付を適当なCRFに記録しなければならない。これらの選択された併用薬の変更もすべて適当なCRFに記録しなければならない。
【0376】
4.3.b 通院1回目 ベースラインおよび無作為抽出(第0日)
無作為抽出はAMI(症状の最も早い始まり)の開始後3日(>48時間)から10日までの間に、好ましくは退院前に行わなければならない。
【0377】
1回目の通院(第0日)で、患者は治療期間に対象となり得るかどうかを評価される。1回目の通院の評価は以下を含む:
1.座位での心拍および座位でのカフBP。
2.NYHA機能の分類の決定(セクション4.2.e参照)。
3.併用薬剤の記録。
4.登録/除外基準の決定(セクション3.2.bおよび3.2.c参照)。
【0378】
対象となり得る各患者は次の番号となる4桁の患者番号が割付けられ、本試験開始前にSearleで用意したコンピューター作成の無作為抽出計画による、その番号に対して割付けられた治療を受ける。
【0379】
患者は4週間分の二重盲検試験薬剤を受け取り、再度毎朝1錠、水と共に服用する、さもなければ調査者の指示どおりに服用するよう指示される。
【0380】
4.3.c 安全性の検査室的評価(無作為抽出後48時間)
投与開始後48時間に血清カリムレベルを測定する。可能であればこの測定用の採血は午前中に行うことが望ましい。
【0381】
試験中いかなる時でも、血清カリウムレベルが>5.5mEq/L、ただし<6.0mEq/Lとなる場合は、試験薬剤の投与量を次に低い投与量に、例えば25mgQDから25mgQOD、25mgQODから一次保留に減量する。各投与量の調整後1週間以内に、血清カリウムレベルを決定する。投与量の調整は最も新しい血清カリウムレベルに基づいて行う。試験中いかなる時でも血清カリウムレベルが6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤は一時保留とする。試験薬剤を一時保留としている場合、血清カリウムが<5.5mEq/Lの時点で、1錠QODにて投与を再開し、セクション3.6、表20に記載したように投与量を調整することができる。投与量の詳細な指示および試験薬剤投与の再開の指示については、セクション3.6を参照のこと。試験中いかなる時でも血清カリウムレベルが持続的に6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤を永久に中止する。
【0382】
4.3.d 通院2回目(無作為抽出後1週間±3日)
1週間の治療後、以下の処置を行う。
1.座位での心拍および座位でのカフBP。
2.血清カリウム測定用の採血。可能であれば採血は午前中に行うことが望ましい。
3.NYHAの機能の分類の決定(セクション4.2.e参照)。
4.エンドポイントの評価(セクション2.0参照)。
5.あらゆる新たな併用薬剤および選択された薬剤のあらゆる投与量の変更の記録(セクション4.3.a参照)。
6.あらゆる副作用の記録。
7.返却薬剤の数量確認および遵守の記録。
【0383】
試験中いかなる時でも、血清カリウムレベルが>5.5mEq/L、ただし<6.0mEq/Lとなる場合は、試験薬剤の投与量を次に低い投与量に、例えば50mgQD(2錠)から25mgQD(1錠)、25mgQDから25mgQOD、25mgQODから一次保留に減量する。各投与量の調整後1週間以内に、血清カリウムレベルを決定する。投与量の調整は最も新しい血清カリウムレベルに基づいて行う。試験中いかなる時でも血清カリウムレベルが6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤は一時保留とする。試験薬剤を一時保留としている場合、血清カリウムが<5.5mEq/Lの時点で、1錠QODにて投与を再開し、セクション3.6、表20に記載したように投与量を調整することができる。投与量の詳細な指示および試験薬剤投与の再開の指示については、セクション3.6を参照のこと。試験中いかなる時でも血清カリウムレベルが持続的に6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤を永久に中止する。
【0384】
4.3.e通院3回目(無作為抽出後4週間±3日)
4週間の治療後、以下の処置を行う:
1.座位での心拍および座位でのカフBP。
2.臨床的安全性のためのカリウム測定を含む検査室用採血(セクション4.2.c参照)
3.臨床的安全性のための尿検査用の尿サンプル採取(セクション4.2.c参照)。
4.NYHAの機能の分類の決定(セクション4.2.e参照)。
5.エンドポイントの評価(セクション2.0参照)。
6.QOLの評価(セクション4.2.f参照)
7.あらゆる新たな併用薬剤および選択された薬剤のあらゆる投与量の変更の記録(セクション4.3.a参照)。
8.あらゆる副作用の記録。
9.返却薬剤の数量確認および遵守の記録。
10.薬剤日誌のカードと共に試験薬剤3か月分の配布。
【0385】
今回の通院時に患者には、25mgQDのエプレレノン/プラセボを継続することを指示する。今回の通院時に測定された血清カリウムレベルが<5.0mEq/Lの場合、施設は患者にコンタクトをとり、1日2錠の投与量に増量することを患者に指示する。カリウムレベルが第4週に5.0mEq/L以上、ただし第5週に<5.0mEq/Lの場合、試験薬の投与量を50mgQD(2錠)に増量する。この場合、血清カリウムを第6週にチェックする。試験中いかなる時でも、血清カリウムレベルが>5.5mEq/L、ただし<6.0mEq/Lとなる場合は、試験薬剤の投与量を次に低い投与量に、例えば50mgQD(2錠)から25mgQD(1錠)、25mgQDから25mgQOD、25mgQODから一次保留に減量する。各投与量の調整後1週間以内に、血清カリウムレベルを決定する。投与量の調整は最も新しい血清カリウムレベルに基づいて行う。試験中いかなる時でも血清カリウムレベルが6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤は一時保留とする。試験薬剤を一時保留としている場合、血清カリウムが<5.5mEq/Lの時点で、1錠QODにて投与を再開し、セクション3.6、表20に記載したように投与量を調整することができる。投与量の詳細な指示および試験薬剤投与の再開の指示については、セクション3.6を参照のこと。試験中いかなる時でも血清カリウムレベルが持続的に6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤を永久に中止する。
【0386】
4.3.f 検査室結果の安全性の評価(無作為抽出後5週間)
第5週にすべての患者について血清カリウムレベルを測定する。第4週に投与量を増加しなかった患者については、血清カリウムが<5.0mEq/Lの場合は試験薬剤の投与量を2錠QDに増量することができる。今回の通院時に投与量を増加する場合は、1週間以内に血清カリウムレベルを測定する。可能であればこの測定用の採血は午前中に行うことが望ましい。
【0387】
試験中いかなる時でも、血清カリウムレベルが>5.5mEq/L、ただし<6.0mEq/Lとなる場合は、試験薬剤の投与量を次に低い投与量に、例えば50mgQD(2錠)から25mgQD(1錠)、25mgQDから25mgQOD、25mgQODから一次保留に減量する。各投与量の調整後1週間以内に、血清カリウムレベルを決定する。投与量の調整は最も新しい血清カリウムレベルに基づいて行う。試験中いかなる時でも血清カリウムレベルが6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤は一時保留とする。試験薬剤を一時保留としている場合、血清カリウムが<5.5mEq/Lの時点で、1錠QODにて投与を再開し、セクション3.6、表20に記載したように投与量を調整することができる。投与量の詳細な指示および試験薬剤投与の再開の指示については、セクション3.6を参照のこと。試験中いかなる時でも血清カリウムレベルが持続的に6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤を永久に中止する。
【0388】
4.3.g 通院4回目以降(無作為抽出後3ヶ月±10日およびそれ以降3ヶ月毎)
治療3ヶ月後およびその後3ヶ月毎に、以下の処置を行う:
1.座位での心拍および座位でのカフBP。
2.臨床的安全性のためのカリウム測定を含む検査室用採血および臨床的安全性のための尿検査用の尿サンプルの採取(セクション4.2.c参照)を3,6,12,18,24ヶ月、およびそれ以降本試験が継続している限り6ヶ月毎に行う。血清カリウム用の採血のみ、9,15,21ヶ月およびそれ以降本試験が継続している限り3ヶ月毎に行う。
3.NYHAの機能の分類の決定(セクション4.2.e参照)。
4.エンドポイントの評価(セクション2.0参照)。
5.QOLの評価を3,6,12ヶ月に行う(セクション4.2.f参照)
6.あらゆる新たな併用薬剤および選択された薬剤のあらゆる投与量の変更の記録(セクション4.3.a参照)。
7.あらゆる副作用の記録。
8.返却薬剤の数量確認および遵守の記録。
9.薬剤日誌カードと共に本試験薬剤3か月分の配布。
【0389】
試験中いかなる時でも、血清カリウムレベルが>5.5mEq/L、ただし<6.0mEq/Lとなる場合は、試験薬剤の投与量を次に低い投与量に、例えば50mgQD(2錠)から25mgQD(1錠)、25mgQDから25mgQOD、25mgQODから一次保留に減量する。各投与量の調整後1週間以内に、血清カリウムレベルを決定する。投与量の調整は最も新しい血清カリウムレベルに基づいて行う。試験中いかなる時でも血清カリウムレベルが6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤は一時保留とする。試験薬剤を一時保留としている場合、血清カリウムが<5.5mEq/Lの時点で、1錠QODにて投与を再開し、セクション3.6、表20に記載したように投与量を調整することができる。投与量の詳細な指示および試験薬剤投与の再開の指示については、セクション3.6を参照のこと。試験中いかなる時でも血清カリウムレベルが持続的に6.0mEq/L以上となる場合は、試験薬剤を永久に中止する。
【0390】
4.3.h 最後の通院または試験薬剤の早期中止
最後の通院時に以下の処置を行う:
1.座位での心拍および座位でのカフBP。
2.理学的診察
3.12誘導心電図。
4.臨床的安全性のためのカリウム測定を含む検査室用採血(セクション4.2.c参照)。
5.臨床的安全性のための尿検査用の尿サンプル採取(セクション4.2.c参照)。
6.NYHAの機能の分類の決定(セクション4.2.e参照)。
7.エンドポイントの評価(セクション2.0参照)。
8.QOLの評価(セクション4.2.f参照)
9.あらゆる新たな併用薬剤および選択された薬剤のあらゆる投与量の変化の記録(セクション4.3.a参照)。
10.あらゆる副作用の記録。
11.返却薬剤の数量確認および遵守の記録。
【0391】
最後の評価でのあらゆる異常な所見は、十分に解決されるまでできる限り調査者による追跡を行うものとする。
【0392】
4.4試験終了前の試験薬剤の永久的な中止
本試験が終了する前に何らかの理由で患者が永久に試験薬剤を中止する場合、同中止理由をPermanent Cessation of Study Drug Formに記入しなければならない。患者の試験薬剤の永久的な中止はまた、責任者(coordinator)または調査者によりIVRSセンターに登録されなければならない。患者はセクション4.3.hの“最後の通院または試験薬剤の早期中止”で述べた処置が施行されなければならず、また適当なCRFを完成させなければならない。試験薬剤の中止以前の患者のすべてのデータはG. D. Searle & Co.が入手し、患者には試験終了まで3ヶ月毎にエンドポイント(セクション2.0参照)に関する電話での追跡を継続する。
【0393】
患者は以下のいずれかの理由により試験薬剤を永久的に中止することができる:
1.試験薬剤を忍容できない。
2.患者が最小投与量(1錠QOD)を供与されている時の持続的血清カリウムレベルが6.0mEq/L以上。
3.妊娠。
4.管理上の理由。
5.調査者の見解において患者の最善の利益を守るその他のあらゆる理由。
6.患者からの脱退の要望。患者はいかなる時いかなる理由でも脱退する権利を有する。
7.スピロノラクトンによる治療。
【0394】
試験薬剤の過度の中止は試験の解釈を不可能にすると考えられる;したがって不必要な薬剤の中止は避けるべきである。患者への試験方法の明確な説明、およびインフォームドコンセントの文書を患者が理解することは義務であるだけではなく、不必要な薬剤中止を制限するためにも重要である。
【0395】
5.0統計
5.1サンプルサイズの正当化
5.1.aサンプルサイズおよび致死率の評価
無作為抽出される患者は、1,012例の死亡が発生するまで追跡される。この数字はプラセボ群と比較しての死亡率の18.5%低減を検出するための、90%を上回る検出力を提供する。プラセボ群における1年目のプラセボの致死率が15%またはそれ以上で、6,200例までの患者が18ヶ月間にわたって登録される場合、標的数の1,012死亡例は試験の最初の30ヶ月以内に発生することになる(18ヶ月の登録プラス最後の患者の登録後12ヶ月の追跡)。
【0396】
必要な患者数およびこの死亡数に達する追跡期間を概算するため、3つ試験のデータを検討した。これら試験において、活性治療を受ける群の1年目の致死率は12%から23%の範囲であった。ヨーロッパ数カ国で行われたAIRE試験、およびデンマークで行われたTRACE試験において、活性物質(ACE−I)群の1年目の致死率は各々16%および23%であった。(Kober L et al. N Engl J Med 1995; 333: 1670−1676)。AIRE試験において、ジゴキシンを投与されなかった無作為抽出のすべての患者の1年目の死亡率は12%(ジゴキシン投与の患者は約17%)であった。GISSI−3試験において、Killipクラス>1で3日目に生存していたリジノプリルを無作為に割付けた患者の、1年目の致死率は22%であった;これらの患者に対するACE−I治療は42日で中止されたが、彼らの50%以上は長期間の治療が継続された。以下の表は、1年間のプラセボの致死率の3つの異なる推定値(12%、15%、および18%)に基づいた、必要な患者数および追跡期間を示す。これらの結果はShihにより1995年に報告されたソフトウエアを用いて得た。(Shih JH. Controlled Clinical Trials 1995; 16: 395−407)
【0397】
致死率の減少のハザードを、AIRE試験の活性治療群で観察された減少と同様な値と仮定して算出する。TRACE試験の結果を用いた場合も類似の結果が得られた。今回の試験はすべての患者に対してACE−Iを含むバックグラウンドの薬剤を認めているため、これらのACE−I試験のプラセボ群よりむしろ活性物質群を使用した。また、2治療群間のハザード比は時間を経て一定(相対的ハザード)とし、最初の6ヶ月間より登録期間の最後の12ヶ月間により高い新奇登録率が生じることになる。
表21
【0398】
【表55】
Figure 2004507495
【0399】
試験のコースにわたる致死率の低下はAIRE試験では27%およびTRACEでは22%であった。先の試験の活性治療群が、本試験のプラセボ群により類似すると予測されるため、今回の試験のコース全体を通して先の試験より治療効果はより小さいと予測される。したがって予定のサンプルサイズ設定において、1年目の致死率の低下を15%、18.5%および22%と考察した。最近のRALES試験(17)において、エプレレノンと同じ作用機序をもつ活性物質がプラセボに比較して30%以上の致死率の低下を達成したことは、患者母集団の違いはあるが注目に値する。RALES試験では、各治療群のほとんどの患者が同試験薬剤に加えて標準的な治療を受けていた。
【0400】
5.1.b 追跡不明
試験の管理の方法により追跡不明は1%以下と予測されるため、サンプルサイズ推定値は追跡不明に関する調整は行わなかった。
【0401】
5.2ベースラインおよび人口学の分析
ベースラインおよび人口学の因子に関する治療群間の比較は、連続変数についてはt検定、そしてカテゴリ変数についてはカイ二乗検定により検討する。
【0402】
5.3有効性の分析
5.3.a 一次および二次エンドポイント
一次および二次エンドポイントのすべての統計分析は、intention−to−treatの原則に従う。無作為抽出の患者のデータを、患者の本来の治療割付けに従って分析し、試験薬剤摂取の遵守にかかわりなく、すべての患者について試験期間中の致死率およびその他の主要なエンドポイントの追跡を行う。
【0403】
各エンドポイントに対してイベントまでの時間を、中間分析に必要であるとみなされる、全体として0.05レベルでのログランク検定を用いて分析する。統計分析に含めるため、あらゆる裁定可能なエンドポイントのイベントはCritical Events Committeeにより裁定されなければならない(セクション5.5.b参照)。カプラン−マイヤー曲線を用いて、イベントまでの時間の様々な分布をまとめる。共変数としてベースラインの特徴を用いてのこれらのエンドポイントの予備分析を、コックス比例回帰ハザードモデルを用いて、相対ハザード比および95%信頼区間を概算する。
【0404】
ログランク検定およびコックス回帰分析は地理的領域により層別化する。この領域は、アメリカおよびカナダ;ラテンアメリカ;東ヨーロッパ;および西ヨーロッパから成り、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、および南アフリカも含む。
【0405】
5.3.b クオリティーオブライフ
適当な統計手段を用いてQOLを分析する。分析のための質問表はKCCQ、SF−12、the EuroQoL Health Rating Scale、MOS−Dの鬱スケールおよびBSI−Aの不安スケールを含む。これらのスケールの説明に関してはセクション4.2.fを参照のこと。
【0406】
5.3.c サブグループの分析
一次および二次エンドポイントについてサブグループの分析を行う。サブグループは人種(黒人、非黒人)、性別、年齢、糖尿病の有無、駆出率、血清カリウム、血清クレアチニン、β遮断薬の使用、ジゴキシンの使用、カリウムサプリメントの使用、最初のAMI対その後のAMI、Killipクラス、再灌流の状態、高血圧の既往、HFの既往歴、喫煙の既往、狭心症の既往、指標となるAMIから無作為抽出までの時間、および地理的領域のベースラインでの記録に基づく。継続的な測定値、例えば年齢、駆出率、血清カリウム、および血清クレアチニンに基づくサブグループは中央値で二分する。
【0407】
5.4 安全性の分析
試験薬剤の少なくとも1回投与を受け取るすべての患者は、安全性の分析に含まれる。定められた一定の安全性のデータは、試験薬剤をまだ供与されている患者についてのみ集める。
【0408】
5.4.a 症状および副作用のイベント
すべての副作用のイベントを治療群別にコードしまとめる。治療の緊急の副作用イベントの罹患率を治療群および体の機能、ならびに重症度および属性別に表にまとめる。加えて、試験薬剤の中止の原因となる副作用イベントの罹患率、および重症の副作用イベントを治療群別にまとめる。試験薬剤の患者への最終投与後30日以内に発生する副作用および重症の副作用イベントのみが安全性の分析に含まれるものとする。
【0409】
5.4.b バイタルサイン
バイタルサインは予定通院時および治療別にリストし、まとめる。心拍およびBPのベースラインからの変化を、共変数としてベースラインの値を用いての   の共変性の分析により分析する。
【0410】
5.4.c 臨床検査室試験
臨床検査室データをまとめ、治療群を比較する。治療群内でのベースラインから治療後までの変化をペアt検定を用いて分析する。治療群間の差異は、共変数としてベースラインの値を用いての共変性の分析により評価する。シフトテーブルを用いて検査室の値のシフトを図式的に描く。これらのシフトテーブルはベースラインまたは治療後のいずれかに、臨床的に高値または低値の検査室データを捉える。臨床にかかわる検査室の結果の罹患率を、治療群別にまとめる。
【0411】
5.5委員会
スポンサーとの協力の下、各参加国または地域の調査責任者からなるSteering Committeeが本試験を監督する。独立したData Safety Monitoring Boardもまた設置される。すべてのエンドポイントはCritical Events Committeeの裁定を受ける。
【0412】
5.5.a Steering Committee
Steering Committeeは各参加国または地域の調査責任者、スポンサー、および独立した統計家からなる。同委員会には試験の指示を通しての本試験の結果の内容は伏せたままとする。同委員会は調査者のネットワークの開発、専門的な臨床ガイダンスおよび高水準の科学的特質の確立、プロトコールに必要なあらゆる微調整を行うことを含む、試験の指示および報告を監督する。Steering Committee Charter(憲章)に同委員会の責任を定義する。
【0413】
5.5.b Critical Events Committee(CEC)
独立したCritical Events Committee(CEC)の目的は、本試験中の各患者のすべてのエンドポイントの原因を分類することである。同委員会は予測される各エンドポイントイベントの規定内容をまとめるが(セクション2.0参照)、治療割付けの内容は伏せたままとする。CECは各イベントの特徴を評価し、予め定めた特定のエンドポイントの基準に見合うかどうかを決定する。CEC Chareterに同委員会の責任を定義する。
【0414】
5.5.c Data Safety Monitoring Board(DSMB)および中間分析
独立したDSMBは本試験の安全性および有効性をモニターし、試験の完了前に中止するための十分な治療差があるかどうかを決定するために、選出される。DSMBは5名のメンバー、すなわち心不全およびその進行の診断の専門家である4名の心臓病専門医、および臨床試験データ分析の専門家である1名の医学統計家からなる。メンバーの1名を委員長とする。DSMBのメンバーは本試験の調査者としての活動は行わない。DSMB Charterに同委員会の責任を定義する。
【0415】
効力のために早期に試験を閉鎖する際の決定は、Lan−DeMets alpha spending function法を用いてO’Brien−Fleming−type boundaryにより行われる。DSMBの勧告は、中止の制定に責任のあるSteering Committeeの委員長に報告される。
【0416】
Searlおよびその他の試験関係者に内容を伏せたままにするため、外部の統計グループが中間報告のすべての側面を作成し、DSMBと直接話し合う。
【0417】
5.6IVRSセンター
IVRSセンターは治療の割付け、新しい患者の登録、脱落および薬剤の供給の追跡に使用される(詳細はセクション3参照)。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1−1は、エプレレノン投与に伴う血漿レニン活性および血清アルドステロンの変化を示す。
図1−2は、エプレレノン投与に伴う収縮期血圧の変化を示す。
図1−3は、エプレレノン投与に伴う拡張期血圧の変化を示す。
図1−Aは、H型エプレレノンの粉末X線回折パターンを示す。
図1−Bは、L型エプレレノンの粉末X線回折パターンを示す。
図1−Cは、エプレレノンのメチルエチルケトン溶媒和物の粉末X線回折パターンを示す。
【図2】
図2−Aは、メチルエチルケトンから直接結晶化させた、粉砕していないL型の示唆走査熱量計(DSC)のサーモグラムを示す。
図2−Bは、メチルエチルケトンからの高純度エプレレノンの結晶化により得られた溶媒和物の脱溶媒和により製造された、粉砕していないL型の示唆走査熱量計(DSC)のサーモグラムを示す。
図2−Cは、メチルエチルケトン中の高純度エプレレノン溶液から溶媒和物を結晶化し、その溶媒和物を脱溶媒和してL型を得、得られたL型を粉砕することにより製造されたL型の示唆走査熱量計(DSC)のサーモグラムを示す。
図2−Dは、適当な溶媒から低純度のエプレレノンを温浸することにより得られた溶媒和物の脱溶媒和により製造された、粉砕していないH型の示唆走査熱量計(DSC)のサーモグラムを示す。
【図3】
図3−Aは、H型エプレレノンの赤外線スペクトル(拡散反射、DRIFTS)を示す。
図3−Bは、L型エプレレノンの赤外線スペクトル(拡散反射、DRIFTS)を示す。
図3−Cは、エプレレノンのメチルエチルケトン溶媒和物の赤外線スペクトル(拡散反射、DRIFTS)を示す。
図3−Dは、クロロホルム溶液中のエプレレノンの赤外線スペクトル(拡散反射、DRIFTS)を示す。
【図4】
図4は、H型エプレレノンの13C NMRスペクトルを示す。
【図5】
図5は、L型エプレレノンの13C NMRスペクトルを示す。
【図6】
図6−Aは、エプレレノンのメチルエチルケトン溶媒和物の熱重量分析の図を示す。
【図7】
図7は、メチルエチルケトンから単離した、7−メチル水素4α,5α:9α,11α−ジエポキシ−17−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグナン−7α,21−ジカルボキシラート,γ−ラクトンの結晶の粉末X線回折パターンを示す。
【図8】
図8は、イソプロパノールから単離した、7−メチル水素11α,12α−エポキシ−17−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグン−4−エン−7α,21−ジカルボキシラート,γ−ラクトンの結晶の粉末X線回折パターンを示す。
【図9】
図9は、n−ブタノールから単離した、7−メチル水素17−ヒドロキシ−3−オキソ−17α−プレグナ−4,9(11)−ジエン−7α,21−ジカルボキシラート,γ−ラクトンの結晶の粉末X線回折パターンを示す。
【図10】
図10は、(a)0%、(b)1%、(c)3%、および(d)5%のジエポキシドを添加したメチルエチルケトンの結晶化から得られた湿ったケーキ(メチルエチルケトン溶媒和物)の、粉末X線回折パターンを示す。
【図11】
図11は、(a)0%、(b)1%、(c)3%、および(d)5%のジエポキシドを添加したメチルエチルケトンの結晶化から得られた乾燥固体の、粉末X線回折パターンを示す。
【図12】
図12は、(a)乾燥前に溶媒和物を粉砕していない、および(b)乾燥前に溶媒和物を粉砕した、ジエポキシドを3%添加したメチルエチルケトンの結晶化から得られた乾燥固体の、粉末X線回折パターンを示す。
【図13】
図13は、a)0%、(b)1%、(c)5%、および(d)10%の11,12−エポキシドを添加したメチルエチルケトンの結晶化から得られた湿ったケーキ(メチルエチルケトン溶媒和物)の、粉末X線回折パターンを示す。
【図14】
図14は、(a)0%、(b)1%、(c)5%、および(d)10%の11,12−エポキシドを添加したメチルエチルケトンの結晶化から得られた乾燥固体の、粉末X線回折パターンを示す。
【図15】
図15は、表7Aに示したデータに基づいた、生成物の純度、出発物質の純度、冷却速度およびエンドポイント温度のキューブプロットを示す。
【図16】
図16は、最終生成物の純度に統計的に有意な効果を持つ変数を決定するため、図15のキューブプロットを用いて作成した半正規プロットを示す。
【図17】
図17は、最終生成物の純度における出発物質の純度と冷却速度との相互作用を示す、表7に示したデータに基づいた相互作用のグラフである。
【図18】
図18は、表7Aに示した結果に基づいた、H型の重量比率、出発物質の純度、冷却速度およびエンドポイント温度のキューブプロットを図18に示す。
【図19】
図19は、最終物質の純度において統計的に有意な効果を持つ変数を決定するため、図18のキューブプロットを用いて作成した半正規プロットを示す。
【図20】
図20は、最終物質の純度における出発物質の純度とエンドポイント温度との相互作用を示す、表7の結果に基づいた相互作用のグラフである。
【図21】
図21は、アモルファスエプレレノンのX線回折パターンを示す。
【図22】
図22は、アモルファスエプレレノンのDSCサーモグラムを示す。

Claims (41)

  1. 認知機能不全を予防または治療を必要とする被験者における、認知機能不全を予防するまたは治療する方法であって、アルドステロン受容体拮抗薬または医薬的に受容可能なその塩の治療有効量により該被験者を治療することを含む前記方法。
  2. 認知機能不全が、精神病、認知障害、気分障害、不安障害、および人格障害から成る群から選択される請求項1の方法。
  3. 認知機能不全が、行動の障害、明瞭な思考不能、現実の把握不能、誤った確信および異常な感覚から成る群から選択される、1つまたはそれ以上の症状を特徴とする精神病である、請求項2の方法。
  4. 認知機能不全が、錯乱、見当識障害、記憶障害、または行動秩序の破壊から成る群から選択される、1つまたはそれ以上の症状を特徴とする認知障害である、請求項2の方法。
  5. 認知機能不全が、鬱、二極性障害、持続的な気分の異常、活動リズムの変調、睡眠の変調、食欲の変調から成る群から選択される、1つまたはそれ以上の症状を特徴とする気分障害である、請求項2の方法。
  6. 認知機能不全が、不安、パニック、不快(dysphoria)、強迫観念(obsession)、不合理な恐れ、儀式行動、強迫行為(compulsion)、およびパターン行動から成る群から選択される、1つまたはそれ以上の症状を特徴とする不安障害である、請求項2の方法。
  7. 被験者が、心疾患、腎臓疾患、発作および血管疾患から成る症状の群から選択される、1つまたはそれ以上の症状があるまたは罹りやすい、請求項1の方法。
  8. クオリティーオブライフの改善の方法を必要とする個人における同方法であって、アルドステロン受容体拮抗薬の治療有効量を同個人に投与することを含み、同治療がクオリティーオブライフの改善をもたらす当該方法。
  9. クオリティーオブライフの改善を、健康関連QOL測定(HRQOL assessment)、SF−36健康評価(SF−36 Health Survey)、カンザスシティー心筋症質問表(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire)、SF−12健康評価(SF−12 Health Survey)、EuroQoL健康関連尺度(EuroQoL Health Rating Scale)、メディカルアウトカムスタディー鬱尺度(Medical Outcomes Study Depression Scale)および簡易症状尺度(不安)(Brief Symptom Inventory−Anxiety)から成る方法の群から選択される、1つまたはそれ以上の方法を用いて評価する、請求項8の方法。
  10. 評価方法が健康関連QOL測定である、請求項9の方法。
  11. 評価方法がSF−36健康評価である請求項9の方法。
  12. 評価方法がカンザスシティー心筋症質問表である請求項9の方法。
  13. 評価方法がSF−12健康評価である請求項9の方法。
  14. 評価方法がEuroQoL健康関連尺度である請求項9の方法。
  15. 評価方法がメディカルアウトカムスタディー鬱尺度である請求項9の方法。
  16. 評価方法が簡易症状尺度(不安)である請求項9の方法。
  17. 個人が、心疾患、腎臓疾患、発作および血管疾患から成る症状の群から選択される、1つまたはそれ以上の症状を有するまたは罹りやすい、請求項8の方法。
  18. アルドステロン受容体拮抗薬がスピロノラクトン−タイプの化合物である、請求項1の方法。
  19. スピロノラクトン−タイプの化合物が以下の化合物:
    7α−アセチルチオ−3−オキソ−4,15−アンドロスタジエン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
    3−オキソ−7α−プロピオニルチオ−4,15−アンドロスタジエン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
    6β,7β−メチレン−3−オキソ4,15−アンドロスタジエン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
    15α,16α−メチレン−3−オキソ−4,7α−プロピオニルチオ−4−アンドロステン[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
    6β,7β,15α,16α−ジメチレン−3−オキソ−4−アンドロステン[17(β−1’)−スピロ−5’]−ペルヒドロフラン−2’−オン;
    7α−アセチルチオ−15β,16β−メチレン−3−オキソ−4−アンドロステン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
    15β,16β−メチレン−3−オキソ−7β−プロピオニルチオ−4−アンドロステン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;および
    6β,7β,15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−4−アンドロステン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン
    からなる群から選択される請求項1の方法。
  20. アルドステロン受容体拮抗薬がスピロノラクトンである請求項1の方法。
  21. アルドステロン受容体拮抗薬がエポキシステロイド系アルドステロン拮抗薬である請求項1の方法。
  22. エポキシステロイド系化合物が、20−スピロキサン化合物のステロイドの核の“C”環に縮合したエポキシ部分を有する、請求項21の方法。
  23. 20−スピロキサン化合物が、9−アルファ、11−ベータで置換したエポキシ部分の存在を特徴とする、請求項21の方法。
  24. アルドステロン受容体拮抗薬がエポキシメクスレノンである請求項1の方法。
  25. アルドステロン受容体拮抗薬がドロスピレノンである請求項1の方法。
  26. 投与されるエポキシステロイド系化合物の量が、1日あたり約0.25mgから約400mgの間である、請求項21の方法。
  27. 投与されるエポキシステロイド系化合物の治療有効量が、1日あたり約5mgから約200mgの間である、請求項21の方法。
  28. 投与されるエポキシステロイド系化合物の治療有効量が、1日あたり約25mgから約100mgの間である、請求項21の方法。
  29. 投与されるエポキシステロイド系化合物の治療有効量が、1日あたり約10mgから約15mgの間である、請求項21の方法。
  30. アルドステロン受容体拮抗薬がスピロノラクトン−タイプの化合物である請求項8の方法。
  31. スピロノラクトン−タイプの化合物が以下の化合物:
    7α−アセチルチオ−3−オキソ−4,15−アンドロスタジエン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
    3−オキソ−7α−プロピオニルチオ−4,15−アンドロスタジエン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
    6β,7β−メチレン−3−オキソ4,15−アンドロスタジエン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
    15α,16α−メチレン−3−オキソ−4,7α−プロピオニルチオ−4−アンドロステン[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
    6β,7β,15α,16α−ジメチレン−3−オキソ−4−アンドロステン[17(β−1’)−スピロ−5’]−ペルヒドロフラン−2’−オン;
    7α−アセチルチオ−15β,16β−メチレン−3−オキソ−4−アンドロステン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;
    15β,16β−メチレン−3−オキソ−7β−プロピオニルチオ−4−アンドロステン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン;および
    6β,7β,15β,16β−ジメチレン−3−オキソ−4−アンドロステン−[17(β−1’)−スピロ−5’]ペルヒドロフラン−2’−オン
    から成る群から選択される請求項8の方法。
  32. アルドステロン受容体拮抗薬がスピロノラクトンである請求項8の方法。
  33. アルドステロン受容体拮抗薬がエポキシステロイド系アルドステロン拮抗薬である請求項8の方法。
  34. エポキシステロイド系化合物が、20−スピロキサン化合物のステロイドの核の“C”環に縮合したエポキシ部分を有する、請求項33の方法。
  35. 20−スピロキサン化合物が、9−アルファ、11−ベータで置換したエポキシ部分の存在を特徴とする、請求項33の方法。
  36. アルドステロン受容体拮抗薬がエポキシメクスレノンである請求項8の方法。
  37. アルドステロン受容体拮抗薬がドロスピレノンである請求項8の方法。
  38. 投与されるエポキシステロイド系化合物の量が、1日あたり約0.25mgから約400mgの間である、請求項33の方法。
  39. 投与されるエポキシステロイド系化合物の治療有効量が、1日あたり約5mgから約200mgの間である、請求項33の方法。
  40. 投与されるエポキシステロイド系化合物の治療有効量が、1日あたり約25mgから約100mgの間である、請求項33の方法。
  41. 投与されるエポキシステロイド系化合物の治療有効量が、1日あたり約10mgから約15mgの間である、請求項33の方法。
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