JP2004503211A - ヒトnim1キナーゼ - Google Patents
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Abstract
本発明は、ヒトNIM1キナーゼをコードする核酸分子を提供する。本発明はまた、発現に関連する疾患の特徴付け、診断、評価、治療、または予防における本核酸分子、その断片、その変異体、及びその相補体、更に本タンパク質、その一部、並びにその抗体の利用法を提供する。本発明は更に、本タンパク質を発現させるための発現ベクター及び宿主細胞、並びに遺伝子組換え生物またはモデル系を提供する。
Description
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、ヒトNIM1キナーゼをコードする核酸分子に関連し、また、脳疾患及び癌、特に乳癌の特徴付け・診断・予防・治療に、この核酸分子及びこの核酸分子がコードするタンパク質を利用することに関連する。
【0002】
(発明の背景)
生物間の系統発生的な関係は何度も実証されており、様々な原核生物及び真核生物の研究結果は、分子、生化学的及び生理学的機構、及び代謝経路の漸進的な進化を示している。異なった進化圧力にもかかわらず、線虫、ハエ、ラット、及びヒトのプロテインキナーゼは、共通の化学的及び構造的特徴を有し、同一の一般的な細胞活性を調節する。構造及び/または機能が分かっている生物の核酸配列及びタンパク質配列を比較することにより、ヒト配列の分析が進み、ヒトの病態、疾患、及び障害のための診断薬及び治療薬を検査するためのモデル系の作製が可能となる。
【0003】
プロテインキナーゼは、タンパク質にリン酸基を付加することにより多くの異なった細胞増殖、細胞分化、及びシグナル伝達を調節する。制御のきかないシグナル伝達は、炎症、癌、動脈硬化、及び乾癬を含む様々な病態に関係することが分かっている。可逆的なタンパク質リン酸化は、真核細胞の活性を調節するための主な方法である。典型的な哺乳動物細胞における10,000のタンパク質活性の内の1,000以上がリン酸化であると推定される。活性化させる高エネルギーのリン酸は、一般にプロテインキナーゼによりアデノシン三リン酸(ATP)またはグアノシン三リン酸(GTP)から特定のタンパク質に導入され、プロテインホスファターゼによりそのタンパク質から除去される。リン酸化は分子スイッチをオンにするのに類似しており、細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、成長及び分化因子などの分子によって仲介される)、細胞周期チェックポイント、及び環境または栄養のストレスに応答して起こる。スイッチがオンになると、適当なプロテインキナーゼが代謝酵素、調節タンパク質、受容体、細胞骨格タンパク質、イオンチャネルまたはポンプ、または転写因子を活性化させる。
【0004】
プロテインキナーゼは、多様な機能及び特性を有する酵素のスーパーファミリーである最も大きな既知のタンパク質群を構成している。プロテインキナーゼは、通常はそれらの基質、それらの調節分子、または変異表現型の或る特徴によって命名される。基質について述べると、プロテインキナーゼは、チロシン残基をリン酸化する群(プロテインチロシンキナーゼ、PTK)とセリンまたはトレオニン残基をリン酸化する群(セリン/トレオニンキナーゼ、STK)との2つの群に概ね分類される。僅かであるがプロテインキナーゼの中には、トレオニン及びチロシン残基の両方をリン酸化する二重特異性を有するものもある。
【0005】
プロテインキナーゼは、触媒ドメインのいずれかの側に位置するアミノ酸残基の違い(通常は5〜100残基の間)または触媒ドメインのループ内に挿入されたアミノ酸残基の違いによって複数のファミリーに分類され得る。これらの残基により、標的タンパク質を認識して相互作用する時の各キナーゼの調節が可能となる。殆んど全てのキナーゼは、2つのローブに亘って分布する11のサブドメインを有する250〜300のアミノ酸からなる類似した触媒ドメインを含む。サブドメインI−IVを含むN末端ローブは、ATP供与体分子と結合しそのATP供与体分子を方向付ける。サブドメインVIA−XIを含む大きなC末端ローブは、タンパク質基質と結合し、γリン酸をATPからセリン、トレオニン、またはチロシン残基の水酸基へ転移させる。サブドメインVは、N末端ローブ及びC末端ローブに亘っている。
【0006】
11のサブドメインのそれぞれは、サブドメインの特徴であって高度に保存されている特異的なアミノ酸残基及びモチーフ、またはアミノ酸パターンを含む(Hardie及びHanks (1995) The Protein Kinase Facts Books, Vol I, Academic Press, San Diego CA, pp. 7−20)。具体的には、2つのプロテインキナーゼシグネチャ配列がキナーゼドメインにおいて同定された。第1のシグネチャ配列は、ATP結合に関与する活性部位リシン残基を含み、第2のシグネチャ配列は、触媒活性に重要なアスパラギン酸残基を含む。タンパク質が2つのプロテインキナーゼシグネチャを含む場合、そのタンパク質がプロテインキナーゼである可能性はほぼ100%である(MOTIFS 検索プログラム、Genetics Computer Group, Madison WI; Bairochら(1996) Nucleic Acids Res 24:189−196)。
【0007】
STK ファミリー
セカンドメッセンジャー依存性プロテインキナーゼは、サイクリックAMP(cAMP)、サイクリックGMP、イノシトール三リン酸、ホスファチジルイノシトール、3,4,5−三リン酸、サイクリックADPリボース、アラキドン酸、ジアシルクリセロール及びカルシウム−カルモジュリンなどのセカンドメッセンジャーの効果を主に仲介する。サイクリックAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)はSTKファミリーの重要なメンバーである。cAMPは、研究した全ての真核細胞及び動物細胞におけるホルモン作用の細胞内メディエーターである。このようなホルモン誘導性細胞応答には、甲状腺ホルモン分泌、コルチゾル分泌、プロゲステロン分泌、グリコーゲン分解、骨再吸収、心拍数の調節、及び心筋収縮力の調節が含まれる。PKAは全ての動物細胞に見られ、これらほとんどの細胞におけるcAMPの効果に関係すると思われる。PKA発現の変化は、癌、甲状腺疾患、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、及び心血管疾患に関連する(Isselbacher, K. J.ら,(1994) Harrison’ s Principles of Internal Medicine, McGraw−Hill, New York, NY, pp. 416−431, 1887)。
【0008】
カルシウム−カルモジュリン(CaM)依存性プロテインキナーゼもまたSTKファミリーのメンバーである。カルモジュリンは、カルシウムの結合に応答して標的タンパク質に結合することにより、多くのカルシウム調節性プロセスを仲介するカルシウム受容体である。これらのプロセスの主な標的タンパク質はCaM依存性プロテインキナーゼである(CaMK)。CaMKは、平滑筋の収縮、グリコーゲン分解(ホスホリラーゼキナーゼ)、及び神経伝達(CaMキナーゼI及びCaMキナーゼII)の調節に関与する。CaMK Iは、神経伝達物質関連タンパク質であるシナプシンI及びII、遺伝子転写調節因子であるCREB、及び嚢胞性繊維コンダクタンス調節タンパク質であるCFTRを含む様々な物質をリン酸化する(Haribabu, B.ら,(1995) EMBO Journal 14:3679−3686)。CaMK IIもまた、様々な部位においてシナプシンをリン酸化し、チロシンヒドロキシラーゼのリン酸化及び活性化によって脳におけるカテコールアミンの合成を調節する。CaMの多くは、CaMに結合するのに加えてリン酸化により活性化される。CaMKは、キナーゼカスケードの一部として他のキナーゼによりリン酸化されたり、自己リン酸化し得る。
【0009】
もう1つのリガンド活性化プロテインキナーゼは、5’−AMP−活性化プロテインキナーゼである(AMPK;Gao, G.ら,(1996) J. Biol Chem. 271: 17998−17803)。哺乳動物AMPKは、酵素であるアセチル−CoAカルボキシラーゼ及びヒドロキシメチルグルタリル−CoAレダクターゼのリン酸化による脂肪酸及びステロールの合成の調節因子であって、熱ショックやグルコース及びATPの枯渇などの細胞内ストレスに対するこれらの経路の応答を仲介する。AMPKは、触媒αサブユニット、並びにこのαサブユニットの活性を調節すると考えられている2つの非触媒βサブユニット及びγサブユニットからなるヘテロ三量体複合体である。AMPKのサブユニットは、脳、心臓、脾臓、及び肺などの非脂肪性組織において予想以上に広く分布している。この分布から脂質の代謝の調節以外にもある役割を果たしていると考えられる。
【0010】
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)もまた、STKファミリーのメンバーである。MAPKは、リン酸化カスケードを介して細胞表面から核へのシグナル伝達を仲介する。いくつかのサブグループが同定されており、それぞれが異なった基質特異性を有し、固有の細胞外刺激に応答する(Egan 及び Weinberg (1993) Nature 365: 781−783)。MAPキナーゼシグナル伝達経路は、哺乳動物細胞及び酵母に存在する。哺乳動物経路を活性化する細胞外刺激には、上皮成長因子、紫外線、高浸透圧媒体、熱ショック、内毒素性リポ多糖、腫瘍壊死因子及びインターロイキン−1などの前炎症性サイトカインが含まれる。MAPKの発現の変化は、癌、炎症、免疫疾患、及び成長及び発達に影響を及ぼす疾患を含む様々な疾患に関与する。
【0011】
血清/サイトカイン誘導性STKである増殖関連キナーゼ(PRK)は、ヒト巨核細胞における細胞サイクル及び細胞増殖の調節に関与する(Liら (1996) J Biol Chem 271:19402−8)。PRKは、細胞分裂に関係するSTKのpoloファミリーに関連する。PRKは肺腫瘍組織においてダウンレギュレートされ、正常組織における抑制の効かないその発現が発癌に繋がるプロトオンコジーンであると思われる。
【0012】
サイクリン依存性プロテインキナーゼ(CDK)は、細胞周期を介して細胞の進行を調節するSTKの別の群である。サイクリンは小さな調節タンパク質であって、CDKに結合してCDKを活性化させる。次に、そのCDKが有糸分裂プロセスに関与する選択されたタンパク質をリン酸化及び活性化することにより、細胞周期の様々な相を開始させる。CDKは、活性化するのに複数の入力が必要であるという点でユニークである。サイクリンの結合に加えて、CDKの活性化には、特定のトレオニン残基のリン酸化及び特定のチロシン残基の脱リン酸が必要である。
【0013】
ヒトNIM1キナーゼ(hNIM)をコードする核酸分子の発見により、脳疾患及び癌、特に乳癌の特徴付け、診断、予防、治療に有用な新規の組成物を提供する。
【0014】
(発明の要約)
ヒトNIM1キナーゼをコードする実質的に精製された核酸分子の発見に基づき、脳疾患及び癌、特に乳癌の特徴付け・診断・予防・治療に有用な組成物を提供することで当分野の要望に応える。
【0015】
本発明は、SEQ ID NO:2を含むヒトNIM1キナーゼをコードする実質的に精製された核酸分子を提供する。本発明はまた、SEQ ID NO:1、または断片や相補配列を含む組成物を提供する。本発明は更に、SEQ ID NO:24−30から選択される核酸分子の哺乳動物変異体を提供する。本発明はまた、SEQ ID NO:3−30、SEQ ID NO:1のヌクレオチドの約414〜約1414、またはそれらの相補配列から選択される少なくとも18の連続するヌクレオチド断片を提供する。一実施態様では、本発明はこれらの断片の少なくとも1つを含む基板を提供する。第2の実施態様では、本発明は、検出、スクリーニング、及び精製に用いることができる断片を含むプローブを提供する。更なる実施態様では、このプローブは一本鎖相補RNA分子またはDNA分子である。
【0016】
本発明は更に、サンプルにおける核酸分子を検出する方法であって、プローブ即ち相補的な核酸分子をそのサンプルの少なくとも1つの核酸分子とハイブリダイズするステップと、ハイブリダイゼーション複合体を形成するステップと、そのハイブリダイゼーション複合体を検出するステップとを含み、そのハイブリダイゼーション複合体の存在がそのサンプルに核酸分子が存在することを示す方法を提供する。一実施態様では、この方法は更に、ハイブリダイゼーションの前にサンプルの核酸分子を増幅するステップを含む。この核酸分子、その断片、またはその相補配列が、アレイ上のエレメントを構成し得る。
【0017】
本発明はまた、核酸配分子、またはその断片や相補配列を用いて、分子または化合物のライブラリをスクリーニングして、その核酸分子と特異的に結合する少なくとも1つのリガンドを同定する方法であって、特異的な結合が許容される条件下で、その核酸分子をその分子または化合物のライブラリと結合させるステップと、その核酸分子に対する特異的な結合を検出して、その核酸分子と特異的に結合するリガンドを同定するステップとを含む方法を提供する。一実施態様では、このような分子及び化合物のライブラリには、DNA分子、RNA分子、ペプチド、PNA、及びタンパク質等が含まれる。
【0018】
本発明はまた、宿主細胞内に含まれている本核酸分子の少なくともある断片を含む発現ベクターを提供する。本発明は更に、タンパク質が発現する条件下で宿主細胞を培養するステップと、そのタンパク質をその宿主細胞から回収するステップとを含むタンパク質の生産方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、SEQ ID NO:2を含む単離され精製されたタンパク質またはその一部を提供する。更に、本発明はまた、医薬用担体と共に実質的に精製されたタンパク質またはその一部を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
本発明は更に、本タンパク質の少なくとも一部を用いて抗体を産生させる方法を提供する。本発明はまた、タンパク質を用いて分子または化合物のライブラリをスクリーニングして、そのタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つのリガンドを同定する方法を提供する。この方法は、特異的な結合が許容される条件下で、そのタンパク質を分子または化合物のライブラリと結合させるステップと、結合したタンパク質を検出して、そのタンパク質と特異的に結合したリガンドを同定するステップとを含む。このような分子及び化合物のライブラリには、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体、DNA分子、RNA分子、免疫グロブリン、薬剤化合物、擬態、ペプチド、医薬品、及びその他のリガンドが含まれる。本発明は更に、本タンパク質を用いてリガンドを精製する類似の方法を提供する。この方法は、特異的な結合が許容される条件下で、本タンパク質をサンプルと結合させステップと、結合したタンパク質を回収するステップと、そのリガンドから本タンパク質を分離して、精製されたリガンドを得るステップとを含む。
【0021】
本発明は更に、ヒトNIM1キナーゼに対して作製された抗体を用いるスクリーニング法により同定された抗体を提供する。抗体を作製する方法は、抗体反応が起こる条件下で、ヒトNIM1キナーゼ若しくは抗原性を有するその一部で動物を免疫化するステップと、動物抗体を単離するステップと、単離した抗体をNIM1キナーゼでスクリーニングして、Nim1キナーゼに特異的に結合する抗体を同定するステップとを含む。一実施態様では、これらの抗体は、脳疾患及び癌の存在の確認における診断用組成物として有用である。別の実施態様では、この抗体を医薬組成物として、ヒトNIM1キナーゼの過剰な発現に関連する脳疾患及び癌の治療に用い得る。
【0022】
本発明は更に、哺乳動物のゲノムDNAの中にマーカー遺伝子を挿入して、その天然の核酸分子の発現を阻止する方法を提供する。本発明はまた、核酸分子を用いて哺乳動物モデル系を作製する方法を提供する。この方法は、SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:3−30から選択される核酸分子を含むベクターを作製するステップと、そのベクターを胚性幹細胞に形質転換するステップと、形質転換された胚性幹細胞を選択するステップと、この形質転換した肺性幹細胞を哺乳動物胚盤胞の中に微量注入して、キメラ胚盤胞を作製するステップと、偽妊娠メスにキメラ胚盤胞を移植して、このメスから、その生殖細胞系の中にこの核酸分子を含むキメラ子孫が出産されるようにするステップと、そのキメラ哺乳動物を交配してホモ接合性哺乳動物モデル系を作製するステップとを含む。
【0023】
(本発明の実施方法について)
本発明は、ここに開示した特定の装置及び材料、方法に限定されず、その実施形態を変更できることを理解されたい。また、ここで用いられる用語は、特定の実施例のみを説明する目的で用いるものであり、後述の請求の範囲によってのみ限定され、本発明の範囲を限定することを意図したものではないということも理解されたい。本明細書及び請求の範囲において単数形を表す「或る」、「その(この等)」は、文脈で明確に示していない場合は複数形を含むことに注意されたい。従って、例えば「或る宿主細胞」は当業者には周知の複数の宿主細胞を含む。
【0024】
本明細書で用いた全ての科学技術用語は、別の方法で定義されていない限り、本発明の属する技術分野の一般的な技術者が普通に解釈する意味と同じである。本明細書に記載の全ての文献は、本発明に関連して使用する可能性のある文献に記載された細胞系、プロトコル、試薬、ベクターを記述し開示するために引用した。従来の発明を引用したからと言って、本発明の新規性が損なわれると解釈されるものではない。
【0025】
(定義)
「NIM1キナーゼ」は、天然、合成、半合成或いは組換え体などの任意の種(ウシ、ヒツジ、ブタ、齧歯類、イヌ、サルを含むが好ましくはヒトである哺乳動物)から得られる実質的に精製された酵素を指す。
【0026】
「生物学的に活性」は、構造的または免疫学的、調節的、化学的な機能を有する、天然或いは組換え、または合成分子であるタンパク質を指す。
【0027】
「相補的な」は、プリン塩基とピリミジン塩基との自然な水素結合による塩基対形成を指す。例えば、配列A−C−G−Tは、その相補配列T−G−C−AまたはU−G−C−Aと水素結合する。2つの一本鎖分子の相補性は、ヌクレオチドの幾つかのみが結合する部分的な相補性と、ヌクレオチドの殆ど全てが結合する完全な相補性とがある。核酸鎖間の相補性の程度は、ハイブリダイゼーション及び増幅反応の効率及び強度に影響する。
【0028】
「誘導体」は、化学修飾された核酸分子やタンパク質配列を指す。化学修飾には、分子や配列の生物学的活性または寿命を維持或いは増大する、アルキル基またはアシル基、アミノ基による水素の置換や、グリコシル化、ポリエチレングリコール化、または類似の任意のプロセスが含まれる。
【0029】
「断片」は、有用な機能的特性を維持する核酸分子の任意の一部またはインサイト社クローンを指す。有用な断片は、一般にその長さが少なくとも18の連続するヌクレオチドであり、ハイブリダイゼーション、増幅、またはスクリーニング、更に複製、転写、または翻訳の調節に用いられ得るオリゴヌクレオチドを含む。
【0030】
「ハイブリダイゼーション複合体」は、プリン塩基とピリミジン塩基との間の水素結合の形成による2つの核酸分子の複合体を指す。
【0031】
「リガンド」は、核酸分子やタンパク質の相補部位に特異的に結合する任意の分子や物質、または化合物を指す。このようなリガンドは、核酸及びタンパク質、炭水化物、脂肪、脂質を含む無機及び有機物質の少なくとも1つからなり、本発明の核酸分子やタンパク質の活性を安定化させたり、調節したりする。
【0032】
「核酸分子」は、核酸、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA分子、またはそれらの任意の断片や相補配列を指す。また、「核酸分子」は、ゲノム若しくは合成起源の二本鎖若しくは一本鎖のDNA或いはRNAが可能であり、炭水化物または脂質、タンパク質、その他の物質と結合して、形質転換などの特殊な作用を起こしたり、ペプチド核酸(PNA)等の有用な組成物を形成する。核酸分子はまた、非翻訳5’または3’調節領域またはイントロンを含み得る。核酸分子の大きさは、好ましくは約15〜10,000ヌクレオチドであり、より好ましくは約60〜6,000ヌクレオチドであり、最も好ましくは約400〜5000ヌクレオチドである。「オリゴヌクレオチド」は、アンプリマー(amplimer)、プライマー、オリゴマー、エレメント、標的、及びプローブと実質的に同一であり、好ましくは一本鎖であって、その長さは好ましくは約22〜25ヌクレオチドである。
【0033】
「タンパク質」は、天然或いは合成のアミノ酸配列、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、またはそれらの一部を指す。
【0034】
ここで用いる「一部」は、あらゆる目的に用いられるタンパク質の任意の一部を指すが、特に、分子や化合物のライブラリをスクリーニングしてそのタンパク質の一部と特異的に結合する分子を同定するために、または抗体の産生のために用いられる。
【0035】
「レポーター遺伝子」は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体を標識するために用いられる化学成分または生化学成分である。レポーター遺伝子には、限定するものではないが、放射性核種、酵素、基質、補助因子、インヒビター、蛍光剤、色素剤、化学発光剤、及び磁石粒子等が含まれる。レポーター分子は、特定のポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体に特異的に結合させ、その存在を確認し、それらを定量することができる。
【0036】
「サンプル」は、その最も広い意味で用いられる。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び抗体などを含むサンプルは、体液や、細胞が成長する細胞溶液、即ち培養液の可溶性画分や、細胞から単離或いは抽出した染色体、細胞小器官、または膜や、溶液中に存在する或いは基板に結合されたゲノムDNAまたはRNA、cDNAや、組織、細胞、組織プリント、またはフィンガープリント、皮膚、髪等を含み得る。
【0037】
ポリヌクレオチド配列における「類似性」とは、標準的なアルゴリズムを用いてアラインメントされた少なくとも2つの配列間の一致する残基数から求められる。このようなプログラムは、2つの配列間のアラインメントを最適化するべく、標準的かつ再現性のある方法で比較する配列内にギャップを挿入可能なため、2つの配列間のより有意な比較を達成することが可能である。
【0038】
「特異的な結合」または「特異的に結合する」は、2つの分子間の相互作用を指す。ポリヌクレオチドの場合、特異的な結合には、センス鎖とアンチセンス鎖との間の水素結合、複製または転写に影響を与える一本鎖とタンパク質との間の水素結合、DNA分子の主溝または副溝への分子または化合物の挿入、転写因子、エンハンサー、及びリプレッサー等として機能する少なくとも1つの分子との相互作用が含まれる。ポリペプチドの場合、特異的な結合には、上記したようなポリヌクレオチドとの相互作用、或いはアゴニスト、抗体、またはアンタゴニストなどの分子や化合物との相互作用が含まれる。特異的な結合は、分子間の好適な化学的相互作用または分子相互作用を許容する構造的特性の存在に左右される。
【0039】
「実質的に精製された」は、その自然環境から切り離されてから分離或いは単離された、自然環境では結合しているその他の成分が少なくとも約60%、好適には約75%、最も好適には、約90%取り除かれた核酸分子またはタンパク質を指す。
【0040】
「基板」は、核酸分子またはタンパク質が結合した任意の固体或いは半固体の支持物を指し、膜またはフィルター、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビーズ、ゲル、毛細管または他のチューブ、プレート、ポリマー、微小粒子が含まれる。この基板は、孔または溝、ピン、チャネル、細孔を含む様々な表面形態を有する。
【0041】
(発明)
本発明は、ヒトNIM1キナーゼをコードする新規の核酸分子の発見に基づき、脳疾患及び癌の特徴付け・診断・治療・予防においてこの核酸分子やその断片、またはタンパク質やその一部を直接、或いは組成として用いることに関する。
【0042】
本発明のNIM1キナーゼをコードする核酸分子は、小脳ライブラリ(CRBLNOT01)のインサイト社クローン670279と受精卵の分裂及び分化の極性にとって重要な線虫の推定上のSTK(G733122)との間のBLOCK II相同性一致によってキナーゼとして始めに同定された。完全長の核酸分子であるインサイト社クローン3317608(SEQ ID NO:1)は、インサイト社LIFESEQ GOLDデータベース(1999年3月公表)テンプレート200700.1、アセンブリ670279CB1及びインサイト社クローン(ライブラリ):3317608H1 (PROSBPT03)、4313713H1 (BRAFNOT01)、4617082H1 (BRAYDIT01)、4711644H1 (BRAIHCT01)、2286324H1 (BRAINON01)、2286816H1 (BRAINON01)、2287217H1 (BRAINON01)、2286816R6 (BRAINON01)、2286816T6 (BRAINON01)、3317608T6 (PROSBPT03)、4201896T6 (BRAITUT29)、4624811T6 (FIBRTXT02)、6559834H1 (BRAFNON02)、670279F1 (CRBLNOT01)、670279H1 (CRBLNOT01)、670279R1 (CRBLNOT01)、670279R6 (CRBLNOT01)、670279T6 (CRBLNOT01)、及び4936446H1 (BRAXNOT03)、即ち、SEQ ID NO:3−23を用いてシークエンシングし、構築した。SEQ ID NO:2をコードするポリヌクレオチドの有用な断片には、SEQ ID NO:3−23、SEQ ID NO:1の約414番目のヌクレオチドから約1414番目のヌクレオチド、またはそれらの相補配列から選択された少なくとも18の連続するヌクレオチドの断片が含まれる。
【0043】
図1A−図1Fは、本核酸分子配列及び推論されるアミノ酸に翻訳された配列を示す。ヒトNIM1キナーゼのコード領域を含むインサイト社クローン番号3317608は、Type Culture Collection(ATCC; Manassas VA)に保管され、特許保管指定(Patent Deposit Designation: PT−1217)を受けている。
【0044】
図2に示すように、電子的ノーザン分析は、NIM1キナーゼをコードする転写物の神経系における極めて特異的な発現を示す。これらのライブラリの全ては脳に由来し、その内の5つは癌に関連し、3つは発作に関連し、2つはハンチントン病に関連し、1つは癲癇に関連する。この転写物は、1039のライブラリ及び500万を超える配列を含むLIFESEQデータベース(Incyte Pharmaceuticals)において、脳以外のライブラリでは癌性乳房繊維芽細胞FIBRTXT02及び癌性前立腺PROSBPT03の2つのライブラリにおいてのみ発現が確認された。
【0045】
図3に示すように、ノーザン分析はまた定量PCRを用いて実験室でも行った。ヒトNIM1キナーゼ転写物の発現は、H460、A2780、A375、HDF、HELA、DU145、MDA−MB231、U87−MG、及びBX−PC3細胞系、並びに脳、結腸、子宮、及び胎盤の組織に見られた。注目すべきは、ヒト乳癌細胞系MDA−MB231及び脳組織はそれぞれ、ヒトNIM1キナーゼ転写物の発現が約100倍及び155倍を示し、脳、子宮頚、結腸、肺、卵巣、及び前立腺の癌を示す細胞系、並びに正常な子宮及び胎盤において5倍以上の発現が見られた。
【0046】
SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むNIM1キナーゼは、アミノ酸436個の長さであり、M1からA18までの可能性のあるシグナル配列、及びS56、T108、T114、S123、S169、S221、S282、Y288、T311、T332、T349、S359、S420、及びT429残基における潜在的なリン酸化部位を有する。図4に示すように、ヒトNIM1キナーゼを基準として用いて、アラインメントにおけるキナーゼ(SEQ ID NO:2及びSEQ ID NO:31−36)の触媒領域の保存された残基、モチーフ、及びサブドメインを調べた。分かった保存された残基、モチーフ、及びサブドメインは、G81からV88残基までのサブドメイン1、保存されたA101及びK103残基を有するサブドメイン2、インバリアントなE121残基を有するサブドメイン3、E151からE157残基まで延在するインバリアントな残基M150及びY152を共有するサブドメイン5、H194からN201までの触媒ループであるサブドメイン6B、高度に保存されたトリプレットD214、F215、及びG216を有するサブドメイン7、A238、P239、E240モチーフを含むT229からF242までのサブドメイン8、インバリアントD253を有するサブドメイン9、サブドメイン8のAPEモチーフと相互作用するインバリアントR244を有するサブドメイン11である。触媒ドメインのC末端境界は、H248、A249、及びF250で始まる。PFAM及びPRINTSの両方により、キナーゼドメインが確認された。SEQ ID NO:2のポリペプチドの有用な断片には、SEQ ID NO:2の約1から約295番目までの残基から選択された少なくとも6個の連続するアミノ酸断片が含まれる。
【0047】
図5は、ヒトNIM1キナーゼアッセイを示す。hNIM1キナーゼ−GSTの自己リン酸化がレーン1、レーン2、及びレーン4に見られ、その基質MBPの自己リン酸化がレーン2に見られ、HIST.1の自己リン酸化がレーン4に見られる。キナーゼが存在しない基質MBPのレーン3及びHIST.1のレーン5は自己リン酸化を示さない。レーン6はポジティブコントロールZAP70を示す。
【0048】
ヒトNIM1キナーゼをコードする核酸分子の哺乳動物変異体を、BLASTまたはBLAST2(Basic Local Alignment Search Tool: Altschulら (1997) Nucleic Acids Res 25: 3389−3402; Altschul (1993) J Mol Evol 36: 290−300; 及びAltschulら (1990) J Mol Biol 215: 403−10, with default parameters)を用いて同定し、SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:3−23と整列するクローンをLIFESEQまたはZOOSEQデータベース(Incyte Pharmaceuticals)において同定した。哺乳動物変異体は、ZOOSEQデータベーステンプレート(1999年12月に構築)216150.1(SEQ ID NO 24)及びインサイト社クローン:ラットに由来する701925441H1 (RALITXS03)、701910632H1 (RABYUNN02)、701905514H1 (RABYUNS09)、701293826H1 (RABXNOT04)、及び700949543H1 (RASPNON02)、並びにサルに由来する700706950H1 (MNBFNOT01)、即ちSEQ ID NO:25−30である。これらの核酸分子は、ヒト疾患モデルとなる遺伝子組替え生物を作成するために特に有用であり、このようなヒト疾患モデル動物を用いてこのような疾患に対する有望な治療方法を研究することが可能である。
【0049】
核酸分子(SEQ ID NO:1)及びそれらの断片(SEQ ID NO:3−30)を、ハイブリダイゼーション、増幅、及びスクリーニングに用いて、SEQ ID NO:1とサンプルの類似分子との間の同定及び区別をすることが可能である。ヒト分子及びそれらの哺乳動物変異体を用いて、ヒト疾患モデルとなる遺伝子組替え生物を作製して、このヒト疾患モデルを用いて有望な治療方法を研究することができる。毒学的研究、臨床トライアル、及び被験動物/患者の治療プロフィールを、本核酸分子、タンパク質、並びに本発明の核酸分子及びタンパク質を用いて同定された抗体、分子、及び化合物を用いて作成し、モニタリングすることができる。
【0050】
(本発明の特徴及び使用)
cDNA ライブラリ
ここに開示する特定の実施例では、当分野で周知の方法を用いて哺乳動物の細胞及び組織からmRNAを単離し、これを用いてcDNAライブラリを作製する。上記したインサイト社クローンは、哺乳動物cDNAライブラリから単離された。本発明の代表的な3つのライブラリの作製方法を後述する実施例に示す。コンセンサス配列は、Phrap (P Green, University of Washington, Seattle WA)及びGELVIEW 断片構築システム(Genetics Computer Group, Madison WI)、AUTOASSEMBLERアプリケーション(PE Biosystems, Foster City CA)などのコンピュータプログラムを用いて、インサイト社クローンを含む断片、伸長、及び/またはショットガン配列から化学的かつ/または電子的に構築した。クローン、伸長配列及び/またはショットガン配列は、クラスター及び/または主クラスターの中にに電子的に組み入れられた。
【0051】
シークエンシング
核酸をシークエンシングする方法は当分野で周知であり、そのような方法を用いて本発明の任意の実施例を実施することができる。これらの方法は、DNAポリメラーゼIであるクレノウフラグメント、SEQUENASE、Taq DNAポリメラーゼ及び熱耐性T7 DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech (APB), Picataway NJ)、或いはELONGASE増幅システム(Life Technologies, Rockville MD)に用いられるような校正エクソヌクレアーゼとポリメラーゼとの組み合わせを用いることができる。配列の準備は、HYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific, Sunnyvale CA)、MICROLAB 2200(Hamilton, Reno NV)、及びDNA ENGINEサーマルサイクラー(PTC200; MJ Research, Watertown MA)などの装置を用いて自動的に行うのが望ましい。シークエンシングに用いる装置には、ABI 3700、377または373DNAシークエンシングシステム(PE Biosystems)、及びMEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(APB)等がある。当分野で周知の様々なアルゴリズムを用いて、シークエンシングした配列を解析することができる。これらのアルゴリズムは、Ausubel(1997; Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7) 及びMeyers(1995; Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, pp. 856−853)に記載されている。
【0052】
ショットガンシークエンシングを用いて、目的の特定のクローニングしたインサートを完全な配列にすることが可能である。ショットガン法は、元のインサートを様々な大きさのセグメントにランダムに分割して、これらの断片をベクターにクローニングする。これらの断片を、元のインサートの全配列が分かるまで重複した端部を用いてシークエンシング即ち再構築する。ショットガンシークエンシング方法は当分野で周知であり、熱耐性DNAポリメラーゼや非熱耐性DNAポリメラーゼ、及び目的の核酸分子に隣接する代表的な領域から選択されたプライマーを用いる。当分野で周知のCONSED(Gordon (1998) Genome Res. 8:195−202)などの様々なアルゴリズムやプログラムを用いて、組み立てが不完全な配列を調べる。ベクターやキメラ配列、または欠失配列を含む汚染配列を除去して、組み立てが不完全な配列を完全な配列に組み立てる。
【0053】
核酸配列の伸長
本発明の配列は、当分野で周知の様々なPCR法を用いた方法で伸長することができる。例えば、XL−PCRキット(PE Biosystems)及び入れ子プライマー(nested primer)、市販のcDNAまたはゲノムDNAライブラリ用いてヌクレオチド配列を伸長することが可能である。全てのPCR系の方法に用いることができるように、プライマーは、OLIGO 4.06プライマー分析ソフトウエア(National Biosciences, Plymouth MN)等の市販のソフトウエアを用いて、ヌクレオチドの長さが約22〜30個、GC含量が約50%以上、約55〜68℃の温度で標的配列とアニールするように設計することが可能である。調節エレメントを復活させるために配列を伸長する場合は、cDNAライブラリよりゲノムライブラリを用いる方が良い。
【0054】
(本哺乳動物核酸分子の使用)
ハイブリダイゼーション
本核酸分子及びその断片は、様々な目的のための様々なハイブリダイゼーション技術に用いることができる。プローブは、5’調節領域や非保存領域(即ち、本タンパク質の保存された触媒ドメインをコードするヌクレオチドの5’や3’)などのユニークな領域から作製可能であり、これらのプローブを、ヒトNIM1キナーゼ、アレル変異体、または関連分子をコードする天然の分子を同定するためのプロトコルに用いることができる。このプローブは、DNAまたはRNAからなる一本鎖が可能であって、任意の核酸配列(SEQ ID NO:3−30)と少なくとも50%の配列同一性を有すべきである。ハイブリダイゼーションプローブは、レポーター分子の存在下でのPCR増幅、オリゴ標識化、ニックトランスレーション法、または末端標識化を利用して作製することができる。この核酸分子またはその断片を含むベクターを用いて、RNAポリメラーゼ及び標識したヌクレオチドを加えてin vitroでmRNAプローブを作製することができる。これらの方法はAmersham Pharmacia Biotech(APB)社が販売するキットを用いて行うことができる。
【0055】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー(厳密性)は、プローブのGC含量、塩濃度、及び温度によって決まる。特に、塩濃度を下げる、またはハイブリダイゼーションの温度を上げて、ストリンジェンシーを高めることができる。あるメンブレンを用いるハイブリダイゼーション用の溶液にホルムアミドなどの有機溶媒を加えて、反応が低い温度で起こるようにすることができる。ハイブリダイゼーションは、低いストリンジェンシーの緩衝液(5×SSC、1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS))で、60℃で行うことができるが、核酸配列間に不適正塩基対を含む複合体の形成を許容し得る。続く洗浄は、45℃(中程度のストリンジェンシー)或いは68℃(高いストリンジェンシー)の何れかの温度、0.2×SSC、0.1%SDSなどの高いストリンジェンシーで行う。高いストリンジェンシーでは、ハイブリダイゼーション複合体は、完全に相補的な核酸分子部分のみが安定して保持される。あるメンブレンを用いるハイブリダイゼーションにおいて、好ましくは35%、最も好ましくは50%のホルムアミドをハイブリダイゼーション溶液に加えて、ハイブリダイゼーションを行う温度を下げたり、または、SarkosylやTriton X−100などの界面活性剤及び変性したサケ精子DNAなどのブロッキング試薬を用いてバックグラウンドシグナルを低減することが可能である。ハイブリダイゼーションの条件や要素の選択については当分野で周知であり、Ausubel(前出) 及びSambrook他(1989)Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY.に記載されている。
【0056】
当分野で周知の方法でアレイを準備して分析することができる。オリゴヌクレオチドをアレイのプローブや標的として用いることができる。アレイを用いて、同時に極めて多数の遺伝子の発現レベルをモニタリングし、遺伝子変異体、突然変異及びSNP(一塩基多型)を同定することができる。このようなデータを用いて、遺伝子機能の解明や、症状及び疾患、または障害における遺伝子原理の解明や、症状及び疾患、障害の診断または治療、治療薬の開発、並びにこれらの治療薬の活性のモニタリングが可能である(例えば、Brennan他(1995) 米国特許第5,474,796号; Schena他(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614−10619; Baldeschweiler他(1995) PCT出願 WO95/251116; Shalon他(1995) PCT出願WO95/35505; Heller他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. 94:2150−2155; and Heller他(1997) 5,605,662を参照)。
【0057】
ハイブリダイゼーションプローブはまた、天然のゲノム配列のマッピングに有用である。このプローブを、(1)特定の染色体、(2)染色体の特定の領域、(3)ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1作製物、または単一の染色体DNAライブラリなどの人工染色体作製物にハイブリダイズさせることが可能である。
【0058】
発現
NIM1キナーゼをコードする多数の核酸分子をベクターにクローニングして、このタンパク質若しくはその一部を宿主細胞で発現させることができる。この核酸配列を、DNAシャフリング(米国特許第5,830,721号)や部位特異的変異誘発などの方法によって、新規の制限部位を作り出したり、グリコシル化パターンを変えたり、優先コドンを変えて特定の宿主における発現を増大させたり、スプライスバリアントを作り出したり、半減期を延長する等の操作が可能である。この発現ベクターは、特定の宿主における各要素の効率に基づいて選択された様々なサンプルに由来する転写及び翻訳調節エレメント(プロモーター及びエンハンサー、特定の開始シグナル、ポリアデニル化3’配列)を含み得る。in vitro組換えDNA技術、合成技術及び/またはin vivo遺伝子組換え技術を組み合わせて、このベクターに核酸配列と調節エレメントをつなぐことができる。このような技術は、当分野で周知であり、Sambrook(前出、ch. 4, 8, 16 and 17)に記載されている。
【0059】
様々な宿主系を発現ベクターで形質転換することができる。以下に限定するものではないが、これらの中には組換えバクテリオファージやプラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌と、酵母発現ベクターで形質転換された酵母と、バキュロウイルス発現ベクターで形質転換された昆虫細胞系と、ウイルスエレメント及び/または細菌エレメントを含む発現ベクターで形質転換された植物細胞系や動物細胞系が含まれる(Ausubel前出、unit 16)。例えば、アデノウイルス転写/翻訳複合体を哺乳動物細胞に用いることができる。配列をウイルスのゲノムのE1若しくはE3領域に結合させた後、この感染ウイルスを用いて形質転換させ、宿主細胞でタンパク質を発現させることができる。また、ラウス肉腫ウイルスエンハンサーやSV40、またはEBV系のベクターを用いてタンパク質を高発現させることができる。
【0060】
核酸配列のルーチンのクローニング及びサブクローニング、増殖は、多機能PBLUESCRIPTベクター(Stratagene, La Jolla CA)またはPSPORT1プラスミド(Life Technologies)を用いて行うことができる。核酸配列をこれらのベクターの多数のクローニング部位に導入すると、lacZ遺伝子が破壊され、形質転換された細菌を確認するための比色法によるスクリーニングが可能となる。更に、これらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitroでの転写及びジデオキシ法によるシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖の調整、入れ子状欠失の作製において有用である。
【0061】
長期に渡って組換えタンパク質を産生させるために、同一或いは別のベクター上の選択マーカー遺伝子或いは可視マーカー遺伝子と共にこのベクターを持続的に細胞株に形質転換することができる。形質転換後、細胞を強化培地で約1〜2日間増殖させてから選択培地に移す。選択マーカー、代謝拮抗物質、抗生物質、または除草剤耐性遺伝子は、関連する選択薬に対する抵抗性を与え、導入配列を確実に発現する細胞の増殖及び回収が可能となる。アントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ、ルシフェラーゼなどの可視マーカーの発現によって同定された、或いは選択培地に生存することによって同定された耐性クローンを、培養技術を用いて増殖することができる。また、可視マーカーを用いて、導入された遺伝子によって発現するタンパク質を定量することができる。宿主細胞が目的の哺乳動物核酸分子を含むか否かの決定は、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション、或いはPCR増幅技術に基づいて行うことができる。
【0062】
宿主細胞は、組換えタンパク質を目的の形に修飾する能力に基づいて選択することができる。このような修飾には、アセチル化及びカルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、及びアシル化等が含まれる。「プレプロ」型を切断する翻訳後プロセシングを利用して、タンパク質のターゲッティング、折り畳み及び/または活性を特定することができる。翻訳後活性のための特定の細胞装置及び特徴的な機構を有するATCCから得られる様々な宿主細胞から、組換えタンパク質の適当な修飾及びプロセシングが確実に行われるように好適な宿主細胞を選択することができる。
【0063】
細胞培地からのタンパク質の回収
精製を容易にするために、ベクターに導入する異種部分は、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6−His、FLAG、MYC等を含む。GST及びCBP、6−Hisはそれぞれ、グルタチオン及びカルモジュリン、金属キレート樹脂が結合した市販のアフィニティーマトリックスを用いて精製される。FLAG及びMYCは、市販のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて精製される。目的のタンパク質配列と異種部分との間にタンパク分解切断部位を設けて、生成の後の分離が容易にすることができる。組換えタンパク質の発現及び精製の方法はAusubel(前出、unit 16)に記載され市販されている。
【0064】
ペプチドの化学合成
タンパク質若しくはその一部は、組換え方法以外の当分野で周知の化学的方法によって合成することもできる。固相技術を用いるペプチド合成は、バッチ式或いは連続的なフロープロセスによって行うことができる。連続的なフロープロセスでは、αアミノ保護及び側鎖保護アミノ酸残基をリンカーを介して不溶性の高分子支持物に連続的に追加する。メチルアミン誘導体化ポリエチレングリコールなどのリンカーを、ポリ(スチレン−co−ジビニルベンゼン)に結合させて支持レジンを形成する。このアミノ酸残基は、酸不安定Boc(t−butyloxycarbonyl)法若しくは塩基不安定Fmoc(9−fluorenylmethoxycarbonyl)法によって保護されたN−α−である。保護されたアミノ酸のカルボキシル基をリンカーのアミンに結合して、この残基を固相支持レジンに結合させる。Boc若しくはFmocを用いた場合、トリフルオロ酢酸若しくはピペリジンを用いて保護基を除去する。カップリング試薬若しくは予め活性化されたアミノ酸誘導体を用いて、追加する各アミノ酸を結合された残基に付加してから、レジンを洗浄する。完全長のペプチドは、連続的な保護の停止、即ち誘導体化アミノ酸を結合させて合成し、ジクロロメタン及び/またはN、N−ジメチルホルムアミドで洗浄する。このペプチドは、ペプチドカルボキシル末端とリンカーとの間で切断され、ペプチド酸またはペプチドアミドが作られる(Novabiochem 1997/98 Catalog and Peptide Synthesis Handbook, San Diego CA pp. S1−S20)。ABI 431 A ペプチドシンセサイザー(PE Biosystems)などの装置を用いて、ペプチドを自動合成することができる。タンパク質またはその一部は調整用の高性能液体クロマトグラフィーによって実質的に精製し、その組成をアミノ酸解析またはシークエンシングによって確認することができる(Creighton (1984) Proteins. Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY)。
【0065】
抗体の準備及びスクリーニング
ヤギ及びウサギ、ラット、マウス、ヒト等を含む様々な宿主は、ヒトNIM1キナーゼ若しくはその任意の一部を注入して免疫することができる。フロイントなどのアジュバント及びミネラルゲルと、リゾレシチン及びpluronic polyol、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、ジニトロフェノールなどの表面活性物質とを用いて免疫反応を高めることができる。オリゴペプチドやペプチド、またはタンパク質の一部を用いて、少なくとも約5個のアミノ酸、より好ましくは10個の天然のタンパク質の一部と同一のアミノ酸を含む抗体を誘発させる。キメラ分子に対する抗体を産生させるために、オリゴヌクレオチドをKLHなどのタンパク質と融合させることができる。
【0066】
モノクローナル抗体は、培地の連続細胞株によって抗体を産生させる任意の技術を用いて準備する。以下に限定するものではないが、このような技術には、ハイブリドーマ技術及びヒトB細胞ハイブリドーマ技術、EBV−ハイブリドーマ技術が含まれる(例えば、Kohler他(1975) Nature 256:495−497; Kozbor他(1985) J. Immunol. Methods 81:31−42: Cote他(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026−2030; and Cole他(1984) Mol. Cell Biol. 62:109−120.を参照)。
【0067】
別法では、当分野で周知の方法を用いる上記した一本鎖抗体を生産する技術で、エピトープ特異的一本鎖抗体を生産する。ヒトNIM1キナーゼのエピトープに対して特異的に結合する部位を含む抗体断片を生産することが可能である。限定するものではないが、このような断片には、例えば、抗体分子のペプシン消化によって作製されたF(ab’)2断片及びこのF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を減少させて作製したFab断片が含まれる。別法では、Fab発現ライブラリを作製して、目的の特異性を有するモノクローナルFab断片の高速かつ容易に同定できるようにする(例えば、Huse他(1989) Science 246:1275−1281を参照)。
【0068】
ヒトNIM1キナーゼまたはその一部を用いて、ファージミドまたはBリンパ球免疫グロブリン・ライブラリをスクリーニングして、目的の特異性を有する抗体を同定する。確立された特異性を有するモノクローナル抗体或いはポリクローナル抗体のいずれか一方を用いる、競合的結合またはイムノアッセイの様々なプロトコルが当分野で周知である。このようなイムノアッセイは通常、このタンパク質とその特異的な抗体との複合体形成の測定を行う。2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる2部位モノクローナル系イムノアッセイが好ましいが、競合的結合によるアッセイを用いることもできる(Pound (1998) Immunochemical Protocols. Humana Press, Totowa NJ)。
【0069】
アッセイのための分子の標識化
多様な標識化及び接合技術は当分野で周知であり、様々な核酸やアミノ酸、及び抗体のアッセイに用いることができる。標識した分子の合成は、32P−dCTPまたはCy3−dCTP、Cy5−dCTPなどの標識したヌクレオチドや35Sメチオニンなどのアミノ酸を組み込むためのAmersham Pharmacia BiotechキットまたはPromega (Madison WI)を用いて行うことができる。ヌクレオチド及びアミノ酸は、BIODIPYまたはFITC(Molecular Probes, Eugene OR)などの試薬を用いて分子中に存在するアミン及びチオール基または他の基に化学的に結合させることで、様々な物質(蛍光剤または化学発光剤、色素産生剤など)で直接標識することができる。
【0070】
(診断)
本核酸分子、断片、オリゴヌクレオチド、相補的なRNA及びDNA分子、及びPNAを用いて、遺伝子発現の変化、mRNAの過剰な発現の不在/存在の検出及び定量、または治療期間中のmRNAレベルのモニタリングを行うことができる。同様に、ヒトNIM1キナーゼに特異的に結合する抗体を用いて本タンパク質を定量することもできる。発現の変化に関連する疾患には、静坐不能、アルツハイマー病、健忘症、筋萎縮性側索硬化症、不安、遺伝性運動失調、脳性麻痺、痴呆、皮膚筋炎、ジストニー、ダウン症候群、癲癇、虚血性脳血管障害、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、ハンチントン病、細菌性及びウイルス性髄膜炎、多発性硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、脳腫瘍、神経線維腫症、パーキンソン病、ピック病、多発性筋炎、色素性網膜炎、分裂病、発作、並びに腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮などの癌が含まれる。診断アッセイにハイブリダイゼーションまたは増幅技術を用いて、遺伝子発現の変化を検出するべく、患者からの生体サンプルの遺伝子発現レベルを標準的なサンプルの値と比較する。質的または量的なこのような比較法は当分野で周知である。
【0071】
例えば、本核酸分子またはプローブを標準的な方法で標識して、これをハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者からの生体サンプルに加える。インキュベーションの後、このサンプルを洗浄し、ハイブリダイゼーション複合体に関連する標識(シグナル)の量を定量して標準値と比較する。患者のサンプルにおける標識の量が標準値と著しく異なっている場合は、関連する症状や疾患、または異常症の存在が示唆される。
【0072】
遺伝子発現に関連する症状や疾患、または異常症の診断のための基準を設けるために、正常或いは標準的な発現プロフィールを確立する。この発現プロフィールは、動物かヒトの正常な被験体から採取した生体サンプルを、ハイブリダイゼーションまたは増幅に好適な条件下で、プローブと結合させることによって確立することができる。標準的なハイブリダイゼーションの量を、正常な被験者から得た値と、実質的に精製された標的配列を所定量用いた実験値とを比較することによって求めることができる。このように求めた標準値を、特定の症状や疾患、または異常症を示す患者のサンプルから得た値と比較することができる。標準値と特定の症状に関連する値との偏差からその症状を診断する。
【0073】
またこのようなアッセイを用いて、動物実験や臨床検査における特定の治療計画の効果を評価したり、患者個人の治療をモニタリングすることができる。病態が確認されると治療プロトコルを開始し、通常ベースで診断アッセイを繰り返して、被験者における発現のレベルが正常な患者に示される値に近づき始めたか否かを調べることが可能である。連続して行ったアッセイの結果から、数日から数ヶ月に渡る期間の治療効果を調べることができる。
【0074】
免疫学的方法
特異的なポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体の何れかを用いるタンパク質の検出及び定量は当分野で周知である。このような技術には、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)及びラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化セルソーター法(FACS)が含まれる。2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる2部位モノクローナル系イムノアッセイが好ましいが、競合的結合アッセイを用いることもできる(例えば、Coligan 他 (1997) Current Protocols in Immunology, Wiley−Interscience, New York NY; 及び Pound 前出)。
【0075】
(治療)
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)の所定の領域と図4A−図4Cに示すキナーゼ(SEQ ID NO:31−35)の所定の領域との間に、キナーゼ触媒ドメインの文脈における化学的及び構造的な類似性が存在する。加えて、遺伝子発現が、図2及び図3に示されているように、脳、前立腺、及び乳房、並びに癌に密接に関連する。ヒトNIM1キナーゼは、脳及び神経系の疾患、特に脳腫瘍、発作、癲癇、ハンチントン病、並びに脳、子宮頚、結腸、肺、卵巣、及び前立腺の癌において或る役割を果たしていると思われる。脳腫瘍及び乳癌などの発現の大幅な上昇に関連する症状の治療においては、発現またはタンパク質活性を低下させることが望ましい。
【0076】
一実施例では、発現若しくは活性の上昇に関連する疾患の治療または予防のために、ヒトNIM1キナーゼのインヒビター、アンタゴニスト、または抗体を投与し得る。発現の変化に関連する疾患には、静坐不能、アルツハイマー病、健忘症、筋萎縮性側索硬化症、不安、遺伝性運動失調、脳性麻痺、痴呆、皮膚筋炎、ジストニー、ダウン症候群、癲癇、虚血性脳血管障害、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、ハンチントン病、細菌性及びウイルス性髄膜炎、多発性硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、脳腫瘍、神経線維腫症、パーキンソン病、ピック病、多発性筋炎、色素性網膜炎、分裂病、発作、並びに腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮などの癌が含まれる。
【0077】
別の実施例では、医薬用担体と共にNIM1キナーゼのインヒビター、アンタゴニスト、または抗体を含む医薬組成物を患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むこの内在性タンパク質の発現または活性の変化に関連する症状の治療または予防を行うことが可能である。
【0078】
更なる実施例では、本核酸分子またはその断片の相補配列を発現するベクターを患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含む本タンパク質の寿命や発現、または活性の変化に関連する症状の治療または予防を行うことが可能である。
【0079】
本核酸分子、またはそれに相補的な分子やその一部、本タンパク質またはその一部の内の任意のもの、これらの核酸分子やタンパク質を運ぶベクター、及びそれらのリガンドをその他の薬剤と共に投与することが可能である。併用療法に用いる薬剤の選択は、当業者が従来の薬学原理に従って行うことができる。薬剤を併用することによって、少量の各薬剤で特定の症状の予防または治療において相乗的な効果をあげることが可能である。
【0080】
核酸を用いる遺伝子発現の調節
遺伝子の発現は、NIM1キナーゼをコードする遺伝子の5’または3’調節領域、或いは他の調節領域に対して相補的或いはアンチセンス分子を設計することで調節することが可能である。転写開始部位に対して設計されたオリゴヌクレオチドが好ましい。同様に、ポリメラーゼ、転写因子、または調節分子の結合を阻止する三重螺旋塩基対合で遺伝子発現を阻止することができる(Gee 他 In: Huber and Carr (1994) Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing, Mt. Kisco NY, pp. 163−177)。また、リボソームとmRNAとの結合を阻止して翻訳が行われないように、相補的な分子を設計することも可能である。或るいは、核酸分子またはその断片のライブラリをスクリーニングして、翻訳されない調節配列に特異的に結合する核酸分子または断片を同定することも可能である。
【0081】
また、酵素活性をもつRNA分子であるリボザイムを用いて、RNAの特異的な切断を触媒してもよい。リボザイム作用のメカニズムは、まずリボザイム分子と相補的な標的RNAとの配列特異的なハイブリダイゼーションが起こり、次にGUA及びGUU、GUCなどの部位においてヌクレオチド鎖が切断される。このような部位が一旦同定されたら、オリゴヌクレオチドを機能不全にしうる二次構造特性について、同じ配列を有するオリゴヌクレオチドを評価することができる。また、候補標的としての適合性は、RNA分解酵素保護アッセイを用いて、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを検査して評価することができる。
【0082】
本発明の相補的な核酸及びリボザイムは、固相ホスホラミダイト化学合成法を用いて、in vitroまたはin vivoでの組換え発現によって調製することが可能である。更に、RNA分子は、その5’及び/または3’末端に隣接配列を付加して、或いは分子のバックボーンのホスホジエステル結合の代わりにホスホロチオネートまたは2’O−メチルを用いて、細胞内の安定性及び半減期が増大するように改変することができる。この改変はPNAの作製に固有であるが、他の核酸分子にも適用することができる。例えばイノシン、queosine、wybutosineなどの伝統的でない塩基を含めて、またはアセチル基、メチル基、チオ基でウリジン、アデニン、シチジン、グアニン、及びチミンを修飾して、内在性エンドヌクレアーゼに対する分子の有効性を低くする。
【0083】
スクリーニング及び精製アッセイ
ヒトNIM1キナーゼをコードする核酸分子を用いて、分子または化合物のライブラリをスクリーニングして特異的な結合親和性を調べることが可能である。このライブラリは、生物系において本核酸分子の活性、複製、転写、または翻訳を調節するアプタマー、DNA分子、RNA分子、PNA、ペプチド、転写因子などのタンパク質、エンハンサー、リプレッサー、及びその他のリガンドを含み得る。このアッセイは、特異的な結合が許容される条件下で、本核酸分子またはその断片を分子のライブラリと結合させるステップと、特異的な結合を検出して、一本鎖または二本鎖の本核酸分子と特異的に結合する少なくとも1つの分子を同定するステップとを含む。
【0084】
一実施例では、本発明のポリヌクレオチドを、単離され精製された分子または化合物のライブラリと共にインキュベートし、当分野で周知の、例えばゲル遅延アッセイ(gel−retardation assay)(米国特許第6,010,849号)または網状赤血球溶解産物転写アッセイを用いて結合活性を測定することができる。別の実施例では、本ポリヌクレオチドをバイオプシー及び/または培養細胞及び培養組織に由来する核抽出物でインキュベートしてもよい。本ポリヌクレオチドとこの核抽出物における分子または化合物との間の特異的な結合を、まずゲルシフトアッセイ(gel shift assay)を用いて測定し、後にこれらの分子または化合物に対する抗体のレベルの上昇により確認することが可能である。これらの抗体をアッセイに加えると、ゲル遅延アッセイにおいてスーパーシフトが起こる。
【0085】
別の実施例では、本ポリヌクレオチドを用いて、当分野で周知のアフィニティクロマトグラフィ法を用いて分子または化合物を生成することが可能である。一実施例では、本ポリヌクレオチドを、ポリマー樹脂またはジェル上で臭化シアン基と化学的に反応させる。次に、サンプルを流して本ポリヌクレオチドと反応すなわち結合させる。本ポリヌクレオチドと結合した分子または化合物を、流す培養液の塩濃度を上昇させて本ポリヌクレオチドから遊離させて回収する。
【0086】
更なる実施例では、本タンパク質またはその一部を用いてサンプルからリガンドを精製することが可能である。哺乳動物タンパク質またはその一部を用いてリガンドを精製する方法は、特異的な結合が許容される条件下で、このタンパク質またはその一部をサンプルと結合させ、このタンパク質とリガンドとの間の特異的な結合を検出し、結合したタンパク質を回収し、適当なカオトロピック剤を用いてこのタンパク質を精製したリガンドから分離することを含む。
【0087】
好適な実施例では、あらゆるスクリーニングアッセイにおいて、ヒトNIM1キナーゼまたはその一部を用いて、分子または化合物のライブラリをスクリーニングすることが可能である。このようなスクリーニングアッセイに用いるタンパク質の一部は、溶液中に遊離させるか、非生物基板または生物基板(例えば細胞表面上)に固定させるか、または細胞内に局在化させることができる。例えば、ある方法では、組替え核酸分子で安定的に形質転換され、ポリペプチドを発現してその細胞表面上にポリペプチドが存在する生存可能すなわち安定した真核宿主細胞をスクリーニングアッセイに用いることができる。この細胞をリガンドのライブラリすなわち複数のライブラリに対してスクリーニングし、発現ポリペプチドとそのリガンドとの間の複合体の結合すなわち形成の特異性を測定することができる。このタンパク質と分子との間の特異的な結合を測定することができる。スクリーニングするライブラリの種類によって、このタンパク質と特異的に結合するDNA分子、RNA分子、ペプチド核酸、ペプチド、タンパク質、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体、免疫グロブリン、インヒビター、及び薬剤またはその他のあらゆるリガンドをこのアッセイで同定することができる。
【0088】
一実施態様では、本発明は、言及することをもって本明細書の一部とする米国特許5,876,946号に記載されているような極めて微量のアッセイ量及び極めて微量の検査化合物を用いるハイスループットのスクリーニング方法を提供する。この方法を用いて、特異的な結合により多数の分子及び化合物をスクリーニングすることができる。別の実施態様では、本発明はまた、競合的薬剤スクリーニングアッセイの方法を提供する。このアッセイでは、本ポリペプチドと結合可能な中和抗体が、本ポリペプチド、そのオリゴペプチド、或いはその一部と結合可能な検査化合物と特異的に競合する。スクリーニングアッセイによって同定された分子または化合物を用いて、哺乳動物モデル系を作成して、それらの毒性、診断、または治療の可能性を評価することができる。
【0089】
薬理学
医薬組成物とは、所望の目的を達成するのに効果的な量の活性成分を含んでいる物質である。効果的な薬用量の決定は、当分野の技術者の能力による部分が大きい。どんな化合物であっても、初めは細胞培養アッセイ或いは動物モデルの何れかによって治療効果のある薬用量を推定する。また、動物モデルを使って、好適な濃度範囲及び投与経路を決定する。次に、このような情報を用いて、ヒトへの効果的な投与経路及び薬用量を決定する。
【0090】
治療効果のある薬用量とは、症状または病態を改善するタンパク質またはインヒビターの量である。このような薬剤の薬用効果及び毒性は、例えば、ED50(集団の50%に医薬的効果がある投与量)及びLD50(集団の50%に致命的である投与量)などの細胞培養または実験動物における標準的な製薬方法によって決定することができる。或る投与量における毒性効果と治療効果との比率が治療指数となり、LD50/ED50と示すことができる。高い治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータを用いて、ヒトへ適用する薬用量の範囲を決定する。
【0091】
モデル系
動物モデルを用いて、ヒトの暴露に相当する暴露条件にして、動物モデルがヒトに類似の表現型反応を示すバイオアッセイを行うことができる。哺乳動物が最も一般的な動物モデルである。大抵の感染症、癌、薬剤、及び毒物の研究には、ラットやマウスなどの齧歯類が用いられる。これは、低コスト、入手の容易性、寿命、生殖能、及び参考文献の豊富さからである。齧歯類近交系及び非近交系は、目的の遺伝子の過剰或いは過少な発現の生理学的な原因を調査するのに有用なモデルであり、疾患の診断及び治療方法の開発にも有用である。特定の遺伝子を大量に発現する(例えば、乳汁中に分泌される)同系哺乳動物は、その遺伝子によって発現されるタンパク質の便利な供給源となり得る。
【0092】
中毒学
中毒学とは、生物系における物質の影響を研究する学問である。殆どの毒物研究はラットまたはマウスを用いて行われる。ラットまたはマウスの生理機能、行動、恒常性プロセス、及び致死率における質的及び量的変化を観察して、毒性プロフィールを作成し、その物質に曝露された後に生じるであろうヒトの健康状態を調べる。
【0093】
遺伝子毒物学は、内因性または自然発生的に誘導される遺伝子変異の速度に物質が与える影響を特定し分析する。遺伝毒性物質は通常、核酸との相互作用を促進する共通の化学的或いは物理的特性を有し、突然変異した染色体が子孫に受け継がれるのが最大の害である。毒物研究によって、受胎前の両親のどちらか一方、または妊娠中の母、発生段階の生物に投与された場合の、子孫の組織における構造的或いは機能的な異常の頻度を増加させる物質を同定することが可能である。マウス及びラットは生殖周期が短く、統計的必要性を満たす多数の子孫を出産する能力から、これらの試験にはマウス及びラットが用いられる場合が最も多い。
【0094】
急性毒物の検査は、被験体への物質の一回の投与に基づき、その物質による症状または致死率を決定する。この検査では、(1)初めの投与量の範囲を決定する実験と、(2)有効な投与量の範囲を狭める実験と、(3)用量応答曲線を確立する実験の3つの実験が行われる。
【0095】
中期に亘る毒性検査では繰り返し物質を投与する。このような検査には、ラットやイヌが一般的に用いられ、分類学上異なった種からデータを収集する。物質を高い投与濃度で3〜4ヶ月間、毎日投与することで、発癌を除く、成体動物における殆どの毒性の種類が明らかになるという研究結果が多数報告されている。
【0096】
一年或いはそれ以上の長期に渡る慢性毒性検査は、物質に毒性がないこと、或いは物質の発癌の可能性の何れかを実証するために行われる。ラットで検査が行われる場合、少なくとも3つの検査グループと1つの対照グループが用いられ、最初から最後まである間隔で検査及びモニタリングが行われる。
【0097】
遺伝子組換え動物モデル
目的の遺伝子を過剰或いは過小に発現する遺伝子組換え齧歯類を同系交配し、それを用いてヒト疾患モデルを作製したり、治療薬検査や毒物検査を行う(例えば、米国特許第4,736,866号、同第5,175,383号、及び同第5,767,337号を参照)。場合によっては、導入遺伝子が、胚発生中若しくは出生後の特定の時期に特定の種類の組織で活性化され得る。導入遺伝子の発現は、実験的薬剤治療を施す前、その最中、またはその後の、遺伝子組換え動物における表現型、組織特異的なmRNAの発現、または血清や組織のタンパク質レベルの分析からモニタリングすることができる。
【0098】
胚性幹細胞
齧歯類胚から単離された胚性幹細胞(ES細胞)は、胚組織を形成する可能性を維持している。ES細胞がキャリアとなる胚の中に導入されると、正常な発生が再開され、生まれる動物の組織の一部を担うことになる。ES細胞は、実験用のノックアウト及びノックイン齧歯類系を作製するのに好適な細胞である。マウス129/SvJ細胞株などのマウスES細胞は、マウスの初期胚から採取されてから当分野で周知の培養条件下で増殖されたものである。遺伝子組換え系の作製に用いるベクターは、疾患候補遺伝子及びマーカー遺伝子配列を含み、このマーカー遺伝子により導入された疾患遺伝子の存在を確認することができる。このベクターを、当分野で周知の方法でES細胞に形質転換され、この形質転換されたES細胞を特定し、C57BL/6マウス株などからのマウス細胞胚盤胞内に微量注入する。この胚盤胞を複数の偽妊娠メスに外科的に導入して、生まれてくるキメラ子孫のそれぞれがその遺伝子型を有するようにして、それらを交配してヘテロ接合系またはホモ接合系を作り出す。
【0099】
ヒト胚盤胞に由来するES細胞を、in vitroで操作して8個の異なった細胞系譜に分化することが可能である。これらの細胞系譜を用いて、in vitroで、様々な細胞型及び組織の分化を研究する。細胞型には、神経細胞、造血系、及び心筋細胞に分化する内胚葉、中胚葉、外胚葉の細胞型が含まれる。
【0100】
ノックアウト分析
遺伝子ノックアウト分析では、哺乳動物遺伝子のある領域が、ネオマイシン・ホスホトランスフェラーゼ遺伝子などの非哺乳動物遺伝子を含むように酵素によって改変される(neo ; Capecchi (1989) Science 244:1288−1292)。改変された遺伝子が培養ES細胞に形質転換され、相同組換えにより内在性のゲノムに組み込まれる。挿入された配列は、内在性遺伝子の転写及び翻訳を阻害する。この形質転換細胞を齧歯類胞胚に注入し、この胞胚を偽妊娠メスに移植する。この遺伝子組換え子孫をクロス交配して、この哺乳動物遺伝子の機能的な複製物が存在しないホモ接合近交系を作り出す。
【0101】
ノックイン分析
ES細胞を用いてノックインヒト化動物(ブタ)または遺伝子組換えヒト疾患動物モデル(マウスまたはラット)を作り出すことができる。ノックイン技術を用いて、ヒト遺伝子のある領域を動物ES細胞に注入し、そのヒト配列が動物細胞のゲノムの中に組み込まれるようにする。形質転換ES細胞を胞胚に注入し、この肺胞を上記したように注入する。類似のヒトの症状の治療についての情報を収集するべく、遺伝子組換え子孫即ち近交系を有望な医薬品で処置して観察する。これらの方法を用いて、幾つかのヒト疾患モデルを作り出す。
【0102】
更なる実施例では、限定するものではないが、トリプレット遺伝子コード及び特異的な塩基対相互作用などの特性を含む、現在知られている核酸配列の特性に新しい技術が依存する場合は、本哺乳動物タンパク質をコードする核酸分子を、開発中のあらゆる分子生物学技術に用いることが可能である。
【0103】
【実施例】
本発明は、記載した特定の装置及び物質、方法に限定されるものではないことを理解されたい。特定の実施例について説明するが、同等の実施例を用いて本発明を具現することも可能である。本発明の範囲は、前記請求の範囲によってのみ限定されるものであって、記載した実施例によって限定されるものではない。また、以下に記載の実施例は、本発明を例示するためのものであって本発明を限定するものではない。例示目的で、ヒト小脳ライブラリ(CRBLNOT01)、前立腺ライブラリ(PROSBPT03)、及び標準化された脳ライブラリ(BRAINON01)の作製方法を記載する。
【0104】
1 cDNA ライブラリの作製
小脳
小脳ライブラリの作成に用いた組織は69歳の白人男性から得た(RT95−05−0301; International Institute for Advanced Medicine, Exton PA)。この凍結組織を、POLYTRONホモジナイザー(PT−3000; Brinkmann Instruments, Westbury NJ)を用いてホモジナイズして溶解した。試薬及び抽出方法は、RNA単離キット(Stratagene)に含まれているものを用いた。この溶解物を、L8−70M超遠心分離器(Beckman Coulter, Fullerton CA)において、SW28ローターを用いて5.7M CsClクッションに対して室温で18時間、毎分25,000回転で遠心分離を行った。RNAをフェノールクロロホルム、pH8.0で2回、酢酸フェノール、pH4.0で1回抽出し、0.3M酢酸ナトリウム及び2.5倍量のエタノールを用いて沈殿させ、水中で再懸濁し、DNアーゼで37℃で15分間処置した。このRNAをOLIGOTEXキット(Qiagen, Chatsworth CA)で単離し、cDNAライブラリの作製のために用いた。
【0105】
前立腺
59歳の白人男性から根治前立腺切除の際に採取した病変前立腺組織を用いてPROSBPT03ライブラリを作製した。病理学的には、この腫瘍は、Gleasonグレード3+3の腺癌であって、左右の周辺に及ぶ微視的な病巣を伴っていた。この腫瘍は限定的で胸膜には及んでいなかった。進行した前立腺上皮内癌が、右側の周囲で確認された。この患者には、前立腺特異的抗原(PSA)の上昇が見られた。家族歴には、両親の脳血管疾患、並びに兄弟の前立腺癌が含まれていた。
【0106】
cDNAライブラリを作製するために、SUPERSCRIPTプラスミドシステム(Life Technologies)の推奨プロトコルに従って2.4μgのポリA RNAを用いた。一本鎖cDNAの合成には、オリゴd(T)プライミングを用い、二本鎖の合成には、DNAポリメラーゼI、大腸菌リガーゼ、及びRNアーゼHを組み合わせて用いた。このcDNAをT4ポリメラーゼで平滑化し、このcDNAの平滑末端にSal Iリンカーを付加した。Sal Iが付加された二本鎖cDNAを、Not Iで消化し、SEPHAROSE CL4B カラム(Amersham Pharmacia Biotech)で分画した。
【0107】
400bpを超えるこれらの小脳cDNAをpSPORT Iプラスミドに繋ぎ、このプラスミドをDH5αコンピテント細胞(Life Technologies)に形質転換した。400bpを超えるこれらの前立腺cDNAをpINCYプラスミド(Incyte Pharmaceuticals)のNotI部位及びEcoRI部位に繋ぎ、このプラスミドをDH5αまたはELECTROMAX DH1OBコンピテント細胞(Life Technologies)に形質転換した。
【0108】
脳ライブラリの標準化
例を示すために、ヒト脳ライブラリ(BRAINON01)の標準化について説明する。大腸菌株DH12Sコンピテント細胞(Life Technologies)におけるBRAINOT03プラスミドライブラリの約4.9×106の独立したクローンを、カルベニシリン(25mg/l)及びメチシリン(1mg/ml)選択下で、培地で成長させ、その後に電気穿孔法により形質転換を行った。ライブラリの存在レベルに従って余剰のcDNA複製物の数を減らすために、cDNAライブラリを以下の変更点を除きSoares他(1994, Proc Natl Acad Sci 91: 9228−9232)の方法に従って1回標準化した。変更点は次の通りである。プライマー伸長反応における鋳型に対するプライマーの比率を2:1から10:1に高めた。反応液のdNTP濃度を、より長いプライマー伸長物(400〜1000ヌクレオチド)が形成できるように各dNTPを150μMまで低下させた。アニーリングハイブリダイゼーションを13時間から48時間に延長した。標準化したライブラリの一本鎖DNAサークルを、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーで精製し、ランダムプライミングにより部分的な2本鎖に変換し、大腸菌株DH10Bコンピテント細胞(Life Technologies)の中に電気穿孔法により導入した。
【0109】
2 pINCY プラスミドの作製
このプラスミドは、pSPORT1プラスミド(Life Technologies)をEcoRI制限酵素(New England Biolabs, Beverly MA)で消化し、オーバーハングした端部を、クレノウ酵素(New England Biolabs)及び2’−デオキシヌクレオチド5’−三リン酸(dNTPs)を用いて二本鎖に合成した。このプラスミドが自己連結した後、このプラスミドで細菌宿主となる大腸菌株JM109を形質転換した。
【0110】
細菌(pSPORT 1−△RI)によって生成された中間プラスミドは、EcoRIでは消化されず、Hind III (New England Biolabs)で消化し、オーバーハングした端部をクレノウ酵素及びdNTPsで二本鎖にした。リンカー配列をリン酸化し、5’平滑末端に繋ぎ、EcoRIで消化し、自己連結させた。JM109宿主細胞を形質転換した後、プラスミドを単離し、Hind IIIではなくEcoRIで選択的な消化の検査を行った。この基準を満たす1つのコロニーをpINCYプラスミドとを呼ぶ。
【0111】
NotI及びEcoRI制限酵素を用いて作製したライブラリからcDNAを取り込むプラスミドの能力を検査した後、いくつかのクローンをシークエンシングし、約0.8kbのインサートを含む1つのクローンを選択し、そのクローンから大量のプラスミドを生成した。NotI及びEcoRIで消化した後、ライブラリの作製に用いるためにこのプラスミドをアガロースゲル上で分画し、QIAQUICKカラム(Qiagen)を用いて精製した。
【0112】
3 cDNA クローンの単離及びシークエンシング
プラスミドDNAを細胞から遊離し、MINIPREPキット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)またはREAL Prep 96プラスミドキット(Qiagen)のいずれかを用いて精製した。このキットには、96ウェルブロック、及び960回の精製を行うための試薬が含まれている。以下の変更点を除き、推奨プロトコルに従った。(1)細菌を、25mg/lのカルベニシリン及び2.4%のグリセロールと共に1mlの滅菌Terrific Broth(Life Technologies)において培養した。(2)接種後、細胞を19時間培養してから、0.3mlの溶解バッファで溶解した。(3)イソプロパノール沈殿の後、プラスミドDNAのペレットを0.1mlの蒸留水で再懸濁した。プロトコルの最終ステップの後、サンプルを96ウェルブロックに移し、4℃で保管した。
【0113】
MICROLAB 2200システム(Hamilton, Reno NV)及びDNA ENGINEサーマルサイクラー(MJ Research)を用いて、シークエンシングするためにcDNAを調整した。このcDNAを、ABI PRISM377シークエンシングシステム(PE Biosystems)またはMEGABASE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いてSanger and Coulson (1975; J Mol Biol 94: 441−448)の方法でシークエンシングした。単離したもののほとんどを、標準的なABIプロトコル及びキット(PE Biosystems)に従って、0.25×〜1.0×の濃度の溶液容量でシークエンシングした。別法では、Amersham Pharmacia Biotechから入手した溶液及び色素を用いてcDNAをシークエンシングした。
【0114】
4 cDNA 配列の伸長
本核酸分子は、cDNAクローン及びオリゴヌクレオチドプライマーを用いて伸長した。一方のプライマーは既知の断片の5’の伸長を開始するために合成し、他方のプライマーは既知の断片の3’の伸長を開始するために合成した。開始プライマーは、OLIGO 4.06ソフトウエア(National Biosciences, Plymouth MN)若しくは別の好適なプログラムを用いて、約22〜約30個のヌクレオチドの長さ、約50%以上のGC含量で、685〜72℃の温度で標的配列にアニールするように設計した。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を形成するヌクレオチドのストレッチは排除した。
【0115】
選択されたcDNAライブラリを鋳型として用いてこの配列を伸長した。2段階以上の伸長が必要な場合は、追加の或いは入れ子状のプライマー(nested primer)を設計した。好適なライブラリは、大きなcDNAを含むように大きさが選択されたライブラリである。また、ランダムプライミングしたライブラリも、遺伝子の5’及び上流領域を備えた多くの配列を含むため好適である。ランダムプライミングライブラリは、オリゴd(T)ライブラリが完全長のcDNAを形成しなかった場合に特に有用である。ゲノムライブラリは、調節エレメントを得るためにプロモーター結合領域の5’を伸長する際に有用である。
【0116】
米国特許第5,932,451号に開示されているような方法を用いてPCR法で高い忠実度の増幅を達成した。PCRは、DNA ENGINE サーマルサイクラー(MJ Research)を用いて96ウェルプレートで行った。反応混合液には、鋳型DNA及び200 nmolの各プライマー、反応緩衝液(Mg2 +、(NH4)2SO4、β−メルカプトエタノールを含む)、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)、ELONGASE酵素(Life Technologies)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含まれている。プライマーの組、PCI A及びPCI B(Incyte Pharmaceuticals)に対して以下のパラメーターで増幅を行った。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保管。
別法では、プライマーの組、T7とSK+(Stratagene)に対して以下のパラメーターで増幅を行った。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 57℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保管。
【0117】
各ウェルのDNA濃度は、100μlのPICOGREEN定量試薬(1×TEにおける試薬0.25% (v/v); Molecular Probes)及び0.5μlの希釈していないPCR産物を不透明な蛍光光度計プレート(Corning, Acton MA)の各ウェルに分注して、DNAがその試薬と結合できるようにして測定した。このプレートをFluoroskan II (Labsystems Oy)でスキャンして、サンプルの蛍光を測定してDNAの濃度を定量化した。反応混合物の5〜10μlのアリコットを1%のアガロースミニゲル上で電気泳動して解析し、何れの反応がより長い配列の伸長に成功したかを決定した。
【0118】
伸長したヌクレオチド配列を脱塩及び濃縮してから384ウェルプレートに移し、CviJIコレラウィルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)で消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結する前に音波処理または切断した。ショットガンシークエンシングのために、消化したヌクレオチド配列を低濃度(0.6%〜0.8%)のアガロースゲル上に分離させ、断片を切断し、ゲルをAGARACE酵素(Promega)で消化した。T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を用いて伸長したクローンをpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で制限部位の延び出しを処理してから、大腸菌コンピテント細胞に形質転換した。形質転換細胞が抗生物質を含む培地で選択され、それぞれのコロニーを切りとって、LB/2Xカルベニシリン培養液の入った384ウェルプレートの中で、37℃で一晩培養した。
【0119】
この細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAを増幅した。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 72℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を29回繰り返す
ステップ6 72℃で5分間
ステップ7 4℃で保管。
上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量した。DNA回収率の悪いサンプルは、上記した条件で再び増幅した。サンプルを20%のジメチルサルホサイド(dimethysulphoxide)(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMICエネルギー移動シークエンシングプライマー及びDYENAMIC DIRECTサイクルシークエンシングキット(Amersham Pharmacia Biotech)またはABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reactionキット(PE Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0120】
5 cDNA クローン及びそれらから導き出されたポリペプチドの相同性検索
配列表の核酸分子及びそれらから導き出されたアミノ酸配列を、GenBank、SwissProt、BLOCKSなどのデータベースにおいて検索する。すでに同定されアノテーションの付けられた配列またはドメインを含むこれらのデータベースを、BLASTまたはBLAST 2 (Altschulら、前出; Altschul、前出)を用いて検索し、アラインメントを作成し、完全に一致する或いは相同な配列を決定する。このアラインメントは、原核生物(細菌)または真核生物(動物、真菌、または植物)を起源とする配列に対するものである。或いは、Smith and Smith(1992, Protein. Engineering 5: 35−51)に記載されているようなアルゴリズムを用いて、一次配列パターン及び二次構造ギャップペナルティを処理することが可能である。本明細書に記載した全ての配列は、その長さが少なくとも49ヌクレオチドであり、不要な塩基(A、C、G、或いはTではなくNと記載)は12%以下である。
【0121】
Karlin (前出) に詳述されているように、問い合わせ配列とデータベース配列との間のBLASTによる一致を統計学的に評価し、ヌクレオチドに対しては10−25、ペプチドに対しては10−14の閾値を満たす一致のみを記録した。相同性はまた、以下のように計算した積スコアによって評価した。まず、BLASTにおける核酸またはアミノ酸同一性(問い合わせ配列と参照配列との間の)のパーセントに、最大可能BLASTスコアのパーセント(問い合わせ配列及び参照配列の長さに基づく)を乗じてから、100で除した。実験室で用いられるハイブリダイゼーション法と比べ、完全一致に対する電子的なストリンジェンシーを70と設定し、完全一致に対する保守的な下限を約40に設定した(不要な塩基対による1〜2%のエラーを有する)。
【0122】
無料で利用可能な配列比較アルゴリズムであるBLASTソフトウエア一式(NCBI, Bethesda MD; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.html)は、既知の核酸分子を整列するために用いる“blastn”、及び核酸分子或いはアミノ酸分子のいずれかの直接ペアワイズ比較に用いられるBLAST2を含む様々な配列分析プログラムを含む。BLASTプログラムは、一般に、例えば以下のようにデフォルト設定されたギャップ及びその他のパラメーターで実行される。
【0123】
Matrix: BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: −2
Open Gap: 5 及び Extension Gap: 2 penalties
Gap x drop−off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter: on
同一性或いは類似性を、配列の全長或いは配列の一部に対して測定することができる。Brennerらが(1998; Proc Natl Acad Sci 95: 6073−6078、言及することをもって本明細書の一部とする)、配列同一性により構造の相同性を同定するBLASTの能力を分析した。この分析により、少なくとも150残基の配列アラインメントに対して30%の同一性が信頼できる閾値であり、少なくとも70残基の配列アラインメントに対して40%の同一性が信頼できる閾値である。
【0124】
本明細書の哺乳動物核酸分子を、LIFESEQ GOLDデータベースで見出した構築されたコンセンサス配列または鋳型と比較した。cDNA、伸長、完全長、及びショットガンシークエンシングプロジェクトに由来するコンポーネント配列をPHREDで分析し、質のスコアを割り当てた。許容できる質スコアを有する全ての配列に対して様々なプリプロセシング及び編集を行い、質の低い3’末端、ベクター及びリンカー配列、ポリA尾部、Aluリピート、ミトコンドリア及びリボソーム配列、及び細菌汚染配列を除去した。編集した配列は少なくともその長さが50bpでなければならない。情報の少ない配列、並びにジヌクレオチドリピート、Aluリピートなどの繰り返しエレメントはNで置換するかマスクした。
【0125】
編集した配列を、配列が遺伝子ビンに割り当てられる構築処理を行った。それぞれの配列は1つのビンにのみ属し、鋳型を形成するべく各ビンにおける配列を構築した。新規にシークエンシングしたコンポーネントをBLAST及びCROSSMATCHを用いて存在するビンに加えた。ビンに加えるためにはこのコンポーネント配列は、BLAST質スコアが150以上であって、少なくとも82%の局所的な同一性のアラインメントでなければならない。それぞれのビンにおける配列を、PHRAPを用いて構築した。いくつかの重複するコンポーネント配列を有するビンはDEEP PHRAPを用いて構築した。それぞれの鋳型の向きは、そのコンポーネント配列の数及び向きに基づいて決定した。
【0126】
それぞれのビンを互いに比較して、局所類似性が82%以上のビンを1つにまとめて再構築した。局所同一性が95%未満の鋳型を有するビンは分けた。鋳型は、STITCHER/EXON MAPPERアルゴリズムで分析した。このSTITCHER/EXON MAPPERアルゴリズムは、スプライスバリアント、択一的スプライシングエキソン、スプライスジャンクション、並びに組織の種類或いは疾患の状態により発現が異なる択一的にスプライシングされた遺伝子などの存在の確率を分析することができる。構築処理を繰り返し行い、GBpriなどのGenBankデータベースに対してBLASTを用いて鋳型にアノテーションを付けた。完全一致は、200塩基対に対する95%以上の局所同一性から100塩基対に対する100%の局所同一性を有すると定義し、相同一致は、≦1×10−8のE値(確率スコア)を有すると定義した。また鋳型を、GENPEPTに対してフレームシフトFASTx分析を行い、相同一致を≦1×10−8のE値を有すると定義した。鋳型の分析及び構築については、1999年3月25日に出願された米国特許出願第09/276,534号に開示されている。
【0127】
構築の後に、鋳型をBLAST、モチーフ、及びその他の機能分析法で分析し、1997年3月6日に出願の米国特許出願第08/812,290号及び同第08/811,758号、1997年10月9日に出願の米国特許出願第08/947,845号、及び1998年3月4日に出願の米国特許出願第09/034,807号に記載されている方法を用いてタンパク質を階層に分類した。次に鋳型を、3つ全ての前方読み枠にそれぞれの鋳型を翻訳して、それぞれの翻訳を、HMMERソフトウエアパッケージ(Washington University School of Medicine, St. Louis MO; http://pfam.wustl.edu/)を用いて隠れマルコフモデルをベースにしたタンパク質ファミリー及びドメインのPFAMデータベースにおいて検索した。
【0128】
本核酸分子を、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering)及びLASERGENEソフトウエア(DNASTAR)を用いて更に分析し、GenBankの齧歯類、哺乳類、脊椎動物、原核生物、及び真核生物のデータベース、SwissProt、BLOCKS、PRINTS、PFAM、及びPrositeなどの公共のデータベースに対して問い合わせた。
【0129】
6 染色体マッピング
Stanford Human Genome Center (SHGC)、Whitehead Institute for Genome Research (WIGR)、及びGenethonなどの公共の情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝子マッピングデータを用いて、マッピングできる配列表の核酸分子が存在するかを調べた。NIM1キナーゼをコードする核酸分子のマッピングされた全ての断片が、同じ位置にマッピングされた全ての関連する調節及びコード配列に割り当てられた。遺伝子マップ位置は、ヒト染色体の範囲すなわち区間として表される。センチモルガン(cM)(ヒトDNAの100万塩基対に概ね相当する)で表されるマップ位置の範囲は、染色体p腕の末端から測定する。
【0130】
7 ハイブリダイゼーション技術及び分析
核酸分子の基板への固定
核酸分子を以下に示す方法で基板に固定する。核酸分子の混合液をジェル電気泳動により分画後、毛細管輸送によってナイロン膜に移す。別法では、核酸分子を個別にベクターに結合して、それを細菌宿主細胞に挿入してライブラリを形成する。次に核酸分子を以下の方法で基板に配列する。第1の方法では、個別のクローンを含む細菌細胞を機械的に摘み上げてナイロン膜に整列させる。このナイロン膜を、選択薬(用いるベクターによって異なるが、カルベンシリン、カナマイシン、アンピシリン、またはクロラムフェニコールなど)を含むLB寒天培地に載置し、37℃で16時間インキュベートする。この膜を寒天培地から取り除き、次にこの膜をコロニー側を上にして10%SDS、変性溶液(1. 5 M NaCl、0. 5 M NaOH)、中和液(1. 5 M NaCl、1 M Tris、pH 8. 0)に入れ、2×SSCにおいて10分間づつ2回インキュベートする。次にこの膜を、STRATALINKER UVクロスリンカー(Stratagene)でUV照射する。
【0131】
第2の方法では、インサートに隣接したベクター配列に相補的なプライマーを用いて、PCRを30サイクル行い細菌ベクターから核酸分子を増幅する。PCR増幅により、拡散の濃度を開始時の1〜2 ngから最終的に5μgまで増大させる。約400 bp〜約5000 bpの増幅した拡散をSEPHACRYL−400ビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製する。精製した拡散を、手動で或いはドット/スロットブロッティングマニフォールド及び吸入装置でナイロン膜に配列し、上記した変性、中和、及びUV照射によって固定する。精製した拡散を、米国特許第5,807,522号に開示された方法でポリマーコートスライドガラスに機械的に配列して固定する。ポリマーコートスライドガラスは、顕微鏡スライドガラス(Corning, Acton MA)を0.1%SDS及びアセトンで超音波洗浄した後、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products, West Chester PA)においてエッチングし、次に95%エタノールにおいて0.05%アミノプロピルシランでコーティングし、オーブンで110℃で硬化させて準備する。処理中及び処理後にこのスライドガラスを蒸留水で十分に洗浄する。次に、核酸分子をスライド上に配列し、STRATALINKER UVクロスリンカー(Stratagene)を用いてこの核酸分子のアレイをUV照射してスライド上に固定する。次にこのアレイを、室温で0.2%SDSで洗浄し、蒸留水で3回すすぐ。非特異的な接合部位を、アレイをリン酸バッファー(PBS:Tropix, Bedford MA)に於ける0.2%カゼインにおいて60℃で30分間インキュベートしてブロックし、次にこのアレイを0.2%SDSで洗浄し、前記したように蒸留水で洗い流す。
【0132】
メンブレンを用いるハイブリダイゼーションのためのプローブの準備
本配列表の核酸分子に由来するハイブリダイゼーションプローブは、メンブレンハイブリダイゼーションにおいてcDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングするために用いられる。プローブを準備するために、核酸分子を45μl TEバッファにおいて40〜50 ngの濃度に希釈し、100℃で5分間加熱して変性し、短時間遠心分離する。次に、変性した核酸分子をREDIPRIMEチューブ(Amersham Pharmacia Biotech)に加え、青色が十分に拡散するまで軽く混合し、短時間遠心分離する。5μlの[32P] dCTPをチューブに加え、その内容物を37℃で10分間インキュベートする。この標識化反応を5μlの0. 2M EDTAを加えてストップし、PROBEQUANT G−50マイクロカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いてプローブを組み込まれなかったヌクレオチドから精製する。精製したプローブを100℃で5分間加熱してから氷上で2分間冷却し、以下に記載するようにメンブレンハイブリダイゼーションに用いる。
【0133】
ポリマーコートスライドを用いるハイブリダイゼーションのためのプローブの準備
サンプルから単離したmRNAに由来するハイブリダイゼーションプローブを用いて、アレイハイブリダイゼーションにおいて本配列表の核酸分子をスクリーニングする。プローブは、GEMbrightキット(Incyte Pharmaceuticals)を用いて、mRNAを9μl TEバッファにおいて200 ngの濃度に希釈し、5μlの5×バッファ、1μlの0.1 M DTT、3μlのCy3またはCy5標識混合物、1μlのRNアーゼインヒビター、1μlの逆転写酵素、及び5μlの1×酵母コントロールmRNAを加えて準備する。酵母コントロールmRNAは、非コード酵母ゲノムDNA(W. Lei, unpublished)からin vitro転写によって合成する。量的コントロールとして、0.002 ng、0.02 ng、0.2 ng、及び2 ngのコントロールmRNAからなるセットを、サンプルmRNAに対してそれぞれ1:100,000、1:10,000、1:1000、及び1:100 (w/w)の比率で逆転写反応液に希釈する。mRNAの異なった発現パターンを検査するために、第2のセットのコントロールmRNAを、1:3、3:1、1:10、10:1、1:25、及び25:1 (w/w)の比率で逆転写反応液に希釈する。反応液を混合し、37℃で2時間インキュベートする。次に反応液を85℃で20分間インキュベートし、2つの連続したCHROMA SPIN+TE 30カラム(Clontech)を用いてプローブを精製する。精製したプローブを、DEPC処理水で90μlに希釈して、2μlの1mg/mlグリコーゲン、60μlの5M酢酸ナトリウム、300μlの100%エタノールを加えてエタノール沈殿させる。このプローブを20,800×gにおいて20分間遠心分離し、ペレットを12μlの再懸濁バッファに再懸濁させ、65℃で5分間加熱し、完全に混合する。上記したようにプローブを加熱及び混合してから氷上で保管する。プローブを以下に記載するように高密度のアレイハイブリダイゼーションに用いる。
【0134】
メンブレンを用いるハイブリダイゼーション
メンブレンを、1%Sarkosyl及び1×高リン酸バッファ(0. 5M NaCl、0.1 M Na2HPO4、5 mM EDTA、pH 7)を含むハイブリダイゼーション溶液において55℃で2時間プレハイブリダイゼーションする。15mlの新しいハイブリダイゼーション溶液に希釈したプローブをメンブレンに加える。55℃で16時間、メンブレンにプローブをハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの後、メンブレンを1mM Tris(pH 8. 0)、1%Sarkosylにおいて25℃で15分間洗浄し、1mM Tris(pH 8. 0)において25℃で15分間づつ4回洗浄する。ハイブリダイゼーション複合体を検出するために、XOMAT−ARフィルム(Eastman Kodak, Rochester NY)をメンブレンに一晩−70℃で露出し、現像して目で確認する。
【0135】
ポリマーコートスライドを用いるハイブリダイゼーション
プローブを65℃で5分間加熱し、5415Cマイクロ遠心分離器(Eppendorf Scientific, Westbury NY)を用いて毎分9400回転で5分間遠心分離し、アレイの表面に18μlのアリコットを載せカバースリップで覆う。このアレイを、顕微鏡スライドより僅かに大きいキャビティを有する防水容器に移す。この容器の角から140μlの5×SSCを加えてその内部を100%の湿度に保つ。アレイを含む容器を60℃で約6時間半インキュベートする。このアレイを、1×SSC、0.1%SDSにおいて45℃で10分間洗浄し、0.1×SSCにおいて45℃で10分間づつ3回洗浄した後、乾燥させる。
【0136】
ハイブリダイゼーション反応を、絶対ハイブリダイゼーション(absolute hybridization)方式またはディファレンシャルハイブリダイゼーション方式で行う。絶対ハイブリダイゼーション方式の場合、1つのサンプルからのプローブをアレイの要素にハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション複合体が形成された後にシグナルを検出する。シグナルの強度がサンプルにおけるプローブmRNAのレベルに相関する。ディファレンシャルハイブリダイゼーション方式の場合、2つの生体サンプルにおける遺伝子のセットの異なった発現を分析する。2つのサンプルからのプローブを準備し、異なった標識成分で標識する。2つの標識したプローブの混合物をアレイ要素にハイブリダイズさせ、2つの異なった標識からの蛍光シグナルをそれぞれ別に検出できる条件下でシグナルを検査する。アレイ上の要素に、2つの生体サンプルに由来するプローブのそれぞれが実質的に同数ハイブリダイズする場合、明瞭な複合蛍光が得られる(Shalon W095/35505)。
【0137】
ハイブリダイゼーション複合体をInnova 70混合ガス10Wレーザーを備えた顕微鏡(Coherent, Santa Clara CA)で検出する。この顕微鏡は、Cy3を励起するために488nmのスペクトル線を発生し、Cy5を励起するために632nmのスペクトル線を発生することができる。励起レーザー光を20倍の顕微鏡対物レンズ(Nikon, Melville NY)を用いてアレイに集束させる。アレイを含むスライドを顕微鏡上のコンピュータ制御されたXYステージ上に載せ、20μmの解像度で対物レンズを通してラスタースキャンする。ディファレンシャルハイブリダイゼーション方式の場合、2つの蛍光物質を順番にレーザーで励起する。波長に応じて放出された光を2つの蛍光物質に対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に分割する。アレイと光電子増倍管との間に配置された好適なフィルターを用いてシグナルをフィルタリングする。用いられる蛍光物質の最大発光波長は、Cy3が565nmであり、Cy5が650nmである。スキャンの感度は、プローブ混合物に加えられた酵母コントロールmRNAによって生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイのある位置に相補的なDNA配列が含まれていると、その位置におけるシグナルの強度が、ハイブリダイズ種(hybridizing species)の重量比で1:100,000の関係となり得る。
【0138】
光電子増倍管の出力をIBM互換性パーソナルコンピュータにインストールした12ビットRTI−835H アナログ/デジタル変換ボードを用いてデジタル化する(Analog Devices, Norwood MA)。このデジタル化したデータを、イメージとして表示する。この場合、シグナル強度を、20色線形変換を用いて、青(弱いシグナル)から赤(強いシグナル)の疑似色スケールにマッピングする。データはまた量的にも分析する。2つの異なった蛍光物質が同時に励起されて測定された場合、データを、各蛍光物質に対する発光スペクトルを用いて蛍光物質間の光学クロストーク(発光スペクトルの重複による)をまず補正する。各スポットからのシグナルがグリッドの各要素の中心に来るように、蛍光物質シグナル強度の上にグリッドを重ね合わせる。各要素内の蛍光シグナルを統合して、シグナルの平均強度に対応する数値を求める。シグナル分析に用いるソフトウエアはGEMTOOLSプログラム(Incyte Pharmaceuticals)である。
【0139】
8 ノーザン分析
電子的
BLASTに適用するコンピュータ技術を用いて、GenBankまたはLIFESEQデータベース(Incyte Pharmaceuticals)などのヌクレオチドデータベースにおいて同一或いは関連する分子を検索した。ヒト及びラットの配列に対する積スコアを以下のように計算した。BLASTスコアをヌクレオチド同一性のパーセントで乗じて、その値を2つの配列の内の短い方の長さの5倍で除した。したがって、短い方の配列の長さに対する100%のアラインメントが積スコア100となる。積スコアは、2つの配列間の類似性の程度及び一致する配列の長さを考慮している。例えば、積スコアが40では、一致は正確でエラーは1%〜2%であり、70以上の積スコアではその一致は完全である。類似分子すなわち関連分子は、通常は積スコアが8〜40の範囲の分子を選択することによって同定することができる。
【0140】
70の積スコアで実施した電子的ノーザン分析の結果が図2に示されている。この分析では、cDNAライブラリを系、器官/組織、及び細胞の種類によって幾つかのカテゴリーに分類した。そのカテゴリーには、心血管系、結合組織(特に癌性の乳房線維芽細胞)、消化系、胚、内分泌系、外分泌腺、女性及び男性生殖器(特に癌性の前立腺)、生殖細胞、血液及び免疫系、肝臓、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器官、皮膚、顎口腔系、未分類/混合、及び尿管が含まれる。各カテゴリーにおいて、実際に本配列を数をカウントし、そのカテゴリーの合計ライブラリ数に対する発現したライブラリ数を示した。
【0141】
定量 PCR
定量PCRを用いて、様々な細胞系及び組織におけるヒトNIM1キナーゼの発現を調べた。ATCCなどから得られる細胞系には、H460ヒト非小細胞肺癌、A2780ヒト卵巣癌系、A375ヒトメラノーマ細胞系、HDFヒト上皮繊維芽細胞、HELAヒト子宮頚癌、DU145アンドロゲン誘導性前立腺癌細胞系、MDA−MB231ヒト乳癌細胞、U87グリア芽腫腫瘍細胞、及びBX−PC3膵臓癌細胞がある。これらの細胞系を培養皿に載置し、10%のウシ胎児血清、及び5%CO2における2mMグルタミンを90%のコンフルエントになるまで加えたRPMIにおいて成長させた。組織、脳、結腸、子宮、及び胎盤をClontech社のMTNブロット(Human I、II、III、及びIV)として得た。
【0142】
ノーザン分析は、ABI PRISM 7700シークエンシングシステム及びTAQMANアッセイ試薬(TAQMAN Universal PCR Master mix)を用い、製造者による取扱説明書に従って定量PCRにより行った(すべてPE Biosystems)。全ての反応を3通り行った。
【0143】
反応に用いたプライマーには、SEQ ID NO:37−39が含まれる。相対的な定量は、標準として18s RNAを用いて行った。この標準化方法の直線性は、Spiess and Ivell(1999; Biotechniques 26: 46−50、言及することをもって本明細書の一部とする)に記載されている。
【0144】
9 相補的な核酸分子
本核酸分子に相補的な配列或いはその断片を用いて、遺伝子の発現を検出したり、低下させたり、阻害することができる。約15〜約30個の塩基からなるオリゴヌクレオチドの使用について記載するが、それより小さい或いは大きい配列の断片、またはその誘導体(PNA)の場合でも同じ方法を用いることができる。好適なオリゴヌクレオチドは、Oligo4.06ソフトウエア(National Biosciences)を用いて選択した。プロモーターの結合を阻害して転写を阻止するために、最も好ましくはオープンリーディングフレームの開始コドンの前の約10個のヌクレオチドである最もユニークな5’配列に結合するように相補的なヌクレオチドを設計する。翻訳を阻害するために、本哺乳動物ポリペプチドをコードするmRNAへのリボソームの結合を阻害するべく相補的なオリゴヌクレオチドを設計する。
【0145】
転写または翻訳を阻害するために作製したアンチセンス分子を用いるのに加えて、ゲノム配列(例えばエンハンサーやイントロン)或いはトランス作動性調節性遺伝子に対するアンチセンス分子を設計して遺伝子発現を変化させることができる。同様に、三重らせん塩基対形成として知られているHogeboom塩基対形成法を用いてアンチセンス阻害を行うことができる。三重らせんの塩基対形成に関与するアンチセンス分子は、ポリメラーゼ、転写因子、または調節分子と結合するために二本鎖の間を広げる二重らせんの能力を損なわせる。
【0146】
このようなアンチセンス分子を発現ベクターに導入して、好適な細胞または組織を形質転換する。これには、効果を検査するために細胞系への発現ベクターの導入、一過性或いは短期の治療のための器官、腫瘍、滑液キャビティ、または血管系への発現ベクターの導入、または長期或いは安定した遺伝子治療のための単細胞または他の生殖系への発現ベクターの導入が含まれる。一過性の発現は、ベクターの複製を伴わない場合には1ヶ月以上持続し、ベクターの複製を引き起こす好適なエレメントが形質転換/発現系に用いられている場合には3ヶ月以上持続する。
【0147】
アンチセンス分子をコードするベクターで好適な分裂細胞を安定的に形質転換することにより、遺伝子組換え細胞系、遺伝子組換え組織、または遺伝子組換え器官を作製することができる(米国特許第4,736,866号)。ベクターを取り込んで十分な量のベクターを複製するこれらの細胞により、安定した組み込みが可能となり、本哺乳動物タンパク質をコードする核酸分子の活性を弱める或いは完全に消失させる十分なアンチセンス分子を産生させることができる。
【0148】
10 NIM1 キナーゼの発現
ヒトNIM1キナーゼの発現は、サル及び昆虫細胞系の発現系を用いて行った。cDNAを、QIAPREPスピンミニプレップキット及びPLASMID MAXIキット(共にQiagen)を用いて取扱説明書に従って精製した。
【0149】
一過的な発現の場合、cDNAをpcDNA3.1(−)/myc−His Bベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)にクローニングして、ベクターpcDNA3−Nim1を、CaPO4トランスフェクションキット2−463335(Eppendorf−5 Prime, Boulder CO)を用いてCOS 1−1細胞に形質転換した。形質転換する前に、4×106の細胞を10cmの組織培養皿に撒いて24時間培養した。形質転換の日に、500 mlの2×DNA沈殿バッファ、62 mlのM CaCL2、10 mg (10 ml)のpcDNA3−Nim1、及び428 mlの水でCaP04−DNAを沈殿させた。この混合液を室温で20分間インキュベートし、次にゆっくりと9 mlの培養液(DMEM、10%ウシ胎児血清、2mM グルタミン、10 mg/mlのペニシリン、及び10 mg/mlのストレプトマイシン)を加えた。細胞を5% CO2で、37℃で4時間インキュベートした。培養液を新しい培養液に替え、細胞を更に48時間インキュベートした。
【0150】
Sf21昆虫細胞を、BaculoGoldトランスフェクションキット(BD Pharmingen, San Diego CA)に付属の取扱説明書に従って同時形質転換した。2×106の細胞を6 cmの組織培養皿に蒔き、27℃で15分間インキュベートした。4 mg (4 ml)のpVL1392/GST−NIM1発現ベクターを0.5 mg (0.5 ml)のBaculoGold DNAと共に室温で5分間インキュベートした。細胞培養液(TNM−FH)を除去して1mlのバッファAに替えた。DNA混合物を1 mlのバッファBで希釈し、一滴ずつコンフェクションプレートに加えた。プレートを27℃で4時間インキュベートした後、培養液を替え細胞を5日間インキュベートした。組換えウイルスを3回増幅して107pfu/mlのウイルスストックを得た。1.2×107のSf21昆虫細胞を10 mlのウイルスストックで感染させ、27℃でインキュベートした。3日後に、細胞を溶解してタンパク質を精製した。
【0151】
11 タンパク質の精製
His 精製
COS−1細胞を毎分1000回転で遠心分離し、4 mlの溶解バッファ(5 mM イミダゾール+0.5 mM NaCI+20 mM Na2HPO4+Complete protease inhibitor cocktail tablets、(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis IN))において再懸濁し、超音波処理した。毎分10000回転の回転数で、4℃で10分間遠心分離して可溶性画分を回収した。組換えNim1キナーゼを、製造者の取扱説明書に従って固定した金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC, Invitrogen)で精製した。精製度を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)及びクーマーシー青色染色により測定した。タンパク質の濃度を、Bradford法により測定した。
【0152】
GST 精製
Sf21細胞を、毎分800回転で遠心分離し、10 mlの溶解バッファ(PBS+1 mM orthovanadate+20 mM DTT+Complete protease inhibitor cocktail tablets (Roche Molecular Biochemicals))において再懸濁し、超音波処理した。可溶性画分を、毎分10000回転、4℃で10分間遠心分離して回収した。組換えNim1キナーゼを、製造者の取扱説明書に従ってグルタチオン−SEPHAROSEレジン(Amersham Pharmacia Biotech)上でのアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。精製濃度を、Bradford法により測定した。
【0153】
ウェスタンブロット分析の場合は、タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、標準的な材料及び技術(ECL, Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、免疫ブロッティング(GST−HRP結合抗体またはHis−HRP結合抗体(Santa Cruz Biotechnology)の何れかを用いて)により分析した。
【0154】
12 本タンパク質の特徴付け
インサイトクローン番号3317608のin vitro翻訳は、TNT T7クイック結合転写/翻訳システム(Promega)を用いて製造者の取扱説明書に従って行った。SDS−PAGE分析により、48 kdのタンパク質が存在することが分かった。タンパク質の大きさは、鋳型としてpcDNA3−Nim1を発現させて確認した。
【0155】
先述したように、Nim1キナーゼは哺乳動物細胞及び昆虫細胞の両方において発現した。精製したタンパク質をSDS−PAGEで分析して、50 kdのタンパク質(myc−Hisタグを含む)及び80kdのタンパク質(GSTタグを含む)のそれぞれが確認された。
【0156】
13 ヒト NIM1 キナーゼアッセイ
in vitroキナーゼアッセイを、100 ngの組換えNim1−GSTを10μCiの[y−32P]−ATP (3000 Ci/mmol; Amersham Pharmacia Biotech)を含む20μlのキナーゼバッファ(50 mM Hepes pH 7.5、3 mM MgCl2及びMnCl2 、10 mM DTT、及び6μM NaOVa)において、2μgのミエリン塩基性タンパク質(MBP)またはヒストン(HIST)と共に37℃で30分間インキュベートして行った。反応は、サンプルバッファを加え100℃で5分間加熱して停止させた。サンプルを、SDS−PAGEにより分析し、ゲルを乾燥させてオートラジオグラフィー分析を行った。
【0157】
14 NIM1 キナーゼに特異的な抗体の生産
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法でNIM1キナーゼを精製し、これを用いてマウスやウサギを免疫する。抗体は、以下の標準的なプロトコルを用いて生産する。別法では、NIM1キナーゼのアミノ酸配列をLASERGENEソフトウエア(DNASTAR)を用いて解析し、免疫原性の高い領域を決定する。通常はC末端付近或いは親水性領域内に存在する免疫原性エピトープを選択して合成し、これを用いて抗体を増大させる。通常は15残基程度の長さのエピトープを、Fmoc法でABI 431Aペプチドシンセサイザー(PE Biosystems)で合成し、これをN−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応でKLH(Sigma−Aldrich)に結合させて免疫原性を高める。
【0158】
エピトープ−KLH複合体をフロイントの完全アジュバントと共に投与してウサギを免疫する。その後、間隔を置いてフロイントの不完全アジュバントで免疫化を繰り返す。マウスの場合は少なくとも7週間、ウサギの場合は少なくとも12週間が経過した後、抗血清を採取して抗ペプチド活性を検査する。この検査には、このペプチドをプラスチックに結合し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させ、洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。当分野で周知の方法を用いて抗体力価及び形成された複合体の収量を測定する。
【0159】
15 特異的な抗体を用いる天然タンパク質の精製
天然或いは組換えの哺乳動物タンパク質を、このタンパク質に特異的な抗体を用いてイムノアフィニティークロマトグラフィで実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、この抗体をCNBr−活性化SEPHAROSEレジン(Amersham Pharmacia Biotech)に共有結合させて作製する。このタンパク質を含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、このタンパク質を優先的に吸着できるように、界面活性剤の存在下で高イオン強度緩衝液でそのカラムを洗浄する。結合後、緩衝液(pH 2〜3)或いは高濃度の尿素やチオシアネートイオンを用いてそのカラムからこのタンパク質を溶離させて抗体とこのタンパク質との結合を切断し、このタンパク質を回収する。
【0160】
16 本核酸分子若しくはタンパク質と特異的に結合する分子のスクリーニング
本核酸分子やその断片、或いは本タンパク質やその断片を、32P−dCTP、Cy3−dCTP、Cy5−dCTP (Amersham Pharmacia Biotech)、またはBIODIPYやFITC (Molecular Probes)でそれぞれ標識する。予め基板上に配列した候補分子または化合物のライブラリを、標識した核酸分子またはタンパク質の存在下でインキュベートする。核酸分子或いはアミノ酸配列の何れかが存在する条件下でインキュベートした後、その基板を洗浄し、特異的な結合或いは複合体形成を示唆する標識が保持されている基板上の全ての部分をアッセイし、リガンドを同定する。様々な濃度の核酸若しくはタンパク質で得られたデータを用いて、標識した核酸またはタンパク質と結合した分子との親和性を計算する。
【0161】
17 2−ハイブリッドスクリーン
酵母2−ハイブリッド法、即ちMATCHMAKER LexA Two−Hybridシステム(Clontech Laboratories, Palo Alto CA)を用いて、本発明の哺乳動物タンパク質と結合するペプチドをスクリーニングする。本タンパク質をコードする核酸分子をpLexAベクターの複数のクローニング部位に挿入し、連結して大腸菌に形質転換する。mRNAから調整したcDNAを、pB42ADベクターの複数のクローニング部位に挿入して、結合させ、大腸菌に形質転換させてcDNAライブラリを作製した。pLexAプラスミド及びpB42AD−cDNAライブラリ作製物を大腸菌から単離し、これらを2:1の比率で用いて、polyethylene glycol/lithium acetateプロトコルに従ってコンピテント酵母EGY48 [p8op−lacZ]細胞を同時形質転換した。形質転換した酵母細胞をヒスチジン、トリプトファン、及びウラシルを含まない合成ドロップアウト(SD:synthetic dropout)培地(‐His、‐Trp、‐Ura)に移し、コロニーが成長してカウント出来るまで30℃でインキュベートした。このコロニーを1×TE(pH 7.5)の最小容量にプールし、2%アガロース(Gal)、1%ラフィノース(Raf)、及び80 mg/ml のX−Gal (5−bromo−4−chloro−3−indoryl−b−D−galactoside)を加えたSD培地(‐His、‐Leu、‐Trp、‐Ura)に移し、青いコロニーの成長を調べた。発現したタンパク質とcDNA融合タンパク質との間の相互作用により、EGY48におけるLEU2レポーター遺伝子の発現が活性化され、ロイシンを含まない培地(‐Leu)でコロニーが成長した。また、相互作用により、p8op−lacZ レポーター作製物からのβ−ガラクトシダーゼの発現が活性化され、X−Gal上で成長したコロニーにおいて青色コロニーが生成される。
【0162】
発現タンパク質とcDNA融合タンパク質との間のポジテブな相互作用は、個々のポジティブコロニーを分離して、これらのコロニーをSD液体培地(‐Trp、‐Ura)で30℃で2日間成長させるて確認することができる。培養物のサンプルをSD培地(‐Trp、‐Ura)に移して、コロニーが現れるまで30℃でインキュベートする。このサンプルを、SDプレート(‐Trp、‐Ura)及びSDプレート(‐His、‐Trp、‐Ura)上でレプリカ培養する。ヒスチジン含有SD培地で成長するがヒスチジンを含まない培地では成長しないコロニーは、pLexAプラスミドが欠損している。ヒスチジンを必要とするコロニーをSD(Gal、Raf、X−Gal、‐Trp、‐Ura)上で成長させ、白いコロニーを単離して成長させた。本哺乳動物タンパク質と物理的に相互作用するタンパク質をコードする核酸分子を含むpB42AD−cDNAプラスミドを、酵母細胞から単離して特徴付けることが可能である。
【0163】
本明細書に記載した全ての特許及び刊行物に言及することを以って本明細書の一部とする。本発明の範囲及び概念から逸脱することなく本発明の方法及びシステムの種々の改変が可能であることは当業者には明らかであろう。特定の好適な実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学或いは関連する分野の専門家には、本明細書に記載の本発明の実施例の様々な改変は、特許請求の範囲に含まれることが容易に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【図1A】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図1B】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図1C】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図1D】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図1E】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図1F】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図2】
脳組織(74%)、乳癌(結合組織)、及び前立腺(男性生殖器)におけるヒトNIM1キナーゼの高度に特異的な発現の電子的ノーザン分析を示す。電子的ノーザン分析は、LIFESEQ Goldデータベース(Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto CA)を用いて作成した。
【図3】
様々な細胞系及び組織における定量PCRを用いて作成した転写物発現のグラフを示す。x軸は発現の倍数を示し、y軸は、細胞系(H460、A2780、A375、HDF、HELA、DU145、MDA−MB231、U87−MG、及びBX−PC3)及び組織(脳、結腸、子宮、及び胎盤の組織)を示す。
【図4A】
ヒトNIM1キナーゼ(3317608CD1; SEQ ID NO:2)、線虫STK (g3877329; SEQ ID NO:31)、ドブネズミSTK (g2052189; SEQ ID NO:32)、ヒトC−TAK1 (g3089349; SEQ ID NO:33)、ドブネズミ塩誘導性キナーゼ(g5672676 ; SEQID NO:34)、キイロショウジョウバエK78プロテインキナーゼ(g2564680; SEQ ID NO:35)、及びヒトEMK1 (g1749794; SEQ ID NO:36)の間の保存された化学的及び構造的類似性を実証する。このアラインメントは、LASERGENEソフトウエアのMEGALIGNプログラム(DNASTAR, Madison WI)を用いて作成した。
【図4B】
ヒトNIM1キナーゼ(3317608CD1; SEQ ID NO:2)、線虫STK (g3877329; SEQ ID NO:31)、ドブネズミSTK (g2052189; SEQ ID NO:32)、ヒトCTAK1 (g3089349; SEQ ID NO:33)、ドブネズミ塩誘導性キナーゼ(g5672676 ; SEQID NO:34)、キイロショウジョウバエK78プロテインキナーゼ(g2564680; SEQ ID NO:35)、及びヒトEMKl (g1749794; SEQ ID NO:36)の間の化学的及び構造的類似性を実証する。このアラインメントは、LASERGENEソフトウエアのMEGALIGNプログラム(DNASTAR, Madison WI)を用いて作成した。
【図4C】
ヒトNIM1キナーゼ(3317608CD1; SEQ ID NO:2)、線虫STK (g3877329; SEQ ID NO:31)、ドブネズミSTK (g2052189; SEQ ID NO:32)、ヒトCTAK1 (g3089349; SEQ ID NO:33)、ドブネズミ塩誘導性キナーゼ(g5672676 ; SEQID NO:34)、キイロショウジョウバエK78プロテインキナーゼ(g2564680; SEQ ID NO:35)、及びヒトEMKl (g1749794; SEQ ID NO:36)の間の化学的及び構造的類似性を実証する。このアラインメントは、LASERGENEソフトウエアのMEGALIGNプログラム(DNASTAR, Madison WI)を用いて作成した。
【図5】
ヒトNIM1(hNIM1)キナーゼアッセイを示す。酵素がhNIMl−GST、基質がミエリン塩基性タンパク質(MBP)及びヒストン(HIST. 1)、ポジティブコントロールがZAP70(70 kdのζ‐鎖(TCR)関連プロテインキナーゼ)である。符号の「+」及び「−」はそれぞれ、各レーンにおけるヒトNIMキナーゼ及び基質の存在及び不在を表す。ゲルの右側に沿った大きさの指標はキロダルトンである。
(発明の技術分野)
本発明は、ヒトNIM1キナーゼをコードする核酸分子に関連し、また、脳疾患及び癌、特に乳癌の特徴付け・診断・予防・治療に、この核酸分子及びこの核酸分子がコードするタンパク質を利用することに関連する。
【0002】
(発明の背景)
生物間の系統発生的な関係は何度も実証されており、様々な原核生物及び真核生物の研究結果は、分子、生化学的及び生理学的機構、及び代謝経路の漸進的な進化を示している。異なった進化圧力にもかかわらず、線虫、ハエ、ラット、及びヒトのプロテインキナーゼは、共通の化学的及び構造的特徴を有し、同一の一般的な細胞活性を調節する。構造及び/または機能が分かっている生物の核酸配列及びタンパク質配列を比較することにより、ヒト配列の分析が進み、ヒトの病態、疾患、及び障害のための診断薬及び治療薬を検査するためのモデル系の作製が可能となる。
【0003】
プロテインキナーゼは、タンパク質にリン酸基を付加することにより多くの異なった細胞増殖、細胞分化、及びシグナル伝達を調節する。制御のきかないシグナル伝達は、炎症、癌、動脈硬化、及び乾癬を含む様々な病態に関係することが分かっている。可逆的なタンパク質リン酸化は、真核細胞の活性を調節するための主な方法である。典型的な哺乳動物細胞における10,000のタンパク質活性の内の1,000以上がリン酸化であると推定される。活性化させる高エネルギーのリン酸は、一般にプロテインキナーゼによりアデノシン三リン酸(ATP)またはグアノシン三リン酸(GTP)から特定のタンパク質に導入され、プロテインホスファターゼによりそのタンパク質から除去される。リン酸化は分子スイッチをオンにするのに類似しており、細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、成長及び分化因子などの分子によって仲介される)、細胞周期チェックポイント、及び環境または栄養のストレスに応答して起こる。スイッチがオンになると、適当なプロテインキナーゼが代謝酵素、調節タンパク質、受容体、細胞骨格タンパク質、イオンチャネルまたはポンプ、または転写因子を活性化させる。
【0004】
プロテインキナーゼは、多様な機能及び特性を有する酵素のスーパーファミリーである最も大きな既知のタンパク質群を構成している。プロテインキナーゼは、通常はそれらの基質、それらの調節分子、または変異表現型の或る特徴によって命名される。基質について述べると、プロテインキナーゼは、チロシン残基をリン酸化する群(プロテインチロシンキナーゼ、PTK)とセリンまたはトレオニン残基をリン酸化する群(セリン/トレオニンキナーゼ、STK)との2つの群に概ね分類される。僅かであるがプロテインキナーゼの中には、トレオニン及びチロシン残基の両方をリン酸化する二重特異性を有するものもある。
【0005】
プロテインキナーゼは、触媒ドメインのいずれかの側に位置するアミノ酸残基の違い(通常は5〜100残基の間)または触媒ドメインのループ内に挿入されたアミノ酸残基の違いによって複数のファミリーに分類され得る。これらの残基により、標的タンパク質を認識して相互作用する時の各キナーゼの調節が可能となる。殆んど全てのキナーゼは、2つのローブに亘って分布する11のサブドメインを有する250〜300のアミノ酸からなる類似した触媒ドメインを含む。サブドメインI−IVを含むN末端ローブは、ATP供与体分子と結合しそのATP供与体分子を方向付ける。サブドメインVIA−XIを含む大きなC末端ローブは、タンパク質基質と結合し、γリン酸をATPからセリン、トレオニン、またはチロシン残基の水酸基へ転移させる。サブドメインVは、N末端ローブ及びC末端ローブに亘っている。
【0006】
11のサブドメインのそれぞれは、サブドメインの特徴であって高度に保存されている特異的なアミノ酸残基及びモチーフ、またはアミノ酸パターンを含む(Hardie及びHanks (1995) The Protein Kinase Facts Books, Vol I, Academic Press, San Diego CA, pp. 7−20)。具体的には、2つのプロテインキナーゼシグネチャ配列がキナーゼドメインにおいて同定された。第1のシグネチャ配列は、ATP結合に関与する活性部位リシン残基を含み、第2のシグネチャ配列は、触媒活性に重要なアスパラギン酸残基を含む。タンパク質が2つのプロテインキナーゼシグネチャを含む場合、そのタンパク質がプロテインキナーゼである可能性はほぼ100%である(MOTIFS 検索プログラム、Genetics Computer Group, Madison WI; Bairochら(1996) Nucleic Acids Res 24:189−196)。
【0007】
STK ファミリー
セカンドメッセンジャー依存性プロテインキナーゼは、サイクリックAMP(cAMP)、サイクリックGMP、イノシトール三リン酸、ホスファチジルイノシトール、3,4,5−三リン酸、サイクリックADPリボース、アラキドン酸、ジアシルクリセロール及びカルシウム−カルモジュリンなどのセカンドメッセンジャーの効果を主に仲介する。サイクリックAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)はSTKファミリーの重要なメンバーである。cAMPは、研究した全ての真核細胞及び動物細胞におけるホルモン作用の細胞内メディエーターである。このようなホルモン誘導性細胞応答には、甲状腺ホルモン分泌、コルチゾル分泌、プロゲステロン分泌、グリコーゲン分解、骨再吸収、心拍数の調節、及び心筋収縮力の調節が含まれる。PKAは全ての動物細胞に見られ、これらほとんどの細胞におけるcAMPの効果に関係すると思われる。PKA発現の変化は、癌、甲状腺疾患、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、及び心血管疾患に関連する(Isselbacher, K. J.ら,(1994) Harrison’ s Principles of Internal Medicine, McGraw−Hill, New York, NY, pp. 416−431, 1887)。
【0008】
カルシウム−カルモジュリン(CaM)依存性プロテインキナーゼもまたSTKファミリーのメンバーである。カルモジュリンは、カルシウムの結合に応答して標的タンパク質に結合することにより、多くのカルシウム調節性プロセスを仲介するカルシウム受容体である。これらのプロセスの主な標的タンパク質はCaM依存性プロテインキナーゼである(CaMK)。CaMKは、平滑筋の収縮、グリコーゲン分解(ホスホリラーゼキナーゼ)、及び神経伝達(CaMキナーゼI及びCaMキナーゼII)の調節に関与する。CaMK Iは、神経伝達物質関連タンパク質であるシナプシンI及びII、遺伝子転写調節因子であるCREB、及び嚢胞性繊維コンダクタンス調節タンパク質であるCFTRを含む様々な物質をリン酸化する(Haribabu, B.ら,(1995) EMBO Journal 14:3679−3686)。CaMK IIもまた、様々な部位においてシナプシンをリン酸化し、チロシンヒドロキシラーゼのリン酸化及び活性化によって脳におけるカテコールアミンの合成を調節する。CaMの多くは、CaMに結合するのに加えてリン酸化により活性化される。CaMKは、キナーゼカスケードの一部として他のキナーゼによりリン酸化されたり、自己リン酸化し得る。
【0009】
もう1つのリガンド活性化プロテインキナーゼは、5’−AMP−活性化プロテインキナーゼである(AMPK;Gao, G.ら,(1996) J. Biol Chem. 271: 17998−17803)。哺乳動物AMPKは、酵素であるアセチル−CoAカルボキシラーゼ及びヒドロキシメチルグルタリル−CoAレダクターゼのリン酸化による脂肪酸及びステロールの合成の調節因子であって、熱ショックやグルコース及びATPの枯渇などの細胞内ストレスに対するこれらの経路の応答を仲介する。AMPKは、触媒αサブユニット、並びにこのαサブユニットの活性を調節すると考えられている2つの非触媒βサブユニット及びγサブユニットからなるヘテロ三量体複合体である。AMPKのサブユニットは、脳、心臓、脾臓、及び肺などの非脂肪性組織において予想以上に広く分布している。この分布から脂質の代謝の調節以外にもある役割を果たしていると考えられる。
【0010】
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)もまた、STKファミリーのメンバーである。MAPKは、リン酸化カスケードを介して細胞表面から核へのシグナル伝達を仲介する。いくつかのサブグループが同定されており、それぞれが異なった基質特異性を有し、固有の細胞外刺激に応答する(Egan 及び Weinberg (1993) Nature 365: 781−783)。MAPキナーゼシグナル伝達経路は、哺乳動物細胞及び酵母に存在する。哺乳動物経路を活性化する細胞外刺激には、上皮成長因子、紫外線、高浸透圧媒体、熱ショック、内毒素性リポ多糖、腫瘍壊死因子及びインターロイキン−1などの前炎症性サイトカインが含まれる。MAPKの発現の変化は、癌、炎症、免疫疾患、及び成長及び発達に影響を及ぼす疾患を含む様々な疾患に関与する。
【0011】
血清/サイトカイン誘導性STKである増殖関連キナーゼ(PRK)は、ヒト巨核細胞における細胞サイクル及び細胞増殖の調節に関与する(Liら (1996) J Biol Chem 271:19402−8)。PRKは、細胞分裂に関係するSTKのpoloファミリーに関連する。PRKは肺腫瘍組織においてダウンレギュレートされ、正常組織における抑制の効かないその発現が発癌に繋がるプロトオンコジーンであると思われる。
【0012】
サイクリン依存性プロテインキナーゼ(CDK)は、細胞周期を介して細胞の進行を調節するSTKの別の群である。サイクリンは小さな調節タンパク質であって、CDKに結合してCDKを活性化させる。次に、そのCDKが有糸分裂プロセスに関与する選択されたタンパク質をリン酸化及び活性化することにより、細胞周期の様々な相を開始させる。CDKは、活性化するのに複数の入力が必要であるという点でユニークである。サイクリンの結合に加えて、CDKの活性化には、特定のトレオニン残基のリン酸化及び特定のチロシン残基の脱リン酸が必要である。
【0013】
ヒトNIM1キナーゼ(hNIM)をコードする核酸分子の発見により、脳疾患及び癌、特に乳癌の特徴付け、診断、予防、治療に有用な新規の組成物を提供する。
【0014】
(発明の要約)
ヒトNIM1キナーゼをコードする実質的に精製された核酸分子の発見に基づき、脳疾患及び癌、特に乳癌の特徴付け・診断・予防・治療に有用な組成物を提供することで当分野の要望に応える。
【0015】
本発明は、SEQ ID NO:2を含むヒトNIM1キナーゼをコードする実質的に精製された核酸分子を提供する。本発明はまた、SEQ ID NO:1、または断片や相補配列を含む組成物を提供する。本発明は更に、SEQ ID NO:24−30から選択される核酸分子の哺乳動物変異体を提供する。本発明はまた、SEQ ID NO:3−30、SEQ ID NO:1のヌクレオチドの約414〜約1414、またはそれらの相補配列から選択される少なくとも18の連続するヌクレオチド断片を提供する。一実施態様では、本発明はこれらの断片の少なくとも1つを含む基板を提供する。第2の実施態様では、本発明は、検出、スクリーニング、及び精製に用いることができる断片を含むプローブを提供する。更なる実施態様では、このプローブは一本鎖相補RNA分子またはDNA分子である。
【0016】
本発明は更に、サンプルにおける核酸分子を検出する方法であって、プローブ即ち相補的な核酸分子をそのサンプルの少なくとも1つの核酸分子とハイブリダイズするステップと、ハイブリダイゼーション複合体を形成するステップと、そのハイブリダイゼーション複合体を検出するステップとを含み、そのハイブリダイゼーション複合体の存在がそのサンプルに核酸分子が存在することを示す方法を提供する。一実施態様では、この方法は更に、ハイブリダイゼーションの前にサンプルの核酸分子を増幅するステップを含む。この核酸分子、その断片、またはその相補配列が、アレイ上のエレメントを構成し得る。
【0017】
本発明はまた、核酸配分子、またはその断片や相補配列を用いて、分子または化合物のライブラリをスクリーニングして、その核酸分子と特異的に結合する少なくとも1つのリガンドを同定する方法であって、特異的な結合が許容される条件下で、その核酸分子をその分子または化合物のライブラリと結合させるステップと、その核酸分子に対する特異的な結合を検出して、その核酸分子と特異的に結合するリガンドを同定するステップとを含む方法を提供する。一実施態様では、このような分子及び化合物のライブラリには、DNA分子、RNA分子、ペプチド、PNA、及びタンパク質等が含まれる。
【0018】
本発明はまた、宿主細胞内に含まれている本核酸分子の少なくともある断片を含む発現ベクターを提供する。本発明は更に、タンパク質が発現する条件下で宿主細胞を培養するステップと、そのタンパク質をその宿主細胞から回収するステップとを含むタンパク質の生産方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、SEQ ID NO:2を含む単離され精製されたタンパク質またはその一部を提供する。更に、本発明はまた、医薬用担体と共に実質的に精製されたタンパク質またはその一部を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
本発明は更に、本タンパク質の少なくとも一部を用いて抗体を産生させる方法を提供する。本発明はまた、タンパク質を用いて分子または化合物のライブラリをスクリーニングして、そのタンパク質に特異的に結合する少なくとも1つのリガンドを同定する方法を提供する。この方法は、特異的な結合が許容される条件下で、そのタンパク質を分子または化合物のライブラリと結合させるステップと、結合したタンパク質を検出して、そのタンパク質と特異的に結合したリガンドを同定するステップとを含む。このような分子及び化合物のライブラリには、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体、DNA分子、RNA分子、免疫グロブリン、薬剤化合物、擬態、ペプチド、医薬品、及びその他のリガンドが含まれる。本発明は更に、本タンパク質を用いてリガンドを精製する類似の方法を提供する。この方法は、特異的な結合が許容される条件下で、本タンパク質をサンプルと結合させステップと、結合したタンパク質を回収するステップと、そのリガンドから本タンパク質を分離して、精製されたリガンドを得るステップとを含む。
【0021】
本発明は更に、ヒトNIM1キナーゼに対して作製された抗体を用いるスクリーニング法により同定された抗体を提供する。抗体を作製する方法は、抗体反応が起こる条件下で、ヒトNIM1キナーゼ若しくは抗原性を有するその一部で動物を免疫化するステップと、動物抗体を単離するステップと、単離した抗体をNIM1キナーゼでスクリーニングして、Nim1キナーゼに特異的に結合する抗体を同定するステップとを含む。一実施態様では、これらの抗体は、脳疾患及び癌の存在の確認における診断用組成物として有用である。別の実施態様では、この抗体を医薬組成物として、ヒトNIM1キナーゼの過剰な発現に関連する脳疾患及び癌の治療に用い得る。
【0022】
本発明は更に、哺乳動物のゲノムDNAの中にマーカー遺伝子を挿入して、その天然の核酸分子の発現を阻止する方法を提供する。本発明はまた、核酸分子を用いて哺乳動物モデル系を作製する方法を提供する。この方法は、SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:3−30から選択される核酸分子を含むベクターを作製するステップと、そのベクターを胚性幹細胞に形質転換するステップと、形質転換された胚性幹細胞を選択するステップと、この形質転換した肺性幹細胞を哺乳動物胚盤胞の中に微量注入して、キメラ胚盤胞を作製するステップと、偽妊娠メスにキメラ胚盤胞を移植して、このメスから、その生殖細胞系の中にこの核酸分子を含むキメラ子孫が出産されるようにするステップと、そのキメラ哺乳動物を交配してホモ接合性哺乳動物モデル系を作製するステップとを含む。
【0023】
(本発明の実施方法について)
本発明は、ここに開示した特定の装置及び材料、方法に限定されず、その実施形態を変更できることを理解されたい。また、ここで用いられる用語は、特定の実施例のみを説明する目的で用いるものであり、後述の請求の範囲によってのみ限定され、本発明の範囲を限定することを意図したものではないということも理解されたい。本明細書及び請求の範囲において単数形を表す「或る」、「その(この等)」は、文脈で明確に示していない場合は複数形を含むことに注意されたい。従って、例えば「或る宿主細胞」は当業者には周知の複数の宿主細胞を含む。
【0024】
本明細書で用いた全ての科学技術用語は、別の方法で定義されていない限り、本発明の属する技術分野の一般的な技術者が普通に解釈する意味と同じである。本明細書に記載の全ての文献は、本発明に関連して使用する可能性のある文献に記載された細胞系、プロトコル、試薬、ベクターを記述し開示するために引用した。従来の発明を引用したからと言って、本発明の新規性が損なわれると解釈されるものではない。
【0025】
(定義)
「NIM1キナーゼ」は、天然、合成、半合成或いは組換え体などの任意の種(ウシ、ヒツジ、ブタ、齧歯類、イヌ、サルを含むが好ましくはヒトである哺乳動物)から得られる実質的に精製された酵素を指す。
【0026】
「生物学的に活性」は、構造的または免疫学的、調節的、化学的な機能を有する、天然或いは組換え、または合成分子であるタンパク質を指す。
【0027】
「相補的な」は、プリン塩基とピリミジン塩基との自然な水素結合による塩基対形成を指す。例えば、配列A−C−G−Tは、その相補配列T−G−C−AまたはU−G−C−Aと水素結合する。2つの一本鎖分子の相補性は、ヌクレオチドの幾つかのみが結合する部分的な相補性と、ヌクレオチドの殆ど全てが結合する完全な相補性とがある。核酸鎖間の相補性の程度は、ハイブリダイゼーション及び増幅反応の効率及び強度に影響する。
【0028】
「誘導体」は、化学修飾された核酸分子やタンパク質配列を指す。化学修飾には、分子や配列の生物学的活性または寿命を維持或いは増大する、アルキル基またはアシル基、アミノ基による水素の置換や、グリコシル化、ポリエチレングリコール化、または類似の任意のプロセスが含まれる。
【0029】
「断片」は、有用な機能的特性を維持する核酸分子の任意の一部またはインサイト社クローンを指す。有用な断片は、一般にその長さが少なくとも18の連続するヌクレオチドであり、ハイブリダイゼーション、増幅、またはスクリーニング、更に複製、転写、または翻訳の調節に用いられ得るオリゴヌクレオチドを含む。
【0030】
「ハイブリダイゼーション複合体」は、プリン塩基とピリミジン塩基との間の水素結合の形成による2つの核酸分子の複合体を指す。
【0031】
「リガンド」は、核酸分子やタンパク質の相補部位に特異的に結合する任意の分子や物質、または化合物を指す。このようなリガンドは、核酸及びタンパク質、炭水化物、脂肪、脂質を含む無機及び有機物質の少なくとも1つからなり、本発明の核酸分子やタンパク質の活性を安定化させたり、調節したりする。
【0032】
「核酸分子」は、核酸、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA分子、またはそれらの任意の断片や相補配列を指す。また、「核酸分子」は、ゲノム若しくは合成起源の二本鎖若しくは一本鎖のDNA或いはRNAが可能であり、炭水化物または脂質、タンパク質、その他の物質と結合して、形質転換などの特殊な作用を起こしたり、ペプチド核酸(PNA)等の有用な組成物を形成する。核酸分子はまた、非翻訳5’または3’調節領域またはイントロンを含み得る。核酸分子の大きさは、好ましくは約15〜10,000ヌクレオチドであり、より好ましくは約60〜6,000ヌクレオチドであり、最も好ましくは約400〜5000ヌクレオチドである。「オリゴヌクレオチド」は、アンプリマー(amplimer)、プライマー、オリゴマー、エレメント、標的、及びプローブと実質的に同一であり、好ましくは一本鎖であって、その長さは好ましくは約22〜25ヌクレオチドである。
【0033】
「タンパク質」は、天然或いは合成のアミノ酸配列、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、またはそれらの一部を指す。
【0034】
ここで用いる「一部」は、あらゆる目的に用いられるタンパク質の任意の一部を指すが、特に、分子や化合物のライブラリをスクリーニングしてそのタンパク質の一部と特異的に結合する分子を同定するために、または抗体の産生のために用いられる。
【0035】
「レポーター遺伝子」は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体を標識するために用いられる化学成分または生化学成分である。レポーター遺伝子には、限定するものではないが、放射性核種、酵素、基質、補助因子、インヒビター、蛍光剤、色素剤、化学発光剤、及び磁石粒子等が含まれる。レポーター分子は、特定のポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体に特異的に結合させ、その存在を確認し、それらを定量することができる。
【0036】
「サンプル」は、その最も広い意味で用いられる。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び抗体などを含むサンプルは、体液や、細胞が成長する細胞溶液、即ち培養液の可溶性画分や、細胞から単離或いは抽出した染色体、細胞小器官、または膜や、溶液中に存在する或いは基板に結合されたゲノムDNAまたはRNA、cDNAや、組織、細胞、組織プリント、またはフィンガープリント、皮膚、髪等を含み得る。
【0037】
ポリヌクレオチド配列における「類似性」とは、標準的なアルゴリズムを用いてアラインメントされた少なくとも2つの配列間の一致する残基数から求められる。このようなプログラムは、2つの配列間のアラインメントを最適化するべく、標準的かつ再現性のある方法で比較する配列内にギャップを挿入可能なため、2つの配列間のより有意な比較を達成することが可能である。
【0038】
「特異的な結合」または「特異的に結合する」は、2つの分子間の相互作用を指す。ポリヌクレオチドの場合、特異的な結合には、センス鎖とアンチセンス鎖との間の水素結合、複製または転写に影響を与える一本鎖とタンパク質との間の水素結合、DNA分子の主溝または副溝への分子または化合物の挿入、転写因子、エンハンサー、及びリプレッサー等として機能する少なくとも1つの分子との相互作用が含まれる。ポリペプチドの場合、特異的な結合には、上記したようなポリヌクレオチドとの相互作用、或いはアゴニスト、抗体、またはアンタゴニストなどの分子や化合物との相互作用が含まれる。特異的な結合は、分子間の好適な化学的相互作用または分子相互作用を許容する構造的特性の存在に左右される。
【0039】
「実質的に精製された」は、その自然環境から切り離されてから分離或いは単離された、自然環境では結合しているその他の成分が少なくとも約60%、好適には約75%、最も好適には、約90%取り除かれた核酸分子またはタンパク質を指す。
【0040】
「基板」は、核酸分子またはタンパク質が結合した任意の固体或いは半固体の支持物を指し、膜またはフィルター、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビーズ、ゲル、毛細管または他のチューブ、プレート、ポリマー、微小粒子が含まれる。この基板は、孔または溝、ピン、チャネル、細孔を含む様々な表面形態を有する。
【0041】
(発明)
本発明は、ヒトNIM1キナーゼをコードする新規の核酸分子の発見に基づき、脳疾患及び癌の特徴付け・診断・治療・予防においてこの核酸分子やその断片、またはタンパク質やその一部を直接、或いは組成として用いることに関する。
【0042】
本発明のNIM1キナーゼをコードする核酸分子は、小脳ライブラリ(CRBLNOT01)のインサイト社クローン670279と受精卵の分裂及び分化の極性にとって重要な線虫の推定上のSTK(G733122)との間のBLOCK II相同性一致によってキナーゼとして始めに同定された。完全長の核酸分子であるインサイト社クローン3317608(SEQ ID NO:1)は、インサイト社LIFESEQ GOLDデータベース(1999年3月公表)テンプレート200700.1、アセンブリ670279CB1及びインサイト社クローン(ライブラリ):3317608H1 (PROSBPT03)、4313713H1 (BRAFNOT01)、4617082H1 (BRAYDIT01)、4711644H1 (BRAIHCT01)、2286324H1 (BRAINON01)、2286816H1 (BRAINON01)、2287217H1 (BRAINON01)、2286816R6 (BRAINON01)、2286816T6 (BRAINON01)、3317608T6 (PROSBPT03)、4201896T6 (BRAITUT29)、4624811T6 (FIBRTXT02)、6559834H1 (BRAFNON02)、670279F1 (CRBLNOT01)、670279H1 (CRBLNOT01)、670279R1 (CRBLNOT01)、670279R6 (CRBLNOT01)、670279T6 (CRBLNOT01)、及び4936446H1 (BRAXNOT03)、即ち、SEQ ID NO:3−23を用いてシークエンシングし、構築した。SEQ ID NO:2をコードするポリヌクレオチドの有用な断片には、SEQ ID NO:3−23、SEQ ID NO:1の約414番目のヌクレオチドから約1414番目のヌクレオチド、またはそれらの相補配列から選択された少なくとも18の連続するヌクレオチドの断片が含まれる。
【0043】
図1A−図1Fは、本核酸分子配列及び推論されるアミノ酸に翻訳された配列を示す。ヒトNIM1キナーゼのコード領域を含むインサイト社クローン番号3317608は、Type Culture Collection(ATCC; Manassas VA)に保管され、特許保管指定(Patent Deposit Designation: PT−1217)を受けている。
【0044】
図2に示すように、電子的ノーザン分析は、NIM1キナーゼをコードする転写物の神経系における極めて特異的な発現を示す。これらのライブラリの全ては脳に由来し、その内の5つは癌に関連し、3つは発作に関連し、2つはハンチントン病に関連し、1つは癲癇に関連する。この転写物は、1039のライブラリ及び500万を超える配列を含むLIFESEQデータベース(Incyte Pharmaceuticals)において、脳以外のライブラリでは癌性乳房繊維芽細胞FIBRTXT02及び癌性前立腺PROSBPT03の2つのライブラリにおいてのみ発現が確認された。
【0045】
図3に示すように、ノーザン分析はまた定量PCRを用いて実験室でも行った。ヒトNIM1キナーゼ転写物の発現は、H460、A2780、A375、HDF、HELA、DU145、MDA−MB231、U87−MG、及びBX−PC3細胞系、並びに脳、結腸、子宮、及び胎盤の組織に見られた。注目すべきは、ヒト乳癌細胞系MDA−MB231及び脳組織はそれぞれ、ヒトNIM1キナーゼ転写物の発現が約100倍及び155倍を示し、脳、子宮頚、結腸、肺、卵巣、及び前立腺の癌を示す細胞系、並びに正常な子宮及び胎盤において5倍以上の発現が見られた。
【0046】
SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むNIM1キナーゼは、アミノ酸436個の長さであり、M1からA18までの可能性のあるシグナル配列、及びS56、T108、T114、S123、S169、S221、S282、Y288、T311、T332、T349、S359、S420、及びT429残基における潜在的なリン酸化部位を有する。図4に示すように、ヒトNIM1キナーゼを基準として用いて、アラインメントにおけるキナーゼ(SEQ ID NO:2及びSEQ ID NO:31−36)の触媒領域の保存された残基、モチーフ、及びサブドメインを調べた。分かった保存された残基、モチーフ、及びサブドメインは、G81からV88残基までのサブドメイン1、保存されたA101及びK103残基を有するサブドメイン2、インバリアントなE121残基を有するサブドメイン3、E151からE157残基まで延在するインバリアントな残基M150及びY152を共有するサブドメイン5、H194からN201までの触媒ループであるサブドメイン6B、高度に保存されたトリプレットD214、F215、及びG216を有するサブドメイン7、A238、P239、E240モチーフを含むT229からF242までのサブドメイン8、インバリアントD253を有するサブドメイン9、サブドメイン8のAPEモチーフと相互作用するインバリアントR244を有するサブドメイン11である。触媒ドメインのC末端境界は、H248、A249、及びF250で始まる。PFAM及びPRINTSの両方により、キナーゼドメインが確認された。SEQ ID NO:2のポリペプチドの有用な断片には、SEQ ID NO:2の約1から約295番目までの残基から選択された少なくとも6個の連続するアミノ酸断片が含まれる。
【0047】
図5は、ヒトNIM1キナーゼアッセイを示す。hNIM1キナーゼ−GSTの自己リン酸化がレーン1、レーン2、及びレーン4に見られ、その基質MBPの自己リン酸化がレーン2に見られ、HIST.1の自己リン酸化がレーン4に見られる。キナーゼが存在しない基質MBPのレーン3及びHIST.1のレーン5は自己リン酸化を示さない。レーン6はポジティブコントロールZAP70を示す。
【0048】
ヒトNIM1キナーゼをコードする核酸分子の哺乳動物変異体を、BLASTまたはBLAST2(Basic Local Alignment Search Tool: Altschulら (1997) Nucleic Acids Res 25: 3389−3402; Altschul (1993) J Mol Evol 36: 290−300; 及びAltschulら (1990) J Mol Biol 215: 403−10, with default parameters)を用いて同定し、SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:3−23と整列するクローンをLIFESEQまたはZOOSEQデータベース(Incyte Pharmaceuticals)において同定した。哺乳動物変異体は、ZOOSEQデータベーステンプレート(1999年12月に構築)216150.1(SEQ ID NO 24)及びインサイト社クローン:ラットに由来する701925441H1 (RALITXS03)、701910632H1 (RABYUNN02)、701905514H1 (RABYUNS09)、701293826H1 (RABXNOT04)、及び700949543H1 (RASPNON02)、並びにサルに由来する700706950H1 (MNBFNOT01)、即ちSEQ ID NO:25−30である。これらの核酸分子は、ヒト疾患モデルとなる遺伝子組替え生物を作成するために特に有用であり、このようなヒト疾患モデル動物を用いてこのような疾患に対する有望な治療方法を研究することが可能である。
【0049】
核酸分子(SEQ ID NO:1)及びそれらの断片(SEQ ID NO:3−30)を、ハイブリダイゼーション、増幅、及びスクリーニングに用いて、SEQ ID NO:1とサンプルの類似分子との間の同定及び区別をすることが可能である。ヒト分子及びそれらの哺乳動物変異体を用いて、ヒト疾患モデルとなる遺伝子組替え生物を作製して、このヒト疾患モデルを用いて有望な治療方法を研究することができる。毒学的研究、臨床トライアル、及び被験動物/患者の治療プロフィールを、本核酸分子、タンパク質、並びに本発明の核酸分子及びタンパク質を用いて同定された抗体、分子、及び化合物を用いて作成し、モニタリングすることができる。
【0050】
(本発明の特徴及び使用)
cDNA ライブラリ
ここに開示する特定の実施例では、当分野で周知の方法を用いて哺乳動物の細胞及び組織からmRNAを単離し、これを用いてcDNAライブラリを作製する。上記したインサイト社クローンは、哺乳動物cDNAライブラリから単離された。本発明の代表的な3つのライブラリの作製方法を後述する実施例に示す。コンセンサス配列は、Phrap (P Green, University of Washington, Seattle WA)及びGELVIEW 断片構築システム(Genetics Computer Group, Madison WI)、AUTOASSEMBLERアプリケーション(PE Biosystems, Foster City CA)などのコンピュータプログラムを用いて、インサイト社クローンを含む断片、伸長、及び/またはショットガン配列から化学的かつ/または電子的に構築した。クローン、伸長配列及び/またはショットガン配列は、クラスター及び/または主クラスターの中にに電子的に組み入れられた。
【0051】
シークエンシング
核酸をシークエンシングする方法は当分野で周知であり、そのような方法を用いて本発明の任意の実施例を実施することができる。これらの方法は、DNAポリメラーゼIであるクレノウフラグメント、SEQUENASE、Taq DNAポリメラーゼ及び熱耐性T7 DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech (APB), Picataway NJ)、或いはELONGASE増幅システム(Life Technologies, Rockville MD)に用いられるような校正エクソヌクレアーゼとポリメラーゼとの組み合わせを用いることができる。配列の準備は、HYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific, Sunnyvale CA)、MICROLAB 2200(Hamilton, Reno NV)、及びDNA ENGINEサーマルサイクラー(PTC200; MJ Research, Watertown MA)などの装置を用いて自動的に行うのが望ましい。シークエンシングに用いる装置には、ABI 3700、377または373DNAシークエンシングシステム(PE Biosystems)、及びMEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(APB)等がある。当分野で周知の様々なアルゴリズムを用いて、シークエンシングした配列を解析することができる。これらのアルゴリズムは、Ausubel(1997; Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, unit 7.7) 及びMeyers(1995; Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, pp. 856−853)に記載されている。
【0052】
ショットガンシークエンシングを用いて、目的の特定のクローニングしたインサートを完全な配列にすることが可能である。ショットガン法は、元のインサートを様々な大きさのセグメントにランダムに分割して、これらの断片をベクターにクローニングする。これらの断片を、元のインサートの全配列が分かるまで重複した端部を用いてシークエンシング即ち再構築する。ショットガンシークエンシング方法は当分野で周知であり、熱耐性DNAポリメラーゼや非熱耐性DNAポリメラーゼ、及び目的の核酸分子に隣接する代表的な領域から選択されたプライマーを用いる。当分野で周知のCONSED(Gordon (1998) Genome Res. 8:195−202)などの様々なアルゴリズムやプログラムを用いて、組み立てが不完全な配列を調べる。ベクターやキメラ配列、または欠失配列を含む汚染配列を除去して、組み立てが不完全な配列を完全な配列に組み立てる。
【0053】
核酸配列の伸長
本発明の配列は、当分野で周知の様々なPCR法を用いた方法で伸長することができる。例えば、XL−PCRキット(PE Biosystems)及び入れ子プライマー(nested primer)、市販のcDNAまたはゲノムDNAライブラリ用いてヌクレオチド配列を伸長することが可能である。全てのPCR系の方法に用いることができるように、プライマーは、OLIGO 4.06プライマー分析ソフトウエア(National Biosciences, Plymouth MN)等の市販のソフトウエアを用いて、ヌクレオチドの長さが約22〜30個、GC含量が約50%以上、約55〜68℃の温度で標的配列とアニールするように設計することが可能である。調節エレメントを復活させるために配列を伸長する場合は、cDNAライブラリよりゲノムライブラリを用いる方が良い。
【0054】
(本哺乳動物核酸分子の使用)
ハイブリダイゼーション
本核酸分子及びその断片は、様々な目的のための様々なハイブリダイゼーション技術に用いることができる。プローブは、5’調節領域や非保存領域(即ち、本タンパク質の保存された触媒ドメインをコードするヌクレオチドの5’や3’)などのユニークな領域から作製可能であり、これらのプローブを、ヒトNIM1キナーゼ、アレル変異体、または関連分子をコードする天然の分子を同定するためのプロトコルに用いることができる。このプローブは、DNAまたはRNAからなる一本鎖が可能であって、任意の核酸配列(SEQ ID NO:3−30)と少なくとも50%の配列同一性を有すべきである。ハイブリダイゼーションプローブは、レポーター分子の存在下でのPCR増幅、オリゴ標識化、ニックトランスレーション法、または末端標識化を利用して作製することができる。この核酸分子またはその断片を含むベクターを用いて、RNAポリメラーゼ及び標識したヌクレオチドを加えてin vitroでmRNAプローブを作製することができる。これらの方法はAmersham Pharmacia Biotech(APB)社が販売するキットを用いて行うことができる。
【0055】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー(厳密性)は、プローブのGC含量、塩濃度、及び温度によって決まる。特に、塩濃度を下げる、またはハイブリダイゼーションの温度を上げて、ストリンジェンシーを高めることができる。あるメンブレンを用いるハイブリダイゼーション用の溶液にホルムアミドなどの有機溶媒を加えて、反応が低い温度で起こるようにすることができる。ハイブリダイゼーションは、低いストリンジェンシーの緩衝液(5×SSC、1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS))で、60℃で行うことができるが、核酸配列間に不適正塩基対を含む複合体の形成を許容し得る。続く洗浄は、45℃(中程度のストリンジェンシー)或いは68℃(高いストリンジェンシー)の何れかの温度、0.2×SSC、0.1%SDSなどの高いストリンジェンシーで行う。高いストリンジェンシーでは、ハイブリダイゼーション複合体は、完全に相補的な核酸分子部分のみが安定して保持される。あるメンブレンを用いるハイブリダイゼーションにおいて、好ましくは35%、最も好ましくは50%のホルムアミドをハイブリダイゼーション溶液に加えて、ハイブリダイゼーションを行う温度を下げたり、または、SarkosylやTriton X−100などの界面活性剤及び変性したサケ精子DNAなどのブロッキング試薬を用いてバックグラウンドシグナルを低減することが可能である。ハイブリダイゼーションの条件や要素の選択については当分野で周知であり、Ausubel(前出) 及びSambrook他(1989)Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY.に記載されている。
【0056】
当分野で周知の方法でアレイを準備して分析することができる。オリゴヌクレオチドをアレイのプローブや標的として用いることができる。アレイを用いて、同時に極めて多数の遺伝子の発現レベルをモニタリングし、遺伝子変異体、突然変異及びSNP(一塩基多型)を同定することができる。このようなデータを用いて、遺伝子機能の解明や、症状及び疾患、または障害における遺伝子原理の解明や、症状及び疾患、障害の診断または治療、治療薬の開発、並びにこれらの治療薬の活性のモニタリングが可能である(例えば、Brennan他(1995) 米国特許第5,474,796号; Schena他(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:10614−10619; Baldeschweiler他(1995) PCT出願 WO95/251116; Shalon他(1995) PCT出願WO95/35505; Heller他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. 94:2150−2155; and Heller他(1997) 5,605,662を参照)。
【0057】
ハイブリダイゼーションプローブはまた、天然のゲノム配列のマッピングに有用である。このプローブを、(1)特定の染色体、(2)染色体の特定の領域、(3)ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1作製物、または単一の染色体DNAライブラリなどの人工染色体作製物にハイブリダイズさせることが可能である。
【0058】
発現
NIM1キナーゼをコードする多数の核酸分子をベクターにクローニングして、このタンパク質若しくはその一部を宿主細胞で発現させることができる。この核酸配列を、DNAシャフリング(米国特許第5,830,721号)や部位特異的変異誘発などの方法によって、新規の制限部位を作り出したり、グリコシル化パターンを変えたり、優先コドンを変えて特定の宿主における発現を増大させたり、スプライスバリアントを作り出したり、半減期を延長する等の操作が可能である。この発現ベクターは、特定の宿主における各要素の効率に基づいて選択された様々なサンプルに由来する転写及び翻訳調節エレメント(プロモーター及びエンハンサー、特定の開始シグナル、ポリアデニル化3’配列)を含み得る。in vitro組換えDNA技術、合成技術及び/またはin vivo遺伝子組換え技術を組み合わせて、このベクターに核酸配列と調節エレメントをつなぐことができる。このような技術は、当分野で周知であり、Sambrook(前出、ch. 4, 8, 16 and 17)に記載されている。
【0059】
様々な宿主系を発現ベクターで形質転換することができる。以下に限定するものではないが、これらの中には組換えバクテリオファージやプラスミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌と、酵母発現ベクターで形質転換された酵母と、バキュロウイルス発現ベクターで形質転換された昆虫細胞系と、ウイルスエレメント及び/または細菌エレメントを含む発現ベクターで形質転換された植物細胞系や動物細胞系が含まれる(Ausubel前出、unit 16)。例えば、アデノウイルス転写/翻訳複合体を哺乳動物細胞に用いることができる。配列をウイルスのゲノムのE1若しくはE3領域に結合させた後、この感染ウイルスを用いて形質転換させ、宿主細胞でタンパク質を発現させることができる。また、ラウス肉腫ウイルスエンハンサーやSV40、またはEBV系のベクターを用いてタンパク質を高発現させることができる。
【0060】
核酸配列のルーチンのクローニング及びサブクローニング、増殖は、多機能PBLUESCRIPTベクター(Stratagene, La Jolla CA)またはPSPORT1プラスミド(Life Technologies)を用いて行うことができる。核酸配列をこれらのベクターの多数のクローニング部位に導入すると、lacZ遺伝子が破壊され、形質転換された細菌を確認するための比色法によるスクリーニングが可能となる。更に、これらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitroでの転写及びジデオキシ法によるシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖の調整、入れ子状欠失の作製において有用である。
【0061】
長期に渡って組換えタンパク質を産生させるために、同一或いは別のベクター上の選択マーカー遺伝子或いは可視マーカー遺伝子と共にこのベクターを持続的に細胞株に形質転換することができる。形質転換後、細胞を強化培地で約1〜2日間増殖させてから選択培地に移す。選択マーカー、代謝拮抗物質、抗生物質、または除草剤耐性遺伝子は、関連する選択薬に対する抵抗性を与え、導入配列を確実に発現する細胞の増殖及び回収が可能となる。アントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ、ルシフェラーゼなどの可視マーカーの発現によって同定された、或いは選択培地に生存することによって同定された耐性クローンを、培養技術を用いて増殖することができる。また、可視マーカーを用いて、導入された遺伝子によって発現するタンパク質を定量することができる。宿主細胞が目的の哺乳動物核酸分子を含むか否かの決定は、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション、或いはPCR増幅技術に基づいて行うことができる。
【0062】
宿主細胞は、組換えタンパク質を目的の形に修飾する能力に基づいて選択することができる。このような修飾には、アセチル化及びカルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、及びアシル化等が含まれる。「プレプロ」型を切断する翻訳後プロセシングを利用して、タンパク質のターゲッティング、折り畳み及び/または活性を特定することができる。翻訳後活性のための特定の細胞装置及び特徴的な機構を有するATCCから得られる様々な宿主細胞から、組換えタンパク質の適当な修飾及びプロセシングが確実に行われるように好適な宿主細胞を選択することができる。
【0063】
細胞培地からのタンパク質の回収
精製を容易にするために、ベクターに導入する異種部分は、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6−His、FLAG、MYC等を含む。GST及びCBP、6−Hisはそれぞれ、グルタチオン及びカルモジュリン、金属キレート樹脂が結合した市販のアフィニティーマトリックスを用いて精製される。FLAG及びMYCは、市販のモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を用いて精製される。目的のタンパク質配列と異種部分との間にタンパク分解切断部位を設けて、生成の後の分離が容易にすることができる。組換えタンパク質の発現及び精製の方法はAusubel(前出、unit 16)に記載され市販されている。
【0064】
ペプチドの化学合成
タンパク質若しくはその一部は、組換え方法以外の当分野で周知の化学的方法によって合成することもできる。固相技術を用いるペプチド合成は、バッチ式或いは連続的なフロープロセスによって行うことができる。連続的なフロープロセスでは、αアミノ保護及び側鎖保護アミノ酸残基をリンカーを介して不溶性の高分子支持物に連続的に追加する。メチルアミン誘導体化ポリエチレングリコールなどのリンカーを、ポリ(スチレン−co−ジビニルベンゼン)に結合させて支持レジンを形成する。このアミノ酸残基は、酸不安定Boc(t−butyloxycarbonyl)法若しくは塩基不安定Fmoc(9−fluorenylmethoxycarbonyl)法によって保護されたN−α−である。保護されたアミノ酸のカルボキシル基をリンカーのアミンに結合して、この残基を固相支持レジンに結合させる。Boc若しくはFmocを用いた場合、トリフルオロ酢酸若しくはピペリジンを用いて保護基を除去する。カップリング試薬若しくは予め活性化されたアミノ酸誘導体を用いて、追加する各アミノ酸を結合された残基に付加してから、レジンを洗浄する。完全長のペプチドは、連続的な保護の停止、即ち誘導体化アミノ酸を結合させて合成し、ジクロロメタン及び/またはN、N−ジメチルホルムアミドで洗浄する。このペプチドは、ペプチドカルボキシル末端とリンカーとの間で切断され、ペプチド酸またはペプチドアミドが作られる(Novabiochem 1997/98 Catalog and Peptide Synthesis Handbook, San Diego CA pp. S1−S20)。ABI 431 A ペプチドシンセサイザー(PE Biosystems)などの装置を用いて、ペプチドを自動合成することができる。タンパク質またはその一部は調整用の高性能液体クロマトグラフィーによって実質的に精製し、その組成をアミノ酸解析またはシークエンシングによって確認することができる(Creighton (1984) Proteins. Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY)。
【0065】
抗体の準備及びスクリーニング
ヤギ及びウサギ、ラット、マウス、ヒト等を含む様々な宿主は、ヒトNIM1キナーゼ若しくはその任意の一部を注入して免疫することができる。フロイントなどのアジュバント及びミネラルゲルと、リゾレシチン及びpluronic polyol、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、ジニトロフェノールなどの表面活性物質とを用いて免疫反応を高めることができる。オリゴペプチドやペプチド、またはタンパク質の一部を用いて、少なくとも約5個のアミノ酸、より好ましくは10個の天然のタンパク質の一部と同一のアミノ酸を含む抗体を誘発させる。キメラ分子に対する抗体を産生させるために、オリゴヌクレオチドをKLHなどのタンパク質と融合させることができる。
【0066】
モノクローナル抗体は、培地の連続細胞株によって抗体を産生させる任意の技術を用いて準備する。以下に限定するものではないが、このような技術には、ハイブリドーマ技術及びヒトB細胞ハイブリドーマ技術、EBV−ハイブリドーマ技術が含まれる(例えば、Kohler他(1975) Nature 256:495−497; Kozbor他(1985) J. Immunol. Methods 81:31−42: Cote他(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026−2030; and Cole他(1984) Mol. Cell Biol. 62:109−120.を参照)。
【0067】
別法では、当分野で周知の方法を用いる上記した一本鎖抗体を生産する技術で、エピトープ特異的一本鎖抗体を生産する。ヒトNIM1キナーゼのエピトープに対して特異的に結合する部位を含む抗体断片を生産することが可能である。限定するものではないが、このような断片には、例えば、抗体分子のペプシン消化によって作製されたF(ab’)2断片及びこのF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を減少させて作製したFab断片が含まれる。別法では、Fab発現ライブラリを作製して、目的の特異性を有するモノクローナルFab断片の高速かつ容易に同定できるようにする(例えば、Huse他(1989) Science 246:1275−1281を参照)。
【0068】
ヒトNIM1キナーゼまたはその一部を用いて、ファージミドまたはBリンパ球免疫グロブリン・ライブラリをスクリーニングして、目的の特異性を有する抗体を同定する。確立された特異性を有するモノクローナル抗体或いはポリクローナル抗体のいずれか一方を用いる、競合的結合またはイムノアッセイの様々なプロトコルが当分野で周知である。このようなイムノアッセイは通常、このタンパク質とその特異的な抗体との複合体形成の測定を行う。2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる2部位モノクローナル系イムノアッセイが好ましいが、競合的結合によるアッセイを用いることもできる(Pound (1998) Immunochemical Protocols. Humana Press, Totowa NJ)。
【0069】
アッセイのための分子の標識化
多様な標識化及び接合技術は当分野で周知であり、様々な核酸やアミノ酸、及び抗体のアッセイに用いることができる。標識した分子の合成は、32P−dCTPまたはCy3−dCTP、Cy5−dCTPなどの標識したヌクレオチドや35Sメチオニンなどのアミノ酸を組み込むためのAmersham Pharmacia BiotechキットまたはPromega (Madison WI)を用いて行うことができる。ヌクレオチド及びアミノ酸は、BIODIPYまたはFITC(Molecular Probes, Eugene OR)などの試薬を用いて分子中に存在するアミン及びチオール基または他の基に化学的に結合させることで、様々な物質(蛍光剤または化学発光剤、色素産生剤など)で直接標識することができる。
【0070】
(診断)
本核酸分子、断片、オリゴヌクレオチド、相補的なRNA及びDNA分子、及びPNAを用いて、遺伝子発現の変化、mRNAの過剰な発現の不在/存在の検出及び定量、または治療期間中のmRNAレベルのモニタリングを行うことができる。同様に、ヒトNIM1キナーゼに特異的に結合する抗体を用いて本タンパク質を定量することもできる。発現の変化に関連する疾患には、静坐不能、アルツハイマー病、健忘症、筋萎縮性側索硬化症、不安、遺伝性運動失調、脳性麻痺、痴呆、皮膚筋炎、ジストニー、ダウン症候群、癲癇、虚血性脳血管障害、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、ハンチントン病、細菌性及びウイルス性髄膜炎、多発性硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、脳腫瘍、神経線維腫症、パーキンソン病、ピック病、多発性筋炎、色素性網膜炎、分裂病、発作、並びに腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮などの癌が含まれる。診断アッセイにハイブリダイゼーションまたは増幅技術を用いて、遺伝子発現の変化を検出するべく、患者からの生体サンプルの遺伝子発現レベルを標準的なサンプルの値と比較する。質的または量的なこのような比較法は当分野で周知である。
【0071】
例えば、本核酸分子またはプローブを標準的な方法で標識して、これをハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者からの生体サンプルに加える。インキュベーションの後、このサンプルを洗浄し、ハイブリダイゼーション複合体に関連する標識(シグナル)の量を定量して標準値と比較する。患者のサンプルにおける標識の量が標準値と著しく異なっている場合は、関連する症状や疾患、または異常症の存在が示唆される。
【0072】
遺伝子発現に関連する症状や疾患、または異常症の診断のための基準を設けるために、正常或いは標準的な発現プロフィールを確立する。この発現プロフィールは、動物かヒトの正常な被験体から採取した生体サンプルを、ハイブリダイゼーションまたは増幅に好適な条件下で、プローブと結合させることによって確立することができる。標準的なハイブリダイゼーションの量を、正常な被験者から得た値と、実質的に精製された標的配列を所定量用いた実験値とを比較することによって求めることができる。このように求めた標準値を、特定の症状や疾患、または異常症を示す患者のサンプルから得た値と比較することができる。標準値と特定の症状に関連する値との偏差からその症状を診断する。
【0073】
またこのようなアッセイを用いて、動物実験や臨床検査における特定の治療計画の効果を評価したり、患者個人の治療をモニタリングすることができる。病態が確認されると治療プロトコルを開始し、通常ベースで診断アッセイを繰り返して、被験者における発現のレベルが正常な患者に示される値に近づき始めたか否かを調べることが可能である。連続して行ったアッセイの結果から、数日から数ヶ月に渡る期間の治療効果を調べることができる。
【0074】
免疫学的方法
特異的なポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体の何れかを用いるタンパク質の検出及び定量は当分野で周知である。このような技術には、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)及びラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化セルソーター法(FACS)が含まれる。2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる2部位モノクローナル系イムノアッセイが好ましいが、競合的結合アッセイを用いることもできる(例えば、Coligan 他 (1997) Current Protocols in Immunology, Wiley−Interscience, New York NY; 及び Pound 前出)。
【0075】
(治療)
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)の所定の領域と図4A−図4Cに示すキナーゼ(SEQ ID NO:31−35)の所定の領域との間に、キナーゼ触媒ドメインの文脈における化学的及び構造的な類似性が存在する。加えて、遺伝子発現が、図2及び図3に示されているように、脳、前立腺、及び乳房、並びに癌に密接に関連する。ヒトNIM1キナーゼは、脳及び神経系の疾患、特に脳腫瘍、発作、癲癇、ハンチントン病、並びに脳、子宮頚、結腸、肺、卵巣、及び前立腺の癌において或る役割を果たしていると思われる。脳腫瘍及び乳癌などの発現の大幅な上昇に関連する症状の治療においては、発現またはタンパク質活性を低下させることが望ましい。
【0076】
一実施例では、発現若しくは活性の上昇に関連する疾患の治療または予防のために、ヒトNIM1キナーゼのインヒビター、アンタゴニスト、または抗体を投与し得る。発現の変化に関連する疾患には、静坐不能、アルツハイマー病、健忘症、筋萎縮性側索硬化症、不安、遺伝性運動失調、脳性麻痺、痴呆、皮膚筋炎、ジストニー、ダウン症候群、癲癇、虚血性脳血管障害、小脳網膜血管芽腫(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、ハンチントン病、細菌性及びウイルス性髄膜炎、多発性硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、脳腫瘍、神経線維腫症、パーキンソン病、ピック病、多発性筋炎、色素性網膜炎、分裂病、発作、並びに腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、及び子宮などの癌が含まれる。
【0077】
別の実施例では、医薬用担体と共にNIM1キナーゼのインヒビター、アンタゴニスト、または抗体を含む医薬組成物を患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むこの内在性タンパク質の発現または活性の変化に関連する症状の治療または予防を行うことが可能である。
【0078】
更なる実施例では、本核酸分子またはその断片の相補配列を発現するベクターを患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含む本タンパク質の寿命や発現、または活性の変化に関連する症状の治療または予防を行うことが可能である。
【0079】
本核酸分子、またはそれに相補的な分子やその一部、本タンパク質またはその一部の内の任意のもの、これらの核酸分子やタンパク質を運ぶベクター、及びそれらのリガンドをその他の薬剤と共に投与することが可能である。併用療法に用いる薬剤の選択は、当業者が従来の薬学原理に従って行うことができる。薬剤を併用することによって、少量の各薬剤で特定の症状の予防または治療において相乗的な効果をあげることが可能である。
【0080】
核酸を用いる遺伝子発現の調節
遺伝子の発現は、NIM1キナーゼをコードする遺伝子の5’または3’調節領域、或いは他の調節領域に対して相補的或いはアンチセンス分子を設計することで調節することが可能である。転写開始部位に対して設計されたオリゴヌクレオチドが好ましい。同様に、ポリメラーゼ、転写因子、または調節分子の結合を阻止する三重螺旋塩基対合で遺伝子発現を阻止することができる(Gee 他 In: Huber and Carr (1994) Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing, Mt. Kisco NY, pp. 163−177)。また、リボソームとmRNAとの結合を阻止して翻訳が行われないように、相補的な分子を設計することも可能である。或るいは、核酸分子またはその断片のライブラリをスクリーニングして、翻訳されない調節配列に特異的に結合する核酸分子または断片を同定することも可能である。
【0081】
また、酵素活性をもつRNA分子であるリボザイムを用いて、RNAの特異的な切断を触媒してもよい。リボザイム作用のメカニズムは、まずリボザイム分子と相補的な標的RNAとの配列特異的なハイブリダイゼーションが起こり、次にGUA及びGUU、GUCなどの部位においてヌクレオチド鎖が切断される。このような部位が一旦同定されたら、オリゴヌクレオチドを機能不全にしうる二次構造特性について、同じ配列を有するオリゴヌクレオチドを評価することができる。また、候補標的としての適合性は、RNA分解酵素保護アッセイを用いて、相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを検査して評価することができる。
【0082】
本発明の相補的な核酸及びリボザイムは、固相ホスホラミダイト化学合成法を用いて、in vitroまたはin vivoでの組換え発現によって調製することが可能である。更に、RNA分子は、その5’及び/または3’末端に隣接配列を付加して、或いは分子のバックボーンのホスホジエステル結合の代わりにホスホロチオネートまたは2’O−メチルを用いて、細胞内の安定性及び半減期が増大するように改変することができる。この改変はPNAの作製に固有であるが、他の核酸分子にも適用することができる。例えばイノシン、queosine、wybutosineなどの伝統的でない塩基を含めて、またはアセチル基、メチル基、チオ基でウリジン、アデニン、シチジン、グアニン、及びチミンを修飾して、内在性エンドヌクレアーゼに対する分子の有効性を低くする。
【0083】
スクリーニング及び精製アッセイ
ヒトNIM1キナーゼをコードする核酸分子を用いて、分子または化合物のライブラリをスクリーニングして特異的な結合親和性を調べることが可能である。このライブラリは、生物系において本核酸分子の活性、複製、転写、または翻訳を調節するアプタマー、DNA分子、RNA分子、PNA、ペプチド、転写因子などのタンパク質、エンハンサー、リプレッサー、及びその他のリガンドを含み得る。このアッセイは、特異的な結合が許容される条件下で、本核酸分子またはその断片を分子のライブラリと結合させるステップと、特異的な結合を検出して、一本鎖または二本鎖の本核酸分子と特異的に結合する少なくとも1つの分子を同定するステップとを含む。
【0084】
一実施例では、本発明のポリヌクレオチドを、単離され精製された分子または化合物のライブラリと共にインキュベートし、当分野で周知の、例えばゲル遅延アッセイ(gel−retardation assay)(米国特許第6,010,849号)または網状赤血球溶解産物転写アッセイを用いて結合活性を測定することができる。別の実施例では、本ポリヌクレオチドをバイオプシー及び/または培養細胞及び培養組織に由来する核抽出物でインキュベートしてもよい。本ポリヌクレオチドとこの核抽出物における分子または化合物との間の特異的な結合を、まずゲルシフトアッセイ(gel shift assay)を用いて測定し、後にこれらの分子または化合物に対する抗体のレベルの上昇により確認することが可能である。これらの抗体をアッセイに加えると、ゲル遅延アッセイにおいてスーパーシフトが起こる。
【0085】
別の実施例では、本ポリヌクレオチドを用いて、当分野で周知のアフィニティクロマトグラフィ法を用いて分子または化合物を生成することが可能である。一実施例では、本ポリヌクレオチドを、ポリマー樹脂またはジェル上で臭化シアン基と化学的に反応させる。次に、サンプルを流して本ポリヌクレオチドと反応すなわち結合させる。本ポリヌクレオチドと結合した分子または化合物を、流す培養液の塩濃度を上昇させて本ポリヌクレオチドから遊離させて回収する。
【0086】
更なる実施例では、本タンパク質またはその一部を用いてサンプルからリガンドを精製することが可能である。哺乳動物タンパク質またはその一部を用いてリガンドを精製する方法は、特異的な結合が許容される条件下で、このタンパク質またはその一部をサンプルと結合させ、このタンパク質とリガンドとの間の特異的な結合を検出し、結合したタンパク質を回収し、適当なカオトロピック剤を用いてこのタンパク質を精製したリガンドから分離することを含む。
【0087】
好適な実施例では、あらゆるスクリーニングアッセイにおいて、ヒトNIM1キナーゼまたはその一部を用いて、分子または化合物のライブラリをスクリーニングすることが可能である。このようなスクリーニングアッセイに用いるタンパク質の一部は、溶液中に遊離させるか、非生物基板または生物基板(例えば細胞表面上)に固定させるか、または細胞内に局在化させることができる。例えば、ある方法では、組替え核酸分子で安定的に形質転換され、ポリペプチドを発現してその細胞表面上にポリペプチドが存在する生存可能すなわち安定した真核宿主細胞をスクリーニングアッセイに用いることができる。この細胞をリガンドのライブラリすなわち複数のライブラリに対してスクリーニングし、発現ポリペプチドとそのリガンドとの間の複合体の結合すなわち形成の特異性を測定することができる。このタンパク質と分子との間の特異的な結合を測定することができる。スクリーニングするライブラリの種類によって、このタンパク質と特異的に結合するDNA分子、RNA分子、ペプチド核酸、ペプチド、タンパク質、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体、免疫グロブリン、インヒビター、及び薬剤またはその他のあらゆるリガンドをこのアッセイで同定することができる。
【0088】
一実施態様では、本発明は、言及することをもって本明細書の一部とする米国特許5,876,946号に記載されているような極めて微量のアッセイ量及び極めて微量の検査化合物を用いるハイスループットのスクリーニング方法を提供する。この方法を用いて、特異的な結合により多数の分子及び化合物をスクリーニングすることができる。別の実施態様では、本発明はまた、競合的薬剤スクリーニングアッセイの方法を提供する。このアッセイでは、本ポリペプチドと結合可能な中和抗体が、本ポリペプチド、そのオリゴペプチド、或いはその一部と結合可能な検査化合物と特異的に競合する。スクリーニングアッセイによって同定された分子または化合物を用いて、哺乳動物モデル系を作成して、それらの毒性、診断、または治療の可能性を評価することができる。
【0089】
薬理学
医薬組成物とは、所望の目的を達成するのに効果的な量の活性成分を含んでいる物質である。効果的な薬用量の決定は、当分野の技術者の能力による部分が大きい。どんな化合物であっても、初めは細胞培養アッセイ或いは動物モデルの何れかによって治療効果のある薬用量を推定する。また、動物モデルを使って、好適な濃度範囲及び投与経路を決定する。次に、このような情報を用いて、ヒトへの効果的な投与経路及び薬用量を決定する。
【0090】
治療効果のある薬用量とは、症状または病態を改善するタンパク質またはインヒビターの量である。このような薬剤の薬用効果及び毒性は、例えば、ED50(集団の50%に医薬的効果がある投与量)及びLD50(集団の50%に致命的である投与量)などの細胞培養または実験動物における標準的な製薬方法によって決定することができる。或る投与量における毒性効果と治療効果との比率が治療指数となり、LD50/ED50と示すことができる。高い治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータを用いて、ヒトへ適用する薬用量の範囲を決定する。
【0091】
モデル系
動物モデルを用いて、ヒトの暴露に相当する暴露条件にして、動物モデルがヒトに類似の表現型反応を示すバイオアッセイを行うことができる。哺乳動物が最も一般的な動物モデルである。大抵の感染症、癌、薬剤、及び毒物の研究には、ラットやマウスなどの齧歯類が用いられる。これは、低コスト、入手の容易性、寿命、生殖能、及び参考文献の豊富さからである。齧歯類近交系及び非近交系は、目的の遺伝子の過剰或いは過少な発現の生理学的な原因を調査するのに有用なモデルであり、疾患の診断及び治療方法の開発にも有用である。特定の遺伝子を大量に発現する(例えば、乳汁中に分泌される)同系哺乳動物は、その遺伝子によって発現されるタンパク質の便利な供給源となり得る。
【0092】
中毒学
中毒学とは、生物系における物質の影響を研究する学問である。殆どの毒物研究はラットまたはマウスを用いて行われる。ラットまたはマウスの生理機能、行動、恒常性プロセス、及び致死率における質的及び量的変化を観察して、毒性プロフィールを作成し、その物質に曝露された後に生じるであろうヒトの健康状態を調べる。
【0093】
遺伝子毒物学は、内因性または自然発生的に誘導される遺伝子変異の速度に物質が与える影響を特定し分析する。遺伝毒性物質は通常、核酸との相互作用を促進する共通の化学的或いは物理的特性を有し、突然変異した染色体が子孫に受け継がれるのが最大の害である。毒物研究によって、受胎前の両親のどちらか一方、または妊娠中の母、発生段階の生物に投与された場合の、子孫の組織における構造的或いは機能的な異常の頻度を増加させる物質を同定することが可能である。マウス及びラットは生殖周期が短く、統計的必要性を満たす多数の子孫を出産する能力から、これらの試験にはマウス及びラットが用いられる場合が最も多い。
【0094】
急性毒物の検査は、被験体への物質の一回の投与に基づき、その物質による症状または致死率を決定する。この検査では、(1)初めの投与量の範囲を決定する実験と、(2)有効な投与量の範囲を狭める実験と、(3)用量応答曲線を確立する実験の3つの実験が行われる。
【0095】
中期に亘る毒性検査では繰り返し物質を投与する。このような検査には、ラットやイヌが一般的に用いられ、分類学上異なった種からデータを収集する。物質を高い投与濃度で3〜4ヶ月間、毎日投与することで、発癌を除く、成体動物における殆どの毒性の種類が明らかになるという研究結果が多数報告されている。
【0096】
一年或いはそれ以上の長期に渡る慢性毒性検査は、物質に毒性がないこと、或いは物質の発癌の可能性の何れかを実証するために行われる。ラットで検査が行われる場合、少なくとも3つの検査グループと1つの対照グループが用いられ、最初から最後まである間隔で検査及びモニタリングが行われる。
【0097】
遺伝子組換え動物モデル
目的の遺伝子を過剰或いは過小に発現する遺伝子組換え齧歯類を同系交配し、それを用いてヒト疾患モデルを作製したり、治療薬検査や毒物検査を行う(例えば、米国特許第4,736,866号、同第5,175,383号、及び同第5,767,337号を参照)。場合によっては、導入遺伝子が、胚発生中若しくは出生後の特定の時期に特定の種類の組織で活性化され得る。導入遺伝子の発現は、実験的薬剤治療を施す前、その最中、またはその後の、遺伝子組換え動物における表現型、組織特異的なmRNAの発現、または血清や組織のタンパク質レベルの分析からモニタリングすることができる。
【0098】
胚性幹細胞
齧歯類胚から単離された胚性幹細胞(ES細胞)は、胚組織を形成する可能性を維持している。ES細胞がキャリアとなる胚の中に導入されると、正常な発生が再開され、生まれる動物の組織の一部を担うことになる。ES細胞は、実験用のノックアウト及びノックイン齧歯類系を作製するのに好適な細胞である。マウス129/SvJ細胞株などのマウスES細胞は、マウスの初期胚から採取されてから当分野で周知の培養条件下で増殖されたものである。遺伝子組換え系の作製に用いるベクターは、疾患候補遺伝子及びマーカー遺伝子配列を含み、このマーカー遺伝子により導入された疾患遺伝子の存在を確認することができる。このベクターを、当分野で周知の方法でES細胞に形質転換され、この形質転換されたES細胞を特定し、C57BL/6マウス株などからのマウス細胞胚盤胞内に微量注入する。この胚盤胞を複数の偽妊娠メスに外科的に導入して、生まれてくるキメラ子孫のそれぞれがその遺伝子型を有するようにして、それらを交配してヘテロ接合系またはホモ接合系を作り出す。
【0099】
ヒト胚盤胞に由来するES細胞を、in vitroで操作して8個の異なった細胞系譜に分化することが可能である。これらの細胞系譜を用いて、in vitroで、様々な細胞型及び組織の分化を研究する。細胞型には、神経細胞、造血系、及び心筋細胞に分化する内胚葉、中胚葉、外胚葉の細胞型が含まれる。
【0100】
ノックアウト分析
遺伝子ノックアウト分析では、哺乳動物遺伝子のある領域が、ネオマイシン・ホスホトランスフェラーゼ遺伝子などの非哺乳動物遺伝子を含むように酵素によって改変される(neo ; Capecchi (1989) Science 244:1288−1292)。改変された遺伝子が培養ES細胞に形質転換され、相同組換えにより内在性のゲノムに組み込まれる。挿入された配列は、内在性遺伝子の転写及び翻訳を阻害する。この形質転換細胞を齧歯類胞胚に注入し、この胞胚を偽妊娠メスに移植する。この遺伝子組換え子孫をクロス交配して、この哺乳動物遺伝子の機能的な複製物が存在しないホモ接合近交系を作り出す。
【0101】
ノックイン分析
ES細胞を用いてノックインヒト化動物(ブタ)または遺伝子組換えヒト疾患動物モデル(マウスまたはラット)を作り出すことができる。ノックイン技術を用いて、ヒト遺伝子のある領域を動物ES細胞に注入し、そのヒト配列が動物細胞のゲノムの中に組み込まれるようにする。形質転換ES細胞を胞胚に注入し、この肺胞を上記したように注入する。類似のヒトの症状の治療についての情報を収集するべく、遺伝子組換え子孫即ち近交系を有望な医薬品で処置して観察する。これらの方法を用いて、幾つかのヒト疾患モデルを作り出す。
【0102】
更なる実施例では、限定するものではないが、トリプレット遺伝子コード及び特異的な塩基対相互作用などの特性を含む、現在知られている核酸配列の特性に新しい技術が依存する場合は、本哺乳動物タンパク質をコードする核酸分子を、開発中のあらゆる分子生物学技術に用いることが可能である。
【0103】
【実施例】
本発明は、記載した特定の装置及び物質、方法に限定されるものではないことを理解されたい。特定の実施例について説明するが、同等の実施例を用いて本発明を具現することも可能である。本発明の範囲は、前記請求の範囲によってのみ限定されるものであって、記載した実施例によって限定されるものではない。また、以下に記載の実施例は、本発明を例示するためのものであって本発明を限定するものではない。例示目的で、ヒト小脳ライブラリ(CRBLNOT01)、前立腺ライブラリ(PROSBPT03)、及び標準化された脳ライブラリ(BRAINON01)の作製方法を記載する。
【0104】
1 cDNA ライブラリの作製
小脳
小脳ライブラリの作成に用いた組織は69歳の白人男性から得た(RT95−05−0301; International Institute for Advanced Medicine, Exton PA)。この凍結組織を、POLYTRONホモジナイザー(PT−3000; Brinkmann Instruments, Westbury NJ)を用いてホモジナイズして溶解した。試薬及び抽出方法は、RNA単離キット(Stratagene)に含まれているものを用いた。この溶解物を、L8−70M超遠心分離器(Beckman Coulter, Fullerton CA)において、SW28ローターを用いて5.7M CsClクッションに対して室温で18時間、毎分25,000回転で遠心分離を行った。RNAをフェノールクロロホルム、pH8.0で2回、酢酸フェノール、pH4.0で1回抽出し、0.3M酢酸ナトリウム及び2.5倍量のエタノールを用いて沈殿させ、水中で再懸濁し、DNアーゼで37℃で15分間処置した。このRNAをOLIGOTEXキット(Qiagen, Chatsworth CA)で単離し、cDNAライブラリの作製のために用いた。
【0105】
前立腺
59歳の白人男性から根治前立腺切除の際に採取した病変前立腺組織を用いてPROSBPT03ライブラリを作製した。病理学的には、この腫瘍は、Gleasonグレード3+3の腺癌であって、左右の周辺に及ぶ微視的な病巣を伴っていた。この腫瘍は限定的で胸膜には及んでいなかった。進行した前立腺上皮内癌が、右側の周囲で確認された。この患者には、前立腺特異的抗原(PSA)の上昇が見られた。家族歴には、両親の脳血管疾患、並びに兄弟の前立腺癌が含まれていた。
【0106】
cDNAライブラリを作製するために、SUPERSCRIPTプラスミドシステム(Life Technologies)の推奨プロトコルに従って2.4μgのポリA RNAを用いた。一本鎖cDNAの合成には、オリゴd(T)プライミングを用い、二本鎖の合成には、DNAポリメラーゼI、大腸菌リガーゼ、及びRNアーゼHを組み合わせて用いた。このcDNAをT4ポリメラーゼで平滑化し、このcDNAの平滑末端にSal Iリンカーを付加した。Sal Iが付加された二本鎖cDNAを、Not Iで消化し、SEPHAROSE CL4B カラム(Amersham Pharmacia Biotech)で分画した。
【0107】
400bpを超えるこれらの小脳cDNAをpSPORT Iプラスミドに繋ぎ、このプラスミドをDH5αコンピテント細胞(Life Technologies)に形質転換した。400bpを超えるこれらの前立腺cDNAをpINCYプラスミド(Incyte Pharmaceuticals)のNotI部位及びEcoRI部位に繋ぎ、このプラスミドをDH5αまたはELECTROMAX DH1OBコンピテント細胞(Life Technologies)に形質転換した。
【0108】
脳ライブラリの標準化
例を示すために、ヒト脳ライブラリ(BRAINON01)の標準化について説明する。大腸菌株DH12Sコンピテント細胞(Life Technologies)におけるBRAINOT03プラスミドライブラリの約4.9×106の独立したクローンを、カルベニシリン(25mg/l)及びメチシリン(1mg/ml)選択下で、培地で成長させ、その後に電気穿孔法により形質転換を行った。ライブラリの存在レベルに従って余剰のcDNA複製物の数を減らすために、cDNAライブラリを以下の変更点を除きSoares他(1994, Proc Natl Acad Sci 91: 9228−9232)の方法に従って1回標準化した。変更点は次の通りである。プライマー伸長反応における鋳型に対するプライマーの比率を2:1から10:1に高めた。反応液のdNTP濃度を、より長いプライマー伸長物(400〜1000ヌクレオチド)が形成できるように各dNTPを150μMまで低下させた。アニーリングハイブリダイゼーションを13時間から48時間に延長した。標準化したライブラリの一本鎖DNAサークルを、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーで精製し、ランダムプライミングにより部分的な2本鎖に変換し、大腸菌株DH10Bコンピテント細胞(Life Technologies)の中に電気穿孔法により導入した。
【0109】
2 pINCY プラスミドの作製
このプラスミドは、pSPORT1プラスミド(Life Technologies)をEcoRI制限酵素(New England Biolabs, Beverly MA)で消化し、オーバーハングした端部を、クレノウ酵素(New England Biolabs)及び2’−デオキシヌクレオチド5’−三リン酸(dNTPs)を用いて二本鎖に合成した。このプラスミドが自己連結した後、このプラスミドで細菌宿主となる大腸菌株JM109を形質転換した。
【0110】
細菌(pSPORT 1−△RI)によって生成された中間プラスミドは、EcoRIでは消化されず、Hind III (New England Biolabs)で消化し、オーバーハングした端部をクレノウ酵素及びdNTPsで二本鎖にした。リンカー配列をリン酸化し、5’平滑末端に繋ぎ、EcoRIで消化し、自己連結させた。JM109宿主細胞を形質転換した後、プラスミドを単離し、Hind IIIではなくEcoRIで選択的な消化の検査を行った。この基準を満たす1つのコロニーをpINCYプラスミドとを呼ぶ。
【0111】
NotI及びEcoRI制限酵素を用いて作製したライブラリからcDNAを取り込むプラスミドの能力を検査した後、いくつかのクローンをシークエンシングし、約0.8kbのインサートを含む1つのクローンを選択し、そのクローンから大量のプラスミドを生成した。NotI及びEcoRIで消化した後、ライブラリの作製に用いるためにこのプラスミドをアガロースゲル上で分画し、QIAQUICKカラム(Qiagen)を用いて精製した。
【0112】
3 cDNA クローンの単離及びシークエンシング
プラスミドDNAを細胞から遊離し、MINIPREPキット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)またはREAL Prep 96プラスミドキット(Qiagen)のいずれかを用いて精製した。このキットには、96ウェルブロック、及び960回の精製を行うための試薬が含まれている。以下の変更点を除き、推奨プロトコルに従った。(1)細菌を、25mg/lのカルベニシリン及び2.4%のグリセロールと共に1mlの滅菌Terrific Broth(Life Technologies)において培養した。(2)接種後、細胞を19時間培養してから、0.3mlの溶解バッファで溶解した。(3)イソプロパノール沈殿の後、プラスミドDNAのペレットを0.1mlの蒸留水で再懸濁した。プロトコルの最終ステップの後、サンプルを96ウェルブロックに移し、4℃で保管した。
【0113】
MICROLAB 2200システム(Hamilton, Reno NV)及びDNA ENGINEサーマルサイクラー(MJ Research)を用いて、シークエンシングするためにcDNAを調整した。このcDNAを、ABI PRISM377シークエンシングシステム(PE Biosystems)またはMEGABASE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いてSanger and Coulson (1975; J Mol Biol 94: 441−448)の方法でシークエンシングした。単離したもののほとんどを、標準的なABIプロトコル及びキット(PE Biosystems)に従って、0.25×〜1.0×の濃度の溶液容量でシークエンシングした。別法では、Amersham Pharmacia Biotechから入手した溶液及び色素を用いてcDNAをシークエンシングした。
【0114】
4 cDNA 配列の伸長
本核酸分子は、cDNAクローン及びオリゴヌクレオチドプライマーを用いて伸長した。一方のプライマーは既知の断片の5’の伸長を開始するために合成し、他方のプライマーは既知の断片の3’の伸長を開始するために合成した。開始プライマーは、OLIGO 4.06ソフトウエア(National Biosciences, Plymouth MN)若しくは別の好適なプログラムを用いて、約22〜約30個のヌクレオチドの長さ、約50%以上のGC含量で、685〜72℃の温度で標的配列にアニールするように設計した。ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を形成するヌクレオチドのストレッチは排除した。
【0115】
選択されたcDNAライブラリを鋳型として用いてこの配列を伸長した。2段階以上の伸長が必要な場合は、追加の或いは入れ子状のプライマー(nested primer)を設計した。好適なライブラリは、大きなcDNAを含むように大きさが選択されたライブラリである。また、ランダムプライミングしたライブラリも、遺伝子の5’及び上流領域を備えた多くの配列を含むため好適である。ランダムプライミングライブラリは、オリゴd(T)ライブラリが完全長のcDNAを形成しなかった場合に特に有用である。ゲノムライブラリは、調節エレメントを得るためにプロモーター結合領域の5’を伸長する際に有用である。
【0116】
米国特許第5,932,451号に開示されているような方法を用いてPCR法で高い忠実度の増幅を達成した。PCRは、DNA ENGINE サーマルサイクラー(MJ Research)を用いて96ウェルプレートで行った。反応混合液には、鋳型DNA及び200 nmolの各プライマー、反応緩衝液(Mg2 +、(NH4)2SO4、β−メルカプトエタノールを含む)、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)、ELONGASE酵素(Life Technologies)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含まれている。プライマーの組、PCI A及びPCI B(Incyte Pharmaceuticals)に対して以下のパラメーターで増幅を行った。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保管。
別法では、プライマーの組、T7とSK+(Stratagene)に対して以下のパラメーターで増幅を行った。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 57℃で1分間
ステップ4 68℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を20回繰り返す
ステップ6 68℃で5分間
ステップ7 4℃で保管。
【0117】
各ウェルのDNA濃度は、100μlのPICOGREEN定量試薬(1×TEにおける試薬0.25% (v/v); Molecular Probes)及び0.5μlの希釈していないPCR産物を不透明な蛍光光度計プレート(Corning, Acton MA)の各ウェルに分注して、DNAがその試薬と結合できるようにして測定した。このプレートをFluoroskan II (Labsystems Oy)でスキャンして、サンプルの蛍光を測定してDNAの濃度を定量化した。反応混合物の5〜10μlのアリコットを1%のアガロースミニゲル上で電気泳動して解析し、何れの反応がより長い配列の伸長に成功したかを決定した。
【0118】
伸長したヌクレオチド配列を脱塩及び濃縮してから384ウェルプレートに移し、CviJIコレラウィルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)で消化し、pUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結する前に音波処理または切断した。ショットガンシークエンシングのために、消化したヌクレオチド配列を低濃度(0.6%〜0.8%)のアガロースゲル上に分離させ、断片を切断し、ゲルをAGARACE酵素(Promega)で消化した。T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を用いて伸長したクローンをpUC 18ベクター(Amersham Pharmacia Biotech)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で制限部位の延び出しを処理してから、大腸菌コンピテント細胞に形質転換した。形質転換細胞が抗生物質を含む培地で選択され、それぞれのコロニーを切りとって、LB/2Xカルベニシリン培養液の入った384ウェルプレートの中で、37℃で一晩培養した。
【0119】
この細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Pharmacia Biotech)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAを増幅した。
ステップ1 94℃で3分間
ステップ2 94℃で15秒
ステップ3 60℃で1分間
ステップ4 72℃で2分間
ステップ5 ステップ2、3、及び4を29回繰り返す
ステップ6 72℃で5分間
ステップ7 4℃で保管。
上記したようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量した。DNA回収率の悪いサンプルは、上記した条件で再び増幅した。サンプルを20%のジメチルサルホサイド(dimethysulphoxide)(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMICエネルギー移動シークエンシングプライマー及びDYENAMIC DIRECTサイクルシークエンシングキット(Amersham Pharmacia Biotech)またはABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reactionキット(PE Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0120】
5 cDNA クローン及びそれらから導き出されたポリペプチドの相同性検索
配列表の核酸分子及びそれらから導き出されたアミノ酸配列を、GenBank、SwissProt、BLOCKSなどのデータベースにおいて検索する。すでに同定されアノテーションの付けられた配列またはドメインを含むこれらのデータベースを、BLASTまたはBLAST 2 (Altschulら、前出; Altschul、前出)を用いて検索し、アラインメントを作成し、完全に一致する或いは相同な配列を決定する。このアラインメントは、原核生物(細菌)または真核生物(動物、真菌、または植物)を起源とする配列に対するものである。或いは、Smith and Smith(1992, Protein. Engineering 5: 35−51)に記載されているようなアルゴリズムを用いて、一次配列パターン及び二次構造ギャップペナルティを処理することが可能である。本明細書に記載した全ての配列は、その長さが少なくとも49ヌクレオチドであり、不要な塩基(A、C、G、或いはTではなくNと記載)は12%以下である。
【0121】
Karlin (前出) に詳述されているように、問い合わせ配列とデータベース配列との間のBLASTによる一致を統計学的に評価し、ヌクレオチドに対しては10−25、ペプチドに対しては10−14の閾値を満たす一致のみを記録した。相同性はまた、以下のように計算した積スコアによって評価した。まず、BLASTにおける核酸またはアミノ酸同一性(問い合わせ配列と参照配列との間の)のパーセントに、最大可能BLASTスコアのパーセント(問い合わせ配列及び参照配列の長さに基づく)を乗じてから、100で除した。実験室で用いられるハイブリダイゼーション法と比べ、完全一致に対する電子的なストリンジェンシーを70と設定し、完全一致に対する保守的な下限を約40に設定した(不要な塩基対による1〜2%のエラーを有する)。
【0122】
無料で利用可能な配列比較アルゴリズムであるBLASTソフトウエア一式(NCBI, Bethesda MD; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.html)は、既知の核酸分子を整列するために用いる“blastn”、及び核酸分子或いはアミノ酸分子のいずれかの直接ペアワイズ比較に用いられるBLAST2を含む様々な配列分析プログラムを含む。BLASTプログラムは、一般に、例えば以下のようにデフォルト設定されたギャップ及びその他のパラメーターで実行される。
【0123】
Matrix: BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: −2
Open Gap: 5 及び Extension Gap: 2 penalties
Gap x drop−off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter: on
同一性或いは類似性を、配列の全長或いは配列の一部に対して測定することができる。Brennerらが(1998; Proc Natl Acad Sci 95: 6073−6078、言及することをもって本明細書の一部とする)、配列同一性により構造の相同性を同定するBLASTの能力を分析した。この分析により、少なくとも150残基の配列アラインメントに対して30%の同一性が信頼できる閾値であり、少なくとも70残基の配列アラインメントに対して40%の同一性が信頼できる閾値である。
【0124】
本明細書の哺乳動物核酸分子を、LIFESEQ GOLDデータベースで見出した構築されたコンセンサス配列または鋳型と比較した。cDNA、伸長、完全長、及びショットガンシークエンシングプロジェクトに由来するコンポーネント配列をPHREDで分析し、質のスコアを割り当てた。許容できる質スコアを有する全ての配列に対して様々なプリプロセシング及び編集を行い、質の低い3’末端、ベクター及びリンカー配列、ポリA尾部、Aluリピート、ミトコンドリア及びリボソーム配列、及び細菌汚染配列を除去した。編集した配列は少なくともその長さが50bpでなければならない。情報の少ない配列、並びにジヌクレオチドリピート、Aluリピートなどの繰り返しエレメントはNで置換するかマスクした。
【0125】
編集した配列を、配列が遺伝子ビンに割り当てられる構築処理を行った。それぞれの配列は1つのビンにのみ属し、鋳型を形成するべく各ビンにおける配列を構築した。新規にシークエンシングしたコンポーネントをBLAST及びCROSSMATCHを用いて存在するビンに加えた。ビンに加えるためにはこのコンポーネント配列は、BLAST質スコアが150以上であって、少なくとも82%の局所的な同一性のアラインメントでなければならない。それぞれのビンにおける配列を、PHRAPを用いて構築した。いくつかの重複するコンポーネント配列を有するビンはDEEP PHRAPを用いて構築した。それぞれの鋳型の向きは、そのコンポーネント配列の数及び向きに基づいて決定した。
【0126】
それぞれのビンを互いに比較して、局所類似性が82%以上のビンを1つにまとめて再構築した。局所同一性が95%未満の鋳型を有するビンは分けた。鋳型は、STITCHER/EXON MAPPERアルゴリズムで分析した。このSTITCHER/EXON MAPPERアルゴリズムは、スプライスバリアント、択一的スプライシングエキソン、スプライスジャンクション、並びに組織の種類或いは疾患の状態により発現が異なる択一的にスプライシングされた遺伝子などの存在の確率を分析することができる。構築処理を繰り返し行い、GBpriなどのGenBankデータベースに対してBLASTを用いて鋳型にアノテーションを付けた。完全一致は、200塩基対に対する95%以上の局所同一性から100塩基対に対する100%の局所同一性を有すると定義し、相同一致は、≦1×10−8のE値(確率スコア)を有すると定義した。また鋳型を、GENPEPTに対してフレームシフトFASTx分析を行い、相同一致を≦1×10−8のE値を有すると定義した。鋳型の分析及び構築については、1999年3月25日に出願された米国特許出願第09/276,534号に開示されている。
【0127】
構築の後に、鋳型をBLAST、モチーフ、及びその他の機能分析法で分析し、1997年3月6日に出願の米国特許出願第08/812,290号及び同第08/811,758号、1997年10月9日に出願の米国特許出願第08/947,845号、及び1998年3月4日に出願の米国特許出願第09/034,807号に記載されている方法を用いてタンパク質を階層に分類した。次に鋳型を、3つ全ての前方読み枠にそれぞれの鋳型を翻訳して、それぞれの翻訳を、HMMERソフトウエアパッケージ(Washington University School of Medicine, St. Louis MO; http://pfam.wustl.edu/)を用いて隠れマルコフモデルをベースにしたタンパク質ファミリー及びドメインのPFAMデータベースにおいて検索した。
【0128】
本核酸分子を、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering)及びLASERGENEソフトウエア(DNASTAR)を用いて更に分析し、GenBankの齧歯類、哺乳類、脊椎動物、原核生物、及び真核生物のデータベース、SwissProt、BLOCKS、PRINTS、PFAM、及びPrositeなどの公共のデータベースに対して問い合わせた。
【0129】
6 染色体マッピング
Stanford Human Genome Center (SHGC)、Whitehead Institute for Genome Research (WIGR)、及びGenethonなどの公共の情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝子マッピングデータを用いて、マッピングできる配列表の核酸分子が存在するかを調べた。NIM1キナーゼをコードする核酸分子のマッピングされた全ての断片が、同じ位置にマッピングされた全ての関連する調節及びコード配列に割り当てられた。遺伝子マップ位置は、ヒト染色体の範囲すなわち区間として表される。センチモルガン(cM)(ヒトDNAの100万塩基対に概ね相当する)で表されるマップ位置の範囲は、染色体p腕の末端から測定する。
【0130】
7 ハイブリダイゼーション技術及び分析
核酸分子の基板への固定
核酸分子を以下に示す方法で基板に固定する。核酸分子の混合液をジェル電気泳動により分画後、毛細管輸送によってナイロン膜に移す。別法では、核酸分子を個別にベクターに結合して、それを細菌宿主細胞に挿入してライブラリを形成する。次に核酸分子を以下の方法で基板に配列する。第1の方法では、個別のクローンを含む細菌細胞を機械的に摘み上げてナイロン膜に整列させる。このナイロン膜を、選択薬(用いるベクターによって異なるが、カルベンシリン、カナマイシン、アンピシリン、またはクロラムフェニコールなど)を含むLB寒天培地に載置し、37℃で16時間インキュベートする。この膜を寒天培地から取り除き、次にこの膜をコロニー側を上にして10%SDS、変性溶液(1. 5 M NaCl、0. 5 M NaOH)、中和液(1. 5 M NaCl、1 M Tris、pH 8. 0)に入れ、2×SSCにおいて10分間づつ2回インキュベートする。次にこの膜を、STRATALINKER UVクロスリンカー(Stratagene)でUV照射する。
【0131】
第2の方法では、インサートに隣接したベクター配列に相補的なプライマーを用いて、PCRを30サイクル行い細菌ベクターから核酸分子を増幅する。PCR増幅により、拡散の濃度を開始時の1〜2 ngから最終的に5μgまで増大させる。約400 bp〜約5000 bpの増幅した拡散をSEPHACRYL−400ビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて精製する。精製した拡散を、手動で或いはドット/スロットブロッティングマニフォールド及び吸入装置でナイロン膜に配列し、上記した変性、中和、及びUV照射によって固定する。精製した拡散を、米国特許第5,807,522号に開示された方法でポリマーコートスライドガラスに機械的に配列して固定する。ポリマーコートスライドガラスは、顕微鏡スライドガラス(Corning, Acton MA)を0.1%SDS及びアセトンで超音波洗浄した後、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products, West Chester PA)においてエッチングし、次に95%エタノールにおいて0.05%アミノプロピルシランでコーティングし、オーブンで110℃で硬化させて準備する。処理中及び処理後にこのスライドガラスを蒸留水で十分に洗浄する。次に、核酸分子をスライド上に配列し、STRATALINKER UVクロスリンカー(Stratagene)を用いてこの核酸分子のアレイをUV照射してスライド上に固定する。次にこのアレイを、室温で0.2%SDSで洗浄し、蒸留水で3回すすぐ。非特異的な接合部位を、アレイをリン酸バッファー(PBS:Tropix, Bedford MA)に於ける0.2%カゼインにおいて60℃で30分間インキュベートしてブロックし、次にこのアレイを0.2%SDSで洗浄し、前記したように蒸留水で洗い流す。
【0132】
メンブレンを用いるハイブリダイゼーションのためのプローブの準備
本配列表の核酸分子に由来するハイブリダイゼーションプローブは、メンブレンハイブリダイゼーションにおいてcDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングするために用いられる。プローブを準備するために、核酸分子を45μl TEバッファにおいて40〜50 ngの濃度に希釈し、100℃で5分間加熱して変性し、短時間遠心分離する。次に、変性した核酸分子をREDIPRIMEチューブ(Amersham Pharmacia Biotech)に加え、青色が十分に拡散するまで軽く混合し、短時間遠心分離する。5μlの[32P] dCTPをチューブに加え、その内容物を37℃で10分間インキュベートする。この標識化反応を5μlの0. 2M EDTAを加えてストップし、PROBEQUANT G−50マイクロカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いてプローブを組み込まれなかったヌクレオチドから精製する。精製したプローブを100℃で5分間加熱してから氷上で2分間冷却し、以下に記載するようにメンブレンハイブリダイゼーションに用いる。
【0133】
ポリマーコートスライドを用いるハイブリダイゼーションのためのプローブの準備
サンプルから単離したmRNAに由来するハイブリダイゼーションプローブを用いて、アレイハイブリダイゼーションにおいて本配列表の核酸分子をスクリーニングする。プローブは、GEMbrightキット(Incyte Pharmaceuticals)を用いて、mRNAを9μl TEバッファにおいて200 ngの濃度に希釈し、5μlの5×バッファ、1μlの0.1 M DTT、3μlのCy3またはCy5標識混合物、1μlのRNアーゼインヒビター、1μlの逆転写酵素、及び5μlの1×酵母コントロールmRNAを加えて準備する。酵母コントロールmRNAは、非コード酵母ゲノムDNA(W. Lei, unpublished)からin vitro転写によって合成する。量的コントロールとして、0.002 ng、0.02 ng、0.2 ng、及び2 ngのコントロールmRNAからなるセットを、サンプルmRNAに対してそれぞれ1:100,000、1:10,000、1:1000、及び1:100 (w/w)の比率で逆転写反応液に希釈する。mRNAの異なった発現パターンを検査するために、第2のセットのコントロールmRNAを、1:3、3:1、1:10、10:1、1:25、及び25:1 (w/w)の比率で逆転写反応液に希釈する。反応液を混合し、37℃で2時間インキュベートする。次に反応液を85℃で20分間インキュベートし、2つの連続したCHROMA SPIN+TE 30カラム(Clontech)を用いてプローブを精製する。精製したプローブを、DEPC処理水で90μlに希釈して、2μlの1mg/mlグリコーゲン、60μlの5M酢酸ナトリウム、300μlの100%エタノールを加えてエタノール沈殿させる。このプローブを20,800×gにおいて20分間遠心分離し、ペレットを12μlの再懸濁バッファに再懸濁させ、65℃で5分間加熱し、完全に混合する。上記したようにプローブを加熱及び混合してから氷上で保管する。プローブを以下に記載するように高密度のアレイハイブリダイゼーションに用いる。
【0134】
メンブレンを用いるハイブリダイゼーション
メンブレンを、1%Sarkosyl及び1×高リン酸バッファ(0. 5M NaCl、0.1 M Na2HPO4、5 mM EDTA、pH 7)を含むハイブリダイゼーション溶液において55℃で2時間プレハイブリダイゼーションする。15mlの新しいハイブリダイゼーション溶液に希釈したプローブをメンブレンに加える。55℃で16時間、メンブレンにプローブをハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの後、メンブレンを1mM Tris(pH 8. 0)、1%Sarkosylにおいて25℃で15分間洗浄し、1mM Tris(pH 8. 0)において25℃で15分間づつ4回洗浄する。ハイブリダイゼーション複合体を検出するために、XOMAT−ARフィルム(Eastman Kodak, Rochester NY)をメンブレンに一晩−70℃で露出し、現像して目で確認する。
【0135】
ポリマーコートスライドを用いるハイブリダイゼーション
プローブを65℃で5分間加熱し、5415Cマイクロ遠心分離器(Eppendorf Scientific, Westbury NY)を用いて毎分9400回転で5分間遠心分離し、アレイの表面に18μlのアリコットを載せカバースリップで覆う。このアレイを、顕微鏡スライドより僅かに大きいキャビティを有する防水容器に移す。この容器の角から140μlの5×SSCを加えてその内部を100%の湿度に保つ。アレイを含む容器を60℃で約6時間半インキュベートする。このアレイを、1×SSC、0.1%SDSにおいて45℃で10分間洗浄し、0.1×SSCにおいて45℃で10分間づつ3回洗浄した後、乾燥させる。
【0136】
ハイブリダイゼーション反応を、絶対ハイブリダイゼーション(absolute hybridization)方式またはディファレンシャルハイブリダイゼーション方式で行う。絶対ハイブリダイゼーション方式の場合、1つのサンプルからのプローブをアレイの要素にハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション複合体が形成された後にシグナルを検出する。シグナルの強度がサンプルにおけるプローブmRNAのレベルに相関する。ディファレンシャルハイブリダイゼーション方式の場合、2つの生体サンプルにおける遺伝子のセットの異なった発現を分析する。2つのサンプルからのプローブを準備し、異なった標識成分で標識する。2つの標識したプローブの混合物をアレイ要素にハイブリダイズさせ、2つの異なった標識からの蛍光シグナルをそれぞれ別に検出できる条件下でシグナルを検査する。アレイ上の要素に、2つの生体サンプルに由来するプローブのそれぞれが実質的に同数ハイブリダイズする場合、明瞭な複合蛍光が得られる(Shalon W095/35505)。
【0137】
ハイブリダイゼーション複合体をInnova 70混合ガス10Wレーザーを備えた顕微鏡(Coherent, Santa Clara CA)で検出する。この顕微鏡は、Cy3を励起するために488nmのスペクトル線を発生し、Cy5を励起するために632nmのスペクトル線を発生することができる。励起レーザー光を20倍の顕微鏡対物レンズ(Nikon, Melville NY)を用いてアレイに集束させる。アレイを含むスライドを顕微鏡上のコンピュータ制御されたXYステージ上に載せ、20μmの解像度で対物レンズを通してラスタースキャンする。ディファレンシャルハイブリダイゼーション方式の場合、2つの蛍光物質を順番にレーザーで励起する。波長に応じて放出された光を2つの蛍光物質に対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に分割する。アレイと光電子増倍管との間に配置された好適なフィルターを用いてシグナルをフィルタリングする。用いられる蛍光物質の最大発光波長は、Cy3が565nmであり、Cy5が650nmである。スキャンの感度は、プローブ混合物に加えられた酵母コントロールmRNAによって生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイのある位置に相補的なDNA配列が含まれていると、その位置におけるシグナルの強度が、ハイブリダイズ種(hybridizing species)の重量比で1:100,000の関係となり得る。
【0138】
光電子増倍管の出力をIBM互換性パーソナルコンピュータにインストールした12ビットRTI−835H アナログ/デジタル変換ボードを用いてデジタル化する(Analog Devices, Norwood MA)。このデジタル化したデータを、イメージとして表示する。この場合、シグナル強度を、20色線形変換を用いて、青(弱いシグナル)から赤(強いシグナル)の疑似色スケールにマッピングする。データはまた量的にも分析する。2つの異なった蛍光物質が同時に励起されて測定された場合、データを、各蛍光物質に対する発光スペクトルを用いて蛍光物質間の光学クロストーク(発光スペクトルの重複による)をまず補正する。各スポットからのシグナルがグリッドの各要素の中心に来るように、蛍光物質シグナル強度の上にグリッドを重ね合わせる。各要素内の蛍光シグナルを統合して、シグナルの平均強度に対応する数値を求める。シグナル分析に用いるソフトウエアはGEMTOOLSプログラム(Incyte Pharmaceuticals)である。
【0139】
8 ノーザン分析
電子的
BLASTに適用するコンピュータ技術を用いて、GenBankまたはLIFESEQデータベース(Incyte Pharmaceuticals)などのヌクレオチドデータベースにおいて同一或いは関連する分子を検索した。ヒト及びラットの配列に対する積スコアを以下のように計算した。BLASTスコアをヌクレオチド同一性のパーセントで乗じて、その値を2つの配列の内の短い方の長さの5倍で除した。したがって、短い方の配列の長さに対する100%のアラインメントが積スコア100となる。積スコアは、2つの配列間の類似性の程度及び一致する配列の長さを考慮している。例えば、積スコアが40では、一致は正確でエラーは1%〜2%であり、70以上の積スコアではその一致は完全である。類似分子すなわち関連分子は、通常は積スコアが8〜40の範囲の分子を選択することによって同定することができる。
【0140】
70の積スコアで実施した電子的ノーザン分析の結果が図2に示されている。この分析では、cDNAライブラリを系、器官/組織、及び細胞の種類によって幾つかのカテゴリーに分類した。そのカテゴリーには、心血管系、結合組織(特に癌性の乳房線維芽細胞)、消化系、胚、内分泌系、外分泌腺、女性及び男性生殖器(特に癌性の前立腺)、生殖細胞、血液及び免疫系、肝臓、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器官、皮膚、顎口腔系、未分類/混合、及び尿管が含まれる。各カテゴリーにおいて、実際に本配列を数をカウントし、そのカテゴリーの合計ライブラリ数に対する発現したライブラリ数を示した。
【0141】
定量 PCR
定量PCRを用いて、様々な細胞系及び組織におけるヒトNIM1キナーゼの発現を調べた。ATCCなどから得られる細胞系には、H460ヒト非小細胞肺癌、A2780ヒト卵巣癌系、A375ヒトメラノーマ細胞系、HDFヒト上皮繊維芽細胞、HELAヒト子宮頚癌、DU145アンドロゲン誘導性前立腺癌細胞系、MDA−MB231ヒト乳癌細胞、U87グリア芽腫腫瘍細胞、及びBX−PC3膵臓癌細胞がある。これらの細胞系を培養皿に載置し、10%のウシ胎児血清、及び5%CO2における2mMグルタミンを90%のコンフルエントになるまで加えたRPMIにおいて成長させた。組織、脳、結腸、子宮、及び胎盤をClontech社のMTNブロット(Human I、II、III、及びIV)として得た。
【0142】
ノーザン分析は、ABI PRISM 7700シークエンシングシステム及びTAQMANアッセイ試薬(TAQMAN Universal PCR Master mix)を用い、製造者による取扱説明書に従って定量PCRにより行った(すべてPE Biosystems)。全ての反応を3通り行った。
【0143】
反応に用いたプライマーには、SEQ ID NO:37−39が含まれる。相対的な定量は、標準として18s RNAを用いて行った。この標準化方法の直線性は、Spiess and Ivell(1999; Biotechniques 26: 46−50、言及することをもって本明細書の一部とする)に記載されている。
【0144】
9 相補的な核酸分子
本核酸分子に相補的な配列或いはその断片を用いて、遺伝子の発現を検出したり、低下させたり、阻害することができる。約15〜約30個の塩基からなるオリゴヌクレオチドの使用について記載するが、それより小さい或いは大きい配列の断片、またはその誘導体(PNA)の場合でも同じ方法を用いることができる。好適なオリゴヌクレオチドは、Oligo4.06ソフトウエア(National Biosciences)を用いて選択した。プロモーターの結合を阻害して転写を阻止するために、最も好ましくはオープンリーディングフレームの開始コドンの前の約10個のヌクレオチドである最もユニークな5’配列に結合するように相補的なヌクレオチドを設計する。翻訳を阻害するために、本哺乳動物ポリペプチドをコードするmRNAへのリボソームの結合を阻害するべく相補的なオリゴヌクレオチドを設計する。
【0145】
転写または翻訳を阻害するために作製したアンチセンス分子を用いるのに加えて、ゲノム配列(例えばエンハンサーやイントロン)或いはトランス作動性調節性遺伝子に対するアンチセンス分子を設計して遺伝子発現を変化させることができる。同様に、三重らせん塩基対形成として知られているHogeboom塩基対形成法を用いてアンチセンス阻害を行うことができる。三重らせんの塩基対形成に関与するアンチセンス分子は、ポリメラーゼ、転写因子、または調節分子と結合するために二本鎖の間を広げる二重らせんの能力を損なわせる。
【0146】
このようなアンチセンス分子を発現ベクターに導入して、好適な細胞または組織を形質転換する。これには、効果を検査するために細胞系への発現ベクターの導入、一過性或いは短期の治療のための器官、腫瘍、滑液キャビティ、または血管系への発現ベクターの導入、または長期或いは安定した遺伝子治療のための単細胞または他の生殖系への発現ベクターの導入が含まれる。一過性の発現は、ベクターの複製を伴わない場合には1ヶ月以上持続し、ベクターの複製を引き起こす好適なエレメントが形質転換/発現系に用いられている場合には3ヶ月以上持続する。
【0147】
アンチセンス分子をコードするベクターで好適な分裂細胞を安定的に形質転換することにより、遺伝子組換え細胞系、遺伝子組換え組織、または遺伝子組換え器官を作製することができる(米国特許第4,736,866号)。ベクターを取り込んで十分な量のベクターを複製するこれらの細胞により、安定した組み込みが可能となり、本哺乳動物タンパク質をコードする核酸分子の活性を弱める或いは完全に消失させる十分なアンチセンス分子を産生させることができる。
【0148】
10 NIM1 キナーゼの発現
ヒトNIM1キナーゼの発現は、サル及び昆虫細胞系の発現系を用いて行った。cDNAを、QIAPREPスピンミニプレップキット及びPLASMID MAXIキット(共にQiagen)を用いて取扱説明書に従って精製した。
【0149】
一過的な発現の場合、cDNAをpcDNA3.1(−)/myc−His Bベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)にクローニングして、ベクターpcDNA3−Nim1を、CaPO4トランスフェクションキット2−463335(Eppendorf−5 Prime, Boulder CO)を用いてCOS 1−1細胞に形質転換した。形質転換する前に、4×106の細胞を10cmの組織培養皿に撒いて24時間培養した。形質転換の日に、500 mlの2×DNA沈殿バッファ、62 mlのM CaCL2、10 mg (10 ml)のpcDNA3−Nim1、及び428 mlの水でCaP04−DNAを沈殿させた。この混合液を室温で20分間インキュベートし、次にゆっくりと9 mlの培養液(DMEM、10%ウシ胎児血清、2mM グルタミン、10 mg/mlのペニシリン、及び10 mg/mlのストレプトマイシン)を加えた。細胞を5% CO2で、37℃で4時間インキュベートした。培養液を新しい培養液に替え、細胞を更に48時間インキュベートした。
【0150】
Sf21昆虫細胞を、BaculoGoldトランスフェクションキット(BD Pharmingen, San Diego CA)に付属の取扱説明書に従って同時形質転換した。2×106の細胞を6 cmの組織培養皿に蒔き、27℃で15分間インキュベートした。4 mg (4 ml)のpVL1392/GST−NIM1発現ベクターを0.5 mg (0.5 ml)のBaculoGold DNAと共に室温で5分間インキュベートした。細胞培養液(TNM−FH)を除去して1mlのバッファAに替えた。DNA混合物を1 mlのバッファBで希釈し、一滴ずつコンフェクションプレートに加えた。プレートを27℃で4時間インキュベートした後、培養液を替え細胞を5日間インキュベートした。組換えウイルスを3回増幅して107pfu/mlのウイルスストックを得た。1.2×107のSf21昆虫細胞を10 mlのウイルスストックで感染させ、27℃でインキュベートした。3日後に、細胞を溶解してタンパク質を精製した。
【0151】
11 タンパク質の精製
His 精製
COS−1細胞を毎分1000回転で遠心分離し、4 mlの溶解バッファ(5 mM イミダゾール+0.5 mM NaCI+20 mM Na2HPO4+Complete protease inhibitor cocktail tablets、(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis IN))において再懸濁し、超音波処理した。毎分10000回転の回転数で、4℃で10分間遠心分離して可溶性画分を回収した。組換えNim1キナーゼを、製造者の取扱説明書に従って固定した金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC, Invitrogen)で精製した。精製度を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)及びクーマーシー青色染色により測定した。タンパク質の濃度を、Bradford法により測定した。
【0152】
GST 精製
Sf21細胞を、毎分800回転で遠心分離し、10 mlの溶解バッファ(PBS+1 mM orthovanadate+20 mM DTT+Complete protease inhibitor cocktail tablets (Roche Molecular Biochemicals))において再懸濁し、超音波処理した。可溶性画分を、毎分10000回転、4℃で10分間遠心分離して回収した。組換えNim1キナーゼを、製造者の取扱説明書に従ってグルタチオン−SEPHAROSEレジン(Amersham Pharmacia Biotech)上でのアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。精製濃度を、Bradford法により測定した。
【0153】
ウェスタンブロット分析の場合は、タンパク質をSDS−PAGEにより分離し、標準的な材料及び技術(ECL, Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、免疫ブロッティング(GST−HRP結合抗体またはHis−HRP結合抗体(Santa Cruz Biotechnology)の何れかを用いて)により分析した。
【0154】
12 本タンパク質の特徴付け
インサイトクローン番号3317608のin vitro翻訳は、TNT T7クイック結合転写/翻訳システム(Promega)を用いて製造者の取扱説明書に従って行った。SDS−PAGE分析により、48 kdのタンパク質が存在することが分かった。タンパク質の大きさは、鋳型としてpcDNA3−Nim1を発現させて確認した。
【0155】
先述したように、Nim1キナーゼは哺乳動物細胞及び昆虫細胞の両方において発現した。精製したタンパク質をSDS−PAGEで分析して、50 kdのタンパク質(myc−Hisタグを含む)及び80kdのタンパク質(GSTタグを含む)のそれぞれが確認された。
【0156】
13 ヒト NIM1 キナーゼアッセイ
in vitroキナーゼアッセイを、100 ngの組換えNim1−GSTを10μCiの[y−32P]−ATP (3000 Ci/mmol; Amersham Pharmacia Biotech)を含む20μlのキナーゼバッファ(50 mM Hepes pH 7.5、3 mM MgCl2及びMnCl2 、10 mM DTT、及び6μM NaOVa)において、2μgのミエリン塩基性タンパク質(MBP)またはヒストン(HIST)と共に37℃で30分間インキュベートして行った。反応は、サンプルバッファを加え100℃で5分間加熱して停止させた。サンプルを、SDS−PAGEにより分析し、ゲルを乾燥させてオートラジオグラフィー分析を行った。
【0157】
14 NIM1 キナーゼに特異的な抗体の生産
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法でNIM1キナーゼを精製し、これを用いてマウスやウサギを免疫する。抗体は、以下の標準的なプロトコルを用いて生産する。別法では、NIM1キナーゼのアミノ酸配列をLASERGENEソフトウエア(DNASTAR)を用いて解析し、免疫原性の高い領域を決定する。通常はC末端付近或いは親水性領域内に存在する免疫原性エピトープを選択して合成し、これを用いて抗体を増大させる。通常は15残基程度の長さのエピトープを、Fmoc法でABI 431Aペプチドシンセサイザー(PE Biosystems)で合成し、これをN−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応でKLH(Sigma−Aldrich)に結合させて免疫原性を高める。
【0158】
エピトープ−KLH複合体をフロイントの完全アジュバントと共に投与してウサギを免疫する。その後、間隔を置いてフロイントの不完全アジュバントで免疫化を繰り返す。マウスの場合は少なくとも7週間、ウサギの場合は少なくとも12週間が経過した後、抗血清を採取して抗ペプチド活性を検査する。この検査には、このペプチドをプラスチックに結合し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させ、洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。当分野で周知の方法を用いて抗体力価及び形成された複合体の収量を測定する。
【0159】
15 特異的な抗体を用いる天然タンパク質の精製
天然或いは組換えの哺乳動物タンパク質を、このタンパク質に特異的な抗体を用いてイムノアフィニティークロマトグラフィで実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、この抗体をCNBr−活性化SEPHAROSEレジン(Amersham Pharmacia Biotech)に共有結合させて作製する。このタンパク質を含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、このタンパク質を優先的に吸着できるように、界面活性剤の存在下で高イオン強度緩衝液でそのカラムを洗浄する。結合後、緩衝液(pH 2〜3)或いは高濃度の尿素やチオシアネートイオンを用いてそのカラムからこのタンパク質を溶離させて抗体とこのタンパク質との結合を切断し、このタンパク質を回収する。
【0160】
16 本核酸分子若しくはタンパク質と特異的に結合する分子のスクリーニング
本核酸分子やその断片、或いは本タンパク質やその断片を、32P−dCTP、Cy3−dCTP、Cy5−dCTP (Amersham Pharmacia Biotech)、またはBIODIPYやFITC (Molecular Probes)でそれぞれ標識する。予め基板上に配列した候補分子または化合物のライブラリを、標識した核酸分子またはタンパク質の存在下でインキュベートする。核酸分子或いはアミノ酸配列の何れかが存在する条件下でインキュベートした後、その基板を洗浄し、特異的な結合或いは複合体形成を示唆する標識が保持されている基板上の全ての部分をアッセイし、リガンドを同定する。様々な濃度の核酸若しくはタンパク質で得られたデータを用いて、標識した核酸またはタンパク質と結合した分子との親和性を計算する。
【0161】
17 2−ハイブリッドスクリーン
酵母2−ハイブリッド法、即ちMATCHMAKER LexA Two−Hybridシステム(Clontech Laboratories, Palo Alto CA)を用いて、本発明の哺乳動物タンパク質と結合するペプチドをスクリーニングする。本タンパク質をコードする核酸分子をpLexAベクターの複数のクローニング部位に挿入し、連結して大腸菌に形質転換する。mRNAから調整したcDNAを、pB42ADベクターの複数のクローニング部位に挿入して、結合させ、大腸菌に形質転換させてcDNAライブラリを作製した。pLexAプラスミド及びpB42AD−cDNAライブラリ作製物を大腸菌から単離し、これらを2:1の比率で用いて、polyethylene glycol/lithium acetateプロトコルに従ってコンピテント酵母EGY48 [p8op−lacZ]細胞を同時形質転換した。形質転換した酵母細胞をヒスチジン、トリプトファン、及びウラシルを含まない合成ドロップアウト(SD:synthetic dropout)培地(‐His、‐Trp、‐Ura)に移し、コロニーが成長してカウント出来るまで30℃でインキュベートした。このコロニーを1×TE(pH 7.5)の最小容量にプールし、2%アガロース(Gal)、1%ラフィノース(Raf)、及び80 mg/ml のX−Gal (5−bromo−4−chloro−3−indoryl−b−D−galactoside)を加えたSD培地(‐His、‐Leu、‐Trp、‐Ura)に移し、青いコロニーの成長を調べた。発現したタンパク質とcDNA融合タンパク質との間の相互作用により、EGY48におけるLEU2レポーター遺伝子の発現が活性化され、ロイシンを含まない培地(‐Leu)でコロニーが成長した。また、相互作用により、p8op−lacZ レポーター作製物からのβ−ガラクトシダーゼの発現が活性化され、X−Gal上で成長したコロニーにおいて青色コロニーが生成される。
【0162】
発現タンパク質とcDNA融合タンパク質との間のポジテブな相互作用は、個々のポジティブコロニーを分離して、これらのコロニーをSD液体培地(‐Trp、‐Ura)で30℃で2日間成長させるて確認することができる。培養物のサンプルをSD培地(‐Trp、‐Ura)に移して、コロニーが現れるまで30℃でインキュベートする。このサンプルを、SDプレート(‐Trp、‐Ura)及びSDプレート(‐His、‐Trp、‐Ura)上でレプリカ培養する。ヒスチジン含有SD培地で成長するがヒスチジンを含まない培地では成長しないコロニーは、pLexAプラスミドが欠損している。ヒスチジンを必要とするコロニーをSD(Gal、Raf、X−Gal、‐Trp、‐Ura)上で成長させ、白いコロニーを単離して成長させた。本哺乳動物タンパク質と物理的に相互作用するタンパク質をコードする核酸分子を含むpB42AD−cDNAプラスミドを、酵母細胞から単離して特徴付けることが可能である。
【0163】
本明細書に記載した全ての特許及び刊行物に言及することを以って本明細書の一部とする。本発明の範囲及び概念から逸脱することなく本発明の方法及びシステムの種々の改変が可能であることは当業者には明らかであろう。特定の好適な実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。実際に、分子生物学或いは関連する分野の専門家には、本明細書に記載の本発明の実施例の様々な改変は、特許請求の範囲に含まれることが容易に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【図1A】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図1B】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図1C】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図1D】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図1E】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図1F】
ヒトNIM1キナーゼ(SEQ ID NO:2)をコードするヒト核酸分子(SEQ ID NO:1)を示す。このアラインメントは、MACDNASIS PROソフトウエア(Hitachi Software Engineering, South San Francisco CA)を用いて作成した。
【図2】
脳組織(74%)、乳癌(結合組織)、及び前立腺(男性生殖器)におけるヒトNIM1キナーゼの高度に特異的な発現の電子的ノーザン分析を示す。電子的ノーザン分析は、LIFESEQ Goldデータベース(Incyte Pharmaceuticals, Palo Alto CA)を用いて作成した。
【図3】
様々な細胞系及び組織における定量PCRを用いて作成した転写物発現のグラフを示す。x軸は発現の倍数を示し、y軸は、細胞系(H460、A2780、A375、HDF、HELA、DU145、MDA−MB231、U87−MG、及びBX−PC3)及び組織(脳、結腸、子宮、及び胎盤の組織)を示す。
【図4A】
ヒトNIM1キナーゼ(3317608CD1; SEQ ID NO:2)、線虫STK (g3877329; SEQ ID NO:31)、ドブネズミSTK (g2052189; SEQ ID NO:32)、ヒトC−TAK1 (g3089349; SEQ ID NO:33)、ドブネズミ塩誘導性キナーゼ(g5672676 ; SEQID NO:34)、キイロショウジョウバエK78プロテインキナーゼ(g2564680; SEQ ID NO:35)、及びヒトEMK1 (g1749794; SEQ ID NO:36)の間の保存された化学的及び構造的類似性を実証する。このアラインメントは、LASERGENEソフトウエアのMEGALIGNプログラム(DNASTAR, Madison WI)を用いて作成した。
【図4B】
ヒトNIM1キナーゼ(3317608CD1; SEQ ID NO:2)、線虫STK (g3877329; SEQ ID NO:31)、ドブネズミSTK (g2052189; SEQ ID NO:32)、ヒトCTAK1 (g3089349; SEQ ID NO:33)、ドブネズミ塩誘導性キナーゼ(g5672676 ; SEQID NO:34)、キイロショウジョウバエK78プロテインキナーゼ(g2564680; SEQ ID NO:35)、及びヒトEMKl (g1749794; SEQ ID NO:36)の間の化学的及び構造的類似性を実証する。このアラインメントは、LASERGENEソフトウエアのMEGALIGNプログラム(DNASTAR, Madison WI)を用いて作成した。
【図4C】
ヒトNIM1キナーゼ(3317608CD1; SEQ ID NO:2)、線虫STK (g3877329; SEQ ID NO:31)、ドブネズミSTK (g2052189; SEQ ID NO:32)、ヒトCTAK1 (g3089349; SEQ ID NO:33)、ドブネズミ塩誘導性キナーゼ(g5672676 ; SEQID NO:34)、キイロショウジョウバエK78プロテインキナーゼ(g2564680; SEQ ID NO:35)、及びヒトEMKl (g1749794; SEQ ID NO:36)の間の化学的及び構造的類似性を実証する。このアラインメントは、LASERGENEソフトウエアのMEGALIGNプログラム(DNASTAR, Madison WI)を用いて作成した。
【図5】
ヒトNIM1(hNIM1)キナーゼアッセイを示す。酵素がhNIMl−GST、基質がミエリン塩基性タンパク質(MBP)及びヒストン(HIST. 1)、ポジティブコントロールがZAP70(70 kdのζ‐鎖(TCR)関連プロテインキナーゼ)である。符号の「+」及び「−」はそれぞれ、各レーンにおけるヒトNIMキナーゼ及び基質の存在及び不在を表す。ゲルの右側に沿った大きさの指標はキロダルトンである。
Claims (20)
- SEQ ID NO:2を含むタンパク質またはその一部をコードする実質的に精製された核酸分子またはその一部。
- 請求項1のポリヌクレオチド、その断片、またはその相補配列(complement)を含む組成物。
- SEQ ID NO:24−30から選択された請求項1の核酸分子の哺乳動物変異体。
- SEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:3−30またはそれらの相補配列から選択される少なくとも18の連続するヌクレオチド断片。
- 請求項4の断片を含む基板。
- 請求項4の断片を含むプローブ。
- 請求項1の核酸分子を含む発現ベクター。
- 請求項7の発現ベクターを含む宿主細胞。
- タンパク質を生産する方法であって、
(a)前記タンパク質が発現する条件下で、請求項8の宿主細胞を培養するステップと、
(b)前記宿主細胞から前記タンパク質を回収するステップとを含むことを特徴とするタンパク質生産方法。 - サンプルにおける核酸分子を検出するための方法であって、
(a)請求項4の断片を前記サンプルの少なくとも1つの核酸分子とハイブリダイズさせて、ハイブリダイゼーション複合体を形成させるステップと、
(b)前記ハイブリダイゼーション複合体を検出するステップとを含み、
前記ハイブリダイゼーション複合体の存在が、前記サンプルにおける前記核酸分子の存在を示すことを特徴とする核酸分子の検出方法。 - 前記断片を脳疾患または癌の治療に用いることを特徴とする請求項10に記載の方法。
- 前記ハイブリダイゼーションの前に、前記サンプルの前記核酸分子を増幅するステップを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
- 核酸分子を用いて分子または化合物のライブラリをスクリーニングするための方法であって、
(a)特異的な結合が許容される条件下で、請求項1の核酸分子を前記分子または化合物のライブラリと結合させるステップと、
(b)特異的な結合を検出して、前記核酸分子に特異的に結合する分子または化合物を同定するステップとを含むことを特徴とする方法。 - 前記ライブラリが、DNA分子、RNA分子、ペプチド核酸、人工の染色体作製物、ペプチド、及びタンパク質から選択されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
- SEQ ID NO:2を含む単離され精製されたタンパク質またはその一部。
- タンパク質を用いて分子及び化合物のライブラリをスクリーニングする方法であって、
(a)特異的な結合が許容される条件下で、請求項15のタンパク質を前記分子または化合物のライブラリと結合させるステップと、
(b)特異的な結合を検出して、前記タンパク質に特異的に結合する分子または化合物を同定するステップとを含むことを特徴とする方法。 - 前記ライブラリが、DNA分子、RNA分子、ペプチド核酸、ペプチド、タンパク質、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体、免疫グロブリン、インヒビター、及び薬剤から選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
- 抗体を準備する方法であって、
(a)抗体反応が起こる条件下で、請求項15のタンパク質またはそのタンパク質の抗原性を有する部分で動物を免疫化するステップと、
(b)動物抗体を単離するステップと、
(c)単離した抗体を前記タンパク質でスクリーニングして、前記タンパク質に特異的に結合する抗体を同定するステップとを含むことを特徴とする方法。 - NIM1キナーゼに特異的に結合する抗体を用いて疾患を診断する方法であって、
(a)特異的な結合が許容される条件下で、前記抗体をサンプルと結合させるステップと、
(b)結合した抗体を検出するステップと、
(c)知られている標準的な方法で発現を比較して、疾患の存在を確認するステップとを含むことを特徴とする方法。 - 前記疾患が脳疾患または癌であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
Applications Claiming Priority (2)
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