JP4472179B2 - 新規なリボゾームs6プロテインキナーゼの同定および機能的なキャラクタライゼーション - Google Patents
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Description
本発明は、1988年8月24日に出願された米国仮出願番号60/095,268に関連し、本明細書中、引用によりその全体の内容が援用される。
【0002】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なS6キナーゼ(p70βS6k)、その変異体(突然変異を含む)、このS6キナーゼ、関連する核酸類、および抗体類を製造し、使用する方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
40Sリボゾーム蛋白S6は、真核細胞生物リボゾームの40Sサブユニットの構成要素である。リボゾームは、mRNAの翻訳および蛋白合成に関与する細胞機構の一部である。S6蛋白は、例えば、ホルモンまたは成長因子によって誘導された細胞増殖等のある細胞シグナリング事象群に応答して、リン酸化される。p70S6キナーゼ(p70βS6k)は、S6リン酸化に関与し、哺乳動物細胞における主要な生理学的S6キナーゼであると考えられている(Proud, 1996 Trends Biochem. Sci. 21: 181-185)。
【0004】
1.p70αS6キナーゼ
A.構造および機能
最初に同定されたp70S6キナーゼは、アルファ(α)型であった。ヒトp70αS6キナーゼ(p70S6k)をコードする遺伝子は、1991年に単離された(Groveら、1991 Mol. Cell. Biol. 11: 5541-5550)。他のp70αS6キナーゼ配列は、Musmusculus(GenBank登録番号 SEG#AB015196S、AB015197、AB015196)、Xenopus laevis(GenBank登録番号 X66179)、およびラット(GenBank登録番号 M57428)で記載されてきた。
【0005】
2つのp70αS6キナーゼ・アイソフォームが同定された。すなわち、p70α-I(GenBank登録番号 M60724)およびp70α-II(GenBank登録番号 M60725)である。それら2つのp70αS6キナーゼ・アイソフォームは、アミノ末端において23アミノ酸残基のみ異なり、70kDタンパク質および85kDタンパク質となる。これらアイソフォームは、前記文献でp70S6k/p85S6kまたはp70S6キナーゼと言及されている。両者のアイソフォームは、リボゾーム蛋白S6に対してin vitroで類似の活性を共有するが、異なる細胞や組織で発現される。それら2つのアイソフォームは、2つのmRNA産物によって生産され、そして翻訳後の修飾の結果ではない。こられは、セリン/スレオニン・キナーゼであり、KKRNRTLSVA(配列番号7)基質に作用することが知られている(Paiら、1994 Eur. J. Immunol. 24: 2364-8およびLeightonら、1995 FEBS Letters 375: 289-93)。
【0006】
p70αS6キナーゼは、細胞周期のG1期からS期にある細胞の進行において重要な役割を果たす。最近、p70αS6キナーゼは、それらの5'非翻訳領域にあるオリゴピリミジン・トラクトを含む1クラスのmRNA群の翻訳を調節することが実証された。このクラスのmRNAは、5'TOPmRNAと呼ばれ、細胞のトータルmRNAの20%までに該当する。5'TOPmRNAによってコードされるタンパク質の多くは、翻訳装置タンパク質および細胞周期進行タンパク質である。
【0007】
p70αS6キナーゼは、4つの同定された相互依存性ドメインを有する。すなわち、(1)触媒性ドメイン、(2)キナーゼ伸長ドメイン、(3)偽基質自己抑制ドメイン、および(4)N−末端ドメインである。その触媒性ドメインは、タンパク質の中央に位置し、PKAファミリーのユニークな特徴であるキナーゼ伸長ドメインに続かれる。その偽基質自己抑制ドメインも、p70αS6キナーゼにとってユニークであり、既知の他のいかなるキナーゼにも見られていない。それは5リン酸化部位を有するが、その部位はp70αS6キナーゼ調節に関与する。そのN−末端ドメインは、ラパマイシンの感受性を調整するが、これは血清によって誘起されるリン酸化およびp70αS6キナーゼの活性化を強く阻害する。また、このドメインは、まだ知られていないホスホターゼとの相互作用を調整する。
【0008】
B.調節因子およびカスケード
インスリンやマイトジェン等の成長因子は、in vivoでp70αS6キナーゼを活性化することが知られている(Alessiら、1998 Curr. Biol. 8: 69-81)。熱ショックもまたp70αS6キナーゼを活性化する(Linら、1997 J. Biol. Chem. 272: 31196-31202)。p70αS6キナーゼ活性を調節するある種の医薬品が特定されてきたが、これらはラパマイシン、ウォルトマンニン、Ro31-8220、GF109203X、LY294002、フェニレフリン(PE)、PD098059、SQ20006、重合コラーゲン、フォルスコリン、インターロイキン−10(IL-10)、デメトキシビリジン、ホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)、A23187、ボンベシン、およびp70αS6キナーゼを認識する抗体を含む(Proud, 1996; Morrealeら、1997 FEBS Letters 417: 38-42; Kandaら、1997 J. Biol. Chem. 272: 23347-23353; Boluytら、1997 Circ. Res. 81: 176-186; Coolicanら、1997 J. Biol. Chem 272: 6653-6662; Koyamaら、1996 Cell 87: 1069-1078; Buscaら、 1996 J. Biol. Chem. 271: 31824-31830; Crawleyら、1996 J. Biol. Chem. 271: 16357-16362;および Petrischら、1995 Eur. J. Biochem. 230: 431-8)。免疫抑制ラパマイシン(Rap)は、p70αS6キナーゼの最も強力な阻害剤である(Pullenら、1997 FEBS Letters 410: 78-82)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
p70αS6キナーゼは、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3-キナーゼ)の下流にある酵素である。p70αS6キナーゼを調節している機構は、完全には解明されてはいない。最近、PI3-キナーゼが別のホスホイノシチド依存プロテインキナーゼ(PDK-1と呼ばれる)を活性化することが示された。これまで、PDK-1のみがp70αS6キナーゼをin vivoでリン酸化することが示され、このリン酸化は、リボゾームS6蛋白に対するp70αS6k活性にとって必須である。ウォルトマンニンは、p70αS6キナーゼをダウンレギュレートする真菌性阻害剤であるが、これはPI-3キナーゼを阻害することによって作用すると考えられている。対照的に、別の真菌性阻害剤であるラパマイシンは、その哺乳動物標的を含む別のカスケード経路によってp70αS6キナーゼを阻害する(RAFTまたはFRAPとしても知られているmTOR)(Proudら、1996; Stewartら、1994 BioEssays 16: 809-815)。MTORは、プロテインキナーゼのPIK関連ファミリー・メンバーである(Pullenら、1997)。p70αS6キナーゼのさらに別の調節因子としては、キナーゼB(PKB)、Cdc-42およびRacが挙げられるが、これらには限定されない。ほとんどの前記タンパク質のp70αS6キナーゼ調節因子としての役割は、まだ完全には解明されていない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、新規なS6キナーゼ(p70βS6k)をコードする新しい遺伝子の発見に基づく。本発明には、配列番号2のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子(例えば、配列番号1)、配列番号2の断片をコードする単離された核酸分子、配列番号1を含む核酸分子の相補体に、充分なストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、明確なシグナルを生成する単離された核酸分子、および配列番号2のアミノ酸配列をコードする核酸分子の相補体に、充分なストリンジェントな条件でハイブリダイズし、明確なシグナルを生成する単離された核酸分子からなる群より選ばれる単離された核酸分子が含まれる。
【0011】
さらに、本発明は、その単離された核酸分子を含むベクターを含めて、1つ以上の発現制御要素に作動的に連結された核酸分子類を含む。さらに、本発明は、本発明の核酸を含むように形質転換された宿主細胞、および本発明の核酸分子で形質転換された宿主細胞をタンパク質が発現される条件下、培養するステップを含む、該タンパク質を製造する方法を含む。
【0012】
さらに、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、配列番号2の断片を含む単離されたポリペプチド、配列番号2の保存的アミノ酸置換を含む単離されたポリペプチド、および配列番号2の天然アミノ酸配列変異体からなる群より選ばれる単離されたポリペプチドを提供する。
【0013】
さらに、本発明は、本発明のポリペプチドに結合する単離された抗体であり、モノクローナルおよびポリクローナル抗体類、並びにそれらの断片を含むものを提供する。
【0014】
さらに、本発明により、配列番号2の配列を有するタンパク質をコードする核酸の発現を変調する薬剤を同定する方法であって、該核酸を発現する細胞を該薬剤に曝すステップと、該薬剤が該核酸の発現を変調するかどうかを決定し、それによって、配列番号2の配列を有するタンパク質をコードする核酸の発現を変調する薬剤を同定するステップとを含むことを特徴とする前記方法が提供される。
【0015】
さらに、本発明により、配列番号2の配列を含むタンパク質の少なく1つの活性を変調する薬剤を同定する方法であって、該タンパク質を発現する細胞を該薬剤に曝すステップと、該薬剤が該タンパク質の少なくとも1つの活性を変調するかどうかを決定し、それによって、配列番号2の配列を含むタンパク質の少なくとも1つの活性を変調する薬剤を同定するステップとを含むことを特徴とする前記方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明により、配列番号2の配列を含むタンパク質またはその活性化された変異体の結合パートナーを同定する方法であって、例えば、該タンパク質を潜在的な結合パートナーに曝すステップと、該潜在的な結合パートナーが該タンパク質に結合するかどうかを決定し、それによって、配列番号2の配列を含むタンパク質の結合パートナーを同定するステップとを含むことを特徴とする前記方法が提供される。曝すことはタンパク質を細胞中で発現させることによって達成できる。
【0017】
さらに、本発明により、配列番号2の配列を有するタンパク質をコードする核酸の発現を変調する方法であって、配列番号2の配列を有するタンパク質をコードする核酸の発現を変調する薬剤の有効量を投与するステップを含むことを特徴とする前記方法が提供される。また、本発明により、配列番号2の配列を含むタンパク質の少なくとも1つの活性を変調する方法であって、、配列番号2の配列を含むタンパク質の少なくとも1つの活性を変調する薬剤の有効量を投与するステップを含むことを特徴とする前記方法が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
「p70α」、「p70αS6k」、および「p70αS6キナーゼ」という用語は、それらの両者ともリボゾーム蛋白S6をリン酸化する2つのアイソフォーム、すなわちp70とp85を包含することを意図する。「p70α-1」および「p70α-I」とは、前記p70αS6キナーゼのp85アイソフォームを意味する。「p70α-2」および「p70α-II」とは、前記p70αS6キナーゼのp70アイソフォームを意味する。「p70β」、「p70βS6k」、および「p70βS6キナーゼ」という用語は、新たに同定されたS6キナーゼとそのすべてのアイソフォーム類を含む。
【0019】
I.一般的説明
本発明は、部分的には新規なS6キナーゼ(p70βS6k)をコードする新しい遺伝子の同定に基づく。この新しい遺伝子およびそれがコードするタンパク質は、S6キナーゼのファミリーメンバーであり、そのうち前記p70α-IとII(p70α-1およびp70α-2ともいわれるが)は既に報告されている。
【0020】
そのタンパク質は、タンパク質の発現または活性を変調するのに使用できる薬剤の標的になりうる。例えば、リボゾーム活性に関連する生物学的プロセスを変調する、薬剤を同定できる。
【0021】
本発明は、さらに前記タンパク質またはその活性化された変異体に結合する結合パートナーを単離する方法の開発に基づく。該タンパク質に基づくプローブを捕捉プローブとして用いて、他のタンパク質のような潜在的な結合パートナーを単離する。ドミナント・ネガティブタンパク質、それらのタンパク質をコードするDNA類、該タンパク質に対する抗体、該タンパク質のペプチド断片、または該タンパク質のミミック(擬似体)を細胞に導入して、機能に影響を与えることができる。さらに、前記タンパク質類は、合成小分子群、およびコンビナトリアルまたは天然化合物ライブラリーをスクリーニングし、リボゾーム機能を調節する新規な治療薬を見つけるための新規な標的を提供する。
【0022】
II.特定の実施形態
A.リボゾーム関連タンパク質
本発明は、単離されたタンパク質、そのタンパク質のアレル変異体、およびそのタンパク質の保存的なアミノ酸置換体(該タンパク質を活性化する置換体を含めて)を提供する。本明細書で使用する、タンパク質またはペプチドとは、配列番号2に示されたヒト・アミノ酸配列を持つタンパク質を指す。本発明は、天然のアレル変異体および上記に特定して列挙されたものとわずかに異なるアミノ酸配列を持つタンパク質を含む。アレル変異体は、上記に列挙されたものとわずかに異なるアミノ酸配列を有するが、それでも開示されたタンパク質に関連する同一または類似の生物学的機能を持つだろう。
【0023】
本明細書で使用する、前記開示タンパク質に関連するタンパク質ファミリーとは、ヒトに加えて、生物から単離されたタンパク質を指す。該開示タンパク質に関係する他のファミリーメンバーのタンパク質を同定、単離するのに使用される方法は、下記に説明される。
【0024】
本発明のタンパク質は、好ましくは単離された型である。本明細書で使用する、物理的、機械的または化学的方法が、通常タンパク質に会合する細胞成分から、そのタンパク質を取り除くために用いられたときに、タンパク質は単離されたという。当業者であれば、標準的な精製方法を容易に利用し、単離されたタンパク質を得ることができる。
【0025】
さらに、本発明のタンパク質は、本明細書に記載されたタンパク質の保存的変異体を含む。本明細書で使用する、保存的変異体とは、そのタンパク質の生物学的機能に悪影響を及ぼさないアミノ酸配列の変更をいう。置換、挿入または欠失は、変えられた配列がそのタンパク質に関連する生物学的機能を妨げたり、乱すとき、タンパク質に悪影響を及ぼすという。例えば、タンパク質の全体的な電荷、構造または疎水性・親水性的性質を、その生物学的活性に悪影響を及ぼすことなく、変えることができる。従って、例えば、タンパク質の生物学的活性に悪影響を及ぼすことなく、ペプチドをより疎水性または親水性とするように、アミノ酸配列を変えることができる。保存的置換は、不可逆的にタンパク質を活性化しうる。
【0026】
通常、アレル変異体、保存的な置換変異体、およびタンパク質ファミリーのメンバーは、配列番号2で示されるヒト配列と、少なくとも約71%〜約75%、より好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列の同一性を有するだろう。本明細書では、このような配列に関しての同一性または相同性は、最大限の相同性率を達成するのにもし必要であれば、配列を並べてギャップを導入した後、配列同一性部分としてはいかなる保存性置換も考慮せずに、公知のペプチドと同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。ペプチド配列のN末端、C末端または中間での伸長、欠失、またはペプチド配列への挿入は、相同性に影響を与えるとはされない。
【0027】
ホモロジー(相同性)または同一性は、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)分析によって決定される(Karlinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268(1990)およびAltschul,S.F.J. Mol. Evol. 36: 290-300(1993)、引用により完全に本明細書に援用されている)。BLAST分析は、配列の相同性検索用に特に作られたプログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxによって採用されるアルゴリズムを使用している。BLASTプログラムによって使われるアプローチは、質問配列とデータベース配列の間の類似したセグメントを最初に考慮し、次に、同定された全てのマッチの統計学的有意性を評価し、最後に、前もって選択されている有意性の閾値を満足するマッチだけ約言する。配列データベースの相同性検索における基本問題の論議については、引用により完全に本明細書に援用されているAltschulらの文献(Nature Genetics 6: 119-129(1994)を参照。histogram、descriptions、alignments、expect(すなわち、データベース配列に対するマッチを報告するための統計上の有意性閾値)、cutoff、matrix、filterの検索パラメータは、デフォルトセッティングのままである。blastp、blastx、tblastnおよびtblastxによって使われるデフォルトのスコアマトリックスは、BLOSUM62マトリックスである(引用により完全に本明細書に援用されているHenikoffら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919(1992)。blastnについては、スコアマトリックスは、M(例えば、マッチする残基の一対に対する報酬スコア)とN(例えば、ミスマッチする残基の一対のためのペナルティスコア)の比によってセットされ、MおよびNのデフォルト値は、それぞれに5および−4である。
【0028】
従って、本発明のタンパク質は、配列番号2で開示されたアミノ酸配列を有する分子、開示されたタンパク質の少なくとも約3、5、10、または15のアミノ酸残基が連続する配列を有するそれらの断片、開示された配列のN−またはC−末端に、或いは配列内に1つのアミノ酸残基が挿入されているようなアミノ酸配列の変異体、そして別の残基によって置換された、開示された配列のアミノ酸配列変異体、または上記に定義されたそれらの断片を含む。さらに、意図する変異体は、例えば相同的組換え、部位特異的またはPCR突然変異誘導等による予め決定される変異、および他の動物種の対応するタンパク質(該他の動物種として、ウサギ、ラット、マウス、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、およびヒト以外の霊長類が挙げられるが、これらには限定されない)、タンパク質ファミリーの天然のその他の変異体またはそのアレル体、および置換により、化学的、酵素的、またはその他の適切な手段によって天然アミノ酸以外の部分(例えば、酵素または放射性同位元素等の検出可能な部分)で共有結合的に修飾されたタンパク質の誘導体を含む。本発明のタンパク質は、上記のいかなるものをも含む融合タンパク質を含んでもよい。
【0029】
下記の通り、このタンパク質ファミリーのメンバーは、(1)タンパク質の少なくとも1つの活性を変調する薬剤(該タンパク質によって媒介されるリン酸化を変調する薬剤を含む)を同定するために、(2)前記タンパク質の結合パートナーを同定する方法において、(3)ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を作る抗原として、そして(4)治療用薬剤として使用することができる。
【0030】
B.核酸分子
さらに本発明は、配列番号2を有するタンパク質および本明細書に記載されている関連タンパク質であり、好ましくは単離された形態のものをコードする核酸分子を提供する。本明細書で使用する、「核酸」は、上記に定義されたようにペプチドをコードするか、或いはこのようなペプチドをコードする核酸配列に相補的であるか、またはこのような核酸にハイブリダイズし、かつ適当にストリンジェントな条件下でそれに安定に結合したままであるか、そのペプチドと少なくとも75%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%の配列同一性、およびさらに好ましくは85%の配列同一性を共有しているポリペプチドをコードするRNAもしくはDNAとして定義される。特定的に考えられるのは、ゲノムDNA、cDNA、mDNAおよびアンチセンス分子と、さらに代わりのバックボーンに基づく、または天然源から誘導されるか、合成される代替的な塩基を持つ、核酸分子である。しかしながら、このようなハイブリダイズするか、または相補的な核酸は、いかなる従来技術の核酸分子に対しても新規かつ自明でないと定義され、本発明のタンパク質をコードする核酸に相補的であるか、適度にストリンジェンシーな条件下でハイブリダイズするか、コードする核酸分子を含む。
【0032】
本明細書で使用する、核酸分子が、核酸原由来の他のポリペプチドをコードする夾雑核酸から、実質的に分離されているのとき「単離された」といわれる。
【0033】
さらに、本発明は、コードする核酸分子の断片を提供する。本明細書で使用するは、コードする核酸分子の断片とは、全タンパク質をコードする配列の小部分を指す。その断片サイズは、意図する用途により決定される。例えば、そのタンパク質の活性部分をコードするよう断片が選択されると、その断片は、該タンパク質の機能領域をコードするに十分なくらい大きい必要があるだろう。断片が核酸プローブまたはPCRプライマーとして使われる場合、プロービング/プライミングの際に、比較的少数の偽陽性が得られるように断片長が選択される。
【0034】
プローブまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のための特定プライマーとして用いられる、或いは本発明のタンパク質をコードする遺伝子配列を合成するために用いられる、本発明のタンパク質をコードする核酸分子の断片(すなわち、合成オリゴヌクレオチド類)は、化学的手法、例えばMatteucciらのホスホトリエステル法(J.Am.Chem.Soc. 103: 3185-3191,1981)によって、または自動化合成法を使って、容易に合成できる。さらに、大きなDNA切片は、遺伝子の種々のモジュラー切片を定義するオリゴヌクレオチド群の合成と、それに続いて行われる、修飾された完全遺伝子を構築する連結反応のような周知の方法によって容易に調製されうる。
【0035】
本発明のコードする核酸分子は、さらに、診断とプローブ目的のための検出可能な標識を含むように修飾されてもよい。当該技術分野においては、種々のこうした標識が知られており、ここに記載されたコードする分子と共に容易に利用され得る。適切な標識としては、ビオチン、放射性同位元素標識ヌクレオチド等が挙げられるが、これらには限定されない。当業者ならば、標識されたコードする核酸分子を得るためには、公知のいかなる標識でも利用できる。
【0036】
翻訳中に、タンパク質配列へ組み込まれたアミノ酸の欠失、付加、または変更によって、一次構造そのものを修飾することが、そのタンパク質の活性を壊すことなくなされ得る。このような置換または他の変更により、本発明の意図する範囲に入る核酸によってコードされたアミノ酸配列を持つタンパク質が結果として得られる。
【0037】
C.他の関連核酸分子の単離
上記のように、配列番号1を有するヒト核酸分子を同定することにより、本明細書に記載されているヒト配列に加えて、当業者は、p70βS6kファミリーの他のメンバーをコードする核酸分子を単離することができる。さらに、ここで開示された核酸分子によって、配列番号2を有する開示タンパク質に加えて、当業者は、p70βS6kタンパク質ファミリーの他のメンバーをコードする核酸分子を単離することができる。
【0038】
実質的に、当業者は、適当な細胞から調製される発現ライブラリーをスクリーニングするために、配列番号2のアミノ酸配列を用いて、容易に抗体プローブを生成させることができる。通常、精製されたタンパク質で免疫感作されたウサギのような哺乳類からのポリクローナル抗血清(下記に記載)、またはモノクローナル抗体を用いて、λgt11ライブラリー等の哺乳類cDNAまたはゲノム発現ライブラリーをプローブし、そのタンパク質ファミリーの他のメンバーの適当なコード配列を得ることができる。クローニングされたcDNA配列は、融合タンパク質として発現でき、それ自身の制御配列を用いて直接に発現でき、または酵素の発現に使われる特定の宿主に適した制御配列を用いる構築物によって発現できる。
【0039】
他の方法として、本明細書で記載された配列コードの一部分は、合成することができ、それを用いていろいろな哺乳類体からのそのタンパク質ファミリーのメンバーをコードするDNAを取り出すことができる。約18〜20のヌクレオチド(約6〜7のアミノ酸ストレッチをコードする)を含むオリゴマーを調製し、ゲノムDNAまたはcDNAライブラリーのスクリーニングのために使用して、ストリンジェントな条件、または擬陽性の不適当なレベルを除去するように十分なストリンジェント条件下でハイブリダイゼーションを得る。
【0040】
加えて、オリゴヌクレオチドプライマーの対は、コードする核酸分子を選択的にクローニングするために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において使用するように調製できる。このようなPCRプライマーを使用するためのPCRの変性/アニール/伸長サイクルは、当該技術分野では周知であり、そして他のコードする核酸分子を単離するための使用に対し、容易に適合させうる。
【0041】
D.核酸分子を含有するrDNA分子
さらに、本発明はコード配列を含む組換えDNA分子(rDNA)を提供する。本明細書で用いる、rDNA分子は、インサイチユの分子操作を受けたDNA分子である。rDNA分子を生成する方法は、当該技術分野では周知であり、例えば、Sambrookら、(1989)を参照。この好ましいrDNA分子においては、DNAコード配列は、発現制御配列および/またはベクター配列に作動的に連結されている。
【0042】
タンパク質ファミリーの1つをコードする本発明の配列が作動的に連結されているベクターおよび/または発現制御配列を選択することは、当該技術分野では周知であるように、例えば、タンパク質発現および形質転換される宿主細胞等の望まれる機能特性に、直接依存する。本発明によって意図されるベクターは、rDNA分子に含まれる構造遺伝子の複製、または宿主染色体への挿入、および好ましくは発現を少なくとも指示することができる。
【0043】
作動的に連結されたタンパク質をコードする配列の発現を調節するために用いられる発現制御要素は、当該技術分野では周知であり、制限されるわけではないが、誘導可能なプロモーター、構成的プロモーター、分泌シグナル、およびその他の制御要素を含む。好ましくは、該誘導可能なプロモーターは、宿主細胞の培地中の栄養物に反応するというように、容易に制御できる。
【0044】
一つの実施の形態において、コード核酸分子を含むベクターには、原核生物のレプリコンが含まれ、例えば、それで形質転換された原核宿主細胞(例えば、細菌宿主細胞)の染色体外で、組換えDNA分子の自律的複製と維持を指令する能力を有するDNA配列である。このようなレプリコンは、当該技術分野においては周知である。さらに、原核生物レプリコンを含むベクターは、その発現が薬剤抵抗性のような検出可能なマーカーを与える遺伝子を含んでもよい。典型的な細菌薬剤抵抗性遺伝子は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに抵抗性を与えるものである。
【0045】
原核生物レプリコンを含むベクターは、さらに、大腸菌等の細菌宿主細胞の中で、コード遺伝子配列の発現(転写および翻訳)を指令することが可能な原核生物またはバクテリオファージのプロモータを含むことができる。プロモーターとは、RNAポリメラーゼの結合と転写の開始を可能にする、DNA配列により形成された発現制御要素である。通常、細菌宿主に適合できるプロモーター配列が、本発明のDNAセグメントの挿入に対して都合のよい制限酵素部位を含むプラスミドベクター中に提供される。このようなベクタープラスミドのうち、典型的なものとしては、バイオラッド・ラボラトリーズ(リッチモンド、カリフォルニア州)から入手可能なpUC8、pUC9、pBR322、およびpBR329並びにファルマシア(ピスカタウェイ、ニュージャージ州)から入手可能なpPLおよびpKK223がある。
【0046】
真核細胞に適合できる発現ベクター、好ましくは脊椎動物細胞に適合できる発現ベクターも、コード配列を含むrDNA分子を形成するために用いることができる。真核細胞発現ベクターは、当該技術分野においては周知であり、幾つかの業者から入手できる。通常、このようなベクターは、所望のDNAセグメントを挿入するために都合のよい制限酵素部位を含んで提供される。このようなベクターのうち、典型的なものとしては、pSVLおよびpKSV-10(ファルマシア)、pBPV-1/pML2d(インターナショナル バイオテクノロジー インク)、pTDT1(ATCC,331255)、本明細書中に記載のベクターpCDM8、およびその他同様の真核生物発現ベクターがある。
【0047】
本発明のrDNA分子を構築するために用いられる真核細胞発現ベクターには、さらに、真核細胞中で効果的な選択可能なマーカー、好ましくは薬剤抵抗性の選択マーカーが含まれもよい。好ましい薬剤抵抗性マーカーは、その発現がネオマイシン抵抗性をもたらす遺伝子、すなわちネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子である(Southernら、J.Mol.Anal.Genet. 1: 327-341,1982)。代わりに、前記選択可能なマーカーは、別のプラスミド上に存在でき、これら二つのベクターは、宿主細胞への同時トランスフェクション(トランスフェクト)によって導入され、そして選択可能なマーカーに対する適当な薬剤中で培養することにより選択できる。
【0048】
E.外因的に供給されたコード核酸分子を含有する宿主細胞
本発明は、さらに本発明のタンパク質をコードする核酸分子で形質転換された宿主細胞を提供する。該宿主細胞は、原核細胞であっても、真核細胞であってもよい。本発明のタンパク質を発現するために有用な真核細胞は、細胞系が細胞培養法に適合し、発現ベクターの増殖と遺伝子産物の発現に適合していれば、特に制限されるわけではない。好ましい真核細胞としては、酵母、昆虫および哺乳類細胞、好ましくは、マウス、ラット、サル、またはヒト細胞系からのような脊椎細胞が挙げられるが、これらには限定されない。好ましい真核宿主細胞系としては、ATCCからCCL61として入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRK1658として入手可能なNIHスイスマウス胎児細胞NIH/3T3、生まれたてのハムスター腎臓細胞(BHK)、および同様の真核生物組織培養細胞系が挙げられる。
【0049】
いかなる原核生物でも、本発明のタンパク質をコードするrDNA分子を発現するために用いることができる。好ましい原核宿主は、大腸菌である。
【0050】
本発明のrDNA分子による、適当な宿主細胞の形質転換は、一般に、使われたベクターの種類と宿主システムに依存する周知の方法によって達成される。原核生物の形質転換に関しては、電気窄孔および塩処理法が、一般的に採用される。例えば、Coheら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69: 2110, 1972およびManiatisら、MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(1982)を参照。rDNAを含むベクターを用いて脊椎動物の細胞を形質転換することに関しては、電気窄孔、カチオン性脂質または塩処理法が、典型的に採用される。例えば、Grahamら、Virol. 52: 456,1973; Wiglerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 1373-76,1979を参照。
【0051】
上手く形質転換された細胞、つまり本発明のrDNA分子を含む細胞は、選択できるマーカーの選択を含む周知の技法により同定できる。例えば、本発明のrDNAが導入された細胞は、単一コロニーを作るようクローニングされうる。これらのコロニーから細胞は、収穫され、溶解され、それらのDNA成分が、rDNAの存在について、Southernら、J.Mol.Biol. 98: 503,1975または Berentら、Biotech, 3: 208, 1985に記載されているような方法を用いて調べられる。または、細胞によって産生されたタンパク質は、免疫学的方法により、アッセイされる。
【0052】
組換えp70βS6kを利用してコードおよび非コード配列の機能を分析することができる。例えば、p70βS6kクローンの5'非翻訳領域は、1つのGA反復配列(p70βS6kのヌクレオチド1〜66)を含み、これはそのmRNAの翻訳開始を変調する。この配列をアフィニティー・マトリックス・システムに利用して、細胞溶解物から得られる、p70βS6kに会合しているタンパク質類を精製することができる。当該技術分野で通常、公知であるように、合成オリゴヌクレオチドをビーズにカップリングし、前記溶解物とプローブさせるうるだろう。それから会合したタンパク質を、例えば二次元SDS-PAGEシステムを使用して分離することができるだろう。このようにして単離されたタンパク質をさらに質量分析またはタンパク質シークエンシングを使用して、同定できるであろう。
【0053】
F.rDNA分子を用いる組換えタンパク質の製造
本発明は、さらに、本明細書に記載された核酸分子を用いて、本発明のタンパク質を製造する方法を提供する。一般的に言えば、組換え型のタンパク質の製造には、次のステップが含まれる。
【0054】
まず、本発明のタンパク質をコードする核酸分子、例えば配列番号1に示された核酸分子、または特にp70βS6kのプロリンリッチ(プロリンに富む)ドメインもしくはアミノ末端をコードするp70βS6kヌクレオチドが得られる。前記のコード配列が、イントロンによって中断されていないので、それはどんな宿主においての発現にも直接適している。その配列は真核細胞、原核細胞なような宿主細胞にトランスフェクトされうる。真核細胞宿主は、哺乳類細胞(例えば、HEK293細胞、CHO細胞、およびPAE-PDGF-R細胞)、さらに組換えバキュロウイルスを用いて、Sf9のような昆虫細胞を含む。代わりに、p70βS6kの部分のみをコードする断片が単独で、または融合タンパク質の形態で発現されうる。例えば、前記プロリンリッチドメインを含むp70βS6kのC−末端断片をGST−またはHis−タグ融合タンパク質として細菌中で発現させた。それから、融合タンパク質を精製の上、使用してポリクロナール抗体を作成した。
【0055】
好ましくは、核酸分子は、タンパク質のオープンリーディングフレームを含有する発現ユニットを形成するために、上述の適当な制御配列との作動的な連結に置かれる。その発現ユニットを用いて、適当な宿主を形質転換し、形質転換された宿主を組換えタンパク質の製造を許容する条件下で培養する。組換えタンパク質は、培地または細胞から、随意に単離される。このタンパク質の回収と精製は、多少の不純物が許容されるような場合には、必要ではない。
【0056】
上記のそれぞれのステップは、様々な方法で行うことができる。例えば、所望のコード配列は、ゲノム断片から得られてよく、適当な宿主の中で直接に使われてもよい。種々の宿主の中で操作可能な発現ベクターの構築は、上記に示された適当なレプリコンおよび制御配列を用いることによって成し遂げられる。制御配列、発現ベクターおよび形質転換法は、遺伝子を発現させるために用いられる宿主細胞に依存し、その詳細については先に説明された。通常利用できなければ、適当な制限酵素部位を、これらのベクターに挿入される摘出可能な遺伝子を提供するため、コード配列の末端に付加することができる。当業者であれば、当該技術分野で公知であるいかなる宿主/発現システムをも容易に採用し、本発明の核酸分子と共に使用して、組換えタンパク質を製造することができる。
【0057】
G.結合パートナーを同定するためのin vitro方法
本発明の別の実施の形態は、本発明のタンパク質の結合パートナーを単離し、同定するのに使用される方法を提供する。詳しくは、本発明のタンパク質を、潜在的な結合パートナー、または細胞の抽出物もしくは部分と、潜在的な結合パートナーが本発明のタンパク質と会合できる条件下で、混合する。混合後、本発明のタンパク質と会合するようになったペプチド、ポリペプチド、タンパク質または他の分子をその混合物から分離する。その後、本発明のタンパク質に結合している結合パートナーは、取り除かれ、さらに分析される。結合パートナーを同定、単離するために、タンパク質全体、例えば配列番号2の開示タンパク質を使用できる。代わりに、そのタンパク質の断片を用いることができる。
【0058】
本明細書で使用する、細胞抽出物とは、溶解または粉砕された細胞から作られる調製物または部分を指す。
【0059】
細胞の抽出物を得るためには、種々の方法を用いることができる。物理的または化学的粉砕法により、細胞を粉砕することができる。物理的粉砕法の実例は、制限されるものではないが、超音波および機械的剪断を含む。化学的溶解法の実例は、制限されるものではないが、洗剤溶解および酵素溶解がある。当業者であれば、本発明法に使用する抽出物を得るため、細胞抽出物を調製する方法を容易に採用することができる。
【0060】
細胞抽出物が調製されると、その抽出物は本発明のタンパク質とその結合パートナーとの会合が起きえるような条件下で、本発明のタンパク質と混合される。種々の条件を用いることができるが、最も好ましいのは、ヒト細胞の細胞質で見られるのとよく似た条件である。浸透圧、pH、温度、および細胞抽出物の濃度等の特性を変化させ、タンパク質とその結合パートナーとの会合を最適化することができる。
【0061】
適当な条件で混合した後、結合した複合体を混合物から分離する。その混合物を分離するためには、種々の手法を利用することができる。例えば、本発明のタンパク質に特異的な抗体を用いて、その結合パートナー複合体を免疫沈降させることができる。別法として、クロマトグラフィーおよび密度/沈降物遠心分離等の標準的な化学分離技法を用いることもできる。
【0062】
抽出物中に見つかった会合していない細胞成分を取り除いた後、結合パートナーは、従来法を用いて、複合体から解離させることができる。例えば、混合物の塩濃度またはpHを変えることによって、解離を達成することができる。
【0063】
混合抽出物から、結合パートナーの会合した対の分離を助けるため、本発明のタンパク質を固体支持体に固定することができる。例えば、そのタンパク質をニトロセルロースマトリックスまたはアクリルビーズに取りつけることができる。そのタンパク質の固体支持体への付着は、抽出物の中にある他の成分類から、ペプチド/結合パートナーの対を分離するのを助ける。同定された結合パートナーは、単一のタンパク質または2つ以上のタンパク質からなる複合物である。
【0064】
別法として、本発明の核酸分子を、酵母菌ツーハイブリッドシステムに使用することができる。その酵母菌ツーハイブリッドシステムは、他のタンパク質パートナー対を同定するために使われてきており、本明細書に記載の核酸分子を利用するために、容易に適合され得る。
【0065】
p70βS6kに対する1つの好適なin vitro結合アッセイは、少なくともp70βS6kのキナーゼドメインを含むポリペプチドと1つ以上の候補結合標的または基質とを含む混合物からなるものである。その混合物を適当な条件下、インキュベートした後、p70βS6kまたはキナーゼ領域を含むそのポリペプチド断片が候補基質と結合したか、またはその候補基質をリン酸化したかのいずれかを決定することになる。無細胞結合アッセイでは、1つの成分が通常、標識を含むかまたは標識にカップリングされている。その標識によって、放射能、発光、光学もしくは電子密度等の直接的検出、またはエピトープタグ、酵素等の間接的検出が提供される。標識の性質およびその他のアッセイ成分に依存して、種々の方法を採用し、該標識を検出することができる。例えば、固体基質に結合した標識を検出してもよいし、また標識を含む結合複合体の一部を固体基質から分離して、その後、該標識を検出してもよい。
【0066】
H.S6キナーゼタンパク質をコードする核酸分子の発現を変調する薬剤を同定する方法
本発明の別の実施の形態は、例えば、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質等の、本発明のタンパク質をコードする核酸分子の発現を変調する薬剤を同定する方法を提供する。かかるアッセイは、本発明の核酸の発現レベルの変化をモニターするために利用可能ないかなる手段を採用してもよい。本明細書で使用するは、細胞内での核酸の発現をアップレギュレートするか、ダウンレギュレートすることができれば、薬剤は、本発明の核酸(例えば、配列番号2の配列を有するタンパク質をコードする核酸)の発現を変調するといわれる。
【0067】
1つのアッセイ形態において、p70βS6kヌクレオチド77-15,64または配列番号1の116-1,564によって定義されるオープンリーディングフレームとアッセイ可能な融合パートナーとの間のレポーター遺伝子融合物を含む細胞系が調製される。数々のアッセイ可能な融合パートナーが知られており、そしてホタルルシフェラーゼ遺伝子およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(Alamら、1990 Anal. Biochem. 188:245-254)を含み、容易に入手可能である。その後、レポーター遺伝子融合物を含む細胞系を適当な条件と時間でもって薬剤に曝す。その薬剤に曝されたサンプルと対照サンプルの間におけるレポーター遺伝子の差異的な発現によって、配列番号2の配列を有するタンパク質をコードする核酸の発現を変調する薬剤が同定される。
【0068】
さらに別のアッセイ形態を用いて、本発明のタンパク質、例えば配列番号2を有するタンパク質をコードする核酸の発現を変調する薬剤の能力をモニターしてもよい。例えば、mRNA発現は、本発明の核酸へのハイブリダイゼーションにより、直接的にモニターされる。細胞系を適当な条件と時間でもって、試験される薬剤に曝し、トータルRNAまたはmRNAをSambrookら(MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL: A LABORATORY MANUAL 第2版Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)において開示された標準的な手順によって単離する。
【0069】
薬剤に曝された細胞と対照細胞との間でのRNA発現レベルの違いを検出するためのプローブは、本発明の核酸から調製することができる。高ストリンジェンシーの条件下、標的の核酸分子とのみハイブリダイズするプローブを設計することは、必要ではないが好ましい。高ストリンジェンシーの条件下では、高度に相補性のある核酸分子ハイブリッドのみが形成される。従って、アッセイ条件のストリンジェンシーによって、ハイブリッドを形成するために存在すべきである、2つの核酸鎖間の相補性の量が決定される。プローブ:標的ハイブリッドと潜在的なプローブ:非標的ハイブリッドとの間の安定性の違いが最大限になるようにストリンジェンシーを選択するべきである。
【0070】
公知の方法により、本発明の核酸分子からプローブを設計できる。例えば、プローブのG+C含有量およびプローブの長さは、プローブがその標的配列に結合するのに影響する。プローブの特異性を最適化する方法は、Sambrookら(1989)またはAusebelら(CURRENT PROTOCLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Greene Publishing Co., NY, 1995)で一般に入手可能である。
【0071】
ハイブリダイゼーション条件は、それぞれのプローブによって必要とされるので、Samrookら(1989)およびAusubelら(1995)によって記載されているような公知の方法によって修正される。全細胞RNA、またはポリA RNAに富むRNAのハイブリダイゼーションは、利用可能ないかなる形式でも達成することができる。例えば、全細胞RNAまたはポリA RNAに富むRNAを、固体支持体に固定し、その固体支持体を、本発明の配列の少なくとも1つまたはその一部を含む少なくとも一つのプローブに、プローブが特異的にハイブリダイズする条件下で、曝すことができる。代わりに、本発明の配列の少なくとも1つまたはその一部を含む核酸断片を多孔性ガラスウエハのような固体支持体に固定することもできる。それからガラスウエハをサンプルからの全細胞RNAまたはポリA RNAに富むRNAに、固定された配列が特異的にハイブリダイズするような条件下で曝すことができる。かかるガラスウエハおよびハイブリダイゼーション法は、広く利用されており、例えば、Beattieによって記載されている(WO95/11755)。未処理細胞集団と薬剤に曝された細胞集団からのRNAサンプルに特異的にハイブリダイズする与えられたプローブの能力を調べることにより、配列番号2の配列を有するタンパク質をコードする核酸の発現をアップまたはダウンレギュレートする薬剤が同定される。
【0072】
I.結合パートナー並びにS6キナーゼタンパク質および関連抗体類の少なくとも一つの活性を変調する薬剤を同定するための細胞に基づく方法
本発明の別の実施の形態は、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質のような、本発明のタンパク質の少なくとも一つの活性を変調する薬剤を同定する方法を提供する。かかる方法またはアッセイは、望まれる活性をモニターまたは検出するいかなる手段を利用してもよい。
【0073】
1つのアッセイ形態において、試験される薬剤に曝された細胞集団と、薬剤に曝されていない対照細胞集団とを比較したときの、本発明のタンパク質の相対量がアッセイされる。この形態では、特異的抗体のようなプローブを用いて、異なった細胞集団における、前記タンパク質の差異的な発現をモニターする。細胞系または細胞集団を適当な条件と時間でもって、試験される薬剤に曝す。細胞溶解物を曝された細胞系または細胞集団、および対照である曝されていない細胞系または細胞集団から調製する。その後、該細胞溶解物を前記プローブで分析する。
【0074】
例えば、p70βS6kのN−およびC−末端断片を細菌中に発現させて、これらの断片類に結合するタンパク質を探索することができる。p70βS6k のN−またはC−末端領域へのHis-タグまたはGST融合体のような融合タンパク質を調製して、p70βS6k 断片基質として使用できる。前記融合タンパク質をTalonまたはGlutathione-Sepharose(グルタチオンセファローズ)ビーズにカップリングさせ、それから細胞溶解物でプローブできる。細胞溶解に先立ち、p70βS6k 、またはp70βS6k と相互作用するタンパク質を変調するかもしれないラパマイシン(rapamycin)やその他の薬品と処理する。前記融合タンパク質に結合する細胞溶解物タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、単離し、そして当該技術で公知のタンパク質シークエンシング、または質量分析によって同定できる。複数のSH3ドメインを含むシグナル分子が、p70βS6kのC−末端領域に直接結合するということは起こりそうである。N−末端ドメインは、結合パートナーとしてp70βS6k 特異的ホスホターゼを有しているかもしれない。
【0075】
抗体プローブ類は、それらが十分な長さであるか、または望まれるか、或いは免疫原性を増すために必要とされる場合、適当なキャリアにコンジュゲ―トされ、本発明のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を用いて、適当な哺乳類宿主を適当な免疫プロトコールで免疫感作することにより、調製される。ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはその他のキャリアタンパク質のようなキャリアとの免疫原性コンジュゲートを調製する方法は、当該技術分野においては周知である。ハプテンへの接近性を提供するためには、ある状況においては、例えばカルボジイミド試薬を用いる直接のコンジュゲーションが効果的であり、他の場合には、ピアスケミカル社(ロックフォード、イリノイ州)によって供給されるような結合試薬が望ましい。そのハプテンペプチドは、例えばキャリアへの結合を容易にするために、アミノ末端またはカルボキシル末端のいずれかでシステイン残基により伸長するか、または、システイン残基により散在させることができる。一般に当該分野で理解されているように、免疫原の投与は、普通、適当なアジュバントの使用および適当な時間に渡っての注射によって行われる。免疫化のスケジュール中、抗体の力価により抗体形成が十分かどうかを決定する。
【0076】
例えば、p70βS6kのC―末端の15アミノ酸に対応する合成ペプチドを用いて、抗ペプチド抗体を生成することができる。合成ペプチドは、小さければ1〜3アミノ酸の長さでよいが、好ましくは少なくとも4以上のアミノ酸残基長である。標準的な方法を用いて、そのペプチドをKLHにカップリングし、そして動物、例えばウサギを免疫感作できる。その後、ポリクローナル抗p70βS6kペプチド抗体を、例えば共有結合されたペプチドを含むActigelビーズを用いて精製できる。
【0077】
このようにして生産されたポリクローナル血清は幾つかの応用においては満足のゆくものであろうが、薬学的組成物には、モノクローナル調製物の使用が好ましい。一般に知られているように、所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞系は、KohlerおよびMilsteinの標準的な方法、またはリンパ球または脾臓細胞の不死化に効果がある修正法を使用することにより調製できる。所望の抗体を分泌する不死化細胞系は、抗原が前記ペプチドハプテン、ポリペプチドまたはタンパク質である、免疫アッセイによってスクリーニングされる。所望の抗体を分泌する適当な不死化細胞培養物が同定されたとき、in vitroでまたは腹水中における生産によって、細胞を培養することができる。特に興味があるのは、p70βS6kのプロリンリッチなドメインを認識するモノクローナル抗体である。
【0078】
その後で、所望のモノクローナル抗体を培養上澄み液、または腹水上澄み液から回収する。免疫学的に重要な部分を含むモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗血清からの断片は、そのままの抗体と同様にアンタゴニストとして使用するができる。例えば、Fav、scFV、Fab、Fab'、F(ab)2断片等の免疫学的に反応性のある断片を使用することは、一般にこのような断片が全免疫グロブリンよりも抗原性が少ないため、特に治療的な意味で、しばしば好まれる。前記抗体類は、脊椎動物中、ハイブリドーマ細胞系またはその他の細胞系において、生成させるか、組換え手段によって調製することができる。これらの抗体類を調製する方法については、E.HarlowおよびD.Lane, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1988)、KohlerおよびMilstein,(1976) E.J. Immunol. 6: 511、Queenら、米国特許第5585089号、そしてRiechmannら, Nature 332:323 (1988)を参照。
【0079】
前記抗体または断片は、組換え手段による現在の技術を使い、製造されてもよい。受容体の所望の領域に特異的に結合する抗体の領域は、多種源を持つキメラと関連して生産することもできる。
【0080】
代わりの形態において、本発明のタンパク質の特定の活性をアッセイでき、これは例えば、S6蛋白のポリペプチド等の基質をリン酸化する該タンパク質の能力等である。具体的には、p70βS6kがタンパク質および合成ペプチド(RRLSSLRASTSKSESSQK:配列番号8)をリン酸化することが実証された。この合成ペプチドを含む配列は、S6蛋白のC−末端に位置し、p70βS6kによって標的にされる5個のリン酸化部位を含むことが知られている。細胞系または集団を適当な条件下、試験される薬剤に曝す。その曝された細胞系または集団からと、対照である薬剤に曝されていない細胞系または集団とからのタンパク質のキナーゼ活性をアッセイすることにより、タンパク質のキナーゼ活性を変調する薬剤を同定し、従って本発明のタンパク質のキナーゼ活性を変調する薬剤も同定される。上記の例のようなS6蛋白のポリペプチドは、さらに別のp70βS6k基質を同定する際の有用なポジティブコントロール(陽性対照)である。
【0081】
本発明のタンパク質のキナーゼ活性を変調する薬剤の能力を測定するキナーゼアッセイは、広く利用可能であり、例えば、Mishimaら、(1996) J. Biochem. 119: 906-913、およびMichnoffら、(1986) J. Biol. Chem. 261: 8320-8326に開示されているアッセイである。代わりのアッセイ形態は、アクチン−ミオシン運動性アッセイを含み、これは例えば、Kohama(1996) TIPS 17: 284-287またはWarrickら(1987) Ann. Rev. Cell. Biol. 3: 379-421に開示されているものである。
【0082】
上記の方法においてアッセイされる薬剤は、無作為に、または合理的に選択することができ、または設計することができる。本明細書では、本発明のタンパク質のみ、またはそれに会合する基質、結合パートナー等とともに会合に係わる特定の配列を考慮することなしに薬剤が選ばれるとき、該薬剤が無作為に選択されるという。無作為に選択される薬剤の例としては、化学ライブラリーまたはペプチドコンビナトリアルライブラリーの使用、または生物の培養ブロスがある。
【0083】
本明細書では、標的部位の配列および/または薬剤の作用に関連したそのコンフォメーションを考慮して、無作為的にでなく薬剤が選択されたとき、該薬剤は合理的に選択されたか、または考案されたという。実施例に記載されるように、ATP/GTPおよびカルモジュリンの提唱された結合部位、同様にcAMP/cGMPキナーゼ部位、TyrP部位、さらにSer/Thrキナーゼ(触媒性)部位が配列番号2を有するタンパク質中にある。これらの部位を構成するペプチド配列を利用することによって、薬剤を合理的に選択し、または合理的に設計できる。例えば、合理的に選択したペプチド薬は、そのアミノ酸配列がATPやカルモジュリン結合部位またはドメインと同一であるペプチドでありうる。
【0084】
本発明の薬剤は、例えばペプチド、小分子、ビタミン誘導体と同様に炭水化物であり得る。当業者であれば、本発明の薬剤の構造的性質に関して制限がないことは容易に認識できる。
【0085】
本発明のペプチド薬剤は、当該技術分野では公知の、標準的な固相(または液相)ペプチド合成法を用いて調製できる。さらに、これらのペプチドをコードするDNAは、商業的に入手できるオリゴヌクレオチド合成機器を使って合成されてもよく、そして標準的な組換え生産システムを使って組換え的に製造されてもよい。遺伝子がコードしていないアミノ酸が含まれる場合、固相ペプチド合成を用いる製造が必要である。
【0086】
本発明の薬剤の別のクラスは、本発明のタンパク質の重要な部位と免疫反応性がある抗体類である。抗体薬剤は、適当な哺乳動物被検体を、抗体によって標的とされることを意図するタンパク質の部分である、抗原領域部位を含むペプチドで、免疫感作することによって得られる。
【0087】
J.S6キナーゼタンパク質の少なくとも一つの活性を変調する薬剤の使用
実施例において提供されているように、例えば配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質のような本発明のタンパク質と核酸は、リボゾーム機能に関与している。前記タンパク質の発現を変調するか、またはダウンレギュレートする薬剤、或いは、前記タンパク質の少なくとも1つの活性のアゴニストまたはアンタゴニストのような薬剤を用いて、前記タンパク質の機能と活性に関連する生物学的および病理学的プロセスを変調することができる。
【0088】
本明細書で使用する、被検体とは、哺乳動物が本発明のタンパク質によって媒介される病理学的または生物学的プロセスの変調を必要とする限り、いかなる哺乳動物であってもよい。「哺乳動物」という用語は、哺乳類に属する個体を意味する。本発明は、ヒト被検体の治療に特に有用である。
【0089】
本明細書で使用する、本発明のタンパク質によって媒介される病理学的または生物学的プロセスとは、例えば、ATP、GTP、またはカルモジュリン等の基質の結合、或いはS6蛋白のような基質のリン酸化を含む。
【0090】
病理学上のプロセスとは、心身に有害な効果を産む生物学上のプロセスのカテゴリーを指す。例えば、本発明のタンパク質の発現は、ある種の疾病と関連しているだろう。本明細書中では、薬剤がプロセスの程度または酷烈さを減少させるとき、薬剤は病理学上のプロセスを変調するという。例えば、疾病は予防でき、または、病気の進行は、何らかの様式で、本発明のタンパク質の発現または少なくとも1つの活性を減少させるか、変調する薬剤の投与によって調節される。
【0091】
本発明の薬剤は、単独でまたは特定の病理学上のプロセスを変調する他の薬剤との組み合わせで提供され得る。本明細書中では、2つの薬剤が同時に投与されるとき、またはこれらの薬剤が同時に作用するというふうに独立して投与されるとき、2つの薬剤が組み合わせて投与されるという。
【0092】
本発明の薬剤は、非経口的に、皮下内の、静脈内の、筋肉内の、腹腔内の、経皮のまたは頬側の経路で投与することができる。代わりに、または同時に、投与は、経口経路であってもよい。投与量は、受容者の年齢、健康状態および体重、同時にされる治療の種類に依存し、例えあるとすれば、治療の頻度および望まれる効果の性質に依存する。
【0093】
さらに、本発明は、本発明のタンパク質の発現、または少なくとも1つの活性を変調する1つ以上の薬剤を含む組成物を提供する。個別の要求は変わるかもしれないが、各化合物の有効量の最適な範囲を決定することは、当業者の技術の範囲内である。典型的な投与量は、約0.1〜100μg/kg体重からなる。好適な投与量は、約0.1〜10μg/kg体重からなる。最適な投与量は、約0.1〜1μg/kg体重からなる。組織培養において、ウオルトマンニンやラパマイシンのような医薬に対しての最適な投与量の範囲は、約500pMから約1000nMである。あまり最適ではない投与量の範囲は、約10pMから約10mgである。
【0094】
薬理学的に活性な薬剤に加えて、本発明の組成物は、活性化合物の調剤物へのプロセッシングを容易にし、作用部位へ送達されるよう薬学的に使用できる、賦形剤および補助剤を含んでよい。非経口投与に適した製剤としては、例えば水溶性塩類のような水に溶解する形状の活性化合物の水溶液が挙げられる。さらに、適当な油性の注射懸濁液として活性化合物が投与されてもよい。適当な脂肪親和性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えばセサミオイル)、または合成脂肪酸エステル(例えば、エチルオリエートまたはトリグリセリド)が挙げられる。水溶性の注射懸濁液は、懸濁液の粘性を上げる物質を含んでよく、それには、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ソルビトール、および/またはデキストランが含まれる。前記懸濁液には、随意に、安定剤が含まれてもよい。また、薬剤を包んで細胞へ送達するために、リポソームが使われてもよい。
【0095】
本発明に従う全身投与のための薬学的製剤は、腸内、非経口的または局所的投与のために製剤化されてもよい。これら3つの全てのタイプの製剤を活性成分の全身投与を達成するために、同時に使用してもよい。
【0096】
経口投与のために適した製剤は、硬性または軟性のゼラチンカプセル、丸薬、被覆された錠剤を含む錠剤、エリキシル、懸濁液、シロップまたは吸入およびこれらの制御された放出形態を含む。
【0097】
本発明の方法を実施するにおいて、本発明の化合物は、単独で使用されても、他の治療的または診断的な薬剤との組み合わせで使用されてもよい。ある好ましい実施の形態においては、本発明の化合物は、一般に受け入れられる医学上のプラクティスに従うこれらの条件のために、通常に処方されたその他の化合物と同時に投与されてもよい。本発明の化合物は、通常は哺乳動物(例えば、ヒト、ヒツジ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ラットおよびマウス等)で、in vivo、或いはin vitroで利用されてもよい。
【0098】
さらなる記載を要するまでもなく、当業者であれば、これまでの説明および以下の例示的な実施例を用いて、本発明の化合物を作製し、使用し、特許請求の範囲に記載された方法を行うことができるものと考えられる。従って、以下の実施例は、本発明の好適な実施の形態について特に指摘しており、本願の開示の他の部分をいかようにも限定するものと解釈されるべきではない。
【0099】
【実施例】
(実施例1) p70βS6kのアミノ酸配列およびp70αS6kとの比較
(原料および方法) 制限酵素およびDNA修飾酵素は、通常の販売元から入手し、製造者の推薦する条件で使用した。p70βS6kおよび種々のPCR断片のシークエンシングには、ジェノシス(Genosys)またはジャパンバイオサービス社(Japan Bioservice, Inc.)により合成されたオリゴヌクレオチドを用いた。哺乳類用発現ベクターpcDNA1およびpcDNA3はインビトロジェン社からであった。pGEX-4Tベクター、グルタチオン-セファロース4BおよびHiTrapQカラムはファルマシアより購入した。ラットp70α-IのcDNAは、Joseph Avruch博士(マサチューセッツ総合病院代謝病部)から贈呈された。ラパマイシンおよびPDGF BBは、カルバイオケム(Calbiochem)社から購入した。ウォルトマンニンは、シグマ社から購入した。
【0100】
(細胞培養および抗体) ヒトPDGF-βリセプターを恒常的に発現するブタ大動脈内皮細胞培養株(PAE-PDGF-R)を10%ウシ胎児血清(FCS)添加ハムF12(HAM's F12)培地で維持した。ヒトインシュリン・リセプターを恒常的に過剰発現するCHO細胞(CHO-IR細胞)およびHEK293細胞を、前述の方法(Haraら、1998, J. Biol. Chem. 273: 14484-14494)に従い、ハムF12培地、またはダルベッコ変法イーグル最少必須培地(DMEM)に、それぞれ10%FCSを添加して維持培養した。抗FLAGモノクローナルM2抗体は、イーストマン・コダック社から購入した。p70α-Iのプロリン指向性部位セリン-434に対する抗リン酸化ペプチド抗体は、ニューイングランド・バイオラブ(New England Biolabs)から購入した。p70αS6kのC末端104アミノ酸断片に対するポリクローナル抗体は、Joseph Avruch博士からであった。p70βS6kの第443-495アミノ酸(p70βC Ab)を含むGST融合タンパク質を用いて、p70βS6kに特異的なポリクローナル抗体を調製した。免疫活性血清は、GST/p70βS6k-末端融合タンパク質を含むアフィゲル・マトリックス上でアフィニティ精製した。
【0101】
(細胞抽出液の分画) HEK293細胞をDMEM培地中で飢餓条件下に16時間置いた後、15% FCSで10分間または200nM ラパマイシンで30分間処理した。処理後、細胞を氷冷したバッファーA(20mM Tris/HCl pH 7.5, 20 mM NaCl, 1 mM EDTA, 5 mM EGTA, 20 mM β-グリセロリン酸, 1 mM DTT, 1 mM PMSF, 2 mg/ml アプロチニン, 10 mg/ml ロイペプチン)で溶解し、溶解液を4℃、10,000xgで20分間遠心した。上清みを0.45 μMフィルターで濾過した後、バッファーAで平衡化した HighTrapQ セファロース・カラム(カラム容量1.0 ml)に充填した。カラムをバッファーAで徹底的に洗い、結合したタンパク質を直線濃度勾配のNaCl(20〜500 mM)で溶出した。溶出タンパク質のアリコートをSDS-PAGEにかけ、p70αS6kのプロリン指向性部位セリン-434に対する抗リン酸化ペプチド抗体またはp70αS6kのカルボキシル末端に対する抗ペプチド抗体を用いてイムノブロットした。
【0102】
(HEK293 Uni-ZAPライブラリーの構築とスクリーニングおよびDNAシークエンシング解析) HEK293細胞から前述のように(Haraら、1998; Chomczynskiら、1987 Analytical Biochem. 162: 156-159)トータルRNAを抽出し、Dynabeads mRNA精製キット(Dynal社)を用いてポリ(A)+ mRNAを選別した。UNI-ZAP XRベクターにオリゴ(dT)プライマー・ライブラリーをHEK293 mRNA 5 mgからUni-ZAP cDNA合成キット(ストラタジーン社)を用いて構築した。ファージへのパッケージングは、Gigapack III Gold Packaging extracts (ストラタジーン社)を用いて行った。GenBank登録番号 AA410355 (Hillierら、GenBankにて公開、1997)のESTクローンに由来する0.65Kb EcoRI/NotI断片を32P標識して、HEK293 Uni-ZAP ライブラリからの一次ファージ 1x106個をスクリーニングし、p70βS6kキナーゼの全長をコードするcDNAを単離した。陽性クローンを第2次スクリーニングで確認、単離し、in vivo切りだし(ストラタジーン)によってBluescriptプラスミドとしてレスキューした。単離したクローンの一次キャラクタリゼーションにPCR増幅および制限酵素マッピングを用いた。選別したクローンのシークエンシング分析をアプライドバイオシステム 373A型全自動DNAシークエンサー(PE Applied Biosystems社) で実施した。
【0103】
(結果) p70αS6kは、血清、成長因子およびホルモンを含む細胞外刺激に応答して偽基質および触媒ドメイン内での多重リン酸化により活性化される。近年、p70αS6kのリン酸化部位に対するリン特異的抗体、すなわちPhospho-p70αS6k(Ser434)およびPhospho-p70αS6k(Thr444/Ser447)が開発された。両抗体はリン酸化型p70αS6kを特異的に認識することが示され、この認識はラパマイシン感受性であることが見出された。ラパマイシン処理または無処理で、血清により刺激した細胞からのp70αS6kのリン酸化状態とクロマトグラフィーでの挙動を比較するため、HEK293細胞をDMEM培地中で16時間、飢餓条件下に置いた後、15%血清で10分間刺激して前処理し、200 nM ラパマイシン存在下または非存在下で30分間処理した。細胞抽出液をHigh TrapQ セファロースカラムで分画した。タンパク質をSDS-PAGEで溶離し、抗リンペプチド抗体 Ser434 および S444/T447 で、またはp70αS6k特異的抗体を用いてイムノブロットした。血清刺激したHEK293細胞の全溶解液中で、その抗体はp70αS6kアイソフォーム(p70およびp85)のリン酸化形を特異的に認識する。しかしながら、細胞可溶化物をSDS-PAGE上で分画、分離したとき、p190, p110, p90 および p60 を含む、p70αS6kのp70およびp85アイソフォームとともにイムノブロット上に、さらにいくつかのバンドが現れた(示さず)。リン特異的S434抗体のこれらのタンパク質に対する認識は、ラパマイシン感受性であって、リン酸化エピトープに特異的と示唆されることに注意することが重要である。予想通り、p70αS6kに対する抗ペプチド抗体は、p70α-Iおよびp70α-IIのそれぞれに対応する85-kDaおよび70-kDaのバンドを認識した。S434は、p70αS6kの自己抑制領域に位置するが、この部分はショウジョウバエを含む異なる種のp70αS6k間において高度に保存されている(Stewartら、1996 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 10791-10796; Watsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 13694-13698)。S434部位のリン酸化はラパマイシン感受性であるので、p190, p110, p9069および/またp60 は新規なラパマイシン感受性p70αS6k関連キナーゼを示すとも考えられる。
【0104】
(新規p70αS6kの分子クローニング) p70α-Iの抗リンペプチド抗体S434の調製に用いたペプチド配列を利用し、発現配列付番(EST)データベースを検索した。この検索により検索配列と高度の相同性を示す数百のESTクローンが見出された。これらクローンについて広範囲に解析を行うことにより、434ペプチドと高い相同性を示すクローンをいくつか分離することができたが、EMBLまたはSwissprotデータベース中のcDNAクローンにはマッチしなかった。これらの配列についてさらにキャラクタリゼーションを行い、ほぼ同一の2つのクローン(Genbank登録番号 AA284234およびAA410355)が、セリン/スレオニン(S/T)・キナーゼのプロテインキナーゼA(PKA)ファミリーのキナーゼ伸長ドメインに強い相同性を示すことが示唆された。加えて、キナーゼ伸長ドメインの相同性は、推定自己抑制ドメインにまで拡張しており、これはp70αS6kにユニークである(p70αS6kと未知の潜在的S6キナーゼとの同一性は75%以下)。しかしながら、p70αS6kとの相同性は、キナーゼ伸長および自己抑制ドメインの下流では顕著に低下し、これらのクローンが本ファミリーの新規なキナーゼをコードしたものと示唆された。これらのデータに基づき、前記のクローンについてさらにキャラクタリゼーションを進めることにした。両ESTクローンは、英国HGMP資源センターから得た。制限酵素マッピングにより、GenBank登録番号 AA284234 および AA410355のクローンは、それぞれ0.6 kB および 0.65 kB の短い挿入断片を含むことが示された。シークエンス解析によりこれらクローンは互いに重複する領域では同一であり、p70αS6kのキナーゼ伸長および自己抑制性ドメインと非常に強い相同性を示す部分的オープンリーディングフレーム(ORF)をにコードしているかもしれないと示された。これらのESTクローンは、全遺伝子を含まず、また、これまでに同定されたタンパク質コーディング配列も存在しなかった。さらに、p70αS6kの自己抑制偽基質ドメイン中に位置する5つのプロリン指向性Ser/Thrリン酸化部位の内4つがβS6kのクローン群においても保存されていた。自己抑制偽基質ドメインの直後では、p70αS6kとp70βS6kとの間の相同性は非常に低かった(12%の同一性)。これらの知見を勘案し、この新規である可能性のあるキナーゼの全長cDNAのクローニングに進んだ。
【0105】
既に抗Ser434リン特異的抗体を使用することにより、HEK293細胞中にいくつかのラパマイシン感受性バンドを見出していたので、前記細胞株のライブラリーを創製した。ESTクローンAA410355の全長挿入部を用いてUni-ZAP/HEK293ライブラリーから106個の一次クローンをスクリーニングし、12個の陽性クローンを単離した。レスキューしたプラスミドのシークエンス解析により495アミノ酸のオープンリーディングフレームを含む1つのクローンを同定することができた(図2A)。このクローンのC末端は、スクリーニングに用いたESTクローンAA410355の配列と同一であることがわかった。
【0106】
p70αS6kとの類推によって、p70βS6kをコードする新規のcDNAは別々の開始コドンを持つ結果として、2つのアイソフォームをコードする可能性があった。もしそうであるならば、短い方のアイソフォームは、最初のメチオニンから13アミノ酸(aa)下流のATGコドンを利用し、482アミノ酸のタンパク質をコードしうる。2つの潜在的アイソフォームをp70β-I(495 aa長)およびp70β-II(482 aa長)と命名した。p70β-IアイソフォームのN−末端に追加された13aaの存在は、推定核内局在性配列(RGRRARG、配列番号2のアミノ酸番号3-9)の存在のために細胞内局在性を決定する。p70βS6kの全体の構造はp70αS6kに類似している。p70αS6kとp70βS6kとは、70%の同一性を共有しており、タンパク質レベルでは85%の類似度をもつ。p70βS6kキナーゼは、アミノ末端側非触媒性領域、触媒ドメイン、キナーゼ延長およびカルボキシル末端側非触媒性尾端であり、p70αS6kの対応するドメインとの同一性はそれぞれ、40%、83%、80%、および47%である(図2B)。他のいかなる既知のキナーゼにも存在しない自己抑制性偽基質ドメインが存在することが、前記クローンが新規p70S6キナーゼをコードすると考える強い論拠である。
【0107】
p70αS6kは、インシュリンまたはマイトジェン(分裂促進因子)刺激に応答して多重部位リン酸化を受ける。このような多重リン酸化部位は、p70βS6kにおいてもよく保存されている(図2B)。また、p70αS6kと同様に、3組のリン酸化部位を有する。すなわち、(i)p70βS6k中の自己抑制性偽基質ドメインにあるSEr/Thr−Pro・モチーフの1組(p70βS6ka中のSer423, Ser430, Ser436, Ser 441は、p70αS6k中のSer 434, 441, 447,およびSer452に対応する、(ii)第2のセットはキナーゼ延長ドメインに位置するSer383およびThr401であって、p70αS6kのSer394およびThr412に対応する、(iii)第3の組はキナーゼドメインの活性化Tループに存在するThr251からなり、p70αS6k中のThr252に対応する。p70αS6kとp70βS6kとの配列上の最大の差異は、アミノ末端側非触媒性領域(同一性40%および類似度60%)およびカルボキシル末端非触媒性尾端(同一性47%および類似度66%)。また、p70βS6kはSH3ドメインを持つ分子との相互作用を媒介しうるプロリン-リッチな配列をそのC末端に有する。
【0108】
(実施例2) p70βS6kの組織特異的発現
(原料と方法) ノザンブロット解析は、クロンテック社からの種々のヒト組織または腫瘍細胞株より得たゲル-分離したポリ(A)+RNAサンプル2μgを予め結合させた市販のナイロン・メンブランを用いて行った。p70αS6kおよびp70βS6kのメッセージ(mRNA配列)の検出には以下のプローブを用いた。すなわち、(i)476塩基対(bp)HindIII 断片であってヒトp70αS6k (ESTクローン、AA425599)の3’末端翻訳領域の56 bp および3’非翻訳領域の420 bpにわたるもの、(ii)ヒトp70βS6k(ESTクローン、AA410355)の停止コドンの518bp上流から非翻訳領域の約130bpにわたる650bp断片である。ネガティブコントロールとしてヒトβアクチンcDNAプローブ(クロンテック社)を用いた。これらのプローブは、マルチプライムDNA標識システム(アマーシャム社)で標識しNuctrap push カラム(ストラタジーン社)によって、取り込まれなかった[γ32P]dCTPから分離した。ノザンブロットをExpressHyb溶液でプレハイブリダイズさせ、さらに製造者の推奨条件に従い、標識プローブでハイブリダイズさせた。2XSSC 0.05%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)により室温で繰り返し十分に洗い、次いで0.1X SSC、0.1% SDSにより50℃で2回洗った後、メンブレン上に結合したプローブの局在化をオートラジオグラフィーにより、またはPhosphoImagerを用いて同定した。
【0109】
(結果) ヒト組織および細胞株におけるp70αS6kおよびp70βS6kの発現パターンを比較するため、αおよびβ S6キナーゼ間で低い相同性を示す3’コードおよび非コード領域をプローブとして用いた。ヒト組織から単離したポリ(A)+RNAを用いたノザンブロットにより、p70βS6kの単一の2.2 kb転写産物が現れ、一方p70αS6kプローブは3.4 kbおよび7.4 kbの転写産物に特異的にハイブリダイスした(図3A)。p70αS6kおよびp70βS6kの転写産物の発現パターンは著しく類似しており、全ての組織において遍在的に発現していることが示された。両方のS6キナーゼに関して、脾臓、骨格筋および末梢血白血球において最も高い発現が見られ、一方脳、肺および腎臓における発現は最も低かった。p70αS6kとp70βS6kとの間のmRNA発現レベルに明かな差異が認められたのは、肝臓においてのみであった。肝臓におけるp70βS6kmRNAの発現は、p70αS6kの発現より2〜3倍高かった。肝臓は高濃度のp70αS6kを保有し、元来いくつかの研究グループによって、生化学的研究用およびタンパク質シークエンシング解析用のp70αS6kを精製するために用いられた(Banerjeeら、1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 8550-8554; Kozmaら、1990 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 7365-7369)。
【0110】
組織分布の解析に用いたのと同一のプローブを用いて、p70βS6kmRNAの腫瘍細胞株における発現も解析した。HeLa(ヒーラ)細胞およびK562細胞においては、ヒト組織においてと同じく2.2 kbの単一の転写産物が高度に発現していることが見出されたが、HL-60, MOLT-4およびG361メラノーマ(黒色腫)細胞株ではほとんど検出されなかった(図3B)。
【0111】
(実施例3) p70αS6kおよびp70βS6kによるリボソーム蛋白S6およびその合成C末端側ペプチドのリン酸化
(原料と方法) GST/p70βS6k融合タンパク質の細菌中での発現。PCR法による戦略を用いて、GST/p70βS6k融合タンパク質用バクテリア発現ベクターを作製した。p70βS6kの第443-495アミノ酸をコードするcDNA断片をPCRにより増幅し、pGEX-4T発現ベクター(ファルマシア社)にクローニングした。この構築物を大腸菌XL1-Blueコンピテント細胞(ストラタジーン社)にトランスフェクトし、イソプロピル1β-D-チオガラクトシドピラノシド(IPTG)によってGST/p70βS6k融合タンパク質の発現を誘導した。GST/p70βS6k融合タンパク質を、グルタチオン-セファロース4Bビーズを用いて、製造者(ファルマシア社)の推奨条件に従って精製した。SDS-PAGE解析の後、アフィニティ精製した融合タンパク質を20mM Tris (pH7.4), 150 mM NaCl, 50%グリセロール中で透析し、そして-20℃で保存した。このGST/p70βS6kC末端側断片の調製物をp70βS6k特異的ポリクローナル抗体の製造に使用した。
【0112】
(哺乳類発現プラスミドの構築) p70β-I(I-495アミノ酸)に相当する全長コード配列を、HEK293ライブラリーから単離したヒトcDNAクローンN53を鋳型として用い、特異的オリゴヌクレオチドのパネルによりPCRで増幅した。増幅構築物を適切な制限酵素で消化し、ゲル精製し、N末端FLAGエピトープにフレームを合わせpcDNA1ベクターにクローニングした。
【0113】
アミノ末端EE-タグp70αIIおよびp70βII構築物をPCR-クローニング戦略により創製した。これはEEタグ配列および適切な制限酵素部位を含む特定のオリゴヌクレオチドを用いることにより達成された。全長ヒトp70βS6k(クローン53)とラットp70αS6kをコードするcDNAを鋳型に用いた。得られたPCR断片を制限酵素消化し、ゲル精製し、pcDNA3発現ベクターにクローニングした。pMT2 FLAG p70α-Iの構築については既に報告された(Haraら、1998)。PCR的アプローチにより生成した構築物は、全てシークエンシングにより検証した。キアゲン・プラスミド・ミディ・キットを用いて、一過性トランスフェクション(形質導入)用プラスミドDNAを精製した。p70αS6kおよびp70βS6kのN末端にFLAGタグおよびEEタグを導入することにより、特異的抗体を用いる組換えタンパク質の研究が可能となる。
【0114】
(結果) 単離したp70βS6kcDNAがリボソーム蛋白S6をリン酸化する能力をもつ機能的なキナーゼをコードするか否かを検証するため、短縮版p70βS6k(p70β-II)をコードするcDNA断片をEEタグまたはFlagタグエピトープによりフレームを合わせて、哺乳類発現ベクターにサブクローニングした。これらの構築物を、lipofectAMINEを用い製造者の推奨する条件下でHEK293細胞にトランスフェクトした。EEタグまたはFlagタグ抗体により組換えp70βS6kの発現を免疫沈降法またはウェスタン・ブロッティングにより解析した。両方の構築物とも約60kDaのタンパク質を発現した。HEK293細胞中で発現させると、p70βS6kの発現レベルは、p70α-Iおよびp70α-IIアイソフォームに匹敵した。
【0115】
抗p70βS6kポリクローナル抗体をp70βS6kのカルボキシル末端側15アミノ酸に相当する合成ペプチドを用いて生成させた。これらのペプチドをKLHにカップリング後、標準的手順によりウサギに注射した。免疫血清をカルボキシル末端側ペプチドを共有結合的に架橋したアフィゲル・ビーズを用いて精製した。
【0116】
推定p70βS6kが実際にリボソーム蛋白S6キナーゼであるか否かを決定するため、組換えp70βS6kをHEK293細胞で発現させ、抗EEタグ抗体で免疫沈降させ、精製した40Sリボソームサブユニット存在下、in vivoでキナーゼ反応を行った。図4Aに示すように、p70βS6k(p70β-IIアイソフォーム)はin vivoで、p70αS6kとほぼ同様の効率でS6蛋白をリン酸化する。さらに、p70βS6k(p70β-IIアイソフォーム)がp70αS6kによってリン酸化されることが知られている全ての部位を含むリボソーム蛋白S6のC末端に対応する合成ペプチドをリン酸化する能力を検定した。図4Bに実証されるように、p70βS6k(p70β-IIアイソフォーム)は、p70αS6kで観察されるより若干効率は低いが、該ペプチドをリン酸化する。したがって、p70βS6k(p70β-IIアイソフォーム)は、p70αS6kがするの同一のリボソーム蛋白S6の部位をリン酸化しないのかもしれない。
【0117】
p70βS6kに本来備わる活性は、p70αS6kに比して著しく低い。p70βS6kの自己抑制性ドメイン中でリン酸化部位が1つ存在しないことが活性の低下の原因である可能性がある。
【0118】
(実施例4) インシュリン、血清およびTPAによるp70βS6k活性の促進
(原料と方法) lipofectAMINEを用い製造者の推奨条件下、HEK293細胞またはCHO-IR細胞をp70αS6kおよびp70βS6kの配列を含むプラスミドでトランスフェクトした(Gibco-BRL社)。二日後、トランスフェクトした細胞を液体窒素中で凍結し、溶解するまで保存した。細胞を抽出後、溶解液を免疫沈降および/またイムノブロット解析に供した。細胞を刺激する場合には、FCSを含まない培地中で16時間飢餓条件に置いた後、10-7M インシュリンで10分間、15% FCSで10分間、500 nM TPAで30分間、またはビヒクルのみで刺激した。PAE-PDGF-R細胞をlipofectAMINEを用い製造者の推奨条件下、適切なプラスミドでトランスフェクトした。24時間後、トランスフェクト細胞を16時間血清飢餓させた後、20 ng/ml PDGF BB (カルバイオ)で20分間刺激した。対照細胞は同一条件下、ビヒクルのみで処理した。
【0119】
(結果) FagタグまたはEEタグを付加したp70βS6kを一過性にトランスフェクト異なる細胞株において、種々の細胞外刺激のp70βS6kに及ぼす効果を調べた。インシュリンリセプターを恒常的に過剰発現するCHO-IR細胞中でのインシュリンによるp70βS6kの活性化を解析した。図5Aに示すように、CHO-IR細胞をインシュリンにより処理すると、リボソーム蛋白S6に対するp70βS6k(p70β-IIアイソフォーム)の活性が2.8倍に誘導される。同細胞株を同条件下でインシュリン処理すると、p70αS6kの活性は3.5倍に活性化された(図5A)。細胞中のp70αS6kおよびp70βS6k(p70β-IIアイソフォーム)の発現量は殆ど同量であって、免疫沈降後、in vitroキナーゼアッセイに用いた。さらに、血清およびTPAの両者ともにp70βS6k(p70β-IIアイソフォーム)のリボソーム蛋白S6に対するリン酸化を促進した(図5A)。
【0120】
PAE-PDGF-R細胞を用いて、p70αS6kおよびp70βS6k (p70β-IIアイソフォーム)のPDGFによる活性化を調べた。この細胞株は恒常的にPDGFリセプターを過剰発現し、PDGFに応答してp70αS6kが非常に効率よく活性化されることが示された(図5B)。これらの細胞においてPDGF刺激が組換えp70βS6k(p70βIIアイソフォーム)を急速に活性化することが見出された。
【0121】
これらのデータからp70βS6kは数種の細胞外刺激によりp70αS6kと大変よく似た形式で活性化されることが示唆された。しかしながら、PAE-PDGF-R細胞中の活性化はp70βS6kが30倍であったのに対し、p70αS6kは3.4倍であった。
【0122】
(実施例5) p70βS6kおよびp70αS6kに対するラパマイシンおよびウォルトマンニンの効果
(原料と方法) トランスフェクト細胞を以下のようにラパマイシンまたはウォルトマンニンで処理した。すなわち、トランスフェクションの48時間後、細胞を種々の濃度のラパマイシンまたはウォルトマンニンで30分間処理した。
【0123】
(結果) 実施例4および5に示すこれらのデータは、p70βS6kが数種の細胞外刺激によりp70αS6kと同様の様式で活性化されることを示唆する。ウォルトマンニンおよびラパマイシンの2つの真菌由来阻害剤は、p70αS6kの活性化を、それぞれPI3-キナーゼに、およびmTORに依存性の経路を介して特異的に阻害する。かくして、両方の阻害剤のp70βS6k活性への効果を調べた。p70α-Iおよびp70β-IIをHEK293細胞中、一過性に発現させた後、細胞を10% FCS含有DMEMで維持し、次いで種々の濃度のラパマイシンまたはウォルトマンニンで処理した。p70αS6kおよびp70βS6kの活性は、ラパマイシンおよびウォルトマンニンにより用量依存的に阻害されることが見出された(図6Aおよび6B、上段)。しかしながら、ラパマイシンおよびウォルトマンニンに対し、p70βS6kはp70αS6kに比べると感受性が低いことが観察された。この差異は阻害剤の濃度が低いほどより顕著である。20 nMラパマイシン存在下でp70S6kの阻害が92%であるのに対しp70βS6kの阻害はわずか46%である。100 nMウォルトマンニン添加によりp70αS6k活性は86%、p70βS6k活性は62%阻害される。ラパマイシンおよびウォルトマンニンによるp70βS6kの阻害は、p70αS6kで観察される阻害よりも低く、p70βS6kには異なる制御機構が存在することを示唆している。
【0124】
(実施例6) p70βS6kと種々のGST/SH3融合タンパク質との相互作用
(原料と方法) 前述のようにEEタグ/p70βS6kをHEK293細胞中で一過性に過剰発現させた。トランスフェクションの二日後、トランスフェクト細胞をバッファーA(50mM Tris/HCl pH = 8.0, NP-40, 120 mM NaCl, 1 mM EDTA, 6 mM EGTA, 20 mM β-グリセロリン酸ナトリウム, 1 mM DTT, 1 mM PMSF, 10μg/ml ロイペプチンおよび2μg/mlアプロチニン)中で溶解した。12,000 rpmで20分間遠心後、上清み液を、抗EE抗体を予めカップリングさせたプロテインAビーズとともに2時間インキュベートした。異なるGST/SH3融合タンパク質(各1.5 mg)を加え個々の免疫沈降反応を行う前に、ビーズを溶解バッファーで洗った。二時間後ビーズを溶解バッファーで徹底的に洗い、結合したタンパク質をSDS-PAGEで分離し、PVDFメンブランにトランスファーした。GST/SH3ドメインと予め結合させたEEタグ/p70βS6kとの特異的相互作用を抗GST抗体によるイムノブロッティングにより評価した。
【0125】
(結果) p70βS6kのC末端はp70αS6kには存在しないプロリン-リッチ配列を含む。多くのシグナル分子および細胞骨格分子に、Src相同性領域3ドメイン群(SH3ドメイン)が存在しており、左巻きヘリックスを形成するプロリン-リッチ配列と特異的に相互作用する。p70αS6kのプロリン-リッチ領域のシークエンス解析から数個の推定SH3ドメイン結合モチーフが存在することが示唆される。従って、p70βS6k (p70β-IIアイソフォーム)が一群のSH3ドメインと相互作用する能力を調べた。この実験ではEEタグ/p70βS6kをHEK293細胞中で一過性に過剰発現させ、抗EE抗体をカップリングさせたプロテインGセファロースで免疫沈降した。得られた免疫沈降物を相異なるGST/SH3融合タンパク質とともにインキュベートした。繰り返し十分に洗った後、p70βS6kとSH3ドメインとの間の特異的相互作用をSDS-PAGEおよび抗GST抗体を用いるイムノブロッティングにより解析した。図7に示すように、これらのGAP、Src、およびFgrを含むいくつかのSH3ドメインは、p70βS6kに対して相互作用を示した。
【0126】
(実施例7) 一過性に発現されたp70β-Iおよびp70β-IIの免疫沈降およびウェスタンブロッティング解析
(原料と方法) p70βS6kのC末尾端に対応する合成ペプチドを用いて抗p70βS6kポリクローナル抗体を生成させた。このペプチドをKLHにカップリングさせ、標準的手順によりウサギを免疫感作した。免疫感作したウサギから収集した免疫血清を、p70βS6kのC末端ペプチドを共有結合的に架橋したアフィゲルビーズ上のアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。HEK293細胞をpcDNA1のみ、pcDNA1/Flag-p70α-I、pcDNA1/Flag-p70β-I、またはpcDNA1/Flag-p70β-IIでトランスフェクトした。これらのプラスミドの1つをトランスファクトした二日後、細胞可溶化物を調製した。p70βS6kC末端アフィニティ精製したポリクローナル抗体または抗Flagモノクローナル抗体を用いて、タンパク質を免疫沈降した。免疫沈降物はSDS-PAGE上で溶離し、タンパク質をPVDFメンブランにトランスファーした。図8に示すように、PVDFメンブランを、抗Flagモノクローナル抗体またはp70βS6kC末端抗体を用いてイムノブロットした。
【0127】
(結果) 両方のp70βS6kアイソフォームの発現をHEK293細胞中でp70βS6kのC末端特異的ポリクローナル抗体を用いて解析した。両方のp70βS6kアイソフォームとも、抗p70βS6k抗体で特異的に免疫沈降されることがわかったが、p70α-Iは抗Flagおよび抗p70βS6kイムノブロッティングで確認した限りでは沈降されなかった。495アミノ酸のタンパク質をコードするp70β-Iアイソフォームは、SDS-PAGEゲル中で約70kDに泳動するタンパク質に翻訳されることがわかった。p70β-IIアイソフォームはそのアミノ末端側が13アミノ酸分欠失したp70β-Iアイソフォームの短縮形であるが、SDS-PAGEゲル中で約60kDに泳動する。
【0128】
(実施例8) 活性化変異体p70βS6k(T401D)およびp70αS6k(T402D)の生成
(原料と方法) p70βS6kおよびp70αS6kの活性化変異体を部位特異的変異により作製した。p70βS6kおよびp70αS6k配列の変異する部位に特異的であり、かつ反対側鎖に相補的であるオリゴヌクレオチドプライマーを製造者(ストラタジーン社)の推奨するように生成させた。部位特異的変異は、pcDNA3/Glu-tag-p70βS6kおよびpcDNA3/Glu-tag-p70αS6k発現ベクター/プラスミドを鋳型として、推奨プロトコル(ストラタジーン社)に従って行った。変異は全てDNAシークエンシングにより検証した。両方の変異型キナーゼの発現を、抗Gluタグ抗体を用いるイムノブロッティングにより解析した。両方のキナーゼの正常型および変異型の活性をin vitroS6キナーゼアッセイにより測定した。この反応では40Sリボソームサブユニットを基質として用いた。
【0129】
(結果) p70αS6kの研究により前記酵素が成長因子またはホルモンに応答して多重リン酸化により活性化されることが証明された(図9)。p70αS6kをin vitroおよびin vivoでリン酸化できる多くのキナーゼが同定されてきたが、これらはcdc2, MAPK, SAPK, p38, TORおよびPDK1を含む。しかしながら、キナーゼの不活性化に必須である脱リン酸化のプロセスについてはほとんど知られていない。
【0130】
図10に示すように、本発明者らはp70βS6kの推定リン酸化部位Thr401をアスパラギン酸(Asp)で置換し(p70βS6k (T402D))、活性化型p70βS6kを生成させた。HEK293細胞中のトランスフェクション実験およびS6キナーゼアッセイによりp70βS6k(T401D)変異体は、非刺激細胞においても野生型キナーゼと比較して活性化状態にある(3倍の活性、図11)ことが示唆された。本発明者らはさらにp70αS6kの活性化版(T412D)も創製し、これはより高い活性化状態(18倍の活性化、図12)を示した。
【0131】
以上に開示したような両方のキナーゼの活性化変異体を用いて、結合パートナーを探索できることは、当業者には明白であろう。ホォスファターゼ等の結合パートナーまたは分子は、かかる不可逆的に活性化されたキナーゼとよりかつより安定な複合体を形成すると考えられる。
【0132】
(実施例9) p70βS6k結合パートナーの同定
(原料と方法) lipofectAMINEを用いて、p70βS6k(T401D)およびp70αS6k(T412D)活性化変異体をコードするpcDNA3発現ベクターをHEK293細胞にトランスフェクトする(製造者Gibco-BRL社の推奨するように)。活性化されたp70βS6kを発現する細胞からと、活性化されたp70αS6kを発現する細胞および/または陰性対照細胞からとから沈降したタンパク質のプロフイル(性質)を比較することにより、p70βS6kに選択的に会合する結合パートナーを同定しうる。この実験では、pcDNA3プラスミドのみでトランスフェクトされた細胞をネガティブコントロール(陰性対照)として使用してもよい。トランスフェクションの二日後、細胞を抽出バッファー(すなわち、50mM Tris/HCl (pH 8.0); 120 mM NaCl; 20 mM NaF; 20 mM β-グリセロリン酸; 1 mM EDTA (pH 8.0); 6 mM EGTA; 1% NP-40; 1 mM DTT)で溶解する。細胞溶解の直前に以下のプロテアーゼおよびホォスファターゼ阻害剤(すなわち、5 mM ベンザミジン、1 mM PMSF、1 mg/ml アプロチニン、0.125 mM NaVO4、ペプスタチン、およびロイペプチン)を抽出バッファーに加える。
【0133】
得られた細胞溶解物を4℃、14,000 rpmで20分間遠心し、不溶画分を除く。溶解物をすぐに使用しない場合は、必要となるまで-80℃に保存する。サンプルのタンパク質濃度はクーマシータンパク質アッセイ(Pierce社)を用い、595 nmで測定する。各サンプルからの等量の上清み液を新しい1.5 ml試験管に加え、溶解バッファーで等容とする。アフィニティ精製した抗Glu抗体をその上清み液に加え、4℃で1時間回転しながらインキュベートする。溶解バッファーで予洗したプロテインGセファロースのビーズを用い、免疫複合体を沈降させる。
【0134】
溶解バッファーで徹底的に(4回)洗った後、2Xサンプルバッファーをビーズに加える。煮沸して結合したタンパク質をビーズから溶出し、SDS-PAGE電気泳動により分離する。分離したタンパク質を銀染色し、会合したタンパク質のパターンを解析する。
【0135】
(結果) 会合したタンパク質のパターンをp70βS6kおよびp70αS6kキナーゼの活性化変異体の間で比較する。HEK293細胞中、両キナーゼの変異体をGluタグ融合タンパク質として、一過的に発現させる。p70βS6kおよびp70αS6kのN末端にGluタグエピトープが存在することにより、トランスフェクトした細胞から活性化キナーゼを特異的に免疫沈降することが可能となる。Gluタグ融合は本発明において必須ではなく、活性化された変異体のそれぞれまたは両者に特異的な抗体を用いて、融合エピトープが存在しなくても同様の結果が得られることは当業者には理解されるであろう。
【0136】
免疫沈降法、HPLC、FPLC、カラムクロマトグラフィーまたは調製型電気泳動法などの標準的手法の1つまたはそれ以上によって、活性化p70βS6kと選択的に結合する結合パートナーまたはポリペプチドを単離することができることは、当業者には理解されるであろう。
【0137】
本発明を上記の実施例に即して詳細に説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正がなされうることは理解される。従って、本発明は、以下の請求項によってのみ限定される。本明細書中で言及された全ての引用特許および出版物は、それらの全内容が引用により本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 p70βS6k(配列番号1)の核酸配列およびp70αS6k(配列番号3)との比較、並びにp70βS6kキナーゼをコードするcDNAのシークエンス解析を示す図である。p70βcDNAはオルタナティブ(別々の)な開始コドンを有するアイソフォームをコードする。長い方は495アミノ酸残基のタンパク質をコードし、短い方は482アミノ酸(aa)をコードする。オルタナティブな開始コドンおよび停止コドンはハイライト(強調印字)されている。
【図2A】 p70βS6k(配列番号2)のアミノ酸配列およびp70αS6k(配列番号4)と比較を示す図である。p70αS6kおよびp70βS6kキナーゼに対応する推定蛋白配列のアライメントを示す。同一のアミノ酸は四角で囲んで示した。
【図2B】 p70βS6k(配列番号2)のアミノ酸配列およびp70αS6k(配列番号4)と比較を示す図である。p70αS6kとp70βS6kとの間の制御ドメインおよびリン酸化部位の比較解析を示す。
【図3A】 p70βS6kの組織特異的発現を示す図である。ヒト組織からのポリ(A)+RNAのノザンブロット解析を示す。種々のヒト組織からの2μgのゲル精製し、予め結合したポリ(A)+RNAサンプルを含むナイロンメンブランを、ランダムプライマー法により標識したp70αS6k、p70βS6kまたはβ-アクチンのcDNA断片とハイブリダイズさせた。図中、上、中および下段はそれぞれp70βS6k、p70αS6kおよびβ-アクチンをプローブとして行ったオートラジオグラフィー図である。各レーンは、心臓(レーン1)、脳(レーン2)、胎盤(レーン3)、肺(レーン4)、肝臓(レーン5)、骨格筋(レーン6)、腎臓(レーン7)、膵臓(レーン8)、脾臓(レーン9)、胸腺(レーン10)、前立腺(レーン11)、精巣(レーン12)、卵巣(レーン13)、小腸(レーン14)、結腸粘膜上皮(レーン15)および末梢血白血球(レーン16)から調製したmRNAを含む。
【図3B】 p70βS6kの組織特異的発現を示す図である。腫瘍細胞株からのポリ(A)+RNAのノザンブロット解析を示す。腫瘍細胞株から単離した2μgのmRNAを含むナイロンメンブランを、ランダムプライマー法により標識したp70βS6kの3'cDNA断片でプローブした。オートラジオグラフィーにより特異的結合を測定した。前骨髄球性白血病HL-60(レーン1)、HeLa細胞S3(レーン2)、慢性骨髄性白血病K562細胞(レーン3)、リンパ芽球性白血病MOLT-4(レーン4)、バーキットリンパ腫 Raji(レーン5)、結腸腺癌 SW480(レーン6)、肺癌(レーン7)および黒色腫 G361(レーン8)。
【図4A】 リボソーム蛋白S6(図4A)およびそのC末端側合成ペプチド(図4B)のp70αS6kおよびp70βS6kによるリン酸化を示す図である。リボソームS6蛋白(肝臓から精製したリボソーム40Sサブユニット)およびS6蛋白C末端に対応する合成ペプチド(例えば、長い方、KEAKEKRQEQIARRRLSSLRASTSKSESSQK(配列番号5)、および、短い方、RRRLSSLRASTSKSESSQK(配列番号6))を用いて、p70αS6kおよびp70βS6kの活性を測定した。p70αS6kまたはp70βS6kのFlagタグまたはEEタグを有するバージョンを含むプラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトした。組換えタンパク質を抗EEまたは抗Flag抗体で免疫沈降し、リボソーム40Sサブユニットまたは合成ペプチドの存在下、in vitroキナーゼ反応を行った。SDS-PAGE解析の後、S6蛋白および合成ペプチドのリン酸化をPhosphoImagerによって測定し、任意の単位(PI単位)で表示した。
【図4B】 リボソーム蛋白S6(図4A)およびそのC末端側合成ペプチド(図4B)のp70αS6kおよびp70βS6kによるリン酸化を示す図である。
【図5A】 インシュリン、血清およびTPAによるp70βS6kの刺激を示す図である。CHO-IR細胞を模擬(盲検)(レーン1)またはFLAGタグ付きp70α-I cDNA(レーン2および3)またはFLAGタグ付きp70β-II(レーン4から7)を含むプラスミドでトランスフェクトした。血清飢餓16時間後、細胞をビヒクルのみ(レーン2および4)、10-7M インシュリンで10分間(レーン3および5)、15%血清で10分間(レーン6)または500 nM TPA(レーン7)で30分間処理した。細胞を可溶化し、続いて抗FLAG抗体で免疫沈降した後、免疫沈降物を40Sサブユニットを基質とするp70 S6キナーゼアッセイに供した。反応混液をSDS-PAGEで分離し、PVDFメンブランにトランスファーした。そのメンブランをオートラジオグラフィーにより解析し(上段)、次いで抗FLAG抗体でイムノブロットした(下段)。三回の実験の代表的な例を示す。32PのS6への取り込みをMolecular Dynamics PhosphoImager(TM)を用いて定量化し、任意の単位(PI単位)で表示した。
【図5B】 インシュリン、血清およびTPAによるp70βS6kの刺激を示す図である。PAE-PDGF-R細胞中のリボソームS6蛋白に対するp70αS6kおよびp70βS6k活性のPDFによる刺激を示す図である。PAE-PDGF-R細胞をlipofectAMINEを用いて、EEタグ付きp70αS6kおよびp70βS6kプラスミドでトランスフェクトした。24時間後、トランスフェクト細胞を16時間血清飢餓状態に置き、20 ng/mlPDGF BB(カルバイオ社)で20分間刺激した。対照細胞は同一条件下、ビヒクルのみで処理した。抗EE抗体で免疫沈降した後、S6蛋白を含む40Sサブユニットの存在下、in vivoキナーゼ反応を行った。反応混液をSDS-PAGEにより分離し、PhosphoImagerによりS6蛋白への32Pの取り込みを測定した。
【図6A】 ラパマイシンおよびウォルトマンニンのp70βS6kおよびp70αS6kに対す
る影響を示す図である。p70α-Iまたはp70β-IIのS6リン酸化活性に及ぼすラパマイシンおよびウォルトマンニン影響を示す図である。HEK293細胞を模擬cDNAまたはFLAGタグ付きp70α1またはp70β2アイソフォームを含むプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をビヒクルのみ、または図中に示した濃度のラパマイシンまたはウォルトマンニンで30分間処理した。抗FLAG抗体で免疫沈降した後、40Sサブユニットを基質として用いp70 S6アッセイによりキナーゼ活性を測定した。反応混液中のタンパク質をSDS-PAGEによって分離し、PDGFメンブランにトランスファーし、オートラジオグラフィーにより解析した(図6Aおよび6B、上段)。引き続き抗FLAG抗体でイムノブロッティングを行い、p70α-I(図6A、下段)およびp70β-II(図6B、下段)の発現を確認した。三回の実験の代表的な例を示す。32PのS6への取り込みをPhosphoImagerにより定量化し、任意の単位(PI単位)で表示した。
【図6B】 ラパマイシンおよびウォルトマンニンのp70βS6kおよびp70αS6kに対す
る影響を示す図である。p70α-Iまたはp70β-IIのS6リン酸化活性に及ぼすラパマイシンおよびウォルトマンニン影響を示す図である。
【図7】 p70βS6kの種々のGST/SH3融合タンパク質との相互作用
HEK293細胞をEEタグ/p70βS6kで一過的にトランスフェクトした。2日後細胞を溶解し、溶解物を抗EE抗体で免疫沈降した。GST/SH3融合タンパク質(各1.5μg)を抗EEタグ免疫沈降物とともにインキュベートした。p70βS6kとの特異的相互作用を抗GSTイムノブロッティングにより測定した。異なるシグナル蛋白および細胞骨格蛋白のSH3ドメインをGST融合タンパク質として細菌中で発現させ、グルタチオン-セファロース・ビーズを用いて精製しほぼ均一とした。GST/SH3融合タンパク質として使用したものは、次のとおりである。、GST(レーン1)、P13-キナーゼp80αサブユニット(レーン2)、GAP(レーン3)、PLCγ(レーン4)、スペクトリン(レーン5)、crk(レーン6)、n-grb2(レーン7)、c-grb2(レーン8)、grb2 full(レーン9)、csk(レーン10)、fgr(レーン11)、fyn(レーン12)、src(レーン13)、ruk a(レーン14)、rub b(レーン15)、rub c(レーン16)、p15(レーン17)、プロフィリン(レーン18)、および対照として(レーン19)。「↑」は、SH3含有融合タンパク質とp70βS6kとの結合が生じた例を示す。
【図8】 HEK293細胞中、一過的に過剰発現されたp70β-Iおよびp70β-IIアイソフォ
ームの抗p70βS6k抗体による免疫沈降およびウェスタンブロット解析を示す図である。各パネルともにレーンは同一である。すなわち、模擬トランスフェクション(レーン1)、Flag-p70α-Iでトランスフェクション(レーン2)、Flag-p70β-Iでトランスフェクション(レーン3)およびFlag-p70β-IIでトランスフェクション(レーン4)である。
【図9】 p70αS6kキナーゼ活性化のモデルを示す図である。p70αS6kの構造、タンパク質−タンパク質相互作用、活性化レベルおよびリン酸化状態の模式図でもある。
【図10】 p70βS6kの変異を示す図である。p70βS6kのアミノ酸401位のスレオニンからアスパラギン酸(T401D)への変更を含む置換変異の工程の模式図でもある。
【図11】 p70βS6k(T401D)活性を示す図である。S6キナーゼアッセイおよび自己リン酸化アッセイのもと、野生型p70βS6kと比較してのp70βS6k(T401D)変異体の活性を示す。
【図12】 p70αS6k(T412D)活性を示す図である。S6キナーゼアッセイおよび自己リン酸化アッセイのもと、野生型p70βS6kと比較してのp70βS6k(T412D)変異体の活性を示す。
【配列表】
Claims (21)
- (1)配列番号1の配列またはその相補体を有する単離された核酸分子、
(2)単離された核酸分子であって、該核酸分子がコードする蛋白質が配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ、前記蛋白質がリボゾームS6蛋白をリン酸化することができる核酸分子、および、
(3)配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする単離された核酸分子からなる群より選ばれる単離された核酸分子。 - 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質の断片をコードし、該断片はリボゾームS6蛋白をリン酸化することができる、単離された核酸分子。
- 前記核酸分子が配列番号1の77〜1564番目のヌクレオチドを有する、請求項1に記載の単離された核酸分子。
- 前記核酸分子が配列番号1の77〜1564番目のヌクレオチドからなる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
- 前記核酸分子が配列番号1の116〜1564番目のヌクレオチドを有する、請求項1に記載の単離された核酸分子。
- 前記核酸分子が配列番号1の116〜1564番目のヌクレオチドからなる、請求項1に記載の単離された核酸分子。
- 配列番号1の配列またはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リボゾームS6蛋白をリン酸化することができる蛋白質をコードする、単離された核酸分子。
- 前記核酸分子が1以上の発現制御要素に作動的に連結されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の単離された核酸分子。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の単離された核酸分子を有する、ベクター。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の単離された核酸分子を有する、形質転換された宿主細胞。
- 請求項9に記載のベクターを有する、宿主細胞。
- 前記宿主細胞が原核宿主細胞または真核宿主細胞である、請求項10に記載の宿主細胞。
- 請求項12に記載の宿主細胞を、前記核酸分子がコードするタンパク質を発現させる条件にて培養する工程を含む、タンパク質を製造する方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の単離された核酸分子がコードする、単離されたポリペプチド。
- 単離されたポリペプチドであって、
(1)配列番号2のアミノ酸配列、
(2)配列番号2の14〜495番目のアミノ酸、および、
(3)配列番号2のアミノ酸配列と95%の配列同一性を有し、かつ、前記ポリペプチドがリボゾームS6蛋白をリン酸化するアミノ酸配列からなる群より選ばれるアミノ酸配列を有する、単離されたポリペプチド。 - 前記ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列からなる、請求項15に記載の単離されたポリペプチド。
- 前記ポリペプチドが配列番号2の14〜495番目のアミノ酸からなる、請求項15に記載の単離されたポリペプチド。
- 請求項15〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドを有する、融合タンパク質。
- 配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質のエピトープに特異的に結合する、抗体または抗体断片。
- 前記抗体がモノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、およびヒト化抗体からなる群より選ばれる、請求項19に記載の抗体。
- 前記エピトープがプロリンリッチである、請求項20に記載の抗体。
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