JP2004339958A - 内燃機関の筒内吸入新気量推定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電気制御装置80は、吸気弁32を通過してシリンダ21内に吸入される吸気弁通過ガスの流量を絞り部を通過する流体の流量を表す式に基づいて計算する。電気制御装置は、吸気弁通過ガス流量の積算値Miが0より大きく、シリンダ内に吸入されているガスが新気であると判定すると、同新気の温度を用いて吸気弁通過ガス流量を計算する。また、積算値Miが0より小さく、シリンダ内に吸入されているガスが吸気通路に吹き返された既燃ガスであると判定すると、排気ガス温度を用いて吸気弁通過ガス流量を計算する。電気制御装置は、このように求められる吸気弁通過ガス流量を積分して筒内吸入新気量を推定する。
【選択図】 図10
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のシリンダ内に吸入される新気の量(筒内吸入新気量)等を推定する内燃機関の吸入新気量推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関により燃焼される混合気の空燃比を所望の値に制御したり、点火時期を適切に制御するためには、同内燃機関のシリンダ内に吸入される新気の量(以下、「筒内吸入新気量Ma」と称呼する。)を精度良く求める必要がある。新気とは大気のことであり燃焼ガスを含まない。通常、この筒内吸入新気量Maは、内燃機関の吸気通路に設けられた空気流量センサの出力値により推定される。ところが、スロットルバルブ開度が急激に変化する過渡運転状態においては、空気流量センサの出力値の挙動と実際の吸入新気量の挙動とが一致しなくなるため、空気流量センサの出力値に基いて筒内吸入新気量Maをあらゆる運転条件下で精度良く求めることは一般に困難である。
【0003】
そこで、近年においては、エネルギー保存則や運動量保存則等の物理法則に基づいて得られた式により吸気通路における空気の挙動を表すモデルを構築し、このモデルを用いることにより、筒内吸入新気量Maに応じた値を精度良く推定する種々の試みがなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−41095号公報(第4−12頁、図3、図4)
【0005】
本出願人は、このようなモデルの一つとして、質量保存則及びエネルギー保存則に基いてシリンダ(シリンダ内の空気)に関するモデル(シリンダモデル)を構築し、このモデルを用いて筒内吸入新気量Maを推定する技術を検討している。
【0006】
より具体的に述べると、上記シリンダモデルは、下記(1)式及び下記(2)式を基本として構築されている。
【0007】
【数1】
【0008】
【数2】
【0009】
(1)式は質量保存則に基づく式である。(1)式は「新気及び既燃ガスからなるシリンダ内のガスの量である筒内ガス量Mcの時間的変化量(dMc/dt)」は、「吸気弁の周囲を通過してシリンダ内に吸入されるガス(以下、「吸気弁通過ガス」と称呼する。)の流量である吸気弁通過ガス流量mi」と「排気弁の周囲を通過してシリンダ内に吸入されるガス(以下、「排気弁通過ガス」と称呼する。)の流量である排気弁通過ガス流量me」との和に等しいことを表している。なお、この場合、吸気弁通過ガス流量mi及び排気弁通過ガス流量meの何れも、シリンダ内にガスが流れ込む場合に正の値となるように規定されている。
【0010】
(2)式は、エネルギー保存則に基づく式である。(2)式は「シリンダ内のガスのエネルギーEの時間的変化量(dE/dt)」が、「吸気弁通過ガスにより単位時間あたりにシリンダ内のガスに与えられるエネルギーEi’」、「排気弁通過ガスにより単位時間あたりにシリンダ内のガスに与えられるエネルギーEe’」及び「シリンダ壁面からシリンダ内のガスに単位時間あたりに与えられる熱量(以下、「伝達熱流量」と称呼する。)Qw’」の和から「シリンダ内のガスが単位時間あたりにピストンに対して行う仕事W’」を減じた値に等しいことを表している。
【0011】
一方、吸気弁通過ガスにより単位時間あたりにシリンダ内のガスに与えられるエネルギーEi’は、下記(3)式に示したように、吸気弁通過ガス流量mi及び吸気弁通過ガス温度(吸気ガス温度)Tiに比例する。ここで、Cpiは吸気弁通過ガスの定圧比熱である。また、排気弁通過ガスにより単位時間あたりにシリンダ内のガスに与えられるエネルギーEe’は、下記(4)式に示したように、排気弁通過ガス流量me及び排気弁通過ガス温度(排気ガス温度)Teに比例する。ここで、Cpeは排気弁通過ガスの定圧比熱である。
【0012】
【数3】
Ei’=mi・Cpi・Ti …(3)
【0013】
【数4】
Ee’=me・Cpe・Te …(4)
【0014】
そこで、シリンダモデルは、(3)式及び(4)式の関係を(2)式に適用した式をエネルギー保存則に基づく式とし、その式と(1)式とを連立させることにより、シリンダ内のガスの圧力(以下、「筒内ガス圧力」と称呼する。)Pcとシリンダ内のガスの温度(以下、「筒内ガス温度」と称呼する。)Tcとを求めるようになっている。そして、このように求められた筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcは、下記(5)式乃至下記(8)式に適用され、これにより吸気弁通過ガス流量mi及び排気弁通過ガス流量meが更新される。なお、(5)式乃至(8)式は、絞り部を通過する流体の流量を求める一般的な式に基づく式である。Cdi,Cdeは流量係数であり、Ai,Aeは流路断面積である。
【0015】
【数5】
【0016】
【数6】
【0017】
【数7】
【0018】
【数8】
【0019】
(5)式又は(6)式により更新された吸気弁通過ガス流量mi及び(7)式又は(8)式により更新された排気弁通過ガス流量meは、上記(1)乃至(4)式に適用され、新たな筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcが求められる。その新たな筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcは、再び上記(5)式乃至(8)式に適用され、更に新たな吸気弁通過ガス流量mi及び排気弁通過ガス流量meが求められる。
【0020】
このように、吸気弁通過ガス流量mi、排気弁通過ガス流量me、筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcは順次更新されて行く。また、更新された吸気弁通過ガス流量miは、吸気弁開弁時から吸気弁閉弁時まで積算され、これにより筒内吸入新気量Maが推定される。更新された排気弁通過ガス流量meは、吸気弁開弁時から排気弁閉弁時まで積算され、これにより筒内に残留する既燃ガス量(以下、「筒内残留ガス量」と称呼する。)Meが推定される。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、内燃機関の吸気弁と排気弁は同時に開弁されている状態をとるときがある。即ち、図16の(A)における曲線LIN及び曲線LEXにより吸気弁及び排気弁のリフト量をそれぞれ示したように、吸気弁はクランク角が吸気上死点(TDC)前の所定クランク角θ0(時刻t0)となったときに開弁する。排気弁はこの時刻t0において依然として開弁していて、その後、クランク角が吸気上死点(TDC)後の所定クランク角θ2(時刻t2)となったときに閉弁する。この吸気弁と排気弁とが共に開弁している期間(時刻t0〜t2)は、バルブオーバーラップ時(VOL)と称呼される。
【0022】
かかるバルブオーバーラップ時の初期は、排気行程の後半であるから、燃焼室(シリンダ)の容積は減少している。従って、吸気弁上流ガス圧力Piは筒内ガス圧力Pc及び排気ガス圧力Peより小さいので、排気系(排気ポート及び排気管)に排出された既燃ガスが排気弁の周囲、シリンダ及び吸気弁の周囲を介して吸気通路(吸気系、即ち、スロットルバルブ下流の吸気通路を構成する吸気ポート及び吸気管)に吹き返される。この場合、吸気弁通過ガス流量miは(6)式により計算されて負の値となるから、図16の(B)に示したように、吸気弁通過ガス流量miの積算値は時刻t0から減少して負の値となる。
【0023】
その後、クランク角が吸気上死点(TDC)後の所定のクランク角θ1となると、排気弁は実質的に閉弁する(時刻t1)。この時点は吸気行程の初期であり、燃焼室(シリンダ)の容積は増大しているから、吸気弁上流ガス圧力Piは筒内ガス圧力Pcより大きくなる。従って、吸気通路に吹き返された既燃ガスは、吸気弁の周囲を介してシリンダ内に再度吸入され始める。この場合、吸気弁通過ガス流量miは(5)式により計算されて正の値となるから、図16の(B)に示したように、吸気弁通過ガス流量miの積算値は時刻t1から増大し始める。そして、時刻t4にて、吸気通路に吹き返された既燃ガスが総べてシリンダ内に吸入されると、新気がシリンダ内に吸入され始める。吸気弁通過ガス流量miの積算値は、時刻t4にて「0」となり、時刻t4以降は新気がシリンダ内に吸入されるから、最終的には筒内吸入新気量Maを表す値となる。
【0024】
ところで、吸気通路に吹き返された既燃ガスは燃焼直後のガスであるから、その温度は吸気通路に存在している新気の温度よりも高い。しかしながら、前述した装置は、吸気通路に吹き返された既燃ガスがシリンダ内に再吸入されるときに使用する吸気弁通過ガス流量miを求めるための(3)式において、吸気弁通過ガス温度Tiを吸気管内空気温度Tm(スロットルバルブ下流の新気の温度)と等しい温度に設定しているので、計算される吸気弁通過ガス流量miの絶対値が実際の吸気弁通過ガス流量の絶対値よりも大きくなる。その結果、図16の(B)において、破線により示したように、計算上の新気の吸入開始時刻t3(吸気弁通過ガス流量miの積算値が「0」に復帰する時点)が実際の新気の吸入開始時刻t4よりも早い時刻となり、それ故に筒内吸入新気量Maが実際の筒内吸入新気量と異なってしまうという問題がある。
【0025】
【発明の概要】
本発明による内燃機関の筒内吸入新気量推定装置は、上記課題に対処するためになされたものであって、吸気弁の周囲を通過して吸気通路からシリンダ内に吸入されているガスが「新気であるか」又は「同シリンダ内から同吸気通路へ吹き返された既燃ガスであるか」を判定し、その判定結果に応じて適切なガスの状態パラメータを選択することにより吸気弁を通過するガスの流量(吸気弁通過ガス流量)を推定する。従って、吸気弁通過ガス流量が精度良く求められるので、同吸気弁通過ガス流量に基づいて推定される筒内吸入新気量も精度良く求められる。
【0026】
より具体的に述べると、本発明による内燃機関の筒内吸入新気量推定装置は、内燃機関の吸気弁の周囲を通過して吸気通路からシリンダ内に吸入されているガスが新気であるか同シリンダ内から同吸気通路へ吹き返された既燃ガスであるかを判定する吸気弁通過ガス種判定手段と、前記シリンダ内に吸入されているガスが前記新気であると判定されているとき同新気の状態パラメータを使用して前記吸気弁の周囲を通過するガスの流量である吸気弁通過ガス流量を算出するとともに同シリンダ内に吸入されているガスが前記既燃ガスであると判定されているとき同既燃ガスの状態パラメータを使用して同吸気弁通過ガス流量を推定する吸気弁通過ガス流量算出手段と、前記算出された吸気弁通過ガス流量に基づいて前記シリンダ内に吸入される新気の量である筒内吸入新気量を推定する筒内吸入新気量推定手段とを備えている。状態パラメータとはガスの温度や比熱比を含む。
【0027】
これによれば、吸気弁通過ガス流量算出手段は、吸気弁の周囲を通過するガスの流量(吸気弁通過ガス流量)をそのガスの状態パラメータを使用しながら算出する。このとき、シリンダ内に吸入されているガスが新気であると判定されていれば、そのガスの状態パラメータとして新気の状態パラメータが使用される。一方、シリンダ内に吸入されているガスが既燃ガスであると判定されていれば、そのガスの状態パラメータとして既燃ガスの状態パラメータが使用される。従って、シリンダに吸入されているガスの種類に応じた状態パラメータにより吸気弁通過ガス流量が精度良く求められるので、同吸気弁通過ガス流量に基づいて算出される筒内吸入新気量が精度良く求められる。
【0028】
この場合、前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記吸気通路から前記シリンダ内にガスが吸入されているときに前記吸気弁通過ガス流量を正及び負の何れか一方の符号付きガス流量として、前記シリンダ内から前記吸気通路にガスが吹き返されているときに前記吸気弁通過ガス流量を正及び負の何れか他方の符号付きガス流量として、所定時間の経過毎に算出するように構成され、前記吸気弁通過ガス種判定手段は、前記算出された吸気弁通過ガス流量の前記吸気弁の開弁時からの積算値が同積算値の初期値(同積算値の初期値が0である場合は0)より大きいか否かに応じて前記シリンダ内に吸入されているガスが前記新気であるか前記既燃ガスであるかを判定するように構成されることが好適である。
【0029】
一般の内燃機関においては、吸気弁は排気行程の後半であって排気弁が閉弁する前に開弁する。このとき、吸気通路の圧力はシリンダ内の圧力より小さいので、排気通路に排出された排気ガス(既燃ガス)が排気弁の周囲、シリンダ及び吸気弁の周囲を介して吸気通路に吹き返す(逆流する)。この場合、吸気弁通過ガス流量算出手段は、吸気弁通過ガス流量を正及び負の何れか一方の符号を有する値として算出する。
【0030】
その後、吸気行程に進んで排気弁が実質的に閉弁するタイミングになると、吸気通路の圧力はシリンダ内の圧力より大きくなる。従って、吸気通路内に吹き返された既燃ガスは吸気弁の周囲を介して再びシリンダ内に吸入される。この場合、吸気弁通過ガス流量算出手段は、吸気弁通過ガス流量を正及び負の何れか他方の符号を有する値として算出する。
【0031】
従って、吸気弁通過ガス流量が精度良く算出されていれば、吸気弁が開弁されてからの吸気弁通過ガス流量の積算値は、吸気通路内に吹き返された既燃ガスの総べてがシリンダ内に吸入された時点で吸気弁が開弁されたときの積算の初期値に復帰する。かかる知見に基づき、上記筒内吸入新気量推定装置は、吸気弁通過ガス流量の積算値が同積算値の初期値より大きいか否かに応じて前記シリンダ内に吸入されているガスが前記新気であるか前記既燃ガスであるかを判定する。
【0032】
即ち、説明の便宜上、吸気弁通過ガス流量算出手段は、ガスがシリンダ内から吸気通路に逆流している場合に負の符号を有する吸気弁通過ガス流量、ガスが吸気通路からシリンダ内に流入している順流の場合に正の符号を有する吸気弁通過ガス流量を算出すると仮定し、且つ、吸気弁通過ガス流量の積算開始時(吸気弁が開弁したとき)における初期値を0と仮定すると、吸気弁通過ガス流量の積算値は吸気弁の開弁時から負の値となって減少する。そして、吸気弁通過ガス流量の積算値は、それまでに吸気通路に吹き返された既燃ガスが再びシリンダ内に吸入されはじめたときに増大を開始するとともに、吸気通路に吹き返された既燃ガスの総べてがシリンダ内に吸入された時点で0に復帰し、その後、正の値となって増大する。
【0033】
従って、吸気弁通過ガス流量の積算値が負の値であるときは既燃ガスが吸気通路へと吹き返されているか又はそれまでに吸気通路に吹き返された既燃ガスがシリンダへと吸入されていると判定することができる。また、吸気弁通過ガス流量の積算値が正の値であるときは、新気がシリンダへと吸入されていると判定することができる。吸気弁通過ガス種判定手段は、かかる知見に基づいてなされていて、吸気弁通過ガス流量の積算値が0(積算値の初期値)より大きいか否かを判定するという簡単な構成で、吸気弁通過ガスの種類を判定するのである。
【0034】
この場合、前記筒内吸入新気量推定装置は、前記吸気通路内の新気の温度を取得する新気温取得手段と、前記内燃機関の排気通路内の排気ガスの温度を取得する排気ガス温取得手段と、を備えるとともに、前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記新気の状態パラメータとして前記取得された新気の温度を使用するとともに前記既燃ガスの状態パラメータとして前記取得された排気ガスの温度を使用するように構成されていることが好適である。
【0035】
シリンダから吸気通路に吹き返されたガスの温度は、新気の温度よりも排気ガス温度により近いので、上記構成により、吸気通路に吹き返された既燃ガスをシリンダに再吸入するときの吸気弁通過ガス流量がより精度良く算出され得る。
【0036】
また、前記筒内吸入新気量推定装置は、前記吸気通路内の新気の温度を取得する新気温取得手段と、前記シリンダ内のガスの温度を取得する筒内ガス温取得手段と、を備えるとともに、前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記新気の状態パラメータとして前記取得された新気の温度を使用するとともに前記既燃ガスの状態パラメータとして前記取得されたシリンダ内のガスの温度を使用するように構成されていることが好適である。
【0037】
シリンダから吸気通路に吹き返されたガスは、排気通路からシリンダ内を通過して吸気通路に吹き返されたガスであるから、その温度は新気の温度よりもシリンダ内のガスの温度により近い。従って、上記構成により、吸気通路に吹き返された既燃ガスをシリンダに再吸入するときの吸気弁通過ガス流量がより精度良く算出され得る。
【0038】
また、前記筒内吸入新気量推定装置は、前記吸気通路内の新気の温度を取得する新気温取得手段と、前記吸気弁の周囲を通過して前記シリンダから前記吸気通路へ吹き返された既燃ガスのエネルギーを取得するとともに同取得した既燃ガスのエネルギーに基づいて同既燃ガスの温度を取得する吹き返しガス温取得手段と、を備えるとともに、前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記新気の状態パラメータとして前記取得された新気の温度を使用するとともに前記既燃ガスの状態パラメータとして前記取得された既燃ガスの温度を使用するように構成されていることが好適である。
【0039】
これによれば、シリンダから吸気通路へ吹き返された既燃ガスのエネルギーが取得され、その取得された既燃ガスのエネルギーに基づいて同既燃ガスの温度が推定される。そして、この既燃ガスの温度は、吸気通路へ吹き返された既燃ガスがシリンダへと再吸気されているときに、吸気弁通過ガス流量を求めるための状態パラメータとして使用される。従って、シリンダから吸気通路に吹き返された既燃ガスがシリンダに再吸入されるときの吸気弁通過ガス流量がより精度良く算出され得る。
【0040】
また、前記筒内吸入新気量推定装置は、前記吸気通路内の新気の比熱比を取得する新気比熱比取得手段と、前記排気通路内の排気ガスの比熱比を取得する排気ガス比熱比取得手段と、を備えるとともに、前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記新気の状態パラメータとして前記取得された新気の比熱比を使用するとともに前記既燃ガスの状態パラメータとして前記取得された排気ガスの比熱比を使用するように構成されることが好適である。
【0041】
これによれば、吸気通路からシリンダ内に吸入されるガスの比熱比が実際の比熱比により近似した値となるので、吸気弁通過ガス流量が一層精度よく推定され得る。
【0042】
また、上記何れかの筒内吸入新気量推定装置において、前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記吸気弁の周囲に形成されるガス通路を絞り部とみなしたときに成立する同絞り部を通過するガス流量を算出する式に基づいて前記吸気弁通過ガス流量を算出するように構成されることが好適である。
【0043】
吸気弁が開弁した状態においては、吸気弁の開弁により形成されるガス通路は絞り部(オリフィス)とみなすことができるので、上記構成により吸気弁通過ガス流量がより精度良く推定される。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による内燃機関の吸入新気量推定装置(この装置は、筒内吸入空気量推定装置、筒内吸入ガス量推定装置、筒内残留ガス量推定装置と称呼することもできる。)の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。この吸入新気量推定装置は燃料噴射量制御装置の一部である。図1は、係る燃料噴射量制御装置を火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。なお、図1は、特定気筒の断面のみを示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
【0045】
内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース、及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
【0046】
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23、及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
【0047】
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともに同インテークカムシャフトの位相角及び同吸気弁32の吸気弁リフト量(最大吸気弁リフト量)を連続的に変更し得る吸気弁制御装置33、吸気弁制御装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。
【0048】
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し同吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットルバルブ43及びスワールコントロールバルブ(以下、「SCV」と称呼する。)44を備えている。スロットルバルブ43は、DCモータからなるスロットルバルブアクチュエータ43aにより吸気管41内で回転駆動されるようになっている。SCV44は、前記スロットルバルブ43よりも下流で前記インジェクタ39よりも上流の位置にて前記吸気管41に対し回動可能に支持されるとともに、DCモータからなるSCVアクチュエータ44aにより回転駆動されるようになっている。
【0049】
排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51に接続された排気管52及び排気管52に介装された触媒コンバータ(三元触媒装置)53を備えている。
【0050】
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、吸気温センサ62、大気圧センサ(スロットルバルブ上流圧力センサ)63、スロットルポジションセンサ64、SCV開度センサ65、カムポジションセンサ66、吸気弁リフト量センサ67、クランクポジションセンサ68、水温センサ69、空燃比センサ(O2センサ)70及びアクセル開度センサ71を備えている。
【0051】
エアフローメータ61は、内燃機関10の吸気通路内を流れる空気の流量(吸入空気流量)を実際に測定し、測定した吸入空気流量AFMを表す信号を出力するようになっている。吸気温センサ62は、エアフローメータ61内に備えられていて、吸入空気の温度を検出し、吸気温度Taを表す信号を出力するようになっている。大気圧センサ63は、スロットルバルブ43の上流の圧力(即ち、大気圧)を検出し、スロットルバルブ上流圧力Paを表す信号を出力するようになっている。スロットルポジションセンサ64は、スロットルバルブ43の開度(スロットルバルブ開度)を検出し、スロットルバルブ開度TAを表す信号を出力するようになっている。SCV開度センサ65は、SCV44の開度を検出し、SCV開度θivを表す信号を出力するようになっている。
【0052】
カムポジションセンサ66は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。吸気弁リフト量センサ67は、吸気弁32のリフト量を検出し、吸気弁32が全閉のとき「0」の値をとる吸気弁リフト量Liを表す信号を出力するようになっている。クランクポジションセンサ(エンジン回転速度センサ)68は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度NEを表す。
【0053】
水温センサ69は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。O2センサ70は、触媒コンバータ53に流入する排ガス中の酸素濃度に応じた信号(排ガスの空燃比に応じた値)を出力するようになっている。アクセル開度センサ71は、運転者によって操作されるアクセルペダルの操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
【0054】
電気制御装置80は、互いにバスで接続された、CPU81、ROM82、RAM83、バックアップRAM84、及びインターフェース85等からなるマイクロコンピュータである。ROM82は、テーブル(マップ)及び定数等を予め記憶するようになっている。RAM83は、CPU81の必要に応じてデータを一時的に格納するようになっている。バックアップRAM84は、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するようになっている。インターフェース85は、ADコンバータを含み、前記センサ61〜71と接続され、CPU81にセンサ61〜71からの信号を供給するとともに、CPU81の指示に応じて吸気弁制御装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39、スロットルバルブアクチュエータ43a及びSCVアクチュエータ44a等に駆動信号を送出するようになっている。
【0055】
次に、上記のように構成された燃料噴射量制御装置による燃料噴射量の決定方法(筒内吸入新気量Maの推定方法)について説明する。
【0056】
(燃料噴射量fcの決定方法・筒内吸入新気量の推定方法)
燃料噴射量制御装置は、吸気行程にある気筒の吸気弁32が閉じる前に同気筒に対して燃料を噴射しなければならない。このため、燃料噴射量制御装置は、吸気弁32が閉じた時点で(即ち、吸気弁閉時に)同気筒内に吸入されているであろう筒内吸入新気量Maを吸気弁32が閉弁する前に予測し、fc=kλ・Maなる式に基いて燃料噴射量(基本噴射量)fcを決定する。ここで、kλは運転状態に応じて変化する設定空燃比に基づく係数である。そして、燃料噴射量制御装置は、吸気行程にある気筒のインジェクタ39から、その気筒の吸気弁32が閉弁するよりも前の時点で前記決定された燃料噴射量fcの燃料を噴射する。
【0057】
以下、燃料噴射量制御装置について具体的に説明する。図2は、この燃料噴射量制御装置の機能ブロック図である。燃料噴射量制御装置は、電子制御スロットルモデルM1、スロットルモデルM2、吸気管モデルM3、吸気弁モデルM4、シリンダモデルM5及び排気弁モデルM6からなるシミュレーションモデルを用いて筒内吸入新気量Maを推定するようになっている。
【0058】
これらのモデルM1〜M6における計算は、CPU81が所定時間(プログラム実行間隔時間Δt)の経過毎に各モデルに対応するプログラムを実行することにより達成される。また、以下に述べる微分方程式は、実際には離散化されることによりその解が求められる。更に、燃料噴射量制御装置は、スロットルバルブ電子制御ロジックA1を備え、スロットルバルブアクチュエータ43aを介してスロットルバルブ43の開度を制御するようになっている。以下、各モデルについて順に説明する。
【0059】
(電子制御スロットルモデルM1及びスロットルバルブ電子制御ロジックA1)
電子制御スロットルモデルM1は、現時点までのアクセルペダル操作量Accpに基づいて現時点から所定時間T0先の時刻tにおけるスロットルバルブ開度θtを推定するモデルである。
【0060】
具体的に述べると、スロットルバルブ電子制御ロジックA1は、アクセルペダル操作量Accpと目標スロットルバルブ開度θrとの関係を規定する図3に示したテーブル及びアクセル開度センサ71により検出された実際の(現時点の)アクセルペダル操作量Accpに基づいて暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1を所定時間(例えば、2msec)の経過毎に決定する。アクセルペダル操作量Accpと目標スロットルバルブ開度θrとの関係を規定するテーブル(マップ)は、アクセルペダル操作量Accpが増大するとともに目標スロットルバルブ開度θrが増大するようにこれらの関係を規定している。
【0061】
また、スロットルバルブ電子制御ロジックA1は、暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1を所定時間T(例えば、64msec)だけ遅延させた値、即ち、現時点より所定時間Tだけ前の時点にて決定された暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1を、現時点での最終的な目標スロットルバルブ開度θrとして決定する。そして、スロットルバルブ電子制御ロジックA1は、実際のスロットルバルブ開度TAが現時点の目標スロットルバルブ開度θrとなるようにスロットルバルブアクチュエータ43aに対して駆動信号を送出する。
【0062】
このように、目標スロットルバルブ開度θrは、現時点から所定時間Tだけ前の時点におけるアクセルペダル操作量Accpに応じて決定された暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1と等しいから、現時点から所定時間T0だけ先の時刻tにおける目標スロットルバルブ開度θrは現時点から時間(T−T0)前における暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1と等しい。また、現時点から時間(T−T0)前における暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1は、スロットルバルブアクチュエータ43aの作動遅れ時間を無視すれば、時刻tにおけるスロットルバルブ開度θtと等しい。
【0063】
このような考えに基づき、電子制御スロットルモデルM1は、現時点から所定時間T0だけ先の時刻tにおけるスロットルバルブ開度θtを推定する。即ち、現時点から時間(T−T0)前における暫定的な目標スロットルバルブ開度θr1を現時点から所定時間T0だけ先の時刻tにおけるスロットルバルブ開度θtとして推定する。なお、スロットルバルブアクチュエータ43aの作動遅れ時間を考慮に加えて、スロットルバルブ開度θtを推定してもよい。
【0064】
(スロットルモデルM2)
スロットルモデルM2は、スロットルバルブ43を通過する空気流量((以下、「スロットル通過空気流量」と称呼する。)mtを、エネルギー保存則、運動量保存則、質量保存則及び状態方程式等の物理法則に基づいて得られた下記(9)式及び下記(10)式に基づいて推定するモデルである。
【0065】
下記(9)式及び下記(10)式において、Ct(θt)はスロットルバルブ開度θtに応じて変化する流量係数、At(θt)はスロットルバルブ開度θtに応じて変化するスロットル開口面積(吸気管41の開口面積)、Paはスロットルバルブ上流圧力(即ち、大気圧)、Pmは吸気管内空気圧力(吸気管圧力)、Taは吸気温度(大気温度)、Tmはスロットルバルブ43の下流の吸気管内空気温度、Rは気体定数、及びκは比熱比(ここではκを一定値として扱う。)である。スロットルモデルM2は、スロットルバルブ上流圧力Paが吸気管内空気圧力Pmより大きい順流の場合(Pa≧Pm)に(9)式を使用し、スロットルバルブ上流圧力Paが吸気管内空気圧力Pmより小さい逆流の場合(Pa<Pm)に(10)式を使用する。
【0066】
【数9】
【0067】
【数10】
【0068】
上記(9)式及び(10)式において、θtは電子制御スロットルモデルM1により推定された現時点から所定時間T0だけ先の時刻tにおける推定スロットルバルブ開度である。スロットルモデルM2は、スロットルバルブ開度θtと流量係数Ct(θt)との関係を規定した図4に示すテーブル及び前記推定したスロットルバルブ開度θtを用いて流量係数Ct(θt)を求めるとともに、スロットルバルブ開度θtと開口面積At(θt)との関係を規定した図5に示すテーブル及び前記推定したスロットルバルブ開度θtとを用いて開口面積At(θt)を求める。
【0069】
なお、スロットルモデルM2は、スロットルバルブ開度θtと積値Ct(θt)・At(θt)との関係を規定した図6に示すテーブル及び前記推定したスロットルバルブ開度θtを用いて積値Ct(θt)・At(θt)を一時に求めるように構成してもよい。また、スロットルモデルM2は、スロットルバルブ開度θt及び吸気管内空気圧力Pmと流量係数Ct(θt,Pm)との関係を規定したテーブルMapCt(θt,Pm)と、前記推定したスロットルバルブ開度θt及び後述する吸気管モデルM3から取得される吸気管内空気圧力Pmと、を用いて、流量係数Ct(θt)に代わる流量係数Ct(θt,Pm)を求めるように構成されていてもよい。
【0070】
スロットルモデルM2は、スロットルバルブ上流圧力Pa及び吸気温度Taを大気圧センサ63及び吸気温センサ62からそれぞれ取得するとともに、吸気管内空気圧力Pmと吸気管内空気温度Tmとを後述する吸気管モデルM3から取得し、これらの値を用いて上記(9)式又は(10)式の計算を行い、時刻tにおけるスロットル通過空気流量mtを推定する。なお、吸気管モデルM3は、後述するように、スロットルモデルM2の出力であるスロットル通過空気流量mtを用いて計算を行う。従って、スロットルモデルM2が吸気管モデルM3から取得する吸気管内空気圧力Pmと吸気管内空気温度Tmは、前回の(現時点からプログラム実行間隔時間Δtだけ前の)計算タイミングにて同吸気管モデルM3が計算していた値である。かかる計算手法は、他のモデルにおいても同様に使用される。
【0071】
ここで、上記スロットルモデルM2を記述した(9)式及び(10)式の導出過程について説明する。いま、スロットルバルブ43の上流の開口断面積をAu、空気密度をρu、空気の流速をvuとし、スロットルバルブ43による吸気管41の開口断面積をAd、そこでの空気密度をρd、スロットルバルブ43を通過する空気の流速をvdとすると、スロットル通過空気流量mtは、下記(11)式で表される。(11)式は質量保存則を記述した式と言える。
【0072】
【数11】
mt=Ad・ρd・vd=Au・ρu・vu …(11)
【0073】
一方、運動エネルギーは、空気の質量をmとすると、スロットルバルブ43の上流でm・vu2/2であり、スロットルバルブ43を通過する場所でm・vd2/2である。他方、熱エネルギーは、スロットルバルブ43の上流でm・Cp・Tuであり、スロットルバルブ43を通過する場所でm・Cp・Tdである。従って、エネルギー保存則により、下記(12)式が得られる。なお、Tuはスロットルバルブ上流の空気温度、Tdはスロットルバルブ下流の空気温度、Cpは定圧比熱である。
【0074】
【数12】
m・vu2/2+m・Cp・Tu=m・vd2/2+m・Cp・Td …(12)
【0075】
ところで、状態方程式は下記(13)式、比熱比κは下記(14)式、マイヤーの関係は下記(15)式で示されるから、(13)式〜(15)式よりCp・Tは下記(16)式のように表される。なお、Pは気体の圧力、ρは気体の密度、Tは気体の温度、Rは気体定数、Cvは定容比熱である。
【0076】
【数13】
P=ρ・R・T …(13)
【0077】
【数14】
κ=Cp/Cv …(14)
【0078】
【数15】
Cp=Cv+R …(15)
【0079】
【数16】
Cp・T={κ/(κ−1)}・(P/ρ) …(16)
【0080】
上記(16)式の関係を用いて上記エネルギー保存則に基づく(12)式を書換えると、下記(17)式が得られる。
【0081】
【数17】
vu2/2+{κ/(κ−1)}・(Pu/ρu)=vd2/2+{κ/(κ−1)}・(Pd/ρd) …(17)
【0082】
そして、スロットルバルブ43の無限上流を考えると、Au=∞、vu=0であるから、エネルギー保存則に基づく上記(17)式は下記(18)式に書き換えられる。
【0083】
【数18】
{κ/(κ−1)}・(Pu/ρu)=vd2/2+{κ/(κ−1)}・(Pd/ρd) …(18)
【0084】
次に、運動量について記述する。断面積Auの部分に加わる圧力をPu、断面積Adの部分に加わる圧力をPd、断面積Auの部分と断面積Adの部分との間をつなぐ固定された空間の平均圧力をPmeanとすると、下記(19)式が得られる。
【0085】
【数19】
ρd・vd2・Ad−ρu・vu2・Au=Pu・Au−Pd・Ad+Pmean・(Ad−Au) …(19)
【0086】
上記(19)式で、Au=∞、vu=0を考慮すると、下記(20)式が得られるので、同(20)式と上記(19)式とから下記(21)式の運動量に関する関係(運動量保存則に基づく関係)が得られる。
【0087】
【数20】
Pmean=Pu …(20)
【0088】
【数21】
ρd・vd2=Pu−Pd …(21)
【0089】
従って、上記(11)式、上記(18)式、及び上記(21)式から、下記(22)式が得られる。
【0090】
【数22】
【0091】
上記(22)式において、Puはスロットルバルブ上流圧力Paであり、Pdは吸気管内空気圧力Pmである。また、ρu=Pu/(R・Tu)である。これらの関係を使用するとともに、上記(22)式に流量係数Ct(θt)を適合のための係数として導入し、開口断面積Adを開口面積At(θt)とおきなおして整理すると、上記(9)式が得られる。上記(10)式の導出過程は、上記(9)式の導出過程と同様であるので省略する。
【0092】
なお、(9)式及び(10)式は絞り部(オリフィス)を通過する流体の流量msを表す一般的な下記(23)式乃至(25)式から求めることができる。(23)式及び(24)式において、Cは流量係数、Aは絞り部の開口面積、Puは絞り部の上流の圧力、Tuは絞り部の上流のガス温度、Pdは絞り部の下流の圧力、Tdは絞り部の下流のガス温度である。(25)式は、関数Φを定義する式であり、(25)式の上段は流速が音速以下の場合、下段は流速が音速になる場合に使用される。
【0093】
【数23】
【0094】
【数24】
【0095】
【数25】
【0096】
(吸気管モデルM3)
吸気管モデルM3は、質量保存則とエネルギー保存則とにそれぞれ基づいた下記(26)式及び下記(27)式、スロットル通過空気流量mt、スロットル通過空気温度(即ち、吸気温度)Ta及び吸気管から流出する空気流量である吸気弁通過ガス流量miから、吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmを求めるモデルである。なお、下記(26)式及び下記(27)式において、Vmはスロットルバルブ43から吸気弁32までの吸気管41(以下、単に「吸気管部」と称呼する。)の容積である。
【0097】
【数26】
d(Pm/Tm)/dt=(R/Vm)・(mt−mi) …(26)
【0098】
【数27】
dPm/dt=κ・(R/Vm)・(mt・Ta−mi・Tm) …(27)
【0099】
吸気管モデルM3は、上記(26)式及び上記(27)式におけるスロットル通過空気流量mtをスロットルモデルM2から取得し、吸気弁通過ガス流量miを後述する吸気弁モデルM4から取得する。そして、(26)式及び(27)式に基づく計算を行って、現時点から所定時間T0だけ先の時刻tにおける吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmを求める。
【0100】
ここで、上記吸気管モデルM3を記述した(26)式及び(27)式の導出過程について説明する。いま、吸気管部の総空気量をMとすると、総空気量Mの時間的変化は、吸気管部に流入する空気量に相当するスロットル通過空気流量mtと同吸気管部から流出する空気量に相当する吸気弁通過ガス流量miの差であるから、質量保存則に基づく下記(28)式が得られる。
【0101】
【数28】
dM/dt=mt−mi …(28)
【0102】
また、状態方程式は下記(29)式となるから、上記(28)式と下記(29)式とから総空気量Mを消去することにより、質量保存則に基づく上記(26)式が得られる。
【0103】
【数29】
Pm・Vm=M・R・Tm …(29)
【0104】
次に、吸気管部に関するエネルギー保存則について検討する。この場合、吸気管部の容積Vmは変化せず、また、エネルギーの殆どが温度上昇に寄与する(運動エネルギーは無視し得る)と考えられる。従って、吸気管部の空気のエネルギーM・Cv・Tmの時間的変化量は、同吸気管部に流入する空気のエネルギーCp・mt・Taと同吸気管部から流出する空気のエネルギーCp・mi・Tmとの差に等しいので、下記(30)式が得られる。
【0105】
【数30】
d(M・Cv・Tm)/dt=Cp・mt・Ta−Cp・mi・Tm …(30)
【0106】
この(30)式を、上記(14)式(κ=Cp/Cv)と、上記(29)式(Pm・Vm=M・R・Tm)とを用いて変形することにより、上記(27)式が得られる。
【0107】
(吸気弁モデルM4)
吸気弁モデルM4は、図7に示した吸気弁32の周囲を通過する空気流量である吸気弁通過ガス流量miを、エネルギー保存則、運動量保存則、質量保存則及び状態方程式等の物理法則に基づいて得られた下記(31)式及び下記(32)式にしたがって推定するモデルである。
【0108】
(31),(32)式の導出過程は、上記スロットルモデルM2の場合と同様である。(31)式及び(32)式において、Cdi(Li)は吸気弁32のリフト量Liに応じて変化する流量係数、Ai(Li)は同リフト量Liに応じて変化する吸気弁32の周囲に形成される開口の面積、Tiは吸気弁32の上流部のガス温度(吸気弁を通過するガスの温度であり、(以下、「吸気弁通過ガス温度Ti」と称呼する。))、及びPcは筒内ガス圧力(シリンダ21内の圧力Pc)である。
【0109】
吸気弁モデルM4は、吸気弁上流ガス圧力Piが筒内ガス圧力Pcより大きい順流の場合に(31)式を使用し、吸気弁上流ガス圧力Piが筒内ガス圧力Pcより小さい逆流の場合に(32)式を使用する。このように、吸気弁通過ガス流量miは、シリンダ21内にガスが吸入されている場合に正、シリンダ21内からガスが吸気通路に吹き返されている場合に負の値をとるように規定されている。
【0110】
【数31】
【0111】
【数32】
【0112】
吸気弁モデルM4は、現時点から所定時間T0だけ先の時刻tにおける吸気弁リフト量Li(t)を推定する。この推定は、吸気弁リフト量センサ67が検出している現時点のリフト量Liとエンジン回転速度NEとに基づいてなされてもよく、現時点のクランク角とエンジン回転速度NEを含む運転状態に応じて予め設定されるリフト量マップとに基いてなされてもよい。そして、吸気弁モデルM4は、吸気弁リフト量Liと積値Cdi(Li)・Ai(Li)との関係を規定した図8に示したテーブルと、前記推定した吸気弁リフト量Li(t)とに基づいて、上記(31)式及び上記(32)式にて使用する積値Cdi(Li)・Ai(Li)を求める。
【0113】
吸気弁モデルM4は、後にフローチャートを参照しながら詳述するように、吸気弁上流ガス圧力Piを吸気管モデルM3から取得される吸気管内空気圧力Pmと等しい値に設定する。吸気弁モデルM4は、上記(31)式における吸気弁通過ガス温度Tiを、シリンダ21が新気を吸入している場合には吸気管モデルM3から取得される吸気管内空気温度Tmと等しい値に設定し、シリンダ21が吸気通路に吹き返された既燃ガスを吸入している場合には排気ガス温度Teに設定する。吸気弁モデルM4は、筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcを後述するシリンダモデルM5から取得する。吸気弁モデルM4は、これらの変数を用いて上記(31)式又は上記(32)式に基づく計算を行うことで、時刻tにおける吸気弁通過ガス流量miを推定する。
【0114】
なお、上記(31)式及び上記(32)式に代え、これらと等価な(33)式乃至下記(35)式により吸気弁通過ガス流量miを求めても良い。これらの式において、Cdi=Cdi(Li)、Ai=Ai(Li)である。(35)式は、(25)式で説明した関数Φを定義する式であり、(35)式の上段は流速が音速以下の場合、下段は流速が音速になる場合に使用される。なお、(31)式〜(35)式は、吸気弁32の周囲に形成されるガス通路を絞り部とみなしたときに成立する同絞り部を通過するガス流量を算出する一般的な式である。
【0115】
【数33】
【0116】
【数34】
【0117】
【数35】
【0118】
(シリンダモデルM5)
シリンダモデルM5は、シリンダ21(燃焼室25)内の空気についての質量保存則及びエネルギー保存則に基づいた下記(36)式及び下記(37)式にしたがって、筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcを求めるモデルである。図7に示したように、Vcはシリンダ21(燃焼室25)の容積、Tiは吸気弁通過ガス温度(吸気ガス温度)、miは吸気弁通過ガス流量、meは排気弁通過ガス流量、Teは排気ガス温度(排気弁通過ガス温度)である。
【0119】
κc,κi及びκeは、それぞれシリンダ21内のガスの比熱比(筒内ガス比熱比)、吸気弁通過ガスの比熱比及び排気ガス(排気弁通過ガス)の比熱比であり、ここでは一定値κとして扱う。Rc,Ri及びReは、それぞれシリンダ21内のガスの気体定数、吸気弁通過ガスの気体定数及び排気ガスの気体定数であり、ここでは一定値Rとして扱う。Qw’はシリンダ21内のガスに同シリンダ21(シリンダ壁面)から伝達される単位時間あたりの熱量(伝達熱流量、熱流)である。
【0120】
【数36】
【0121】
【数37】
【0122】
(36)式及び(37)式における時刻tの吸気弁通過ガス流量miは吸気弁モデルM4により与えられ、排気弁通過ガス流量meは後述する排気弁モデルM6により与えられる。時刻tのシリンダ容積Vcはクランクポジションセンサ68が検出している実際のクランク角とエンジン回転速度NEとから求めることができる。時刻tの吸気弁通過ガス温度Tiは前述した吸気弁モデルM4と同様に取得される。排気ガス温度Teは、総べての気筒の排気弁通過ガス流量meを積算(積分、時間積分)して得られる単位時間あたりの排気ガス量Ge(又は、総べての気筒の吸気弁通過ガス流量miを積分(時間積分)して得られる単位時間あたりの吸入ガス量Ga)、総べて気筒の燃料噴射量fcを積分(時間積分)して得られる単位時間あたりの燃料量Gf及びエンジン回転速度NEの関数(マップ値)として求められる。なお、排気ポート34に排気ガス温度センサを設置し、この排気ガス温度センサの出力から排気ガス温度Teを求めてもよい。
【0123】
伝達熱流量Qw’は比較的小さいので、この例においては無視する。以上のことから、(36)式及び(37)式に基づいて筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcが求められる。なお、実際には、筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcは、(36)式及び(37)式が離散化された式により求められる。
【0124】
ここで、上記(36)式の導出過程について説明する。先ず、質量保存則に基づけば、下記(38)式を得ることができる。Mcはシリンダ21内のガス量(筒内ガス量)である。(38)式は「新気及び既燃ガスからなるシリンダ内のガスの量である筒内ガス量Mcの時間的変化量(dMc/dt)」は、「吸気弁通過ガス流量mi」と「排気弁通過ガス流量me」との和に等しいことを表している。
【0125】
【数38】
【0126】
一方、気体の状態方程式は下記の(39)式のとおりである。
【0127】
【数39】
【0128】
(38)式に(39)式を適用して筒内ガス量Mcを消去することにより下記(40)式が得られる。(40)式を変形すると下記(41)式が得られ、(41)式を整理することにより上記(36)式が得られる。
【0129】
【数40】
【0130】
【数41】
【0131】
次に、上記(37)式の導出過程について説明する。先ず、エネルギー保存則に基づけば、下記(42)式を得ることができる。
【0132】
【数42】
【0133】
(42)式において、Eはシリンダ内のガスのエネルギー、Ei’は吸気弁通過ガスにより単位時間あたりにシリンダ内のガスに与えられるエネルギー、Ee’は排気弁通過ガスにより単位時間あたりにシリンダ内のガスに与えられるエネルギー、W’はシリンダ内のガスが単位時間あたりにピストンに対して行う仕事、及びQw’はシリンダ壁面からシリンダ内のガスに単位時間あたりに与えられる熱量(伝達熱流量)である。
【0134】
(42)式は、「シリンダ内のガスのエネルギーEの時間的変化量(dE/dt)」が、「吸気弁通過ガスにより単位時間あたりにシリンダ内のガスに与えられるエネルギーEi’」と、「排気弁通過ガスにより単位時間あたりにシリンダ内のガスに与えられるエネルギーEe’」と、「伝達熱流量Qw’」との和から、「シリンダ内のガスが単位時間あたりにピストンに対して行う仕事W’」を減じた値に等しいというエネルギー保存則を表している。
【0135】
ここで(42)式の各変数について検討すると、シリンダ内のガスのエネルギーEの時間的変化量(dE/dt)について、uを内部エネルギー、Cvcをシリンダ内のガスの定容比熱とするとき、下記(43)式が成立する。
【0136】
【数43】
【0137】
また、吸気弁通過ガスにより単位時間あたりにシリンダ内のガスに与えられるエネルギーEi’について下記(44)式が成立する。(44)式において、hiは吸気弁通過ガスのエンタルピーであり、Cpiは吸気弁通過ガスの定圧比熱である。なお、エンタルピーhは、h=Cp・T(Cpは対象とするガスの定圧比熱、Tはそのガスの温度)と定義される。
【0138】
【数44】
【0139】
同様に、排気弁通過ガスにより単位時間あたりにシリンダ内のガスに与えられるエネルギーEe’について下記(45)式が成立する。(45)式において、heは排気弁通過ガスのエンタルピーであり、Cpeは排気弁通過ガスの定圧比熱である。
【0140】
【数45】
【0141】
更に、シリンダ内のガスが単位時間あたりにピストンに対して行う仕事W’については、下記(46)式が成立する。
【0142】
【数46】
【0143】
これら(43)式乃至(46)式を(42)式に適用すると、下記(47)式が得られる。
【0144】
【数47】
【0145】
この(47)式に下記(48)式の気体の状態方程式を適用して筒内ガス量Mcを消去すると、下記(49)式が得られる。
【0146】
【数48】
【0147】
【数49】
【0148】
一方、上記(14)式(κ=Cp/Cv)及び上記(15)式(Cp=Cv+R)から、ガスj(j=i,c,e)について下記(50)式及び下記(51)式が成立する。この(50)式及び(51)式を(49)式に適用することにより、上記(37)式が得られる。
【0149】
【数50】
【0150】
【数51】
【0151】
なお、本例のシリンダモデルM6は、比熱比κi,κe,κcを一定の比熱比κ、気体定数Ri,Re,Rcを一定の気体定数Rとして扱って、計算を行うようになっている。
【0152】
(排気弁モデルM6)
排気弁モデルM6は、図7に示した排気弁35の周囲を通過する空気流量(即ち、排気弁通過ガス流量)meを、エネルギー保存則、運動量保存則、質量保存則、及び状態方程式等の物理法則に基づいて得られた下記(52)式及び下記(53)式にしたがって推定するモデルである。
【0153】
(52),(53)式の導出過程は、上記スロットルモデルM2の場合と同様である。(52)式及び(53)式において、Cde(Le)は排気弁35のリフト量Leに応じて変化する流量係数、Ae(Le)は同リフト量Leに応じて変化する排気弁35の周囲に形成される開口の面積、Teは排気ガス温度、Pcは筒内ガス圧力及びPeは排気ガス圧力(排気弁35の下流側のガスの圧力)である。
【0154】
排気弁モデルM6は、排気ガス圧力Peが筒内ガス圧力Pcより大きい場合に(52)式を使用し、排気ガス圧力Peが筒内ガス圧力Pcより小さい場合に(53)式を使用する。このように、排気弁通過ガス流量meは、排気系からシリンダ21内にガスが吸入されている場合に正、シリンダ21内からガスが排気系に排出されている場合に負の値をとるように規定されている。
【0155】
【数52】
【0156】
【数53】
【0157】
排気弁モデルM6は、現時点から所定時間T0だけ先の時刻tにおける排気弁リフト量Le(t)を推定する。この推定は、現時点のクランク角とエンジン回転速度NEとに基づいて行われ得る。そして、排気弁モデルM6は、排気弁リフト量Leと積値Cde(Le)・Ae(Le)との関係を規定した図9に示したテーブルと、前記推定した排気弁リフト量Le(t)とに基づいて、上記(52)式及び上記(53)式にて使用する積値Cde(Le)・Ae(Le)を求める。
【0158】
排気弁モデルM6は、排気ガス圧力Peを、総べての気筒の排気弁通過ガス流量meを積算(時間積分)して得られる単位時間あたりの排気ガス量Ge(又は、総べての気筒の吸気弁通過ガス流量miを積算(時間積分)して得られる単位時間あたりの吸入ガス量Ga)の関数として求める。なお、排気ポート34に排気圧力センサを設置し、この排気圧力センサの出力から排気ガス圧力Peを求めてもよい。
【0159】
また、排気弁モデルM6は、排気ガス温度Teを、排気弁通過ガス流量meを積算(時間積分)して得られる単位時間あたりの排気ガス量Ge、総べての気筒の燃料噴射量fcを積算(時間積分)して得られる単位時間あたりの燃料量Gf及びエンジン回転速度NEの関数(マップ値)として求める。排気弁モデルM6は筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度TcをシリンダモデルM5から取得する。排気弁モデルM6は、これらの変数を用いて上記(52)式又は上記(53)式を計算することで、時刻tにおける排気弁通過ガス流量meを推定する。
【0160】
なお、上記(52)式及び上記(53)式に代え、これらと等価な下記(54)式、下記(55)式及びΦの定義式である上記(25)式により排気弁通過ガス流量meを求めても良い。これらの式において、Cde=Cde(Le)、Ae=Ae(Le)である。
【0161】
【数54】
【0162】
【数55】
【0163】
本燃料噴射量制御装置は、このような一連の計算により求められる吸気弁通過ガス流量miを吸気弁32が開弁する時刻topenから同吸気弁32が閉弁する時刻tclseまで時間積分することにより、一吸気行程にてシリンダ21内に吸入される筒内吸入新気量Maを推定し、この値Maに基づいて燃料噴射量fcを決定する。なお、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miは、吸気弁32が開弁する時刻topenにて初期値0を与えれば、吸気通路に吹き返されたガスを総べて再吸入した時点で「0」になるので、結果として、筒内吸入新気量Maを示す値となる。以上が、筒内吸入新気量Ma及び燃料噴射量fcを決定する原理である。
【0164】
次に、本発明の第1実施形態に係る燃料噴射量制御装置の作動について説明する。第1実施形態の燃料噴射量制御装置は、吸気弁32の開弁にともない既燃ガスが吸気通路に吹き返され始めた時点から、その吹き返された既燃ガスがシリンダ21内に完全に吸入されるまでの期間(実際には、吸気通路に吹き返されたガスがシリンダ21内に再吸気される期間)において、吸気弁モデルM4にて使用する吸気弁通過ガス温度Tiを排気ガス温度Teと等しい値に設定し、新気がシリンダ21内に吸入され始めてからは吸気弁モデルM4にて使用する吸気弁通過ガス温度Tiを吸気管モデルM3が求めた吸気管内空気温度Tmと等しい温度に設定する。
【0165】
以下、CPU81が実行するルーチン(プログラム)を示した図10のフローチャート及び図11のタイムチャートを参照して、燃料噴射量制御装置の作動について説明する。CPU81は、図10に示したルーチンを所定時間(プログラム実行間隔時間Δt)の経過毎に、且つ、特定の気筒(ある気筒)に対して実行するようになっている。このルーチン上での時刻は現在より所定時間T0だけ先の時刻tである。即ち、例えば、このルーチンの実行により吸気弁32が閉弁状態から開弁状態に移行したと判定された時点から所定時間T0が経過した後に実際に吸気弁32が閉弁状態から開弁状態に移行する。なお、CPU81は、同様のルーチンを他の気筒に対しても独立して実行している。
【0166】
所定のタイミングになると、CPUはステップ1000から本ルーチンの処理を開始し、ステップ1002に進んで特定の気筒の吸気弁32が閉弁状態から開弁状態へと移行した直後であるか否かを判定する。いま、特定の気筒の吸気弁32が閉弁状態にあるものとして説明を続けると、CPU81はステップ1002にて「No」と判定してステップ1004に進み、その吸気弁32が開弁状態にあるか否かを判定する。
【0167】
この場合、特定の気筒の吸気弁32は閉弁状態にあるから、CPU81はステップ1004にて「No」と判定してステップ1006に進み、吸気弁32が開弁状態から閉弁状態へと移行した直後であるか否かを判定する。この場合においても、吸気弁32は閉弁状態にあるから、CPU81はステップ1006にて「No」と判定してステップ1095に進み、本ルーチンを一旦終了する。このような処理は、吸気弁32が閉弁状態から開弁状態へと移行する時点まで繰り返し行われる。
【0168】
その後、吸気弁32は、クランク角が吸気上死点TDCより前の開弁クランク角θ0となると、閉弁状態から開弁状態へと移行する(図11の時刻t0を参照)。この場合、CPU81はステップ1002に進んだとき、同ステップ1002にて「Yes」と判定してステップ1008に進み、吸気管モデルM3が推定している吸気管内空気圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmを取得する。
【0169】
次いで、CPU81はステップ1010にて、吸気弁上流ガス圧力Piを前記取得した吸気管内空気圧力Pmと等しい値に設定し、ステップ1012にて同ステップ1012中に記載した式(Pe=a・Ge+b・Ge2, a,bは定数)にしたがって排気ガス圧力Peを推定する。ここで、Geは総べての気筒の排気弁通過ガス流量meを積算(時間積分)して得られる単位時間あたりの排気ガス量であり、図示しないルーチンにより別途計算されている。
【0170】
次に、CPU81はステップ1014に進み、総べての気筒の吸気弁通過ガス流量miを積算(時間積分)して得られる単位時間あたりの吸入ガス量Ga、総べての気筒の燃料噴射量fcを積算(時間積分)して得られる単位時間あたりの燃料量Gf及びエンジン回転速度NEと、これらの値と排気ガス温度Teとの関係を規定したテーブルMapTeとから排気ガス温度Te(=MapTe(Ga,Gf,NE))を求める。
【0171】
次いで、CPU81はステップ1016にて各値の初期設定を行う。具体的に述べると、CPU81は、筒内ガス圧力Pcに排気ガス圧力Peを設定するとともに、筒内ガス温度Tcに排気ガス温度Teを設定する。これは、吸気弁32が開弁した時刻t0においては排気弁35が開弁しているから(図11の破線LEXにて示した排気弁35のリフト量を参照。)、筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcが排気ガス圧力Pe及び排気ガス温度Teにそれぞれ近似した値となるであろうとの知見に基づく。
【0172】
更に、CPU81は、吸気弁通過ガス温度Tiを排気ガス温度Teと等しい値に設定する。これは、吸気弁32と排気弁35が共に開弁しているので、排気ポート34内のガスがシリンダ21を介して圧力の低い吸気ポート31に吹き返されるため、吸気弁通過ガス温度Tiが排気ガス温度Teに近似した値となるであろうとの知見に基づく。また、CPU81は、吸気弁32が開弁したときからの吸気弁通過ガス流量miの積算値Miを初期値「0」に設定するとともに、吸気弁32が開弁したときからの排気弁通過ガス流量meの積算値Meを初期値「0」に設定する
【0173】
次いで、CPU81はステップ1018に進み、吸気弁モデルM4によって吸気弁通過ガス流量miを算出する。この場合、吸気弁上流ガス圧力Pi(=吸気管内空気圧力Pm)は筒内ガス圧力Pc(=排気ガス圧力Pe)より小さいから、シリンダ21内から吸気ポート31へと既燃ガスが逆流する。即ち、(32)式又は(34)式が使用されて吸気弁通過ガス流量miが求められる。従って、吸気弁通過ガス流量miは負の値となる。
【0174】
次に、CPU81はステップ1020に進み、その時点の吸気弁通過ガス流量miの積算値Miにプログラム実行間隔時間Δtと吸気弁通過ガス流量miの積値(Δt・mi)を加えて新たな吸気弁通過ガス流量miの積算値Miを求め、ステップ1022にて排気弁モデルM6によって排気弁通過ガス流量meを算出する。この場合、吸気ガス圧力Peは筒内ガス圧力Pc以上であるから、排気ポート34からシリンダ21へとガスが流れ込む。即ち、(52)式又は(54)式が使用されて排気弁通過ガス流量meが求められる。従って、排気弁通過ガス流量meは正の値となる。
【0175】
次いで、CPU81はステップ1024にて吸気弁通過ガス流量miの積算値Miが初期値「0」より大きいか否か(正の値であるか否か)判定する。この積算値Miが負の値であれば、シリンダ21から吸気通路にガスが吹き返されているか、又は、その吹き返されたガスがシリンダ21内に再吸入されている段階にあることを示す。他方、積算値Miが正の値であれば、吸気通路に吹き返されたガスが総べてシリンダ21内に再吸入され、新気がシリンダ21内に吸入されている段階にあることを示す。即ち、ステップ1024は、シリンダ21内に新気が吸入されているか否かを判定する吸気弁通過ガス種判定手段を構成している。
【0176】
現時点では、吸気弁通過ガス流量miは負の値であり、従って、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miは負の値となっているから、CPU81はステップ1024にて「No」と判定し、ステップ1026にて吸気弁通過ガス温度Tiを排気ガス温度Teと等しい値に設定する。
【0177】
その後、CPU81はステップ1028にてシリンダモデルM5により筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcを算出し、ステップ1030にてその時点の排気弁通過ガス流量meの積算値Meにプログラム実行間隔時間Δtと排気弁通過ガス流量meの積値(Δt・me)を加えて新たな排気弁通過ガス流量meの積算値Meを求める。なお、排気弁通過ガス流量meの積算値Meを、以下、「筒内残留ガス量」と称呼する。
【0178】
そして、CPU81はステップ1032にて吸気弁上流ガス圧力Piをその時点で吸気管モデルM3により求められている吸気管内空気圧力Pmと等しい値に設定し、ステップ1034にてその時点の排気ガス量Geに基づいて上記ステップ1012と同様に排気ガス圧力Peを求める。次いで、CPU81は、ステップ1036にてその時点の吸入ガス量Gaと燃料量Gfとエンジン回転速度NEとテーブルMapTeとからステップ1014と同様に排気ガス温度Te(=MapTe(Ga,Gf,NE))を求め、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0179】
その後、プログラム実行間隔時間Δtが経過すると、CPU81は再びステップ1000から本ルーチンの処理を開始する。このとき、吸気弁32は開弁している。従って、CPU81はステップ1002にて「No」と判定するとともに、吸気弁32が開弁状態にあるか否か(開弁しているか否か)を判定するステップ1004にて「Yes」と判定し、ステップ1018〜ステップ1024に進む。
【0180】
この時点では、吸気弁32が開弁してから十分な時間が経過していないから、シリンダ21から吸気ポート31へガスが依然として逆流している。従って、吸気弁通過ガス流量miは負であって、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miは負であるから、CPU81はステップ1024にて「No」と判定してステップ1026を実行し、その後、ステップ1028〜ステップ1036を実行して本ルーチンを一旦終了する。以降、以上に述べた処理が繰り返し実行される。
【0181】
その後、時間が経過して図11に示した時刻t1(クランク角が吸気上死点TDCよりも僅かだけ後のクランク角θ1となる時刻)になると、排気弁35は実質的に閉弁する。また、この時点では、ピストン22が下降して燃焼室25の容積が増大している。これにより、吸気ポート31内に吹き返された既燃ガスは吸気弁32の周囲を介してシリンダ21内に吸入され始める。即ち、吸気弁上流ガス圧力Piは筒内ガス圧力Pcより大きくなるので、ステップ1018において上記(31)式又は上記(33)式が使用されて吸気弁通過ガス流量miが求められる。
【0182】
このとき、前回の本ルーチン実行時におけるステップ1026により、吸気弁通過ガス温度Tiは排気ガス温度Teと等しい値に設定されているから、(31)式又は上記(33)式における吸気弁通過ガス温度Tiには排気ガス温度Teと等しい値が使用される。この結果、吸気弁通過ガス流量miは実際の値により近い値となる。また、吸気弁通過ガス流量miは正の値となるから、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miは時刻t1以降において増大する。
【0183】
しかしながら、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miは依然として負の値であるから、CPU81はステップ1024にて「No」と判定してステップ1026を実行する。従って、次回の本ルーチン実行時においても上記(31)式又は上記(33)式における吸気弁通過ガス温度Tiは排気ガス温度Teとなる。
【0184】
そして、かかる状態が継続すると、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miは時刻t4’にて「0」となる。本実施形態では、この時刻t4’が、吸気通路に吹き返された既燃ガスの総べてがシリンダ21内に吸入され、新気がシリンダ21内に吸入され始める時点に相当する。
【0185】
この時刻t4’の直後に本ルーチンが実行されると、CPU81はステップ1024に進んだとき同ステップ1024にて「Yes」と判定してステップ1038に進み、吸気弁通過ガス温度Tiを吸気管モデルM3が推定している吸気管内空気温度Tmと等しい値に設定するようになる。
【0186】
これにより、CPU81が次回の本ルーチンの実行時にステップ1018に進んだとき、上記(31)式又は上記(33)式における吸気弁通過ガス温度Tiが吸気管内空気温度Tmとされて吸気弁通過ガス流量miが計算される。このように、時刻t4’以降においては新気がシリンダ21内に吸入されているはずであるから、吸気弁通過ガス温度Tiを吸気管内空気温度Tmと設定することにより吸気弁通過ガス流量miがより精度良く計算される。
【0187】
その後、吸気弁32は、クランク角が閉弁クランク角θ5となると、開弁状態から閉弁状態へと移行する(図11の時刻t5を参照。)。このとき、CPU81は、ステップ1002及びステップ1004にて「No」と判定し、ステップ1006にて吸気弁32が開弁状態から閉弁状態へと移行したか否かを判定する。この判定結果は「Yes」となるので、CPU81はステップ1006からステップ1040へと進み、その時点までに計算されている吸気弁32が開弁したときからの吸気弁通過ガス流量miの積算値Miを筒内吸入新気量Maとして格納する。
【0188】
そして、CPU81は、ステップ1042にて燃料噴射量fcを筒内吸入新気量Maに基づいて求め、続くステップ1044にて筒内吸入新気量Ma、筒内残留ガス量Me及びエンジン回転速度NEと点火時期マップMapθigとから、点火時期θig(=Mapθig(Ma,Me,NE))を決定し、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、本燃料噴射量制御装置は、筒内吸入新気量Ma及び筒内残留ガス量Meに基づいて燃料噴射量fcや点火時期θig等のエンジン制御パラメータを決定する。
【0189】
以上、説明したように、第1実施形態の筒内新気量推定装置は、吸気弁32が排気行程後半において(クランク角が吸気上死点TDCより前のクランク角θ0となったとき)開弁し、その時点では排気弁35が開弁しているバルブオーバーラップを有する内燃機関10に適用されている。なお、排気弁35は、吸気行程開始直後において(クランク角が吸気上死点TDCの直後のクランク角θ2となったとき)閉弁する。
【0190】
また、第1実施形態の筒内吸入新気量推定装置は、内燃機関10の吸気弁32の周囲を通過して吸気通路(吸気ポート31及び吸気管41)からシリンダ21内に吸入されているガスが新気であるかシリンダ21内から吸気通路へ吹き返された既燃ガスであるかを判定する吸気弁通過ガス種判定手段(ステップ1024)を備えている。
【0191】
更に、この筒内吸入新気量推定装置は、シリンダ21内に吸入されているガスが新気であると判定されているとき(積算値Mi>0)、新気の状態パラメータを使用して吸気弁32の周囲を通過するガスの流量である吸気弁通過ガス流量miを算出する。即ち、この筒内吸入新気量推定装置は、シリンダ21内に吸入されているガスが新気であると判定されているとき、新気の状態パラメータである吸気管内空気温度Tmを吸気弁通過ガス温度Tiの値として設定し、この吸気弁通過ガス温度Tiを使用して吸気弁通過ガス流量miを算出する吸気弁通過ガス流量算出手段を備える(ステップ1038、ステップ1018及びステップ1028)。なお、新気の温度Tmは新気温取得手段として機能する吸気管モデルM3によって取得される。
【0192】
この吸気弁通過ガス流量算出手段は、シリンダ21内に吸入されているガスが吸気通路へ吹き返された既燃ガスであると判定されているとき(積算値Mi<0又はMi≦0)、その既燃ガスの状態パラメータを使用して吸気弁通過ガス流量miを推定する。即ち、吸気弁通過ガス流量算出手段は、既燃ガスの状態パラメータである排気ガス温度Teを使用して吸気弁通過ガス流量miを算出する(ステップ1026、ステップ1018及びステップ1028)。なお、排気ガスの温度は排気ガス温取得手段として機能するステップ1014及びステップ1036又は排気温度センサにより取得される。
【0193】
更に、この筒内吸入新気量推定装置は、算出された吸気弁通過ガス流量miに基づいてシリンダ21内に吸入される新気の量である筒内吸入新気量Maを推定する筒内吸入新気量推定手段(ステップ1020及びステップ1040)を備えている。
【0194】
このように、上記筒内吸入新気量推定装置においては、シリンダ21に吸入されるガスの種類(新気か吹き返された既燃ガスか)に応じて適切な吸気弁通過ガス温度Tiが使用されて吸気弁通過ガス流量miが算出されるので、吸気弁通過ガス流量miに基づいて算出される筒内吸入新気量Maの推定精度を向上することができる。
【0195】
また、前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、吸気通路からシリンダ21内にガスが吸入されているときに正及び負の何れか一方の符号付きガス流量(本例においては、正の符号を有するガス流量)を吸気弁通過ガス流量miとして所定時間Δtの経過毎に算出するように構成されている(ステップ1018、(31)式及び(33)式)。更に、吸気弁通過ガス流量算出手段は、シリンダ21内から吸気通路にガスが吹き返されているときに正及び負の何れか他方の符号付きガス流量(本例においては負の符号を有するガス流量)を、吸気弁通過ガス流量miとして所定時間Δtの経過毎に算出するように構成されている(ステップ1018、(32)式及び(34)式)。
【0196】
一方、前述した吸気弁通過ガス種判定手段は、算出された吸気弁通過ガス流量miを吸気弁32の開弁時から積算して積算値Miを求める(ステップ1020)。吸気弁32の開弁時において設定される積算値Miの初期値は、本例では0である。そして、吸気弁通過ガス種判定手段は、この積算値Miの初期値(即ち「0」)より大きいか否かに応じてシリンダ21内に吸入されているガスが「新気」であるか「それまでに吸気通路に吹き返された既燃ガス」であるかを判定するように構成されている(ステップ1024)。
【0197】
従って、この筒内吸入新気量推定装置は、簡単な構成により吸気弁32の周囲を通過するガスの種類を判別することができる。
【0198】
次に、本発明の第2実施形態に係る燃料噴射量制御装置(筒内吸入新気量推定装置)について説明する。この燃料噴射量制御装置は、第1実施形態に係る燃料噴射量制御装置のCPU81が実行する図10のステップ1024、ステップ1026及びステップ1038を図12に示したステップ1202〜ステップ1206に置換した点のみにおいて、同第1実施形態に係る燃料噴射量制御装置と相違している。従って、以下、係る相違点を主として説明する。
【0199】
第2実施形態に係る燃料噴射量制御装置のCPU81は、吸気弁32が開弁しているときにステップ1022の処理を実行すると、図12のステップ1202に進んで吸気弁通過ガス流量miの積算値Miが「0」より大きいか否かを判定する。そして、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miが「0」より小さい場合、CPU81はステップ1202にて「No」と判定してステップ1204に進み、吸気弁通過ガス温度TiをシリンダモデルM5が推定している筒内ガス温度Tcと等しい値に設定する。これは、吸気ポート31に吹き返された既燃ガスの温度はシリンダ21内のガスの温度と近似した温度になっているであろうという知見に基づいている。
【0200】
そして、CPU81はステップ1204から図10のステップ1028以降のステップに進む。この結果、吸気ポート31に吹き返された既燃ガスがシリンダ21内に吸入されるとき(図11の時刻t1〜t4’に相当する期間)、上記(31)式又は上記(33)式における吸気弁通過ガス温度Tiに筒内ガス温度Tcが適用されて吸気弁通過ガス流量miが算出される。これにより、上記(31)式又は上記(33)式における吸気弁通過ガス温度Tiが実際の吸気弁通過ガス温度に近い値となるので、吸気弁通過ガス流量miが精度良く計算される。
【0201】
一方、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miが「0」より大きくなると、CPU81はステップ1202に進んだとき、同ステップ1202にて「Yes」と判定してステップ1206に進み、吸気弁通過ガス温度Tiを吸気管モデルM3が推定している吸気管内空気温度Tmに設定し、ステップ1028以降のステップを実行するようになる。
【0202】
これにより、上記(31)式又は上記(33)式における吸気弁通過ガス温度Tiには吸気管内空気温度Tmが適用されるようになる。吸気弁通過ガス流量miの積算値Miが「0」より大きくなった時点以降ではシリンダ21内に新気が吸入されているはずであるから、吸気弁通過ガス温度Tiを吸気管内空気温度Tmと等しい値に設定することにより吸気弁通過ガス流量miがより精度良く計算される。
【0203】
以上、説明したように、第2実施形態の筒内新気量推定装置は、第1実施形態と同様にバルブオーバーラップを有する内燃機関10に適用されている。また、第2実施形態の筒内吸入新気量推定装置は、第1実施形態と同様に、吸気弁通過ガス種判定手段(ステップ1202)を備えている。
【0204】
更に、この筒内吸入新気量推定装置は、シリンダ21内に吸入されているガスが新気であると判定されているとき(積算値Mi>0)、新気の状態パラメータを使用して吸気弁32の周囲を通過するガスの流量である吸気弁通過ガス流量miを算出する。即ち、この筒内吸入新気量推定装置は、シリンダ21内に吸入されているガスが新気であると判定されているとき、新気の状態パラメータである吸気管内空気温度Tmを吸気弁通過ガス温度Tiの値として設定し、この吸気弁通過ガス温度Tiを使用して吸気弁通過ガス流量miを算出する吸気弁通過ガス流量算出手段(ステップ1206、ステップ1018及びステップ1028)を備える。なお、新気の温度は新気温取得手段として機能する吸気管モデルM3によって取得される。
【0205】
この吸気弁通過ガス流量算出手段は、シリンダ21内に吸入されているガスが吸気通路へ吹き返された既燃ガスであると判定されているとき(積算値Mi<0又はMi≦0)、その既燃ガスの状態パラメータを使用して吸気弁通過ガス流量miを推定する。即ち、この吸気弁通過ガス流量算出手段は、既燃ガスの状態パラメータである筒内ガス温度Tcを使用して吸気弁通過ガス流量miを算出する(ステップ1204、ステップ1018及びステップ1028)。なお、筒内ガス温度Tcは筒内ガス温取得手段として機能するシリンダモデルM5(ステップ1028)によって取得される。
【0206】
更に、この筒内吸入新気量推定装置は、算出された吸気弁通過ガス流量miに基づいてシリンダ21内に吸入される新気の量である筒内吸入新気量Maを推定する筒内吸入新気量推定手段(ステップ1020及びステップ1040)を備えている。
【0207】
このように、シリンダ21に吸入されるガスの種類(新気か吹き返された既燃ガスか)に応じて適切な吸気弁通過ガス温度Tiが使用されて吸気弁通過ガス流量miが算出されるので、吸気弁通過ガス流量miが精度良く求められる。従って、吸気弁通過ガス流量miに基づいて算出される筒内吸入新気量Maの推定精度を向上することができる。
【0208】
次に、本発明の第3実施形態に係る燃料噴射量制御装置(筒内吸入新気量推定装置)について説明する。第3実施形態に係る燃料噴射量制御装置は、吸気ポート31内に吹き返されたガスの温度((以下、「吹き返しガス温度」と称呼する。)Tpを、同吹き返されたガスのエネルギー(エネルギーの積算値)と同吹き返されたガスの量とから求めておき、同吹き返されたガスがシリンダ21内に再吸入されるとき、上記(31)式又は上記(33)式における吸気弁通過ガス温度Tiに計算された吹き返しガス温度Tpを適用して吸気弁通過ガス流量miを算出する点で、第1及び第2実施形態の燃料噴射量制御装置と相違している。
【0209】
より具体的に述べると、第3実施形態のCPU81は、シリンダ21から吸気ポート31へガスが吹き返されている期間、その吹き返しガスのエネルギーを積分(積算)した値SEを得るとともに、吹き返しガスの総量SCを求めておく。そして、CPU81は、吹き返し期間が終了したとき(吹き返されたガスがシリンダ21内に吸入され始めるとき)、下記(56)式に示した式に従って吹き返しガス温度Tpを求める。そして、CPU81は、新気がシリンダ21内に吸入され始めるまで(吸気弁通過ガス流量miの積算値Miが「0」となるまで)、上記(31)式又は上記(33)式における吸気弁通過ガス温度Tiに吹き返しガス温度Tpを適用して吸気弁通過ガス流量miを求める。
【0210】
【数56】
【0211】
次に、第3実施形態に係る燃料噴射量制御装置の作動について説明する。この装置は、図13のフローチャートに示したように、図10に示したステップ1016とステップ1018の間に追加されたステップ1302を実行する点と、図10のステップ1024、ステップ1026及びステップ1038に代わるステップ1304〜ステップ1316を実行する点のみにおいて、第1実施形態に係る燃料噴射量制御装置と相違している。従って、以下、係る相違点を主として説明する。
【0212】
第3実施形態に係る燃料噴射量制御装置のCPU81は、吸気弁32が閉弁状態から開弁状態へと変化したとき、ステップ1300に続くステップ1002〜1016を実行した後、ステップ1302にて吹き返しガスのエネルギー積分値SE及び吹き返しガスの総量SCを共に「0」に設定する。そして、ステップ1018〜ステップ1022を実行した後、ステップ1304にて吸気弁通過ガス流量miの積算値Miが「0」より大きいか否かを判定する。
【0213】
この場合、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miは「0」より小さいから、CPU81はステップ1304にて「No」と判定してステップ1306に進み、ステップ1010にて吸気管内空気圧力Pmと等しい値に設定されている吸気弁上流ガス圧力Piが筒内ガス圧力Pcよりも大きいか否かを判定する。即ち、ステップ1306では、吸気通路からシリンダ21内にガスが流れ込んでいるか、シリンダ21から吸気通路にガスが吹き返されているかが判定される。
【0214】
現時点は、吸気弁32が開弁した直後であるから、吸気弁上流ガス圧力Piは筒内ガス圧力Pcよりも小さいので、CPU81はステップ1306にて「Yes」と判定してステップ1308に進み、その時点の吹き返しガスのエネルギーの積分値SEに、前回の本ルーチン実行時から今回の本ルーチン実行時までの吹き返しガスのエネルギーに相当する値Δt・mi・Cp・Tcを加えて新たな吹き返しガスのエネルギーの積分値SEを得る。
【0215】
次いで、CPU81は、ステップ1310にてその時点の吹き返しガスの総量SCに、前回の本ルーチン実行時から今回の本ルーチン実行時までの吹き返しガス量に相当する値Δt・miを加えて新たな吹き返しガスの総量SCを得る。そして、CPU81は、続くステップ1312にて同ステップ1312に示した式(Tp=SE/(Cp・SC))にしたがって吹き返しガス温度Tpを求めた後、ステップ1028以降に進む。
【0216】
次に、CPU81が本ルーチンの処理を開始すると、CPU81はステップ1002及びステップ1004を経てステップ1018〜ステップ1022及びステップ1304へ進む。この時点は、吸気弁32が開弁してから僅かな時間しか経過していないので、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miは負の値であり、且つ、吸気弁上流ガス圧力Piは筒内ガス圧力Pcよりも小さい。従って、CPU81はステップ1304及びステップ1306〜ステップ1312へと進み吹き返しガス温度Tpを更新する。
【0217】
このように、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miが負の値であり、且つ、吸気弁上流ガス圧力Piが筒内ガス圧力Pcよりも小さいとき、吹き返しガス温度Tpが更新されて行く。なお、この場合の吸気弁通過ガス流量miは、(32)式又は(34)式により求められる。
【0218】
その後、排気弁35が閉弁するとともに燃焼室25の容積が増大するようになるので、吸気弁上流ガス圧力Piは筒内ガス圧力Pcよりも大きくなり、吹き返しガスがシリンダ21内に吸入され始める(図11の時刻t1を参照。)。このとき、CPU81はステップ1304及びステップ1306の両ステップにて「No」と判定してステップ1314に進み、吸気弁通過ガス温度Tiをステップ1312の計算により求めた吹き返しガス温度Tpに設定する。
【0219】
この結果、吸気ポート31に吹き返された既燃ガスがシリンダ21内に吸入されるとき(図11の時刻t1〜t4’に相当する期間)、CPU81はステップ1018において上記(31)式又は上記(33)式の吸気弁通過ガス温度Tiに吹き返しガス温度Tpを適用し吸気弁通過ガス流量miを算出する。これにより、上記(31)式又は上記(33)式における吸気弁通過ガス温度Tiが実際の吸気弁通過ガス温度に極めて近い値となるので、吸気弁通過ガス流量miが精度良く計算される。
【0220】
その後、吸気弁通過ガス流量miの積算値Miが「0」より大きくなると、CPU81はステップ1304に進んだとき、同ステップ1304にて「Yes」と判定してステップ1316に進み、吸気弁通過ガス温度Tiを吸気管モデルM3が推定している吸気管内空気温度Tmに設定し、ステップ1028以降のステップを実行するようになる。
【0221】
これにより、上記(31)式又は上記(33)式における吸気弁通過ガス温度Tiには吸気管内空気温度Tmが適用されるようになる。吸気弁通過ガス流量miの積算値Miが「0」より大きくなった時点以降ではシリンダ21内に新気が吸入されているはずであるから、吸気弁通過ガス温度Tiを吸気管内空気温度Tmと等しい値に設定することにより吸気弁通過ガス流量miがより精度良く計算される。
【0222】
以上、説明したように、第3実施形態の筒内新気量推定装置は、第1実施形態と同様にバルブオーバーラップを有する内燃機関10に適用されている。また、第3実施形態の筒内吸入新気量推定装置は、第1実施形態のステップ1024と同様な吸気弁通過ガス種判定手段としてのステップ1304を備えている。
【0223】
更に、この筒内吸入新気量推定装置は、シリンダ21内に吸入されているガスが新気であると判定されているとき(積算値Mi>0)、新気の状態パラメータを使用して吸気弁32の周囲を通過するガスの流量である吸気弁通過ガス流量miを算出する。即ち、この筒内吸入新気量推定装置は、シリンダ21内に吸入されているガスが新気であると判定されているとき、新気の状態パラメータである吸気管内空気温度Tmを吸気弁通過ガス温度Tiの値として設定し、この吸気弁通過ガス温度Tiを使用して吸気弁通過ガス流量miを算出する吸気弁通過ガス流量算出手段(ステップ1316、ステップ1018及びステップ1028)を備える。なお、新気の温度Tmは新気温取得手段として機能する吸気管モデルM3によって取得される。
【0224】
一方、この筒内吸入新気量推定装置は、吸気弁32の周囲を通過してシリンダ21から吸気通路へ吹き返された既燃ガスのエネルギーの総量SEを取得するとともに同取得した既燃ガスのエネルギーに基づいて同既燃ガスの温度(再吸入時における吹き返しガス温度)Tpを取得する吹き返しガス温取得手段(ステップ1306〜ステップ1312)を備える。実際には、吹き返しガス温取得手段は、既燃ガスが吸気通路へ吹き返されている期間において積算された既燃ガスのエネルギーSEを、同期間において積算された既燃ガスの流量である既燃ガス総量SCと定圧比熱Cpの積で除することにより既燃ガス温度Tpを算出する((56)式を参照。)。
【0225】
そして、前述の吸気弁通過ガス流量算出手段は、シリンダ21内に吸入されているガスが吸気通路へ吹き返された既燃ガスであると判定されているとき(積算値Mi<0又はMi≦0)、その既燃ガスの状態パラメータを使用して吸気弁通過ガス流量miを推定する。即ち、この吸気弁通過ガス流量算出手段は、既燃ガスの状態パラメータである前記算出された既燃ガス温度Tpを使用して吸気弁通過ガス流量miを算出する(ステップ1314、ステップ1018及びステップ1028)。
【0226】
更に、この筒内吸入新気量推定装置は、算出された吸気弁通過ガス流量miに基づいてシリンダ21内に吸入される新気の量である筒内吸入新気量Maを推定する筒内吸入新気量推定手段(ステップ1020及びステップ1040)を備えている。
【0227】
従って、シリンダ21に吸入されるガスの種類(新気か吹き返された既燃ガスか)に応じて適切な吸気弁通過ガス温度Tiが使用されて吸気弁通過ガス流量miが算出されるので、吸気弁通過ガス流量miが精度良く求められる。その結果、吸気弁通過ガス流量miに基づいて算出される筒内吸入新気量Maの推定精度を向上することができる。
【0228】
なお、第3実施形態においては、ステップ1308にて使用される定圧比熱Cpが一定であるとして吹き返しガス温度Tpを求めていたが、この定圧比熱Cpを、例えば、吹き返しガス温度Tpに基づいて定め(Cp=func(Tp))、このCpを使用しながら吹き返し温度Tpを更新するように構成してもよい。この場合、ステップ1310をSC=SC+Δt・mi・Cpとして、ステップ1312をTp=SE/SCとすればよい。
【0229】
次に、本発明による燃料噴射量制御装置の第1変形例について説明する。上述した各実施形態の燃料噴射量制御装置は、例えば吸気弁モデルM4を表す(31)式〜(35)式、シリンダモデルM5を表す(37)式及び排気弁モデルM6を表す(52)式〜(55)式等において、比熱比κc,κi及びκeを一定の値κとして取り扱っていた。
【0230】
しかしながら、実際の比熱比はガス組成及びガス温度等により変化する。特に内燃機関においては、数百度の既燃ガスで満たされているシリンダ21内に数十度の新気が導入されるので、その前後でシリンダ21内のガスの比熱比(筒内ガス比熱比)κcは大きく変化する。更に、シリンダ21内には残留ガス(既燃ガス)が存在した状態で新気が吸入されるから、残留ガスと新気の比率によってシリンダ21内のガス組成が変動し、従って、筒内ガス比熱比κcは大きく変動する。
【0231】
そこで、第1変形例に係る燃料噴射量制御装置は、これらの比熱比κc,κi及びκeを推定し、例えば、推定した比熱比κc,κi及びκeを(31)式〜(35)式、(37)式及び(52)式〜(55)式等に適用することで吸気弁通過ガス流量mi、排気弁通過ガス流量me、筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tc等の各値の計算の精度を一層向上させる。この比熱比κiは新気の状態パラメータであり、比熱比κeは既燃ガスの状態パラメータと云うことができる。
【0232】
(第1変形例の比熱比算出原理)
先ず、第1変形例における筒内ガスの比熱比κcを算出する原理について説明する。筒内ガスの比熱比κcは、下記(57)式により計算される。
【0233】
【数57】
【0234】
(57)式において、Miは吸気弁通過ガス流量miを積分することにより得られる。新気の比熱比κiはガス温度Tと新気の比熱比κiとの関係を規定するテーブルMapκi及び筒内ガス温度Tcから求めることができる(κi=Mapκi(Tc))。Riは新気の気体定数であり既知である。
【0235】
Meは排気弁通過ガス流量meを積分することにより得られる。既燃ガスの比熱比κeはガス温度Tと既燃ガスの比熱比κeとの関係を規定するテーブルMapκe及び筒内ガス温度Tcから求めることができる(κe=Mapκe(Tc))。Reは既燃ガスの気体定数であり既知である。従って、(57)式の右辺の各変数は総べて得ることができるので、同(57)式に基づいて筒内ガスの比熱比κcを求めることができる。
【0236】
次に、(57)式の導出過程について説明する。ガスの内部エネルギーをu、エンタルピーをhとするとともに、成分jのガスの単位質量あたりの内部エネルギー及びエンタルピーをそれぞれuj及びhjとする。また、ガス全体に対する成分jのガスの質量割合をgjとすると、下記(58)式及び下記(59)式が成立する。
【0237】
【数58】
【0238】
【数59】
【0239】
従って、(58)式及び(59)式から、それぞれ(60)式及び(61)式が導かれる。
【0240】
【数60】
【0241】
【数61】
【0242】
これらの関係から、筒内ガスの定容比熱Cvc及び定圧比熱Cpcについて、それぞれ下記(62)式及び下記(63)式が成立する。
【0243】
【数62】
【0244】
【数63】
【0245】
従って、筒内ガスの比熱比κcについて下記(64)式が成立する。
【0246】
【数64】
【0247】
(64)式に上記(50)式及び上記(51)式を適用すると下記の(65)式が得られる。
【0248】
【数65】
【0249】
いま、ガスの成分を、新気と既燃ガスの2成分と仮定する。この仮定は極めて現実的で実際的な仮定である。このとき、筒内ガスの比熱比κcは上記(65)式から下記(66)式のように表される。
【0250】
【数66】
【0251】
一方、新気の質量割合gi及び既燃ガスの質量割合geは、それぞれ下記(67)式及び下記(68)式により表される。
【0252】
【数67】
【0253】
【数68】
【0254】
(67)式及び(68)式を(66)式に代入すると、以下の(69)式のようにして上記(57)式が得られる。
【0255】
【数69】
【0256】
以上が、(57)式の導出過程である。次に、この第1変形例の燃料噴射量制御装置の実際の作動について図14に示したフローチャートを参照しながら説明する。この燃料噴射量制御装置のCPU81は、第1実施形態のCPU81が実行する図10のステップ1030とステップ1032の間に、図14に示したステップを追加したルーチンを実行する点において、同第1実施形態に係る燃料噴射量制御装置と相違している。従って、以下、係る相違点を主として説明する。
【0257】
CPU81は、図10のステップ1030を実行すると図14のステップ1402に進み、前回の特定の気筒の燃焼行程がフューエルカット状態であったか否かを判定する。いま、前回の特定の気筒の燃焼行程がフューエルカット状態であったとすると、CPU81はステップ1402にて「Yes」と判定してステップ1404に進み、上述したテーブルMapκi及び吸気管空気温度Tmから吸気通路内の新気の比熱比κi(im)を求める。
【0258】
次いで、CPU81は、ステップ1406に進み、上述したテーブルMapκi及び排気温度Teから排気通路内の排気ガスの比熱比κe(ex)を求める。ステップ1406にてテーブルMapκeではなくテーブルMapκiを使用するのは、前回の特定の気筒の燃焼行程がフューエルカット状態であったから、排気通路内には既燃ガスでなく新気が存在しているからである。
【0259】
次に、CPU81はステップ1408に進み、テーブルMapκi及び筒内ガス温度Tcからシリンダ21内での新気の比熱比(筒内新気比熱比)κiを求め、ステップ1410及びステップ1412にて筒内ガス比熱比κc及びシリンダ21内での既燃ガスの比熱比(筒内既燃ガス比熱比)κeをそれぞれ筒内新気比熱比κiと等しい値に設定し、その後、図10のステップ1032に進む。
【0260】
このように、前回の特定の気筒の燃焼行程がフューエルカット状態であった場合、シリンダ21内には大気(実質的に既燃ガスを含まないので新気と言うことができる)のみが存在しているから、CPU81は筒内ガス比熱比κcを筒内新気比熱比κiと等しい値に設定する。また、前回の燃焼行程では実際に燃焼が生じていなかったので、筒内既燃ガス比熱比κeも筒内新気比熱比κiと等しい値に設定する。
【0261】
一方、前回の特定の気筒の燃焼行程がフューエルカット状態ではなかったとすると、CPU81はステップ1402にて「No」と判定してステップ1414に進み、上述したテーブルMapκi及び筒内ガス温度Tcから筒内新気比熱比κiを求めるとともに、続くステップ1416にて上述したテーブルMapκe及び筒内ガス温度Tcから筒内既燃ガス比熱比κeを求める。次いで、CPU81は、ステップ1418に進み、上記(57)式にしたがって筒内ガスの比熱比κcを算出する。
【0262】
その後、CPU81は、ステップ1420にて、上述したテーブルMapκi及び吸気管空気温度Tmから吸気通路内の新気の比熱比κi(im)を求め、ステップ1422にて、上述したテーブルMapκe及び排気温度Teから排気通路内の排気ガスの比熱比κe(ex)を求め、その後、図10のステップ1032に進む。
【0263】
このように、CPU81は、前回の特定の気筒の燃焼行程がフューエルカット状態ではなかった場合、シリンダ21内には新気と既燃ガスとが混在しているから、上述した(57)式に基づいて筒内ガスの比熱比κcを求める。
【0264】
そして、CPU81は、例えば、次回の本ルーチンの実行時に、ステップ1028(シリンダモデルM5を表す(37)式)にて上記のように求められた比熱比κc,κi及びκeを使用して筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcを求める。この結果、筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcをより精度良く求めることができる。
【0265】
また、CPU81は、ステップ1024にて既燃ガスが吸気弁32の周囲を通過していると判定したときであって、同既燃ガスがシリンダ21内に吸入されていると判定したとき(Pi>Pc)、(31)式((33)式及び(35)式)で使用する比熱比κ(ガスの状態パラメータ)の値を排気ガスの比熱比κe(ex)に設定して吸気弁通過ガス流量miを算出する。
【0266】
CPU81は、この場合を除き、吸気弁モデルM4を表す(31)式((33)式及び(35)式)での比熱比κに新気比熱比κi(im)を代入して吸気弁通過ガス流量miを求めるとともに、(32)式((34)式及び(35)式)での比熱比κに排気ガス比熱比κe(ex)を代入して吸気弁通過ガス流量miを求める。
【0267】
同様に、CPU81は、排気弁モデルM6を表す(52)式((54)式及び(35)式)での比熱比κに排気ガスの比熱比κe(ex)を代入して排気弁通過ガス流量meを求めるとともに、(53)式((55)式及び(35)式)での比熱比κに筒内ガス比熱比κcを代入して排気弁通過ガス流量meを求める。
【0268】
以上、説明したように、第1変形例の燃料噴射量制御装置は、吸気通路内の新気ガスの比熱比κi(im)を取得する新気ガス比熱比取得手段(ステップ1404及びステップ1420)と、排気通路内の排気ガスの比熱比κe(ex)を取得する排気ガス比熱比取得手段(ステップ1406及び1422)と、筒内ガスの比熱比κcを取得する筒内ガス比熱比取得手段(ステップ1410及びステップ1418)とを備えていて、これらの比熱比をガスの状態パラメータとして各種の計算に使用する。従って、より精度良く各値を求めることができる。
【0269】
次に、本発明による燃料噴射量制御装置の第2変形例について説明する。第1変形の燃料噴射量制御装置は、実際に計算により求まる新気の質量割合gi及び既燃ガスの質量割合geに基づいて筒内ガスの比熱比κcを求めていた。これに対し、第2変形例に係る燃料噴射量制御装置は、筒内ガスの成分の質量割合giを運転状態別に(具体的には、フューエルカットであったか否かに応じて)予め記憶しておき、これを実際の運転状態に応じて読み出す。そして、燃料噴射量制御装置は、読み出した重量割合gi、予め記憶しておいた新気の比熱比κi及び既燃ガスの比熱比κeを上記(65)式に適用することで比熱比κcを算出する。
【0270】
以下、第2変形例の燃料噴射量制御装置の実際の作動について図15に示したフローチャートを参照しながら説明する。この燃料噴射量制御装置のCPU81は、第1実施形態のCPU81が実行する図10のステップ1030とステップ1032の間に、図15に示したステップを実行する点において、同第1実施形態に係る燃料噴射量制御装置と相違している。従って、以下、係る相違点を主として説明する。
【0271】
CPU81は、図10のステップ1030を実行すると図15のステップ1502に進み、前回の特定の気筒の燃焼行程がフューエルカット状態であったか否かを判定する。いま、前回の特定の気筒の燃焼行程がフューエルカット状態であったとすると、CPU81はステップ1502にて「Yes」と判定してステップ1504に進み、標準的な大気中の成分組成より各ガスjの質量割合gjをROM82から読み出す。
【0272】
次いで、CPU81は、ステップ1506にて各ガスjのシリンダ21内における比熱比κjを、ガスjの温度Tと比熱比κjとの関係を規定したテーブルMapκj及びその時点で求められている筒内ガス温度Tcから求める(κj=Mapκj(Tc))。そして、CPU81はステップ1508に進み、ROM82に記憶してある各ガスjの気体定数Rj、上記ステップ1506にて求めた各ガスjのシリンダ21内における比熱比κj、上記ステップ1504にて読み出した各ガスjの質量割合gj、及び上記(65)式を用いて筒内ガスの比熱比κcを算出し、図10のステップ1032に進む。
【0273】
一方、前回の特定の気筒の燃焼行程がフューエルカット状態ではなかったとすると、CPU81はステップ1502にて「No」と判定してステップ1510に進み、既燃ガス中の各ガスjの質量割合gjをROM82から読み出す。この質量割合gjは、標準的な燃料が完全燃焼した場合に生成される既燃ガス中の成分組成を予め調査することにより得た値である。その後、CPU81はステップ1506及びステップ1508を実行して筒内ガスの比熱比κcを算出し、ステップ1032へと進む。
【0274】
そして、CPU81は、例えば、次回の本ルーチンの実行時に、ステップ1028にて上記のように求められた比熱比κcを使用して筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcを求める。この結果、筒内ガス圧力Pc及び筒内ガス温度Tcをより精度良く求めることができる。
【0275】
以上、説明したように、第2変形例の燃料噴射量制御装置は、筒内ガスの比熱比κcを取得する筒内ガス比熱比取得手段(図15を参照。)を備えていて、求めた比熱比κcを筒内圧力Pc等の計算に使用する。従って、より精度良く各値を求めることができる。
【0276】
以上、説明したように、本発明による筒内吸入新気量推定装置の各実施形態及び各変形例によれば、筒内吸入新気量を精度良く求めることができるので、内燃機関10を適切に制御することができる。
【0277】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記シリンダモデルM5の(37)式において伝達熱流量Qw’は無視されていたが、定義式である下記(70)式及び下記(71)式により求めてもよい。(70)式及び(71)式において、Aは燃焼室を構成するシリンダ壁の面積、hwはシリンダ壁面での熱伝達率、Tcは筒内ガス温度、Twは冷却水温THWに基づいて定められるシリンダ壁温度である。dはシリンダボア径、K1,K2は定数、Vcspdはピストンの平均速度である。
【0278】
【数70】
Qw’ =A・hw・(Tc−Tw) …(70)
【0279】
【数71】
hw =K1・d−0.2・Pc0.8・(K2・Vcspd)0.8・Tw−0.53 …(71)
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の筒内吸入新気量推定装置を含む燃料噴射量制御装置を火花点火式多気筒内燃機関に適用したシステムの概略構成図である。
【図2】図1に示した電気制御装置が筒内吸入新気量等を推定するために採用した各種モデルの接続関係を示した機能ブロック図である。
【図3】図1に示したCPUが参照するアクセルペダル操作量と目標スロットルバルブ開度との関係を規定したテーブルを示す図である。
【図4】図1に示したCPUが参照するスロットルバルブ開度と流量係数との関係を規定したテーブルを示す図である。
【図5】図1に示したCPUが参照するスロットルバルブ開度と開口面積との関係を規定したテーブルを示す図である。
【図6】図1に示したCPUが参照する、スロットルバルブ開度と、流量係数と開口面積の積値との関係を規定したテーブルを示す図である。
【図7】図1に示したCPUが各値の計算時に使用する変数を説明するためシリンダ及びその近傍を概念的に示した図である。
【図8】図1に示したCPUが参照する吸気弁リフト量と、流量係数と開口面積の積値との関係を規定したテーブルを示す図である。
【図9】図1に示したCPUが参照する排気弁リフト量と、流量係数と開口面積の積値との関係を規定したテーブルを示す図である。
【図10】図1に示したCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】(A)は時間経過に対する吸気弁及び排気弁のバルブリフト量を示したグラフであり、(B)は時間経過に対する吸気弁通過ガス流量の積算値の変化を示したグラフである。
【図12】本発明の第2実施形態に係る筒内吸入新気量推定装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図13】本発明の第3実施形態に係る筒内吸入新気量推定装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図14】本発明の筒内吸入新気量推定装置の第1変形例に係るCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図15】本発明の筒内吸入新気量推定装置の第2変形例に係るCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図16】(A)は時間経過に対する吸気弁及び排気弁のバルブリフト量を示したグラフであり、(B)は時間経過に対する吸気弁通過ガス流量の積算値の変化を示したグラフである。
【符号の説明】
10…内燃機関、21…シリンダ、25…燃焼室、32…吸気弁、31…吸気ポート、33…吸気弁制御装置、34…排気ポート、39…インジェクタ、41…吸気管、52…排気管、80…電気制御装置、81…CPU。
Claims (7)
- 内燃機関の吸気弁の周囲を通過して吸気通路からシリンダ内に吸入されているガスが新気であるか同シリンダ内から同吸気通路へ吹き返された既燃ガスであるかを判定する吸気弁通過ガス種判定手段と、
前記シリンダ内に吸入されているガスが前記新気であると判定されているとき同新気の状態パラメータを使用して前記吸気弁の周囲を通過するガスの流量である吸気弁通過ガス流量を算出するとともに同シリンダ内に吸入されているガスが前記既燃ガスであると判定されているとき同既燃ガスの状態パラメータを使用して同吸気弁通過ガス流量を推定する吸気弁通過ガス流量算出手段と、
前記算出された吸気弁通過ガス流量に基づいて前記シリンダ内に吸入される新気の量である筒内吸入新気量を推定する筒内吸入新気量推定手段と、
を備えた内燃機関の筒内吸入新気量推定装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の筒内吸入新気量推定装置において、
前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記吸気通路から前記シリンダ内にガスが吸入されているときに前記吸気弁通過ガス流量を正及び負の何れか一方の符号付きガス流量として、前記シリンダ内から前記吸気通路にガスが吹き返されているときに前記吸気弁通過ガス流量を正及び負の何れか他方の符号付きガス流量として、所定時間の経過毎に算出するように構成され、
前記吸気弁通過ガス種判定手段は、前記算出された吸気弁通過ガス流量の前記吸気弁の開弁時からの積算値が同積算値の初期値より大きいか否かに応じて前記シリンダ内に吸入されているガスが前記新気であるか前記既燃ガスであるかを判定するように構成された筒内吸入新気量推定装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の筒内吸入新気量推定装置であって、
前記吸気通路内の新気の温度を取得する新気温取得手段と、
前記内燃機関の排気通路内の排気ガスの温度を取得する排気ガス温取得手段と、
を備えるとともに、
前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記新気の状態パラメータとして前記取得された新気の温度を使用するとともに前記既燃ガスの状態パラメータとして前記取得された排気ガスの温度を使用するように構成された筒内吸入新気量推定装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の筒内吸入新気量推定装置であって、
前記吸気通路内の新気の温度を取得する新気温取得手段と、
前記シリンダ内のガスの温度を取得する筒内ガス温取得手段と、
を備えるとともに、
前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記新気の状態パラメータとして前記取得された新気の温度を使用するとともに前記既燃ガスの状態パラメータとして前記取得されたシリンダ内のガスの温度を使用するように構成された筒内吸入新気量推定装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の筒内吸入新気量推定装置であって、
前記吸気通路内の新気の温度を取得する新気温取得手段と、
前記吸気弁の周囲を通過して前記シリンダから前記吸気通路へ吹き返された既燃ガスのエネルギーを取得するとともに同取得した既燃ガスのエネルギーに基づいて同既燃ガスの温度を取得する吹き返しガス温取得手段と、
を備えるとともに、
前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記新気の状態パラメータとして前記取得された新気の温度を使用するとともに前記既燃ガスの状態パラメータとして前記取得された既燃ガスの温度を使用するように構成された筒内吸入新気量推定装置。 - 請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の内燃機関の筒内吸入新気量推定装置であって、
前記吸気通路内の新気の比熱比を取得する新気比熱比取得手段と、
前記排気通路内の排気ガスの比熱比を取得する排気ガス比熱比取得手段と、
を備えるとともに、
前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記新気の状態パラメータとして前記取得された新気の比熱比を使用するとともに前記既燃ガスの状態パラメータとして前記取得された排気ガスの比熱比を使用するように構成された筒内吸入新気量推定装置。 - 請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の内燃機関の筒内吸入新気量推定装置であって、
前記吸気弁通過ガス流量算出手段は、前記吸気弁の周囲に形成されるガス通路を絞り部とみなしたときに成立する同絞り部を通過するガス流量を算出する式に基づいて前記吸気弁通過ガス流量を算出するように構成された筒内吸入新気量推定装置。
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