以下、本発明による内燃機関の吸入空気量推定装置を含む燃料噴射量制御装置の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料噴射量制御装置を火花点火式多気筒(4気筒)内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。なお、図1は、特定気筒の断面のみを示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50とを含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これにより同クランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを含むとともに同インテークカムシャフトの位相角を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。
吸気系統40は、吸気ポート31に連通し同吸気ポート31とともに吸気通路を形成するインテークマニホールドIM及びサージタンクSTを含む吸気管41、吸気管41の端部に設けられたエアフィルタ42、吸気管41内にあって吸気通路の開口断面積を可変とするスロットル弁43、スロットル弁駆動手段を構成するスロットル弁アクチュエータ43a、スワールコントロールバルブ(以下、「SCV」と称呼する。)44及びSCVアクチュエータ44aを備えている。SCV44は、スロットル弁43よりも下流でインジェクタ39よりも上流の位置にて吸気管41に対し回動可能に支持されていて、その開度に応じて燃焼室に吸入される空気のスワールを制御するようになっている。
DCモータからなるスロットル弁アクチュエータ43aは、後述する電子制御装置70が達成する電子制御スロットル弁ロジックにより目標スロットル弁開度θrが与えられると、実際のスロットル弁開度TAが目標スロットル弁開度θrとなるようにスロットル弁43を駆動するようになっている。DCモータからなるSCVアクチュエータ44aは、電気制御装置70から駆動信号を受けてSCV44を回転駆動するようになっている。
排気系統50は、排気ポート34に連通したエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51に接続されたエキゾーストパイプ52及びエキゾーストパイプ52に介装された触媒コンバータ(三元触媒装置)53を備えている。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、吸気温センサ(大気温センサ)62、大気圧センサ(スロットル弁上流圧力センサ)63、スロットルポジションセンサ64、SCV開度センサ65、カムポジションセンサ66、クランクポジションセンサ67、水温センサ68、O2センサ69及びアクセル操作量検出手段を構成するアクセル開度センサ81を備えている。
エアフローメータ61は、内燃機関10の吸気通路内を流れる空気の流量(吸入空気流量)を実際に測定し、測定した吸入空気流量AFMを表す信号を出力するようになっている。吸気温センサ62は、エアフローメータ61内に備えられていて、吸入空気の温度を検出し、吸気温度(大気温度)Taを表す信号を出力するようになっている。大気圧センサ63は、スロットル弁43の上流の圧力(即ち、大気圧)を検出し、スロットル弁上流圧力Paを表す信号を出力するようになっている。スロットルポジションセンサ64は、スロットル弁43の開度(スロットル弁開度)を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。SCV開度センサ65は、SCV44の開度を検出し、SCV開度θivを表す信号を出力するようになっている。
カムポジションセンサ66は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(即ち、クランク軸24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号(G2信号)を発生するようになっている。クランクポジションセンサ67は、クランク軸24が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸24が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、エンジン回転速度NEを表す。水温センサ68は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。O2センサ69は、触媒コンバータ53に流入する排ガス中の酸素濃度に応じた信号(空燃比が理論空燃比よりもリッチであるか、又はリーンであるかを示す信号)を出力するようになっている。アクセル開度センサ81は、運転者によって操作されるアクセルペダル82の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバスで接続された、CPU71、ROM72、RAM73、バックアップRAM74及びインターフェース75等からなるマイクロコンピュータである。ROM72は、テーブル(マップ)及び定数等を予め記憶するようになっている。RAM73は、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するようになっている。バックアップRAM74は、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するようになっている。インターフェース75は、ADコンバータを含み、前述の種々のセンサと接続され、CPU71にこれらのセンサからの信号を供給するとともに、CPU71の指示に応じて吸気弁制御装置33のアクチュエータ33a、イグナイタ38、インジェクタ39、スロットル弁アクチュエータ43a及びSCVアクチュエータ44a等に駆動信号を送出するようになっている。
次に、上記のように構成された燃料噴射量制御装置による物理モデル(シミューレーションモデル)を用いた燃料噴射量の決定方法について説明する。
(燃料噴射量fiの決定方法の概要)
この燃料噴射量制御装置は、吸気行程にある気筒(以下、「燃料噴射気筒」と云う。)の吸気弁32が閉じる時点(この時点を「吸気弁閉時」とも云う。)より前の時点で、同気筒に対して燃料を噴射しなければならない。従って、燃料噴射量制御装置は、吸気弁閉時に確定されることになる燃料噴射気筒の燃焼室25(シリンダ21内)に吸入されているであろう吸入空気量(筒内吸入空気量Mc)を前もって予測する必要がある。また、本例においては、噴射終了時期は、燃料噴射気筒の吸気上死点前75°クランクアングル(以下、「BTDC75°CA」と表す。他のクランクアングルについても同様に表す。)と定められている。
したがって、この燃料噴射量制御装置は、噴射に要する時間及びCPU71の計算時間等を考慮して、クランク角がBTDC75°CAとなる時点よりも前の時点までに、燃料噴射気筒の吸気弁閉時の筒内吸入空気量Mcを予測・推定し、推定された筒内吸入空気量Mcを下記(3)式に適用して燃料噴射量(基本噴射量)fiを決定する。(3)式における係数kλは、エンジンの運転状態に応じて別途定められる設定空燃比に応じて変更される係数である。
fi =kλ・Mc …(3)
次に、筒内吸入空気量Mcの推定原理について、上記燃料噴射量制御装置の機能ブロック図である図2を参照しながら具体的に説明する。この燃料噴射量制御装置は、物理モデルとして、電子制御スロットル弁モデルM1、スロットルモデルM2、吸気管モデルM3、吸気弁モデルM4、熱伝達モデルM5及び吸気弁モデルM6を備えている。これらのモデルM1〜M6における計算は、CPU81が所定時間ΔTt(プログラム実行間隔時間)の経過毎に各モデルに対応するプログラムを実行することにより達成される。また、燃料噴射量制御装置は、電気制御スロットル弁ロジックA1及び噴射量決定ロジックA2を備えている。
(電子制御スロットル弁モデルM1と電子制御スロットル弁ロジックA1)
電子制御スロットル弁モデルM1は、電子制御スロットル弁ロジックA1と協働して、現時点までのアクセルペダル操作量Accpに基づいて現時点から所定時間T0先の時刻tにおけるスロットル弁開度θtを推定するモデルである。
具体的に述べると、電子制御スロットル弁ロジックA1は、図3に示したアクセルペダル操作量Accpと目標スロットル弁開度θrとの関係を規定するテーブル及びアクセル開度センサ81により検出された実際の(現時点の)アクセルペダル操作量Accpに基づいて暫定的な目標スロットル弁開度θr1を所定時間(例えば、2msec)の経過毎に決定する。また、電子制御スロットル弁ロジックA1は、暫定的な目標スロットル弁開度θr1を所定時間T(例えば、64msec)だけ遅延させた値、即ち、現時点より所定時間Tだけ前の時点にて決定された暫定的な目標スロットル弁開度θr1を、現時点での最終的な目標スロットル弁開度θrとして決定する。そして、電子制御スロットル弁ロジックA1は、実際のスロットル弁開度TAが現時点の目標スロットル弁開度θrとなるようにスロットル弁アクチュエータ43aに対して駆動信号を送出する。
このように、目標スロットル弁開度θrは、現時点から所定時間Tだけ前の時点におけるアクセルペダル操作量Accpに応じて決定された暫定的な目標スロットル弁開度θr1と等しいから、現時点から所定時間T0だけ先の時刻tにおける目標スロットル弁開度θrは現時点から時間(T−T0)前における暫定的な目標スロットル弁開度θr1と等しい。また、スロットル弁アクチュエータ43aの作動遅れ時間を無視すれば、ある時点の目標スロットル弁開度θrは、その時点の実際のスロットル弁開度と等しい。このような考えに基づき、電子制御スロットル弁モデルM1は、現時点から所定時間T0だけ先の時刻tにおけるスロットル弁開度θtを推定する。即ち、現時点から時間(T−T0)前における暫定的な目標スロットル弁開度θr1を現時点から所定時間T0だけ先の時刻tにおけるスロットル弁開度θtとして推定する。なお、スロットル弁アクチュエータ43aの作動遅れ時間を考慮に加えて、スロットル弁開度θtを推定してもよい。
(スロットルモデルM2)
スロットルモデルM2は、スロットル弁43を通過する空気流量(スロットル通過空気流量)mtを、エネルギー保存則、運動量保存則、質量保存則及び状態方程式等の物理法則に基づいて得られた(4)式及び(5)式に基づいて推定するモデルである。(4)式において、Ct(θt)はスロットル弁開度θtに応じて変化する流量係数、At(θt)はスロットル弁開度θtに応じて変化するスロットル開口面積(吸気管41のスロットル弁43周囲の開口面積)、Paはスロットル弁上流圧力(即ち、大気圧)、Pmは吸気管圧力(吸気管内空気圧力)、Taは吸気温度(大気温度)である。
ここで、上記スロットルモデルM2を記述した上記(4)式及び(5)式の導出過程について説明する。いま、スロットル弁43の上流の開口断面積をAu、空気密度をρu、空気の流速をvuとし、スロットル弁43による吸気管41の開口断面積をAd、そこでの空気密度をρd、スロットル弁43を通過する空気の流速をvdとすると、スロットル通過空気流量mtは、下記(6)式で表される。(6)式は質量保存則を記述した式と言える。
mt=Ad・ρd・vd=Au・ρu・vu …(6)
一方、運動エネルギーは、空気の質量をmとすると、スロットル弁43の上流でm・vu2/2であり、スロットル弁43を通過する場所でm・vd2/2である。他方、熱エネルギーは、スロットル弁43の上流でm・Cp・Tuであり、スロットル弁43を通過する場所でm・Cp・Tdである。したがって、エネルギー保存則により、下記(7)式が得られる。なお、Tuはスロットル弁上流の空気温度、Tdはスロットル弁下流の空気温度、Cpは定圧比熱である。
m・vu2/2+m・Cp・Tu=m・vd2/2+m・Cp・Td …(7)
ところで、状態方程式は下記(8)式、比熱比κは下記(9)式、マイヤーの関係は下記(10)式で示されるから、(8)〜(10)式よりCp・Tは下記(11)式のように表される。なお、Pは気体の圧力、ρは気体の密度、Tは気体の温度、Rは気体定数、Cvは定容比熱である。
P=ρ・R・T …(8)
κ=Cp/Cv …(9)
Cp=Cv+R …(10)
Cp・T={κ/(κ-1)}・(P/ρ) …(11)
(11)式の関係を用いて上記エネルギー保存則に基づく(7)式を書換えると、下記(12)式が得られる。ここで、Puはスロットル弁43上流の空気圧力、Pdはスロットル弁43の下流の空気圧力(即ち、吸気管圧力Pm)である。
vu2/2+{κ/(κ-1)}・(Pu/ρu)=vd2/2+{κ/(κ-1)}・(Pd/ρd) …(12)
そして、スロットル弁43の無限上流を考えると、Au=∞、vu=0であるから、エネルギー保存則に基づく(12)式は下記の(13)式に書き換えられる。
{κ/(κ-1)}・(Pu/ρu)=vd2/2+{κ/(κ-1)}・(Pd/ρd) …(13)
次に、運動量について記述する。断面積Auの部分に加わる圧力をPu、断面積Adの部分に加わる圧力をPd、断面積Auの部分と断面積Adの部分との間をつなぐ固定された空間の平均圧力をPmeanとすると、下記(14)式が得られる。
ρd・vd2・Ad−ρu・vu2・Au=Pu・Au−Pd・Ad+Pmean・(Ad−Au) …(14)
(14)式で、Au=∞、vu=0を考慮すると、下記(15)式が得られるので、同(15)式と上記(14)式とから下記(16)式の運動量に関する関係(運動量保存則に基づく関係)が得られる。
Pmean=Pu …(15)
ρd・vd2=Pu−Pd …(16)
この(16)式と、(6)式及び(13)式とから(4)式及び(5)式が得られる。具体的な計算方法について簡単に述べると、(13)式を(Pd/ρd)のみを左辺とする式に変形し、(16)式をρdのみを左辺とする式に変形する。次いで、これら両式の左辺同士及び右辺同士を掛け合わせて得た式を得て、その式をvdについて解くと(17)式が得られる。
また、(16)式からρd・vd=(Pu-Pd)/vdであるから、この式の右辺のvdに(17)式で表されたvdを代入すると、(18)式が得られる。
そして、スロットル通過空気流量mtはmt=Ad・ρd・vdであるから、この式と(18)式及び気体の状態方程式から得られるρu=Pu/(R・Tu)の関係を用いてmtについての式を得、更に、Puはスロットル弁上流圧力Paであり、Pdは吸気管圧力Pmであるから、Pu=Pa, Pd=Pmと置き直すとともに、開口断面積Adを開口面積A(θt)と置きなおした式を得る。そして、適合定数として流量係数Ct(θt)を加えて整理すると(4)式及び(5)式の下段の式が得られる。なお、スロットル弁通過流速vdが音速となるまで吸気管圧力Pmが低下している場合(即ち、(Pm/Pa)≦1/(κ+1)の場合)、スロットル通過流速vdは(Pa/Pm)の値に依存しなくなる。したがって、この場合、(5)式の下段において、Pa/Pm=1/(κ+1)と置き直した式を用いる。これが、(5)式の上段の式である。
次に、(5)式及び(6)式で表されたスロットルモデルM2におけるスロットル通過空気流量mtの実際の求め方を述べる。いま、スロットル弁開度θtが一定に維持される定常運転時を想定し、その場合のスロットル通過空気流量及び吸気管圧力がそれぞれmtTA及びPmTAであるとすると、(4)式から下記(19)式が得られる。
mtTA=Ct(θt)・At(θt)・{Pa/(R・Ta)1/2}・Φ(PmTA/Pa) …(19)
したがって、(4)式及び(19)式から下記(20)式を得る。
ところで、経験則から、筒内吸入空気流量mcは下記(21)式に従う。
mc=(Ta/Tm)・(c・Pm−d) …(21)
(21)において、値c,dは、吸気弁モデルM4に関する説明において述べる適合定数である。値cは、エンジン回転速度NE及び吸気弁の開閉タイミングVTと定数cとの関係を規定するテーブルMAPC、実際のエンジン回転速度NE並びに実際の吸気弁の開閉タイミングVTから求めることができる(c=MAPC(NE,VT))。同様に、値dは、エンジン回転速度NE及び吸気弁の開閉タイミングVTと定数dとの関係を規定するテーブルMAPD、実際のエンジン回転速度NE並びに実際の吸気弁の開閉タイミングVTから求めることができる(d=MAPD(NE,VT))。
また、上述したスロットル弁開度θtが一定の定常運転時においては、スロットル通過空気流量mt(この場合、mtTA)と筒内吸入空気流量mcとは等しいので、(21)式から下記(22)式が得られる。PmTAは、スロットル弁開度θtが一定の運転状態における吸気管圧力である。
mtTA=(Ta/Tm)・(c・PmTA−d) …(22)
(22)式の吸気管圧力PmTAは、スロットル弁開度θt、エンジン回転速度NE及び吸気弁の開閉タイミングVTに基いて経験的に決定することができる。そこで、スロットルモデルM2は、スロットル弁開度θt、エンジン回転速度NE及び吸気弁の開閉タイミングVTと、吸気管圧力PmTAとの関係を規定するテーブルMAPPMをROM72内に記憶していて、電子制御スロットル弁モデルM1により推定されたスロットル弁開度θt、実際のエンジン回転速度NE及び実際の吸気弁の開閉タイミングVTと、前記テーブルMAPPMとに基づいて吸気管圧力PmTA(=MAPPM(θt,NE,VT))を求める。スロットルモデルM2は、このようにして求めた値c,d、吸気管圧力PmTA、吸気管モデルM3により既に推定されている直前(最新)吸気管内空気温度Tm及び吸気温センサ62が検出した大気温度Taを(22)式に適用してmtTAを求める。
更に、スロットルモデルM2は、値Pm/Paと値Φ(Pm/Pa)との関係を規定するテーブルMAPΦをROM72内に記憶していて、前記吸気管圧力PmTAをスロットル弁上流圧力Paで除した値(PmTA/Pa)と、前記テーブルMAPΦとから、上記(20)式の右辺における値Φ(PmTA/Pa)(=MAPΦ(PmTA/Pa))を求める。同様にして、スロットルモデルM2は、後述する吸気管モデルM3が既に求めている前回の吸気管圧力Pm(k-1)をスロットル弁上流圧力Paで除した値(Pm(k-1)/Pa)と、前記テーブルMAPΦとから、上記(20)式の右辺における値Φ(Pm/Pa)(=MAPΦ(Pm(k-1)/Pa))を求める。スロットルモデルM2は、以上のように上記(20)式の右辺の各因数を求め、同(20)式によりスロットル通過空気流量mtを求める。
(吸気管モデルM3)
吸気管モデルM3は、質量保存則とエネルギー保存則とにそれぞれ基づいた下記(23)式及び下記(24)式、スロットル通過空気流量mt、スロットル通過空気温度(即ち、大気温度である吸入空気温度)Ta、吸気管から流出する空気流量mc(即ち、筒内吸入空気流量)、並びに、伝熱項(吸気管から与えられる熱エネルギー項)Q/Cpから、吸気管圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmを求めるモデルである。なお、伝熱項Q/Cpについては、熱伝達モデルM5の項目において詳述する。
d(Pm/Tm)/dt=(R/Vm)・(mt−mc) …(23)
dPm/dt=κ・(R/Vm)・(mt・Ta−mc・Tm +Q/Cp) …(24)
吸気管モデルM3は、(23)式及び(24)式の右辺におけるスロットル通過空気流量mtをスロットルモデルM2から取得し、筒内吸入空気流量mcを後述する吸気弁モデルM4から取得する。更に、吸気管モデルM3は、伝熱項Q/Cpを後述する熱伝達モデルM5から取得する。そして、(23)式及び(24)式に基づく計算を行って最新の吸気管圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmを推定する。
ここで、上記吸気管モデルM3を記述した(23)式及び(24)式の導出過程について説明する。先ず、質量保存則に基づく(23)式について検討する。吸気管部の総空気量をMとすると、総空気量Mの時間的変化は、吸気管部に流入する空気量に相当するスロットル通過空気流量mtと同吸気管部から流出する空気量に相当する筒内吸入空気流量mcの差であるから、質量保存則に基づく下記(25)式が得られる。
dM/dt=mt−mc …(25)
一方、状態方程式は下記(26)となるから、上記(25)式と下記(26)式とから総空気量Mを消去することにより上記(23)式が得られる。
Pm・Vm=M・R・Tm …(26)
次に、吸気管部内の空気に関するエネルギー保存則に基く(24)式について検討する。吸気管部内の空気のエネルギーM・Cv・Tmの時間的変化量(単位時間あたりの変化量)は、吸気管部内の空気に与えられるエネルギーと同吸気管部の空気から奪われるエネルギーとの差に等しい。そこで、先ず、与えられるエネルギーについて検討すると、吸気管部にはエネルギーCp・mt・Taを有する空気が流入する。また、吸気管部内の空気は吸気管壁(サージタンク部の壁面及びインテークポート部の壁面)から単位時間あたりQの熱量(熱流、熱エネルギー、又は伝達熱流量とも云う。)を受ける。一方、奪われるエネルギーについて検討すると、吸気管部からはエネルギーCp・mc・Tmの空気が流出する。更に、この場合、吸気管部の容積Vmは変化せず、吸気管部のエネルギーの殆どが温度上昇に寄与する(即ち、運動エネルギーは無視し得る)ものと考えられる。これらのことから、下記(27)式が得られる。
d(M・Cv・Tm)/dt=Cp・mt・Ta−Cp・mc・Tm+Q …(27)
この(27)式を、上記(9)式(κ=Cp/Cv)と上記(26)式(Pm・Vm=M・R・Tm)とを用いて変形することにより、上記(24)式が得られる。
(吸気弁モデルM4)
吸気弁モデルM4は、吸気管圧力Pm、吸気管内温度Tm及び吸気温度Ta等から筒内吸入空気流量mcを推定するモデルである。吸気行程(吸気弁閉時も含む)におけるシリンダ内(気筒内、燃焼室25内)の圧力は吸気弁32の上流の圧力、即ち吸気管圧力Pmとみなすことができるので、筒内吸入空気流量mcは吸気弁閉時の吸気管圧力Pmに比例すると考えることができる。そこで、吸気弁モデルM4は筒内吸入空気流量mcを、経験則に基づく下記(28)式にしたがって求める。
mc=(Ta/Tm)・(c・Pm−d) …(28)
(28)式において、値cは比例係数、値dは筒内に残存していた既燃ガス量を反映した値である。値cは、(21)式に関連する部分にて説明したように、エンジン回転速度NEと吸気弁の開閉タイミングVTと値cとの関係を規定したテーブルMAPC、実際のエンジン回転速度NE及び実際の吸気弁開閉タイミングVTにより求められる(c=MAPC(NE,VT))。MAPCはROM72内に格納されている。同様に、値dは、エンジン回転速度NEと吸気弁の開閉タイミングVTと値dとの関係を規定したテーブルMAPD、実際のエンジン回転速度NE及び実際の吸気弁開閉タイミングVTにより求められる(d=MAPD(NE,VT))。MAPDはROM72内に格納されている。
吸気弁モデルM4は、このようにして値c及び値dを求めるとともに、吸気管モデルM3により既に推定されている直前(最新)の吸気管圧力Pm及び直前の吸気管内空気温度Tmと、吸気温センサ62が検出した大気温度Taを上記(28)式に適用し、筒内吸入空気流量mcを推定する。
(熱伝達モデルM5)
熱伝達モデルM5は、上述した吸気管モデルM3の(24)式での伝熱項Q/Cpの伝達熱流量Qを、下記(29)〜(33)式により推定するモデルである。熱伝達モデルM5は、以下に述べるように、自然対流伝達熱流量Q1と強制対流伝達熱流量Q2とを別々に求め、これらの和を求めることにより伝熱熱流量Q(=Q1+Q2)を推定する。なお、自然対流伝達熱流量Q1は、前記吸気管部内に空気が存在することにより発生する自然対流による熱伝達の形態で同空気に与えられる熱エネルギーに基く値である。また、強制対流伝達熱流量Q2は、前記吸気管部の壁面近傍を空気が通過することにより発生する強制対流による熱伝達の形態で同空気に与えられる熱エネルギーに基づく値である。
Q=Q1+Q2 …(29)
Q1=A1・hwst・(Tst−Tm) …(30)
hwst=f1(Tst−Tm) …(31)
Q2=A2・hwim・(Tim−Tm) …(32)
hwim=f2(mc) …(33)
図4にも示したように、(29)〜(33)式において、A1はサージタンク部表面積相当値、hwstは自然対流熱伝達率、Tstはサージタンク部壁温、Tmは吸気管内空気温度、A2はインテークマニホールド部表面積相当値、hwimは強制対流熱伝達率、Timはインテークマニホールド部壁温である。熱伝達モデルM5は、図2に示したように、吸気管モデルM3から吸気管内空気温度Tmを得るとともに、吸気弁モデルM4から筒内吸入空気流量mcを得る。更に、熱伝達モデルM5は、サージタンクSTの壁温を推定(検出)するサージタンク部壁温推定手段(エンジンルーム内温度推定手段)S1からサージタンク部壁温Tstを、インテークマニホールドIMの壁温を推定(検出)するインテークマニホールド部壁温推定手段S2からインテークマニホールド部壁温Timを得て、(29)〜(33)式の計算を行う。
サージタンク部壁温推定手段S1は、吸気温度(大気温度)Ta及び冷却水温THWとサージタンク部壁温Tstとの関係を規定するテーブルMAPTst、実際の吸気温度Ta並びに実際の冷却水温THWから、サージタンク部壁温Tst(=MAPTst(Ta,THW))を推定する。なお、サージタンクSTの壁面又はサージタンク近傍のエンジンルーム内に温度センサを配置し、その温度センサをサージタンク部壁温推定手段S1として用いることにより、サージタンク部壁温Tstを取得してもよい。
インテークマニホールド部壁温推定手段S2は、冷却水温THWとインテークマニホールド部壁温Timとの関係を規定するテーブルMAPTim及び実際の冷却水温THWから、インテークマニホールド部壁温Tim(=MAPTim(THW))を推定する。なお、インテークマニホールドIMの壁面に温度センサを配置し、その温度センサをインテークマニホールド部壁温推定手段S2として用いることにより、インテークマニホールド部壁温Timを取得してもよい。
また、上記(31)式の関数f1及び上記(33)式の関数f2は、それぞれ図5及び図6に示したとおりである。関数f1はサージタンク部壁温Tstと吸気管内空気温度Tmの温度差(Tst−Tm)に関し略一定であるか又は温度差(Tst−Tm)と略比例(単調増加)する関数である。関数f2は筒内吸入空気流量mcが増大するにつれて増大する関数であって、例えば、f2=kmc・mc0.8(kmcは定数)である。
従来のモデル(吸気管モデル)においては、空気の吸気管部における受熱(吸気管部の壁面から同吸気管部内の空気に伝達される熱エネルギー)を考慮していないため、定常運転状態における吸気管内空気温度Tmは大気温度である吸入空気温度Taと一致した値として計算される。即ち、従来のモデルでは(2)式のように(24)式の伝熱項Q/Cpを無視していて、この(2)式によれば、定常運転状態(dPm/dt=0)を考えるとスロットル通過空気流量mtと筒内吸入空気量mcとは等しい(mt=mc)ことから、Ta=Tmと計算される。
しかしながら、実際の内燃機関においては、吸気管壁面と吸気管内の空気との間で熱の交換が行われる。したがって、図7に示したように、大気温度Ta、スロットル弁開度θt、機関回転速度NE、バルブタイミングVT、及びバルブリフト量L等の機関運転条件を同一に維持しながら運転した場合であっても、冷間時(暖機前)から暖機終了時までの期間に吸気管内空気温度Tmは徐々に上昇し、その結果、筒内吸入空気量mcは次第に減少する。
そこで、本発明による燃料噴射量制御装置は、吸気管モデルM3にて用いる(24)式に示したエネルギー保存則に伝熱項Q/Cpを導入し(即ち、(27)式において吸気管部の壁面から吸気管部内の空気に単位時間あたり伝達される熱エネルギーである伝達熱流量Qを考慮に入れ)、この伝熱項のQの値を熱伝達モデルM5により推定するように構成されている。これにより、吸気管部の壁面と吸気管部内の空気との間での熱の交換を、筒内吸入空気流量mcの推定に反映することができる。
また、熱伝達モデルM5は、(29)式に示したように、自然対流伝達熱流量Q1と強制対流伝達熱流量Q2との和を求め、その和を全体の伝熱熱流量Qとして推定する。この理由は、吸気管部の壁面と吸気管部内の空気との間の熱伝達の形態としては、吸気管部の壁面近傍を空気が通過することにより熱の交換が行われる強制対流による熱伝達の形態と、吸気管部内の空気の流速がないとした場合であっても熱の交換が行なわれる自然対流による熱伝達の形態とが存在するからである。以下、上記(29)〜(33)式の根拠について説明する。
先ず、熱伝達の定義式について述べると、温度がTwである壁面に温度がTairである空気が接触している場合、これらの間の熱伝達については、下記の(34)式を適用することができる。ここで、Q0は壁面から空気に単位時間あたりに伝達される熱量(熱流量)、Aは熱伝達が行われる壁面の表面積、hwは熱伝達率である。
Q0=A・hw・(Tw − Tair) …(34)
一方、強制対流の熱伝達においては、空気流量が大きいほど伝達される熱量は大きくなるから、熱伝達率hwは空気流量の増大とともに増大するように設定することが妥当である。そこで、熱伝達モデルM5は、上記(33)式(図6に示した関数f2)のように、強制対流の熱伝達率hwimを筒内吸入空気流量mcの増大とともに増大するように設定している。この場合、強制対流の熱伝達は空気流速が大きい部分において大きいから、(34)式における壁面の表面積Aは(32)式及び図4に示したように、空気流速が大きいインテークマニホールド部の表面積相当値A2に設定されている。以上が、上記(32)及び(33)式の根拠である。
他方、内燃機関の運転状態が低負荷運転状態であると、筒内吸入空気流量mcが極めて小さくなるので、強制対流の熱伝達率hwimは「0」に近づき、強制対流熱伝達熱流量Q2も「0」に近づく。このことは、(32)式、(33)式及び図6に示した関数f2からも理解される。このとき、熱伝達モデルM5が、強制対流熱伝達だけしか考慮していないとし、且つ、低負荷の定常運転状態を考えると、(24)式においてdPm/dt=0, mc=mt, 且つQ/Cp=0とおけるから、大気温度Taと吸気管内空気温度Tmは等しい(Ta=Tm)ことになる。従って、強制対流伝達熱流量Q2のみに基いて吸気管内空気温度Tmを推定すると、同吸気管内空気温度Tmは、図8の曲線LQ2に示したように、筒内吸入空気流量が0に近い領域において大気温度Taに等しく、筒内吸入空気流量mcの増大とともに増大することになる。
しかしながら、実際の内燃機関においては、吸気管内の空気と吸気管部壁面との間で自然対流による熱伝達が行われる。特に、低負荷運転状態においては、サージタンク部内に空気が滞留する傾向があるから、自然対流による熱伝達がサージタンク部において主として行われ、その結果、吸気管内空気温度Tmは大気温度Taとは異なるサージタンク部の壁温Tstに近づく。したがって、伝達熱モデルM5が強制対流熱伝達のみを考慮していて、自然対流による熱伝達を考慮していないとすると、低負荷運転状態での吸気管内空気温度Tmの推定精度が悪化し、その結果、筒内吸入空気流量mcの推定精度も悪化することになる。
このことから、吸気管モデルM5は、自然対流による熱伝達をも考慮に入れている。自然対流による熱伝達は、上述したように、空気が滞留するサージタンク部において主として現れるから、(34)式における壁面の表面積Aは(30)式及び図4に示したようにサージタンク部の表面積相当値A1とすることが妥当である。また、自然対流熱伝達率hwstは、自然対流による熱伝達が壁面温度と空気温度との差に依存するから、(31)に示したように、サージタンク部壁温Tstと吸気管内空気温度Tmとの差に応じた値とすることが妥当である。以上が、(30)式及び(31)式の根拠である。
なお、吸気管モデルM5が自然対流による熱伝達のみを考慮し、強制対流による熱伝達を考慮していないとすると、内燃機関の運転状態が高負荷運転状態であって筒内吸入空気流量mcが大きくなったとき、吸気管内空気温度Tmは大気温度Taに近づくことになる。これは、定常運転状態では、(24)式においてdPm/dt=0且つmc=mt=mvとおけ、伝達熱流量QはQ1とおけるから、同(24)式をTmについて解いた式である下記(35)式において、mvを大きくしたとき、伝達熱流量Q1がmvの増大に伴って増大しないため、吸気管内空気温度Tmが大気温度Taに近づくことからも理解される。つまり、自然対流の熱伝達のみを考慮した熱伝達モデルにより推定された伝達熱流量Q1に基いて吸気管内空気温度Tmを推定すると、同吸気管内空気温度Tmは図8の曲線LQ1のように、筒内吸入空気流量mcの増大とともに大気温度Taに向けて減少することになる。
Tm=Ta+Q1/(Cp・mv) …(35)
ところが、実際の内燃機関においては、高負荷運転状態で筒内吸入空気流量mcが大きくなって強制対流の影響が大きく現れ、これにより、吸気管内空気温度Tmは大気温度Taより大きくなる。したがって、伝達熱モデルM5が自然対流熱伝達のみを考慮していて、強制対流による熱伝達を考慮していないとすると、高負荷運転状態での吸気管内空気温度Tmの推定精度が悪化し、その結果、筒内吸入空気流量mcの推定精度も悪化することになる。
以上、説明したように、熱伝達モデルM5は自然対流及び強制対流による熱伝達を考慮して全体の伝達熱流量を推定し、吸気管モデルM3はこの推定された伝達熱量を用いて吸気管内の空気温度Tm及び空気圧力Pmする。これにより、本発明のモデルは、図8の曲線LQに示したように、内燃機関の運転状態が低負荷運転状態であるか高負荷運転状態であるかに関わらず、吸気管内空気温度Tmを精度良く推定することができ、以って、筒内吸入空気量Mcを精度良く推定することが可能となっている。
(吸気弁モデルM6)
吸気弁モデルM6は、上記吸気弁モデルM4と同様のモデルであり、吸気管モデルM3が推定した直前の(最新の)吸気管圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmと、上記経験則に基づく(28)式(mc=(Ta/Tm)・(c・Pm−d))とを用いて最新の筒内吸入空気流量mcを求める。
(燃料噴射量決定ロジックA2)
燃料噴射量決定ロジックA2は、吸気弁モデルM6により求められた吸気弁閉弁時近傍における筒内吸入空気流量mcに、エンジン回転数NEから算出される燃料噴射気筒の吸気行程に要する時間(吸気弁32が開弁してから閉弁するまでの時間)Tintを乗じることにより、燃料噴射気筒の筒内吸入空気量Mcを求め、これと上記(3)式(fi=kλ・Mc)とに基づいて燃料噴射量fiを決定し、同燃料噴射量fiの燃料を燃料噴射手段であるインジェクタ39から噴射する。以上が、燃料噴射量fiを決定する方法の概略である。
次に、電気制御装置70の実際の作動について、図9〜図11に示したフローチャートを参照しながら説明する。
CPU71は、所定の演算周期ΔTt(例えば、8msec)の経過毎に図9にフローチャートにより示した燃料噴射量計算ルーチン(プログラム)を実行するようになっている。したがって、所定のタイミングとなると、CPU71はステップ900から処理を開始し、ステップ905に進んで上記スロットルモデルM2によりスロットル通過空気流量mt(k-1)を求める。スロットル通過空気流量mtの括弧内の変数がkではなくk-1となっているのは、このスロットル通過空気流量mt(k-1)が演算周期ΔTt前の各種値を用いて求められた値であることを意味している。この変数k,k-1の意味は以下に述べる他の値についても同様である。
ステップ905の計算内容について説明すると、CPU71は先ず上記(21)式の値c(=c(k-1))を、上記テーブルMAPCと、現時点より演算周期ΔTt前のエンジン回転数NE及び現時点より演算周期ΔTt前の吸気弁の開閉タイミングVTとから求める。また、同様に値d(=d(k-1))を、上記テーブルMAPDと、現時点より演算周期ΔTt前のエンジン回転数NE及び現時点より演算周期ΔTt前の吸気弁の開閉タイミングVTとから求める。
次いで、CPU71は吸気管圧力PmTAを、上記テーブルMAPPM、演算周期ΔTt前に求められた推定スロットル弁開度θt(k-1)、現時点より演算周期ΔTt前のエンジン回転数NE及び現時点より演算周期ΔTt前の吸気弁の開閉タイミングVTとから求めた後、スロットル通過空気流量mtTAを(22)式に基づいて求める。なお、スロットル通過空気温度Taは吸気温センサ62が検出する吸入空気温度Taを用い、吸気管内空気温度Tm(k-1)は、前回の本ルーチン実行時において後述するステップ920にて求められている値を用いる。
次いで、CPU71は今回求めた吸気管圧力PmTAをスロットル弁上流圧力Paで除した値(PmTA/Pa)と上記テーブルMAPΦとから値Φ(PmTA/Pa)を求め、前回の本ルーチン実行時における後述するステップ920にて求められた吸気管圧力Pm(k-1)をスロットル弁上流圧力Paで除した値(Pm(k-1)/Pa)と上記テーブルMAPΦとから値Φ(Pm/Pa)を求める。そして、CPU71は、このようにして求めた各値を(20)式に適用してスロットル通過空気流量mt(k-1)を求める。
次に、CPU71はステップ910に進み、(28)式に基いて筒内吸入空気量mc(k-1)を求める。このとき、値c及び値dには上記ステップ905にて求めた値を使用する。また、吸気管圧力Pm(k-1)及び吸気管内空気温度Tm(k-1)には、前回の本ルーチン実行時における後述するステップ920にて求められた値を用い、スロットル通過空気温度Taには吸気温センサ62が検出する吸入空気温度Taを用いる。
次いで、CPU71はステップ915に進み、熱伝達モデルM5により伝達熱流量Qを推定する。具体的に述べると、CPU71はステップ915に進んだとき、図10に示したステップ1000を経由してステップ1005に進み、冷却水温センサ68が検出する冷却水温THW、吸気温センサ62が検出する吸入空気温度Ta及びマップMAPTStからサージタンク部壁温Tstを推定する。次に、CPU71はステップ1010に進み、(31)式にしたがって自然対流熱伝達率hwstを求め、ステップ1015にて(30)式にしたがって自然対流伝達熱流量Q1を求める。
次に、CPU71はステップ1020にて冷却水温センサ68が検出する冷却水温THW及びマップMAPTimからインテークマニホールド部壁温Timを推定し、ステップ1025にて先のステップ910にて推定された筒内吸入空気量mc(k-1)を(33)式に適用して強制対流熱伝達率hwimを求め、続くステップ1030にて(32)式にしたがって強制対流伝達熱流量Q2を求める。そして、CPU71はステップ1035にて(29)式にしたがって伝達熱流量Qを求めて、ステップ1095を経由して図9のステップ920に進む。
CPU71はステップ920にて、上記ステップ905〜915にてそれぞれ求めたスロットル通過空気流量mt(k-1)、筒内吸入空気流量mc(k-1)及び伝達熱流量Qを、上記吸気管モデルM3を表す(23)式及び(24)式を離散化した同ステップ920内に示した式に適用し、今回の吸気管圧力Pm(k)と、同吸気管圧力Pm(k)を今回の吸気管内空気温度Tm(k)にて除した値{Pm/Tm}(k)とを求める。なお、Δtは吸気管モデルM3で使用される離散間隔(離散時間)を表す。また、定圧比熱Cpは予め与えられた値を用いる。
次いで、CPU71はステップ925に進み、(28)式に基づいて今回の筒内吸入空気流量mc(k)を求める。具体的に述べると、CPU71は値c(k)をエンジン回転速度NEと吸気弁の開閉タイミングVTとMAPCとにより求め(c(k)=MAPC(NE,VT))、値d(k)をエンジン回転速度NEと吸気弁の開閉タイミングVTとMAPDとにより求める(d(k)=MAPD(NE,VT))。このときのエンジン回転数NE及び吸気弁の開閉タイミングVTは、現時点での値を用いる。そして、CPU71は、値c(k)、値d(k)、上記ステップ920にて求められた今回の吸気管圧力Pm(k)及び今回の吸気管内空気温度Tm(k)(値{Pm/Tm}(k)及び吸気管圧力Pm(k)から求められる)並びに吸気温センサ62が検出する吸入空気温度Taを(28)式に適用することにより、今回の筒内吸入空気流量mc(k)を算出し、ステップ930に進む。
CPU71はステップ930にて、現時点でのエンジン回転速度NEと、インテークカムシャフトのカムプロフィールで決定されている吸気弁開弁角とから吸気弁開弁時間(吸気弁が開弁してから閉弁するまでの時間)Tintを計算し、続くステップ935にて上記今回の筒内吸入空気流量mc(k)に吸気弁開弁時間Tintを乗じて筒内吸入空気量Mcを算出する。次に、CPU71はステップ940に進み、上記求められた筒内吸入空気量Mcを(3)式に適用して燃料噴射量fiを算出し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
次に、電気制御装置70が、実際に噴射を行うために実行するルーチンについて、同ルーチンをフローチャートにより示した図11を参照して説明すると、CPU71はこのルーチンをクランクポジションセンサ67がパルスを発生する毎に(即ち、クランク角が10°CA経過する毎に)実行するようになっている。以下、このルーチンをNE割込みルーチンと称呼する。
即ち、所定のタイミングにてクランクポジションセンサ67がパルスを発生すると、CPU71はステップ1100から処理を開始し、続くステップ1105にて最新の(その時点で演算されている)燃料噴射量fiを同時点のエンジン回転速度NEから噴射クランク角θinjに変換する。次いで、CPU71はステップ1110に進み、現在(本NE割込みルーチン)が、燃料噴射終了時期であるBTDC75°CAに噴射クランク角θinjをクランク角が遡る方向に加えて得られる燃料噴射開始クランク角BTDC(75°CA+θinj)に対し、直前のNE割込みルーチンであるか否かを判定する。換言すると、次回のNE割込みルーチンが、実際のクランク角がクランク角BTDC(75°CA+θinj)となるタイミングよりも遅いタイミングで発生するか否かを判定する。
そして、現在がクランク角BTDC(75°CA+θinj)に対して直前のNE割込みルーチンであるときは、直ちに噴射を開始するための処理を行わなければならないので、ステップ1115に進んで燃料噴射気筒のインジェクタ39と接続された所定のレジスタ(図示省略)に噴射開始時刻を設定するとともに、噴射開始時刻に噴射時間fiを加えた時刻である噴射終了時刻を設定し、ステップ1195にて本ルーチンを一旦終了する。これにより、CPU71の内蔵するタイマ(フリーランカウンタ)が噴射開始時刻と一致すると前記インジェクタから燃料の噴射が開始され、同タイマが噴射終了時刻と一致すると同インジェクタからの噴射が終了される。一方。ステップ1110にて「No」と判定されるとき、CPU71はそのままステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
このように、本実施形態の燃料噴射量制御装置は、現時点から所定時間T後のスロットル弁開度θtを推定し、このスロットル弁開度θt及び種々の物理法則にしたがって構築されたシミュレーションモデルに基いて所定時間T後の筒内吸入空気量Mcを推定する。したがって、燃料噴射気筒の燃料噴射タイミングとなったとき、その燃料噴射気筒の吸気弁閉弁時近傍の筒内吸入空気量Mcに応じた燃料噴射量fiの燃料を同気筒に噴射することができる。
また、本燃料噴射量制御装置の吸気管モデルM3は、吸気管壁面と吸気管内の空気との間での熱の交換を考慮しているので、筒内吸入空気量Mcを精度良く推定することができる。更に、熱伝達モデルM5は、吸気管モデルM3にて使用される伝熱熱流量Qを、自然対流伝達熱流量Q1と強制対流伝達熱流量Q2との和として推定している。したがって、内燃機関の暖機状態に応じた伝達熱流量Qを得ることができ、筒内吸入空気量Mcを暖機状態に関わらずより精度良く推定することができる。
次に、本発明による内燃機関の吸入空気量推定装置の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態は、吸気管部の壁面から同吸気管部内の空気に伝達される伝達熱流量Qを、空気が滞留する傾向を有するサージタンク部における自然対流伝達熱流量Q1(以下、「サージタンク部伝達熱流量Q1」と云う。)と、空気流速が大きいインテークマニホールド部における強制対流伝達熱流量Q2(以下、「インテークマニホールド部伝達熱流量Q2」と云う。)との和(Q=Q1+Q2)として求めていた。
これに対し、第2実施形態は、下記(36)式に示したように、上記伝達熱流量Qをサージタンク部伝達熱流量Q1とインテークマニホールド部伝達熱流量Q2との和に、更にスロットル弁部における伝達熱流量Q3(以下、「スロットル弁部伝達熱流量Q3」と云う。)を加えることにより求める点においてのみ第1実施形態と相違している。従って、以下、かかる相違点を中心に説明する。
Q=Q1+Q2+Q3 …(36)
先ず、本実施形態の吸入空気量推定装置が、伝達熱流量Qを求める際にスロットル弁部伝達熱流量Q3を考慮する理由について説明する。
図12に示したように、スロットル弁43から吸気弁までの吸気管部は、スロットル弁部TVと、サージタンク部STと、インテークマニホールド部IMとから構成されている。上述したように、上記第1実施形態の吸入空気量推定装置は、サージタンク部STの壁面とサージタンク部ST内の空気との間及びインテークマニホールド部IMの壁面とインテークマニホールド部IM内の空気との間で熱の交換が行われるとの考えに基づき、伝達熱流量Qを求めている。
しかしながら、実際には、スロットル弁部TVの壁面とスロットル弁部TV内の空気との間でも相当量の熱の交換が行われている。例えば、スロットル弁43の開度が小さいとき、スロットル弁43を通過する空気の流速は極めて大きくなる(即ち、チョーク状態が発生する。)。従って、スロットル弁部TV内を通過する空気は、強制対流の形態によりスロットル弁部TVの壁面から多くの熱を受ける。また、スロットル弁部TVは、スロットル弁43が凍結しないようにエンジン冷却水によって暖められていることが多い。従って、機関の暖機後であって大気温度が低い場合、スロットル弁部TV内を通過する空気はスロットル弁部TVの壁面から多くの熱を受ける。
以上のことから、スロットル弁部伝達熱流量Q3を考慮して伝達熱流量Qを求めた方が、スロットル弁部伝達熱流量Q3を考慮することなく伝達熱流量Qを求めた場合より、伝達熱流量Qの推定精度が向上する。その結果、筒内吸入空気量Mcの推定精度は向上する。以上の理由により、第2実施形態の制御装置は、スロットル弁部伝達熱流量Q3を考慮して伝達熱流量Qを求める。
第2実施形態の吸入空気量推定装置は、図13に示したように、第1実施形態の熱伝達モデルM5に代わる熱伝達モデルM7を備えている。熱伝達モデルM7は、上記(36)式(Q=Q1+Q2+Q3)と熱伝達のモデルを数式により表した下記(37)式乃至(42)式とに基づいて伝達熱流量Qを推定する。
Q1=A1・hwst・(Tst−Tgs) …(37)
hwst=f1(Tst−Tgs) …(38)
Q2=A2・hwim・(Tim−Tgm) …(39)
hwim=f2(mc) …(40)
Q3=A3・hwtr・(Ttr−Tgt) …(41)
hwtr=f3(v) …(42)
(37)式及び(38)式は、上述した(30)式及び(31)式にそれぞれ対応した式である。これらの式により、サージタンク部伝達熱流量Q1が求められる。なお、(37)式及び(38)式におけるTgsは吸気管部の一部を構成するサージタンク部ST内の空気温度(以下、「サージタンク部空気温度Tgs」と称呼する。)である。熱伝達モデルM7は、サージタンク部空気温度Tgsとして吸気管内空気温度Tmを採用する。なお、サージタンク部ST内に吸気温度センサを配置し、その吸気温度センサの出力に基づいて得られるサージタンク部空気温度Tgsを、(37)式に代入してもよい。熱伝達モデルM7は、(37)式及び(38)式の計算に必要な他の値を、第1実施形態の熱伝達モデルM5と同様にして取得する。
(39)式及び(40)式は、上述した(32)式及び(33)式にそれぞれ対応した式である。これらの式により、インテークマニホールド部伝達熱流量Q2が求められる。なお、(39)式及び(40)式におけるTgmはインテークマニホールド部IM内の空気温度(以下、「インテークマニホールド部空気温度Tgm」と称呼する。)である。熱伝達モデルM7は、インテークマニホールド部空気温度Tgmとして吸気管内空気温度Tmを採用する。なお、インテークマニホールド部IM内に吸気温度センサを配置し、その吸気温度センサの出力に基づいて得られるインテークマニホールド部空気温度Tgmを、(39)式に代入してもよい。熱伝達モデルM7は、(39)式及び(40)式の計算に必要な他の値を、第1実施形態の熱伝達モデルM5と同様にして取得する。
図12に示したように、(41)式及び(42)式において、A3はスロットル弁部表面積相当値、hwtrはスロットル弁部における強制対流熱伝達率、Ttrはスロットル弁部壁温、Tgtはスロットル弁部TV内の空気温度(以下、「スロットル弁部空気温度Tgt」と称呼する。)である。また、vは、スロットル弁部TVを流れる空気の流速である。
熱伝達モデルM7は、図13に示したように、スロットル弁部壁温Ttrを推定(検出)するスロットル弁部壁温推定手段S3からスロットル弁部壁温Ttrを取得し、スロットルモデルM2からスロットル通過空気流量mtを取得し、電子制御スロットル弁モデルM1からスロットル弁開度θtを取得するようになっている。熱伝達モデルM7は、スロットル通過空気流量mt及びスロットル弁開度θtとスロットル弁部TVの空気流速vとの関係を記憶するテーブルMAPv(mt,θt)を備えている。
そして、熱伝達モデルM7は、取得したスロットル通過空気流量mt及び取得したスロットル弁開度θtとテーブルMAPv(mt,θt)とから空気流速vを算出し、上記(42)式にしたがって、スロットル弁部TVにおける強制対流熱伝達率hwtrを算出する。なお、(42)式における関数f3は単調増加関数である。熱伝達モデルM7は、スロットル弁部空気温度Tgtとして吸気管内空気温度Tmを採用する。なお、スロットル弁部TV内に吸気温度センサを配置し、その吸気温度センサの出力に基づいて得られる空気温度をスロットル弁部空気温度Tgtとしてもよい。熱伝達モデルM7は、以上のようにして、(41)式及び(42)式の計算に必要な変数を取得し、これらの式に基づいてスロットル弁部伝達熱流量Q3を求める。
なお、スロットル弁部壁温推定手段S3は、冷却水温THWとスロットル弁部壁温Ttrとの関係を規定するテーブルMAPTrt(THW)と実際の冷却水温THWとから、サージタンク部壁温Ttrを推定する。また、スロットル弁部TVの壁面に温度センサを配置し、その温度センサをスロットル弁部壁温推定手段S3として用いることにより、スロットル弁部壁温Ttrを取得してもよい。
ここで、上記(41)式及び(42)式の根拠について説明する。上述したように、スロットル弁部TVにおいても、スロットル弁部TVの壁面とスロットル弁部TVを通過する空気との間で熱の伝達が行われる。従って、この熱伝達にも上記(34)式が適用され得る。この場合、上記(34)式における表面積Aは、スロットル弁部TVの表面積相当値A3である。
また、スロットル弁部TVには空気が滞留することなく流れている。従って、スロットル弁部TVにおいては、強制対流の形態による熱伝達が主として行われている。更に、スロットル弁部TVにおける空気流速vは、スロットル弁43がほぼ全開状態に近いとき比較的小さい値となるものの、スロットル弁43がほぼ全閉状態に近いとき(スロットル弁開度θtが「0」に近いとき)音速又は音速に近い極めて高い値となる。従って、スロットル弁部TVにおける熱伝達率hwtrは、強制対流による熱伝達の熱伝達率であって、スロットル弁部TVの空気流速vに応じて大きく変化する。以上が、(41)式及び(42)式の根拠である。
なお、スロットル弁部TVの周囲には、スロットル弁43がスロットル弁43の周囲を通過する空気により冷却されて凍結することを回避するために、機関10の冷却水が流されている。従って、スロットル弁部TVの壁温Ttrは機関の暖機前と暖機後とで大きく相違する。このため、大気温度、スロットル弁開度、機関回転速度及びバルブリフト量等の機関運転条件が同一であったとしても、スロットル弁部TV内の空気温度は機関の暖機前と暖機後とで相違する。このことは、(41)式により、伝達熱流量Q3がスロットル弁部TVの壁温Ttrとスロットル弁部TVの空気温度Tgtとの差に比例して変化するように求められることに反映されている。
以上、説明したように、第2実施形態によれば、サージタンク部伝達熱流量Q1及びインテークマニホールド部伝達熱流量Q2のみでなく、スロットル弁部伝達熱流量Q3が考慮されて吸気管部内の空気に伝達される伝達熱流量Qが求められる。従って、その伝達熱流量Qはより精度よく求められるので、吸気管モデルM3により求められる吸気管圧力Pm及び吸気管内空気温度Tmがより正確な値となり、その結果、筒内吸入空気量Mcが精度良く求められる。
(第2実施形態の第1変形例)
この第1変形例は、空気流速vの求め方のみが上記第2実施形態と相違する。即ち、第1変形例は、エアフローメータ61により測定された吸入空気流量AFMと、スロットルポジションセンサ64により検出されたスロットル弁開度TAと、吸入空気流量AFM及びスロットル弁開度TAと空気流速vとの関係を規定したテーブルMAPv(AFM,TA)とから空気流速vを求め、この求められたvを用いて(42)式の計算を行う。
(第2実施形態の第2変形例)
この第2変形例は、空気流速vの求め方のみが上記第2実施形態と相違する。即ち、第2変形例は、大気圧Patmを標準大気圧(=101.3kPa)とおき、この大気圧Patmと吸気管モデルM3から求められる吸気管圧力Pmとの圧力差ΔPに基づいてスロットル弁43を通過する空気流量MTを求める。そして、求められたスロットル弁43を通過する空気流量MTと、スロットルポジションセンサ64により検出されたスロットル弁開度TAと、空気量MT及びスロットル弁開度TAと空気流速vとの関係を規定したテーブルMAPv(MT,TA)とから空気流速vを求め、この求められたvを用いて(42)式の計算を行う。なお、大気圧Patmは大気圧センサ63から取得してもよい。吸気管圧力Pmはスロットル弁43の下流に設けられた吸気管圧力センサから取得してもよい。
(第2実施形態の第3変形例)
この第3変形例は、空気流速vの求め方のみが上記第2実施形態と相違する。即ち、第3変形例は、エンジン回転速度NEに基づいてスロットル弁43を通過する空気流量MTを求める。そして、求められたスロットル弁43を通過する空気流量MTと、スロットルポジションセンサ64により検出されたスロットル弁開度TAと、空気量MT及びスロットル弁開度TAと空気流速vとの関係を規定したテーブルMAPv(MT,TA)とから空気流速vを求め、この求められたvを用いて(42)式の計算を行う。
以上、説明したように、本発明の各実施形態及びその変形例に係る吸入空気量推定装置によれば、吸気管部の壁面から同吸気管部内の空気に伝達される熱エネルギーが吸気管部内の空気に与えられるエネルギーとして考慮されるので、機関の暖機状態に関わらず吸気管部内の空気温度及び空気圧力が精度良く推定される。その結果、筒内吸入空気量が精度良く推定される。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各実施形態では、推定された筒内吸入空気量Mcを燃料噴射量fiに反映していたが、同筒内吸入空気量Mcを点火時期やその他の機関制御量に適用してもよい。
また、各種シミュレーションモデルの形態も上記実施形態に限定されることはなく、熱伝達を考慮した吸気管モデルM3を用いるとともに、例えば、シリンダ内の空気についてのエネルギー保存則に基くシリンダモデルを用いて筒内吸入空気量Mcを求める形態であってもよい。
更に、上記第1実施形態の熱伝達モデルM5は、自然対流伝達熱流量Q1と強制対流伝達熱流量Q2とを別々に求め、これらの和を吸気管モデルM3で使用する伝熱熱流量Qとして推定しているが、内燃機関の負荷(又は、筒内吸入空気流量mc)が所定値より小さい場合には自然対流伝達熱流量Q1を吸気管モデルM3で使用する伝熱熱流量Qとして設定し、負荷(又は、筒内吸入空気流量mc)が所定値より大きい場合には強制対流伝達熱流量Q2を吸気管モデルM3で使用する伝熱熱流量Qとして設定してもよい。また、吸気管モデルM3で使用する伝熱熱流量Qを、内燃機関の負荷(又は、筒内吸入空気流量mc)、吸気管部の壁温の平均値及び吸気管内空気温度の関数として一時に求めるようにしても良い。
10…火花点火式多気筒内燃機関、20…シリンダブロック部(エンジン本体部)、25…燃焼室、31…吸気ポート、32…吸気弁、39…インジェクタ、41…吸気管、43…スロットル弁、43a…スロットル弁アクチュエータ、70…電気制御装置、71…CPU。