JP2004314909A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】運転者の感覚に適合するように、操舵補助力を与えることができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】目標電流演算部12に、操舵トルクTと目標電流値Itとを車速別に関係づけた従来からの第1のアシストマップに加え、操舵角と目標電流値Itとを車速別に関係づけた第2のアシストマップを更に備える。車速センサ4により検出された車速が、あらかじめ設定された速度未満であれば、車速と操舵角とに基づいて目標電流値Itが算出される。一方、当該車速が、あらかじめ設定された速度以上であれば、車速と操舵トルクとに基づいて目標電流値Itが算出される。これにより、ハンドル操作に対する運転者の感覚に適合するように操舵補助力が発生し、運転者が低速走行時に感じていた操舵トルクに対する操舵補助力の遅れ感が解消される。
【選択図】 図2
【解決手段】目標電流演算部12に、操舵トルクTと目標電流値Itとを車速別に関係づけた従来からの第1のアシストマップに加え、操舵角と目標電流値Itとを車速別に関係づけた第2のアシストマップを更に備える。車速センサ4により検出された車速が、あらかじめ設定された速度未満であれば、車速と操舵角とに基づいて目標電流値Itが算出される。一方、当該車速が、あらかじめ設定された速度以上であれば、車速と操舵トルクとに基づいて目標電流値Itが算出される。これにより、ハンドル操作に対する運転者の感覚に適合するように操舵補助力が発生し、運転者が低速走行時に感じていた操舵トルクに対する操舵補助力の遅れ感が解消される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動モータを駆動することにより車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、運転者がハンドル(ステアリングホイール)に加える操舵トルクに応じて電動モータを駆動することによりステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が用いられている。この電動パワーステアリング装置には、操舵のための操作手段であるハンドル(ステアリングホイール)に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサと車両の走行速度を検出する車速センサとが設けられており、トルクセンサで検出される操舵トルクと車速センサで検出される車速とに基づき電動モータに供給すべき電流の目標値(以下「目標電流値」という)が設定される。そして、この目標電流値と電動モータに実際に流れる電流の値との偏差に基づいて比例積分演算により電動モータの駆動手段に与えるべき指令値が生成され、この指令値により電動モータに対するフィードバック制御が行われる。
【0003】
ところで、電動パワーステアリング装置が搭載された車両において、高速走行時は、運転者がハンドルに加えるトルクと運転者がハンドルから受けるトルク(手応え)との差分と、車両挙動との間に一定の関係があるように運転者には感じられる。言い換えると、ハンドルから受ける手応えよりも強い力をハンドルに加えるほど車両の曲がる角度が大きくなると運転者には感じられる。従って、運転者は、ハンドルから受ける手応えに基づいてハンドルに加える力を調節することにより、車両の進行方向を制御している。
【0004】
一方、低速走行時は、ハンドルの回転量(操舵角)と車両挙動との間に一定の関係があるように運転者には感じられる。従って、運転者は、ハンドルの操舵角を調節することにより、車両の進行方向を制御している。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−58505号公報
【特許文献2】
特開2000−185660号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の電動パワーステアリング装置においては、高速走行時であるか低速走行時であるかに拘わらず、運転者に必要とされる操舵トルクが軽減されるように目標電流値が設定されている。すなわち、常に、トルクセンサで検出される操舵トルクに基づいて目標電流値が設定されている。また、低速走行時に、操舵トルクに対して操舵補助力が遅れて発生しているように運転者が感じることがある。このように、ステアリング機構に与えられる操舵補助力は、必ずしも運転者の感覚に適合していない。
【0007】
そこで本発明では、運転者の感覚に適合するようにステアリング機構に操舵補助力を与えることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明は、車両を操舵する運転者の負荷を軽減するために当該車両の車速に基づいて設定されるモータ駆動目標電流値に応じて電動モータを駆動することにより当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記車両を操舵するための操作手段に加えられる操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
前記操作手段の操作角度である操舵角を検出する舵角検出手段と、
前記モータ駆動目標電流値を設定する目標電流値設定手段とを備え、
前記目標電流値設定手段は、前記車速が所定値未満のときには前記車速と前記操舵角とに基づいて前記モータ駆動目標電流値を設定し、前記車速が所定値以上のときには前記車速と前記操舵トルクとに基づいて前記モータ駆動目標電流値を設定することを特徴とする。
【0009】
このような第1の発明によれば、車速が所定値未満のときには、車速と操舵角とに基づいてモータ駆動目標電流値が設定され、車速が所定値以上のときには、車速と操舵トルクとに基づいてモータ駆動目標電流値が設定される。これにより、運転者の感覚に適合するようにモータ駆動目標電流値を設定することができる。このため、低速走行時に運転者が感じる操舵トルクに対する操舵補助力の遅れ感を解消することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記操作手段を中立位置に戻すために前記モータ駆動目標電流値に付加する電流値である戻し制御電流値を設定する戻し制御電流値設定手段を更に備え、
前記戻し制御電流値設定手段は、前記車速が所定値未満のときには前記操舵角に基づいて前記戻し制御電流値を設定し、前記車速が所定値以上のときには前記操舵トルクに基づいて前記戻し制御電流値を設定することを特徴とする。
【0011】
このような第2の発明によれば、車速が所定値未満のときには、操舵角に基づいて戻し制御電流値が設定され、車速が所定値以上のときには、操舵トルクに基づいて戻し制御電流値が設定される。これにより、低速走行時および中速走行時における良好なハンドル戻りが実現される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
<1.第1の実施形態>
<1.1 全体構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示す概略図である。この電動パワーステアリング装置は、操舵のための操作手段としてのハンドル100に一端が固着されるステアリングシャフト102と、そのステアリングシャフト102の他端に連結されたラックピニオン機構104と、ハンドル100の操作によってステアリングシャフト102に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ3と、当該車両の走行速度を検出する車速センサ4と、ハンドル100の操舵角度を検出する舵角センサ9と、ハンドル操作による運転者の負荷を軽減するための操舵補助力を発生させる電動モータ6と、そのモータ6の発生する操舵補助力をステアリングシャフト102に伝達する減速ギヤ7と、車載バッテリ8から電源の供給を受けて、トルクセンサ3、舵角センサ9及び車速センサ4からのセンサ信号に基づきモータ6の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)5とを備えている。
【0013】
運転者がハンドル100を操作すると、トルクセンサ3によって検出された操舵トルクTsと舵角センサ9によって検出された操舵角と車速センサ4によって検出された車速とに基づいてEUC5によりモータ6が駆動される。これによりモータ6は操舵補助力を発生し、この操舵補助力が減速ギヤ7を介してステアリングシャフト102に加えられることにより、運転者の負荷が軽減される。すなわち、ハンドル操作によって加えられる操舵トルクTsとモータ6の発生する操舵補助力Taとの和が、出力トルクTbとして、ステアリングシャフト102を介してラックピニオン機構104に与えられる。
【0014】
<1.2 制御装置の構成>
図2は、上記電動パワーステアリング装置を制御的観点から見た構成を示すブロック図である。上記電動パワーステアリング装置の制御装置であるECU5は、位相補償フィルタ10と、目標電流演算部12と、減算器14と、PI制御部15と、モータ駆動部20と、電流検出器19とを備えている。なお、ECU5の構成要素のうち位相補償フィルタ10、目標電流演算部12、減算器14、およびPI制御部15は、マイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することによりソフトウェア的に実現される。
【0015】
トルクセンサ3は、ハンドル100の操作によって加えられる操舵トルクを検出し、その検出値を示す信号を操舵トルク信号Tsとして出力する。位相補償フィルタ10は、操舵トルク信号Tsに対して位相補償を施し、その位相補償後の信号を操舵トルク信号Tとして出力する。
【0016】
舵角センサ9は、ハンドル100の回転量(操舵角)を検出し、その検出値を示す信号を舵角信号Dsとして出力する。車速センサ4は、この電動パワーステアリング装置が搭載される車両の走行速度を検出し、その検出値を示す信号を車速信号Ssとして出力する。
【0017】
目標電流演算部12は、操舵トルク信号Tと舵角信号Dsと車速信号Ssとに基づき目標電流値Itを設定する。なお、目標電流値Itの設定についての詳しい説明は後述する。
【0018】
電流検出器19は、モータ6に実際に供給される電流を検出し、その電流を示す電流検出値Isを出力する。減算器14は、目標電流演算部12から出力される目標電流値Itと電流検出器19から出力される電流検出値Isとの偏差It−Isを算出する。PI制御部15は、この偏差It−Isに基づき比例積分制御演算によって電圧指令値Vを生成する。モータ駆動部20は、この電圧指令値Vに基づいて、モータ6に電圧を印加する。この電圧印加によりモータ6に電流が流れ、運転者のハンドル操作を補助している。
【0019】
<1.3 目標電流値の設定>
次に、本実施形態における目標電流値Itの設定について説明する。従来より目標電流演算部12は、操舵トルクと発生すべき操舵補助力に対応づけられる目標電流値Itとを車速別に関係づけたテーブル(以下「アシストマップ」という)を備えており、操舵トルク信号Tと車速信号Ssとに基づいて、アシストマップを参照して目標電流値Itを決定している。図3は、操舵トルクと目標電流値Itとの関係を示すアシストマップの一例を示す図である。このアシストマップでは、車速(速度)の低いものから順にa、b、cで示される3段階の車速別に、操舵トルクと目標電流値Itとが関係づけられている。
【0020】
本実施形態では、目標電流演算部12は、図3に示すアシストマップに加えて、図4に示す操舵角と目標電流値Itとを車速別に関係づけたアシストマップを備えている。このアシストマップでは、車速(速度)の低いものから順にd、e、fで示される3段階の車速別に、操舵角と目標電流値Itとが関係づけられている。これにより、当該アシストマップを参照して、舵角信号Dsと車速信号Ssとに基づいた目標電流値Itも設定される。以下、図3に示す操舵トルクと目標電流値Itとの関係を示すアシストマップを「第1のアシストマップ」といい、図4に示す操舵角と目標電流値Itとの関係を示すアシストマップを「第2のアシストマップ」という。
【0021】
上述したように、一般に運転者は、高速走行時にはハンドルから受ける手応えに基づいてハンドルに加える力を調節することにより車両の進行方向を制御し、低速走行時にはハンドルの操舵角を調節することにより車両の進行方向を制御している。しかし、従来の電動パワーステアリング装置では、高速走行時であるか低速走行時であるかに拘わらず、目標電流値Itは車速と操舵トルクとに基づいて設定されている。目標電流値Itが車速と操舵トルクとに基づいて設定された場合、低速走行時に、操舵トルクに対して操舵補助力が遅れて発生しているように運転者が感じることがある。そこで、本実施形態では、目標電流演算部12は、ハンドルの操舵に関して運転者が感じている感覚に応じた操舵補助力が発生するように目標電流値Itを設定する。すなわち、高速走行時には、目標電流演算部12は、従来どおり第1のアシストマップを参照して、車速と操舵トルクとに基づいた目標電流値Itを設定する。一方、低速走行時には、目標電流演算部12は、第2のアシストマップを参照して、車速と操舵角とに基づいた目標電流値Itを設定する。
【0022】
図5は、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置における目標電流値Itの設定の手順を示すフローチャートである。以下、目標電流演算部12における目標電流値It設定の手順を説明する。なお、目標電流値Itはマイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することにより設定される。すなわち、この所定プログラムにより、図2に示すブロック図における目標電流演算部12がソフトウェア的に実現されている。
【0023】
目標電流演算部12には、車速信号Ssと操舵トルク信号Tと舵角信号Dsとが入力される(ステップS101)。目標電流演算部12は、その車速信号Ssによって示される車速と、低速と高速とを区分するためにあらかじめ設定された速度(以下「低速上限値」という)とを比較する(ステップS111)。比較した結果、車速が低速上限値未満であれば、ステップS121に進み、第2のアシストマップを参照して目標電流値Itが設定される。すなわち、車速をパラメータとして、車速と操舵角とに基づいて目標電流値Itが設定される。一方、車速が低速上限値以上であれば、ステップS122に進み、第1のアシストマップを参照して目標電流値Itが設定される。すなわち、車速をパラメータとして、車速と操舵トルクとに基づいて目標電流値Itが設定される。
【0024】
<1.4 効果>
以上のように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置では、目標電流演算部12において、車速と操舵トルクとに基づいた目標電流値Itもしくは車速と操舵角とに基づいた目標電流値Itが、車速に応じて切り替えられて設定される。また、目標電流値Itが車速と操舵トルクとに基づいて設定されるか、もしくは、車速と操舵角とに基づいて設定されるかは、あらかじめ設定された低速上限値より車速が高いか否かによって決定される。これにより、目標電流演算部12では、低速走行時には操舵角に基づいて目標電流値Itが設定され、高速走行時には操舵トルクに基づいて目標電流値Itが設定される。このため、ハンドル操作に対する運転者の感覚に適合するように操舵補助力が発生し、運転者が低速走行時に感じていた操舵トルクに対する操舵補助力の遅れ感が解消される。
【0025】
なお本実施形態において、ECU5の構成要素のうち位相補償フィルタ10、目標電流演算部12、減算器14、およびPI制御部15は、ソフトウェア的に実現されているが、それらの一部又は全部をハードウェアとして実現してもよい。また、図3および図4に示すアシストマップでは、パラメータとして3段階の車速について操舵トルクまたは操舵角と目標電流値Itとの関係が示されているが、パラメータは3段階に限定されるものではない。
【0026】
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。従来より、電動パワーステアリング装置において、ハンドルの戻り時の操舵性を良好なものとするために、目標電流演算部12で設定された目標電流値Itに電流値を付加する技術が知られている。目標電流値Itに電流値を付加しハンドルの戻りを良好なものとする制御は、戻し制御等と呼ばれている(以下、目標電流値Itに付加する電流値を「戻し制御電流値Iu」という)。しかし、操舵トルクに基づいた戻し制御電流値Iuを目標電流値Itに付加した場合、中速以下の速度での走行時にハンドルの戻りが良好でないときがある。そこで、本実施形態では、中速以下の速度での走行時における良好なハンドル戻りを実現するため、中速以下の速度での走行時には、操舵角に基づいて戻し制御電流値Iuが設定される。
【0027】
<2.1 全体構成及び制御装置の構成>
第2の実施形態の全体構成は、第1の実施形態と同じく図1に示すとおりであるので説明を省略する。図6は、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置を制御的観点から見た構成を示すブロック図である。本実施形態においては、図2に示す第1の実施形態の構成に加えて、戻し制御部21と加算器22とが設けられている。なお、本実施形態における他の構成要素は、第1の実施形態におけるものとほぼ同様であるので、同一または対応する構成要素には同一の参照符号を付して詳しい説明を省略する。
【0028】
目標電流値Itに付加すべき電流値を設定する戻し制御電流値設定手段である戻し制御部21は、操舵トルク信号Tと舵角信号Dsと車速信号Ssとに基づき戻し制御電流値Iuを設定する。加算器22は、目標電流演算部12から出力される目標電流値Itと戻し制御部21から出力される戻し制御電流値Iuとの和It+Iuを算出し、加算値It+Iuを補正後の目標電流値として出力する。そして、この補正後の目標電流値It+Iuに基づいて、PI制御部15が電圧指令値Vを設定する。この電圧指令値Vに基づいてモータ駆動部がモータ6に電圧を印加することにより、目標電流値Itに戻し制御電流値Iuが加算されないときよりも良好なハンドル戻りを実現している。
【0029】
<2.2 目標電流値および戻し制御電流値の設定>
図7は、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置における、上記補正後の目標電流値It+Iuの設定の手順を示すフローチャートである。なお、補正後の目標電流値It+Iuはマイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することにより設定される。すなわち、この所定プログラムにより、図6に示すブロック図における目標電流演算部12と戻し制御部21と加算器22とがソフトウェア的に実現されている。
【0030】
目標電流演算部12と戻し制御部21とには、車速信号Ssと操舵トルク信号Tと舵角信号Dsとが入力される(ステップS201)。次に、その車速信号Ssによって示される車速と、低速と中速とを区分するためにあらかじめ設定された速度(以下「低中速区分速度」という)とが比較される(ステップS211)。比較した結果、車速が低中速区分速度未満であれば、ステップS231に進み、第2のアシストマップを参照して目標電流値Itが設定される。すなわち、車速をパラメータとして、車速と操舵角とに基づいて目標電流値Itが設定される。さらにステップS241に進み、操舵角に基づいて戻し制御電流値Iuが設定される。
【0031】
車速が低中速区分速度以上であれば、ステップS221に進む。ステップS221では、その車速と、中速と高速とを区分するためにあらかじめ設定された速度(以下「中高速区分速度」という)とが比較される。比較した結果、車速が中高速区分速度未満であれば、ステップS232に進み、第1のアシストマップを参照して目標電流値Itが設定される。すなわち、車速をパラメータとして、車速と操舵トルクとに基づいて目標電流値Itが設定される。さらにステップS242に進み、操舵角に基づいて戻し制御電流値Iuが設定される。
【0032】
車速が中高速区分速度以上であれば、ステップS233に進み、第1のアシストマップを参照して目標電流値Itが設定される。すなわち、車速をパラメータとして、車速と操舵トルクとに基づいて目標電流値Itが設定される。さらにステップS243に進み、操舵トルクに基づいて戻し制御電流値Iuが設定される。
【0033】
ステップS241、S242、S243でそれぞれ戻し制御電流値Iuが設定された後、目標電流値Itと戻し制御電流値Iuとを加算することにより補正後の目標電流値It+Iuが設定される(ステップS251)。
【0034】
<2.3 効果>
以上のように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置では、低速走行時には、目標電流値Itは操舵角に基づいて算出され、戻し制御電流値Iuも操舵角に基づいて算出される。中速走行時には、目標電流値Itは操舵トルクに基づいて算出され、戻し制御電流値Iuは操舵角に基づいて算出される。高速走行時には、目標電流値Itは操舵トルクに基づいて算出され、戻し制御電流値Iuも操舵トルクに基づいて算出される。このため、ハンドル操作に対する運転者の感覚に適合するように操舵補助力が発生し、運転者が低速走行時に感じていた操舵トルクに対する操舵補助力の遅れ感が解消される。さらに、低速及び中速走行時に、操舵角に基づく戻し制御電流値Iuが目標電流値Itに付加されることにより、低速走行時および中速走行時における良好なハンドル戻りが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成をそれに関連する車両構成と共に示す概略図である。
【図2】上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置を制御的観点から見た構成を示すブロック図である。
【図3】上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置における操舵トルクと目標電流値との関係を示すアシストマップの一例を示す図である。
【図4】上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置における操舵角と目標電流値との関係を示すアシストマップの一例を示す図である。
【図5】上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置における目標電流値の設定の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置を制御的観点から見た構成を示すブロック図である。
【図7】上記第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置における補正後の目標電流値の設定の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
3 …トルクセンサ
4 …車速センサ
5 …EUC(電子制御ユニット)
9 …舵角センサ
12 …目標電流演算部(目標電流値設定手段)
21 …戻し制御部(戻し制御電流値設定手段)
22 …加算器
It …目標電流値
Iu …戻し制御電流値
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動モータを駆動することにより車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、運転者がハンドル(ステアリングホイール)に加える操舵トルクに応じて電動モータを駆動することによりステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が用いられている。この電動パワーステアリング装置には、操舵のための操作手段であるハンドル(ステアリングホイール)に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサと車両の走行速度を検出する車速センサとが設けられており、トルクセンサで検出される操舵トルクと車速センサで検出される車速とに基づき電動モータに供給すべき電流の目標値(以下「目標電流値」という)が設定される。そして、この目標電流値と電動モータに実際に流れる電流の値との偏差に基づいて比例積分演算により電動モータの駆動手段に与えるべき指令値が生成され、この指令値により電動モータに対するフィードバック制御が行われる。
【0003】
ところで、電動パワーステアリング装置が搭載された車両において、高速走行時は、運転者がハンドルに加えるトルクと運転者がハンドルから受けるトルク(手応え)との差分と、車両挙動との間に一定の関係があるように運転者には感じられる。言い換えると、ハンドルから受ける手応えよりも強い力をハンドルに加えるほど車両の曲がる角度が大きくなると運転者には感じられる。従って、運転者は、ハンドルから受ける手応えに基づいてハンドルに加える力を調節することにより、車両の進行方向を制御している。
【0004】
一方、低速走行時は、ハンドルの回転量(操舵角)と車両挙動との間に一定の関係があるように運転者には感じられる。従って、運転者は、ハンドルの操舵角を調節することにより、車両の進行方向を制御している。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−58505号公報
【特許文献2】
特開2000−185660号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の電動パワーステアリング装置においては、高速走行時であるか低速走行時であるかに拘わらず、運転者に必要とされる操舵トルクが軽減されるように目標電流値が設定されている。すなわち、常に、トルクセンサで検出される操舵トルクに基づいて目標電流値が設定されている。また、低速走行時に、操舵トルクに対して操舵補助力が遅れて発生しているように運転者が感じることがある。このように、ステアリング機構に与えられる操舵補助力は、必ずしも運転者の感覚に適合していない。
【0007】
そこで本発明では、運転者の感覚に適合するようにステアリング機構に操舵補助力を与えることができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明は、車両を操舵する運転者の負荷を軽減するために当該車両の車速に基づいて設定されるモータ駆動目標電流値に応じて電動モータを駆動することにより当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記車両を操舵するための操作手段に加えられる操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
前記操作手段の操作角度である操舵角を検出する舵角検出手段と、
前記モータ駆動目標電流値を設定する目標電流値設定手段とを備え、
前記目標電流値設定手段は、前記車速が所定値未満のときには前記車速と前記操舵角とに基づいて前記モータ駆動目標電流値を設定し、前記車速が所定値以上のときには前記車速と前記操舵トルクとに基づいて前記モータ駆動目標電流値を設定することを特徴とする。
【0009】
このような第1の発明によれば、車速が所定値未満のときには、車速と操舵角とに基づいてモータ駆動目標電流値が設定され、車速が所定値以上のときには、車速と操舵トルクとに基づいてモータ駆動目標電流値が設定される。これにより、運転者の感覚に適合するようにモータ駆動目標電流値を設定することができる。このため、低速走行時に運転者が感じる操舵トルクに対する操舵補助力の遅れ感を解消することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記操作手段を中立位置に戻すために前記モータ駆動目標電流値に付加する電流値である戻し制御電流値を設定する戻し制御電流値設定手段を更に備え、
前記戻し制御電流値設定手段は、前記車速が所定値未満のときには前記操舵角に基づいて前記戻し制御電流値を設定し、前記車速が所定値以上のときには前記操舵トルクに基づいて前記戻し制御電流値を設定することを特徴とする。
【0011】
このような第2の発明によれば、車速が所定値未満のときには、操舵角に基づいて戻し制御電流値が設定され、車速が所定値以上のときには、操舵トルクに基づいて戻し制御電流値が設定される。これにより、低速走行時および中速走行時における良好なハンドル戻りが実現される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
<1.第1の実施形態>
<1.1 全体構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示す概略図である。この電動パワーステアリング装置は、操舵のための操作手段としてのハンドル100に一端が固着されるステアリングシャフト102と、そのステアリングシャフト102の他端に連結されたラックピニオン機構104と、ハンドル100の操作によってステアリングシャフト102に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ3と、当該車両の走行速度を検出する車速センサ4と、ハンドル100の操舵角度を検出する舵角センサ9と、ハンドル操作による運転者の負荷を軽減するための操舵補助力を発生させる電動モータ6と、そのモータ6の発生する操舵補助力をステアリングシャフト102に伝達する減速ギヤ7と、車載バッテリ8から電源の供給を受けて、トルクセンサ3、舵角センサ9及び車速センサ4からのセンサ信号に基づきモータ6の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)5とを備えている。
【0013】
運転者がハンドル100を操作すると、トルクセンサ3によって検出された操舵トルクTsと舵角センサ9によって検出された操舵角と車速センサ4によって検出された車速とに基づいてEUC5によりモータ6が駆動される。これによりモータ6は操舵補助力を発生し、この操舵補助力が減速ギヤ7を介してステアリングシャフト102に加えられることにより、運転者の負荷が軽減される。すなわち、ハンドル操作によって加えられる操舵トルクTsとモータ6の発生する操舵補助力Taとの和が、出力トルクTbとして、ステアリングシャフト102を介してラックピニオン機構104に与えられる。
【0014】
<1.2 制御装置の構成>
図2は、上記電動パワーステアリング装置を制御的観点から見た構成を示すブロック図である。上記電動パワーステアリング装置の制御装置であるECU5は、位相補償フィルタ10と、目標電流演算部12と、減算器14と、PI制御部15と、モータ駆動部20と、電流検出器19とを備えている。なお、ECU5の構成要素のうち位相補償フィルタ10、目標電流演算部12、減算器14、およびPI制御部15は、マイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することによりソフトウェア的に実現される。
【0015】
トルクセンサ3は、ハンドル100の操作によって加えられる操舵トルクを検出し、その検出値を示す信号を操舵トルク信号Tsとして出力する。位相補償フィルタ10は、操舵トルク信号Tsに対して位相補償を施し、その位相補償後の信号を操舵トルク信号Tとして出力する。
【0016】
舵角センサ9は、ハンドル100の回転量(操舵角)を検出し、その検出値を示す信号を舵角信号Dsとして出力する。車速センサ4は、この電動パワーステアリング装置が搭載される車両の走行速度を検出し、その検出値を示す信号を車速信号Ssとして出力する。
【0017】
目標電流演算部12は、操舵トルク信号Tと舵角信号Dsと車速信号Ssとに基づき目標電流値Itを設定する。なお、目標電流値Itの設定についての詳しい説明は後述する。
【0018】
電流検出器19は、モータ6に実際に供給される電流を検出し、その電流を示す電流検出値Isを出力する。減算器14は、目標電流演算部12から出力される目標電流値Itと電流検出器19から出力される電流検出値Isとの偏差It−Isを算出する。PI制御部15は、この偏差It−Isに基づき比例積分制御演算によって電圧指令値Vを生成する。モータ駆動部20は、この電圧指令値Vに基づいて、モータ6に電圧を印加する。この電圧印加によりモータ6に電流が流れ、運転者のハンドル操作を補助している。
【0019】
<1.3 目標電流値の設定>
次に、本実施形態における目標電流値Itの設定について説明する。従来より目標電流演算部12は、操舵トルクと発生すべき操舵補助力に対応づけられる目標電流値Itとを車速別に関係づけたテーブル(以下「アシストマップ」という)を備えており、操舵トルク信号Tと車速信号Ssとに基づいて、アシストマップを参照して目標電流値Itを決定している。図3は、操舵トルクと目標電流値Itとの関係を示すアシストマップの一例を示す図である。このアシストマップでは、車速(速度)の低いものから順にa、b、cで示される3段階の車速別に、操舵トルクと目標電流値Itとが関係づけられている。
【0020】
本実施形態では、目標電流演算部12は、図3に示すアシストマップに加えて、図4に示す操舵角と目標電流値Itとを車速別に関係づけたアシストマップを備えている。このアシストマップでは、車速(速度)の低いものから順にd、e、fで示される3段階の車速別に、操舵角と目標電流値Itとが関係づけられている。これにより、当該アシストマップを参照して、舵角信号Dsと車速信号Ssとに基づいた目標電流値Itも設定される。以下、図3に示す操舵トルクと目標電流値Itとの関係を示すアシストマップを「第1のアシストマップ」といい、図4に示す操舵角と目標電流値Itとの関係を示すアシストマップを「第2のアシストマップ」という。
【0021】
上述したように、一般に運転者は、高速走行時にはハンドルから受ける手応えに基づいてハンドルに加える力を調節することにより車両の進行方向を制御し、低速走行時にはハンドルの操舵角を調節することにより車両の進行方向を制御している。しかし、従来の電動パワーステアリング装置では、高速走行時であるか低速走行時であるかに拘わらず、目標電流値Itは車速と操舵トルクとに基づいて設定されている。目標電流値Itが車速と操舵トルクとに基づいて設定された場合、低速走行時に、操舵トルクに対して操舵補助力が遅れて発生しているように運転者が感じることがある。そこで、本実施形態では、目標電流演算部12は、ハンドルの操舵に関して運転者が感じている感覚に応じた操舵補助力が発生するように目標電流値Itを設定する。すなわち、高速走行時には、目標電流演算部12は、従来どおり第1のアシストマップを参照して、車速と操舵トルクとに基づいた目標電流値Itを設定する。一方、低速走行時には、目標電流演算部12は、第2のアシストマップを参照して、車速と操舵角とに基づいた目標電流値Itを設定する。
【0022】
図5は、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置における目標電流値Itの設定の手順を示すフローチャートである。以下、目標電流演算部12における目標電流値It設定の手順を説明する。なお、目標電流値Itはマイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することにより設定される。すなわち、この所定プログラムにより、図2に示すブロック図における目標電流演算部12がソフトウェア的に実現されている。
【0023】
目標電流演算部12には、車速信号Ssと操舵トルク信号Tと舵角信号Dsとが入力される(ステップS101)。目標電流演算部12は、その車速信号Ssによって示される車速と、低速と高速とを区分するためにあらかじめ設定された速度(以下「低速上限値」という)とを比較する(ステップS111)。比較した結果、車速が低速上限値未満であれば、ステップS121に進み、第2のアシストマップを参照して目標電流値Itが設定される。すなわち、車速をパラメータとして、車速と操舵角とに基づいて目標電流値Itが設定される。一方、車速が低速上限値以上であれば、ステップS122に進み、第1のアシストマップを参照して目標電流値Itが設定される。すなわち、車速をパラメータとして、車速と操舵トルクとに基づいて目標電流値Itが設定される。
【0024】
<1.4 効果>
以上のように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置では、目標電流演算部12において、車速と操舵トルクとに基づいた目標電流値Itもしくは車速と操舵角とに基づいた目標電流値Itが、車速に応じて切り替えられて設定される。また、目標電流値Itが車速と操舵トルクとに基づいて設定されるか、もしくは、車速と操舵角とに基づいて設定されるかは、あらかじめ設定された低速上限値より車速が高いか否かによって決定される。これにより、目標電流演算部12では、低速走行時には操舵角に基づいて目標電流値Itが設定され、高速走行時には操舵トルクに基づいて目標電流値Itが設定される。このため、ハンドル操作に対する運転者の感覚に適合するように操舵補助力が発生し、運転者が低速走行時に感じていた操舵トルクに対する操舵補助力の遅れ感が解消される。
【0025】
なお本実施形態において、ECU5の構成要素のうち位相補償フィルタ10、目標電流演算部12、減算器14、およびPI制御部15は、ソフトウェア的に実現されているが、それらの一部又は全部をハードウェアとして実現してもよい。また、図3および図4に示すアシストマップでは、パラメータとして3段階の車速について操舵トルクまたは操舵角と目標電流値Itとの関係が示されているが、パラメータは3段階に限定されるものではない。
【0026】
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。従来より、電動パワーステアリング装置において、ハンドルの戻り時の操舵性を良好なものとするために、目標電流演算部12で設定された目標電流値Itに電流値を付加する技術が知られている。目標電流値Itに電流値を付加しハンドルの戻りを良好なものとする制御は、戻し制御等と呼ばれている(以下、目標電流値Itに付加する電流値を「戻し制御電流値Iu」という)。しかし、操舵トルクに基づいた戻し制御電流値Iuを目標電流値Itに付加した場合、中速以下の速度での走行時にハンドルの戻りが良好でないときがある。そこで、本実施形態では、中速以下の速度での走行時における良好なハンドル戻りを実現するため、中速以下の速度での走行時には、操舵角に基づいて戻し制御電流値Iuが設定される。
【0027】
<2.1 全体構成及び制御装置の構成>
第2の実施形態の全体構成は、第1の実施形態と同じく図1に示すとおりであるので説明を省略する。図6は、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置を制御的観点から見た構成を示すブロック図である。本実施形態においては、図2に示す第1の実施形態の構成に加えて、戻し制御部21と加算器22とが設けられている。なお、本実施形態における他の構成要素は、第1の実施形態におけるものとほぼ同様であるので、同一または対応する構成要素には同一の参照符号を付して詳しい説明を省略する。
【0028】
目標電流値Itに付加すべき電流値を設定する戻し制御電流値設定手段である戻し制御部21は、操舵トルク信号Tと舵角信号Dsと車速信号Ssとに基づき戻し制御電流値Iuを設定する。加算器22は、目標電流演算部12から出力される目標電流値Itと戻し制御部21から出力される戻し制御電流値Iuとの和It+Iuを算出し、加算値It+Iuを補正後の目標電流値として出力する。そして、この補正後の目標電流値It+Iuに基づいて、PI制御部15が電圧指令値Vを設定する。この電圧指令値Vに基づいてモータ駆動部がモータ6に電圧を印加することにより、目標電流値Itに戻し制御電流値Iuが加算されないときよりも良好なハンドル戻りを実現している。
【0029】
<2.2 目標電流値および戻し制御電流値の設定>
図7は、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置における、上記補正後の目標電流値It+Iuの設定の手順を示すフローチャートである。なお、補正後の目標電流値It+Iuはマイクロコンピュータが所定のプログラムを実行することにより設定される。すなわち、この所定プログラムにより、図6に示すブロック図における目標電流演算部12と戻し制御部21と加算器22とがソフトウェア的に実現されている。
【0030】
目標電流演算部12と戻し制御部21とには、車速信号Ssと操舵トルク信号Tと舵角信号Dsとが入力される(ステップS201)。次に、その車速信号Ssによって示される車速と、低速と中速とを区分するためにあらかじめ設定された速度(以下「低中速区分速度」という)とが比較される(ステップS211)。比較した結果、車速が低中速区分速度未満であれば、ステップS231に進み、第2のアシストマップを参照して目標電流値Itが設定される。すなわち、車速をパラメータとして、車速と操舵角とに基づいて目標電流値Itが設定される。さらにステップS241に進み、操舵角に基づいて戻し制御電流値Iuが設定される。
【0031】
車速が低中速区分速度以上であれば、ステップS221に進む。ステップS221では、その車速と、中速と高速とを区分するためにあらかじめ設定された速度(以下「中高速区分速度」という)とが比較される。比較した結果、車速が中高速区分速度未満であれば、ステップS232に進み、第1のアシストマップを参照して目標電流値Itが設定される。すなわち、車速をパラメータとして、車速と操舵トルクとに基づいて目標電流値Itが設定される。さらにステップS242に進み、操舵角に基づいて戻し制御電流値Iuが設定される。
【0032】
車速が中高速区分速度以上であれば、ステップS233に進み、第1のアシストマップを参照して目標電流値Itが設定される。すなわち、車速をパラメータとして、車速と操舵トルクとに基づいて目標電流値Itが設定される。さらにステップS243に進み、操舵トルクに基づいて戻し制御電流値Iuが設定される。
【0033】
ステップS241、S242、S243でそれぞれ戻し制御電流値Iuが設定された後、目標電流値Itと戻し制御電流値Iuとを加算することにより補正後の目標電流値It+Iuが設定される(ステップS251)。
【0034】
<2.3 効果>
以上のように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置では、低速走行時には、目標電流値Itは操舵角に基づいて算出され、戻し制御電流値Iuも操舵角に基づいて算出される。中速走行時には、目標電流値Itは操舵トルクに基づいて算出され、戻し制御電流値Iuは操舵角に基づいて算出される。高速走行時には、目標電流値Itは操舵トルクに基づいて算出され、戻し制御電流値Iuも操舵トルクに基づいて算出される。このため、ハンドル操作に対する運転者の感覚に適合するように操舵補助力が発生し、運転者が低速走行時に感じていた操舵トルクに対する操舵補助力の遅れ感が解消される。さらに、低速及び中速走行時に、操舵角に基づく戻し制御電流値Iuが目標電流値Itに付加されることにより、低速走行時および中速走行時における良好なハンドル戻りが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成をそれに関連する車両構成と共に示す概略図である。
【図2】上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置を制御的観点から見た構成を示すブロック図である。
【図3】上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置における操舵トルクと目標電流値との関係を示すアシストマップの一例を示す図である。
【図4】上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置における操舵角と目標電流値との関係を示すアシストマップの一例を示す図である。
【図5】上記実施形態に係る電動パワーステアリング装置における目標電流値の設定の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置を制御的観点から見た構成を示すブロック図である。
【図7】上記第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置における補正後の目標電流値の設定の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
3 …トルクセンサ
4 …車速センサ
5 …EUC(電子制御ユニット)
9 …舵角センサ
12 …目標電流演算部(目標電流値設定手段)
21 …戻し制御部(戻し制御電流値設定手段)
22 …加算器
It …目標電流値
Iu …戻し制御電流値
Claims (2)
- 車両を操舵する運転者の負荷を軽減するために当該車両の車速に基づいて設定されるモータ駆動目標電流値に応じて電動モータを駆動することにより当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
前記車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記車両を操舵するための操作手段に加えられる操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
前記操作手段の操作角度である操舵角を検出する舵角検出手段と、
前記モータ駆動目標電流値を設定する目標電流値設定手段とを備え、
前記目標電流値設定手段は、前記車速が所定値未満のときには前記車速と前記操舵角とに基づいて前記モータ駆動目標電流値を設定し、前記車速が所定値以上のときには前記車速と前記操舵トルクとに基づいて前記モータ駆動目標電流値を設定することを特徴とする、電動パワーステアリング装置。 - 前記操作手段を中立位置に戻すために前記モータ駆動目標電流値に付加する電流値である戻し制御電流値を設定する戻し制御電流値設定手段を更に備え、
前記戻し制御電流値設定手段は、前記車速が所定値未満のときには前記操舵角に基づいて前記戻し制御電流値を設定し、前記車速が所定値以上のときには前記操舵トルクに基づいて前記戻し制御電流値を設定することを特徴とする、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
Priority Applications (1)
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JP2003115243A JP2004314909A (ja) | 2003-04-21 | 2003-04-21 | 電動パワーステアリング装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US11964713B2 (en) | 2019-05-29 | 2024-04-23 | Nsk Ltd. | Vehicle steering device |
-
2003
- 2003-04-21 JP JP2003115243A patent/JP2004314909A/ja active Pending
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