JP2004309651A - 定着装置及びその定着装置を備えた画像形成機 - Google Patents
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Abstract
【課題】定着ローラに対して接離可能な熱均一化部材を備えた定着装置に対し、定着ローラに対する熱均一化部材の接離動作の最適化を図る。
【解決手段】加圧ローラ39bに対して接離可能な熱均一化ローラ39dを備えた定着装置39において、印刷に使用される記録用紙が最大サイズのもの以外である場合であって、且つその連続定着枚数が所定枚数(10枚)以上である場合に限り、熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに接触させて、この加圧ローラ39bの非通紙部分の熱を熱均一化ローラ39dによって奪う。これにより、加圧ローラ39bに対する熱均一化ローラ39dの接触時間を必要最小限に抑える。
【選択図】 図2
【解決手段】加圧ローラ39bに対して接離可能な熱均一化ローラ39dを備えた定着装置39において、印刷に使用される記録用紙が最大サイズのもの以外である場合であって、且つその連続定着枚数が所定枚数(10枚)以上である場合に限り、熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに接触させて、この加圧ローラ39bの非通紙部分の熱を熱均一化ローラ39dによって奪う。これにより、加圧ローラ39bに対する熱均一化ローラ39dの接触時間を必要最小限に抑える。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置等の画像形成機に搭載される定着装置及びその定着装置を備えた画像形成機に係る。特に、本発明は、記録媒体(記録用紙)に形成される画像の品質向上を図るための対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置等の画像形成機や、これらの複合機にあっては、トナー像が転写された記録用紙を定着装置に通過させ、この定着装置において記録用紙上にトナー像を加熱定着させるようになっている。定着装置は、互いに対向配置された一対のローラ部材を備えており、少なくとも一方が定着用加熱源となる加熱ローラとして構成されている。つまり、一対のローラ部材間で記録用紙を挟持しながら搬送することによってトナー像を記録用紙上に加熱定着させるようになっている。
【0003】
これまでの一般的な加熱ローラの構成としては、例えばアルミニウム等の中空芯金で構成されるローラ本体の内部にハロゲンヒータ等の加熱手段が収容されている。つまり、この加熱手段に対して通電を行い、ローラ本体を所定の定着温度(例えば200℃程度)まで温度上昇させた状態で上記の定着動作を行うことになる。また、加熱手段に対する通電制御としては、ローラ本体の表面温度を温度センサによって検出し、その検出温度に基づいて通電のON,OFFを切り換えて、ローラ本体の表面温度を所定範囲内に維持するようにしている。
【0004】
ところで、この種の定着装置では、熱容量が比較的大きな金属製のローラ本体を所定の定着温度まで加熱する必要があるため、省エネルギー性を十分に得ることができないといった課題があった。また、プリント開始時にローラ本体を定着温度まで加熱するのに要する時間(ウォームアップ時間)が長くかかり、その結果、プリント開始信号の入力時点からプリント終了までに要する時間が長くなってしまうといった課題もあった。
【0005】
これらの課題を解決する手段として、ローラ本体を薄肉化してその熱容量を小さくすることが掲げられる。これによれば、装置の電源容量(供給電力)を大きくすることなしにウォームアップ時間を短縮化でき、且つ省エネルギー性を十分に向上させることができる。
【0006】
ところが、このように薄肉化されたローラ本体を採用した場合、以下に述べる課題がある。つまり、薄肉化に伴ってローラ本体は、軸線方向の熱移動性が低下することになる。このため、ローラ本体の全体を均一な温度に維持することが困難となる。例えば、ローラ本体の加熱範囲よりも小さいサイズの記録用紙を通過させた場合、記録用紙の通過部分では記録用紙によって熱が奪われるのに対し、記録用紙が通過しない部分では熱が奪われないためこの部分においてローラ温度の過上昇(以下、非通紙部異常昇温と呼ぶ)が発生してしまう。この非通紙部異常昇温が発生している状況で、上記サイズよりも大きいサイズの記録用紙を通過させた場合、温度過上昇部分においてトナーの過定着が生じたり、記録用紙上のトナーの光沢性に変化が生じたり、過定着部分が高温オフセットを起こして加熱ローラにトナーが付着したりするおそれがある。また、このローラ温度の過上昇はローラのライフ特性の低下にも繋がってしまう。
【0007】
図8及び図9は、各サイズの用紙に定着動作を行わせた場合の各ローラの軸線方向端部付近(ローラセンタよりも右側部分)の通紙部と非通紙部との温度変化の一例を示している。図8は大サイズ紙(例えば使用可能な最大用紙サイズであるA3サイズ紙)に対して定着動作を行った場合であり、図9は小サイズ紙(例えばA4縦サイズ紙)に対して定着動作を行った場合である。各図の丸数字は、連続通紙される用紙の通紙順である。
【0008】
図8に示す大サイズ紙の場合、記録用紙の通過部分の領域が大きいため、加熱ローラ及び加圧ローラ共に広範囲に亘って記録用紙に熱が奪われることになり、ローラの略全体の温度が均一となっている。つまり、異常昇温となっている領域は加熱ローラ及び加圧ローラの端縁部近傍のみであり、その後に何れのサイズの用紙を通紙させたとしてもこの端縁部近傍を用紙が通過することはないため、過定着は発生しない。
【0009】
一方、図9に示す小サイズ紙の場合、記録用紙の通過部分の領域が小さいため、加熱ローラ及び加圧ローラ共に温度が均一となっている範囲はローラ軸線方向の中央部分のみとなる。つまり、加熱ローラ及び加圧ローラのかなり広い領域で異常昇温が生じており、この状態で、その後に大サイズ紙を通過させた場合には、この大サイズ紙の一部(両端部)が異常昇温領域を通過し、トナーの過定着が生じてしまう。
【0010】
この非通紙部異常昇温を回避する手段として、下記の特許文献1には、加熱範囲の異なる複数のヒータをローラ本体内に配設し、通過する記録用紙のサイズに応じて通電するヒータを選択することが開示されている。具体的には、センタ基準(記録用紙の幅方向の中心位置と加熱ローラの軸線方向の中心位置とを一致させた状態で通紙させるもの)の定着装置において、大サイズ紙に対応するべくローラ本体の軸線方向の略全体を加熱する第1ヒータと、小サイズ紙に対応するべくローラ本体の軸線方向の中央部のみを加熱する第2ヒータとを備えさせる。これにより、ローラ本体のうち記録用紙が通過する部分のみを加熱することができ、上記非通紙部異常昇温の発生に伴う不具合を回避することが可能である。
【0011】
また、近年では、更なる省エネルギ化を図るために、上述したヒータランプ方式に代えて誘導加熱方式による定着装置が提案されている。この方式において、用紙サイズに応じてローラ本体の加熱領域を変更しようとすると、複数の加熱源(誘導コイル)をローラ本体の軸線方向に併設する必要がある。しかし、これでは製造コストの高騰を招いてしまうばかりでなく、大サイズ紙の場合には、個別の誘導コイルでローラ本体の各部を加熱することになるため、発熱分布の均一性が良好に得られなくなってしまう可能性もある。
【0012】
発熱分布の均一性を良好に得るための手法として、下記の特許文献2には、加熱ローラに熱均一化部材を当接させ、この熱均一化部材によって加熱ローラ上の特に高温部分に対して吸熱することで加熱ローラの温度分布を均一化することが開示されている。
【0013】
【特許文献1】
特開平8−220930号公報
【特許文献2】
特開平8−87191号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許文献2に示すような熱均一化部材を備えさせた構成に関し、加熱ローラに対して熱均一化部材を当接させるか否かを切り換える条件についての具体的な技術的思想は未だ提案されていない。
【0015】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、定着ローラに対して接離可能な熱均一化部材を備えた定着装置に対し、定着ローラに対する熱均一化部材の接離動作の最適化を図ることにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、定着ローラに対して接離可能な熱均一化部材を備えた定着装置に対し、記録用紙(記録媒体)のサイズやその連続定着枚数に応じて、定着ローラに対して熱均一化部材を接触させるか否かを判断し、これによって定着ローラに対する熱均一化部材の接触時間を必要最小限に抑えるようにしている。
【0017】
−解決手段−
具体的には、互いに接触する第1及び第2の定着ローラ(例えば加熱ローラと加圧ローラ)を備え、表面に顕像化物質(例えばトナー)が付着した記録媒体(記録用紙)を定着ローラ間に通過させて加熱することにより記録媒体上に顕像化物質を定着させる定着装置を前提とする。この定着装置に対し、各定着ローラのうち少なくとも一方の近傍に、その定着ローラに対して接離可能な熱均一化部材を配設する。そして、複数サイズの記録媒体のうちサイズの小さい記録媒体に対する定着動作の連続定着枚数が所定枚数以上であるときにのみ、熱均一化部材を定着ローラに接触させる接離切り換え手段を備えさせている。ここでいう「サイズの小さい記録媒体」とは、定着ローラの軸線方向に沿った方向の寸法(以下、用紙幅寸法と呼ぶ)が互いに異なる複数サイズの記録媒体のうち、定着ローラの長さ寸法にほぼ等しい用紙幅寸法を有する記録媒体(最大サイズの記録媒体)よりも用紙幅寸法が小さい記録媒体をいう。
【0018】
この特定事項により、定着装置のウォームアップ時や、サイズの大きい記録媒体に対して定着動作を行う場合や、サイズの小さい記録媒体に対する定着動作を行う場合であってもその連続定着枚数が所定枚数未満である場合には、定着ローラに対して熱均一化部材を接触させないことになる。つまり、これらの場合には定着ローラから熱を奪わないようにする。定着装置のウォームアップ時に、定着ローラに熱均一化部材を接触させないことで、ウォームアップ時間の短縮化が図れる。
【0019】
サイズの大きい記録媒体に対して定着動作を行う場合に、定着ローラに熱均一化部材を接触させないことで、消費電力の削減を図ることができる。つまり、サイズの大きい記録媒体に対して定着動作を行う場合には、通過する記録媒体により定着ローラの略全体から熱が奪われるため、この定着ローラの略全体が均一な温度となり、上記温度過上昇部分は殆ど発生しない。このため、定着ローラに熱均一化部材を接触させてしまうと、この熱均一化部材によって奪われた熱量分だけ無駄な消費電力が発生してしまう。従って、サイズの大きい記録媒体に対して定着動作を行う場合には定着ローラに対して熱均一化部材を接触させないようにしている。
【0020】
また、サイズの小さい記録媒体に対する定着動作を行う場合であってもその連続定着枚数が所定枚数未満である場合には、定着ローラに熱均一化部材を接触させないことで、熱均一化部材を接離するための機構の劣化を防止できる。つまり、サイズの小さい記録媒体に対する定着動作を行う場合であってもその連続定着枚数が少ない場合には非通紙部の異常昇温は殆ど発生しない。このため、この場合には熱均一化部材を接離するための機構を作動させないようにし、必要以上にこの機構を作動させることで機構の早期劣化を招くといったことを回避している。
【0021】
また、上記熱均一化部材の熱容量として具体的には以下のものが掲げられる。先ず、定着ローラ間の記録媒体通過速度が120mm/sec未満である定着装置の場合には、熱均一化部材の熱容量を40J/℃〜600J/℃に設定している。一方、定着ローラ間の記録媒体通過速度が、120mm/sec以上、180mm/sec以下である定着装置の場合には、熱均一化部材の熱容量を160J/℃〜600J/℃に設定している。
【0022】
このように定着ローラ間の記録媒体通過速度(プロセス速度)に応じて熱均一化部材の熱容量を決定している。つまり、この記録媒体通過速度が高い場合に、熱均一化部材の熱容量が小さくなり過ぎないように設定している。これは、記録媒体通過速度が高い場合、単位時間当たりの通紙枚数が多いので、定着ローラの加熱量を大きく設定することになり、これに伴って非通紙部の異常昇温も顕著になる。このため、記録媒体通過速度が高い場合には熱均一化部材の熱容量を大きく設定しておき、この非通紙部から奪うことが可能な熱量を大きくして異常昇温を抑制し、定着ローラの熱均一化効果が十分に得られるようにしている。
【0023】
また、複数サイズの記録媒体のうちサイズの小さい記録媒体が定着ローラ間を通過する場合に、定着ローラ上において記録媒体が接触しない領域の定着ローラ表面温度を検出する温度検出手段を設ける。そして、記録媒体に対する定着動作の連続定着枚数に拘わらず、上記温度検出手段によって検出された定着ローラ表面温度が所定値以上であるときには、熱均一化部材を定着ローラに接触させる構成としている。
【0024】
この特定事項により、非通紙部分の温度を直接検知し、仮に、サイズの小さい記録媒体に対する定着動作の連続定着枚数が所定枚数以下であったとしても、非通紙部分の温度が異常昇温レベルに達しているときには熱均一化部材を定着ローラに接触させる。これにより、非通紙部分の異常昇温を確実に回避することが可能になる。
【0025】
熱均一化部材の熱伝導率と定着ローラの熱伝導率との関係としては以下のものが掲げられる。つまり、熱均一化部材を、接離切り換え手段の作動によって接触する定着ローラよりも熱伝導率が大きいものとしている。
【0026】
この特定事項により、熱均一化部材において、定着ローラの非通紙部分に対向する領域のみが熱飽和してしまって定着ローラの非通紙部分から熱が奪えなくなるといった状況を生じないようにすることができる。このため、サイズの小さい記録媒体に対する連続定着枚数が多数枚に及んだ場合であっても非通紙部分の異常昇温を抑制することができる。
【0027】
また、上述した各解決手段に係る定着装置を備えた画像形成機も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、記録媒体の表面に顕像化物質を付着させてこの顕像化物質による像が形成された状態で、この記録媒体を上記各解決手段に係る定着装置の定着ローラ間に通過させて加熱することにより記録媒体上に顕像化物質を定着させて画像形成を行うよう構成された画像形成機である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本形態では、コピー機能、プリント機能、ファクシミリ機能を兼ね備えた複合機に本発明を適用した場合について説明する。
【0029】
−複合機の全体構成の説明−
図1は本形態に係る画像形成機としての複合機1の内部構成の概略を示している。この図1のように、本複合機1は、スキャナ部2、画像形成部としてのプリント部3及び原稿自動給紙部4を備えている。以下、各部について説明する。
【0030】
<スキャナ部2の説明>
スキャナ部2は、透明なガラス等で成る原稿台41上に載置された原稿の画像や原稿自動給紙部4により1枚ずつ給紙される原稿の画像を読み取って画像データを作成する部分である。このスキャナ部2は、露光光源21、複数の反射鏡22,23,24、結像レンズ25、光電変換素子(CCD:Charge Coupled Device)26を備えている。
【0031】
上記露光光源21は、原稿自動給紙部4の原稿台41上に載置された原稿や原稿自動給紙部4を搬送される原稿に対して光を照射するものである。各反射鏡22,23,24は、図1に一点鎖線Aで光路を示すように、原稿からの反射光を一旦図中左方向に反射させた後、下方に反射させ、その後、結像レンズ25に向かうように図中右方向に反射させるようになっている。
【0032】
原稿の画像読取動作として、上記原稿台41上に原稿が載置された場合(「シート固定方式」として使用する場合)には、露光光源21及び各反射鏡22,23,24が原稿台41に沿って水平方向に走査して、原稿全体の画像を読み取ることになる。一方、原稿自動給紙部4を搬送される原稿を読み取る場合(「シート移動方式」として使用する場合)には、露光光源21及び各反射鏡22,23,24が図1に示す位置に固定され、後述する原稿自動給紙部4の原稿読取部42を原稿が通過する際にその画像を読み取ることになる。
【0033】
上記各反射鏡22,23,24で反射されて結像レンズ25を通過した光は光電変換素子26に導かれ、この光電変換素子26において反射光が電気信号(原稿画像データ)に変換されるようになっている。
【0034】
<プリント部3の説明>
プリント部3は、画像形成系31と用紙搬送系32とを備えている。
【0035】
画像形成系31は、レーザスキャニングユニット31a及びドラム型の像担持体としての感光体ドラム31bを備えている。レーザスキャニングユニット31aは、上記光電変換素子26において変換された原稿画像データに基づいたレーザ光を感光体ドラム31bの表面に照射するものである。感光体ドラム31bは、図1中に矢印で示す方向に回転し、レーザスキャニングユニット31aからのレーザ光が照射されることによってその表面に静電潜像が形成されるようになっている。
【0036】
また、感光体ドラム31bの外周囲には、上記レーザスキャニングユニット31aの他に、現像装置(現像機構)31c、転写機構を構成する転写ユニット31d、クリーニング装置(クリーニング機構)31e、図示しない除電器、帯電ユニット31fが周方向に亘って順に配設されている。現像装置31cは、感光体ドラム31bの表面に形成された静電潜像をトナー(顕像化物質)により可視像に現像するものである。転写ユニット31dは、感光体ドラム31bの表面に形成されたトナー像を記録媒体としての画像形成用紙に転写するものである。クリーニング装置31eは、トナー転写後において感光体ドラム31bの表面に残留したトナーを除去するようになっている。除電器は、感光体ドラム31bの表面の残留電荷を除去するものである。帯電ユニット31fは、静電潜像が形成される前の感光体ドラム31bの表面を所定の電位に帯電させるようになっている。
【0037】
このため、画像形成用紙に画像を形成する際には、帯電ユニット31fによって感光体ドラム31bの表面が所定の電位に帯電され、レーザスキャニングユニット31aが原稿画像データに基づいたレーザ光を感光体ドラム31bの表面に照射する。その後、現像装置31cが感光体ドラム31bの表面にトナーによる可視像を現像し、転写ユニット31dによって、トナー像が画像形成用紙に転写される。更に、その後、感光体ドラム31bの表面に残留したトナーはクリーニング装置31eによって除去されると共に、感光体ドラム31bの表面の残留電荷が除電器によって除去される。これにより、画像形成用紙への画像形成動作(印刷動作)の1サイクルが終了する。このサイクルが繰り返されることにより、複数枚の画像形成用紙に対して連続的に画像形成を行うことができるようになっている。
【0038】
一方、用紙搬送系32は、用紙収容部としての用紙カセット33に収容された画像形成用紙を1枚ずつ搬送して上記画像形成系31による画像形成を行わせると共に、画像形成された画像形成用紙を用紙排出部としての排紙トレイ35へ排出するものである。
【0039】
この用紙搬送系32は、主搬送路36と反転搬送路37とを備えている。主搬送路36は用紙カセット33の排出側に対向していると共に他端が排紙トレイ35に対向している。反転搬送路37は、一端が転写ユニット31dの配設位置よりも上流側(図中下側)で主搬送路36に繋がっていると共に、他端が転写ユニット31dの配設位置よりも下流側(図中上側)で主搬送路36に繋がっている。
【0040】
主搬送路36の上流端(用紙カセット33の排出側に対向する部分)には断面が半円状のピックアップローラ36aが配設されている。このピックアップローラ36aの回転により、用紙カセット33に収容されている画像形成用紙を1枚ずつ間欠的に主搬送路36に給紙できるようになっている。
【0041】
この主搬送路36における転写ユニット31dの配設位置よりも上流側には、レジストローラ36d,36dが配設されている。このレジストローラ36d,36dは、感光体ドラム31b表面のトナー像と画像形成用紙との位置合わせを行いながら画像形成用紙を搬送するものである。主搬送路36における転写ユニット31dの配設位置よりも下流側には、画像形成用紙に転写されたトナー像を加熱により定着させるための一対の定着ローラ39a,39bを備えた定着装置39が配設されている。この定着装置39の詳細については後述する。更に、主搬送路36の下流端には、画像形成用紙を排紙トレイ35に排紙するための排出ローラ36eが配設されている。
【0042】
主搬送路36に対する反転搬送路37の上流端の接続位置には分岐爪38が配設されている。この分岐爪38は、図1に実線で示す第1位置とこの第1位置から図中反時計回り方向に回動して反転搬送路37を開放する第2位置との間で水平軸回りに回動自在となっている。この分岐爪38が第1位置にあるときには画像形成用紙が排紙トレイ35に向けて搬送され、第2位置にあるときには画像形成用紙が反転搬送路37へ供給可能となっている。反転搬送路37には搬送ローラ37aが配設されており、画像形成用紙が反転搬送路37に供給された場合(所謂スイッチバック搬送により画像形成用紙が反転搬送路37に供給された場合)には、この搬送ローラ37aによって画像形成用紙が搬送され、レジストローラ36dの上流側で画像形成用紙が反転されて再び転写ユニット31dに向かって主搬送路36を搬送されるようになっている。つまり、画像形成用紙の裏面に対して画像形成が行えるようになっている。
【0043】
<原稿自動給紙部4の説明>
次に、原稿自動給紙部4について説明する。この原稿自動給紙部4は、所謂自動両面原稿搬送装置として構成されている。この原稿自動給紙部4は、シート移動式として使用可能であって、原稿載置部としての原稿トレイ43、中間トレイ44、原稿排出部としての原稿排紙トレイ45及び各トレイ43,44,45間で原稿を搬送する原稿搬送系46を備えている。
【0044】
上記原稿搬送系46は、原稿トレイ43に載置された原稿を、原稿読取部42を経て中間トレイ44または原稿排紙トレイ45へ搬送するための主搬送路47と、中間トレイ44上の原稿を主搬送路47に供給するための副搬送路48とを備えている。
【0045】
主搬送路47の上流端(原稿トレイ43の排出側に対向する部分)には原稿ピックアップローラ47a及び捌きローラ47bが配設されている。捌きローラ47bの下側には捌き板47cが配設されており、原稿ピックアップローラ47aの回転に伴って原稿トレイ43上の原稿のうちの1枚がこの捌きローラ47bと捌き板47cとの間を通過して主搬送路47に給紙されるようになっている。主搬送路47と副搬送路48との合流部分(図中B部分)よりも下流側にはPSローラ47e,47eが配設されている。このPSローラ47e,47eは、原稿の先端とスキャナ部2の画像読取タイミングとを調整して原稿を原稿読取部42に供給するものである。つまり、このPSローラ47e,47eは原稿が供給された状態でその原稿の搬送を一旦停止し、上記タイミングを調整して原稿を原稿読取部42に供給するようになっている。
【0046】
原稿読取部42は、プラテンガラス42aと原稿押え板42bとを備え、PSローラ47e,47eから供給された原稿がプラテンガラス42aと原稿押え板42bとの間を通過する際に、上記露光光源21からの光がプラテンガラス42aを通過して原稿に照射されるようになっている。この際、上記スキャナ部2による原稿画像データの取得が行われる。上記原稿押え板42bの背面(上面)には図示しないコイルスプリングによる付勢力が付与されている。これにより、原稿押え板42bがプラテンガラス42aに対して所定の押圧力をもって接触しており、原稿が原稿読取部42を通過する際にプラテンガラス42aから浮き上がることを阻止している。
【0047】
プラテンガラス42aの下流側には、搬送ローラ47f及び原稿排紙ローラ47gが備えられている。プラテンガラス42a上を通過した原稿が搬送ローラ47f及び原稿排紙ローラ47gを経て中間トレイ44または原稿排紙トレイ45へ排紙される構成となっている。
【0048】
原稿排紙ローラ47gと中間トレイ44との間には中間トレイ揺動板44aが配設されている。この中間トレイ揺動板44aは、中間トレイ44側の端部が揺動中心とされて、図中実線で示すポジション1とこのポジション1から上方へ跳ね上げられたポジション2との間で揺動可能となっている。中間トレイ揺動板44aがポジション2にある場合には原稿排紙ローラ47gから排紙された原稿は原稿排紙トレイ45へ回収される。一方、中間トレイ揺動板44aがポジション1にある場合には原稿排紙ローラ47gから排紙された原稿は中間トレイ44へ排出されるようになっている。この中間トレイ44への排紙時には、原稿の端縁が原稿排紙ローラ47g,47g間に挟持された状態となっており、この状態から原稿排紙ローラ47gが逆回転することによって原稿が副搬送路48に供給され、この副搬送路48を経て再び主搬送路47に送り出されるようになっている。この原稿排紙ローラ47gの逆回転動作は、主搬送路47への原稿の送り出しと画像読取タイミングとを調整して行われる。これにより、原稿の裏面の画像が原稿読取部42によって読み取られるようになっている。
【0049】
−複合機の基本動作説明−
以上の如く構成された複合機1の動作として、先ず、本複合機1が、プリンタとして機能する場合には、パーソナルコンピュータ等のホスト装置から送信された印刷データ(イメージデータやテキストデータ)を受信し、この受信した印刷データ(プリントデータ)を図示しないバッファ(メモリ)に一旦格納していく。このバッファへのプリントデータの格納と共に、バッファからのプリントデータの読み出しを順次行って、この読み出したプリントデータに基づき、上述したプリント部3の画像形成動作により画像形成用紙に画像形成が行われる。
【0050】
また、本複合機1がスキャナとして機能する場合には、上記スキャナ部2によって読み取った原稿のスキャン画像データをバッファに一旦格納していく。このバッファへのスキャン画像データの格納と共に、バッファからホスト装置へのスキャン画像データの送信を順次行って、このホスト装置のディスプレイ等に画像表示する。
【0051】
更に、本複合機1がコピー機として機能する場合には、上記スキャナ機能によって読み取った原稿画像データに基づきプリント部3の画像形成動作によって画像形成用紙に画像形成が行われることになる。
【0052】
−定着装置39の構成−
次に、本形態の特徴部分である定着装置39の構成について説明する。図2は本実施形態に係る定着装置39の断面図であり、図3は定着装置39を用紙搬送方向から見た図(ローラの一部を省略した図)である。
【0053】
この定着装置39は、加熱回転体である第1定着ローラとしての加熱ローラ39aと、この加熱ローラ39aに対して略下側から当接する加圧回転体である第2定着ローラとしての加圧ローラ39bと、加熱ローラ39aをローラ外部から誘導加熱するコイル39cと、加圧ローラ39bに接離可能な熱均一化部材(熱伝導部材)である熱均一化ローラ39dとを主要構成部材として構成されている。
【0054】
上記加熱ローラ39aと加圧ローラ39bとの間には、これらローラ39a,39bの軸線方向(図2の紙面に直交する方向)に延びる帯状の定着ニップ部が形成されている。また、記録用紙搬送方向における上記定着ニップ部の上流側には図示しない定着入口ガイドが配設されている。以下、この定着装置39の各構成部材について説明する。
【0055】
上記加熱ローラ39aは、中心部から外周部に向けて基材39e、弾性断熱層39f、発熱層39g、離型層39hを備えている。基材39eは、外径が30mmで、肉厚が3tのアルミニウム製の素管により構成されている。弾性断熱層39fは、肉厚が5mmのシリコンスポンジにより構成されている。発熱層39gは、肉厚が40μmのNiにより構成されている。離型層39hは、肉厚が30μmのPFAチューブ層により構成されている。尚、この離型層39hと発熱層39gとの間に、シリコンゴムから成る弾性層(厚さ150μm程度)を設けるようにしてもよい。また、弾性断熱層39fから外周側部分の軸長(加熱領域)は320mmに設定されている。また、この加熱ローラ39aは図示しない駆動手段からの駆動力を受けて回転駆動されるようになっている。
【0056】
一方、上記加圧ローラ39bは、外径が20mmの鉄製の芯金の外周面に、層厚さが5mmの弾性層(シリコンゴム層)が設けられ、更に、その外周面を厚さ30μmのPFAチューブで被覆した構成となっている(各層の構成は図示省略)。この加圧ローラ39bにおいても、弾性層から外周側部分の軸長は320mmに設定されている。この加圧ローラ39b全体は、図示しない付勢手段によって所定の当接圧で加熱ローラ39aに押圧されており、これにより、加熱ローラ39aと加圧ローラ39bとの間には、両ローラ39a,39bの長手方向に沿って帯状の定着ニップ部が形成されることになる。本形態では、この定着ニップ部の幅が7mm程度となるように上記当接圧が調整されている。尚、加圧ローラ39bは、加熱ローラ39aの回転に伴って従動回転するようになっている。
【0057】
加熱源となる上記誘導加熱コイル39cには、10〜100kHzの交流電流が印加されるようになっている。これにより、加熱ローラ39aの発熱層39gに渦電流が発生し、ジュール熱の発生によって加熱ローラ39aの外周面の温度が上昇するようになっている。本形態では、線径が0.5mmの絶縁被覆導線を10〜20程度撚ったリッツ線を巻き回して誘導加熱用のコイル39cとしている。このコイル39cをコイルユニット中に固定し、加熱ローラ39aの外周面に対向して配設することで、発熱層39gの表面を高効率で発熱することが可能となり、高効率加熱、ウォームアップタイムの短縮を可能にしている。
【0058】
加熱ローラ39a表面の通紙領域の略中央(軸線方向の中央部)には図示しないサーミスタが当接配置されている。このサーミスタで取得した温度情報に基づいて上記誘導加熱コイル39cへの供給電流を制御し、これによって定着温度が所定の範囲内に調整できるようになっている。また、この加熱ローラ39a上の非通紙領域内には、非通紙部温度測定用のサーミスタが設置されている。尚、加圧ローラ39bの非通紙領域内に、非通紙部温度測定用のサーミスタを設置してもよい。
【0059】
図4は、この誘導加熱コイル39cへの供給電流の制御によって定着温度を調整した場合の各ローラ39a,39bの温度変化状態を示している。つまり、複合機1の主電源をONしてウォームアップ時間が経過した後、加熱ローラ39aの表面温度(通紙領域の略中央部のサーミスタによる検知温度)が所定の範囲内に調整されるように誘導加熱コイル39cへの供給電流の制御を行っている。つまり、印刷動作を行っていない放置中にあっては加熱ローラ39aから自然放出される熱量分を補うように誘導加熱コイル39cへの供給電流が制御される。一方、印刷動作中にあっては、この自然放出される熱量分と通過する用紙によって奪われる熱量分とを補うように誘導加熱コイル39cへの供給電流が制御される。この図4における丸数字は連続通紙される用紙の通紙順を示している。
【0060】
上記熱均一化部材としての熱均一化ローラ39dは、加圧ローラ39bの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するALやCu等の高熱伝導率材料で構成されている。本実施形態では、この材料をローラ形状に加工して熱均一化ローラ39dを作製している。また、この熱均一化ローラ39dの外側に20μm程度のPFAコート層を設けて、トナーの離型性を向上させるようにしてもよい。また、この熱均一化ローラ39dは、加圧ローラ39bの回転に伴って従動回転するが、駆動源からの駆動力を受けて回転駆動するようにしてもよい。また、この熱均一化ローラ39dの軸長は加圧ローラ39bと同じく320mmに設定されている。この軸長は加圧ローラ39bよりも長く設定してもよい。
【0061】
そして、この熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに対して接離可能とする接離切り換え手段7としては、図3に示すように、熱均一化ローラ39dの軸線方向に平行に延びるシャフト71を有し、このシャフト71の両端部近傍位置に偏心カム72,72がそれぞれ回転一体に取り付けられている。これら偏心カム72,72は熱均一化ローラ39dの両軸端部に対向する位置に配設されている。
【0062】
また、上記シャフト71の一端部には駆動モータ73からの駆動力を受けるギア74が取り付けられている。この構成により、駆動モータ73が回転駆動すると、その駆動力がギア74を介してシャフト71に伝達されてこのシャフト71が回動し、偏心カム72,72の回動に伴って熱均一化ローラ39dが加圧ローラ39bに対して接離方向(図3にあっては上下方向)に移動されるようになっている。つまり、図3に示す偏心カム72,72の回動位置では、偏心カム72のカム高さが低い部分が熱均一化ローラ39dの軸端部に当接しているため、熱均一化ローラ39dは、加圧ローラ39bから後退した位置にあり、この加圧ローラ39bには接触しない。この状態から駆動モータ73が回転駆動して偏心カム72,72が180°回動した状態になると、図2に示すように偏心カム72のカム高さが高い部分が熱均一化ローラ39dの軸端部に当接することになり、熱均一化ローラ39dは、加圧ローラ39bに向かって前進し、この加圧ローラ39bに接触することになる。このようにして、熱均一化ローラ39dが加圧ローラ39bに接触する状態と接触しない状態とが切り換えられるようになっている。
【0063】
そして、本形態の特徴としては、本複合機1に使用可能な複数サイズの記録用紙のうちサイズの小さい記録用紙(最大サイズの記録用紙以外のもの)に対する定着動作の連続定着枚数が所定枚数以上である場合にのみ、上記熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに接触させるようにしている点にある。つまり、画像形成動作時に、その記録用紙のサイズの認識と、ユーザが要求した印刷枚数(連続定着枚数)を認識を行っておき、最大サイズの用紙以外の記録用紙に対して印刷を行う場合であって、しかも、その印刷枚数が所定枚数(例えば10枚)以上である場合にのみ、上記熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに接触させるようにしている。上記記録用紙のサイズ及び印刷枚数の認識動作としては、例えば受信した画像データ中に含まれる用紙サイズ情報及び印刷枚数情報を取得する。また、光学的な検知手段を利用して記録用紙のサイズを認識するようにしてもよい。尚、熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに接触させるか否かを決定する条件としての印刷枚数は、上記数値に限るものではなく、任意に設定可能である。
【0064】
上述の如く熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに接触させることにより、上記非通紙部の熱を熱均一化ローラ39dによって奪い、この非通紙部での異常昇温が発生しないようにしている。その結果、上記小サイズ紙の画像形成動作が終了した後に大サイズ紙に対する印刷動作が行われた場合であっても用紙両端部分でのトナーの過定着は発生せず、記録用紙上のトナーの光沢性に変化が生じたり、過定着部分が高温オフセットを起こして加熱ローラ39aにトナーが付着したりすることがなくなる。また、このローラ温度の過上昇が回避できるため、ローラのライフ特性の向上を図ることもできる。
【0065】
尚、上記各ローラ39a,39b,39dの材料や形状は上述したものの限られることなく、必要に応じて任意に設定可能である。
【0066】
図5及び図6は、小サイズ用紙に定着動作を行わせた場合の各ローラ39a,39bの軸線方向端部付近(ローラセンタよりも右側部分)の通紙部と非通紙部との温度変化の一例を示している。図5は加熱ローラ39aの温度変化を示しており、図6は加圧ローラ39bの温度変化を示している。各図の丸数字は、連続通紙される用紙の通紙順である。
【0067】
これら図から明らかなように、従来のもの(図9参照)に比べて非通紙部分での昇温は大幅に抑えられている。これは、熱均一化ローラ39dが加圧ローラ39bに接触して、この加圧ローラ39bの非通紙部分の熱を熱均一化ローラ39dが奪い、且つ、加熱ローラ39aの非通紙部分の熱を加圧ローラ39bを介して熱均一化ローラ39dが奪ったためである。
【0068】
このように加熱ローラ39a及び加圧ローラ39bにおいて殆ど異常昇温が生じていないため、この状態で、その後に大サイズ紙を通過させた場合であっても、トナーの過定着が生じてしまうことはない。
【0069】
−実験例−
次に、上記効果を確認するために行った実験例について説明する。上記形状でAL基材を用いて、ローラ外径、肉厚等を変更して熱容量を変更した熱均一化ローラ(熱均一化ローラ)39dを加圧ローラ39bに接離可能に配置し、小サイズ紙の連続通紙を行った。そして、このときの非通紙部温度を測定した。尚、加圧ローラ39bと熱均一化ローラ39dの当接幅は約2mm程度とした。
【0070】
先ず、初めにプロセス速度60mm/sec(通紙速度は約10PPM)の条件下で、坪量約80g/m2のA4用紙をR通紙(縦通紙)で連続通紙した。通紙枚数は約100〜200枚程度とした。
【0071】
この状態で、ほぼ非通紙部分の温度は定常状態に達した。尚、このときの温調温度は170℃である。ここで、非通紙部分の温度測定は、用紙通紙領域中央部135mmの位置にサーミスタを設置することにより行った。上記用紙を連続通紙した場合、上記領域が最も温度が上昇したからである。尚、非通紙部分の最大温度上昇部は用紙サイズやコイル形状等の発熱条件等によって必ずしも上記位置になるとは限らない。
【0072】
更に、プロセス速度120mm/sec(通紙速度は約20PPM)、180mm/sec(通紙速度は約30PPM)においても、同様に実験を行った。以上の実験の結果を図7に示す。
【0073】
一般的に、定着ローラの耐熱性は、発熱層である金属層やシリコンゴム層等の耐熱性等を考慮した場合、230℃程度である。そこで、各プロセス速度での検討結果を踏まえると、60mm/secでは、熱均一化ローラ39dの熱容量に拘わらず、この値を満足しているが、120mm/secにおいては、少なくとも40J/℃以上必要であり、更に、180mm/secにおいては、少なくとも160J/℃以上必要であることが判った。つまり、プロセス速度の違いにより、熱均一化ローラ39dの最適熱容量範囲が存在することが判った。熱容量が小さすぎると、ローラ軸方向の均一化効果が十分ではなく、加圧ローラ39bや加熱ローラ39aの熱均一化効果が薄れてしまうためであると考えられる。更に、高速度化に伴い、この傾向は顕著になると考えられる。
【0074】
熱均一化ローラ39dは、非通紙部分と通紙部分との温度差をならす、つまり、高温度領域の熱量を低温度領域へ補充する効果もあり、その結果、通紙時の電力上昇は殆どない、もしくは電力低下効果もある場合があるが、あまりにも熱量が大きくなりすぎると、通紙初期での温度追従性が悪化する場合がある。
【0075】
従って、120mm/sec未満のプロセス速度では、熱均一化ローラ39dの熱容量は40〜600J/℃、120mm/secより大きく180mm/sec以下のプロセス速度では160J/℃〜600J/℃とすればよい。
【0076】
また、熱均一化ローラ39dは、A4サイズ(横通紙)やA3サイズ、もしくはLetterサイズ(横通紙)等の大サイズ紙通紙時は、加圧ローラ39b若しくは加熱ローラ39aとは離間しており、それ以下の用紙幅サイズ紙通紙時のみ、例えば、A4縦通紙、Letter縦通紙以下の通紙幅の場合は当接させるようにすればよい。
【0077】
これら用紙サイズ紙が通紙される場合においても、その印字要求枚数が少ない場合は、あえて熱均一化ローラ39dを当接させずに、非通紙部分に設置されたサーミスタの温度検知情報に基づき、当接するようにしてもよい。例えば、温調温度170℃設定時において、非通紙部分温度が185℃になった場合に当接するようにしてもよい。
【0078】
更に、小サイズ紙通紙後の大サイズ紙通紙時において、冷却時間を設けて更に確実に非通紙部分と通紙部分との温度差を解消するようにしてもよく、このとき、熱均一化ローラ39dは当接/離間のどちらの状態でもよいが、再立ち上げ時には、離間状態とする。上記制御により、ウォームアップタイムの遅延が防止できる。
【0079】
−その他の実施形態−
上述した実施形態では、複写機、プリンタ装置及びファクシミリ装置としての機能を兼ね備えた多機能型の本画像形成機1に、本発明を適用した場合について説明した。本発明は、これに限らず、その他の画像形成機についても適用可能である。
【0080】
また、上記実施形態では、熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに対して接離可能な構成とした。本発明はこれに限るものではなく、熱均一化ローラ39dを加熱ローラ39aに対して接離可能な構成としたり、2本の熱均一化ローラを備えさせ、一方を加圧ローラ39bに対して接離可能とし、他方を加熱ローラ39aに対して接離可能な構成としてもよい。
【0081】
また、本発明は、誘導加熱方式による定着装置に限らず、ヒータランプ方式による定着装置に対しても適用可能である。
【0082】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、定着ローラに対して接離可能な熱均一化部材を備えた定着装置に対し、記録媒体のサイズやその連続定着枚数に応じて、定着ローラに対して熱均一化部材を接触させるか否かを判断し、これによって定着ローラに対する熱均一化部材の接触時間を必要最小限に抑えるようにしている。このため、トナーの過定着の回避を確実に行うことができると共に、熱均一化部材を接離するための機構を必要以上に作動させないことによりこの機構の早期劣化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る複合機の内部構成の概略を示す図である。
【図2】定着装置の断面図である。
【図3】定着装置を用紙搬送方向から見た図である。
【図4】連続給紙時における加熱ローラ及び加圧ローラの温度変化状態を示す図である。
【図5】実施形態における加熱ローラの温度変化を説明するための図である。
【図6】実施形態における加圧ローラの温度変化を説明するための図である。
【図7】プロセス速度と熱均一化ローラの熱容量との関係を示す図である。
【図8】従来例において大サイズ紙を連続給紙した場合の加熱ローラ及び加圧ローラの温度変化を説明するための図である。
【図9】従来例において小サイズ紙を連続給紙した場合の加熱ローラ及び加圧ローラの温度変化を説明するための図である。
【符号の説明】
1 複合機(画像形成機)
39 定着装置
39a 加熱ローラ
39b 加圧ローラ
39d 熱均一化ローラ(熱均一化部材)
7 接離切り換え手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置等の画像形成機に搭載される定着装置及びその定着装置を備えた画像形成機に係る。特に、本発明は、記録媒体(記録用紙)に形成される画像の品質向上を図るための対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置等の画像形成機や、これらの複合機にあっては、トナー像が転写された記録用紙を定着装置に通過させ、この定着装置において記録用紙上にトナー像を加熱定着させるようになっている。定着装置は、互いに対向配置された一対のローラ部材を備えており、少なくとも一方が定着用加熱源となる加熱ローラとして構成されている。つまり、一対のローラ部材間で記録用紙を挟持しながら搬送することによってトナー像を記録用紙上に加熱定着させるようになっている。
【0003】
これまでの一般的な加熱ローラの構成としては、例えばアルミニウム等の中空芯金で構成されるローラ本体の内部にハロゲンヒータ等の加熱手段が収容されている。つまり、この加熱手段に対して通電を行い、ローラ本体を所定の定着温度(例えば200℃程度)まで温度上昇させた状態で上記の定着動作を行うことになる。また、加熱手段に対する通電制御としては、ローラ本体の表面温度を温度センサによって検出し、その検出温度に基づいて通電のON,OFFを切り換えて、ローラ本体の表面温度を所定範囲内に維持するようにしている。
【0004】
ところで、この種の定着装置では、熱容量が比較的大きな金属製のローラ本体を所定の定着温度まで加熱する必要があるため、省エネルギー性を十分に得ることができないといった課題があった。また、プリント開始時にローラ本体を定着温度まで加熱するのに要する時間(ウォームアップ時間)が長くかかり、その結果、プリント開始信号の入力時点からプリント終了までに要する時間が長くなってしまうといった課題もあった。
【0005】
これらの課題を解決する手段として、ローラ本体を薄肉化してその熱容量を小さくすることが掲げられる。これによれば、装置の電源容量(供給電力)を大きくすることなしにウォームアップ時間を短縮化でき、且つ省エネルギー性を十分に向上させることができる。
【0006】
ところが、このように薄肉化されたローラ本体を採用した場合、以下に述べる課題がある。つまり、薄肉化に伴ってローラ本体は、軸線方向の熱移動性が低下することになる。このため、ローラ本体の全体を均一な温度に維持することが困難となる。例えば、ローラ本体の加熱範囲よりも小さいサイズの記録用紙を通過させた場合、記録用紙の通過部分では記録用紙によって熱が奪われるのに対し、記録用紙が通過しない部分では熱が奪われないためこの部分においてローラ温度の過上昇(以下、非通紙部異常昇温と呼ぶ)が発生してしまう。この非通紙部異常昇温が発生している状況で、上記サイズよりも大きいサイズの記録用紙を通過させた場合、温度過上昇部分においてトナーの過定着が生じたり、記録用紙上のトナーの光沢性に変化が生じたり、過定着部分が高温オフセットを起こして加熱ローラにトナーが付着したりするおそれがある。また、このローラ温度の過上昇はローラのライフ特性の低下にも繋がってしまう。
【0007】
図8及び図9は、各サイズの用紙に定着動作を行わせた場合の各ローラの軸線方向端部付近(ローラセンタよりも右側部分)の通紙部と非通紙部との温度変化の一例を示している。図8は大サイズ紙(例えば使用可能な最大用紙サイズであるA3サイズ紙)に対して定着動作を行った場合であり、図9は小サイズ紙(例えばA4縦サイズ紙)に対して定着動作を行った場合である。各図の丸数字は、連続通紙される用紙の通紙順である。
【0008】
図8に示す大サイズ紙の場合、記録用紙の通過部分の領域が大きいため、加熱ローラ及び加圧ローラ共に広範囲に亘って記録用紙に熱が奪われることになり、ローラの略全体の温度が均一となっている。つまり、異常昇温となっている領域は加熱ローラ及び加圧ローラの端縁部近傍のみであり、その後に何れのサイズの用紙を通紙させたとしてもこの端縁部近傍を用紙が通過することはないため、過定着は発生しない。
【0009】
一方、図9に示す小サイズ紙の場合、記録用紙の通過部分の領域が小さいため、加熱ローラ及び加圧ローラ共に温度が均一となっている範囲はローラ軸線方向の中央部分のみとなる。つまり、加熱ローラ及び加圧ローラのかなり広い領域で異常昇温が生じており、この状態で、その後に大サイズ紙を通過させた場合には、この大サイズ紙の一部(両端部)が異常昇温領域を通過し、トナーの過定着が生じてしまう。
【0010】
この非通紙部異常昇温を回避する手段として、下記の特許文献1には、加熱範囲の異なる複数のヒータをローラ本体内に配設し、通過する記録用紙のサイズに応じて通電するヒータを選択することが開示されている。具体的には、センタ基準(記録用紙の幅方向の中心位置と加熱ローラの軸線方向の中心位置とを一致させた状態で通紙させるもの)の定着装置において、大サイズ紙に対応するべくローラ本体の軸線方向の略全体を加熱する第1ヒータと、小サイズ紙に対応するべくローラ本体の軸線方向の中央部のみを加熱する第2ヒータとを備えさせる。これにより、ローラ本体のうち記録用紙が通過する部分のみを加熱することができ、上記非通紙部異常昇温の発生に伴う不具合を回避することが可能である。
【0011】
また、近年では、更なる省エネルギ化を図るために、上述したヒータランプ方式に代えて誘導加熱方式による定着装置が提案されている。この方式において、用紙サイズに応じてローラ本体の加熱領域を変更しようとすると、複数の加熱源(誘導コイル)をローラ本体の軸線方向に併設する必要がある。しかし、これでは製造コストの高騰を招いてしまうばかりでなく、大サイズ紙の場合には、個別の誘導コイルでローラ本体の各部を加熱することになるため、発熱分布の均一性が良好に得られなくなってしまう可能性もある。
【0012】
発熱分布の均一性を良好に得るための手法として、下記の特許文献2には、加熱ローラに熱均一化部材を当接させ、この熱均一化部材によって加熱ローラ上の特に高温部分に対して吸熱することで加熱ローラの温度分布を均一化することが開示されている。
【0013】
【特許文献1】
特開平8−220930号公報
【特許文献2】
特開平8−87191号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許文献2に示すような熱均一化部材を備えさせた構成に関し、加熱ローラに対して熱均一化部材を当接させるか否かを切り換える条件についての具体的な技術的思想は未だ提案されていない。
【0015】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、定着ローラに対して接離可能な熱均一化部材を備えた定着装置に対し、定着ローラに対する熱均一化部材の接離動作の最適化を図ることにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、定着ローラに対して接離可能な熱均一化部材を備えた定着装置に対し、記録用紙(記録媒体)のサイズやその連続定着枚数に応じて、定着ローラに対して熱均一化部材を接触させるか否かを判断し、これによって定着ローラに対する熱均一化部材の接触時間を必要最小限に抑えるようにしている。
【0017】
−解決手段−
具体的には、互いに接触する第1及び第2の定着ローラ(例えば加熱ローラと加圧ローラ)を備え、表面に顕像化物質(例えばトナー)が付着した記録媒体(記録用紙)を定着ローラ間に通過させて加熱することにより記録媒体上に顕像化物質を定着させる定着装置を前提とする。この定着装置に対し、各定着ローラのうち少なくとも一方の近傍に、その定着ローラに対して接離可能な熱均一化部材を配設する。そして、複数サイズの記録媒体のうちサイズの小さい記録媒体に対する定着動作の連続定着枚数が所定枚数以上であるときにのみ、熱均一化部材を定着ローラに接触させる接離切り換え手段を備えさせている。ここでいう「サイズの小さい記録媒体」とは、定着ローラの軸線方向に沿った方向の寸法(以下、用紙幅寸法と呼ぶ)が互いに異なる複数サイズの記録媒体のうち、定着ローラの長さ寸法にほぼ等しい用紙幅寸法を有する記録媒体(最大サイズの記録媒体)よりも用紙幅寸法が小さい記録媒体をいう。
【0018】
この特定事項により、定着装置のウォームアップ時や、サイズの大きい記録媒体に対して定着動作を行う場合や、サイズの小さい記録媒体に対する定着動作を行う場合であってもその連続定着枚数が所定枚数未満である場合には、定着ローラに対して熱均一化部材を接触させないことになる。つまり、これらの場合には定着ローラから熱を奪わないようにする。定着装置のウォームアップ時に、定着ローラに熱均一化部材を接触させないことで、ウォームアップ時間の短縮化が図れる。
【0019】
サイズの大きい記録媒体に対して定着動作を行う場合に、定着ローラに熱均一化部材を接触させないことで、消費電力の削減を図ることができる。つまり、サイズの大きい記録媒体に対して定着動作を行う場合には、通過する記録媒体により定着ローラの略全体から熱が奪われるため、この定着ローラの略全体が均一な温度となり、上記温度過上昇部分は殆ど発生しない。このため、定着ローラに熱均一化部材を接触させてしまうと、この熱均一化部材によって奪われた熱量分だけ無駄な消費電力が発生してしまう。従って、サイズの大きい記録媒体に対して定着動作を行う場合には定着ローラに対して熱均一化部材を接触させないようにしている。
【0020】
また、サイズの小さい記録媒体に対する定着動作を行う場合であってもその連続定着枚数が所定枚数未満である場合には、定着ローラに熱均一化部材を接触させないことで、熱均一化部材を接離するための機構の劣化を防止できる。つまり、サイズの小さい記録媒体に対する定着動作を行う場合であってもその連続定着枚数が少ない場合には非通紙部の異常昇温は殆ど発生しない。このため、この場合には熱均一化部材を接離するための機構を作動させないようにし、必要以上にこの機構を作動させることで機構の早期劣化を招くといったことを回避している。
【0021】
また、上記熱均一化部材の熱容量として具体的には以下のものが掲げられる。先ず、定着ローラ間の記録媒体通過速度が120mm/sec未満である定着装置の場合には、熱均一化部材の熱容量を40J/℃〜600J/℃に設定している。一方、定着ローラ間の記録媒体通過速度が、120mm/sec以上、180mm/sec以下である定着装置の場合には、熱均一化部材の熱容量を160J/℃〜600J/℃に設定している。
【0022】
このように定着ローラ間の記録媒体通過速度(プロセス速度)に応じて熱均一化部材の熱容量を決定している。つまり、この記録媒体通過速度が高い場合に、熱均一化部材の熱容量が小さくなり過ぎないように設定している。これは、記録媒体通過速度が高い場合、単位時間当たりの通紙枚数が多いので、定着ローラの加熱量を大きく設定することになり、これに伴って非通紙部の異常昇温も顕著になる。このため、記録媒体通過速度が高い場合には熱均一化部材の熱容量を大きく設定しておき、この非通紙部から奪うことが可能な熱量を大きくして異常昇温を抑制し、定着ローラの熱均一化効果が十分に得られるようにしている。
【0023】
また、複数サイズの記録媒体のうちサイズの小さい記録媒体が定着ローラ間を通過する場合に、定着ローラ上において記録媒体が接触しない領域の定着ローラ表面温度を検出する温度検出手段を設ける。そして、記録媒体に対する定着動作の連続定着枚数に拘わらず、上記温度検出手段によって検出された定着ローラ表面温度が所定値以上であるときには、熱均一化部材を定着ローラに接触させる構成としている。
【0024】
この特定事項により、非通紙部分の温度を直接検知し、仮に、サイズの小さい記録媒体に対する定着動作の連続定着枚数が所定枚数以下であったとしても、非通紙部分の温度が異常昇温レベルに達しているときには熱均一化部材を定着ローラに接触させる。これにより、非通紙部分の異常昇温を確実に回避することが可能になる。
【0025】
熱均一化部材の熱伝導率と定着ローラの熱伝導率との関係としては以下のものが掲げられる。つまり、熱均一化部材を、接離切り換え手段の作動によって接触する定着ローラよりも熱伝導率が大きいものとしている。
【0026】
この特定事項により、熱均一化部材において、定着ローラの非通紙部分に対向する領域のみが熱飽和してしまって定着ローラの非通紙部分から熱が奪えなくなるといった状況を生じないようにすることができる。このため、サイズの小さい記録媒体に対する連続定着枚数が多数枚に及んだ場合であっても非通紙部分の異常昇温を抑制することができる。
【0027】
また、上述した各解決手段に係る定着装置を備えた画像形成機も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、記録媒体の表面に顕像化物質を付着させてこの顕像化物質による像が形成された状態で、この記録媒体を上記各解決手段に係る定着装置の定着ローラ間に通過させて加熱することにより記録媒体上に顕像化物質を定着させて画像形成を行うよう構成された画像形成機である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本形態では、コピー機能、プリント機能、ファクシミリ機能を兼ね備えた複合機に本発明を適用した場合について説明する。
【0029】
−複合機の全体構成の説明−
図1は本形態に係る画像形成機としての複合機1の内部構成の概略を示している。この図1のように、本複合機1は、スキャナ部2、画像形成部としてのプリント部3及び原稿自動給紙部4を備えている。以下、各部について説明する。
【0030】
<スキャナ部2の説明>
スキャナ部2は、透明なガラス等で成る原稿台41上に載置された原稿の画像や原稿自動給紙部4により1枚ずつ給紙される原稿の画像を読み取って画像データを作成する部分である。このスキャナ部2は、露光光源21、複数の反射鏡22,23,24、結像レンズ25、光電変換素子(CCD:Charge Coupled Device)26を備えている。
【0031】
上記露光光源21は、原稿自動給紙部4の原稿台41上に載置された原稿や原稿自動給紙部4を搬送される原稿に対して光を照射するものである。各反射鏡22,23,24は、図1に一点鎖線Aで光路を示すように、原稿からの反射光を一旦図中左方向に反射させた後、下方に反射させ、その後、結像レンズ25に向かうように図中右方向に反射させるようになっている。
【0032】
原稿の画像読取動作として、上記原稿台41上に原稿が載置された場合(「シート固定方式」として使用する場合)には、露光光源21及び各反射鏡22,23,24が原稿台41に沿って水平方向に走査して、原稿全体の画像を読み取ることになる。一方、原稿自動給紙部4を搬送される原稿を読み取る場合(「シート移動方式」として使用する場合)には、露光光源21及び各反射鏡22,23,24が図1に示す位置に固定され、後述する原稿自動給紙部4の原稿読取部42を原稿が通過する際にその画像を読み取ることになる。
【0033】
上記各反射鏡22,23,24で反射されて結像レンズ25を通過した光は光電変換素子26に導かれ、この光電変換素子26において反射光が電気信号(原稿画像データ)に変換されるようになっている。
【0034】
<プリント部3の説明>
プリント部3は、画像形成系31と用紙搬送系32とを備えている。
【0035】
画像形成系31は、レーザスキャニングユニット31a及びドラム型の像担持体としての感光体ドラム31bを備えている。レーザスキャニングユニット31aは、上記光電変換素子26において変換された原稿画像データに基づいたレーザ光を感光体ドラム31bの表面に照射するものである。感光体ドラム31bは、図1中に矢印で示す方向に回転し、レーザスキャニングユニット31aからのレーザ光が照射されることによってその表面に静電潜像が形成されるようになっている。
【0036】
また、感光体ドラム31bの外周囲には、上記レーザスキャニングユニット31aの他に、現像装置(現像機構)31c、転写機構を構成する転写ユニット31d、クリーニング装置(クリーニング機構)31e、図示しない除電器、帯電ユニット31fが周方向に亘って順に配設されている。現像装置31cは、感光体ドラム31bの表面に形成された静電潜像をトナー(顕像化物質)により可視像に現像するものである。転写ユニット31dは、感光体ドラム31bの表面に形成されたトナー像を記録媒体としての画像形成用紙に転写するものである。クリーニング装置31eは、トナー転写後において感光体ドラム31bの表面に残留したトナーを除去するようになっている。除電器は、感光体ドラム31bの表面の残留電荷を除去するものである。帯電ユニット31fは、静電潜像が形成される前の感光体ドラム31bの表面を所定の電位に帯電させるようになっている。
【0037】
このため、画像形成用紙に画像を形成する際には、帯電ユニット31fによって感光体ドラム31bの表面が所定の電位に帯電され、レーザスキャニングユニット31aが原稿画像データに基づいたレーザ光を感光体ドラム31bの表面に照射する。その後、現像装置31cが感光体ドラム31bの表面にトナーによる可視像を現像し、転写ユニット31dによって、トナー像が画像形成用紙に転写される。更に、その後、感光体ドラム31bの表面に残留したトナーはクリーニング装置31eによって除去されると共に、感光体ドラム31bの表面の残留電荷が除電器によって除去される。これにより、画像形成用紙への画像形成動作(印刷動作)の1サイクルが終了する。このサイクルが繰り返されることにより、複数枚の画像形成用紙に対して連続的に画像形成を行うことができるようになっている。
【0038】
一方、用紙搬送系32は、用紙収容部としての用紙カセット33に収容された画像形成用紙を1枚ずつ搬送して上記画像形成系31による画像形成を行わせると共に、画像形成された画像形成用紙を用紙排出部としての排紙トレイ35へ排出するものである。
【0039】
この用紙搬送系32は、主搬送路36と反転搬送路37とを備えている。主搬送路36は用紙カセット33の排出側に対向していると共に他端が排紙トレイ35に対向している。反転搬送路37は、一端が転写ユニット31dの配設位置よりも上流側(図中下側)で主搬送路36に繋がっていると共に、他端が転写ユニット31dの配設位置よりも下流側(図中上側)で主搬送路36に繋がっている。
【0040】
主搬送路36の上流端(用紙カセット33の排出側に対向する部分)には断面が半円状のピックアップローラ36aが配設されている。このピックアップローラ36aの回転により、用紙カセット33に収容されている画像形成用紙を1枚ずつ間欠的に主搬送路36に給紙できるようになっている。
【0041】
この主搬送路36における転写ユニット31dの配設位置よりも上流側には、レジストローラ36d,36dが配設されている。このレジストローラ36d,36dは、感光体ドラム31b表面のトナー像と画像形成用紙との位置合わせを行いながら画像形成用紙を搬送するものである。主搬送路36における転写ユニット31dの配設位置よりも下流側には、画像形成用紙に転写されたトナー像を加熱により定着させるための一対の定着ローラ39a,39bを備えた定着装置39が配設されている。この定着装置39の詳細については後述する。更に、主搬送路36の下流端には、画像形成用紙を排紙トレイ35に排紙するための排出ローラ36eが配設されている。
【0042】
主搬送路36に対する反転搬送路37の上流端の接続位置には分岐爪38が配設されている。この分岐爪38は、図1に実線で示す第1位置とこの第1位置から図中反時計回り方向に回動して反転搬送路37を開放する第2位置との間で水平軸回りに回動自在となっている。この分岐爪38が第1位置にあるときには画像形成用紙が排紙トレイ35に向けて搬送され、第2位置にあるときには画像形成用紙が反転搬送路37へ供給可能となっている。反転搬送路37には搬送ローラ37aが配設されており、画像形成用紙が反転搬送路37に供給された場合(所謂スイッチバック搬送により画像形成用紙が反転搬送路37に供給された場合)には、この搬送ローラ37aによって画像形成用紙が搬送され、レジストローラ36dの上流側で画像形成用紙が反転されて再び転写ユニット31dに向かって主搬送路36を搬送されるようになっている。つまり、画像形成用紙の裏面に対して画像形成が行えるようになっている。
【0043】
<原稿自動給紙部4の説明>
次に、原稿自動給紙部4について説明する。この原稿自動給紙部4は、所謂自動両面原稿搬送装置として構成されている。この原稿自動給紙部4は、シート移動式として使用可能であって、原稿載置部としての原稿トレイ43、中間トレイ44、原稿排出部としての原稿排紙トレイ45及び各トレイ43,44,45間で原稿を搬送する原稿搬送系46を備えている。
【0044】
上記原稿搬送系46は、原稿トレイ43に載置された原稿を、原稿読取部42を経て中間トレイ44または原稿排紙トレイ45へ搬送するための主搬送路47と、中間トレイ44上の原稿を主搬送路47に供給するための副搬送路48とを備えている。
【0045】
主搬送路47の上流端(原稿トレイ43の排出側に対向する部分)には原稿ピックアップローラ47a及び捌きローラ47bが配設されている。捌きローラ47bの下側には捌き板47cが配設されており、原稿ピックアップローラ47aの回転に伴って原稿トレイ43上の原稿のうちの1枚がこの捌きローラ47bと捌き板47cとの間を通過して主搬送路47に給紙されるようになっている。主搬送路47と副搬送路48との合流部分(図中B部分)よりも下流側にはPSローラ47e,47eが配設されている。このPSローラ47e,47eは、原稿の先端とスキャナ部2の画像読取タイミングとを調整して原稿を原稿読取部42に供給するものである。つまり、このPSローラ47e,47eは原稿が供給された状態でその原稿の搬送を一旦停止し、上記タイミングを調整して原稿を原稿読取部42に供給するようになっている。
【0046】
原稿読取部42は、プラテンガラス42aと原稿押え板42bとを備え、PSローラ47e,47eから供給された原稿がプラテンガラス42aと原稿押え板42bとの間を通過する際に、上記露光光源21からの光がプラテンガラス42aを通過して原稿に照射されるようになっている。この際、上記スキャナ部2による原稿画像データの取得が行われる。上記原稿押え板42bの背面(上面)には図示しないコイルスプリングによる付勢力が付与されている。これにより、原稿押え板42bがプラテンガラス42aに対して所定の押圧力をもって接触しており、原稿が原稿読取部42を通過する際にプラテンガラス42aから浮き上がることを阻止している。
【0047】
プラテンガラス42aの下流側には、搬送ローラ47f及び原稿排紙ローラ47gが備えられている。プラテンガラス42a上を通過した原稿が搬送ローラ47f及び原稿排紙ローラ47gを経て中間トレイ44または原稿排紙トレイ45へ排紙される構成となっている。
【0048】
原稿排紙ローラ47gと中間トレイ44との間には中間トレイ揺動板44aが配設されている。この中間トレイ揺動板44aは、中間トレイ44側の端部が揺動中心とされて、図中実線で示すポジション1とこのポジション1から上方へ跳ね上げられたポジション2との間で揺動可能となっている。中間トレイ揺動板44aがポジション2にある場合には原稿排紙ローラ47gから排紙された原稿は原稿排紙トレイ45へ回収される。一方、中間トレイ揺動板44aがポジション1にある場合には原稿排紙ローラ47gから排紙された原稿は中間トレイ44へ排出されるようになっている。この中間トレイ44への排紙時には、原稿の端縁が原稿排紙ローラ47g,47g間に挟持された状態となっており、この状態から原稿排紙ローラ47gが逆回転することによって原稿が副搬送路48に供給され、この副搬送路48を経て再び主搬送路47に送り出されるようになっている。この原稿排紙ローラ47gの逆回転動作は、主搬送路47への原稿の送り出しと画像読取タイミングとを調整して行われる。これにより、原稿の裏面の画像が原稿読取部42によって読み取られるようになっている。
【0049】
−複合機の基本動作説明−
以上の如く構成された複合機1の動作として、先ず、本複合機1が、プリンタとして機能する場合には、パーソナルコンピュータ等のホスト装置から送信された印刷データ(イメージデータやテキストデータ)を受信し、この受信した印刷データ(プリントデータ)を図示しないバッファ(メモリ)に一旦格納していく。このバッファへのプリントデータの格納と共に、バッファからのプリントデータの読み出しを順次行って、この読み出したプリントデータに基づき、上述したプリント部3の画像形成動作により画像形成用紙に画像形成が行われる。
【0050】
また、本複合機1がスキャナとして機能する場合には、上記スキャナ部2によって読み取った原稿のスキャン画像データをバッファに一旦格納していく。このバッファへのスキャン画像データの格納と共に、バッファからホスト装置へのスキャン画像データの送信を順次行って、このホスト装置のディスプレイ等に画像表示する。
【0051】
更に、本複合機1がコピー機として機能する場合には、上記スキャナ機能によって読み取った原稿画像データに基づきプリント部3の画像形成動作によって画像形成用紙に画像形成が行われることになる。
【0052】
−定着装置39の構成−
次に、本形態の特徴部分である定着装置39の構成について説明する。図2は本実施形態に係る定着装置39の断面図であり、図3は定着装置39を用紙搬送方向から見た図(ローラの一部を省略した図)である。
【0053】
この定着装置39は、加熱回転体である第1定着ローラとしての加熱ローラ39aと、この加熱ローラ39aに対して略下側から当接する加圧回転体である第2定着ローラとしての加圧ローラ39bと、加熱ローラ39aをローラ外部から誘導加熱するコイル39cと、加圧ローラ39bに接離可能な熱均一化部材(熱伝導部材)である熱均一化ローラ39dとを主要構成部材として構成されている。
【0054】
上記加熱ローラ39aと加圧ローラ39bとの間には、これらローラ39a,39bの軸線方向(図2の紙面に直交する方向)に延びる帯状の定着ニップ部が形成されている。また、記録用紙搬送方向における上記定着ニップ部の上流側には図示しない定着入口ガイドが配設されている。以下、この定着装置39の各構成部材について説明する。
【0055】
上記加熱ローラ39aは、中心部から外周部に向けて基材39e、弾性断熱層39f、発熱層39g、離型層39hを備えている。基材39eは、外径が30mmで、肉厚が3tのアルミニウム製の素管により構成されている。弾性断熱層39fは、肉厚が5mmのシリコンスポンジにより構成されている。発熱層39gは、肉厚が40μmのNiにより構成されている。離型層39hは、肉厚が30μmのPFAチューブ層により構成されている。尚、この離型層39hと発熱層39gとの間に、シリコンゴムから成る弾性層(厚さ150μm程度)を設けるようにしてもよい。また、弾性断熱層39fから外周側部分の軸長(加熱領域)は320mmに設定されている。また、この加熱ローラ39aは図示しない駆動手段からの駆動力を受けて回転駆動されるようになっている。
【0056】
一方、上記加圧ローラ39bは、外径が20mmの鉄製の芯金の外周面に、層厚さが5mmの弾性層(シリコンゴム層)が設けられ、更に、その外周面を厚さ30μmのPFAチューブで被覆した構成となっている(各層の構成は図示省略)。この加圧ローラ39bにおいても、弾性層から外周側部分の軸長は320mmに設定されている。この加圧ローラ39b全体は、図示しない付勢手段によって所定の当接圧で加熱ローラ39aに押圧されており、これにより、加熱ローラ39aと加圧ローラ39bとの間には、両ローラ39a,39bの長手方向に沿って帯状の定着ニップ部が形成されることになる。本形態では、この定着ニップ部の幅が7mm程度となるように上記当接圧が調整されている。尚、加圧ローラ39bは、加熱ローラ39aの回転に伴って従動回転するようになっている。
【0057】
加熱源となる上記誘導加熱コイル39cには、10〜100kHzの交流電流が印加されるようになっている。これにより、加熱ローラ39aの発熱層39gに渦電流が発生し、ジュール熱の発生によって加熱ローラ39aの外周面の温度が上昇するようになっている。本形態では、線径が0.5mmの絶縁被覆導線を10〜20程度撚ったリッツ線を巻き回して誘導加熱用のコイル39cとしている。このコイル39cをコイルユニット中に固定し、加熱ローラ39aの外周面に対向して配設することで、発熱層39gの表面を高効率で発熱することが可能となり、高効率加熱、ウォームアップタイムの短縮を可能にしている。
【0058】
加熱ローラ39a表面の通紙領域の略中央(軸線方向の中央部)には図示しないサーミスタが当接配置されている。このサーミスタで取得した温度情報に基づいて上記誘導加熱コイル39cへの供給電流を制御し、これによって定着温度が所定の範囲内に調整できるようになっている。また、この加熱ローラ39a上の非通紙領域内には、非通紙部温度測定用のサーミスタが設置されている。尚、加圧ローラ39bの非通紙領域内に、非通紙部温度測定用のサーミスタを設置してもよい。
【0059】
図4は、この誘導加熱コイル39cへの供給電流の制御によって定着温度を調整した場合の各ローラ39a,39bの温度変化状態を示している。つまり、複合機1の主電源をONしてウォームアップ時間が経過した後、加熱ローラ39aの表面温度(通紙領域の略中央部のサーミスタによる検知温度)が所定の範囲内に調整されるように誘導加熱コイル39cへの供給電流の制御を行っている。つまり、印刷動作を行っていない放置中にあっては加熱ローラ39aから自然放出される熱量分を補うように誘導加熱コイル39cへの供給電流が制御される。一方、印刷動作中にあっては、この自然放出される熱量分と通過する用紙によって奪われる熱量分とを補うように誘導加熱コイル39cへの供給電流が制御される。この図4における丸数字は連続通紙される用紙の通紙順を示している。
【0060】
上記熱均一化部材としての熱均一化ローラ39dは、加圧ローラ39bの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有するALやCu等の高熱伝導率材料で構成されている。本実施形態では、この材料をローラ形状に加工して熱均一化ローラ39dを作製している。また、この熱均一化ローラ39dの外側に20μm程度のPFAコート層を設けて、トナーの離型性を向上させるようにしてもよい。また、この熱均一化ローラ39dは、加圧ローラ39bの回転に伴って従動回転するが、駆動源からの駆動力を受けて回転駆動するようにしてもよい。また、この熱均一化ローラ39dの軸長は加圧ローラ39bと同じく320mmに設定されている。この軸長は加圧ローラ39bよりも長く設定してもよい。
【0061】
そして、この熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに対して接離可能とする接離切り換え手段7としては、図3に示すように、熱均一化ローラ39dの軸線方向に平行に延びるシャフト71を有し、このシャフト71の両端部近傍位置に偏心カム72,72がそれぞれ回転一体に取り付けられている。これら偏心カム72,72は熱均一化ローラ39dの両軸端部に対向する位置に配設されている。
【0062】
また、上記シャフト71の一端部には駆動モータ73からの駆動力を受けるギア74が取り付けられている。この構成により、駆動モータ73が回転駆動すると、その駆動力がギア74を介してシャフト71に伝達されてこのシャフト71が回動し、偏心カム72,72の回動に伴って熱均一化ローラ39dが加圧ローラ39bに対して接離方向(図3にあっては上下方向)に移動されるようになっている。つまり、図3に示す偏心カム72,72の回動位置では、偏心カム72のカム高さが低い部分が熱均一化ローラ39dの軸端部に当接しているため、熱均一化ローラ39dは、加圧ローラ39bから後退した位置にあり、この加圧ローラ39bには接触しない。この状態から駆動モータ73が回転駆動して偏心カム72,72が180°回動した状態になると、図2に示すように偏心カム72のカム高さが高い部分が熱均一化ローラ39dの軸端部に当接することになり、熱均一化ローラ39dは、加圧ローラ39bに向かって前進し、この加圧ローラ39bに接触することになる。このようにして、熱均一化ローラ39dが加圧ローラ39bに接触する状態と接触しない状態とが切り換えられるようになっている。
【0063】
そして、本形態の特徴としては、本複合機1に使用可能な複数サイズの記録用紙のうちサイズの小さい記録用紙(最大サイズの記録用紙以外のもの)に対する定着動作の連続定着枚数が所定枚数以上である場合にのみ、上記熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに接触させるようにしている点にある。つまり、画像形成動作時に、その記録用紙のサイズの認識と、ユーザが要求した印刷枚数(連続定着枚数)を認識を行っておき、最大サイズの用紙以外の記録用紙に対して印刷を行う場合であって、しかも、その印刷枚数が所定枚数(例えば10枚)以上である場合にのみ、上記熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに接触させるようにしている。上記記録用紙のサイズ及び印刷枚数の認識動作としては、例えば受信した画像データ中に含まれる用紙サイズ情報及び印刷枚数情報を取得する。また、光学的な検知手段を利用して記録用紙のサイズを認識するようにしてもよい。尚、熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに接触させるか否かを決定する条件としての印刷枚数は、上記数値に限るものではなく、任意に設定可能である。
【0064】
上述の如く熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに接触させることにより、上記非通紙部の熱を熱均一化ローラ39dによって奪い、この非通紙部での異常昇温が発生しないようにしている。その結果、上記小サイズ紙の画像形成動作が終了した後に大サイズ紙に対する印刷動作が行われた場合であっても用紙両端部分でのトナーの過定着は発生せず、記録用紙上のトナーの光沢性に変化が生じたり、過定着部分が高温オフセットを起こして加熱ローラ39aにトナーが付着したりすることがなくなる。また、このローラ温度の過上昇が回避できるため、ローラのライフ特性の向上を図ることもできる。
【0065】
尚、上記各ローラ39a,39b,39dの材料や形状は上述したものの限られることなく、必要に応じて任意に設定可能である。
【0066】
図5及び図6は、小サイズ用紙に定着動作を行わせた場合の各ローラ39a,39bの軸線方向端部付近(ローラセンタよりも右側部分)の通紙部と非通紙部との温度変化の一例を示している。図5は加熱ローラ39aの温度変化を示しており、図6は加圧ローラ39bの温度変化を示している。各図の丸数字は、連続通紙される用紙の通紙順である。
【0067】
これら図から明らかなように、従来のもの(図9参照)に比べて非通紙部分での昇温は大幅に抑えられている。これは、熱均一化ローラ39dが加圧ローラ39bに接触して、この加圧ローラ39bの非通紙部分の熱を熱均一化ローラ39dが奪い、且つ、加熱ローラ39aの非通紙部分の熱を加圧ローラ39bを介して熱均一化ローラ39dが奪ったためである。
【0068】
このように加熱ローラ39a及び加圧ローラ39bにおいて殆ど異常昇温が生じていないため、この状態で、その後に大サイズ紙を通過させた場合であっても、トナーの過定着が生じてしまうことはない。
【0069】
−実験例−
次に、上記効果を確認するために行った実験例について説明する。上記形状でAL基材を用いて、ローラ外径、肉厚等を変更して熱容量を変更した熱均一化ローラ(熱均一化ローラ)39dを加圧ローラ39bに接離可能に配置し、小サイズ紙の連続通紙を行った。そして、このときの非通紙部温度を測定した。尚、加圧ローラ39bと熱均一化ローラ39dの当接幅は約2mm程度とした。
【0070】
先ず、初めにプロセス速度60mm/sec(通紙速度は約10PPM)の条件下で、坪量約80g/m2のA4用紙をR通紙(縦通紙)で連続通紙した。通紙枚数は約100〜200枚程度とした。
【0071】
この状態で、ほぼ非通紙部分の温度は定常状態に達した。尚、このときの温調温度は170℃である。ここで、非通紙部分の温度測定は、用紙通紙領域中央部135mmの位置にサーミスタを設置することにより行った。上記用紙を連続通紙した場合、上記領域が最も温度が上昇したからである。尚、非通紙部分の最大温度上昇部は用紙サイズやコイル形状等の発熱条件等によって必ずしも上記位置になるとは限らない。
【0072】
更に、プロセス速度120mm/sec(通紙速度は約20PPM)、180mm/sec(通紙速度は約30PPM)においても、同様に実験を行った。以上の実験の結果を図7に示す。
【0073】
一般的に、定着ローラの耐熱性は、発熱層である金属層やシリコンゴム層等の耐熱性等を考慮した場合、230℃程度である。そこで、各プロセス速度での検討結果を踏まえると、60mm/secでは、熱均一化ローラ39dの熱容量に拘わらず、この値を満足しているが、120mm/secにおいては、少なくとも40J/℃以上必要であり、更に、180mm/secにおいては、少なくとも160J/℃以上必要であることが判った。つまり、プロセス速度の違いにより、熱均一化ローラ39dの最適熱容量範囲が存在することが判った。熱容量が小さすぎると、ローラ軸方向の均一化効果が十分ではなく、加圧ローラ39bや加熱ローラ39aの熱均一化効果が薄れてしまうためであると考えられる。更に、高速度化に伴い、この傾向は顕著になると考えられる。
【0074】
熱均一化ローラ39dは、非通紙部分と通紙部分との温度差をならす、つまり、高温度領域の熱量を低温度領域へ補充する効果もあり、その結果、通紙時の電力上昇は殆どない、もしくは電力低下効果もある場合があるが、あまりにも熱量が大きくなりすぎると、通紙初期での温度追従性が悪化する場合がある。
【0075】
従って、120mm/sec未満のプロセス速度では、熱均一化ローラ39dの熱容量は40〜600J/℃、120mm/secより大きく180mm/sec以下のプロセス速度では160J/℃〜600J/℃とすればよい。
【0076】
また、熱均一化ローラ39dは、A4サイズ(横通紙)やA3サイズ、もしくはLetterサイズ(横通紙)等の大サイズ紙通紙時は、加圧ローラ39b若しくは加熱ローラ39aとは離間しており、それ以下の用紙幅サイズ紙通紙時のみ、例えば、A4縦通紙、Letter縦通紙以下の通紙幅の場合は当接させるようにすればよい。
【0077】
これら用紙サイズ紙が通紙される場合においても、その印字要求枚数が少ない場合は、あえて熱均一化ローラ39dを当接させずに、非通紙部分に設置されたサーミスタの温度検知情報に基づき、当接するようにしてもよい。例えば、温調温度170℃設定時において、非通紙部分温度が185℃になった場合に当接するようにしてもよい。
【0078】
更に、小サイズ紙通紙後の大サイズ紙通紙時において、冷却時間を設けて更に確実に非通紙部分と通紙部分との温度差を解消するようにしてもよく、このとき、熱均一化ローラ39dは当接/離間のどちらの状態でもよいが、再立ち上げ時には、離間状態とする。上記制御により、ウォームアップタイムの遅延が防止できる。
【0079】
−その他の実施形態−
上述した実施形態では、複写機、プリンタ装置及びファクシミリ装置としての機能を兼ね備えた多機能型の本画像形成機1に、本発明を適用した場合について説明した。本発明は、これに限らず、その他の画像形成機についても適用可能である。
【0080】
また、上記実施形態では、熱均一化ローラ39dを加圧ローラ39bに対して接離可能な構成とした。本発明はこれに限るものではなく、熱均一化ローラ39dを加熱ローラ39aに対して接離可能な構成としたり、2本の熱均一化ローラを備えさせ、一方を加圧ローラ39bに対して接離可能とし、他方を加熱ローラ39aに対して接離可能な構成としてもよい。
【0081】
また、本発明は、誘導加熱方式による定着装置に限らず、ヒータランプ方式による定着装置に対しても適用可能である。
【0082】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、定着ローラに対して接離可能な熱均一化部材を備えた定着装置に対し、記録媒体のサイズやその連続定着枚数に応じて、定着ローラに対して熱均一化部材を接触させるか否かを判断し、これによって定着ローラに対する熱均一化部材の接触時間を必要最小限に抑えるようにしている。このため、トナーの過定着の回避を確実に行うことができると共に、熱均一化部材を接離するための機構を必要以上に作動させないことによりこの機構の早期劣化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る複合機の内部構成の概略を示す図である。
【図2】定着装置の断面図である。
【図3】定着装置を用紙搬送方向から見た図である。
【図4】連続給紙時における加熱ローラ及び加圧ローラの温度変化状態を示す図である。
【図5】実施形態における加熱ローラの温度変化を説明するための図である。
【図6】実施形態における加圧ローラの温度変化を説明するための図である。
【図7】プロセス速度と熱均一化ローラの熱容量との関係を示す図である。
【図8】従来例において大サイズ紙を連続給紙した場合の加熱ローラ及び加圧ローラの温度変化を説明するための図である。
【図9】従来例において小サイズ紙を連続給紙した場合の加熱ローラ及び加圧ローラの温度変化を説明するための図である。
【符号の説明】
1 複合機(画像形成機)
39 定着装置
39a 加熱ローラ
39b 加圧ローラ
39d 熱均一化ローラ(熱均一化部材)
7 接離切り換え手段
Claims (6)
- 互いに接触する第1及び第2の定着ローラを備え、表面に顕像化物質が付着した記録媒体を定着ローラ間に通過させて加熱することにより記録媒体上に顕像化物質を定着させる定着装置において、
上記各定着ローラのうち少なくとも一方の近傍にはその定着ローラに対して接離可能な熱均一化部材が配設されており、
複数サイズの記録媒体のうちサイズの小さい記録媒体に対する定着動作の連続定着枚数が所定枚数以上であるときに、上記熱均一化部材を定着ローラに接触させる接離切り換え手段を備えていることを特徴とする定着装置。 - 請求項1記載の定着装置において、
定着ローラ間の記録媒体通過速度が120mm/sec未満であるものにあっては、熱均一化部材の熱容量が40J/℃〜600J/℃に設定されていることを特徴とする定着装置。 - 請求項1記載の定着装置において、
定着ローラ間の記録媒体通過速度が、120mm/sec以上、180mm/sec以下であるものにあっては、熱均一化部材の熱容量が160J/℃〜600J/℃に設定されていることを特徴とする定着装置。 - 請求項1、2または3記載の定着装置において、
複数サイズの記録媒体のうちサイズの小さい記録媒体が定着ローラ間を通過する場合に、定着ローラ上において記録媒体が接触しない領域の定着ローラ表面温度を検出する温度検出手段が設けられ、
記録媒体に対する定着動作の連続定着枚数に拘わらず、上記温度検出手段によって検出された定着ローラ表面温度が所定値以上であるときには、接離切り換え手段が熱均一化部材を定着ローラに接触させるよう構成されていることを特徴とする定着装置。 - 請求項1〜4のうち何れか一つに記載の定着装置において、
熱均一化部材は、接離切り換え手段の作動によって接触する定着ローラよりも熱伝導率が大きいものであることを特徴とする定着装置。 - 上記請求項1〜5のうち何れか一つに記載の定着装置を備えた画像形成機であって、
記録媒体の表面に顕像化物質を付着させてこの顕像化物質による像が形成された状態で、この記録媒体を上記定着装置の定着ローラ間に通過させて加熱することにより記録媒体上に顕像化物質を定着させて画像形成を行うよう構成されていることを特徴とする画像形成機。
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- 2003-04-03 JP JP2003100570A patent/JP2004309651A/ja active Pending
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