JP2004267630A - ゴルフクラブヘッド - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ボールを打球するフェース部の少なくとも一部に、重量%でCr:4〜10%、V:10〜24%、Al:2〜6%を含みかつ残部にTi及び不可避不純物を含むチタン合金を800〜950℃で鍛造した熱間鍛造フェース部材を用いたことを特徴とするゴルフクラブヘッド1である。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反発性を向上しうるゴルフクラブヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
打球の飛距離を増大させるために、金属製のゴルフクラブヘッドは、高い反発性を持つよう種々の改善が行われている。ヘッドの反発性を高めるためには、ボールを打球するフェース部の厚さを薄くし、打球時にフェース部を大きく撓ませることが効果的である。このようなヘッドは、ボールの衝突時にエネルギーロスを小さくでき、ボールの打ち出し初速を向上させることが種々の実験により判明している。
【0003】
しかしながら、フェース部の厚さを薄くすると、ボールの打撃時にフェース部に割れ等の損傷が生じやすくなり、耐久性が低下する。従って、ヘッドの高反発化を実現するためには、より高い引張強度とより低いヤング率を具える金属材料をフェース部に使用することが望まれている。
【0004】
近年では、フェース部の材料として、比強度の大きいチタン合金を用いることが多い。チタン合金としては、例えばTi−6Al−4Vなどのα+β系チタン合金や、Ti−15V−3Cr−3Sn−3Alなどのβ系チタン合金が挙げられる。前者のものは、鋳造性に優れ比較的複雑な形状を成型できるが、チタン合金の中では強度がやや低い部類に属し、かつヤング率も比較的大きい。従って、ヘッドの反発性をより一層向上させるための材料としては改善の余地がある。
【0005】
また後者のものは、α+β系チタン合金に比べると、引張強度が高くかつヤング率も小さい部類に属し、ヘッドの高反発化には適していると言える。一方、近年ではさらなる引張強度の向上を目的として、Ti−15V−6Cr−4Alといったチタン合金が下記特許文献1により提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−144286号公報
【0007】
特許文献1で示されるチタン合金は、高い引張強度を持つため、フェース部材として、より薄く形成しても、耐久性の低下を防止できる。このため、近年ではこのチタン合金をフェース部に用いたゴルフクラブヘッドが種々提案されている。
【0008】
しかしながら、Ti−15V−6Cr−4Alのチタン合金は、高温域においても比較的流動性が低いため変形抵抗が大きい。従って、例えば2ないし3mmといった所望の厚さを有する成型品を精度良く製造するのには多くの困難を伴なう。このため、従来では、Ti−15V−6Cr−4Alのチタン合金を用いたフェース材は、冷間圧延などによって形成された板状のもので、熱間鍛造する試みはなされていない。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ボールを打球するフェース部の少なくとも一部に、特定の組成を具えたチタン合金を特定の温度条件で鍛造した熱間鍛造フェース部材を用いることを基本として、成型性を向上できかつ高反発化をも実現しうるゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ボールを打球するフェース部の少なくとも一部に、重量%でCr:4〜10%、V:10〜24%、Al:2〜6%を含みかつ残部にTi及び不可避不純物を含むチタン合金を800〜950℃で鍛造した熱間鍛造フェース部材を用いたことを特徴としている。
【0011】
また請求項2記載の発明は、前記チタン合金は、重量%でCr:4〜10%、V:10〜24%、Al:2〜6%を含みかつ残部がTi及び不可避不純物からなることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
【0012】
また請求項3記載の発明は、前記熱間鍛造フェース部材は、500〜650℃で時効処理が施されてなる請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドである。
【0013】
また請求項4記載の発明は、前記熱間鍛造フェース部材は、フェース面と反対側の面に、ピーニング処理が施された加工面を含むことを特徴とする請求項1乃至3に記載のゴルフクラブヘッドである。
【0014】
また請求項5記載の発明は、前記熱間鍛造フェース部材は、板状をなすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0015】
また請求項6記載の発明は、前記熱間鍛造フェース部材は、前記フェース部の全体又は一部を形成するフェース基部と、該フェース基部の縁に設けられかつヘッド後方へとのびる延長部とを一体に具えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態のゴルフクラブヘッドの全体斜視図を示す。該ヘッド1は、ボールを打球する面であるフェース面Fを有するフェース部2と、該フェース部2に連なりかつヘッド上部をなすクラウン部3と、前記フェース部2に連なりかつヘッド底部をなすソール部4と、クラウン部3とソール部4との間を継ぎかつヘッド周囲をなすサイド部5と、クラウン部3のヒール寄りに突設されたホーゼル部6とを具えた中空構造のウッド型のものが例示される。
【0017】
図2は図1に示したヘッド1の分解斜視図を示す。本実施形態のヘッド1は、内部に中空部iを有するヘッド本体1Aと、該ヘッド本体1Aの固着される熱間鍛造により成型された熱間鍛造フェース部材1Bとで構成されたものを示す。
【0018】
本実施形態のヘッド本体1Aは、実質的に前記クラウン部3、ソール部4、サイド部5及びホーゼル部6を一体に具え、前面には熱間鍛造フェース部材1Bが配される開口部Oが形成されている。開口部Oには、その近傍に、該熱間鍛造フェース部材1Bの背面と当接してこれを位置決めをなす仮保持片8が間欠的に設けられたものを例示している。このような仮保持片8は、熱間鍛造フェース部材1Bを溶接する際に、その位置決め、仮保持を容易化でき、生産性を向上するのに役立つ。
【0019】
また、ヘッド本体1Aは、例えばアルミニウム合金、チタン、チタン合金、ステンレスなどの各種の金属材料により形成することができ、本例ではα+β型チタン合金であるTi−6Al−4Vを用いてロストワックス鋳造法によって各部を一体成形したものが例示されている。ただし、ヘッド本体1Aは、このような実施形態に限られず、他の材料や他の成形法を用いて製造しうるのは言うまでもない。
【0020】
前記熱間鍛造フェース部材1Bは、重量%でCr:4〜10%、V:10〜24%、Al:2〜6%を含みかつ残部がTi及び不可避不純物からなるチタン合金を800〜950℃で鍛造することにより形成されたものを例示する。
【0021】
Crは、チタン合金のβ相を固溶強化するのに必要な元素であり、高い引張強度を得るために4%以上が必要である。逆にCrの含有量が多すぎても、時効処理に際してTiCr2 といった金属間化合物が析出され、延性が低下しやすくなる。かかる観点より10%以下とする。特に好ましくは、Crの含有量が5〜8%、さらに好ましくは5〜7%であることが望ましい。
【0022】
Vは、チタン合金のβ相を安定化させるのに有効な元素であり、とりわけチタン合金の延性を向上させる。Vの含有量が10%未満では、かかる効果を発揮できず、逆に24%を超えると、時効処理に要する時間が大となり、熱処理コストを上昇させる。このような観点より、Vの含有量は、より好ましくは13〜20%、特に好ましくは14〜16%とすることが望ましい。
【0023】
またAlは、時効処理によって析出するα相を強化するのに有効な元素であり、チタン合金の引張強度を向上させるのに有効となる。Alの含有量が2%未満では、引張強度の向上が十分でなく、逆に6%を超えると、Ti3 Al等の金属間化合物が析出される結果、靱性が低下する。特に好ましくは、Alの含有量を2〜5%、より好ましくは3〜5%とすることが望ましい。
【0024】
本実施形態のチタン合金は、前記元素を除いた残部が、Ti及び不可避不純物からなる。不可避不純物は、製造工程上の条件等によって混入することが避けられない元素であり、例えばO、C、N、Mg、Si、Clなどスポンジチタンに含まれる元素が挙げられる。これらは微量であるほど望ましく、より具体的にはO+C+Nを重量で0.15〜0.7%とするのが望ましい。C、Nは多すぎると、靭性の低下を招くため夫々0.01%以下が望ましい。また前記残部は、Ti及び不可避不純物だけに限られるものではなく、Fe、Moなどが含まれる場合がある。Feは原子の拡散を加速化し、またMoは結晶粒を微細化するため、いずれもβ相の安定化に寄与することがある。Fe+Moは重量で0.3〜1.0%とするのが望ましい。
【0025】
また、熱間鍛造フェース部材1Bは、上述のようなチタン合金を800〜950℃、より好ましくは800〜900℃、さらに好ましくは830〜880℃の温度で鍛造されて形成されている。発明者らの種々の実験の結果、上述の組成を有するチタン合金にあっては、鍛造温度が800℃未満であると、合金の流動性が悪く、変形抵抗が大となって厚さが比較的小さいフェース部材を精度良く鍛造成形することができない。逆に鍛造温度が950℃を超える場合には、流動性が向上して変形抵抗は小さくしうるが、高温ゆえ合金中のVが融解した相(脱V相)が析出する。このような脱V相の析出は、部分的なVの偏析を招き、他の部分でVの量を減少させる。Vが減少した部分ではβ相の割合が低下するため、α相の増加による強度低下、さらにはα相の粗大化による割れ感受性を高める不具合がある。なお前記温度は、鍛造時の合金材料自体の温度を意味する。
【0026】
熱間鍛造は、例えば板材、丸棒などのビレット状の前記チタン合金からなる材料を前記温度に加熱し、かつハンマーやプレス型で打撃ないし加圧して所望の形状に変形させる加工法である。このような条件、とりわけ丸棒から鍛造加工された熱間鍛造フェース部材1Aは、鋳造はもとより、板材から鍛造したものに比べると緻密な結晶構造が得られ、材料の強度をより一層向上させる。また金属材料に大きな塑性変形を伴わせることができるため、成形の自由度を高める。特に上述の組成を有するチタン合金を前記温度に加熱して熱間鍛造を行った場合には、材料の変形抵抗を小さくでき、後述する延長部などを有する比較的複雑なフェース部材を加工成形しうる。そのため、鋳造時のような欠陥の導入を防ぎ、強度上昇、耐久性の向上の他、精密加工が可能となる点で好ましい。
【0027】
また鍛造は、例えば自由鍛、型鍛造(開放型、密閉型、或いは半密閉型を含む)又は高速鍛造など各種のものを含み、素材に圧縮塑性変形を生じさせるものであれば適宜のものが採用できる。
【0028】
本実施形態の熱間鍛造工程では、粗鍛工程と細鍛工程とを含んでいる。粗鍛工程では、チタン合金からなる丸棒(例えばφ18mm)を、上述の温度まで加熱して下型に載置し、これを上型でプレスすることによって薄板状に延伸加工する。特に限定されるものではないが、プレスは複数回に分けて行われ、プレス圧力は例えば800〜900t程度が好ましい。この段階では、被鍛造材は厚さが各部において不均一であり、正確な寸法は得られていない。細鍛工程では、この粗鍛工程で得られた被鍛造材の厚さが、目標規格値の中に入るよう、必要な回数で再度鍛造が行われる。
【0029】
このような鍛造は、高温かつ真空又はアルゴン等の不活性ガスで置換した雰囲気内で行われる。そして、鍛造後は被鍛造材であるフェース部材を炉内に放置して徐冷する。このような徐冷は、材料が高温で保持されている時間を大にできるため、時効効果が大きく材料の硬さをより一層大とし、強度を高めるのにも役立つ。なお冷却水などを用いて急冷することでも良い。
【0030】
また熱間鍛造フェース部材1Bは、好ましくは500〜650℃、より好ましくは500〜600℃、さらに好ましくは530〜560℃で、例えば4〜20時間程度、より好ましくは8〜16時間、上述の温度に加熱した後、空冷する。これにより、β相に微細なα相や金属間化合物などを析出させ、その強度、硬度を向上させることができる。なお時効処理の温度が500℃よりも小であると、原子の拡散のための駆動力が小さく、時効の効果が十分に得られ難く、強度、弾性率の向上が十分でない。逆に時効処理温度が650℃よりも大になると、時効効果が著しく高くなり、強度や弾性率が角に上昇するほか、結晶粒も粗大化して材料自体が脆くなる傾向があり好ましくない。
【0031】
また、さらに熱間鍛造フェース部材1Bの強度を向上させるためには、フェース面Fとなる側と反対側の面に、ピーニング処理を施すことが好ましい。ピーニング処理は、例えば遠心力、空気又は液体などによって加速された多数の研掃材を被加工面に衝突させるいわゆるショットピーニングによって行われる。これにより、熱間鍛造フェース部材1Bのフェース面と反対側の面には、ピーニング処理が施された加工面Pが形成される。
【0032】
前記研掃材には、スチール又はステンレスといった鉄系材料からなる鋼球又はセラミック球といった硬質かつ角の無いものが好適である。また研掃材は、大きすぎると加工面Pを波打たせ又は過度に凹凸化する傾向があり、逆に小さすぎるとピーニング効果が十分に得られない傾向がある。好ましくは最大径(球の場合には直径)が0.5〜1.0mm程度のものが望ましい。また研掃材を被加工面に衝突させる時間は、特に制限はないが、例えば30〜200秒程度、より好ましくは40〜100秒程度とすることが望ましい。このようなピーニング処理は、熱間鍛造フェース部材1Bの背面側に残留応力を負荷し疲労限度を高めるとともに、加工硬化によって表面強度と弾性率を向上させ、ヘッドとしての耐久性を大巾に向上しうる。また、破壊の基点となる微小クラックの発生サイトなどを消失させることができるため、ヘッド1の耐久性を向上させうる点で特に好ましい。なおフェース面側にピーニング処理を行わない。フェース面側は、後に研摩されることが多く、クラックサイトが消失する場合が多いばかりか、該研摩によりピーニング加工面が消失し易いためである。
【0033】
本実施形態の熱間鍛造フェース部材1Bは、フェース部2の主要部分(本実施形態ではフェース面積の90%以上)を形成する板状で構成される。熱間鍛造フェース部材1Bの厚さは、特に限定はされないが、好ましくは2.0〜3.5mm、さらに好ましくは2.0〜3.0mm、さらに好ましくは2.1〜2.8mmとするのが望ましい。また本実施形態の熱間鍛造フェース部材1Bは、その外周縁部9を薄肉(例えば2.0〜2.2mm)とし、該外周縁部9で囲まれる中央部10に、厚肉部(例えば2.6〜2.8mm)を設けたものが示されている。このような熱間鍛造フェース部材1Bは、ボールと頻繁に衝突する中央部10において十分な耐久性を確保しつつ、外周縁部9を柔軟化して大きく撓ませることが可能となり、大きな反発効果を生じさせることができる。かかる効果をより顕著とするために、とりわけ、中央部10だけに前記加工面Pを設けることも好ましく実施できる。
【0034】
また本実施形態では、このような熱間鍛造フェース部材1Bは、ヘッド本体1Aの前記開口Oに配され、例えば溶接によって接合される。溶接は、特に限定はされないが、TIG溶接、プラズマ溶接、レーザ溶接又はろう付けなど各種の方法が採用できる。なお溶接ビードによって溶接部の剛性が過度に上昇し、フェース部2の反発性を低下させるおそれがあるため、溶接ビード巾が小さいプラズマ溶接又はアーク溶接を用いることが特に好ましい。
【0035】
本実施形態のヘッド1をドライバーとして適用する際には、例えばヘッド体積が250cm3 以上に設定されるのが好ましい。250cm3 未満であると、構えた際の安心感に欠け、かつヘッドの慣性モーメントの増大やスイートエリアの増大を期待できない。好ましくは、ヘッド体積を300〜450cm3 、さらに好ましくは320〜420cm3 とするのが望ましい。なおユーティリティクヘッドやフェアウエイウッドなどを構成するとき、ヘッド体積は、100cm3 以上で構成するのが望ましい。
【0036】
図3には、熱間鍛造フェース部材1Bの他の実施形態を示している。
この実施形態の熱間鍛造フェース部材1Bは、フェース部2の全体又は一部を形成するフェース基部12と、該フェース基部12の縁に設けられかつヘッド後方へとのびる延長部13とを一体に具えるものが示されている。フェース基部12は、本例ではフェース部2の実質的に全域を形成する板状のものが例示されるが、必ずしもフェース部4の全域を形成する必要はなく、例えば図4の如く、フェース部2の主要部(ボールと衝突する機会が多い中央部)だけを形成するものでも良い。
【0037】
前記延長部13は、本実施形態では、フェース面Fの上の周縁Eaからヘッド後方にのびかつクラウン部3の前縁部分を形成するクラウン部側の延長部13aと、フェース面Fの下の周縁Ebからヘッド後方にのびかつソール部4の前縁部分を形成するソール部側の延長部13bとを含むものが示され、断面略コ字状のものが例示される。なおフェース基部12と延長部13とは、溶接等により接合されているのではなく前述の熱間鍛造によって一体に形成されたものである。
【0038】
発明者らの種々の解析の結果、打球時にボールの反発に影響を与えるヘッドの振動は、主にフェース面Fを主体とする振動であり、効果的に運動エネルギーをボールに与えるためには、フェース面Fの周縁付近の剛性を低く設定するのが良い。一方、図2に示した形態では、熱間鍛造フェース部材1Bとヘッド本体1Aとの溶接部は、実質的にフェース面Fの周縁部においてなされる。これは溶接ビード(図示省略)によって溶接部の剛性を高めヘッドの反発性能を低下させる傾向がある。また、溶接時の熱の影響を受けることにより、溶接部は、結晶粒の粗大化や針状化が生じ硬度が大となるなど、前述したチタン合金の優れた機械的性質が損なわれやすい。
【0039】
これに対して、本実施形態の熱間鍛造フェース部材1Bでは、延長部13を設けているため、該熱間鍛造フェース部材1Bとヘッド本体1Aとの溶接部が、フェース面Fの周縁Eからヘッド後方へ隔てることが可能となるため、反発性能の低下を抑制することができる。このような観点より、延長部のヘッド後方への長さLは、好ましくは5mm以上、さらに好ましくは8mm以上、特に好ましくは15mm以上とするのが望ましい。逆にこの距離Lが大きすぎると、熱間鍛造によって、このようなフェース部材1Bを成形するのが困難となり、量産性を低下させるおそれがある。かかる観点より、距離Lは、前記いずれかの下限値との組み合わせにおいて30mm以下、特に好ましくは20mm以下とするのが望ましい。なお延長部13は、トウ、ヒールなどに設けられる場合もある。
【0040】
図5には、さらに本発明の他の実施形態のヘッドの分解斜視図を示している。この実施形態では、熱間鍛造フェース部材1Bは図2に示したものと同様であるが、ヘッド本体1Aが、クラウン板15と、サイド壁付きソール板16と、ホーゼル部材17とで分割構成されており、これらを溶接に固着することによって形成されたものが示されている。なお本発明は、ウッド型のみならず、アイアン型やパター型、ユーティリティ型のヘッドにも適用しうるのは言うまでもない。
【0041】
【実施例】
表1の仕様に基づいてウッド型のゴルフクラブヘッド(ドライバー:ヘッド体積330cm3 、リアルロフト角11゜、ライ角56゜)を試作した。チタン合金の組成は、重量でV:15%、Cr:6%、Al:4%、残部がTi及び不可避不純物等(N、C、O、Feで総量0.7%)を有し、直径18mmの丸棒から熱間鍛造を行った。そして、この熱間鍛造フェース部材をTi−6Al−4Vで鋳造成形したヘッド本体にTIG溶接により固着してヘッドを製造した。そして、熱間鍛造フェース部材の鍛造性、ヘッドの耐久性及び反発性能をテストして性能を比較した。なおピーニング処理は、φ0.5mmのスチールボールを空気圧5〜6kgで1分間ショットピーニングを行った。
テスト方法は、次の通りである。
【0042】
<鍛造性>
鍛造成形された熱間鍛造フェース部材を各々の例で30個作成し、そのフェース部材の厚さに関して、目標規格値通りに成型できているか否かをテストした。具体的には熱間鍛造フェース部材の厚さを4カ所で測定するとともに、各4ケ所の測定値と目標規格値との差(少ないほど良好)を算出して、その算出値を平均して各フェース部材毎に以下の基準で評価した。なお30個のフェース部材の中に異なる評価となるものが含まれていた場合は、「例えば「○〜△」のように記載した。
◎:差が±0.15mm以内
○:差が±0.3mm以内
△:差が±0.5mm以内
×:材料の流動性が低く成形不能
【0043】
<耐久性>
各供試ヘッドを各例毎に3個用意し、それにFRP製の同一のシャフト(住友ゴム工業社製のツアーブラックV−21 Light 、フレックスX)を装着し45インチのウッド型ゴルフクラブを試作するとともに、該クラブをスイングロボットに取り付け、ヘッドスピードが51m/sとなるように調節して上記ゴルフボールを各クラブ毎に3000球づつ打撃した。そして打撃完了後、フェース面の最大凹み量(少ないほど良好)を測定し、以下の基準により測定した。同じ例の中で異なる評価結果となるものが含まれていた場合は、「◎〜○」や「○〜△」のように記載した。
◎:割れが無く凹み量が0.1mm以内
○:割れが無く凹み量が0.3mm以内
△:打撃テストは完了し得たが割れが生じていた
×:打撃テスト中のフェースに割れが生じテスト不能
【0044】
<反発性能>
ヘッドの反発性能は、U.S.G.A.の Procedure for Measureing the Velocity Ratio of a Club Head for Conformance to Rule 4−1e, Revision 2 (February 8, 1999) に基づき反発係数を測定し、以下の基準により評価した。
◎:反発係数が0.860よりも大
○:反発係数が0.850よりも大かつ0.860以下
△:反発係数が0.840よりも大かつ0.850以下
×:反発係数が0.840以下
テストの結果などを表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
テストの結果、実施例のものは、比較例と比べると、鍛造性、耐久性、反発性能の全てにおいて優れており、本発明の優位性が確認できる。また、図2、図4、図5においても同様に優れた結果が得られたことを確認している。
【0048】
【発明の効果】
上述したように、請求項1又は2に記載の発明では、フェース部に、高強度のチタン合金を所定の条件で熱間鍛造した熱間鍛造フェース部材を用いることにより、生産性良く高反発のゴルフクラブヘッドを提供しうる。とくに、熱間鍛造フェース部材は、鍛造時の温度が限定されたことにより、強度などを損ねることなく生産性良く成形しうる。
【0049】
また請求項3記載の発明のように、熱間鍛造フェース部材が、500〜650℃で時効処理が施されているときには、さらに強度を高めることができ、フェース部の薄肉化などをさらに促進できる。
【0050】
また請求項4記載の発明のように、熱間鍛造フェース部材は、フェース面と反対側の面に、ピーニング処理が施された加工面を含むときには、前記背面側に残留応力を負荷し疲労限度を高めるとともに、加工硬化によって表面強度と弾性率を向上させる。これは、フェース部の薄肉化をさらに促進できる。また、破壊の基点となる微小クラックの発生サイトなどを消失させることができるため、ヘッドの耐久性を向上させうる点で特に好ましい。
【0051】
また請求項6記載の発明のように、熱間鍛造フェース部材は、前記フェース部の全体又は一部を形成するフェース基部と、該フェース基部の縁に設けられかつヘッド後方へとのびる延長部とを一体に具えるときには、延長部とヘッド本体との接合部を、フェース面の周縁からヘッド後方へ隔てることが可能となる。これは、前記接合部を溶接するとき、フェース面の周縁が溶接ビードによって高剛性化されてしまいヘッドの反発性能の低下が生じるのを効果的に防止するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】その分解斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示すヘッドの分解斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示すヘッドの分解斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示すヘッドの分解斜視図である。
【符号の説明】
1 ゴルフクラブヘッド
1A ヘッド本体
1B 熱間鍛造フェース部材
2 フェース部
3 クラウン部
4 ソール部
5 サイド部
12 フェース基部
13 延長部
P ピーニング処理を行った加工面
F フェース面
Claims (6)
- ボールを打球するフェース部の少なくとも一部に、重量%でCr:4〜10%、V:10〜24%、Al:2〜6%を含みかつ残部にTi及び不可避不純物を含むチタン合金を800〜950℃で鍛造した熱間鍛造フェース部材を用いたことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
- 前記チタン合金は、重量%でCr:4〜10%、V:10〜24%、Al:2〜6%を含みかつ残部がTi及び不可避不純物からなることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記熱間鍛造フェース部材は、500〜650℃で時効処理が施されてなる請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記熱間鍛造フェース部材は、フェース面と反対側の面に、ピーニング処理が施された加工面を含むことを特徴とする請求項1乃至3に記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記熱間鍛造フェース部材は、板状をなすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記熱間鍛造フェース部材は、前記フェース部の全体又は一部を形成するフェース基部と、該フェース基部の縁に設けられかつヘッド後方へとのびる延長部とを一体に具えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
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