JP2004162180A - 電解銅箔及びその電解銅箔を用いた銅張積層板 - Google Patents
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Abstract
【課題】電解銅箔を張り付けた後の銅張積層板の反り、捻れの問題、寸法安定性の問題を解決するための電解銅箔及び品質を保証するための検査方法を提供する。
【解決手段】電解銅箔を用いた銅張積層板を製造する際の熱履歴により、当該電解銅箔の結晶組織が再結晶化する低温アニール性を有し、170℃の熱間雰囲気中で18%以上の高い伸び率を示す電解銅箔において、170℃の熱間雰囲気中で時効処理した場合の引張り強さが経時的に減少する過程で、最大引張り強さの最大減少速度が5〜10分の時効時間の範囲内にあり、縦軸に引張り強さ、横軸に時効時間を採って描いた[引張り強さ]−[時効時間]曲線で、170℃の熱間雰囲気中での時効時間5分と10分とにおける引張り強さ値から算出される引張り強さの変化量が3kg/mm2以上となる物性を有する電解銅箔を用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】電解銅箔を用いた銅張積層板を製造する際の熱履歴により、当該電解銅箔の結晶組織が再結晶化する低温アニール性を有し、170℃の熱間雰囲気中で18%以上の高い伸び率を示す電解銅箔において、170℃の熱間雰囲気中で時効処理した場合の引張り強さが経時的に減少する過程で、最大引張り強さの最大減少速度が5〜10分の時効時間の範囲内にあり、縦軸に引張り強さ、横軸に時効時間を採って描いた[引張り強さ]−[時効時間]曲線で、170℃の熱間雰囲気中での時効時間5分と10分とにおける引張り強さ値から算出される引張り強さの変化量が3kg/mm2以上となる物性を有する電解銅箔を用いる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、電解銅箔及びその電解銅箔を用いた銅張積層板に関する。
従来より、銅箔は、広く電気、電子産業の分野で用いられるプリント配線板製造の基礎材料として用いられてきた。一般に、電解銅箔はガラス−エポキシ基材、フェノール基材、ポリイミド等の高分子絶縁基材と熱間プレス成形にて張り合わされ銅張積層板とし、プリント配線板製造に用いられる。
従来より、この熱間成形プレスは、銅箔、Bステージに硬化させたプリプレグ(基材)、その他スペーサーとなる鏡板とを多段に積層し、高温雰囲気下で高圧をかけ、銅箔とプリプレグとを熱圧着し(以下、この工程を「バッチプレス成形」と称する。)、銅張積層板が得られる。
しかしながら、近年、我国の電子、電気産業が国際競争力を維持し続けるためには、商品の製造コストの低廉化は不可欠であり、コスト削減の要求は厳しく、電子機器等の主要部品を構成するプリント配線板の価格削減要求も一層の厳しさを増してきている。
これらの要求に応えるためプリント配線板の中間製品である銅張積層板業界、電解銅箔業界においても、厳しいコストの削減努力がなされてきた。そして、このコスト削減努力は、銅張積層板のFR−4材からCEM−3材への変更、生産性を飛躍的に向上させるための連続ラミネート法の採用等が行われてきた。
ところが、このような材料変更及び製造変更は、従来にない製品品質に与える影響が認められ、基礎材料である電解銅箔の品質にも、従来にない品質が求められるようになってきた。特に、電解銅箔を張り付けた後の、銅張積層板の反り、捻れの問題、寸法安定性の問題等である。
これらの問題に対処するため、特開平2−258337号に見られるように180℃雰囲気中で10%を越える高い伸び率を示す高温伸び特性に優れた電解銅箔(以下、「S−HTE箔」と称する。)の使用がなされてきた。また、特開平5−24152号に見られるように180℃雰囲気中の引張り強さに着目し上記問題の解決を図ろうとする考え方が提唱されてきた。ところが、現実には上記問題を完全に解決するには到っていなかった。
そこで、本発明に係る発明者等は鋭意研究の結果、180℃前後の雰囲気中での高温伸び特性に優れた電解銅箔は、一般にその温度帯において再結晶化するものであり、その再結晶化の進行度合いと、再結晶の進行過程にある熱間雰囲気中での伸び率及び引張り強さとが必ずしも相関のあるものではないことを見いだした。
そして、本発明に係る発明者等は研究の結果として、電解銅箔の量産過程において、その再結晶化の度合いをコントロールする要因を突き止めることには成功したが、電気化学的、量産的見地より、この要因を制御しようとすることにより生ずる製造コスト増は極めて大きく、現段階において実行することは困難との判断を行った。
また、一方で、当該要因の除去を目的に、製造工程を改変する等の対策を行ったとしても、銅張積層板の反り、捻れの、寸法安定性の改善に寄与しないS−HTE箔は、電気化学的手法の持つ制御の困難さより、一定の割合で作り出されることが予想される。即ち、電解銅箔の製造過程において不可避的に生ずる問題であるともいえるのである。従って、本件発明者等は、最も、反り、捻れの生じやすいCEM−3タイプの銅張積層板に用いることで、反り、捻れ及び寸法安定性の改善を図ることの出来る銅箔がいかなる範囲のものであるかを明らかにし、本件発明に到ったのである。
請求項1には、電解銅箔を用いた銅張積層板を製造する際の熱履歴により、当該電解銅箔の結晶組織が再結晶化する低温アニール性を有し、180℃の熱間雰囲気中で18%以上の高い伸び率を示す電解銅箔において、170℃の熱間雰囲気中で時効処理した場合の引張り強さが経時的に減少する過程において、最大引張り強さの最大減少速度が5〜10分の時効時間の範囲内にあり、縦軸に引張り強さ、横軸に時効時間を採って描いたクニックを有する[引張り強さ]−[時効時間]曲線の、クニック部における引張り強さの変化量が3kg/mm2以上となる物性を有する電解銅箔としている。
銅張積層板を製造する際の熱履歴により、結晶組織が再結晶化する低温アニール性を有する銅箔とは、IPC(The Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits)規格によれば、グレード3に分類されるHTE箔のことである。
そこで、以下の説明の理解をより容易にするために、電解銅箔の種類について、
説明することとする。IPC規格によれば、電解銅箔は、その伸び率、引張り強さ等の基本物性的観点より、グレード1〜グレード3のいずれかに分類される。グレード1を通常銅箔、グレード2をハイダクタイル箔として分類しているが、今日においてはグレード1及び2に属する電解銅箔を一般に通常電解銅箔と称し、グレード3に属する電解銅箔を一般にHTE箔と称する。このHTE箔は、180℃雰囲気中で3%以上の熱間伸び率を有する銅箔の総称として用いられるもので、グレード1及び2に属する電解銅箔では熱間伸び率が2%に満たない点で大きな差異を有するものである。
説明することとする。IPC規格によれば、電解銅箔は、その伸び率、引張り強さ等の基本物性的観点より、グレード1〜グレード3のいずれかに分類される。グレード1を通常銅箔、グレード2をハイダクタイル箔として分類しているが、今日においてはグレード1及び2に属する電解銅箔を一般に通常電解銅箔と称し、グレード3に属する電解銅箔を一般にHTE箔と称する。このHTE箔は、180℃雰囲気中で3%以上の熱間伸び率を有する銅箔の総称として用いられるもので、グレード1及び2に属する電解銅箔では熱間伸び率が2%に満たない点で大きな差異を有するものである。
更に、今日のプリント配線板関連業界においては、グレード3に分類される銅箔であっても、熱間伸びが3%〜18%程度の電解銅箔(以下、単に「HTE箔」と称する。)と、熱間伸びが18〜50%を越える電解銅箔(以上及び以下において、この銅箔を「S−HTE箔」と称する。)とを明確に区別して、用途に応じて使い分けを行っているのが現実である。
ここで言うHTE箔とS−HTE箔との根本的な違いは、双方とも99.99%前後の純度を持つ電解析出銅にて構成されているものであるが、その析出結晶の持つ性格が異なるのである。銅張積層板の製造プロセスにおいては、銅箔を基材と張り付ける熱間プレス成型時に、電解銅箔に対して少なくとも170〜180℃×60分程度の加熱がなされる。この加熱後の結晶組織を光学顕微鏡で観察すると、HTE箔に再結晶化は見られないが、S−HTE箔には再結晶化が起きていることが認められる。
これは銅箔の物性をコントロールするため、電解条件である溶液組成、溶液濃度、溶液の濾過処理方法、溶液温度、添加剤、電流密度等の条件を変更して製造が行われ、その析出結晶の結晶学的性質が異なるためと考えられる。特に、再結晶化が容易に起こりやすい銅箔であるほど、他の銅箔に比べ、その結晶内部には高密度に転移が内蔵され、しかも、その転移は強固に固着しておらず、僅かの熱量で素早く転移の再配列がおこり、より再結晶化が起こりやすくなっているものと考えられる。
電解銅箔の再結晶の進行度合いは、その時効温度及び時効時間によって、全く異なってくる。この再結晶の進行度合いを確認するには、所定時間時効処理した電解銅箔の断面研磨を行い、塩化鉄等でエッチングすることで結晶組織として観察する以外にない。この断面組織観察は、電解銅箔が100μm厚以下の薄いものであるため、研磨方法及びエッチング技術に相当の熟練を要し、誰もが容易に出来るものではない。図1には、S−HTE箔の所定の時効(加熱)前後の結晶組織の変化を示したものである。
この図1に示したS−HTE箔の結晶組織は、この銅箔を用いて銅張積層板を作成した場合に、銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性等の改善に寄与する事の出来るものを例示したものである。これに対し、図2には、銅張積層板を作成した場合に、銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性等が悪いS−HTE箔の結晶組織の代表的なものを示している。そして、図1及び図2が170℃で時効処理した断面結晶組織を示しているが、図3においては180℃で時効処理した場合の結晶組織を示している。一般に再結晶化する電解銅箔は、180℃以上の温度で非常に早く再結晶化するものであり、図3の結晶組織もそのことを裏付けるように、図1及び図2に比べ再結晶化が進んでいる。
近年の銅張積層板の製造技術は、コストダウンの要請等から多岐に渡るものとなっている。従来の、バッチプレス方式であれば、熱間プレス加工時に十分な加圧と共に、十分な再結晶化に必要な180℃前後の熱量が与えられるため、仕上がった銅張積層板にも、反り、捻れ、寸法安定性等の問題が生じにくい。しかも、特開平5−243698号にあるようにプレス加工の終了後に、再加熱することで銅張積層板の寸法安定性を改善する事も可能であるが、工程の増加をもたらすことになり好ましくはない。
更に、銅張積層板の製造技術として、連続ラミネート法と言われる銅張積層板製造方法であって、基材と電解銅箔とをロール圧で張合わせ、これが硬化炉内を走行しつつ基材樹脂の硬化を行い、硬化の終了したものを所望の大きさに切断し、銅張積層板を得るものがある。この製造方法では、少量の熱量で素早く硬化する樹脂が基材に用いられるため、硬化炉内で銅箔に与えられる熱量も、従来のプレス法に比べ少ないものとなってしまう。その結果、電解銅箔の内部では十分な再結晶化が起こらないままの状態が維持されてしまう場合が生ずるのである。
以上のことから考えるに、銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性等の改善に寄与する事の出来るS−HTE銅箔とは、低い温度でも再結晶化が素早く進行するものでなければならないことが分かる。そして、従来より、銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性等の問題を解決するための手がかりとして、180℃の熱間雰囲気中における伸び率、引張り強度に着目されてきたが、問題を完全に解決できるものとなっていない原因も、再結晶の進行度合いを考慮していないがためであったと考えられる。現に、本件発明者等が、確認した限りにおいて、電解銅箔の熱間雰囲気中における伸び率、引張り強度と、再結晶化の進行度合いとは必ずしも相関性を持って一致しない。特に、180℃における伸び率と引張り強度とは、その測定時に再結晶化が同時進行するため、相関性が明瞭に現れない傾向にある。
以上のことから本件発明者等は、全てのS−HTE箔が容易に再結晶する180℃近傍の温度を用いて、銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性等の問題解決を図ることの出来る電解銅箔の物性を測定し、選別することは困難との判断を行った。図1には、CEM−3銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性の問題解決の可能なS−HTE箔の170℃での時効後の断面組織写真を示した。図2には、CEM−3銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性の問題解決の出来なかったS−HTE箔の170℃での時効後の断面組織写真を示した。図1に示した断面結晶組織から分かるのは、縦方向に成長した電解析出結晶組織の中に粒状の再結晶組織が成長し始めているのが分かる。このときの再結晶粒の分布は、図2に見られる再結晶粒分布に比べ比較的均一で、しかも再結晶が速く進行していることが分かる。更に、再結晶粒のグレインサイズを、図2に見られる再結晶粒と比較すると、図2で確認できる再結晶粒よりも図1の再結晶粒が緻密で細かいことが分かる。
図3には、180℃での時効処理したS−HTE箔の断面組織写真を示している。170℃での時効に比べ、10分の時効で既に完全な再結晶が起こっていることが分かる。ここで用いたS−HTE箔は、図2のCEM−3銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性の問題解決の出来なかったものを用いている。図示していないが図1に用いたS−HTE箔を用いても同様の再結晶組織が観察され、区別することが困難である。このことから、180℃という時効温度は、全てのS−HTE箔が容易に再結晶する温度であり、ロット毎の再結晶化の速度、形成される再結晶粒のサイズ等の違いを捉えることが困難な時効温度であると言える。
図1〜図3を対比することで分かるように、本件発明者等は、180℃での時効に比べ、170℃で時効処理した後の再結晶化の度合いを対比することが、S−HTE箔の再結晶化のレベルの判断に非常に有用であると考える。更に、銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性等の問題解決の可能な銅箔と、そうでない銅箔との違いとして、170℃の温度で所定時間時効処理した後に測定した引張り強さを測定して得られる[引張り強さ]−[時効時間]曲線の形状に大きな違いが生じることが判明してきた。
図4には、再結晶化速度の異なる2種のS−HTE箔試料を用いて、170℃の温度で時効処理した後に測定した[引張り強さ]−[時効時間]曲線の形状と、180℃の温度で時効処理した後に測定した場合の当該曲線を図4(a)及び図4(b)として示している。引張り強さの測定自体は、所定時間の時効処理後、室温においてIPC−TM−650に基づき最大引張り強さを測定する方法で行っている。従って、図4及び以下に述べる図5の縦軸の引張り強さは、測定時の最大引張り強さを意味するものである。ここから分かるように、いずれの曲線も、時効時間5分〜10分の間に曲線の傾きが急激に変化し、いわゆるクニック形状を示している。しかしながら、180℃での曲線に比べ、170℃での各曲線の持つ差異が非常に明瞭になっているのが分かる。
この図4(a)及び図4(b)共に、図中の曲線1は、S−HTE銅箔であっても、再結晶速度が遅く、銅張積層板の反り、捻れ等の解決に寄与することのできない銅箔であって、図中の曲線2は、本件発明に係るS−HTE銅箔である。従って、図4(a)と図4(b)とから分かるように、170℃の温度での時効処理を行った場合の方が、ロット間の銅箔物性の違いが判別しやすいことが分かる。
更に、本件発明者等が、研究を重ねた結果、170℃の時効処理を持って得られた[引張り強さ]−[時効時間]曲線の持つクニック部の引張り強さの変化量が、3kg/mm2以上となる場合に、銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性等の問題解決を確実に解決することが可能であることが判明してきた。ここで言う[引張り強さ]−[時効時間]曲線の持つクニック部とは、いかなる部分を指すか図5を用いて説明する。
図5にA点、B点、C点の3点を記載している。ここでクニック部と称しているのは、A点(時効時間5分)とB点(時効時間10分)との間の領域であって、[引張り強さ]−[時効時間]曲線(曲線I)の全体から判断して、その曲線を微分して得られる傾きが急激に変化している領域に相当する部分である。従って、「クニック部の引張り強さの変化量」とは、A点(時効時間5分)の引張り強さ(図5中のD点)から、B点(時効時間10分)の引張り強さ(図5中のE点)を差し引いたΔp/sのことである。
最大引張り強さの最大減少速度が現れる時効時間を判断するためには、以下の方法を用いて行った。[引張り強さ]−[時効時間]曲線(曲線I)のクニック部であるA点(時効時間5分)とB点(時効時間10分)との間の曲線を微分してその傾きを求め、その傾きを曲線IIとして図5中に表示した正規分布(ガウス分布)に当てはめ、その頂点のある位置に対応するC点を割り出す。そして、このC点の位置が5〜10分の時効時間の範囲内にあるか否かで判断したのである。例えば、170℃で測定した図4(a)中に示した曲線1はC点の位置が5〜10分の時効時間の範囲内にあると言う条件をはずれ、請求項1に記載した条件を満足しないものとなる。
以上のように銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性等の問題解決に確実に寄与することの出来るS−HTE銅箔の品質を定義することが可能と判断できる。従って、本件発明者等は、市場に供給するためのS−HTE銅箔の品質保証を確実ならしめるためには、品質検査方法の確立が必要不可欠となる。
そこで、本件発明者らは、本発明に係る電解銅箔を選別すべく、同一ロットの当該電解銅箔を1cm×10cmの短冊状の2つの試料とし、この2つの試料の一方に170℃×5分の時効処理を施し、他方の試料に170℃×10分間の時効処理を施した後に、それぞれの試料を室温状態に戻した後、各試料を引張り試験器に取り付けロッド速度50mm/min.で引張り、このときの各々の試料の最大引張り強さを求め、その差が3kg/mm2以上となることを確認する電解銅箔の品質検査方法を採用した。
従来の銅箔の熱間検査方法の殆どは、米国の保険会社の共通規格(UL796安全規格)に定める特殊なプリント配線板に対する耐熱試験等は別として、銅箔自体の物性の評価には、180℃の温度雰囲気を用いた検査方法が一般化している。ところが、上述したように180℃雰囲気におけるS−HTE銅箔の評価物性値は、再結晶化のレベルを反映させた指標として用いることが出来ない。そこで、本件発明者等は、170℃での時効処理したS−HTE銅箔の熱後物性としての引張り強さを指標にすべきとの判断を行った。
本件発明者等は、この検査方法を確立するに当たり、300ロットを越えるS−HTE銅箔を検査母体とした。本件発明者等は、これらの銅箔を用いたCEM−3銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性を測定し、請求項1に記載の電解銅箔が本件発明の目的を達成することが可能であることを確認すると共に、電解銅箔の検査方法として適正であることを確認したのである。
即ち、請求項1の記載から分かるように、銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性を改善することの出来る銅箔には、(1)最大引張り強さの最大減少速度が5〜10分の時効時間の範囲内にあること。(2)[引張り強さ]−[時効時間]曲線の、クニック部における引張り強さの変化量が3kg/mm2以上であること。この2点の条件を満たすものでなければならない。
ところが、上述のように300ロット以上の銅箔を検査した結果、銅張積層板の反り、捻れ、寸法安定性を改善することの出来る銅箔の殆どは、5分から10分の時効処理の間に、引張り強さが3kg/mm2以上変化しており、研究を通じて得られる実験則からして、時効時間5分と10分の熱処理後の引張り強さを測定し、その差異が3kg/mm2以上あれば、問題を解決可能と考えたのである。
そして、請求項2には、請求項1に記載の電解銅箔を用いた銅張積層板としている。請求項1に記載の電解銅箔を用いることにより、銅張積層板、特にCEM−3基板の反り、捻れ、寸法安定性を改善することが可能となり、エッチング工程におけるレジストレーション精度、エッチング精度を向上させることが可能となり、形成する銅箔回路の微細化を容易にすることが可能となるのである。
本発明に係るS−HTE電解銅箔を用いて製造した銅張積層板をプリント配線板に用いることで、反り、捻れ、寸法安定性を改善することが可能となる。反り及び捻れが改善できると言うことは、銅箔表面へのレジストの密着性を均一にすることができ、しかも均一な露光が可能となることから、より微細なファイン回路の形成が容易となる。また、寸法安定性が向上することから、多層プリント配線板の層間の位置合わせが容易になり、特にマスラミネーション工法及びビルトアップ工法で有利になる。
以下、S−HTE銅箔1の断面構造を示す図6及び製造工程を示す図7を用いて、本件発明に係る電解銅箔の製造方法と、その製造方法で得られた電解銅箔を用いたCEM−3銅張積層板を製造し、その反り、捻れ、寸法安定性の評価結果を示すことにより、より詳細に本件発明に関して説明する。なお、図6中で防錆層等記載困難なものは、その記載を省略している。
一般に電解銅箔は、電解工程Aと表面処理工程Bとを経て製造されるものであり、本件発明に係るS−HTE銅箔1も同様の手順で製造されるものである。
まず、電解工程Aについて説明する。電解工程Aは、プリント配線板に加工された際に電流の導体となる電解銅箔1のバルク銅層2の製造を行う段階である。電解装置3は、ドラム形状をした回転陰極4と、その回転陰極4の形状に沿って対向配置する鉛系陽極5との間に、硫酸銅溶液を流し、電解反応を利用して銅を回転陰極4のドラム表面に析出させ、この析出した銅は箔状態となり、回転陰極4から連続して引き剥がして巻き取るものである。この電解工程Aで形成されるバルク銅層2の性状を制御することにより電界銅箔のグレードが決定付けられるのである。
電解工程Aで用いる電解液には、硫酸銅(CuSO4・5H2O)280〜360g/l、硫酸100〜150g/lの酸性の硫酸銅溶液を用い、溶液温度約50℃、電流密度50〜100A/dm2 の条件で連続電解してS−HTE銅箔が得られる。ここでは、硫酸銅(CuSO4・5H2O)360g/l、硫酸150g/l、溶液温度49℃、電流密度100A/dm2 の条件を用い、公称厚さ18μmの銅箔製造に用いるバルク銅層2を製造した。
そして、S−HTE銅箔1の製造を行うために用いる電解液に特徴的なことは、電解前の溶液を活性炭処理し、活性炭処理後20分以内に電解に供する点にある。このときの活性炭処理条件は、電解液1リットルに対し約0.5〜5.0gの活性炭が接触するようにし、電解液と活性炭との接触時間は約20秒前後として行うものである。
このようにして、電解工程Aで得られるのが表面処理前のS−HTE銅箔のバルク銅層2である。以下、説明を容易にするため、このバルク銅層2のみの銅箔を「析離箔6」と称することとする。この析離箔6の段階では、防錆処理等の表面処理は何ら行われていない状況であり、電析直後の銅は活性化した状態にあり空気中の酸素により、非常に酸化しやすい状態にある。
この析離箔6の回転陰極4と接触した状態から引き剥がされた面は、鏡面仕上げされた回転陰極表面の形状が転写したものとなり、光沢を持ち滑らかな面であるため光沢面7と称する。これに対し、析出サイドであった方の析離箔の表面形状は、析出する銅の結晶成長速度が結晶面ごとに異なるため、山形の凹凸形状を示すものとなり、これを粗面8と称する。この粗面8が銅張積層板を製造する際の絶縁材料との張り合わせ面となるのである。
次に、この析離箔6は、表面処理工程Bにおいて、粗面8への粗化処理と防錆処理とが施される。粗面8への粗化処理とは、硫酸銅溶液中で、いわゆるヤケメッキ条件の電流を流し、粗面8の山形の凹凸形状の上に微細銅粒9を析出付着させ、直ちに平滑メッキ条件の電流範囲で被せメッキする事で、微細銅粒9の脱落を防止するものである。従って、以下では、微細銅粒9を析出付着させた粗面8のことを「粗化処理面10」と称して用いている。
続いて、表面処理工程Bでは、粗化処理の終了した析離箔6の表裏に、亜鉛、亜鉛合金、クロム系のメッキ等により防錆処理が行われ、乾燥して、巻き取ることで製品としてのS−HTE銅箔を製造したのである。以下、表面処理工程の詳細について説明する。
表面処理工程Bでは、図6に示した巻き出された析離箔6が、表面処理機11内を蛇行走行するタイプのものを用いている。以下、表面処理機11を構成する各種の槽を連続配置した順序に従って、製造条件等の説明を行う。
巻き出された析離箔6は、最初に酸洗処理槽12に入る。酸洗処理槽12の内部には濃度150g/l、液温30℃の希硫酸溶液が満たされており、浸漬時間30秒として、析離箔6に付いた油脂成分を除去すると共に、余分な表面酸化被膜の除去を行った。
酸洗処理槽12を出た析離箔6は、析離箔6の表面に微細銅粒9を形成するため、粗化処理部13に入ることになる。粗化処理部13内で行う処理は、析離箔6の片面に微細銅粒9を析出付着させる槽13Aと、この微細銅粒9の脱落を防止するための被せメッキ槽13Bとで構成されるものとした。
析離箔6の上に微細銅粒9を析出付着させる槽13Aでは、硫酸銅溶液であって、濃度が100g/l硫酸、18g/l銅、液温25℃、電流密度10A/dm2のヤケメッキ条件で10秒間電解し、微細銅粒9を析出付着させた。このとき、平板のアノード電極14を、微細銅粒9を形成する析離箔6の面に対し、図7中に示すように平行配置した。
微細銅粒9の脱落を防止するための被せメッキ槽13Bでは、硫酸銅溶液であって、濃度150g/l硫酸、65g/l銅、液温45℃、電流密度15A/dm2の平滑メッキ条件で20秒間電解した。このとき、平板のアノード電極14は、微細銅粒9を付着形成した析離箔6の面に対し、図6中に示すように平行配置した。
防錆処理槽15では、防錆元素として亜鉛を用いて防錆処理を行った。ここでは、アノード電極として亜鉛板を用いた溶解性アノード16として、防錆処理槽15内の亜鉛の濃度バランスを維持するものとした。ここでの電解条件は、硫酸亜鉛浴を用い、70g/l硫酸、20g/l亜鉛の濃度バランスを維持するものとし、液温40℃、電解時間10秒、電流密度15A/dm2とした。
防錆処理が終了すると、最終的に析離箔6は、乾燥処理部17で電熱器により雰囲気温度110℃に加熱された炉内を40秒かけて通過し、18μm厚の完成したS−HTE銅箔1としてロール状に巻き取った。以上の工程での析離箔6の表面処理機11内の走行速度は、2.0m/minとし、各槽毎の工程間には、約15秒間の水洗可能な水洗槽18を設けて洗浄し、前の処理槽で使用した溶液の持ち込みを防止している。
このS−HTE銅箔1を用い、基材となる150μm厚のCEM−3基材を用いて30cm角の両面銅張積層板を製造し、反り、捻れ、寸法安定性の評価を行った。このときの評価方法は、以下の通りである。
反り及び捻れの評価は、当該両面銅張積層板を極めて平滑な定盤上に載置して静置法で測定した。反りは、JIS C−6481,5.22に準拠し、当該両面銅張積層板の凸面を上にして定盤の上に置き定盤表面からの最大隔たりを測定した。定盤に載置した状態の銅張積層板の幅をLとし、定盤表面からの最大隔たりをHとすると、反り率(%)=(H/L)× 100として換算した。
捻れは、IPC−TM−650,2.4.22に規定する方法で行った。即ち、当該両面銅張積層板を極めて平滑な定盤上に、凸面を上にして定盤の上に置き当該両面銅張積層板の4隅のうち3点が定盤に接する状態とし、残りの1つの隅部の定盤表面からの最大隔たりを測定した。定盤に載置した状態の銅張積層板の対角長さLとし、定盤表面からの最大隔たりをDとすると、捻れ率(%)=(D/L)× 100として換算した。
そして、寸法安定性は、JIS C−6481,5.16に準拠し行った。30cm角の両面銅張積層板の4隅に、それぞれ基準穴加工を施し、その基準穴同士の評点間隔250mmとなるようにし、20℃、60〜70%RH中に24時間放置後、基準穴間隔を測定し、これをl0とした。その後、両面の銅箔層をエッチング除去し、80℃で15分間乾燥し、20℃、60〜70%RH中に1時間放置後、基準穴間隔を測定し、これをl1としてエッチング後の寸法変化率を求める基準として用いた。また、銅箔層のエッチング後、170℃で0.5時間加熱し、20℃、60〜70%RH中に1時間放置後、基準穴間隔を測定し、これをl2として加熱後の寸法変化率を求める基準として用いた。換算式は、[エッチング後の寸法変化率(%)]=(10−11)/10×100、[加熱後の寸法変化率(%)]=(10−10)/10×100を用いた。
比較例:この比較例においては、実施形態において電解工程Aで用いた電解液を、活性炭処理することなく18μm厚の通常電解銅箔を製造し、実施形態と同様の評価を行った。従って、電解工程Aにおける活性炭処理がないだけで、その他は前述した実施形態と同様であるため、重複した記載は省略する。以下の表2に、実施形態と同様の評価結果を記載した。
表1と表2とを対比することで分かるように、本件発明に係る電解銅箔を用いた表1に示す値が、表2に示す値に比べ小さくなっている。しかも、本件発明に係るS−HTE電解銅箔を用いて製造した銅張積層板の表1の値から判断するに、それぞれが極めて優れた値を示している。これは、本件発明に係るS−HTE電解銅箔を用いることで、面倒な工程増等を行うことなく、容易に銅張積層板の反り率、捻れ率、寸法安定性を向上させることが可能なことを示している。
1 S−HTE銅箔 2 バルク銅層
3 電解装置 4 回転陰極
5 鉛系陽極 6 析離箔
7 光沢面 8 粗面
9 微細銅粒 10 粗化処理面
11 表面処理機 12 酸洗処理槽
13 粗化処理部 14 アノード電極
15 防錆処理槽 16 溶解性アノード電極
17 乾燥処理部 18 水洗槽
3 電解装置 4 回転陰極
5 鉛系陽極 6 析離箔
7 光沢面 8 粗面
9 微細銅粒 10 粗化処理面
11 表面処理機 12 酸洗処理槽
13 粗化処理部 14 アノード電極
15 防錆処理槽 16 溶解性アノード電極
17 乾燥処理部 18 水洗槽
Claims (2)
- 電解銅箔を用いた銅張積層板を製造する際の熱履歴により、当該電解銅箔の結晶組織が再結晶化する低温アニール性を有し、180℃の熱間雰囲気中で18%以上の高い伸び率を示す電解銅箔において、
170℃の熱間雰囲気中で時効処理した場合の引張り強さが経時的に減少する過程で、最大引張り強さの最大減少速度が5〜10分の時効時間の範囲内にあり、
縦軸に引張り強さ、横軸に時効時間を採って描いた[引張り強さ]−[時効時間]曲線で、170℃の熱間雰囲気中での時効時間5分と10分とにおける引張り強さ値から算出される引張り強さの変化量が3kg/mm2以上となる物性を有する電解銅箔。 - 請求項1に記載の電解銅箔を用いた銅張積層板。
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JP2003391529A JP2004162180A (ja) | 2003-11-21 | 2003-11-21 | 電解銅箔及びその電解銅箔を用いた銅張積層板 |
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