JP2004065159A - 核酸増幅反応容器及びそれを用いた核酸の増幅方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラスや半導体により構成された反応容器を用いた場合であっても、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができる反応容器及びそれを用いた核酸の増幅方法を提供する。
【解決手段】サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行うための容器であって、基板と、基板上に形成されたキャビティと、キャビティを封止するための蓋板と、蓋板上に形成されたサンプル注入孔を有し、キャビティ及び蓋板の内面の少なくとも一部が疎水性である核酸増幅反応容器。
【選択図】 図1
【解決手段】サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行うための容器であって、基板と、基板上に形成されたキャビティと、キャビティを封止するための蓋板と、蓋板上に形成されたサンプル注入孔を有し、キャビティ及び蓋板の内面の少なくとも一部が疎水性である核酸増幅反応容器。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、核酸の増幅反応を行うための容器及びそれを用いた核酸の増幅方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、遺伝子情報に関する技術が盛んに開発されている。医療分野では、疾患関連遺伝子を解析することにより、疾患の分子レベルでの治療が可能となってきている。また、遺伝子診断により、患者個人ごとに対応したテーラーメード医療も可能となってきた。製薬分野においては、遺伝子情報を使用して、抗体やホルモンなどのタンパク分子を特定し、薬品として利用している。農業や食品分野などにおいても、多くの遺伝子情報を利用した製品が作り出されている。
【0003】
このような遺伝子情報に関する技術において最も重要な手法の一つとして、核酸の増幅反応がある。その中でもポリメラーゼ連鎖反応法は、遺伝子のある特定の部分のみを大量に増幅する技術であり、分子生物学等の研究用途の他、医療微生物学、遺伝疾患の臨床診断、法医学等、広範な分野において利用されている。特に臨床の場における遺伝子診断技術では、少ない検体量で、より多くの項目をよ迅速に分析できる事が望まれており、ポリメラーゼ連鎖反応法においても、検体量の微量化及び高速化技術の開発が要望されている。
【0004】
ポリメラーゼ連鎖反応法については、例えば特開昭62−281号公報に開示されている。ポリメラーゼ連鎖反応法によって遺伝子の増幅を行うためには、二本鎖のDNAを一本鎖へと解離させる工程(熱変性)、プライマーを結合させる工程(アニーリング)、ポリメラーゼによりDNAを伸長する工程(伸長反応)の三段階の工程を1サイクルとして、この工程を30から35サイクル繰り返すことによって行う。これらの工程は条件によっても異なるが、通常それぞれ熱変性94℃×1分間、アニーリング50〜60℃×1分間、伸長反応72℃×1〜5分間の条件で行うため、反応温度を複数回、昇温及び降温することが必要である。したがって、反応の高速化を実現するためには、熱伝導度の高い材料からなる反応容器を用い、検体(サンプル)の温度を急速に昇温及び降温することが望ましい。
【0005】
これらの反応は、通常ポリプロピレン製のチューブ内で行われるが、ポリメラーゼ連鎖反応の高速化及びサンプルの微量化を目的として、ポリプロピレンよりも熱伝導度の高いガラス製のキャピラリー内や、ポリプロピレンよりも熱伝導度が高く、公知の技術により容易に微細加工が可能なシリコン等の半導体材料で作製されたチップ内でポリメラーゼ連鎖反応を行う技術も開発されている。
【0006】
また、近年ではLAMP法(国際公開第00/28082号パンフレット参照)やICAN法(国際公開第00/56877号パンフレット参照)といった新しい核酸の増幅方法も開発されている。いずれもプライマーの設計・構造が複雑であるという欠点はあるが、等温で増幅反応が行えるという利点もある。これらの方法においても、ポリメラーゼ連鎖反応法と同様に、サンプルの微量化を目的として、ガラスやシリコン等の半導体材料で作製された反応容器を用いることが検討されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ポリプロピレン等の樹脂に比べ、DNAはガラス及び半導体には非常に吸着しやすい性質を持つ。そのため、ガラスまたは半導体を材料としたキャピラリーやチップなどを用いて核酸の増幅反応を行う場合、ガラスまたは半導体容器表面へのDNAの吸着を押さえるため、サンプル中にウシ血清アルブミン等のタンパクを加える必要があった。サンプル中にタンパクを加えることにより、DNAのガラスまたは半導体への吸着は抑えられ、核酸の増幅反応は良好に進むが、増幅効率が落ちる、手順が煩雑になる、吸着防止用のタンパクが必要となることにより材料費が高くなる、といった問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、ガラスや半導体により構成された反応容器を用いた場合であっても、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができる反応容器及びそれを用いた核酸の増幅方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の核酸増幅反応容器は、サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行うための容器であって、基板と、前記基板上に形成されたキャビティと、前記キャビティを封止するための蓋板と、前記蓋板上に形成されたサンプル注入孔を有し、前記キャビティ及び前記蓋板の内面の少なくとも一部が疎水性であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の核酸の増幅方法は、上記の核酸増幅反応容器を用い、前記核酸増幅反応容器のサンプル注入孔からキャビティ内にサンプルを注入する工程Aと、前記キャビティ内の前記サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行う工程Bと、前記キャビティから前記サンプルを取り出す工程Cとを含むことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明の一実施の形態に係る核酸増幅反応容器は、サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行うための容器であって、基板と、前記基板上に形成されたキャビティと、前記キャビティを封止するための蓋板と、前記蓋板上に形成されたサンプル注入孔を有し、前記キャビティ及び前記蓋板の内面の少なくとも一部が疎水性であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一実施の形態に係る核酸の増幅方法は、上記の核酸増幅反応容器を用い、前記核酸増幅反応容器のサンプル注入孔からキャビティ内にサンプルを注入する工程Aと、前記キャビティ内の前記サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行う工程Bと、前記キャビティから前記サンプルを取り出す工程Cとを含むことを特徴とする。
【0014】
以上のようにすると、サンプル中に含まれる核酸のキャビティ及び蓋板内面への付着を低減することができるので、サンプル中に吸着防止用のタンパクを加える必要がなく、ガラスや半導体により構成された反応容器を用いた場合であっても、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができる。
【0015】
本発明において用いられる核酸の増幅反応としては特に限定されず、ポリメラーゼ連鎖反応法、LAMP法、ICAN法等を用いることができる。この中でも、核酸の増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応であると、プライマーの設計・構造が容易であるため好ましい。また、ポリメラーゼ連鎖反応においてはサンプルの温度を変化させる必要があるので、サンプル中に含まれるDNAが反応容器に吸着しやすいため、本発明はポリメラーゼ連鎖反応を用いる場合において特に有効である。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いてさらに詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るである核酸増幅反応容器の構造を示す分解斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本発明による核酸増幅反応容器では、少ないサンプル量であっても精度良く調整できるように、また温度の上昇・下降が速やかに行われるように、基板1上にキャビティ2を形成して作製され得る。
【0018】
本発明による核酸増幅反応容器に用いられる基板1は、サンプル液と反応しなければどのような材料でもよく、シリコン、ゲルマニウム等の半導体、石英ガラス、鉛ガラス、ホウ珪酸ガラスなどのガラス、セラミック等を使用することができる。基板1上に形成されるキャビティ2の形成方法は、基板1がシリコン等の半導体であれば、RIE等のドライエッチングや強アルカリ性のエッチング液等を用いたウェットエッチングを用いることができ、ガラスであれば、フッ酸等を用いたウェットエッチングを用いることができる。中でも、基板1としてシリコン等の半導体を用いれば、半導体分野において公知である微細加工技術を利用し、微小なキャビティを精度良く加工することができるので好ましい。
【0019】
こうして形成したキャビティ2は、反応中にサンプルが流出しないよう適当な材質を用いた蓋板3で封止される。蓋板3の材質は、基板1の材質と同様のものを用いることができるが、基板1と完全に接着もしくは密着し、キャビティ2内部のサンプルを封止することが好ましい。例えば、基板1がシリコン、蓋板3がガラスの場合、陽極接合、直接接合等の技術を用いて封止することができる。その他、基板1及び蓋板3が双方ともガラスの場合は、フッ酸接合の技術を用いた接着等により封止することも可能である。
【0020】
蓋板3にはキャビティ2内部にサンプルを注入するためのサンプル注入孔4が設けられている。サンプル注入孔4は少なくとも1つあれば良いが、2つ以上設けておくと、サンプルの注入時に用いたもの以外のサンプル注入孔4がキャビティ2内部の空気の逃げ道として機能し、サンプルを速やかに注入することができるので好ましい。サンプル注入孔4は、サンプルを注入した後は耐熱性テープなどを用いて封止され、核酸の増幅反応中にサンプルがサンプル注入孔4から漏出または気化することを防ぐ効果を有する。
【0021】
このように作製した核酸増幅反応容器の内面を疎水性にする処理を施すことによって、サンプルにウシ血清アルブミン等のタンパクを加えることなく、核酸の増幅反応を良好に行うことができる。疎水性にする処理は、特に基板1もしくは蓋板3の材料としてガラスを用いたときに効果的である。疎水性にする処理としては、キャビティ2及び蓋板3の内面の少なくとも一部を疎水性の膜により被覆する方法が挙げられる。
【0022】
疎水性の膜としては、処理後のキャビティ2及び蓋板3内面がサンプルと反応せず、95℃程度の温度上昇に耐え得るものであれば特に限定されないが、フッ素化合物を含むもの、もしくはシリコン化合物を含むものであると、疎水性の効果が高いため好ましい。
【0023】
フッ素化合物としては、フッ化炭素を利用することができる。上記の基板1と蓋板3とを組み合わせた核酸増幅反応容器を、フッ化炭素ガス雰囲気中に設置し、プラズマを発生させることによりプラズマ処理を行うと、核酸増幅反応容器の外壁のみでなく、キャビティ2及び蓋板3内面までフッ化炭素膜が形成され、キャビティ2及び蓋板3内部が疎水性となる。また、フッ素系シランカップリング材を用いてもフッ素化合物を含む疎水性の膜を形成することができる。
【0024】
一方、シリコン化合物を含む疎水性の膜は、シリコナイズ処理によって形成し得る。シリコナイズ液としては、例えばSIGMACOTE(登録商標、シグマ製)を用いることができる。デシケータ内に核酸増幅反応容器とシリコナイズ液とを入れ、デシケータ内を真空に吸引することにより、シリコナイズ液が気化し、シリコン化合物の蒸気が、核酸増幅反応容器外壁と、キャビティ2及び蓋板3内面とにまで付着して疎水性の処理を行うことができる。また、サンプル注入孔4からキャビティ2内部に直接シリコナイズ液を注入し、蒸留水で洗い流すことによっても、キャビティ2及び蓋板3内面の疎水性の処理を行うことができる。
【0025】
このようにして、キャビティ2及び蓋板3の内面の少なくとも一部が疎水性である核酸増幅反応容器を用いて核酸の増幅反応を行うことにより、DNAがキャビティ2及び蓋板3の表面に吸着することを防ぎ、サンプルにウシ血清アルブミン等のタンパクを加えることなく、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の一実施の形態に係る核酸増幅反応容器を用いて、核酸の増幅反応としてポリメラーゼ連鎖反応を行った実施例について説明する。
【0027】
基板1として厚さ500μmのシリコン単結晶板を用いて、核酸増幅反応容器であるポリメラーゼ連鎖反応容器を作製した。
【0028】
まず、表面が鏡面処理された厚みが500μmのシリコン単結晶板と厚みが400μmのガラスを用意し、シリコン単結晶板に六フッ化硫黄を用いたドライエッチングによって、6mmφのキャビティ2を形成した。エッチング深さは、170μmとした。
【0029】
次に、蓋板3となるガラスに、サンドブラストによってサンプル注入孔4となる0.6mmφの穴を2箇所開けた。
【0030】
次に、シリコン単結晶板とガラスとを、酸性洗浄剤を用いて表面を洗浄し、互いの間に空気が入らないように張り合わせた後、300℃で3時間加熱することによって、接着剤を用いない直接接合によってシリコン単結晶板からなる基板1とガラスからなる蓋板3とを接着した。最後に8mm×16mmに切り出して、チップ状のポリメラーゼ連鎖反応容器とした。
【0031】
このようにして作製したポリメラーゼ連鎖反応容器をチャンバー内に入れた後、チャンバー内を減圧雰囲気にして、その後C4F8ガスを流して約10〜50mtorrの一定の圧力になるようにした状態で、チャンバー外部に設置したコイルに高周波電力を印加することでプラズマを発生させて、ポリメラーゼ連鎖反応容器内外表面にCVDによるCF2膜を形成した。プラズマを発生させる手段としては、他にチャンバー内部あるいは周辺に設置した電極に高周波電力を印加させてもよいが、チャンバー外部に設置したコイルによる誘導プラズマを用いることが好ましい。これは誘導プラズマによって発生したプラズマでは、基板にバイアスが発生しないので、基板にイオン衝撃を与えることが少なく、ポリメラーゼ連鎖反応容器内の微小な内部にも均一にCF2膜が形成されるからである。なお、処理時間は3分〜6分とした。
【0032】
純水接触角による疎水性(撥水性)評価では、処理前のシリコンの接触角は48°、ガラスの接触角は35°であったのに対し、処理後の接触角はそれぞれ108°、及び106°となった。この容器をCF2+容器とした。比較例として、疎水性の処理を施さないポリメラーゼ連鎖反応容器を用意し、この容器をCF2−容器とした。
【0033】
ポリメラーゼ連鎖反応は、テンプレートとしてλDNA(寳酒造製)(λDNAの塩基配列は、GenBankデータベースのAccession No.V00636,J02459,M17233,X00906を参照)を用いた。プライマーとしてTaKaRa ポリメラーゼ連鎖反応 Amplification Kit(寳酒造製)のControl Primer1(5’−GATGAGTTCGTGTCCGTACAACT−3’)及びPrimer3(5’−GGTTATCGAAATCAGCCACAGCGCC−3’)を用いて実験を行った(500bp増幅用)。2.5U/μl TaKaRa Z−Taq 0.5μl、10×Z−Taq Buffer 5μl、2.5mM each dNTP Mixture 4μl、20pmol/μl Primer1及びPrimer3 各2.25μl、0.25μg/μl ウシ血清アルブミン2μlを加えた後、10ng/μl λDNA 5μlを加え蒸留水29μlを加えて総量を50μlとした。このサンプルをBSA+サンプルとした。一方、ウシ血清アルブミン2μlを加えず、蒸留水を31μl加えたサンプルも調製した。このサンプルをBSA−サンプルとした。
【0034】
上記で調製した2種類のサンプルを、本実施例のCF2+容器及び比較例のCF2−容器にそれぞれ5μl、コントロールとして0.5mlポリプロピレンチューブに20μl注入し、サンプル注入孔4を耐熱性テープで封止した。
【0035】
ポリメラーゼ連鎖反応は、アルミブロック式のサーマルサイクラーを用いて、98℃1分、55℃1分、72℃20秒で30サイクル行った。トータルの反応時間は80分であった。
【0036】
ポリメラーゼ連鎖反応終了後、1.5ml遠心チューブ内に容器を挿入し、10krpmの回転数で1分間遠心処理を行うことにより、容器からサンプルの回収を行った。回収したサンプルは、アガロースゲル電気泳動を行い、ポリメラーゼ連鎖反応により目的の500bpが増幅されているかどうかを確認した。
【0037】
図2に、ポリメラーゼ連鎖反応の結果を表す電気泳動写真を示す。図中、Aはマーカー(分子量マーカー)の場合、Bは容器が従来のポリプロピレンチューブ、サンプルがBSA−サンプルの場合、Cは容器が本実施例のCF2+容器、サンプルがBSA+サンプルの場合、Dは容器が本実施例のCF2+容器、サンプルがBSA−サンプルの場合、Eは容器が比較例のCF2−容器、サンプルがBSA+サンプルの場合、Fは容器が比較例のCF2−容器、サンプルがBSA−サンプルの場合を示す。また、矢印で示した部分が目的の増幅産物である。
【0038】
図2から分かるように、本実施例のポリメラーゼ連鎖反応容器を用いた場合では、ウシ血清アルブミンの有無に関わらず、従来法によるポリメラーゼ連鎖反応(図中Bの場合)と同様に目的のDNAが増幅されていることが確認できた(図中C及びDの場合)。一方、比較例のポリメラーゼ連鎖反応容器では、ウシ血清アルブミンの存在下では増幅物が確認されたが(図中Eの場合)、ウシ血清アルブミンの存在無しでは、増幅物は確認できなかった(図中Fの場合)。よって、半導体及びガラスにより構成された反応容器を用いた場合であっても、吸着防止用のタンパク質を用いることなく、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができた。
【0039】
なお、本実施例では、シリコン単結晶板とガラスとを、互いの間に空気が入らないように張り合わせた後、300℃で3時間加熱し、直接接合によってシリコン単結晶板からなる基板1とガラスからなる蓋板3とを接着したが、加熱するときの温度はガラスの材質によって変えれば良い。ナトリウム、カリウムなどを含むガラスであれば250℃で、これらを含まないガラスであれば400℃程度まで上げる。また、ガラスの材質は石英ガラスのように不純物を含まないものでも可能である。この場合はさらに温度を500℃以上に上げる。さらに、蓋板材料はシリコン単結晶板でも可能である。この場合はキャビティ2を形成したシリコン単結晶板とサンプル注入孔4を形成したシリコン単結晶板とを直接接合によって張り合わせる。張り合わせ時の温度は500℃以上にすればよい。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガラスや半導体により構成された反応容器を用いた場合であっても、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができる反応容器及びそれを用いた核酸の増幅方法を提供することができる。
【0041】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における核酸増幅反応容器の構造を示す分解斜視図
【図2】本発明の一実施例及び比較例の核酸増幅反応容器を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行った際の増幅産物の結果を示す電気泳動写真を示す図
【符号の説明】
1 基板
2 キャビティ
3 蓋板
4 サンプル注入孔
【発明の属する技術分野】
本発明は、核酸の増幅反応を行うための容器及びそれを用いた核酸の増幅方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、遺伝子情報に関する技術が盛んに開発されている。医療分野では、疾患関連遺伝子を解析することにより、疾患の分子レベルでの治療が可能となってきている。また、遺伝子診断により、患者個人ごとに対応したテーラーメード医療も可能となってきた。製薬分野においては、遺伝子情報を使用して、抗体やホルモンなどのタンパク分子を特定し、薬品として利用している。農業や食品分野などにおいても、多くの遺伝子情報を利用した製品が作り出されている。
【0003】
このような遺伝子情報に関する技術において最も重要な手法の一つとして、核酸の増幅反応がある。その中でもポリメラーゼ連鎖反応法は、遺伝子のある特定の部分のみを大量に増幅する技術であり、分子生物学等の研究用途の他、医療微生物学、遺伝疾患の臨床診断、法医学等、広範な分野において利用されている。特に臨床の場における遺伝子診断技術では、少ない検体量で、より多くの項目をよ迅速に分析できる事が望まれており、ポリメラーゼ連鎖反応法においても、検体量の微量化及び高速化技術の開発が要望されている。
【0004】
ポリメラーゼ連鎖反応法については、例えば特開昭62−281号公報に開示されている。ポリメラーゼ連鎖反応法によって遺伝子の増幅を行うためには、二本鎖のDNAを一本鎖へと解離させる工程(熱変性)、プライマーを結合させる工程(アニーリング)、ポリメラーゼによりDNAを伸長する工程(伸長反応)の三段階の工程を1サイクルとして、この工程を30から35サイクル繰り返すことによって行う。これらの工程は条件によっても異なるが、通常それぞれ熱変性94℃×1分間、アニーリング50〜60℃×1分間、伸長反応72℃×1〜5分間の条件で行うため、反応温度を複数回、昇温及び降温することが必要である。したがって、反応の高速化を実現するためには、熱伝導度の高い材料からなる反応容器を用い、検体(サンプル)の温度を急速に昇温及び降温することが望ましい。
【0005】
これらの反応は、通常ポリプロピレン製のチューブ内で行われるが、ポリメラーゼ連鎖反応の高速化及びサンプルの微量化を目的として、ポリプロピレンよりも熱伝導度の高いガラス製のキャピラリー内や、ポリプロピレンよりも熱伝導度が高く、公知の技術により容易に微細加工が可能なシリコン等の半導体材料で作製されたチップ内でポリメラーゼ連鎖反応を行う技術も開発されている。
【0006】
また、近年ではLAMP法(国際公開第00/28082号パンフレット参照)やICAN法(国際公開第00/56877号パンフレット参照)といった新しい核酸の増幅方法も開発されている。いずれもプライマーの設計・構造が複雑であるという欠点はあるが、等温で増幅反応が行えるという利点もある。これらの方法においても、ポリメラーゼ連鎖反応法と同様に、サンプルの微量化を目的として、ガラスやシリコン等の半導体材料で作製された反応容器を用いることが検討されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ポリプロピレン等の樹脂に比べ、DNAはガラス及び半導体には非常に吸着しやすい性質を持つ。そのため、ガラスまたは半導体を材料としたキャピラリーやチップなどを用いて核酸の増幅反応を行う場合、ガラスまたは半導体容器表面へのDNAの吸着を押さえるため、サンプル中にウシ血清アルブミン等のタンパクを加える必要があった。サンプル中にタンパクを加えることにより、DNAのガラスまたは半導体への吸着は抑えられ、核酸の増幅反応は良好に進むが、増幅効率が落ちる、手順が煩雑になる、吸着防止用のタンパクが必要となることにより材料費が高くなる、といった問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、ガラスや半導体により構成された反応容器を用いた場合であっても、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができる反応容器及びそれを用いた核酸の増幅方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の核酸増幅反応容器は、サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行うための容器であって、基板と、前記基板上に形成されたキャビティと、前記キャビティを封止するための蓋板と、前記蓋板上に形成されたサンプル注入孔を有し、前記キャビティ及び前記蓋板の内面の少なくとも一部が疎水性であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の核酸の増幅方法は、上記の核酸増幅反応容器を用い、前記核酸増幅反応容器のサンプル注入孔からキャビティ内にサンプルを注入する工程Aと、前記キャビティ内の前記サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行う工程Bと、前記キャビティから前記サンプルを取り出す工程Cとを含むことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明の一実施の形態に係る核酸増幅反応容器は、サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行うための容器であって、基板と、前記基板上に形成されたキャビティと、前記キャビティを封止するための蓋板と、前記蓋板上に形成されたサンプル注入孔を有し、前記キャビティ及び前記蓋板の内面の少なくとも一部が疎水性であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一実施の形態に係る核酸の増幅方法は、上記の核酸増幅反応容器を用い、前記核酸増幅反応容器のサンプル注入孔からキャビティ内にサンプルを注入する工程Aと、前記キャビティ内の前記サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行う工程Bと、前記キャビティから前記サンプルを取り出す工程Cとを含むことを特徴とする。
【0014】
以上のようにすると、サンプル中に含まれる核酸のキャビティ及び蓋板内面への付着を低減することができるので、サンプル中に吸着防止用のタンパクを加える必要がなく、ガラスや半導体により構成された反応容器を用いた場合であっても、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができる。
【0015】
本発明において用いられる核酸の増幅反応としては特に限定されず、ポリメラーゼ連鎖反応法、LAMP法、ICAN法等を用いることができる。この中でも、核酸の増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応であると、プライマーの設計・構造が容易であるため好ましい。また、ポリメラーゼ連鎖反応においてはサンプルの温度を変化させる必要があるので、サンプル中に含まれるDNAが反応容器に吸着しやすいため、本発明はポリメラーゼ連鎖反応を用いる場合において特に有効である。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いてさらに詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るである核酸増幅反応容器の構造を示す分解斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本発明による核酸増幅反応容器では、少ないサンプル量であっても精度良く調整できるように、また温度の上昇・下降が速やかに行われるように、基板1上にキャビティ2を形成して作製され得る。
【0018】
本発明による核酸増幅反応容器に用いられる基板1は、サンプル液と反応しなければどのような材料でもよく、シリコン、ゲルマニウム等の半導体、石英ガラス、鉛ガラス、ホウ珪酸ガラスなどのガラス、セラミック等を使用することができる。基板1上に形成されるキャビティ2の形成方法は、基板1がシリコン等の半導体であれば、RIE等のドライエッチングや強アルカリ性のエッチング液等を用いたウェットエッチングを用いることができ、ガラスであれば、フッ酸等を用いたウェットエッチングを用いることができる。中でも、基板1としてシリコン等の半導体を用いれば、半導体分野において公知である微細加工技術を利用し、微小なキャビティを精度良く加工することができるので好ましい。
【0019】
こうして形成したキャビティ2は、反応中にサンプルが流出しないよう適当な材質を用いた蓋板3で封止される。蓋板3の材質は、基板1の材質と同様のものを用いることができるが、基板1と完全に接着もしくは密着し、キャビティ2内部のサンプルを封止することが好ましい。例えば、基板1がシリコン、蓋板3がガラスの場合、陽極接合、直接接合等の技術を用いて封止することができる。その他、基板1及び蓋板3が双方ともガラスの場合は、フッ酸接合の技術を用いた接着等により封止することも可能である。
【0020】
蓋板3にはキャビティ2内部にサンプルを注入するためのサンプル注入孔4が設けられている。サンプル注入孔4は少なくとも1つあれば良いが、2つ以上設けておくと、サンプルの注入時に用いたもの以外のサンプル注入孔4がキャビティ2内部の空気の逃げ道として機能し、サンプルを速やかに注入することができるので好ましい。サンプル注入孔4は、サンプルを注入した後は耐熱性テープなどを用いて封止され、核酸の増幅反応中にサンプルがサンプル注入孔4から漏出または気化することを防ぐ効果を有する。
【0021】
このように作製した核酸増幅反応容器の内面を疎水性にする処理を施すことによって、サンプルにウシ血清アルブミン等のタンパクを加えることなく、核酸の増幅反応を良好に行うことができる。疎水性にする処理は、特に基板1もしくは蓋板3の材料としてガラスを用いたときに効果的である。疎水性にする処理としては、キャビティ2及び蓋板3の内面の少なくとも一部を疎水性の膜により被覆する方法が挙げられる。
【0022】
疎水性の膜としては、処理後のキャビティ2及び蓋板3内面がサンプルと反応せず、95℃程度の温度上昇に耐え得るものであれば特に限定されないが、フッ素化合物を含むもの、もしくはシリコン化合物を含むものであると、疎水性の効果が高いため好ましい。
【0023】
フッ素化合物としては、フッ化炭素を利用することができる。上記の基板1と蓋板3とを組み合わせた核酸増幅反応容器を、フッ化炭素ガス雰囲気中に設置し、プラズマを発生させることによりプラズマ処理を行うと、核酸増幅反応容器の外壁のみでなく、キャビティ2及び蓋板3内面までフッ化炭素膜が形成され、キャビティ2及び蓋板3内部が疎水性となる。また、フッ素系シランカップリング材を用いてもフッ素化合物を含む疎水性の膜を形成することができる。
【0024】
一方、シリコン化合物を含む疎水性の膜は、シリコナイズ処理によって形成し得る。シリコナイズ液としては、例えばSIGMACOTE(登録商標、シグマ製)を用いることができる。デシケータ内に核酸増幅反応容器とシリコナイズ液とを入れ、デシケータ内を真空に吸引することにより、シリコナイズ液が気化し、シリコン化合物の蒸気が、核酸増幅反応容器外壁と、キャビティ2及び蓋板3内面とにまで付着して疎水性の処理を行うことができる。また、サンプル注入孔4からキャビティ2内部に直接シリコナイズ液を注入し、蒸留水で洗い流すことによっても、キャビティ2及び蓋板3内面の疎水性の処理を行うことができる。
【0025】
このようにして、キャビティ2及び蓋板3の内面の少なくとも一部が疎水性である核酸増幅反応容器を用いて核酸の増幅反応を行うことにより、DNAがキャビティ2及び蓋板3の表面に吸着することを防ぎ、サンプルにウシ血清アルブミン等のタンパクを加えることなく、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の一実施の形態に係る核酸増幅反応容器を用いて、核酸の増幅反応としてポリメラーゼ連鎖反応を行った実施例について説明する。
【0027】
基板1として厚さ500μmのシリコン単結晶板を用いて、核酸増幅反応容器であるポリメラーゼ連鎖反応容器を作製した。
【0028】
まず、表面が鏡面処理された厚みが500μmのシリコン単結晶板と厚みが400μmのガラスを用意し、シリコン単結晶板に六フッ化硫黄を用いたドライエッチングによって、6mmφのキャビティ2を形成した。エッチング深さは、170μmとした。
【0029】
次に、蓋板3となるガラスに、サンドブラストによってサンプル注入孔4となる0.6mmφの穴を2箇所開けた。
【0030】
次に、シリコン単結晶板とガラスとを、酸性洗浄剤を用いて表面を洗浄し、互いの間に空気が入らないように張り合わせた後、300℃で3時間加熱することによって、接着剤を用いない直接接合によってシリコン単結晶板からなる基板1とガラスからなる蓋板3とを接着した。最後に8mm×16mmに切り出して、チップ状のポリメラーゼ連鎖反応容器とした。
【0031】
このようにして作製したポリメラーゼ連鎖反応容器をチャンバー内に入れた後、チャンバー内を減圧雰囲気にして、その後C4F8ガスを流して約10〜50mtorrの一定の圧力になるようにした状態で、チャンバー外部に設置したコイルに高周波電力を印加することでプラズマを発生させて、ポリメラーゼ連鎖反応容器内外表面にCVDによるCF2膜を形成した。プラズマを発生させる手段としては、他にチャンバー内部あるいは周辺に設置した電極に高周波電力を印加させてもよいが、チャンバー外部に設置したコイルによる誘導プラズマを用いることが好ましい。これは誘導プラズマによって発生したプラズマでは、基板にバイアスが発生しないので、基板にイオン衝撃を与えることが少なく、ポリメラーゼ連鎖反応容器内の微小な内部にも均一にCF2膜が形成されるからである。なお、処理時間は3分〜6分とした。
【0032】
純水接触角による疎水性(撥水性)評価では、処理前のシリコンの接触角は48°、ガラスの接触角は35°であったのに対し、処理後の接触角はそれぞれ108°、及び106°となった。この容器をCF2+容器とした。比較例として、疎水性の処理を施さないポリメラーゼ連鎖反応容器を用意し、この容器をCF2−容器とした。
【0033】
ポリメラーゼ連鎖反応は、テンプレートとしてλDNA(寳酒造製)(λDNAの塩基配列は、GenBankデータベースのAccession No.V00636,J02459,M17233,X00906を参照)を用いた。プライマーとしてTaKaRa ポリメラーゼ連鎖反応 Amplification Kit(寳酒造製)のControl Primer1(5’−GATGAGTTCGTGTCCGTACAACT−3’)及びPrimer3(5’−GGTTATCGAAATCAGCCACAGCGCC−3’)を用いて実験を行った(500bp増幅用)。2.5U/μl TaKaRa Z−Taq 0.5μl、10×Z−Taq Buffer 5μl、2.5mM each dNTP Mixture 4μl、20pmol/μl Primer1及びPrimer3 各2.25μl、0.25μg/μl ウシ血清アルブミン2μlを加えた後、10ng/μl λDNA 5μlを加え蒸留水29μlを加えて総量を50μlとした。このサンプルをBSA+サンプルとした。一方、ウシ血清アルブミン2μlを加えず、蒸留水を31μl加えたサンプルも調製した。このサンプルをBSA−サンプルとした。
【0034】
上記で調製した2種類のサンプルを、本実施例のCF2+容器及び比較例のCF2−容器にそれぞれ5μl、コントロールとして0.5mlポリプロピレンチューブに20μl注入し、サンプル注入孔4を耐熱性テープで封止した。
【0035】
ポリメラーゼ連鎖反応は、アルミブロック式のサーマルサイクラーを用いて、98℃1分、55℃1分、72℃20秒で30サイクル行った。トータルの反応時間は80分であった。
【0036】
ポリメラーゼ連鎖反応終了後、1.5ml遠心チューブ内に容器を挿入し、10krpmの回転数で1分間遠心処理を行うことにより、容器からサンプルの回収を行った。回収したサンプルは、アガロースゲル電気泳動を行い、ポリメラーゼ連鎖反応により目的の500bpが増幅されているかどうかを確認した。
【0037】
図2に、ポリメラーゼ連鎖反応の結果を表す電気泳動写真を示す。図中、Aはマーカー(分子量マーカー)の場合、Bは容器が従来のポリプロピレンチューブ、サンプルがBSA−サンプルの場合、Cは容器が本実施例のCF2+容器、サンプルがBSA+サンプルの場合、Dは容器が本実施例のCF2+容器、サンプルがBSA−サンプルの場合、Eは容器が比較例のCF2−容器、サンプルがBSA+サンプルの場合、Fは容器が比較例のCF2−容器、サンプルがBSA−サンプルの場合を示す。また、矢印で示した部分が目的の増幅産物である。
【0038】
図2から分かるように、本実施例のポリメラーゼ連鎖反応容器を用いた場合では、ウシ血清アルブミンの有無に関わらず、従来法によるポリメラーゼ連鎖反応(図中Bの場合)と同様に目的のDNAが増幅されていることが確認できた(図中C及びDの場合)。一方、比較例のポリメラーゼ連鎖反応容器では、ウシ血清アルブミンの存在下では増幅物が確認されたが(図中Eの場合)、ウシ血清アルブミンの存在無しでは、増幅物は確認できなかった(図中Fの場合)。よって、半導体及びガラスにより構成された反応容器を用いた場合であっても、吸着防止用のタンパク質を用いることなく、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができた。
【0039】
なお、本実施例では、シリコン単結晶板とガラスとを、互いの間に空気が入らないように張り合わせた後、300℃で3時間加熱し、直接接合によってシリコン単結晶板からなる基板1とガラスからなる蓋板3とを接着したが、加熱するときの温度はガラスの材質によって変えれば良い。ナトリウム、カリウムなどを含むガラスであれば250℃で、これらを含まないガラスであれば400℃程度まで上げる。また、ガラスの材質は石英ガラスのように不純物を含まないものでも可能である。この場合はさらに温度を500℃以上に上げる。さらに、蓋板材料はシリコン単結晶板でも可能である。この場合はキャビティ2を形成したシリコン単結晶板とサンプル注入孔4を形成したシリコン単結晶板とを直接接合によって張り合わせる。張り合わせ時の温度は500℃以上にすればよい。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガラスや半導体により構成された反応容器を用いた場合であっても、容易に良好な核酸の増幅反応を行うことができる反応容器及びそれを用いた核酸の増幅方法を提供することができる。
【0041】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における核酸増幅反応容器の構造を示す分解斜視図
【図2】本発明の一実施例及び比較例の核酸増幅反応容器を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行った際の増幅産物の結果を示す電気泳動写真を示す図
【符号の説明】
1 基板
2 キャビティ
3 蓋板
4 サンプル注入孔
Claims (9)
- サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行うための容器であって、基板と、前記基板上に形成されたキャビティと、前記キャビティを封止するための蓋板と、前記蓋板上に形成されたサンプル注入孔を有し、前記キャビティ及び前記蓋板の内面の少なくとも一部が疎水性であることを特徴とする、核酸増幅反応容器。
- 核酸の増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応であることを特徴とする、請求項1記載の核酸増幅反応容器。
- 基板が、半導体により構成されることを特徴とする、請求項1または2記載の核酸増幅反応容器。
- 蓋板が、ガラスにより構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸増幅反応容器。
- キャビティ及び蓋板の内面の少なくとも一部が、疎水性の膜により被覆されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸増幅反応容器。
- 疎水性の膜がフッ素化合物を含むことを特徴とする、請求項5記載の核酸増幅反応容器。
- 疎水性の膜がシリコン化合物を含むことを特徴とする、請求項5記載の核酸増幅反応容器。
- 請求項1記載の核酸増幅反応容器を用い、前記核酸増幅反応容器のサンプル注入孔からキャビティ内にサンプルを注入する工程Aと、前記キャビティ内の前記サンプル中に含まれる核酸の増幅反応を行う工程Bと、前記キャビティから前記サンプルを取り出す工程Cとを含むことを特徴とする、核酸の増幅方法。
- 核酸の増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応であることを特徴とする、請求項8記載の核酸の増幅方法。
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