JP2004014385A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】外部への発光取り出し効率が高められた有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を提供すること。
【解決手段】背面電極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面電極が、この順に積層された基本構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、背面電極が光透過性電極であり、背面電極の背面側に、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の80%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする高屈折率光散乱層が設けられ、そして該発光層から背面側に向けて発せられる光の40%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されている有機エレクトロルミネッセンス素子。
【選択図】 図2
【解決手段】背面電極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面電極が、この順に積層された基本構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、背面電極が光透過性電極であり、背面電極の背面側に、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の80%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする高屈折率光散乱層が設けられ、そして該発光層から背面側に向けて発せられる光の40%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されている有機エレクトロルミネッセンス素子。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気エネルギーの印加により発光を示す有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、マルチメディアの発展に伴って、小型かつ軽量の表示装置であるフラットパネルディスプレイに対する需要が高まっている。フラットパネルディスプレイ用素子として液晶表示素子が広範囲に用いられてきたが、液晶自体は自己発光をしないため、液晶表示素子では、液晶層の背面側に光源(バックライト)を配置して、その光源から発せられる光の透過を液晶層で制御して、透過画像を得る構成が一般的である。カラー画像を得るためには、液晶層の表面にカラーフィルターを付設する。そして、そのカラーフィルターを透過する色光の組合せによりカラー画像が得られる。
【0003】
液晶表示素子では、上記のように、別に光源を付設することが必要となり、消費する電気エネルギーも多いことから、電気エネルギーを付与するための小型電池が開発されている(例えば、リチウム電池)。しかしながら、そのような技術的発展にも拘らず、その小型化と軽量化には限界がある。液晶表示素子として、バックライトを用いない反射型のタイプの開発も進んでいるが、特にカラー画像を表示すると、その表示コントラストが低く、また表示画像の質が外光の条件によって大きく左右されるため、利用可能な範囲には限界がある。
【0004】
従って、僅かな電気エネルギーの付与により自己発光を示し、別に光源を容易しなくても画像表示が可能な表示材料として、エレクトロルミネッセンス素子(一般にEL素子と呼ばれる)が注目を浴びている。エレクトロルミネッセンス素子には、使用する材料の相違により無機EL素子と有機EL素子とがあるが、特に有機EL素子は、無機EL素子よりもはるかに低い電圧で駆動することができ、また発光材料である有機化合物を選ぶことによって好適な色彩に発光する発光素子が得られるので、フルカラー表示装置としての利用が期待できる。添付図面の図1に、現在実用化されている有機エレクトロルミネッセンス素子の代表的な構成例を示す。
【0005】
図1に示す有機EL素子は、電子輸送性の発光層とホール輸送層とを有する積層型(二層構造)の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、発光を取り出す側となる透明なガラス基板(または透明プラスチック材料基板)11bの上に順に、透明な前面電極(ITO電極)12b、ホール(正孔)輸送層14、蛍光を発する有機化合物の薄膜からなる発光層(電子輸送性、厚さは通常10〜100nm)13、および背面電極(金属電極)12aが形成された構成を有する。前面側(図における下側)に配置された前面電極12bと背面電極12aとの間に直流電圧を印加すると、陽極である前面電極12bからホール(正孔)が注入され、これらホールは、ホール輸送層14により発光層13との界面まで輸送されて発光層13へ注入される。一方、陰極の背面電極12aからは電子が注入され、これら電子は、発光層13内を輸送されてその界面まで達し、ホールと再結合することになる。このホールと電子の再結合により有機化合物中に励起子が生成し、生成した励起子は励起状態から基底状態に戻るときに蛍光を発する。この発光は、透明電極12bと透明基板11bとを通して前面側から取り出される。
【0006】
図1に示した構成の有機EL素子以外にも、ホール輸送性の発光層と電子輸送層とからなる二層構造のもの、電子輸送層と両性輸送性の発光層とホール輸送層とからなる三層構造のもの、および両性輸送性の発光層のみからなる単層型のものなどが知られている。また、各層の間には各種の補助層が任意に設けられることがある。
【0007】
特開平8−315985号公報には、発光面全体として均一な発光を得るために、光取り出し側の基板を光散乱性とした有機エレクトロルミネッセンス素子が開示されている。また、特開平11−8070号公報には、隣接する画素への光もれを抑制して鮮明な表示を得、また電極パターンやセグメント電極からの引き出し線の影響を最小限に留めるために、発光部分に対応するように前面電極の前面側に光拡散層を配置した有機エレクトロルミネッセンス素子が開示されている。いずれの素子も、光散乱性または光拡散性の材料(層)は発光層よりも前面側に配置されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、前述したように、僅かな電気エネルギーで自己発光を示すため、優れた表示材料と考えられているが、これまでに製品として開発された有機ELディスプレイでは、安定性が充分でないことや、発光効率が充分とは言えないことなどの問題点が指摘されている。特に、有機EL素子は、無機EL素子に比べて一般的に構成材料の屈折率が低いので、その光取り出し効率はやや高いというものの、発光量の20%程度に過ぎず、更なる改良が望まれている。
【0009】
従って、本発明は、従来と同程度の消費電力で、外部に充分な発光を取り出すことのできる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを主な目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者は、有機エレクトロルミネッセンス素子の問題点について研究した結果、発光層の背面側および/または前面側に、発光層の屈折率と同程度もしくはそれ以上の屈折率を示す高屈折率光散乱層を配置し、かつ発光層と高屈折率光散乱層との間に存在する材料の屈折率を、発光層の屈折率と同程度もしくはそれ以上高いレベルに維持することによって、発光層から発せられた光が外部に効率良く取り出されることを見い出し、本発明に到達した。
【0011】
本発明は、背面電極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面電極が、この順に積層された基本構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、背面電極が光透過性電極であり、背面電極の背面側に、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の80%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする高屈折率光散乱層が設けられ、そして該発光層から背面側に向けて発せられる光の40%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子にある。
【0012】
また、本発明は、背面電極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面電極が、この順に積層された基本構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、背面電極が光透過性であり、背面電極の背面側に光散乱反射層が設けられ、さらに光透過性前面電極の前面側に、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の80%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする高屈折率光散乱層が設けられ、そして該発光層から前面側に向けて発せられる光の40%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子にもある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の好ましい態様は下記に示す通りである。
(1)高屈折率光散乱層が、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の95%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする層であって、該発光層から背面側および/または前面側に向けて発せられる光の70%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されている。
(2)高屈折率光散乱層が、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の99%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする層であって、該発光層から背面側および/または前面側に向けて発せられる光の85%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されている。
【0014】
(3)少なくとも背面シート、高屈折率光散乱層、光透過性背面陰極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、ホール輸送層、および光透過性前面陽極がこの順に積層された構成を有する。
(4)少なくとも背面シート、高屈折率光散乱層、光透過性背面陽極、ホール輸送層、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面陰極がこの順に積層された構成を有する。
(5)少なくとも光散乱反射層、光透過性背面陰極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、ホール輸送層、光透過性前面陽極、高屈折率光散乱層、および前面シートがこの順に積層された構成を有する。
(6)少なくとも光散乱反射層、光透過性背面陽極、ホール輸送層、有機エレクトロルミネッセンス発光層、光透過性前面陰極、高屈折率光散乱層、および前面シートがこの順に積層された構成を有する。
(7)有機エレクトロルミネッセンス発光層が可視光を発する有機材料から形成されている。
(8)有機エレクトロルミネッセンス発光層が、互いに分離区画された領域に形成された、発光色の色相が互いに異なる二種以上の発光層からなる。
(9)光透過性前面電極の前面側にカラーフィルター層及び/又はNDフィルター層が付設されている。
【0015】
以下に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の構成について、その代表的な構成例を示す添付図面を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書の説明において、高屈折率とは、屈折率が発光層の屈折率を基準として、その80%以上(好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上)であることを意味し、高屈折率が付された層もしくは材料は、そのような高い屈折率を示す層もしくは当該の層にそのような高い屈折率を与える材料である。
【0016】
図2は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の代表的な構成を示す。図2において有機EL素子は、背面シート(支持体)21aの上に順に、高屈折率光散乱層(厚さ:1〜50μm)25、光透過性背面電極22a(陰極、厚さ:0.01〜20μm)、電子注入層26、有機エレクトロルミネッセンス発光層(電子輸送性、厚さ:10〜100nm、層の平面方向にR、G、Bなどの色相の発光を示す各種の有機化合物がそれぞれ区画され配置されている)23、ホール輸送層24、ホール注入層27、および光透過性前面電極(陽極、厚さ:0.01〜20μm)22bが形成された構成を有する。
【0017】
有機エレクトロルミネッセンス発光層23は、蛍光及び/又は燐光を発する有機化合物の薄膜からなる層である。発光層23より背面側に設けられた高屈折率光散乱層25は、発光層23と同等かそれ以上の屈折率を有する層であり、光反射層を兼ねている。電子注入層26およびホール注入層27はそれぞれ、電子の注入およびホールの注入を促して低電圧化することにより、発光効率を高める役割を果たす。また、発光層23と高屈折率光散乱層25との間にある中間層(背面電極22aおよび電子注入層26)はそれぞれ、発光層23から背面側に向かった光のうち40%以上(好ましくは70%以上、更に好ましくは85%以上)が高屈折率光散乱層25に入射するように、その屈折率が調整されている。
【0018】
前面側(図における下側)に配置された前面電極22bと背面電極22aとの間に直流電圧(数V乃至数十V)を印加すると、前面電極(ホール注入電極)22bおよび背面電極(電子注入電極)22aからそれぞれホールと電子とが注入される。これらホールと電子はそれぞれ、中間層を経て発光層23内の発光中心で再結合して有機分子を励起状態にし、この有機分子は、蛍光を発しながら励起状態から基底状態に戻る。発光光は、前面電極22bから取り出される。発光光のうち、背面側に向かった光もその大部分が、屈折率が好適に調整された中間層により高効率で高屈折率光散乱層25に導かれ、光反射層を兼ねる高屈折率光散乱層25により反射されて前面側に向かう。よって、前面側から効率良く発光光を取り出すことができる。
【0019】
なお、本発明の有機EL素子は、図2に示した構成に限定されるものではなく、電子注入層およびホール注入層はなくてもよいし、あるいは各層の間に更に各種の補助層が設けられていてもよい。前面電極の前面側には、光散乱層、光透過性の保護膜、カラーフィルター層(R、G、B)もしくは光波長変換層などが設けられていてもよい。また、図2において背面シートの代わりにガラス基板等からなる前面シートが設けられていてもよい。
【0020】
また、上記においては電子輸送性の発光層とホール輸送層とからなる二層構造の例を示したが、本発明の有機EL素子は、ホール輸送性の発光層と電子輸送層とからなる二層構造であってもよいし、電子輸送層と発光層とホール輸送層とからなる三層構造であってもよいし、あるいはまた両性輸送性の発光層のみからなる単層型であってもよい。
【0021】
具体的に二層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陰極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/ホール輸送層/光透過性前面陽極
2)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陽極/ホール輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面陰極
3)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陰極/電子輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面陽極
4)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陽極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/電子輸送層/光透過性前面陰極
【0022】
三層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陰極/電子輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/ホール輸送層/光透過性前面陽極
2)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陽極/ホール輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/電子輸送層/光透過性前面陰極
【0023】
単層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面電極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面電極
【0024】
有機EL素子が上記いずれの基本構成をとる場合であっても、高屈折率光散乱層と発光層との間にある各中間層の屈折率は、発光層からの光の一定量以上が高屈折率光散乱層に入射するように調整される。
【0025】
図3は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の別の構成例を示す。図3において有機EL素子は、前面シート(支持体)31bの上に順に、高屈折率光散乱層(厚さ:1〜50μm)35、光透過性前面電極(陽極、厚さ:0.01〜20μm)32b、ホール注入層37、ホール輸送層34、有機エレクトロルミネッセンス発光層(電子輸送性、厚さ:10〜100nm、層の平面方向にR、G、Bなどの色相の発光を示す各種の有機化合物がそれぞれ区画され配置されている)33、電子注入層36、光透過性背面電極32a(陰極、厚さ:0.01〜20μm)、および光散乱反射層38が形成された構成を有する。
【0026】
発光層33より前面側に設けられた高屈折率光散乱層35は、発光層33と同等かそれ以上の屈折率を有する層である。また、発光層33と高屈折率光散乱層35との間にある中間層(ホール輸送層34、ホール注入層37および前面電極32b)はそれぞれ、発光層33から前面側に向かった光のうち40%以上(好ましくは70%以上、更に好ましくは85%以上)が高屈折率光散乱層35に入射するように、その屈折率が調整されている。
【0027】
前面側(図における下側)に配置された前面電極32bと背面電極32aとの間に直流電圧を印加すると、前面電極32bおよび背面電極32aからそれぞれホールと電子とが注入され、これらホールと電子はそれぞれ中間層を経て発光層33内の発光中心で再結合して有機分子を励起し、この有機分子が蛍光及び/又は燐光を発する。発光光のうち背面側に向かった光の大部分は、光散乱反射層38により反射されて前面側に向かう。そしてこの反射された光および前面側に向かった発光光は、屈折率が好適に調整された中間層により高効率で高屈折率光散乱層35に導かれ、そして高屈折率光散乱層25にて全反射することなく散乱して、高効率で前面シート31bに達する。よって、前面側から効率良く発光光を取り出すことができる。
【0028】
なお、本発明の有機EL素子は、図3に示した構成に限定されるものではなく、電子注入層やホール注入層はなくてもよいし、あるいは各層間に各種の補助層が設けられていてもよい。高屈折率光散乱層の前面側には、光透過性保護膜、カラーフィルター層または光波長変換層などが設けられていてもよい。また、前面シートの代わりにガラス基板等からなる背面シートが設けられていてもよい。
【0029】
また、この場合にも、様々な二層、三層または単層構造をとることが可能である。具体的に二層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)光散乱反射層/光透過性背面陰極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/ホール輸送層/光透過性前面陽極/高屈折率光散乱層/前面シート
2)光散乱反射層/光透過性背面陽極/ホール輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面陰極/高屈折率光散乱層/前面シート
3)光散乱反射層/光透過性背面陰極/電子輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面陽極/高屈折率光散乱層/前面シート
4)光散乱反射層/光透過性背面陽極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/電子輸送層/光透過性前面陰極/高屈折率光散乱層/前面シート
【0030】
三層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)光散乱反射層/光透過性背面陰極/電子輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/ホール輸送層/光透過性前面陽極/高屈折率光散乱層/前面シート
2)光散乱反射層/光透過性背面陽極/ホール輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/電子輸送層/光透過性前面陽極/高屈折率光散乱層/前面シート
【0031】
単層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)光散乱反射層/光透過性背面電極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面電極/高屈折率光散乱層/前面シート
【0032】
有機EL素子が上記いずれの基本構成をとる場合であっても、発光層と高屈折率光散乱層との間にある各中間層の屈折率は、発光層からの光の一定量以上が高屈折率光散乱層に入射するように調整される。
【0033】
図4に、本発明の有機EL素子の発光効率の向上を説明するための、平行平面からの光取り出し効率を表わすグラフを示す。すなわち、屈折率n1の層から屈折率n2の層に光を取り出す場合において、その屈折率比(n1/n2)と光取り出し効率ηとの関係は、図4のグラフで表される。光取り出し効率ηは、屈折率差が5%で30%、10%で42%、そして20%で55%低下する。なお、このグラフは発光層の片面のみを考慮した場合であり、発光層の両面に向かった光を片面から取り出した場合には、反対側で光反射がない限り取り出し効率はその1/2になる。
【0034】
次に、本発明の有機EL素子の構成要素となる各層の材料やサイズなどの例を説明する。
【0035】
[背面シート及び前面シート]
背面シートは、支持体として機能するものであり、光不透過性であっても光透過性であってもよい。一般には、ガラス基板、または有機高分子物質からなる樹脂基板が用いられる。一方、前面シートも支持体として機能するが、光透過性でなければならず、一般にはガラス基板が用いられる。ガラス基板の材料の例としては、ノンアルカリガラス(バリウムボロシリケートガラス、アルミノシリケートガラス)を挙げることができる。
【0036】
[高屈折率光散乱層]
高屈折率光散乱層としては、Y2O3、Ta2O5、BaTa2O6、BaTiO3、TiO2、Sr(Zr,Ti)O3、SrTiO3、PbTiO3、Al2O3、Si3N4、ZnS、ZrO2、PbNbO3、Pb(Zr,Ti)O3などの微粒子を樹脂中に分散させて層形成したものが用いられる。ただし、使用する樹脂の屈折率は、発光層の屈折率と略同等もしくはそれ以上の屈折率でなければならない。
【0037】
[光透過性電極]
光透過性電極の材料としては、ITO(インジウム−スズ酸化物)、ZnO:Al、特開平10−190028号公報に記載されている複合酸化物、特開平6−150723号公報に記載されているGaN系材料、特開平8−262225号公報や特開平8−264022号公報、同8−264023号公報に示されているZn2In2O5、(Zn,Cd,Mg)O−(B,Al,Ga,In,Y)2O3−(Si,Ge,Sn,Pb,Ti,Zr)O2、あるいは(Zn,Cd,Mg)O−(B,Al,Ba,In,Y)2O3−(Si,Sn,Pb)O、MgO−In2O3などを主成分とするもの、SnO2系材料を挙げることができる。あるいは、光透過性電極としてAl、Cu、Ag、Auなどの金属の超薄膜を用いることもできる。メッシュまたはストライプ状の金属電極であってもよい。
【0038】
[有機エレクトロルミネッセンス発光層]
発光層は、少なくとも一種の発光材料からなり、必要に応じて正孔輸送材料、電子輸送材料、ホスト材料を含んでいてもよい。
【0039】
本発明において発光材料に特に制限はなく、蛍光発光性有機化合物および燐光発光性有機化合物を用いることができる。蛍光発光性有機化合物としては、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ベリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラジリン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン誘導体、および8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体;ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、およびポリフルオレン誘導体等の高分子化合物などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、あるいは二種以上を併用してもよい。
【0040】
燐光発光性有機化合物としては、オルトメタル化金属錯体、およびポルフィリン金属錯体を好ましく挙げることができる。オルトメタル化金属錯体とは、例えば「有機金属化学−基礎と応用−」(150頁、232頁、山本明夫著、裳華房社、1982年)、および「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」(71−77頁、135−146頁、H. Yersin、Springer−Verlag社、1987年)などに記載されている化合物群の総称である。
【0041】
オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては、上記文献にも記載されているように種々のものがあり、その中でも、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−フェニルキノリン誘導体を好ましく挙げることができる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有していてもよい。オルトメタル化金属錯体は、これら配位子のほかに更に他の配位子を有していてもよい。これらオルトメタル化金属錯体の中でも、三重項励起子から発光する化合物は発光効率向上の点から、特に好ましく使用することができる。
【0042】
オルトメタル化金属錯体は、Inorg. Chem. 1991年、30号、1685頁;同 1988年、27号、3464頁;同 1994年、33号、545頁;Inorg. Chem. Acta 1991年、181号、245頁;J. Organomet. Chem. 1987年、335号、293頁;J. Am. Chem. Soc. 1985年、107号、1431頁などに記載されている公知の種々の方法により合成することができる。
このオルトメタル化金属錯体を含む発光層は、高輝度で発光効率に優れる点で有利である。
【0043】
ポルフィリン金属錯体の中では、ポルフィリン白金錯体が好ましい。
上記の燐光発光性有機化合物は、単独で使用してもよいし、あるいは二種以上を併用してもよい。また、蛍光発光性有機化合物と燐光発光性有機化合物とを一緒に使用してもよい。
【0044】
上記発光材料の薄膜は、各種の蒸着法や塗布法などを利用して形成することができる。あるいは、発光層は、有機物質中に少量の発光材料をドーピングしたものであってもよい。
【0045】
[ホール輸送層]
ホール輸送層の材料としては、トリフェニルジアミン(TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)等のジアミン化合物、ヒドラゾン化合物などの芳香族アミン化合物;および銅フタロシアニンなどの金属キレート錯体化合物を挙げることができる。
ホール輸送層は、公知の各種の蒸着法や塗布法などを利用して形成することができる。
【0046】
なお、発光層およびホール輸送層の材料については、「光・電子機能有機材料ハンドブック」(堀江一之、谷口彬雄編集代表、1997年、朝倉書店)を参照することができる。
【0047】
[電子注入層]
電子注入層の材料としては、銅フタロシアニンなどのポルフィリン誘導体、およびLiFなどの金属化合物を挙げることができる。
【0048】
[ホール注入層]
ホール注入層の材料としては、銅フタロシアニンなどのポルフィリン誘導体を挙げることができる。
【0049】
[光散乱反射層]
前記高屈折率光散乱層と同様な材料を用いることができる。
【0050】
【実施例】
[実施例1]
支持体として、厚さ700μmのガラスシートを用意した。この支持体上に、ポリエステル樹脂中にTiO2の微粒子(平均粒径:500nm)を分散してなる高屈折率光散乱層(白色光反射層を兼ねる、厚さ:約30μm)をスクリーン印刷により形成した。その上に、スパッタリングによりITO電極(厚さ:200nm)を形成した。さらに、真空蒸着により銅フタロシアニンからなる電子注入層(厚さ:10nm)、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)からなる発光層(厚さ:60nm)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)からなるホール輸送層(厚さ:40nm)、および銅フタロシアニンからなるホール注入層(厚さ:10nm)を順次形成した。次いで、スパッタリングによりITO電極(厚さ:200nm)を形成した。このようにして、図2に示した構成を有する本発明の有機EL素子を製造した。
【0051】
[実施例2]
支持体として、厚さ700μmのガラスシートを用意した。この支持体上に、ポリエステル樹脂中にTiO2の微粒子(平均粒径:500nm)を分散してなる高屈折率光散乱層(厚さ:約30μm)をスクリーン印刷により形成した。その上に、スパッタリングによりAl電極(厚さ:20nm)を形成した。さらに、真空蒸着によりLiFからなる電子注入層(厚さ:2nm)、Alq3からなる発光層(厚さ:60nm)、NPDからなるホール輸送層(厚さ:40nm)、および銅フタロシアニンからなるホール注入層(厚さ:10nm)を順次形成した。次いで、スパッタリングによりITO電極(厚さ:200nm)を形成した。このようにして、図2に示した構成を有する本発明の有機EL素子を製造した。
【0052】
[比較例1]
実施例1において、高屈折率光散乱層を設けないこと以外は実施例1と同様にして、比較のための有機EL素子を製造した。
【0053】
[有機EL素子の性能評価1]
上記の各有機EL素子について、下記の方法により評価した。
東洋テクニカ社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、有機EL素子に直流電圧を印加して発光させ、発光輝度および直流電圧を測定した。その時の最高輝度をLmax、Lmaxが得られた電圧をVmaxとした。また、200Cd/m2の発光輝度時の発光外部量子効率をη200とした。得られた結果をまとめて表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の高屈折率光散乱層を有する有機EL素子(実施例1、2)は、高屈折率光散乱層の無い従来の有機EL素子(比較例1)に比べて、顕著に発光輝度が高く、発光外部量子効率も高かった。
【0056】
[実施例3]
支持体として、厚さ700μmのガラスシートを用意した。この支持体上に、ポリエステル樹脂中にTiO2の微粒子(平均粒径:500nm)を分散してなる高屈折率光散乱層(白色光反射層を兼ねる、厚さ:約30μm)をスクリーン印刷により形成した。その上に、スパッタリングによりITO電極(厚さ:200nm)を形成した。さらに、真空蒸着により銅フタロシアニンからなるホール注入層(厚さ:10nm)、NPDからなるホール輸送層(厚さ:40nm)、Alq3からなる発光層(厚さ:60nm)、およびLiFからなる電子注入層(厚さ:2nm)を順次形成した。次いで、真空蒸着によりAl層(厚さ:10nm)、そしてスパッタリングによりITO電極(厚さ:200nm)を形成した。最後に、ポリエステル樹脂中にTiO2の微粒子(平均粒径:500nm)を分散してなる光散乱反射層(厚さ:約30μm)をスクリーン印刷により形成した。このようにして、図3に示したような構成を有する本発明の有機EL素子を製造した。
【0057】
[比較例2]
実施例3において、高屈折率光散乱層を設けないこと以外は実施例3と同様にして、比較のための有機EL素子を製造した。
【0058】
[有機EL素子の性能評価2]
上記の各有機EL素子について、前述と同様の方法により評価を行った。得られた結果をまとめて表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2の結果から明らかなように、本発明の高屈折率光散乱層を有する有機EL素子(実施例3)は、高屈折率光散乱層の無い有機EL素子(比較例2)に比べて、低い印加電圧で著しく高い発光輝度を示し、発光外部量子効率も高かった。
【0061】
【発明の効果】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、従来と同程度のサイズで、かつ従来と同程度かそれ以下の消費電力で、発光層で発光した光を高い取り出し効率で外部に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の有機EL素子の構成の例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子の構成の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機EL素子の構成の別例を示す概略断面図である。
【図4】平行平面からの光取り出し効率を表すグラフである。
【符号の説明】
21a 背面シート
22a、32a 光透過性背面電極
22b 光透過性前面電極
23、33 有機エレクトロルミネッセンス発光層
24、34 ホール輸送層
25、35 高屈折率光散乱層
26、36 電子注入層
27、37 ホール注入層
31b 前面シート
38 光散乱反射層
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気エネルギーの印加により発光を示す有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、マルチメディアの発展に伴って、小型かつ軽量の表示装置であるフラットパネルディスプレイに対する需要が高まっている。フラットパネルディスプレイ用素子として液晶表示素子が広範囲に用いられてきたが、液晶自体は自己発光をしないため、液晶表示素子では、液晶層の背面側に光源(バックライト)を配置して、その光源から発せられる光の透過を液晶層で制御して、透過画像を得る構成が一般的である。カラー画像を得るためには、液晶層の表面にカラーフィルターを付設する。そして、そのカラーフィルターを透過する色光の組合せによりカラー画像が得られる。
【0003】
液晶表示素子では、上記のように、別に光源を付設することが必要となり、消費する電気エネルギーも多いことから、電気エネルギーを付与するための小型電池が開発されている(例えば、リチウム電池)。しかしながら、そのような技術的発展にも拘らず、その小型化と軽量化には限界がある。液晶表示素子として、バックライトを用いない反射型のタイプの開発も進んでいるが、特にカラー画像を表示すると、その表示コントラストが低く、また表示画像の質が外光の条件によって大きく左右されるため、利用可能な範囲には限界がある。
【0004】
従って、僅かな電気エネルギーの付与により自己発光を示し、別に光源を容易しなくても画像表示が可能な表示材料として、エレクトロルミネッセンス素子(一般にEL素子と呼ばれる)が注目を浴びている。エレクトロルミネッセンス素子には、使用する材料の相違により無機EL素子と有機EL素子とがあるが、特に有機EL素子は、無機EL素子よりもはるかに低い電圧で駆動することができ、また発光材料である有機化合物を選ぶことによって好適な色彩に発光する発光素子が得られるので、フルカラー表示装置としての利用が期待できる。添付図面の図1に、現在実用化されている有機エレクトロルミネッセンス素子の代表的な構成例を示す。
【0005】
図1に示す有機EL素子は、電子輸送性の発光層とホール輸送層とを有する積層型(二層構造)の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、発光を取り出す側となる透明なガラス基板(または透明プラスチック材料基板)11bの上に順に、透明な前面電極(ITO電極)12b、ホール(正孔)輸送層14、蛍光を発する有機化合物の薄膜からなる発光層(電子輸送性、厚さは通常10〜100nm)13、および背面電極(金属電極)12aが形成された構成を有する。前面側(図における下側)に配置された前面電極12bと背面電極12aとの間に直流電圧を印加すると、陽極である前面電極12bからホール(正孔)が注入され、これらホールは、ホール輸送層14により発光層13との界面まで輸送されて発光層13へ注入される。一方、陰極の背面電極12aからは電子が注入され、これら電子は、発光層13内を輸送されてその界面まで達し、ホールと再結合することになる。このホールと電子の再結合により有機化合物中に励起子が生成し、生成した励起子は励起状態から基底状態に戻るときに蛍光を発する。この発光は、透明電極12bと透明基板11bとを通して前面側から取り出される。
【0006】
図1に示した構成の有機EL素子以外にも、ホール輸送性の発光層と電子輸送層とからなる二層構造のもの、電子輸送層と両性輸送性の発光層とホール輸送層とからなる三層構造のもの、および両性輸送性の発光層のみからなる単層型のものなどが知られている。また、各層の間には各種の補助層が任意に設けられることがある。
【0007】
特開平8−315985号公報には、発光面全体として均一な発光を得るために、光取り出し側の基板を光散乱性とした有機エレクトロルミネッセンス素子が開示されている。また、特開平11−8070号公報には、隣接する画素への光もれを抑制して鮮明な表示を得、また電極パターンやセグメント電極からの引き出し線の影響を最小限に留めるために、発光部分に対応するように前面電極の前面側に光拡散層を配置した有機エレクトロルミネッセンス素子が開示されている。いずれの素子も、光散乱性または光拡散性の材料(層)は発光層よりも前面側に配置されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、前述したように、僅かな電気エネルギーで自己発光を示すため、優れた表示材料と考えられているが、これまでに製品として開発された有機ELディスプレイでは、安定性が充分でないことや、発光効率が充分とは言えないことなどの問題点が指摘されている。特に、有機EL素子は、無機EL素子に比べて一般的に構成材料の屈折率が低いので、その光取り出し効率はやや高いというものの、発光量の20%程度に過ぎず、更なる改良が望まれている。
【0009】
従って、本発明は、従来と同程度の消費電力で、外部に充分な発光を取り出すことのできる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを主な目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者は、有機エレクトロルミネッセンス素子の問題点について研究した結果、発光層の背面側および/または前面側に、発光層の屈折率と同程度もしくはそれ以上の屈折率を示す高屈折率光散乱層を配置し、かつ発光層と高屈折率光散乱層との間に存在する材料の屈折率を、発光層の屈折率と同程度もしくはそれ以上高いレベルに維持することによって、発光層から発せられた光が外部に効率良く取り出されることを見い出し、本発明に到達した。
【0011】
本発明は、背面電極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面電極が、この順に積層された基本構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、背面電極が光透過性電極であり、背面電極の背面側に、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の80%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする高屈折率光散乱層が設けられ、そして該発光層から背面側に向けて発せられる光の40%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子にある。
【0012】
また、本発明は、背面電極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面電極が、この順に積層された基本構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、背面電極が光透過性であり、背面電極の背面側に光散乱反射層が設けられ、さらに光透過性前面電極の前面側に、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の80%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする高屈折率光散乱層が設けられ、そして該発光層から前面側に向けて発せられる光の40%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子にもある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の好ましい態様は下記に示す通りである。
(1)高屈折率光散乱層が、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の95%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする層であって、該発光層から背面側および/または前面側に向けて発せられる光の70%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されている。
(2)高屈折率光散乱層が、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の99%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする層であって、該発光層から背面側および/または前面側に向けて発せられる光の85%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されている。
【0014】
(3)少なくとも背面シート、高屈折率光散乱層、光透過性背面陰極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、ホール輸送層、および光透過性前面陽極がこの順に積層された構成を有する。
(4)少なくとも背面シート、高屈折率光散乱層、光透過性背面陽極、ホール輸送層、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面陰極がこの順に積層された構成を有する。
(5)少なくとも光散乱反射層、光透過性背面陰極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、ホール輸送層、光透過性前面陽極、高屈折率光散乱層、および前面シートがこの順に積層された構成を有する。
(6)少なくとも光散乱反射層、光透過性背面陽極、ホール輸送層、有機エレクトロルミネッセンス発光層、光透過性前面陰極、高屈折率光散乱層、および前面シートがこの順に積層された構成を有する。
(7)有機エレクトロルミネッセンス発光層が可視光を発する有機材料から形成されている。
(8)有機エレクトロルミネッセンス発光層が、互いに分離区画された領域に形成された、発光色の色相が互いに異なる二種以上の発光層からなる。
(9)光透過性前面電極の前面側にカラーフィルター層及び/又はNDフィルター層が付設されている。
【0015】
以下に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の構成について、その代表的な構成例を示す添付図面を参照しながら詳しく説明する。なお、本明細書の説明において、高屈折率とは、屈折率が発光層の屈折率を基準として、その80%以上(好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上)であることを意味し、高屈折率が付された層もしくは材料は、そのような高い屈折率を示す層もしくは当該の層にそのような高い屈折率を与える材料である。
【0016】
図2は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の代表的な構成を示す。図2において有機EL素子は、背面シート(支持体)21aの上に順に、高屈折率光散乱層(厚さ:1〜50μm)25、光透過性背面電極22a(陰極、厚さ:0.01〜20μm)、電子注入層26、有機エレクトロルミネッセンス発光層(電子輸送性、厚さ:10〜100nm、層の平面方向にR、G、Bなどの色相の発光を示す各種の有機化合物がそれぞれ区画され配置されている)23、ホール輸送層24、ホール注入層27、および光透過性前面電極(陽極、厚さ:0.01〜20μm)22bが形成された構成を有する。
【0017】
有機エレクトロルミネッセンス発光層23は、蛍光及び/又は燐光を発する有機化合物の薄膜からなる層である。発光層23より背面側に設けられた高屈折率光散乱層25は、発光層23と同等かそれ以上の屈折率を有する層であり、光反射層を兼ねている。電子注入層26およびホール注入層27はそれぞれ、電子の注入およびホールの注入を促して低電圧化することにより、発光効率を高める役割を果たす。また、発光層23と高屈折率光散乱層25との間にある中間層(背面電極22aおよび電子注入層26)はそれぞれ、発光層23から背面側に向かった光のうち40%以上(好ましくは70%以上、更に好ましくは85%以上)が高屈折率光散乱層25に入射するように、その屈折率が調整されている。
【0018】
前面側(図における下側)に配置された前面電極22bと背面電極22aとの間に直流電圧(数V乃至数十V)を印加すると、前面電極(ホール注入電極)22bおよび背面電極(電子注入電極)22aからそれぞれホールと電子とが注入される。これらホールと電子はそれぞれ、中間層を経て発光層23内の発光中心で再結合して有機分子を励起状態にし、この有機分子は、蛍光を発しながら励起状態から基底状態に戻る。発光光は、前面電極22bから取り出される。発光光のうち、背面側に向かった光もその大部分が、屈折率が好適に調整された中間層により高効率で高屈折率光散乱層25に導かれ、光反射層を兼ねる高屈折率光散乱層25により反射されて前面側に向かう。よって、前面側から効率良く発光光を取り出すことができる。
【0019】
なお、本発明の有機EL素子は、図2に示した構成に限定されるものではなく、電子注入層およびホール注入層はなくてもよいし、あるいは各層の間に更に各種の補助層が設けられていてもよい。前面電極の前面側には、光散乱層、光透過性の保護膜、カラーフィルター層(R、G、B)もしくは光波長変換層などが設けられていてもよい。また、図2において背面シートの代わりにガラス基板等からなる前面シートが設けられていてもよい。
【0020】
また、上記においては電子輸送性の発光層とホール輸送層とからなる二層構造の例を示したが、本発明の有機EL素子は、ホール輸送性の発光層と電子輸送層とからなる二層構造であってもよいし、電子輸送層と発光層とホール輸送層とからなる三層構造であってもよいし、あるいはまた両性輸送性の発光層のみからなる単層型であってもよい。
【0021】
具体的に二層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陰極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/ホール輸送層/光透過性前面陽極
2)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陽極/ホール輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面陰極
3)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陰極/電子輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面陽極
4)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陽極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/電子輸送層/光透過性前面陰極
【0022】
三層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陰極/電子輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/ホール輸送層/光透過性前面陽極
2)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面陽極/ホール輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/電子輸送層/光透過性前面陰極
【0023】
単層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)背面シート/高屈折率光散乱層/光透過性背面電極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面電極
【0024】
有機EL素子が上記いずれの基本構成をとる場合であっても、高屈折率光散乱層と発光層との間にある各中間層の屈折率は、発光層からの光の一定量以上が高屈折率光散乱層に入射するように調整される。
【0025】
図3は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の別の構成例を示す。図3において有機EL素子は、前面シート(支持体)31bの上に順に、高屈折率光散乱層(厚さ:1〜50μm)35、光透過性前面電極(陽極、厚さ:0.01〜20μm)32b、ホール注入層37、ホール輸送層34、有機エレクトロルミネッセンス発光層(電子輸送性、厚さ:10〜100nm、層の平面方向にR、G、Bなどの色相の発光を示す各種の有機化合物がそれぞれ区画され配置されている)33、電子注入層36、光透過性背面電極32a(陰極、厚さ:0.01〜20μm)、および光散乱反射層38が形成された構成を有する。
【0026】
発光層33より前面側に設けられた高屈折率光散乱層35は、発光層33と同等かそれ以上の屈折率を有する層である。また、発光層33と高屈折率光散乱層35との間にある中間層(ホール輸送層34、ホール注入層37および前面電極32b)はそれぞれ、発光層33から前面側に向かった光のうち40%以上(好ましくは70%以上、更に好ましくは85%以上)が高屈折率光散乱層35に入射するように、その屈折率が調整されている。
【0027】
前面側(図における下側)に配置された前面電極32bと背面電極32aとの間に直流電圧を印加すると、前面電極32bおよび背面電極32aからそれぞれホールと電子とが注入され、これらホールと電子はそれぞれ中間層を経て発光層33内の発光中心で再結合して有機分子を励起し、この有機分子が蛍光及び/又は燐光を発する。発光光のうち背面側に向かった光の大部分は、光散乱反射層38により反射されて前面側に向かう。そしてこの反射された光および前面側に向かった発光光は、屈折率が好適に調整された中間層により高効率で高屈折率光散乱層35に導かれ、そして高屈折率光散乱層25にて全反射することなく散乱して、高効率で前面シート31bに達する。よって、前面側から効率良く発光光を取り出すことができる。
【0028】
なお、本発明の有機EL素子は、図3に示した構成に限定されるものではなく、電子注入層やホール注入層はなくてもよいし、あるいは各層間に各種の補助層が設けられていてもよい。高屈折率光散乱層の前面側には、光透過性保護膜、カラーフィルター層または光波長変換層などが設けられていてもよい。また、前面シートの代わりにガラス基板等からなる背面シートが設けられていてもよい。
【0029】
また、この場合にも、様々な二層、三層または単層構造をとることが可能である。具体的に二層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)光散乱反射層/光透過性背面陰極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/ホール輸送層/光透過性前面陽極/高屈折率光散乱層/前面シート
2)光散乱反射層/光透過性背面陽極/ホール輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面陰極/高屈折率光散乱層/前面シート
3)光散乱反射層/光透過性背面陰極/電子輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面陽極/高屈折率光散乱層/前面シート
4)光散乱反射層/光透過性背面陽極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/電子輸送層/光透過性前面陰極/高屈折率光散乱層/前面シート
【0030】
三層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)光散乱反射層/光透過性背面陰極/電子輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/ホール輸送層/光透過性前面陽極/高屈折率光散乱層/前面シート
2)光散乱反射層/光透過性背面陽極/ホール輸送層/有機エレクトロルミネッセンス発光層/電子輸送層/光透過性前面陽極/高屈折率光散乱層/前面シート
【0031】
単層構造の場合には、次のような基本構成をとることができる。
1)光散乱反射層/光透過性背面電極/有機エレクトロルミネッセンス発光層/光透過性前面電極/高屈折率光散乱層/前面シート
【0032】
有機EL素子が上記いずれの基本構成をとる場合であっても、発光層と高屈折率光散乱層との間にある各中間層の屈折率は、発光層からの光の一定量以上が高屈折率光散乱層に入射するように調整される。
【0033】
図4に、本発明の有機EL素子の発光効率の向上を説明するための、平行平面からの光取り出し効率を表わすグラフを示す。すなわち、屈折率n1の層から屈折率n2の層に光を取り出す場合において、その屈折率比(n1/n2)と光取り出し効率ηとの関係は、図4のグラフで表される。光取り出し効率ηは、屈折率差が5%で30%、10%で42%、そして20%で55%低下する。なお、このグラフは発光層の片面のみを考慮した場合であり、発光層の両面に向かった光を片面から取り出した場合には、反対側で光反射がない限り取り出し効率はその1/2になる。
【0034】
次に、本発明の有機EL素子の構成要素となる各層の材料やサイズなどの例を説明する。
【0035】
[背面シート及び前面シート]
背面シートは、支持体として機能するものであり、光不透過性であっても光透過性であってもよい。一般には、ガラス基板、または有機高分子物質からなる樹脂基板が用いられる。一方、前面シートも支持体として機能するが、光透過性でなければならず、一般にはガラス基板が用いられる。ガラス基板の材料の例としては、ノンアルカリガラス(バリウムボロシリケートガラス、アルミノシリケートガラス)を挙げることができる。
【0036】
[高屈折率光散乱層]
高屈折率光散乱層としては、Y2O3、Ta2O5、BaTa2O6、BaTiO3、TiO2、Sr(Zr,Ti)O3、SrTiO3、PbTiO3、Al2O3、Si3N4、ZnS、ZrO2、PbNbO3、Pb(Zr,Ti)O3などの微粒子を樹脂中に分散させて層形成したものが用いられる。ただし、使用する樹脂の屈折率は、発光層の屈折率と略同等もしくはそれ以上の屈折率でなければならない。
【0037】
[光透過性電極]
光透過性電極の材料としては、ITO(インジウム−スズ酸化物)、ZnO:Al、特開平10−190028号公報に記載されている複合酸化物、特開平6−150723号公報に記載されているGaN系材料、特開平8−262225号公報や特開平8−264022号公報、同8−264023号公報に示されているZn2In2O5、(Zn,Cd,Mg)O−(B,Al,Ga,In,Y)2O3−(Si,Ge,Sn,Pb,Ti,Zr)O2、あるいは(Zn,Cd,Mg)O−(B,Al,Ba,In,Y)2O3−(Si,Sn,Pb)O、MgO−In2O3などを主成分とするもの、SnO2系材料を挙げることができる。あるいは、光透過性電極としてAl、Cu、Ag、Auなどの金属の超薄膜を用いることもできる。メッシュまたはストライプ状の金属電極であってもよい。
【0038】
[有機エレクトロルミネッセンス発光層]
発光層は、少なくとも一種の発光材料からなり、必要に応じて正孔輸送材料、電子輸送材料、ホスト材料を含んでいてもよい。
【0039】
本発明において発光材料に特に制限はなく、蛍光発光性有機化合物および燐光発光性有機化合物を用いることができる。蛍光発光性有機化合物としては、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ベリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラジリン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン誘導体、および8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体;ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、およびポリフルオレン誘導体等の高分子化合物などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、あるいは二種以上を併用してもよい。
【0040】
燐光発光性有機化合物としては、オルトメタル化金属錯体、およびポルフィリン金属錯体を好ましく挙げることができる。オルトメタル化金属錯体とは、例えば「有機金属化学−基礎と応用−」(150頁、232頁、山本明夫著、裳華房社、1982年)、および「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」(71−77頁、135−146頁、H. Yersin、Springer−Verlag社、1987年)などに記載されている化合物群の総称である。
【0041】
オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては、上記文献にも記載されているように種々のものがあり、その中でも、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−フェニルキノリン誘導体を好ましく挙げることができる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有していてもよい。オルトメタル化金属錯体は、これら配位子のほかに更に他の配位子を有していてもよい。これらオルトメタル化金属錯体の中でも、三重項励起子から発光する化合物は発光効率向上の点から、特に好ましく使用することができる。
【0042】
オルトメタル化金属錯体は、Inorg. Chem. 1991年、30号、1685頁;同 1988年、27号、3464頁;同 1994年、33号、545頁;Inorg. Chem. Acta 1991年、181号、245頁;J. Organomet. Chem. 1987年、335号、293頁;J. Am. Chem. Soc. 1985年、107号、1431頁などに記載されている公知の種々の方法により合成することができる。
このオルトメタル化金属錯体を含む発光層は、高輝度で発光効率に優れる点で有利である。
【0043】
ポルフィリン金属錯体の中では、ポルフィリン白金錯体が好ましい。
上記の燐光発光性有機化合物は、単独で使用してもよいし、あるいは二種以上を併用してもよい。また、蛍光発光性有機化合物と燐光発光性有機化合物とを一緒に使用してもよい。
【0044】
上記発光材料の薄膜は、各種の蒸着法や塗布法などを利用して形成することができる。あるいは、発光層は、有機物質中に少量の発光材料をドーピングしたものであってもよい。
【0045】
[ホール輸送層]
ホール輸送層の材料としては、トリフェニルジアミン(TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)等のジアミン化合物、ヒドラゾン化合物などの芳香族アミン化合物;および銅フタロシアニンなどの金属キレート錯体化合物を挙げることができる。
ホール輸送層は、公知の各種の蒸着法や塗布法などを利用して形成することができる。
【0046】
なお、発光層およびホール輸送層の材料については、「光・電子機能有機材料ハンドブック」(堀江一之、谷口彬雄編集代表、1997年、朝倉書店)を参照することができる。
【0047】
[電子注入層]
電子注入層の材料としては、銅フタロシアニンなどのポルフィリン誘導体、およびLiFなどの金属化合物を挙げることができる。
【0048】
[ホール注入層]
ホール注入層の材料としては、銅フタロシアニンなどのポルフィリン誘導体を挙げることができる。
【0049】
[光散乱反射層]
前記高屈折率光散乱層と同様な材料を用いることができる。
【0050】
【実施例】
[実施例1]
支持体として、厚さ700μmのガラスシートを用意した。この支持体上に、ポリエステル樹脂中にTiO2の微粒子(平均粒径:500nm)を分散してなる高屈折率光散乱層(白色光反射層を兼ねる、厚さ:約30μm)をスクリーン印刷により形成した。その上に、スパッタリングによりITO電極(厚さ:200nm)を形成した。さらに、真空蒸着により銅フタロシアニンからなる電子注入層(厚さ:10nm)、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)からなる発光層(厚さ:60nm)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)からなるホール輸送層(厚さ:40nm)、および銅フタロシアニンからなるホール注入層(厚さ:10nm)を順次形成した。次いで、スパッタリングによりITO電極(厚さ:200nm)を形成した。このようにして、図2に示した構成を有する本発明の有機EL素子を製造した。
【0051】
[実施例2]
支持体として、厚さ700μmのガラスシートを用意した。この支持体上に、ポリエステル樹脂中にTiO2の微粒子(平均粒径:500nm)を分散してなる高屈折率光散乱層(厚さ:約30μm)をスクリーン印刷により形成した。その上に、スパッタリングによりAl電極(厚さ:20nm)を形成した。さらに、真空蒸着によりLiFからなる電子注入層(厚さ:2nm)、Alq3からなる発光層(厚さ:60nm)、NPDからなるホール輸送層(厚さ:40nm)、および銅フタロシアニンからなるホール注入層(厚さ:10nm)を順次形成した。次いで、スパッタリングによりITO電極(厚さ:200nm)を形成した。このようにして、図2に示した構成を有する本発明の有機EL素子を製造した。
【0052】
[比較例1]
実施例1において、高屈折率光散乱層を設けないこと以外は実施例1と同様にして、比較のための有機EL素子を製造した。
【0053】
[有機EL素子の性能評価1]
上記の各有機EL素子について、下記の方法により評価した。
東洋テクニカ社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、有機EL素子に直流電圧を印加して発光させ、発光輝度および直流電圧を測定した。その時の最高輝度をLmax、Lmaxが得られた電圧をVmaxとした。また、200Cd/m2の発光輝度時の発光外部量子効率をη200とした。得られた結果をまとめて表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の高屈折率光散乱層を有する有機EL素子(実施例1、2)は、高屈折率光散乱層の無い従来の有機EL素子(比較例1)に比べて、顕著に発光輝度が高く、発光外部量子効率も高かった。
【0056】
[実施例3]
支持体として、厚さ700μmのガラスシートを用意した。この支持体上に、ポリエステル樹脂中にTiO2の微粒子(平均粒径:500nm)を分散してなる高屈折率光散乱層(白色光反射層を兼ねる、厚さ:約30μm)をスクリーン印刷により形成した。その上に、スパッタリングによりITO電極(厚さ:200nm)を形成した。さらに、真空蒸着により銅フタロシアニンからなるホール注入層(厚さ:10nm)、NPDからなるホール輸送層(厚さ:40nm)、Alq3からなる発光層(厚さ:60nm)、およびLiFからなる電子注入層(厚さ:2nm)を順次形成した。次いで、真空蒸着によりAl層(厚さ:10nm)、そしてスパッタリングによりITO電極(厚さ:200nm)を形成した。最後に、ポリエステル樹脂中にTiO2の微粒子(平均粒径:500nm)を分散してなる光散乱反射層(厚さ:約30μm)をスクリーン印刷により形成した。このようにして、図3に示したような構成を有する本発明の有機EL素子を製造した。
【0057】
[比較例2]
実施例3において、高屈折率光散乱層を設けないこと以外は実施例3と同様にして、比較のための有機EL素子を製造した。
【0058】
[有機EL素子の性能評価2]
上記の各有機EL素子について、前述と同様の方法により評価を行った。得られた結果をまとめて表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2の結果から明らかなように、本発明の高屈折率光散乱層を有する有機EL素子(実施例3)は、高屈折率光散乱層の無い有機EL素子(比較例2)に比べて、低い印加電圧で著しく高い発光輝度を示し、発光外部量子効率も高かった。
【0061】
【発明の効果】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子によれば、従来と同程度のサイズで、かつ従来と同程度かそれ以下の消費電力で、発光層で発光した光を高い取り出し効率で外部に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の有機EL素子の構成の例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子の構成の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機EL素子の構成の別例を示す概略断面図である。
【図4】平行平面からの光取り出し効率を表すグラフである。
【符号の説明】
21a 背面シート
22a、32a 光透過性背面電極
22b 光透過性前面電極
23、33 有機エレクトロルミネッセンス発光層
24、34 ホール輸送層
25、35 高屈折率光散乱層
26、36 電子注入層
27、37 ホール注入層
31b 前面シート
38 光散乱反射層
Claims (18)
- 背面電極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面電極が、この順に積層された基本構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、背面電極が光透過性電極であり、背面電極の背面側に、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の80%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする高屈折率光散乱層が設けられ、そして該発光層から背面側に向けて発せられる光の40%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 高屈折率光散乱層が、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の95%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする層であって、該発光層から背面側に向けて発せられる光の70%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されている請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 高屈折率光散乱層が、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の99%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする層であって、該発光層から背面側に向けて発せられる光の85%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されている請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 少なくとも背面シート、高屈折率光散乱層、光透過性背面陰極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、ホール輸送層、および光透過性前面陽極が、この順に積層された構成を有する請求項1乃至3のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 少なくとも背面シート、高屈折率光散乱層、光透過性背面陽極、ホール輸送層、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面陰極が、この順に積層された構成を有する請求項1乃至3のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- さらに、光透過性前面電極の前面側に光散乱層が付設されている請求項1乃至5のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 有機エレクトロルミネッセンス発光層が可視光を発する有機材料から形成されている請求項1乃至6のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 有機エレクトロルミネッセンス発光層が、互いに分離区画された領域に形成された、発光色の色相が互いに異なる二種以上の発光層からなる請求項1乃至7のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 光透過性前面電極の前面側にカラーフィルター層及び/又はNDフィルター層が付設されている請求項1乃至8のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 背面電極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、および光透過性前面電極が、この順に積層された基本構成を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、背面電極が光透過性であり、背面電極の背面側に光散乱反射層が設けられ、さらに光透過性前面電極の前面側に、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の80%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする高屈折率光散乱層が設けられ、そして該発光層から前面側に向けて発せられる光の40%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 高屈折率光散乱層が、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の95%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする層であって、該発光層から前面側に向けて発せられる光の70%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されている請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 高屈折率光散乱層が、有機エレクトロルミネッセンス発光層の屈折率の99%以上の屈折率を有する材料を主構成成分とする層であって、該発光層から前面側に向けて発せられる光の85%以上の光が該高屈折率光散乱層に入射するように、発光層と高屈折率光散乱層との間に介在する層の屈折率が調整されている請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 光透過性前面電極が高屈折率の光透過性電極である請求項10乃至12のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 少なくとも光散乱反射層、光透過性背面陰極、有機エレクトロルミネッセンス発光層、ホール輸送層、光透過性前面陽極、高屈折率光散乱層、および前面シートが、この順に積層された構成を有する請求項10乃至13のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 少なくとも光散乱反射層、光透過性背面陽極、ホール輸送層、有機エレクトロルミネッセンス発光層、光透過性前面陰極、高屈折率光散乱層、および前面シートが、この順に積層された構成を有する請求項10乃至13のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 有機エレクトロルミネッセンス発光層が可視光を発する有機材料から形成されている請求項10乃至15のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 有機エレクトロルミネッセンス発光層が、互いに分離区画された領域に形成された、発光色の色相が互いに異なる二種以上の発光層からなる請求項10乃至16のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
- 高屈折率光散乱層の前面側にカラーフィルター層及び/又はNDフィルター層が付設されている請求項10乃至17のいずれかの項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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