JP2004008085A - 変異アルカリプロテアーゼ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バチルス属由来の特定なアミノ酸配列又はこれと80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するアルカテプロテアーゼについて、バチルス属由来の特定なアミノ酸配列の(a)163位、(b)170位若しくは(c)171位又はこれらに相当する位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した変異アルカリプロテアーゼ;これをコードする遺伝子。
【効果】高濃度の脂肪酸存在下でも活性を有し、蛋白質の他に皮脂等が混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性能を発揮し、洗浄剤配合酵素として有用なアルカリプロテアーゼを効率よく生産、提供できる。
【選択図】 なし
【効果】高濃度の脂肪酸存在下でも活性を有し、蛋白質の他に皮脂等が混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性能を発揮し、洗浄剤配合酵素として有用なアルカリプロテアーゼを効率よく生産、提供できる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗剤用酵素として有用な変異アルカリプロテアーゼに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
産業分野でのプロテアーゼ利用の歴史は古く、衣料用洗剤をはじめとする洗浄剤から繊維の改質剤、皮革処理剤、化粧料、浴剤、食品改質剤或いは医薬品としての利用まで非常に多岐にわたっている。中でも最も工業的に大量に生産されているものが洗剤用プロテアーゼであり、例えば、アルカラーゼ、サビナーゼ(ノボザイム)、マクサカル(ジェネンコ)、ブラップ(ヘンケル)、及びKAP(花王)等が知られている。
【0003】
洗剤中にプロテアーゼを配合する目的は、衣料に付着した蛋白質を主成分とする汚れを分解して低分子化し、界面活性剤による可溶化を促進することであるが、実際の汚れは蛋白質だけでなく皮脂由来の脂質や固体粒子等、有機物と無機物が入り混じった複数の成分を内包する複合汚れであり、このような複合汚れに対する洗浄性の高い洗浄剤が望まれていた。
【0004】
かかる観点から本発明者らは、高濃度の脂肪酸存在下でも十分なカゼイン分解活性を保持し、蛋白質だけでなく皮脂等の混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性を有する分子量約43,000のアルカリプロテアーゼを数種見出し、先に特許出願した(WO99/18218)。そして、これらのアルカリプロテアーゼ群は、その分子量、一次構造、酵素学的性質、特に非常に強い酸化剤耐性を有する点で、従来から知られているバチルス属細菌由来のセリンプロテアーゼであるズブチリシンとは異なり、新しいズブチリシンサブファミリーに分類することが提唱されている(Saekiら, Biochem.Biophys.Res.Commun.,279,(2000),313−319)。
【0005】
上記アルカリプロテアーゼは高濃度の脂肪酸存在下でも十分なカゼイン分解活性を保持し、蛋白質だけでなく皮脂等の混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性を有するプロテアーゼではあるが、更なる洗浄性の向上を考えると、当該アルカリプロテアーゼの性質を保持し、更に強力な蛋白質分解力をもつアルカリプロテアーゼが求められていた。
【0006】
一方、一般に蛋白質分解力を向上させる方法としては、プロテアーゼ遺伝子を改変しプロテアーゼの蛋白質量当たりの分解活性、すなわち比活性を向上させる方法があり、ズブチリシンの比活性向上に対するタンパク質工学的改変に関しても詳細に報告されている(Wellsら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,84,(1987),1219−1223、Wellsら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,84,(1987),5167−5171、Taguchiら,Appl.Environ.Microbiol.,64,(1998),492−495、Takagiら、Protein Eng.,11,(1998),1205−1210、Bryan,Biochim.Biophys.Acta,1543,(2000),203−222等)。しかしながら、これまでに報告されている改変は、ある特定の合成ペプチドに対する比活性は向上させるものの、洗浄力に結びつくと考えられる天然基質に対する活性を向上させるものではなかった。
【0007】
他方、天然基質に対する比活性向上に関しては、例えばズブチリシンEの31位のイソロイシンをロイシンに置換することにより、カゼイン基質に対する分解活性の向上が得られるとする報告があるが(Takagiら,J.Biol.Chem.,36,(1988),19592−19596)、上記アルカリプロテアーゼにおける当該アミノ酸は元来ロイシンであること、また上記アルカリプロテアーゼ群は分子量約28,000のズブチリシンとは酵素学的性質が異なることから、当該プロテアーゼの比活性向上にはこの事例も参考になるものではなかった。
【0008】
本発明は、より強力な蛋白質分解力をもち、優れた洗浄能力を発揮するアルカリプロテアーゼを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記アルカリプロテアーゼの変異体について種々検討した結果、当該アルカリプロテアーゼにおいて、そのアミノ酸配列中の特定位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した変異体が、天然基質に対して優れた比活性を有し、洗浄用酵素として有用であることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、配列番号1で示されるアミノ酸配列又はこれと80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼについて、配列番号1の(a)163位、(b)170位若しくは(c)171位又はこれらに相当する位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した変異アルカリプロテアーゼ、及びそれをコードする遺伝子を提供するものである。
【0011】
また本発明は、該遺伝子を含有するベクター、該ベクターを含有する形質転換体を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の変異アルカリプロテアーゼは、配列番号1で示されるアミノ酸配列又はこれと80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼを変異の対象となるプロテアーゼ(以下、「親アルカリプロテアーゼ」ともいう)とし、当該配列番号1の(a)163位、(b)170位若しくは(c)171位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換してなるものであり、これらは野生型の変異体或いは人為的に変異を施した変異体であってもよい。
【0013】
親アルカリプロテアーゼである「配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する高アルカリプロテアーゼ」としては、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するKP43[バチルスエスピーKSM−KP43(FERMBP−6532)由来、WO99/18218]が挙げられる。
【0014】
親アルカリプロテアーゼである配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアルカリプロテアーゼとしては、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に95%以上の相同性を有するものが好ましく、野生型又は野生型の変異体であってもよい。
また、その性質として酸化剤耐性を有し、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であるものが好ましく、特に酸化剤耐性を有し、アルカリ側(pH8以上)で作用し、かつ安定であり、50℃においてもpH10で10分間処理した時、80%以上の残存性を示し、ジイソプロピルフルオルリン酸(DFP)及びフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF)で阻害され、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であるものが好ましい。
ここで、酸化剤耐性を有するとは、50mM過酸化水素(5mM塩化カルシウムを含有)溶液中、pH10(20mMブリットンロビンソン緩衝液)で30℃、20分間処理した場合の残存活性が少なくとも50%以上保持していることをいう。
【0015】
斯かる配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアルカリプロテアーゼとしては、例えば、プロテアーゼKP9860[バチルスエスピーKSM−KP9860(FERMBP−6534)由来、WO99/18218、GenBank Accession No.AB046403]、プロテアーゼKP9865[バチルスエスピーKSM−KP9865(FERM P−18566)由来、特願2002−002653、GenBank Accession No.AB084155]、プロテアーゼE−1[バチルスNo.D−6(FERMP−1592)由来、特開昭49−71191、GenBankAccession No.AB046402]、プロテアーゼYa[バチルスエスピーY(FERMBP−1029)由来、特開昭61−280268、GenBank Accession No.AB046404]、プロテアーゼSD521[バチルスSD521(FERMP−11162)由来、特開平3−191781、GenBank Accession No.AB046405]、プロテアーゼA−1[NCIB12289由来、WO88/01293、GenBank Accession No.AB046406]、プロテアーゼA−2[NCIB12513由来、WO98/56927]や、配列番号1のアミノ酸配列の46位をロイシンに置換した変異体、57位をアラニンに置換した変異体、103位をアルギニンに置換した変異体、107位をリジンに置換した変異体、124位をそれぞれリジン及びアラニンに置換した変異体、136位をアラニンに置換した変異体、193位をアラニンに置換した変異体、195位をそれぞれアスパラギン、グルタミン酸、アルギニン、プロリン、スレオニン、バリン、ヒスチジン、セリン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アラニン、アスパラギン酸、トリプトファン、グリシン及びフェニルアラニンに置換した変異体、247位をそれぞれスレオニン及びアルギニンに置換した変異体、257位をバリンに置換した変異体、342位をアラニンに置換した変異体、66位をアスパラギン酸に置換し且つ264位をセリンに置換した二重変異体(特願2000−355166号)、配列番号1のアミノ酸配列の84位をアルギニンに置換した変異体、104位をプロリンに置換した変異体、256位をそれぞれアラニン及びセリンに置換した変異体、369位をアスパラギンに置換した変異体(特願2001−114048号)、配列番号1のアミノ酸配列の251位をそれぞれアスパラギン、スレオニン、イソロイシン、バリン、ロイシン及びグルタミンに置換した変異体、256位をそれぞれセリン、グルタミン、アスパラギン、バリン及びアラニンに置換した変異体(特願2001−329472号)又はこれらとアミノ酸配列において80%以上、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の相同性を有するアルカリプロテアーゼが挙げられる。
尚、アミノ酸配列の相同性は、例えば公知のLipman−Pearson法(Science,227,1435,1985)等を用いて計算することができる。
【0016】
上記配列番号1で示される親アルカリプロテアーゼの(a)〜(c)位におけるアミノ酸残基は、(a)位がグルタミン酸、(b)位がイソロイシン、(c)位がセリンであり、配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有する親アルカリプロテアーゼにおいては、後述するように、(a)位に相当する位置のアミノ酸残基はグルタミン酸であるのが好ましく、(b)位に相当する位置のアミノ酸残基はイソロイシンであるのが好ましく、(c)位に相当する位置のアミノ酸残基はセリンであるのが好ましい。
【0017】
従って、親アルカリプロテアーゼの中で好ましいものとしては、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼの他、配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の相同性を有し、上述した酵素学的性質を有するもの(段落〔0014〕)及び/又は配列番号1の(a)〜(c)位に相当する位置のアミノ酸残基が上記(段落〔0016〕)のものであるプロテアーゼが挙げられる。
【0018】
そして、本発明の変異アルカリプロテアーゼは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼを親アルカリプロテアーゼとする場合には、当該(a)163位、(b)170位若しくは(c)171位のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したものであり、配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するプロテアーゼを親アルカリプロテアーゼとする場合には、配列番号1の(a)〜(c)位に相当する位置のいずれかのアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したものである。
【0019】
斯かる他のアミノ酸残基としては、(a)位置:ヒスチジン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン、セリン、イソロイシン、ロイシン、グルタミン、スレオニン、バリン、(b)位置:バリン、ロイシン、(c)位置:アラニン、グルタミン酸、グリシン、スレオニン、から選ばれたものである。
【0020】
「相当するアミノ酸残基」を特定する方法としては、例えば、公知のLipman−Pearson法等を用いてアミノ酸配列の比較をすることで、各アルカリプロテアーゼのアミノ酸配列中に存在する保存アミノ酸残基に最大の相同性を与えることができる。従って、このようなアルゴリズムを用いアミノ酸配列を整列させることでアミノ酸配列中にある挿入、欠失にかかわらず、相当するアミノ酸を特定することができる。
【0021】
すなわち、上記方法でアミノ酸配列を整列させた図1より、(a)配列番号1の163位のアミノ酸残基はグルタミン酸残基であるが、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼE−1においては162位のグルタミン酸残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基はヒスチジン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン、セリン、イソロイシン、ロイシン、グルタミン、スレオニン、バリンであるのが好ましく、特にスレオニン、バリンであるのが好ましい。
【0022】
(b)配列番号1の170位のアミノ酸残基はイソロイシン残基であるが、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼE−1においては169位のイソロイシン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基はバリン、ロイシン残基であるのが好ましい。
【0023】
(c)配列番号1の171位のアミノ酸残基はセリン残基であるが、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼE−1においては170位のセリン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基は、アラニン、グルタミン酸、グリシン、スレオニン残基であるのが好ましく、特にグリシン、スレオニン残基であるのが好ましい。
【0024】
プロテアーゼKP43のアミノ酸配列(配列番号1)の(a)163位、(b)170位(c)171位に相当する位置及びアミノ酸残基の具体例を、上記配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するプロテアーゼのうちの好適に用いられるもので示す(表1)。
【0025】
【表1】
【0026】
また、本発明変異アルカリプロテアーゼにおけるアミノ酸残基の(a)〜(c)の選択は、酵素特性が変化しない限り2個所が同時になされていていもよい。2箇所が同時になされた場合の好ましい具体例を以下に示す。尚、アミノ酸は3文字表記とし、「+」は1箇所の置換に対し付加された置換を表し、「/」については表記したいずれのアミノ酸を使用しても良いことを示している。
【0027】
2重置換体の例としてはGlu163(Phe/Leu/Gln/Val)+Ser171Ala、Glu163(Ala/Asp/Ile/Leu/Ser/Thr/Val)+Ser171Gly、Glu163(Ala/His/Ile/Lys/Leu/Gln/Thr/Val)+Ser171Thr等が挙げられるが、Glu163Thr+Ser171Thr、Glu163Thr+Ser171Gly、Glu163Val+Ser171Gly等が特に好ましい。
【0028】
また、本発明の変異アルカリプロテアーゼには、上記(a)〜(c)位又はこれに相当する位置のいずれかのアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したもののみならず、天然基質に対する比活性が向上するという特性以外の酵素の特性を変化させない限り、該アミノ酸配列中の他の位置において1〜数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたものも包含する。
【0029】
本発明のアルカリプロテアーゼ変異体は、例えば、クローニングされた親アルカリプロテアーゼ(例えば配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼ)をコードする遺伝子(配列番号2)に対して置換(以下、「変異」ともいう)を施し、得られた変異遺伝子を用い宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換体を培養し、培養物からアルカリプロテアーゼを採取することによって得られる。親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子のクローニングは、公知の遺伝子組換え手法を用いれば良く、例えばWO99/18218、WO98/56927記載の方法に従って行えば良い。
【0030】
親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子に変異を施す方法としては、一般的に行われているランダム変異法や部位特異的変異法等を用いれば良く、例えば
Mutan−Super Express Km キット(Takara)等を用いることで、任意の遺伝子配列情報に目的とする変異を与え、結果としてアミノ酸配列に置換、欠失、挿入等の変化を付与出来る。又、リコンビナントPCR(polymerase chain reaction)法(PCR protocols, Academic Press, New York, 1990)を用いることによって、遺伝子の任意の配列を他の遺伝子の該任意の配列に相当する配列と置換することが可能である。
【0031】
得られた変異遺伝子を用い、本発明アルカリプロテアーゼ変異体を生産するには、例えば、該変異プロテアーゼ遺伝子を安定に増幅出来るDNAベクターに連結させるか、又は該変異プロテアーゼ遺伝子を安定に維持出来る染色体DNA上に導入させる等の方法により、該変異プロテアーゼ遺伝子を安定に増幅し、さらに該遺伝子を効率的に発現させることが可能である宿主に導入すれば良い。該変異プロテアーゼ遺伝子を導入し、安定生産出来る宿主としては、例えば、バチルス属細菌、大腸菌、酵母、かび、放線菌などが挙げられ、これらの菌株を用い、資化性の炭素源、窒素源その他必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い培養すれば良い。
【0032】
かくして得られる変異アルカリプロテアーゼは、酵素のカゼイン基質に対する比活性が親アルカリプロテアーゼに比べて向上している。すなわち、酸化剤耐性を有し、高濃度の脂肪酸によるカゼイン分解活性の阻害を受けず、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であり、アルカリ性域で活性を有するという性質を有するが、特に段落〔0014〕に記載の親アルカリプロテアーゼの諸性質を保持しているものが好ましい。
【0033】
【実施例】
実施例1
バチルス エスピーKSM−KP43株由来のアルカリプロテアーゼ構造遺伝子の終止コドンまでを含む約2.0kbの範囲に対しランダム変異を与えた。ランダム変異導入法としてはPCR反応中の塩基の取り込みエラーを利用するために、DNAポリメラーゼとしてエラー修復能が無いTaqポリメラーゼ:Takara Taq(Takara)を用いた。まず、上記約2.0kbのDNAを増幅出来るプライマー1(配列番号3)及びプライマー2(配列番号4)を用いPCRを行った。プライマー1はセンス鎖の5’末端側にBamHIリンカーを、プライマー2はアンチセンス鎖の5’末端側にXbaIリンカーを付与した。反応系として、鋳型DNA10ng、各プライマーを10pmol、各dNTPを20nmol、Takara Taq添付反応バッファー10μL、及びTaqポリメラーゼ2.5Uを含有する100μLの系とした。PCR反応条件は94℃で2分間鋳型DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間を1サイクルとし、これを30サイクル行った。PCR産物をPCR product purification kit(ロッシュ)にて精製し、100μLの滅菌水で溶出した。次に溶出液1μLを鋳型DNAとして、2回目のPCR反応を行った。PCR反応条件は1回目と同じとした。2回目のPCR産物も1回目と同様に精製し、以後の実験に供した。
【0034】
増幅した約2.0kbのDNA断片の末端制限酵素リンカーを、BamHI、XbaI(ロッシュ)により切断した。増幅DNAを組み込むべき発現ベクターとしてはバチルス属細菌内で複製可能であるpHA64(特願平8−323050)を用いた。BamHI、XbaI処理した増幅DNA断片及び同じくBamHI、XbaI処理したpHA64を混合した後、Ligation High(東洋紡)により、リガーゼ反応を行った。エタノール沈殿により、リガーゼ反応液からDNAを回収し、以後の形質転換用のDNAとした。
【0035】
形質転換すべき宿主としてバチルスエスピーKSM−KP43(以後KP−43株と略す)を用いた。形質転換法はエレクトロポレーション法により行い、SSH−10(島津製作所)及びジーンパルサーキュベット(バイオラッド)を用い形質転換を行った。
【0036】
KP−43株の形質転換体をスキムミルク含有アルカリ寒天培地[スキムミルク(ディフコ)1%(w/v)、バクトトリプトン(ディフコ)1%、酵母エキス(ディフコ)0.5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%、無水炭酸ナトリウム0.05%、テトラサイクリン15ppm]に生育させ、ハローの形成状況により、プロテアーゼ遺伝子導入の有無を判定した。
【0037】
プロテアーゼ遺伝子がpHA64に挿入されたプラスミドを保持している形質転換されたKP−43株を選抜し、以後の培養に供した。
【0038】
各形質転換体について単集落分離、ハロー形成の確認を行い、試験管中の5mL種母培地[ポリペプトンS(日本製薬)6.0%(w/v)、酵母エキス0.1%、マルトース1.0%、硫酸マグネシウム7水和物0.02%、リン酸2水素カリウム0.1%、無水炭酸ナトリウム0.3%、テトラサイクリン30ppm]に植菌し、30℃、320rpmで一晩前培養した。この種母培養液を500mL容坂口フラスコ中の20mL主培地[ポリペプトンS8%(w/v)、酵母エキス0.3%、マルトース10%、硫酸マグネシウム7水和物0.04%、リン酸2水素カリウム0.2%、無水炭酸ナトリウム1.5%、テトラサイクリン30ppm]に1%植菌(v/v)し、30℃、121rpmで3日間培養した。得られた培養液を遠心分離し、培養上清中のプロテアーゼ活性を測定した。プロテアーゼ活性はカゼインを基質とした活性測定法により、蛋白質量はプロテインアッセイキット(和光純薬)を用いて測定した。野生型酵素遺伝子を有する形質転換体を同条件で培養した場合の培養上清の値と比較することにより、プロテアーゼ活性の向上が認められた変異プロテアーゼ遺伝子を選抜した。尚、培養上清中のプロテアーゼ活性の増加に対して、蛋白質量の顕著な増加は認められなかったことから、得られた変異体は蛋白質量当たりのカゼイン分解活性が向上するのに必要な変異が導入されたことが示唆された。
【0039】
選抜された形質転換体からHigh pure plasmid isolation kit(ロッシュ)を用いプラスミドを回収し、塩基配列を決定した。プラスミドDNA300ngを鋳型として、プライマーとBig Dye DNA Sequencing kit(アプライドバイオシステム)を用いて20μLの反応系でPCR反応を行い、DNA Sequencer 377型(アプライドバイオシステム)を用いた解析に供した。
その結果、プロテアーゼ活性が向上した変異体は163位のグルタミン酸がヒスチジン、170位のイソロイシンがバリン、171位のセリンがアラニンにそれぞれ置換されていた。
【0040】
培養液の一部を希釈し、2mM塩化カルシウムを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したDEAE−トヨパール(東ソー)カラムにかけ、非吸着画分を回収することにより、ほぼ均一なプロテアーゼを得た。この精製酵素の蛋白質量、カゼイン分解活性を測定し、その比活性を計算した結果、上記変異の導入によりそれぞれ約15〜20%のプロテアーゼ比活性の向上が認められた(表2)。
【0041】
更に上記変異部位を任意のアミノ酸に置換することにより、プロテアーゼ活性の向上を検討した。部位特異的変異の手段としては、Site−Directed Mutagenesis System Mutan−Super Express Km キットを用い、以下のプライマーにより、変異部位の組み合わせを検討した。
【0042】
プライマー3:163位のグルタミン酸(E)を任意のアミノ酸(X)に置換する(配列番号5)
プライマー4:170位のイソロイシン(I)を任意のアミノ酸(X)に置換する(配列番号6)
プライマー5:171位のセリン(S)を任意のアミノ酸(X)に置換する(配列番号7)
プライマー6:163位のグルタミン酸(E)及び171位のセリン(S)を任意のアミノ酸(X)に置換する(配列番号8)
【0043】
変異導入用鋳型プラスミドの作製は、カナマイシン選択用アンバー変異マーカーを有するpKF18kのマルチクローニングサイト中のBamHI、XbaIサイトに、前記スクリーニングで得られた変異プロテアーゼ遺伝子を導入することにより構築した。
【0044】
部位特異的変異導入用PCR反応にはTakara LA Taq(Takara)を用いた。5’末端をリン酸化したセレクションプライマー(Mutan−Super Express Km キット添付)及びプライマー3〜5の各変異導入プライマーを各々5pmol及び鋳型プラスミド10ngを用い変異導入PCRを行った。PCR反応条件は94℃で2分間鋳型DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で4分間を1サイクルとし、これを30サイクル行った。得られたPCR産物を用い大腸菌MV1184株を形質転換することにより、変異プラスミドを得た。得られた変異プラスミドは先述の塩基配列決定法に従い変異部位を確認した。
【0045】
部位特異的変異により変異導入されたプロテアーゼ遺伝子をpHA64に導入し、KP−43株を形質転換し、先述の条件で培養、精製することにより、野生型酵素に比べプロテアーゼ比活性が更に増大するアミノ酸置換を検討した。
【0046】
その結果、E163I、E163L、E163N、E163T、E163V、I170L、S171D、S171G、S171T、E163F+S171A、E163L+S171A、E163Q+S171A、E163V+S171A、E163A+S171G、E163D+S171G、E163I+S171G、E163L+S171G、E163S+S171G、E163T+S171G、E171V+S171G、E163A+S171T、E163H+S171T、E163I+S171T、E163K+S171T、E163L+S171T、E163Q+S171T、E163T+S171T、E163V+S171Tにおいて約10〜70%のプロテアーゼ活性の向上が認められた(表2)。
【0047】
上記変異部位の組み合わせにより得られる、本発明アルカリプロテアーゼ変異体はカゼインに対する比活性を向上させる以外は親アルカリプロテアーゼの特性、すなわち、酸化剤耐性を有し、高濃度の脂肪酸によるカゼイン分解活性の阻害を受けず、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であり、アルカリ性域で活性を有する性質を保持していることを確認した。
【0048】
(プロテアーゼ活性測定法−カゼイン法)
カゼイン1%(w/v)を含む50mMホウ酸緩衝液(pH10.5)1.0mLを30℃で5分間保温した後、0.1mLの酵素溶液を加え、15分間反応を行う。反応停止液(0.11Mトリクロロ酢酸−0.22M酢酸ナトリウム−0.33M酢酸)を2.0mL加え、室温で30分間放置した後、濾過を行い、濾液中の酸可溶性タンパク質をLowryらの方法の変法により定量した。すなわち、0.5mLの濾液にアルカリ性銅溶液(1%酒石酸ナトリウム・カリウム:1%硫酸銅:1%炭酸ナトリウム=1:1:100)を2.5mL加え、室温で10分間放置後、フェノール溶液[フェノール試薬(関東化学)を蒸留水にて2倍希釈したもの]を0.25mL添加し、30℃で30分間保温した。その後、660nmにおける吸光度を測定した。プロテアーゼ1単位は、上記反応条件で1分間に1mmolのチロシンに相当する酸可溶性タンパク質分解物を遊離させるのに必要な酵素量とした。
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、高濃度の脂肪酸存在下でも活性を有し、蛋白質の他に皮脂等が混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性能を発揮し、洗浄剤配合酵素として有用なアルカリプロテアーゼを効率よく生産、提供することができる。
【0051】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するプロテアーゼのアミノ酸配列を整列させた図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗剤用酵素として有用な変異アルカリプロテアーゼに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
産業分野でのプロテアーゼ利用の歴史は古く、衣料用洗剤をはじめとする洗浄剤から繊維の改質剤、皮革処理剤、化粧料、浴剤、食品改質剤或いは医薬品としての利用まで非常に多岐にわたっている。中でも最も工業的に大量に生産されているものが洗剤用プロテアーゼであり、例えば、アルカラーゼ、サビナーゼ(ノボザイム)、マクサカル(ジェネンコ)、ブラップ(ヘンケル)、及びKAP(花王)等が知られている。
【0003】
洗剤中にプロテアーゼを配合する目的は、衣料に付着した蛋白質を主成分とする汚れを分解して低分子化し、界面活性剤による可溶化を促進することであるが、実際の汚れは蛋白質だけでなく皮脂由来の脂質や固体粒子等、有機物と無機物が入り混じった複数の成分を内包する複合汚れであり、このような複合汚れに対する洗浄性の高い洗浄剤が望まれていた。
【0004】
かかる観点から本発明者らは、高濃度の脂肪酸存在下でも十分なカゼイン分解活性を保持し、蛋白質だけでなく皮脂等の混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性を有する分子量約43,000のアルカリプロテアーゼを数種見出し、先に特許出願した(WO99/18218)。そして、これらのアルカリプロテアーゼ群は、その分子量、一次構造、酵素学的性質、特に非常に強い酸化剤耐性を有する点で、従来から知られているバチルス属細菌由来のセリンプロテアーゼであるズブチリシンとは異なり、新しいズブチリシンサブファミリーに分類することが提唱されている(Saekiら, Biochem.Biophys.Res.Commun.,279,(2000),313−319)。
【0005】
上記アルカリプロテアーゼは高濃度の脂肪酸存在下でも十分なカゼイン分解活性を保持し、蛋白質だけでなく皮脂等の混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性を有するプロテアーゼではあるが、更なる洗浄性の向上を考えると、当該アルカリプロテアーゼの性質を保持し、更に強力な蛋白質分解力をもつアルカリプロテアーゼが求められていた。
【0006】
一方、一般に蛋白質分解力を向上させる方法としては、プロテアーゼ遺伝子を改変しプロテアーゼの蛋白質量当たりの分解活性、すなわち比活性を向上させる方法があり、ズブチリシンの比活性向上に対するタンパク質工学的改変に関しても詳細に報告されている(Wellsら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,84,(1987),1219−1223、Wellsら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,84,(1987),5167−5171、Taguchiら,Appl.Environ.Microbiol.,64,(1998),492−495、Takagiら、Protein Eng.,11,(1998),1205−1210、Bryan,Biochim.Biophys.Acta,1543,(2000),203−222等)。しかしながら、これまでに報告されている改変は、ある特定の合成ペプチドに対する比活性は向上させるものの、洗浄力に結びつくと考えられる天然基質に対する活性を向上させるものではなかった。
【0007】
他方、天然基質に対する比活性向上に関しては、例えばズブチリシンEの31位のイソロイシンをロイシンに置換することにより、カゼイン基質に対する分解活性の向上が得られるとする報告があるが(Takagiら,J.Biol.Chem.,36,(1988),19592−19596)、上記アルカリプロテアーゼにおける当該アミノ酸は元来ロイシンであること、また上記アルカリプロテアーゼ群は分子量約28,000のズブチリシンとは酵素学的性質が異なることから、当該プロテアーゼの比活性向上にはこの事例も参考になるものではなかった。
【0008】
本発明は、より強力な蛋白質分解力をもち、優れた洗浄能力を発揮するアルカリプロテアーゼを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記アルカリプロテアーゼの変異体について種々検討した結果、当該アルカリプロテアーゼにおいて、そのアミノ酸配列中の特定位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した変異体が、天然基質に対して優れた比活性を有し、洗浄用酵素として有用であることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、配列番号1で示されるアミノ酸配列又はこれと80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼについて、配列番号1の(a)163位、(b)170位若しくは(c)171位又はこれらに相当する位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した変異アルカリプロテアーゼ、及びそれをコードする遺伝子を提供するものである。
【0011】
また本発明は、該遺伝子を含有するベクター、該ベクターを含有する形質転換体を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の変異アルカリプロテアーゼは、配列番号1で示されるアミノ酸配列又はこれと80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼを変異の対象となるプロテアーゼ(以下、「親アルカリプロテアーゼ」ともいう)とし、当該配列番号1の(a)163位、(b)170位若しくは(c)171位又はこれに相当する位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換してなるものであり、これらは野生型の変異体或いは人為的に変異を施した変異体であってもよい。
【0013】
親アルカリプロテアーゼである「配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する高アルカリプロテアーゼ」としては、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するKP43[バチルスエスピーKSM−KP43(FERMBP−6532)由来、WO99/18218]が挙げられる。
【0014】
親アルカリプロテアーゼである配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアルカリプロテアーゼとしては、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に95%以上の相同性を有するものが好ましく、野生型又は野生型の変異体であってもよい。
また、その性質として酸化剤耐性を有し、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であるものが好ましく、特に酸化剤耐性を有し、アルカリ側(pH8以上)で作用し、かつ安定であり、50℃においてもpH10で10分間処理した時、80%以上の残存性を示し、ジイソプロピルフルオルリン酸(DFP)及びフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF)で阻害され、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であるものが好ましい。
ここで、酸化剤耐性を有するとは、50mM過酸化水素(5mM塩化カルシウムを含有)溶液中、pH10(20mMブリットンロビンソン緩衝液)で30℃、20分間処理した場合の残存活性が少なくとも50%以上保持していることをいう。
【0015】
斯かる配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性を示すアルカリプロテアーゼとしては、例えば、プロテアーゼKP9860[バチルスエスピーKSM−KP9860(FERMBP−6534)由来、WO99/18218、GenBank Accession No.AB046403]、プロテアーゼKP9865[バチルスエスピーKSM−KP9865(FERM P−18566)由来、特願2002−002653、GenBank Accession No.AB084155]、プロテアーゼE−1[バチルスNo.D−6(FERMP−1592)由来、特開昭49−71191、GenBankAccession No.AB046402]、プロテアーゼYa[バチルスエスピーY(FERMBP−1029)由来、特開昭61−280268、GenBank Accession No.AB046404]、プロテアーゼSD521[バチルスSD521(FERMP−11162)由来、特開平3−191781、GenBank Accession No.AB046405]、プロテアーゼA−1[NCIB12289由来、WO88/01293、GenBank Accession No.AB046406]、プロテアーゼA−2[NCIB12513由来、WO98/56927]や、配列番号1のアミノ酸配列の46位をロイシンに置換した変異体、57位をアラニンに置換した変異体、103位をアルギニンに置換した変異体、107位をリジンに置換した変異体、124位をそれぞれリジン及びアラニンに置換した変異体、136位をアラニンに置換した変異体、193位をアラニンに置換した変異体、195位をそれぞれアスパラギン、グルタミン酸、アルギニン、プロリン、スレオニン、バリン、ヒスチジン、セリン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アラニン、アスパラギン酸、トリプトファン、グリシン及びフェニルアラニンに置換した変異体、247位をそれぞれスレオニン及びアルギニンに置換した変異体、257位をバリンに置換した変異体、342位をアラニンに置換した変異体、66位をアスパラギン酸に置換し且つ264位をセリンに置換した二重変異体(特願2000−355166号)、配列番号1のアミノ酸配列の84位をアルギニンに置換した変異体、104位をプロリンに置換した変異体、256位をそれぞれアラニン及びセリンに置換した変異体、369位をアスパラギンに置換した変異体(特願2001−114048号)、配列番号1のアミノ酸配列の251位をそれぞれアスパラギン、スレオニン、イソロイシン、バリン、ロイシン及びグルタミンに置換した変異体、256位をそれぞれセリン、グルタミン、アスパラギン、バリン及びアラニンに置換した変異体(特願2001−329472号)又はこれらとアミノ酸配列において80%以上、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の相同性を有するアルカリプロテアーゼが挙げられる。
尚、アミノ酸配列の相同性は、例えば公知のLipman−Pearson法(Science,227,1435,1985)等を用いて計算することができる。
【0016】
上記配列番号1で示される親アルカリプロテアーゼの(a)〜(c)位におけるアミノ酸残基は、(a)位がグルタミン酸、(b)位がイソロイシン、(c)位がセリンであり、配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有する親アルカリプロテアーゼにおいては、後述するように、(a)位に相当する位置のアミノ酸残基はグルタミン酸であるのが好ましく、(b)位に相当する位置のアミノ酸残基はイソロイシンであるのが好ましく、(c)位に相当する位置のアミノ酸残基はセリンであるのが好ましい。
【0017】
従って、親アルカリプロテアーゼの中で好ましいものとしては、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼの他、配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上、好ましくは87%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の相同性を有し、上述した酵素学的性質を有するもの(段落〔0014〕)及び/又は配列番号1の(a)〜(c)位に相当する位置のアミノ酸残基が上記(段落〔0016〕)のものであるプロテアーゼが挙げられる。
【0018】
そして、本発明の変異アルカリプロテアーゼは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するプロテアーゼを親アルカリプロテアーゼとする場合には、当該(a)163位、(b)170位若しくは(c)171位のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したものであり、配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するプロテアーゼを親アルカリプロテアーゼとする場合には、配列番号1の(a)〜(c)位に相当する位置のいずれかのアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したものである。
【0019】
斯かる他のアミノ酸残基としては、(a)位置:ヒスチジン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン、セリン、イソロイシン、ロイシン、グルタミン、スレオニン、バリン、(b)位置:バリン、ロイシン、(c)位置:アラニン、グルタミン酸、グリシン、スレオニン、から選ばれたものである。
【0020】
「相当するアミノ酸残基」を特定する方法としては、例えば、公知のLipman−Pearson法等を用いてアミノ酸配列の比較をすることで、各アルカリプロテアーゼのアミノ酸配列中に存在する保存アミノ酸残基に最大の相同性を与えることができる。従って、このようなアルゴリズムを用いアミノ酸配列を整列させることでアミノ酸配列中にある挿入、欠失にかかわらず、相当するアミノ酸を特定することができる。
【0021】
すなわち、上記方法でアミノ酸配列を整列させた図1より、(a)配列番号1の163位のアミノ酸残基はグルタミン酸残基であるが、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼE−1においては162位のグルタミン酸残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基はヒスチジン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン、セリン、イソロイシン、ロイシン、グルタミン、スレオニン、バリンであるのが好ましく、特にスレオニン、バリンであるのが好ましい。
【0022】
(b)配列番号1の170位のアミノ酸残基はイソロイシン残基であるが、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼE−1においては169位のイソロイシン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基はバリン、ロイシン残基であるのが好ましい。
【0023】
(c)配列番号1の171位のアミノ酸残基はセリン残基であるが、その位置に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼE−1においては170位のセリン残基というように特定することができる。当該アミノ酸残基は、アラニン、グルタミン酸、グリシン、スレオニン残基であるのが好ましく、特にグリシン、スレオニン残基であるのが好ましい。
【0024】
プロテアーゼKP43のアミノ酸配列(配列番号1)の(a)163位、(b)170位(c)171位に相当する位置及びアミノ酸残基の具体例を、上記配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するプロテアーゼのうちの好適に用いられるもので示す(表1)。
【0025】
【表1】
【0026】
また、本発明変異アルカリプロテアーゼにおけるアミノ酸残基の(a)〜(c)の選択は、酵素特性が変化しない限り2個所が同時になされていていもよい。2箇所が同時になされた場合の好ましい具体例を以下に示す。尚、アミノ酸は3文字表記とし、「+」は1箇所の置換に対し付加された置換を表し、「/」については表記したいずれのアミノ酸を使用しても良いことを示している。
【0027】
2重置換体の例としてはGlu163(Phe/Leu/Gln/Val)+Ser171Ala、Glu163(Ala/Asp/Ile/Leu/Ser/Thr/Val)+Ser171Gly、Glu163(Ala/His/Ile/Lys/Leu/Gln/Thr/Val)+Ser171Thr等が挙げられるが、Glu163Thr+Ser171Thr、Glu163Thr+Ser171Gly、Glu163Val+Ser171Gly等が特に好ましい。
【0028】
また、本発明の変異アルカリプロテアーゼには、上記(a)〜(c)位又はこれに相当する位置のいずれかのアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したもののみならず、天然基質に対する比活性が向上するという特性以外の酵素の特性を変化させない限り、該アミノ酸配列中の他の位置において1〜数個のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されたものも包含する。
【0029】
本発明のアルカリプロテアーゼ変異体は、例えば、クローニングされた親アルカリプロテアーゼ(例えば配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼ)をコードする遺伝子(配列番号2)に対して置換(以下、「変異」ともいう)を施し、得られた変異遺伝子を用い宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換体を培養し、培養物からアルカリプロテアーゼを採取することによって得られる。親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子のクローニングは、公知の遺伝子組換え手法を用いれば良く、例えばWO99/18218、WO98/56927記載の方法に従って行えば良い。
【0030】
親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子に変異を施す方法としては、一般的に行われているランダム変異法や部位特異的変異法等を用いれば良く、例えば
Mutan−Super Express Km キット(Takara)等を用いることで、任意の遺伝子配列情報に目的とする変異を与え、結果としてアミノ酸配列に置換、欠失、挿入等の変化を付与出来る。又、リコンビナントPCR(polymerase chain reaction)法(PCR protocols, Academic Press, New York, 1990)を用いることによって、遺伝子の任意の配列を他の遺伝子の該任意の配列に相当する配列と置換することが可能である。
【0031】
得られた変異遺伝子を用い、本発明アルカリプロテアーゼ変異体を生産するには、例えば、該変異プロテアーゼ遺伝子を安定に増幅出来るDNAベクターに連結させるか、又は該変異プロテアーゼ遺伝子を安定に維持出来る染色体DNA上に導入させる等の方法により、該変異プロテアーゼ遺伝子を安定に増幅し、さらに該遺伝子を効率的に発現させることが可能である宿主に導入すれば良い。該変異プロテアーゼ遺伝子を導入し、安定生産出来る宿主としては、例えば、バチルス属細菌、大腸菌、酵母、かび、放線菌などが挙げられ、これらの菌株を用い、資化性の炭素源、窒素源その他必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い培養すれば良い。
【0032】
かくして得られる変異アルカリプロテアーゼは、酵素のカゼイン基質に対する比活性が親アルカリプロテアーゼに比べて向上している。すなわち、酸化剤耐性を有し、高濃度の脂肪酸によるカゼイン分解活性の阻害を受けず、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であり、アルカリ性域で活性を有するという性質を有するが、特に段落〔0014〕に記載の親アルカリプロテアーゼの諸性質を保持しているものが好ましい。
【0033】
【実施例】
実施例1
バチルス エスピーKSM−KP43株由来のアルカリプロテアーゼ構造遺伝子の終止コドンまでを含む約2.0kbの範囲に対しランダム変異を与えた。ランダム変異導入法としてはPCR反応中の塩基の取り込みエラーを利用するために、DNAポリメラーゼとしてエラー修復能が無いTaqポリメラーゼ:Takara Taq(Takara)を用いた。まず、上記約2.0kbのDNAを増幅出来るプライマー1(配列番号3)及びプライマー2(配列番号4)を用いPCRを行った。プライマー1はセンス鎖の5’末端側にBamHIリンカーを、プライマー2はアンチセンス鎖の5’末端側にXbaIリンカーを付与した。反応系として、鋳型DNA10ng、各プライマーを10pmol、各dNTPを20nmol、Takara Taq添付反応バッファー10μL、及びTaqポリメラーゼ2.5Uを含有する100μLの系とした。PCR反応条件は94℃で2分間鋳型DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間を1サイクルとし、これを30サイクル行った。PCR産物をPCR product purification kit(ロッシュ)にて精製し、100μLの滅菌水で溶出した。次に溶出液1μLを鋳型DNAとして、2回目のPCR反応を行った。PCR反応条件は1回目と同じとした。2回目のPCR産物も1回目と同様に精製し、以後の実験に供した。
【0034】
増幅した約2.0kbのDNA断片の末端制限酵素リンカーを、BamHI、XbaI(ロッシュ)により切断した。増幅DNAを組み込むべき発現ベクターとしてはバチルス属細菌内で複製可能であるpHA64(特願平8−323050)を用いた。BamHI、XbaI処理した増幅DNA断片及び同じくBamHI、XbaI処理したpHA64を混合した後、Ligation High(東洋紡)により、リガーゼ反応を行った。エタノール沈殿により、リガーゼ反応液からDNAを回収し、以後の形質転換用のDNAとした。
【0035】
形質転換すべき宿主としてバチルスエスピーKSM−KP43(以後KP−43株と略す)を用いた。形質転換法はエレクトロポレーション法により行い、SSH−10(島津製作所)及びジーンパルサーキュベット(バイオラッド)を用い形質転換を行った。
【0036】
KP−43株の形質転換体をスキムミルク含有アルカリ寒天培地[スキムミルク(ディフコ)1%(w/v)、バクトトリプトン(ディフコ)1%、酵母エキス(ディフコ)0.5%、塩化ナトリウム0.5%、寒天1.5%、無水炭酸ナトリウム0.05%、テトラサイクリン15ppm]に生育させ、ハローの形成状況により、プロテアーゼ遺伝子導入の有無を判定した。
【0037】
プロテアーゼ遺伝子がpHA64に挿入されたプラスミドを保持している形質転換されたKP−43株を選抜し、以後の培養に供した。
【0038】
各形質転換体について単集落分離、ハロー形成の確認を行い、試験管中の5mL種母培地[ポリペプトンS(日本製薬)6.0%(w/v)、酵母エキス0.1%、マルトース1.0%、硫酸マグネシウム7水和物0.02%、リン酸2水素カリウム0.1%、無水炭酸ナトリウム0.3%、テトラサイクリン30ppm]に植菌し、30℃、320rpmで一晩前培養した。この種母培養液を500mL容坂口フラスコ中の20mL主培地[ポリペプトンS8%(w/v)、酵母エキス0.3%、マルトース10%、硫酸マグネシウム7水和物0.04%、リン酸2水素カリウム0.2%、無水炭酸ナトリウム1.5%、テトラサイクリン30ppm]に1%植菌(v/v)し、30℃、121rpmで3日間培養した。得られた培養液を遠心分離し、培養上清中のプロテアーゼ活性を測定した。プロテアーゼ活性はカゼインを基質とした活性測定法により、蛋白質量はプロテインアッセイキット(和光純薬)を用いて測定した。野生型酵素遺伝子を有する形質転換体を同条件で培養した場合の培養上清の値と比較することにより、プロテアーゼ活性の向上が認められた変異プロテアーゼ遺伝子を選抜した。尚、培養上清中のプロテアーゼ活性の増加に対して、蛋白質量の顕著な増加は認められなかったことから、得られた変異体は蛋白質量当たりのカゼイン分解活性が向上するのに必要な変異が導入されたことが示唆された。
【0039】
選抜された形質転換体からHigh pure plasmid isolation kit(ロッシュ)を用いプラスミドを回収し、塩基配列を決定した。プラスミドDNA300ngを鋳型として、プライマーとBig Dye DNA Sequencing kit(アプライドバイオシステム)を用いて20μLの反応系でPCR反応を行い、DNA Sequencer 377型(アプライドバイオシステム)を用いた解析に供した。
その結果、プロテアーゼ活性が向上した変異体は163位のグルタミン酸がヒスチジン、170位のイソロイシンがバリン、171位のセリンがアラニンにそれぞれ置換されていた。
【0040】
培養液の一部を希釈し、2mM塩化カルシウムを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したDEAE−トヨパール(東ソー)カラムにかけ、非吸着画分を回収することにより、ほぼ均一なプロテアーゼを得た。この精製酵素の蛋白質量、カゼイン分解活性を測定し、その比活性を計算した結果、上記変異の導入によりそれぞれ約15〜20%のプロテアーゼ比活性の向上が認められた(表2)。
【0041】
更に上記変異部位を任意のアミノ酸に置換することにより、プロテアーゼ活性の向上を検討した。部位特異的変異の手段としては、Site−Directed Mutagenesis System Mutan−Super Express Km キットを用い、以下のプライマーにより、変異部位の組み合わせを検討した。
【0042】
プライマー3:163位のグルタミン酸(E)を任意のアミノ酸(X)に置換する(配列番号5)
プライマー4:170位のイソロイシン(I)を任意のアミノ酸(X)に置換する(配列番号6)
プライマー5:171位のセリン(S)を任意のアミノ酸(X)に置換する(配列番号7)
プライマー6:163位のグルタミン酸(E)及び171位のセリン(S)を任意のアミノ酸(X)に置換する(配列番号8)
【0043】
変異導入用鋳型プラスミドの作製は、カナマイシン選択用アンバー変異マーカーを有するpKF18kのマルチクローニングサイト中のBamHI、XbaIサイトに、前記スクリーニングで得られた変異プロテアーゼ遺伝子を導入することにより構築した。
【0044】
部位特異的変異導入用PCR反応にはTakara LA Taq(Takara)を用いた。5’末端をリン酸化したセレクションプライマー(Mutan−Super Express Km キット添付)及びプライマー3〜5の各変異導入プライマーを各々5pmol及び鋳型プラスミド10ngを用い変異導入PCRを行った。PCR反応条件は94℃で2分間鋳型DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で4分間を1サイクルとし、これを30サイクル行った。得られたPCR産物を用い大腸菌MV1184株を形質転換することにより、変異プラスミドを得た。得られた変異プラスミドは先述の塩基配列決定法に従い変異部位を確認した。
【0045】
部位特異的変異により変異導入されたプロテアーゼ遺伝子をpHA64に導入し、KP−43株を形質転換し、先述の条件で培養、精製することにより、野生型酵素に比べプロテアーゼ比活性が更に増大するアミノ酸置換を検討した。
【0046】
その結果、E163I、E163L、E163N、E163T、E163V、I170L、S171D、S171G、S171T、E163F+S171A、E163L+S171A、E163Q+S171A、E163V+S171A、E163A+S171G、E163D+S171G、E163I+S171G、E163L+S171G、E163S+S171G、E163T+S171G、E171V+S171G、E163A+S171T、E163H+S171T、E163I+S171T、E163K+S171T、E163L+S171T、E163Q+S171T、E163T+S171T、E163V+S171Tにおいて約10〜70%のプロテアーゼ活性の向上が認められた(表2)。
【0047】
上記変異部位の組み合わせにより得られる、本発明アルカリプロテアーゼ変異体はカゼインに対する比活性を向上させる以外は親アルカリプロテアーゼの特性、すなわち、酸化剤耐性を有し、高濃度の脂肪酸によるカゼイン分解活性の阻害を受けず、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であり、アルカリ性域で活性を有する性質を保持していることを確認した。
【0048】
(プロテアーゼ活性測定法−カゼイン法)
カゼイン1%(w/v)を含む50mMホウ酸緩衝液(pH10.5)1.0mLを30℃で5分間保温した後、0.1mLの酵素溶液を加え、15分間反応を行う。反応停止液(0.11Mトリクロロ酢酸−0.22M酢酸ナトリウム−0.33M酢酸)を2.0mL加え、室温で30分間放置した後、濾過を行い、濾液中の酸可溶性タンパク質をLowryらの方法の変法により定量した。すなわち、0.5mLの濾液にアルカリ性銅溶液(1%酒石酸ナトリウム・カリウム:1%硫酸銅:1%炭酸ナトリウム=1:1:100)を2.5mL加え、室温で10分間放置後、フェノール溶液[フェノール試薬(関東化学)を蒸留水にて2倍希釈したもの]を0.25mL添加し、30℃で30分間保温した。その後、660nmにおける吸光度を測定した。プロテアーゼ1単位は、上記反応条件で1分間に1mmolのチロシンに相当する酸可溶性タンパク質分解物を遊離させるのに必要な酵素量とした。
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、高濃度の脂肪酸存在下でも活性を有し、蛋白質の他に皮脂等が混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性能を発揮し、洗浄剤配合酵素として有用なアルカリプロテアーゼを効率よく生産、提供することができる。
【0051】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号1で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するプロテアーゼのアミノ酸配列を整列させた図である。
Claims (6)
- 配列番号1で示されるアミノ酸配列又はこれと80%以上の相同性をもつアミノ酸配列を有するアルカリプロテアーゼについて、配列番号1の(a)163位、(b)170位若しくは(c)171位又はこれらに相当する位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換した変異アルカリプロテアーゼ。
- 他のアミノ酸残基が、次の群から選ばれるものである請求項1記載の変異アルカリプロテアーゼ、
(a)位置:ヒスチジン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン、セリン、イソロイシン、ロイシン、グルタミン、スレオニン、バリン、
(b)位置:バリン、ロイシン、
(c)位置:アラニン、グルタミン酸、グリシン、スレオニン。 - 請求項1又は2記載の変異アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子。
- 請求項3記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
- 請求項4記載の組換えベクターを含有する形質転換体。
- 宿主が微生物である請求項5記載の形質転換体。
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