【発明の詳細な説明】
ポリマー安定剤としての使用のためのB-ケトエステル類
本発明は熱可塑性ポリマーを安定化するためのβ−ケトエステルおよびそれら
のエナミンの使用に関する。
ポリマー、特に、塩化ビニルポリマーを安定化するためのβ−ケトエステルの
使用は当該技術分野において知られている。EP-A-433230は、ブタンジオールビ
ス−ベンゾイルアセテートおよびトリメチロールプロパントリス−アセトアセテ
ート等のアルキレンおよびアルキレンオキシβ-ケトエステルを、塩素含有ポリ
マーのための安定剤として開示している。同様に、JP-A-6-65458(Chem.Ahstr.
121(1994)135609t)は、PVCにおいて熱安定化および着色防止のために使用される
べきエチレングリコールジアヤトアセテート、メタルアルカノエートおよびフェ
ノール酸化防止剤の組み合わせを開示している。
塩素含有ポリマーの安定剤としての、例えば、トリス−アセトアセトキシエチ
ルイソシアヌレート等のアルカノールアミドβ-ケトアルカノエートは、EP-A-22
749に開示される。β-ケトンは有益な保存剤のもう1つの群(group)を構成する
。効果的ではあるが高価なβ-ケトン安定剤は、ステアロイルベンゾイルメタン
であ
少なくともマルチトールまたはイソマルチトールおよび亜鉛化合物(ステアリ
ン酸亜鉛)等の二糖アルコールを含有する安定剤の混合物が、EP-A-677549に開示
される。これらの混合物は、塩化ポリビニル組成物の熱安定性を改善する。
EP-A-599578は、水ベースのアクリルポリマーにおける合体剤として、ソルビ
トールアセトアセテートおよびトリメチロールプロパンアセトアセテートを含む
アセトアセテートエステルおよびそれらのエナミンの使用が開示される。
EP-A-114270は、抗高血圧の薬剤としてのイソソルビドジヒドロニコチネート
誘導体の製造における中間体(intermiates)としてのイソソルビドモノ−アセト
アセテートおよびイソソルビドモノ−β−アミノクロトネートを開示する。
安価な天然原料から得られる、特定のβ−ケトエステルおよびそれらのエナミ
ンは、PVC等の熱可塑性ポリマーにおいて使用するための改良された安定化能力
を
有することが見出された。これらのβ−ケトエステルは、ポリマーの初期色安定
性を改善するのみではなく、該ポリマーの熱安定性をも増加する。それらは、硬
質ポリマーにおいて使用されてもよく、且つそれらは軟質ポリマーを安定化する
ことにおいても効果的でもある。それらは費用比に対しても改良された性能を有
する。本発明に従って使用されるべきβ-ケトエステルおよびそれらのエナミン
は、天然産物であるか、または還元若しくは化学的および発酵工程により天然産
物から得られるアルコールまたはポリオールから誘導される。それらは添付され
る請求の項に定義される。β-ケト-エステルおよび対応するアミンは式1および
2に、夫々、ジケト化合物およびケトイミンとして示されるが、それらはまた、
以下に示す式1aおよび2aのような、夫々、ケト−エノールおよびケトイミン
の互変体形態でも存在し得ると意味される。これらおよび他の互変体形態の全て
が使用される調合物に含まれるべきであると理解される。
本発明のケトエステルおよびそのエナミンにおけるA基は、任意にヒドロキシ
および/またはC1-C4アルキルにより置換されたアリール基、特にフェニル、ベ
ンジルまたはフェンエチルにより置換されてもよい。例として、ポリオールの1
以上の遊離ヒドロキシ基、即ち、β-ケト酸でエステル化されていないヒドロキ
シル基は、安息香酸または3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン
酸(抗酸化基)でエステル化されてもよく、または2つの前記の遊離ヒドロキシル
基が置換されたベンズアルデヒドでアセタール化されてもよい。
本発明に従って使用されるべきβ-ケトエステルおよびエナミンの例は、乳酸
エステルのケトエステル、即ち、α-(β-ケトアシルオキシ)プロピオン酸エステ
ル、例えば、エチル、ブチル、ラウリル、ステアリル、および特にフェニル、3,
5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルおよび2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジ
ルエステル等である。
非常に有用なβ-ケトエステルおよびエナミンの群は、糖、糖アルコール、脱
水糖アルコールおよびオリゴ糖から誘導される。これらは、好ましくは1以上の
β-
ケトエステルまたはエナミン基を含むポリオールである。適切な糖は、グルコー
ス、ガラクトース、フルクトース、(イソ)マルツロース、ロイコロース、乳糖
、蔗糖、例えばトレハロース、マルトース、イソマルトース、セロビオース等の
グルコースオリゴマー、並びにマルトトリオースおよびシクロデキストリン等の
高等同族体、フルクトースオリゴマー(特に、イヌリン誘導体)、並びに混合オ
リゴマーおよびこれらの糖の混合物、並びに還元糖のグリコシドを含む。オリゴ
糖は、40単糖単位までの重合の平均程度を有する短鎖多糖類として解される。
適切な糖アルコールは、キシリトール、アラビニトール、ソルビトール、マンニ
トール、ガラクチトール、ラクチトール、マルチトール、イソマルチトール、マ
ルトトリイトール等、および例えばソルビタン、ガラクチタン、イソソルビド等
のその脱水生成物、並びに例えば、イソマンニドおよびイソイジド等の他のジア
ンヒドコグリシトールを含む。上記で説明された通り、該ポリオールヒドロキシ
基の部分は遊離していても、または他の基、例えばアリール基等でエステル化若
しくはエーテル化されていてもよい。
糖酸およびそれらのニステルのβ-ケトエステルおよびそのエナミン(即ち、
β-ケトアシル基またはβ-アミノクロトノイル基が、糖酸またはそれらののエス
テルのヒドロキシ基に結合している)は、また、本発明の有用な安定剤である。
適切な糖酸は、グリコン酸、グリクロン酸およびグリカル酸(例えば、グルコン
酸、ラクトビオニック酸等)、並びに酸化または発酵工程により糖から得られる
酸(例えば、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、L-アス
コルビン酸等)を含む。
ケトエステル基は、脂肪族基、例えば、アセトアセチル、ピバロイルアセチル
、ステアコイルアセチルまたはメトキシカルボニル−アセトアセチル(3-オキソ
グルタル酸のモノエステル)であってもよいが、しかしまた、それらはアリール
基、例えば、ベンゾイルアセチルおよびその環状置換誘導体等を含んでいてもよ
い。該ケトエステル、例えば、β-アミノクロトネートおよびN-置換β-アミノク
ロトネート等のエナミンが等しく適切である。
β−ケトエステルは、それ自体公知の方法で、例えば、アルコールまたはポリ
オールの反応により、即ち、ヒドロキシアルカン酸エステル、糖、糖酸または糖
ア
ルコールと、β-ケト酸の低級アルキルエステルとの、例えばテトラ-アルコキシ
チン等のエステル交換触媒の存在下または不在下で反応することにより、製造す
ることが可能である。
そのような触媒は、本発明の化合物には必然的ではないこと、および触媒を使
用しない場合であっても該生成物の純度は同様により高いことは明らかとなって
いる。触媒の不在は、水のトランスは、エステル交換の効率に影響しないという
更なる利点としてを有している。β-ケト酸の低級アルキルエステルを使用する
代わりに、また、該合成をジケテン(4-アルキリデン-2-オキソ-オキセタン)を、
適切なアルコールまたはポリオールまたはジアンヒドログリシトールと共にを使
用して実施することも可能である。アルコールまたはポリオールを、β-ケト酸
低級アルキルエステルまたはジケテンと反応する前に、それを、例えばエチレン
オキシド、プロピレンオキシドまたはグリシドール等のエポキシドと反応しても
よく、これによって、β-ケトアシル基(単数または複数)とアルコール若しくは
ポリオール残基との間に介在する1以上のアルキレンオキシ基を有するβ-ケト
酸エステルを最終的に生じる。β-アミノクロトネートは、β-ケトエステルを、
アンモニアと、またはメチルアミン若しくはエタノールアミン等のアミンと簡単
に反応することにより製造することが可能である。
β-ケトニステルおよびそれらのエナミンは、それ自身公知の方法におけるポ
リマー化合物において使用してよい。該安定剤は、硬質調合物の強化剤等[例え
ば、塩素化ポリエチレンまたはブタジエン/-スチレン(アシリロニトリル)コ-若
しくはターポリマー等]、軟質調合物のための可塑剤[例えば、フタル酸ジブチ
ルまたはフタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル、オレイン酸ブチル等の脂肪
族一塩基若しくは二塩基エステル、エポキシ化大豆油、アジピン酸ジオクチル]
、充填剤、着色剤、流れ調整剤(例えば、アクリレート)、潤滑剤(例えば、ス
テアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、脂肪酸エステルおよびアミド等)、
難燃剤(例えば、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン)、亜リン酸(例えば
、亜リン酸トリアリールまたは亜リン酸アリール-アルキル)、抗酸化剤(例え
ば、ヒンダードフェノール)、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)化合物、UV吸
収材(例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール
、サリ
チレート等のベンゾフェノン)、N-フェニル-3-アセチル-2,4-ピロリジンジオン
等の他のケトエステルおよびケトン等の他の添加剤と混合してもよく;例えば、
ペンタエリスリトール、トリ(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の他のポ
リオール共安定剤(co-stabiliser)も低減容量レベルで使用されてもよい。また
、本発明のβ-ケトエステルと共に使用される共安定剤および他の添加物は、EP-
A-677549に言及されている。
安定剤として使用するためのβ-ケトエステルとそれらのエナミンの好ましい
組み合わせは、上述した様なポリオール(例えば、ソルビトール、ラクチノール
およびイヌリン等を含む)との組み合わせを含むが、トリス(ヒドロキシエチル
)イソシアヌレート、(ジ)ペンタエリスリトールまたはトリスメチロールプロ
パン等の非糖ポリオールを、例えば1:10から10:1、特に1:4から4:1の重量比で含
む。β-ケトエステル/エナミンとポリオール、特に、ソルビトール等の糖アル
コールの組み合わせは、それが優れた熱安定性および色安定性を提供することか
ら、特に有利である。他の好ましい組み合わせは、例えば、アルキルおよびアル
カリ土類金属、アルミニウム、珪素、チタン、亜鉛、スズおよび鉛等の酸化物お
よび混合酸化物、例えば、ハイドロタルサイト、珪酸塩、ドウソナイト、酸化亜
鉛およびセオライト、並びにそのような金属の塩、特にカルボン酸亜鉛塩(ステ
アリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等)を含む無機金属を含むもの、並びに
スタナン等の他の有機金属を含むものである。
β-ケトエステルおよびそれらのエナミンは、熱可塑性ポリマーを安定化する
ために使用することが可能である。これらは、例えば、ポリエテン、ポリプロペ
ン、ポリスチレン、ハロゲン化ゴム、フッ素含有ポリマー、例えば、ポリ(フッ
化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)および特にポリ(塩化ビニル)等であ
ってもよい。PVC等の塩素化ポリマー、非ビニル(ポリエテンおよびポリプロペ
ン)並びにハロゲン化ゴムは本発明に好ましい。β-ケトエステルは、熱可塑性
ポリマーに対して、0.001-5%、特に、0.01-1%の量で使用される。
PVC等のポリマーの熱安定性は、選択した温度(例えば、200℃)で、その色が
茶色から黒色へと変化することにより決定される該ポリマーの変質までの加熱時
間で表される。該試験は、例えば、マチスオーブン(Matthis oven)中で25cmの
ポリマー小片を使用し、これを段階的に該オーブンから動かして実施できる。
PE等の非ビニルポリマーは、多押出し試験で調査し、第1回目、3回目および
5回目の実施の後、その色特性およびメルトフローインデクスを測定する。ポリ
オレフィンは、UV光に対して非常に敏感であり、従って、UV安定試験が実施され
る。
色特性は、ベルガーに従う白色度(Wb(%))と、黄色度指数(Yi(%))として表さ
れる。両者とも、ミノルタクロマメーター(Minolta Chromameter)とDP301データ
プロセッサを使用して試験できる。評価は、CIE L-a-bシステム(CIE:Commission
Internationale d'Eclairage)に従って行われる。白色/黒色(L)、緑色/赤色(
a)および黄色/青色(b)値を、WbおよびYi値に変換する。至適逐行のために、熱
安定性と白色度は可能な限り高値であるべきであり、黄色度指数は可能な限り低
値であるべきである。
調合物は、カレンダー操作、回転面取り、塗布コーティング、スラッシュ成形
、押出し、押出し、入射成形、吹込成形または他の従来の技術の手段により造形
品に加工し得る。
以下の例において、本発明の安定剤の合成とポリマー化合物におけるそれらの
使用を説明する。試験される化合物は、以下に挙げた予混合から得たPVC化合物A
-Dである。
化合物A(硬質PVC):
ポリ塩化ビニル S-PVC(K-68) 100量部
強化剤 アクリレート化合物 2-15phr
充填材 チョーク 2-12phr
着色剤 二酸化チタン 1-10phr
流れ調整剤 アクリレートエステルホモポリマー 0.1-3phr
金属安定剤 カルシウム/亜鉛安定剤 0.1-5phr
潤滑油 PEワックス 0.01-2phr
化合物B(硬質PVC):
化合物A+
ポリオール THEIC 0-1phr
ポリオール ラクトン 0.01-2phr
ポリオール 部分的エステル 0.01-1phr
積層クレー 陰イオンクレー 0.01-2phr
共安定剤 β−ジケトン 0.01-2phr
有機亜リン酸塩 有機ジ亜リン酸塩 0.01-2phr
化合物C(軟質PVC):
ポリ塩化ビニル S-PVC(K-71) 100量部
可塑剤 ジオクチルフタレート 10-50phr
エポキシ可塑剤 エポキシ化大豆油 0.3-10phr
潤滑油 PEワックス 0.01-2phr
有機亜鉛塩 液体亜鉛安定剤 0.01-2phr
化合物D(軟質PVCパイプフォームレーション):
ポリ塩化ビニル S-PVC(K-67) 100量部
充填材 チョーク 2-10phr
金属安定剤 カルシウム/亜鉛安定剤 0.5-2phr
酸性スカベンジャー ゼオライトP 0.2-3phr
潤滑油 合成パラフィン 0.1-2phr
潤滑油 PEワックス 0.01-2phr
抗酸化剤 フェノール系酸化防止剤 0.01-0.5phr
エポキシ可塑剤 エポキシ化大豆油 0.3-10phr
ポリオール ジペントロール 0-2phr
本発明の添加物 0.1-5phr
例1
ソルビトール(AcAc)3およびソルビトール(AcAc)4の合成
50g(275mmol)ソルビトールおよび175ml(1052mmol)t-ブチルアセトアセテート
の混合物を130℃で3時間攪拌した。同時に、69.9gのt-ブタノール(945mmol)を蒸
留除去した。次いで、残渣t-ブチルアセトアセテートを100℃、減圧下で蒸留除
去した。生成物を淡黄色油状物質として得た。収量127.3g(87%)。13
C-NMR(DMSO-d6):30.20(CH3),49.6-50.0(C(=O)CH2),63.0-63.3(H2COH,H2 COC
),66.4-74.1(HCOH,HCOC),166.7-167.7(C(=O)OC),201.5-202.1(CC(=O)C)
例2
ラクチトール(AcAc)6の合成
9.06g(25mmol)のラクチトールモノヒドレートと33.2g(32ml;255mmol)のエチル
アセトアセテートのよく攪拌した混合物を150-160℃で、3時間、加熱し、反応中
に生じたエタノールを蒸留除去した。170-175℃での更なる30分間の後、総量6.8
6g(15mmol=6eq)のエタノールを回収した。その反応混合物を80-90℃に冷却し、
未反応のエチルアセトアセテートを真空下で蒸留除去した。この方法において、
14.08g(110mmol)のエチルアセトアセテートを回収した。生成物を殆ど無色の固
体塊として得た。収量:17.6g(83%)。13
C-NMR(DMSO-d6):30.10(CH3),49.4-49.9(C(=O)CH2),60-67(CH2COH,CH2OC),
67-77(HCOH,HCOC),103.4(OCO),166.4-167.5(C(=O)OC),201.6(CC(=O)C).
例3
ラクチトール(AcAc)3の合成
36.23g(0.1mmol)のラクチトールモノヒドレートと39.04g(38ml:0.3mol)のエ
チルアセトアセテートのよく攪拌した混合物を、150-160℃で、3時間攪拌し、反
応中に形成したエタノールを蒸留除去した。170-175℃で、エタノールを銃留意
除去しながらの更なる30分間の後、該反応混合物を室温にまで冷却した。若干黄
色がかった均質な塊の粗生成物が生じた。総量17.5mlのエタノールを回収し、51
.94g(87%)のラクチトール-トリス(アセトアセテート)を得た。13
C-NMR(DMSO-d6):30.25(CH3),49.6-50.0(C(=O)CH2),60-66(CH2COH,CH2OC),
66-76(HCOH,HCOC),104.7(OCO),167.5(C(=O)OC),201.9(CC(=O)C).
例4
イソソルビドビス-β-アセトアセテートの合成
3ネックフラスコ中で、73.05g(0.5モル)のイソソルビドと237.3:3g(1.5モル)
のtert-ブチルアセトアセテートの混合物を、100℃で、攪拌しながら固体が溶解
す
るまで加熱した。得られた溶液を130℃まで加熱し、次に、緩慢(1.5h)に更に150
℃まで加熱し、この温度を更に1.5h維持した。反応中に形成したtert-ブチルア
ルコールを蒸留除去し;3h後に71.0g(1.92eq)を回収し、次に、その温度を100℃
に下げた。温度を緩慢に130℃まで上昇しながら、過剰なtert-ブチルアセトアセ
テートを減圧下で蒸留除去した。この方法において、70.1g(0.44モル)のtert-ブ
チルアセトアセテートを回収した。残渣、即ち、粘性液体は、主に、イソソルビ
ドビス-アセトアセテート(>90%)からなり、極微量のtert-ブチルアセトアセテー
ト、イソソルビドモノアセトアセテートおよびイソソルビドを含む。13
C NMR(TM in ppm,CDCl3):30.03/30.17(-CH3),49.70(CO-CH2-CO),70.41/70.
47(-CH2O-),74.75+78.53+80.73+85.78(-CH-O),166.36/166.50(O-C=O),200.38
/200.38(H3C-C=O)
例5
イソソルビドビス-β-アミノクロトネートの合成
125mlのイソプロパノール中のイソソルビドビス-アセトアセテート(例4を参
照されたい)、20.05g(64mmol)を30-40℃で均質化するまで攪拌した。アンモニア
を、攪拌した混合物に通気した。1時間後、該混合物は黄色に変化し、更なる1時
間後に、無色固体が沈澱し始めた。5時間後、該固体を濾過により回収した。残
渣のイソプロパノールは、真空下でP2O5上で乾燥することにより除去した。収量
:18.8g(95%)の表題化合物。融点:160-162℃.13C NMR(TM in ppm,CDCl3):22.3
2/22.36(-CH3);70.10+72.43(-CH2O-),73.87+76.68+81.09+86.34(-CH-O),8314/
83.23(-CH=C),160.91+160.96(C=C-N),168.99+169.17(C=O).
イソソルビドビス-β-アミノクロトネートの分解率
イソソルビドビス-β-アミノクロトネートの分解率(アンモニア放出)を以下の
通りに測定した:1gのサンブルを煮洗した試験管中に秤量した。該試験管口の内
側に赤色リトマス紙を脱脂綿を用いて固定した。該試験管を室温で油浴中に設置
した。該油浴は1分間に2℃の割合で加熱した。5分間隔で、何れの色調変化があ
るかどうか、該リトマス紙を観察した。温度、および該色調が青色に変化し始め
た
時間を記録した。該表題化合物について、リトマス紙は125℃で50分後に青色に
変化した。類似の従来の化合物、即ち、ブチレングリコールビス-β-アミノクロ
トネートでは、リトマス紙は、81℃で25分後に青色に変化した。
例6
試験結果
例1-5に記載の化合物により安定化されたPVC化合物の性能を試験した。その
結果を表1-4に示す。
表1:例1の化合物(ソルビトール(AcAc)3-4)および例2の化合物(ラクチトール
(AcAc)6)により安定した硬質PVC(化合物A)の熱安定性
表2:例3の化合物(ラクチトール(AcAc)3)により安定化された軟質PVC(化合物C
)の熱安定性表3:ソルビトールまたはラクチトールを含有または非含有した、例1の化合物
(ソルビトール(AcAc)4)により安定化されたPVC(化合物D)の熱安定性
表4:ソルビトール含有の例5の化合物(イソソルビドビス-β-アミノクロトネ
ート:IBAC)により安定化されたPVC(化合物D)の熱安定性
例7
ブチルラクテートから乳酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルエステルへのエ
ステル交換
電磁攪拌機およびディーン・スターク装置を装備した丸底フラスコに、10.0g(
68.4mmol)の乳酸ブチル、10.75g(68.4mmol)の2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジ
ノールおよび1gのTi(OBu)4を添加し、ブタノールを135-140℃で蒸留除去した。
明茶色の蝋質物質を得た。収量:13.5g(85%)。
2-(アセトアセチルオキシ)-プロピオン酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルニ
ステルの合成
乳酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルエステル(5g、21.8mmol)を100mlのト
ルエンに溶解した。還流温度で、3.1g(21.8mmol)の2,2,6-トリメチル-4H-1,3-ジ
オギシン-4-オンを滴下により添加した。還流で、3時間後、その溶媒を真空下で
蒸留除去した。粘性残渣が残った。収量4.8g(70%)。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成11年7月5日(1999.7.5)
【補正内容】
明細書
ポリマー安定剤としての使用のためのB-ケトエステル類
本発明は熱可塑性ポリマーを安定化するためのβ−ケトエステルおよびそれら
のエナミンの使用に関する。
ポリマー、特に、塩化ビニルポリマーを安定化するためのβ−ケトエステルの
使用は当該技術分野において知られている。EP-A-433230は、ブタンジオールビ
ス−ベンゾイルアセテートおよびトリメチロールプロパントリス−アセトアセテ
ート等のアルキレンおよびアルキレンオキシβ-ケトエステルを、塩素含有ポリ
マーのための安定剤として開示している。同様に、JP-A-6-65458(Chem.Ahstr.
121(1994)135609t)は、PVCにおいて熱安定化および着色防止のために使用される
べきエチレングリコールジアセトアセテート、メタルアルカノエートおよびフェ
ノール酸化防止剤の組み合わせを開示している。
塩素含有ポリマーの安定剤としての、例えば、トリス−アセトアセトキシエチ
ルイソシアヌレート等のアルカノールアミドβ-ケトアルカノエートは、EP-A-22
749に開示される。β-ケトンは有益な保存剤のもう1つの群を構成する。効果的
ではあるが高価なβ-ケトン安定剤は、ステアロイルベンゾイルメタンであり、
商業
少なくともマルチトールまたはイソマルチトールおよび亜鉛化合物(ステアリ
ン酸亜鉛)等の二糖アルコールを含有する安定剤の混合物が、EP-A-677549に開示
される。これらの混合物は、塩化ポリビニル組成物の熱安定性を改善する。
EP-A-599178は、水ベースのアクリルポリマーにおける合体剤として、ソルビ
トールアセトアセテートおよびトリメチロールプロパンアセトアセテートを含む
アセトアセテートエステルおよびそれらのエナミンの使用が開示される。
EP-A-114270は、抗高血圧の薬剤としてのイソソルビドジヒドロニコチネート
誘導体の製造における中間体としてのイソソルビドモノ−アセトアセテートおよ
びイソソルビドモノ−β−アミノクロトネートを開示する。
安価な天然原料から得られる、特定のβ−ケトニステルおよびそれらのエナミ
ンが、PVC等の熱可塑性ポリマーにおいて使用するための改良された安定化能力
を
請求の範囲
1.熱可塑性ポリマーを安定化する方法であって、夫々、式1および2により表
されるβ-ケトニステルまたは対応するβ-エナミンをポリマー生成混合物に組込
むことを具備する方法:
[ここで、Aは、糖およびそれらのグリコシド、糖アルコールおよびそれら
の脱水生成物、糖酸およびそれらのエステル、並びにオリゴ糖から選択され
る糖誘導ポリオールの残基であり;
mは、0から6の整数であり;
nは、2からポリオールにおけるヒドロキシル基の総数までの数であり;
R1は、水素、C1-C8アルキル、C3-C8アルケニルまたはシクロアルキル(アル
キル)またはC6-C8アリールまたはまたはアラルキルであり;
R2は、水素、C1-C6アルキル、C2-C6ヒドロキシアルキルまたはC3-C6アルケ
ニルであり;
R3は、C1-C18アルキル、アルコキシ若しくはアルキルアミノ、C3-C18アルケ
ニル、アルカソイルメチル、アルコキシカルボニルメチル若しくはシクロア
ルキル(アルキル)、C6-C18アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、
アラルキル、アラルコキシ若しくはアラルキルアミノ、またはC8-C18アロイ
ルメチル、アリールオキシカルボニルメチル若しくはアリールカルバモイル
メチルであり;
R4およびR5は独立して水素またはメチルであり;および
Zは、直接結合、CH2、CHOH、CH-O-CO-CHR1-CO-R3または
CH-O-CO-CH=C(NHR2)-R3である]。
2.請求項1に記載の方法であって、前記糖アルコールが、ソルビトール、ガラ
クチトールおよびマンニトール等のモノ単糖アルコールから選択される方法。
3.請求項2に記載の方法であって、前記β-ケトエステルがソルビトールポリ
ア
セトアセテートである方法。
4.請求項1に記載の方法であって、前記糖アルコール脱水生成物が、ソルビタ
ン、ガラクチタン、イソソルビドおよびイソマンニド等の単糖アルコール脱水生
成物から選択される方法。
5.請求項4に記載の方法であって、前記エナミンが、イソソルビドビス-β-ア
ミノクロトネートである方法。
6.請求項1に記載の方法であって、前記オリゴ糖が、イヌリンまたはシクロデ
ギストリン等のオリゴフルクトースである方法。
7.請求項1-6の何れか1項に記載の方法であって、R3が、ヒドロキシおよび/ま
たはC1-C4アルキルで任意に置換されたC1-C4アルキル若しくはフェニル、ベンジ
ル若しくはフェンエチルである方法[ここで、n>1である場合、各々のR3は異な
ってもよく、R3は好ましくはメチルである]。
8.請求項1-7の何れか1項に記載の方法であって、0.001-5phrのβ-ケトエステ
ルまたはエナミンを前記ポリマー生成混合物に組込むことを具備する方法。
9.請求項1-8の何れか1項に記載の方法であって、前記熱可塑性ポリマーが、塩
素化ポリマー、ポリアルケン(ポリエテン、ポリプロペン)およびハロゲン化ゴ
ム、特にPVC、から選択される方法。
10.ポリマーを安定するために適切な予混合物であって、請求項1から9の何れ
か1項に定義された通りのβ-ケトニステルまたはエナミンと、少なくとも酸化金
属、メタルアルカノニートおよびポリオール並びにその組合わせから選択される
更なる安定剤を、β-ケトニステルまたはエナミン対金属化合物またはポリオー
ルの重量比が10:1から1.10の間で含有される予混合物。
11.詰求項10に記載の予備混合物であって、前記金属アルカノニートが、C4-C20
アルカン酸の、アルカリ金属、アルカリ上類金属、アルミニウム、亜鉛、スズ
および鉛塩から選択される予備混合物。
12.請求項10または11の何れか1項に記載の予備混合物であって、前記ポリオ
ールが、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ガラクチタン、ラクチトー
ル、イヌリン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、(ジ)ペンタエ
リスリトール、トリスメチロールプロパンおよびその混合物から、好ましくはソ
ル
ビトールおよびマンニトールから選択される予備混合物。
13.請求項10-12の何れか1項に記載の予備混合物であって、前記酸化金属がシ
リケート、ゼオライト、ヒドロタルサイトおよびドウソナイトから選択される予
備混合物。
14.請求項10-13の何れか1項に記載の予備混合物であって、前記安定剤が、更
に、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル等の立
体的なヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン光安定剤、他のUV安定剤
、有機亜リン酸塩および/またはエポキシド、例えばエポキシ化大豆油等を含有
する予備混合物。
15.熱可塑性ポリマーを安定化するために適した、夫々、式3および4により表
されるβ-ジケトエステルまたはそのエナミン;
[ここで、Aは、糖アルコールの脱水生成物の残基であり、且つR1、R2およ
びR3は請求項1に定義された通りであり、前記脱水生成物は、特に、ソルビ
タン、イソソルビドまたはイソマンニドであり、R1は、特に水素であり、R2
は、特に水素、メチル、エチルまたはヒドロキシエチルであり、R3は、特に
、メチルである]。
16.請求項12-15の何れか1項に記載の予備混合物であって、前記安定剤が、更
に、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル等の立
体的なヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン光安定剤、他のUV安定剤
、有機亜リン酸塩および/またはエポキシド、例えばエポキシ化大豆油等を含有
すろ予備混合物。
17.熱可塑性ポリマーを安定化するために適した、夫々、式3および4により表
されるβ-ジケトエステルまたはそのエナミン;
[ここで、Aは、糖アルコールの脱水生成物の残基であり、且つR1、R2およ
びR3は請求項1に定義された通りであり、前記脱水生成物は、特に、ソルビ
タン、イソソルビドまたはイソマンニドであり、R1は、特に水素であり、R2
は、特に水素、メチル、エチルまたはヒドロキシエチルであり、R3は、特に
、メチルである]。
18.熱可塑性ポリマーを安定化するために適した、夫々、式5および6により表
されるβ-ジケトニステルまたはそのエナミン;
[ここで、Aは、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸および糖酸C1-C18アルキル、
任意に置換された(アルク)アリルまたは任意に置換された4-ピペリジルエステ
ルから選択されたヒドロキシ酸のヒドロキシ基の脱プロトン化から生じる残基で
あり、且つR1、R2およびR3は請求項1に定義される通りである]。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C08K 5/17 C08K 5/17
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY,
DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I
T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ
,CF,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,
NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,L
S,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ
,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL
,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,
BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,E
E,ES,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU
,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL
,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,
SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,U
Z,VN,YU,ZW
(72)発明者 フリッセン、アウグスチヌス・エマニュエ
ル
オランダ国、エヌエル―6702 ディーエ
ル・ワーゲニンゲン、ヌーデ 16
(72)発明者 シュメッツ、ゲラルド・フーベルト
オランダ国、エヌエル―6085 エーブイ・
ホルン、スタットホウダーラーン 17
(72)発明者 ピータース、フラン・ジャネッテ・マリ
ア・レオナルドゥス
オランダ国、エヌエル―6471 ブイエイ
チ・エゲルショベン、ノイベンハーガーベ
ーク 66
(72)発明者 クローン、エリカ・ゲルトゥルダ・アーノ
ルダ
オランダ国、エヌエル―6071 ブイゼッ
ト・スバルメン、モーレンベーク 4
(72)発明者 バン、デア、ワール、ヨハネス・アルベル
トゥス
オランダ国、エヌエル―6041 シーエル・
ローアモンド、アルロ 72