JPH0665458A - 塩素含有樹脂組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 塩素含有樹脂に（ａ）カルボン酸のカルシウ
ム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩から選ばれる一種または
二種以上のカルボン酸金属塩と（ｂ）ポリオールポリケ
ト酸エステルと（ｃ）フェノール系酸化防止剤または硫
黄系酸化防止剤とからなる塩素含有樹脂組成物。 【効果】 初期着色防止性および長期着色防止性に優
れ、成型加工時に起こる着色を防止できる。さらに、本
発明の塩素含有樹脂組成物は鉛、カドミウム等の有毒物
質を含まないので、毒性の規制された用途に使用でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、熱安定性に優れ、かつ
無毒または毒性の低い塩素含有樹脂組成物に関する。

【０００２】

【従来の技術】塩素含有樹脂は、加工性、耐候性、可塑
剤の添加による可塑性の付与等の点で優れ、さらに安価
であるので、フィルム、シート、チューブ、波板、パイ
プ等の各種の成形品に広く使用されている。しかし、塩
素含有樹脂は熱および光に対する安定性に欠け、しかも
成型加工温度と熱分解温度が近似しているため、成形加
工時に脱塩化水素に起因する熱分解を生じやすく、これ
により成形品の着色や機械的強度の低下が起こる。

【０００３】塩素含有樹脂の熱による着色は、加熱初期
の段階で発現する淡い黄色〜褐色（初期着色性）、比較
的長時間の加熱により発現する濃い褐色〜黒色（長期着
色性）に分けて評価されるのが一般的であり、これら両
方の着色を防止することが必要である。従来、塩素含有
樹脂の熱着色を防止するため、有機金属化合物が使用さ
れ、実用上の改善が図られている。しかし、この有機金
属化合物中、鉛系化合物およびカドミウム系化合物は毒
性が高く、その使用が制限されている。

【０００４】有機金属化合物中でも、カルシウム石鹸、
マグネシウム石鹸、亜鉛石鹸は無毒であるが、熱着色防
止性能が充分ではない。そのため、「ポリ塩化ビニルの
安定化の解明と安定化助剤の配合・効果の実際」（昭和
59年３月15日、ソフト技研出版部発行) に記されている
ようなCa／Zn、Mg／Znの組み合わせによる相乗効果によ
り、初期着色および長期着色防止をねらった組成物、さ
らにこれらの組み合わせに安定化助剤として、有機リン
化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、含イオウ
化合物、含窒素化合物を添加し、主として長期着色防止
をねらった組成物が提案されている。しかしながら、こ
れらの金属石鹸の相乗効果をねらった組成物や安定化助
剤は、いまだ初期着色防止が充分ではない。そこで、β
−ジケトン類やアセト酢酸等を添加し、初期着色性を改
善しようとする試みがなされている。

【０００５】例えば、特公昭55-15498号公報には有機カ
ルボン酸金属塩とβ−ジケトン化合物を併用することに
より、熱安定性を向上させることが提案されており、初
期着色防止性は優れているが、長期着色防止性が不十分
である。長期着色を改善するため、特開昭61−207466号
公報には有機モノカルボン酸の亜鉛塩、β−ジケトン化
合物、エポキシ基含有化合物重合体を併用することが提
案されているが、まだ長期着色防止性は不十分である。

【０００６】また、特公昭53-20062号公報には錫系化合
物、有機カルボン酸金属塩、ケト酸エステルを併用する
ことにより、熱安定性を向上させることが提案されてい
る。この配合では初期着色防止性、長期着色防止性共に
優れるが、錫系化合物は毒性の点で問題があり、汎用品
での使用は限定されている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の課題
を解決するものであり、初期着色防止性および長期着色
防止性の両方に優れ、無毒の塩素含有樹脂組成物を提供
することである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
した結果、特定のカルボン酸金属塩、ポリオールポリケ
ト酸エステル、フェノール系酸化防止剤または硫黄系酸
化防止剤を塩素含有樹脂に添加することにより、初期着
色性および長期着色性を著しく改善できることを見い出
し、本発明を完成するに至った。

【０００９】すなわち、本発明は塩素含有樹脂と（ａ）
カルボン酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩か
ら選ばれる一種または二種以上のカルボン酸金属塩と
（ｂ）ポリオールポリケト酸エステルと（ｃ）フェノー
ル系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤とからなること
を特徴とする塩素含有樹脂組成物である。

【００１０】本発明に用いる塩素含有樹脂としては、例
えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビ
ニルとオレフィンとの共重合体、塩化ビニルと酢酸ビニ
ルとの共重合体等である。本発明に用いる（ａ）カルボ
ン酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩のカルボ
ン酸金属塩を構成するカルボン酸としては、炭素数４〜
24の飽和または不飽和のカルボン酸、炭素数７〜16の炭
素環式カルボン酸で、例えばヘキサン酸、オクタン酸、
２−エチルヘキサン酸、デカン酸、イソデカン酸、ラウ
リン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、
アラキン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノ
レン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、12−ヒ
ドロキシステアリン酸、リシノール酸、アジピン酸、ピ
メリン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、安
息香酸、トルイル酸、キシリル酸、エチル安息香酸、ｐ
−ｔ−ブチル安息香酸、ナフテン酸、フタル酸、イソフ
タル酸、テレフタル酸、ケイ皮酸、アニス酸、サリチル
酸等の一種または二種以上の混合物が挙げられる。

【００１１】これらカルボン酸の金属塩の添加量は、塩
素含有樹脂100重量部に対して0.01〜５重量部、好まし
くは0.1〜３重量部である。本発明に用いる（ｂ）ポリ
オールポリケト酸エステルを構成するポリオールは、水
酸基を分子内に２個以上もつ化合物で、ケト酸とのエス
テル結合を２個以上有する化合物であり、例えばエチレ
ングリコールジアセトアセテート、エチレングリコール
ジベンゾイルアセテート、プロピレングリコールジアセ
トアセテート、プロピレングリコールジベンゾイルアセ
テート、１，６−ヘキサンジオールジアセトアセテー
ト、１，６−ヘキサンジオールジベンゾイルアセテー
ト、ネオペンチレングリコールジアセトアセテート、グ
リセリンジアセトアセテート、グリセリンジベンゾイル
アセテート、グリセリントリアセトアセテート、グリセ
リントリベンゾイルアセテート、トリメチロールプロパ
ントリアセトアセテート、トリメチロールプロパントリ
ベンゾイルアセテート、ペンタエリスリトールジアセト
アセテート、ペンタエリスリトールジベンゾイルアセテ
ート、ペンタエリスリトールトリアセトアセテート、ペ
ンタエリスリトールトリベンゾイルアセテート、ジペン
タエリスリトールジアセトアセテート、ジペンタエリス
リトールジベンゾイルアセテート、ジペンタエリスリト
ールトリアセトアセテート、ジペンタエリスリトールト
リベンゾイルアセテート、ジペンタエリスリトールテト
ラアセトアセテート、ジペンタエリスリトールテトラベ
ンゾイルアセテート、ジペンタエリスリトールペンタア
セトアセテート、ジペンタエリスリトールペンタベンゾ
イルアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサアセト
アセテート、ジペンタエリスリトールヘキサベンゾイル
アセテート、ジペンタエリスリトールテトラアセトアセ
テート−モノベンゾイルアセテート、ジペンタエリスリ
トールテトラベンゾイルアセテート−ジアセトアセテー
ト、ソルビトールジアセトアセテート、ソルビトールヘ
キサアセトアセテート、ショ糖ジアセトアセテート、シ
ョ糖オクタアセトアセテート、デンプンポリアセトアセ
テート、セルロースポリアセトアセテート、ポリビニル
アルコールポリアセトアセテート、ペンタエリスリトー
ルモノブチレートトリアセトアセテート、ジペンタエリ
スリトールジステアレートトリベンゾイルアセテート、
グリセリンと無水マレイン酸のモル比１：１のポリエス
テルのポリアセト酢酸エステル、グリセリンのアルキレ
ンオキシド付加物のポリアセト酢酸エステル、ショ糖モ
ノステアレートのアルキレンオキシド付加物のポリアセ
ト酢酸エステルなどがある。

【００１２】これらポリオールポリケト酸エステルは、
該当するポリオールにジケテンなどを直接反応させて得
ることもできるが、アセト酢酸メチルやベンゾイル酢酸
エチルなどのモノアルコールモノケト酸エステルと該当
するポリオールとをエステル交換させ、生成するモノア
ルコールを留去することにより容易に得ることができ
る。

【００１３】これらポリオールポリケト酸エステルの添
加量は、塩素含有樹脂100重量部に対して0.01〜5.0重量
部、好ましくは0.1〜2.0重量部である。本発明に用いる
フェノール系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤は、塩
素含有樹脂に分散あるいは溶解する酸化防止剤であっ
て、好ましい例としては、２，６−ジ−ｔ−ブチル−ｐ
−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、２，６
−ｔ−ブチル−４−エチルフェノール、オクタデシル
３−（３’，５’−ジ−ｔ−ブチル−４’−ヒドロキシ
フェニル）プロピオネート、ｐ−ｔ−ブチルフェノー
ル、ジブチルヒドロキシトルエン、フェノール、レゾル
シン、ＤＬ−α−トコフェロール、没食子酸プロピル、
テトラキス−［メチレン−３−（３’，５’−ジ−ｔ−
ブチル−４’−ヒドロキシフェニル）プロピオネート］
メタン、２，２’−メチレン−ビス−（４−メチル−６
−ｔ−ブチルフェノール）、２，２’−メチレン−ビス
−（４−エチル−６−ｔ−ブチルフェノール）、４，
４’−ブチリデン−ビス−（３−メチル−６−ｔ−ブチ
ルフェノール）、ビスフェノールＡ、１，１，３−トリ
ス−（２−メチル−４−ヒドロキシ−５−ｔ−ブチルフ
ェニル）ブタン、１，３，５−トリメチル−２，４，６
−トリス（３，５−ジ−ｔ−ブチル−４−ヒドロキシベ
ンジル）ベンゼン、ビス［３，３’−ビス−（４’−ヒ
ドロキシ−３’−ｔ−ブチルフェニル）ブチリックアシ
ッド］グリコールエステル、ビタミンＥ、α−メチルベ
ンジルフェノール、ブチリデンビス（メチル−ブチルフ
ェノール）、などのフェノール系酸化防止剤、チオジプ
ロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ステアリ
ル、２−メルカプトメチルベンズイミダゾール、ジブチ
ルジチオカルバミン酸ニッケル、２−メルカプトベンズ
イミダゾール、などの硫黄系酸化防止剤がある。

【００１４】その他、本発明の組成物には、有機リン化
合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、β−ジケト
ン化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物など周知の安定
化助剤やステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリルアル
コール等の高級アルコール、パラフィンワックス、ポリ
エチレンワックス、モンタンワックス等のワックス類、
ステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミ
ド、エチレンビスステアリン酸アミド等のアミド類等の
滑剤、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、ハ
イドロタルサイト等の充填剤、他に顔料、帯電防止剤、
加工性向上剤、難燃剤、紫外線防止剤等を本発明の効果
を損なわない限り、用いることができる。

【００１５】

【発明の効果】本発明の塩素含有樹脂組成物は、熱安定
性および初期着色防止性に優れているので、成型加工時
に起こる着色、機械的強度の低下を防止できる。さら
に、本発明の塩素含有樹脂組成物は、無毒であるため、
毒性の規制された用途に使用できる。

【００１６】

【実施例】以下に実施例により本発明を具体的に説明す
る。 ［試料シートの作製］下記の配合１〜３と表１に示した
ポリオールポリケト酸エステル0.5重量部と酸化防止剤
0.2重量部からなる塩素含有樹脂組成物を９インチ径の
熱ロールを用いて、170℃で３分間混練し、厚さ１mmの
シートを作製した。

【００１７】［熱安定性評価方法］試料シートを５×５
cmに裁断し、180℃のギヤオーブン中で加熱を行った。
初期着色性の評価は加熱15分後の試料シートの色調を調
べた。長期着色性の評価は試料シートが黒色になるまで
の時間を測定した。 ＜配合１＞（本発明例 No.１〜14、比較例 No.17〜21） ボリ塩化ビニル樹脂（第一塩ビ販売（株）、103EP) 100 重量部 ステアリン酸カルシウム塩 0.5 〃 ステアリン酸亜鉛塩 0.5 〃 エポキシ化大豆油 1.0 〃 ポリエチレンワックス （三井石油化学工業（株）Hi-Wax220) 0.5 〃 ＜配合２＞（本発明例 No.15） ボリ塩化ビニル樹脂（第一塩ビ販売（株）、103EP) 100 重量部 ステアリン酸カルシウム塩 0.3 〃 ステアリン酸マグネシウム塩 0.2 〃 ステアリン酸亜鉛塩 0.5 〃 エポキシ化大豆油 1.0 〃 ポリエチレンワックス （三井石油化学工業（株）Hi-Wax220) 0.5 〃 ＜配合3 ＞（本発明例 No.16） ボリ塩化ビニル樹脂（第一塩ビ販売（株）、103EP) 100 重量部 ステアリン酸亜鉛塩 0.5 〃 エポキシ化大豆油 1.0 〃 ポリエチレンワックス （三井石油化学工業（株）Hi-Wax220) 0.5 〃 評価結果を表１に示した。

【００１８】

【表１】

【００１９】＊１ 日本チバガイギー（株）商品名、テ
トラキス−［メチレン−３−（３',５'−ジ−ｔ−ブチ
ル−４'−ヒドロキシフェニル）プロピオネート］メタ
ン ＊１ 日本チバガイギー（株）商品名、オクタデシル
３−（３',５'−ジ−ｔ−ブチル−４'−ヒドロキシフェ
ニル）プロピオネート 本発明の塩素含有樹脂組成物は、初期着色防止性、長期
着色防止性ともに優れている。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 塩素含有樹脂と（ａ）カルボン酸のカル
   シウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩から選ばれる一種ま
   たは二種以上のカルボン酸金属塩と（ｂ）ポリオールポ
   リケト酸エステルと（ｃ）フェノール系酸化防止剤また
   は硫黄系酸化防止剤とからなることを特徴とする塩素含
   有樹脂組成物。