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JP2001129826A - 導電性繊維強化成形材料およびその製造方法 - Google Patents

導電性繊維強化成形材料およびその製造方法

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Publication number
JP2001129826A
JP2001129826A JP31088599A JP31088599A JP2001129826A JP 2001129826 A JP2001129826 A JP 2001129826A JP 31088599 A JP31088599 A JP 31088599A JP 31088599 A JP31088599 A JP 31088599A JP 2001129826 A JP2001129826 A JP 2001129826A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molding material
conductive fiber
resin
conductive
fiber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP31088599A
Other languages
English (en)
Inventor
Eisuke Wadahara
英輔 和田原
Soichi Ishibashi
壮一 石橋
Haruo Ohara
春夫 尾原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP31088599A priority Critical patent/JP2001129826A/ja
Publication of JP2001129826A publication Critical patent/JP2001129826A/ja
Pending legal-status Critical Current

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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29BPREPARATION OR PRETREATMENT OF THE MATERIAL TO BE SHAPED; MAKING GRANULES OR PREFORMS; RECOVERY OF PLASTICS OR OTHER CONSTITUENTS OF WASTE MATERIAL CONTAINING PLASTICS
    • B29B9/00Making granules
    • B29B9/12Making granules characterised by structure or composition
    • B29B9/14Making granules characterised by structure or composition fibre-reinforced
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29BPREPARATION OR PRETREATMENT OF THE MATERIAL TO BE SHAPED; MAKING GRANULES OR PREFORMS; RECOVERY OF PLASTICS OR OTHER CONSTITUENTS OF WASTE MATERIAL CONTAINING PLASTICS
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    • B29B9/02Making granules by dividing preformed material
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  • Processing And Handling Of Plastics And Other Materials For Molding In General (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 高い導電性および力学的特性、特に衝撃強
度、剛性などを有する成形品を得ることができ、かつ導
電性繊維の脱落が少ない導電性繊維強化成形材料および
その製造方法。 【解決手段】 導電性繊維と熱可塑性樹脂とからなり、
次の条件[A]および[B]を同時に満たす。 [A]成形材料の長手方向の電気抵抗値RLが、1×1
2Ω以下。 [B]成形材料の長手方向と直交する平面内における任
意方向の電気抵抗値RTが、1×103Ω以上。 製造方法は、導電性繊維を予め開繊して予熱し、次いで
樹脂を導電性繊維束中に含浸させ、次いで、前記複合体
を樹脂でコーティングし、しかる後に、コーティングさ
れた前記複合体を、10m/min以上の速度で引き取
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性、力学的特
性、特に衝撃強度、剛性などに優れる成形品が得られる
導電性繊維強化成形材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、生産性の高い成形材料、例えば強
化繊維と樹脂とを押出機にて混練して得られるコンパウ
ンドペレット(短繊維ペレット)では、得られた成形品
中の導電性繊維が短くなるために、成形品の導電性、力
学的特性、特に衝撃強度、剛性などが劣り、これら特性
をバランスよく備えた成形品を得られない場合が殆どで
あった。これらの力学的特性をバランスよく備えるため
には、成形品中の導電性繊維を長くすることが有効であ
り、例えば強化繊維を引き揃えた長繊維ペレットとする
ことを挙げることができる。
【0003】一般的に長繊維ペレットは、例えば特公昭
63−37694号公報に記載されているように、クロ
スヘッドダイや含浸バスを用いたプルトルージョン法な
どを利用して強化繊維に樹脂を含浸させることにより製
造される。しかし、導電性繊維を強化繊維として用いた
長繊維ペレットの場合には、製造工程、特に、熱可塑性
樹脂を繊維束へ含浸させる含浸工程での導電性繊維の損
傷が、一般的な強化繊維(例えばガラス繊維など)に比
べて著しく大きいため、高い導電性が得られにくいだけ
でなく、生産性が極端に悪化し、製造コストも著しく高
くなるといった問題点を有していた。
【0004】また、導電性繊維を用いた長繊維ペレット
におけるもう一つの問題点としては、ペレット製造後に
発生する導電性繊維のペレットからの脱落を挙げること
ができる。この脱落した導電性繊維は、電気を使用する
設備(例えば射出成形機、ペレット搬送機など)の電気
回路を短絡せしめ、設備の突然の停止、更にはその電気
回路の破損などの重大な障害を引き起こす問題がある。
また、脱落した導電性繊維は、人体に接触した場合にも
不快な感触を与え、労働環境にも悪影響を及ぼす場合が
ある。
【0005】かかる問題に対して、例えば特開平10−
52820号公報には、長繊維強化熱可塑性樹脂成形材
料から発生する無機繊維の毛羽量を、従来の製造工程の
後に、成形材料を振動させながら再溶融させるといった
工程を追加することにより改善することが提案されてい
る。
【0006】しかし、かかる成形材料の製造方法による
と、発生する毛羽量の低減にはある程度効果が有るもの
の、生産性に関しては従来と何ら変わりがなく、生産性
の問題が依然として解決されていなかった。すなわち、
高い導電性と力学的特性(特に衝撃強度、剛性など)を
有する成形品を得ることができ、かつ導電性繊維の脱落
の少ない導電性繊維強化成形材料を、高い生産性で製造
するという要求は従来達成できていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の問題点に鑑み、高い生産性を有したままで、しか
も高い導電性と力学的特性、特に衝撃強度、剛性などを
有する成形品を得ることができるとともに導電性繊維の
脱落が少ない導電性繊維強化成形材料およびその製造方
法ならびにその成形材料により成形されてなる成形品を
提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、次のような手段を採用するものであ
る。即ち、本発明の導電性繊維強化成形材料は、少なく
とも導電性繊維と樹脂とからなる成形材料が、少なくと
も次の条件[A]および[B]を同時に満たす導電性繊
維強化成形材料であることを特徴とする。 [A]成形材料の長手方向の電気抵抗値RLが、1×1
2Ω以下であること。 [B]成形材料の長手方向と直交する平面内における任
意方向の電気抵抗値RTが、1×103Ω以上であるこ
と。
【0009】本発明の導電性繊維強化成形材料の製造方
法は、導電性繊維を予め開繊して予熱し、次いで樹脂を
導電性繊維束中に含浸させることにより、導電性繊維と
前記樹脂との複合体を形成させ、次いで、前記複合体を
前記樹脂とは同一でも異なってもよい樹脂でコーティン
グし、しかる後に、コーティングされた前記複合体を、
10m/min以上の速度で引き取ることを特徴とす
る。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形
態を説明する。
【0011】まず、本発明の導電性繊維強化成形材料を
構成する導電性繊維としては、例えば、PAN系、ピッ
チ系、レーヨン系等の炭素繊維や、ステンレス鋼繊維、
銅繊維等の金属繊維を挙げることができる。かかる導電
性繊維としては、PAN系、ピッチ系、レーヨン系など
の炭素繊維が好ましい。
【0012】本発明で使用する炭素繊維としては、広角
X線回折法により測定された結晶サイズ(以下、Lcと
記す)が、1〜4nmの範囲であることが好ましい。L
cが1nm未満である場合、炭素繊維の炭化が十分では
なく、炭素繊維自体の導電性が低くなる。このことに起
因して得られた成形品の導電性が劣る場合があるため好
ましくない。一方、Lcが4nmを越える場合、炭素繊
維の炭化もしは黒鉛化は十分であり、炭素繊維自体の導
電性には優れるが、その一方で脆くなる。このことに起
因して、成形品中の繊維長さが短くなり、高い導電性が
期待できないため好ましくない。より好ましくは1.3
〜3.5nmの範囲であり、さらに好ましくは1.6〜
3nmの範囲である。とりわけ好ましくは1.8〜2.
5nmの範囲であるものがよい。なお、広角X線回折法
によるLcの測定は、日本学術振興会第117委員会、
炭素、36、p25(1963)に記載された方法で測
定した。
【0013】かかる炭素繊維としては、X線光電子分光
法により測定される炭素繊維表面の酸素(O)と炭素
(C)の原子数の比である表面官能基量(O/C)が、
0.02〜0.2の範囲であるのが好ましい。O/Cが
0.02より小さいことは、炭素繊維表面に樹脂との接
着に寄与するような官能基が非常に少ないことを意味す
る。炭素繊維と樹脂の接着性が劣ると、所望の力学的特
性が得られないため好ましくない。逆にO/Cが0.2
より大きいことは、炭素繊維表面の酸性水溶液、もしく
はアルカリ水溶液での電解処理などによる表面処理が必
要以上に行われており、炭素の結晶構造が破壊されて、
炭素繊維表面に脆弱層が形成されていることを意味す
る。この場合、炭素繊維が接触した接触抵抗が高くな
り、成形品に高い導電性が期待できないため好ましくな
い。
【0014】更に、O/Cを0.02〜0.2の範囲に
することは、成形品中の炭素繊維の分散性など、炭素繊
維と樹脂との接着性以外にも好ましい効果をもたらす。
より好ましいO/Cは0.03〜0.17の範囲であ
り、さらに好ましくは0.04〜0.15の範囲であ
る。とりわけ0.05〜0.13の範囲が好ましい。
【0015】表面官能基(O/C)は、X線光電子分光
法により次のような手順によって求められる。まず、サ
イジング剤などを溶媒で除去した炭素繊維を銅製の試料
支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90°と
し、X線源としてMgKα1、2を用い、試料チャンバ
ー中を1×10-8Torrに保つ。測定時の帯電に伴う
ピークの補正としてC1Sの主ピークの運動エネルギー値
B.E.を284.6eVに合わせる。C1Sピーク面積
は、282〜296eVの範囲で直線のベースラインを
引くことにより求める。O1Sピーク面積は、528〜5
40eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより
求める。ここで表面官能基量(O/C)とは、前記O1S
ピーク面積とC1Sピーク面積の比から、装置固有の感度
補正値を用いて原子数比として算出する。なお、本発明
では島津製作所(株)製ESCA−750を用いて測定
を行い、前記感度補正値は2.85であった。
【0016】かかる炭素繊維は、表面官能基(O/C)
が0.02〜0.2の範囲であれば、炭素繊維は酸性水
溶液中もしくはアルカリ水溶液中での電解処理が施され
ていてもよいが、よりO/Cを好ましい範囲に制御でき
る酸性水溶液中で電解処理されているのが好ましい。使
用される好ましい酸性水溶液としては、水溶液中で酸性
を示すものであればよく、例えば硫酸、硝酸、塩酸、リ
ン酸、ホウ酸、炭酸などの無機酸、酢酸、酪酸、シュウ
酸、アクリル酸、マレイン酸などの有機酸、または硫酸
アンモニウム、硫酸水素アンモニウムなどの塩などが挙
げられる。中でも、強い酸性を示す硫酸、硝酸が好まし
い。
【0017】また、本発明で使用する炭素繊維として
は、引張破断伸度は少なくとも1.5%以上の炭素繊維
がよい。引張破断伸度が1.5%未満である場合、導電
性繊維強化成形材料の製造工程(特に樹脂含浸工程)や
成形工程で炭素繊維が切断されやすく、導電性繊維強化
成形材料中、およびその成形品中の炭素繊維長さを大き
くすることができないため、高い導電性、力学的特性に
劣るだけでなく、導電性繊維強化成形材料の高い生産性
が達成できない。前記問題を解決するためには、引張破
断伸度が1.5%以上、より好ましくは引張破断伸度が
1.7%以上、更に好ましくは引張破断伸度が1.9%
以上の炭素繊維を用いるのがよい。本発明で使用する炭
素繊維の引張破断伸度に上限はないが、一般的には5%
未満である。
【0018】炭素繊維としては、強度と弾性率とのバラ
ンスに優れるPAN系炭素繊維がよい。
【0019】また、上記炭素繊維や金属繊維の他、S−
ガラス、E−ガラス等のガラス繊維や、ボロン繊維、シ
リコンカーバイド繊維、シリコンナイトライド繊維等の
無機繊維やアラミド繊維、PBO繊維、ポリステル繊
維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリフェニレンサル
ファイド繊維等の有機繊維に、金属を被覆してなる金属
被覆繊維も使用することができ、これら導電性繊維を単
独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0020】前記金属被覆繊維の場合、被覆する金属
は、ニッケル、銅、銀、金等を使用することができ、前
記金属は少なくとも1層、場合によっては複数層にて繊
維に被覆される。金属被覆繊維への被覆方法について
は、特に制限はないが、好ましくは電解や無電解による
メッキやCVD法やPVD法やイオンプレーティング法
や蒸着法等により高い密着強度で被覆が施されているも
のが好ましい。
【0021】これら繊維の平均単繊維直径は1〜20μ
mであることが好ましく、2〜17μmであることがよ
り好ましく、3〜12μmであることが更に好ましい。
平均繊維直径が1μm未満では、樹脂の導電性繊維束中
への含浸が困難となり、成形品中での導電性繊維の分散
性に劣るなどの問題を生じる場合がある。一方、平均繊
維直径が20μmを超えると、導電性繊維の力学的特性
に劣り、所望の補強効果が得られない。特に炭素繊維の
場合は、平均繊維直径が1〜15μmの範囲内であるこ
とが好ましく、より高い補強効果を得るためには3〜1
0μmであることが更に好ましい。平均繊維直径が1μ
m未満でも、15μmを超えても、力学的特性に優れる
炭素繊維が得られず、所望の補強効果が得られない場合
がある。
【0022】かかる導電性繊維は、シランカップリング
剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリ
ング剤等で、表面処理されたり、また、ウレタン系樹
脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系
樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、アクリル系樹
脂、フェノール系樹脂、液晶性樹脂等で集束処理されて
いてもよい。
【0023】次に、本発明の導電性繊維強化成形材料の
マトリックス樹脂としては、特に制限はないが、耐衝撃
性に優れ、かつ、生産性の高い射出成形が可能な熱可塑
性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン
や、スチレン系樹脂の他や、ポリオキシメチレン、ポリ
アミド、ポリカーボネート、ポリメチレンメタクリレー
ト、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ
フェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、
ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスル
ホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケト
ン、フェノール(ノボラック型)等や、これらの共重合
体、変性体、および2種類以上ブレンドした樹脂などで
あってもよい。また、更に耐衝撃性向上のために、上記
樹脂にエラストマー、もしくは、ゴム成分を添加した樹
脂であってもよい。
【0024】本発明における熱可塑性樹脂としては、結
晶性の熱可塑性樹脂(以下、結晶性樹脂と呼ぶ)より
も、非晶性の熱可塑性樹脂(以下、非晶性樹脂と呼ぶ)
の方が本発明の効果を最大限に利用できる場合が多い。
一般的に非晶性樹脂は、結晶性樹脂より寸法安定性に優
れ、耐衝撃性にも優れるものの、溶融粘度が高いため、
特に長繊維ペレットにおけるマトリックス樹脂とした場
合、導電性繊維強化成形材料の生産性に極端に劣り、コ
スト高になるのが一般的であった。しかし、本発明の導
電性強化成形材料において、熱可塑性樹脂として非晶性
樹脂を使用した場合、従来は困難であった成形品中での
導電性繊維の分散性が向上することにより、高い導電
性、力学的特性の両立が可能となるだけでなく、導電性
繊維強化成形材料の生産性も格段に向上でき、本発明の
効果を最大限に発現される。
【0025】前記非晶性樹脂としては、スチレン系樹
脂、ポリカーボネート樹脂、もしくはポリフェニレンエ
ーテル樹脂の少なくとも1種類が配合されていることが
好ましい。
【0026】かかるスチレン系樹脂とは、スチレンおよ
び/またはその誘導体(これらを総称して芳香族ビニル
系単量体と称する場合がある)から生成した単位を含有
するものである。
【0027】かかるスチレン系樹脂としては、スチレン
系(共)重合体、ゴム強化スチレン(共)重合体が挙げ
られる。スチレン系(共)重合体としては芳香族ビニル
系単量体の1種または2種以上を重合した重合体、芳香
族ビニル系単量体の1種または2種以上とそれと共重合
可能な単量体の1種または2種以上を共重合した共重合
体が挙げられる。ゴム強化スチレン(共)重合体として
は、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体の1種または
2種以上をグラフト重合したゴム強化グラフト重合体、
ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体の1種または2種
以上とそれと共重合可能な単量体の1種または2種以上
をグラフト共重合したグラフト共重合体が挙げられる。
【0028】上記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な
単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル、シアン
化ビニルなどが挙げられる。かかる(メタ)アクリル酸
エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸
エチル等が挙げられるが、メタクリル酸メチルが好まし
く用いられる。また、かかるシアン化ビニル化合物とし
ては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙
げられる。
【0029】上記ゴム状重合体としては、ブタジエンゴ
ム、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ア
クリロニトリル・ブタジエン共重合体ゴム(NBR)な
どのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリ
ル系ゴムおよびエチレン・プロピレン・非共役ジエン三
元共重合体ゴム(EPDM)などのポリオレフィン系ゴ
ムが挙げられ、なかでもポリブタジエン、エチレン・プ
ロピレン・非共役ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)
が好ましく用いられる。
【0030】本発明において好ましいスチレン系樹脂と
しては、PS(ポリスチレン)等のスチレン系重合体、
HIPS(高衝撃ポリスチレン)等のゴム強化スチレン
系重合体、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合
体)等のスチレン系共重合体、AES(アクリロニトリ
ル/エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム/スチレ
ン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン
/スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル/
ブタジエン/スチレン共重合体)、ASA(アクリロニ
トリル/スチレン/アクリルゴム共重合体)などのゴム
強化(共)重合体等が挙げられ、なかでも特にPS(ポ
リスチレン)等のスチレン系重合体、AS(アクリロニ
トリル/スチレン共重合体)等のスチレン系共重合体、
ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重
合体)、ASA(アクリロニトリル/スチレン/アクリ
ルゴム共重合体)が好ましい。
【0031】かかるポリカーボネート樹脂としては、芳
香族二価フェノール系化合物とホスゲンまたは炭酸ジエ
ステルとを反応させることにより得られる粘度平均分子
量が10000〜1000000の範囲の芳香族ホモま
たはコポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0032】ここでいう二価フェノール系化合物の具体
例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ
メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェ
ニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)
ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフ
ェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,
5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−
ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサ
ンおよび1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシ
フェニル)エタンなどが挙げられ、これらは単独あるい
は混合物として使用することができる。
【0033】かかるポリフェニレンエーテル系樹脂とし
ては、クロロホルム中、30℃で測定した固有粘度が
0.01〜0.80dl/gの重合体が好ましく用いら
れる。具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−
フェニレン)エーテル、2,6−ジメチルフェノール/
2,4,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−
ジメチルフェノール/2,3,6−トリエチルフェノー
ル共重合体などを例として挙げることができる。
【0034】これら非晶性樹脂は2種以上を併用しても
よく、具体的には、ABS樹脂またはASA樹脂または
AS樹脂とポリカーボネート樹脂との組み合わせ、ポリ
フェニレンエーテル樹脂とポリスチレン樹脂または耐衝
撃ポリスチレン樹脂との組み合わせ、ポリカーボネート
樹脂とポリスチレン樹脂または耐衝撃ポリスチレン樹脂
との組み合わせなどの例を好ましく挙げることができ
る。
【0035】また、その他の特性、例えば耐薬品性、成
形時の流動性などを付与させるためにこれら非晶性樹
脂、または2種類以上の非晶性樹脂を併用したものの一
部(通常、樹脂成分の70重量%以下、好ましくは60
重量%以下、特に好ましくは50重量%以下)を結晶性
樹脂に置き換えることが可能である。このような結晶性
樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹
脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、液晶性樹脂などが
挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂またはポ
リカーボネート樹脂とABS樹脂との組み合わせまたは
ポリカーボネート樹脂とASA樹脂との組み合わせとポ
リブチレンテレフタレートおよび/またはポリエチレン
テレフタレートとの組み合わせ、ABS樹脂とナイロン
6および/またはナイロン66との組み合わせ、ポリカ
ーボネート樹脂とナイロン6および/またはナイロン6
6との組み合わせ、ポリカーボネート樹脂またはポリカ
ーボネート樹脂とABS樹脂との組み合わせまたはポリ
カーボネート樹脂とASA樹脂との組み合わせと液晶性
樹脂との組み合わせ、ポリフェニレンエーテル樹脂とナ
イロン6および/またはナイロン66との組み合わせ、
ポリフェニレンエーテル樹脂と液晶性樹脂との組み合わ
せなどの例を好ましく挙げることができる。
【0036】一方、結晶性樹脂を使用した場合にも、成
形品中での導電性繊維の更なる分散性向上と、更なる導
電性繊維強化成形材料の生産性の向上を達成することが
できる。前記結晶性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポ
リエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリ
オレフィン樹脂、もしくは液晶性樹脂の少なくとも1種
類が配合されていることが好ましい。これら結晶性樹脂
は2種以上を併用してもよく、具体的には、ポリアミド
樹脂と液晶性樹脂との組み合わせ、ポリエステル樹脂と
液晶性樹脂との組み合わせ、ポリプロピレン樹脂と液晶
性樹脂との組み合わせなどの例を好ましく挙げることが
できる。
【0037】なお、本発明における液晶性樹脂とは、溶
融時に異方性を形成し得る樹脂であり、液晶ポリエステ
ル、液晶ポリエステルアミド、液晶ポリカーボネート、
液晶ポリエステルエラストマーなどが挙げられ、中でも
液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミドなどが好ま
しく用いられる。とりわけ好ましい液晶性樹脂として
は、液晶ポリエステルが挙げられる。
【0038】本発明における結晶性の熱可塑性樹脂とし
て、特に好ましくは導電性繊維との界面接着性の面か
ら、ポリアミド樹脂を使用するのがよい。本発明におい
て、特に有用なポリアミド樹脂は、150℃以上の融点
を有する上に、耐熱性や強度に優れたナイロン樹脂であ
り、具体的な例としてはナイロン6、ナイロン66、ナ
イロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロ
ン9T、ナイロン66/6T、ナイロン6T/6、ナイ
ロン6I/6、ナイロン66/6T、ナイロン66/6
I、ナイロン12/6T、ナイロン66/6T/6I、
ナイロン6T/6I、ナイロン6T/M5T、ナイロン
XD6、およびこれらの混合物ないし共重合体などを好
ましく使用することができる。
【0039】また、特性(特に耐衝撃性)改良の必要性
に応じて、無水マレイン酸などによる酸変性オレフィン
系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/
1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジ
エン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、
エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン
/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体および
エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、
ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリ
エーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラ
ストマーなどのエラストマーから選ばれる1種または2
種以上の混合物を添加して、所望の特性をさらに付与し
た樹脂も使用することもできる。
【0040】これらのポリアミド樹脂の重合度に関して
は、特に制限はないが、薄肉成形品を得るために成形時
の流動性に優れるものがよく、硫酸相対粘度ηrが1.
5〜2.7の範囲であるポリアミド樹脂が好ましい。η
rが2.7を超える場合は成形時の流動性に劣り、成形
時の流動性が有効に発現しない。特に薄肉成形品を成形
した場合、成形品表面にフローマークや導電性繊維の浮
き等が発生し、表面平滑性が損なわれると共に、強いウ
ェルドラインが発生し、外観品位が大きく劣るものを提
供する可能性がでてくる。また、ηrが1.5未満の場
合は流動性には優れるものの、力学的特性(特に衝撃強
度、伸度など)に劣るだけでなく、低分子量成分が多く
なるため成形時にガスが大量に発生し、逆に成形性を阻
害する場合があるため好ましくない。より好ましくはη
rが1.8〜2.6の範囲であり、更に好ましくはηr
が2.0〜2.5の範囲であるポリアミド樹脂である。
ηrが2.1〜2.4の範囲であるポリアミド樹脂がと
りわけ好ましい。ここで、硫酸相対粘度ηrは、98%
硫酸で溶液濃度が1g/100mlになるように溶かし
た後、25℃の恒温槽内でオストワルド粘度計で流下速
度を測定し、98%硫酸に対する試料溶液の粘度比(流
下秒数比)で表される。
【0041】本発明で使用するポリアミド樹脂として更
に有用なものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナ
イロン6/ナイロン66の共重合体、それらの混合物、
および/もしくは芳香族含有ポリアミド樹脂が挙げられ
る。
【0042】ここで芳香族含有ポリアミドとは、分子鎖
中に芳香環を有しているものを指し、一般的にはジアミ
ン、もしくはジカルボン酸などの原料の内、一方が芳香
環を有し、他方がα、ω−直鎖脂肪族であるものなどを
指す。かかる芳香族含有ポリアミド樹脂として、更に有
用なものとしては、ナイロンXD6、ナイロン6T/6
I、またはナイロン66/6I/6コポリマー、および
それらの混合物などが挙げられ、一層有用なものとして
は、メタキシリレンジアミドとアジピン酸との縮重合体
であるポリメタキシリレンアジパミドが挙げられる。
【0043】本発明で使用するポリアミド樹脂としてと
りわけ有用なものとしては、ナイロン6および/または
ポリメタキシリレンアジパミドが挙げられる。ナイロン
6を使用した場合、薄肉成形性(成形時の流動性)を更
に一層高く発現することができる。また、ポリメタキシ
リレンアジパミドを使用した場合、成形後の成形品収縮
が抑制され、ヒケやウェルド部の膨らみなど外観上の欠
陥を最小限に留めることができ、成形品の外観品位に優
れる。
【0044】特にナイロン6などの脂肪族ポリアミド樹
脂とポリメタキシリレンアジパミドなどの芳香族含有ポ
リアミド樹脂とを併用する場合、その配合比率は、ポリ
アミド樹脂全量を100重量%とした場合、脂肪族ポリ
アミド樹脂が10〜100重量%であることが好まし
く、より好ましくは脂肪族ポリアミド樹脂が30〜10
0重量%、更に好ましくは脂肪族ポリアミド樹脂が60
〜100重量%である。脂肪族ポリアミド樹脂の配合比
率が該範囲をよりも少ない場合、衝撃強度、強度などの
力学的特性のバランスのとれた材料が得られないので好
ましくない。
【0045】脂肪族ポリアミド樹脂と芳香族含有ポリア
ミドとを併用する使用する場合、それらの混合形態に関
して特に制限はないが、両成分がお互いに相溶し、両樹
脂が海島構造などの相分離した形態をとらないことが本
発明の効果を十分に発現するため好ましい。また、それ
らの混合方法に関しても特にその制限はないが、両樹脂
成分を十分に相溶させるために、2軸押出機を用いて混
合する方法を利用するのが好ましい。なお、両樹脂の混
合において、導電性繊維は同時に混合されても、別途混
合されてもよい。
【0046】次に、本発明の導電性繊維強化成形材料の
特徴である電気抵抗の条件について述べる。本発明の成
形材料においては、成形材料の長手方向の電気抵抗値R
Lが、1×102Ω以下であることが必要である。R
Lが、1×102Ωを越える場合には、得られる成形品の
力学的特性に劣るだけでなく、導電性にも著しく劣る。
これは、成形材料中における導電性繊維の長さが短い、
または導電性繊維が良好に分散していないことを意味
し、これを成形してなる成形品も同様に、導電性繊維の
長さが更に短い、または導電性繊維が良好に分散してい
ないことに起因する。好ましくはRLが15Ω以下であ
り、更に好ましくは3Ω以下である。とりわけ、RL
2Ω以下であるのが好ましい。
【0047】また、成形材料を複数種併用している(例
えばドライブレンドなど)場合、その中の少なくとも1
種が、前述のRLや、後述のRT、VRL、RL/RTの範
囲に入る成形材料も本発明に包含される。
【0048】ここで、かかる成形材料の長手方向とは、
成形材料の製造単位が引き取られるまたは押し出される
方向を指し、特に成形材料が柱状の形態を有した場合
は、その柱軸方向に相当する。また、かかる製造単位と
は、製造工程において引き取られるまたは押し出される
形態、例えば、ストランド、ガット、シートなどの1単
位を指し、特に成形材料が長繊維ペレットである場合
は、1本のストランドに相当する。
【0049】なお、本発明における電気抵抗値RLは、
任意に選択した少なくとも5つの導電性繊維強化成形材
料について、下記の手順に従い測定した電気抵抗値の平
均値にて代表させたものをいう。 (1)まず、成形材料の長手方向の各々の端面を、それ
ぞれサンドペーパー(#400以下)で平面になるまで
少なくとも0.2mm研磨する。 (2)次いで、研磨した各々端面に、導電ペースト(日
本アチソン(株)製Electrodag415)を塗
布し、25℃、湿度50%、約30minの条件で乾燥
させる。 (3)最後に、その端面の2点間抵抗値をデジタルマル
チテスター((株)アドバンテスト製R3581)にて
3回測定し、その平均値をその導電性繊維強化成形材料
の長手方向の電気抵抗値RLとする。
【0050】また、本発明の導電性繊維強化成形材料に
おいては、成形材料の長手方向と直交する平面内におけ
る任意方向の電気抵抗値RTが、1×103Ω以上である
ことが必要である。RTが、1×103Ω未満である場合
には、導電性繊維強化成形材料の製造単位当たりの生産
性に劣るだけでなく、導電性繊維強化成形材料からの導
電性繊維の脱落も多い。これは、成形材料の表面に導電
性繊維が必要以上に存在していることを意味し、導電性
繊維を必要以上に存在させたくない成形材料の表面に導
電性繊維をその必要量を超えて配置することに起因す
る。好ましくはR Tが1×104Ω以上であり、更に好ま
しくは1×105Ω以上である。とりわけ、RTが1×1
6Ω以上であるのが好ましい。
【0051】ここで、本発明におけるRTは、任意に選
択した少なくとも5つの導電性繊維強化成形材料につい
て、下記の手順に従い測定した電気抵抗値の平均値にて
代表させたものをいう。 (1)成形材料の長手方向と直交する平面内における任
意方向の各々の端面の2点間抵抗値をデジタルマルチテ
スター((株)アドバンテスト製R3581)にて測定
する。 (2)同様に、異なる位置にて少なくとも3回測定し、
その平均値をその導電性繊維強化成形材料の長手方向と
垂直方向の電気抵抗値RTとする。
【0052】また、本発明の導電性繊維強化成形材料
は、次の態様とすることも好ましい。すなわち、本発明
における導電性繊維強化成形材料は、少なくとも導電性
繊維と熱可塑性樹脂とからなる成形材料において、さら
に少なくとも次の条件[C]または[D]を同時に満た
すことも好ましい。
【0053】[C]成形材料の長手方向の体積電気抵抗
値VRLが、1Ω・cm以下であること。
【0054】[D]RLとRTとの比であるRL/RTが、
1×10-3以下であること。
【0055】VRLが、1Ω・cmを越える場合には、
得られる成形品の力学的特性に劣るだけでなく、導電性
にも著しく劣ることがある。これは、成形材料中におけ
る導電性繊維の長さが短い、または導電性繊維が良好に
分散していないことを意味し、これを成形してなる成形
品も同様に、導電性繊維の長さが更に短い、または導電
性繊維が良好に分散していないことに起因する。より好
ましくはVRLが5×10-2Ω・cm以下であり、更に
好ましくは7×10-3Ω・cm以下である。とりわけ、
VRLが6×10-3Ω・cm以下であるのが好ましい。
ここで、成形材料の長手方向の体積電気抵抗値VRL
は、RLに成形材料端面の面積を乗じ、成形材料の長手
方向の長さで除した値にて代表させたのものである。
【0056】また、成形材料の長手方向の電気抵抗値R
Lと成形材料の長手方向と直交する平面内における任意
方向の電気抵抗値RTとの比であるRL/RTが、1×1
-3以下であることも好ましい。RL/RTが1×10-3
を越える場合には、得られる成形品の導電性、力学的特
性に劣るだけでなく、導電性繊維強化成形材料からの導
電性繊維の脱落も多くなるため好ましくない。また、本
発明の導電性繊維強化成形材料が長繊維ペレットの形態
を有している場合、特に製造単位当たりの生産量に劣る
もののみがRL/RTとして1×10-3未満である値を示
したため、生産性の面からも好ましくない。これは、成
形材料中の導電性繊維の長さ、分散、および配置位置が
適当ではないことに起因する。より好ましくはRL/RT
が1×10-4以下であり、更に好ましくは1×10-5
下である。とりわけ、RL/RTが1×10-6以下である
のが好ましい。なお、RL/RTの算出は、上記RLを上
記RTで除したもので代表させた。
【0057】前述の条件[C]または条件[D]によ
り、得られる成形品の導電性、力学的特性に優れ、生産
性の高い導電性繊維強化成形材料を確実に選択すること
ができるため好ましい。本発明においては、さらに好ま
しい成形材料として、上記条件[A]、[B]、
[C]、[D]のすべてを満たす成形材料を挙げること
ができる。該条件すべてを満たす成形材料は、さらに優
れた力学的特性、導電性を有する成形品が得られ、かつ
生産性にさらに優れ、導電性繊維の脱落が少ない成形材
料を確実に提供することができる。
【0058】また、導電性繊維強化成形材料の総重量を
100重量%とした場合、導電性繊維が3〜60重量%
の範囲で含まれることが好ましい。導電性繊維が3重量
%未満であると、成形品での導電性が不足する場合があ
るため好ましくない。また、導電性繊維が60重量%を
越えると、成形が困難になるだけではなく、得られた成
形品の外観品位に劣る場合があるので好ましくない。よ
り好ましくは5〜50重量%の範囲であり、更に好まし
くは7〜40重量%の範囲である。とりわけ9〜35重
量%の範囲であるのが好ましい。
【0059】本発明の導電性繊維強化成形材料を成形し
てなる導電性成形品が、高い導電性と力学的特性、衝撃
強度、剛性等とを兼ね備えるためには、成形品中の導電
性繊維の長さを長くすることが有効である。そのために
は、成形材料中の導電性繊維が連続糸である繊維強化成
形材料を用いて成形するか、もしくは成形材料中に含ま
れる導電性繊ち少なくとも80重量%以上の導電性繊維
が、2〜26mmの範囲内の繊維長を有する炭素繊維の
維導電性繊維強化成形材料を用いて成形することが好ま
しい。その理由は、連続繊維もしくは長繊維導電性繊維
強化成形材料を用いて成形した場合、成形品中での導電
性繊維の長さを長く維持することができるため、得られ
た成形品の力学的特性の他に、特に導電性を飛躍的に向
上させることができ、体積固有抵抗が100Ω・cm以
下といった高い導電性の達成が可能となるからである。
【0060】本発明の導電性繊維強化成形材料は、更に
フェノール系重合体を含有してもよい。特に、ポリアミ
ド樹脂、とりわけナイロン6とフェノール系重合体とが
混合されていると、成形性(成形時の流動性)をより高
く発現することができる。かかるフェノール系重合体の
例としては、各種フェノール樹脂(フェノールノボラッ
ク、クレゾールノボラック、オクチルフェノール、フェ
ニルフェノール、ナフトールノボラック、フェノールア
ラルキル、ナフトールアラルキル、フェノールレゾール
など)や変性フェノール樹脂(アルキルベンゼン変性、
カシュー変性、テルペン変性など)などが挙げられる。
好ましいフェノール系重合体としては、フェノールノボ
ラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、フェノールも
しくはフェノールの置換基誘導体(前駆体a)と、二重
結合を2個有する脂肪族炭化水素(前駆体b)の縮合反
応により得られるフェノール系重合体などが挙げられ
る。前記縮合反応は、強酸、もしくはルイス酸の存在下
に行うことができる。また、フェノール系重合体は、前
駆体aと、系内で前駆体bを生成する化合物を同様の条
件で反応させて得ることもできる。
【0061】該前駆体aとしては、フェノールのベンゼ
ン核上に、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基より選ば
れる置換基を1〜3個有するものが好ましく用いられ
る。具体的には、クレゾール、キシレノール、エチルフ
ェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、
ノニルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノー
ル、クロロフェノール、ブロモフェノール、クロロクレ
ゾール、ヒドロキノン、レゾルシノール、オルシノール
などの例が挙げることができ、これらを複数種用いても
よい。特に好ましいものとしては、フェノール、クレゾ
ールが挙げられる。
【0062】該前駆体bとしては、環状構造を有してい
なくても、有していてもよい。環状構造を有していない
ものとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエ
ン、ヘキサジエンなどの例を挙げることができる。環状
構造を有するものとしては、単環性の化合物では、シク
ロヘキサジエン、ビニルシクロヘキセン、シクロヘプタ
ジエン、シクロオクタジエン、C1016の分子式で表さ
れる単環式モノテルペン(ジペンテン、リモネン、テル
ピノレン、テルピネン、フェランドレン)など、二環性
の化合物では、2,5−ノルボルナジエン、テトラヒド
ロインデン、C1524の分子式で表される二環式セスキ
テルペン(カジネン、セリネン、カリオフィレン)な
ど、三環性の化合物では、ジシクロペンタジエンなどの
例を挙げることができ、これらを複数種用いてもよい。
該前駆体bとしては、炭素数6〜15のものが好まし
く、また環状構造を有するものが好ましい。環状構造を
有するものは、分子鎖が比較的剛直になり、力学的特性
に対して有利に寄与する。特に好ましいものとしては、
1016の分子式で表される単環式モノテルペン、ジシ
クロペンタジエンが挙げられる。また、系内で前駆体b
を生成する化合物としては、異性化によりジペンテンを
生成するピネン、カンフェンなどの例を挙げることがで
き、これらを複数種用いてもよい。
【0063】本発明で用いられるフェノール系重合体と
して特に優れたものとしては、前駆体aを2分子に対し
て、前駆体bを1分子付加した、極性の比較的高いもの
が挙げられる。特に、ポリアミド樹脂、とりわけナイロ
ン6と混合した場合、親和性に優れるため好ましい。
【0064】これらフェノール系重合体は、重量平均分
子量が200以上1000以下であることが好ましい。
分子量が200未満であると、熱安定性に劣るため、成
形中に揮発し、成形品中にボイドなどの欠点を発生させ
る。一方、分子量が1000を超えると、薄肉成形性
(成形時の流動性)に劣り、本発明の効果を充分に発現
できないため、好ましくない。ここで、重量平均分子量
は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)を用い、検出
器としてレーザーを用いた低角度光散乱光度計(LAL
LS)を使用して測定した。
【0065】本発明で用いるフェノール系重合体の配合
率は、導電性繊維強化成形材料全量を100重量%とし
た場合、0.01〜30重量%の範囲が好ましく、より
好ましくは0.1〜20重量%の範囲、更に好ましくは
1.0〜10重量%の範囲である。フェノール系重合体
の配合率が該範囲を超えて少なすぎたり、多すぎたりす
る場合、成形品における導電性、成形性、且つ耐衝撃
性、強度などの力学的特性のバランスのとれた材料が得
られないので好ましくない。
【0066】本発明の導電性繊維強化成形材料には、そ
の目的に応じて、充填材、難燃剤(例えば、リン系(好
ましくはポリリン酸アンモニウム、芳香族ホスフェー
ト、赤リン)、金属水酸化物系(好ましくは水酸化マグ
ネシウム)、ハロゲン系、窒素系(好ましくはメラミン
シアヌレート塩)、シリコン系(好ましくはポリオルガ
ノシロキサン樹脂状重合体または共重合体)、など)、
難燃助剤(例えば、フッ素系(好ましくはPTFE)、
など)、顔料、染料、滑剤(例えば金属石鹸など)、離
型剤、相溶化剤、分散剤、結晶核剤(例えばマイカ、タ
ルク、カオリンなど)、可塑剤(例えばリン酸エステル
など)、熱安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸
収剤、流動性改質剤、発泡剤、抗菌剤、制振剤(例えば
黒鉛など)、防臭剤、摺動性改質剤(例えば粉末黒鉛、
鱗片状黒鉛、膨張黒鉛など)、導電性付与剤、帯電防止
剤(例えばポリエーテルエステルアミドなど)等の任意
の添加剤を、単独でも、2種類以上ブレンドしたもので
も使用することができる。
【0067】ここでいう充填材とは、力学的特性(例え
ば強度、弾性率、伸度、衝撃強度、線膨張率、熱変形温
度など)、熱的特性(例えば熱膨張率、熱伝導率な
ど)、成形加工性(例えばスクリューへの噛込、粘度、
充填度、成形収縮、バリ、ヒケ、表面平滑性など)、比
重、異方性などの制御や、コストの低減など、本発明の
導電性樹脂組成物に用途に応じた効果を付与するために
配合される。かかる充填材としては、例えば、マイカ、
タルク、カオリン、セリサイト、ベントナイト、ゾノト
ライト、セピオライト、スメクタイト、モンモリロナイ
ト、ワラステナイト、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス
繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロ
バルーン、クレー、二硫化モリブデン、酸化チタン、酸
化亜鉛、酸化アンチモン、ポリリン酸カルシウム、グラ
ファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸亜
鉛、ホウ酸亜カルシウム、ホウ酸アルミニウム、チタン
酸カリウム、高分子などを使用できる。これらの充填材
は単独でも、2種類以上ブレンドしたものでもよい。か
かる充填材の形状は粒子状(中実、中空)、粉末状、鱗
片状、フレーク状、バルーン状、ウイスカ状(二次元、
三次元)、繊維状、などの任意の形状を目的に応じて選
択できる。また、かかる充填材は天然型であっても、合
成型であってもよく、目的に応じて任意に選択できる。
樹脂中での分散性、力学的特性、コスト、導電性のバラ
ンスから、ワラステナイト、モンモリロナイト、酸化チ
タン、チタン酸カリウムが好ましい。
【0068】また、充填材の平均粒径は0.1〜100
μmの範囲であることが好ましい。平均粒径が0.1μ
m未満である場合、本発明の効果である薄肉成形性(特
に成形時の流動性)が阻害されるといった問題だけでな
く、該構成要素[C]とのコンパウンド時の押出機への
フィード性に劣るといった製造プロセス上での問題をも
生じることがある。また、100μmを超える場合は、
該構成要素[C]中での分散性に劣り、所望の効果を得
られにくいといった問題が生じることがある。より好ま
しくは0.3〜80μmの範囲であり、更に好ましくは
0.5〜60μmの範囲である。とりわけ1〜50μm
の範囲であることが好ましい。また、充填材が繊維状で
ある場合には、アスペクト比が1.5〜250の範囲で
あることが好ましい。より好ましくは2〜200の範囲
であり、更に好ましくは3〜150の範囲である。これ
らの範囲未満であると、成形品中における分散性に劣り
やすく、さらに成形時の流動性が低下し、薄肉成形性に
劣るなどの問題を生じることがある。一方、これらの範
囲を超えると、力学的特性、特に衝撃強度に劣り、所望
の力学的特性付与効果などが得られないことがある。
【0069】本発明の導電性繊維強化成形材料は、該導
電性繊維強化成形材料100重量%に対して、充填材が
0.05〜30重量%の範囲で配合されていることが好
ましい。充填材が0.05重量%未満であると、所望の
効果(例えば力学的特性やコスト低減など)が得られに
くく、30重量%を越えると、成形時の流動性が低下
し、薄肉成形性に劣るため好ましくない。より好ましく
は0.1〜20重量%の範囲であり、更に好ましくは
0.15〜10重量%の範囲である組成がよい。
【0070】また、かかる導電性付与剤とは、導電性を
有しているものを差し、例えば金属(例えば粒子状、フ
レーク状、リボン状など)、金属化合物(例えば粒子状
など)、カーボン(例えば粉末状など)、グラファイト
(例えば鱗片状、膨張粒子状、微細粉末状など)、その
もの自体が導電性を有する充填材や、非導電性の充填材
の表面に導電体を被覆したもの、導電性高分子などが挙
げられ、これらを単独で使用しても、2種類以上を併用
してもよい。
【0071】前述の充填材に被覆される導電体とは、導
電性を有しているものを差し、例えば金属、金属化合
物、カーボンなどが挙げられるが、その中でも最も導電
性の高い金属が好ましい。前記金属としては、例えばニ
ッケル、チタン、アルミニウム、クロム、亜鉛、アンチ
モン、銅、銀、金等を単独もしくは併用することがで
き、前記金属は少なくとも1層、必要に応じて複数層に
て充填材に被覆されるのが好ましい。
【0072】上記充填材への導電体の被覆方法について
は特に制限はないが、好ましくは電解や無電解によるメ
ッキ法、イオンプレーティング法、CVD法、PVD
法、蒸着法などにより高い密着強度で被覆されているの
が好ましい。
【0073】本発明で用いられる導電性付与剤の平均粒
径は0.5〜150μmの範囲であることが好ましい。
より好ましくは1〜100μmの範囲であり、更に好ま
しくは1.5〜50μmの範囲である。とりわけ2〜2
5μmの範囲であることが好ましい。平均粒径が0.5
μm未満では、成形品中における分散性に劣りやすく、
さらに成形時の流動性が低下し、薄肉成形性に劣るなど
の問題を生じるため好ましくない。一方、平均粒径が1
50μmを超えると、導電性付与効果に劣り、所望の導
電性付与効果が得られないため好ましくない。
【0074】本発明で用いられる導電性付与剤として
は、より高い導電性付与効果を発現するために、導電性
付与剤自体が高い導電性を有していることが好まく、中
でも金属、金属化合物、グラファイトの少なくとも1種
類であるのが好ましい。
【0075】かかる金属としては、例えばニッケル、チ
タン、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス、アルミ
ニウム、錫、鉛、アンチモン、亜鉛、カドミウム、マグ
ネシウム、タングステン、リチウム、モリブデン、ベリ
リウム、コバルト、バナジウム、マンガン、アンチモ
ン、銅、黄銅、銀、金、白金、およびこれら2種類以上
の組み合わせた合金、これらを主成分とする合金、これ
らとリンとの化合物などが挙げられ、これらは単独で使
用しても、2種類以上を併用してもよい。中でも、銀、
ニッケル、チタンが導電性付与効果が大きいため好まし
い。
【0076】また、かかる金属は、例えば粒子状、フレ
ーク状、リボン状などの任意の形態をとることができる
が、導電性付与効果の面から、粒子状および/またはフ
レーク状であるのが好ましい。特に粒子状である場合、
球状粉、粒状粉、樹枝状粉、片状粉、角状粉、海綿状
粉、不規則型粉などの任意の形状をとることができる
が、中でも樹枝状粉、片状粉、角状粉が導電性付与効
果、加工コスト抑制効果に優れるため好ましい。
【0077】これら金属粒子、金属フレークは、例えば
機械粉砕法(例えばスタンプミル、ボールミル、渦流ミ
ル、カージングミルなど)、湿式や乾式の電解法、ガス
や固体の還元法、塩化物や酸化物や水素化物の熱分解
法、カーボニル法、蒸発・凝着法、アマルガム法、アト
マイズ法、噴霧法、回転電極法、水素化脱水素法および
これらの組み合わせなどの任意の方法によって製造され
るが、中でも製造する金属元素の種類に制約を受けない
機械粉砕法、安価に特定の金属元素を得られる電解法な
どが好ましく使用される。
【0078】かかるグラファイトは、鱗片状、膨張粒子
状、微細粉末状など任意の形態をとることができるが、
導電性付与効果の面から、鱗片状、微細粉末状であるの
が好ましい。
【0079】本発明の導電性繊維強化成形材料は、該導
電性繊維強化成形材料100重量%に対して、導電性付
与剤が0.01〜15重量%の範囲で配合されているこ
とが好ましい。導電性付与剤が0.01重量%未満であ
ると、所望の導電性付与効果が得にくく、15重量%を
越えると、成形時の流動性が低下し、薄肉成形性に劣る
だけでなく、高コスト・高比重となり好ましくない。よ
り好ましくは0.05〜10重量%の範囲であり、更に
好ましくは0.1〜8重量%の範囲である組成がよい。
【0080】かかる充填材、導電性付与剤、難燃剤など
は、表面処理剤で表面処理がしてあっても、無処理でも
よい。表面処理剤としては、例えば、ステアリン酸など
の飽和高級脂肪酸、オレイン酸などの不飽和高級脂肪
酸、そのアルカリ金属塩、オルトリン酸とステアリルア
ルコールとのモノ、またはジエステルであって、それら
の酸、またはアルカリ金属塩などのリン酸部分エステル
などが挙げられる。また、樹脂との接着性向上のため
に、シランカップリング剤、アルミネートカップリング
剤、チタネートカップリング剤、ウレタン系、アミド系
などの高極性樹脂で被覆してもよく、集束のために、ウ
レタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、
スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、ア
クリル系樹脂、フェノール系樹脂、液晶性樹脂などで被
覆されていてもよい。より好ましくは、成形中に樹脂と
化学的相互反応を起こさない表面処理剤で表面処理が施
されているのがよい。成形中に化学的相互反応を起こす
表面処理が施されている場合、成形時の流動性に劣り、
本発明の効果を十分に発現できない可能性がある。表面
処理剤の表面処理量は、充填材または導電性付与剤10
0重量部当たり0.1〜10重量部が好ましく、0.5
〜5重量部がより好ましい。
【0081】また、かかる充填材などは、膨潤化剤によ
り膨潤されていてもよいし、有機化剤により有機化され
ていてもよい。膨潤化剤または有機化剤としては、イオ
ン交換などにより充填材などを膨潤化または有機化し得
るものなら特に制限はなく、具体的にはε−カプロラク
タム、12−アミノドデカン酸、12−アミノラウリン
酸、アルキルアンモニウム塩(ジメチルジアルキルアン
モニウムなど)などが挙げられる。特にポリアミド樹
脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレ
ン系樹脂、アクリル系樹脂などに膨潤化もしくは有機化
された充填材(好ましくはモンモリロナイト、マイカ、
サポナイト、ヘクトライト、セピオライト)が配合され
ていると、充填材のナノオーダーでの分散が可能とな
り、より少ない配合量で所望の特性が得られるため好ま
しい。
【0082】なお、本発明の導電性繊維強化成形材料に
上記充填材、導電性付与剤、難燃剤などを配合する場合
には、樹脂などと予め押出機などにより混練し後述の鞘
部または後述の芯部中に配置してもよいし、成形材料と
は別にドライブレンド、塗布などにより配合してもよ
い。また、樹脂の重合時に予め混合しておいてもよい。
なおカーボンブラックに関しては、導電性繊維束中に予
め混合していても、導電性繊維のサイジング剤中に予め
混合していても、後述の低粘度樹脂中に混合されていて
もよい。
【0083】次に、本発明の導電性繊維強化成形材料を
用いてなる成形品は、例えばプレス成形、射出成形(射
出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、インサート成形な
ど)、ブロー成形、押出成形、トランスファー成形、フ
ィラメントワインディング成形などの成形方法によって
成形され、かかる成形に用いられる成形材料の形態とし
ては、BMC、SMC、スタンパブルシート、プリプレ
グ(ストランド状、シート状、テープ状など)、ペレッ
トなどの例を挙げることができる。これらの中で好まし
い成形方法は、生産性の高いプレス成形、射出成形であ
る。
【0084】本発明の導電性成形品をプレス成形にて成
形する場合には、本発明の導電性繊維強化成形材料は、
ストランド、テープ、シートのいずれかの形態を有して
いるのが好ましい。前記形態を有する成形材料の中の導
電性繊維は、連続糸を用いて導電性繊維の長さが成形材
料の長さとほぼ同一になるように、成形材料の長手方向
にほぼ平行に配列されていてもよく、チョップド糸やミ
ルド糸に代表される不連続糸を用いて成形材料中にラン
ダムに配置されていてもよい。成形材料中の導電性繊維
が連続糸である場合、より高い導電性、力学的特性を有
する成形品を得られるため好ましい。ここで、少なくと
も樹脂を含む本発明中の各成分は、導電性繊維中に含浸
されていても、コーティングされていてもよいし、導電
性繊維上に塗布されていてもよい。
【0085】かかる導電性繊維が含浸される場合、例え
ば、(1)樹脂のエマルジョン、サスペンジョン、溶液
あるいは溶融物の入った含浸槽中を用いて、樹脂などの
各成分を含浸させる方法、(2)樹脂粉末などを導電性
繊維束中に分散させた後に加熱して、樹脂などの各成分
を含浸させる方法、(3)溶融樹脂を押し出したクロス
ヘッドダイを用いて、導電性繊維束を引き抜きながら、
樹脂などの各成分を含浸させる方法、などの含浸方法を
利用することができるが、本発明で用いられる各成分を
均一、かつ所望量配合するためには、上記(3)に記載
の含浸方法を用いることが好ましい。但し、この含浸方
法を利用する場合、導電性繊維の強度・伸度が高いもの
でなければ、導電性、力学的強度の高い成形品が得られ
ないだけではなく、ペレットの高い生産性が達成しにく
いという問題点を有する。また、導電性繊維が金属被覆
繊維である場合、被覆層と繊維との密着強度が高くなけ
れば、高い導電性を有する成形品を得にくいため、特に
注意が必要である。
【0086】かかる導電性繊維がコーティングされる場
合、少なくとも導電性繊維束からなる芯部と、少なくと
も樹脂からなる鞘部とからなる芯鞘型の構造を有する形
態のものが好ましい。前記芯鞘型の形態を有する場合、
導電性繊維束は、最も配合量が多い樹脂の溶融粘度以下
である樹脂(以下、低粘度樹脂と記す)で予め含浸さ
れ、導電性繊維と低粘度樹脂との複合体を形成した後
に、少なくとも最も配合量の多い樹脂を含む本発明中の
各成分でコーティングされていることが好ましい。
【0087】本発明の導電性繊維強化成形材料として
は、上記芯鞘型の構造を有するものが、本発明の効果を
最大限に発現できるためとりわけ好ましい。
【0088】本発明の導電性成形品を射出成形にて成形
する場合には、本発明の導電性繊維強化成形材料は、ペ
レットの形態を有しているのが好ましい。本発明でいう
ペレットとは、前述のストランド、テープ、シートのい
ずれかの形態を有する本発明の成形材料を、所望長さに
切断したものを指す。また、導電性繊維を含むペレット
と、導電性繊維を含まないペレットとをドライブレンド
することによって得られたものも同様にペレットと呼
ぶ。
【0089】本発明で用いられるペレットを成形してな
る導電性成形品が、高い導電性、力学的特性(衝撃強
度、剛性等)を兼ね備えるためには、成形品中の導電性
繊維の長さを長くすることが有効であるのは上述の通り
であるが、そのためには前記ペレットが長繊維ペレット
の形態をとることが好ましい。かかる長繊維ペレットと
は、切断する前のストランド、テープ、シート中の導電
性繊維が、長手方向に配列された連続糸であるものを指
す。ペレットにおいて導電性繊維が連続糸であるとは、
ペレット中にはペレット内部で途中で切断されていた
り、ペレット全長よりも有意に短い導電性繊維が実質的
に含まれないことである。その全長よりも短い導電性繊
維の量について、特に規定されているわけではないが、
全ペレットの70重量%以上のペレットが、ペレット全
長の50%以下の長さの導電性繊維の含有量が30重量
%以下(好ましくは20重量%以下)であることが好ま
しい。尚、ペレット全長とはペレット中の導電性繊維配
向方向の長さである。
【0090】本発明で用いられる長繊維ペレットとして
は、前述の芯鞘型の構造を有するストランド、テープ、
シート状の成形材料を切断した芯鞘型の長繊維ペレット
が、本発明の効果を最大限に発現できるためとりわけ好
ましい。
【0091】また、長繊維ペレットとそれ以外のペレッ
ト(例えば、ペレット中で不連続糸やカーボンブラック
などを含むペレット、あるいは、導電性繊維などを含ま
ないペレット)とをドライブレンドしたものも、同様に
長繊維ペレットに含まれる。ドライブレンドする時のブ
レンド比は、全ペレット中に含まれる導電性繊維(連続
糸や不連続糸など)を100重量%とした場合、ペレッ
ト中で導電性繊維が50重量%以上となるようにするの
が好ましい。50%未満である場合、長繊維ペレットの
形態をとる効果を十分に発現しにくいため好ましくな
い。より好ましくは70重量%以上であり、更に好まし
くは80重量%以上である。
【0092】本発明で用いられる長繊維ペレットのペレ
ット長さとしては、2〜26mmの範囲であることが好
ましい。より好ましくは4〜15mmの範囲であり、更
に好ましくは5〜10mmの範囲である。また、その配
合形態は特に制限されないが、少なくとも樹脂を含み、
導電性繊維を含まないペレットと、低粘度樹脂で導電性
繊維束を含浸し、予め低粘度樹脂と導電性繊維との複合
体を形成した後、少なくとも最も配合量の多い樹脂で、
前記複合体をコーティングした芯鞘型の長繊維ペレット
とをドライブレンドしたものが、生産性を高くすること
ができるため好ましい。さらに好ましくは、少なくとも
樹脂、後述のカーボンブラック、難燃剤などをコンパウ
ンドした導電性繊維を含まないペレットと、予め低粘度
樹脂としてフェノール系重合体により導電性繊維束が含
浸された複合体を、少なくとも最も配合量の多い樹脂、
後述のカーボンブラック、難燃剤などでコーティングし
た芯鞘型の長繊維ペレットとを、ドライブレンドしたも
のが挙げられる。
【0093】次に、本発明の導電性繊維強化成形材料の
製造方法について工程順に説明する。 (1)含浸工程 予め開繊された導電性繊維を予熱し、次いで前記低粘度
樹脂(以下、樹脂Aと記す)上記樹脂Aを供給し、加熱
雰囲気中でスクイーズロールなどにより樹脂Aを導電性
繊維束中に含浸させることにより、導電性繊維と樹脂A
との複合体を形成させる。
【0094】ここで、導電性繊維が、樹脂Aを供給され
る直前の温度がTMA〜(TMA+100)℃の範囲に予熱
されていると、樹脂Aの含浸が容易となり、引取速度が
高くできるため好ましい。ここでTMAとは、樹脂Aの溶
融温度を指す。
【0095】樹脂Aの供給方法については、例えば正回
転ロール、リバースロール、グラビア、ブレード、キ
ス、スクリーン、カーテン、スプレー、押出などの「コ
ーティング装置と操作技術入門(原田勇次著、総合技術
センター出版)」に記載の方法を利用することができ、
好ましくはギアポンプを用いてカーテンコータ法により
供給するのがよい。
【0096】また、導電性繊維が、樹脂Aに含浸される
温度が(TMA+20)〜(TMA+120)℃の範囲の雰
囲気になるように加熱されていると、同様に樹脂Aの含
浸が容易となり、引取速度を高くできるため好ましい。
樹脂Aの含浸方法については、スクイーズバーを用いる
場合、拡幅、収束を繰り返すようにしごいたり、前記バ
ーを振動させたりすると、含浸が容易となり、引取速度
を高くできるため好ましい。なお、前記バーは固定され
ていても、回転してもよいが、発生する導電性繊維の毛
羽が次のコーティング工程に持ち込まれないよう自己清
掃機能を付与するために、引取方向と反対方向に、0.
4〜6周/分の速度で回転させるのが好ましい。 (2)コーティング工程 前記複合体を、電線被覆用の被覆ダイやTダイを用いて
最も配合量の多い樹脂(以下、樹脂Bと記す)をコーテ
ィングすることにより、芯鞘型のストランド、テープ、
シートのいずれかを得る。
【0097】ここで、複合体が、樹脂Bでコーティング
される直前の温度が、(TMB−100)〜(TMB−1
0)℃の範囲に冷却されていると、樹脂Bのコーティン
グが安定しかつコーティング厚みが均一となり、成形材
料から脱落する導電性繊維を最小限に抑えることができ
るため好ましい。ここでTMBとは、樹脂Bの溶融温度を
指す。 (3)引取工程 前記の芯鞘型のストランド、テープ、シートのいずれか
を、引取速度10m/min以上の速度で引き取り、芯
鞘型のストランド、テープ、シートのいずれかを得る。
【0098】ここで、樹脂Aは樹脂Bと同一であっても
よいが、樹脂Aが、アクリル系樹脂(例えばスチレン/
アクリル酸、エチレン/メタクリル酸、スチレン/メチ
ルメタクリレートなどの共重合樹脂)、スチレン系樹脂
(例えばスチレン/ブタジエンなどの共重合樹脂)、フ
ェノール系樹脂(例えばフェノールノボラック、クレゾ
ールノボラック、オクチルフェノール、フェニルフェノ
ール、ナフトールノボラック、フェノールアラルキル、
ナフトールアラルキル、アルキルベンゼン変性フェノー
ル、カシュー変性フェノール、テルペン変性フェノール
など)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、液晶性樹
脂、アルコールまたは水可溶性樹脂、あるいは最も配合
量の多い樹脂よりも低分子量である樹脂から選ばれる少
なくとも1種類であり、かつ樹脂Bがスチレン系樹脂、
ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹
脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、液晶性樹
脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂もしくはポリエステ
ル樹脂から選ばれる少なくとも1種類である場合、本発
明の効果を最大限に発現することができるため、とりわ
け好ましい。
【0099】特に、本発明の導電性繊維強化成形材料が
芯鞘型の長繊維ペレットの形態をとる場合には、更に下
記工程を経て製造されるのがよく、上記含浸工程、コー
ティング工程、引取工程と、下記切断工程とが、それぞ
れ連続してオンラインで行われるのが好ましい。 (4)切断工程 芯鞘型のストランド、テープ、シートのいずれかを、冷
却後に2〜26mm、より好ましくは4〜15mm、更
に好ましくは5〜10mmの長さに切断する。特にシー
ト状の場合はスリットした後に切断してもよい。
【0100】本発明の導電性繊維強化成形材料は、製造
工程における成形材料が引き取られる引取工程におい
て、引き取られる前に、成形材料に導電性繊維をその製
造単位当たり0.3〜12g/mの範囲で配合すること
が好ましい。配合する導電性繊維が製造単位当たり0.
3g/m未満だと、成形材料の生産性に劣るため好まし
くない。また、配合する導電性繊維が製造単位当たり1
2g/mを越えると生産性には優れるものの、成形品中
での導電性繊維の分散に劣り、得られた成形品の力学的
特性が劣るため好ましくない。より好ましくは0.6〜
10g/mの範囲であり、更に好ましくは1.0〜8g
/mの範囲である。とりわけ、1.5〜7g/mの範囲
が成形材料の生産性と、得られた成形品の高い力学的特
性をバランスよく兼ね備えることができるため好まし
い。
【0101】本発明の導電性繊維強化成形材料中には、
カーボンブラックが配合されていてもよい。本発明で使
用するカーボンブラックとしては、少なくとも次の条件
[CB1]、[CB2]のいずれか、もしくは両方を満
たすものを選択して使用するのが好ましい。
【0102】[CB1]:ラマン散乱強度比I2 /I1
が、0.4〜0.8の範囲である [CB2]:ラマン散乱強度比I2 /I3 が、0.4〜
0.7の範囲である I1:ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値 I2:ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極小値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値 なお、前記I1、I2 、I3は、ベースライン補正後のラ
マン散乱強度についてのものである。上記ベースライン
補正とは、600cm-1〜2200cm-1のラマンシフ
ト範囲において、ラマンスペクトルのベースラインを直
線近似し、その近似直線からの距離をラマン散乱強度と
し、測定時のベースラインの傾きを補正する操作のこと
をいう。
【0103】かかる特定なラマンスペクトルを有するカ
ーボンブラックを使用した場合、特異的に高い力学的特
性、導電性、薄肉成形性(特に成形時の流動性)、およ
び外観品位を兼ね備えた成形品を得ることができる。
【0104】かかるカーボンブラックとしては、その一
つの選択要件である条件[CB1]は、I2 /I1 が、
0.4〜0.8であるが、望ましくは0.50〜0.7
7、さらに望ましくは0.65〜0.75の範囲にある
ものを使用するのがよい。とりわけ好ましくは0.66
〜0.71の範囲である。すなわち、このI2 /I
1が、0.4〜0.8の範囲外のカーボンブラックを用
いた場合には、高い力学的特性、導電性はある程度達成
できるものの、薄肉成形性(成形時の流動性)、外観品
位に著しく劣るものとなり、導電性と薄肉成形性と外観
品位とを兼ね備えた導電性繊維強化成形材料が得られな
い。特に、I2 /I1 が0.4未満であるカーボンブラ
ックの場合は、導電性はともかく、成形時の流動性が大
きく劣るものとなる。
【0105】また、本発明で使用するカーボンブラック
としての別の選択方法の一つである条件[CB2]は、
2 /I3 が、0.4〜0.7、好ましくは0.50〜
0.67、更に好ましくは0.56〜0.65の範囲に
あるカーボンブラックを選択して使用するのがよい。と
りわけ好ましくは0.57〜0.61の範囲である。
【0106】かかるカーボンブラック、つまりI2 /I
3 が、0.4〜0.7の範囲にあるカーボンブラック
と、その範囲外のカーボンブラックとの効果的な違い
は、前記方法で選択したもの場合と同様であり、該範囲
外のものは、高い導電性はある程度達成できるものの、
成形時の流動性に著しく劣り、導電性と薄肉成形性を兼
ね備えた導電性繊維強化成形材料が得られない。流動性
において、該範囲内のものに比して、範囲外の場合には
極めて低い流動性を示す点で、更に流動性にシビアな性
質を示すカーボンブラックを選ぶことができる。
【0107】ラマンスペクトルの測定法は、レーザーラ
マン分光法により測定する。ラマンスペクトルの測定
は、樹脂に配合する前のカーボンブラックから測定して
もよいし、樹脂組成物、成形材料、もしくは、その成形
品中からカーボンブラックを分離した後に測定してもよ
い。前者から測定する場合は、マクロラマン(レーザー
スポット径が100μm程度)、後者から測定する場合
は、顕微ラマン(レーザースポット径が5μm程度)に
て測定を行うのが好ましい。本発明では、JobinY
von社製Ramaonor T−64000を用いて
測定を行った。
【0108】樹脂成形品からのカーボンブラックの分離
は、配合物の比重差を利用して行うのがよい。かかるカ
ーボンブラックの分離手法の具体的手段の一例を以下に
記述する。
【0109】まず、樹脂成形品をカーボンブラックを侵
さずに樹脂を溶解する溶媒に浸漬し、完全に樹脂を溶解
させる。その後、5000rpmにて30分間遠心分離
を行い、更に遠心分離後の上澄み液を30000rpm
にて30分間超遠心分離を行う。超遠心分離後の上澄み
液を、PTFEフィルター(0.2μm)で濾過するこ
とによりカーボンブラックを分離する。この場合のラマ
ンスペクトルの測定は、顕微ラマンにより上記分離によ
る回収物中の黒色微粒子部分について行うのが好まし
い。
【0110】本発明で使用するカーボンブラックの配合
率は、導電性繊維強化成形材料全量を100重量%とし
た場合、0.5〜10重量%が好ましく、より好ましく
は0.5〜8重量%、更に好ましくは1〜7重量%であ
る。カーボンブラックの配合率が該範囲を超えて少なす
ぎたり、多すぎたりする場合、成形品における導電性、
成形性、且つ耐衝撃性、強度などの力学的特性のバラン
スのとれた材料が得られないので好ましくない。
【0111】本発明の導電性成形品の好ましい成形方法
は、生産性の高いプレス成形、射出成形であることは前
述の通りである。特に射出成形により成形された導電性
成形品において、高い導電性、力学的特性(特に強度、
衝撃強度)を同時に達成するためには、成形品中の導電
性繊維の長さを長くすることが有効であることは前述の
通りであるが、この場合、特に成形条件および射出成形
機、さらに金型の影響を考慮しなければならない。成形
条件に関していえば、背圧が低いほど、射出速度が遅い
ほど、スクリュー回転数が遅いほど、成形品中の導電性
繊維の長さが長くなる傾向があり、特に背圧は、計量性
が不安定にならない程度に、できるだけ低く設定するの
が好ましい。好ましい背圧は0.1〜1MPaである。
射出成形機については、ノズル径が太いほど、ノズルの
テーパー角度が小さいほど、スクリュー溝深さが深いほ
ど、圧縮比が低いほど、成形品中の導電性繊維の長さが
長くなる傾向がある。金型については、スプルー径、ラ
ンナー径、ゲート径を大きくするほど、成形品中の導電
性繊維の長さが長くなる傾向がある。
【0112】前述の成形方法により得られた本発明の導
電性成形品が、高い導電性、力学的特性を兼ね備えるた
めには、該成形品中に含まれる導電性繊維の総量を10
0重量%とした場合、少なくともその3重量%が1〜1
5mmの範囲の繊維長を有することが好ましい。より好
ましくは、少なくともその5重量%が1〜10mmの範
囲の繊維長を有する場合であり、一層好ましくは少なく
ともその5重量%が1〜7mmの範囲の繊維長を有する
場合である。とりわけ好ましくは、少なくともその8重
量%が1〜7mmの範囲の繊維長を有する場合である。
【0113】本発明における導電性成形品は、高い力学
的特性だけではなく、導電性繊維と、場合によってはカ
ーボンブラックとに起因する高い導電性を兼ね備えてい
るため、体積固有抵抗値が、100Ω・cm以下である
導電性成形品として用いるのが最適である。体積固有抵
抗値が100Ω・cmを越える場合、電磁波シールド材
などの用途には適応しにくく、用途が限定されるといっ
た問題を有する。より好ましい体積固有抵抗値は10Ω
・cm以下であり、更に好ましい体積固有抵抗値は5Ω
・cm以下である導電性成形品として用いるのが本発明
の効果をより発揮できる。とりわけ好ましくは、1Ω・
cm以下である。
【0114】ここでいう体積固有抵抗値とは、直方体形
状を有している試験片の導電ペーストを塗布された両端
部の電気抵抗値から、測定機器、治具などの接触抵抗値
を減じた値について、前記試験片の端部面積を乗じ、試
験片長さで除すことにより算出する。本発明では、単位
はΩ・cmを用いた。
【0115】本発明における導電性成形品は、特に導電
性繊維として炭素繊維を用いた場合、高い導電性だけで
はなく、主に炭素繊維に起因する高い衝撃強度を兼ね備
えているため、ASTM D 256規格におけるIz
od衝撃強度が、1/8インチ厚で70〜250J/m
の範囲である導電性成形品として用いるのが最適であ
る。好ましくは80〜230J/mの範囲、特に好まし
くは90〜200J/mの範囲である導電性成形品とし
て用いるのが本発明の効果をより発揮できる。
【0116】本発明における導電性成形品は、特に導電
性繊維として炭素繊維を用いた場合、高い導電性だけで
はなく、主に炭素繊維に起因する高い剛性を兼ね備えて
いるため、ASTM D 790規格(スパン間距離L
/板厚D=16)において、板厚1/4インチでの曲げ
剛性が8〜40GPaの範囲である導電性成形品として
用いるのが最適である。好ましくは10〜30GPaの
範囲、特に好ましくは12〜25GPaの範囲である導
電性成形品として用いるのが本発明の効果をより発揮で
きる。
【0117】本発明における導電性成形品は、高い導電
性に加え、薄肉成形性(成形時の流動性)を兼ね備えて
いるので、従来の導電性成形品より肉厚を薄くすること
が可能であり、肉厚が0.3〜4mmの範囲である導電
性成形品として用いるのが最適である。好ましくは、肉
厚0.5〜3mm、更に好ましくは0.6〜2mm、と
りわけ好ましくは肉厚0.7〜1.6mmの範囲である
導電性成形品として用いるのが本発明の効果をより発揮
できる。ここでいう肉厚とは、成形品のうち、リブ部分
やボス部分などの突起物などを除いた平板部分の肉厚を
指す。
【0118】本発明における導電性成形品は、少量の導
電性繊維の配合によっても高い導電性を達成できるた
め、ASTM D 792規格における比重が、1.0
〜1.8の範囲である導電性成形品として用いるのが最
適である。好ましくは1.1〜1.7の範囲、特に好ま
しくは1.2〜1.6の範囲である導電性成形品として
用いるのが本発明の効果をより発揮できる。
【0119】本発明における導電性成形品の用途として
は、高い導電性、成形性、力学的特性(特に剛性)が求
められる電子・電気機器、OA機器、家電機器、自動車
用部材、例えばハウジングやその部品などが挙げられ
る。本発明の導電性成形品は、高い剛性、軽量化、電磁
波シールド性などが達成できるため、特に携帯用の電子
・電気機器のハウジングなどの用途に有効である。より
具体的には、ディスプレイ、ノート型パソコン、携帯用
電話機、PHS、PDA(電子手帳などの携帯情報端
末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯用ラ
ジオカセット再生機、インバーターなどのハウジングな
どに好んで使用される。
【0120】また、高い導電性を有しているため、導電
性繊維の少量添加で帯電/放電防止性を付与することが
でき、それらの特性が必要とされる部材、例えばICト
レー、シリコンウェーハー運搬用バスケットなどへの適
応にも有用である。
【0121】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳細に説
明する。
【0122】まず、各実施例の実施に当たり、導電性繊
維強化成形材料、およびそれを成形してなる導電性成形
品の評価項目、およびその方法は下記の通りとした。 (A)導電性繊維強化成形材料の電気抵抗値、および体
積固有抵抗値 (a)長手方向の電気抵抗値RL 任意に選択した少なくとも5つの導電性繊維強化成形材
料について、下記の手順に従い測定した電気抵抗値の平
均値にて代表させた(単位はΩ)。
【0123】(a1)まず、成形材料の長手方向の各々
の端面を、それぞれサンドペーパー(#400以下)で
平面になるまで少なくとも0.2mm研磨する。
【0124】(a2)次いで、研磨した各々端面に、導
電ペースト(日本アチソン(株)製Electroda
g415)を塗布し、十分乾燥させる(25℃、湿度5
0%で約30min)。
【0125】(a3)最後に、その端面の2点間抵抗値
をデジタルマルチテスター((株)アドバンテスト製R
3581)にて3回測定し、その平均値をその導電性繊
維強化成形材料の長手方向の電気抵抗値RLとする。 (b)長手方向と直交する平面内における任意方向の電
気抵抗値RT 任意に選択した少なくとも5つの導電性繊維強化成形材
料について、下記の手順に従い測定した電気抵抗値の平
均値にて代表させた(単位はΩ)。
【0126】(b1)成形材料の長手方向と直交する平
面内における任意方向の各々の端面の2点間抵抗値をデ
ジタルマルチテスター((株)アドバンテスト製R35
81)にて測定する。
【0127】(b2)同様に、異なる位置にて同様に少
なくとも3回測定し、その平均値をその導電性繊維強化
成形材料の長手方向と直交する平面内における任意方向
の電気抵抗値RTとする。 (c)長手方向の体積固有抵抗値VRLLに導電性繊維強化成形材料端面の面積を乗じ、成形
材料長手方向の長さで除した値にて代表させた(単位は
Ω・cm)。 (d)RL/RT 上記RLを、上記RTで除したもので代表させた(単位は
無次元)。 (B)生産性 導電性繊維強化成形材料に配合する導電性繊維の配合率
を同一に換算した場合の、安定して製造できる製造単位
当たりの生産量について、◎(5kg/hour超
過)、○(5〜3kg/hour)、△(3〜1kg/
hour)、×(1kg/hour未満)、により相対
的に評価した。 (C)導電性繊維の脱落量 導電性繊維強化成形材料に配合する導電性繊維の配合率
を同一に換算した場合の、成形材料からの導電性繊維の
脱落量を下記手順に従い測定した(単位はmg/5k
g)。
【0128】(C1)まず、5kgの成形材料を容器に
入れ、内部フィルターを外した掃除機(松下電器製)で
吸引する。
【0129】(C2)次いで、掃除機内から吸引された
成形材料のみを取り出し、吸引後の重量Wを測定し、W
(単位はmg)を導電性繊維の脱落量とする。 (D)成形品の体積固有抵抗値 ファンゲートにて射出成形した試験片(幅12.7mm
×長さ65mm×厚さ2mm)を、絶乾状態(水分率
0.1%以下)にて、下記手順に従い測定した(単位は
Ω・cm)。なお射出成形は、シリンダ温度280℃、
金型温度70℃にて行った。
【0130】(D1)まず、幅×厚さ面に導電性ペース
ト(日本アチソン(株)製Electrodag41
5)を塗布し、十分に導電性ペーストを乾燥させる。
【0131】(D2)次いで、その面を銅製電極に圧着
し、電極間の電気抵抗値をデジタルマルチメーター(F
LUKE社製)にて測定する。
【0132】(D3)前記電気抵抗値から測定機器、治
具等の接触抵抗を減じた値に、導電性ペースト塗布面の
面積を乗じ、その値を試験片長さで除したものを体積固
有抵抗値とする。 (E)成形品の衝撃強度 ASTM D 256規格に準拠したモールドノッチ有
りIzod衝撃強度にて評価した(単位はJ/m)。用
いた試験片の板厚は1/8インチ厚で、水分率0.1%
以下で試験に供した。なお射出成形は、シリンダ温度2
80℃、金型温度70℃にて行った。 (F)成形品の曲げ剛性 ASTM D 790規格(スパン間距離L/板厚D=
16)に準拠した曲げ剛性にて評価した(単位はGP
a)。用いた試験片の板厚は1/4インチ厚で、水分率
0.1%以下で試験に供した。なお射出成形は、シリン
ダ温度280℃、金型温度70℃にて行った。 (G)成形品の比重 ASTM D 792規格に準拠した比重にて評価し
た。用いた試験片の水分率は0.1%以下で試験に供し
た。なお射出成形は、シリンダ温度280℃、金型温度
70℃にて行った。 (H)外観品位 ファンゲートにて、幅150mm×長さ150mm×厚
さ1mmの薄肉平板を成形し、表面光沢の有無、ヒケ、
ウェルド、導電性繊維の浮き・分散などの欠陥につい
て、◎(前述欠陥なし)、○(前述欠陥のいずれか1つ
有する)、△(前述欠陥をいずれか2つ有する)、×
(前述欠陥を全て有する)、により相対的に評価した。
なお射出成形は、シリンダ温度290℃、金型温度70
℃にて行った。 (実施例1)まず、連続した導電性繊維束を180℃に
加熱しながら開繊させ、溶融させたフェノール系重合体
をギアポンプにて計量し、カーテンコータにて塗布し
た。次いで、180℃に加熱した雰囲気中の複数のスク
イーズバーを通過させることによりフェノール系重合体
を導電性繊維束中に十分含浸させ、連続した導電性繊維
とフェノール系重合体との複合体を得た(含浸工程)。
【0133】次に、樹脂を、1軸押出機を用いて、その
先端に取り付けられた被覆ダイ中(270℃)に十分溶
融混練された状態で押し出すのと同時に、得られた前記
複合体を前記被覆ダイ中に連続して供給する(130
℃)ことにより、溶融した樹脂を前記複合体の表面に被
覆し、連続導電性繊維強化樹脂ストランドを得た(コー
ティング工程)。
【0134】その後、前記導電性連続繊維強化樹脂スト
ランドを100℃以下まで冷却し、カッターを用いて7
mmに切断して芯鞘型の長繊維ペレットを得た(切断工
程)。前述芯鞘型の長繊維ペレットの製造を、含浸工
程、コーティング工程、切断工程についてそれぞれ連続
してオンラインで行った結果、20m/min以上の高
い引取速度にて製造することができた。つまり、芯鞘型
の長繊維ペレットは生産性に非常に優れているといえ
る。また、得られた成形品も良好な導電性や力学的特性
を示し、従来の課題を克服した成形材料といえる。
【0135】得られた前記芯鞘型の長繊維ペレットを、
80℃にて5時間以上真空中で乾燥させた後、上述
(A)〜(H)項記載の各試験に供した。 (実施例2、3)以上に説明した実施例1において、導
電性繊維の種類を変更した以外は実施例1と同様の方法
で本発明の導電性繊維強化成形材料を製造したところ、
同様に20m/min以上の高い引取速度にて製造する
ことができ、実施例1よりさらに生産性に優れたものが
得られた。また、得られた成形品も良好な導電性や力学
的特性を示し、従来の課題を克服した成形材料といえ
る。 (実施例4、5)以上に説明した実施例1において、導
電性繊維の配合量、樹脂の種類と配合量を変更した以外
は実施例1と同様の方法で本発明の導電性繊維強化成形
材料を製造したところ、同様に20m/min以上の高
い引取速度にて製造することができた。また、得られた
成形品も良好な導電性や力学的特性を示し、従来の課題
を克服した成形材料といえる。特に樹脂を変更すること
により、成形品の外観品位に優れたものが得られた。 (実施例6、7)まず、樹脂、チョップド糸にされた導
電性繊維と、必要に応じてその他の本発明の成分とを2
軸押出機にて、溶融した樹脂およびその他の本発明の成
分を導電性繊維束中に含浸させながら押し出し、導電性
繊維としては不連続のもののみを含有する前述のように
して得られた不連続導電性繊維強化樹脂ガットを得た
(含浸工程)。次いで、前記不連続導電性繊維強化ガッ
トを100℃以下まで冷却し、カッターを用いて5mm
に切断してペレットを得た(切断工程)。前述ペレット
の製造を、含浸工程、切断工程をそれぞれ連続してオン
ラインで行った結果、同様に20m/min以上の高い
引取速度にて製造することができた。また、得られた成
形品も良好な導電性や力学的特性を示し、従来の課題を
克服した成形材料といえる。特に樹脂を変更することに
より、成形品の外観品位に優れたものが得られた。
【0136】得られた前記ペレットを、80℃にて5時
間以上真空中で乾燥させた後、上述(A)〜(H)項記
載の各試験に供した。 (比較例1)まず、連続した導電性繊維束を開戦させな
がら、粉末状の樹脂で満たされた流動床中を通過させ、
導電性繊維束中に粉末状の樹脂が分散した中間体を得
た。次いで、前記中間体を、樹脂の溶融温度以上に加熱
した280℃雰囲気中の複数のスクイーズバーを通過さ
せることにより粉末状の樹脂を導電性繊維束中に十分含
浸させ、連続導電性繊維強化樹脂ストランドを得た(含
浸工程)。
【0137】その後、前記連続繊維強化樹脂ストランド
を100℃以下まで冷却し、カッターを用いて7mmに
切断して長繊維ペレットを得た(切断工程)。前述長繊
維ペレットの製造を、含浸工程、切断工程についてそれ
ぞれ連続してオンラインで行った結果、樹脂の含浸不良
や導電性繊維切れが頻発し、5m/min以下の低い引
取速度でしか製造することができなかった。つまり、上
記粉末状樹脂を用いた製造方法による長繊維ペレットは
生産性に非常に劣っているといえる。また、粉末状の樹
脂を用いるため、樹脂の吸湿が通常の場合より加速さ
れ、樹脂の分解を引き起こす等の問題をも有すものであ
った。このことにより、得られた成形品の力学的特性は
低い値を示す場合が多く、従来の課題を克服できるもの
とはいえない。
【0138】得られた前記長繊維ペレットを、80℃に
て5時間以上真空中で乾燥させた後、上述(A)〜
(H)項記載の各試験に供した。 (比較例2、3)以上に説明した実施例6において、導
電性繊維の配合量、樹脂の種類と配合量、その他の本発
明の成分の配合量を変更した以外は実施例6と同様の方
法で導電性繊維強化成形材料を製造したところ、20m
/min以上の高い引取速度で製造することができた。
つまり、上記チョップド糸にされた導電性繊維を用いた
製造方法によるペレットは生産性に非常に優れていると
いえる。しかし、得られた成形品の導電性や力学的特性
については劣り、従来の課題を克服できるものとはいえ
ない。
【0139】実施例1〜7で用いた成形材料中の各成分
の配合率、および評価結果を表1に、比較例1〜3で用
いた成形材料中の各成分の配合率、および評価結果を表
2に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】なお、表1、2における各成分の略記号は
下記のものである。 樹脂 N6:ナイロン6樹脂[ηr=2.35] MXD6:ポリメタキシリレンアジパミド[ηr=2.
2] PC/ABS:ポリカーボネート樹脂とABS樹脂との
ポリマーアロイ樹脂[帝人化成(株)製マルチロンT−
3000] フェノール系重合体 T/P1:テルペン・フェノール共重合体[ヤスハラケ
ミカル(株)製YP90L] T/P2:テルペン・フェノール共重合体[ヤスハラケ
ミカル(株)製マイティーエース G−150] 導電性繊維 CF1:PAN系炭素繊維[Tex=800g/100
0m、平均単繊維直径=7μm、引張破断伸度=2.1
%、Lc=1.9nm、表面官能基(O/C)=0.0
7] CF2:PAN系炭素繊維[Tex=1650g/10
00m、平均単繊維直径=約7μm、引張破断伸度=
2.1%、Lc=1.8nm、表面官能基(O/C)=
0.07] CF3:PAN系炭素繊維[Tex=6000g/10
00m、平均単繊維直径=約10μm、引張破断伸度=
1.5%、Lc=1.7nm、表面官能基(O/C)=
0.06] カーボンブラック CB:カーボンブラック[I2 /I1 =0.68、I2
/I3 =0.60]導電性付与剤 TiP:チタン粒子[東邦チタニウム(株)製Ti粒
子:平均粒径=20μm以下] 表1の結果から以下のことが明らかである。 1.RLの効果 RLが1×102Ωを越える比較例2、3に比べて、RL
が1×102Ω以下である実施例1〜7は、成形材料の
製造単位当たりの生産性は同等でありながら、導電性、
力学的特性が著しく高い成形品を得ることができ、その
優位性は明らかである。中でも、RLを特に低くするこ
とができた実施例2,3においては、RLが製造単位当
たりの生産性に及ぼす改善効果が絶大であることは明ら
かである。 2.RTの効果 実施例1〜7は、比較例1と比べて、成形品の導電性、
力学的特性の点では同等であるが、前者はRTが1×1
3Ω以上であるため、成形材料の製造単位当たりの生
産性に著しく優れ、成形材料からの導電性繊維の脱落を
最小限に抑えることができ、その優位性は明らかであ
る。 3.VRLの効果 RLの場合と同様に、VRLが1Ω・cmを越える比較例
2、3に比べて、VR Lが1Ω・cm以下である実施例
1〜6は、成形材料の製造単位当たりの生産性は同等で
ありながら、導電性、力学的特性が著しく高い成形品を
得ることができ、その優位性は明らかである。 4.RL/RTの効果 RL/RTが1×10-3以下である実施例1〜5、7は、
L/RTが1×10-3を越える比較例1と、成形品の導
電性・力学的特性の点で同等である上に、さらに、成形
材料の製造単位当たりの生産性に著しく優れ、成形材料
からの導電性繊維の脱落を最小限に抑えることができる
点で、その優位性は明らかである。 5.長繊維ペレットの効果(特に芯鞘型の長繊維ペレッ
トについて) 通常のペレットを用いた比較例2(もしくは比較例3)
に比べて、芯鞘型の長繊維ペレットである実施例1〜3
(もしくは比較例5)は、得られた成形品の導電性、力
学的特性(特にIzod衝撃強度)を著しく改善するこ
とができ、各特性をより高い次元で兼ね備えた成形品を
得ることができる。これは、比較例2(もしくは比較例
3)よりも実施例1〜3(もしくは比較例5)の方が、
成形品中の導電性繊維の長さが長いことによる。
【0143】つまり、実施例1の成形品中の重量的平均
繊維長さlw=0.498mm(1mm〜7mmの範囲
である導電性繊維が8重量%以上)であったのに対し
て、比較例2の場合には、lw=0.224mm(1m
m以上の導電性繊維は1重量%未満)であったことによ
る。なお、lwの算出は、成形品から導電性繊維のフィ
ラメントのみを、任意に少なくとも400以上抽出し、
その長さを1μm単位まで光学顕微鏡もしくは走査型電
子顕微鏡にて測定して、下記の(数式1)、もしくは
(数式2)を用いて算出した。但し、Wiは長さliの
導電性繊維の重量、Niは長さliの導電性繊維の数と
する。
【0144】 (数式1) lw=Σ(Wi×li)/ΣWi (数式1)は一定直径の導電性繊維に対しては、(数式
2)の様に表すことができる。
【0145】 (数式2) lw=Σ(Ni×li2)/Σ(Ni×li) 本発明では、lwを測定する際の樹脂を除去する方法と
して、樹脂のみを溶解させ、含有される導電性繊維は溶
解させない溶媒などに成形品を一定時間浸漬し、樹脂を
十分溶解させた後、濾過などにより導電性繊維と分離す
る手法を採用した。
【0146】上記比較から、導電性、力学的特性に及ぼ
す成形品中の導電性繊維の長さの重要性は明らかであ
り、本発明で用いられる導電性繊維強化成形材料として
は、長繊維ペレットの形態をとることが好ましい。
【0147】また、単に樹脂を含浸させたのみの長繊維
ペレットである比較例1は、通常のペレットである比較
例2よりは、得られた成形品の導電性、力学的特性に優
れるものの、芯鞘型の長繊維ペレットである実施例1〜
3よりは劣っている。また、比較例1は、その製造工程
により引取速度を早くできないため、製造単位当たりの
生産性に極端に劣るといった致命的欠点を有する。
【0148】上記比較から、製造単位当たりの生産性に
及ぼす長繊維ペレットの形態の重要性は明らかであり、
本発明で用いられる長繊維ペレットとしては、芯鞘型の
長繊維ペレットの形態をとることが更に好ましい。
【0149】即ち、導電性、力学的特性に優れる成形品
が得られ、成形材料からの導電性繊維の脱落が少なく、
且つ生産性に優れる導電性繊維強化成形材料としては、
芯鞘型の長繊維ペレットの形態をとることが好ましい。
6.カーボンブラックの効果カーボンブラックを配合し
ていない実施例1〜3に比べて、カーボンブラックを配
合している実施例4は、導電性繊維の配合率が少ないに
も関わらず、得られた成形品の導電性はさらに優れる。
【0150】また、カーボンブラックを配合していない
比較例1〜3に比べて、特に本発明の範囲内のカーボン
ブラックを配合している実施例6、7は、得られた成形
品の導電性は優れ、その効果の大きさが理解できる。 7.導電性付与剤の効果(実施例7と比較例3との比
較) 導電性付与剤を配合した実施例7は、比較例3に比べて
体積固有抵抗を低くすることができ、導電性に優れた成
形品を得ることができる。また、力学的特性(剛性、衝
撃強度)も、ほぼ同じレベルにすることができ、その優
位性は明らかである。
【0151】更に、実施例7は、特に本発明の範囲内の
カーボンブラックと導電性付与剤との相乗効果により、
カーボンブラックを配合したもののみより一段と低い導
電性を得ることができるため、同じレベルの導電性を得
ようとした場合には導電性繊維を低減でき、比較例3は
いうにおよばず実施例6よりも外観品位に優れるだけで
なく、材料コストの面からも大きな優位性を有する。
【0152】
【発明の効果】請求項1に係る本発明の導電性繊維強化
成形材料は、少なくとも成形材料の長手方向の電気抵抗
値RLを1×102Ω以下とし、かつ成形材料の長手方向
と直交する平面内における任意方向の電気抵抗値RT
1×103Ω以上とすることにより、成形材料中の導電
性繊維の配合量、長さ、およびその配置位置を最適なも
のとした。
【0153】また、成形材料は、少なくとも成形材料の
長手方向の体積電気抵抗値VRLを1Ω・cm以下と
し、かつRLとRTとの比であるRL/RTを1×10-3
下とすることにより、成形材料のサイズに対しての導電
繊維の配合量、長さおよびその配置位置の割合を最適な
ものとした。
【0154】さらに本発明の導電性繊維樹脂成形材料の
製造方法は、導電性繊維を予め開繊して予熱し、次いで
樹脂を導電性繊維束中に含浸させることにより、導電性
繊維と前記樹脂との複合体を形成させ、次いで、前記複
合体を前記樹脂とは同一でも異なってもよい樹脂でコー
ティングし、しかる後に、コーティングされた前記複合
体を、10m/min以上の速度で引き取ることによ
り、成形材料の引取速度、および成形材料中の導電性繊
維の配合量を最適なものとした。
【0155】これらにより、高い生産性を有したまま
に、高い導電性・力学的特性(特に衝撃強度、剛性な
ど)を有する成形品を得ることができ、かつ導電性繊維
の脱落が少ない導電性繊維強化成形材料およびその製造
方法ならびにその成形材料により成形された成形品を得
ることができる。
【0156】このような導電性繊維強化成形材料および
その製造方法ならびにそれらから得られた成形品は、特
に電気・電子機器やOA機器や家電機器用途類、自動車
用途のハウジングやそれらの部品などを始め、前記特性
を必要とする幅広い産業分野に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性繊維強化成形材料の一形態を示
す斜視図である。
【図2】本発明の導電性繊維強化成形材料に配合される
カーボンブラックのラマンスペクトルの一例図である。
【符号の説明】
1:導電性繊維強化成形材料 2:成形材料の長手方向 3:成形材料の長手方向と垂直方向 4:成形材料の長手方向の端面 I1 :ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値 I2 :ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極小値 I3 :ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B29K 307:04 B29K 307:04 507:04 507:04 Fターム(参考) 4F072 AA02 AA08 AA09 AB10 AB18 AC01 AC02 AD04 AD05 AD37 AD41 AD42 AD44 AD46 AE08 AE24 AF02 AG05 AG12 AH12 AH18 AH20 AH21 AH46 AH48 AK06 AL02 AL11 AL16 4F201 AA03 AA13 AA24 AA28 AA29 AA34 AB18 AD03 AD16 AE03 AR08 BA02 BC01 BC02 BC12 BC13 BC37 BD02 BD04 BD05 BL07 BL08 BM05 BM06 BM07 5G301 DA02 DA20 DA42 DD10 DE02

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも導電性繊維と樹脂とからなる
    成形材料が、少なくとも次の条件[A]および[B]を
    同時に満たすことを特徴とする導電性繊維強化成形材
    料。 [A]成形材料の長手方向の電気抵抗値RLが、1×1
    2Ω以下であること。 [B]成形材料の長手方向と直交する平面内における任
    意方向の電気抵抗値RTが、1×103Ω以上であるこ
    と。
  2. 【請求項2】 成形材料が、少なくとも次の条件[C]
    または[D]を満たすことを特徴とする請求項1に記載
    の導電性繊維強化成形材料。 [C]成形材料の長手方向の体積電気抵抗値VRLが、
    1Ω・cm以下であること。 [D]電気抵抗値RLとRTとの比であるRL/RTが、1
    ×10-3以下であること。
  3. 【請求項3】 成形材料の重量を100重量%とした場
    合、導電性繊維が3〜60重量%の範囲で含まれている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性繊維
    強化成形材料。
  4. 【請求項4】 強化繊維を含む芯部と、樹脂を含む鞘部
    とからなる芯鞘型の導電性繊維強化成形材料であって、
    ストランド、テープ、シートのいずれかの形態を有する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電
    性繊維強化成形材料。
  5. 【請求項5】 2〜26mmの範囲内の長さに切断して
    なる芯鞘型の長繊維ペレットの形態を有することを特徴
    とする請求項4に記載の導電性繊維強化成形材料。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の導電性
    繊維強化成形材料と、導電性繊維を含有しない成形材料
    とが混合されてなることを特徴とする導電性繊維強化成
    形材料。
  7. 【請求項7】 導電性繊維が炭素繊維であることを特徴
    とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電性繊維強化
    成形材料。
  8. 【請求項8】 該樹脂がスチレン系樹脂、ポリカーボネ
    ート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹
    脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹
    脂、ポリオレフィン樹脂もしくは液晶性樹脂から選ばれ
    る少なくとも1種であることを特徴とする請求項`7の
    いずれかに記載の導電性繊維強化成形材料。
  9. 【請求項9】 少なくとも次の条件[CB1]、[CB
    2]のいずれか、もしくは両方を満たすカーボンブラッ
    クが配合されていることを特徴とする請求項`8のいず
    れかに記載の導電性繊維強化成形材料。 [CB1]:ラマン散乱強度比I2 /I1 が、0.4〜
    0.8の範囲であること。 [CB2]:ラマン散乱強度比I2 /I3 が、0.4〜
    0.7の範囲であること。 I1:ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
    散乱強度の極大値 I2:ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
    散乱強度の極小値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
    散乱強度の極大値
  10. 【請求項10】 導電性付与剤として、粒子および/ま
    たはフレーク状の金属および/もしくは金属化合物が配
    合されていることを特徴とする請求項`9のいずれかに
    記載の導電性繊維強化成形材料。
  11. 【請求項11】 導電性繊維を予め開繊して予熱し、次
    いで樹脂を導電性繊維束中に含浸させることにより、導
    電性繊維と前記樹脂との複合体を形成させ、次いで、前
    記複合体を前記樹脂とは同一または異なる樹脂でコーテ
    ィングし、しかる後に、コーティングされた前記複合体
    を、10m/min以上の速度で引き取ることを特徴と
    する導電性繊維強化成形材料の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載の導電性繊維強化成
    形材料の製造方法において、引き取る前の成形材料に、
    その製造単位当たり0.3〜12g/mの範囲で導電性
    繊維を配合することを特徴とする導電性繊維強化成形材
    料の製造方法。
  13. 【請求項13】 コーティングされた複合体をストラン
    ド、テープ、シートのいずれかとするとともに、2〜2
    6mmの範囲内の長さに切断することにより、芯鞘型の
    長繊維ペレットを得ることを特徴とする請求項12に記
    載の導電性繊維強化成形材料の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1〜10のいずれかに記載の導
    電性繊維強化成形材料が、プレス成形または射出成形に
    て成形されてなることを特徴とする導電性成形品。
  15. 【請求項15】 体積固有抵抗値が100Ω・cm以下
    であることを特徴とする請求項14に記載の導電性成形
    品。
JP31088599A 1999-11-01 1999-11-01 導電性繊維強化成形材料およびその製造方法 Pending JP2001129826A (ja)

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