JPH11310824A - 浸炭焼き入れ鋼部材及びその製造方法 - Google Patents
浸炭焼き入れ鋼部材及びその製造方法Info
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- JPH11310824A JPH11310824A JP12042098A JP12042098A JPH11310824A JP H11310824 A JPH11310824 A JP H11310824A JP 12042098 A JP12042098 A JP 12042098A JP 12042098 A JP12042098 A JP 12042098A JP H11310824 A JPH11310824 A JP H11310824A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 優れた強度特性を維持しつつ,熱処理歪みを
抑制することができる,浸炭焼き入れ鋼部材及びその製
造方法を提供すること。 【解決手段】 炭素を0.24〜0.30重量%含有し
ていると共にジョミニー試験により得られる1/2イン
チ深さ焼入れ性能値が33〜50ポイントである素材を
浸炭処理した後,素材をその浸炭層の臨界冷却速度R0
近傍の冷却速度R1によって急冷することにより浸炭焼
入れ処理を行う。冷却速度は,500℃/秒以下である
ことが好ましい。
抑制することができる,浸炭焼き入れ鋼部材及びその製
造方法を提供すること。 【解決手段】 炭素を0.24〜0.30重量%含有し
ていると共にジョミニー試験により得られる1/2イン
チ深さ焼入れ性能値が33〜50ポイントである素材を
浸炭処理した後,素材をその浸炭層の臨界冷却速度R0
近傍の冷却速度R1によって急冷することにより浸炭焼
入れ処理を行う。冷却速度は,500℃/秒以下である
ことが好ましい。
Description
【0001】
【技術分野】本発明は,熱処理ひずみの抑制に有効な浸
炭焼入れ鋼部材及びその製造方法に関する。
炭焼入れ鋼部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】例えば,自動車用の歯車部材等としては,
耐摩耗性,耐疲労性等を向上すべく,浸炭焼入れ処理が
広く行われている。具体的には,例えばJIS−SCR
420,SCM420等の低炭素の浸炭用鋼(約0.2
%C)を素材として用い,これを予め所望形状に設けて
おき,その後,浸炭処理と浸炭焼入れを施す。浸炭処理
は,周知のごとく種々の処理方法があり,素材表面の炭
素濃度を高めた浸炭層を形成するための処理である。ま
た,浸炭焼入れ処理は,上記浸炭処理後の素材を焼入れ
する処理である。この一連の浸炭処理及び浸炭焼入れ処
理を行うことにより,表面硬度が高く,かつ強靱性の鋼
部材を得ることができる。
耐摩耗性,耐疲労性等を向上すべく,浸炭焼入れ処理が
広く行われている。具体的には,例えばJIS−SCR
420,SCM420等の低炭素の浸炭用鋼(約0.2
%C)を素材として用い,これを予め所望形状に設けて
おき,その後,浸炭処理と浸炭焼入れを施す。浸炭処理
は,周知のごとく種々の処理方法があり,素材表面の炭
素濃度を高めた浸炭層を形成するための処理である。ま
た,浸炭焼入れ処理は,上記浸炭処理後の素材を焼入れ
する処理である。この一連の浸炭処理及び浸炭焼入れ処
理を行うことにより,表面硬度が高く,かつ強靱性の鋼
部材を得ることができる。
【0003】従来,上記浸炭焼入れ処理としては,種々
の方法が提案されている。一般的には,焼入れ加熱温度
に加熱した素材を,浸炭層のMs点(マルテンサイト変
態開始温度)以下に急冷する。この方法は最も基本的な
焼き入れ方法であるが,比較的大きな熱処理歪みが生ず
る。
の方法が提案されている。一般的には,焼入れ加熱温度
に加熱した素材を,浸炭層のMs点(マルテンサイト変
態開始温度)以下に急冷する。この方法は最も基本的な
焼き入れ方法であるが,比較的大きな熱処理歪みが生ず
る。
【0004】そこで,従来,熱処理歪みによる寸法ばら
つきを軽減すべく,焼入れ浴槽の冷却剤の種類,液温,
粘度,成分等を工夫した方法が種々提案されている。ま
た,浸炭層のMs点直上又は直下の温度に保持した浴槽
に投入してキープした後,徐冷等を行うという,マルテ
ンパー或いはマルクエンチ,Msクエンチと呼ばれる焼
入れ法を応用した2段焼入れ法も種々開発されている。
つきを軽減すべく,焼入れ浴槽の冷却剤の種類,液温,
粘度,成分等を工夫した方法が種々提案されている。ま
た,浸炭層のMs点直上又は直下の温度に保持した浴槽
に投入してキープした後,徐冷等を行うという,マルテ
ンパー或いはマルクエンチ,Msクエンチと呼ばれる焼
入れ法を応用した2段焼入れ法も種々開発されている。
【0005】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の浸
炭焼入れ方法を用いた製造方法においては,次の問題が
ある。即ち,上記焼入れ浴の改善,2段焼入れの採用等
の歪み対策はある程度有効ではあるものの,寸法精度が
非常に厳しい歯車等の鋼部材においては未だ十分でな
く,寸法精度が維持できない場合もある。
炭焼入れ方法を用いた製造方法においては,次の問題が
ある。即ち,上記焼入れ浴の改善,2段焼入れの採用等
の歪み対策はある程度有効ではあるものの,寸法精度が
非常に厳しい歯車等の鋼部材においては未だ十分でな
く,寸法精度が維持できない場合もある。
【0006】また,上記熱処理歪みを軽減するには急冷
時の冷却速度を遅くすることが有効であることが知られ
ている。しかしながら,単に冷却速度を遅くしただけで
は,歪みは軽減できても要求される機械的強度が得られ
ない。
時の冷却速度を遅くすることが有効であることが知られ
ている。しかしながら,単に冷却速度を遅くしただけで
は,歪みは軽減できても要求される機械的強度が得られ
ない。
【0007】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてな
されたもので,優れた強度特性を維持しつつ,熱処理歪
みを抑制することができる,浸炭焼き入れ鋼部材及びそ
の製造方法を提供しようとするものである。
されたもので,優れた強度特性を維持しつつ,熱処理歪
みを抑制することができる,浸炭焼き入れ鋼部材及びそ
の製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題の解決手段】請求項1に記載の発明は,炭素を
0.24〜0.30重量%含有していると共にジョミニ
ー試験により得られる1/2インチ深さ焼入れ性能値が
33〜50ポイントである素材を浸炭処理した後,該素
材をその浸炭層の臨界冷却速度近傍の冷却速度によって
急冷することにより焼入れ処理を行うことを特徴とする
浸炭焼入れ鋼部材の製造方法にある。
0.24〜0.30重量%含有していると共にジョミニ
ー試験により得られる1/2インチ深さ焼入れ性能値が
33〜50ポイントである素材を浸炭処理した後,該素
材をその浸炭層の臨界冷却速度近傍の冷却速度によって
急冷することにより焼入れ処理を行うことを特徴とする
浸炭焼入れ鋼部材の製造方法にある。
【0009】本発明において最も注目すべきことは,炭
素含有量及び上記焼入れ性能値が上記特定の範囲内にあ
る素材を用いること,及び,浸炭後の焼入れ処理を上記
冷却速度によって行うことである。
素含有量及び上記焼入れ性能値が上記特定の範囲内にあ
る素材を用いること,及び,浸炭後の焼入れ処理を上記
冷却速度によって行うことである。
【0010】上記素材は,炭素(C)の含有量を0.2
4〜0.30重量%の範囲内とする。炭素含有量が0.
24重量%未満の場合には,得られる浸炭焼入れ鋼部材
の内部強度が不十分になるという問題がある。一方,
0.30重量%を超える場合には,浸炭前の素材の所望
形状への加工が困難となるという問題がある。
4〜0.30重量%の範囲内とする。炭素含有量が0.
24重量%未満の場合には,得られる浸炭焼入れ鋼部材
の内部強度が不十分になるという問題がある。一方,
0.30重量%を超える場合には,浸炭前の素材の所望
形状への加工が困難となるという問題がある。
【0011】また,上記素材は,ジョミニー試験により
得られる1/2インチ深さ焼入れ性能値(以下,J値と
いう)が33〜50ポイントである。このJ値は,JI
Sに基づくジョミニー試験において得られる値であっ
て,試験片の焼入れ端から1/2インチ部分におけるも
のである。ここで,上記J値が33ポイント未満の場合
には得られる浸炭焼入れ鋼部材の内部強度が不十分とな
るという問題がある。一方,50ポイントを超える場合
には上記内部強度が高くなりすぎて靱性が低下するとい
う問題がある。
得られる1/2インチ深さ焼入れ性能値(以下,J値と
いう)が33〜50ポイントである。このJ値は,JI
Sに基づくジョミニー試験において得られる値であっ
て,試験片の焼入れ端から1/2インチ部分におけるも
のである。ここで,上記J値が33ポイント未満の場合
には得られる浸炭焼入れ鋼部材の内部強度が不十分とな
るという問題がある。一方,50ポイントを超える場合
には上記内部強度が高くなりすぎて靱性が低下するとい
う問題がある。
【0012】また,上記素材は,従来の種々の公知技術
と組み合わせたものにすることも可能である。即ち,粒
界酸化の軽減のためにSi,Mn,Cr含有量を低下さ
せること,浸炭層の焼入れ性を確保すべくNi,Moを
添加すること等ができる。また,クラック発生抵抗を増
大させるために,Al,Nを添加して結晶粒を微細化す
ること,粒界の強化のためにMn量を低減させると共に
Mo量を増加させること,粒内強度の上昇のためにN
i,Moを添加することなどもできる。
と組み合わせたものにすることも可能である。即ち,粒
界酸化の軽減のためにSi,Mn,Cr含有量を低下さ
せること,浸炭層の焼入れ性を確保すべくNi,Moを
添加すること等ができる。また,クラック発生抵抗を増
大させるために,Al,Nを添加して結晶粒を微細化す
ること,粒界の強化のためにMn量を低減させると共に
Mo量を増加させること,粒内強度の上昇のためにN
i,Moを添加することなどもできる。
【0013】次に,上記素材の浸炭処理は,表面層のみ
を高炭素化して浸炭層とし,その内部を素材そのままの
組成である未浸炭層とする処理であって,周知の種々の
浸炭処理法を適用することができる。例えば,ガス浸
炭,固体浸炭,液体浸炭,或いは窒化を兼ねた浸炭窒化
法を適用することもできる。
を高炭素化して浸炭層とし,その内部を素材そのままの
組成である未浸炭層とする処理であって,周知の種々の
浸炭処理法を適用することができる。例えば,ガス浸
炭,固体浸炭,液体浸炭,或いは窒化を兼ねた浸炭窒化
法を適用することもできる。
【0014】また,上記浸炭処理によって上記素材表面
に形成される浸炭層の炭素濃度は,0.7〜0.9重量
%であることが好ましい。浸炭層の炭素濃度が0.7重
量%未満の場合には,その後の浸炭焼入れ処理による硬
度向上効果があまり得られないという問題がある。一
方,0.9重量%を超える場合には,硬度向上効果が飽
和してしまうと共にセメンタイトの析出などにより脆く
なってしまうという問題がある。但し,セメンタイトを
積極的に利用する高濃度浸炭の場合,炭素濃度が0.9
重量%を超えても問題ではない。
に形成される浸炭層の炭素濃度は,0.7〜0.9重量
%であることが好ましい。浸炭層の炭素濃度が0.7重
量%未満の場合には,その後の浸炭焼入れ処理による硬
度向上効果があまり得られないという問題がある。一
方,0.9重量%を超える場合には,硬度向上効果が飽
和してしまうと共にセメンタイトの析出などにより脆く
なってしまうという問題がある。但し,セメンタイトを
積極的に利用する高濃度浸炭の場合,炭素濃度が0.9
重量%を超えても問題ではない。
【0015】また,上記浸炭処理においても,従来の公
知技術を組み合わせることができる。即ち,粒界酸化の
軽減を図るための真空浸炭法,浸炭層の焼入れ性確保の
ための浸炭浸窒法,浸炭時間の短縮のための高温浸炭法
等,種々の公知技術を適用することができる。
知技術を組み合わせることができる。即ち,粒界酸化の
軽減を図るための真空浸炭法,浸炭層の焼入れ性確保の
ための浸炭浸窒法,浸炭時間の短縮のための高温浸炭法
等,種々の公知技術を適用することができる。
【0016】次に,上記浸炭処理後の浸炭焼入れ処理
は,該素材をその浸炭層の臨界冷却速度近傍の冷却速度
によって焼入れ加熱温度から急冷することにより行う。
ここでいう冷却速度は,上記浸炭層を焼入れ加熱温度か
ら急冷温度まで冷却した際の温度差を冷却時間で割った
平均的な冷却速度をいう。
は,該素材をその浸炭層の臨界冷却速度近傍の冷却速度
によって焼入れ加熱温度から急冷することにより行う。
ここでいう冷却速度は,上記浸炭層を焼入れ加熱温度か
ら急冷温度まで冷却した際の温度差を冷却時間で割った
平均的な冷却速度をいう。
【0017】また,上記浸炭層の臨界冷却速度とは,浸
炭層を均一オーステナイト組織状態から急冷した際に完
全にマルテンサイト変態させることができる下限の冷却
速度をいう。そのため,上記浸炭層を高硬度化するため
には,上記臨界冷却速度以上の冷却速度で急冷する必要
がある。一方,上記臨界冷却速度近傍の冷却速度とは,
該臨界冷却速度よりも若干速い程度の冷却速度をいい,
マルテンサイト変態を確保しつつ,できる限り冷却速度
を遅くした速度をいう。
炭層を均一オーステナイト組織状態から急冷した際に完
全にマルテンサイト変態させることができる下限の冷却
速度をいう。そのため,上記浸炭層を高硬度化するため
には,上記臨界冷却速度以上の冷却速度で急冷する必要
がある。一方,上記臨界冷却速度近傍の冷却速度とは,
該臨界冷却速度よりも若干速い程度の冷却速度をいい,
マルテンサイト変態を確保しつつ,できる限り冷却速度
を遅くした速度をいう。
【0018】また,上記浸炭焼入れまでの一連の処理の
後に,公知の種々の後処理技術を適用することもでき
る。例えば,粒界酸化の軽減のためのショットブラス
ト,ショットピーニング,各種研磨(電解研磨,ホーニ
ング等を含む)等を行うことができる。また,残留圧縮
応力付与のためのショットピーニング,フィレットロー
ル加工等を行うこともできる。
後に,公知の種々の後処理技術を適用することもでき
る。例えば,粒界酸化の軽減のためのショットブラス
ト,ショットピーニング,各種研磨(電解研磨,ホーニ
ング等を含む)等を行うことができる。また,残留圧縮
応力付与のためのショットピーニング,フィレットロー
ル加工等を行うこともできる。
【0019】次に,本発明の作用につき説明する。本発
明においては,上記のごとく,0.24〜0.30重量
%の炭素を含有していると共に上記特定の範囲のJ値を
有する素材を用いる。そのため,従来の約0.2重量%
Cの浸炭用鋼を浸炭処理した場合に比べ,得られる浸炭
焼入れ鋼部材の熱処理歪みを大幅に抑制し,かつ十分な
強度特性を維持することができる。
明においては,上記のごとく,0.24〜0.30重量
%の炭素を含有していると共に上記特定の範囲のJ値を
有する素材を用いる。そのため,従来の約0.2重量%
Cの浸炭用鋼を浸炭処理した場合に比べ,得られる浸炭
焼入れ鋼部材の熱処理歪みを大幅に抑制し,かつ十分な
強度特性を維持することができる。
【0020】この理由は必ずしも明らかではないが,次
のように考えることができる。即ち,本発明の素材は,
上記のごとく従来の浸炭用鋼(約0.2重量%C)より
も炭素含有量が高い。そのため,浸炭処理後において
は,浸炭層は従来と同等の炭素量に制御されるが,未浸
炭層の炭素濃度は素材における濃度差がそのまま維持さ
れる。これにより,素材内部の未浸炭層におけるMs点
は従来よりも大幅に低い温度となり,かつ,未浸炭層の
臨界冷却速度は従来よりも遅い速度となる。
のように考えることができる。即ち,本発明の素材は,
上記のごとく従来の浸炭用鋼(約0.2重量%C)より
も炭素含有量が高い。そのため,浸炭処理後において
は,浸炭層は従来と同等の炭素量に制御されるが,未浸
炭層の炭素濃度は素材における濃度差がそのまま維持さ
れる。これにより,素材内部の未浸炭層におけるMs点
は従来よりも大幅に低い温度となり,かつ,未浸炭層の
臨界冷却速度は従来よりも遅い速度となる。
【0021】そのため,本発明においては,浸炭焼入れ
時の急冷を,上記のごとく浸炭層の臨界冷却速度近傍の
冷却速度にまで遅くしても,未浸炭層の焼入れ効果をあ
る程度以上維持することができる。そしてまた,未浸炭
層の上記J値は,上記の範囲内にあるため,上記焼入れ
効果によって優れた強度特性を得ることができる。
時の急冷を,上記のごとく浸炭層の臨界冷却速度近傍の
冷却速度にまで遅くしても,未浸炭層の焼入れ効果をあ
る程度以上維持することができる。そしてまた,未浸炭
層の上記J値は,上記の範囲内にあるため,上記焼入れ
効果によって優れた強度特性を得ることができる。
【0022】一方,従来鋼における未浸炭層は,そのM
s点が本発明品より高くかつその臨界冷却速度も速いた
め,浸炭層の臨界冷却速度近傍の冷却速度まで冷却速度
を遅めると,内部組織(未浸炭層)の焼入れ効果が減少
する。また,一般的には,従来鋼の未浸炭層の上記J値
は本発明の場合よりも低い。そのため,内部強度不足を
起こしてしまう。
s点が本発明品より高くかつその臨界冷却速度も速いた
め,浸炭層の臨界冷却速度近傍の冷却速度まで冷却速度
を遅めると,内部組織(未浸炭層)の焼入れ効果が減少
する。また,一般的には,従来鋼の未浸炭層の上記J値
は本発明の場合よりも低い。そのため,内部強度不足を
起こしてしまう。
【0023】このように,本発明においては,従来強度
面から不可能であった冷却速度の低下を,高い強度特性
を維持しつつ実現することができる。また,この冷却速
度の低下によって,冷却速度に起因する熱歪みの発生を
大幅に抑制することができる。
面から不可能であった冷却速度の低下を,高い強度特性
を維持しつつ実現することができる。また,この冷却速
度の低下によって,冷却速度に起因する熱歪みの発生を
大幅に抑制することができる。
【0024】また,上記のごとく,未浸炭層のMs点が
従来よりも低下し,浸炭層のMs点に近づく。このこと
は,浸炭焼入れの急冷時における,未浸炭層の変態開始
点と浸炭層の変態開始点が従来よりも近づくことを意味
する。これにより,急冷時における2回のマルテンサイ
ト変態開始時期を近づけることができ,相変態に起因す
る歪み発生を従来よりも抑制することができる。
従来よりも低下し,浸炭層のMs点に近づく。このこと
は,浸炭焼入れの急冷時における,未浸炭層の変態開始
点と浸炭層の変態開始点が従来よりも近づくことを意味
する。これにより,急冷時における2回のマルテンサイ
ト変態開始時期を近づけることができ,相変態に起因す
る歪み発生を従来よりも抑制することができる。
【0025】さらに,本発明における上記未浸炭層は従
来よりも高炭素濃度であるため,そのオーステナイト変
態開始点が従来よりも低い。そのため,上記焼入れ直前
の加熱温度を従来よりも低下させることができ,これに
よってさらに熱処理歪み軽減を図ることができる。
来よりも高炭素濃度であるため,そのオーステナイト変
態開始点が従来よりも低い。そのため,上記焼入れ直前
の加熱温度を従来よりも低下させることができ,これに
よってさらに熱処理歪み軽減を図ることができる。
【0026】このように,本例においては,素材を上記
特定の炭素量及びJ値を有するものに限定し,その浸炭
処理後の浸炭焼入れ時において,上記のごとく従来より
も遅い冷却速度で急冷することにより,得られる浸炭焼
入れ鋼部材の熱処理歪みを大幅に抑制し,かつ十分な強
度特性を維持することができる。
特定の炭素量及びJ値を有するものに限定し,その浸炭
処理後の浸炭焼入れ時において,上記のごとく従来より
も遅い冷却速度で急冷することにより,得られる浸炭焼
入れ鋼部材の熱処理歪みを大幅に抑制し,かつ十分な強
度特性を維持することができる。
【0027】また,請求項2に記載の発明のように,上
記浸炭焼入れ時の上記冷却速度は,500℃/秒以下で
あることが好ましい。即ち,上記浸炭層の臨界冷却速度
よりも速く,かつ500℃/秒以下であることが好まし
い。上記冷却速度をこの範囲内にすることにより,強度
を維持しつつ歪みを抑制するという効果を確実に発揮さ
せることができる。
記浸炭焼入れ時の上記冷却速度は,500℃/秒以下で
あることが好ましい。即ち,上記浸炭層の臨界冷却速度
よりも速く,かつ500℃/秒以下であることが好まし
い。上記冷却速度をこの範囲内にすることにより,強度
を維持しつつ歪みを抑制するという効果を確実に発揮さ
せることができる。
【0028】また,請求項3に記載の発明のように,上
記浸炭焼入れ時の上記急冷は上記浸炭層のMs点近傍の
保持温度まで行い,次いで,該保持温度に上記素材を所
定時間保持した後,常温まで冷却することが好ましい。
即ち,上記のごとく冷却速度を低下させると共に,いわ
ゆる2段焼入れを行うことが好ましい。これにより,さ
らに安定した歪み抑制効果を得ることができる。なお,
急冷後の保持時間は,素材の形状,大きさ等に合わせて
所定の時間に調整する。
記浸炭焼入れ時の上記急冷は上記浸炭層のMs点近傍の
保持温度まで行い,次いで,該保持温度に上記素材を所
定時間保持した後,常温まで冷却することが好ましい。
即ち,上記のごとく冷却速度を低下させると共に,いわ
ゆる2段焼入れを行うことが好ましい。これにより,さ
らに安定した歪み抑制効果を得ることができる。なお,
急冷後の保持時間は,素材の形状,大きさ等に合わせて
所定の時間に調整する。
【0029】また,請求項4に記載の発明のように,上
記浸炭処理後の上記素材は,その浸炭層と未浸炭層のM
s点の差が200℃以下であることが好ましい。即ち,
例えば従来の一般的な浸炭用鋼を0.8重量%Cまで浸
炭処理した場合には,浸炭層と未浸炭層とのMs点の差
が200℃を超える。この場合には,浸炭焼入れ時に大
きな熱処理歪みが生じてしまう。これに対し,上記Ms
点の差を200℃以下に押さえることにより,従来より
も熱処理歪みを低減することができる。なお,上記Ms
点の差は0℃に近づけることが好ましい。
記浸炭処理後の上記素材は,その浸炭層と未浸炭層のM
s点の差が200℃以下であることが好ましい。即ち,
例えば従来の一般的な浸炭用鋼を0.8重量%Cまで浸
炭処理した場合には,浸炭層と未浸炭層とのMs点の差
が200℃を超える。この場合には,浸炭焼入れ時に大
きな熱処理歪みが生じてしまう。これに対し,上記Ms
点の差を200℃以下に押さえることにより,従来より
も熱処理歪みを低減することができる。なお,上記Ms
点の差は0℃に近づけることが好ましい。
【0030】また,請求項5に記載の発明のように,上
記素材は予め歯車形状に成形しておくことができる。こ
の場合にも上記優れた製造方法における作用効果を十分
に発揮させることができ,歯車という寸法精度の厳しい
製品であっても高品質に仕上げることができる。
記素材は予め歯車形状に成形しておくことができる。こ
の場合にも上記優れた製造方法における作用効果を十分
に発揮させることができ,歯車という寸法精度の厳しい
製品であっても高品質に仕上げることができる。
【0031】次に,上述した浸炭焼入れ時の上記冷却速
度は,上記浸炭処理後における上記素材の未浸炭層の臨
界冷却速度に対して70〜130%の冷却速度であるこ
とが好ましい。上記冷却速度が上記未浸炭層の臨界冷却
速度の70%未満の場合には未浸炭層のマルテンサイト
変態率が低くなりすぎて強度が低下するという問題があ
り,一方,130%を超える場合には,熱処理歪みが生
じやすくなるという問題がある。
度は,上記浸炭処理後における上記素材の未浸炭層の臨
界冷却速度に対して70〜130%の冷却速度であるこ
とが好ましい。上記冷却速度が上記未浸炭層の臨界冷却
速度の70%未満の場合には未浸炭層のマルテンサイト
変態率が低くなりすぎて強度が低下するという問題があ
り,一方,130%を超える場合には,熱処理歪みが生
じやすくなるという問題がある。
【0032】次に,請求項6に記載の発明のように,炭
素を0.24〜0.30重量%含有していると共にジョ
ミニー試験により得られる1/2インチ深さ焼入れ性能
値が33〜50ポイントである素材を浸炭処理した後,
該素材をその浸炭層の臨界冷却速度近傍の冷却速度によ
って急冷することにより浸炭焼入れ処理を行うことによ
り製造したこを特徴とする浸炭焼入れ鋼部材がある。
素を0.24〜0.30重量%含有していると共にジョ
ミニー試験により得られる1/2インチ深さ焼入れ性能
値が33〜50ポイントである素材を浸炭処理した後,
該素材をその浸炭層の臨界冷却速度近傍の冷却速度によ
って急冷することにより浸炭焼入れ処理を行うことによ
り製造したこを特徴とする浸炭焼入れ鋼部材がある。
【0033】この浸炭焼入れ鋼部材は,上記のごとく,
優れた強度特性を維持しつつ,寸法精度に優れているの
で,例えば歯車のような強度特性と寸法精度の両者に厳
しい要求がなされている様々な用途に適用することがで
きる。
優れた強度特性を維持しつつ,寸法精度に優れているの
で,例えば歯車のような強度特性と寸法精度の両者に厳
しい要求がなされている様々な用途に適用することがで
きる。
【0034】
【発明の実施の形態】実施形態例1 本発明の実施形態例にかかる浸炭焼入れ鋼部材の製造方
法につき,図1,図2を用いて説明する。本例において
は,表1に示すごとく,炭素を0.24〜0.30重量
%含有していると共にジョミニー試験により得られる1
/2インチ深さ焼入れ性能値(J値)が33〜50ポイ
ントである素材を用いた。そして,これを浸炭処理した
後,該素材をその浸炭層の臨界冷却速度R0近傍の冷却
速度R1によって急冷することにより浸炭焼入れ処理を
行って本発明品E1を製造した。
法につき,図1,図2を用いて説明する。本例において
は,表1に示すごとく,炭素を0.24〜0.30重量
%含有していると共にジョミニー試験により得られる1
/2インチ深さ焼入れ性能値(J値)が33〜50ポイ
ントである素材を用いた。そして,これを浸炭処理した
後,該素材をその浸炭層の臨界冷却速度R0近傍の冷却
速度R1によって急冷することにより浸炭焼入れ処理を
行って本発明品E1を製造した。
【0035】本例における浸炭処理は,浸炭層の炭素濃
度が0.8重量%となるように行った。そして,図1に
示すごとく,浸炭焼入れ時の冷却速度R1は,できる限
り浸炭層の臨界冷却速度R0に近づくように遅くした。
そしてこの冷却速度R1は,実際には500℃/秒より
も遅い速度とした。
度が0.8重量%となるように行った。そして,図1に
示すごとく,浸炭焼入れ時の冷却速度R1は,できる限
り浸炭層の臨界冷却速度R0に近づくように遅くした。
そしてこの冷却速度R1は,実際には500℃/秒より
も遅い速度とした。
【0036】比較のため,同サイズの従来鋼(従来品C
1)である炭素濃度約0.2重量%のSCR420或い
はSCM420(JIS)を浸炭焼入れする場合の冷却
速度R9を図1に併せて示す。この冷却速度R9は50
0℃/秒を超える速い冷却速度であって,これ以下の速
度では十分な強度が得られないという速度である。ま
た,表1に示すごとく,上記SCR420,SCM42
0は従来広く用いられている浸炭用鋼であって,そのJ
値はそれぞれ22〜33,25〜37である。
1)である炭素濃度約0.2重量%のSCR420或い
はSCM420(JIS)を浸炭焼入れする場合の冷却
速度R9を図1に併せて示す。この冷却速度R9は50
0℃/秒を超える速い冷却速度であって,これ以下の速
度では十分な強度が得られないという速度である。ま
た,表1に示すごとく,上記SCR420,SCM42
0は従来広く用いられている浸炭用鋼であって,そのJ
値はそれぞれ22〜33,25〜37である。
【0037】また,本発明品E1においては,図1に示
すごとく,歪み抑制効果を増大させるために,浸炭焼入
れ時の急冷は上記浸炭層のMs点(Ms1)近傍の保持
温度まで行い,次いで,この保持温度に所定時間保持し
た後,常温まで冷却するという2段焼入れを行った。本
例の保持温度は,Ms1−10℃の温度に設定した。ま
た,従来品C1についても,2段焼入れを行った。この
場合の保持温度も,その浸炭層のMs点(Ms9)−1
0℃に設定して行った。なお,図1上においては,Ms
1とMs9を同じ位置に示した。
すごとく,歪み抑制効果を増大させるために,浸炭焼入
れ時の急冷は上記浸炭層のMs点(Ms1)近傍の保持
温度まで行い,次いで,この保持温度に所定時間保持し
た後,常温まで冷却するという2段焼入れを行った。本
例の保持温度は,Ms1−10℃の温度に設定した。ま
た,従来品C1についても,2段焼入れを行った。この
場合の保持温度も,その浸炭層のMs点(Ms9)−1
0℃に設定して行った。なお,図1上においては,Ms
1とMs9を同じ位置に示した。
【0038】このような条件で浸炭焼入れ処理行った結
果,本発明品E1の歪みは従来品C1の場合より大幅に
軽減され,かつ,機械的強度も十分な特性が得られた。
一方,従来品C1の場合には,機械的強度は得られたも
のの,歪みが比較的大きくなった。
果,本発明品E1の歪みは従来品C1の場合より大幅に
軽減され,かつ,機械的強度も十分な特性が得られた。
一方,従来品C1の場合には,機械的強度は得られたも
のの,歪みが比較的大きくなった。
【0039】この理由を図2を用いて考察する。同図
は,横軸に時間を,縦軸に温度をとり,本発明品E1及
び比較品C1の未浸炭部におけるC.C.T.曲線S1
及びS9を示したものである。また,同図には,上記浸
炭層の冷却速度R1及びR9で冷却した場合の未浸炭部
の冷却速度R12及びR92と,未浸炭部の臨界冷却点
P1及びP9も示した。ここでいう臨界冷却点とは,臨
界冷却速度線とMs点との交点を示している。
は,横軸に時間を,縦軸に温度をとり,本発明品E1及
び比較品C1の未浸炭部におけるC.C.T.曲線S1
及びS9を示したものである。また,同図には,上記浸
炭層の冷却速度R1及びR9で冷却した場合の未浸炭部
の冷却速度R12及びR92と,未浸炭部の臨界冷却点
P1及びP9も示した。ここでいう臨界冷却点とは,臨
界冷却速度線とMs点との交点を示している。
【0040】同図に示すごとく,本発明品E1の素材の
未浸炭層におけるMs点(Ms12)は従来品C1の未
浸炭部におけるMs点(Ms92)よりも大幅に低い温
度となり,かつ,未浸炭層の臨界冷却速度は従来鋼の未
浸炭層の臨界冷却速度よりも遅い速度となる。
未浸炭層におけるMs点(Ms12)は従来品C1の未
浸炭部におけるMs点(Ms92)よりも大幅に低い温
度となり,かつ,未浸炭層の臨界冷却速度は従来鋼の未
浸炭層の臨界冷却速度よりも遅い速度となる。
【0041】そのため,本発明品E1の場合には,浸炭
焼入れ時の急冷を上記のごとく浸炭層の臨界冷却速度R
0近傍の冷却速度にまで遅くして,未浸炭部の冷却速度
を冷却速度R12まで遅くしても,未浸炭層の焼入れ効
果をある程度以上維持することができる。そしてまた,
本発明品E1の素材は,上記J値が上記の範囲内にある
ため,上記焼入れ効果によって優れた強度特性を得るこ
とができる。
焼入れ時の急冷を上記のごとく浸炭層の臨界冷却速度R
0近傍の冷却速度にまで遅くして,未浸炭部の冷却速度
を冷却速度R12まで遅くしても,未浸炭層の焼入れ効
果をある程度以上維持することができる。そしてまた,
本発明品E1の素材は,上記J値が上記の範囲内にある
ため,上記焼入れ効果によって優れた強度特性を得るこ
とができる。
【0042】一方,従来品C1における未浸炭層は,そ
のMs点(Ms92)が本発明品E1の場合より高くか
つその臨界冷却速度も速いため,浸炭層の臨界冷却速度
R0近傍の冷却速度まで冷却速度を遅めて未浸炭層の冷
却速度を上記R12と同等にすると,内部組織(未浸炭
層)の焼入れ効果が減少し,内部強度不足を起こしてし
まう。そのため,従来においては,冷却速度を浸炭層の
臨界冷却速度R0近傍まで遅くすることができない。
のMs点(Ms92)が本発明品E1の場合より高くか
つその臨界冷却速度も速いため,浸炭層の臨界冷却速度
R0近傍の冷却速度まで冷却速度を遅めて未浸炭層の冷
却速度を上記R12と同等にすると,内部組織(未浸炭
層)の焼入れ効果が減少し,内部強度不足を起こしてし
まう。そのため,従来においては,冷却速度を浸炭層の
臨界冷却速度R0近傍まで遅くすることができない。
【0043】それ故,本発明品E1の場合には,強度特
性を維持しつつ従来よりも冷却速度R1を浸炭層の臨界
冷却速度R0近傍の速度まで遅くすることができる。そ
して,この冷却速度の低下によって,冷却速度に起因す
る熱歪みの発生を大幅に抑制することができる。
性を維持しつつ従来よりも冷却速度R1を浸炭層の臨界
冷却速度R0近傍の速度まで遅くすることができる。そ
して,この冷却速度の低下によって,冷却速度に起因す
る熱歪みの発生を大幅に抑制することができる。
【0044】
【表1】
【0045】実施形態例2 本例においては,実施形態例1における浸炭焼入れ時の
冷却速度を種々変更し,歪み量,表面硬度,内部硬度へ
の影響を測定した。なお,本例においては,炭素量0.
27重量%,上記J値が40ポイントのものを本発明品
の代表として用いた(本発明品E2)。また,比較とし
てはSCR420(従来品C2)を用いた。そして,冷
却速度以外の条件は上記と同様とし,以下のように各評
価項目について測定を行った。
冷却速度を種々変更し,歪み量,表面硬度,内部硬度へ
の影響を測定した。なお,本例においては,炭素量0.
27重量%,上記J値が40ポイントのものを本発明品
の代表として用いた(本発明品E2)。また,比較とし
てはSCR420(従来品C2)を用いた。そして,冷
却速度以外の条件は上記と同様とし,以下のように各評
価項目について測定を行った。
【0046】まず,冷却速度と歪み量との関係を図3に
示す。同図は,横軸に浸炭焼入れ時の浸炭層の冷却速度
(℃/秒)を,縦軸に歪み量(μm)をとったものであ
る。ここで,歪み量の測定は,専用の精度測定器により
行った。同図より知られるごとく,本発明品E2と従来
品C2はいずれも冷却速度が低いほど歪み量が低下する
という結果となった。
示す。同図は,横軸に浸炭焼入れ時の浸炭層の冷却速度
(℃/秒)を,縦軸に歪み量(μm)をとったものであ
る。ここで,歪み量の測定は,専用の精度測定器により
行った。同図より知られるごとく,本発明品E2と従来
品C2はいずれも冷却速度が低いほど歪み量が低下する
という結果となった。
【0047】次に,冷却速度と表面硬度との関係を図4
に示す。同図は,横軸に浸炭層の冷却速度(℃/秒)
を,縦軸に表面硬度(Hv)をとったものである。ここ
で,表面硬度の測定は,ビッカース(Hv)硬度計に
て,10kgfの測定荷重を表面に与えて行った。同図
より知られるごとく,従来鋼C2は冷却速度が500℃
/秒以下の領域において表面硬度が大幅に低下した。一
方,本発明品E2は,350℃/秒以下にまで冷却速度
を遅くしても,高い表面硬度を維持することができた。
に示す。同図は,横軸に浸炭層の冷却速度(℃/秒)
を,縦軸に表面硬度(Hv)をとったものである。ここ
で,表面硬度の測定は,ビッカース(Hv)硬度計に
て,10kgfの測定荷重を表面に与えて行った。同図
より知られるごとく,従来鋼C2は冷却速度が500℃
/秒以下の領域において表面硬度が大幅に低下した。一
方,本発明品E2は,350℃/秒以下にまで冷却速度
を遅くしても,高い表面硬度を維持することができた。
【0048】次に,冷却速度と内部硬度との関係を図5
に示す。同図は,横軸に浸炭層の冷却速度(℃/秒)
を,縦軸に内部硬度(Hv)をとったものである。ここ
で,内部硬度の測定は,ビッカース(Hv)硬度計に
て,20kgfの測定荷重を試料切断断面の未浸炭部中
央に与えて行った。同図より知られるごとく,本発明品
E2は,測定域全域にわたって,比較品C2よりも高い
内部硬度を示した。
に示す。同図は,横軸に浸炭層の冷却速度(℃/秒)
を,縦軸に内部硬度(Hv)をとったものである。ここ
で,内部硬度の測定は,ビッカース(Hv)硬度計に
て,20kgfの測定荷重を試料切断断面の未浸炭部中
央に与えて行った。同図より知られるごとく,本発明品
E2は,測定域全域にわたって,比較品C2よりも高い
内部硬度を示した。
【0049】以上の結果から,炭素濃度及び上記J値を
上記のごとく規制した素材を用いて,上記のごとく浸炭
層の臨界冷却速度近傍のゆっくりとした冷却速度によっ
て浸炭焼入れすることが,優れた強度特性を維持しつつ
歪みを抑制した鋼部材を得るために非常に有効な手段で
あることが分かる。
上記のごとく規制した素材を用いて,上記のごとく浸炭
層の臨界冷却速度近傍のゆっくりとした冷却速度によっ
て浸炭焼入れすることが,優れた強度特性を維持しつつ
歪みを抑制した鋼部材を得るために非常に有効な手段で
あることが分かる。
【0050】
【発明の効果】上述のごとく,本発明によれば,優れた
強度特性を維持しつつ,熱処理歪みを抑制することがで
きる,浸炭焼き入れ鋼部材及びその製造方法を提供する
ことができる。
強度特性を維持しつつ,熱処理歪みを抑制することがで
きる,浸炭焼き入れ鋼部材及びその製造方法を提供する
ことができる。
【図1】実施形態例1における,浸炭焼入れ時の浸炭層
の冷却速度を示す説明図。
の冷却速度を示す説明図。
【図2】実施形態例1における,浸炭焼入れ時の未浸炭
層の冷却速度を示す説明図。
層の冷却速度を示す説明図。
【図3】実施形態例2における,冷却速度と歪み量との
関係を示す説明図。
関係を示す説明図。
【図4】実施形態例2における,冷却速度と表面硬度と
の関係を示す説明図。
の関係を示す説明図。
【図5】実施形態例2における,冷却速度と内部硬度と
の関係を示す説明図。
の関係を示す説明図。
R0...臨界冷却速度, R1,R9...浸炭層の冷却速度, R12,R92...未浸炭層の冷却速度, Ms1,Ms9...浸炭層のMs点, Ms12,Ms92...未浸炭層のMs点,
Claims (6)
- 【請求項1】 炭素を0.24〜0.30重量%含有し
ていると共にジョミニー試験により得られる1/2イン
チ深さ焼入れ性能値が33〜50ポイントである素材を
浸炭処理した後,該素材をその浸炭層の臨界冷却速度近
傍の冷却速度によって急冷することにより浸炭焼入れ処
理を行うことを特徴とする浸炭焼入れ鋼部材の製造方
法。 - 【請求項2】 請求項1において,上記浸炭焼入れ時の
上記冷却速度は,500℃/秒以下であることを特徴と
する浸炭焼入れ鋼部材の製造方法。 - 【請求項3】 請求項1又は2において,上記浸炭焼入
れ時の上記急冷は上記浸炭層のMs点近傍の保持温度ま
で行い,次いで,該保持温度に上記素材を所定時間保持
した後,常温まで冷却することを特徴とする浸炭焼入れ
鋼部材の製造方法。 - 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項において,
上記浸炭処理後の上記素材は,その浸炭層と未浸炭層の
Ms点の差が200℃以下であることを特徴とする浸炭
焼入れ鋼部材の製造方法。 - 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項において,
上記素材は予め歯車形状に成形してあることを特徴とす
る浸炭焼入れ鋼部材の製造方法。 - 【請求項6】 炭素を0.24〜0.30重量%含有し
ていると共にジョミニー試験により得られる1/2イン
チ深さ焼入れ性能値が33〜50ポイントである素材を
浸炭処理した後,該素材をその浸炭層の臨界冷却速度近
傍の冷却速度によって急冷することにより浸炭焼入れ処
理を行うことにより製造したこを特徴とする浸炭焼入れ
鋼部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12042098A JPH11310824A (ja) | 1998-04-30 | 1998-04-30 | 浸炭焼き入れ鋼部材及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12042098A JPH11310824A (ja) | 1998-04-30 | 1998-04-30 | 浸炭焼き入れ鋼部材及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11310824A true JPH11310824A (ja) | 1999-11-09 |
Family
ID=14785790
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP12042098A Pending JPH11310824A (ja) | 1998-04-30 | 1998-04-30 | 浸炭焼き入れ鋼部材及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11310824A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003056054A1 (fr) * | 2001-12-25 | 2003-07-10 | Aisin Aw Co., Ltd. | Element carbure et trempe et son procede de production |
WO2004059029A1 (ja) * | 2002-12-25 | 2004-07-15 | Aisin Aw Co., Ltd. | 浸炭焼入部材およびその製造方法 |
-
1998
- 1998-04-30 JP JP12042098A patent/JPH11310824A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2003056054A1 (fr) * | 2001-12-25 | 2003-07-10 | Aisin Aw Co., Ltd. | Element carbure et trempe et son procede de production |
JPWO2003056054A1 (ja) * | 2001-12-25 | 2005-05-12 | アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 | 浸炭焼入部材およびその製造方法 |
WO2004059029A1 (ja) * | 2002-12-25 | 2004-07-15 | Aisin Aw Co., Ltd. | 浸炭焼入部材およびその製造方法 |
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