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JPH11213862A - 陰極基体およびその製造方法 - Google Patents

陰極基体およびその製造方法

Info

Publication number
JPH11213862A
JPH11213862A JP1294698A JP1294698A JPH11213862A JP H11213862 A JPH11213862 A JP H11213862A JP 1294698 A JP1294698 A JP 1294698A JP 1294698 A JP1294698 A JP 1294698A JP H11213862 A JPH11213862 A JP H11213862A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
scandium
thin film
film layer
cathode
tungsten
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP1294698A
Other languages
English (en)
Inventor
Eiichiro Uda
英一郎 宇田
Osamu Nakamura
修 中村
Sadao Matsumoto
貞雄 松本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP1294698A priority Critical patent/JPH11213862A/ja
Publication of JPH11213862A publication Critical patent/JPH11213862A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Solid Thermionic Cathode (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高電圧、高周波数条件下でも充分な耐イオン
衝撃性を有し、良好な電子放射特性、さらには良好な低
温動作性を有する陰極基体を提供する。 【解決手段】 多孔質タングステン基板を焼結によって
形成し、多孔質タングステン基板の空孔部に電子放射物
質を溶融含浸させる。多孔質陰極基板に、酸化スカンジ
ウム薄膜層およびタングステン薄膜層をスパッタリング
により順次成膜する。多孔質陰極基体4を装着した含浸
型陰極構体1を陰極線管に組み込み、活性化工程におい
て1200℃から1300℃の温度で1時間から2時間
活性化する。多孔質陰極基体4は、電子放射面側にタン
グステン、スカンジウムおよび酸素を有するとともに、
スカンジウム薄膜を有する。スカンジウム薄膜はスカン
ジウム原子濃度が電子放射面側の表面から深さ方向に向
かって正の濃度勾配を有している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高電流密度動作が
可能な陰極基体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、走査線を増加させ解像度を改善し
たカラー受像管や、超高周波対応受像管の開発が要請さ
れており、また、投写管などにおいても輝度の向上が望
まれている。
【0003】これら解像度の改善あるいは輝度の向上に
対応するためには、陰極からの放出電流密度を従来に対
し大幅に増大させる必要がある。
【0004】ところで含浸型陰極は酸化物陰極に比べて
大きな放射電流密度が得られ、撮像管、進行波管あるい
はクライストロンなどの電子管に使用されている。
【0005】一方、含浸型陰極は、カラー受像管の分野
ではHD−TV管あるいはED−TV管などの特殊用途
のみに限られていたが、近年大型カラー受像管などにも
用いられつつある。
【0006】そして、このような含浸型陰極構体は、陰
極構体にたとえば空孔率15%から20%の多孔質タン
グステンを用い、この陰極構体の空孔部にたとえば酸化
バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)および
酸化アルミニウム(Al2 3 )などの電子放射物質が
含浸され、電子放射面を形成している。さらに、この陰
極基体の電子放射面上に、スパッタリング法などの薄膜
形成手段によりイリジウム(Ir)などの金属薄膜層が
設けられたメタルコート型の含浸型陰極構体が形成され
ている。そして、この含浸型陰極構体は電子管内に装着
され、ヒータによって加熱されることにより、含浸型陰
極構体内に含浸されたたとえばバリウム(Ba)あるい
は酸素(O)などが拡散し、含浸型陰極構体の表面の電
子放射面上に電気二重層が形成されることによって高密
度の電流放射が可能となる。
【0007】ここで、このような電子管用の含浸型陰極
構体として、近年、スカンジウム系の含浸型陰極構体が
注目されている。
【0008】一方、電子管用の含浸型陰極構体は、省電
力の目的から従来に比べコンパクトな構造に形成されて
おり、陰極基体は必然的に厚さおよび直径が制限されて
しまい電子放射物質を充分に含浸させることができな
い。
【0009】また、一般的に含浸型陰極構体の寿命特性
は、電子放射物質の主要成分であるバリウムの蒸発量に
支配され、蒸発によりバリウムが消耗すると陰極基体の
バリウムの単原子層被覆率が減少して、要求される長寿
命特性が得られない。
【0010】これらの理由から、低温動作、高電流密度
動作が可能な含浸型陰極構体の開発が強く要求されてい
る。このような陰極として、酸化スカンジウム(Sc2
03)を分散させた含浸型陰極、あるいは陰極基体表面
にスカンジウム(Sc)化合物を被着したスカンジウム
系の含浸型陰極構体が開発され、このスカンジウム系の
含浸型陰極構体では、動作温度がたとえば900℃から
1000℃で、放出電流密度が数10A/cm2 とな
る。
【0011】また、二極管にスカンジウム系の含浸型陰
極構体を適用した場合、パルス幅5μ秒、周波数50H
zのパルス放射電流の評価では、従来のメタルコート型
の含浸陰極構体の約10倍の放射電流密度を得ることが
でき、放射電流の大幅な向上が期待される。
【0012】ところが、高周波パルスの場合、たとえば
周波数を受像管などで一般に使用される15.75kH
zとすると、従来のメタルコート型と同等程度の放射電
流しか得られない。つまり、スカンジウム系の含浸型陰
極構体には、デューティの低い動作条件ではカソード温
度が比較的低温でも充分なエミッションを得ることがで
きるが、高デューティ領域の動作になると、この低温動
作効果が減少し、メタルコート型の含浸型陰極構体とス
カンジウム系の含浸型陰極構体との特性に顕著な差がな
い。
【0013】この原因としては、低デューティ動作で
は、陰極基体の多孔質基体の空孔部から拡散するバリウ
ム、酸素、スカンジウムの供給が充分であるために、陰
極基体の電子放射面上に電気二重層が保たれているが、
高デューティの動作では、この電気二重層がイオン衝撃
を受けて破壊されていく。したがって、低デューティ動
作領域で優位であったスカンジウム系陰極が、高デュー
ティ動作領域でメタルコート型と差異がなくなるのは、
スカンジウムの拡散速度の遅さに起因すると考えられ
る。そして、スカンジウム系の含浸型陰極構体をオージ
ェ電子分光により表面解析をしたところ、イオン衝撃を
受けると表面のスカンジウムが消失し、電子放射の良好
なスカンジウム濃度に回復するまでに時間を要すること
がわかった。
【0014】また、スカンジウム系の含浸型陰極が、高
電圧、高周波数動作条件の下で充分な耐イオン衝撃性を
示すようにするために、電子放射面上に電気二重層を構
成する酸素、スカンジウム、バリウムが、イオン衝撃後
に非常に早い回復を示すような改良表面を作るものとし
て、たとえば特開昭63−91924号公報に記載の構
成が知られている。この特開昭63−91924号公報
には、タングステン(W)、二酸化タングステン(WO
2 )、酸化スカンジウム(Sc2 3 )を陰極基体の電
子放出側の表面に同時にスパッタリングすることによ
り、Sc2 3 O12、Sc6 WO12などの複合酸化物薄
膜を形成させ、これらの複合酸化物は陰極動作温度でf
ree Scを有効に遊離することができ、このfre
e Scの高い拡散速度のために、耐イオン衝撃性を改
善させているが、これらの改良によっても実用化される
までには至っていない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、従来の
スカンジウム系の含浸型陰極構体では、高電圧、高周波
数の条件下で充分な耐イオン衝撃性が得られない。すな
わち、高周波数動作でイオン衝撃を受けると、消失した
スカンジウムの回復が遅く、低温動作性が低下する問題
を有している。
【0016】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもの
で、高電圧、高周波数条件下でも充分な耐イオン衝撃性
を有し、良好な電子放射特性、さらには良好な低温動作
性を有する陰極基体およびその製造方法を提供すること
を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は、電子放射物質
が含浸された電子放射面と、金属スカンジウム、スカン
ジウム化合物およびスカンジウム合金の少なくともいず
れかを含み、少なくともある深さ区間でスカンジウム原
子濃度が前記電子放射面側から深さ方向に向かって正の
濃度勾配であるスカンジウム薄膜層とを具備している。
【0018】そして、陰極基体中のスカンジウム薄膜層
のスカンジウム原子濃度が電子放射側から深さ方向に向
かって正の勾配で、スカンジウムの拡散は濃度勾配に比
例して高濃度領域から低濃度領域へと拡散するので、陰
極基体の内部から電子放射面側に向けてスカンジウムが
拡散し、積極的にスカンジウムが供給され、また、動作
中のスカンジウムの熱拡散によって陰極表面の濃度勾配
は減少するため、濃度勾配により内部のスカンジウムを
スカンジウムの供給源として、長寿命化する。
【0019】また、本発明は、陰極基板の表面に金属ス
カンジウム、スカンジウム化合物およびスカンジウム合
金のいずれかを含むスカンジウム薄膜層を形成し、この
スカンジウム薄膜層を形成した後に高融点金属の高融点
金属薄膜層を形成し、この高融点金属薄膜層を形成した
陰極基板を高温で加熱するものである。
【0020】そして、たとえば電子管を活性化させる活
性化工程では、残留ガスの中で陰極基体を動作させなけ
ればならずイオン衝撃を受けるが、活性化工程の初期時
にはイオン衝撃に弱いスカンジウム薄膜層が高融点金属
薄膜層より内部に設けられており、スカンジウム薄膜層
がイオン衝撃を受けることなく活性化工程を通過するこ
とができ、また、活性化工程中で加熱されることでスカ
ンジウム層が熱拡散し、活性化工程の終了時に電子放射
側の表面にスカンジウム原子が現れるようにできる。
【0021】さらに、高融点金属薄膜層を形成した後
に、先に形成した金属スカンジウム、スカンジウム化合
物およびスカンジウム合金のいずれかを含むスカンジウ
ム薄膜層の膜厚以下で金属スカンジウム、スカンジウム
化合物およびスカンジウム合金のいずれかを含むスカン
ジウム薄膜層を形成し、このスカンジウム薄膜層を形成
した後に、先に形成した高融点金属薄膜層の膜厚以下で
高融点金属薄膜層を形成するものである。
【0022】そして、動作中にスカンジウムの熱拡散に
よって陰極表面近傍の濃度勾配は減少していくが、内部
にスカンジウム薄膜層を供給源として設け、この供給層
となるスカンジウム薄膜層を深さ方向に複数設け、各ス
カンジウム薄膜層の厚さは内部の層ほど厚くなるように
するとともに、各スカンジウム薄膜層間の高融点薄膜金
属層の厚さも内部に従って厚くすることにより各スカン
ジウム薄膜層の間隔が内部になるに従って長くなり、濃
度勾配を駆動力としてスカンジウムをより長期にわたり
電子放射側の表面に供給し、長期間に亘ってスカンジウ
ムを供給でき、長寿命化する。
【0023】またさらに、スカンジウム薄膜層および高
融点薄膜金属層は、複数回繰り返して形成されるもので
ある。
【0024】そしてまた、金属スカンジウム、スカンジ
ウム化合物およびスカンジウム合金を含むスカンジウム
薄膜層は、酸化スカンジウム(Sc2 3 )を含み、高
融点金属薄膜層は、タングステン(W)を含むものであ
る。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態の含
浸型陰極構体を図面を参照して説明する。
【0026】図1に示すように、含浸型陰極構体1は、
両端が開口した筒状の陰極スリーブ2を有し、この陰極
スリーブ2の一端部の内側に、開口とほぼ同一面で凹面
が上方に向いたカップ状固定部材3が配設され、このカ
ップ状固定部材3内に電子放射物質が含浸された電子放
射面を上面にした多孔質陰極基体4が固定され、陰極ス
リーブ2内のカップ状固定部材3には、多孔質陰極基体
4を加熱するヒータ5が配設されている。なお、多孔質
陰極基体4は、多孔質タングステン(W)で構成され、
空孔部にはスカンジウム(Sc)が含浸されるととも
に、たとえば酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム
(CaO)および酸化アルミニウム(Al2 3 )がB
aO:CaO:Al2 3 =4:1:1のモル比の電子
放射物質が含浸されている。そして、この多孔質陰極基
体4は、電子放射面側にタングステン(W)、スカンジ
ウム(Sc)および酸素(O)を有するとともに、スカ
ンジウム薄膜を有し、このスカンジウム薄膜はスカンジ
ウム原子濃度が電子放射面側の表面から深さ方向に向か
って正の濃度勾配を有している。また、陰極スリーブ2
の外側には、外周面と所定間隔を保持して筒状ホルダ6
が陰極スリーブ2と同軸上に配設され、この筒状ホルダ
6の上面には開口7が形成され、この開口7には、複数
個、たとえば3個の短冊状のストラップ8が取り付けら
れ、このストラップ8により陰極スリーブ2を保持して
いる。さらに、筒状ホルダ6の開口7には内方に向けて
突出した張出部9が形成され、この張出部9には陰極ス
リーブ2と同軸状の遮蔽筒11がL字状の支持体12にて3
箇所で取り付けられている。なお、これら支持体12は、
開口7内でストラップ8と交互に位置している。
【0027】さらに、この含浸型陰極構体1は支持体15
で第1グリッド16およびその他図示しないグリッドなど
とともにボンドガラス17にて保持され、多孔質陰極基体
4が第1グリッド16に形成された照射孔18に対向して配
設され、電子銃19を形成し電子管内に搭載される。
【0028】次に、多孔質陰極基体4の製造方法につい
て説明する。
【0029】まず、粒径3μmのタングステン粒子を有
する空孔率約17%の多孔質タングステン基板を焼結に
よって形成し、この多孔質タングステン基板の空孔部に
BaO:CaO:Al2 3 =4:1:1のモル比の混
合物の電子放射物質を、H2雰囲気中で1700℃で約
10分間加熱して溶融含浸させる。
【0030】そして、この多孔質陰極基板に、酸化スカ
ンジウム薄膜層およびタングステン薄膜層をスパッタリ
ングにより順次成膜する。最初に、酸化スカンジウム
(Sc2 3 )をターゲット材として、スパッタガスに
1vol.%の酸素(O2 )を混合したアルゴン(A
r)を用い、あらかじめ測定したスパッタ速度の条件に
従って酸化スカンジウムを10オングストロームの膜厚
にスパッタリングする。続いて、タングステン(W)を
ターゲット材として、スパッタガスにアルゴン(Ar)
を用い、同様にあらかじめ測定したスパッタ速度の条件
に従ってタングステンを200オングストロームの膜厚
にスパッタリングする。
【0031】このようにして作製した多孔質陰極基体4
が装着された含浸型陰極構体1を陰極線管に組み込み、
活性化工程において1200℃から1300℃の温度で
1時間から2時間活性化する。なお、ここでの温度およ
び時間は、前後の工程における熱履歴を考えて細かく調
整する必要がある。
【0032】そして、この陰極線管を用いて、多孔質陰
極基体4および第1グリッド16に印加電圧300V、パ
ルス幅5μsec、パルス周期50Hzのパルスを印加
し、二極管動作で特性を評価した。
【0033】その結果得られた放射電流密度は、陰極動
作温度1300Kで120A/cm2 、1150Kで3
0A/cm2 であり、従来の陰極線管で得られる放射電
流密度は動作温度1300Kで20A/cm2 程度なの
で、動作温度を100K下げても従来以上の性能が得ら
れる。
【0034】また、この陰極線管を陰極動作温度を11
50Kとして通常の陰極線管の使用条件で連続動作して
寿命試験を行なったが、5000時間を経ても陰極線管
の特性の低下は見られなかった。
【0035】なお、酸化スカンジウム薄膜層の膜厚は1
0オングストロームないし50オングストローム、より
好適には10オングストロームないし20オングストロ
ーム、タングステン薄膜層の膜厚は100オングストロ
ームないし500オングストロームストローム、より好
適には100オングストロームないし200オングスト
ロームの範囲内であれば、同様の効果を得ることができ
る。
【0036】また、酸化スカンジウム薄膜層が薄くなり
すぎると初期電子放出特性が悪化し、同時に陰極の寿命
も短くなる。反対に、酸化スカンジウム薄膜層が厚くな
りすぎると多孔質陰極基体4の表面のスカンジウム濃度
が高くなりすぎ、電子放出特性が悪化する。一方、タン
グステン薄膜層は薄すぎると有効なスカンジウム濃度勾
配を形成することができず、厚すぎると表面にスカンジ
ウムを出現させるために極めて高い温度あるいは長い時
間を要し、製造が難しくなる。
【0037】次に、他の実施の形態の多孔質陰極基体4
の製造方法について説明する。なお、構成については、
図1に示す含浸型陰極構体1の多孔質陰極基体4と同様
である。
【0038】まず、粒径3μmのタングステン粒子を有
する空孔率約17%の多孔質タングステン基板を焼結に
よって形成し、この多孔質タングステン基板の空孔部に
BaO:CaO:Al2 3 =4:1:1のモル比の混
合物の電子放射物質を、H2雰囲気中で1700℃で約
10分間加熱して溶融含浸させる。
【0039】そして、この多孔質陰極基板に、酸化スカ
ンジウム薄膜層およびタングステン薄膜層を二層ずつス
パッタリングにより成膜する。最初に、酸化スカンジウ
ム(Sc2 3 )をターゲット材として、スパッタガス
に1vol.%の酸素(O2)を混合したアルゴン(A
r)を用い、あらかじめ測定したスパッタ速度の条件に
従って酸化スカンジウムを20オングストロームの膜厚
にスパッタリングする。続いて、タングステン(W)を
ターゲット材として、スパッタガスにアルゴン(Ar)
を用い、同様にあらかじめ測定したスパッタ速度の条件
に従ってタングステンを800オングストロームの膜厚
でスパッタリングする。さらに、同様の条件で酸化スカ
ンジウムを前回の膜厚より薄い10オングストロームの
膜厚で形成し、タングステンを同様に前回の膜厚より薄
い400オングストロームの膜厚で形成する。
【0040】このようにして作製した多孔質陰極基体4
が装着された含浸型陰極構体1を陰極線管に組み込み、
活性化工程において1200℃から1300℃の温度で
1時間から2時間活性化する。
【0041】そして、上述と同じ条件で二極管動作特性
を評価した。
【0042】その結果得られた放射電流密度は、陰極動
作温度1300Kで70A/cm2、1200Kで30
A/cm2 であった。
【0043】また、この陰極線管を陰極動作温度を12
00Kとして通常の陰極線管の使用条件で連続動作して
寿命試験を行なったが、8000時間を経ても陰極線管
の特性の低下は見られなかった。
【0044】なお、このように酸化スカンジウム薄膜層
とタングステン薄膜層を各2層ずつ形成する場合には、
酸化スカンジウム薄膜層の膜厚は1層目が20オングス
トロームないし60オングストローム、2層目が10オ
ングストロームないし30オングストローム、タングス
テン薄膜層の膜厚は1層目が400オングストロームな
いし1200オングストロームストローム、2層目が2
00オングストロームないし600オングストロームの
範囲内で、電子放射面の表面側に向けて薄くすれば、同
様の効果を得ることができる。
【0045】さらに、他の実施の形態の多孔質陰極基体
4の製造方法について説明する。なお、この構成につい
ても、図1に示す含浸型陰極構体1の多孔質陰極基体4
と同様である。
【0046】まず、粒径3μmのタングステン粒子を有
する空孔率約17%の多孔質タングステン基板を焼結に
よって形成し、この多孔質タングステン基板の空孔部に
BaO:CaO:Al2 3 =4:1:1のモル比の混
合物の電子放射物質を、H2雰囲気中で1700℃で約
10分間加熱して溶融含浸させる。
【0047】そして、この多孔質陰極基板に、酸化スカ
ンジウム薄膜層およびタングステン薄膜層を三層ずつス
パッタリングにより成膜する。最初に、酸化スカンジウ
ム(Sc2 3 )をターゲット材として、スパッタガス
に1vol.%の酸素(O2)を混合したアルゴン(A
r)を用い、あらかじめ測定したスパッタ速度の条件に
従って酸化スカンジウムを40オングストロームの膜厚
にスパッタリングする。続いて、タングステン(W)を
ターゲット材として、スパッタガスにアルゴン(Ar)
を用い、同様にあらかじめ測定したスパッタ速度の条件
に従ってタングステンを1200オングストロームの膜
厚でスパッタリングする。さらに、同様の条件で酸化ス
カンジウムを前回の膜厚より薄い20オングストローム
の膜厚で形成し、タングステンを同様に前回の膜厚より
薄い800オングストロームの膜厚で形成し、酸化スカ
ンジウムを前回の膜厚より薄い10オングストロームの
膜厚で形成し、タングステンを同様に前回の膜厚より薄
い400オングストロームの膜厚で形成する。
【0048】このようにして作製した多孔質陰極基体4
が装着された含浸型陰極構体1を陰極線管に組み込み、
活性化工程において1200℃から1300℃の温度で
1時間から2時間活性化する。
【0049】そして、活性化工程を通過した後の多孔質
陰極基体4の表面を、イオンエッチングを併用したオー
ジェ電子分光法によって分析することにより、スカンジ
ウム原子の深さ方向の濃度分布を測定した。スカンジウ
ムの原子濃度はその深さにおけるスカンジウム(S
c)、タングステン(W)、酸素(O)の信号強度に所
定の感度係数をかけ、その比から求める。
【0050】その結果、図2に示すように、多孔質陰極
基体4の表面から深さ方向に向かって濃度の高くなる領
域があることが認められ、多孔質陰極基体4の表面から
深さ方向に向かって濃度の高くなる領域が2領域あるこ
とが認められる。すなわち、多孔質陰極基体4の表面に
近い領域は動作寿命後期には拡散により消滅してしま
い、多孔質陰極基体4の表面から遠いほうにあった濃度
勾配が多孔質陰極基体4の表面まで拡散してきて表面の
スカンジウム供給の駆動力になると考えられる。
【0051】そして、上述と同じ条件で二極管動作特性
を評価した。
【0052】その結果得られた放射電流密度は、陰極動
作温度1300Kで50A/cm2、1200Kで30
A/cm2 であった。
【0053】また、この陰極線管を陰極動作温度を12
20Kとして通常の陰極線管の使用条件で連続動作して
寿命試験を行なうとともに、動作温度1220Kでの二
極管動作特性を併せて評価した。
【0054】その結果、図3に示すように、放出電流密
度は寿命試験開始から多少の変動はあるものの、試験時
間10000時間まで寿命試験開始時の放出電流密度を
保っている。
【0055】なお、このように酸化スカンジウム薄膜層
とタングステン薄膜層を各3層ずつ形成する場合には、
酸化スカンジウム薄膜層の膜厚は1層目が40オングス
トロームないし120オングストローム、2層目が20
オングストロームないし60オングストローム、3層目
が10オングストロームないし30オングストローム、
タングステン薄膜層の膜厚は1層目が800オングスト
ロームないし2400オングストロームストローム、2
層目が400オングストロームないし1200オングス
トロームストローム、3層目が200オングストローム
ないし600オングストロームの範囲内で、電子放射面
の表面側に向けて薄くすれば、同様の効果を得ることが
できる。
【0056】また、実験によれば、金属スカンジウム、
スカンジウム化合物あるいはスカンジウム合金を含むス
カンジウム薄膜層には、金属スカンジウム(Sc)のほ
か、酸化スカンジウム(Sc2 3 )、水素化スカンジ
ウム(ScH2 )、レニウムースカンジウム(Re−S
c)合金なども用いることができ、高融点金属薄膜層に
は、タングステン(W)のほか、モリブデン(Mo)を
用いることができる。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、陰極基体中のスカンジ
ウム薄膜層のスカンジウム原子濃度が電子放射側から深
さ方向に向かって正の勾配で、スカンジウムの拡散は濃
度勾配に比例して高濃度領域から低濃度領域へと拡散す
るので、陰極基体の内部から電子放射面側に向けてスカ
ンジウムが拡散し、積極的にスカンジウムが供給できる
とともに、動作中のスカンジウムの熱拡散によって陰極
表面の濃度勾配は減少するため、濃度勾配により内部の
スカンジウムをスカンジウムの供給源とするので、高電
圧、高周波数条件下でも充分な耐イオン衝撃性を示し、
良好な電子放出特性にでき、良好な電子放出特性を維持
しつつも低温動作性が向上し、長寿命化できる。
【0058】そして、たとえば電子管を活性化させる活
性化工程では、残留ガスの中で陰極基体を動作させなけ
ればならずイオン衝撃を受けるが、活性化工程の初期時
にはイオン衝撃に弱いスカンジウム薄膜層が高融点金属
薄膜層より内部に設けられており、スカンジウム薄膜層
がイオン衝撃を受けることなく活性化工程を通過するこ
とができ、また、活性化工程中で加熱されることでスカ
ンジウム層が熱拡散し、活性化工程の終了時に電子放射
側の表面にスカンジウム原子が現れ、高電圧、高周波数
条件下でも充分な耐イオン衝撃性を示し、良好な電子放
出特性にでき、良好な電子放出特性を維持しつつも低温
動作性が向上し、長寿命化できる。
【0059】そして、動作中にスカンジウムの熱拡散に
よって陰極表面近傍の濃度勾配は減少していくが、内部
にスカンジウム薄膜層を供給源として設け、この供給層
となるスカンジウム薄膜層を深さ方向に複数設け、各ス
カンジウム薄膜層の厚さは内部の層ほど厚くなるように
するとともに、各スカンジウム薄膜層間の高融点薄膜金
属層の厚さも内部に従って厚くすることにより各スカン
ジウム薄膜層の間隔が内部になるに従って長くなり、濃
度勾配を駆動力としてスカンジウムをより長期にわたり
電子放射側の表面に供給し、長期間に亘ってスカンジウ
ムを供給でき、長寿命化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の含浸型陰極構体を示す
一部を切り欠いた側面図である。
【図2】同上他の含浸型陰極構体の表面から深さ方向に
対するスカンジウム原子濃度分布を示すグラフである。
【図3】同上他の含浸型陰極構体の寿命試験時間と放射
電流密度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
4 多孔質陰極基体

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子放射物質が含浸された電子放射面
    と、 金属スカンジウム、スカンジウム化合物およびスカンジ
    ウム合金の少なくともいずれかを含み、少なくともある
    深さ区間でスカンジウム原子濃度が前記電子放射面側か
    ら深さ方向に向かって正の濃度勾配であるスカンジウム
    薄膜層とを具備したことを特徴とした陰極基体。
  2. 【請求項2】 陰極基板の表面に金属スカンジウム、ス
    カンジウム化合物およびスカンジウム合金のいずれかを
    含むスカンジウム薄膜層を形成し、 このスカンジウム薄膜層を形成した後に高融点金属の高
    融点金属薄膜層を形成し、 この高融点金属薄膜層を形成した陰極基板を高温で加熱
    することを特徴とする陰極基体の製造方法。
  3. 【請求項3】 高融点金属薄膜層を形成した後に、先に
    形成した金属スカンジウム、スカンジウム化合物および
    スカンジウム合金のいずれかを含むスカンジウム薄膜層
    の膜厚以下で金属スカンジウム、スカンジウム化合物お
    よびスカンジウム合金のいずれかを含むスカンジウム薄
    膜層を形成し、 このスカンジウム薄膜層を形成した後に、先に形成した
    高融点金属薄膜層の膜厚以下で高融点金属薄膜層を形成
    することを特徴とする請求項2記載の陰極基体の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 スカンジウム薄膜層および高融点薄膜金
    属層は、複数回繰り返して形成されることを特徴とする
    請求項3記載の陰極基体の製造方法。
  5. 【請求項5】 金属スカンジウム、スカンジウム化合物
    およびスカンジウム合金を含むスカンジウム薄膜層は、
    酸化スカンジウム(Sc2 3 )を含み、 高融点金属薄膜層は、タングステン(W)を含むことを
    特徴とする請求項2ないし4いずれか記載の陰極基体の
    製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104505697A (zh) * 2014-11-01 2015-04-08 朱惠冲 抗溅射激光泵浦稀土合金热电子发射阴极贴片及其制备方法

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