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JPH11132082A - 多気筒エンジンの回転方向判別方法及びその装置 - Google Patents

多気筒エンジンの回転方向判別方法及びその装置

Info

Publication number
JPH11132082A
JPH11132082A JP9309458A JP30945897A JPH11132082A JP H11132082 A JPH11132082 A JP H11132082A JP 9309458 A JP9309458 A JP 9309458A JP 30945897 A JP30945897 A JP 30945897A JP H11132082 A JPH11132082 A JP H11132082A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cylinder
fuel
engine
fuel injection
cylinder pressure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9309458A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaaki Saito
昌明 西頭
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Isuzu Motors Ltd
Original Assignee
Isuzu Motors Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Isuzu Motors Ltd filed Critical Isuzu Motors Ltd
Priority to JP9309458A priority Critical patent/JPH11132082A/ja
Publication of JPH11132082A publication Critical patent/JPH11132082A/ja
Pending legal-status Critical Current

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Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/10Internal combustion engine [ICE] based vehicles
    • Y02T10/40Engine management systems

Landscapes

  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は,筒内圧力を固有番号が付されたセ
ンサで検出することにより,検出したセンサの固有番号
の順から多気筒エンジンの回転方向を判別する。 【解決手段】 クランク角度の1°進行毎に回転方向
判別のフローが実行される。着火気筒データNcは,筒
内圧力センサに付された固有番号に基づいて定められ
る。S60で今回の着火気筒データNcと,前回のフロ
ー実行時の着火気筒データNcoとを比較する。S61
でNcが1であり,Ncoが4である(S62)場合に
は,エンジンの回転は正回転であるので逆転フラグFb
は0にセットされる(S63)が,Ncoが2である
(S64)場合には1にセットされる逆転フラグFbに
基づいて燃料噴射量はゼロに制御されてエンジンが停止
される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,多気筒エンジン
の回転方向判別方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ディーゼルエンジンの排気ガス,エンジ
ン出力,及び燃費の相互間には,ディーゼルエンジンの
特性上,トレードオフの関係がある。例えば,燃料噴射
量が一定であるとした場合の燃料着火時期を取ってみて
も,燃焼初期に大量の混合気が燃焼すると後燃焼で燃焼
する混合気の量が少なくなり,燃焼ガス温度が高くなる
と共に出力は大きくなる傾向にあり,スモークの発生量
は減少するもののNOxの発生量が増加する。一方,燃
焼初期に燃焼する混合気が少なくなると,燃焼ガス温度
が比較的抑えられるのでNOxの発生量が減少するが,
出力が低下し且つ後燃焼で燃焼する混合気の量が多くな
ってスモークの発生量が増加する。
【0003】ディーゼルエンジンにおいては,燃料噴射
制御に関して,燃料噴射圧力の高圧化を図り,且つ燃料
の噴射タイミング及び噴射量等の噴射特性をエンジンの
運転状態に応じて最適に制御する方法として,コモンレ
ール式燃料噴射システムが知られている。コモンレール
式燃料噴射システムは,燃料ポンプによって所定圧力に
加圧された燃料を複数のインジェクタに対して共通する
コモンレールに貯留し,コモンレールに貯留した燃料を
各インジェクタから対応する燃焼室内に噴射する燃料噴
射システムである。コントローラは,加圧された燃料が
各インジェクタにおいてエンジンの運転状態に対して最
適な噴射条件で噴射されるように,コモンレールの燃料
圧と各インジェクタに設けられた制御弁の作動とを制御
している。上記のようなトレードオフの関係がある特性
の下でエンジンの運転を最適に制御するため,コモンレ
ール燃料噴射システムでは,エンジンの運転状態に応じ
て予め決められた燃料噴射量及び燃料噴射時期をマップ
化してそのマップをコントローラに記憶させておき,こ
の記憶された燃料噴射量及び燃料噴射時期から,現在の
エンジンの運転状態に対応した目標燃料噴射量及び目標
燃料噴射時期を求め,求められた目標燃料噴射量及び目
標燃料噴射時期と現在の燃料噴射量及び燃料噴射時期と
の偏差に基づいて,インジェクタの燃料噴射弁を電子的
に制御して,インジェクタに形成された噴孔から燃料を
噴射している。
【0004】しかしながら,各気筒に設けられるインジ
ェクタの燃料噴射性能には,インジェクタの加工誤差や
組立誤差,コモンレールからの分岐管の長さ等の諸要因
によって個体差があるので,各インジェクタにおいて実
際に燃料が噴射される時期(以下,実燃料噴射時期とい
う)を目標噴射時期に一致させることは困難であると共
に,着火遅れの後に実際に燃料が着火する時期(以下,
実燃料着火時期という)についても,目標着火時期に対
してバラツキを生じている。この実燃料噴射時期と実燃
料着火時期とのバラツキは,最適な燃料の噴射及び着火
の条件からずれた条件で燃料の噴射及び着火を行うこと
になるので,排気ガス中に含まれるNOx又はスモーク
の量の増大を招く。特に,エンジンがアイドリング運転
状態にあるときには,エンジン回転数が低いためにエン
ジンの運転状態が不安定であり,燃料噴射時期のバラツ
キは実燃料着火時期のバラツキに大きく影響し,その結
果,排気ガス性能にも大きな影響を及ぼす。
【0005】そこで,ディーゼルエンジンの燃料噴射時
期制御方法或いはその装置として,筒内圧力の変化率を
算出又は検出し,エンジンの燃焼噴射時期を制御するも
のとして,特開昭59−37235号公報,又は特開昭
59−145334号公報に開示されたものがある。
【0006】ところで,ディーゼルエンジンでは,エン
ジンの回転に関する情報の検出には,次のものが含まれ
ている。即ち,これらの情報の検出には,クランク角度
センサが検出する逐次のクランク角度の検出と,各気筒
での圧縮・爆発を含む各行程が順次に巡って行われる際
に気筒判別センサが検出する基準となる気筒の検出と,
逆回転検出センサで検出されるエンジンの逆回転の検出
とが含まれる。クランク角度については,図19に示さ
れているように,クランク軸に取り付けられたクランク
角度検出用の歯車46の歯47(例えば,歯車46の周
囲に10°毎に36歯が形成されている)を,それに対
向して配置されたピックアップ等のクランク角度検出セ
ンサ45で精度よく検出することができる。また,気筒
判別センサ50は,エンジンの1/2の回転速度で回転
するカム軸又は燃料ポンプの駆動軸に取り付けられた歯
車52の歯(又は欠歯)53を検出するピックアップ等
の検出素子から成り,インジェクタから燃料の噴射を行
う特定の気筒を判定する。更に,ディーゼルエンジン
は,圧縮点火を行っているために逆回転をすることがあ
る。エンジンが逆回転をしたことを検出するため,図2
0に示すように,気筒判別センサ50からカム角で17
5°(即ち,180°−αであって,α=5°の場合)
だけ位相をずらした位置に上記歯車52と対向してピッ
クアップ等の逆回転検出センサ51を取り付け,気筒判
別センサ50が出力した気筒判別信号と逆回転検出セン
サ51が出力した逆転信号との位相差からエンジンの正
回転・逆回転を検出している。エンジンの逆回転が検出
されると,インジェクタからの燃料の噴射が直ちに停止
されエンジンの運転が停止される。
【0007】図21は,従来のエンジンが正常に回転し
ている上死点でのエンジンの回転に関する情報の検出を
行うタイミングチャートを示しており,気筒判別信号
は,基準となる気筒#1が上死点(TDC)前45°の
位置にあるときに,カム軸等に設けられた歯車52の歯
53を気筒判別センサ50が検出することにより出力さ
れる。逆回転検出センサ51は,気筒判別センサ50が
設けられた位置から歯車52の回転方向に見て175°
の位置に配置されているので,エンジンが正回転をして
いる状態では,気筒判別信号がパルスとして出力された
クランク角度から175°回転したときに逆回転検出信
号がパルスとして出力される。逆回転検出信号がパルス
として出力された後,歯車52の角度で185°回転し
た時に再度の気筒判別信号が出力される。逆に,気筒判
別信号のパルスが検出されてから,クランク角度で31
5°経過したときに逆回転検出信号が検出されるときに
は,エンジンは逆回転していると判断することができ
る。なお,クランク角度信号は,気筒#1の上死点(T
DC)で出力されるように,10°毎に検出される。
【0008】ディーゼルエンジンの逆回転の検出につい
ては,特開昭61−46445号公報に開示されたもの
がある。即ち,この公報には,エンジンの回転数を検出
するため回転軸に設けられた歯車に形成される歯の間隔
を不等間隔とし,前記歯車の歯を検出するセンサがエン
ジンの正回転と逆回転とで異なる出力信号パターンを出
力し,前記センサが出力した出力信号パターンからエン
ジンが逆回転であると判定されたときには,目標燃料噴
射量をゼロとして,インジェクタへの燃料の噴射を停止
するディーゼル機関用燃料制御装置が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】図19及び図20に示
すように,上記のシステムでは,回転センサとしてクラ
ンク角度センサ45,気筒判別センサ50及び逆回転検
出センサ51のように,少なくとも3個必要である。ま
た,気筒判別センサ50が歯車46の歯47を通過した
直後から回転が始まると,エンジン始動時に気筒判別信
号が入力されるまでクランク軸は最大で2回転を要し,
噴射開始遅れについても同様の期間となる。そこで,実
燃料着火時期を求め,実燃料着火時期が目標燃料着火時
期となるように燃料噴射時期のフィードバック制御を行
っている多気筒エンジン等の,各気筒に配置された筒内
圧力センサで燃料圧力を検出している多気筒エンジンに
おいては,燃料の噴射の有無にかかわらず気筒内を往復
動するピストンの圧縮上死点の前後では筒内圧力が他の
気筒における筒内圧力と区別できる一定以上になること
に着目して,エンジンの回転方向判別を,回転センサを
使用することなく,筒内圧力を利用して行うことができ
ないかという課題がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明の目的は,上記
問題を解決することであって,多気筒エンジンの各気筒
に設けた筒内圧力センサの出力から筒内圧力のピークの
順序により多気筒エンジンが正回転をしているか又は逆
回転をしているかの回転方向判別方法及びその装置を提
供することである。
【0011】この発明は,複数の気筒にインジェクタが
それぞれ設けられ,前記各インジェクタからの燃料の噴
射と前記燃料の着火・燃焼とが前記気筒の順番に従って
行われる多気筒エンジンにおいて,前記各気筒内の圧力
を固有番号がそれぞれ付された筒内圧力センサによって
逐次検出し,前記各筒内圧力センサの出力がピークを迎
えたことを検出し,前記出力が前記ピークを連続して迎
えた二つの前記筒内圧力センサの前記固有番号の順序に
よって前記多気筒エンジンの回転方向を判別することか
ら成る多気筒エンジンの回転方向判別方法に関する。
【0012】また,この発明は,複数の気筒にインジェ
クタがそれぞれ設けられ,前記各インジェクタからの燃
料の噴射と前記燃料の着火・燃焼とが前記気筒の順番に
従って行われる多気筒エンジンにおいて,前記各気筒に
それぞれ設けられて前記各気筒内の圧力を逐次検出する
と共に固有番号がそれぞれ付された筒内圧力検出手段,
及び前記筒内圧力検出手段の出力がピークを迎えたこと
を検出し,前記出力が前記ピークを連続して迎えた二つ
の前記筒内圧力センサの前記両固有番号の順序によって
前記多気筒エンジンの回転方向を判別するコントローラ
を具備することから成る多気筒エンジンの回転方向判別
装置に関する。
【0013】この発明による多気筒エンジンの回転方向
判別方法及びその装置によれば,筒内圧力は固有番号が
付された筒内圧力検出手段によって逐次検出され,検出
された筒内圧力によって筒内圧力がピークを迎える気筒
の順番が固有番号によって分かる。連続して筒内圧力の
ピークを迎えた二つの気筒に設けられている筒内圧力検
出手段に付されている固有番号の順番によって,多気筒
エンジンが正回転をしているか,逆回転をしているかが
判別される。筒内圧力がピークを迎えるか否かは,燃料
の噴射が行われたか否かにかかわらず,気筒内を往復動
するピストンの圧縮上死点の前後において一定以上の圧
力となる筒内圧力を検出することにより容易に行われ
る。しかも,クランク軸が最大で2回転するまでもな
く,判別開始の作動の開始後,比較的短時間に多気筒エ
ンジンの回転方向が判別される。
【0014】また,この発明による多気筒エンジンの回
転方向判別方法及びその装置において,前記多気筒エン
ジンが始動する時に,多気筒エンジンの回転方向が判別
される。即ち,多気筒エンジンの逆回転が生じるのはエ
ンジンの始動時であるので,その回転方向の判別は,エ
ンジンの始動時に行えば十分である。始動時の気筒判別
が速やかに行われ,エンジンの始動性が改善される。ま
た,4気筒の場合,噴射開始遅れの最大値は1/2回転
になる。
【0015】また,この発明による多気筒エンジンの回
転方向判別方法及びその装置において,前記出力が今回
のピークを迎えた筒内圧力センサの固有番号に基づい
て,インジェクタからの燃料の噴射と燃料の着火・燃焼
とが行われる次回の気筒が決定される。エンジンが正回
転をしていると判断されたときには,次回の燃料の噴射
が行われる気筒の順序を,出力が今回のピークを迎えた
筒内圧力センサの固有番号によって決定されるので,直
ちに,正回転を続行させるように,燃料の噴射とその着
火・燃焼が継続して行われる。
【0016】更に,この発明による多気筒エンジンの回
転方向判別方法及びその装置において,前記多気筒エン
ジンの回転方向が逆回転方向であると判定したとき,次
回以降に燃料を噴射する順番に当たるインジェクタから
噴射される燃料の噴射量をゼロに設定する。多気筒エン
ジンが逆回転すれば,直ちにエンジンの回転を停止させ
る必要があるので,この場合には,次回以降に燃料を噴
射する順番に当たるインジェクタからの燃料噴射を無く
して,エンジンの回転を停止させる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照して,この発明
によるエンジンの回転方向判別装置の一実施例について
説明する。図1はこの発明によるエンジンの回転方向判
別装置が適用されたコモンレール式燃料噴射システムの
一例を示す模式図,図2はエンジンにおいてクランク角
度の経過に応じた筒内圧力,燃料噴射率,及び熱発生率
の変化の様子を示したグラフ,図3は,図1に示したコ
モンレール式燃料噴射システムにおいて,クランク角度
の経過に伴う筒内圧力の変化及び各種信号の発生状況の
概要を示すグラフである。
【0018】この発明によるエンジンの気筒判別方法及
びその装置が適用されるコモンレール式燃料噴射システ
ムの概要が,図1に示されている。このコモンレール式
燃料噴射システムでは,エンジンは4気筒エンジンであ
る。シリンダ2内に形成される燃焼室(図示せず)にそ
れぞれ燃料を噴射するインジェクタ31,32,33,
34(総称するときは3を用いる)への燃料供給は,コ
モンレール22から,燃料流路の一部を構成する分岐管
23を通じて行われる。フィードポンプ26は,燃料タ
ンク24からフィルタ25を通過させて吸い出した燃料
を所定の圧力に加圧し,加圧した燃料を燃料管27を通
じて燃料ポンプ20に送り込む。燃料ポンプ20は,例
えばエンジンによって駆動され,燃料をエンジンの運転
状態等に基づいて定められる高圧に昇圧して燃料管29
を通じてコモンレール22に供給する,所謂,プランジ
ャ式のサプライ用の燃料供給ポンプである。供給された
燃料は,所定圧力に昇圧した状態でコモンレール22に
貯留され,コモンレール22から各インジェクタ3に供
給される。インジェクタ3は,電子制御ユニットである
コントローラ37の制御の下で,燃料を適当な噴射時期
及び噴射量で対応する燃焼室内に噴射する。インジェク
タ3から噴射される燃料の噴射圧力はコモンレール22
に貯留されている燃料の圧力,即ち,コモンレール圧力
に略等しいので,噴射圧力を制御するにはコモンレール
圧力が制御される。燃料ポンプ20からリリーフされた
燃料は,戻し管35を通じて燃料タンク24に戻され
る。また,分岐管23からインジェクタ3に供給された
燃料のうち,燃焼室への噴射に費やされなかった燃料
は,戻し管36を通じて燃料タンク24に戻される。
【0019】コントローラ37には,エンジン回転数N
eを検出するためのクランク角度センサ10,アクセル
操作量Accを検出するためのアクセル開度センサ1
1,コモンレール22に設けられてコモンレール22内
の燃料圧力(コモンレール圧力)を検出する圧力センサ
12,並びに冷却水温度を検出するための水温センサ1
3等のエンジンに関する運転状態を検出するための各種
センサからの信号が入力されている。これらセンサ以外
にも,例えば,吸気管内圧力を検出するための吸気管内
圧力センサを含めることができる。コントローラ37
は,これらの信号に基づいて,エンジン出力が運転状態
に即した最適出力になるように,各インジェクタ3によ
る燃料の噴射特性,即ち,燃料の噴射時期及び噴射量を
制御する。インジェクタ3から燃料が噴射されることで
コモンレール22内の燃料が消費されても,コントロー
ラ37は,コモンレール圧力が一定となるように燃料ポ
ンプ20の吐出量を制御する。
【0020】図1に示す多気筒エンジン1は,4気筒エ
ンジンである。4つの気筒#1〜#4には,それぞれ,
シリンダ2内に形成される燃焼室(図示せず)に燃焼を
噴射するインジェクタ31,32,33,34(総称す
る時には3を用いる)と,燃焼室内の圧力(筒内圧力)
を検出する圧力検出手段としての筒内圧力センサ41,
42,43,44(総称する時には4を用いる)とが配
設されている。筒内圧力センサ4は,各気筒#1〜#4
の燃焼室に臨んで取り付けられている。筒内圧力センサ
4が検出した各気筒#1〜#4の筒内圧力を表す信号
は,コントローラ37に入力される。また,多気筒エン
ジン1に設けられてエンジンの回転に関する情報を得る
センサ,即ち,圧縮上死点前のクランク角度位置を検出
するBTDC(before top dead ce
nter)センサ9,及びクランク角度センサ10がそ
れぞれ検出した信号も,コントローラ37に入力され
る。
【0021】図2は,クランク角度に対する,筒内圧力
Pc,燃料噴射率Rf,及び熱発生率qの変化の様子を
示したグラフである。燃料噴射が行われない場合の筒内
圧力Pcの変化は,クランク角度θの変化に伴って,筒
内圧力Pcのピークに対して対称的な変化をするが,時
刻T0に燃料噴射が行われて且つ噴射された燃料が着火
すると,筒内圧力Pcの上昇が若干緩やかになり,その
後大きく増加する。燃料着火時期のクランク角度をこの
急上昇する筒内圧力Pcから正確に判断するのは困難で
ある。なお,中段のグラフに示す燃料噴射率Rfは,初
期噴射とメイン噴射との二つのピークを持つように噴射
制御されている。図2は,4つの気筒で一巡するクラン
ク角度を用いて気筒#1についての筒内圧力Pc,燃料
噴射率Rf,及び熱発生率qの変化の様子を示したが,
他の気筒(#2〜#4)についても同様である。
【0022】図3は,クランク角度θの経過に伴う筒内
圧力の変化及び各種信号の発生状況の概要を示すグラフ
である。図3の上段の4つのグラフは,それぞれ気筒#
1〜#4のクランク角度の経過に伴う筒内圧力Pcの変
化を表している。エンジン1は4気筒であるので,気筒
番号nを列の並びに従って#1〜#4とすると,燃焼順
序iは,表1に示すように,#1→#3→#4→#2の
順となる。
【表1】 各気筒#1〜#4は,上記の順に次々と圧縮爆発行程を
迎える。ある気筒が爆発行程を経過するときに,次の気
筒は圧縮行程に入っている。中段のグラフは,各気筒の
圧縮上死点前60°でBTDC信号が出力される様子を
示している。1〜4の番号は,燃焼順序iを表す着火気
筒データNcを示している。クランク角度のカウント値
θは,基準気筒である#1気筒の圧縮上死点で0であ
り,4サイクルエンジンに対してはクランク軸2回転,
即ち,カウント値719で一巡する。#1気筒について
は,圧縮上死点前180°から圧縮上死点後180°ま
で,即ち,クランク角度のカウント値にして540以上
で180未満であるときに#1気筒が圧縮・爆発行程を
迎えるので,この期間に大きく変化する筒内圧力Pcが
検出され且つその検出データが格納される。格納された
データに基づいて圧縮上死点後180°からの所定の時
間内にメイン処理が演算され,次回のBTDC割込み信
号に基づいてインジェクタ31の噴射弁駆動処理が行わ
れる。図3の下段のグラフは,クランク角度のカウント
値θの増加に従って各気筒#1〜#4における各インジ
ェクタ3の処理の順序及びタイミングを概略的に示して
いる。
【0023】コントローラ37を中心とする各種のセン
サとインジェクタ3との関係が図4に示されている。図
4はエンジンの回転に関する各種センサ及び筒内圧力セ
ンサからの検出信号を受けて,各インジェクタへの制御
信号を出力する多気筒エンジンの回転方向判別を含む燃
料噴射制御を行うコントローラ37のブロック図であ
る。BTDCセンサ9は,各気筒#1〜#4の圧縮・爆
発行程の上死点前60°を検出し,クランク角度センサ
10は,クランク角度を1°毎に検出する。BTDCセ
ンサ9は,多気筒エンジン1が4サイクルエンジンであ
るので,クランク軸が2回転する間に4つのBTDC信
号を発するように,例えば,燃料ポンプ20の駆動軸又
は吸排気弁駆動用のカム軸に関連して配置されている。
これらのエンジンの回転に関する信号は,CPU14へ
入力されるのと平行に,DSP(digital si
gnal processor)15にも入力される。
DSP15は,入力された信号を高速で加減算すること
ができる。
【0024】コントローラ37においては,上記の多気
筒エンジン1の回転に関するBTDCセンサ9及びクラ
ンク角度センサ10に加えて,多気筒エンジン1の運転
状態を表すものとして,アクセル開度センサ11,コモ
ンレール等の圧力を検出する燃料圧力センサ12,及び
エンジン1の冷却を行う冷却水の温度を検出する水温セ
ンサ13,或いは吸気圧力センサからの検出信号が中央
処理装置(CPU)14に入力される。
【0025】CPU14とDSP15との間のデータの
遣り取りは,CPU14とDSP15とのどちら側から
も読み書きが可能な共通RAMであるデュアルポートメ
モリ16を介して行われる。CPU14とデュアルポー
トメモリ16との間はCPUバス17を通じて接続され
ており,DSP15とデュアルポートメモリ16との間
はDSPバス18を通じて接続されている。筒内圧力P
cを検出する筒内圧力センサ4は,気筒#1〜#4にそ
れぞれ対応して設けられている筒内圧力センサ41〜4
4である。筒内圧力センサ41〜44が検出した筒内圧
力のアナログ信号は,AD変換器19に入力されてデジ
タル信号に変換され,DSPバス18を通じてDSP1
5に送られる。
【0026】CPU14は,各センサ9〜13から直接
に入力されるエンジン1の運転状態を表す情報と,筒内
圧力センサ41〜44からの筒内圧力に関してDSP1
5で処理された結果等とに基づいて演算を行い,各気筒
#1〜#4にそれぞれ対応して設けられているインジェ
クタ31〜34の燃料噴射時期や燃料噴射量等の燃料噴
射に関する制御を行う。DSP15は,筒内圧力Pcに
関するデジタル信号の加減算の処理を高速で行う。この
処理はデジタル処理であるので,筒内圧力Pcの微分や
積分も同様に高速で演算することができる。また,CP
U14は,コモンレールの圧力を制御するため可変式の
燃料ポンプ20の吐出量を制御し,排気ガス循環量を制
御するためEGRバルブ21を制御する。
【0027】CPU14による燃料噴射時期の制御は,
エンジン1の回転に関するBTDCセンサ9,クランク
角度センサ10及びアクセル開度センサ11からの信号
に基づいて,予め定められたマップによって,目標噴射
時期が求められる。この発明では,気筒#1〜#4のう
ち基準となる気筒,例えば#1の上死点前の特定位置
(例えば,上死点前120°の位置)を判別する気筒判
別(REF)センサを用いていない。BTDCセンサ9
と筒内圧力センサ4の各検出信号から,燃料の噴射・着
火を実行すべき気筒の順序を決定し,多気筒エンジン1
の回転方向を判別しようとするものである。以下に,か
かる燃料の噴射・着火を実行すべき気筒の順序の決定及
び多気筒エンジン1の回転方向判別について説明する。
なお,この説明は,各筒内圧力センサ4が検出した筒内
圧力から求められた実燃焼着火時期が目標燃焼着火時期
に一致させるべく着火遅れを考慮して各インジェクタ3
の燃料噴射時期を補正する燃料噴射時期の補正と合わせ
て行う。
【0028】CPU14は,図5に示すメイン処理を行
う。図5は,図4に示したコントローラにおけるCPU
メイン処理を示すフローチャートである。このメイン処
理は,以下に示す各ステップから成る。 (1)CPU14の初期化が行われる(ステップ1,S
1と略す。以下同じ)。 (2)センサ信号の処理を行う(S2)。図4に示した
ようにCPU14に入力される各種のセンサからの検出
信号の処理を行う。 (3)S2で行われた信号処理で得られた情報に基づい
て,各インジェクタ3が噴射すべき燃料量,即ち,燃料
噴射量の計算を行う(S3)。燃料噴射量の計算は,ア
クセル開度とエンジン回転数とによって予め決められて
いる噴射量特性マップにおいて,アクセル開度センサ1
1が検出した現在のアクセル開度とBTDC信号等から
求められたエンジン回転数に対応する目標燃料噴射量Q
bを求めることによって行われる(必要な噴射量の補正
量とで最終燃料噴射量Qfを求めることもある)。 (4)また,S2で行われた信号処理で得られた情報に
基づいて,各インジェクタ3が燃料を噴射すべき時期,
即ち,燃料噴射時期が計算される(S4)。燃料噴射量
とエンジン回転速度とに基づいて予め決められている燃
料噴射時期特性マップによって,S3で求めた燃料噴射
量と現在のエンジン回転数とに対応する目標燃料噴射時
期が求められる。燃料噴射時期の計算では,この目標燃
料噴射時期に基づいて最終燃料噴射時期Tfが求められ
るが,その計算の詳細については,後述する。 (5)更に,S2で行われた信号処理で得られた情報に
基づいて,且つS3で求められた燃料噴射量を,S4で
求められた燃料噴射時期に噴射できるように,燃料を噴
射する圧力,即ち,燃料噴射圧力が計算される(S
5)。燃料噴射圧力の制御は,燃料噴射量とエンジン回
転数から目標噴射圧力を求めることにより行われ,更に
具体的には,燃料ポンプの流量制御弁を制御してコモン
レール圧力を制御することにより行われる。
【0029】燃料噴射制御は,上記のとおり,噴射量制
御,噴射時期制御及び噴射圧力制御から成り,コントロ
ーラ37は,上記の燃料噴射条件で各インジェクタ3か
ら燃料が噴射されるように各インジェクタ3及びコモン
レール圧力の制御を行う。S1でCPU14が初期化さ
れた後は,S2〜S5を,燃料噴射を実行すべきインジ
ェクタに対してそれぞれ順に実行し,且つ各噴射毎に上
記のS2〜S5を繰り返す。インジェクタ3が噴射すべ
き燃料噴射量,燃料噴射時期及び可変式燃料ポンプ20
によって定められる燃料噴射圧力は,排気ガス,騒音及
び出力間のトレードオフの関係にあるという状況の下で
燃料噴射が最適となるように制御している。なお,燃料
の噴射・着火を実行すべき気筒の順序とエンジンが逆回
転をしていることが判明したときの対処については,後
述するように,S3における燃料噴射量の計算に反映さ
れる。
【0030】燃料ポンプ20のポンプ軸又は吸排気弁駆
動用カム軸に固定した回転板には,各気筒における圧縮
上死点前60°に対応した角度位置に4つの上死点前マ
ーク(欠歯でよい)が90°毎に形成されており,BT
DCセンサ9が上死点前マークを検出することにより,
ポンプ軸1回転当たり4回のBTDC信号を出力する
(図3の中段に示すグラフを参照)。BTDC信号がC
PU14に入力されると,以下に説明するようなBTD
C信号割込み処理が行われる。
【0031】図6のBTDC信号割込み処理は,次のよ
うに行われる。図6は,図5に示したCPUメイン処理
において,BTDC信号が入力されたときの割込み処理
を示すフローチャートである。 (1)エンジン1の回転速度が計算される(S10)。
即ち,前回のBTDC信号を検出してから今回のBTD
C信号を検出するまでに要した時間に基づいて,単位時
間当たりのエンジン1の回転数が算出される。 (2)CPU14は,デュアルポートメモリ16上のデ
ータである着火気筒データNcの値を読み,着火気筒デ
ータNcが4であるか否かを判定する(S11)。着火
気筒データNcは,ある気筒で燃料の着火が行われたこ
とを筒内圧力センサが検出した筒内圧力データから判定
されたときに,その筒内圧力センサに付された固有番号
によって記憶される着火順のデータ(燃焼順序iに相当
するもの)であり,次の気筒での燃料の着火が行われる
まで,そのデータ値が保持されるものであるが,これに
ついては,気筒判別の説明の中で詳述する。着火気筒デ
ータNcが4である場合に,BTDC信号が割り込む
と,燃焼順序i=1の気筒(#1)が燃料噴射・着火の
順序である(図3参照)ので,燃焼順序i=1の気筒
(#1)に設けられているインジェクタ31の燃料噴射
処理,即ち,S2〜S5で求められた燃料噴射の条件で
燃料噴射を実行する(S12)。 (3)S11での判定において着火気筒データNcが4
でなければ,直ちにS13に移行し,着火気筒データN
cが1であるか否かを判定する(S13)。 (4)着火気筒データNcが1である場合に,BTDC
信号が割り込んだ時には,次の燃焼順序i=2の気筒
(#3)が燃料噴射・着火の順序である(図3参照)の
で,燃焼順序i=2の気筒(#3)に設けられているイ
ンジェクタ33の燃料噴射処理,即ち,S2〜S5で求
められた燃料噴射の条件で燃料噴射を実行する(S1
4)。 (5)S13での判定において着火気筒データNcが1
でなければ,直ちにS15に移行し,以下,燃焼順序i
=3,4(燃焼順)の気筒(#4,#2)について上記
と同様な判定処理と判定処理においてYESである場合
のインジェクタ(34,32)の燃料噴射処理とが行わ
れる(S15)。
【0032】次に,DSP15のメイン処理について,
図7に基づいて説明する。図7は,図4に示したコント
ローラにおけるDSPメイン処理を示すフローチャート
である。 (1)DSPの初期化を行う(S20)。 (2)初期化が終了すれば,筒内圧処理を行う(S2
1)。筒内圧処理は,検出された気筒#1〜#4の筒内
圧力データの処理であり,該当する気筒#1〜#4につ
いてクランク角度1°毎に筒内圧力データ処理を繰り返
して行い,熱発生率の計算と燃焼着火時期とを計算する
ものであり,詳細については,後述する。
【0033】DSPにおいて,S21に示した筒内処理
を行うに際しての前提として,図8に示すAD変換終了
割込み処理が行われる。図8は,図7に示したDSPメ
イン処理におけるAD変換終了時の割込み処理を示すフ
ローチャートである。この割込み処理では,筒内圧力の
AD変換結果の読込み,筒内圧力のフィルタ処理,気筒
判別,エンジン回転方向判定,クランク角度の初期化,
筒内圧力データのメモリへの格納,及びクランク角度の
更新の各ステップが,クランク角度が1°変化するのに
同期して実行される。即ち,クランク角度1°毎に各気
筒の筒内圧力をAD変換器19でアナログからデジタル
に変換しているが,図8に示すAD変換終了割込み処理
は,このAD変換器19による変換が終了する毎に割込
み処理が行われる。 (1)筒内圧力のAD変換結果ADr(i)を読み込む
(S30)。各筒内圧力のAD変換結果ADr(i)
は,その時の燃焼順序i(=1〜4)をパラメータとし
て,Pc(i)として読み込まれる。 (2)筒内圧力センサ4の検出出力のノイズを,次の式
を演算することにより,ローパスフィルタで除去する。
即ち,フィルタ通過後の筒内圧力をPfc(i)とする
と,前回のフィルタ通過後の筒内圧力Pfc(i)と今
回の筒内圧力センサ4の検出出力Pc(i)との重み付
けの和を取り,その和をPfc(i)として入力する
(S31)。 Pfc(i)←K×Pc(i)+(1−K)×Pfc(i) ただし,Kは,重みの配分を決める定数(0<K<1)
である。 (3)フィルタ通過後の筒内圧力Pfc(i)を用い
て,気筒判別を行う(S32)。 (4)また,フィルタ通過後の筒内圧力Pfc(i)を
用いて,回転方向判別を行う(S33)。 (5)次に,クランク角度の初期化が行われる(S3
4)。 (6)筒内圧力データが,メモリに格納される(S3
5)。 (7)クランク角度の更新が行われる(S36)。 S32〜S36については,それぞれ,以下に詳細を説
明する。
【0034】S32で行われる気筒判別処理を図9に記
載のフローチャートに基づいて説明する。図9は,図8
に示したAD変換終了割込み処理における気筒判別処理
を示すフローチャートである。 (1)まず,筒内圧力センサ4によって検出され且つフ
ィルタ処理された筒内圧力Pfcが一定の値(閾値)よ
りも高い場合のみ,その気筒で燃料の噴射・着火が行わ
れる可能性が高いので,筒内圧力Pfcがその閾値より
も高い場合のみ気筒判別処理が開始される。その閾値と
して,例えば,3MPa(30bar)が採用される
(図2の筒内圧力Pcのグラフにおける閾値Pcsを参
照)。燃焼順序i=1の気筒のフィルタ処理された筒内
圧力Pfc(1)が3MPaよりも小さいか否かを比較
する(S40)。Pfc(1)が3MPaよりも小さい
と,その気筒(#1)で燃料の噴射・着火が行われる可
能性がないので,S46に移行し,その時の検出した筒
内圧力Pfc(1)を前回筒内圧力をデータとして格納
する変数Pfcoに代入する(S46)。 (2)Pfc(1)が3MPa以上である場合には,そ
の時のフィルタ処理された筒内圧力Pfc(1)が,ク
ランク角度で1°前の筒内圧力である前回筒内圧力Pf
co(1)以上であるか否かを比較する(S41)。 (3)筒内圧力Pfc(1)が前回筒内圧力Pfco
(1)以上であるときには,筒内圧力は上昇していると
みなすことができるので,筒内圧力上昇フラグFa
(1)を1にセットする(S42)。 (4)筒内圧力Pfc(1)が前回筒内圧力Pfco
(1)未満であるときには,筒内圧力は下降中であるこ
とになるが,筒内圧力上昇フラグFa(1)が0である
か否か,即ち,筒内圧力上昇フラグFa(1)が0に設
定されていたか否かを判定する(S43)。 (5)筒内圧力上昇フラグFa(1)が0である場合に
は,前回も筒内圧力は下降中であるとされていたので,
S46に移行して,その時の検出した筒内圧力Pfc
(1)を前回筒内圧力をデータとして格納する変数Pf
coに代入する。 (6)S41において筒内圧力は下降中であると判定さ
れ,且つS43において筒内圧力上昇フラグFa(1)
が0に設定されていなかったことが分かると,筒内圧力
は今回始めて下降に転じたことが分かる。したがって,
燃料の噴射・着火が実行されたのは気筒#1であること
が分かるので,デュアルポートメモリ上の着火気筒デー
タNcにその筒内圧力のピークを検出した筒内圧力セン
サ41の固有番号1が書き込まれ(S44),筒内圧力
上昇フラグFa(1)が0に設定される(S45)。更
に,現在のフィルタ通過後の筒内圧力Pfc(1)を前
回における筒内圧力のデータPfcoに代入して更新す
る(S46)。 (7)燃料の噴射・着火が燃焼順序i=1の気筒(#
1)で実行されていない場合には,燃焼順序i=2の気
筒(#3)で実行されているか否かが,上記のS40〜
S46のステップと同様のフローから成るS47〜S5
2で判別される。 (8)燃料の噴射・着火がi=2の気筒(#3)でも実
行されていない場合には,燃焼順序i=3,4の気筒
(#4,#2)で実行されているか否かが,上記S40
〜S46のステップと同様のフローで判別される(S5
3)。以上のようにして,燃料の噴射・着火がどの気筒
で行われているのかが判別できるので,基準となる気筒
を予め定めておく必要がなく,筒内圧力センサにそれぞ
れ付されている固有番号により逐次に燃焼の噴射と着火
・燃焼を行うべき気筒を特定することができる。
【0035】次に,AD変換終了割込み処理のS33で
示す多気筒エンジンの回転方向判別が行われる。図10
は,図8に示したAD変換終了割込み処理におけるエン
ジンの回転方向判別処理を示すフローチャートである。
このフローチャートも,クランク角度が1°変化する毎
に実行される。 (1)図9に示した気筒判別処理のフローチャートを実
行して得られる着火気筒データ値Ncに基づいて,前回
の着火気筒データNcoが今回の着火気筒データNcと
一致しているか否かを判定する(S60)。着火気筒デ
ータNcoに変化がなければ気筒の回転方向を判別する
ことはできないのでこの処理を終了する。 (2)前回の着火気筒データNcoが今回の着火気筒デ
ータNcと異なっていると,今回の着火気筒データNc
が1であるか否かを判定する(S61)。 (3)今回の着火気筒データNcが1であるときには,
前回の着火気筒データNcoが4であるか否かを判定す
る(S62)。 (4)気筒の燃焼順序については,i=4の次がi=1
であるから,S62の判定がYESのときには,エンジ
ンは正回転をしているので,逆転フラグFbを0にセッ
トする(S63)。 (5)S62において,前回の着火気筒データNcoが
4でないと判定された場合には,前回の着火気筒データ
Ncoが2であるか否かが判定される(S64)。前回
の着火気筒データNcoが2である場合には,エンジン
は逆回転しているので,逆転フラグFbを1にセットす
る(S65)。 (6)S61〜S65のフローと同様に,図9に示した
気筒判別処理を実行して得られる着火気筒データNcが
2であるか否かを判定(S66)し,着火気筒データN
cが2であるときに,エンジンは正回転をしているか又
は逆回転をしているかを前回の着火気筒データNcoと
の対比で判定する(S67〜S70)。燃焼順序iが3
又は4,即ち,着火気筒データNcが3又は4の場合に
も,上記と同様の処理をする(S71)。最後に,現在
の着火気筒データNcを前回の着火気筒データNcoに
置き換える更新を行う(S72)。 以上のようにして,燃料の噴射・着火が行われる気筒の
順序が正方向か逆方向かが,筒内圧力センサの固有番号
に相当する連続する二つの着火気筒データNcによって
判定されるので,直ちに多気筒エンジンの回転方向を判
別することができ,多気筒エンジンが逆回転をしている
と判定されたときには,エンジンの停止等の処置を直ち
に取ることができる。
【0036】次に,S34におけるクランク角度の初期
化処理を図11のフローチャートに基づいて説明する。
図11は,図8に示したAD変換終了割込み処理におけ
るクランク角度初期化の処理を示すフローチャートであ
る。エンジンは4気筒エンジンであり,クランク軸の2
回転で各気筒の燃料の噴射・着火が一巡するので,クラ
ンク角度の一巡周期はカウント回数で720である。ク
ランク角度のカウント値θは,1°で1をカウントす
る。クランク角度のカウント値θは,燃焼順序でi=1
の気筒(#1)が上死点の位置を取るときを0とし,4
気筒の燃料の噴射・着火が一巡するまで,719までの
カウント値を取る。 (1)クランク角度の初期化が既に完了しているか否か
を判定する(S80)。既に,クランク角度の初期化が
完了していれば,直ちにAD変換終了割込みのルーチン
にリターンする。クランク角度の初期化が完了していな
ければ,処理はS81に移行する。 (2)図9に示した気筒判別処理を実行して得られる着
火気筒データNcが4であるか否かを判断する(S8
1)。着火気筒データNcが4でなければ,直ちにクラ
ンク角度の初期化処理を終了して,AD変換終了割込み
処理に戻る。 (3)着火気筒データNcが4であれば,次に,BTD
C信号が立ち上がったか否かを判定する(S82)。B
TDC信号が立ち上がっていなければ,直ちにクランク
角度の初期化処理を終了して,AD変換終了割込み処理
に戻る。 (4)着火気筒データNcが4であるときに,次のBT
DC信号を検出すると,そのBTDC信号は,燃焼順序
i=1の気筒(#1)における圧縮上死点前60°に設
定されているマークを読み取ったことに対応している。
したがって,クランク角度のカウント数θを720マイ
ナス60(即ち,660)に設定し(S83),クラン
ク角度の初期化が完了する(S84)。一旦,クランク
角度の初期化が行われると,次回にエンジンの始動が行
われない限りクランク角度の初期化が行われることはな
い。
【0037】次に,S35の筒内圧力データのメモリへ
の格納処理について,図12に示すフローチャートと,
図3に示したグラフとを参照して説明する。図12は,
図8に示したAD変換終了割込み処理における筒内圧力
データのメモリへの格納処理(S35)のフローチャー
トを示す図である。 (1)初期化されたクランク角度のカウント数θが54
0以上且つ720未満であるか又は0(=720)以上
180未満であるか否かを判定する(S90)。クラン
ク角度のカウント数θがこの範囲内に入っていなけれ
ば,S97に移行する。S90で定めるカウント数θの
範囲は,燃焼順序i=1の気筒(#1)のクランク角度
が圧縮上死点の前後180°以内である範囲,即ち,圧
縮行程から爆発行程までの範囲である。この間の筒内圧
力が着火時期制御に重要であり,データとして採用され
る。 (2)クランク角度のカウント数θが540であるか否
かが判定される(S91)。このカウント数θが540
であれば,上記のカウント数θの範囲の始点であるの
で,i=1の気筒(#1)についてのクランク角度のカ
ウント数として定義される気筒別クランク角度カウント
数θc(1)をクリアして0とする(S92)。括弧内
の1は,i=1の気筒についてのクランク角度カウント
数であることを示す。したがって,θc(1)は,0か
ら359までの値を取る。 (3)上記の範囲内の値を取る気筒別クランク角度カウ
ント数θc(1)に対応した,i=1の気筒についての
筒内圧力Pc(1)を,筒内圧力Pc(θc(1),
1)とする(S93)。 (4)i=1の気筒についての,気筒別クランク角度カ
ウント数θc(1)が359であるか否かを判定する
(S94)。即ち,i=1の気筒についてのデータ採集
クランク角度範囲の終点であるか否かを判定する。 (5)θc(1)が359であるとすると,既に,θc
(1)は,0から359まで実行した後であるので,i
=1の気筒についての筒内圧力データの格納が終了して
いることになる(S95)。 (6)θc(1)が359でないとすると,θc(1)
は,まだ終点まで到達していないので,クランク角度を
1°進めることに対応して,θc(1)のカウント数を
1だけ増加したものを新たなθc(1)とする(S9
6)。
【0038】(7)次に,クランク角度のカウント数θ
が0以上360未満であるか否かを判定する(S9
7)。クランク角度のカウント数θがこの範囲内に入っ
ていなければ,S104に移行する。S97で定めるカ
ウント数θの範囲は,燃焼順序i=2の気筒(#3)の
クランク角度が圧縮上死点の前後180°以内に対応し
た範囲であり,その圧縮行程から爆発行程までの範囲で
ある。この間の筒内圧力が着火時期制御に重要であり,
データとして採用される。したがって,クランク角度の
カウント数θが0以上180未満であるときには,i=
1の気筒(#1)とi=2の気筒(#3)とについての
筒内圧力データの格納が行われる。 (8)クランク角度のカウント数θが0であるか否かが
判定される(S98)。このカウント数θが0であれ
ば,上記のカウント数θの範囲の始点であるので,i=
2の気筒(#3)についてのクランク角度のカウント数
として定義される気筒別クランク角度カウント数θc
(2)をクリアして0とする(S99)。したがって,
i=2の気筒についてのθc(2)も,0から359ま
での値を取る。 (9)上記の範囲内の値を取る気筒別クランク角度カウ
ント数θc(2)に対応した,i=2の気筒についての
筒内圧力Pc(2)を,筒内圧力Pc(θc(2),
2)とする(S100)。 (10)i=2の気筒についての,気筒別クランク角度
カウント数θc(2)が359であるか否かを判定する
(S101)。 (11)θc(2)が359であるとすると,既に,θ
c(2)は,0から359まで実行した後であるので,
i=2の気筒についての筒内圧力データの格納が終了す
る(S102)。 (12)θc(2)が359でないとすると,θc
(2)は,まだ終点まで到達していないので,クランク
角度を1°進めることに対応して,θc(2)のカウン
ト数を1だけ増加したものを新たなθc(2)とする
(S103)。 (13)以後,i=3及び4の気筒(#4及び#2)に
ついても,同様の処理をして,筒内圧力データをメモリ
に格納する(S104)。
【0039】次に,S36のクランク角度の更新処理に
ついて図13に示すフローチャートを参照して説明す
る。図13は,図8に示したAD変換終了割込み処理に
おけるクランク角度の更新処理の内容を示すフローチャ
ートである。θcの1の増分毎に,クランク角度の更新
処理S36が実行される。 (1)クランク角度のカウント数θを1増加して更新す
る(S105)。 (2)クランク角度のカウント数θが720未満である
か否かを判定する(S106)。カウント数θが720
未満であれば,4つの気筒についての噴射と着火がまだ
一巡していないので,AD変換終了後の割込み処理を続
行する。 (3)クランク角度のカウント数θが720であること
は,4気筒における燃料の着火・燃焼が一巡した時,即
ち,基準気筒#1の上死点であるので,カウント数θを
0にリセットする(S107)。
【0040】次に,図7に示すDSPのメイン処理中に
おける筒内圧処理(S21)の詳細を,図14に示すフ
ローチャートを参照して説明する。図14は,図7に示
したDSPメイン処理における筒内圧処理を示すフロー
チャートである。 (1)図11のS95において行われる燃焼順序i=1
の気筒(#1)の筒内圧力データ格納が終了しているか
否かを判定する(S110)。i=1の気筒の筒内圧力
データ格納が終了していなければ,S114に移行し
て,i=2の気筒(#3)の筒内圧力データ格納が終了
しているか否かを判定する。 (2)S110の判定で,i=1の気筒の筒内圧力デー
タ格納が終了していると,データにフィルタ処理を施す
(S111)。筒内圧力データは,大きく変動している
ので,移動平均を取る等のフィルタ処理を施してノイズ
を除去し,滑らかな筒内圧力曲線を得る(図2参照)。
【0041】(3)得られた圧力曲線から,熱発生率q
の計算を行う(S112)。熱発生率qは,次のように
して求められる。先ず,筒内容積Vθは,次の式で表さ
れる。
【数1】 ここで,Vcは隙間容積〔m3 〕,Sはピストンストロ
ーク〔m〕,Lはコンロッド長さ〔m〕,θcはクラン
ク角度〔deg〕である。この筒内容積Vθと,そのク
ランク角度θcによる微分値は,予め計算で求められる
ので,メモリに格納しておく。また,筒内圧力Pcとそ
のクランク角度θcによる微分値は,センサで検出し,
DSPで処理することにより得られる。Qを発生する熱
として,熱発生率q=dQ/dθcは,次の式で求めら
れる。
【数2】 ここで,比熱比κは,一定であるとして,上の式をリア
ルタイムで計算する。 (4)燃料着火時期Td(1)の計算を行う(S11
3)。この計算の詳細については,後述する。 (5)S110でi=1の気筒(#1)の筒内圧力デー
タ格納が終了していないと判定されたときには,S11
4に移行してi=2の気筒(#3)の筒内圧力データ格
納が終了しているか否かを判定する。S114以降のフ
ィルタ処理(S115),熱発生率qの計算(S11
6),着火時期Td(2)の計算(S117)の各ステ
ップは,S110〜S113と同様であるので,詳細な
説明を省略する。同様に,i=3の気筒(#4)及びi
=4の気筒(#2)についても同様の処理が行われる
(S118)。なお,この筒内圧処理は,クランク角度
の割込みで各気筒の1燃焼行程分の筒内圧力データの格
納が終わった状態で,フィルタ処理,熱発生率の計算,
着火時期Td(i)の計算の各ステップが行われる。こ
れらの計算が行われると,図6に示す各インジェクタで
の処理,即ち,噴射量,噴射時期及び噴射圧力から成る
噴射制御が行われる。
【0042】次に,実燃料着火時期Td(i)について
図15を参照して説明する。図15は,図14に示した
筒内圧処理における実燃料着火時期の計算処理を示すフ
ローチャートである。各燃焼順序i(1〜4の値を取り
得る)に対して共通の処理が行われる。また,θcは各
気筒の圧縮膨張過程のクランク角度のカウント値であっ
て,爆発行程上死点の前後180°の範囲のクランク角
度を0〜359までカウントする。このフローチャート
は,S120で示すように,θcが3以上の場合に実行
される。S112やS116等において熱発生率qが既
に求められている。また,図18に示すクランク角度の
カウント値θcに対する熱発生率qのグラフを参照す
る。なお,実燃料着火時期Td(i)は,デュアルポー
トメモリ16上のデータである。 (1)その時の燃焼順序i,即ち,燃料の着火・燃焼が
行われている気筒について,q(i)(θc−3)が負
であるか否かを判定する(S121)。 (2)q(i)(θc−3)が負であれば,当該気筒の
クランク角度のカウント値θcが1カウントだけ進んだ
時のq(i)(θc−2)が負であるか否かを判定する
(S122)。 (3)q(i)(θc−2)が負であれば,当該気筒の
クランク角度のカウント値θcが更に1カウントだけ進
んだ時のq(i)(θc−1)が正であるか否かを判定
する(S123)。 (4)q(i)(θc−1)が正であれば,当該気筒の
クランク角度のカウント値θcが更に1カウントだけ進
んだ時のq(i)(θc)が正であるか否かを判定する
(S124)。
【0043】(5)q(i)(θc)が正であれば,実
燃料着火時期Td(i)は,θc−2であるとする(S
125)。即ち,連続する4つのクランク角度のカウン
ト値で,中間の時点であるθc−2とθc−1との間で
熱発生率qの符号が変化しているので,実燃料着火時期
Td(i)をθc−2とみなしている。実際は,ゼロク
ロス点はθc−2とθc−1との間であるので,補間し
てゼロクロス点を求めてもよい。また,演算の精度が良
好である場合には,前後の2点で符号が負から正に変化
したときをゼロクロス点として求めてもよい。 (6)S121でq(i)(θc−3)が正のとき,S
122でq(i)(θc−2)が正のとき,S123で
q(i)(θc−1)が負のとき,及びS124でq
(i)(θc)が負のときは,それぞれ実燃料着火時期
Td(i)をクランク角度カウント着火0の時期とする
(S126)。即ち,θc−2とθc−1との間でqの
符号が変化するときのみ,S125で実燃料着火時期T
d(i)が求められ,それ以外の状況ではすべて実燃料
着火時期Td(i)が0とされる。 (7)実燃料着火時期Td(i)が0であるか否かを判
定する(S127)。 (8)実燃料着火時期Td(i)が0であると,クラン
ク角度のカウント値θcを1カウント増加する(S12
8)。 (9)クランク角度のカウント値θcが360で有るか
否かを判定する(S129)。即ち,θcの取り得る範
囲の最後のカウント値であるか否かを判定する。θcが
まだ360でなければ,S121に戻って,再度ルーチ
ンを実行する。
【0044】図2を再度参照すると,時刻T0に燃料噴
射が行われて且つ噴射された燃料が着火すると,筒内圧
力Pcの上昇が若干緩やかになり,その後の着火によっ
て大きく増加する。この急上昇する筒内圧力Pcから燃
料が着火するクランク角度を正確に判断するのは困難で
あったが,熱発生率qに着目すると,上記のように,実
燃料着火時期を正確に求めることができる。即ち,図2
の中段のグラフに示す燃料噴射率Rfで燃料が燃焼室内
に噴射されると,下段の熱発生率qのグラフに示すよう
に,一旦は吸熱により負の熱発生率を示すが,その後,
正の熱発生率に変化する。熱発生率qは,燃料噴射が行
われた当初は若干負になる(燃料の気化による)が燃料
の着火によって増加に転じ,熱発生率qが負から正に転
じるゼロクロス時刻T1を,燃料着火時期Tdとみなす
ことで容易に実燃料着火時期を定めることができる。な
お,時刻T0から時刻Tdまでの期間が燃料の着火遅れ
期間に相当する。
【0045】図15に示したフローチャートによって,
実燃料着火時期Td(i)が求まると,実燃料着火時期
が,運転状態に応じて求められる目標燃料着火時期と一
致するように,各インジェクタにおける燃料噴射時期が
修正される。その修正の仕方を,図16に示す#1に設
けられたインジェクタ31を例に取って,以下に説明す
る。図16は,図6に示したBTDC信号割込み処理に
おけるインジェクタ処理を示すフローチャートである。 (1)図5に示すCPUのメイン処理において,目標燃
料噴射圧力Pb,目標燃料噴射量Qb,目標燃料噴射時
期Tbが求められているので,それらの値を読み込む
(S130)。 (2)エンジンがアイドル運転状態であるか否かを判定
する(S131)。エンジンがアイドル運転状態にある
か否かは,エンジンの回転に関する各センサ,特にBT
DCセンサ9から計算したエンジンの回転数や,アクセ
ル開度センサ11等に基づいて求められる。 (3)エンジンがアイドル運転状態であれば,着火時期
遅れ等の予め求められているデータを用いて,目標燃料
着火時期Trを読み込む(S132)。 (4)S125で求めた燃料着火時期Td(1)とS1
32で読み込んだ目標燃料着火時期Trとから,次の式
によって着火時期偏差ΔTeを求める(S133)。括
弧内の1は,燃焼順序i=1の気筒(#1)に設けられ
たインジェクタ31に対する実燃料着火時期,及び着火
時期偏差であることを表す。 ΔTe(1)=Td(1)−Tr (5)燃料噴射時期の補正量Δθ(1)を次の式によっ
て求める(S134)。 Δθ(1)←Δθ(1)+ΔTe×Gθ 前回の補正量Δθ(1)に対して,着火時期偏差ΔTe
に基づいて修正したものを,今回の補正量Δθ(1)と
している。ただし,Gθは,ゲインを表す。 (6)S134で求めた今回の燃料噴射時期の補正量Δ
θ(1)を用いて次の式に基づいて求めたものを,最終
燃料噴射時期Tf(1)とする(S135)。 Tf(1)=Tb(1)+Δθ(1)×Gt 即ち,目標燃料噴射時期Tb(1)に対して,今回の燃
料噴射時期の補正量Δθ(1)にゲインGtを掛けたも
のを加算して,最終燃料噴射時期Tf(1)を求める。 (7)目標燃料噴射量Qb及び目標燃料噴射圧力Pbか
ら,噴射パルス幅PWを計算する(S136)。 (8)最終燃料噴射時期Tf(1),噴射パルス幅PW
を駆動パルス出力カウンタにセットする(S137)。
即ち,インジェクタ31に対する電磁弁を何時に且つど
の程度の時間の間,作動させるかを決定する。
【0046】更に,図5のS3で行われる燃料噴射量の
計算について,図17を参照して説明する。図17は,
図5に示したCPUメイン処理における燃焼噴射量の計
算の処理を示すフローチャートである。 (1)図10に示すフローチャートにおいて現れる逆転
フラグFbが,1にセットされているか否かを判定する
(S140)。 (2)逆転フラグFbが1にセットされていると,多気
筒エンジン1は逆回転をしているので,最終燃料噴射量
Qfを0に設定して燃料の噴射を行わない(S14
1)。 (3)アクセル開度とエンジン回転速度とによって予め
決められている噴射量特性マップに照合して,アクセル
開度センサ11が検出した現在のアクセル開度及びS1
0で求められた現在のエンジン回転速度に対して,目標
燃焼噴射量Qbを求める(S142)。 (4)最大燃料噴射量Qlを計算する(S143)。 (5)最終燃料噴射量Qfを,基本燃料噴射量Qbと最
大燃料噴射量Qlとの小さい方を採る(S144)。即
ち,最大燃料噴射量Qlを超える噴射量が最終燃料噴射
量Qfとして定められることはない。
【0047】以上のフローチャートの内容を図3を参照
してまとめると,図3の上段の4つのグラフは,それぞ
れ気筒#1〜#4のクランク角度θの経過に伴う筒内圧
力Pcの変化を表している。#1気筒,#3気筒,#4
気筒,#2気筒の燃焼順序で,次々と圧縮爆発行程を迎
える。ある気筒が爆発行程を経過するときに,次の気筒
は圧縮行程に入っている。また,各気筒の圧縮上死点前
60°でBTDC信号が出力される。クランク角度のカ
ウント値θは,#1気筒の圧縮上死点で0であり,4サ
イクルエンジンであるので,クランク軸2回転,即ち,
カウント値719で一巡する。#1気筒については,圧
縮上死点前180°,即ち,カウント値にして540以
上で,圧縮上死点後180°,即ち,カウント値にして
180未満であるときに,#1気筒の筒内圧力データを
格納する。格納されたデータに基づいてメイン処理を圧
縮上死点後180°からの所定の時間内に演算し,次回
のBTDC割込み信号に基づいてインジェクタ31の噴
射弁駆動処理を行う。着火気筒データNcは,筒内圧力
Pcがピークを迎えてから,次のピークを迎えるまで,
先のピークを迎えた気筒の筒内圧力センサに付された固
有番号が保たれる。
【0048】
【発明の効果】この発明による多気筒エンジンの回転方
向判別方法及びその装置は,上記のように構成されてい
るので,次のような効果を奏する。即ち,各気筒に配置
された筒内圧力センサで筒内圧力を検出している多気筒
エンジンでは,燃料の噴射の有無にかかわらず気筒内を
往復動するピストンの圧縮上死点の前後では筒内圧力が
他の気筒における筒内圧力と区別できる一定以上になる
ので,筒内圧力を検出する圧力センサの出力によって圧
縮上死点に到達した連続する2つの気筒の筒内圧力を検
出すれば,その2つの気筒に備わる筒内圧力センサの固
有番号の順序に基づいて多気筒エンジンの回転方向を容
易に判別することができる。しかも,回転センサとして
カム軸や燃料ポンプ軸に気筒判別センサや逆転検出セン
サを設けることなく,またクランク角度で最大2回転を
経過するのを待つことなく,二つの気筒の圧縮上死点を
経過する回転角に相当する比較的短時間で多気筒エンジ
ンの回転方向を判別することができる。更に,噴射開始
遅れについても,クランク角度で最大2回転を経過する
のを待つ必要はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるエンジンの回転方向判別装置が
適用されるコモンレール式燃料噴射システムの一例を示
す模式図である。
【図2】図1に示す多気筒エンジンの回転方向判別装置
のクランク角度の経過に応じた筒内圧力,燃料噴射率,
及び熱発生率の変化の様子を示したグラフである。
【図3】図1に示す多気筒エンジンの回転方向判別装置
のクランク角度の経過に従ったインジェクタでの筒内圧
力及びデータ処理等の概要を示すグラフである。
【図4】この発明による多気筒エンジンの回転方向判別
を含む燃料噴射制御を行うコントローラのブロック図で
ある。
【図5】図4に示したコントローラにおけるCPUメイ
ン処理を示すフローチャートである。
【図6】図5に示したCPUメイン処理においてBTD
C信号が入力されたときの割込み処理を示すフローチャ
ートである。
【図7】図4に示したコントローラにおけるDSPメイ
ン処理を示すフローチャートである。
【図8】図7に示したDSPメイン処理におけるAD変
換終了時の割込み処理を示すフローチャートである。
【図9】図8に示したAD変換終了時の割込み処理にお
ける気筒判別処理を示すフローチャートである。
【図10】図8に示したAD変換終了時の割込み処理に
おけるエンジンの回転方向判別処理を示すフローチャー
トである。
【図11】図8に示したAD変換終了時の割込み処理に
おけるクランク角度初期化の処理を示すフローチャート
である。
【図12】図8に示したAD変換終了時の割込み処理に
おける筒内圧データのメモリへの格納処理を示すフロー
チャートである。
【図13】図8に示したAD変換終了時の割込み処理に
おけるクランク角度の更新処理を示すフローチャートで
ある。
【図14】図7に示したDSPメイン処理における筒内
圧処理を示すフローチャートである。
【図15】図14に示した筒内圧処理における実燃料着
火時期の計算処理を示すフローチャートである。
【図16】図6に示したBTDC信号割込み処理におけ
るインジェクタ処理を示すフローチャートである。
【図17】図5に示したCPUメイン処理における燃焼
噴射量の計算の処理を示すフローチャートである。
【図18】図15に示す着火時期の計算処理の内容を示
すグラフである。
【図19】従来のエンジンにおけるクランク角度検出手
段の概要を示す模式図である。
【図20】従来のエンジンにおける気筒判別手段及び逆
転検出手段の概要を示す模式図である。
【図21】従来のエンジンにおける気筒判別信号,逆回
転検出信号及びクランク角度信号のタイミングチャート
を示す説明図である。
【符号の説明】
1 多気筒エンジン 2 シリンダ 3,31〜34 インジェクタ 4,41〜44 筒内圧力センサ 9 BTDCセンサ 10 クランク角度センサ 11 アクセル開度センサ 12 コモンレール圧力センサ 14 CPU 15 DSP 22 コモンレール 37 コントローラ Pc 筒内圧力 Nc 着火気筒データ θ クランク角度のカウント値 θc 気筒別クランク角度のカウント値 q 熱発生率 Tb 目標燃料噴射時期 Tr 目標燃料着火時期 Td 実燃料着火時期 Tf 最終燃料噴射時期 Δθ 燃料噴射時期補正量

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の気筒にインジェクタがそれぞれ設
    けられ,前記各インジェクタからの燃料の噴射と前記燃
    料の着火・燃焼とが前記気筒の順番に従って行われる多
    気筒エンジンにおいて,前記各気筒内の圧力を固有番号
    がそれぞれ付された筒内圧力センサによって逐次検出
    し,前記各筒内圧力センサの出力がピークを迎えたこと
    を検出し,前記出力が前記ピークを連続して迎えた二つ
    の前記筒内圧力センサの前記両固有番号の順序によって
    前記多気筒エンジンの回転方向を判別することから成る
    多気筒エンジンの回転方向判別方法。
  2. 【請求項2】 前記多気筒エンジンが始動する時に,前
    記多気筒エンジンの前記回転方向を判別することから成
    る請求項1に記載の多気筒エンジンの回転方向判別方
    法。
  3. 【請求項3】 前記出力が今回の前記ピークを迎えた前
    記筒内圧力センサの前記固有番号に基づいて,前記イン
    ジェクタからの燃料の噴射と前記燃料の着火・燃焼とが
    行われる次回の前記気筒が決定されることから成る請求
    項1又は2に記載の多気筒エンジンの回転方向判別方
    法。
  4. 【請求項4】 前記多気筒エンジンの前記回転方向が逆
    回転方向であると判定されたとき,次回以降に燃料の噴
    射が行われる順番の前記気筒に設けられている前記イン
    ジェクタから噴射される燃料の噴射量をゼロに設定する
    ことから成る請求項3に記載の多気筒エンジンの回転方
    向判別方法。
  5. 【請求項5】 複数の気筒にインジェクタがそれぞれ設
    けられ,前記各インジェクタからの燃料の噴射と前記燃
    料の着火・燃焼とが前記気筒の順番に従って行われる多
    気筒エンジンにおいて,前記各気筒にそれぞれ設けられ
    て前記各気筒内の圧力を逐次検出すると共に固有番号が
    それぞれ付された筒内圧力検出手段,及び前記筒内圧力
    検出手段の出力がピークを迎えたことを検出し,前記出
    力が前記ピークを連続して迎えた二つの前記筒内圧力セ
    ンサの前記両固有番号の順序によって前記多気筒エンジ
    ンの回転方向を判別するコントローラを具備することか
    ら成る多気筒エンジンの回転方向判別装置。
  6. 【請求項6】 前記コントローラは,前記多気筒エンジ
    ンが始動する時に,前記多気筒エンジンの前記回転方向
    を判別することから成る請求項5に記載の多気筒エンジ
    ンの回転方向判別装置。
  7. 【請求項7】 前記コントローラは,前記出力が今回の
    前記ピークを迎えた前記筒内圧力センサの前記固有番号
    に基づいて,前記インジェクタからの燃料の噴射と前記
    燃料の着火・燃焼とが行われる次回の前記気筒を決定す
    ることから成る請求項5又は6に記載の多気筒エンジン
    の回転方向判別装置。
  8. 【請求項8】 前記コントローラは,前記多気筒エンジ
    ンの前記回転方向が逆回転方向であると判定したとき,
    次回以降に燃料の噴射が行われる順番の前記気筒に設け
    られている前記インジェクタから噴射される燃料の噴射
    量をゼロに設定することから成る請求項7に記載の多気
    筒エンジンの回転方向判別装置。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2004028046A (ja) * 2002-06-28 2004-01-29 Denso Corp 内燃機関の始動制御装置
JP2004245053A (ja) * 2003-02-10 2004-09-02 Denso Corp 内燃機関の燃料噴射制御装置
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