【発明の詳細な説明】
構造物の土台遮断用の剛性吸収体 発明の背景
1.発明の分野
本発明は広義には高層ビル、橋梁、および地階がある一戸建ての住宅のような
より小さい構造物のような耐震構造の建設に使用される剛性吸収・緩和組立体(s
tiffness decoupling assemblies)に関する。本発明の組立体は構造物用の支
柱システムの負荷強度から当該の構造物の横方向の剛性を有効に吸収・緩和する
ものである。このようにして、地震励起時の構造物の動特性が有効に制御され、
しかもそれにも関わらず構造物に必要な負荷強度、制振強度および固有周期は保
持される。本発明の剛性吸収体は有利なことに、下層の基礎と構造の間に延びて
管を受ける、周囲を囲む主要な荷重担持支柱とともに構造物に強固に固定された
、コンクリートを充填した複数の細長い管を含んでいる。支柱と構造物との間に
は、双方の間の相対的な横移動を可能にするため摩擦係数が低い軸受が設けられ
ている。一戸建て住宅、または同様の小規模な構造物では、連結されたコンクリ
ート充填管の主要な荷重担持部材として地階の壁を利用できる。
2.従来技術の説明
建築家および構造設計者は、地震現象が発生し易い地域のビル、橋梁またはそ
の他の構造物を設計する問題に長期に亘って取り組んできた。最近のサンフラン
シスコ地震は、このような地域でのビルの不適切な設計が破局的な結果をもたら
した可能性がある、多くの例の一つであるに過ぎない。
種々の構造物の耐震安全性を高めることを目標として、これま
で多くの提案がなされている。一般に、今日の提案のほとんどは強度の質(すな
わち弾性を保ちつつ巨大な力に耐える能力)と変形能力とエネルギ吸収能力とを
組合わせることを試みてきた。例えば、構造物をその下層にある基礎から遮断す
るため、延性鉄筋コンクリート枠構造を支持するための大型のエラストマ支持体
を使用することが公知である。しかし、このような支持体は高価であることがあ
り、しかも環境による劣化にさらされる場合がある。
更に従来には、実用型の荷重には剛直であるが、大規模な地震型荷重が加わる
と降伏し、エネルギを吸収する軟鋼製のエネルギ吸収装置を使用することも指摘
されてきた。このような方式は、土台遮断装置として使用される鋼鉄棒のヒステ
リシス・エネルギ吸収能力に依拠している。
しかし、この分野で集中的に進展している研究にも関わらず、この分野の研究
者はこれまで、経済的で、設置し易く、寿命が長く、潜在的な破壊的地震エネル
ギを吸収でき、しかも支持されている構造物の崩壊を防止する真に有効な土台遮
断システムの開発に成功していない。
発明の概要
本発明は上記に概略的に説明した問題点を克服し、ビルや橋梁のような構造物
の耐震性を強化するために設計された新規の剛性吸収・緩和組立体を提供するも
のである。本発明の吸収・緩和組立体は、構造物を支持する支柱システムの荷重
担持強度から横方向の剛性を吸収・緩和することによって、遮断された構造物に
対する地面の加速度の伝達度を低くする役割を果たす。
好適な実施形態では、本発明は保護される構造物に上端部が固く連結された細
長く、相対的に可撓性の複数の中空管材を使用することを企図するものであり、
これらの管材は構造物の下層の基
礎の方向に下方に延びている。少なくとも幾つかの(好ましくは全ての)管材に
は誘導される管材の運動を制動する材料が充填され、好適には、管材には上記の
目的のためコンクリートが充填される。加えて、吸収・緩和組立体全体は、構造
物の転倒を防止するため、少なくとも幾つかの管材を基礎と作用的に結合する手
段を含んでいる。このような管材は、増大するバイアス力に抗して限定的な上方
への転移運動が可能となるように基礎と結合されることが有利である。
主要な荷重担持部材は更に吸収・緩和組立体全体の一部を形成しており、かつ
複数本の管材と間隔を隔てて配置されている。この目的のために、代表的には、
中空で単体構造の、断面積が方形か円である鉄筋コンクリート支柱が使用され、
複数本の管材が支柱を通って下方に延びている。この荷重担持部材は基礎の上に
戴置され、構造物の方に上方に延びて上端部を現している。支持体は荷重担持部
材と構造物との間に挿入され、その双方と噛み合い、双方の間での相対的な横運
動を可能にしている。地階がある小規模な構造物の場合は、別個の構造支柱の代
わりに地階の壁を主要な荷重担持部材として利用できる。
実際の施工では、所与の構造物は、従来の全ての荷重担持支柱に設けられるが
、上述の担持構造および内部管材を備えた吸収・緩和組立体を備えることになる
。
図面の簡単な説明
第1図は、明瞭にするために一部を取り外した、高層ビルの構造フレームの断
片図であり、本発明の吸収・緩和組立体をフレーム土台と下層の基礎との間に配
設している。
第2図は一部を取り外し、或る部分を点線で示した、吸収・緩和組立体の重要
部品を示した断片図である。
第3図aは、部品を取り外した第2図の3a−3a線に沿った断面図で、支柱
のコーナーにそれぞれの低摩擦支持体を備えた中空の、断面が方形の鉄筋コンク
リート支柱を使用した吸収・緩和組立体の構造を示している。
第3図bは第3図aと同様の図面であるが、中空の、断面が円である支柱と、
間隔を隔てた低摩擦支持体とを使用した吸収・緩和組立体を示している。
第4図は本発明で使用される好適な支持体の構成部品を示した分解図である。
第5図は管材の最下端部を下層にある構造物の基礎に固定するためのばね付勢
された好適な結合手段の一つを示した拡大縦断面図である。
第6図は第5図と同様の図面であるが、別の種類のばね付勢管材結合手段を示
している。
第7図は中空の支柱内に結束された複数本の管材が使用された、本発明に基づ
く吸収・緩和組立体の構成部品を示した断面図である。
第8図は第7図の実施例の管材の配向を示した拡大断片図である。
第9図はビルのフレーム土台に対する補助的な補強ケーブルの固定を示した断
片図である。
第10図は第5図の10−10線に沿った断面図であり、管材結合機構を更に
示している。
第11図は大規模ビルの一部を形成する多層土台に関連した本発明の吸収・緩
和組立体の使用を示した断片的な基本的概略側面図であり、吸収・緩和組立体は
組立体用の疑似地面にするために被支持構造物と第1土台層との間に相互連結さ
れている。
第12図は地階を有する小規模ビルに関連した本発明の利用を示した基本的概
略平面図であり、地階の壁が主要な荷重担持部材の役割を果たしている。
第13図は第12図の実施例の吸収・緩和組立体の相互連結状態を示した断片
的な基本的概略側面図である。
第14図は第12図の実施例で使用される吸収・緩和組立体の一部を形成する
、好適にはコンクリートを充填した一本の管材の断面図である。
第15図は第12図に示した実施例で使用されるコーナー担持板の平面図であ
る。
第16図は第14図に示した担持板の端面図である。
第17図は第12図に示した実施例のコーナーの間で使用される直線的担持板
の平面図である。
第18図は第17図の担持板の端面図である。
実施例の説明
ここで図面、特に第1図を参照すると、高層ビルの骨組フレーム20が複数個
の剛性吸収・緩和組立体22と関連して図示されており、吸収・緩和組立体はフ
レーム20の土台24と、下層の鉄筋コンクリートの基礎26との間に挿入され
ている。概略的には、各吸収・緩和組立体(decoupling assembly)22は細長
い、相対的に可撓性の複数の中空管材28と、該管材28を囲む状態の中空の単
体構造の直立した荷重担持支柱30と、フレーム20とそれぞれの支柱30の上
端部との間に作用的に連結された、全体として参照番号32を付して示された支
持手段とを含んでいる。
より詳細には、骨組フレーム20は完全に従来形のものであり、土台24の他
に通常は直立した支柱34と、別個の階層の床36、38を含んでいる。フレー
ム20は代表的には鉄筋コンクリート
のような所望の任意の構造材から形成され、土台24の一部を形成する従来形の
支持領域40を要諦位置に設けてある。各支持領域40には、図示した実施例で
は一対の水平横ビーム40a、40bを設けてある。
同様に、基礎26は(管材28と関連して本文で説明する修正を除いては)通
常の多様な基礎でよく、フーチング基礎42を有している。基礎26も鉄筋コン
クリートから形成されている。
次に、吸収・緩和組立体22の一つをより詳細に示した第2図および第3図a
を参照する。この側面では、複数本の管材28が互いに間隔を隔てて配列され、
周辺部の管材28aと中央部の管材28bのアレイを呈していることが示されて
いる。これらの管材は従来形の、壁薄の金属構造のものであり、代表的には直径
が約3/4 から3インチであろう。各管材28a、28bには適宜の制振材料、こ
の場合はコンクリート44が充填されている。管材28の最上端部は支持領域4
0の鉄筋コンクリート内に延び、その中に埋設されている。第1図に示すように
、管材は土台24を貫いて上方に、関連する支柱34内へと延びていることがわ
かる。フレーム20に対する管材28の強固な連結を強化するため、管材上に横
に延びるフランジ、すなわち鍔(図示せず)を利用してもよい。しかし、より一
般的には、構造物と個々の管材との間が強固に連結される限り、管材28を便利
で適当な任意の手段によってフレーム20のような構造物に固定してよい。図示
した実施例では、管材28は下層にある基礎26のフーチング42内に延び、そ
の中に埋設されている。この場合も、管材28を基礎26に作用的に連結するた
めに他の適宜の手段を用いてもよく、そのうちの2つの好ましい選択肢を後に詳
細に説明する。
更に、全体的な組立体22はそれぞれ、直立した、中空の単体
構造の主要荷重支柱46を含んでいる。第1図−第3図aの実施例では、支柱4
6は断面が方形であり、各支持体の下に垂直の補強材48を含んでいる。第2図
に示すように、支柱46の剛性と横方向の安定性を強化するため、金属製強化材
50が各補強材48を貫通して下層の基礎26内に延びている。これに関連して
、各支柱46はフーチング42の上面に載置され、骨組フレーム20の方向に上
方に延びていることが示されている。各支柱46の上端部には担持体が設けられ
ている。
担持手段32は全体として多数個の同一の担持組立体54からなっており、担
持組立体の各々は各ビーム40a、40bの下に位置している。各担持組立体5
4(第3図aを参照)は切頭三角形の構造の土台56を含んでおり、これが比較
的摩擦係数が低い材料(例えば潤滑油を含む、または含まない青銅、鋼、鉛、ま
たは粉末焼結金属からなる担持合金)を有する材料から構成される直立した担持
パッド58を支持している。土台56(第4図を参照)には、土台を支持板52
に連結できるように土台の各コーナーの近傍に開口部60を設けてある。加えて
、相反的に先細にされた嵌合するスロット付きの一対のシム62、64が土台5
6の各コーナーの下に積層され、そのスロットは関連する開口部60と位置合わ
せされている。全部で3個のほぼJ字形のねじ山付きコネクタ66が各担持組立
体54用に支柱46内に埋設され、上方に延びてシムのスロットと開口部60と
を貫通している。そこでナット68を用いて担持組立体が支柱の所定位置に固定
される。嵌合するシム62、64を備えることによって、各担持組立体54の高
さと位置を適正に調整して、担持体にかかる荷重が不均一になることを防止し、
かつ担持体上に所望のとおりの通常な荷重がかかるようにすることの双方または
一方を可能にすることがで
きる。
それぞれの担持パッド58は、支持領域40の下側と噛み合うように、かつ荷
重担持支柱46とフレーム20との間の相対的な横移動を可能にするように構成
されている。このような動作を促進するため、パッド58が支持領域と接触する
領域で金属性のスライド板70が各支持領域40の下側に固定されている。各ス
ライド板70は数本のコンクリート内に埋設された頭付き植え込みボルト72に
よって所定位置に固定され、またはその他の方法で従来形の建材からなる関連す
る支持領域に固定される。
第3図bは中空の円柱形の支柱72が使用されている同様の吸収・緩和組立体
22を示している。この支柱にも90°間隔で縦の補強材74が設けられ、この
補強材の内部には、方形の支柱46の場合と同様に相互連結された強化材50が
埋設されている。この実施例の吸収・緩和組立体22も複数本のコンクリート充
填管材28並びに、補強材74の上方の全部で4個の担持組立体54を含んでい
る。関連する支持領域40の下側には4個の別個のスライド板78が取付けられ
、各担持組立体54のそれぞれの担持パッド58と接触している。
本発明の好適な実施形態では、それぞれの支柱46または72内の各アレイの
少なくとも周辺部の管材28aは、周辺部の管材が増大するバイアス力に抗して
限定的に上方に転移できるように基礎20と結合されている。先ずこのような結
合機構の一つを示した第5図および第10図を参照する。すなわち、フーチング
42に強固に固定され、最下位置の支持板82と、この支持板の上方に間隔を隔
てて配置された上部の環状保持リング84とを設けた管材を受ける土台を含む管
材結合装置80が備えられている。図示した特定の実施例では、支持板82とリ
ング84とはフーチ
ング42のコンクリート内に埋設されている。その上、保持リングは更に、同様
にフーチング42内に埋設されたナット/ボルト・組立体86によって抜根を防
止するように固定されている。管材結合装置80内で受けられる管材28aの最
下端部には溶接またはその他の便利な手段で固着された受け板88が設けられて
いる。受け板88は管材28aの最下端部を支持板82と保持リング84との間
に捕捉的に保持するように構成、配置されている。コイルばね90が受け板88
とリング84との間に位置し、管材結合装置80内で受けられる管材28aの最
下部分の周囲に配置されている。図面から容易に理解できるように、管材28a
の上方運動はコイルばね90のばね力に抗して行われる。
第6図は別の同様の管材結合装置92を示している。この例では、管材結合装
置92は、フーチング42に強固に固定されて上方に延びるピン96を設けた土
台94を含んでおり、ピン96はその上端に強固に固定された受け板98を有し
ている。土台94は埋設されたナット/ボルト・組立体100によって抜根を防
止するように固定されている。
この実施例では、管材28aの最下端部は中空であり、嵌合板102と保持リ
ング104とが設けられている。第6図に示すように、板102は管材28aの
最下端の突合わせ端から上方に間隔を置いて、管材内に封入されている。一方、
保持リング104は板102の下に位置しているが、これも同様に管材28aの
内部に封入されている。リング104は環状構造であり、図示のようにピン96
を慴動可能に受ける構造にされている。このような方向の配置で、受け板98と
リング104とは共同してピン96の上端を嵌合板102と保持リング104と
の間に保持する役割を果たす。コイルばね106は保持リング104と嵌合板1
02
との間に位置しており、ピン96の上部の受け端部の周囲に配置されている。こ
の場合も、管材28の上方運動がばね106のばね力に抗して行われることは容
易に見て取れる。
第1図、3図aおよび3図bの実施例に示した管材28は互いに間隔を隔てて
位置しているが、本発明はそのような構造に限定されるものではない。例えば、
複数本の管材108を用いて、個々のコンクリート充填管材を互いに接触させて
、結束されたアレイを形成するように配置してもよい。(第7図、8図を参照)
このような管材にもコンクリート110または同類の制振材料が実質的に充填さ
れよう。管材のアレイを特定の種類のものにすることは重要ではないが、地震発
生中に管材と支持部材とが著しく接触することを防止するため、管材を周囲の支
柱またはその他の支持部材の境界壁から充分に間隔を置いて位置決めすることが
重要である。第3図aおよび第7図に最も明解に示すように、荷重担持部材(す
なわち支柱46)とこれに最も近接した位置の管材との最小距離は、最も近接し
た管材の最大断面寸法(すなわち直径)よりも大きい。最後に、好適な実施形態
では単体構造の中空の支柱を使用しているが、本発明は管材アレイの周囲に配置
された、間隔を隔てた直立板または同類の応急手段を用いても実施できる。
最も効果的な耐震性を得るため、本発明の吸収・緩和組立体を耐震性を強化す
るために設計された所定の構造を有する別の装置と組合わせて利用してもよい。
例えば、第1図を再び最小すると、十字形の可撓ケーブル112、114がフレ
ーム20の土台24と基礎26との間に延び、その内部に埋設されていることが
わかる。設置時には、これらのケーブルは比較的緩く、保持ばね118によって
(例えば出入口116の上方に)懸垂状態で保持されている。当該技術の専門家
であれば理解できることであるが、ケ
ーブル112、114が例外的に激しい地震条件下でフレーム20が基礎26に
対して過度に横移動することを防止するのに役立つ。ケーブル112、114は
任意の便利な手段、例えば土台24内に埋設された横ピン120を用い、ケーブ
ルの端部を横ピンの周囲に巻き付け、コネクタ122で止めることによって接続
することができる。
捕捉的な手段として、鉄筋コンクリート製の荷重担持壁124を基礎26と土
台24との間に設けることが有利である。すなわち、壁124の上部荷重担持面
は担持手段32と土台24との間の接合面のやや下に配置される。このようにし
て、完全に破損した場合に、ビル構造は荷重担持壁上に留まることができ、構造
全体が完全に破壊されることを防止できる。
吸収・緩和組立体22の通常の使用中、主要な構造荷重は個々の担持組立体5
4を媒介にして直立する支柱46または72によって担持される。コンクリート
が充填された管材は圧縮された少ない荷重だけを担持する。前述のように、主要
支柱46または72は被支持構造とせん断力またはモーメントが伝達されるよう
には結合されることはない。
地震発生時には、支柱と連結されたコンクリート充填管材は遮断された構造物
への地面の加速度の伝達を大幅に低減する役割を果たし、ひいては階層間のずれ
が軽減される。個々の管材内に充填されたコンクリートが移動中の局部的な補強
材および制振材としての役割を果たす。すなわち、コンクリートの充填材は粉砕
され、衝撃吸収体のように動きをかなり制動する。管材は更に、上記の事態の発
生中に引張り棒としての役割も果たして、保護されている構造物の分離と転倒の
防止を補助する。これと関連して、第5図および第6図に示した種類のばね付勢
された管材コネクタ
は、転倒モーメントが増すと、転倒を阻止するように加わる引張り力も増大する
ので特に有利である。最後に、コンクリート充填管材は保護される構造物の固有
周期を制御し、地震後に構造物を元の位置に戻す復元力を付与する。
強制的な振動運動を受けた際に建造物の平衡を保ちつつ、同時に安定性を保つ
ため、担持組立体は構造物を支持し、偏った荷重を支柱へと伝達する。従って、
担持体は構造物と支柱との間の相対的な横移動に対する抵抗が極めて僅かなロー
ラ支持体と極めて類似した機能を果たすように設計されている。
十字形のケーブル112、114は過度の横方向変位を防止するための非直線
的なばねの役割を果たす。すなわち必要に応じて構造物の横方向の抵抗は増加す
るのである。荷重担持壁124は変形が少ない限りは防護されている構造物から
分離しているように設計されている。これらの壁が効力を発揮するのは、地震の
レベルが過度である場合、すなわち構造物の横方向の変形により誘発される縦方
向の変位が、保護されている構造物と荷重担持壁とが接触する程度まで大きい場
合であり、壁は変形した構造物を支持し、かつ運動エネルギを吸収し、振動の振
幅を低減するための摩擦力を付与する付加的な担持強度を備えている。
従って、本発明は従来の設計では得られない多くの利点を備えている。例えば
、本発明の吸収・緩和組立体は受動的な装置であり、圧縮荷重と引張り荷重の双
方を吸収することができる。この組立体は長期に亘り荷重を支え、時間を経ても
強度と機能の劣化は少ない。これは従前まで使用されてきた弾性ゴムの担持パッ
ドに生ずる損傷が大きい老化プロセスと対照的である。しかし、より重要な点は
、本発明の吸収・緩和組立体は、地震により誘発される過度の横方向変位が生じ
ても安定状態を保ち、強い地震の発
生中、および発生後も保護される構造物の平衡を保つことにある。同時に、この
組立体によって転倒モーメントに抵抗する高度の引張り強度が得られる。
第11図は多層地階126、すなわち中床128、130と最下層の基礎13
2とを有する大規模ビル125に関連した本発明の利用を示している。中床12
8、130には通常は図示のような補強用金属製はり134が設けられ、中床1
28は鉄筋コンクリート部分136を有している。図示のように、ビル125は
地階126と基礎132とによって支持されている。この目的のため、ビル12
5には鉄筋コンクリート製の土台キャップ140を有する最下層の床スラブ13
8を設けてある。一例として(第11図には断面で示されている)大型の中空支
柱142はキャップ140と中床128との間に延び、主要な荷重担持部材の役
割を果たす。更に、同様の支柱144および146も中床128、130の間お
よび中床130と基礎132との間に設けられることによって、ビル125の完
璧な構造支持体になることがわかる。勿論、ビル125は第11図に示すように
、適正な構造支持体を設けるために多数の同様の中空支柱を有することになるこ
とが容易に理解できよう。
吸収・緩和組立体148は基本的には前述したものと同様の直立した、セメン
トを充填した複数本の金属製管材150の形式のものである。管材150の下端
部は136の部分に埋設され、その上端部は土台キャップ140とスラブ138
に延び、かつ、それらの内部に埋設されている。管材150は地震発生中に前述
したと同様に動作する。しかし、この場合は、管材150を構造物125から下
部の基礎132へと延ばすのは実際的ではない。従って、136の部分は実質的
に疑似地面、すなわち管材150の
下端部用の基礎を形成している。
支柱142の上表面には、土台キャップ140の下側に取付けられたスライド
板154と接触する一連の担持体152が設けられている。それによってこれら
の担体組立体は支柱142とビル125との間の相対的な横方向運動を可能にす
る。
次に地階を有する一戸建て住宅のような小規模な建造物に関連した本発明の利
用を示した第12図−18図を参照する。第12図−13図に示すように、家屋
156は相互に連結された鉄筋コンクリートの地階壁158の上方に位置し、こ
の壁によって支持されている。家屋156自体は全く従来のものであり、代表的
には地階の壁158の上面に載置された支持ビーム162を含む下部床構造16
0を備えている。地階構造には壁158並びに壁158を支持するコンクリート
製基礎164が含まれている。特に第12図に示すように、家屋の地階内部には
荷重を担持しない内壁166を設けてもよい。
剛性の吸収・緩和は、基礎164から床構造160まで延びる複数本の直立し
たセメント充填管材168によって行われる。第13図に最も明解に示すように
、各管材168は基礎164内に埋設されている。適正に連結するため、管材1
68の下端部には半径方向に拡張された鍔構造170を設けてもよい。個々の管
材168の上端部は、せん断力、モーメントおよび引張り力を伝達する役割を果
たす任意の便利な手段によって家屋156と連結される。例示された実施例では
、管材168はコネクタ172によってビーム162に取付られている。第14
図は管材168の例を断面図で示してあり、管材にはコンクリート174が充填
されていることが示されている。
第12図を再び参照すると、地階のコーナー領域の地階の壁の
相互連結部分に管材168の群を配置してあることが示されている。加えて、個
々の管材168は壁の長手方向に沿って間隔を隔てて配置されている。更に図示
されているように、管材168を内壁166内に配置してもよい。この応用措置
によって管材の作用力を減ずることなく管材の一部を効果的に隠すことができる
。
地階壁158の上表面には一連の担持板176、178が備えられている。図
示のように、担持板176は平面図がほぼL字形構造であり、第15図および1
6図に詳細に示されている。すなわち、各板176には平坦な最上面182を有
する直立部分180が設けられている。下に位置する地階壁158のコンクリー
ト構造内に埋設されたねじ山付きコネクタ188を用いて板176を取付けるこ
とができるように穴開き側部フランジ184、186も設けられている。第12
図を参照すると容易にわかるように、板176は地階壁158によって形成され
た直交のコーナーに固定されている。
板178はこれが真っ直ぐであり、L字形ではないことを除けば板176と事
実上同じである。第17図および18図に最も明解に示されているように、担持
板178は各々が最上担持面190と、コネクタ188を介して取付けできるよ
うにするための穴開き側部フランジ192とを備えている。板178はコーナー
担持板176の間に地階壁158の長手方向に沿って間隔を隔てて位置している
。
それぞれの金属製スライド板、すなわちパッド194は担持板176、178
の上表面と係合する位置で床構造160(第13図)の下側に取付けられている
。このようにして、荷重を担持する地階壁158と支持される家屋156との間
での相対運動が可能である。
構造上の設計に関しては、地階壁158の縦横比(中さ対高さ)が1以上であ
る場合は、中間の、内側に延びる構造的な仕切り壁を設けてもよく、または地階
壁を一体の縦リブ補強材とともに形成してもよい。それによって、地震により誘
発される圧力に適正に対応するために、地階壁の構造が充分な曲げ強さを有する
ことが確実にされる。あるいは、土圧を低減するために隣接する地階壁の厚さよ
りも厚い軟性の充填材を土壌と地階壁との間に充填することもできる。
第12図に示すように、管材168は隣接する地階壁158と間隔を隔てて配
置されている。図面の尺度上第12図には充分には図示されてはいないが、管材
は最も近い地階壁の表面から、少なくとも管材の直径の2倍だけ距離を隔てて配
置されていることが理解されよう。すなわち、所定の管材の中心から最も近い壁
面までの距離はその管材の直径の2倍以上であるものとする。
本発明の剛性吸収体を使用して適正に建築された家屋、またはその他の小規模
建造物は、地震に対して防護するための前述の態様で作用する。すなわち、管材
168は保護されている構造物の転倒を防止し、同時に家屋の固定荷重はほぼ全
てが地階の壁158によって担持される。地階の壁158は更に、支持されてい
る家屋156と、せん断力またはモーメントが伝達されるようには連結されてい
ない。
本発明の主要な効用を耐震性の付与に関してこれまで説明してきたが、本発明
はその他の側面にも有用である。例えば、支柱の支持強度から横方向の剛性を吸
収・緩和することによってスパンが長い剛性フレームの橋梁において、温度によ
って誘発される応力を軽減することができる。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1996年8月29日
【補正内容】
補正請求の範囲
1.周囲の地階壁によって形成された地階の上方に位置する上部構造と下に位置
する基礎との間で使用するようにされた剛性吸収・緩和組立体であって、
上端部の近傍で上部構造と強固に連結して、基礎の方向に下方に延びるように
された細長い、相対的に可撓性の複数の中空管材を備え、該管材の少なくとも幾
つかには誘発される管材の動きを制動するための材料が実質的に充填され、
上部構造の転倒を防止するため、管材の少なくとも幾つかを基礎と作用的に結
合するようにされた結合手段と、
複数本の管材と間隔を隔てて配置された主要荷重担持部材とを備え、該担持部
材は基礎上に載置し、かつ上部構造の方向に上方に延び、かつ上端部を設けるよ
うにされ、前記担持部材は上表面を有する前記周囲地階壁を含んでおり、
誘発された管材の移動時に、前記主要荷重担持部材と前記複数本の管材の間の
間隔が、管材と主要荷重担持部材および前記周囲の地階壁との有意の接触を防止
し、
前記地階壁の上表面と前記上部構造との間に挿入され、双方の間での相対的な
横移動が可能であるように前記上表面と前記上部構造の双方と係合するようにさ
れた担持手段を備えたことを特徴とする、剛性吸収・緩和組立体。
2.前記周囲の地階壁によって形成されたコーナーの少なくとも幾つかの近傍に
多数の前記管材を設けるようにされ、前記管材の個々の1本が、前記地階壁に沿
って間隔を隔て、かつ前記コーナーの間に配置するようにされたことを特徴とす
る、請求の範囲第1項に記載の組立体。
3.前記管材が互いに間隔を隔てていることを特徴とする、請求の範囲第1項に
記載の組立体。
4.前記制振材料がコンクリートであることを特徴とする、請求の範囲第1項に
記載の組立体。
5.前記管材の全てに前記制振材料が実質的に充填されたことを特徴とする、請
求の範囲第1項に記載の組立体。
6.縦の間隔を隔てた複数の中床と、最下層の基礎とを有する多層地階の上方に
位置する上部構造の間で使用するようにされた剛性吸収・緩和組立体であって、
上端部の近傍で上部構造と強固に連結して、前記中床の一つの方向に下方に延
びるようにされた細長い、相対的に可撓性の複数の中空管材を備え、該管材の少
なくとも幾つかには誘発される管材の動きを制動するための材料が実質的に充填
され、
上部構造の転倒を防止するため、前記管材の少なくとも幾つかを前記1つの中
床と作用的に結合するようにされた結合手段と、
複数本の管材と間隔を隔てて配置され、前記上部構造の近傍に上端部が設けら
れるようにされた主要荷重担持部材とを備え、
誘発された管材の移動時に、前記主要荷重担持部材と前記複数本の管材の間の
間隔が、管材と支持部材および前記周囲の地階壁との有意の接触を防止し、
前記地階壁の上表面と前記上部構造との間に挿入され、双方の間での相対的な
横移動が可能であるように前記上表面と前記上部構造の双方と係合するようにさ
れた担持手段を備えたことを特徴とする、剛性吸収・緩和組立体。
7.前記管材を前記上部構造に最も近い中床と結合するようにされたことを特徴
とする、請求の範囲第6項に記載の組立体。
8.前記荷重担持部材が前記管材を内部に受容する中空の支柱か
らなることを特徴とする、請求の範囲第6項に記載の組立体。
9.前記管材が互いに間隔を隔てていることを特徴とする、請求の範囲第6項に
記載の組立体。
10.前記制振材料がコンクリートであることを特徴とする、請求の範囲第6項
に記載の組立体。
11.前記管材の全てに前記制振材料が実質的に充填されたことを特徴とする、
請求の範囲第6項に記載の組立体。