JPH10511589A

JPH10511589A - 内視鏡下で閉塞部位に空間を作るための拡張可能な多機能器具およびその方法

Info

Publication number: JPH10511589A
Application number: JP8521028A
Authority: JP
Inventors: ユーン，インバエ
Original assignee: ユーン，インバエ
Priority date: 1995-01-06
Filing date: 1995-12-29
Publication date: 1998-11-10
Also published as: US6120437A; US6146401A; AU712851B2; WO1996020749A1; EP0805699A4; US5800394A; EP0805699A1; AU2700899A; CA2209248A1; US5865802A; US5823947A; AU4739796A

Abstract

(57)【要約】体の閉塞部位に空間を作るための拡張可能な多機能器具（１０）は、体内に導入されるための遠位端（２０）と、体外に置かれるための近位端とを有する長尺部材（１２）と、上記閉塞部位に設置されるための拡張可能部材（１６）とを含んでいる。拡張可能部材（１６）は、閉塞部位において、非拡張位置から拡張位置へと移動可能であって、解剖学的組織を変位させて、各種の術式を行うための空間を閉塞部位に作る。閉塞部位に空間を作る方法は、通常は空間の存在しないところに空間を作るために、閉塞部位で拡張可能部材（１６）を拡張させること、および／または、閉塞部位に加圧下の流体を導入することを含む。

Description

【発明の詳細な説明】内視鏡下で閉塞部位に空間を作るための拡張可能な多機能器具およびその方法技術分野本発明は最小侵襲外科術式に関し、より詳しくは最小侵襲外科術式を行い易くするために手術空間を造るための方法及び器具に関する。従来の技術内視鏡下つまり最小侵襲外科術式は、患者における外傷と回復時間が少なくなると共にそれに伴って入院時間と費用とが減少することにより、順調に受け入れられてきている。最小侵襲外科技術を用いて行える術式の種類を増やすことは望ましいことである。しかし、そのような術式が広く受け入れられるためには、それらの術式は、オープン手術によって行われる同じ処置に要求されるのと多くとも同じ時間で行うことができなければならないし、熟練度が種々異なる外科医によって行うことができなければならない。最小侵襲外科方法を拡張するのが望ましい外科手術領域は多くある。そしてそのようなものの１つに、手術を行うのに十分な空間を提供するキャビティ、たとえば腹や胸郭等、における以外の解剖学的部分に位置する組織の処置である。本明細書においては、用語「組織」と「器官構造」とは同義に使用されており、すべての解剖学的部分の一部あるいは全体を含んでいる。このような処置領域の例には、たとえば、腹腔前ヘルニア修復、膀胱頸部懸垂固定、胸部あるいは脳等の解剖学的部分内の塊つまり腫瘍の摘出あるいは生検、等々が含まれる。腹等のキャビティ内で手術が行われるときには、通常、従来のリトラクタや他の組織マニピュレータを用いて、処置すべき組織を露出させている。しかし、処置すべき組織が、閉塞された解剖学的部位、たとえば、非常に小さいキャビティ内や、解剖学的壁の層間の潜在的キャビティ内、あるいは層になっていない組織や１層の組織、に位置している場合には、手術箇所の視覚化(visualization)が阻害されると共に器具を扱うためのスペースが最小侵襲外科手術を良好に行うのを極めて困難にしている。本明細書で使用されているように、「閉塞部位」という用語は、手術が視覚化できなかったり手術が行えないほど小さい寸法の解剖学的空間あるいはキャビティ、および、空間もキャビティも存在しない解剖学的部位のことを指している。後者の場合、閉塞部位には、たとえば腹膜や、腹壁の筋膜および筋肉や、硬膜と脳,脊髄との間の硬膜外スペース等、解剖学的壁の分離つまり離間できる層の間の「潜在的空間またはキャビティ」、通常は閉じるか折り畳まれている組織構造間の「潜在的空間またはキャビティ」、および、胸、脳および肺等、層単位あるいは構成要素単位に分離できない均質組織内の部位が含まれる。発明の概要したがって、本発明の第１の目的は、処置すべき組織に隣接する手術空間を作り出すことにより、閉塞された解剖学的部位で行う最小侵襲手術を容易にすることである。本発明の別の目的は、処置すべき組織に隣接した手術空間を作り出して、手術を単一穿刺法によっても複穿刺法によっても行えるようにすることである。本発明のさらなる目的は、処置すべき組織に隣接して手術空間を作り出すために、その処置すべき組織を拡張可能部材で囲むことである。本発明のさらなる目的は、組織処置のための手術空間を閉塞された解剖学的部位に作り出すために、複数の間隔をおいて設けられた拡張可能部材を用いることである。本発明によれば、手術空間は、拡張可能部材を使用することにより、閉塞された解剖学的部位に作られる。上記拡張可能部材は、流体によって拡張あるいは膨張可能な膜あるいはバルーン、機械的に拡張可能な装置、たとえば、拘束が解除されたときに元の形に戻る関節付アームあるいは骨部(spine)、および／または、流体を吸収したときに拡張可能な吸収材料によって形成される。好ましくは、視覚化を向上させるべく血液等の体液を手術部位から除去するために、上記拡張可能部材の外面は吸収材料で覆われる。さらに、複数の先行出願に開示したように、上記拡張可能部材が所定位置にある間に吸収材料からの流体の吸引を行うことができる。複数の拡張可能部材を互いに離間した関係で配置することにより、これらの拡張可能部材間のスペースが上記手術空間を形成する。そして、上記拡張可能部材間の距離は、カラーを使用することにより、あるいはこれらの拡張可能部材を入れ子式またはスライド式チューブに取り付けることにより、調整可能にできる。これら両方とも、上記先行出願に開示されている。開口つまり溝を形成するように上記拡張可能部材を形造ることにより、処置すべき組織が上記開口内に位置するようにこれらの拡張可能部材を配置することによって上記処置すべき組織を露出させることができる。器具の長手方向軸に対する拡張可能部材の角向き（angular orientation）と、拡張手段とを含め、上記拡張可能部材は手術空間が造られる組織に応じて作られる。プレフォームされた骨部が使用される場合には、上記拡張可能部材の位置決め中にこれらの骨部が所定の形状を維持するように、上記拡張可能部材は導入時には平たいのが好ましく、これらの拡張可能部材はその後膨張させられる。トロイド形状つまりドーナツ形状の使用は特に有利であるが、開口が指部の間に形成される多指形状の場合もそうである。本発明の他の目的および利点は、添付の図面に関連して行われる好適な実施形態についての以下の説明から明らかになる。図面中、幾つかの図の各々における同様の部分は同じ参照符号によって示されている。図面の簡単な説明図１は、本発明に係る拡張可能な多機能器具の破れ側面図である。図２は、外側部材が後退位置にあり拡張可能部材が拡張位置にある図１の拡張可能な多機能器具の一部断面破れ側面図である。図３は、図１の拡張可能な多機能器具のための内側部材と拡張可能部材との分解側面図である。図４は、解剖学的組織における閉塞部位に導入された図１の拡張可能な多機能器具の破れ斜視図である。図５は、閉塞部位で初期空間を作り出している図４の拡張可能な多機能器具の破れ斜視図である。図６は、解剖学的組織における閉塞部位に空間を作り出す別の方法を示した破れ斜視図で、閉塞部位に導入されつつある加圧下にある流体を示している。図７は、図１の拡張可能な多機能器具のための方向制御システムの概略図である。図８は、図１の拡張可能な多機能器具の破れ斜視図であって、拡張可能部材の角向きを調整するための方向制御システムの使用を示している。図９は、本発明に係る拡張可能な多機能器具の変形例の一部断面破れ側面図である。図１０は、多指形状を形成する拡張可能部材を有する本発明の拡張可能な多機能器具の別の変形例の破れ側面図である。図１１は、３指形状を形成する拡張可能部材を有する本発明の拡張可能な多機能器具のさらに別の変形例の遠位部の破れ側面図である。図１２は、４指形状を形成する拡張可能部材を有する本発明の拡張可能な多機能器具のさらに別の変形例の遠位部の破れ側面図である。図１３は、５指形状を形成する拡張可能部材を有する本発明の拡張可能な多機能器具の別の変形例の遠位部の破れ側面図である。図１４は、湾曲したＪ形状を形成する拡張可能部材を有する本発明の拡張可能な多機能器具の別の変形例の遠位部の破れ側面図である。図１５は、扇様の骨部を有する本発明の拡張可能部材の変形例の破れ側面図である。図１６は、Ｃ形状を形成する拡張可能部材を有する本発明の拡張可能な多機能器具のさらなる変形例の一部断面破れ側面図である。図１７は、トロイド形状を形成する拡張可能部材を有する本発明の拡張可能な多機能器具のさらなる変形例の遠位部の一部断面破れ側面図である。図１８は、解剖学的壁における閉塞部位に導入されているポータルスリーブを示した破れ斜視図である。図１９は、図１７の拡張可能な多機能器具が図１８のポータルスリーブを介して導入されて、閉塞部位に初期空間を作っているところを表した破れ斜視図である。図２０は、本発明の拡張可能な多機能器具の別の変形例の遠位部の破れ斜視図である。図２１は、本発明の拡張可能な多機能器具のさらなる変形例の遠位部の破れ斜視図である。図２２は、本発明の拡張可能な多機能器具のさらに別の変形例の遠位部の破れ斜視図である。図２３は、本発明の拡張可能な多機能器具のさらなる変形例の破れ側面図である。図２４は、図２３の拡張可能な多機能器具のための内側部材の破れ斜視図である。図２５は、図２３の拡張可能な多機能器具の破れ側面図で、後退位置にある外側部材を示している。図２６は、解剖学的壁における閉塞部位に導入された図２３の拡張可能な多機能器具を示した破れ斜視図である。図２７は、閉塞部位に初期空間を作るために拡張位置にある図２６の拡張可能な多機能器具の拡張可能部材を表した破れ斜視図である。図２８は、図２７の拡張可能な多機能器具の拡張可能部材が閉塞部位に第２の広い空間を作ると共に、さらなるポータルスリーブが上記第２の空間に連通して置かれているところを表した破れ斜視図である。図２９は、図２８のさらなるポータルスリーブを通って導入された器具を表した破れ斜視図である。図３０は、本発明の拡張可能な多機能器具の別の変形例の遠位部の破れ側面図である。図３１は、本発明の拡張可能な多機能器具のさらなる変形例の遠位部の破れ側面図である。図３２は、本発明の拡張可能な多機能器具のさらに別の変形例の遠位部の破れ斜視図である。図３３は、図１７の拡張可能な多機能器具を腹腔前内視鏡下直接ヘルニア修復術に使用しているところを示した破れ斜視図である。図３４は、図２２の拡張可能な多機能器具を腹腔内内視鏡下直接ヘルニア修復術に使用しているところを示した破れ斜視図である。図３５は、図３２の拡張可能な多機能器具を腹膜腔外内視鏡下直接ヘルニア修復術に使用しているところを示した破れ斜視図である。図３６は、本発明の拡張可能な多機能器具の別の変形例の遠位部の破れ側面図である。図３７は、本発明の拡張可能な多機能器具の別の変形例の分解斜視図である。好ましい実施の形態の説明本発明による拡張可能な多機能器具１０は、図１および図２に示される如く、細長の内側管状部材１２と、内側管状部材１２の回りに同心状に配置された細長外側管状部材１４と、拡張可能部材１６と、内側部材１２の近位端を載せたハブ１８を含んでいる。内側部材１２は、金属やプラスチチックなどの、適当な硬質、半硬質、可撓性、または曲げ可能な医療向材料の何れによって作られていてもよく、また、処置用途に応じて、円筒形あるいは管形状を含むいかなる望ましい断面形状を有していてもよい。内側部材１２は、直線状でもよく、予め定められた湾曲部、屈曲部あるいは傾斜部を有してもよく、また、以下にさらに説明されるように、使用中に選択的に屈曲、傾斜、あるいは湾曲させてもよい。内側部材１２は、遠位端２０と、ハブ１８に取り付けられた近位端と、内側部材の遠位端と近位端との間に長手方向に延びる内腔、すなわち、内部通路を含んでいる。器具１０用の拡張可能部材１６は、図３に示されるように、内側部材１２の遠位端２０で支持されている。上記拡張可能部材は、閉ざされた遠位端２４と、内側部材の遠位端２０に固定された開口近位端２６とを有する本体、すなわち、エンベロープ（envelope）またはバッグを画定するように形造られた、１またはそれ以上の層の材料で形成されている。内側部材の内腔は、拡張可能部材の内部と連通している。拡張可能部材の近位端２６は、粘着的にシールすることやメカニカルシールを使用することを含む多くの様々な方法で、内側部材１２に固定可能である。拡張可能部材１６の近位端２６は、管状首部として形成されていて、上記管状首部は、密閉された、あるいは流体密のエンベロープを形成するために、周囲の、すなわち円周方向のシールに沿って内側部材１２の遠位端２０に固定されるように、この遠位端に密着するように形造られている。拡張可能部材１６は、図３に示された上記拡張可能部材１６を外側部材１４に収容させている非拡張位置、すなわち、折りたたみ位置から、図２に示された器具１０の遠位端で増大部すなわち突起を形成する拡張位置に移動可能である。上記拡張可能部材１６は、医療向シリコン、ラテックスラバーあるいはスポンジなどの拡張可能、伸長可能、折り畳み可能、可撓性、弾性、延伸可能、あるいは、伸縮性材料で作ることも、プラスチックなどの非伸縮性、非延伸材料で作ることもできる。好ましくは、上記拡張可能部材１６は、耐引き裂き性、耐破損性材料で作られていて、この拡張可能部材の材料を通して視覚化可能なように透明である。上記拡張可能部材１６は、様々な予め定められ、あるいは予備成形された形を含むいかなる望ましい断面形状を有していてもよい。器具１０のための拡張可能部材１６は、連続的に拡大、膨張可能な風船形のもの、あるいは膜の一種であり、この膜は、拡張位置において側面から見ると、予め定められ、あるいは予備成形された三角形状を有する延伸可能な弾性材料で作られている。上記拡張可能部材１６は、先の出願第０８／２４９,１１６号に開示の如く、拡張位置において、端面から見ると、様々な形状を有することができる。層、膜、すなわち本体２２は、上記拡張可能部材１６によって、例えば、図２に示されるようにその外面の全体あるいは一部に沿って支持されても、あるいは、先の出願第０８／２４９,１１６号に開示のように拡張可能部材内に支持されてもよい。上記層または膜は、永続的に、移動可能に、あるいは分離可能に上記拡張可能部材に取り付けられても、あるいは上記拡張可能部材によって支持されてもよい。上記拡張可能部材を移動あるいは分離可能な場合、上記膜は、器具によって、組織構造に適用でき、あるいは、器具から取り外されて人体に残すこともできる。上記層２２は、先の出願で開示のように、吸収性材料で形成されても良い。上記膜２２は、抗凝固剤、抗接着剤、あるいは凝固剤で形成されても、あるいは、それらを含んでも良い。なお、凝固剤を含む上記膜は、通常、使用中に溶解し、一方、抗凝固剤を含む膜は、通常、使用中に溶解するのでなく、人体に吸収される。抗凝固剤、抗接着剤を含む膜の一例として、テキサス州、アーリントンのジョンソン＆ジョンソン・メディカル・インコーポレイテッドによって販売されたインターシード（Interceed）がある。凝固剤を含む膜の例として、テキサス州アーリントンのジョンソン＆ジョンソン・メディカル・インコーポレイテッドによって販売されたサージカル（Surgical）およびインスタット（Instat）、および、マサチューセッツ州ウォーバムのメッド・ケム・プロダクツ・インコーポレイテッドによって販売されたアビテン（Aviten e）がある。上記膜は、組織に適用させるために、抗生物質、化学療法薬などの薬剤を、その他の作用物同様に含んでいても良い。ハブ１８は、プラスチック等のいかなる望ましい材料で作られてもよく、また、外科医が握り易いように、切頭三角形状あるいは切頭円錐形状を含むいかなる望ましい形状を有しても良い。もし望むなら、拡張位置における拡張可能部材１６の予め定められた形状に対応するように、ハブ１８の形状を選択しても良い。内側部材１２を受け入れるための縦方向通路が、ハブ１８を貫通していて、上記内側部材１２は、粘着的に接続することや、ねじ付接続を用いることなどの様々な方法で、永続的に、あるいは取り外し可能にハブ１８に固定可能である。流入管すなわち導管２８は、器具を貫通して作業チャネルすなわち手術チャネルを提供している内側部材１２の内腔と連通するように、外側からハブ１８の縦方向通路内に延び、すなわち、縦方向通路と連通している。流入管２８の近位側は、流体供給源と連結されるように、コネクタ３０で終了している。止コックなどの弁３２は、拡張可能部材１６へのまたはそこからの流体流を制御するために、管２８と連通している。上記作業チャネルを通して器具を導入可能にし、器具が作業チャネルを通らないときは、上記作業チャネルを閉じ、つまり封鎖可能にするよう、弁３２は、様々な仕方で設計可能である。外側部材１４は、上記拡張部材１６が上記外側部材１４内に配置されたとき、上記拡張部材１６を折り畳まれた位置、すなわち、非拡張位置に維持するに十分な硬さを有する、金属やプラスチックを含むいかなる望ましい医療向材料でつくられても良い。外側部材１４は、上記内側部材１２を受け入れる一方、上記内側部材１４および／あるいは上記外側部材１４の相対的な動きを可能にする内径、すなわち、大きさを有している。外側部材１４は、遠位側が遠位端３４で、近位側がノブあるいはフランジ３６で終了している。ノブ３６は、外側部材１４を内側部材１２に対して相対的に移動させるために、ハブ１８をつかんでいる手によってノブをつかみ易くするいかなる望ましい形状を有しても良い。図１に示されるように、ノブ３６は、つかみ易くするため、その表面上に隆起あるいは溝を有する拡大環状構造を有している。器具１０のための外側部材１４は、上記拡張部材１６が上記外側部材１４内に配置されて非拡張位置に維持されている、図１に示される伸長位置と、上記拡張部材１６が拡張位置に移動させられている、図２に示される後退位置の間を移動するように、内側部材１２上に摺動可能に配置される。上記外側部材１４を伸長位置と後退位置の間を動かすために、図示されたハブおよびノブの他にも、様々なハンドル構造を内側部材１２および外側部材１４と連結でき、また、そのようなハンドル構造は、上記内側部材と外側部材を相対的な位置に固定するための様々なロック機構を含んでもよいことは理解されねばならない。器具１０において、上記外側部材１４の上記内側部材１２に対する位置は、摩擦によって保たれている。上述の器具１０は、基本的な形の本発明の代表例である。しかしながら、以下にさらに説明するように、様々な変形および／あるいは追加を本発明に行い得ることは理解されるべきことである。使用中、上記器具１０は、通常、非拡張位置に通常設けられている拡張部材１６が、図１に示されるように外側部材１４内に配置されるように、伸長位置に外側部材１４を備えている。上記外側部材１４が伸長位置にあるとき、上記外側部材の遠位端３４は、内側部材の遠位端２０の遠位に位置させられ、その距離は、拡張可能部材１６のいかなる部分も身体に導入中に露出されないように、内側部分１２から突出している拡張可能部材の部分の長さＬと少なくとも同じ長さである。外側部材１４が伸長位置にあり、拡張可能部材１６が非拡張位置にある状態で、上記器具１０は、内視鏡検査のポータルを通して身体の閉塞部位にある潜在的な空間に挿入される。上記ポータルは、比較的小さい、自然の開口、切開の開口、あるいは、ポータルスリーブあるいはトロカールスリーブなどの器具チャネルである。図４は、上記器具１０が、身体内に位置された遠位端を有するポータルあるいはトロカールスリーブＳの内腔、特に、上記ポータルスリーブＳ内に配置された貫通部材を介して、閉塞された解剖学的部位の潜在的な空間に導入され、上記ポータルスリーブの遠位端が望ましい位置に位置決めされると、そこから引き戻されることを示している。図４に示される閉塞部位は、均一組織Ｔ内にあり、組織Ｔには、通常、視覚化のため、あるいは、手術処置を行うための空間が無いという点において、閉塞されている。外側部材１４の遠位端３４は、閉塞部位に位置させられ、いったん、上記外側部材の遠位端３４が潜在的な空間に適切に位置させられると、外側部材１４を後退位置にまで内側部材１２に対して近位側に動かすため、図４の矢印に示されるように、ノブ３６がハブ１８に向かって近位側に手動で動かされる。処置用途に応じて、外側部材１４を後退位置に移動させるために、内側部材１２と外側部材１４の両方が強く握る動作で互いに相対的に移動可能なように、上記ノブ３６およびハブ１８を片手でつかめるようにしても良いことは理解されるべきである。図５は、完全な後退位置にある外側部材１４を示し、この場合、外側部材の遠位端３４は、拡張可能部材の遠位端２４の近位側に配置されていて、その離間距離は、上記内側部材を越えて突出する拡張部材１６の全体あるいは実質的に全体が露出されるように、長さＬと等しいか実質的に等しい。しかしながら、拡張可能部材があまり露出されないことが望ましい場合には、上記外側部材１４は、選択的に、伸長位置と完全後退位置の間の様々な中間後退位置に手動で動かされても良いことは理解されるべきことである。拡張可能部材１６を非拡張位置から拡張位置に動かすに先立って、例えば内視鏡Ｅなどの映像化器具を、内視鏡Ｅの画像受像遠位端１３を上記拡張可能部材１６内に位置させるように、流入管２８を通して内側部材１２の内腔に導入してもよい。したがって、閉塞部位にある拡張可能部材１６の位置は、手術空間を生じさせるに先立って、映像によって確認できる。上記器具１０を用いて、閉塞部位に手術空間を生じさせるため、図５に示されるように、上記拡張可能部材１６を非拡張位置から拡張された位置へ動かすために、流入管２８および内側部材１２の内腔を通して拡張可能部材１６の内部に流体を供給する。拡張可能部材１６へのあるいはそこからの流体流を制御することによって、拡張位置における拡張可能部材１６の大きさは、生じさせたい空間の大きさに従って、また、処置における使用法に応じて、選択的に、大きくも小さくもできる。拡張可能部材１６を拡張位置に移動させることによって、拡張可能部材１６による組織の押圧、変位、拡張、切開、あるいは収縮によって、初期空間Ｓ¹が、閉塞部位に生じさせられる。必要なら、上記初期空間Ｓ¹は、器具１０を例えば図５の矢印に示されるように縦方向に前後に動かして、組織Ｔをさらに収縮、切開、分離あるいは移動させて、点線で示される第２の空間Ｓ²を生じさせることによって拡大できる。こうして、初期空間および第２の空間を、内視鏡によって直接映像化しながら生じさせることができる。したがって、上記器具１０は、映像化および／あるいは隣接組織の処置のために、閉塞部位における潜在的な空間から実際の手術空間を生じさせ、また、このようにして生じさせられた手術空間を利用して様々な処置を行うこと可能にする。本発明は、２段階工程で手術空間を生じさせる。この２段階工程によって、小さい初期空間を映像化のために閉塞部位に生じさせ、初期空間が適切な位置にあることを映像で確認した上で、様々な手術法を行うのに必要な空間を提供するため、第２の大きい空間を初期空間から生じさせる。初期空間を介しての直接映像化を行うことによって、必要なら、第２の、最終空間を生じさせるために、組織を分離可能にするため、直接映像化しながら結合組織構造を切断できる。さらに、もし初期空間が適切に位置していない場合、大きい最終空間が形成されてしまう前に、適切な位置をみつけることができる。上記器具１０は、手術空間を維持するためおよび／あるいは組織を操るために、適切な位置で維持できる。上記器具自体が、上記拡張可能部材内に手術空間、すなわち作業空間を画成でき、上記空間を介して、様々な処置を行うことができる。上記器具が適切な位置で維持されている場合、上記器具は、もし手術空間がつぶれたり、失われた時に、手術空間を再び生じさせるために利用できる。上記拡張可能部材１６は、手術空間に流体および／あるいは様々な追加の器具を導入可能にするため、以下にさらに説明するように、この拡張可能部材を貫く通路を有していても良い。器具１０は、単一ポータルに関連して図示されているが、複数穿刺処置において様々な器具を導入するために、さらなるポータルを手術空間と連通させて配置しても良い。初期空間Ｓ¹を生じさせるのに続いて、第２のより大きな手術空間Ｓ²を、上記器具１０を動かす以外にも様々な方法で生じさせることができる。空間Ｓ²を生じさせる１つの方法として、初期空間Ｓ¹に圧力下の吹送流体を導入させる方法がある。好適な流体は、ＣＯ₂、Ｎ₂Ｏ、蒸留水、食塩水、ヒスコン(Hyscon)などの高密度グルコース、デキストラン、透明医療向ゼリー、あるいは、ヒラン(Hil an)などの粘弾性物を含む。吹送流体はスリーブＳ、内視鏡Ｅ、通路を設けられた器具１０を通して、あるいは、複数穿刺処置での第２のポータルを通して導入される。空間Ｓ²を生じさせるもう１つの方法は、器具１０の通路あるいは第２のポータルを通して、初期空間Ｓ¹にもう一つの拡張可能な多機能器具を導入することである。その場合、器具１０は手術空間を生じさせた後スリーブＳから引き取られ、手術空間は、吹送流体、特に、デキストランあるいはゼリーを手術空間に導入することによって維持することができる。拡張可能な多機能器具を用いて生じさせらせた空間の大きさおよび形状は、拡張位置にあるときの拡張可能部材の大きさおよび形状、および閉塞部位の解剖学的組織の性質に左右される。例えば、上記拡張部材に大きさおよび形が実質的に一致する空間が形成されるほど、解剖学的組織が拡張位置の拡張可能部材と実質的に適合する場合がある一方、組織層の分離のために拡張部材よりも大きい空間が形成される場合もある。組織の性質によっては、組織の連続する構造を穏やかに動かし、組織を分離可能にし、手術空間を生じさせるのを容易にするために、身体の外部から器具を動かすこともできる。非拡張位置と拡張位置との間で拡張可能部材を動かすために、ここに述べられる様々な吹送流体を含む様々な流体を使用できる。好ましい物質は、食塩水などの不混和性物質の場合には有り得るように、体内で拡張可能部材が破裂した場合に、可視性が奪われないように、血液との不混和性の、デキストラン、高粘性ゲルおよびその他の物質を含む。拡張可能部材１６の全体あるいは一部は、吸収材料２２の層で覆われているか、あるいは、吸収材料で形成されている。上記吸収材料は、血液などの身体の流体を吸収あるいは集めるのに利用できる。拡張可能部材１６および／あるいは吸収材料２２は、様々な凝固、抗凝固、抗生および治療物質を含んでいてもよい。拡張可能部材１６の外側表面は、処置用途に応じて、解剖学的組織と接触および／あるいは解剖学的組織を処理するように不規則、つまりでこぼこでもよい。内視鏡や電荷結合素子などの様々な映像化装置を、映像化のために利用してもよい。上述の方法の変形例によると、拡張可能な多機能器具の導入に先じて、あるいは、拡張可能な多機能器具を拡張位置に動かすに先じて、初期空間Ｓ'を生じさせるため、吹送流体が閉塞部位に導入あるいは注入される。ポータルスリーブＳ、拡張可能な多機能器具、あるいは、上記閉塞部位と連通しているそのほかの器具あるいはポータルを通して、上記流体を上記閉塞部位に導入させてもよい。圧力下にある流体を閉塞位置に導入あるいは注入するために、針、ツオヒー(Thohy )針、安全針、ベレス（Verres）針、および、ゲージ表示器を有する圧力注入器あるいは圧力ポンプを有する標準トロカールおよび安全トロカールを含む多くの様々な器具を利用できる。図６は、胸部組織Ｔ^Bを移動させて初期空間Ｓ¹を生じさせるために、ポータルスリーブＳを通して、組織Ｔ^B内の閉塞部位に流体Ｆが導入されているところを示している。望ましい部位に初期空間Ｓ¹を生じさせることは、ポータルスリーブＳあるいは多穿刺技術における第２ポータルを通して導入された内視鏡Ｅを介して、視覚的に確認できる。手術空間Ｓ²を生じさせるため、ポータルスリーブＳ、流体を導入するために用いられた器具、初期空間Ｓ¹ に連通している追加のポータル、あるいは手術チャネルを有する内視鏡Ｅを介して、器具１０が初期空間Ｓ¹に導入される。拡張可能部材１６は、初期空間Ｓ¹ で、あるいはその付近で露出され、上述のように、手術空間Ｓ²を生じさせるために拡張位置に移動させられる。閉塞部位に流体を導入することによって閉塞部位に空間を生じさせる方法は、胸、肺、脳、塞栓性あるいは閉無尿の動脈あるいは静脈に隣接する構造、腹膜後空間、脊髄の個々の層、腹壁ヘルニアあるいは鼠径ヘルニア治療のための腹膜前空間、神経節，良性脱落期嚢腫，あるいはメラノーマを取り除く処置を含む皮下組織の処置、腸あるいは腸壁、肝臓、脾臓、膵臓、腎臓、胆嚢、子宮壁、液体注入あるいは導入を利用したレチウス空間、病的部位、および、病的部位に隣接する部位などの、器官構造や処置において特に有効である。拡張可能な多機能器具１０が有することができる様々な変形例には、骨部４０と方向制御システム４２を含むものも幾つかある。図２に示されるように、骨部４０は、拡張可能部材１６を形作り、頑丈にし、および／あるいは拡張させるために、拡張可能部材１６の内側、拡張可能部材１６を形成している材料内、あるいは、拡張可能部材１６の外側に配置される。骨部４０は、拡張可能部材１６内に配置され、内側部材１２の遠位端に接続された近位端と、内側方向に曲げられた、すなわち傾斜した指部４６に結合された遠位端とを有する複数のアーム４４を含んでいる。指部４６は、アーム４４から器具１０の縦軸方向へ曲げられ、すなわち傾斜してていて、拡張可能部材１６の平坦な外形、すなわち表面形状を形成している丸形こぶで終了している。骨部４０は、拡張可能部材１６を拡張位置に偏倚させるために、側面から見ると器具の縦軸つまり長手方向の軸から離れた方向に外方向に偏倚されたアーム４４を有する予め形成された三角形状を有している。上記骨部は、端面から見ると平らな形状を有していて、アーム４４が互いに整合されている。アーム４４は、拡張可能部材１６が非拡張位置に移動可能なように、器具１０の縦軸方向内側に移動可能である。金属やプラスチックなどの様々なばね材料を含む様々な材料を骨部４０のために利用してもよく、また、骨部４０は、拡張可能部材１６が拡張位置でその形を維持すると共に解剖学的組織の処置を可能にするに足る硬さを有することが望ましい。方向制御システム４２は、図２に示されていて、また、図７に摸式的に示されている。上記方向制御システム４２は、少なくとも可撓性遠位端部を有する可撓性の、あるいは部分的に可撓性の、または曲げ可能な内側部材と共に使用されるものである。方向制御システム４２は、左右制御線４８Ｌおよび４８Ｒ、上下制御線４８Ｕおよび４８Ｄを含んでいる。上記左右上下制御線は、内側部材１２に沿って長手方向に延びていて、内側部材の遠位端２０と接続された遠位端と、左右制御輪５０Ｌおよび５０Ｒ、上下制御輪５０Ｕおよび５０Ｄに夫々接続された近位端を有している。上記左右上下制御輪は、ハブ１８に取付けられていて、図１および図２では、左制御輪５０Ｌのみが図示されている。１またはそれ以上の制御線４８を対応する制御輪の回転を介して巻き上げることによって、内側部材の遠位端が対応する選択的角度で移動あるいは屈曲させられ、制御線を制御輪の回転を介してほどくことによって、先の出願０８／２４９，１１６号に開示のように、内側部材が真っすぐにさせられる。骨部４０と方向制御システム４２とを有する器具１０の使用は、拡張可能部材１６が、伸長位置にある外側部材１４による骨部４０の拘束を介して非拡張位置に維持されることを除いて、先の説明と同様である。外側部材１４を後退位置に動かすと、アーム４４が解放されて自動的に外方向に伸び、骨部４０が拡張可能部材を拡張位置に維持および／あるいは固定したまま、閉塞部位に初期空間を生じさせるために、拡張部材が拡張位置に移動させられる。骨部４０は、拡張可能部材１６の流体による拡張を用いても、用いなくても、拡張可能部材を拡張位置に機械式に移動させるのに利用できる。しかしながら、器具１０において、拡張可能部材の形状を満たすため、あるいは、拡張可能部材１６を更に拡張させて、拡張位置にある拡張可能部材の大きさを増大させるために、上述のように流体を拡張可能部材に供給してもよい。拡張可能部材１６の方向あるいは向き変えるために、１またはそれ以上の輪５０を回転させて対応する制御線４８を動かし、拡張可能部材１６の角向きを変更あるいは調節する。例えば、図８は、角度調節後の器具１０を示しており、図中、拡張可能部材１６の縦軸は器具１０の縦軸から斜めに偏っている。図８に示されるように、後退位置にある外側部材１４は、可撓性内側部材の遠位端部を露出させるに十分な距離、近位側に移動させられる。選択的に、外側部材の遠位端３４が、角度調節を可能にしながら、後退位置にある内側部材遠位端２０と整合、あるいは実質的に整合するように、少なくとも外側部材１４の遠位端部を可撓性あるいは曲げ可能にしてもよい。図８は、対応する矢印の方向に伸長つまり前進させられる上制御線４８Ｕと、内側部材の遠位端を斜め下方向に移動させるために対応する矢印の方向に巻き取られる、つまり後退させられる下制御線４８Ｄとを示している。これら制御線は、拡張可能部材を斜めに関節を用いて接合するのに利用できる。拡張可能部材の斜めの動きは、組織を収縮つまり動かすことによって閉塞部位に空間を生じさせるのに利用可能であることは理解されるべきことである。骨部４０を有する器具１０は、拡張可能部材１６からの流体の放出、および／あるいは骨部４０を拘束するための外側部材１４の伸長位置への移動に続いて、体外に取り出し可能である。本発明の拡張可能な多機能器具では、様々な骨部を利用でき、拡張位置で平担あるいは非平担な形状を含む様々な異なる予め定められた形状を有するように、幾通りにも設計可能である。上記骨部は、先の出願で開示されたように、複数の関節をなす旋回可能な、あるいは接合されたアームとして設計されてもよい。骨部は、内側部材以外の種々の構成部分に取り付けられてもよい。また、骨部自体が、以下にさらに説明するように、分離した、独立の構成部品であってもよい。骨部は、拡張可能部材が骨部を介して膨張可能なように、中空あるいは管状であってもよく、また、上記骨部は、洗浄、吸引あるいは排膿、および／あるいは薬剤の供給ために使用してもよい。上記骨部は、器官や組織構造を操作するのに使用するために、上記拡張部材を丈夫にするのに利用できる。拡張可能な多機能器具は、器具の縦軸に対して斜めに通常配置される拡張可能部材を設けるように幾通りにも設計可能である。例えば、先の米国出願０８/２４９,１１６号に開示のように、拡張可能部材の縦軸が器具の縦軸から片寄る所に拡張可能部材を常に位置させる、すなわち偏倚させるために、方向制御システムの代わりに、内側部材、外側部材あるいは骨部のいずれか１つまたはそれ以上のものが、弾性，可撓性，曲げ可能，あるいは変形可能なセグメントあるいは、予め定められた曲げ，湾曲、角度あるいは形状記憶を有する首部を有していてもよい。セグメントあるいは首部を形成する方法の１つに、予め定められたバイヤスあるいは形状記憶を有する一定の長さの巻線などのスプリングセグメントとして形成する方法がある。図９は、中空骨部１４０を有する本発明に従った拡張可能な多機能器具の変形例を参照番号１１０で示している。拡張可能な多機能器具１１０は、管状内側部材１１２、外側部材１１４および拡張可能部材１１６を含む。拡張可能部材１１６は、円周方向シールにおいて内側部材１１２の遠位端１２０に接続された開口遠位端１２４と、円周方向シールにおいて骨部１４０の円筒形二重壁本体１５６に接続された開口近位端を有している。内側部材１１２が、流体および／あるいは器具を導入させるため、拡張可能部材１１６を貫いて中央作業チャネルすなわち手術チャネルを形成するように、内側部材１１２は、円筒形本体１５６内に配置されると共にそこから遠位側に突出している。骨部１４０は、本体１５６と接続された管状あるいは中空のアーム１４４を含み、上記本体は、内側円周壁１５８と外側円周壁１６０とを含む。上記外側円周壁は、内側円周壁と外側円周壁の間にアーム１４４の内部と連通する通路１６２を画成するように、内側円周壁１５８から間隔を開けて設けられている。アーム１４４は、拡張可能部材１１６内に配置されていて、アーム１４４の穴つまり開口１６４は、通路１６２と拡張可能部材１１６の内部の間に流体接続を提供する。内側部材１１２は、側面から見ると切頭円錐あるいは切頭三角形の外形を有するハブ１８を完全に貫通し、内側部材の腔の開閉を制御する弁１３２で終わっている。本体１５６はハブ１１８内に延び、追加流入口、導管、または通路１８０は、通路１６２と連通するように、ハブ１１８を横方向に貫通している。弁１８２は、追加流入管１８０、そして、結果として、骨部１４０を通る流体流を選択的に制御するため、ハブ１１８に沿ってその外側に取り付けられているか、または、ハブ１１８の凹部内に取付られている。外側部材１１４は、外向ねじ山１６８を外面に有する横方向フランジ１６６でその近位側が終わっている。器具１１０のためのノブ１３６は、細長い、遠位側に次第に細くなる形状を有し、ノブ１３６は、ねじ山１７２を表面に有する内側円筒壁によって画成された円筒形内側通路を有する。フランジ１６６は、通路１７０内に配置されていて、ねじ山１６８はねじ山１７２と螺合している。ノブ１３６を骨部１４０に対して回転可能にするため、本体１５６は、通路１７０を完全に貫通すると共に、ノブ１３６の端壁内の溝に取り付けられた横方向フランジ１７６を有している。器具１１０の動作は、ノブ１３６を手動で回転させることによって、外側部材１１４が、伸長位置と後退位置の間で内側部材１１２に対して移動させられることを除いて、器具１０について説明された動作と同じである。図９は、通路１７０の遠位端にあるフランジ１６６を点線で示していて、この時、外側部材１１４は伸長位置にある。第１の回転方向にノブ１３６を回転させると、フランジ１６６は、ねじ山１６８および１７２を介して、通路１７０に沿って近位側に移動させられ、それによって、外側部材１１４が、対応して近位側に、伸長位置から図９に示される後退位置へ内側部材１１２に対して移動させられる。外側部材１１４を後退位置に動すと、アーム１４４が外方向に開いて、拡張可能部材１１６を非拡張位置から拡張位置に動かす。拡張可能部材１１６は、拡張位置に維持することも、骨部１４０を通しての膨張を介して更なる拡張位置に移動させることもできる。なぜならば、追加流入口１８０を利用して、通路１６２、アーム１４４および穴１６４を介して拡張可能部材１１６の内部に流体を供給できるからである。様々な器具あるいは流体を内側部材１１２によって画成された手術チャネル、すなわち作業チャネルを通して導入できる。器具１１０は、解剖学上の組織の内部を貫通して閉塞部位に拡張可能部材１１６を導入するための、内側部材１１２に配置された貫通部材を含んでもよい。ノブ１３６が第２の回転方向に回転させられると、フランジ１６６、ひいては外側部材１１４が遠位側に伸長位置に向かって移動させられ、それによって、拡張可能部材が、身体から器具１１０を引き戻すため、骨部１４０を閉じ込めることによって、非拡張位置に移動させられる。図１０から図１３は、拡張可能な多機能器具の様々な変形例を示し、これら変形例において、拡張可能部材は、組織あるいは器官構造を握り、後退、あるいは操作するのに特に有効な複数の指形状を有している。図１０は、略Ｖ形拡張可能部材２１６を有する拡張可能な多機能器具２１０を示し、上記拡張可能部材は、組織あるいは器官構造を受けるための２本の外方向に傾けられた指部２１７を画成していて、上記指部２１７の間には、空間あるいは開口２１９を有する。拡張可能部材２１６は、内側部材２１２の遠位端を覆うと共にこの遠位端に接続された近位端と、内側部材２１２内に同心状に配置された制御管２２５の遠位端２２３に接続された凹状端部とを有している。制御管２２５が、流入管２２８と連通あるいはそれと一体に形成され拡張可能部材２１６を貫通する手術チャネルすなわち作業チャネルを画成するように、制御管の遠位端２２３を内側部材２１２の遠位端の遠位側に位置させるため、内側部材２１２の近位端と、制御管２２５の近位端は、ハブ２１８に取付けられている。上記内側部材２１２と上記制御管２２５の間を流体が流れることができるように、それらの間に、極小の隙間、あるいは空間２６２を形成するため、制御管２２５の外形は上記内側部材２１２の内径より僅かに小さくなっている。内側部材２１２および制御管２２５の近位端は、ハブ２１８内に延びていて、また、追加流入口２８０は、拡張可能部材２１６の内部に流体を供給するため、ハブ２１８と内側部材２１２の壁を貫通して内側部材２１２と制御管２２５の間の隙間２６２と連通している。器具２１０用の骨部２４０は、内側部材２１２の遠位端と接続された近位端を有する一対のアーム２４４を含んでいる。アーム２４４は夫々、指部２１７内に延びるように制御管２２５の遠位端２２３を越えて遠位側に延びる第１の直線状セグメント２４５と、指部２１７の先端を形成し、第１直線状セグメント２４５の遠位端を第２直線状セグメント２５１の遠位端に結合している湾曲形あるいはＵ字形セグメント２４９を含む。第２直線状セグメントは、湾曲セグメント２４９から制御管２２５の遠位端２２３に向かって近位側に延び、指部２１７の基部にある緩やかに湾曲あるいは傾斜した端部２５２で終わっている。上記第１および第２の直線状セグメント２４５、２５１は、互いに平行または実質的に平行で、第１直線状セグメントが外側縁を形成し、第２直線状セグメントが内側縁を形成して、指部２１７の幅を規定している。骨部２４０は図１０に示される拡張可能位置に拡張可能部材２１６を偏倚させている。拡張位置において、アーム２４４は、指部２１７を斜め外方向に偏倚させるため、器具の縦軸から離れる方向へ斜め外側に偏倚されている。外側部材２１４が伸長位置にある状態で、上記外側部材内に拡張可能部材２１６が配置された場合、外側部材２１４によって骨部２４０が折り畳まれ、あるいは制限されるため、上記拡張可能部材２１６は、非拡張位置に移動させられる。外側部材２１４が伸長位置から後退位置に移動することによって、アーム２４４が外方向にはね返り、かくして、移動可能部材２１６を自動的に拡張位置に動かす。そして、追加流入口２８０と、内側部材２１２と制御管２２５との間の隙間２６２を通して、流体を拡張可能部材２１６に供給可能になる。本発明に従った拡張可能な多機能器具の変形例を図１１の参照番号３１０で示す。図には、器具３１０の遠位部分のみが示されている。器具３１０は、遠位側に突出している３つの指部を画成し、指部の間に空間３１９を有する拡張可能部材３１６を含んでいる。拡張可能部材３１６には、制御チャネルあるいは手術チャネルは設けられておらず、器具３１０の縦軸と整合あるいは実質的に整合された中央あるい内側指部３１７’と、上記中央指部３１７’の両側に斜めに配置された２つの横側あるいは外側指部３１７”を含んでいる。器具３１０用の骨部３４０は、中央あるい内側Ｕ字形アーム３４４’と、内側部材３１２と連結された２つの横側あるいは外側アーム３４４”を含んでいる。アーム３４４’は、遠位端側に指部３１７’内へと延びて湾曲セグメント３４９’において終わっている平行な第１および第２直線状セグメント３４５’，３５１’を有している。上記湾曲セグメント３４９’は、上記直線状セグメント３４５’，３５１’を結合させ、また、指部３１７’の先端を形成している。アーム３４４”は、アーム２４４と同様、夫々が遠位側に指部３１７’内へと延びる第１の直線状セグメント３４５”と、湾曲セグメント３４９”を含んでいる。上記湾曲セグメント３４９” は、上記第１直線状セグメント３４５”の遠位端と、近位側に延び、指部３１７ ”の基部においてアーム３４４’に隣接している湾曲端部３５２”で終わっている第２の直線状セグメント３５１’を結合させている。アーム３４４”は、外側部材３１４が図１１に示されるように後退位置に移動させられた時に拡張部材３１６を拡張位置に偏倚させるため、器具３１０の縦軸から離れる方向へ斜め外側に偏倚されている。図１２は、４つの指部、すなわち、２つの内側指部４１７’と２つの外側指部４１７”を形成し、上記指部の間に空間４１９を有する拡張可能部材４１６を含む器具４１０の遠位部を示している。器具４１０は、内側部材４１２に配置された本体４５６に結合された２つのアーム４４４を有する骨部４４０を含んでいる。各アーム４４４は、遠位側に外側指部４１７”内へと延びる直線状セグメント４４５”と、上記直線状セグメント４４５”に結合され、外側指部４１７”の先端を形成している第１Ｕ字形セグメント４４９”と、内側指部４１７’の先端を形成し、湾曲セグメント４５３’によって第１Ｕ字形セグメントに接続されている第２Ｕ字形セグメント４４９’を含んでいる。上記第２Ｕ字形セグメント４４９’は、連続性および平滑性を提供するため、内側指部４１７’の基部で互いに隣接している湾曲端部４５２’で終わっている。アーム４４４は、外側部材４１４が図１２に示されるように後退位置にある時に拡張部材４１６を拡張位置に移動させるため、器具４１０の縦軸から離れる方向へ斜め外側に偏倚されている。図１３は、空間５１９を間に持つ５本の指部を形成する拡張可能部材５１６を含む器具５１０の遠位側部分を示している。拡張可能部材５１６によって形成されたこの指部は、二つの外指部５１７″と三つの内指部５１７′とを有する。器具５１０の骨部５４０は、各指部に対し一つずつ、５本のアーム５４４を有している。アーム５４４はそれぞれ、遠位側へ指部内を伸びる第１ストレートセグメント５４５と、指部の先端を形成し、かつ上記第１のストレートセグメントを近位側に伸びる第２ストレートセグメント５５１に連結するＵ字型のセグメント５４９を有している。この第２のストレートセグメントは、指部の付け根の湾曲した端部５５２で終わっているが、外指部５４４″は例外で、拡張可能部材５１６の外縁に沿って近位側に伸び、内側部材５１２で終わる第２ストレートセグメント５５１″を有している。アーム５４４は、拡張可能部材５１６を図１３に示された拡張位置に移動させるための予め決められたバイアスあるいは形状メモリを有しており、図１３においては、外側部材５１４が後退位置に移動させられた際に、拡張可能部材は開いた、手のような形を取っている。器具５１０の内側部材５１２は、外側部材５１４の後退位置への移動に応じて自動的に、拡張可能部材５１６を角度を成して位置付けるための、予め決められた曲げあるいは角度を付けて形成された遠位端部５４３を有している。図１４は細長い円筒状の拡張可能部材６１６を含む拡張可能な多機能器具６１０の遠位側部分を示しており、この拡張部材は、外側部材６１４が図に示される後退位置にある時には通常は湾曲したＪ字型の形を取る細長い骨部６４０を内部に有する。骨部６４０は、外側部材６１４が伸長位置に移動させられると、外側部材によって実質的にまっすぐな形状になるように移動させられる。先の図１０〜１３において述べた多指形状をした拡張可能部材の骨部は、種々の湾曲した多指形状を作るために、骨部６４０で述べたような、予め決められた湾曲あるいはＪ字型を有していていも良い。特に、湾曲した，手のような形状を有する拡張可能部材は、虫垂を腹膜後の空間から引き出すのに大いに役立つ。図１０〜１３に示された多指形状は、曲がっている場合には特に、組織を掴む場合や、また特に、組織をわきに引っ張ってその組織を邪魔にならない所に保って、手術の処置のための、または露出や切開において利用するための空間を作り出す場合に利点がある。上記指部は、種々の方向調整手段を使用することで、個々に制御可能に曲げたり、角度を付けたりあるいは湾曲させることができる。図１５は、７１６で拡張可能部材の変形例を示しており、そこでは拡張可能部材７１６は、扇状のばね板として構成された骨部７４０によって機械的に拡張されている。骨部７４０は、接合部７５４において重なり合うようにして互いに揺動可能に接続された近位端を有する複数の平らなアーム７４４を有する。接合部７５４は、アーム７４４を回転によって偏らせ、開いた扇状の形を取るようにして、拡張可能部材７１６を図で示される拡張位置に移動させるばね部（図示せず）を有している。拡張可能部材７１６は、隣接した器官の間の脱落期嚢腫部に接近するための手術用空間を作るのに特に役立つ。本発明の拡張可能な多機能器具の別の変形例が、図１６に８１０で示されている。拡張可能な多機能器具８１０は、後退位置にある場合にはＣ字型の形状を有し、二つの半円形の拡張可能部材部８１６ａおよび８１６ｂからなる拡張可能部材８１６を有している。部材部８１６ａおよび８１６ｂは、中央の手術用または作業用空間８２７に通ずる開口部８１９によって分離されたテーパー状の端部８２４ａおよび８２４ｂを有している。この手術用空間８２７は、この拡張可能部材部８１６ａおよび８１６ｂによって形成されている。すなわち、空間８２７は、拡張可能部材内に配置、あるいは拡張可能部材によって取り囲まれるようにして形成される。拡張可能部材部８１６ａおよび８１６ｂは、骨部８４０の本体部分８５６ａおよび８５６ｂにそれぞれ固定された閉遠位端８２６ａおよび近位端８２６ｂを有し、二つの液密の囲みを形成している。本体部分８５６ａおよび８５６ｂは内側部材８１２内に配置され、管状あるいは中空である。本体部分８５６ａおよび８５６ｂは、内側部材８１２内を長手方向に伸び、追加流入口８８０ａおよび８８０ｂとそれぞれ連通したハブ８１８の近位側において終わる。本体部分８５６ａおよび８５６ｂは、遠位側で中空の半円形のアーム８４４ａおよび８４４ｂにそれぞれ連結され、器具８１０の長手方向の軸から離れる方向に外側へ曲がっている。アーム８４４ａおよび８４４ｂは、内側に、近位側に曲がる遠位端部８２９ａおよび８２９ｂをそれぞれ有しており、この遠位端部は開口部８１９において拡張可能部材部のテーパー状遠位端に伸びる丸い隆起８３１ａおよび８３１ｂを持った滑らかな輪郭を形成している。アーム８４４ａおよび８４４ｂは、本体部分８５６ａおよび８５６ｂのルーメンにそれぞれ連通し、孔部８６４がアーム８４４ａおよび８４４ｂに設けられ、流体が拡張可能部材部の８１６ａおよび８１６ｂの内部に供給されるのを可能にしている。ハブ８１８は、内側部材８１２のルーメンと連通する送込管８２８と送込管８２８の反対側に角度を付けて配置された追加流入口８８０とを含む円筒状の形を有している。内側部材８１２の近位端および骨部８４０はハブ８１８に設けられ、本体部分８５６ａおよび８５６ｂを内側部材８１２内に、アーム８４４ａおよび８４４ｂを拡張可能部材部８１６ａおよび８１６ｂ内にそれぞれ配置している。器具８１０の外側部材８１４はその上に身体への外側部材８１４の挿入の深さを視覚で示すための印８３３を有している。器具８１０の使用例は先に述べたのと同様であり、アーム８４４ａおよび８４４ｂは通常半円形状をしており、外側部材８１４が図で示されるように後退させられると、拡張可能部材部８１６ａおよび８１６ｂをそれぞれ拡張位置に合わせるかあるいは移動させる。骨部８４０および追加流入管８８０ａおよび８８０ｂを介して拡張可能部材部８１６ａおよび８１６ｂの一方あるいは両方に流体を供給することができる。内側部材８１２のルーメンは、流体および／または種々の器具を空間８２７で導入可能にするための作業溝を形成しており、これによって手術処置は空間８２７内で行うことができる。骨部８４０の柔軟性により、使用中に拡張可能部材部８１６ａおよび８１６ｂを組織あるいは他の器具による接触に反応して互いに向かってあるいは互いから遠ざかるように移動させることができ、手術用空間８２７の大きさを変えて調整することができる。図１７は、９１０で拡張可能な多機能器具の変形例の遠位端部を示しており、ここでは、拡張可能部材９１６は、閉環状の、リング状の、トロイド形状、つまりドーナツ型の形状を有している。拡張可能部材９１６は、骨部９４０の管状本体部分９５６ａおよび９５６ｂに保持された外壁９３５および内壁９３７を有しており、閉じられたまたは封止された環状の囲みまたはバッグを形成している。内壁９３７は、内側部材９１２のルーメンと整合した通路形成部分９３８を有しており、手術用空間９２７と連通する作業溝を形成している。上記内外壁９３５および９３７は、拡張可能部材９１６の遠位端においてつながって、閉円あるいは楕円型の形状を形成している。骨部９４０は、骨部８４０と同様であり、内側部材９１２内に配置されかつ拡張可能部材９１６内を伸びる半円形あるいは曲がったアーム９４４ａおよび９４４ｂに接続された本体部分９５６ａおよび９５６ｂを有している。アーム９４４ａおよび９４４ｂは中空あるいは管状であり、本体部分９５６ａおよび９５６ｂのルーメンとそれぞれ連通し、アーム９４４ａおよび９４４ｂ内の孔部９６４により、本体部分９５６ａおよび９５６ｂと連通する追加流入口を介して拡張可能部材９１６の内部に流体を供給することができる。種々の器具および／または流体は、内側部材９１２のルーメンおよび拡張可能部材９１６の通路形成部分９３８を通って手術用空間９２７に導入できる。アーム９４４ａおよび９４４ｂは、通常外側に曲がった形をしており、外側部材９１４が図で示されるように後退位置に移動させられると、拡張可能部材９１６を拡張位置に移動あるいは合わせる。図１８および図１９は、例えば壁Ｗを形成している組織の隣接している層の間に空間が足りないために閉塞している鼠径部の壁Ｗなど、解剖壁内の閉塞部位に手術用空間を作るための器具９１０の使用例を示している。図１８に示されるように、例えばポータルスリーブＳ内に配置されたトロカールなど、ポータルまたはトロカールスリーブＳおよび貫通部材Ｐを含む貫通器具が壁Ｗに挿入される。貫通部材Ｐは、外部をねじ切りされた遠位側尖端部９３９を有しており、この尖端部は、貫通部材Ｐの回転によって解剖壁Ｗへの制御された貫通を行うためには鋭くても鈍くてもよい。貫通部材Ｐは壁Ｗに挿入され、ポータルスリーブＳの遠位端を手術上の使用において閉塞部位に位置させ、貫通部材のねじ切りされた尖端部により、ポータルスリーブを少ない力で所望の正しい位置または層に位置させることができる。図１８は、横断方向腹部筋Ｍと腹膜前の脂肪Ｆ′の間に位置するスリーブＳの遠位端を示している。一旦ポータルスリーブＳの遠位端が適所に配置されると、貫通部材ＰはポータルスリーブＳを正しい位置に残してポータルスリーブＳから引っ込められる。拡張可能な多機能器具９１０はその後、拡張可能部材９１６を非拡張位置に保ったままで、伸長した位置に外側部材９１４が位置した状態のポータルスリーブＳに挿入される。一旦器具９１０が閉塞部位に適所に配置されると、外側部材９１４は拡張可能部材９１６を露出するために後退位置に移動させられる。骨部９４０のアーム９４４ａおよび９４４ｂは自動的に外側に弾いて拡張可能部材９１６を拡張位置に移動させ、図１９に示されるように壁Ｗの隣接する層の分離を引き起こし、筋肉層Ｍおよび脂肪層Ｆ′の間に初期空間Ｓ¹を作る。流体を拡張可能部材９１６に供給し、拡張可能部材の形状を維持あるいは大きくしたり、あるいは拡張可能部材をさらに拡張した位置に移動させて第２のさらに大きな空間を作ることができる。しかし、第２のさらに大きな空間はまた本明細書で先に述べた種々の方法で作ることもできる。内視鏡Ｅなどの映像化装置を、内側部材９１２のルーメンおよび拡張可能部材９１６の通路形成部分を通って導入し、適当な空間の作成を視覚的に確認することができる。こうして作られた手術用空間を利用して、種々の手術処置を行うことができる。つまり、種々の手術処置を内視鏡Ｅによる直接的な映像化のもとに拡張可能部材９１６の手術用空間９２７内で行うことができる。その他の様々な器具および／または流体を、内側部材９１２および拡張可能部材９１６の通路形成部分９３８、あるいは内視鏡Ｅを通して導入することができる。従って、本発明を用いて皮膚と腹膜の間の層を分離あるいは切開して、手術処置を行うための手術用空間を腹膜に入り込むことなく作ることができる。作業空間を形成する拡張可能部材を有する拡張可能な多機能器具のさらなる変形例が、図２０〜２２に示されている。ここでは、器具の遠位端部のみが示されている。図２０に示された器具１０１０の拡張可能部材１０１６は側面において中央の三角形の手術用空間１０２７の周囲を囲むような三角形の形状を有している。拡張可能部材１０１６には、拡張可能部材１０１６の外側の横断方向の側面に沿って伸びる二つの外側アーム１０４４″および手術用空間１０２７の側面に沿って伸びる二つの内側アーム１０４４′を含む骨部１０４０が設けられている。アーム１０４４′および１０４４″は、内側アーム１０４４′が三角形の手術用空間１０２７の横断方向側面に形状が合致する中間形セグメント１０４７を有することを除いてはアーム４４と同様である。器具１０１０の内側部材１０１２および外側部材１０１４は柔軟な遠位端部と、内側および外側部材の選択的な制御された曲げや伸ばしにより、拡張可能部材１０１６の角向きを変えたり、または拡張可能部材１０１６を角度をつけて連結するための制御線つまり制御ワイヤ１０４８Ｕおよび１０４８Ｄを有している。図２１に示される器具１１１０は、拡張可能部材１１１６が丸い手術用空間１１２７を形成することを除いては器具１０１０と同様である。器具１１１０の骨部１１４０は、内側アーム１１４４′が手術用空間１１２７の横断方向側面に形状が合致する曲がった中間セグメント１１４７を有することを除いては骨部１０４０と同様である。器具１１１０の内側部材１１１２は、予め決められた曲げを有するコイルワイヤからなる遠位端部１１４３を有する。この遠位端部１１４３は伸長位置における外側部材１１１４によって真っすぐあるいは実質的に真っすぐな状態に保たれ、拡張可能部材１１１６の角度方向が外側部材１１１４の後退に応じて自動的に調整されるように、外側部材１１１４が図で示されるように後退位置の遠位端部１１４３の近位側に移動させられると、予め決められた曲がった形状に自動的に戻るようになっている。図２２に示される器具１２１０は、拡張可能部材１２１６を有している。この拡張可能部材１２１６は深さあるいは厚みが増した円筒形状を有することを除いては、拡張可能部材９１６と同様である。拡張可能部材１２１６の骨部１２４０は、拡張可能部材１２１６の深さあるいは厚みに沿って互いと整合し枝管１２５５から垂直に伸びる複数のアーム１２４４ａおよび１２４４ｂを有することを除いては、骨部９４０と同様である。相対移動可能な内側および外側部材によって保持される多数の拡張可能部材を有する拡張可能な多機能器具の変形例が図２３の１３１０で示されている。器具１３１０は、拡張可能部材１３１６ａを保持する外側部材１３１４、外側部材１３１４内に配置され、拡張可能部材１３１６ｂを保持する内側部材１３１２、内側部材１３１２内に配置される貫通部材Ｐを有する。内側部材１３１２は、遠位側では遠位端１３２０において、近位側ではハブ１３１８に設けられた近位端で終わる。外側部材１３１４は、遠位側では遠位端１３３４において、近位側ではハブ１３１８に設けられた近位端で終わる。外側部材１３１４は、外側部材１１４において先に述べたように、外側部材１３１４を内側部材１３１２に対して長手方向に移動可能にするノブ１３３６のねじ切りされた内部円筒状壁と協働係合するねじフランジを保持している。貫通部材Ｐは、処置的使用によって種々の中実、中空、針形状を含む種々の形状を有していてもよい。貫通部材Ｐは、解剖組織を突き刺すための外部にねじ切りされた遠位側尖端部１３３９およびハブ１３１８の端部１３５７に設けられた近位端を有している。貫通部材Ｐの尖端は鋭くても鈍くてもよく、器具１３１０の場合には、この尖端１３３９は胸膜や心膜の手術において特に利点のある使用を目的とする場合には幾分鈍くしてある。ハブ１３１８は、内側部材１３１２および外側部材１３１４の近位端を備えた本体部分１３５９および貫通部材Ｐの近位端を備えた端部１３５７を有し、この端部は、例えば貫通部材Ｐを内側部材１３１２から引っ込めるのを可能にする何等かの適当な解放可能な戻り止めを使用して上記本体部分に分離可能に保持されている。本体部分１３５９は、貫通部材Ｐが内側部材１３１２から引っ込められた際に、本体部分１３５９を通る長手方向の通路を閉める、あるいは封止するためのバルブアッセンブリを有している。このバルブアッセンブリは公知であってもよい。拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂは、外側部材１３１４および内側部材１３１２の遠位端にそれそれ隣接して支持され、外側部材１３１４および内側部材１３１２の外壁部、すなわち二重壁構造として形成されている。図２４は、内側部材１３１２の構造を示しており、それはまた外側部材１３１４の構造を示すものにもなっている。図２４に示されるように、内側部材１３１２は中空で、内側部材遠位端１３２０において横断方向遠位側の壁部１３６５によってつなげられる外壁１３６１と内壁１３６３とを有する二重壁構造となっている。上記内壁１３６３は内側部材１３１２を通るルーメンまたは通路１３６７を形成しており、このルーメンまたは通路は、流体および／または器具を通すための作業溝としての役割を果たす。拡張可能部材１３１６ｂは、外壁１３６１の円周部分を形成する拡張可能な弾性部材の層を含んでいる。流体用通路を形成している管部１３６２は、外壁１３６１および内壁１３６３の間に配置され、拡張可能部材１３１６ｂをハブ本体部分１３５９に配置されている追加流入口１３８０ｂにつながっている。外側部材１３１４の構造は、内側部材１３１２で述べたのと同様であり、拡張可能部材１３１６ａをハブ本体部分１３５９に配置されている追加流入口１３８０ａにつなぐ外側部材用の流体用通路を有している。付加的な追加流入口１３８０ｃは、内側部材１３１２のルーメンを通じて流体を供給するためにハブ本体部分１３５９に配置される。内側部材１３１２および外側部材１３１４は、拡張可能部材１３１６を追加流入口と連結するため様々な方法で設計または構成してもよく、また、追加流入口は、図に示されるハブ本体部分の他に器具１３１０上の種々の位置に配置してもよい。例えば、外壁１３６１と内壁１３６３の間の空間を分離管なしに流体用通路として使用することができ、上記内側および外側部材は、中実の壁の厚みに掘削された溝または中実の壁に形成されたくぼみ内に形成された溝によって形成された、あるいはそのような溝に配置された管あるいは通路を有する中実壁構造としてもよい。流体用通路１３６２および追加流入口１３８０は、多くの種々な方法で設計することができ、拡張可能部材と流体連通を確立するための種々の構造を有していてもよい。内側部材１３１２および外側部材１３１４はハブ１３１８に取り付けられ、通常は伸長位置に外側部材１３１４を配置する。この伸長位置では、図２３に示されるように拡張可能部材１３１６ａが拡張可能部材１３１６ｂの近位側に配置される。この伸長位置において、外側部材のフランジは、ノブ１３３６の通路の遠位端に配置され、解剖組織に貫通している間、外側部材１３１４を伸長位置に維持する。ハブ本体部分１３５９は、図２５に示されるように外側部材１３１４を伸長位置から後退位置へ近位側に移動させ、拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂの間の分離距離を増すようにするための内部構造を有している。ハブ１３１８の端部１３５７は本体部分１３５９と連結した状態で、貫通部材の尖端部１３３９が内側部材１３１２の遠位端１３２０を超えて遠位側に突出し、内側および外側部材が貫通部材Ｐのポータルスリーブを形成するように、貫通部材Ｐは内側部材１３１２内に配置される。図２６〜２９は、腹膜外鼠径ヘルニアの修復における器具１３１０の使用例を示している。図２６に示されるように、貫通部材Ｐが鼠径領域の壁Ｗを形成している皮膚と皮下脂肪Ｆ′の下に挿入される。器具１３１０の壁Ｗへの挿入前または挿入後に、外側部材１３１４を後退位置に移動させて、術式における使用法に合わせて拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂの間の距離を増やすことができる。図２６は、拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂをヘルニアの腸Ｂの反対側に位置させた状態で、器具１３１０をヘルニアの腸Ｂ側に配置させるために、貫通部材Ｐによる壁Ｗの貫通後に後退位置に移動させられた外側部材１３１４を示している。一旦拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂが適所に配置されると、追加流入口１３８０ａおよび１３８０ｂを介して流体が供給され、拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂがそれぞれ拡張位置に移動させられ、貫通部材Ｐが引っ込められる。拡張可能部材に供給される流体の量を制御することによって、図２７に示されるように拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂを異なる大きさに拡張することができる。拡張位置への拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂの移動が壁Ｗを形成している層の間に初期空間Ｓ¹を作り出し、拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂの間の空間が空間Ｓ¹を画定する。図２８に示されるように、さらに流体を拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂに供給し、拡張可能部材の大きさを拡大して第２のさらに大きな空間Ｓ²を作ることができる。あるいはまた、拡張可能部材１３１６ａおよび１３１６ｂのさらなる拡張に加えて、第２空間Ｓ²は本明細書で既に述べた種々の方法で作ることができる。多くの穿刺手術において、貫通部材Ｐ′およびポータルスリーブＳ′を含むさらなる貫通器具が壁Ｗに導入され、ポータルスリーブＳ′を上述のようにして作られた手術用空間Ｓ²と連通するように配置する。一旦ポータルスリーブＳ′が適所に配置されると、貫通部材Ｐ′は、そこから引っ込められて、図２９に示されるようにヘルニア修復のための手術用空間に、例えば鉗子など、種々の追加器具Ｉを挿入可能にする。一旦最終手術用空間が作られると、ヘルニアは器具１３１０または追加のポータルを通って導入された器具を使って修復される。ヘルニアは腸に網を固定することによって修復できる。図３０は、１４１０で本発明の拡張可能な多機能器具の変形例の遠位側部分を示している。器具１４１０は、拡張可能部材１４１６ａおよび１４１６ｂが、例えばプラスチックなど非弾性、非伸長性の物質から作られることを除いては器具１３１０と同様である。本発明の拡張可能な多機能器具の他の変形例が図３１に１５１０で示されており、ここでは器具１５１０の遠位側部分のみが示されている。器具１５１０は、器具１５１０が貫通部材Ｐを受ける単一の外側部材１５１４を有することを除いては器具１３１０と同様てある。外側部材１５１４は、外側部材１５１４が複数の拡張可能部材部を形成するために拡張可能部材１５１６上に配置された一つ以上の調整可能なカラー１５６９を有することを除いては、外側部材１３１４と同様である。器具１５１０は、拡張可能部材１５１６上に配置された異なる大きさの二つのカラー１５６９ａおよび１５６９ｂを有し、拡張可能部材部１５１６ｂおよび１５１６ｃが互いに分離されている距離よりも大きな距離で拡張可能部材部１５１６ａおよび１５１６ｂが互いに分離されるようにして、拡張可能部材部１５１６ａ，１５１６ｂ，１５１６ｃを形成する。調整可能なカラーを有する拡張可能な多機能器具の種々の構造および構成が先の出願で示されている。本発明の拡張可能な多機能器具の他の変形例が図３２において１６１０で示されており、ここでは器具１６１０の遠位側部分のみが示されている。器具１６１０は、スポンジまたはガーゼなどの吸収材料からなる拡張可能部材１６１６を支持する外側部材１６１４および内側部材１６１２を有している。拡張可能部材１６１６は、非拡張位置において第１形状を有しており、そこでは拡張可能部材は外側部材１６１４内に配置されるべく乾燥状態であり、拡張位置においては第２形状を有しており、そこでは拡張可能部材は湿潤状態である。非拡張位置における拡張可能部材１６１６は、スポンジあるいはガーゼの棒の状態であり、円筒状の手術用空間１６２７を形成する拡張位置においてはコイル形状となっている。拡張可能部材１６１６は、組織あるいは器官構造の回りに配置される場合や閉塞部位に空間を作るために組織あるいは器官構造を持ち上げたり、あるいは手際よく動かすような場合に特に役立つ。拡張可能部材１６１６は、外側部材１６１４の後退と同時に拡張位置に移動させられ、拡張可能部材１６１６は体内で露出される。上記拡張可能部材は、吸収材料による体液の吸収によってまたは拡張可能部材に供給された流体によって流動的に、および／または、本明細書で先に述べたように機械的に拡張位置に移動させることができる。拡張可能部材を形作ったりまたは強化するためにおよび／または拡張可能部材を拡張位置に機械的に移動させるために、骨部を拡張可能部材１６１６の外部、内部、あるいは拡張可能部材１６１６を形成している部材内に設けることができる。骨部が設けられたところでは、骨部を流体および／または薬物または治療用物質を供給するのに利用することができ、また、流体を骨部を通じて拡張可能部材から吸引し、体からの回収を容易にすることができる。吸収部材から作られ本発明において使用されている種々の拡張可能部材は、出願人の先の出願である１９９０年１０月２３日出願の第０７／６００,７７５号および１９９０年７月２４日出願の第０７／５５６,０８１号に開示されており、その開示は参照として本明細書に組み込まれている。図３３〜図３５は、種々の術式つまり手術法において使用されている本発明の拡張可能な多機能器具を示している。図３３は、腹膜前内視鏡下鼠径ヘルニア直接修復術の三穿刺法において使用されている器具９１０を示している。拡張可能部材９１６は、壁Ｗの表面筋膜（皮下組織）Ｌと壁Ｗの外側斜筋Ｍとの間のヘルニアの腸Ｂの横に配置され、そして、拡張位置に移動させられて、壁前(propari etal)または壁後(extraparietal)の壁Ｗの層の間に手術用空間を作り、腸Ｂを拡張可能部材９１６の作業空間９２７内に腸Ｂを丸めて囲んだ状態で保持する。ポータルスリーブＳ′およびＳ″は、上述のようにして作られた手術用空間と連通する壁Ｗに配置され、種々の器具がヘルニアの治癒で使用されるためにそのポータルスリーブを通じて導入可能になる。上記器具９１０は、ポータルスリーブ（図示せず）を通じて壁Ｗに導入することができる。図３４は、腹膜組織内の内視鏡下鼠径ヘルニア修復術において使用されている器具１６１０を示している。拡張可能部材１６１６は、壁Ｗの内側および外側斜筋、それぞれＭ′およびＭ″の間のヘルニアの腸Ｂに隣接して配置されており、器具１６１０はポータルスリーブ（図示せず）を通じて導入することができる。拡張可能部材１６１６は、拡張位置Ｍに移動させられ、壁Ｗの隣接する層を分離する拡張可能部材のコイル形状と壁間の手術用空間Ｓ²を作る。こうして、杯状に腸Ｂを受けるためにおよび／または手術処置を行うための領域を与えるために空間Ｓ²が形成され、手術用空間が提供される。図３４は、二つの穿刺方法を示しており、その方法において追加のポータルスリーブＳ′が壁Ｗに挿入され、種々の器具または流体が手術用空間に導入できるようになっている。図３５は、腹膜腔外内視鏡下直接ヘルニア修復術に使用される拡張可能な多機能器具１２１０を示している。拡張可能部材１２１６は横筋筋膜Ｌ¹と腹膜Ｌ²との間に位置しており、拡張位置に動かされて、層Ｌ¹とＬ²との間の壁後または壁内の手術空間Ｓ²を作る。種々のさらなる器具あるいは流体は、器具１２１０の作業溝を介して導入されることができ、手術空間１２２７を介して脱腸Ｂを修復することができる。本発明の拡張可能な多機能器具の別の変形例が図３６に１７１０で示されているが、器具１７１０の遠位部のみが示されている。拡張可能な多機能器具１７１０は、拡張可能部材１７１６ａを支持している貫通部材Ｐが管状つまり中空で、斜めの遠位端１７３９を備えている点以外は、上記拡張可能な多機能器具１３１０と同様である。内視鏡Ｅ等の遠隔映像化装置は、内視鏡の受像用遠位端を遠位端１７３９に対して位置決めした状態で上記貫通部材Ｐ内に置かれ、器具１７１０の遠位端を映像化つまり視覚化する。器具１７１０の使用法は、内視鏡Ｅが貫通部材Ｐと一緒に体内に導入され、実際の初期空間の形成のための潜在的空間あるいは適当な部位を視覚的に識別してその位置を決定する点を除いては、前述したものと同様である。このようにして、閉塞部位において潜在的空間に到達したときを外科医は知り、その後、外側部材１７１４に支持された拡張可能部材１７１６ａと拡張可能部材１７１６ｂの一方または両方が拡張位置に移動させられて上記閉塞部位に実際の空間を作り出す。貫通部材Ｐの形状に応じて、映像化装置は貫通部材のルーメン（管腔）を満たすか、貫通部材の長手方向軸と一致あるいは一致しない状態で貫通部材の溝つまり通路に配置されるか貫通部材の側部に沿って配置することができる。図３７は本発明の拡張可能な多機能器具のさらなる変形例を１８１０で示している。器具１８１０は器具１３１０に類似していて、遠位側が遠位端１８３４で終わると共に近位側が後方端が開口した大径のねじ込みカップリング１８７１で終わっている外側部材１８１４を含んでいる。ニップルバルブ１８７３等のバルブアセンブリが上記カップリング１８７１に取り付けられていて、外側部材１８１４からの望ましくない流体の流れを防止する。内側にねじの切られた環状キャップ１８７４はカップリング１８７１の上記後方端に螺合して取り付けられる。長尺の管状中間部材１８７５は外側部材１８１４内に配置され、遠位側は遠位端１８７７で、また近位側はフランジ１８７８で終わっている。圧縮バネ１８７９は、カップリング１８７１内に取り付けられてフランジ１８７８に係合し、上記中間部材１８７５を遠位側に付勢する。拡張可能部材１８１６ａは外側部材１８１４によって支持されている。この外側部材１８１４は中空の二重壁構造で、その内壁と外壁との間に、カップリング１８７１に沿って配置された流入口１８８０ａに拡張可能部材１８１６ａを連結する通路を形成している。中間部材１８７５は拡張可能部材１８１６ｂを支持するとともに、同様に、中空の二重壁構造になっていて、拡張可能部材１８１６ｂをフランジ１８７８に設けられた流入口１８８０ｂに連結する内側通路を形成している。貫通部材Ｐはキャップ１８７４の開口１８８１を通って中間部材１８７５内に配置され、遠位側が解剖学的組織を貫通するための切り子面を有する尖端１８３９で終わっている。器具１８１０のこれらの構成部品が組み立てられると、上記貫通部材の尖端１８３９は上記外側部材１８１４の遠位端１８３４よりも遠位側に突出し、上記中間部材１８７５は付勢されて外側部材１８１４の遠位端１８３４よりも遠位側に突出し、拡張可能部材１８１６ｂが拡張可能部材１８１６ａの遠位側に位置することになる。解剖学的組織を貫通している間は、中間部材１８７５はバネ１８７９のバイアスに抗して近位側に移動する。そして、器具１８１０の遠位端での組織接触からの力が減少すると、中間部材１８７５は遠位側に移動し、拡張可能部材１８１６ｂを拡張可能部材１８１６ａの遠位側に位置させる。閉塞部位での組織の性質が、器具１８１０の遠位端での組織接触からの力を減じて中間部材１８７５の自動的な突出を可能ならしめるようなものである場合に、中間部材１８７５の自動的な遠位側への移動が得られることは理解されねばならない。しかしながら、潜在的空間に到達したときに中間部材１８７５の伸長を手動で行うことを許容するために、器具１８１０には様々な構造が提供され得る。器具１８１０が潜在的空間に正しく位置決めされて拡張可能部材１８１６ｂが拡張可能部材１８１６ａの遠位側に置かれると、これらの拡張可能部材は、上述したように、実際の初期空間と手術空間とを作るために利用される。本発明による拡張可能な多機能器具は、同心状あるいは非同心状に設けられた内側部材、中間部材および／または外側部材を幾つでも含むことができると共に、拡張可能部材を幾つでも含むことができる。また、上記拡張可能部材は、それらの内側部材、中間部材、外側部材のいずれによっても支持されることができ、また、伸縮性つまり弾性材料、非伸縮性つまり非弾性材料、吸収性材料、あるいは、それらの材料のいかなる組み合わせから作ることができる。吸収性材料が利用される場合には、視覚化を向上させたり手術がより良好に遂行されたりするように、拡張可能部材を用いて血液等の体液を吸収できる。また、拡張可能部材が外側部材によって支持されているときには、これらの外側部材は、組織を貫通する貫通部材を受けるためのポータルスリーブを形成して、拡張可能部材を閉塞部位に導入することができる。拡張可能部材は、これらの拡張可能部材の形状を拡張位置で維持したり、これらの拡張可能部材に剛性を付与したり、これらの拡張可能部材をその拡張位置に移動させたりするための種々の骨部を備えることもできるし、備えなくてもよい。これらの骨部は拡張可能部材の材料の外側あるいは内側あるいは内部に設置できる。これらの骨部は器具の全長にわたってあるいはその一部にわたって延びることができる。また、これらの骨部は、流体を流すことができるように、中空つまり管状とすることができる。上記拡張可能部材は、膨張を介して、あるいは、体液か拡張可能部材に供給される流体の吸収を介して流体的に、あるいは機械的に、あるいはそれらのどのような組み合わせによっても、拡張位置へ移動させることができる。拡張可能部材を流体によって拡張位置へ移動させる場合には、流体は上記内側部材、中間部材、骨部、コントロールチューブ、上記内側部材と上記コントロールチューブとの間、上記内側部材と上記骨部との間、外側部材、あるいは、拡張可能部材を流入口に連結する別の流路を通して流すことができる。上記拡張可能部材は、連続的に拡張して種々の寸法になるようにすることができる。あるいは、それらの拡張可能部材は拡張位置において種々の所定の寸法を有してもよい。また、上記拡張可能部材は、拡張位置において、術式での用法に応じた種々の所定のつまりプレフォームされた形状を有することができる。これには、組織を保持するとともに、種々の作業空間つまり手術空間を画定つまりその境界を定めるための種々の形状が含まれる。拡張可能部材のための特に有利な形状の幾つかには、三角形、トロイド形状、丸形、多指形状、Ｊ形状、環状つまりドーナツ形状、Ｃ形状、Ｕ形状、スプーン形状、楕円、単球または多球形状、およびコイル形状が含まれる。多指形状等、一定の形状を用いると、拡張可能部材を用いて解剖学的組織を引っ込めるつまり露出させることができる。また、１９９４年３月３１日提出の先行出願第０８／２２０，３５９号に開示されているように、拡張可能部材は、器具がこの拡張可能部材の中を通過するときに、連続して巻かれるつまりひっくりかえるように逆転可能とすることができる。なお、上記先行出願の開示は、援用によってこの明細書中に組み込まれている。また、上記拡張可能部材は、体内への導入中に露出されないようにしたり、非拡張位置に維持されるようにしたりするために、上記外側部材の内部に設置してもよい。また、上記外側部材は、伸長位置から後退位置へ移動可能であり、拡張可能部材を露出させたり、拡張可能部材の拡張位置への移動を許容したり、複数の拡張可能部材間のスペースつまり距離を増やしたりできる。外側部材の後退に応答して拡張可能部材を自動的に拡張位置に移動させることができる。複数の拡張可能部材が設けられている場合、これら拡張可能部材間の距離つまり間隔は、相対的に移動可能な内側部材および外側部材を用いることにより、あるいは、調整可能なカラーを用いることにより、選択的に調整することができる。また、これらの拡張可能部材の角向きは調節でき、そして、これらの拡張可能部材は、各種のバネ機構と、ワイヤ調整システムと、所定の湾曲部材と、２重コイルチューブとを介して、角度をつけて関節でつなぐことができる。また、これらの拡張可能部材の作業通路は器具の長手方向軸に一致させてもよいし、それから偏倚していてもよい。また、拡張可能な多機能器具は、これからの排液を行えるように、多くの異なる方法で設計することができる。本発明によれば、閉塞部位に加圧下の流体を導入つまり注入することにより、あるいは、閉塞部位で拡張可能部材を拡張することにより、初期空間を閉塞部位に作ることができる。特に、流体は、胸、肺、脳、塞栓したあるいは無尿の動脈あるいは静脈に隣接する構造、腹膜後空間、脊髄の層、腹壁ヘルニアあるいは鼠径ヘルニア修復のための腹膜前空間、神経節，良性脱落期嚢腫，あるいはメラノーマを取り除くための皮下組織、腸あるいは腸壁、肝臓、脾臓、膵臓、腎臓、胆嚢、子宮壁、液体を利用したレチウス（Retzius）空間、病理学的局部、および、上記病理学的局部位に隣接する部位等、の領域における閉塞部位に導入することができる。初期空間ができると、上記初期空間で拡張可能部材を拡張したり、、拡張した拡張可能部材を初期空間で移動させたり、初期空間に流体を導入したりすることにより、第２の空間を作ることができる。第２の空間−これは術式を遂行するのに十分な隙間を提供するに足る大きさである−を、上記初期空間が正しい位置であることを視覚的に確認した後に作ることができるように、上記初期空間は視覚的に観察できるに足る寸法であればよい。したがって、上記初期空間が正しい位置にない場合には、過度に大きい空間が形成されていなければつなぎの手段を取ることができる。このようにして形成された手術空間は、拡張可能な多機能器具を所定の位置に残すことにより、あるいは拡張可能な多機能器具を引き出して手術空間に流体を導入することにより、維持することができる。所定位置に残された場合には、上記拡張可能部材は器具が体外に引き出されることを防止するので、上記器具がバックして体外に出てしまうおそれなく、上記器具をポータルスリーブとして用いることができる。本発明によれば、遠隔映像化装置を用いることにより、上記初期空間と第２の空間の形成とこの前後の処置とを視覚化できる。気腹のため、あるいは空間を作るため、あるいは処置のために導入される気体は、拡張可能な多機能器具を介して、あるいは、遠隔観察装置を介して、あるいは、別体の器具やポータルを介して供給できる。また、上記拡張可能な多機能器具は各種の単一または複数のポータルを介して、あるいは遠隔観察装置を介して、あるいは流体を供給するために使用する器具を介して、体内に導入できる。また、上記拡張可能な多機能器具においては、この器具を体内に貫通させると同時に位置決めするために、各種の貫通部材を使用できる。また、貫通部材と一緒に遠隔視覚装置を用いることにより、器具が所望の深さあるいは層まで貫通したかどうかを確認するために閉塞部位を視覚的に特定することができる。また、各種のさらなる器具を、拡張可能な多機能器具あるいは別体のポータルを介して体内に導入できる。そのようなさらなる器具には、剥離器、鋏、生検・鋏器具、鉗子、縫合器、針および縫合針ホルダー、吸引器、切断器具、吸引・切断器具、クリップアプリケータ、リングアプリケータ、凝固器、焼灼器、スポンジスティック、および、他の多機能拡張可能器具が含まれる。本発明によれば、単一穿刺法あるいは多穿刺法を用いて各種の手術を行うことができる。本発明は、腹部に入り込まない直接型ヘルニア、間接型ヘルニア、被嚢ヘルニア、臍帯ヘルニア、膣壁ヘルニア、および小児ヘルニアを含むヘルニアの修復に殊に有用である。本発明が多くの変更や修正および細部の変更を受ける限りは、上記しあるいは添付の図面に示された主題は単に説明的なものとして解釈されるべきであって、限定的な意味で取られるべきではない。

Claims

【特許請求の範囲】１．解剖学的組織における閉塞部位に内視鏡下で空間を作るための方法であって、拡張可能な多機能器具の拡張可能部材を上記閉塞部位に配置するために、上記解剖学的組織に上記拡張可能な多機能器具を導入するステップと、上記解剖学的組織を変位させて上記閉塞部位に空間を作るために、上記拡張可能部材を非拡張位置から拡張位置へ移動させるステップと、そのようにして作られた空間を内視鏡下で視覚化するステップとを備えたことを特徴とする方法。２．請求項１に記載の方法において、上記導入するステップは、上記拡張可能部材と共に貫通部材を上記閉塞部位に導入することを含む方法。３．請求項２に記載の方法において、上記導入するステップは、上記貫通部材を回転させて上記解剖学的組織内に入れて上記閉塞部位に到達させることを含む方法。４．請求項２に記載の方法において、上記導入するステップは、上記貫通部材と共に遠隔映像化装置を上記閉塞部位に導入することを含む方法。５．請求項４に記載の方法において、上記導入するステップは、上記貫通部材を通して内視鏡を導入することを含む方法。６．請求項１に記載の方法において、上記導入するステップは、複数の拡張可能部材を導入することを含む方法。７．請求項１に記載の方法において、上記移動させるステップは、流体によって上記拡張可能部材を上記拡張位置に移動させることを含む方法。８．請求項１に記載の方法において、上記移動させるステップは、上記拡張可能部材を上記拡張位置に機械的に移動させることを含む方法。９．請求項１に記載の方法において、上記移動させるステップの前に、上記閉塞部位を内視鏡下で視覚化するステップをさらに含む方法。１０．請求項１に記載の方法において、上記空間の寸法を増大させるステップをさらに含む方法。１１．請求項１０に記載の方法において、上記増大させるステップは、加圧下の流体を上記空間に供給することを含む方法。１２．請求項１０に記載の方法において、上記増大させるステップは、上記拡張可能部材を上記拡張位置で操作して上記解剖学的組織をさらに変位させることを含む方法。１３．請求項１０に記載の方法において、上記増大させるステップは、さらなる拡張可能な多機能器具を導入して、この拡張可能な多機能器具の拡張可能部材を上記空間に配置すると共に、上記さらなる拡張可能な多機能器具の拡張可能部材を非拡張位置から拡張位置へ移動させることを含む方法。１４．請求項１に記載の方法において、上記移動させるステップに続いて、上記空間を維持するステップをさらに含む方法。１５．請求項１４に記載の方法において、上記維持するステップは、上記拡張可能な多機能器具を所定の場所に残しておくことを含む方法。１６．請求項１４に記載の方法において、上記維持するステップは、上記拡張可能な多機能器具を引き出して、上記空間に加圧下の流体を供給することを含む方法。１７．請求項１に記載の方法において、上記空間を用いて術式を遂行することをさらに含む方法。１８．請求項１７に記載の方法において、上記遂行するステップは、上記拡張可能部材の作業開口内で術式を遂行することを含む方法。１９．解剖学的組織における閉塞部位に内視鏡下で手術空間を作るための方法であって、上記解剖学的組織を変位させて上記閉塞部位に初期空間を作るために、上記閉塞部位に加圧下の流体を導入するステップと、上記初期空間を内視鏡下で視覚化するステップと、上記初期空間から、より大きい第２の空間を上記閉塞部位に作るステップと、上記第２の空間を用いて術式を遂行するステップとを備えたことを特徴とする方法。２０．請求項１９に記載の方法において、上記流体を導入するステップは、不混和性の流体を導入することを含む方法。２１．請求項２０に記載の方法において、上記導入するステップは、ゲルを導入することを含む方法。２２．請求項２０に記載の方法において、上記導入するステップは、粘弾性材料を導入することを含む方法。２３．請求項２０に記載の方法において、上記導入するステップは、液体を導入することを含む方法。２４．請求項１９に記載の方法において、上記第２の空間を作るステップは、上記初期空間に拡張可能な多機能器具を導入すると共に、この拡張可能な多機能器具の拡張可能部材を非拡張位置から拡張位置へと移動させて、上記解剖学的組織を変位させて上記第２の空間を作ることを含む方法。２５．体の解剖学的組織における閉塞部位に内視鏡下で空間を作るための拡張可能な多機能器具であって、上記閉塞部位に位置させられるための遠位端と上記体の外部で保持されるための近位端とを有する長尺部材と、上記長尺部材の上記遠位端で支持される拡張可能部材とを備え、上記拡張可能部材は、上記解剖学的組織を分離させて上記閉塞部位に空間を作るために非拡張位置から拡張位置へと移動可能であることを特徴とする拡張可能な多機能器具。２６．請求項２５に記載の拡張可能な多機能器具において、上記拡張可能部材は上記非拡張位置から上記拡張位置まで流体によって移動可能なバルーンを含む拡張可能な多機能器具。２７．請求項２５に記載の拡張可能な多機能器具において、上記拡張可能部材は上記非拡張位置から上記拡張位置まで機械的に移動可能なバルーンを含む拡張可能な多機能器具。２８．請求項２５に記載の拡張可能な多機能器具において、上記拡張可能部材は上記非拡張位置から上記拡張位置まで流体によって移動可能な吸収材を含む拡張可能な多機能器具。２９．請求項２５に記載の拡張可能な多機能器具において、上記拡張可能部材は上記非拡張位置から上記拡張位置まで機械的に移動可能な吸収材を含む拡張可能な多機能器具。３０．請求項２５に記載の拡張可能な多機能器具において、上記長尺部材を入れる管状外側部材をさらに含み、上記管状外側部材と上記長尺部材の少なくとも一方は、これら管状外側部材と長尺部材の他方に対して移動可能であって、上記管状外側部材を、上記拡張可能部材が上記管状外側部材の内部に存する伸長位置に置くとともに、上記拡張可能部材が上記管状外側部材から露出する後退位置へ上記管状外側部材が移動するのを許容する拡張可能な多機能器具。３１．請求項３０に記載の拡張可能な多機能器具において、上記拡張可能部材は上記伸長位置において上記外側部材によって拘束されて、上記非拡張位置に維持される拡張可能な多機能器具。３２．請求項３１に記載の拡張可能な多機能器具において、上記拡張可能部材は、上記外側部材の上記後退位置への移動に応答して、上記拡張位置に自動的に移動可能である拡張可能な多機能器具。３３．請求項３２に記載の拡張可能な多機能器具において、上記拡張可能部材は、この拡張可能部材を上記拡張位置へ付勢するための骨部を含む拡張可能な多機能器具。３４．請求項２５に記載の拡張可能な多機能器具において、上記長尺部材を入れる管状外側部材と、上記管状外側部材によって支持される第２の拡張可能部材とをさらに含み、上記管状外側部材と上記長尺部材の少なくとも一方は、これら管状外側部材と長尺部材の他方に対して移動可能であって、上記管状外側部材を、上記拡張可能部材が上記第２の拡張可能部材から離間距離だけ分離される伸長位置に置くとともに、上記拡張可能部材が上記第２の拡張可能部材から第２のより大きい離間距離だけ分離される後退位置へ上記管状外側部材が移動するのを許容する拡張可能な多機能器具。３５．請求項２５に記載の拡張可能な多機能器具において、上記長尺部材は貫通部材である拡張可能な多機能器具。３６．請求項２５に記載の拡張可能な多機能器具において、上記拡張位置における上記拡張可能部材は、この拡張可能部材の内側に、術式を遂行するための作業開口を画定している拡張可能な多機能器具。３７．請求項３６に記載の拡張可能な多機能器具において、上記長尺部材において上記作業開口に連通する通路をさらに含む拡張可能な多機能器具。３８．請求項３５に記載の拡張可能な多機能器具において、上記貫通部材は全長にわたって溝を有すると共に、上記溝に設置された内視鏡をさらに含む拡張可能な多機能器具。３９．請求項２５に記載の拡張可能な多機能器具において、上記拡張可能部材は上記拡張位置において多指形状を有する拡張可能な多機能器具。