JPH10260092A - 磁歪式トルクセンサの磁歪膜 - Google Patents
磁歪式トルクセンサの磁歪膜Info
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- JPH10260092A JPH10260092A JP6462097A JP6462097A JPH10260092A JP H10260092 A JPH10260092 A JP H10260092A JP 6462097 A JP6462097 A JP 6462097A JP 6462097 A JP6462097 A JP 6462097A JP H10260092 A JPH10260092 A JP H10260092A
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- Japan
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- magnetostrictive
- film
- magnetostrictive film
- torque sensor
- magnetostriction
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Abstract
(57)【要約】
【課題】高感度の磁歪式トルクセンサ用磁歪膜の提供。
【解決手段】磁歪式トルクセンサの磁歪膜又はその磁歪
膜選択方法によれば、金属からなるシャフトの外周面に
磁歪膜が被着された磁歪式トルクセンサの磁歪膜選択方
法において、 比透磁率をμs、ヤング率をE、磁歪定
数をλとする場合に、(μs・E )1/2×λの絶対値
が5×104以上である組成の磁歪膜が選択される。こ
のようにすれば、簡素な物性データ試験又は既有の物性
データ表を用いて、高感度の磁歪膜を推定することが可
能となる。
膜選択方法によれば、金属からなるシャフトの外周面に
磁歪膜が被着された磁歪式トルクセンサの磁歪膜選択方
法において、 比透磁率をμs、ヤング率をE、磁歪定
数をλとする場合に、(μs・E )1/2×λの絶対値
が5×104以上である組成の磁歪膜が選択される。こ
のようにすれば、簡素な物性データ試験又は既有の物性
データ表を用いて、高感度の磁歪膜を推定することが可
能となる。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シャフト表面に被
着された磁気異方性の磁歪膜により、シャフトの捻れに
応じた磁歪膜の磁気特性(透磁率)の変化を磁気的に非
接触検出する磁歪式トルクセンサの磁歪膜に関する。
着された磁気異方性の磁歪膜により、シャフトの捻れに
応じた磁歪膜の磁気特性(透磁率)の変化を磁気的に非
接触検出する磁歪式トルクセンサの磁歪膜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の磁歪膜の製法としては、スパッタ
リングやイオンプレーティングなどのPVD法(例えば
特開昭60−42628号公報や特開平6−13798
1号公報)、めっき法(例えば特開昭62−20642
1号公報)、プラズマ溶射法などの溶射法(例えば特開
平5−52678号公報、特開平6−160209号公
報)が提案されている。
リングやイオンプレーティングなどのPVD法(例えば
特開昭60−42628号公報や特開平6−13798
1号公報)、めっき法(例えば特開昭62−20642
1号公報)、プラズマ溶射法などの溶射法(例えば特開
平5−52678号公報、特開平6−160209号公
報)が提案されている。
【0003】特開平6−160209号公報は、Niが
40〜80wt%のNi−Fe膜、このNi−Fe膜に
Alなどを7wt%以下含有させた膜、Alが8〜15
wt%のFe−Al膜、このFe−Al膜にNiなどを
5wt%以下含有させた膜を提案している。また、特開
平6−137981号公報は、90%Ni−Fe膜を上
記磁歪膜として用いることを開示している。
40〜80wt%のNi−Fe膜、このNi−Fe膜に
Alなどを7wt%以下含有させた膜、Alが8〜15
wt%のFe−Al膜、このFe−Al膜にNiなどを
5wt%以下含有させた膜を提案している。また、特開
平6−137981号公報は、90%Ni−Fe膜を上
記磁歪膜として用いることを開示している。
【0004】更に、特開平5−52678号公報は、F
e−Co(Co、30〜60wt%)合金を用い、添加
元素としてMn、V、Nbの少なくとも一種以上を5w
t%以下とし、含有酸素量が0.2wt以下としたプラ
ズマ溶射法による磁歪膜を採用することを提案してい
る。
e−Co(Co、30〜60wt%)合金を用い、添加
元素としてMn、V、Nbの少なくとも一種以上を5w
t%以下とし、含有酸素量が0.2wt以下としたプラ
ズマ溶射法による磁歪膜を採用することを提案してい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、磁歪
式トルクセンサの磁歪膜の製造方法及びその組成につい
ては、種々、提案されているが、磁歪膜における最も重
要なファクターである磁歪感度に優れた磁歪膜をどのよ
うに選択するかについては、従来全く知られておらず、
ただ、少しずつ組成比を変更しつつ作製、テストを重ね
てその磁歪感度を求める以外に有効な手段がなかった。
式トルクセンサの磁歪膜の製造方法及びその組成につい
ては、種々、提案されているが、磁歪膜における最も重
要なファクターである磁歪感度に優れた磁歪膜をどのよ
うに選択するかについては、従来全く知られておらず、
ただ、少しずつ組成比を変更しつつ作製、テストを重ね
てその磁歪感度を求める以外に有効な手段がなかった。
【0006】例えば、上記従来技術が提案する組成範囲
においても、どの組成点において最も高感度の磁歪膜が
得られるかどうかについては、全く不明であり、ただこ
の程度が良いと示唆しているに過ぎない。これは、磁歪
膜が2以上の主要構成元素からなり、各主要構成元素の
組成比を一々変更して磁歪式トルクセンサを一々作製
し、試験することは、多大な手間、時間、費用を必要と
し、困難であるためである。
においても、どの組成点において最も高感度の磁歪膜が
得られるかどうかについては、全く不明であり、ただこ
の程度が良いと示唆しているに過ぎない。これは、磁歪
膜が2以上の主要構成元素からなり、各主要構成元素の
組成比を一々変更して磁歪式トルクセンサを一々作製
し、試験することは、多大な手間、時間、費用を必要と
し、困難であるためである。
【0007】この問題に鑑み、本発明者らは簡単に高感
度の磁歪膜を選択する手法を見出し、それにより各成分
系の磁歪膜において、高感度の磁歪膜の選択を可能とし
た。従って、本発明の目的は、高感度の磁歪膜を有する
磁歪式トルクセンサの提供を、その目的としている。
度の磁歪膜を選択する手法を見出し、それにより各成分
系の磁歪膜において、高感度の磁歪膜の選択を可能とし
た。従って、本発明の目的は、高感度の磁歪膜を有する
磁歪式トルクセンサの提供を、その目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の磁歪式ト
ルクセンサの磁歪膜によれば、金属からなるシャフトの
外周面に磁歪膜が被着された磁歪式トルクセンサの磁歪
膜選択方法において、比透磁率をμs、ヤング率をE、
磁歪定数をλとする場合に、(μs・E)1/2・λの絶
対値が5×104以上である組成の磁歪膜が選択され
る。このようにすれば、簡素な物性データ試験又は既有
の物性データ表を用いて、高感度の磁歪膜を推定するこ
とが可能となる。
ルクセンサの磁歪膜によれば、金属からなるシャフトの
外周面に磁歪膜が被着された磁歪式トルクセンサの磁歪
膜選択方法において、比透磁率をμs、ヤング率をE、
磁歪定数をλとする場合に、(μs・E)1/2・λの絶
対値が5×104以上である組成の磁歪膜が選択され
る。このようにすれば、簡素な物性データ試験又は既有
の物性データ表を用いて、高感度の磁歪膜を推定するこ
とが可能となる。
【0009】請求項2記載の磁歪式トルクセンサの磁歪
膜によれば請求項1記載の磁歪式トルクセンサの磁歪膜
において更に、比透磁率μsが170以上、ヤング率E
が14000以上、磁歪定数λが30以上であり、Ni
を85wt%以上含むNi系磁歪膜が採用される。この
ようにすれば、高感度の磁歪膜を実現することができ
た。
膜によれば請求項1記載の磁歪式トルクセンサの磁歪膜
において更に、比透磁率μsが170以上、ヤング率E
が14000以上、磁歪定数λが30以上であり、Ni
を85wt%以上含むNi系磁歪膜が採用される。この
ようにすれば、高感度の磁歪膜を実現することができ
た。
【0010】請求項3記載の磁歪式トルクセンサの磁歪
膜によれば請求項2記載の磁歪式トルクセンサの磁歪膜
において更に、Cを0.01〜2wt%含むNi−C系
磁歪膜が採用される。このようにすれば、高感度の磁歪
膜を実現することができた。請求項4記載の磁歪式トル
クセンサの磁歪膜によれば請求項1記載の磁歪式トルク
センサの磁歪膜において更に、透磁率μsが350以
上、ヤング率Eが18000以上、磁歪定数λが17以
上であり、Niを30〜90wt%、Alを0.1〜1
5wt%むNi−Fe−Al系磁歪膜が採用される。こ
のようにすれば、高感度の磁歪膜を実現することができ
た。
膜によれば請求項2記載の磁歪式トルクセンサの磁歪膜
において更に、Cを0.01〜2wt%含むNi−C系
磁歪膜が採用される。このようにすれば、高感度の磁歪
膜を実現することができた。請求項4記載の磁歪式トル
クセンサの磁歪膜によれば請求項1記載の磁歪式トルク
センサの磁歪膜において更に、透磁率μsが350以
上、ヤング率Eが18000以上、磁歪定数λが17以
上であり、Niを30〜90wt%、Alを0.1〜1
5wt%むNi−Fe−Al系磁歪膜が採用される。こ
のようにすれば、高感度の磁歪膜を実現することができ
た。
【0011】請求項5記載の磁歪式トルクセンサの磁歪
膜によれば請求項4記載の磁歪式トルクセンサの磁歪膜
において更に、Cを0.01〜2wt%含むNi−Fe
−Al−C系磁歪膜が採用される。このようにすれば、
高感度の磁歪膜を実現することができた。請求項6記載
の磁歪式トルクセンサの磁歪膜によれば請求項1記載の
磁歪式トルクセンサの磁歪膜において更に、比透磁率μ
sが150以上、ヤング率Eが15000以上、磁歪定
数λの絶対値が25以上であり、Niを80〜98wt
%含むNi−Co系磁歪膜が採用される。このようにす
れば、高感度の磁歪膜を実現することができた。
膜によれば請求項4記載の磁歪式トルクセンサの磁歪膜
において更に、Cを0.01〜2wt%含むNi−Fe
−Al−C系磁歪膜が採用される。このようにすれば、
高感度の磁歪膜を実現することができた。請求項6記載
の磁歪式トルクセンサの磁歪膜によれば請求項1記載の
磁歪式トルクセンサの磁歪膜において更に、比透磁率μ
sが150以上、ヤング率Eが15000以上、磁歪定
数λの絶対値が25以上であり、Niを80〜98wt
%含むNi−Co系磁歪膜が採用される。このようにす
れば、高感度の磁歪膜を実現することができた。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な態様を以下
の実施例により詳細に説明する。磁歪膜として用いるN
i−Co系系合金としては、更に好ましくはNiを90
〜95wt%含むことが好ましい。その他、含まれるこ
とができる補助添加元素については、Mn、Mo、S
i、Cr、Cuがなどを0.1〜10wt%程度添加す
ることができる。
の実施例により詳細に説明する。磁歪膜として用いるN
i−Co系系合金としては、更に好ましくはNiを90
〜95wt%含むことが好ましい。その他、含まれるこ
とができる補助添加元素については、Mn、Mo、S
i、Cr、Cuがなどを0.1〜10wt%程度添加す
ることができる。
【0013】磁歪膜として用いるNi−Fe−Al−C
系磁歪膜としては、更に好ましくはNiを40〜80w
t%、Alは5〜10wt%含むことが好ましい。その
他、含まれることができる補助添加元素については、M
n、Mo、Si、Cr、Cuがなどを0.1〜10wt
%程度添加することができる。シャフトとしては、SC
r、SCMなどの合金鋼や炭素鋼更には非磁性のステン
レス鋼などを採用することができる。
系磁歪膜としては、更に好ましくはNiを40〜80w
t%、Alは5〜10wt%含むことが好ましい。その
他、含まれることができる補助添加元素については、M
n、Mo、Si、Cr、Cuがなどを0.1〜10wt
%程度添加することができる。シャフトとしては、SC
r、SCMなどの合金鋼や炭素鋼更には非磁性のステン
レス鋼などを採用することができる。
【0014】
(実施例1)実験に用いた磁歪式トルクセンサの磁歪膜
の形状を図1に示す。1はシャフト、2はシャフト1に
微少な隙間を介して嵌着されたボビンである。
の形状を図1に示す。1はシャフト、2はシャフト1に
微少な隙間を介して嵌着されたボビンである。
【0015】ボビン2は軸方向前後に一対のコイル溝を
有しており、両コイル溝の上部には励磁コイル3、4が
個別に巻装され、両コイル溝の下部には検出コイル5、
6が個別に巻装されている。一方のコイル溝にボビン2
を挟んで対面するシャフト1の外周面には第一の磁歪膜
7が被着され、他方のコイル溝にボビン2を挟んで対面
するシャフト1の外周面には第二の磁歪膜8が被着され
ている。両励磁コイル3、4のターン数は等しく、両検
出コイル5、6のターン数は等しく設定されている。
有しており、両コイル溝の上部には励磁コイル3、4が
個別に巻装され、両コイル溝の下部には検出コイル5、
6が個別に巻装されている。一方のコイル溝にボビン2
を挟んで対面するシャフト1の外周面には第一の磁歪膜
7が被着され、他方のコイル溝にボビン2を挟んで対面
するシャフト1の外周面には第二の磁歪膜8が被着され
ている。両励磁コイル3、4のターン数は等しく、両検
出コイル5、6のターン数は等しく設定されている。
【0016】図2に検出回路の構成を示す。所定周波数
の正弦波交流電圧(ここでは50kHz)が直列に接続
された励磁コイル3、4に印加されると、シャフト1に
かかる捻り応力に応じて磁歪膜7、8が交流磁界を変調
する。すると、両検出コイル5、6に誘導される信号電
圧が逆方向に変化するので、両検出コイル5、6の信号
電圧をそれぞれ検波器9、10で検波し、電圧増幅器1
1、12で増幅し、両信号電圧の差を差動増幅器13で
求めれば、ほぼシャフト1の応力すなわちトルクに比例
する信号電圧が得られる。
の正弦波交流電圧(ここでは50kHz)が直列に接続
された励磁コイル3、4に印加されると、シャフト1に
かかる捻り応力に応じて磁歪膜7、8が交流磁界を変調
する。すると、両検出コイル5、6に誘導される信号電
圧が逆方向に変化するので、両検出コイル5、6の信号
電圧をそれぞれ検波器9、10で検波し、電圧増幅器1
1、12で増幅し、両信号電圧の差を差動増幅器13で
求めれば、ほぼシャフト1の応力すなわちトルクに比例
する信号電圧が得られる。
【0017】磁歪膜7、8は、プラズマ溶射により形成
され、その後、切削加工により、図1に示すように互い
に反対に向きかつ軸方向に対して45度の方向に平行に
伸びる多数の短い帯により構成される。上記説明したこ
れらの構成は、磁歪式トルクセンサ構造として一般的で
あり、よく知られているので、詳細な説明は省略する。
され、その後、切削加工により、図1に示すように互い
に反対に向きかつ軸方向に対して45度の方向に平行に
伸びる多数の短い帯により構成される。上記説明したこ
れらの構成は、磁歪式トルクセンサ構造として一般的で
あり、よく知られているので、詳細な説明は省略する。
【0018】シャフト1の直径は17mm、長さは12
0mmであり、SCr420を素材として加工形成され
たものを準備し、その外周面をブラスト処理した後、プ
ラズマ溶射を行った。プラズマ溶射は、大気中で実施
し、シャフト1の外周面に厚さ0.3mmの磁歪膜を形
成した。次に、シャフト1をCO(一酸化炭素)雰囲気
で950℃で3h保持し、その後、850℃で1.5h
r保持した後、130℃まで油焼入れし、その後、18
0℃で2h保持した後、空冷して焼戻しを行なう浸炭熱
処理を行った。
0mmであり、SCr420を素材として加工形成され
たものを準備し、その外周面をブラスト処理した後、プ
ラズマ溶射を行った。プラズマ溶射は、大気中で実施
し、シャフト1の外周面に厚さ0.3mmの磁歪膜を形
成した。次に、シャフト1をCO(一酸化炭素)雰囲気
で950℃で3h保持し、その後、850℃で1.5h
r保持した後、130℃まで油焼入れし、その後、18
0℃で2h保持した後、空冷して焼戻しを行なう浸炭熱
処理を行った。
【0019】次に、この磁歪膜に図1のようにシエブロ
ンパターン形状膜すなわち上記した多数の帯を形成すべ
く、加工処理を実施した。各帯の横幅は約2.2mm、
長さ10mm、膜厚0.2mmで軸の右半分は長手方向
に対して+45°、左半分は−45℃に傾き、各12本
づつ形成した。各帯間の間隔は約2.2mmとした。上
記磁歪膜の組成を決定するために、以下の理論解析を行
った。 (磁歪感度と磁歪膜の各物性値との関連に関する理論解
析)磁界H、磁束密度B、応力σ、ひずみeが微小な変
化をしている場合、各変化量の関係は以下のように示さ
れる。
ンパターン形状膜すなわち上記した多数の帯を形成すべ
く、加工処理を実施した。各帯の横幅は約2.2mm、
長さ10mm、膜厚0.2mmで軸の右半分は長手方向
に対して+45°、左半分は−45℃に傾き、各12本
づつ形成した。各帯間の間隔は約2.2mmとした。上
記磁歪膜の組成を決定するために、以下の理論解析を行
った。 (磁歪感度と磁歪膜の各物性値との関連に関する理論解
析)磁界H、磁束密度B、応力σ、ひずみeが微小な変
化をしている場合、各変化量の関係は以下のように示さ
れる。
【0020】まず、BはHとσとの関数であるから、B
=B(H、σ)とし、eもHとσとの関数であるからe
=(H、σ)として、 ただし、μsは応力一定条件での偏微分係数で表される
比透磁率であり、μoは真空透磁率であり、Eはヤング
率である。 ただし、dは磁歪変換定数、d’は逆磁歪変換定数であ
る。ここで、B、△eなどを単にB、eと記すことにす
れば、 と書き直すことができる。次に、B、Hの微小な変化に
よって磁気的に与えられたエネルギーのうち、弾性エネ
ルギーに変換されて、物質内にたくわえられたエネルギ
ーの割合をk2 とすると となる。ここで、kは電気機械変換定数である。また、
マックスウエルの関係式よりd=d’と考えられるか
ら、上記式を用いて、 B=(1−k2)μsμo・H+(μsμo・E)1/2
・e・k が得られる。ここで、(1−k2)μsμo・Hは、外
部磁界変化にもとづく磁束密度変化であり、(μsμo
・E)1/2 ・e・kは、磁歪にもとづく磁束密度変化と
考えられる。更に、等方磁歪を仮定し、静的磁歪定数を
λとすれば、上記磁歪にもとづく磁束密度変化は、 ただし、lは長さ、dlはその変化量である。結局、磁
歪にもとづく磁束密度変化、即ち、センサー感度は、
(μsμo・E)1/2 ・λをαと仮定すれば、透磁率
(比透磁率×真空透磁率)、ヤング率、磁歪変換定数、
電気機械結合定数とα・kという関係を有することが判
明した。電気機械変換定数kのトルク印加前後の変化を
無視すれば、センサー感度は、比透磁率μs、ヤング率
E、磁歪変換定数λに対して、αの関係をもつものと見
なせることが判明した。
=B(H、σ)とし、eもHとσとの関数であるからe
=(H、σ)として、 ただし、μsは応力一定条件での偏微分係数で表される
比透磁率であり、μoは真空透磁率であり、Eはヤング
率である。 ただし、dは磁歪変換定数、d’は逆磁歪変換定数であ
る。ここで、B、△eなどを単にB、eと記すことにす
れば、 と書き直すことができる。次に、B、Hの微小な変化に
よって磁気的に与えられたエネルギーのうち、弾性エネ
ルギーに変換されて、物質内にたくわえられたエネルギ
ーの割合をk2 とすると となる。ここで、kは電気機械変換定数である。また、
マックスウエルの関係式よりd=d’と考えられるか
ら、上記式を用いて、 B=(1−k2)μsμo・H+(μsμo・E)1/2
・e・k が得られる。ここで、(1−k2)μsμo・Hは、外
部磁界変化にもとづく磁束密度変化であり、(μsμo
・E)1/2 ・e・kは、磁歪にもとづく磁束密度変化と
考えられる。更に、等方磁歪を仮定し、静的磁歪定数を
λとすれば、上記磁歪にもとづく磁束密度変化は、 ただし、lは長さ、dlはその変化量である。結局、磁
歪にもとづく磁束密度変化、即ち、センサー感度は、
(μsμo・E)1/2 ・λをαと仮定すれば、透磁率
(比透磁率×真空透磁率)、ヤング率、磁歪変換定数、
電気機械結合定数とα・kという関係を有することが判
明した。電気機械変換定数kのトルク印加前後の変化を
無視すれば、センサー感度は、比透磁率μs、ヤング率
E、磁歪変換定数λに対して、αの関係をもつものと見
なせることが判明した。
【0021】また、センサー感度と各種磁性材料の磁気
特性とで、多変量解析による重回帰分析にて因果関係を
調べたところ、センサー感度は初期の磁歪の立ち上がり
と、透磁率とに深い相関をもつこともわかった。次に、
本発明者らは上記知見に基づき、3種類の成分系の溶射
磁歪膜について、予め知られている物性値μs、E、λ
がともに大きい組成のものを選択して実施例磁歪膜(a
〜c)を形成し、感度を調べた。また、比較のために合
計4種類の比較例磁歪膜(d〜g)についても感度を調
べた。その結果を図3に示す。図3から、異なる成分系
の多数の磁歪膜において、αと感度(出力)とが極めて
強い比例関係を持つことが実証された。なお、図3の特
性は、図1及び図2に示す磁歪式トルクセンサにおい
て、測定周波数は50KHz、励磁電圧2Vで測定した
ものであり、図3の縦軸の値(出力)は、回路の電圧増
幅分を除いた実力値を示す。
特性とで、多変量解析による重回帰分析にて因果関係を
調べたところ、センサー感度は初期の磁歪の立ち上がり
と、透磁率とに深い相関をもつこともわかった。次に、
本発明者らは上記知見に基づき、3種類の成分系の溶射
磁歪膜について、予め知られている物性値μs、E、λ
がともに大きい組成のものを選択して実施例磁歪膜(a
〜c)を形成し、感度を調べた。また、比較のために合
計4種類の比較例磁歪膜(d〜g)についても感度を調
べた。その結果を図3に示す。図3から、異なる成分系
の多数の磁歪膜において、αと感度(出力)とが極めて
強い比例関係を持つことが実証された。なお、図3の特
性は、図1及び図2に示す磁歪式トルクセンサにおい
て、測定周波数は50KHz、励磁電圧2Vで測定した
ものであり、図3の縦軸の値(出力)は、回路の電圧増
幅分を除いた実力値を示す。
【0022】その結果、優れた磁歪感度(出力)が得ら
れる組成範囲が各成分系について判明した。その結果を
表1に示す。
れる組成範囲が各成分系について判明した。その結果を
表1に示す。
【0023】
【表1】 以下、上記各膜について更に詳細に説明する。
【0024】Ni−C溶射膜すなわち実施例品aは、上
記説明した製造工程で作製されたものであり、原料を1
00wt%ニッケルとしたものであり、カーボンCは、
還元熱処理にて約1wt%添加されたものである。Ni
−Fe−Al−C溶射膜すなわち実施例品bは、上記説
明した製造工程で作製されたものであり、磁歪膜組成
は、Niが43wt%、Alが1wt%、Cが2wt
%、残部がほぼFeとなっている。なお、添加元素とし
て、Co、Mo、Si、Cu、Mn、B、Crなどを合
計10wt%程度含有することもできる。
記説明した製造工程で作製されたものであり、原料を1
00wt%ニッケルとしたものであり、カーボンCは、
還元熱処理にて約1wt%添加されたものである。Ni
−Fe−Al−C溶射膜すなわち実施例品bは、上記説
明した製造工程で作製されたものであり、磁歪膜組成
は、Niが43wt%、Alが1wt%、Cが2wt
%、残部がほぼFeとなっている。なお、添加元素とし
て、Co、Mo、Si、Cu、Mn、B、Crなどを合
計10wt%程度含有することもできる。
【0025】Ni−Co膜すなわち実施例品cは、鋳鍛
造法にて作製したバルク膜であり、95wt%のNiを
含有する。SCr膜すなわち非溶射比較例品dは、市販
の丸棒から作製したバルク膜であり、0.9〜1.2w
t%のCrを含有する。Coバルク膜すなわち比較例品
e、及び、Niバルク膜すなわち比較例品fも鋳鍛法に
て作製したそれぞれ100wt%のバルク膜である。
造法にて作製したバルク膜であり、95wt%のNiを
含有する。SCr膜すなわち非溶射比較例品dは、市販
の丸棒から作製したバルク膜であり、0.9〜1.2w
t%のCrを含有する。Coバルク膜すなわち比較例品
e、及び、Niバルク膜すなわち比較例品fも鋳鍛法に
て作製したそれぞれ100wt%のバルク膜である。
【0026】Ni溶射膜すなわち比較例品gは、上記説明
した製造工程のうち溶射完了後の還元熱処理工程以降を
省略したものである。この試験を含む各種試験及び上記
理論解析から、以下のことがわかった。Ni系磁歪膜で
は、比透磁率μsが170以上、ヤング率Eが1400
0以上、磁歪定数λが30以上であり、Niを85wt
%以上含む組成の材料、Ni−C系磁歪膜では、上記N
i系磁歪膜においいて更にCを0.01〜2wt%含む
組成の材料、Ni−Fe−Al系磁歪膜では、比透磁率
μsが350以上、ヤング率Eが18000以上、磁歪
定数λが17以上であり、Niを30〜90wt%、A
lを0.1〜15wt%含む組成の材料、Ni−Fe−
Al−C系磁歪膜では、上記Ni−Fe−Al系磁歪膜
において更にCを0.1〜2wt%含む組成の材料、N
i−Co系バルク磁歪膜では、比透磁率μsが180以
上、ヤング率Eが18000以上、磁歪定数λの絶対値
が25以上であり、Niを80〜98wt%含む組成の
材料。
した製造工程のうち溶射完了後の還元熱処理工程以降を
省略したものである。この試験を含む各種試験及び上記
理論解析から、以下のことがわかった。Ni系磁歪膜で
は、比透磁率μsが170以上、ヤング率Eが1400
0以上、磁歪定数λが30以上であり、Niを85wt
%以上含む組成の材料、Ni−C系磁歪膜では、上記N
i系磁歪膜においいて更にCを0.01〜2wt%含む
組成の材料、Ni−Fe−Al系磁歪膜では、比透磁率
μsが350以上、ヤング率Eが18000以上、磁歪
定数λが17以上であり、Niを30〜90wt%、A
lを0.1〜15wt%含む組成の材料、Ni−Fe−
Al−C系磁歪膜では、上記Ni−Fe−Al系磁歪膜
において更にCを0.1〜2wt%含む組成の材料、N
i−Co系バルク磁歪膜では、比透磁率μsが180以
上、ヤング率Eが18000以上、磁歪定数λの絶対値
が25以上であり、Niを80〜98wt%含む組成の
材料。
【図1】実験に用いた磁歪式トルクセンサの磁歪膜及び
シャフトの形状を示す模式図である。
シャフトの形状を示す模式図である。
【図2】実験に用いた磁歪式トルクセンサの検出回路の
構成を示す回路図である。
構成を示す回路図である。
【図3】各試料の出力電圧(感度)と複合物性パラメー
タαとの関係を示す特性図である。
タαとの関係を示す特性図である。
1はシャフト、7、8は磁歪膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊東 厚直 愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシ ン精機株式会社内
Claims (6)
- 【請求項1】金属からなるシャフトの外周面に、磁歪膜
を被着する磁歪式トルクセンサの磁歪膜において、 比透磁率をμs、ヤング率をE、磁歪定数をλとする
時、(μs・E)1/2・λの絶対値が5×104以上であ
る組成の磁歪膜であることを特徴とする磁歪式トルクセ
ンサの磁歪膜。 - 【請求項2】請求項1記載の磁歪式トルクセンサの磁歪
膜において、 前記磁歪膜は、比透磁率μsが170以上、ヤング率E
が14000以上、磁歪定数λが30以上であり、Ni
を85wt%以上含むNi系磁歪膜からなることを特徴
とする磁歪式トルクセンサの磁歪膜。 - 【請求項3】請求項2記載の磁歪式トルクセンサの磁歪
膜において、 前記磁歪膜は、更にCを0.01〜2wt%含むNi−
C系磁歪膜からなることを特徴とする磁歪式トルクセン
サの磁歪膜。 - 【請求項4】請求項1記載の磁歪式トルクセンサの磁歪
膜において、 前記磁歪膜は、比透磁率μsが350以上、ヤング率E
が18000以上、磁歪定数λが17以上であり、Ni
を30〜90wt%、Alを0.1〜15wt%含むN
i−Fe−Al系磁歪膜からなることを特徴とする磁歪
式トルクセンサの磁歪膜。 - 【請求項5】請求項4記載の磁歪式トルクセンサの磁歪
膜において、 前記磁歪膜は、更にCを0.1〜2wt%含むNi−F
e−Al−C系磁歪膜からなることを特徴とする磁歪式
トルクセンサの磁歪膜。 - 【請求項6】請求項1記載の磁歪式トルクセンサの磁歪
膜において、 前記磁歪膜は、比透磁率μsが150以上、ヤング率E
が15000以上、磁歪定数λの絶対値が25以上であ
り、Niを80〜98wt%含むNi−Co系磁歪膜か
らなることを特徴とする磁歪式トルクセンサの磁歪膜。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6462097A JPH10260092A (ja) | 1997-03-18 | 1997-03-18 | 磁歪式トルクセンサの磁歪膜 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6462097A JPH10260092A (ja) | 1997-03-18 | 1997-03-18 | 磁歪式トルクセンサの磁歪膜 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10260092A true JPH10260092A (ja) | 1998-09-29 |
Family
ID=13263495
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP6462097A Pending JPH10260092A (ja) | 1997-03-18 | 1997-03-18 | 磁歪式トルクセンサの磁歪膜 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH10260092A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007093244A (ja) * | 2005-09-27 | 2007-04-12 | Honda Motor Co Ltd | 磁歪式トルクセンサと電動ステアリング装置 |
JP2007101422A (ja) * | 2005-10-05 | 2007-04-19 | Honda Motor Co Ltd | 磁歪式トルクセンサとこれを利用した電動パワーステアリング装置 |
-
1997
- 1997-03-18 JP JP6462097A patent/JPH10260092A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007093244A (ja) * | 2005-09-27 | 2007-04-12 | Honda Motor Co Ltd | 磁歪式トルクセンサと電動ステアリング装置 |
JP2007101422A (ja) * | 2005-10-05 | 2007-04-19 | Honda Motor Co Ltd | 磁歪式トルクセンサとこれを利用した電動パワーステアリング装置 |
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