【発明の詳細な説明】
5−アルファ−レダクターゼ阻害化合物の投与による脱毛症の治療
本発明は、ステロイド5−α−レダクターゼの非競合的阻害薬である選択され
た化合物の1つと組み合わせたステロイド5−α−レダクターゼの競合的阻害薬
である選択された化合物のうちの1つを含有する組成物からなる。薬物のこの新
しい組合せを含む組成物は、血漿ジヒドロテストステロン(DHT)の改良され
た抑制ならびに改良された前立腺および精嚢重量減少を示す。
ステロイド5−α−レダクターゼは、テストステロン(T)をDHTに機械的
に転換するNADPH依存性酵素である。本発明組成物の個々の化合物は、還元
プロセスの特定の段階で特定の酵素種に結合させることによって5−α−レダク
ターゼ阻害活性を生じる。還元プロセスの種々の段階で異なる酵素種に結合する
阻害薬を組み合わせることにより、血漿DHTのレベルを低下させること、およ
び前立腺および精嚢の重量を1つの阻害薬が単独で達成できる程度を超える程度
まで減少させることが見いだされた。
また、本発明は、競合的または非競合的な5−α−レダクターゼ阻害化合物と
別の活性成分との共投与からなる。
また、本発明は、5−α−レダクターゼ阻害化合物の投与または5−α−レダ
クターゼ阻害化合物および別の活性成分の共投与からなる脱毛症の治療方法にも
関する。
発明の背景
ステロイド5−α−レダクターゼは、テストステロンをDHTに転換させるN
ADPH依存性酵素である。種々の病状における上昇したDHTレベルの重要さ
の認識により、この酵素の阻害薬を合成するための多くの試みが剌激された。
最初に開示された阻害薬は、1973年、ジャーナル・オブ・インベスティゲ
イティブ・ダーマトロジー(J.Invest.Dermat.)、62:224−227におけ
るシャー(Hsia)およびボイト(Voight)による4−アンドロステン−3−
オン−17β−カルボン酸であった。(4R)−5,10−セコ−19−ノルプ
レグナ−4,5−ジエン−3,10,20−トリアンは、次に開示された阻害薬
であり、5−α−レダクターゼに対する親和性標識としての有用性も判明した。
ロベイア,ビー(Robaire,B.)ら、(1977)、ジャーナル・オブ・ステロイ
ド・バイオケミストリー(J.Steroid Biochem.)、8:307−310。(5
α,20−R)−4−ジアゾ−21−ヒドロキシ−20−メチルプレグナン−3
−オンは、ステロイド5−α−レダクターゼの有効な時間依存性阻害薬として報
告された。ブローム,ティ・アール(Blohm,T.R.)ら、(1980)、バイオケ
ミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Bioche
m.Biophys.Res.Comm.)、95:273−280;米国特許第4,317,81
7号、1982年3月2日。17β−N,N−ジエチルカルバモイル−4−メチ
ル−4−アザ−5−α−アンドロスタン−3−オンは、1983年3月22日発
行の米国特許第4,377,584号、およびリアングーティ(Liang,T.)ら、
(1983)、ジャーナル・オブ・ステロイド・バイオケミストリー(J.Steroi
d Biochem.)、19:385−390に開示されているステロイド5−α−レダ
クターゼの4−アザステロイド阻害薬の一グループの例である。17α−アセト
キシ−6−メチレン−プレグン−4−エン−3,20−ジオンがステロイド−5
−α−レダクターゼの時間依存性不活性因子であることも判明した。ペトロウ,
ヴィ(Petrow,V.)ら、(1981)、ステロイズ(Steroids)38:121−
140。
他のステロイド5−α−レダクターゼ阻害薬も開示されている。1986年6
月2日に発行された米国特許第4,361,578号には、ホモステロイド酵素
阻害薬の一クラスが開示されている。米国特許第4,191,759号には、ス
テロイド5−α−レダクターゼ阻害薬として活性な17β−カルボキシ−4−ア
ンドロステン−3−オンのアミドが開示されている。日本特許J6014685
5−AおよびJ60116657−Aには、5−α−レタクターゼ阻害活性を含
む多くの活性を有する種々のアニリン誘導体が開示されている。日本特許160
142941−Aには、5−α−レダクターゼ阻害活性を有するフェニル置換ケ
トン
が開示されており、欧州特許EP173516−Aには、同様の活性を有する種
々のフェニル置換アミドが開示されている。シセイド(Shiseido)には、ステロ
イド5−α−レダクターゼの活性阻害薬であるテルペン誘導体が開示されている
。日本特許J59053417−A。
最近、ステロイド5−α−レダクターゼが定序運動機構(ordered kinetic me
chanism)に従うことが判明した[ヒューストン(Houston)ら、(1987)、
ステロイズ(Steroids)49:355−369;メトカーフ,ビー(Metcalf,B.
)ら、(1989)バイオオーガニック・ケミストリー(Bioorganic Chemistry
)17:372−276]。ここでは、ニコチンアミド補助因子は、酵素に結合
する第1基質および酵素から放出される最終産生物である(第1図)。定序運動
機構に従う二基質酵素のゆきどまり阻害薬(dead-end inhibitor)は、1種以上
の存在する酵素種に会合することができる。ステロイド5−α−レダクターゼに
ついて、かかるステロイド系阻害薬が結合する酵素形態としては、遊離酵素Eな
らびに補助因子E−NADPHおよびE−NADP+との酵素二元複合物が挙げ
られる。例えば、N−t−ブチル−5−α−アンドロスト−1−エン−4−アザ
−17β−カルボキシアミド−3−オン(化合物A)[リアング(Liang)ら、
(1985)、エンドクリノロジー(Endocrinology)117:571−579
]などの4−アザステロイド系阻害薬は、酵素−NADPH−阻害薬ゆきどまり
複合物(E−NADPH−1、第1図)を形成することによって酵素活性を阻害
する。
このような関係においては、これらの酵素形態の各々への阻害薬の結合は、ア
ーヴィン・エイチ・シーガル(Irwin H.Segal)、エンザイム・カイネティクス
(Enzyme Kinetics)、発行 ジョーン・ウィリィ・アンド・サンズ,インコー
ポレイテッド(John Wiley & Sons,Inc.)(1975)に開示されているとお
り、運動的に明確である。E−NADPH複合物に結合する阻害薬の存在下にお
ける、酵素触媒の速度の、テストステロンの変化する濃度との応答は、方程式1
によって示すことができる;このモデルは、可変性基質(この場合、テストステ
ロン)に対する競合的阻害と称される。同様に、E−NADP+複合物に優先的
に会合する阻害薬についてのモデルは、方程式2によって示される;かかる化合
物は、可変性基質に対する非競合的阻害薬と称される。方程式1および2におい
て、vは、観察された生成物形成速度であり、Vmは、可変性基質(A)の飽和
濃度での最大酵素速度であり、Iは、KisまたはKiiの見かけの阻害定数を有
する阻害薬の濃度であり、Kaは、可変性基質についての見かけのミカエリス定
数である。
v=VMA/[Ka(1+I/Kis)+A] (1)
v=VMA/[Ka+A(1+I/Kii)] (2)
基質(A)および阻害薬(I)の可変濃度で測定された速度(v)は、方程式1
または2への最良の適合を決定するためにクレランド[クレランド,ダブリュ・
ダブリュ(Cleland,W.W.)(1979)メソッズ・イン・エンザイモロジー(Me
thods in Enzymology)63、103−138]によって開示されているような
コンピュータープログラムを用いて非線形曲線適合によって数値が求められる。
これらの分析の結果は、典型的には、二重の逆数プロットで表される:1/速度
対1/[テストステロン]。第1図におけるパターンは、定序運動機構における
第2基質に対する競合的および非競合的阻害薬の特徴であり、各々、E−NAD
PHまたはE−NADP+への可逆的ゆきどまり阻害薬の結合間を区別するのに
使用することができる。同様の非競合的モデル(方程式2)は、定序酵素(orde
red-enzyme)の表面に結合する第1基質のバリエーションによるE−NADPH
またはE−NADP+に結合する阻害薬を示すのに使用されるので、これらの2
つの機構間の区別は、NADPHを変化させることを伴うかかる実験によっては
可能ではない;しかしながら、かかる実験から得られた結果を使用して、遊離酵
素(E)に結合することにより得られる阻害の機構から区別することができる。
比較できる条件下で、これらの2種類の機構によって作用する阻害薬の効果を
第2図に示す;この例では、各阻害薬の濃度は、その阻害定数(Kii、またはKis
)と等しいように設定され、基質についてのミカエリス定数(Km)は、1濃
度単位に設定される。曲線BおよびCは、E−NADPHおよびE−NADP+
複合物に優先的に結合する阻害薬を表し、一方、曲線Aは、非阻害速度を表す。
曲線AおよびBは、縦座標で交差する(競合的パターン)が、曲線AおよびCは
、平行である(非競合的パターン)ことに注意する。このプロットから、競合的
阻害薬(E−NADPH−I)は、低い基質濃度で、より有効であるが、一方、
非競合的阻害薬(E−NADP+−J)は、より高い濃度の基質で、より有効で
ある。
これらの2つの曲線についての交点は、そのKmと等しい基質の濃度で生じる。
E−NADPHおよびE−NADP+の両方に対して同様に良好に結合するこ
とができる1つの分子は、2つの二重逆数プロットの傾斜および切片における相
加的効果を示す。これは、方程式3によって示され、第2図において曲線Dによ
って表される。
v=VmA/[Ka(1+I/Kis)+A(1+I/Kii)] (3)
作用の、かかる混合(非競合的)モードを示す分子による阻害は、全基質濃度
範囲にわたって単一の機構のいずれか単独より有効である。この混合モード相互
作用の説明は、同様に、独立して、異なる酵素形態、E−NADPHおよびE−
NADP+と相互作用する2種類の分子種の存在下でステロイド5−α−レダク
ターゼの阻害に適用可能である。かくして、曲線Dもまた、各々、E−NADP
HおよびE−NADP+複合物についてのそれらの阻害定数と同等の濃度の2つ
の化合物による阻害を示している。また、結果は、基質の全濃度範囲全体にわた
っ
て単一の阻害薬のものよりも優れている。
競合的阻害薬(N−t−ブチル−5−α−アンドロスト−1−エン−4−アザ
−17β−カルボキシアミド−3−オン、化合物A)および非競合的阻害薬(N
,N−ジイソプロピル−アンドロスト−3,5−ジエン−17β−カルボキシア
ミド−3−カルボン酸、化合物B)のかかる相加的阻害薬効果は、二重の阻害実
験でin vitroで示された;1つの阻害薬の濃度を第2の阻害薬の存在下において
増加させることにより、より大きな酵素阻害が誘導され、一方、相互に、排除的
結合も示す。E−NADPH(競合的)またはE−NADP+(非競合的)に結
合する阻害薬の1つの所定の濃度については、第2の阻害薬のいずれの量の補足
も、観察された酵素阻害を参照阻害薬単独のものより増加させる。
比較すると、第4図は、薬物の維持を取り込んだモデルを表す。ここで、算出
した曲線は、その各阻害定数に関する全薬物に基づく:合計阻害薬=定数=Σ(
[阻害薬]/Ki app)。曲線Aは、非阻害速度を表し、曲線BおよびCは、各
々、競合的阻害薬だけまたは非競合的阻害薬だけの存在を表し、一方、曲線Dは
、
半分の競合的および非競合的阻害薬からなる阻害薬物質の維持を表す。ここで、
2種類の機構によって機能する阻害薬の組合せは、基質濃度がそのKmを超える
場合には、競合的阻害薬よりも優れており、Km以下の低い基質濃度での非競合
的阻害薬よりも有効である。他の基質、NADPHに対する同様の分析は、両方
の運動モデルが方程式2によって示されるので、阻害有効性の違いを示さない。
優れた結果を達成するために、異なる機構タイプの5−α−レダクターゼを医
薬組成物中へに配合することの従来技術は、当該出願人には全く知られていない
。
発明の説明
5−α−レダクターゼの「競合的」および「非競合的」阻害薬から選択される
組合せは、テストステロンのDHTへの酵素的還元を行うために医薬組成物にお
いて使用される。前記のとおり、本発明の「競合的」阻害成分は、酵素−NAD
PH−阻害薬ゆきどまり複合物を形成する化合物であり、本発明の「非競合的」
阻害成分は、酵素−NADP+−阻害薬ゆきどまり複合物を形成する化合物であ
る。
医薬的に許容される付加塩などの、in vivoで親化合物を生じるか、または、
それら自体有用であるこれらの化合物の誘導体も含まれる。塩基性基を含むこれ
らの化合物の塩は、当該技術分野に公知の方法によって、塩基性化合物の存在下
、有機酸または無機酸を用いて形成される。例えば、当該化合物を、溶媒を除去
することによる塩の単離を伴ってエタノールなどの水性混和性溶媒中で、または
、溶媒を除去することによる所望の塩の直接分離または単離を伴ってエチルエー
テルまたはクロロホルムなどのように酸が溶解する場合には水性不混和性溶媒中
で、無機酸または有機酸と反応させる。本発明において含まれる酸付加塩の例は
、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、エタ
ンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、臭化
水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩および硝酸塩である。酸性基を含む本発明化合物の
医薬的に許容される塩基付加塩は、有機塩基および無機塩基から公知方法によっ
て製造され、非毒性アルカリ金属およびアルカリ土類塩基、例えば、水酸化カル
シウム、ナトリウムおよびカリウム;水酸化アンモニウムおよび非毒性有機塩基
、例えば、トリエチルアミン、ブチルアミン、ピペラジンおよび(トリヒドロキ
シメチル)メチルアミンが挙げられる。プロドラッグ誘導体としては、O−エス
テル、特に、各アルカノイル基において2〜8個の炭素原子を有するトリ−O−
低級アルカノイルエステル;O−メチルエーテルまたは硫酸エステルが挙げられ
る。分離したRおよびS立体異性体も有用である。
前記したような競合的ステロイド5−α−レダクターゼ阻害薬であると思われ
る化合物としては、
N−t−ブチル−5−α−アンドロスト−1−エン−4−アザ−17β−カル
ボキシアミド−3−オン、
(2OR)−ヒドロキシメチル−4−メチル−4−アザ−5−アルファ−プレ
グナン−3−オン、
17β−N,N−ジイソプロピルカルボキシアミド−5−α−8(14)−ア
ンドロステン−4−メチル−4−アザ−3−オン、および
17β−N−t−ブチルカルボキシアミド−5−α−8(14)−アンドロス
テ
ン−4−メチル−4−アザ−3−オンなどの3−オキソ−4−アザ−ステロイド
系化合物が挙げられる。
3−ニトロステロイド系化合物もまた、
17β−N,N−ジイソプロピルカルボキシアミド−3−ニトロ−5−α−ア
ンドロスト−3−エン、
17β−N−t−ブチルカルボキシアミド−3−ニトロ−5−α−アンドロス
ト−3−エン、および
17β−N,N−ジイソプロピルカルボキシアミド−3−ニトロ−5−α−ア
ンドロスト−2−エンを含む競合的阻害薬であることが判明した。
前記した非競合的ステロイド5−α−レダクターゼ阻害薬であると思われる化
合物としては、
N−t−ブチル−アンドロスト−3,5−ジエン−17β−カルボキシアミド
−3−カルボン酸またはその塩、
N,N−ジイソプロピル−アンドロスト−3,5−ジエン−17β−カルボキ
シアミド−3−カルボン酸またはその塩、
17β−(N,N−ジイソプロピルカルボキシアミド)−エストラ−1,3,
5(10)−トリエン−3−カルボン酸またはその塩、
17β−(N−t−ブチルカルボキシアミド)−エストラ−1,3,5(10
)−トリエン−3−カルボン酸またはその塩、
17β−(N,N−ジイソプロピルカルボキシアミド)−エストラ−1,3,
5(10)−トリエン−3−スルホン酸またはその塩、
20−α−(ヒドロキシメチル)−A−ノル−5−α−プレグン−1−エン−
2−カルボン酸またはその塩、
17β−(N−t−ブチルカルボキシアミド)−エストラ−1,3,5(10
)−トリエン−3−スルホン酸またはその塩、
−17β−(N,N−ジイソプロピルカルボキシアミド)−エストラ−1,3,
5(10)−トリエン−3−ホスホン酸またはその塩、
17β−(N−t−ブチルカルボキシアミド)−エストラ−1,3,5(10
)−ト
リエン−3−ホスホン酸またはその塩、
17β−(N,N−ジイソプロピルカルボキシアミド)エストラ−1,3,5
(10)−トリエン−3−ホスホン酸またはその塩、
17β−(N−t−ブチルカルボキシアミド)−エストラ−1,3,5(10
)−トリエン−3−ホスホン酸またはその塩、
17β−N−t−ブチルカルボキシアミド−アンドロスト−3,5−ジエン−
3−ホスフィン酸またはその塩、
17β−N,N−ジイソプロピルカルボキシアミド−アンドロスト−3,5−
ジエン−3−ホスフィン酸またはその塩、
17β−N−t−ブチルカルボキシアミド−アンドロスト−3,5−ジエン−
3−ホスホン酸またはその塩、および
17β−N,N−ジイソプロピルカルボキシアミド−アンドロスト−3,5−
ジエン−3−ホスホン酸またはその塩
が挙げらる。
当業者は、前記方法によって、阻害薬が競合的または非競合的タイプであるか
を容易に決定することができる。かかる化合物のすべては、本発明の範囲内に含
まれる。5−α−レダクターゼなる語は、本明細書中で一般的に使用される場合
、前記競合的または非競合的阻害薬を意味する。
請求の範囲に挙げられた組合せは、ステロイド5−α−レダクターゼ活性を阻
害するので、それらは、DHT活性の低下が所望の治療効果を生じる疾患および
症状を治療する際に治療的有用性を有する。かかる疾患および病状としては、尋
常性ざ瘡、脂漏、女性多毛症、良性前立腺肥大症などの前立腺疾患、および男性
型禿頭症が挙げられる。
ステロイド5−α−レダクターゼ活性を阻害する際のそれらのin vivo効力に
ついて、本発明のある組合せを試験した。
雄性ラットを去勢し、1カ月間未処置のままにすると、腹側前立腺(ventral
prostate)は、初期の合計細胞数の約10%に退縮する。これらの去勢ラットに
外因性テストステロンを投与して、テストステロンの生理学的血清レベルを回復
させると、退縮した腹側前立腺は、迅速に増殖して、2〜3週間以内にその初期
の細胞含量に回復する。ラット腹側前立腺の再生を誘発するこのテストステロン
を阻害する能力を使用して、個々のおよび組み合わせた、「競合的」阻害薬およ
び「非競合的」阻害薬の1日2回経口投与の効力および効能を比較した。
競合的阻害薬は、N−t−ブチル−5−α−アンドロスト−1−エン−4−ア
ザ−17β−カルボキシアミド−3−オン(化合物A)であり、非競合的阻害薬
は、N−t−ブチル−アンドロスト−3,5−ジエン−17β−カルボキシアミ
ド−3−カルボン酸(化合物C)である。
これらの実験を行うために、開始時の体重が250〜300gのスプレーグ・
ドーリー・ネズミ[ハーラン・スプレーグ−ドーリー,インコーポレイテッド(
Harlan Sprague-Dawley,Inc.)から]50匹を使用した。これらの動物のうち4
5匹を去勢し、1カ月間未処置のままにして、最大腹側前立腺および精嚢退縮を
生じさせた。この1カ月の期間後、45匹の去勢動物うち40匹に、長さ2.5
cmのテストステロン充填シラスティック(silastic)カプセルを脇腹に皮下移植
した。該動物50匹を以下のとおり10グループに分けた:
グループ1−賦形剤だけを1日2回給餌した無傷ラット(無傷対照)
グループ2−賦形剤を1日2回給餌した、テストステロンカプセルを移植し
ていない去勢ラット(去勢対照)
グループ3−賦形剤を1日2回給餌した、テストステロンカプセルを移植し
た去勢ラット(再生対照)
グループ4−去勢ラット+テストステロン移植+非競合的阻害薬(BID)
12.5mg/kg
グループ5−去勢ラット+テストステロン移植+非競合的阻害薬(BID)
25mg/kg
グループ6−去勢ラット+テストステロン移植+非競合的阻害薬(BID)
50mg/kg
グループ7−去勢ラット+テストステロン移植+競合的阻害薬(BID)1
2.5mg/kg
グループ8−去勢ラット+テストステロン移植+競合的阻害薬(BID)2
5mg/kg
グループ9−去勢ラット+テストステロン移植+競合的阻害薬(BID)5
0mg/kg
グループ10−去勢ラット+テストステロン移植+非競合的阻害薬(BID)
50mg/kg+競合的阻害薬(BID)50mg/kg
該動物に5−α−レダクターゼ阻害化合物を1日2回(BID)10日間連続
投与した。この試験化合物をプロピレングリコールに溶解させ、通常生理食塩水
中に希釈した。該処理期間後、該動物から採血し、次いで、それらを殺し、腹側
前立腺を切除し、計量し、以下の方法でDHTレベルを測定した。
前立腺組織を切除し、トリミングし、計量し、みじん切りにし、リン酸塩緩衝
液で洗浄した。次いで、該組織をリン酸塩緩衝液中にホモジナイズし、酢酸エチ
ルを添加し、オービタルミキサーで45分間混合することによって抽出した。酢
酸エチルを蒸発させ、残留物をエタノール中に再構成させ、0.45μM濾紙を
使用して遠心濾過した。次いで、逆相HPLCを使用し、DHTフラクションを
回収して、成分を分離した。フラクションを濃縮乾固し、標準的な市販のDHT
アッセイ緩衝液中で再構成させた。次いで、ラジオイムノアッセイなどの標準的
な技術を使用して、DHTレベルを測定した。
単一の阻害薬の増加する量で処理されたラットにおいては、得られた前立腺の
重量の減少は、去勢対照モデルにおけるよりも有意に高いレベルで安定期に達し
、一方、組合せ処理したラットにおいては、前立腺の重量は、去勢レベルにまで
減少した。競合的阻害薬化合物Aに関するこの安定期投与−応答効果は、他の研
究においても報告された[ストナー(Stoner)ら、(1987)、エンドクリノ
ロジー(Endocrinology)、120:774]。かくして、提案された組合せの
投与は、単一の阻害薬のみによって得ることができるよりも有意に低い前立腺の
重量の減少を生じる。
提案された化合物/組合せは、カプセル、錠剤、または注射用調製物などの慣
用の投与形態中に取り込まれる。固体または液体医薬担体が使用される。固体担
体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム・二水和物、白土、シュー
クロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マ
グネシウムおよびステアリン酸が挙げられる。液体担体としては、シロップ、落
花生油、オリーブ油、生理食塩水、および水が挙げられる。同様に、担体または
希釈剤としては、単独でまたはワックスと一緒の、モノステアリン酸グリセリン
またはジステアリン酸グリセリンなどの徐放性物質を挙げることができる。固体
担体の量は、広範囲に変わるが、好ましくは、投与単位当たり約25mg〜約1g
である。液体担体を使用する場合、調製物は、シロップ、エリキシル、エマルジ
ョン、ゼラチン軟カプセル、アンプルなどの無菌注射用液体、または水性もしく
は非水性液体懸濁液の形態である。
医薬調製物は、所望の経口または非経口生成物を得るために、錠剤形態につい
ては、成分の混合、顆粒化、および、所望により圧縮、または、混合、充填、お
よび、所望により溶解を含む薬化学者の慣用技術に従って製造される。
慣用の投与方針を処方する場合には、本発明の組成物の各活性成分の薬物動態
学的性質を熟考しなければならない。その治療効果を最大にするために、本発明
の組合せおよび組成物の個々の化合物は、単一の医薬組成物として、または、別
々の医薬組成物中で連続して投与することができる(明細書中に記載した「共投
与された」)。例えば、1種以上の成分を、いくつかの投与量が薬物の遅延型ま
たは持続型放出投与のために処理される時間放出投与担体形態中に一体化される
。かかる投与担体は、持続放出型顆粒、糖を中心とした球体(sugar centered s
phere)、または、各層の活性成分の利用能が液体または高分子物質で被覆する
ことによって制御される多層錠剤からなる。
前記医薬投与単位における本発明の化合物/組合せの投与は、好ましくは、各
活性成分0.01〜1000mg/kgの範囲、好ましくは、0.1〜100mg/kg
の範囲から選択される有効な非毒性量である。5−α−レダクターゼ阻害を必要
とするヒト患者を治療する場合、選択された投与量は、好ましくは、1日1〜6
回経口または非経口投与される。非経口投与の好ましい形態としては、局所的投
与、直腸投与、経皮投与、注射による投与、および輸液による連続投与が挙げら
れる。
ヒト投与用経口投与単位は、活性化合物1〜500mgを含有するのが好ましい。
低い投与量を使用する経口投与が好ましい。しかしながら、患者のために安全か
つ便利な場合、高い投与量の非経口投与も使用することができる。
本発明の、ヒトを含む哺乳動物におけるステロイド5−α−レダクターゼ活性
阻害方法は、かかる阻害を必要とする患者に、作用の競合的および非競合的機構
の両方を有するステロイド5−α−レダクターゼ阻害化合物の有効な組合せを投
与することからなる。
本発明の脱毛症治療方法は、それを必要とする患者に、ステロイド5−α−レ
ダクターゼ阻害化合物またはステロイド5−α−レダクターゼ阻害化合物および
他の活性成分を投与することからなる。
本発明の組合せの試験結果を以下に示す。
前記表中のデータは、退縮ラット腹側前立腺の再生を誘発するテストステロン
の遮断に対する「競合的」および「非競合的」ステロイド5−α−レダクターゼ
阻害薬組合せの相乗効果を示す。さらに、テストステロンレベルが去勢対照を除
く全てのグループにおいて有効ではないことを示すデータが得られた。
本発明の組成物が本発明に従って投与される場合、許容されない毒物学的影響
は全く予想されない。
さらに、本発明に記載された5−α−レダクターゼ阻害化合物は、尋常性ざ瘡
、脂漏、女性多毛症、男性型禿頭症、良性前立腺肥大症または前立腺アデノカル
シノーマの病状を治療することが知られている他の化合物などの別の活性成分と
一緒に共投与することができる。特に好ましくは、本明細書中に記載するような
5−α−レダクターゼ阻害薬、または、本明細書中に記載するような5−α−レ
ダクターゼの競合的阻害薬および5−α−レダクターゼの非競合的阻害薬を含有
する組成物、ならびに男性型禿頭症(脱毛症)の治療に有用なミノキシジルの共
投与である。
本明細書中で使用する場合、「ミノキシジル」なる語は、式:
で示される化合物を意味し、化学的には、ミノキシジルは、2,4−ピリミジン
アジアミン,6−(1−ピペリジニル)−,3−オキシドと称される。ミノキシ
ジルは、ミシガン州カラマズーのジ・アップジョン・カンパニー(the Upjohn C
ompany)によって毛髪生育を刺激するための局所溶液として販売されているロ
するような5−α−レダクターゼ阻害薬と組み合わせて有用である場合、ミノキ
シジルは、その市販形態と同様に投与されるのが好ましい。
本明細書中で使用する場合、組成物が本明細書中に記載するような5−α−レ
ダクターゼ阻害薬および別の活性成分を含有する場合、5−α−レダクターゼ阻
害薬は、別の活性成分と一緒に共投与することができる。
本明細書中で使用する場合、「共投与」およびその派生語は、本明細書中に記
載する5−α−レダクターゼ阻害化合物と、尋常性ざ瘡、脱毛症、女性多毛症、
男性型禿頭症、良性前立腺肥大症または前立腺アデノカルシノーマの病状を治療
することが知られている他の化合物などの別の活性成分との、同時投与または連
続投与の方法のいずれかを意味する。好ましくは、投与が同時ではない場合、化
合物は、お互いに極めて近い時間に投与される。さらにまた、化合物を同一投与
形態で投与しても、例えば、1つの活性化合物を経皮投与し、もう1つの活性化
合物を経口投与してもかまわない。
以下の実施例は、本発明の医薬組成物の調製例を説明するものである。当該実
施例は、前記定義のとおり、かつ、下記請求の範囲のとおり、本発明の範囲を限
定するものではない。
実施例1
下記第II表に示す割合で、成分をふるいにかけ、混合し、ゼラチン硬カプセル
中に充填することによって、所定の化合物を投与するための経口投与形態を製造
する。
実施例2
下記第III表に示す、シュークロース、硫酸カルシウム・二水和物および所定
の化合物および組成物を示された割合で10%ゼラチン溶液と一緒に混合し、次
いで、顆粒化する。湿顆粒をふるいにかけ、乾燥させ、次いで、デンプン、タル
クおよびステアリン酸と混合し、ふるいにかけ、錠剤に打錠する。
実施例3
N−t−ブチル−5−α−アンドロスト−1−エン−4−アザ−17β−カル
ボキシアミド−3−オン75mgおよびN−t−ブチル−アンドロスト−3,5−
ジエン−17β−カルボキシアミド−3−カルボン酸75mgを通常生理食塩水2
5mlに分散させて、注射用調製物を調製する。
実施例4
以下の化合物(重量をベースとして表す)をラクトース250mgおよびステア
リン酸マグネシウム10mgと一緒に混合し、次いで、ゼラチン硬カプセル中に充
填した。ステロイド5−α−レダクターゼ阻害活性を必要とする患者にこれらの
カプセルを1日1〜6回投与する。
A. N−t−ブチル−5−α−アンドロスト−1−エン−4−アザ−17β
−カルボキシアミド−3−オン100mg;
N−t−ブチル−アンドロスト−3,5−ジエン−17β−カルボキシ
アミド−3−カルボン酸100mg
B. N−t−ブチル−5−α−アンドロスト−1−エン−4−アザ−17β
−カルボキシアミド−3−オン100mg;
17β−(N−t−ブチルカルボキシアミド)−エステル−1,3,5
(10)−トリエン−3−カルボン酸100mg
C. 17β−N−t−ブチルカルボキシアミド−3−ニトロ−5−α−アン
ドロスト−3−エン100mg;
N−t−ブチルーアンドロスト−3,5−ジエン−17β一カルボキシ
アミド−3−カルボン酸100mg
D. 17β−N−t−ブチルカルボキシアミド−3−ニトロ−5−α−アン
ドロスト−3−エン100mg;
17β−(N−t−ブチルカルボキシアミド)−エステル−1,3,5
(10)−トリエン−3−カルボン酸100mg
本発明の好ましい具体例は、前記により説明されるが、本発明は、本明細書中
に記載された精密な説明に限定されないこと、および以下の請求の範囲の範囲な
いになる全ての変形に対する権利を保有することが理解されるべきである。
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