【発明の詳細な説明】
炎症治療用の可溶性補体レセプター1(SCR−1)とアミジノフェニルまたは
アミジノナフチルエステルの組み合わせ
本発明は、相乗的に作用して補体の活性化を阻害するプロテアーゼ阻害物質お
よびヒト可溶性補体レセプター1の治療組成物に関する。このような組成物は、
補体活性化に関連する炎症または免疫障害の治療において有用である。
1型補体レセプター(CR1)は赤血球、単核細胞/マクロファージ、顆粒球
、B細胞、ある種のT細胞、脾小胞樹状細胞、および糸球足細胞の膜上に存在す
る。CR1は補体成分C3bおよびC4bに結合し、C3b/C4bレセプター
と称されてきた。あるCR1アロタイプの構造および一次配列は公知である(ク
リックシュタイン(Klickstein)ら、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・
メジシン(J.Exp.Med.)165:1095−1112(1987)、クリック
シュタインら、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メジシン168:16
99−1717(1988)、ホーケード(Hourcade)ら、ジャーナル・オブ・
エクスペリメンタル・メジシン168:1255−1270(1988)、WO
89/09220、WO91/05047)。これはそれぞれが60〜70個程
度のアミノ酸を含有する30個の短いコンセンサス重複配列(SCR)からなる
。SCRあたり平均65個のアミノ酸のうち約29個が保持されている。各SC
Rはジスルフィド結合における3番目および1番目ならびに4番目および2番目
のシスチン1/2とのジスルフィド結合により3次元的三重ループ構造を形成す
ると提案されている。CRはさらにそれぞれSCR7個ずつの4個の長相同重複
配列(LHR)として配列する。リーダー配列に続いて、CR1分子はN末端L
HR−A、次の2個の重複配列、LHR−BおよびLHR−C、C末端LHR−
Dの大部分とそれに続く2個の別のSCR、25残基の推定トランスメンブラン
領域および43残基の細胞質末端からなる。
数種のCR1の可溶性フラグメントは発現されたDNAからトランスメンブラ
ン領域を除去することにより組換えDNA法で産生されてきた(WO89/09
220、WO91/05047)。可溶性CR1フラグメントは機能的に活性で
あり、C3bおよび/またはC4bと結合し、それらを含有する領域によりファ
クターIコファクター活性を示した。このような構造はは好中球酸化破裂、補体
媒介溶血現象、およびC3aおよびC5a産生などのin vitroにおける補体関連
機能を抑制した。ある可溶性構造のsCRl/pBSCRlcもまた、逆受動ア
ルチュス(reversed passive Arthus)反応においてin vivo活性を示し(WO8
9/09220、WO91/05047;イェー(Yeh)ら、1991、ジャー
ナル・オブ・イムノロジー(J.Immunol.)146:250−256)、虚血後心
筋炎症および壊死を抑制し(WO89/09220、WO91/05047;ワ
イズマン(Weisman)ら、サイエンス(Science)、1990、249:146−
151;デュープ、アール(Dupe,R.)ら、トロンボシス・アンド・ヘモスタシ
ス(Thrombosis & Haemostasis)(1991)65(6)695)、移植後の
生存率を向上させ(プルット・アンド・ボリンガー(Pruitt & Bollinger)、
1991、ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(J.Surg.Res.)50:3
50;プルットら、1991、トランスプランテーション(Transplantation)
52;868)、ならびに肺傷害(ラビノビッチ(Rabinovici)ら、1992、
ジャーナル・オブ・イムノロジー149:1744−1750;ムリガン(Mull
igan)ら、1992、シャーナル・オブ・イムノロジー148:3086−30
92)、腸虚血(ヒル(Hill)ら、1992 FASEB J.6:A1049
)および急性心筋梗塞(ワイズマンら、1990、サイエンス、249:146
−151、デュープら、1991(前掲))などの病気の数種の動物モデルにお
ける補体活性化の治療的阻害を示した。
多くの場合、これらのモデルにおいて治療的効果を得るのに必要なsCRlの
用量は大きい(>5mg/kg)。sCRlは哺乳動物細胞培養技術により製造
される生物薬剤であるので、投与量を減らしそれにより治療コストを下げるのが
望ましい。
ある種のカルボン酸のアミジノフェニルおよびアミジノナフチルエステルは、
補体活性化の阻害物質であると共に、抗トリプシン、抗プラスミン、抗カリクラ
インおよび抗トロンビン活性を有することが知られている(GB2095239
、GB2083818)。
GB2083818は、式(A):
[式中、Zは−(CH2)a、−(CH2)b−CH(R3)−、−CH=C(R4)
−または−O−CH(R4)−(ここに、aは0、1、2または3、bは0、1
または2、R3は炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル基または炭素数3〜
6のシクロアルキル基、R4は水素原子または炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖
アルキル基であり、ここに−CH(R3)−、=C(R4)−または−CH(R4
)−基は−COO基と結合する;R1およびR2は、同一または異なって、各々、
水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル基、−O−R5、−S−R5
、−COOR5、−COR6、−O−COR7、−NHCOR7、−(CH2)c−
NR8R9、−SO2NR8R9、NO2、CN、ハロゲン、CF3、メチレンジオキ
シ、
であり、
ここに、cは0、1または2;R5は水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分枝
鎖アルキル基またはベンジル基;R6は水素原子または炭素数1〜4の直鎖また
は分枝鎖アルキル基;R7は炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル基;R8お
よびR9は、同一または異なって、各々、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または
分枝鎖アルキル基あるいはアミノ保護基;R10は水素原子、ジメチルまたはCF3
を意味する]
で示される化合物を開示している。
GB2095239は、一般式(B):
[式中、
R11は炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖アルキル基、1〜3個の二重結合を有
する炭素数2〜6の直鎖または分枝鎖アルケニル基、R13−(CH2)d−、R14
−(CH2)e−、
であり、
ここに、R13は炭素数3〜6のシクロアルキル基または1または2個の二重結合
を有する炭素数3〜6のシクロアルケニル基;dは0、1、2または3;R14は
アミノまたはグアニジノ基または保護されたアミノまたはグアニジノ基;eは1
〜5;R15およびR16は、同一または異なって、各々、水素原子、炭素数1〜4
の直鎖または分枝鎖アルキル基、−OR17、メチレンジオキシ基、−SR17、−
COOR17、−COR18、−OCOR19、−NHCOR19、−(CH2)f−NR20
R21(fは0、1、2)、−SO2NR20R21、ハロゲン原子、−CF3、NO2
、CN、
であり、
R17は水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル基またはベンジル
基;R18は水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル基;R19は炭素
数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル基;R20およびR21は、同一または異なっ
て、各々、水素原子、炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル基、またはアミ
ノ保護基;R22はO、SまたはNH;R23は2’,3’−ジメチルまたは3’−
CF3基;Yは−(CH2)g−(gは0、1、2または3)、−(CH2)h−
CHR24−(hは0、1、2または3)または−CH=CR25−;
R24は炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル基であり、炭素原子またはC
HR24基はCOO基に結合しており;R25は水素原子または炭素数1〜4の直鎖
または分枝鎖アルキル基であり、CR25基の炭素原子はCOO基に結合しており
;R12は−R26、−○R26、−COOR27、1個または2個の同一のハロゲン原
子、−NH2、−SO3H、
であり、
ここに、R26は炭素数1〜4の直鎖または分枝鎖アルキル基;R27は水素原子、
炭素数1〜4個の直鎖または分枝鎖アルキル基;R28は水素原子またはグアニジ
ノ基を意味する]
で示される化合物を開示している。
カルボン酸の他のアミジノフェニルエステルはまた、凝集経路のプロテアーゼ
を阻害することが知られており(エイ・ディー・ターナー(A.D.Turner)ら、1
986 バイオケミストリー(Biochem.)25:4929−35)、さらにフィ
ブリン溶解酵素の活性中心を可逆的にアクリル化するのにも用いられる(米国特
許第4,285,932号、米国特許第4,507,283号、EP0,297,88
2、アール・エイ・ジー・スミス(R.A.G.Smith)ら、1985,プログレス・
イン・フィブリノリシス(Progress in Fibrinolysis)VII 227−231)
。米国特許第4285932号、米国特許第4507283号およびEP029
7882は、式(C):
[式中、Rxは、
所望により、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、
C1-6アルカノイルオキシ、C1-6アルカノイルアミノ、アミノ、ジメチルアミノ
またはグアニジノから独立して選択される1または2個の置換基で置換されてい
てもよいベンゾイル;
ナフトイル;または
所望により、C1-6アルキル、フリルまたはフェニルで置換されていてもよいア
クリロイル(ここに、フェニル基は、所望によりC1-6アルキルで置換されてい
ていてもよい)を意味する]
で示される化合物を開示している。
したがって、この種の化合物は補体系のプロテアーゼの特異的阻害物質ではな
い。
CR−1関連ポリペプチドのある種の有機化合物との相乗作用組成物が記載さ
れている(WO92/10205)。
本発明によれば、炎症または不適切な補体活性化に付随する疾患または障害の
治療法であって、その治療を必要とする哺乳動物に有効量の可溶性CR1タンパ
ク質および有効量の補体阻害活性を有する式(I)
[式中、Aは、所望によりC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルコキシ
カルボニル、ハロ、NH2、スルホニル、ベンゾイルまたはC1-4アルキルベンゾ
イルアミノで置換されていてもよいフェニルまたはナフチル;
Bは、所望により、C1-6アルキル、フェニルおよびC1-6アルキルで置換され
たフェニルから選択される基により置換されていてもよいCH2=CH−;所望
により、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6
アルケノイルオキシ、C1-6アルカノイルアミノ、アミノ、ジメチルアミノまた
はグアニジノからなる群から独立して選択される1または2個の置換基で置換さ
れていてもよいフェニル、またはナフチルを意味する]
で示されるアミジノフェニルまたはアミジノナフチルエステル(その医薬上許容
される塩を包含する)を投与することからなる方法が提供される。
好ましくは、Aは所望により2−または3−位でハロゲンで置換されていても
よいフェニルであり、アミジン置換基は該フェニル環の4位にある。Bは好まし
くはC1-4アルコキシにより4位が置換されたフェニルであり、所望によりさら
にハロゲンで置換されていてもよい。もっとも好ましくは、Bは4−メトキシフ
ェニルであり、Aは4位がアミジン基で置換されたフェニルまたは2−ブロモフ
ェニルである。
ハロゲンの適当な例は、塩素および臭素を包含する。
医薬上許容される塩は、医薬上許容される酸、例えば、マレイン酸、塩酸、臭
化水素酸、リン酸、酢酸、フマル酸、サリチル酸、クエン酸、乳酸、マンデル酸
、酒石酸、メタンスルホン酸およびシュウ酸を用いて形成される。
好ましい態様において、組合せ療法において用いられる可溶性CR1成分はp
BSCRlc、pBSCRls、pBM−CRlc、pBSCRlc/pTC
SgptおよびpBSCRls/pTCSgptからなる群より選択される核酸
ベクターによりコードされ、特にWO89/09220に記載されているように
、pBSCRlc/pTCSgptから得られる。
各化合物の量は、標準的補体分析において感作赤血球の溶血を50%まで阻害
するのに必要な各成分の濃度が、同一分析にて各成分に対して必要な濃度に比べ
て減少するように選択される。この効力の増加は以下に詳細に定義する相乗因子
により表わされる。
本発明はまた、可溶性CR1蛋白質および補体阻害活性を有するアミジノフェ
ニルまたはアミジノナフチルエステルの、炎症または不適切な補体活性化に付随
する疾患または障害の治療用医薬の製造における使用を提供する。
該化合物は、標準経路、例えば静脈内注入または濃縮塊注射により投与され、
一緒に、またはいかなる順序で連続して投与してもよい。
化合物を一緒に投与する場合、これらは両薬剤を含む医薬組成物の形態で投与
するのが好ましい。したがって、本発明の別の態様において、可溶性CR1蛋白
質および補体阻害活性を有するアミジノフェニルまたはアミジノナフチルエステ
ルを医薬上許容される担体と共に含む医薬組成物が提供される。
好ましい具体例において、組成物はヒトに静脈内投与するための医薬組成物と
して慣用的操作にしたがって処方される。
さらに別の態様において、本発明は、本発明の医薬組成物の製法であって、可
溶性CR1蛋白質および式(I)のアミジノフェニルまたはアミジノナフチルエ
ステル(その医薬上許容される塩も含む)を混合することからなる製法を提供す
る。
本発明はまた、炎症または不適切な補体活性化に付随する疾患または障害の治
療法であって、このような治療を必要とする対象に、治療上有効な本発明の組成
物を投与することからなる方法も提供する。
前記方法において、対象は好ましくはヒトである。
疾患または障害の治療に有効なな蛋白質の量は、0.01〜100mg/kg
、好ましくは0.1〜10mg/kgの範囲である。
疾患または障害の治療に有効なエステルの量は、0.05〜100mg/kg
、好ましくは0.05〜10mg/kgの範囲である。蛋白質のエステルに対す
る比は好ましくは1:1〜1:20(重量比)の範囲である。
組成物は典型的には治療上活性量の蛋白質およびエステル、ならびに食塩水、
緩衝食塩水、デキストロースまたは水のような医薬上許容される賦形剤または担
体を含有する。組成物はまた、特定の安定化剤、例えばマンノースおよびマンニ
トールを含む糖類、例えばリドカインを含む注射組成物用局所麻酔剤からなって
いてもよい。
1またはそれ以上の医薬組成物の成分を充填した1またはそれ以上の容器から
なる医薬パックも本発明の範囲に含まれる。
本発明はまた、血栓症の治療、特にヒトまたはヒト以外の動物における急性心
筋梗塞の治療法であって、患者に本発明の組成物を投与することからなる治療法
を提供する。
本発明はさらにヒトまたはヒト以外の動物における成人呼吸窮迫症候群(AR
DS)の治療法であって、本発明の組成物を患者に投与することからなる治療法
を提供する。
本発明はまた、本発明の組成物を投与することにより、移植片を受けたヒトま
たはヒト以外の動物における超急性同種移植片または超急性異種移植片拒絶反応
を遅らせる方法を提供する。
本発明の方法および組成物は、以下に列挙する多くの補体媒介性または補体関
連障害(これに限定されない)の治療において有用である。
補体関連の疾患および障害
神経系障害
多発性硬化症
卒中
ギラン・バレー症候群
外傷性脳障害
パーキンソン病
アレルギー性脳炎
不適当または望ましくない補体活性化の障害
血液透析合併症
超急性同種移植片拒絶反応
角膜移植片拒絶反応
異種組織移植拒絶反応
IL−2療法中のインターロイキン−2誘発毒性
発作性夜間ヘモグロビン尿症
炎症性障害
自己免疫疾患の炎症
クローン病
成人呼吸窮迫症候群
火傷および凍傷を含む熱傷
ぶどう膜炎
虚血後再灌濯流症状
心筋梗塞
風船様血管形成
心肺バイパスまたは腎血液透析におけるポストポンプ症候群
腎虚血
肝虚血
感染症または敗血症
多半官不全
敗血症性ショック
免疫合併症および自己免疫疾患
リウマチ様関節炎
全身紅斑性狼瘡(SLE)
SLE腎炎
増殖性腎炎
糸球体腎炎
溶血性貧血
重症筋無力症
生殖障害
抗体または補体媒介性不妊症
物質
BRL55730 − CHO細胞におけるプラスミドpBSCR1c/p
TCSgptの発現に由来する可溶性1型補体レセプター(WO89/09
220)。
BRL24894A(APAN) − 4’−メトキシ安息香酸4−アミジ
ノフェニルHCl(EP−0009879)
BRAPAN − 4’−メトキシ安息香酸4−アミジノ−2−ブロモフェ
ニルHCl(実施例3)
方法
ヒツジ赤血球の溶血により測定する抗補体活性
補体阻害物質の機能活性をウサギ抗体(Diamedix Corporation,マイアミ州、
米国より入手)で感作したヒツジ赤血球の補体媒介溶解の阻害を測定することに
より評価した。0.1M Hepes pH 7.4/0.15M NaCl緩衝液中で1:1
25または1/35.7に希釈したヒト血清が補体源であり、基本的にDacie &
Lewis(1975)(プラクティカル・ヘマトロジー第5版(Practical Haemato
logy 5th Edition,Churchill Livingstone,Edinburgh and New York,3−4
頁)に記載されたようにボランティアのプールから調製した。簡単には、血液を
37℃に5分間暖め、血餅を除去し、残存する血清を遠心分離により清澄化した
。血清フラクションを少量のアリコートに分割し、−196℃で貯蔵した。アリ
コートを必要に応じて解凍し、使用直前にHepes緩衝液中で希釈した。
感作ヒツジ赤血球の補体媒介溶解の阻害を、以下のようにして、基本的にはワ
イズマン(Weisman)ら(1990)(前掲)により記載されたようにして、v
底マイクロタイタープレートフォーマットを用いた標準的溶血検定を用いて測定
した。
標準的検定
Hepes(0.1M Hepes pH 7.4/0.15M NaCl)緩衝液中希釈した2
5μlのある範囲の濃度の阻害物質(典型的には、BRL55730に関しては
最終濃度が0.1μg/ml〜0.00078μg/ml、APANまたはBRA
PANに関しては最終濃度が100−0.1μMの範囲)を25μlの緩衝液およ
び50μlの1/125希釈血清と共に37℃で15分間培養した。100μl
の予め暖めた感作ヒツジ赤血球を1時間37℃で添加し、最終反応容積を200
μlにした。サンプルを300g、4℃で15分間スピンさせ、平底マイクロタ
イタープレートに上清150μlを移し、410nmでの吸収を測定した。これ
は各試験溶液中の溶解量を反映する。最大溶解を、血清を赤血球と共に阻害物質
の非存在下(E+S)に培養することにより測定し、それから基底溶解度(赤血
球を緩衝液と共に培養することにより測定する)(E)を引いた。阻害物質によ
る基底溶解を、阻害物質を赤血球と共に培養する(E+I)ことにより評価し、
これを試験サンプル(E+I+S)から差し引いた。阻害率を、全細胞溶解の分
数として表わし、IH50は、溶解の50%阻害を与えるのに必要な阻害物質の
濃度を表わす。血清を1/35.7に希釈した実験に関しては、培養時間を37
℃で15分間に減らした。それ以外の条件は同一であった。
最大溶解: Amax=(E+S)−(E)
阻害物質の存在下での溶解: Ao=(E+I+S)−(E+I)
[阻害物質]をIHに対してプロットし、IH50値をIH=0.5に対応する
濃度を読み取ることにより滴定曲線から決定する。
相乗作用検定
この検定は、阻害物質1、例えばBRL55730を一定濃度の阻害物質2、
例えばAPANの存在下で滴定する以外は前記と同様にして行った。これは、血
清の存在下に25μlの阻害物質1を25μlの阻害物質2に添加し、前記のよ
うにして溶解度を測定することにより行った。
相乗因子の決定
各相乗実験に関して両阻害物質をそれ自体ならびに両方に対して滴定した。
実施例1
阻害物質1、BRL55730をそれ自体に対しておよび種々の濃度の阻害物
質2、APANの存在下で滴定した。[BRL55730]をAPANを用いて
または用いないでIHに対してプロットした(図1)。BRL55730のIH
50を各APAN濃度で評価した。BRL55730のIH値を各APAN濃度
で評価した。[APAN]のIHに対する2回目のプロットを行い(図2)、こ
れから相乗実験において用いたAPANの濃度に対応するIHを評価した。結果
を表にする(表1)。
第1列はAPANの濃度である。特定の濃度のAPANが寄与する阻害物質の
割合を[APAN]対IHのプロット(図2)(第2列)から評価した。BRL
55730に関するIH50値を各濃度のAPAN(第3列)で決定した。BR
L55730のIH50に対してなされた特定の濃度のAPANの寄与を差し引
き、即ち、0.5−IH(APAN)(第4列)とした。この値を用いて単独でこのレ
ベルの阻害(第5列)を与えるBRL55730の濃度を読み取った。調節した
BRL55730濃度をIH50測定値で割って相乗因子、即ち、第5列/第3
列=第6列を得た。APANの効果が付加的である場合、相乗因子は1であり、
値が1より大きいことは、相乗効果であることを意味し、値が大きいほど、相乗
作用の程度が大きいことを示す。
イソボログラム分析
阻害物質1、例えばBRL55730および阻害物質2、例えばAPANのI
H50を別々に測定した。これらの実験的測定値をイソボログラム軸にプロット
し、直線で結び、相加直線と称した(図3)。この直線は2つの阻害物質の組合
せを表わし、これを一緒に用いた場合、50%阻害が得られた(タラリダ(Tall
arida)(1992)ペイン(Pain)49:93−97)、ミアスコスキーおよ
びレビン(Miaskowski&Levine(1992)51:383−387))。相加直
線上にある点は付加的効果を示し、直線より上の点は拮抗作用を示し、直線より
下の点は、相乗作用を示す。BRL55730を一定濃度のAPANの存在下で
滴定し、各APAN濃度でのBRL55730のIH50を測定する。このデー
タをイソボログラム上でプロットする(図3)。
一定濃度対を用いた相乗効果作用の統計的分析
BRL55730をそのIH50値より低い濃度xで標準的検定において評価
した。APANもそのIH50値より低い濃度yで評価した。ついで、BRL5
5730[x]をAPAN[y]と共に同一の溶血検定において分析した。阻害量を2
つの阻害物質に関して別々に分析した場合、および一緒に分析した場合につき計
算した。
相乗作用が起こった場合、一緒に分析した化合物の阻害は2つの阻害剤の個別
の測定値の合計よりも大きくなければならない。即ち、BRL55730[x]/
APAN[y]>BRL55730[x]+APAN[y]である。
このデータを次式にしたがってt−試験により統計的に分析した。
tをt表における臨界レベルと比較した。ただし、自由度(df)は以下のとお
りである:
df=na+nb+nab−3
a. 1/125に希釈した血清中のAPANのBRL55730との相乗作用
BRL24894A(APAN)分子量324.24をジメチルスルホキシド
(DMSO)中50mMにした。BRL55730(10mM燐酸ナトリウム緩
衝液pH7.2中)は5.3mg/mlである。標準的分析において、APANに関
しては100μM〜0.78μM、BRL55730に関しては0.125μg/
ml〜0.00098μg/mlの範囲にわたり、両阻害物質を滴定した。2つ
の滴定曲線をBRL55730に関して作成し、これから平均IH50は0.0
1μg/ml(図1)、APANに関する曲線から、IH50は10μMであっ
た(図2)。相乗効作用を試験するために、BRL55730を同じ濃度範囲で
あるが、一定濃度のAPANの存在下(各滴定に関して1〜6μM)で滴定した
(図1)。データから相乗因子を前記のようにして計算した。
表1のデータから、6μM APANとBRL55730は、IH50を約8倍
減少させることがわかる。APANの各濃度での相乗因子の計算値を表1に示し
、相乗因子が>1であるのでAPANの効果は付加的以上であることがわかる。
相乗因子は用いた濃度にわたって一定のままで、平均値は1.8である。
BRL55730(濃度範囲0.04〜0.000039μg/ml)をそれ自
身に関して滴定した。補体活性化の阻害が起こらない濃度は〜0.0004μg
/mlであることが判明した。APANのそれ自身に関する滴定から4μMの濃
度でIHは0.31、2μMでIHは0.16であった。BRL55730を4お
よび2μMのAPANの存在下で滴定した場合、BRL55730の0.000
4μg/mlでの阻害は、APANに関して計算される値より大きく、APAN
は効果なしの濃度以下でBRL55730を活性にする。
b. APANとBRL55730のイソボログラム分析
相加直線を前記のようにして、図1および図2からデータを読み取って作成し
た。BRL55730の各APAN濃度でのIH50(表1のそれぞれ第1およ
び3列)を図3に示すイソボログラム上にプロットした。相加直線の下にある点
は、相互作用が相乗的であることを意味する。
c. BRL55730およびAPAN間の一定濃度対を用いた相乗作用の統計
的分析
以下の濃度対を前記のように相乗作用に関して試験する。
(i) 0.005μg/ml BRL55730 4μM APAN
(ii) 0.005μg/ml BRL55730 2μM APAN
(iii) 0.002μg/ml BRL55730 4μM APAN
(iv) 0.002μg/ml BRL55730 2μM APAN
各濃度対についての統計学的パラメータを以下に示す。
各試験濃度対で、仮説1が正しいことが判明した。即ち効果は付加的でなく、a
+b<abであるので相乗作用が示された。
d. APANに対するBRL55730の相乗効果
BRL55730のAPANのIH50に対する効果を実施例1aに記載した
のと同様の方法で試験するが、この場合APANを0.78μM〜100μMに
わたり0.001〜0.006μg/mlの一定濃度のBRL55730の存在下
で滴定した。BRL55730のAPANのIH50に対する効果を表2に示し
、0.006μg/mlのBRL55730の添加はAPANのIH50を10
μMから1μMにシフトさせ、これは10倍の向上である。相乗因子は、方法に
おいて記載したようにして決定し、>1であることが判明し(表6)、APAN
およびBRL55730間の相乗プロセスは可逆的であることを示す。すでに記
載した実施例1aと異なり、相乗因子はBRL55730の濃度に依存すると考
えられる。
e. APANとBRL55730のイソボログラム分析
イソボログラム分析を前記のようにして、図2および6表のデータを用いて行
った。相加直線の下にある点は効果が相乗的であることを示す。
f. 1/35.7に希釈した血清中のAPANおよびBRL55730の相乗
効果
APANおよびBRL55730間にみられる相乗作用がより濃縮された血清
中で再生可能かどうかを試験するために、実施例1aにおいて記載したものより
3.5倍濃縮された1/35.7希釈の血清中で実験を行った。この血清濃度が感
作ヒツジ赤血球の最大溶解を起こさないことを確かめる予備実験として、50μ
lの1/10〜1/150の種々の希釈度の血清を50μlの0.1M Hepes pH
7.4/0.15M NaCl緩衝液と共に37℃で15分間予備培養した。10
0μlの赤血球を添加し、サンプルを15分または30分間37℃で培養した。
未溶解細胞を〜300g、4℃で15分間回転させ、次に410nmでの吸光度
を読み取る前に150μlの上清を平底ミクロタイタープレートに移した。血清
希釈度の吸光度に対するプロットから1/35.7の希釈度で15分間赤血球と
共に血清を培養すると〜90%の最大溶解が得られることがわかった。この血清
濃度が適していることが証明されたので、BRL55730とAPANの相乗実
験をより濃縮した血清を用い、培養時間を15分に減少させる以外は実施例1a
と同様にして行った。
BRL55730のより濃縮した血清中の滴定により、IH50は〜0.14
μg/ml(2つの測定値の平均)であり、これは1/125希釈血清中よりも
14倍大きい。同様に、APANのIH50は52μMであることが判明し(2
測定値の平均)、これはより希釈された血清中よりも約5倍大きい。BRL55
730を1〜0.0078μg/mlの濃度範囲にわたり、2〜18μMの濃度
範囲のAPANの存在下で滴定することにより相乗実験を行った。データをまと
めて表7に示し、これは相乗効果がより濃縮された血清中で大きくなることを示
す。この場合の相乗因子はAPANの濃度に依存すると考えられる。
g. 濃縮された血清中のAPANとBRL55730のイソボログラム分析
1/35.7に希釈した血清中のAPANおよびBRL55730のIH50
を用いて相加直線を作成した。表7の第1および3列からのデータを用いてイソ
ボログラムを作成した。2μM以外の点はすべて相加直線の下にあり、これは相
乗作用であることを示す。2μMのデータは第7表の相乗因子が1.03である
ことを示し、イソボログラムの相加直線上にあり、これはこの濃度で効果は付加
的であることを示す。
h. BRAPANのBRL55730に対する相乗効果
4’−メトキシ安息香酸4−アミジノ−2−ブロモフェニルHCl(BRAP
AN)分子量386をDMSO中10mMにし、方法において記載したようにし
て1/125に希釈した血清を用いて滴定した。2つの別の測定値からBRAP
ANの平均IH50値は3μMであった。BRL55730の0.1〜0.000
78μg/mlの滴定曲線を作成し、これからIH50は0.021μg/ml
であった。相乗作用を試験するために、BRL55730を同じ濃度範囲にわた
り、ただし0.1μM〜0.9μMの範囲のBRAPANの存在下で滴定した。表
8はBRAPANのBRL55730に対する相乗作用を示す。同じ血清希釈度
でのAPANに関して、相乗因子は>1で、これはBRAPANがBRL557
30と相乗作用することを示す。相乗因子は濃度範囲にわたりほぼ一定に維持さ
れ、平均値は1.7であり、これはまたAPANに関して見られるのと非常に類
似している。
i. BRAPANのBRL55730に対する効果のイソボログラム分析
実施例1hにおいてBRAPANに関して記載したデータを用いて、イソボロ
グラムを作成する。すべての点は相加直線の下にあり、相乗作用が起こったこと
を示す。
実施例2
sCRl(BRL55730)およびAPAN(BRL24894A)の共処方
D−マンニトール(シグマ社(Sigma.UK)、60mg)を注射用水(9.5
ml)中に溶解した。APANをHPLC等級のメタノール中に外界温度(20
〜25℃)で5分間攪拌することにより溶解し、最終濃度を6mg/mlにした
。溶液(0.5ml)を直ちにマンニトール溶液に添加し、振盪することにより
混
合した。BRL55730の溶液(10mM燐酸ナトリウム(pH7.2)中、5
mg/ml、0.2ml)を添加し、振盪し、直ちにドライアイス中で凍結した
。物質を平均圧力2〜3ミリバール、冷却温度(−60℃)で20時間凍結乾燥
した。白色固体は以下の組成を有し、これをデシケータ中、−70℃で貯蔵した
:BRL55730:1mg;BRL24894A:3mg;D−マンニトール
;60mg;燐酸ナトリウム:微量。
実施例3
4’−メトキシ安息香酸4−アミジノ2−ブロモフェニルHCl(BRAPAN
)の調製
該物質を2−ブロモ−4−シアノフェノールより2工程にて調製した。
a: 2−ブロモ−4−アミジノフェノール塩酸塩の調製
2−ブロモ−4−シアノフェノール(1.35g、6.8ミリモル)をエタノー
ル(20ml)中に溶解した。塩化水素ガスを該冷却溶液に通すと、45分後に
白色沈殿が形成された。2時間後、発泡が停止し、溶液中固体を4℃で2日間静
置した。白色固体を濾過により単離した。これを直ちにエタノール溶液(50m
l)中に懸濁させ、エタノール中アンモニア飽和溶液(75ml)を添加した。
懸濁液は略すぐに透明になり、これを24時間攪拌し、同じ期間静置した。揮発
性物質をすべて除去し、白色固体を水(20ml)中に溶かした。濃塩酸(5m
l)を添加すると白色結晶塊が素早く形成され、これを濾過により単離し、エタ
ノール(20ml)およびジエチルエーテル(100ml)から再結晶した。収
率:860mg(50%)。融点279〜80℃。
1H nmr(CDCl3−d6DMSO)δ:9.2(4H,brd,アミジン
)、8.2(1H,d,J=2Hz,アリール−H)、7.8(1H,m,アリー
ル−H)、7.25(1H,J=9Hz,アリール−H)
IR(ヌジョール):3325、3125、2300〜3400、1670、
1610、1585、1410、1300、1175、1045、880、83
5、725、620cm-1
元素分析:C7H8N2OBrClとして、計算値(%);C,33.45、H,
3.28、N,10.95;計算値(%);C,33.43、H,3.21、N,1
1.14
b. 標記化合物の調製
4−メトキシベンゾイルクロリド(271mg、1.59ミリモル)の乾燥ピ
リジン(5ml)中溶液に、2−ブロモ−4−アミジノフェノール塩酸塩(40
0mg、1.59ミリモル)を添加した。最初の懸濁液は透明溶液になり、次に
沈殿が再形成された。1時間攪拌した後、赤外分析によりエステルが形成された
ことがわかる。ピリジンを減圧下に除去し、最終微量残存物をエタノールと共沸
した。得られた白色固体を5:1ジエチルエーテル/エタノールから2回再結晶
して、白色の標記化合物を得た。収率:225mg(37%)。融点212〜3
℃。
1H nmr(d6DMSO−トレースCDCl3)δ:9.55(4H,br,
アミジノフェノールNH)、6.95〜8.25(7H,m,アリール−H)、3
.9(1H,s,OCH3)
IR(ヌジョール):2500〜3400、1735、1665、1605、
1580、1260、1230、1170、1070、1020、830cm-1
元素分析 :C15H12N2BrClとして、測定値(%):C,46.66;H
,3.74;N,7.19;測定値(%):C,46.72;H,3.66;N,7
.26
図面;
図1は、異なる濃度のAPANのBRL55730に対する効果を示す;
図2は、APANによる補体活性化の阻害を示す;
図3は、標準分析法におけるBRL55730およびAPANのイソボログラ
ムである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,G
B,GE,HU,JP,KP,KR,KZ,LK,LU
,LV,MG,MN,MW,NL,NO,NZ,PL,
PT,RO,RU,SD,SE,SK,UA,US,U
Z,VN
(72)発明者 スミス,リチャード・アンソニー・ゴドウ
ィン
イギリス国エセックス・シーエム19・5エ
イディー、ハーロウ、ザ・ピナクルズ、コ
ールドハーバー・ロード(番地の表示な
し) スミスクライン・ビーチャム・ファ
ーマシューティカルズ