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JPH08501569A - 糖質結合ペプチドの抗炎症性、免疫寛容原性、および免疫阻害性 - Google Patents

糖質結合ペプチドの抗炎症性、免疫寛容原性、および免疫阻害性

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JPH08501569A
JPH08501569A JP6508559A JP50855994A JPH08501569A JP H08501569 A JPH08501569 A JP H08501569A JP 6508559 A JP6508559 A JP 6508559A JP 50855994 A JP50855994 A JP 50855994A JP H08501569 A JPH08501569 A JP H08501569A
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JP
Japan
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peptide
lectin
sialic acid
βgal
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Pending
Application number
JP6508559A
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English (en)
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ディー. ハーゼ,ルイス
ディー. アームストロング,グレン
スミス,リチャード
Original Assignee
アルバータ リサーチ カウンスル
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from US07/995,503 external-priority patent/US5453272A/en
Application filed by アルバータ リサーチ カウンスル filed Critical アルバータ リサーチ カウンスル
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、レクチン由来の糖質結合ペプチドまたはその誘導体、特に末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−および/またはα−シアル酸(2→3)βGal−基を含有する構造または分子上のそのような基を結合させることのできるペプチドを投与することによって、炎症反応の抑制、抗原に対する寛容の惹起、そして例えば転移に関与する細胞相互間接着の抑制を達成するための方法に関するものである。このようなレクチン由来の糖質結合ペプチドまたはその誘導体を含有する製剤組成についても開示する。

Description

【発明の詳細な説明】糖質結合ペプチドの抗炎症性、免疫寛容原性、および免疫阻害性 発明の背景 1.発明の分野 本発明は、1種類以上のレクチン由来糖質結合ペプチドを投与することにより 哺乳類における免疫反応あるいは細胞間相互作用を阻害するための方法に関する ものである。特に、本発明は1種類以上の糖質結合ペプチドを投与することによ り哺乳類において炎症反応の抑制、抗原に対する免疫寛容性の惹起、抗原に対す る免疫反応惹起の調節、および細胞相互間接着性の阻害を達成するための方法に 関するものである。本発明において使用するレクチン由来の糖質結合ペプチドは 、Bordetella pertussisあるいは同等の機能を有するその変異株によって発現さ れる百日咳毒素のS2またはS3サブユニットの画分が望ましい。 2.参考文献 本出願中に引用するすべての出版物、特許、および特許出願の開示は、個々の 出版物あるいは特許出願が完全な形で参照により取り込まれることを特異的かつ 個別に示したものと同義として、完全な形で本明細書中に取込まれるものとする 。 3.技術の状態 増殖、移動、形態学的発達および分化等、哺乳類細胞における重要な過程の一 部は、細胞表面に作用する細胞外シグナルによって制御されている1-3。外的剌 激の中には細胞外液を通じて細胞に到達するものもあるが、近隣細胞または接近 している細胞の表面から受領され、直接の細胞間接触を通じてその作用を発揮す るシグナルもある4、5。 特異的な細胞表面リセプターは、特異的な結合を通じて相手の細胞の分子シグ ナルを「感知する」ことができ、この結合を細胞反応に変換するための生化学的 な機序が存在する、ということを示唆する証拠が得られている。例えば、細胞表 面における複雑な相互作用は、標的組織への病原体の結合6、7、精子−卵子間の 結合8、免疫系における細胞間の相互作用9、10、そして胚の発達の間の細胞認識1 1 等の直接の過程を助けるものと考えられている。また、細胞間認識に欠陥があ ると、新生物への変化や転移の特徴である細胞の増殖および移動の制御不能が起 こるとも考えられている12、13。 細胞認識の過程は複合糖質の糖質鎖またはグリカン部分によって媒介される、 という証拠も得られている4、14、16。例えば、1つの細胞の表面複合糖質が別の 細胞の相補的な糖質結合蛋白質(レクチン)に結合することによって、特異的な 相互作用を開始させることができる。 糖質結合蛋白質の中の重要なグループの1つとして、セレクチン(LEC-CAM) 蛋白質(レクチン+EGF+相補的ドメイン−細胞接着制御分子)がある。これら 、あるいは同等の機能を有する蛋白質やレクチンは、細胞間接触の媒介を通じて 、そして白血球の血管外遊出を通じて、免疫反応(炎症反応を含めた)において 非常に重要な役割を果たすものと考えられている17-22。セレクチン蛋白質およ びその他のレクチンの推定上のリセプター構造の一部として、特異的な糖質リガ ンドが特定されている17-25。特定された構造としては、末端に結合したα−シ アル酸(2→6)βGal−およびα−シアル酸(2→3)βGal−基を含むオリゴ 糖グリコシドが挙げられる。セレクチン蛋白質かつ/またはその他のレクチンと 相互作用させることによって炎症、免疫抑制等を制御するためにこのような末端 結合基をもつオリゴ糖およびその誘導体を使用することに関しては、すでに開示 されている26-29、35-41。 同様に、おそらくGMP−セレクチン蛋白質が白血球上の糖質リセプターと結合 するのを阻害することによって、GMP−140やその他のセレクチンが白血球に結合 するのを阻害するセレクチンGMP-140に由来するペプチドも、免疫反応を抑制す る上で有用であるとして開示されている29。また、好中球機能の強力な調節物質 であることが知られている他のペプチドもある48。 百日咳毒素(PT)42はBordetella pertussisと呼ばれる細菌−百日咳の病原菌 −が産生する毒性因子であり、シアリルラクトースアミンの糖配列で終結する糖 蛋白質リセプターに結合することが知られている43、44。我々は以前に、この蛋 白質が哺乳類における免疫反応および細胞相互間接着を抑制する上で有用である ことを示している45。PTの結合特異性は、Sambucus nigra(SNA)およびMaackia amurensis(MAL)に由来する植物レクチンに類似していることが示されており25、 これらはシアル酸を含む複合糖質に対して高い親和性をもって結合し46、47、ま た免疫調節特性を有することも示されている45。 しかし、哺乳類において免疫反応あるいは細胞間相互作用を阻害するために蛋 白質または高分子量ポリペプチドを使用することにはいくつかの欠点があり、そ の中には純度の高い形で大量に生産するのが困難であること、哺乳類動物に対し て繰り返し投与すると副作用が発生する傾向にあること、哺乳類動物への投与が 禁忌である感染性物質あるいは有毒物質が含まれる可能性があること、そしてこ のような蛋白質は有効性を改善するために薬物動態特性を調節するのが困難であ ること、等の事実が含まれる。 上述の点から、末端αNeu 5Ac(2→3)βGal−およびαNeu 5Ac(2→ 6)βGal−基に対するレクチン様の結合特性を有するペプチドを使用すること は、百日咳毒素やSNAおよびMALに由来するレクチンのような蛋白質を投与するこ とに比べて、哺乳類における免疫反応および細胞間相互作用を阻害する上で特に 有益であると予想される。なぜならば、これらのペプチドは蛋白質および高分子 量ポリペプチドを哺乳類に対して投与した場合に起こる問題を軽減すると思われ るからである。発明の要約 本発明の趣旨の一部は、α−シアル酸(2→3)βGal−かつ/またはα−シ アル酸(2→6)βGal−基が末端に結合した構造に対する結合領域が百日咳毒 素等レクチンのある種のペプチド画分(例えば蛋白質およびポリペプチド)中に 検出されること、そしてこれらの糖質(オリゴ糖)に対する結合を達成するため にレクチン全体を使用する必要のないことの発見に関するものである。 さらに本発明は、レクチン由来のこれらの糖質結合ペプチドを哺乳類(例えば ヒト)に対して有効量投与すると、特定の免疫反応および細胞間相互作用を阻害 するという発見も趣旨の一部としている。本発明の趣旨は特に、レクチン由来の このような糖質結合ペプチドを炎症反応の阻害、抗原に対する免疫反応惹起の調 節、抗原に対する長期的寛容の惹起、そして細胞相互間接着の抑制を目的として 哺乳類に投与することが可能である、という発見に関するものである。 本発明の趣旨は特に、細胞表面上(例えば白血球)で検出される分子(例えば オリゴ糖、糖蛋白質、糖脂質等)の中に存在するα−シアル酸(2→3)βGal −かつ/またはα−シアル酸(2→6)βGal−(例えばαNeu 5Ac(2→3) βGal−)末端結合基に結合することのできるレクチン由来の糖質結合ペプチド を、細胞相互間の接着あるいは細胞媒介免疫反応を阻害するための手段として哺 乳類に投与することが可能である、という発見に関するものである。本発明で開 示するペプチドによって阻害される細胞媒介免疫反応としては、炎症反応、抗原 に対する免疫反応惹起の調節、そして抗原に対する長期的寛容の惹起が挙げられ る。 本発明において使用するレクチン由来の糖質結合ペプチドとしては、Bordete −lla pertussisまたは同等の機能を有するその変異株によって発現される百日 咳毒素のS2またはS3サブユニットの画分が望ましい。これらの望ましいペプチド は、以下の図1に示すペプチドのアミノ酸配列を有している。 したがって、方法に関する本発明の1つの見地として、α−シアル酸(2→3 )βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→6)βGal−末端結合基を含む構造ま たは分子上でこの基と結合することのできるレクチン由来の糖質結合ペプチドあ るいはその誘導体のうちの少なくとも1種類を有効量投与することによって、哺 乳類における炎症反応を抑制するための方法を趣旨としている。 方法に関する本発明の別の見地として、α−シアル酸(2→3)βGal−かつ /またはα−シアル酸(2→6)βGal−末端結合基を含む構造または分子上で この基と結合することのできるレクチン由来の糖質結合ペプチドあるいはその誘 導体のうちの少なくとも1種類の有効量と抗原とを併せて投与することによって 、哺乳類における抗原に対する免疫反応惹起を調節するための方法を趣旨として いる。 方法に関する本発明の別の見地として、哺乳類を抗原に接触させた(刺激)後 、α−シアル酸(2→3)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→6)βGal− 末端結合基を含む構造または分子上でこの基と結合することのできるレクチン由 来の糖質結合ペプチドあるいはその誘導体のうちの少なくとも1種類を有効量投 与することによって、感作された哺乳類において抗原に対する長期的寛容を惹起 させるための方法を趣旨としている。 方法に関するさらに別の見地として、α−シアル酸(2→3)βGal−かつ/ またはα−シアル酸(2→6)βGal−末端結合基を含む構造または分子上でこ の基と結合することのできるレクチン由来の糖質結合ペプチドあるいはその誘導 体のうちの少なくとも1種類を有効量投与することによって、腫瘍細胞の転移あ るいは炎症に関与する細胞相互間接着現象を阻害するための方法も本発明の趣旨 としている。 方法に関するさらに別の見地として、α−シアル酸(2→3)βGal−かつ/ またはα−シアル酸(2→6)βGal−末端結合基を含む構造または分子上でこ の基と結合することのできるレクチン由来の糖質結合ペプチドあるいはその誘導 体のうちの1種類以上を有効量投与することによって、哺乳類における肺の炎症 かつ/または肺の損傷を治療するための方法も本発明の趣旨としている。 組成に関する本発明の見地として、製剤として許容できる当該レクチン由来糖 質結合ペプチドの塩を含む、主題のレクチン由来糖質結合ペプチドから構成され る製剤組成を趣旨としている。図面の簡単な説明 図1に示すのは、望ましいレクチン由来糖質結合ペプチドのアミノ酸配列であ る。 図2に示すのは、Balb/cマウスを20μgのOVA抗原で剌激し、そのうちの一部 のマウスに対して刺激してから5時間後にレクチン由来糖質結合ペプチドを100 μg投与して、剌激後24時間目にDTH炎症反応により生じた足パッド部の腫脹の 増大を測定した結果である。 図3に示すのは、Balb/cマウスを100μgのOVA抗原で免疫し、7日後にOVAに より剌激した後、約5時間後にレクチン由来糖質結合ペプチドを投与して、足パ ッドの腫脹によってDTH反応に対する長期的(2週間)な効果を測定した結果で ある。 図2および3において、ペプチド2275はACS2P1(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜 23)、ペプチド2283はSPYGRC(SEQ ID NO:3のアミノ酸18〜23)であり、共に図 1に示すものである。 図4から7に示すのは、図2および3と同一の試験を他のペプチドにおいて実 施した結果である。 図1に示し、本出願を通じて使用したアミノ酸残基は、以下に示す慣習的な1 文字コードで表記する: A アラニン I イソロイシン R アルギニン C システイン K リシン S セリン D アスパラギン酸 L ロイシン T スレオニン E グルタミン酸 M メチオニン V バリン F フェニルアラニン N アスパラギン W トリプトファン G グリシン P プロリン Y チロシン H ヒスチジン Q グルタミン また、慣習に従い、ペプチドのアミノ末端を構成するアミノ酸残基をペプチド鎖 の左側に、そしてペプチドのカルボキシル末端を構成するアミノ酸残基をペプチ ドの右側に表記する。望ましい態様の詳細な説明 本発明の一部は、特定のレクチン由来糖質結合ペプチドを哺乳類に対して投与 した場合に、抗原に対する寛容、抗原に対する免疫反応惹起の調節、および細胞 相互間接着現象、例えば腫瘍細胞の転移に関与する細胞相互間接着現象の阻害を 含めた炎症反応を抑制する上で有効である、ということの発見に関するものであ る。 1.定義 本明細書において使用する次の語は、以下に示す意味を有するものとする: 「炎症反応」または「炎症性疾患」という語は、特異的および非特異的な防御 機構が関与する免疫反応のことを意味する。特異的な防御機構による反応とは、 抗原に対する免疫系の特異的な反応である。特異的な防御機構反応の例としては 、ウイルス、アレルゲンといった抗原に対する抗体反応や遅延型過敏症が挙げら れる。非特異的な防御機構による反応とは、一般に免疫学的な記憶を保持するこ とのできない白血球によって媒介される炎症反応である。このような細胞として はマクロファージ、好酸球および好中球がある。非特異的反応の例としては、蜂 に剌された直後に腫脹すること、そして細菌感染部位に多形核(PMN)白血球が 集まること(例えば細菌性肺炎における肺浸潤や膿瘍における膿の産生)が挙げ られる。 本発明の範囲内でのその他の「炎症反応」または「炎症性疾患」の例としては 、慢性関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、白血球により媒介される虚血後の組 織損傷(再灌流損傷)、凍傷による損傷またはショック、白血球により媒介され る急性肺損傷(ARDS)、喘息、外傷性ショック、敗血症ショック、腎炎等の自己 免疫疾患や、アトピ−性皮膚炎、乾癬および炎症性腸疾患等の急性および慢性の 炎症が挙げられる。アテローム性硬化症および凝結といった血小板により媒介さ れる種々の病態も、「炎症反応」または「炎症性疾患」の定義の中に含まれる。 さらに、「炎症反応」または「炎症性疾患」には循環するガン細胞の接着が含ま れる場合もあり、特別な例として結腸ガンおよび黒色腫がある。 我々はいかなる理論にも限定されず、このような炎症反応および炎症性疾患の 開始の際に起こる最初の現象は、白血球の表面上に検出されるα−シアル酸(2 →3)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→6)βGal−基35−40から成る糖 質リセプターを通じて白血球がセレクチン(例えばELAM-1、PADGEM等)に結合す ることである、と考えている。同様に、哺乳類、特にヒトのガン細胞にはその表 面上にα−シアル酸(2→3)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→6)βG al−基が含まれることが示されており49、50、このような循環ガン細胞がセ レクチンに結合することが転移過程における不可欠な部分であると考えられてい る36、37。したがって、このような糖質リセプターがこれらのセレクチンに結合 するのを阻害することによって、炎症性の免疫反応の抑制や転移過程の阻害が可 能となる。 「抗原」という語は、哺乳類細胞と接触した場合にその動物において免疫反応 を誘発する、あらゆる蛋白質、ペプチド、糖質、核酸およびその他の非内因性物 質のことを意味する。 抗原によって誘発されると考えられている疾患の例としては、乾癬、喘息、皮 膚炎、慢性関節リウマチ、遅延型過敏症、炎症性腸疾患、多発性硬化症、ウイル ス性肺炎、細菌性肺炎等である。 「非感作哺乳類」という語は、特定の抗原に対してまだ学習を行なっていない 哺乳類のことを意味する。 「感作哺乳類」という語は、以前に特定の抗原と接触したことがあり、そのた めに免疫系がその抗原に対する学習を既に行なっていた状態にある哺乳類のこと を意味する。一般に、哺乳類がある抗原に最初に接触すると、後に当該抗原と接 触した場合に起こるその哺乳類の免疫反応が開始されたり学習されたりするので あって、このような最初の接触の間には炎症はほとんど起こらない。 「二次免疫反応」という語は、哺乳類が以前に感作されたことのある抗原に対 して免疫反応を起こす奏効期のことを意味する。哺乳類の二次免疫反応には、抗 原と接触した時点での炎症を伴うのが普通である。 「急性呼吸障害症候群」または「ARDS]という語は、白血球が媒介する肺損傷 によって起こる炎症状態のことを意味する。いかなる理論にも限定されず、この ような肺損傷は肺中への浸潤やその後の好中球の崩壊によって悪化すると考えら れている。特に、肺内で好中球が崩壊することによって、重篤な血管内皮損傷を もたらすスーパーオキシドが放出される。したがって、この肺損傷は抗原に起因 するものではないが、好中球が肺中に浸潤するためには細胞相互間の接着を必要 とする。 「再灌流損傷」は、白血球により媒介される組織損傷から成る炎症状態のこと である。再灌流損傷は、心筋梗塞の後に起こることが多く、その場合には心筋梗 塞によって起きた炎症に反応して内皮細胞が活性化されセレクチン(たとえばEL AM-1)を産生する。その後、好中球が血管内皮上に発現されたセレクチンと結合 できるようになり、さらなる損傷を起こす。 本出願中の「百日咳毒素」または「PT」という語は、百日咳の病原菌であるBo rdetella pertussisによって産生される毒性因子のことを意味する。PTのβ−オ リゴマーは、α−シアル酸(2→6)βGal−α−シアル酸(2→3)βGal−の 両方の構造と結合する。またPTは、小麦胚凝集素(WGA)と同様の結合特性をも っており、シアル酸に加えて末端のN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)糖質配 列を認識することができる44、52、53。 PTは、ADP −リボシルトランスフェラーゼの酵素活性を含むAサブユニット (S1と命名)から成る古典的なA−B型の毒素であり、この酵素はPTの生物学的 作用のほとんどに寄与している54。PTの複雑なβオリゴマー中にはレクチン様活 性が検出される。このオリゴマーは小さいS5サブユニットと結合した1対のダイ マー(S2−S4(ダイマ−1)およびS3−S4(ダイマ−2))中に配列されている 4種類の異質なサブユニットから構成されている。βオリゴマーの機能は、宿主 細胞のシアリル化されたオリゴ糖リセプターに結合することと、細胞形質膜を通 じてAサブユニットのための受け渡しシステムを供給することである54、55、56。 βオリゴマー自体は、リンパ球において有糸分裂誘発性の反応を引き起こすこと が可能であり、赤血球を凝集させる作用を有する。PTはまた、B.pertussisの宿 主として唯一知られているヒトの上気道の内側を覆う上皮細胞にB.pertussisが 付着するのを助けると考えられる57。さらに、βオリゴマーは、白血球の移動経 路を制御する哺乳類レクチンのセレクチン群と共通の機能を有しているようにも みえる58。 「細胞性免疫反応」という語は、細胞間相互作用によって媒介される哺乳類の 免疫反応のことを意味する。この語の中に含まれるのは、抗原に対する細胞性の 炎症反応であり、例としては遅延型過敏症(DTH)反応、ウイルスにより誘発さ れる肺炎、アレルギー性の反応等の反応、そして心筋梗塞、ショックおよび後遺 症(例えば多臓器不全)、急性呼吸障害症候群(ARDS)等の損傷によって起こる 細胞性の炎症反応が挙げられる。一般に、細胞性の免疫反応は、白血球によって 媒 介される反応である。 「体液性免疫反応」という語は、抗原−抗体相互作用が関与する哺乳類の免疫 反応のことを意味する。 「DTH炎症反応」または「遅延型過敏症反応」という語は、T細胞により媒介 される反応で、抗原剌激の後に単核細胞に富む炎症および腫脹を引き起こす。 「寛容」または「免疫学的寛容」という語は、特定の抗原に対して感作された 哺乳類において、2回目あるいはそれ以後の抗原剌激を受けた際に、同一の条件 下(例えば用量)で当該抗原により誘発される初回の免疫反応に比べて免疫反応 が低下することを意味する。本発明の中では、感作された哺乳類に対して抗原を 投与した後、α−シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→ 3)βGal−構造に結合するレクチン由来の糖質結合ペプチドを1種類以上投与 することによって、このような「寛容」状態が達成される。 「最大炎症期間」という語は、抗原と接触したこと(剌激)に起因する感作哺 乳類における細胞性の炎症反応と、損傷(例えば心筋梗塞)に起因する哺乳類に おける細胞性の炎症反応との両方を含めた細胞性免疫反応によって、哺乳類にお いて最大の炎症に到達するために一般に必要とされる期間のことを意味する。こ の期間の長さは、哺乳類に与えられた抗原/損傷の種類、抗原/損傷に曝された 哺乳類の種属等、いくつかの要因に左右される。したがって、最大の炎症反応に 到達するまでに必要な期間は、例えば慢性関節リウマチと心筋梗塞とでは異なる であろう。 さらに、最大の炎症に到達するまでに必要な特定の期間は同一の哺乳類種属の 中でもある程度変動するのに対して、ヒトおよびその他の哺乳類において抗原と の接触あるいは損傷のいずれかを原因とする各種障害による炎症が最大に達する までに通常必要とされる期間は、科学文献中で知られているか、あるいは熟練し た研究者が容易に確認することが可能である。例えば、マウスにおけるDTH反応 の場合、最大の炎症が起こるのは一般に抗原と接触してから24時間後である。 「シアル酸」という語は、天然に存在するシアル酸の構造と、シアル酸の類似 体およびその誘導体すべてを意味する。天然に存在するシアル酸の構造の例とし ては、5−アセトアミド−3、5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトー ノヌロピラノシロン酸(「Neu5Ac」)、N−グリコイルノイラミン酸(Neu5Gc) および9−O−アセチルノイラミン酸(Neu5、9Ac2)が挙げられる。現在までに 知られている天然型シアル酸の完全リストは、Schauerによって発表されている5 1 。 シアル酸の誘導体とは、天然に存在するシアル酸の誘導体のことであり、その ような構造に1種類以上の官能基を導入したり、かつ/または除去したりするた めにシアル酸の単位を化学的に変更したものも含める。例えば、このような変更 を行なうことによって水酸基の除去、アミン基の導入、ハロゲン基の導入等が可 能である。 シアル酸のある種の誘導体が文献中で知られており、9−アジド−Neu5Ac、9 −アミノ−Neu5Ac、9−デオキシ−Neu5Ac、9−フルオロ−Neu5Ac、9−ブロモ −Neu5Ac、8−デオキシ−Neu5Ac、8−エピ−Neu5Ac、7−デオキシ−Neu5Ac、 7−エピ−Neu5Ac、7−8−ビスーエピ−Neu5Ac、4−O−メチル−Neu5Ac、4 −N−アセチル−Neu5Ac、4、7−ジ−デオキシ−Neu5Ac、4−ウノ−Neu5Ac、 3−ヒドロキシ−Neu5Ac、3−フルオロ−Neu5Ac酸およびNeu5Acの6−チオ類似 体といった化学的変更を加えたシアル酸誘導体が含まれる。このようなシアル酸 誘導体を調製するための方法は、一般に配布されている1992年5月26日編集のア メリカ特許出願番号07/889,017中に記されており、この出願全体が参照によって 取り込まれている。 本出願中のシアル酸誘導体の誘導体を表す命名法は、Reuterらが提言したもの である34。 「α−シアル酸(2→6)βGal−構造または基」という語は、末端に結合し たα−シアル酸(2→6)ガラクトース配列またはその誘導体を含む分子のこと を意味する。このような末端構造を含む分子は、ELAM-1およびPADGEMセレクチン のための推定上のリセプター構造の一部を構成するものとして同定されている38 、40 。 「α−シアル酸(2→3)βGal−構造または基」という語は、末端に結合し たα−シアル酸(2→3)ガラクトース配列またはその誘導体を含む分子のこと を意味する。このような末端構造を含む分子も同様に、ELAM-1セレクチンのため の推定上のリセプター構造の一部を構成するものとして同定されている35-39。 「レクチン由来の糖質結合ペプチド」という語は、レクチンから得られ、哺乳 類細胞の表面上に優先的に存在するα−シアル酸(2→6)βGal−かつ/また はα−シアル酸(2→3)βGal−という糖質構造に結合することのできるあら ゆるペプチドまたはその誘導体(製剤上許容される塩も含む)のことを意味する 。本出願中では一般に、「レクチン由来の糖質結合ペプチド」とは、そのような ペプチドの中で、モノマーの形でレクチン様領域中に約35個以下のアミノ酸を有 する(すなわち、そのような糖質構造への結合を担うペプチド部分)もののこと を指す。レクチン由来の糖質結合ペプチドの適当な誘導体としては、アミノ末端 かつ/またはカルボキシル末端の官能基を慣習的な阻害基でブロックしたペプチ ドや、1個以上のアミノ酸を修飾、除去、あるいは誘導体化してα−シアル酸( 2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−構造に結合するこ とのできるペプチドを得た誘導体が挙げられる。 より限定的には、レクチン由来の糖質結合ペプチドとは図1に記すペプチドの ことを指す。 さらに限定的には、レクチン由来の糖質結合ペプチドとは百日咳毒素中に存在 するα−シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal −という糖質構造のためのレクチン様結合領域と高度の同一性を有するペプチド のことを指す。これらのペプチドは、式I(SEQ ID NO:1)によって表される: SPX1GX2C I ただしX1はアミノ酸Y、F、WおよびH、またはその類似ペプチドから成る グループから選択する:そして X2はアミノ酸Y、F、R、WおよびH、またはその類似ペプチドから成るグ ループから選択する; または式II(SEQ ID NO:2)によって表される: SPX1GX2 CX34 II ただしX1はアミノ酸Y、F、WおよびH、またはその類似ペプチドから成る グループから選択する; X2はアミノ酸Y、F、R、WおよびH、またはその類似ペプチドから成るグ ループから選択する; X3は4〜6個のアミノ酸から成るアミノ酸配列である;そして X4はアミノ酸Y、F、WおよびH、またはその類似ペプチドから成るグルー プから選択する。 最も限定的には、レクチン由来の糖質結合ペプチドとはヘキサペプチドSPY GRC(SEQ ID NO:3のアミノ酸18〜23)のことを指す。 本出願中に記すレクチン由来の糖質結合ペプチドは、哺乳類の免疫および細胞 相互間接着の過程を調節するための物質として使用可能であるのに加えて、ガン の疑いがある細胞等、分子かつ/または細胞表面上にα−シアル酸(2→3)β Gal−かつ/またはα−シアル酸(2→6)βGal−構造が存在するかどうか判断 するため、α−シアル酸(2→3)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→6 )βGal −構造に対するペプチドかつ/または蛋白質の相対的結合親和性を測定 するため、等のアッセイ方法において使用することもできる。そのように使用す る場合には、レクチン由来の糖質結合ペプチドが標識物質または標識物質結合残 基を含むよう誘導体化するのが普通である。 適当な標識物質は科学文献中でよく知られており、例として酵素(例えばセイ ヨウワサビペルオキシダーゼ)、ラジオアイソトープ(例えば125I)、蛍光物 質、化学ルミネセンス物質等がある。どの標識方法を用いるかは重大な問題では なく、ペプチドに標識物質を添加する方法は科学文献中でよく知られている。 標識物質に結合させるための適当な物質についても科学文献中でよく知られて おり、例としてビオチン、アビジン、ストレプトアビジン抗体等が挙げられる。 望ましい標識結合物質はビオチンであり、4個までのペプチド/ビオチン付加物 をアビジンに結合させることができる。アビジンを適切に標識することによって 、得られたペプチド/ビオチン/アビジン複合体を検出することが可能となる。 「レクチン」という語は、糖質結合部位を有する植物または細菌やウイルス等 の微生物から得られることの多い、免疫系に由来しない糖質結合蛋白質のことを 意味する。これらの結合蛋白質は、細胞を凝集させる活性、および複雑な糖質を 沈澱させる活性を有しているのが普通である。レクチンはその糖質結合の特異性 に基づいて分類されており、科学文献中でよく知られている。 「レクチン様領域」という語は、糖質への結合を担うレクチンの画分のことを 意味する。 「製剤上許容できる塩」という語は、製剤上許容できる、末端に結合したα− シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−構造に 結合することのできるレクチン由来の糖質結合ペプチドの付加塩のことである。 このような製剤上許容できる付加塩は、科学文献中でよく知られている各種の有 機的および無機的な対抗塩に由来することもあり、例としてナトリウム、カリウ ム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等 があるが、これがすべてではない。 2.有用性 いかなる理論にも限定されることなく、主題であるレクチン由来の糖質結合ペ プチドはいくつかの経路によって免疫反応に影響を及ぼすと考えられている。レ クチン由来の糖質結合ペプチドは、免疫系が最初に抗原に接触する際に同時に投 与することによって、哺乳類がその特定の抗原に関して「学習を行なう」のを阻 害することができる。 レクチン由来の糖質結合ペプチドは、心筋梗塞、ARDS、凍傷等に起因して起こ る炎症反応等の損傷に対する細胞性免疫の反応を低下させることができる。レク チン由来の糖質結合ペプチドはまた、感作された哺乳類の免疫系が当該抗原に接 触した後その哺乳類に投与することによって、細胞性免疫の反応(例えばDTH反 応のうちの炎症に関する部分)の奏効期を阻害することもできる。どちらの場合 にも、細胞性免疫の反応を低下させるためには、哺乳類の免疫反応が開始した後 、そして損傷または抗原との接触によって最大の炎症が誘発されるために必要な 期間の半分の時点あるいはその前に、レクチン由来の糖質結合ペプチドを投与す る必要がある。 さらに、主題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドは、抗原に対する哺乳類 の二次的免疫反応が開始した後、そして抗原との接触によって最大の炎症が誘発 されるために必要な期間の半分の時点あるいはその前に投与を完了した場合に、 免疫系が当該抗原に2回目またはそれ以後に接触した時点で投与すると、感作さ れた哺乳類において抗原に対する寛容を惹起することができる。 また、α−シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3) βGal−構造に結合するレクチン由来の糖質結合ペプチドを投与することによっ て、LEC-CAM蛋白質およびその他のセレクチンがα−シアル酸(2→6)βGal−38、40 、およびα−シアル酸(2→3)βGal−35-39の両方の構造を含むそれら の推定上のリセプターに結合するのを阻害することができる。 したがって、主題である発明は、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGa l−およびα−シアル酸(2→3)βGal−構造に結合することができ、哺乳類に おける特異的な免疫反応あるいは細胞間相互作用を阻害する上で有用であるレク チン由来の糖質結合ペプチドを含む製剤組成と、細胞性免疫反応を阻害する目的 でこのようなレクチン由来の糖質結合ペプチドを哺乳類に投与することを含めた 方法との両方を提供するものである。 上述したように、哺乳類において細胞性免疫の反応を調節する上で有用なレク チン由来の糖質結合ペプチドには、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGa l−およびα−シアル酸(2→3)βGal−構造に結合することのできるあらゆる レクチン由来のペプチドあるいはその誘導体が含まれる。レクチン由来の糖質結 合ペプチドとして適切であるとして限定されるのは、モノマーの形でレクチン様 領域中に約35個以下のアミノ酸を有するペプチドである(すなわち、そのような 糖質構造への結合を担うペプチド部分)。 より望ましくは、レクチン由来の糖質結合ペプチドは図1に示すペプチドを指 す。 さらに望ましくは、レクチン由来の糖質結合ペプチドは百日咳毒素中に存在す るα−シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal− という末端に結合した糖質構造のためのレクチン様結合領域と高度の同一性を有 するペプチドを指す。これらのペプチドは、式I(SEQ ID NO:1)によって表さ れる: SPX1 GX2 C I ただしX1はアミノ酸Y、F、WおよびH、またはその類似ペプチドから成る グループから選択する;そして X2はアミノ酸Y、F、R、WおよびH、またはその類似ペプチドから成るグ ループから選択する; または式II(SEQ ID NO:2)によって表される: SPX1 GX2 CX34 II ただしX1はアミノ酸Y、F、WおよびH、またはその類似ペプチドから成る グループから選択する; X2はアミノ酸Y、F、R、WおよびH、またはその類似ペプチドから成るグ ループから選択する; x3は4〜6個のアミノ酸から成るアミノ酸配列である;そして X4はアミノ酸Y、F、WおよびH、またはその類似ペプチドから成るグルー プから選択する。 このようなペプチドの調製方法は科学文献中でよく知られており、例としてア メリカ・カリフォルニア州フォスター市のApplied Biosystems社から発売されて いるABI 403A型のような市販の標準的なペプチド合成装置が挙げられる。このよ うなペプチドの調製方法については、本発明の範囲外である。 類似ペプチドとは、ペプチド鎖中のアミノ酸に類似したグループのことである 。このような類似体およびそれらの合成方法については、科学文献中でよく知ら れている59。 レクチン由来の糖質結合ペプチドは、モノマー型かポリマー型のどちらかの形 で使用することができる。適切なポリマーの例としては、レクチン由来の糖質結 合ペプチドにビオチンを付加した後アビジンと結合させ、4価の複合体を形成す る場合がある。同様にして、ポリリシンのようなポリマーまたはヒト血清アルブ ミンのような不活性蛋白質にこのようなペプチドを付加することによって、レク チン由来糖質結合ペプチドの多価誘導体を合成することができる。このようにし て作成した多価誘導体は、有効性を向上させるために1種類あるいは異なるレク チン由来糖質結合ペプチドの混合物を含有することが可能である。 蛋白質ペプチド結合体の場合には、科学文献によって認められた方法を用いて 、既知の架橋形成物質により担体蛋白質と化学的に架橋を形成することが可能で ある。 さらに別の態様として、多価のレクチン由来糖質結合ペプチドは、ペプチドが スペーサーアームを通じて互いに結合し次のグループで表される反復サブユニッ トを形成しているコポリマーとして作成することもできる: [糖質結合ペプチドースペーサーアーム]n [糖質結合ペプチド]n−スペーサーアーム これらのサブユニットにおいては、レクチン由来の糖質結合ペプチドは同一の、 あるいは異なるレクチン由来の糖質結合ペプチドとなることができ、スペーサー アームは糖質への結合距離が最適となるように選択する。 ただし本発明は、図1に特に例を示したレクチン由来の糖質結合ペプチド、あ るいはその多価誘導体の使用に限定されるものではなく、末端に結合したα−シ アル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−という糖 質構造に結合するあらゆるレクチン由来ペプチドまたはその誘導体の使用も含め たものである。先に述べたように、このような構造に結合することのできるペプ チドを哺乳類に投与すると、免疫反応および細胞間相互作用、特に炎症反応また は炎症状態の阻害、抗原に対する寛容、抗原に対する免疫原性反応の調節、そし て例えば転移や炎症に関与する細胞相互間接着現象の阻害が起こる。 リガンド間結合のアッセイのための従来式の方法によって、末端に結合したα −シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−とい う糖質構造に結合することのできるその他のレクチン由来糖質結合ペプチドを特 定するということは、十分に日常的な科学技術水準の範囲内のことである。この ような方法として、例えば競合的結合アッセイおよびリセプター結合アッセイが ある。本出願では特に、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−かつ/ またはα−シアル酸(2→3)βGal−構造への結合を測定することのできる単 純なアッセイ技術を用いた1つの方法を例として掲げる。このような末端結合構 造をもつ候補ペプチドの結合を測定するためのその他の方法は、科学文献中で知 られている。例としてPearce-Prattらの文献を参照のこと31。 したがって本発明はさらに、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal− かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−構造に結合することのできる能力 に基づいて、炎症、抗原に対する寛容、抗原に対する反応の調節、あるいは細胞 相互間接着性等種々の免疫反応および細胞間相互作用を誘発したり抑制したりす ることのできるレクチン由来ペプチドを仮定的に特定する方法も提供するもので ある。 上述の点に関して本発明は、上述のアッセイを容易にするためにレクチン由来 の糖質結合ペプチドかつ/またはレクチン由来糖質結合ペプチドの候補に標識物 質あるいは標識物質結合基を付加することを意図するものである。このような標 識物質は、科学文献中でよく知られた方法によってペプチド上に慣習的に作成す ることができる。適切な標識物質の例として、酵素(例えばセイヨウワサビペル オキシダーゼ)、ラジオアイソトープ(例えば125I)、蛍光物質、化学ルミネ センス物質等がある。 標識物質に結合させるための適当な物質についても科学文献中でよく知られて おり、例としてビオチン、アビジン、抗体等が挙げられる。望ましい標識結合物 質はビオチンであり、ペプチド/ビオチン付加物をアビジンに結合させることが できる。アビジンを適切に標識することによって、得られたペプチド/ビオチン /アビジン複合体を検出することが可能となる。 本発明はまた、このようなアッセイを実施するために使用するキットについて も考慮している。このようなキットは標識したレクチン由来糖質結合ペプチド、 または標識結合基に結合させたレクチン由来糖質結合ペプチドによって構成され る。 本出願中での使用に適したレクチン由来糖質結合ペプチドは、末端に結合した α−シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−構 造に結合することのできるペプチドである。ただし、有効性を有するレクチン由 来の糖質結合ペプチドのさらなる必要条件として、in vivoでの投与に適してい ることが挙げられる。特に、レクチン由来の糖質結合ペプチドは有毒であっては ならず、また通常約0.5〜50mg/kg体重の範囲である必要用量において十分な溶 解度を示さなければならない。この点に関して、レクチン由来の糖質結合ペプチ ドの溶解度は、ペプチドのカルボキシル末端かつ/またはアミノ末端の位置に親 水性のアミノ酸基を付加することによって向上させることができ、疎水性のアミ ノ酸基を付加することによって低下させることができることが科学文献上で認 められている。 本発明はさらに、例えば化学的な誘導体化、突然変異誘発等によって毒性を示 さないように修飾しているが、末端結合α−シアル酸(2→6)βGal−かつ/ またはα−シアル酸(2→3)βGal−構造に結合することのできる能力を保持 したままである、そのような末端結合構造に結合することのできるペプチドの画 分あるいは誘導体も含めている。 本発明は特に、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−かつ/または α−シアル酸(2→3)βGal−構造、あるいはこのような構造を含む分子/細 胞表面に結合することのできる1種類以上のレクチン由来糖質結合ペプチドを有 効量投与することによって、哺乳類における細胞性の炎症反応または疾患を含め た細胞性免疫反応を抑制するための方法を提供するものである。 本発明によって治療が可能である細胞性免疫反応または疾患には、特異的およ び非特異的な防御系が関与する炎症免疫反応が含まれる。先に述べたように、こ のような状況としては、ウイルス、アレルゲン等の抗原に対する抗体反応、、遅 延型過敏症、慢性関節リウマチおよび狼瘡等の自己免疫疾患、白血球により媒介 される虚血後の組織損傷(再灌流損傷)、凍傷による損傷またはショック、白血 球により媒介される急性肺損傷(例えば急性呼吸障害症候群)、喘息、外傷によ るショック、敗血症によるショック、腎炎、そしてアトピー性皮膚炎、乾癬およ び炎症性腸疾患を含む急性および慢性の炎症が挙げられる。さらに、本発明によ って治療が可能である炎症として、アテローム性硬化症および凝固障害のような 血小板により媒介される病態も含まれる可能性がある。 特に興味の対象となる炎症状態として、遅延型過敏症反応、再灌流、および白 血球により媒介される急性肺損傷(ARDS)が挙げられる。 本発明は、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα− シアル酸(2→3)βGal−構造、あるいはこのような構造を含む分子/細胞表 面に結合することのできる1種類以上のレクチン由来糖質結合ペプチドあるいは その画分または誘導体を有効量投与することによって、哺乳類(例えばヒト)に おける細胞性の炎症反応または疾患等の細胞性免疫反応を抑制するための一般的 な方法を提供するものである。より限定的な態様として、本発明は図1に示すペ プチドグループから選択した1種類以上のペプチドを有効量投与することによっ て、炎症反応または疾患を治療したり抑制したりするための方法を提供する。 本発明はさらに、末端に結合したα=シアル酸(2→6)βGal−かつ/また はα−シアル酸(2→3)βGal−構造、あるいはこのような構造を含む分子/ 細胞表面に結合することのできる1種類以上のレクチン由来糖質結合ペプチドあ るいはその画分または誘導体を有効量投与することによって、哺乳類における免 疫反応および細胞相互間接着現象を阻害するための一般的な方法を提供するもの である。このような免疫反応としては、細胞性および体液性の免疫反応が含まれ る。先に述べたように、このような免疫反応に含まれるのは、特に炎症反応また は炎症疾患である。 本発明はさらに、抗原と共に、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal −かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−構造、あるいはこのような構造 を含む分子/細胞表面に結合することのできる1種類以上のレクチン由来糖質結 合ペプチドを哺乳類に対して投与することによって、抗原に対する免疫反応の惹 起に影響を及ぼすための方法も提供する。例えば、抗原と共に有効量のSPYGRC( SEQ ID NO:3のアミノ酸18〜23)というヘキサペプチドを哺乳類に投与すること によって、当該抗原に対するその哺乳類における免疫反応の惹起を調節すること ができる。したがって、主題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドは免疫調節 物質としての応用性を有する可能性があり、ワクチン、人工臓器または組織移植 片、および同種異系の臓器や組織移植片と共に投与して、それらの中に含まれる 外来の抗原に対する免疫反応を調節するための手段とすることができる。 末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸( 2→3)βGal−構造、あるいはこのような構造を含む分子/細胞表面に結合す ることのできる主題のレクチン由来糖質結合ペプチドは、特定の抗原によって既 に免疫されている哺乳類に対して有効量投与した場合に、当該抗原に対する長期 的な寛容を誘発する、ということも見いだされている。この点に関して、投与を 行なうのは二次的免疫反応が開始してからであるが、最大炎症のために必要とさ れる期間の半分あるいはその前に行なわなければならない。 特に、上述の必須の期間の間に、図1に示したS3P9a(SEQ ID NO:9)、ACS2P1 (2275)(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)、およびSPYGRC(2283)(SEQ ID NO:3の アミノ酸18〜23)のペプチドの有効量を抗原によって既に免疫されている哺乳類 に対して投与した場合に、その後当該哺乳類を同一の抗原によって刺激した時に 免疫反応が低下する(図3)、ということが明らかになっている。このため、主 題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドは、免疫寛容原としての応用性を有し ている。この特性を考慮に入れると、このようなレクチン由来の糖質結合ペプチ ドあるいはその画分または誘導体は、アレルギー性疾患の治療における使用に特 に適している可能性がある。なぜならば、「免疫寛容原性」をもつように修飾し たアレルゲンはアレルギー性疾患を治療するための手段として知られているから である。 本発明はさらに、特定の型の細胞[例えば腫瘍細胞および多形核細胞(PMN)] が内皮細胞に接着するのを阻害するための方法を提供するものである。この点に 関して、腫瘍の転移にはセレクチンを有する細胞への腫瘍細胞の接着が関与する ことが文献により示唆されている。この点に関して、循環するガン細胞は体の正 常な炎症機序を利用しているように見え、内皮が活性化されており、そのために セレクチンを含有している血管壁の領域に結合する。先に述べたように、このよ うなセレクチンの推定上のリセプターは、末端に結合したα−シアル酸(2→6 )βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−構造を含有している。こ のため、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シア ル酸(2→3)βGal−構造に結合することのできるレクチン由来糖質結合ペプ チドを投与することは、転移を阻害する方法となるはずである。例えば、主題で あるレクチン由来の糖質結合ペプチドあるいはその画分または誘導体は、外科手 術の間に循環系へと放出される可能性のある腫瘍細胞の転移を阻害するための手 段として、ガンの手術または生検の前、最中、あるいは後に投与することができ る。これらの方法においては、主題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドは手 術または生検の前、最中、あるいはその直後のいずれかに投与する。前に投与す る場合には、手術または生検の前約5時間以内に投与するのが一般的であり、最 中および後に投与する場合には手術または生検の後約15時間以内に行なうのが普 通である。どちらの場合にも、投与は連続的または間欠的に行なうが、連続投 与の方が望ましい。 損傷または抗原との接触によって起こる細胞性の炎症反応あるいは疾患の抑制 に関する方法においては、主題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドあるいは その画分または誘導体を当該哺乳類の免疫反応が開始した後に投与するが、抗原 接触または損傷に対する炎症が最大となるまでに必要とされる期間の半分あるい はその前に行なわなければならない。主題であるレクチン由来の糖質結合ペプチ ドを免疫反応の開始後約1〜10時間で投与するのが望ましく、免疫反応の開始後 約1〜5時間で投与するのがさらに望ましい。ただし、明確な投与時期に関して は、抗原/損傷の種類と、投与するレクチン由来糖質結合ペプチドの種類によっ て異なる。 感作されていない哺乳類における抗原に対する免疫反応惹起の調節に関する方 法においては、主題であるレクチン由来糖質結合ペプチドまたはその誘導体の有 効量を抗原と共に投与する。一般に、このような併用投与は抗原の投与と同時に 行なうが、抗原を投与した時点から±3時間以内に行なってもよい。 抗原に対する長期的寛容の惹起に関する方法においては、一般に主題であるレ クチン由来糖質結合ペプチドあるいはその画分または誘導体の有効量を、抗原剌 激の後、感作された哺乳類に対して投与する。特に、投与は抗原剌激に対する哺 乳類の二次免疫反応が開始した後に行なうが、抗原剌激に対する炎症が最大とな るまえに必要とされる期間の半分あるいはその前に行なわなければならない。主 題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドを抗原剌激に対する免疫反応の開始後 約1〜10時間で投与するのが望ましく、抗原刺激に対する免疫反応の開始後約1 〜5時間で投与するのがさらに望ましい。ただし、明確な投与時期に関しては、 抗原の種類と、投与するレクチン由来糖質結合ペプチドの種類によって異なる。 一般に、主題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドまたはその誘導体は、非 経口的に、例えば筋肉内あるいは静脈内の経路によって投与する。ただし、その 他の投与剤型、例えば経口、経皮、経直腸、気管内、および鼻内製剤等も適切で あるはずである。例えば、治療すべき炎症が肺の炎症に関与するもの、例えば急 性呼吸障害症候群(ARDS)である場合には、鼻内および気管内の製剤の方が適切か もしれない。これに対して、治療すべき炎症が消化管に関与するもの、例えば 炎症性腸疾患である場合には、経口製剤の方が望ましいであろう。 本発明において使用するための製剤組成は、末端に結合したα−シアル酸(2 →6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−構造に結合すること のできる主題のペプチドあるいはその誘導体1種類以上の有効量と、製剤上許容 される担体かつ/または賦形剤を含有するのが一般的である。製剤上許容される 担体および賦形剤の種類は、投与剤型によって異なる。1つの態様には、主題の ペプチドまたはその誘導体数種類を剤型中に混合し、向上した活性をもつ「カク テル」を作成した例もある。 非経口投与剤型には担体としてリン酸緩衝溶液が含まれる場合があり、鼻内製 剤には吸入剤が、そして経口製剤には腸溶性コーティングが含まれる場合がある 。適切な担体および賦形剤、および各種投与剤型の製剤の選択に関しては、製剤 関係の文献における日常的な技術の範囲内である。 上述したように、主題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドまたはその誘導 体は、有効な量を投与する。有効な量とは、哺乳類において不都合な毒性を誘発 することなく目的とする治療を達成するために十分な量のことである。主題であ るペプチドは、約0.5〜50mg/kg体重の範囲の用量で投与するのが望ましく、先 に引用したそれぞれの方法のために最も適しているのは5〜10mg/kgの用量であ る。使用する明確な用量は、治療の対象となる細胞性免疫反応や、有害な免疫反 応の重度、患者の年齢および全身状態等の要因に基づく主治医の判断によって決 定される。 一般に本発明の方法は、主題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドの単一用 量の投与に関するものである。ただし、本発明はさらに、主題であるレクチン由 来の糖質結合ペプチドまたはその誘導体の反復投与も包含している。これらのペ プチドの反復投与が望ましい例としては、慢性関節リウマチ、急性および慢性の 炎症、乾癬、炎症性腸疾患等の慢性あるいは持続性の炎症疾患、そして狼瘡、多 発性硬化症または慢性関節リウマチ等の炎症反応に関連する自己免疫疾患を治療 する場合が挙げられる。 また、主題であるペプチドおよび誘導体は、細菌、ウイルス、あるいはそれら が産生する毒素が標的とする哺乳類宿主の細胞上にあるリセプター部位として末 端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→ 3)βGal−構造を利用している場合に、リセプターを標的とする抗菌剤および 抗ウイルス薬として有用である、ということも包含している。 このような細菌/ウイルスかつ/または毒素の例としては、インフルエンザウ イルス、百日咳毒素、コレラ毒素等が挙げられる。このような方法は、以下に掲 げる例に示してあり、そこではin vitroでのアッセイによって主題である2種類 のレクチン由来糖質結合ペプチドがチャイニーズハムスター卵巣細胞に対する百 日咳毒素の作用を中和する能力が確認されている。 したがって、主題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドは、有効量を投与し た場合に、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−かつ/またはα−シ アル酸(2→3)βGal−構造を標的とする哺乳類宿主の細胞上にあるリセプタ ー部位として利用する細菌/ウイルスかつ/またはその毒素が哺乳類宿主に侵入 するのを阻害し、それによって哺乳類宿主が細菌/ウイルスかつ/またはその毒 素によって誘発される疾患に侵されるのを阻害するための方法において有用であ る。 主題であるレクチン由来の糖質結合ペプチドまたはその誘導体の有効量は、約 0.5〜50mg/kg体重の範囲の用量が望ましく、5〜10mg/kgが最も望ましい。 3. 本発明およびその利点について完全に例示するために、以下に個々の例を挙げ る。これらの例はあくまでも例示だけを目的として掲げるものであり、本発明の 範囲を限定するものではない。 これらの例においては、本出願と同様に、L型であるフコースを除いて開示す るすべての糖がD型であり、アミノ酸はすべて従来型である。 これらの例においては、特に記載のない限り、使用した略語は一般に受け入れ られた意味を有する: ABTS =2、2'−アジノービス(3−エチルベンザチアゾリン-6-スルホン酸) BSA =ウシ血清アルブミン cm =センチメートル HPLC =高速液体クロマトグラフィー MAL =Maackia amurensis mg =ミリグラム mM =ミリモル濃度 mm =ミリメートル ng =ナノグラム nm =ナノメートル PBS =リン酸緩衝溶液 PT =百日咳毒素 SNA =Sambucus niga μg =マイクログラム μl =マイクロリットル μM =マイクロモル濃度 μmol =マイクロモル v/v =容積/容積 特に記載しない限り、温度はすべて摂氏(℃)で表示する。また、先に述べた ように、本出願中に記載するアミノ酸残基はすべて、従来式の1文字略号を使用 している。一般的手順 例1〜10において使用した試薬はすべて、アメリカ・ミズーリ州セントルイス のSigma化学社から購入した。ただし、百日咳毒素(PT)はカナダ・オンタリオ州 ウィロウデールのバイオテクノロジ一研究Connaughtセンターから、SNA−、WGA −、およびMAL−ビオチンはカナダ・ケベック州ドーバルのBoehringerMann-he im社から、そしてIODO-GENはアメリカ・ミズーリ州セントルイスのPierce化学社 から購入した。ペプチドS2P1(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)のアセチル化お よびビオチニル化類似体は、慣習的な方法を用いて調製した。PT−ビオチンとア シアローおよびアシアロアガラクトフェチュインは、以前の報告30、44に従って 調製した。Immunulon 2という取り外し可能な平底マイクロタイター板は、アメ リカ・バージニア州アレキサンドリアのDynatech社から購入した。例1 −−合成ペプチドの合成 PTのS2およびS3サブユニット中に検出されるアミノ酸配列に相当するペプチド を、ABI 403Aペプチド合成装置(アメリカ・カリフォルニア州フォスターシティ 、Applied Biosystems社)を用いて合成し、次にHFによって樹脂から切断し、Vy d-ac C4半調製済みカラム上での逆相HPLCによって精製した。ELISA阻害アッセイ において使用した合成ペプチドはすべて、分析用HPLCで判定した結果95%以上の 純度であり、アミノ酸分析の結果は理論上の組成とよく一致していた。 S2サブユニットがS3サブユニットから識別される根拠となる可変アミノ酸配列 に相当するPTのS2およびS3の部位は、上述のようにして確保した。これらのペプ チド配列を選択した根拠の一部は、二次構造予測分析から明らかなように親水性 のβ屈折点の指標が高いことである60、61。PTの配列を慎重に分析し、WGAのアミ ノ酸残基62〜73(SEQ ID NO:11)を含有するペプチドを含めた20種類のペプチ ドを合成した。天然のペプチド骨格により近付けるために、S2P1 (SEQ ID NO:3 のアミノ酸9〜23)のアセチル化版も調製した。合成したペプチドは次の表Iに 示す。 上記のペプチドに関して、以下に示す例において末端に結合したα−シアル酸 (2→6)βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−構造に結合する 能力があるかどうか検査した。これらの例においては、まず最初に、αNeu5Ac( 2→3)βGal(1→4)βGlc−構造のコピーを複数含有する糖質であるフェチ ュインに結合することが知られている各種のレクチン(PT、SNAおよびMAL)の結 合を阻害する能力に関するペプチドのスクリーニングを実施した。例2 −−結合阻害アッセイ(初回ペプチドスクリーニング) マイクロタイター板の穴を、5mMのMgCl2 および15mM のNaN3を含む50 mM リ ン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.8)中のフェチュインまたはアシアロフエチュイン 100 μl (50μg /ml)と共に4℃において16時間コーティングした。吸引に よってこの溶液を除去し、代わりに0.05%Tween 20を含むPBS(PBST)中に溶解 した1%BSA 100 μl を入れた。室温で2〜4時間インキュベートした後、300 μlのPBSTでマイクロタイター板の穴を4回洗浄した。PBS 中0.5 〜4.5 mg/ml の濃度範囲のペプチド(40μl)を各穴に添加し、その後PT−ビオチン(PBS 中1 0 ng含有するものを10μl)をマイクロタイター板の穴に添加した。1時間イン キュべートした後、溶液を吸引することによって反応を終結させ、マイクロタイ ター板をPBST(300μl)で洗浄した。次にセイヨウワサビペルオキシダーゼを結 合させたアビジン(100 μl、0.3μg /mlの濃度となるようPBST中で1/3000に 希釈)を穴に添加し、マイクロタイター板を室温で1時間インキュベートした。 上述のようにして穴を洗浄した後、基質溶液(5 mM クエン酸緩衝液、pH 4.2中 1 mM ABTS、0.1%(v/v)の過酸化水素を含有)を添加し、30分間マイクロタイ ター板をインキュベートした。Titertek Multiskan MC プレート測定器を用いて 、405 nmにおいて発色を記録した。最大結合はペプチド不在下で測定し、バック グラウンドの結合はBSA のみでコーティングした穴中で測定した。各ペプチドに 関する結合アッセイは、デュプリケートで実施した。SNA−、WGA−、およびMAL −ビオチンを用いた結合阻害実験は、PBS 中の各ビオチニル化レクチン10 ngを 用いて上と同様にして実施した。 全20種類のペプチドに関して、PT−、WGA −、MAL −、およびSNA−ビオチン のフェチュインまたはアシアロフェチュインに対する結合を阻害する能力のアッ セイを行なった。ビオチニル化した植物レクチンがPTと同様の結合特異性を有す ることを我々が以前に示したので25、46 、これらのレクチンは有用な対照となる ことが明らかであった。この例から得られた結果を次の表に示す。これらの結果 から、S2P3 (SEQ ID NO:4)およびS2P6 (SEQ ID NO:5)のペプチドは、フェチュイ ンに対してもアシアロフェチュインに対してもPTビオチンの結合を15〜20%阻害 することが示された。S3サブユニットから得られた別の2種類のペプチド[S3P3 (SEQ ID NO:7 のアミノ酸10〜31) とS3P5 (SEQ ID NO:8)]は、PTのアシアロフ ェチュインに対する結合のみを阻害することが明らかになった。表IIに掲げたそ の他のペプチドの大部分は、ビオチニル化PTのフェチュインまたはアシアロフェ チュインに対する結合をわずかに阻害するか促進するかのいずれかであった。S2 P1 (SEQ ID NO:3 のアミノ酸9〜23)、ACS2P1 (SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23) および S2P2 (SEQ ID NO:3)のペプチドは、ペプチド不在下で実施した対照実験 と比較して、PT−ビオチンの結合をほぼ2倍促進した。 S2P3 (SEQ ID NO:4)のペプチドは、すべてのビオチニル化レクチンに対するフ ェチュインの結合を阻害することが明らかになった。ただし、フェチュインへの PTの結合を促進することが示されたS2P1 (SEQ ID NO:3のアミノ酸9 〜23) とS2P 2 (SEQ ID NO:3)のペプチドは、WGA の結合活性を阻害することが確認されてい る。例3 −−結合阻害アッセイ (IC 50値の決定) 初回のスクリーニング実験において阻害活性を有することが明らかになったペ プチドに関して、結合を 50 %阻害するために必要なペプチド濃度 (IC 50 値) を決定するために、結合阻害実験においてさらに分析した。 阻害実験は、PBS 中で PT ペプチドを2倍希釈して行なった例2の方法と同様 にして実施したが、マイクロタイター板は3μg/mlのフェチュインまたはアシ アロフェチュインによってコーティングした。各阻害剤濃度における結合アッセ イは少なくともデュプリケートで行ない、平均値の変動は15%未満であった。50 %阻害のために必要なペプチド濃度 (IC 50)は、ペプチド阻害剤の存在下で観察 された結合の量を阻害剤不在下で到達した最大結合に対する百分率としてプロッ トすることによって決定した。 S2サブユニットから得られたペプチドのうち2種類が、ミリモル以下の濃度で フェチュインに対するPT−ビオチンの結合を阻害し得たが、その後の実験におい てはアシアロフェチュインに対するPT−ビオチンの結合を阻害することができな かった(表III)。S3サブユニットからの2種類のペプチド配列 (S3P3 [SEQ ID NO:7のアミノ酸10〜31] およびS3P5 [SEQ ID NO:8]) が、濃度依存的に PT −ビ オチンとアシアロフェチュインとの間の相互作用を阻害することが明らかになっ たが、これらのIC 50 値はPBS 中でのペプチドの溶解度限界を超えていた。S2P3 のペプチド (SEQ ID NO:4)もまた、MAL −および WGA−ビオチンとフェチュイン との間の相互作用を阻害する上で非常に強い活性を示した。より詳細な実験を行 なったところ、このペプチドは SNA−ビオチンに対しては阻害作用をもたないこ とが判明した。S2サブユニットからの別の2種類のペプチド(S2P1 [SEQ ID NO:3 のアミノ酸9〜23] およびS2P2 [SEQ ID NO:3]) は、ミリモル程度の濃度でWGA −ビオチン結合を阻害する活性を示し、WGA の結合部位中にあるオリゴ糖と相互 作用する上でこれらのペプチド配列も重要である可能性が示唆された。 PTのS2サブユニットから得られたペプチドのうち3種類がWGAとの結合を阻害 し得たことから、WGA のシアル酸結合部位を構成するアミノ酸配列に関して、阻 害作用を有する PT S2サブユニットのペプチド配列と相同性を示す部分があるか どうかさらに詳細に検討した。WGA のイソレクチン2中のアミノ酸62〜67に相当 する6個から成る短いアミノ酸配列 (SQYGHC) が、PTから得られたS2P1 (SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)およびS2P2 (SPYGRC、SEQID NO:3のアミノ酸18〜23) の両 方のペプチドに見られる配列とかなりの相同性を示した。WGA 中のこの短い配列 は、水素結合を通じてシアル酸またはN−アセチル−グルコサミンのN−アセチ ルグループのカルボニル基(すなわちセリン62)と結合する役割を果たしている 。チロシン64およびヒスチジン66の芳香属側鎖間の非極性の相互作用が、それぞ れシアル酸のグリセロール側鎖およびシアル酸またはN−アセチルグルコサミン のピラノース環と相互作用する62。別の阻害性ペプチドであるS2P3 (SEQ ID NO: 4) は、WGA においてシアル酸との相互作用を担う配列との間で十分な相同性 を示さなかった。このことから、シアル酸との相互作用においては他の特性も機 能的に有用な役割を果たす可能性があることが示される。 例4−−ビオチニル化およびアセチル化したS2P1 (SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜2 3)を用いた結合阻害実験 初回のペプチドスクリーニングの結果(表II)から、S2P1 (SEQ ID NO:3のア ミノ酸9 〜23)およびS2P2 (SEQ ID NO:4)のペプチドが、対照実験と比較してPT −ビオチンのフェチュインへの結合を2倍促進させた。このような促進が見ら れたことの1つの可能な説明として、このペプチドがPT−ビオチンとフェチュイ ンとの間に架橋を形成し得る、ということが挙げられる。ペプチドが架橋形成分 子として働くためには、ペプチドはフェチュインとPT自体に結合する配列との両 方を認識する部位を有していなければならない。この疑問を解決するために、ペ プチドS2P1 (SEQ ID NO:3 のアミノ酸9〜23)のアセチル化型およびビオチニル 化型(末端のプロリン部位でビオチニル化)を作成し、このペプチドのPTおよび フェチュインへの直接の結合を測定することができないかどうか検討した。 結合アッセイは、ACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3 のアミノ酸9〜23) をPBS中 10μg/mlの濃度で使用することによって、PBS中で例2に示したのと同様にして 実施した。室温で1時間アッセイを行ない、フェチュインに結合したビオチニル 化ペプチドの量をアビジン−ペルオキシダーゼを用いて測定した。 このような直接結合実験から、マイクロタイター板の穴に不動化したフェチュ インおよびPTの両方に対する濃度依存的な結合が観察された。さらに、ACS2P1− ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)のPTへの結合をフェチュインによって 阻害することができ(ID 50 =5OμM ;n= 2)、ビオチニル化したペプチドが PTの中のフェチュイン結合部位、あるいはその近隣で結合することが示される。 上述の点から、ペプチドによってレクチンとフェチュインとの間に架橋が形成 される可能性があるため、表Iに示すような、いずれかのレクチンのフェチュイ ンに対する結合を低下させたペプチド配列はすべて、末端に結合したα−シアル 酸(2→6)βGal−およびα−シアル酸(2→3)βGal−構造に結合すること ができる、と結論された。例5 −−ACS2Pl−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)の結合を阻害するた めのオリゴ糖を使用した結合阻害アッセイ 上述の例4に記載したように、ACS2Pl−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜 23の結合に関して得られた結果から、ビオチニル化ペプチドの架橋を通じて糖質 残基とレクチンが直接関与していることが示される。 このペプチドと、1種類のレクチンのフェチュインへの結合のみを阻害したヘ キサペプチドSPYGRC (SEQ ID NO:3 のアミノ酸18〜23) (表II)とによるα−シ アル酸(2→6)βGal−およびα−シアル酸(2→3)βGal−構造への結合 について評価するために、単純な糖質を用いた阻害実験を行なって相互作用が糖 質依存性であるかどうか判断した。選択した単純な糖質は、シアル酸、ウシ初乳 から調製したシアリルラクトース(α(2→6)およびα(2→3)に結合した シアル酸構造の混合物を含む)、ラクトース、およびN−アセチルーグルコサミ ンであった。 結合阻害アッセイは、シアル酸、シアリルラクトース、ラクトース、あるいは N−アセチルーグルコサミンをPBS 中8 mM の濃度で使用することによって実施 した。阻害アッセイは前述のようにして(例えば例2)室温で1時間行ない、フ ェチュイン(3μg/ml)に結合したビオチニル化ペプチドの量をアビジン−ペ ルオキシダーゼを用いて定量した。遊離シアル酸のpHを慎重にモニターし、希釈 水酸化ナトリウムを用いて生理学的なpHになるよう調節した。この例の結果は、 次の表IVに掲載する: 上述の結果から、実験を行なった両ペプチドは共に、末端に結合したα−シア ル酸(2→6)βGal−およびα−シアル酸(2→3)βGal−構造に結合できる ことが示される。対照実験から、ラクトースはACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3 のアミノ酸9〜23)の結合を阻害することができなかったため、親和性の高い相 互作用のためにはシアル酸が必要であることが示された。N−アセチル−グルコ サミンもビオチニル化ペプチドの結合をほとんど阻害しない(10±2%、n=3 )ことが明らかになり、ACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)は N−アセチルグルコサミンに対して弱い親和性を有することが示唆された。これ はアシアロフェチュインに対してよりもアシアロアガラクトフェチュインに対す るペプチドの結合の方が促進されていることを示す以下の知見に一致するもので ある。これはまた、PTの結合特異性がWGAと類似していることを示す以前の結果4 4、52とも一致している。 以上の点から、上記の表II中に示したレクチンのいずれかに対するフェチュイ ンの結合を阻害するペプチドはすべて、末端に結合したα−シアル酸(2→6) βGal−かつ/またはα−シアル酸(2→3)βGal−構造に有効に結合すること ができる、と結論された。これらのペプチドを図1に示す。例6 −−PTからのS2およびS3サブユニットペプチドにおけるACS2P1−ビオチンの フェチュインおよびアシアロフェチュインへの結合の阻害活性に関するスクリー ニング 結合阻害アッセイは、ACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)(1 0μg/ml)のフェチュインまたはアシアロフエチュインへの結合に対する競合物 質として、PBS中に溶解したPTからのS2およびS3サブユニットペプチドを用いて 行なった。上述のようにして室温で1時間阻害アッセイを行ない、フェチュイン またはアシアロフェチュイン(3μg/ml)に結合したビオチニル化ペプチドの 量をアビジン−ペルオキシダーゼを用いて定量した。 ACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)のフェチュインに対する 特異性および相対的親和性は、表Iに示したペプチドを用いた結合阻害実験を実 施することによって測定した。結合阻害実験(表V)から、ACS2P1(SEQ ID NO: 3のアミノ酸9〜23)のビオチニル化していない形を競合物質として使用した場 合に、ACS2P1ペプチド(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)は高い親和性をもって (IC 50=4.1μM;N=2)フェチュインに結合することが示された。S2P1(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)の伸長型であるペプチドS2P2(SEQ ID NO:3)もま た、ACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)のフェチュインへの結 合を阻害することが明らかになったが、親和性は10分の1であった(IC 50=42. 5μM)。どちらのペプチドも、ACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜2 3)のアシアロフェチュインへの結合を競合することはできず、ペプチドとの親 和性の高い相互作用のためにはシアル酸が重要であることが示される。S2P1(SE Q ID NO:3のアミノ酸9〜23)およびS2P2(SEQ ID NO:3)のペプチド中に見られ るのと類似したヘキサペプチド配列が、表Iの中のいくつかのペプチドにも存在 する(下線を付した部分を参照のこと)。これらのペプチドのそれぞれについて 、S2P1(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)ペプチドで測定したIC 50値よりも10倍 高いペプチド濃度において、ACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23 )のフェチュインおよびアシアロフェチュインへの結合を阻害する能力を分析し た。表Iから選択して実験を行なった他のペプチドの中で、ACS2P1−ビオチン( SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)のフェチュインまたはアシアロフェチュインへ の結合を同程度に阻害する能力を有しているものはなく、シアル酸と結合するた めにはSPYGRCというペプチド配列が不可欠の役割を果たしている可能性が示され る。このことはさらに、S2P1(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)に見られる配列 と最も強い相同性を有するS3P1(SEQ ID NO:6のアミノ酸9〜23)およびS3P2(S EQ ID NO:6)のペプチドが、高濃度においてさえも結合を阻害し得なかったこと によっても確認される。S3ペプチド(GAYGRC)(SEQ ID NO:6のアミノ酸18〜23 )中に存在する相同配列には、アミノ酸残基のセリンが欠如している。このセリ ンというのは、WGAのシアル酸結合部位においてN−アセチルグループとの間に 重要な水素結合を形成するために欠かせないアミノ酸であることが示されている62 。このことから、S2P1(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)ペプチド中に見られ るセリン残基が、S2P1(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)のシアル酸へ の結合において同様の様式で機能している可能性が示される。 この例の結果を、次の表Vに示す: 例7−−ACS2P1−ビオチン(SEQ D NO:3のアミノ酸9〜23)のヨウ素化 以前の報告から、PTがシアリル化糖蛋白質のリセプターに結合する上で、アミ ノ酸残基のチロシンが重要であることが示唆されている44、63。これらの報告は 、最初にフェチュインに対する結合部位を保護することなく、PTを慣習的なIODO − GEN法(チロシン残基を選択的に修飾する)によってヨウ素化した場合に、PTの 結合活性が低下した、という知見に基づくものであった。 ACS2P1(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)中に見られるチロシン残基が結合活 性において重要な役割を果たしているかどうか検討するため、ペプチドをIODO− GEN法によってヨウ素化し、その結合活性をヨウ素化していないペプチドと比較 した。より具体的には、100μlのPBS中に溶解したACS2P1−ビオチン(SEQID NO: 3のアミノ酸9〜23)(100μg0.052μmol)をIODO−GENによりコーティングした 12×75mmのガラス製試験管に入れ、0.1mMのNaI溶液(50μL 5μmol)を添加し て、室温で10分間静かに攪拌した。IODO−GEN試験管から混合液を除去すること によって反応を終結させ、Sephadex G-25カラム(1×15cm、PBSで平衡化)上で ヨウ素化したペプチドを精製した。個々の画分について、220nmにおける吸光度 を測定することによってペプチドの有無を調べ、誘導体化していないACS2P1−ビ オチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)の吸光度と比較することによって濃度 を決定した。ACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)のヨウ素化し た試料としていない試料とを10μg/mlの濃度まで希釈し、例6に記載したよう にしてフェチュインをコートしたマイクロタイター板の穴への結合を分析した。 また、ACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)(10μg/ml)のフェ チュイン、アシアロフェチュイン、およびアシアロアガラクトフェチュイン(そ れぞれ3μg/ml)への結合を、同様の様式により測定した。 この実験の結果から、ACS2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)を 完全にヨウ素化することによってペプチドのフェチュインへの結合が58%±3% (n=3)低下することが示され、このことから末端に結合したα−シアル酸( 2→6)βGal−およびα−シアル酸(2→3)βGal−構造に対するACS2P1−ビ オチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)の結合活性のためには、セリンに加え てチロシンも重要であることが示唆される。 S2P1(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)のペプチドに相当する、PTのS2サブユ ニット中のアミノ酸配列が、PTのレクチン様結合活性において実際に役割を果た しているのかどうか検討するために、フェチュイン、アシアロフェチュイン、お よびアシアロアガラクトフェチュインを用いて、ビオチニル化したペプチドの結 合特異性をPTと比較した。以前の報告において、125I−PTのアシアロフェチュ インへの結合はフェチュインへの結合を対照とした場合53±7%であり、アシア ロフェチュインへの結合は81±8%であることが確認されている44。これは、AC S2P1−ビオチン(SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)のアシアロフェチュインおよ びアシアロアガラクトフェチュインへの結合がフェチュインへの結合と比較して それぞれ45±9%と93±18%(n=3)であるという結果とよく一致している。 これらの結果から、このアミノ酸配列は、以前に観察された結合特性を担う、PT のS2サブユニット中のレクチン様結合部位の部分を含有している可能性があるこ とが示唆される。例8 結合アッセイは、ほぼ前述のとおりにして、5mMのMgCl2および15mMのNaN3を 含む50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.8)中に溶解した50μlのBSA糖質結合 体(50μg/ml)を4℃で16時間コートしたマイクロタイター板の穴を用いて実 施した。吸引によって溶液を除去し、代わりに0.05%のTween 20(PBST)を含む PBS 中1%BSA 100μlを入れ、室温でさらに2〜3時間インキュベートした。P BST 300μlによってマイクロタイター板の穴を4回洗浄し、代わりに50μlのPBS 中に溶解したACS2P1ビオチン(SEQ D NO:3のアミノ酸18〜23)(0.5μg)を入れ た。1時間インキュベートした後、溶液を吸引することによって結合反応を終結 させ、PBST(300 μlで4回)でマイクロタイター板を洗浄した。アビジン−ペ ルオキシダーゼ(PBST中の1mg/ml溶液を1/3000希釈したものを100μl)を添 加し、さらに1時間インキュベートした。上述の場合と同様にして穴を洗浄した 後、基質溶液(0.1%(v/v)過酸化水素を含む5mMクエン酸緩衝液、pH 4.2中の 1mM ABTS)を添加し、マイクロタイター板を30分間インキュベートした。各BSA 結合体における結合アッセイはトリプリケートで実施し、バックグラウンドの結 合はBSAのみでコーティングした穴において測定した。ビオチニル化ペプチドの 結合の程度は、以下の表VIにすようにフェチュインに対する百分率として表した : 例9−−SPYHGRC−ストレプトアビジン結合体の作成 PBS中のストレプトアビジン(50μg)をSPYGRC−ビオチン(SEQ ID NO:3のア ミノ酸18〜23)(50μl、200μg)およびPBS(150μl)と混合し、室温で1時間 攪拌した。反応溶液をSephadex G-25カラム(1×15cm、PBSにより平衡化)上に 添加し、画分を回収した。蛋白質を含有する画分をSDS PAGEゲル電気泳動によっ て分析し、分子量を決定した。結果は、ペプチドとストレプトアビジンとの間で 4価の複合体が形成されたことに一致するものであった。IC 50を測定 するために、以前の方法に従ってレクチン結合阻害実験を実施した。結果を以下 の表VIIに示す: 例10−−合成ペプチドによる百日咳毒素のチャイニーズハムスター卵巣(CHO) 細胞への結合の中和 0.25%トリプシンによってCHO細胞の集密的細胞単層をプラスチック製組織培 養フラスコからはがし、10%ウシ胎児血清(FBS)を加えたハムのF12培地中に5 ×10 4細胞/mlの濃度で懸濁した。100 μlの細胞懸濁液を96穴組織培養プレー トに添加し、24〜48時間かけてプラスチックとの接触を確実なものとした。その 後消費された培地を除去し、FBSを加えたハムのF12培地中300〜30フェムトグラ ム/ml(80μl)の濃度範囲になるよう5倍希釈した濾過滅菌済みペプチドをCHO 細胞に添加した。次に、ペプチドの入った組織培養穴に20μlのPT溶液(PTの最 終濃度2.7 ng/ml)を添加した。インキュベーション混合液を静かに攪拌し、CO2 インキュベーター内で37℃において1時間インキュベートした。その後イ ンキュベーション混合液を除去し、代わりに新鮮な培地を入れた。その後組織培 養プレートを37℃において24時間インキュベートし、100%メタノールで固定し た後、ギムザ染色液で染色した。対照実験は、ペプチドのみ不在、あるいはPT不 在下で実施した。測定はすべてトリプリケートで行なった。染色したCHO細胞に ついて、百日咳毒素との結合によって媒介される特徴的なCHO細胞の凝集が阻害 されるかどうか調べ、PTのみが存在する対照穴と比較してCHO細胞の凝集が50% 以上阻害されるかどうか評価した。表VIIIに報告する結果には、CHO細胞の凝集 を50%低下させるのに必要であった最大ペプチド濃度を示してある。 上述のデータから、主題であるペプチドのうち少なくとも何種類かは、哺乳類 細胞の表面上における結合点としてαシアル酸(2→6)βGal−かつ/または α−シアル酸(2→3)βGal−構造を利用している細菌/ウイルスかつ/また はその毒素の結合を阻害する上で有効であることが明らかである。このような微 生物/毒素の中には百日咳毒素、コレラ毒素等の既知の毒素が含まれるため、主 題であるペプチドの少なくとも1種類を哺乳類に対して有効量投与することによ ってこのような結合を有効に阻害することができると考えられる。 以下の例11および例12には、主題であるペプチドのin vivoにおける成績を示 す。例11 −−DTH炎症反応の阻害 SmithとZiOla64が報告したマウスにおける足パッド腫脹アッセイを用いて、DT H炎症反応を測定した。簡単に述べると、Balb/cマウスのグループ(それぞれ 約19〜20g)に対して、強い炎症性のDTH反応を誘発することも知られているア ジュバント(DDA−−ジメチルージオクタデシルアンモニウムブロミド)20μgを 含有するOVA抗原100μgで免疫した。7日後に、各グループのマウスの足パッド に、20μgのOVA抗原(アジュバントは含有しない)による剌激を加えた。剌激後 24時間たってから、Mitutoyo Engineeringのマイクロメーターを用いて、生じた 炎症性の足パッドの腫脹を測定した。 炎症性DTH反応に対する各種ペプチドの影響について調べるために、マウスの グループに対して次のペプチドをそれぞれ100μg投与した:ACS2P1(2275) ( SEQ ID NO:3のアミノ酸9〜23)、SPYGRC(2283)(SEQ ID NO:3のアミノ酸18〜 23)、およびS3P9a(SEQ ID NO:9)。剌激後5時間たってから、これらのペプチ ドを溶液として尾静脈中に注射した。対照群に対しては、投与を行なわないか、 あるいは100μLのリン酸緩衝溶液(PBS)を投与した。この実験の結果は図2に 示してあり、用いたペプチドはマウスにおけるDTH反応を抑制する上で有効であ ることが明らかである。例12 −−剌激後2週間目におけるDTH炎症反応抑制の持続 上述の例11でペプチドの投与を受けた同一マウスのグループに対して、初回の 免疫から2週間後にOVA抗原による再剌激を与えた。投与しなかった対照マウス は通常に見られる程度の足パッドの腫脹によって反応したのに対して、その他の グループではすべて足パッドの腫脹が抑制されていた。これらの具体的な結果は 図3に示してあり、予め主題ペプチドの投与を受けていたマウスでは足パッドの 腫脹の程度が軽減したことが明らかである。 感作されたマウスにおいて抗原により誘発される炎症を抑制するという作用に 加えて、上述のデータから、本発明に従って主題であるペプチドを投与すること によって、同一抗原による後の剌激に対する寛容も生じることが確認される。 マウスの免疫系はヒトの免疫系のための優れたモデルとなる、という事実から 判断して、主題であるペプチドはヒトにおける細胞性免疫を抑制する上で有効で あることが上記のデータによって確認され、また細胞性免疫が抗原に対して向け られたものである場合、主題であるペプチドは当該抗原によるヒトへの後の剌激 に対して寛容を生じさせることもこのデータから明らかである。 例13−−結合阻害アッセイ(初回のペプチドスクリーニング) マイクロタイター板の穴を、5mMのMgCl2および15mMのNaN3を含む50mMのリン 酸ナトリウム緩衝液(pH 6.8)中に溶解したフェチュインまたはアシアロフェチ ュイン(50μg/ml)100μlによって4℃において16時間コーティングした。吸 引によって溶液を除去し、代わりに0.05%のTween 20 (PBST)を含むPBS中1% BSA 100 μlを入れた。室温で2〜4時間インキュベートした後、300 μlのPBS Tによってマイクロタイター板の穴を4回洗浄した。PBS中1.0〜4.4mg/mlの濃度 範囲のペプチド(40μl)を各穴に添加した後、PT−ビオチン(PBS中10ngを含有 する10μl)をマイクロタイター板の穴に加えた。1時間インキュベートした後 、溶液を吸引することによって結合反応を終結させ、PBST(300μl)によってマ イクロタイター板を洗浄した。次にセイヨウワサビペルオキシダーゼに結合させ たアビジン(100μl、PBST中で0.3μg/mlの濃度になるまで1/3000希釈)を穴 に添加し、室温で1時間インキュベートした。上述の場合と同様にして穴を洗浄 した後、基質溶液(0.1%(v/v)過酸化水素を含む5mMクエン酸緩衝液、pH4.2 中の1mM ABTS)を添加し、マイクロタイター板を30分間インキュベートした。T itertek Multiskan MCプレート測定器を用いて、405nmにおける発色を記録した 。最大結合はペプチド不在下で測定し、バックグラウンドの結合はBSAのみでコ ーティングした穴において測定した。各ペプチドに関する結合アッセイは、デュ プリケートで実施した。PBS中に溶解した各ビオチニル化−レクチン10ngを使用 して、上述のようにしてSNA−、WGA−、およびMAL−ビオチンを用いた結合阻害 実験を行なった。 8種類のペプチドについて、PT−、WGA−、MAL−、およびSNA−ビオチンのフ ェチュインまたはアシアロフェチュインへの結合を阻害する能力のアッセイを行 なった。ビオチニル化した植物由来のレクチンがPTと同様の結合特異性を有する ことを我々が以前に示している25、46ため、これらのレクチンが有用な対照であ ることが明らかであった。 この例により得られた結果を上記の表IXに示す。これらの結果から、SPX1GX2C (SEQ ID NO:1)の特性を有するペプチドはPTビオチンの結合を阻害することが 示される。 例14−−オリゴ糖を用いた結合阻害アッセイ 特定のペプチドによるαシアル酸(2→6)βGal−およびα−シアル酸(2 →3)βGal−構造への結合について評価するため、単純な糖質を用いた阻害実 験を実施して相互作用が糖質に依存するのかどうか調べた。選択した単純な糖は シアル酸、ウシ初乳から調製したシアリルラクトース(α(2→6)およびα( 2→3)に結合したシアル酸構造を含む)、ラクトース,およびN−アセチルー グルコサミンであり、PBS中8mMの濃度で使用した。阻害アッセイは、上述のよ うにして室温で1時間実施し(例えば例2)、フェチュイン(3μg/ml)に結 合したビオチニル化ペプチドの量をアビジン−ペルオキシダーゼを用いて定量し た。遊離シアル酸のpHを慎重にモニターし、希釈水酸化ナトリウムによって生理 学的なpH値となるよう調節した。この例の結果は、上記の表Xに示す。 上述の結果から、実験を行なったペプチドの中のいくつかは、末端に結合した αシアル酸(2→6)βGal−およびα−シアル酸(2→3)βGal−構造に結合 し得る、ということが示される。 例15 結合アッセイは、ほぼ前述のとおりにして、5mMのMgCl2および15mMのNaN3を 含む50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.8)中に溶解した50μlのBSA糖質結合 体(50μg/ml)を4℃で16時間コ−トしマイクロタイター板の穴を用いて実 施した。吸引によって溶液を除去し、代わりに0.05%のTween 20(PBST)を含む PBS中1%BSA 100μlを入れ、室温でさらに2〜3時間インキュベートした。PBS T 300μlによってマイクロタイター一板の穴を4回洗浄し、代わりに0.5μgのビ オチニル化ペプチドを入れた。1時間インキュベートした後、溶液を吸引するこ とによって結合反応を終結させ、マイクロタイター板をPBST(300μlで4回)で 洗浄した。アビジンーペルオキシダーゼ(PBST中の1mg/ml溶液を1/3000希釈 したものを100μl)を添加し、さらに1時間インキュベートした。上述の場合と 同様にして穴を洗浄した後、基質溶液(0.1%(v/v)過 酸化水素を含む5mMクエン酸緩衝液、pH4.2中の1mM ABTS)を添加し、マイクロ タイター板を30分間インキュベートした。各BSA結合体における結合アッセイは トリプリケートで実施し、バックグラウンドの結合はBSAのみでコーティングし た穴において測定した。ビオチニル化ペプチドの結合の程度は、上記の表XIに示 すようにフェチュインに対する百分率として表した:例16 −−DTH炎症反応の阻害 SmithとZiOla64が報告したマウスにおける足パッド腫脹アッセイを用いて、DT H炎症反応を測定した。簡単に述べると、Balb/cマウスのグループ(それぞれ 約19〜20g)に対して、強い炎症性のDTH反応を誘発することも知られているア ジュバント(DDA−−ジメチル−ジオクタデシルアンモニウムブロミド)20μgを 含有するOVA抗原100μgで免疫した。7日後に、各グループのマウスの足パッド に、20μgのOVA抗原(アジュバントは含有しない)による剌激を加えた。剌激 後24時間たってから、Mitutoyo Engineeringのマイクロメーターを用いて、生じ た炎症性の足パッドの腫脹を測定した。 炎症性DTH反応に対する各種ペプチドの影響について調べるために、マウスの グループに対して次のペプチドをそれぞれ100μg投与した:ACS2P1(2275)(SE Q ID NO:3のアミノ酸9〜23)、SPFGRC(2418)、SPWGFC(2416)、AcSPYGYCGFG AEY-CONH2(2420)SPYGYC(2365)、SPYGRC(SEQ ID NO:3のアミノ酸18〜23)( 2283)、NSS2P1(2295)、およびGSYRPC(2294)。剌激後5時間たってから、こ れらのペプチドを溶液として尾静脈中に注射した。対照群に対しては、投与を行 なわないか、あるいは100μLのリン酸緩衝溶液(PBS)を投与した。この実験の 結果は図4および6に示してあり、用いたペプチドはマウスにおけるDTH反応を 抑制する上で有効であることが明らかである。例17 −一剌激後2週間目におけるDTH炎症反応抑制の持続 上述の例16でペプチドの投与を受けた同一マウスのグループに対して、初回の 免疫から2週間後または15日後にOVA抗原による再剌激を与えた。投与しなかっ た対照マウスは通常に見られる程度の足パッドの腫脹によって反応したのに対し て、その他のグループではすべて足パッドの腫脹が抑制されていた。これらの具 体的な結果は図5および7に示してあり、予め主題ペプチドの投与を受けていた マウスでは足パッドの腫脹の程度が軽減したことが明らかである。 感作されたマウスにおいて抗原により誘発される炎症を抑制するという作用に 加えて、上述のデータから、本発明に従って主題であるペプチドを投与すること によって、同一抗原による後の剌激に対する寛容も生じることが確認される。 マウスの免疫系はヒトの免疫系のための優れたモデルとなる、という事実から 判断して、主題であるペプチドはヒトにおける細胞性免疫を抑制する上で有効で あることが上記のデータによって確認され、また細胞性免疫が抗原に対して向け られたものである場合、主題であるペプチドは当該抗原によるヒトへの後の剌激 に対して寛容を生じさせることもこのデータから明らかである。 配列リスト (1)一般情報 (i)出願者: (A)名称:Alberta Research Council (B)番地:Karl Clark Road 250 (C)市:エドモントン (D)州:アルバータ (E)国:カナダ (F)郵便番号:T6H 5X2 (G)電話番号:403−450−5111 (H)ファックス:403−461−2651 (ii)発明の名称:糖質結合ペプチドの抗炎症性、免疫寛容原性、および免疫 阻害性 (iii)配列の数:12 (iv)連絡先住所: (A)受信者:Blake,Cassels & Graydon (B)番地:commerce court west、私書箱25 (C)市:トロント (D)州:オンタリオ (E)国:カナダ (F)郵便番号:M5L lA9 (v)コンピュータ読取り形式: (A)媒体:フロッピーディスク (B)コンピュータ:IBM PC 互換性 (C)オペレーションシステム:PC−DOS/MS−DOS (D)ソフトウエア:PatentIn Release♯1.0、#1.25版 (vi)最新の出願データ: (A)出願番号: (B)ファイル日付: (C)分類: (vii)過去の出願データ: (A)出願番号:US 07/995,503 (B)ファイル日付:1992年12月21日 (vii)過去の出願データ: (A)出願番号:US 07/956,043 (B)ファイル日付:1992年10月2日 (viii)弁護士/代理人に関する情報: (A)名称:Gray,Brian W. (B)登録番号:3752 (C)参考文献/摘要書番号: (ix)電話連絡に関する情報: (A)電話番号:416−863−2400 (B)ファックス:416−863−2653 (2)SEQ ID NO:1に関する情報 (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 6個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (ix)要点: (A)名称/キー:修飾部位 (B)位置:3 (D)その他の情報:注=「Xはチロシン、フェニルアラニン、トリプトフ ァンおよびヒスチジンから成るグループ、あるいはその類似ペプチドから選択す る」 (ix)要点: (A)名称/キー:修飾部位 (B)位置:5 (D)その他の情報:注=「Xはチロシン、フェニルアラニン、アルギニン 、 トリプトファンおよびヒスチジンから成るグループ、あるいはその類似ペプ チドから選択する」 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:1: (2)SEQ ID NO:2に関する情報: (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 8個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (ix)要点: (A)名称/キー:修飾部位 (B)位置:3 (D)その他の情報:注=「Xはチロシン、フェニルアラニン、トリプトフ ァンおよびヒスチジンから成るグループ、あるいはその類似ペプチドから選択す る」 (ix)要点: (A)名称/キー:修飾部位 (B)位置:5 (D)その他の情報:注=「Xはチロシン、フェニルアラニン、アルギニン 、トリプトファンおよびヒスチジンから成るグループ、あるいはその類似ペプチ ドから選択する」 (ix)要点: (A)名称/キー:修飾部位 (B)位置:7 (D)その他の情報:注=「4〜6個のアミノ酸」 (ix)要点: (A)名称/キー:修飾部位 (B)位置:8 (D)その他の情報:注=「Xはチロシン、フェニルアラニン、トリプトフ ァンおよびヒスチジンから成るグループ、あるいはその類似ペプチドから選択す る」 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:2: (2)SEQ ID NO:3に関する情報 (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 23個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:3: (2)SEQ ID NO:4に関する情報 (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 21個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:4: (2)SEQ ID NO:5に関する情報 (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 32個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:5: (2)SEQ ID NO:6に関する情報: (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 23個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:6: (2)SEQ ID NO:7に関する情報: (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 31個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:7: (2)SEQ ID NO:8に関する情報: (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 21個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:8: (2)SEQ ID NO:9に関する情報: (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 18個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:9: (2)SEQ ID NO:10に関する情報: (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 15個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:10: (2)SEQ ID NO:11に関する情報: (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 12個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:11: (2)SEQ ID NO:12に関する情報: (i)配列の特徴: (A)長さ:アミノ酸 6個 (B)種類:アミノ酸 (D)形状:直線 (xi)配列の性状:SEQ ID NO:12:
【手続補正書】特許法第184条の8 【提出日】1994年9月29日 【補正内容】 請求の範囲 1.末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−および/またはα−シア ル酸(2→3)βGal−基を含有する構造または分子上のそのような基を結合さ せることのできるレクチン由来の糖質結合ペプチドまたはその誘導体であって、 モノマー型でレクチン様領域中に約35個以下のアミノ酸を有するもの。 2.レクチン由来の糖質結合ペプチドを図1に示すペプチドの群から選択する 請求項1に記載のペプチド。 3.前記のレクチン由来糖質結合ペプチドを式I(SEQ ID NO:1)及び式II(S EQID NO:2)のグループから選択する請求項1に記載のペプチド、 SPX1GX2C I ただしX1はアミノ酸Y,F,WおよびHの群、またはそのペプチド類似体か ら選択し、X2はアミノ酸Y,F,W,RおよびHから成る群、またはそのペプ チド類似体から選択する; SPX1GX2CX3 4 II ただしX1アミノ酸Y,F,WおよびHの群、またはそのペプチド類似体から 選択し、 X2はアミノ酸Y,F,R,WおよびHからなる群、またはそのペプチド類似 体から選択し; X3は4〜6個のアミノ酸の配列であり;そしてX4はアミノ酸Y,F,Wおよ びHから成る群、またはそのペプチド類似体から選択する、ならびに製剤上許容 されるその塩。 4.前記のレクチン由来糖質結合ペプチドがSPYGRC(SEQ ID NO:3のア ミノ酸18〜23)である請求項3に記載のペプチド。 5.製剤上許容される担体と請求項1〜4の何れかに定義されたペプチドを含 む製剤組成物。 6.少なくとも1種類のペプチドを有効量投与することによって哺乳類におけ る炎症反応を抑制するために使用する請求項1〜4の何れかに記載のペプチド。 7.前記の炎症反応が感作された哺乳類における抗原剌激から生じる請求項6 に記載のペプチド。 8.遅延型過敏症(DTH)、慢性関節リウマチ、乾癬、喘息、皮膚炎、炎症性 腸疾患、多発性硬化症、ウイルス性肺炎および細菌性肺炎から成る群から前記の 抗原剌激を選択する請求項7に記載のペプチド。 9.前記の炎症反応が哺乳類の損傷に関連する請求項6に記載のペプチド。 10.急性呼吸障害症候群(ARDS)、再灌流損傷、凍傷、および敗血症ショック から成る群から前記の損傷を選択する請求項9に記載のペプチド。 11.前記のレクチン由来糖質結合ペプチドを体重1kg当たり約0.5〜50mgの範 囲の用量で投与する請求項6に記載のペプチド。 12.前記のレクチン由来糖質結合ペプチドまたはその誘導体の投与経路が非経 口、経口、鼻内、気管内、経皮、静脈内、または筋肉内である請求項11に記載の ペプチド。 13.抗原と少なくとも1種類のペプチドの有効量とを併せて投与することによ って哺乳類における抗原に対する免疫反応の惹起を調節するために使用する請求 項1〜4の何れかに記載のペプチド。 14.前記の免疫反応が体液性あるいは細胞性の免疫反応から成る請求項13に記 載のペプチド。 15.抗原がアレルゲンである請求項13に記載のぺプチド。 16.前記の少なくとも1種類のレクチン由来糖質結合ペプチドまたはその誘導 体の投与量が体重1kg当たり約0.5〜50mgの範囲である請求項13に記載のペプチ ド。 17.感作された哺乳類において、当該抗原によりその哺乳類を剌激した後、少 なくとも1種類のペプチドを有効量投与することによって、抗原に対する長期的 免疫寛容を惹起するために使用する請求項1〜4の何れかに記載のペプチド。 18.抗原がアレルゲンである請求項17に記載の方法。 19.レクチン由来の糖質結合ペプチドまたはその誘導体の投与量が体重1kg当 たり約0.5〜50mgの範囲である請求項17に記載のペプチド。 20.1種類以上のペプチドを有効量投与することによって哺乳類における肺炎 症および/または肺損傷を治療するために使用する請求項1〜4の何れかに記載 のペプチド。 21.哺乳類の肺炎症または肺損傷が急性呼吸障害症候群(ARDS)である請求項 20に記載のペプチド。 22.前記のレクチン由来糖質結合ペプチドまたはその誘導体の投与経路が非経 口、気管内、鼻内、経口、または経皮である請求項21に記載の方法。 23.レクチン由来糖質結合ペプチドまたはその誘導体の投与量が体重1kg当た り約0.5〜50mgの範囲である請求項20に記載の方法。 24.少なくとも1種類のペプチドを有効量投与することによって哺乳類におけ る腫瘍細胞の転移を阻害するために使用する請求項1〜4の何れかに記載のペプ チド。 25.哺乳類に対する投与をガンの手術または生検の前、最中、あるいは後に実 施する請求項24に記載のペプチド。 26.投与をガンの手術または生検の約5時間前からガンの手術または生検の約 15時間後までの間に実施する請求項25に記載のペプチド。 27.ガンが結腸ガンあるいは黒色腫である請求項25に記載の方法。 28.哺乳類に対して少なくとも1種類のペプチドを有効量投与することによっ て、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−および/またはα−シアル 酸(2→3)βGal−構造を、標的とする哺乳類宿主の細胞上のリセプター部位 として利用する細菌/ウイルス病原体および/またはその毒素による哺乳類宿主 の感染を阻止するために使用する請求項1〜4の何れかに記載のペプチド。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI A61K 38/36 ABE ABG ACD ACJ ACY ACZ 39/35 ABN 9284−4C 9455−4C A61K 37/46 ACD 9455−4C ACJ 9455−4C ACZ 9455−4C ACY 9455−4C ABA (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,CA, CH,DE,DK,ES,FI,GB,HU,JP,K P,KR,LK,LU,MG,MN,MW,NL,NO ,PL,RO,RU,SD,SE,US (72)発明者 スミス,リチャード カナダ国ティー6アール 2エイ6 アル バータ,エドモントン,ブキャナン プレ ース 1010

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−および/またはα−シア ル酸(2→3)βGal−基を含有する構造または分子上のそのような基を結合さ せることのできる、レクチン由来の糖質結合ペプチド、あるいはその誘導体の少 なくとも1種類を有効量投与することによって、哺乳類における炎症反応を抑制 する方法。 2.感作された哺乳類において抗原刺激によって前記の炎症反応が起こる請求 項1に記載の方法。 3.遅延型過敏症(DTH)、慢性関節リウマチ、乾癬、喘息、皮膚炎、炎症性 腸疾患、多発性硬化症、ウイルス性肺炎および細菌性肺炎から成る群から前記の 抗原刺激を選択する請求項2に記載の方法。 4.前記の炎症反応が哺乳類の損傷に関連する請求項1に記載の方法。 5.急性呼吸障害症候群(ARDS)、再灌流障害、凍傷および敗血症ショックか ら成る群から前記の損傷を選択する請求項4に記載の方法。 6.前記の糖質結合ペプチドまたはその誘導体を哺乳類の炎症反応が開始した 後に、但し最大炎症に達するために必要とされる期間の半分の時点で、あるいは その前に投与する請求項1に記載の方法。 7.レクチン由来の糖質結合ペプチドを図1に示すペプチドの群から選択する 請求項1に記載の方法。 8.前記のレクチン由来糖質結合ペプチドを式I(SEQ ID NO:1)及び式II(SEQ ID NO:2)から成る群から選択する請求項1に記載の方法。 SPX1 GX2C I ただしX1はアミノ酸Y,F,WおよびHから成る群、またはそのペプチド類 似体から選択し、X2はアミノ酸Y,F,R,WおよびHから成る群、またはそ のペプチド類似体から選択する; SPX1 GX2 CX34 II ただしX1はアミノ酸Y,F,WおよびHから成る群、またはそのペプチド類 似体から選択し、 X2はアミノ酸Y,F,R,WおよびHから成る群、またはそのペプチド類似 体から選択する; X3は4〜6個のアミノ酸から成るアミノ酸配列である: そしてX4はアミノ酸Y,F,WおよびHから成る群、またはそのペプチド類似 体から選択する。 9.前記のレクチン由来糖質結合ペプチドがSPYGRC(SEQ ID NO:3のア ミノ酸18〜23)である請求項8に記載の方法。 10.前記のレクチン由来糖質結合ペプチドを体重1kg当たり約0.5〜50mgの 範囲の用量で投与する請求項1に記載の方法。 11.前記のレクチン由来糖質結合蛋白質またはその誘導体を非経口、経口、鼻 内、気管内、あるいは経皮の経路によって投与する請求項10に記載の方法。 12.前記のレクチン由来糖質結合蛋白質またはその誘導体を静脈内または筋肉 内に投与する請求項10に記載の方法。 13.抗原と共に、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−および/ま たはα−シアル酸(2→3)βGal−基を含有する構造または分子上のこのよう な基を結合させることのできるレクチン由来の糖質結合ペプチド、あるいはその 誘導体の少なくとも1種類を有効量投与することによって、哺乳類における抗原 に対する免疫反応の惹起を調節する方法。 14.前記の免疫反応が体液性あるいは細胞性の免疫反応から成る請求項13に記 載の方法。 15.抗原がアレルゲンである請求項13に記載の方法。 16.前記の少なくとも1種類のレクチン由来糖質結合ペプチドまたはその誘導 体の投与量が体重1kg当たり約0.5〜50mg/kgの範囲である請求項13に記載の方 法。 17.感作された哺乳類において、当該抗原によりその哺乳類を刺激した後、末 端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−および/またはα−シアル酸(2 →3)βGal−基を含有する構造または分子上のそのような基を結合させること のできるレクチン由来の糖質結合ペプチド、あるいはその誘導体の少なくとも1 種類を有効量投与することによって、抗原に対する長期的免疫寛容を惹起するた めの方法。 18.抗原がアレルゲンである請求項17に記載の方法。 19.前記のレクチン由来糖質結合ペプチドまたはその誘導体を、当該抗原刺激 に対する哺乳類の炎症反応が開始した後に、但し最大炎症に達するために必要と される期間の半分の時点で、あるいはその前に投与する請求項17に記載の方法。 20.レクチン由来糖質結合ペプチドまたはその誘導体の投与量が体重1kg当た り約0.5〜50mg/kgの範囲である請求項19に記載の方法。 21.末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−および/またはα−シア ル酸(2→3)βGal−基を含有する構造または分子上のそのような基を結合さ せることのできるレクチン由来の糖質結合ペプチド、あるいはその誘導体の少な くとも1種類を有効量投与することによって、哺乳類における肺炎症および/ま たは肺損傷を治療するための方法。 22.哺乳類における肺炎症または肺損傷が急性呼吸障害症候群(ARDS)である 請求項21に記載の方法。 23.前記のレクチン由来糖質結合ペプチドまたはその誘導体の投与経路が非経 口、気管内、鼻内、経口、または経皮である請求項22に記載の方法。 24.レクチン由来糖質結合ペプチドまたはその誘導体の投与量が体重1kg当た り約0.5〜50mgの範囲である請求項21に記載の方法。 25.末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−および/またはα−シア ル酸(2→3)βGal−基を含有する構造または分子上のそのような基を結合さ せることのできるレクチン由来の糖質結合ペプチド、あるいはその誘導体の少な くとも1種類を有効量投与することによって、哺乳類における腫瘍細胞の転移を 阻害するための方法。 26.哺乳類に対する投与をガンの手術または生検の前、最中、あるいは後に実 施する請求項25に記載の方法。 27.投与をガンの手術または生検の約5時間前からガンの手術または生検の約 15時間後までの間に実施する請求項26に記載の方法。 28.ガンが結腸ガンあるいは黒色腫である請求項26に記載の方法。 29.末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−および/またはα−シア ル酸(2→3)βGal−構造を、標的とする哺乳類宿主の細胞上のリセプター部 位として利用する細菌/ウイルスおよび/またはその毒素による哺乳類宿主の感 染を阻害するための方法で、末端に結合したα−シアル酸(2→6)βGal−お よび/またはα−シアル酸(2→3)βGal−基を含有する構造または分子上の そのような基を結合させることのできるレクチン由来の糖質結合ペプチド、ある いはその誘導体の少なくとも1種類を哺乳類に対して有効量投与することを含ん で成る上記方法。
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