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JPH08245665A - 新規フォスファイト化合物及びそれを用いたキラルフォスファイト化合物の立体選択的製造方法 - Google Patents

新規フォスファイト化合物及びそれを用いたキラルフォスファイト化合物の立体選択的製造方法

Info

Publication number
JPH08245665A
JPH08245665A JP7982395A JP7982395A JPH08245665A JP H08245665 A JPH08245665 A JP H08245665A JP 7982395 A JP7982395 A JP 7982395A JP 7982395 A JP7982395 A JP 7982395A JP H08245665 A JPH08245665 A JP H08245665A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
isomer
phosphite compound
nucleotide
compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP7982395A
Other languages
English (en)
Inventor
Masatsugu Mizuguchi
雅嗣 水口
Keisuke Makino
圭祐 牧野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
SOYAKU GIJUTSU KENKYUSHO KK
Original Assignee
SOYAKU GIJUTSU KENKYUSHO KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by SOYAKU GIJUTSU KENKYUSHO KK filed Critical SOYAKU GIJUTSU KENKYUSHO KK
Priority to JP7982395A priority Critical patent/JPH08245665A/ja
Publication of JPH08245665A publication Critical patent/JPH08245665A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Saccharide Compounds (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 新規フォスファイト及びそれを用いたキラル
化合物の立体選択的製法を提供する。 【構成】 式(R1 O)(R2 O)(R3 O)P〔R1
はヌクレオシド、ヌクレオチド;R2 はアルキル、置換
アルキル;R3 は芳香族炭化水素、置換芳香族炭化水
素〕の新規フォスファイト化合物。製法は、前記化合物
をR/S分離し、一方の異性体とR4 OH(R4 はヌク
レオシド、ヌクレオチド、アルキル、置換アルキル;但
し、R1 、R2 、R4 は各々異なる)を反応させ、式
(R1 O)(R2 O)(R4 O)Pのキラル化合物を得
る。 【効果】 ホスホロチオエート型ヌクレオチドの立体制
御合成に利用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規フォスファイト化
合物及びそれを用いたキラルフォスファイト化合物の立
体選択的製造方法に関する。本発明化合物は、修飾オリ
ゴヌクレオチドの合成の中間体として有用であり、そし
て本発明方法は、修飾オリゴヌクレオチド類の立体選択
的な合成に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来法によるフォスファイトの合成 フォスファイト骨格は、遺伝子の本体であるDNAやR
NAのような核酸の基本骨格であるリン酸ジエステル骨
格の化学合成における中間体として、その合成法の開発
が盛んに行われてきた。これは、下記の式(1)に示す
ように、フォスファイト(11)から、酸化によるリン
酸トリエステル(12)への変換を経てエステル保護基
を脱離し、目的のリン酸ジエステル(13)を容易に得
ることができるからである。
【化1】 前記の式(1)で、Bは核酸塩基の残基であり、Rは保
護基である。
【0003】また、前記式(1)の出発材料であるフォ
スファイト骨格の生成は、以下の式(2)に示すよう
に、一般的には脱離基を付与した三価のリン化合物と水
酸基含有化合物との縮合反応により行われる。 (Ra O)(Rb O)(Rc )P+Rd OH −−−→(Ra O)(Rb O)(Rd O)P (2) 前記の式(2)で、Ra はヌクレオシド基又はヌクレオ
チド基であり、Rb は保護基であり、Rc は脱離基であ
り、Rd は糖部分の5’末端でリン原子と結合している
ヌクレオシド基又はヌクレオチド基である。
【0004】歴史的には、脱離基Rc としてクロル基
〔Letsinger et al., J. Am. Chem. Soc., 98, 3665 (1
978)〕、やテトラゾリル基〔Matteucci et al., J. Am.
Chem.Soc., 103, 3185 (1981) 〕等が用いられた。更
に、ジ置換アミノ基が用いられるようになった〔Beucag
e et al., Tetrahedron Lett., 22, 1859 (1983)〕。脱
離基Rc としてジ置換アミノ基を有するホスホアミダイ
トを用いる方法は、縮合反応の活性化剤として弱酸であ
るテトラゾールを用いる。原料のホスホアミダイトの反
応性の高さ及び高い安定性により取扱が簡便であるた
め、この縮合反応工程を主反応工程としたDNAやRN
Aの固相合成は、“ホスホアミダイト法”と呼ばれ、合
成化学者のみならず、生化学の分野の研究者でも容易に
用いることのできる普遍性の高い合成方法となるに至っ
ている。
【0005】アンチセンス法 近年、このように遺伝子であるDNAやRNAの化学合
成法がほぼ完成され、目的とする塩基配列を有するオリ
ゴ(又はポリ)ヌクレオチドが一般に容易に得られるよ
うになった。言うまでもなく、合成の目的であるリン酸
ジエステル結合のリン原子には、リン原子に等価な酸素
原子が二つ結合していることからキラリティは存在しな
い。しかし、最近、リン原子にキラリティが存在するよ
うなリン酸結合を有する、天然型のDNA・RNAの修
飾体が利用される機会が増大するに至った。これは、化
学合成した塩基配列を有するオリゴ(又はポリ)ヌクレ
オチドを用いて遺伝子発現を制御し、疾病治療に使用し
ようという試みである。
【0006】その遺伝子発現制御法の代表的な一例とし
て、アンチセンス法の概略を述べる。病原タンパク質が
生体内で合成されるためには、そのアミノ酸配列を特定
する固有の遺伝子の発現が必要になる。すなわち、遺伝
子が二重鎖DNAから一本鎖mRNAに転写され、次に
mRNA分子が特定のタンパク質に翻訳されなければな
らない。この一本鎖部分の特定の領域に選択的に結合す
る塩基配列を有するオリゴ(又はポリ)ヌクレオチドを
存在させると、その遺伝子は翻訳が不可能となり、遺伝
子の発現が阻害される。1953年にワトソンとクリッ
クにより明らかにされたように、DNAは二重らせんを
形成する性質がある。これは、片方の鎖の核酸塩基が他
方の鎖の特定の核酸塩基と水素結合を形成することによ
り行われる。相互に結合する核酸塩基は、アデニン
(A)とチミン(T)又はウラシル(U)、グアニン
(G)とシチジン(C)が水素結合を形成する対であ
る。そこで、標的の一本鎖mRNAに対して、これと水
素結合を形成できるような塩基配列(相補配列)を備え
たオリゴ(又はポリ)ヌクレオチドを用いれば、二重鎖
を形成することによりリボソーム上の翻訳を妨げ、病原
タンパク質の産生を抑制することができる。アンチセン
ス法はこうした機構によって行われるとされる遺伝子発
現制御法である。
【0007】アンチセンス法に用いられる修飾核酸 アンチセンス法に代表されるような遺伝子制御法では、
単鎖の合成遺伝子断片であるオリゴヌクレオチド類(通
常は15〜30塩基程度の鎖長のもの)が主に用いられ
る。これらのオリゴヌクレオチド類には、以下の特性が
求められる。 (1)塩基配列特異性、(2)二重鎖安定性、(3)抗
ヌクレアーゼ耐性、(4)細胞膜透過性、(5)低細胞
毒性と適度な代謝性、及び(6)簡便な調製法である。
天然型のDNAやRNAをこの手法に用いると、生体内
で即座に分解し、その効果を示さない。そこで、オリゴ
ヌクレオチド類に修飾を施し、上記の条件に適合するよ
うな骨格を用いなければならない。
【0008】修飾核酸の問題点:キラリティ 前記の(1)〜(6)の特性を備える必要のある天然型
DNA・RNAの修飾体の問題点を、一例としてホスホ
ロチオエートについて述べる。最近、アンチセンスオリ
ゴヌクレオチドが、性器いぼの原因ウイルスであるヒト
パピローマウイルス、AIDS(後天的免疫不全症候
群)や急性骨髄性白血病などにおいて臨床試験に用いら
れるようになってきている。ここで主に用いられている
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下の式(3)に
示すホスホロチオエート型の骨格をもったものである。
【化2】 前記の式(3)でBは前記と同じ意味である。
【0009】前記のホスホロチオエート型骨格は、天然
型のリン酸ジエステル結合の二つの非架橋酸素原子の内
の一つをイオウ原子に置き換えたものである。現在のと
ころ、この骨格がアンチセンスに必要とされる条件を最
も満足するものと考えられている。しかし、ホスホロチ
オエート型オリゴヌクレオチドでは、各リン原子がキラ
リティをもつので、R/Sの立体異性を生じ、n−me
rのオリゴヌクレオチドには2n-1 個の異性体が存在す
る。現在汎用されるアンチセンス化合物の鎖長は15〜
30程度であるが、例えば30merの場合、異性体数
は、230-1個、すなわち約5.37億個に達する。
【0010】これらの各々の立体異性体は、標的RNA
や生体内の各種タンパク質との親和力等の性質が異な
る。Stecらは、ホスホロチオエート結合部位がすべ
てR型の12merとS型の12merとに関し、それ
らと相補的なDNA分子との間で形成した二重鎖の安定
性を比較したところ、融解温度(Tm)値は、R体が3
0.0℃で、S体が34.4℃となり、S体の方が高か
った〔Stec et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 3
3, 709 (1994)〕。従って、この結果によると、ホスホ
ロチオエート型アンチセンス分子では、その相補鎖との
結合は、S体の方が強固であり望ましいことが分かる。
【0011】ホスホロチオエート型オリゴヌクレオチド
は、標的RNAとの結合の他に、タンパク質との相互作
用も報告されている。例えば、ホスホロチオエートポリ
(C)の28merはHIVの逆転写酵素と相互作用が
ある〔Majumdar et al., Biochemistry, 28, 1340 (198
9)〕。また、生体内に存在するRNase HやDNA
ポリメラーゼとの相互作用も報告されている〔Gao et a
l., Molecular Pharmacology, 41,223 (1992) など〕。
このことは、生体内で必要とされるタンパク質の機能を
阻害し、細胞毒性をもつ可能性を示唆するものである。
また、ホスホロチオエート型オリゴヌクレオチドに対し
て、R体とS 体とで異なった認識をする酵素も存在す
る。例えば、ヘビ毒ホスホジエステラーゼはホスホロチ
オエート結合のR体のみを切断する酵素であり、逆にヌ
クレアーゼP1は、S体のみを切断する。このことは、
ホスホロチオエート型アンチセンス分子の細胞毒性が、
R体とS体とでは異なる可能性を示唆するものである。
【0012】臨床試験が進行する一方で、ホスホロチオ
エート型アンチセンス分子の各異性体の性質は十分解明
されているとは言い難い。従来は、立体選択的合成法が
確立していなかったので、各異性体の混合物としてのみ
効果を確かめることしかできなかったためである。従っ
て、上記に述べた理由から、立体制御したホスホロチオ
エート型アンチセンス分子を合成し、その立体異性体の
性質を明らかにし、その最適化を行うことが特に急がれ
ている。以上に述べたように、ホスホロチオエート型オ
リゴヌクレオチドは、最も代表的な、天然型のDNA・
RNAの修飾体である。このホスホロチオエート型オリ
ゴヌクレオチドの合成には、以下の式(4)で示すよう
に、天然型リン酸ジエステルを合成する際と同様の固相
ホスホアミダイト法が用いられていた。
【0013】
【化3】 前記の式(4)中で、B及びRは前記と同じ意味であ
り、R’は保護基(例えば、ジメトキシトリチル基)で
あり、R”はアミノ置換基(例えば、イソプロピル基)
である。
【0014】すなわち、原料モノマーユニットとしてホ
スホアミダイト(21)を用い、水酸基含有化合物(2
2)と反応させてフォスファイト(23)を合成する工
程は、天然型リン酸ジエステル合成の場合と全く同様で
あるが、天然型リン酸ジエステル合成の際に行う酸化反
応工程を硫黄化反応工程に置き換え、保護されたホスホ
ロチオエート化合物(24)を形成する。更に続いて天
然型リン酸ジエステル合成の場合と同様の脱保護工程を
行うことにより、遊離のホスホロチオエート化合物(2
5)を形成することからなる。ここで用いられる原料ホ
スホアミダイト(21)は、不斉リン原子を含むためR
/Sの立体異性体が存在し、通常これらの混合物を用い
る。リン酸ジエステル合成の際は、最終生成物であるリ
ン酸ジエステルが不斉リン原子を含まないため、この合
成方法になんら問題はない。しかし、ホスホロチオエー
ト合成の際は、出発物質から最終生成物までの全てにR
/Sの異性体が存在する。従って、立体制御したホスホ
ロチオエート骨格を生成するには、縮合、硫黄化及び脱
保護の三工程の立体選択性が問題となる。
【0015】Stecらは、原料ホスホアミダイト化合
物についてR/Sの異性体の分離精製を行い、その精製
された単一の異性体を用いて縮合反応を行った。その結
果、縮合生成物はR/S異性体の完全な混合物であり、
この縮合反応は、全く立体選択的には進行しないことが
明らかになった〔Stec et al., Tetrahedron Lett.,25,
5279 (1984) 〕。従って、従来から一般的に用いられ
ている合成法をそのまま用いても、容易には立体制御し
たホスホロチオエートの合成を行なうことはできない。
一方、硫黄化反応は、分子状硫黄を用いた場合に、キラ
リティーを保持したままで反応が進行することが明らか
にされている。また、リン酸保護基の脱保護工程でも、
β−脱離により脱保護される保護基、例えばβ−シアノ
エチル基を用いている場合には、リン原子のキラリティ
ーを保持したままで反応を行うことができる。従って、
立体選択的に進行することのできる縮合反応を見出すこ
とができれば、立体制御したホスホロチオエート型アン
チセンス化合物〔すなわち、オリゴ(又はポリ)ヌクレ
オチド〕の合成が可能となる。しかし、従来は、このよ
うな反応の報告は皆無であった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、ホスホロチオエート型オリゴヌクレオチドの立体制
御した合成に利用することができる、キラルフォスファ
イト骨格の立体選択的な生成方法を完成することにあ
る。前述のように、従来から一般に広く用いられている
ホスホアミダイト法の縮合反応は、ホスホアミダイト化
合物と水酸基含有化合物とを用い、そして反応の活性化
剤として弱酸である1H−テトラゾールを用いた酸性条
件下で実施するものであり、反応の立体選択性は全くな
かった。本発明者らは、特に前記縮合反応の酸塩基条件
に着目し、塩基性条件下で活性化される特性をもつ新規
なフォスファイト化合物を見出し、この化合物のR/S
異性体分離により得られたキラルフォスファイト化合物
を反応原料として用いて塩基性条件下で縮合反応を行っ
たところ、極めて高い立体選択性が得られることを見出
し、本発明を完成するに至った。
【0017】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、一般
式(I): (R1 O)(R2 O)(R3 O)P (I) (式中、R1 はヌクレオシド基又はヌクレオチド基であ
り、R2 はアルキル基又は置換されたアルキル基であ
り、R3 は芳香族炭化水素基又は置換された芳香族炭化
水素基である)で表されるフォスファイト化合物に関す
る。また、本発明は、前記一般式(I)で表されるフォ
スファイト化合物のリン原子におけるR異性体とS異性
体の混合物からR異性体とS異性体とを分離し、分離し
たいずれか一方の異性体と一般式(II): R4 OH (II) (式中、R4 はヌクレオシド基、ヌクレオチド基、アル
キル基又は置換されたアルキル基であるが、但し、R
1 、R2 及びR4 は各々異なった置換基であるものとす
る)で表される水酸基含有化合物とを、塩基の存在下で
反応させることを特徴とする、一般式(III) : (R1 O)(R2 O)(R4 O)P (III) (式中、R1 、R2 及びR4 は前記と同じ意味である
が、但し、R1 、R2 及びR4 は各々異なった置換基で
あるものとする)で表されるキラルフォスファイト化合
物の立体選択的な製造方法にも関する。
【0018】以下、本発明を詳細に説明する。前記一般
式(I)で表される本発明による新規フォスファイト化
合物において、R1 、R2 及びR3 は各々異なった置換
基であるので、新規フォスファイト化合物はキラリティ
をもつ。本明細書において、ヌクレオシド基(例えば、
1 又はR4 )は、リボヌクレオシド基又はデオキシリ
ボヌクレオシド基であることができ、例えば、(デオキ
シ)アデノシン残基、(デオキシ)グアノシン残基、
(デオキシ)イノシン残基、(デオキシ)キサントシン
残基、(デオキシ)シチジン残基、(デオキシ)ウリジ
ン残基、リポチミジン残基又はチミジン残基を挙げるこ
とができる。
【0019】また、本明細書において、ヌクレオチド基
(例えば、R1 又はR4 )は、プリン又はピリミジン−
リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドの残基
であることができる。また、ヌクレオチド基は、モノヌ
クレオチド、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド
の残基であることができる。オリゴヌクレオチド又はポ
リヌクレオチドの重合度は特に限定されないが、一般的
には2mer〜30merである。更に、ヌクレオチド
基において、その中に含まれるリン酸エステル部分は、
前記式(1)に示すリン酸ジエステル(13)と同様
に、リン原子に4個の酸素原子が結合しており、キラリ
ティーをもたないものだけから構成されていてもよく、
あるいは前記式(3)に示すホスホロチオエート型と同
様に、リン原子に結合する1個の酸素原子が硫黄原子で
置換されているか、あるいはアミノ基、置換アミノ基、
又はメチル基などで置換され、キラリティーをもつもの
だけから構成されていてもよく、更にはそれらを同時に
含んで構成されていてもよい。これらのヌクレオシド基
又はヌクレオチド基は、必要に応じて塩基部分及び水酸
基を保護基によって保護しておくことが好ましい。
【0020】本明細書において、アルキル基(例えば、
2 又はR4 )としては、例えば、炭素数1〜20(特
には炭素数1〜10)のアルキル基、例えば、メチル
基、エチル基、プロピル基、又はブチル基を挙げること
ができる。また、置換アルキル基(例えば、R2 又はR
4 )は、好ましくは前記と同様の炭素数1〜20(特に
は炭素数1〜10)のアルキル基が、置換基、例えば、
ハロゲン原子(例えば、塩素原子、若しくは臭素原子)
又はシアノ基1個又はそれ以上で置換されたものであ
る。基R2 は、好ましくはリン酸保護基、より好ましく
は通常の核酸合成に汎用されるリン酸保護基、例えば、
場合によりシアノ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原
子)1個又はそれ以上で置換されていることのある炭素
数1〜4の低級アルキル基(特にはメチル基、又はβ−
シアノエチル基)である。
【0021】基R3 は、場合により置換されていること
のある、炭素数6〜30、好ましくは炭素数6〜10の
芳香族炭化水素基であることができる。芳香族炭化水素
基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、又はアントリ
ル基である。それら芳香族炭化水素基上の置換基は、特
に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子
(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はフッ
素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチ
ル基、又はエチル基)、場合により置換されていること
のあるフェニル基(例えば、フェニル基、アルキルフェ
ニル基又はハロゲン化フェニル基)、更には電子吸引性
基(例えば、ニトロ基又はシアノ基)などを挙げること
ができる。これらの置換基の数も限定されるものではな
く、1個又はそれ以上であることができる。基R3 は、
具体的には、フェニル基、o−、m−及びp−フェニル
フェニル基、o−、m−及びp−クロロフェニル基、o
−、m− 及びp−ブロモフェニル基、o−、m−及び
p−ヨードフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、m
−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、ナフチル
基、4−クロロナフチル基、3−クロロナフチル基、4
−ブロモナフチル基、及び3−ブロモナフチル基などで
あることができる。
【0022】基R1 はヌクレオシド基又はヌクレオチド
基であるので、基R1 自体の中にも不斉炭素原子が含ま
れており、本発明によるフォスファイト化合物全体では
ジアステレオマーとなり、以下に述べるR/S異性体の
分離精製が容易になるので好ましい。オリゴヌクレオチ
ドの合成を目的とする際には、基R1 にはヌクレオチド
誘導体又はヌクレオシド誘導体の3’末端結合体(糖部
分の3’末端でリン原子と結合している基R1 )又は
5’末端結合体(糖部分の5’末端でリン原子と結合し
ている基R1 )を用いるのが好ましい。本発明によるフ
ォスファイト化合物と、前記の式(II)で表される水酸
基含有化合物とを反応させると、基OR3 が脱離され、
基OR4 と置換される。前記の式(I)で表される本発
明によるフォスファイト化合物は、基R3 Oとして、酸
性度の高い芳香族炭化水酸基をもつことにより、基R3
Oとして酸性度の低いアルキル基などをもつ場合と異な
り、望ましい反応性をもつことができる。また、芳香族
炭化水素基に置換基を導入することにより、脱離基OR
3 の脱離能を調節することができる。更に、芳香族炭化
水素基の立体的な嵩高さにより、後述するR/S異性体
の分離精製を容易にすることができる。
【0023】前記の式(I)で表される本発明によるフ
ォスファイト化合物の好適な具体例としては、3’−O
−〔2−シアノエトキシ(4−フェニルフェノキシ)フ
ォスフィノ〕−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリ
チル)−2’−デオキシリボヌクレオシド、3’−O−
〔2−シアノエトキシ(3−クロロフェノキシ)フォス
フィノ〕−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチ
ル)−2’−デオキシリボヌクレオシド、3’−O−
〔2−シアノエトキシ(フェノキシ)フォスフィノ〕−
5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−
デオキシリボヌクレオシド、3’−O−〔2−シアノエ
トキシ(2−クロロフェノキシ)フォスフィノ〕−5’
−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオ
キシリボヌクレオシド、3’−O−〔2−シアノエトキ
シ(4−クロロフェノキシ)フォスフィノ〕−5’−O
−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシ
リボヌクレオシド、3’−O−〔2−シアノエトキシ
(2−クロロフェノキシ)フォスフィノ〕−5’−O−
(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシリ
ボヌクレオシド、3’−O−〔2−シアノエトキシ(4
−クロロナフトキシ)フォスフィノ〕−5’−O−
(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシリ
ボヌクレオシド、3’−O−〔2−シアノエトキシ(3
−ニトロフェノキシ)フォスフィノ〕−5’−O−
(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシリ
ボヌクレオシド、3’−O−〔メトキシ(4−フェニル
フェノキシ)フォスフィノ〕−5’−O−(4,4’−
ジメトキシトリチル)−2’−デオキシリボヌクレオシ
ド、3’−O−〔メトキシ(3−クロロフェノキシ)フ
ォスフィノ〕−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリ
チル)−2’−デオキシリボヌクレオシドなどが挙げる
ことができる。これらのフォスファイト化合物は、一般
には通常では困難と考えられていたシリカゲルオープン
カラムで簡便にR/Sの立体異性体の分離が可能であ
る。
【0024】本発明による前記式(I)で表されるフォ
スファイト化合物は、例えば、一般式(IV): (R1 O)(R2 O)〔(R52 N〕P (IV) (式中、R1 及びR2 は前記と同じ意味であり、R5
低級アルキル基、例えばイソプロピル基である)で表さ
れるホスホアミダイト化合物と、一般式(V): R3 OH (V) (式中、R3 は前記と同じ意味である)で表される化合
物とを1H−テトラゾールの存在下で反応させることよ
り調製することができる。この反応は、常温で数分から
数時間で行うことができる。
【0025】次に、本発明による新規フォスファイト化
合物を用いたキラルフォスファイト骨格の立体選択的生
成方法について説明する。先ず、第一工程として、原料
フォスファイト化合物のR異性体とS異性体との分離精
製を行う。R/S異性体がジアステレオマーであるフォ
スファイト化合物を用いると、簡便なシリカゲルオープ
ンカラムを用いて精製することができるので好ましい。
市販のカラムクロマトグラフィー用のシリカゲル(10
0〜300mesh)を用い、溶媒系としては、酢酸エ
チル/ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)/ヘキ
サンなどが好適である。ただし、アルコールなど水酸基
を有する溶媒は、望ましくない置換反応を誘発するので
好ましくない。また、シリカゲル上で分解を起こしやす
いフォスファイト化合物を精製する場合は、極少量の酢
酸を添加することにより分解を抑制することができる。
【0026】次に、第二工程として、分離したいずれか
一方の異性体と一般式(II): R4 OH (II) (式中、R4 は前記と同じ意味である)で表される水酸
基含有化合物とを、塩基の存在下で反応させることによ
り、前記出発材料のキラリティーを保存したままで、一
般式(III): (R1 O)(R2 O)(R4 O)P (III) (式中、R1 、R2 及びR4 は前記と同じ意味である)
で表されるキラルフォスファイト化合物を調製すること
ができる。
【0027】前記の縮合反応は、通常、常温下で、原料
キラルフォスファイト化合物、水酸基含有化合物、塩
基、及び必要に応じて溶媒を混合して行うことができ
る。この反応は、特に水分が反応速度及び立体選択率に
多大な影響を与えるため、反応雰囲気は窒素又はアルゴ
ンとし、水分の混入を防止することが望ましい。前記式
(II)で表される水酸基含有化合物としては、好ましく
は低級アルカノール、例えば、メタノール、エタノー
ル、プロパノール又はブタノールを用いることができ
る。また、オリゴヌクレオチドを合成する際には、糖部
分の5’位に遊離水酸基をもち、3’位に保護された水
酸基、オリゴ(又はポリ)ヌクレオチド基(ホスホロチ
オエート型リン酸エステルを含有するものも含む)で置
換された水酸基、あるいは固相DNA合成に用いる担体
と直接若しくは前記オリゴ(又はポリ)ヌクレオチド基
を介して結合した水酸基をもつヌクレオチド又はヌクレ
オシドを、前記の水酸基含有化合物として用いるのが好
ましい。なお、原料キラルフォスファイト化合物とし
て、基R1 にヌクレオチド誘導体又はヌクレオシド誘導
体の5’末端結合体をもつ化合物を用いる場合には、前
記の水酸基含有化合物として、糖部分の3’位に遊離水
酸基をもち、5’位に保護された水酸基、オリゴ(又は
ポリ)ヌクレオチド基(ホスホロチオエート型リン酸エ
ステルを含有するものも含む)で置換された水酸基、あ
るいは固相DNA合成に用いる担体と直接若しくは前記
オリゴ(又はポリ)ヌクレオチド基を介して結合した水
酸基をもつヌクレオチド又はヌクレオシドを用いるのが
好ましい。
【0028】前記の縮合反応に存在させる塩基として
は、アミン類を用いることができるが、三級アミンが好
適である。具体的には、トリエチルアミン、トリプロピ
ルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルア
ミンなどのトリアルキルアミン類、ピリジン、ルチジ
ン、コリジンなどのピリジン類やその他1−メチルイミ
ダゾールのような芳香族三級アミン類、また1,8−ジ
アザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン(DB
U)、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナ−5
−エン(DBN)などが好適である。これらの三級アミ
ンのうちで、特にリン原子に対する求核性が小さく、塩
基性が大きいトリアルキルアミン類が特に好適である。
【0029】前記の縮合反応に用いる溶媒は、上記三種
類の化合物が溶解し合うような場合には特に必要としな
い。そうでない場合には、必要に応じて、アセトニトリ
ル、THF、ジメチルホルムアミド(DMF)、及び塩
化メチレンなどの溶媒を用いることができる。前記のよ
うに、この縮合反応には特に水分が悪影響を与えるの
で、使用する反応試剤は十分な脱水操作を行うことが好
ましい。反応時間は、一般的には、5分〜10時間程度
が好適である。即ち、原料フォスファイト化合物のR/
S異性体の各々を分離精製し、必要とする立体配置を生
成する異性体のみを反応に使用する。各過程は立体選択
的に進行するので、最終的に目的の異性体のみを得るこ
とができる。本発明方法により得られた式(III)で表さ
れるキラルフォスファイト化合物を用いて、前記式
(4)で示した硫黄化工程及び脱保護工程を実施するこ
とにより、キラリティーを保存したままで、ホスホロチ
オエート化合物を調製することができる。
【0030】
【作用】本発明方法では、原料とするためにR/S異性
体分離したキラルフォスファイト化合物が、芳香族炭化
水素基を脱離基としてもっているので、塩基性条件下で
縮合反応を行うことにより、従来難しいと考えられてき
たキラルフォスファイトの立体選択的合成を行うことが
可能になった。
【0031】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1:3’−O−〔2−シアノエトキシ(4−フェ
ニルフェノキシ)フォスフィノ〕−5’−O−(4,
4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシチミジン
(原料キラルフォスファイト化合物)の合成及びその異
性体分離 3’−O−〔2−シアノエトキシ(N,N−ジイソプロ
ピルアミノ)フォスフィノ〕−5’−O−(4,4’−
ジメトキシトリチル)−2’−デオキシチミジン(37
4mg,0.50mmol)とp−フェニルフェノール
(86.6mg,0.51mmol)をアセトニトリル
1mlに溶解した。この溶液に、アセトニトリル1ml
に溶解した1H−テトラゾール(36.2mg,0.5
2mmol)を加え、1.5時間反応させた。生成固体
を濾別し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマト
グラフィー(展開系:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)
により、両異性体を分離精製した。収量は、初流出異性
体120.4mg,後流出異性体98.1mg、及び両
異性体の混合物129.1mgで合計347.6mg
(0.42mmol,収率85%)であった。 元素分析 計算値(C454439 Pとして);C,67.8
9;H,5.45;N,5.16, 分析値:C,67.77;H,5.62;N,5.13 UVλmax 237nm(ε26400),255(25
400)
【0032】初流出異性体 1 H−NMR(CDCl3 )δ:1.47(3H,s,
CH3 ),2.39(1H,ddd,J=13.8,
8.9,及び6.0Hz,2”−H),2.52〜2.
62(1H,m,2’−H),2.60(2H,t,J
=6.7Hz,CH2 CN),3.37(1H,dd,
J=10.8及び3.2Hz,5’−H),3.53
(1H,dd,J=10.8及び3.2Hz,5”−
H),3.77(6H,s,OCH3 ),4.12(2
H,q,J=6.7Hz,POCH2 ),4.23(1
H,d,J=3.6Hz,4’−H),5.12〜5.
18(1H,m,3’−H),6.47(1H,dd,
J=8.5及び6.0Hz,1’−H),6.81〜
7.61(23H,m,Ar−H及び5−H),8.5
2(1H,s,NH)後流出異性体 1 H−NMR(CDCl3 )δ:1.48(3H,s,
CH3 ),2.41(1H,ddd,J=13.8,
8.9,及び6.0Hz,2”−H),2.55〜2.
67(1H,m,2’−H),2.66(2H,t,J
=6.6Hz,CH2 CN),3.37(1H,dd,
J=10.8及び3.2Hz,5’−H),3.50
(1H,dd,J=10.8及び3.2Hz,5”−
H),3.76(6H,s,OCH3 ),4.08〜
4.19(2H,m,POCH2 ),4.23(1H,
d,J=3.6Hz,4’−H),5.20〜5.25
(1H,m,3’−H),6.49(1H,dd,J=
8.5及び6.0Hz,1’−H),6.80〜7.6
0(23H,m,Ar−H及び5−H),9.50(1
H,s,NH)
【0033】実施例2:3’−O−〔2−シアノエトキ
シ(3−クロロフェノキシ)フォスフィノ〕−5’−O
−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシ
チミジン(原料キラルフォスファイト化合物)の合成及
びその異性体分離 3’−O−〔2−シアノエトキシ(N,N−ジイソプロ
ピルアミノ)フォスフィノ〕−5’−O−(4,4’−
ジメトキシトリチル)−2’−デオキシチミジン(50
0mg,0.67mmol)と3−クロロフェノール
(94.9mg,0.74mmol)をアセトニトリル
1mlに溶解した。この溶液に、アセトニトリル1ml
に溶解した1H−テトラゾール(51.8mg,0.7
4mmol)を加え、3時間反応させた。生成固体を濾
別し、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラ
フィー(展開系:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)によ
り、両異性体を分離精製した。収量は、初流出異性体1
42.9mg、後流出異性体170.3mg、及び両異
性体の混合物57.8mgで、合計371.0mg
(0.48mmol,収率72%)であった。 元素分析 計算値(C403939 PClとして) C,62.22;H,5.09;N,5.44, 分析値:C,62.27;H,5.13;N,5.55 UVλmax 268nm(ε12900)
【0034】初流出異性体 1 H−NMR(CDCl3 )δ:1.48(3H,s,
CH3 ),2.38(1H,ddd,J=14.1,
8.1,及び6.2Hz,2”−H),2.50〜2.
60(1H,m,2−H),2.58(2H,t,J=
6.7Hz,CH2CN),3.36(1H,dd,J
=10.8及び3.3Hz,5’−H),3.53(1
H,dd,J=10.8及び3.3Hz,5”−H),
3.79(6H,s,OCH3 ),4.00〜4.16
(2H,m,POCH2 ),4.21(1H,d,J=
2.4Hz,4’−H),5.09〜5.14(1H,
m,3’−H),6.45(1H,dd,J=8.1及
び6.2Hz,1’−H),6.81〜7.61(18
H,m,Ar−H及び5−H),9.08(1H,s,
NH)後流出異性体 1 H−NMR(CDCl3 )δ:1.47(3H,s,
CH3 ),2.39(1H,ddd,J=14.1,
8.1,及び6.0Hz,2”−H),2.53〜2.
57(1H,m,2’−H),2.66(2H,t,J
=6.7Hz,CH2 CN),3.35(1H,dd,
J=10.8及び3.3Hz,5’−H),3.50
(1H,dd,J=10.8 及び3.3Hz,5”−
H),3.78(6H,s,OCH3 ),4.13(2
H,q,J=6.7Hz,POCH2 ),4.20(1
H,d,J=3.5Hz,4’−H),5.15〜5.
21(1H,m,3’−H),6.46(1H,dd,
J=8.5及び6.0Hz,1’−H),6.81〜
7.61(18H,m,Ar−H及び5−H),9.5
0(1H,s,NH)
【0035】実施例3:3’−O−〔2−シアノエトキ
シ(2−メチル−1−プロポキシ)フォスフィノ〕−
5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−
デオキシチミジンの立体選択的合成 前記実施例1で調製した3’−O−〔2−シアノエトキ
シ(4−フェニルフェノキシ)フォスフィノ〕−5’−
O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキ
シチミジンの後流出異性体(32.7mg,0.040
2mmol)を水酸基含有化合物である2−メチル−1
−プロパノール(50μl)に溶解し、トリエチルアミ
ン(150μl)を加えた。5時間後に溶媒を留去し
た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開系:酢
酸エチル/ヘキサン=1/1)により精製を行った。収
量は19.6mg(0.0273mmol,収率68
%)であった。この生成物を31P−NMRにより分析し
たところ、138.39ppmと138.55ppmに
ピークが存在し、積分値は84:16であった。これ
は、この反応の立体選択率が84%であったことを示し
ている。
【0036】実施例4:3’−O−〔2−シアノエトキ
シ(2−メチル−1−プロポキシ)フォスフィノ〕−
5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−
デオキシチミジンの立体選択的合成 前記実施例3と同様に、前記実施例1で調製した3’−
O−〔2−シアノエトキシ(4−フェニルフェノキシ)
フォスフィノ〕−5’−O−(4,4’−ジメトキシト
リチル)−2’−デオキシチミジンの初流出異性体(3
2.7mg,0.0402mmol)を水酸基含有化合
物である2−メチル−1−プロパノール(50μl)に
溶解し、トリエチルアミン(150μl)を加えた。5
時間後に溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグ
ラフィー(展開系:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)に
より精製を行った。収量は18.0mg(0.0251
mmol,収率62%)であった。この生成物を31P−
NMRにより分析したところ、138.39ppmと1
38.55ppmにピークが存在し、積分値は16:8
4であった。これは、この反応の立体選択率が84%で
あったことを示している。
【0037】実施例5:3’−O−〔2−シアノエトキ
シ(2−メチル−1−プロポキシ)フォスフィノ〕−
5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−
デオキシチミジンの立体選択的合成 前記実施例3と同様に、前記実施例2で調製した3’−
O−〔2−シアノエトキシ(3−クロロフェノキシ)フ
ォスフィノ〕−5’−O−(4,4’−ジメトキシトリ
チル)−2’−デオキシチミジンの後流出異性体(1
2.1mg,0.0157mmol)を水酸基含有化合
物である2−メチル−1−プロパノール(20μl)に
溶解し、トリエチルアミン(60μl)を加えた。10
分後に溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラ
フィー(展開系:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)によ
り精製を行った。収量は8.3mg(0.0116mm
ol,収率74%)であった。この生成物を31P−NM
Rにより分析したところ、138.39ppmと13
8.55ppmにピークが存在し、積分値は80:20
であった。これは、この反応の立体選択率が80%であ
ったことを示している。
【0038】実施例6:3’−O−(5’−O−(4,
4’−ジメトキシトリチル)−2’−O−デオキシチミ
ジン)−5’−O−(3’−ベンゾイル−2’−O−デ
オキシチミジン)−(3’,5’)−β−シアノエチル
フォスファイトの立体選択的合成 前記実施例2で調製した3’−O−〔2−シアノエトキ
シ(3−クロルフェノキシ)フォスフィノ〕−5’−O
−(4,4’−ジメトキシトリチル)−2’−デオキシ
チミジンの後流出異性体(60.7mg,0.0786
mmol)と水酸基含有化合物である3’−O−ベンゾ
イル−2’−O−デオキシチミジン(9.6mg,0.
0277mmol)をアセトニトリル(50μl)に溶
解し、トリエチルアミン(150μl)を加えた。75
分後に溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラ
フィー(展開系:酢酸エチル/ヘキサン=3/1)によ
り精製を行った。収量は21.0mg(0.0212m
mol,収率77%)であった。この生成物を31P−N
MRにより分析したところ、138.55ppmと13
8.78ppmにピークが存在し、積分値は65:35
であった。これは、この反応の立体選択率が65%であ
ったことを示している。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、キラルフォスファイト
骨格の立体選択的な生成方法が提供され、得られたキラ
ルフォスファイト化合物を用いてホスホロチオエート型
オリゴヌクレオチドの立体制御した合成に利用すること
ができる。
【0040】前記実施例1〜6の生成物の化学構造を以
下に示す。 (1)実施例1の生成物
【化4】
【0041】(2)実施例2の生成物
【化5】
【0042】(3)実施例3〜5の生成物
【化6】
【0043】(4)実施例6の生成物
【化7】 (OBzはベンゾイル基である)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07M 7:00

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I): (R1 O)(R2 O)(R3 O)P (I) (式中、R1 はヌクレオシド基又はヌクレオチド基であ
    り、R2 はアルキル基又は置換されたアルキル基であ
    り、R3 は芳香族炭化水素基又は置換された芳香族炭化
    水素基である)で表されるフォスファイト化合物。
  2. 【請求項2】 R2 が、β−シアノエチル基又はメチル
    基である請求項1記載の化合物。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の一般式(I)で表される
    フォスファイト化合物のリン原子におけるR異性体とS
    異性体の混合物からR異性体とS異性体とを分離し、分
    離したいずれか一方の異性体と一般式(II): R4 OH (II) (式中、R4 はヌクレオシド基、ヌクレオチド基、アル
    キル基又は置換されたアルキル基であるが、但し、R
    1 、R2 及びR4 は各々異なった置換基であるものとす
    る)で表される水酸基含有化合物とを、塩基の存在下で
    反応させることを特徴とする、一般式(III) : (R1 O)(R2 O)(R4 O)P (III) (式中、R1 、R2 及びR4 は前記と同じ意味である
    が、但し、R1 、R2 及びR4 は各々異なった置換基で
    あるものとする)で表されるキラルフォスファイト化合
    物の立体選択的な製造方法。
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