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JPH0798840B2 - 尿由来の抗血液疑固物質、その製法およびそれを含有する医薬組成物 - Google Patents

尿由来の抗血液疑固物質、その製法およびそれを含有する医薬組成物

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JPH0798840B2
JPH0798840B2 JP1337187A JP33718789A JPH0798840B2 JP H0798840 B2 JPH0798840 B2 JP H0798840B2 JP 1337187 A JP1337187 A JP 1337187A JP 33718789 A JP33718789 A JP 33718789A JP H0798840 B2 JPH0798840 B2 JP H0798840B2
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靖之 国広
亮 田中
道雄 市村
昭夫 植村
伸雄 大澤
英 持田
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Mochida Pharmaceutical Co Ltd
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Mochida Pharmaceutical Co Ltd
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  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はヒト尿中の新規な抗血液凝固物質、その製法な
らびにそれを有効成分として含有することを特徴とす
る、血液凝固能異常に係わる疾患の予防剤及び治療剤に
関する。
[従来技術] 現在、抗血液凝固剤としてはヘパリンやアンチトロンビ
ンIIIが使用されている。また、血栓溶解剤としては、
尿または培養腎細胞から分離されたウロキナーゼや、β
溶連菌より抽出されたストレプトキナーゼなどが実用に
供されており、さらに最近では、組織プラスミノーゲン
アクチベーターも使用され始めている。
しかし、これらの物質は、出血傾向等の副作用を有し、
作用が抗血液凝固あるいは血栓溶解のいずれかに偏って
いる。
基礎研究の分野で、近年、N.L.Esmonらにより、線溶を
促進するプロテインCの活性化促進作用と血液凝固阻害
作用とを有する物質が家兎肺組織抽出物に存在すること
が報告され、トロンボモジュリンと命名された(J.Bio
l.Chem.257:859,1982)。トロンボモジュリンは血管内
皮細胞上に存在するトロンビンレセプターであり、トロ
ンボモジュリンと結合したトロンビンは血液凝固作用を
失い、トロンビン−トロンボモジュリン複合体はプロテ
インCを活性化することにより抗凝固作用を示すことが
丸山らにより報告されている(J.Clin.Invest.75:987,1
985)。すなわち、トロンボモジュリンは血液凝固阻害
作用と線溶促進作用の両方の作用を発揮する可能性が有
り、臨床応用が期待されている。
トロンボモジュリンはタンパク質であるから、臨床応用
にあたっては、抗原性の少ないヒト由来のものを用いる
べきである。現在までは、ヒトのトロンボモジュリンに
ついては、以下のような取得例が報告されている。な
お、分子量については、断りのない限りドデシル硫酸ナ
トリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAG
E)により、非還元状態での測定値を示した。
H.H.Salemらは、ヒト胎盤よりトロンボモジュリンを精
製し、分子量75Kと報告した(J.Biol.Chem.259:12246,1
984)。丸山らは、ヒト肺よりトロンボモジュリンを精
製し、その性質は胎盤のものと同じであると報告した
(J.Clin.Invest.75:987,1985)。また、青木らは、ヒ
ト胎盤からトロンボモジュリンを精製し、分子量71Kと
報告した(Thromb.Res.37:353,1985および特開昭60-199
819号)。さらに、鈴木らは、ヒト血小板よりトロンボ
モジュリンを部分精製し、分子量を78Kと決めた上で、
電気泳動上の挙動、トロンビンとの親和性およびプロテ
インCとの基質親和性より、血小板、胎盤および肺血管
内皮細胞のトロンボモジュリンは互いに等しい性質を持
つことを報告した(J.Biochem.104:628,1988)。
また、前記のヒト・トロンボモジュリンと類似の性質を
有する物質については、以下のような存在例が報告され
ている。
H.Ishiiらはヒト血漿から部分精製し、分子量63Kと54K
のものが存在することを示した。また、尿中にも類似の
物質が存在することを示した(J.Clin.Invest.75:2178,
1985)。さらに、平本らは尿中には、分子量105K,63K,6
0K,33K,31Kおよび28K(何れも還元・非還元の別が不
明)のものが排泄されることを報告した(日本薬学会第
108年会講演要旨集,425頁,演題番号6F05,11-1,198
8)。その他、尿中からの取得例として、分子量200K,48
Kおよび40Kの混合物(特開昭63-30423号)、および、39
Kおよび31K(特開昭63-146896号)のものが報告されて
いる。
一方、遺伝子工学の手法により、鈴木らはヒト肺cDNAラ
イブラリーから、トロンボモジュリンの遺伝子をクロー
ニングし、全遺伝子構造を解明し、557残基のアミノ酸
配列を明らかにした(EMBO Journal 6:1891、1987)。
さらに、M.Zushiらは、トロンボモジュリン分子の一部
分に相当する種々のペプチドを遺伝子工学的に産生し、
そのプロテインC活性化能を測定することにより、トロ
ンボモジュリン様活性がアミノ末端から345-462番目の
アミノ酸残基に限局されており、その部分が1部でも欠
けると活性を失うことを示した(J.Biol.Chem.264:1035
1、1989および第12回国際血栓止血学会抄録334頁、演題
番号1039、1989)。
[発明が解決しようとする課題] 従来報告されているヒト・トロンボモジュリンは、ヒト
胎盤、ヒト肺あるいはヒト血小板由来であり、これらを
用いて大量のトロンボモジュリンを得るのは原料の供給
の面から大変困難である。さらに、これらのトロンボモ
ジュリンを可溶化するには界面活性剤が必要であり、取
扱いに難点がある上、医薬品としても界面活性剤の混入
は好ましくない。従って、大量に入手が可能で、水に易
溶なトロンボモジュリン様物質が望まれる。
また、従来のトロンボモジュリン様物質は、蛋白単位重
量当りのプロテインC活性化能や抗血液凝固活性が十分
高くないため、より生物活性が高く、医薬品として応用
した際により有用性の高い新規なトロンボモジュリン様
物質が望まれている。
一方、従来の尿からのトロンボモジュリン様物質の精製
方法では、アプロチニンやベスタチンなどの蛋白分解酵
素阻害剤を用いて分解を防止しているが、尿中にはこれ
らの蛋白分解酵素阻害剤では、事実上完全に阻害されな
いウロペプシンなどの酵素も含まれるため、精製過程に
おけるトロンボモジュリン様物質の分解を完全に阻止す
ることは困難であり、得られる収量が少ないという問題
点がある。
さらに、トロンボモジュリンは糖タンパク質であり、遺
伝子工学の手法による合成法では、完全にヒトと同じ糖
鎖を持った分子を得ることができない。従って、その違
いが副作用など好ましくない性質をもたらす恐れがある
ため、より天然に近いトロンボモジュリンを得ることが
望まれている。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは、ヒト尿中に存在する抗血液凝固物質の取
得法について鋭意検討した結果、既に報告されている尿
中トロンボモジュリン様物質とは分子量的に異なり、プ
ロテインCの活性化能や血液凝固抑制作用が従来のトロ
ンボモジュリン様物質に比べて著しく高く、かつ、より
優れた薬理作用を有する、新たなトロンビン結合性の抗
血液凝固物質を精製・取得することに成功し、本発明を
完成した。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、ヒト尿由来の新規なトロンビン結合性の抗血
液凝固物質とその製法、ならびにそれを有効成分として
含有することを特徴とする、血液凝固能異常に係わる疾
患の予防及び治療剤に関するものである。
本発明の抗血液凝固物質(以後本発明物質と呼び、後述
のTM1あるいはTM2を示す)は、ヒトの新鮮尿またはその
濃縮液を、pH8.3±0.3に調整し、析出した沈澱物を除去
した後に、pHを7.3±0.2に調整し、60±5℃、15±5分
間加熱処理を行った後、イオン交換クロマトグラフィ
ー、トロンビンをリガンドとしたアフィニティークロマ
トグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィーのうち
から選ばれる少なくとも1つを用いて製造することがで
きる。
すなわち、健康な男子の新鮮尿をpH8〜9、好ましくpH
8.3±0.3に調整して一部の蛋白分解酵素を不活性化した
後、析出した沈澱物を除去し、必要に応じて分画分子量
1万〜4万の限外濾過膜等を用いて濃縮する。ついで、
pH5〜10、好ましくはpH7.3±0.2に調整した後に、蛋白
分解酵素を不活性化するため、50〜70℃で5〜45分間、
好ましくは60±5℃で15±5分間処理し、pH5.5〜7.5、
好ましくはpH6.5±0.2にコンディショニングした陰イオ
ン交換樹脂カラムに通して活性画分を吸着させる。つい
で、pH2〜4.5、好ましくpH4.0±0.05の緩衝液で活性画
分を溶出する。溶出液を、透析により脱塩あるいは分画
分子量1万〜4万の限外濾過膜で脱塩濃縮した後、トロ
ンビンをリガンドとしたアフィニティカラムに通し、0.
05〜0.8M NaCl、好ましく0.1〜0.7M NaClを含む洗浄液
で洗浄後0.9〜2.0M NaCl、好ましく1.0±0.05M NaClを
含む溶出液で活性画分を溶出する。溶出液を脱塩濃縮し
た後、必要に応じてトロンビンをリガンドとしたアフィ
ニティーカラムで上記と同様の操作を繰り返す。
次に脱塩濃縮した活性画分を、ゲル濾過カラムに通し
て、溶出される本発明物質(TM1およびTM2)に相当する
活性画分をそれぞれ採取する。これらの各画分を、それ
ぞれ必要に応じて繰り返しゲル濾過カラムに通し、活性
を有する画分を分取すれば、本発明物質はおのおの純粋
な形で得ることができる。
また、アフィニティーカラムにて溶出した画分を脱塩濃
縮後、非還元状態のSDS-PAGEで分離し、本発明物質をそ
れぞれ純粋な形で得ることもできる。
一方、必要に応じ陽イオン交換クロマトグラフィー、吸
着クロマトグラフィーあるいは疎水クロマトグラフィー
を、陰イオン交換クロマトグラフィー、トロンビンをリ
ガンドとしたアフィニティークロマトグラフィーあるい
はゲル濾過クロマトグラフィー等の他に用いることもで
きる。
得られた本発明物質は、60±2℃で10時間処理をするこ
とによりウイルスを不活性し、医薬品としてより適した
状態にすることができる。
上述した精製過程で用いる陰イオン交換樹脂としては、
DEAEセルロース、DEAEセファロース、DEAEセルロファイ
ン、DEAEトヨパールなどがあり、トロンビンをリガンド
としたアフィニティカラムは、セルロース、アガロー
ス、デキストランなどの担体に臭化シアンを用いてトロ
ンビンを結合させた後、ジイソプロピルフルオロフォス
フェート(DFP)、フェニルメタンスルフォニルフロリ
ド(PMSF)などで処理したものを使用する。ゲル濾過用
の樹脂としては、セファクリルS−200、セファクリル
S−300、セファデックスG150、セファデックスG100、
セファデックスG200、トヨパールHW55、バイオゲルP10
0、バイオゲルP150、セファロース6Bなどを用いること
ができる。
上記の方法により、本発明物質をそれぞれ純粋な形で得
ることができる。本発明物質を得る過程で、類似した性
質を持つ別物質(TM3およびTM4)を得ることもできる。
かくして得られる本発明物質およびその類似物質は、次
の性質を有する。
(1) 分子量 TM1 72,000±3,000 TM2 79,000±3,000 TM3 94,000±3,000 TM4 114,000±3,000 測定方法:Laemmliの方法(Nature 227、680、1970)に
準じ、0.1%(W/V)SDSを含む7.5%ポリアクリルアミド
ゲルを用いた電気泳動により非還元状態で測定した。分
子量標準品として、分子量測定キット(生化学工業製、
ゲル濾過用)およびフォスフォリラーゼB(ベーリンガ
ーマンハイム社製)を用い、7mAで20時間電気泳動を行
った。
(2) アミノ酸組成:(mol%) アスパラギン酸 9.5±2.0 トレオニン 4.0±1.5 セリン 5.1±1.5 グルタミン酸 10.9±2.5 プロリン 9.3±1.5 グリシン 11.0±3.0 アラニン 11.7±3.0 システイン 8.0±4.0 バリン 5.9±1.5 メチオニン 1.1±0.5 イソロイシン 2.8±1.5 ロイシン 7.5±2.0 チロシン 1.6±1.5 フェニルアラニン 3.7±1.5 ヒスチジン 2.5±1.0 リジン 0.8±0.5 アルギニン 4.6±1.5 測定方法:本発明物質(TM1およびTM2)1mgを用いてMoo
reらの方法(Methods in Enzy mol.6:819,1963)に準じ
て完全酸加水分解した後、アミノ酸分析装置(ベックマ
ン社製)によりアミノ酸組成分析を行った。
なお、本方法で測定されるアスパラギン酸量は蛋白質中
のアスパラギンとアスパラギン酸量の和であり、グルタ
ミン酸量はグルタミンとグルタミン酸量の和である。ト
リプトファンは本法では測定できない。
本発明物質のTM1およびTM2は同一のアミノ酸組成を有す
る。
(3) 末端アミノ酸配列 本発明物質(TM1およびTM2)のN末端側およびC末端側
のアミノ酸配列の分析結果を下に示す。
N末端:Ala-Pro-Ala-Glu-Pro-Gln-Pro-Gly− −Gly-Sey-Gln-Cys-Val-Glu-His-Asp −Cys-Phe-Ala-Leu-Tyr-Pro-Gly-Pro −Ala-Thr-Phe-Leu− C末端:−Leu-Ala-Arg [Ala:アラニン残基 Pro:プロリン残基 Glu:グルタミン酸残基 Gln:グルタミン残基 Gly:グリシン残基 Ser:セリン残基 Cys:システイン残基 Val:バリン残基 His:ヒスチジン残基 Asp:アスパラギン酸残基 Phe:フェニルアラニン残基 Leu:ロイシン残基 Tyr:チロシン残基 Thr:トレオニン残基 Arg:アルギニン残基をそれぞれ表わす] 測定法:本発明物質各25mgをC.H.Hirsらの方法(Method
s in Enzymol.11、199、1967)に準じて還元カルボキシ
メチル化した後、脱塩し、アミノ酸配列分析用試料とし
た。
N末端アミノ酸配列分析は、気相アミノ酸配列自動分析
装置(アプライドバイオシステムズ社製、470A型)によ
り行い、C末端アミノ酸配列分析は、S.Yokoyamaらの方
法(Biochem.Biophys Acta.397:443、1975)に準じてカ
ルボキシペプチダーゼP(ペプチド研究所)処理して、
遊離するアミノ酸を高速液体クロマトグラフィーを用い
たアミノ酸分析装置(日本分光社製)により定量分析す
ることにより行った。
本発明物質のTM1およびTM2は同一のアミノ酸配列を有す
る。
この結果から解るとおり、本発明物質のN末端アミノ酸
配列は、これまで明らかにされているヒト・トロンボモ
ジュリンの報告と全く一致するが、C末端側のアミノ酸
配列は、これまでの報告にあるものとは異なり、今回の
結果である−Leu-Ala-Argは鈴木らの報告の454-456番目
のアミノ酸残基の部分に該当する。すなわち、本発明物
質のC末端は、鈴木らの主張する活性最小単位の345-46
2番目のアミノ酸配列を有するペプチドのC末端より、
6アミノ酸残基短い部分に該当する。このことは、トロ
ンボモジュリン様物質の活性の発現には、彼らの主張す
るアミノ酸配列345-462残基の全てが必須でないことを
示している。またヒト・トロンボモジュリンにおいて
は、本発明物質のC末端から2番目に含まれている455
番目のAlaのみがValに変わった相同変異体が知られてお
り、本発明はこの変異体物質をも含む。
(4) 糖含量 TM1 中性糖 :5.5±1.0 アミノ糖:2.2±1.0 シアル酸:2.8±1.5 TM2 中性糖 :6.2±1.0 アミノ糖:3.1±1.0 シアル酸:3.8±1.5 測定方法:中性糖はフェノール硫酸法(Nature168:107,
1951)により、アミノ糖は本発明物質を4M HCl溶液中で
100℃、4時間処理後、Boasらの方法(J.Biol.chem.20
4:553,1953)に従い定量時の妨害物質を除去し、遠心濃
縮機による減圧乾固(60℃)を行って塩酸を除去した
後、Blixらの方法(Acta Chem.Scand.2:467,1948)(El
son-Morgan法のBlix変法)により、またシアル酸は0.1M
HCl溶液中で80℃、1時間処理後、Warrenらの方法(J.
Biol.Chem.234:1971,1959)により、それぞれ定量し
た。なお、結果は重量%で示した。
(5) 紫外吸収 280nmにおける1%水溶液の1cm光路長の吸光度 TM1 7.7±1.0 TM2 6.7±1.0 測定方法:本発明物質の凍結乾燥品10mgを1mlの蒸留水
に溶解し、さらに蒸留水を用いて適当な倍率に希釈した
後、1cm光路長のセルを用いて、分光光度計(日立製作
所製:U−3200型)で波長280nmにおける吸光度を測定し
た。測定値に希釈倍率を乗じて、値を求めた。
(6) 等電点 TM1 3.9±0.2 TM2 3.8±0.2 TM3 3.8±0.2 TM4 3.7±0.2 測定方法:アンフォライト(LKB社製、pH2.5〜4.5)を
用いた等電点電気泳動法により測定した。泳動条件は50
0Vで40時間とした。各フラクションについてpHを測定す
ると共に、透析した後に、別項に記載した方法によりプ
ロテインC活性化能を測定し、活性ピークの溶出される
pHを求めた。
(7) 安定性 本発明物質の安定性について検討した結果を第1表に示
した。
1から6の条件については、本発明物質TM1またはTM2を
60μg/mLの濃度で25℃,150分間処理した。また、7の条
件については本発明物質を各60μg/mLの濃度でpH7.5で
処理した。いずれの場合も処理後100倍に希釈してトロ
ンビン共存下でのプロテインCの活性化能を測定した。
測定方法は、別項に述べる方法を用いた。活性残存率は
非処理検体を100%とした時の処理検体の残存活性で示
した。
本発明物質は還元剤中では失活したが、変成剤中(1%
SDS、6M塩酸グアニジンおよび8M尿素水溶液中)では安
定であった。また、pH2ならびにpH10の条件下と60℃、3
00分の加熱条件下では安定であった。
(8) 溶解性 本発明物質(TM1およびTM2)は、室温において少なくと
も30mg/mLの濃度まで蒸留水に溶解する。
以上のように、本発明物質は従来単離されたトロンボモ
ジュリン様物質とは異なる分子量を示す新規物質であ
る。また溶解するのに界面活性剤を必要としない点で従
来のトロンボモジュリンより有用な特徴を有する。
本発明物質は以下のような作用を有する。
(1) トロンビンに対する親和性(抗トロンビン作
用) a) DIP−トロンビンアガロースを用いるクロマトグ
ラフィー処理で、本発明物質TM1およびTM2はほぼ100%
吸着された。
b) 牛トロンビン(1U/mL,持田製薬社製)100μLと
本発明物質TM1またはTM2を含む溶液100μLを混和し、3
7℃で30分間加温した後、ヒトフィブリノーゲン(2mg/m
L)100μLを加え、コアギュロメーター(アメルング社
製)にて凝固時間を測定した。結果を第2表に示す。
この結果に示されるように、本発明物質はトロンビンと
結合し、その凝固活性を著しく抑制する作用を有する。
第2表の結果は、本発明物質の抗トロンビン作用がすで
に報告されているヒト・トロンボモジュリンに比べ、数
十倍以上強いことを示している。このことは、例えば下
記のような比較によって裏付けることができる。
第3表に特開昭62-169728号公報記載のヒト胎盤由来ト
ロンボモジュリン様物質についての凝固時間の測定結果
を引用して示す。さらに、同公報の記載によれば、この
ヒト胎盤由来トロンボモジュリン様物質は既存のヒト・
トロンボモジュリンより2倍以上強力であるとの記載が
あり、第2表と第3表の比較から、本発明物質は既存の
トロンボモジュリン様物質あるいはトロンボモジュリン
よりも強力な抗トロンビン作用を有すると考えられる。
また、ヒト尿中トロンボモジュリン様物質の抗凝固作用
についてのデータを特開昭63-30423号公報より引用して
第4表に示す。第2表と第4表との比較によっても、本
発明物質が既存のトロンボモジュリン様物質あるいはト
ロンボモジュリンよりも強力な作用を有することが明ら
かである。
(2) プロテインC活性化能 トロンビン共存下でのプロテインCの活性化能を合成基
質Boc-Leu-Ser-Thr-Arg-MCA(財団法人蛋白質研究奨励
会ペプチド研究所製)を用い、ウサギトロンボモジュリ
ン(アメリカンダイアグノスティカ社製)を標準物質と
して測定した。すなわち、0.1M トリス塩酸緩衝液(pH
7.5)60μLに牛トロンビン(持田製薬社製)10U/mL溶
液を20μL添加し、上記緩衝液で適当濃度(0〜15μg/
mL)に希釈したウサギ肺トロンボモジュリンもしくは本
発明物質(TM1またはTM2)10μLを添加し、さらにヒト
プロテインC(アメリカンダイアグノスティカ社製)の
500μg/mL溶液を10μL添加する。37℃で30分間反応し
た後、反応液にヒトアンチトロンビンIII(ミドリ十字
社製)1U/mLとヘパリン(持田製薬社製)10U/mLの等量
混合液を150μL添加して混和後、さらに、37℃で15分
間反応する。ついで、反応液に前記合成基質0.1mM溶液
を250μL添加して、37℃で10分反応後に、20%酢酸溶
液500μLを添加して反応を停止する。その後、反応液
を蛍光光度計(日立製作所製)を用いて、励起波長380n
m、発光波長460nmで蛍光強度を測定する。ウサギ肺トロ
ンボモジュリンについて得られた反応液の蛍光強度から
検量線を作成し、それを用いて、本発明物質のプロテイ
ンC活性化能をウサギ肺トロンボモジュリンに換算した
力価として算出した。その結果、TM1は、2.3mg力価/mg
蛋白、TM2は2.2mg力価/mg蛋白の比活性を有することが
わかった。なお、蛋白質濃度はLowryらの方法(J.Biol.
Chem.193:265,1951)に従って測定した。この結果に示
されるように、本発明物質はトロンビン共存下で著しい
プロテインC活性化能を有し、しかも、その作用は既存
のトロンボモジュリンに比べ、より強力であることが確
認された。
(3) 抗血液凝固活性 健常人クエン酸添加乏血小板血漿100μLと、本発明物
質を含む溶液(10〜1000μg力価/mL)10μLとを混和
し、37℃で2分間加温した後、ヒトトロンビン(ミドリ
十字社製)(2U/mL)100μLを加え、凝固時間を測定し
た。その結果を3例の平均値として第5表に示す。
この結果に示されるように、本発明物質は強力な血液凝
固時間延長作用を示した。
次に本発明物質のin vivoにおける抗血液凝固作用を実
験例にて示す。
(実験例 1) ラットエンドトキシンDIC(汎発性血
管内凝固)モデルにおける有効性 吉川らの方法(日本血液学会雑誌、第45巻、第3号、63
3〜640頁、1982)に準じて実験を行なった。すなわち、
体重160〜200gの雌性ウィスター系ラットをペントバル
ビタールナトリウムにより麻酔し、生理食塩水に溶解し
たリポポリサッカライド(ディフコ社製)を、25mg/kg
の用量で、左大腿静脈より4時間かけて一定の速度で持
続注入してDICモデルを作成した。同時に本発明物質TM
1、あるいはヒト胎盤トロンボモジュリンの1.2mg蛋白/k
gを0.1%ヒト血清アルブミン及び0.14MのNaClを含む0.0
1Mリン酸緩衝液(pH7.0)(ヒト胎盤トロンボモジュリ
ンについては0.005%ルブロール含有)に溶解して4時
間かけて一定速度で持続注入した。持続注入前及び注入
終了後に頚静脈より血液を採取し、血小板数及び血漿フ
ィブリノーゲン量の測定を行った。対照群として、薬物
を含まない溶媒をリポポリサッカライドと同時にラット
に持続注入した。その結果を持続注入前の測定値に対す
る抑制率として第1図に示す。なお、縦軸の抑制率
(%)は次式で示される。
抑制率(%)=〔(A−B)÷A〕×100 但し、A:コントロール群の減少量 B:投与群の減少量 DICの病態の指標である血小板数及び血漿フィブリノー
ゲン量の減少は、本発明物質の投与により顕著に抑制さ
れた。この作用は、ヒト胎盤トロンボモジュリンに比較
して明らかに強力なものであり、in vivoにおいても本
発明物質は既存のトロンボモジュリンよりも優れた抗凝
固活性を有することが示された。また、鈴木らが遺伝子
工学的に生産させたトロンボモジュリン様物質は、既存
の組織抽出トロンボモジュリンと同じ活性を示す(EMBO
Journal 6:1891,1987および特開平1-6219号)ことか
ら、本発明物質が、遺伝子工学的に合成されたトロンボ
モジュリン様物質よりも強力が活性を有することは自明
である。
(実験例2) ラットトロンボプラスチンDIC(汎発性
血管内凝固)モデルにおける有効性 大野らの方法(Thrombosis Res.24:445,1981)に準じて
実験を行なった。すなわち、体重240〜270gの雄性ウィ
スター系ラットをカルバミン酸エチルにより麻酔し蒸留
水に溶解したトロンボプラスチン(シンプラスチン
ルガノテクニカ社製)を200mg/kgの用量で20分間持続注
入してDICモデルを作成した。本発明物質あるいは、ヒ
ト胎盤トロンボモジュリン0.25mg蛋白/kgを0.1%ヒト血
清アルブミン、0.14MNaCl及び0.01%ルブロールを含む
0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解して、トロンボプラ
スチン投与開始30分前より90分間かけて一定速度で持続
注入した。薬物持続注入前、及び注入終了1時間後に頸
静脈より血液を採取し、血小板数、及び血漿フィブリノ
ーゲン量の測定を行なった。対照群として薬物を含まな
い溶媒を薬物投与時と同様の方法で持続注入した。その
結果を対照群に対する抑制率として第2図に示す。な
お、縦軸の抑制率(%)は第1図の記載と同じ式で表わ
される。
DICの病態の指標である血小板数、及び血漿フィブリノ
ーゲン量の減少は、本発明物質の投与により顕著に抑制
された。この作用は、ヒト胎盤トロンボモジュリンに比
較して明らかに強力なものであり、in vivoにおいても
本発明物質は既存のトロンボモジュリンよりも優れた抗
凝固活性を有することが示された。
(実験例 3) マウスにおける急性毒性 本発明物質の急性毒性を調べた。10匹のddY系雄性マウ
スを用いて、本発明物質のTM1またはTM2を200mg力価/kg
の用量にて静脈内投与し、7日後までの観察を行なった
が、著明な毒性や死亡例は1例も認められなかった。
以上の説明及び実験結果から明らかなように、本発明物
質は強力な抗血液凝固作用を有し、in vivoにおいても
既存のトロンボモジュリンよりも優れた抗凝固活性を示
し、さらに毒性も低いことから、例えば、DIC、各種血
栓症、末梢血管閉塞症、心筋梗塞、脳梗塞、一過性脳虚
血発作、妊娠中毒症、肝不全、腎不全など、血液凝固能
異常に係わる疾患の治療および予防に有効である。
本発明物質は、薬剤として一般的に用いられる適当な担
体または媒体、例えば滅菌水や生理食塩水、植物油、無
害性誘起溶媒等、さらには必要に応じて賦形剤、着色
剤、乳化剤、懸濁剤、安定化剤または保存剤等と適宜組
合せて、患者に効果的に投与するのに適した医薬用製剤
として、注射剤、吸入剤、座剤、好ましくは注射剤に調
製することができる。本発明物質を注射剤として用いる
場合には、一日1回ないし6回に分割して、一度にある
いは持続的に患者に投与される。その一日投与量は、本
発明物質0.05〜500mg力価、好ましくは0.1〜10mg力価で
あるが、患者の年齢、体重、症状等に応じて適宜増減す
ることが出来る。
さらに、本発明の抗血液凝固物質は、人工血管、人工臓
器、カテーテルなどの医用器材の表面に架橋剤などを用
いて結合・吸着させて使用することができる。これによ
り、医用器材表面での血液凝固を防ぐことができる。
[実施例] 次に本発明物質の製造方法を実施例により具体的に示す
が、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例 1) フェノール等の防腐剤を使用して採取した健康な男子の
新鮮尿100Lを、10%NaOHでpH8.5に調整し、析出した沈
殿物を除去した。次いで、尿のpHを4M HClでpH5.5に調
整した後、アクリロニトリル繊維で濾過し尿中のウロキ
ナーゼを吸着除去し、通過尿を分画分子量4万の限外濾
過膜を使用して脱塩濃縮した。pHを7.3に調整した後、6
0℃で15分間処理した。0.068M NaClを含有する0.05Mリ
ン酸緩衝液(pH6.5)で予めコンディショニングしてお
いたDEAEセルロース(ワットマン社製)の300mLカラム
に濃縮尿を通過させて活性画分を吸着させ、コンディシ
ョニングに使用したと同じ緩衝液750mLで洗浄した後、
0.05M NaClを含む酢酸緩衝液(pH4.0)で活性画分を溶
出した。
溶出液は、分画分子量3万の限外濾過膜で濃縮し、2M N
aOHでpH7.5に調整し、0.1M NaCl、1mMベンザミジン塩酸
塩および0.5mM CaCl2を含む0.02Mトリス塩酸緩衝液(pH
7.5)で予めコンディショニングしたDIP−トロンビン−
アガロースの2.5mLカラムを通過させて活性画分を吸着
させた。次いで、コンディショニングに使用したと同じ
緩衝液25mLで洗浄した後、1M NaCl、1mMベンザミジン塩
酸塩および0.5mM EDTAを含む0.02Mトリス塩酸緩衝液(p
H7.5)で溶出し、この溶出液をコンディショニングに使
用したと同じ緩衝液に対して透析後、再度前回と同様の
条件にコンディショニングしたDIP−トロンビン−アガ
ロースクロマトグラフィーで精製した。2回目のDIP−
トロンビン−アガロースクロマトグラフィーにおいても
同容のカラムを用い、コンディショニングで使用した緩
衝液10mLで洗浄した後に、10mLの0.8M NaCl、1mMベンザ
ミジン塩酸塩および0.5mM CaCl2を含む0.02Mトリス塩酸
緩衝液(pH7.5)で洗浄し、1M NaCl、1mMベンザミジン
塩酸塩および0.5mM EDTAを含む0.02Mトリス塩酸緩衝液
(pH7.5)で活性画分を溶出した。
溶出液は、分画分子量3万の限外濾過膜で濃縮し、あら
かじめ0.14M NaClを含む0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で
コンディショニングしておいたセファクリルS−300
(ファルマシアファインケミカル社製)の500mLカラム
でゲル濾過して、SDS-PAGEで分子量72,000±3,000およ
び79,000±3,000に相当する活性画分をそれぞれ採取し
た。各画分を、再度前回と同様の条件にコンディショニ
ングした同容のセファクリルS−300でゲル濾過して、
活性を有する画分を分画分取した。
以上の製造方法により、最終的に得られた活性画分は、
ウサギ肺トロンボモジュリンに換算してTM1では247μg
力価、TM2では166μg力価であった。
この様にして得られた本発明物質、および参考例に示す
ヒト胎盤トロンボモジュリンの非還元状態でのSDS-PAGE
の結果を第3図に示す。図中に5、6および4の符号で
示すとおり、本発明物質であるTM1(第3図中5)およ
びTM2(同6)は、それぞれ胎盤トロンボモジュリン
(同4)とは明らかに異なる分子量を有する。またそれ
ぞれが単一バンドを示す。
次に本発明物質を含有する製剤の実施例を示す。
(実施例 2) TM1 20mg(力価) 精製ゼラチン 50mg リン酸ナトリウム 34.8mg 塩化ナトリウム 81.8mg マンニトール 25mg 上記成分を注射用蒸留水10mLに溶解し、無菌濾過した後
に1.0mLずつ無菌バイアルに分注し、凍結乾燥して、注
射用製剤を調製した。
(実施例 3) TM2 40mg(力価) アルブミン 20mg リン酸ナトリウム 34.8mg 塩化ナトリウム 81.8mg マンニトール 25mg 上記の各成分を秤量し、実施例2と同様の方法にて凍結
乾燥製剤を調製した。
(参考例) ヒト胎盤トロンボモジュリンの取得例 特開昭60-199819号の方法に準じ、ヒト胎盤より、トロ
ンボモジュリンを精製した。すなわち、ヒト胎盤12kg
(30個分)を、0.25Mシュークロース、1mMベンザミジン
塩酸塩を含む0.02Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で洗浄し
た後、肉挽機にて破砕し、均質化した。均質化した懸濁
液を3000回転で40分間遠心分離し、得られた沈澱物を上
記緩衝液に懸濁させ、10分間撹拌後、再度遠心分離して
沈澱物を分取した。以上の操作を、1回あたり20Lの緩
衝液を用いて、合計3回繰り返し行い、分取した沈澱物
を、0.25Mシュークロース、1mMベンザミジン塩酸塩およ
び0.5%(V/V)トリトンX100(シグマ社製)を含む60L
の0.02Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で抽出した。得られ
た抽出液中の総タンパク質量は46.7gであった(Lowry法
による、以下同じ)。粗抽出液60Lを、0.1M NaCl、0.5m
M CaCl2、1mMベンザミジン塩酸塩および0.5%(V/V)ト
リトンX−100を含む0.02Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)
でコンディショニングにしたDIP−トロンビン−アガロ
ースカラム(4φ×16cm)に吸着させ、コンディショニ
ングに用いたのと同じ緩衝液2Lで洗浄した。次いで、1M
NaCl、0.5mM EDTA、1mMベンザミジン塩酸塩および0.5
%(V/V)トリトンX−100を含む0.02Mトリス塩酸緩衝
液(pH7.5)で溶出した。溶出量は650mLであり、得られ
た蛋白質量は1.7gであった。この溶出液を限外濾過器
(ミリポア社製、分画分子量3万)を使用して脱塩濃縮
し、再度上記と同様にコンディショニングした同容のDI
P−トロンビン−アガロースカラムに吸着させた。次い
で、0.4M NaCl、0.5mM CaCl2、1mMベンザミジン塩酸塩
および0.5%トリトンX−100を含む150mLの0.02Mトリス
塩酸緩衝液(pH7.5)で洗浄した後、0.5mM EDTA、1mMベ
ンザミジン塩酸塩および0.5%トリトンX−100を含む0.
02Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に、NaCl(0.4〜1M)を
加えた溶液を用いて、濃度勾配法により溶出し、30mL毎
に分画した。目的とする分画の液量は合計で1290mLで、
蛋白質量は68mgであった。次いで、この溶出液を限外濾
過器(ミリポア社製、分画分量3万)を使用して着塩濃
縮し、予め0.05%トリトンX−100、0.14M NaClを含む
0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)でコンディショニングした
S−300(ファルマシア社製)カラム(2.6φ×90cm)で
ゲル濾過し、目的とする画分を捕集した。取得した胎盤
トロンボモジュリンは蛋白質量として3.1mgであった。
[発明の効果] 本発明物質は、トロンビンと結合することにより、トロ
ンビンの作用を打ち消して血液凝固抑制および血小板凝
集抑制作用を発揮すると同時に、プロテインCを活性化
してプロテインCが有しているとされる血液凝固抑制作
用、血栓溶解作用をも発現するため、血栓形成抑制、血
栓溶解、抗DICなど、広範囲にわたる血液凝固能異常の
係わる疾患に対する予防及び治療効果が期待される。
また、本発明物質は、従来単離精製されたことのない新
規な物質であり、過去に報告されているトロンボモジュ
リン様物質に比べてトロンビン結合能およびプロテイン
C活性化能が強力で、より少量で抗血液凝固作用ならび
にDICなどの病態モデルでの有効性を示す。in vivoにお
ける動物モデルでの有用性について本発明物質は、胎盤
トロンボモジュリンより優れている。従って、血液凝固
能異常のある血栓症やDICなどの疾患に対する予防薬あ
るいは治療薬として医薬品に応用した際に、従来の物質
よりもより強力な効果が期待でき、あるいは、より少量
の投与で同程度の効果が期待されるため、副作用発現の
危険性がより少なく、また、より経済的に使用すること
ができる。また、現在では治療が困難である疾患の治療
が可能になるなど、全く新しい効果も期待される。
また、本発明物質は、ヒトの尿から精製して得られる天
然の物質であるため、遺伝子工学の手法により得られる
トロンボモジュリン様物質において心配されるようなア
ナフィラキシーショックなどの副作用がなく、医薬品と
してより安全に使用することができる。
さらに、尿由来の本発明物質は、胎盤・肺などの組織抽
出トロンボモジュリンの生体投与時の問題点である界面
活性剤を使用する必要がないため、医薬品としてより安
全に使用することができる。
本発明の抗血液凝固物質は、上記のような医薬品として
の用途以外に、人工血管、人工臓器、カテーテルなどの
医用器材の表面に架橋剤などを用いて結合・吸着させ
て、血液凝固を防ぐ目的でも用いることができる。
一方、本発明物質は、従来の方法に比べて大量に入手可
能なヒト尿を原料とし、しかも尿よりウロキナーゼ等の
有用物質を分離した後に目的物を分離精製できることか
ら、工業上極めて効率的に得ることが可能である。
本発明の製造方法は、ベスタチンやアプロチニンなどの
蛋白分解酵素の阻害剤の代りに、アルカリ処理や熱処理
を行うことによって、目的物の分解を防ぐ方法を採用し
たため、従来完全には抑制されていなかった精製過程で
の分解が押えられ、新規な抗血液凝固物質を、より効率
良く精製・取得することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明物質TM1、また参考例として取得した
ヒト胎盤トロンボモジュリンのラットエンドトキシシDI
Cモデルにおける有効性を検討した結果を示したグラフ
である。縦軸の抑制率(%)は次式で示される。 抑制率(%)=〔(A−B)÷A〕×100 但し、A:コントロール群の減少量 B:投与群の減少量 第2図は、本発明物質TM1およびTM2、また参考例として
取得したヒト胎盤トロンボモジュリンのラットトロンボ
プラスチンDICモデルにおける有効性を検討した結果を
示したグラフである。なお、縦軸の抑制率(%)は第1
図と記載と同じ式で表される。第3図は、本発明物質TM
1およびTM2とヒト胎盤トロンボモジュリンの非還元状態
でのSDS-PAGEの泳動パターンを示した図面である。
フロントページの続き (72)発明者 大澤 伸雄 静岡県駿東郡長泉町中土狩564―5 ドミ ールT402号 (72)発明者 持田 英 東京都豊島区駒込2―5―4 (56)参考文献 特開 昭60−199819(JP,A) 特開 昭63−146898(JP,A) 国際公開87−50(WO,A) J.Biochem. Vol.104 (1988) P.628−632

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次に示す性質を有するヒト尿由来の抗血液
    凝固物質。 a.トロンビンと親和性を有し、トロンビンのプロテイン
    C活性化能を促進する作用を有する。 b.アミノ酸組成:mol(%)で表示 アスパラギン酸 9.5±2.1 トレオニン 4.0±1.5 セリン 5.1±1.5 グルタミン酸 10.9±2.5 プロリン 9.3±1.5 グリシン 11.0±3.0 アラニン 11.7±3.0 システイン 8.0±4.0 バリン 5.9±1.5 メチオニン 1.1±0.5 イソロイシン 2.8±1.5 ロイシン 7.5±2.0 チロシン 1.6±1.5 フェニルアラニン 3.7±1.5 ヒスチジン 2.5±1.0 リジン 0.8±0.5 アルギニン 4.6±1.5 [Mooreらの方法に準じた完全酸加水分解によって得ら
    れるアミノ酸組成のmol%] c.末端アミノ酸配列: N末端: Ala-Pro-Ala-Glu-Pro-Gln-Pro-Gly− Gly-Sey-Gln-Cys-Val-Glu-His-Asp− Cys-Phe-Ala-Leu-Tyr-Pro-Gly-Pro− Ala-Thr-Phe-Leu− C末端: −Leu-Ala-Argまたは−Leu-Val-Arg [Ala:アラニン残基 Pro:プロリン残基 Glu:グルタミン酸残基 Gln:グルタミン残基 Gly:グリシン残基 Ser:セリン残基 Cys:システイン残基 Val:バリン残基 His:ヒスチジン残基 Asp:アスパラギン酸残基 Phe:フェニルアラニン残基 Leu:ロイシン残基 Tyr:チロシン残基 Thr:トレオニン残基 Arg:アルギニン残基をそれぞれ表わす] d.安定性: pH安定性:pH2〜10の範囲で安定。 熱安定性:60℃、300分処理で安定。 変性剤安定性:1%(W/V)ドデシル硫酸ナトリウム(SD
    S)、6M塩酸グアニジンおよび8M尿素溶液中でそれぞれ
    安定。 e.分子量:72,000±3,000 [非還元状態でのSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳
    動法(PAGEにより測定)] f.等電点:3.9±0.2
  2. 【請求項2】次に示す性質を有する請求項1記載のヒト
    尿由来の抗血液凝固物質。 a.糖含量(重量%): 中性糖:5.5±1.0 [フェノール硫酸法で測定] アミノ糖:2.2±1.0 [Elson-Morgan法(Blix変法)で測定] シアル糖:2.8±1.5 [Warren法で測定] b.紫外吸収:7.7±1.0 [280nmにおける1%水溶液の1cm光路長の吸光度]
  3. 【請求項3】次に示す性質を有するヒト尿由来の抗血液
    凝固物質。 a.トロンビンと親和性を有し、トロンビンのプロテイン
    C活性化能を促進する作用を有する。 b.アミノ酸組成:mol(%)で表示 アスパラギン酸 9.5±2.0 トレオニン 4.0±1.5 セリン 5.1±1.5 グルタミン酸 10.9±2.5 プロリン 9.3±1.5 グリシン 11.0±3.0 アラニン 11.7±3.0 システイン 8.0±4.0 バリン 5.9±1.5 メチオニン 1.1±0.5 イソロイシン 2.8±1.5 ロイシン 7.5±2.0 チロシン 1.6±1.5 フェニルアラニン 3.7±1.5 ヒスチジン 2.5±1.0 リジン 0.8±0.5 アルギニン 4.6±1.5 [Mooreらの方法に準じた完全酸加水分解によって得ら
    れるアミノ酸組成のmol%] c.末端アミノ酸配列: N末端: Ala-Pro-Ala-Glu-Pro-Gln-Pro-Gly− Gly-Sey-Gln-Cys-Val-Glu-His-Asp− Cys-Phe-Ala-Leu-Tyr-Pro-Gly-Pro− Ala-Thr-Phe-Leu− C末端: −Leu-Ala-Argまたは−Leu-Val-Arg d.安定性: pH安定性:pH2〜10の範囲で安定。 熱安定性:60℃、300分処理で安定。 変性剤安定性:1%(W/V)ドデシル硫酸ナトリウム(SD
    S)、6M塩酸グアニジンおよび8M尿素溶液中でそれぞれ
    安定。 e.分子量:79,000±3,000 [非還元状態でのSDS-PAGEにより測定] f.等電点:3.8±0.2
  4. 【請求項4】次に示す性質を有する請求項3記載のヒト
    尿由来の抗血液凝固物質。 a.糖含量(重量%): 中性糖:6.2±1.0 [フェノール硫酸法で測定] アミノ糖:3.1±1.0 [Elson-Morgan法(Blix変法)で測定] シアル糖:3.8±1.5 [Warren法で測定] b.紫外吸収:6.7±1.0 [280nmにおける1%水溶液の1cm光路長の吸光度]
  5. 【請求項5】ヒト尿をpH8.3±0.3に調整し、析出した沈
    澱物を除去した後に、pHを7.3±0.2に調整し、60±5
    ℃、15±5分間加熱処理を行った後、トロンビンをリガ
    ンドとして用いるアフィニティクロマトグラフィー、イ
    オン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグ
    ラフィーのうちから選ばれる少なくとも1つを用いるこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヒト尿
    由来の抗血液凝固物質の製造方法。
  6. 【請求項6】請求項1に記載のヒト尿由来の抗血液凝固
    物質を有効成分として含有することを特徴とする、血液
    凝固能異常に係わる疾患の予防及び治療剤。
  7. 【請求項7】請求項2に記載のヒト尿由来の抗血液凝固
    物質を有効成分として含有することを特徴とする、血液
    凝固能異常に係わる疾患の予防及び治療剤。
  8. 【請求項8】請求項3に記載のヒト尿由来の抗血液凝固
    物質を有効成分として含有することを特徴とする、血液
    凝固能異常に係わる疾患の予防及び治療剤。
  9. 【請求項9】請求項4に記載のヒト尿由来の抗血液凝固
    物質を有効成分として含有することを特徴とする、血液
    凝固能異常に係わる疾患の予防及び治療剤。
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