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JPH0789874A - 血管内皮損傷部位を認識する担体 - Google Patents

血管内皮損傷部位を認識する担体

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Publication number
JPH0789874A
JPH0789874A JP6107006A JP10700694A JPH0789874A JP H0789874 A JPH0789874 A JP H0789874A JP 6107006 A JP6107006 A JP 6107006A JP 10700694 A JP10700694 A JP 10700694A JP H0789874 A JPH0789874 A JP H0789874A
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JP
Japan
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drug
site
drug carrier
carrier according
vascular endothelial
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Application number
JP6107006A
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English (en)
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JP3570561B2 (ja
Inventor
Kazuo Kawahara
一夫 川原
Hideki Uchiyama
英樹 内山
Junji Kimura
順治 木村
Koichiro Miyajima
孝一郎 宮嶋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Terumo Corp
Original Assignee
Terumo Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Terumo Corp filed Critical Terumo Corp
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Publication of JPH0789874A publication Critical patent/JPH0789874A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【構成】生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する
化合物を少なくとも1つの構成成分とし、前記生理的p
H範囲で陽電荷を帯びる部位の少なくとも一部が表面に
存在する、薬剤を内包した担体。前記化合物としては、
グルカミン誘導体、ガラクトサミン誘導体、グルコサミ
ン誘導体等、薬剤としては血管内皮損傷部位の診断およ
び治療薬が挙げられる。 【効果】中性あるいはアニオン性の物質の封入率が高
く、血管内皮損傷部位へのターゲッティング性が非常に
高い。また、安全性も非常に高い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、血管内皮損傷部位を認
識し、当該血管内皮損傷部位を診断または治療するため
の薬物を封入してなる薬物担体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】血管、特に大動脈の内皮に生じる損傷
が、血管平滑筋細胞の過剰増殖などを生じて動脈硬化症
の発生の原因のひとつであることは広く知られるところ
である(ロスら、ニュー イングランド ジャーナル
オブ メディシン(R.Rosset al,N.En
gl.J.Med.),314,488(198
6))。このような傷害を生ずる原因としては血栓形
成、あるいは過酸化反応による内皮細胞の傷害などがあ
るが、最近冠動脈の狭窄部位を物理的力により圧迫、あ
るいは、切削、あるいは焼き切りなどの方法で拡大する
療法が実用化されるにともない、このような物理的処置
により傷害された部位において組織の肥厚が起こり、い
ったん拡大された血管腔が再び狭窄するいわゆる再狭窄
が問題とされている。
【0003】特に、狭窄した冠動脈を経皮的に血管内に
導入したカテーテルを用いて物理的圧迫力により拡大す
る方法(PTCA)は、狭心症等の虚血性心疾患の治療
法として非常に広範囲に普及しており、処置後30〜5
0%の患者に生じる再狭窄の予防は当該疾患の治療にと
って最も重要な課題となっている。この再狭窄は主とし
て血管平滑筋細胞の過剰増殖によって引き起こされるた
め、この増殖を抑える作用を持つ薬物による再狭窄の防
止が試みられている。しかし現在までのところ、シャー
レ上に培養した平滑筋細胞の増殖を抑制する効果を持つ
薬物は多数見つけられるが、臨床的に効果のある薬物は
皆無である(キャッセルス、サーキュレーション(W.
Casscells,Circulation),86
(3),724(1992))。
【0004】このように臨床的に効果が認められない原
因のひとつとして、当該薬物を静脈内投与や経口投与に
よって全身的に投与した場合には、当該薬物の全身への
作用を起こすことのない投与量によっては、血管内皮傷
害部位において平滑筋細胞の増殖を抑制するに充分な濃
度を確保することができないことがあげられる。例えば
ヘパリンはこのような作用を有する薬物であるが、全身
的に投与する場合には、出血傾向などの作用のため、充
分量の薬物の投与は困難である。しかしこれを血管局所
に投与すればそのような作用無しに血管肥厚を抑制し得
ることは岡田らによる実験で確かめられている(岡田知
久ら,ディ ディ エス(DDS),7(1),51,
(1992))。彼らは、開胸して、当該血管の外部に
ヘパリン入りのゲルを外から張り付ける方法で血管局所
における薬物濃度の充分な上昇とそれによる治療効果を
確認している。
【0005】しかしながらこのような投与方法は、余り
に生体にとって侵襲が大きすぎ、特に低侵襲な治療法で
あることがその実用的価値のひとつとなっているPTC
A療法と組み合わせる方法としては到底認められないも
のである。すなわち当該分野においては、経口、静脈
内、あるいは最も侵襲度の高い場合でもカテーテルによ
る局所投与など侵襲度の低い投与法によっても血管皮傷
害部位に特異的にかつ充分な濃度で薬物を集積させるこ
とができる薬物担体、すなわち血管内皮傷害部位への特
異的集積度が高く、かつ高い薬物包有力を有する薬物担
体が望まれているが、そのような薬物担体はこれまで実
現されていなかった。
【0006】近年、リポソーム、エマルジョン、リピッ
ドマイクロスフェア、ナノパーテイクルなどの閉鎖小胞
を薬物担体としてドラッグデリバリーシステムに応用し
ようとする研究が盛んに行われるようになってきた。
【0007】しかし、これら閉鎖小胞を上記分野におけ
る薬物担体として用いる上での最大の問題点として、体
内動態の制御が極めて困難であることが上げられる。特
に閉鎖小胞は肝臓や脾臓などの細網内皮系(RES)に
補足されやすくそのため、RES以外の体内器官へのタ
ーゲッティングは非常に難しく、特に、血管内皮が損傷
している部位へのターゲッティングはまったく考慮され
てこなかった。
【0008】さらに、閉鎖小胞に物質を封入しようとす
る際、一般的に用いられている膜材から構成される閉鎖
小胞では高濃度の薬物を封入することができずに、結果
としてこれら閉鎖小胞のメリットを生かしきれないばか
りか、製造コスト増をまねくなどの問題や、血液中では
安定性がすこぶる悪く、閉鎖小胞同志が血液中の蛋白質
を介して凝集してしまうなどの問題がこれら薬物担体の
実用化を困難なものとしてきた。
【0009】これらの問題点を克服するために、様々な
工夫が考案されている。例えば、膜構成成分としてステ
アリルアミンなどの荷電物質を用いることにより血中滞
留性の向上をもたらしめる方法(特開昭63−7782
4号)、シアル酸、グルクロン酸などの糖およびその誘
導体により小胞の表面を修飾する方法(バイオケミカバ
イオフィジック アクタ(BBA),1126,255
(1992)、ディディ エス(DDS),7,345
(1992))、ポリエチレングリコールのごとき親水
性高分子の誘導体を蛋白質吸着抑制剤として用いる方法
を開示している(特開平2−149512号、特開平3
−218309号)。また、膜構成成分として、グルコ
サミン誘導体を用いたものなどが、開示されている(特
開平4−159216号)。
【0010】しかしこれらの方法のどれによっても、血
管内皮傷害部位への特異的集積が高く、高い薬物包有力
を有する薬物担体は実現されていなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、薬物封入率が高く、体内安定性に優れ、なおか
つ、例えばPTCA施行後や動脈硬化病巣などの血管内
皮が損傷している部位を認識することのできる薬物担体
を供給することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的は以下の本発明
によって解決される。
【0013】(1)血管内皮損傷部位を認識する担体で
あって、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する
化合物を少なくとも1つの構成成分とし、前記生理的p
H範囲で陽電荷を帯びる部位が前記担体の表面に存在す
ることを特徴とする薬物担体。
【0014】(2)前記担体構成成分に、さらに親水性
高分子誘導体を含み、前記親水性高分子誘導体の親水性
高分子部位の少なくとも一部が前記担体の表面に存在す
る上記(1)に記載の薬物担体。
【0015】(3)内部に血管内皮損傷部位を診断およ
び/または治療するための薬物を封入してなる上記
(1)乃至(2)に記載の薬物担体。
【0016】(4)前記担体の径が0.02〜250μm
の大きさを有する微小粒子よりなる上記(1)乃至
(3)に記載の薬物担体。
【0017】(5)前記担体が、巨大分子、微集合体、
微粒子、微小球、ナノ小球、リポソームおよびエマルジ
ョンのうちの少なくとも一つから構成される上記(1)
乃至(4)に記載の薬物担体。
【0018】(6)前記担体がリン脂質あるいはその誘
導体、および/またはリン脂質以外の脂質あるいはその
誘導体、および/または安定化剤、および/または酸化
防止剤、および/またはその他の表面修飾剤を含有する
上記(1)乃至(5)に記載の薬物担体。
【0019】(7)前記生理的pH範囲で陽電荷を帯び
る部位を有する化合物が、少なくとも一つ以上の脂肪族
第一,二級アミノ基、アミジノ基、芳香族第一、二級ア
ミノ基を有する化合物、及びさらに前記化合物に1つ以
上の水酸基を有する残基と結合させた化合物からなる上
記(1)乃至(6)に記載の薬物担体。
【0020】(8)前記生理的pH範囲で陽電荷を帯び
る部位を有する化合物が、アミノ糖である上記(1)乃
至(6)に記載の薬物担体。
【0021】(9)上記アミノ糖が、グルコサミン、ガ
ラクトサミン、マンノサミン、イノラミン酸、イノラミ
ン酸エステルなどの単糖、およびこれらの遊離型ないし
各種グリコシドからなる上記(8)に記載の薬物担体。
【0022】(10)上記アミノ糖が、キチンなどのオ
リゴ糖、多糖、およびこれらの遊離型ないし各種グリコ
シドからなる上記(8)に記載の薬物担体。
【0023】(11)前記親水性高分子誘導体が、ポリ
エチレングリコールの、長鎖脂肪族アルコール、ステロ
ール、ポリオキシプロピレンアルキル、またはグリセリ
ン脂肪酸エステルとの誘導体である上記(2)乃至(1
1)に記載の薬物担体。
【0024】(12)前記血管内皮損傷部位を診断およ
び/または治療するための薬物が、電気的に中性あるい
はアニオン性である上記(3)乃至(11)に記載の薬
物担体。
【0025】(13)前記血管内皮損傷部位を診断およ
び/または治療するための薬物が、抗炎症剤、抗癌剤、
酵素剤、抗生物質、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホ
ルモン剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、平滑筋細
胞の増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、ケミカルメ
デイエーターの遊離抑制剤、あるいは血管内皮細胞の増
殖または抑制剤である上記(3)乃至(12)に記載の
薬物担体。
【0026】(14)前記血管内皮損傷部位を診断およ
び/または治療するための薬物が、グリコサミノグリカ
ン及びその誘導体である上記(3)乃至(12)に記載
の薬物担体。
【0027】(15)前記血管内皮損傷部位を診断およ
び/または治療するための薬物が、オリゴおよび/また
は多糖、およびそれらの誘導体である上記(3)乃至
(12)に記載の薬物担体。
【0028】(16)前記血管内皮損傷部位を診断およ
び/または治療するための薬物が、X線造影剤、放射性
同位元素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬等
の各種体内診断薬である上記(3)乃至(12)に記載
の薬物担体。
【0029】(17)前記血管内皮損傷部位を診断およ
び/または治療するための薬物が、ヘパリン、テオフェ
リン、サイクリックAMP(cAMP)、カプトプリ
ル、パパベリン、フォルスコリンの中の少なくとも1つ
である上記(3)乃至(12)に記載の薬物担体。
【0030】本発明者らは、各種薬物担体の体内動態を
制御するファクターについて研究を進めていく過程にお
いて、まったく驚くべきことに、薬物担体表面に、生理
的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合物の、前
記生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位の少なくとも一
部を存在させると、薬物担体が血管内皮損傷部位へ集積
することを見出した。
【0031】また、さらに驚くべきことには、前記陽電
荷を帯びた部位を存在させた薬物担体の表面に、さらに
親水性高分子を存在させることによって、前記担体の血
管内皮損傷部位への集積性はまったく阻害されず、一方
で、担体の血液中での凝集の防止による血液中での安定
性の確保ならびにRES補足の回避による血中滞留性の
向上が可能になることを見い出し、本発明を完成させ
た。
【0032】従って、上記目的に沿う本発明は、表面に
生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有し、その内部
に血管内皮損傷部位を診断および/または治療するため
の薬物を封入してなる血管内皮損傷部位を認識する薬物
担体である。また、その表面にさらに親水性高分子が存
在する薬物担体である。
【0033】本発明の担体は粒径が0.02〜250μ
m、とりわけ0.05〜0.4μmの大きさが好ましい。
【0034】また、構造としては様々な形態が考えら
れ、限定する必要はないが、特にその内部に薬物を高濃
度封入することのできる潜在的機能を有する、巨大分
子、微集合体、微粒子、微小球、ナノ小球、リポソーム
およびエマルジョンのうちより少なくとも一つ以上から
なることが最も望ましい。
【0035】本発明において、薬物担体の構成成分とし
て生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合
物、さらには親水性高分子部位を有する親水性高分子誘
導体を有していればよいが、これら以外の構成成分とし
ては、上記の形態を形成できるものであれば特にその配
合に限定する必要はないが、その安全性や、生体内にお
いて安定性を考慮すると、リン脂質あるいはその誘導
体、リン脂質以外の脂質あるいはその誘導体、または安
定化剤、酸化防止剤、その他の表面修飾剤の配合が望ま
しい。
【0036】リン脂質としては、ホスファチジルコリン
(=レシチン)、ホスファチジルグリセロール、ホスフ
ァチジン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエ
タノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジ
ルイノシトール、スフィンゴミエリン、カルジオリビン
等の天然あるいは合成のリン脂質、またはこれらを常法
にしたがって水素添加したもの等を挙げることができ
る。
【0037】安定化剤としては、膜流動性を低下させる
コレステロールなどのステロール、あるいはグリセロー
ル、シュクロースなどの糖類が挙げられる。
【0038】酸化防止剤としては、トコフェロール同族
体すなわちビタミンEなどが挙げられる。トコフェロー
ルには、α,β,γ,δの4個の異性体が存在するが本
発明においてはいずれも使用できる。
【0039】その他の表面修飾剤としては、グルクロン
酸、シアル酸、デキストランなどの水溶性多糖類の誘導
体等が挙げられる。
【0040】生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有
する化合物に関しては、薬物担体の構造安定を損なうも
のでなければ特に限定されるものではないが、少なくと
も一つ以上の脂肪族第一,二級アミノ基、アミジノ基、
芳香族第一、二級アミノ基を有する化合物、及び前記化
合物に1つ以上の水酸基を有する残基と結合させた化合
物が挙げられる。
【0041】具体的には、前記化合物とパルミチン酸、
ステアリン酸等の長鎖脂肪族アルコール、ステロール、
ポリオキシプロピレンアルキル、またはグリセリン脂肪
酸エステル等の疎水性化合物との誘導体が好ましい。こ
れら誘導体は、疎水性化合物部位を薬物担体(例えばリ
ポソーム)の膜へ安定に挿入することができ、前記生理
的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を薬物担体の表面に存
在させることができる。
【0042】また、前記生理的pH範囲で陽電荷を帯び
る部位を有する化合物としては、アミノ糖が挙げられ、
前記アミノ糖としては、グルコサミン、ガラクトサミ
ン、マンノサミン、イノラミン酸、イノラミン酸エステ
ルなどの単糖、及びキチンなどのオリゴ糖、多糖、また
これらの遊離型ないし各種グリコシドが挙げられる。
【0043】前記アミノ糖は、疎水性化合物部位を薬物
担体(例えばリポソーム)の膜へ安定に挿入することが
でき、前記生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を担体
の表面に存在させることができる。
【0044】本発明において、生理的pH範囲とは、生
体内、主に血液中、細胞質及びそこに存在するオルガネ
ラの内部等のpH範囲であり、具体的にはpH4〜10
で、より好ましくはpH6〜8である。
【0045】本発明において、表面に存在させる親水性
高分子部位としては、薬物担体の構造安定を損なうもの
でなければ特に限定されるものではない。親水性高分子
としては様々なものが考えられる。例えば、ポリエチレ
ングリコール、デキストラン、プルラン、フィコール、
ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互
共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重
合体、合成ポリアミノ酸、アミロース、アミロペクチ
ン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチ
ン、カラギーナンなどである。その中でもポリエチレン
グリコールは血中滞留性を向上させる効果が顕著であ
り、最も望ましい。
【0046】また、前記親水性高分子は、長鎖脂肪族ア
ルコール、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキ
ル、またはグリセリン脂肪酸エステル等の疎水性化合物
と結合させた誘導体を用いることによって、疎水性化合
物部位を薬物担体(例えば、リポソーム)の膜へ安定に
挿入することができる。そのことにより、薬物担体表面
に親水性高分子を存在させることができる。
【0047】本発明において具体的に用いることができ
る親水性高分子誘導体としては、ポリエチレングリコー
ル−フォスファチジルエタノールアミン等が挙げられ
る。
【0048】本発明において、薬物担体に封入する薬剤
としては、内皮傷害部位の診断および/または治療の目
的に応じて薬学的に許容し得る薬理的活性物質、生理的
活性物質または診断用物質を用いることができる。
【0049】封入する薬剤の性質として、基本的にはど
の物質においても問題ないが、担体の表面が陽電荷を持
つ特徴から、電気的に中性あるいはアニオン性である物
質の方が高封入率が期待できる。
【0050】封入する薬剤の種類としては、薬物担体の
形成を損ねないかぎり特に限定されるものではなく、血
管内皮損傷部位における様々の反応を抑制し、正常な血
管組織へ誘導する薬物であれば何等の制限なく使用でき
る。具体的には、抗炎症剤、抗癌剤、酵素剤、抗生物
質、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホルモン剤、アン
ジオテンシン変換酵素阻害剤、平滑筋細胞の増殖・遊走
阻害剤、血小板凝集阻害剤、ケミカルメデイエーターの
遊離抑制剤、あるいは血管内皮細胞の増殖促進または抑
制剤等として使用可能なものが挙げられる。
【0051】特に、ヘパリンなどの硫酸化グリコサミノ
グリカン、オリゴおよび多糖およびそれらの誘導体は血
管内皮損傷部位において血管肥厚の原因である平滑筋細
胞の増殖・遊走を阻害する物質として有効である。その
他にも、テオフェリン、サイクリックAMP(cAM
P)、カプトプリル、パパベリン、フォルスコリンなど
が挙げられる。
【0052】しかし基本的には本発明の担体は、血管内
皮損傷部位に集積する性質を持つものであるから、その
部位の疾患の特徴に応じて、それに最適な薬物を選択す
ることにおいて何等の制限はない。特に傷害部位では、
血小板の活性化が起こり易く、また各種白血球の集積が
認められ様々のケミカルメデイエーターを放出して炎症
反応を引き起こしている。またこれら組織では、脂質の
過酸化や、脂質取り込みの亢進が起こることもよく知ら
れており、これら反応が複合的に進行して動脈硬化性の
病変を引き起こすものと考えられる。これらの現象の病
変形成への寄与は症例毎に各々異なると予想されること
から、これらの症状へ対応した薬物は全て本発明の対象
とすることができることは言うまでもない。
【0053】また、薬物治療に先立って、障害部位を特
定することは重要であり、この目的と使用し得る各種体
内診断薬(X線造影剤、放射性同位元素標識核医学診断
薬、核磁気共鳴診断用診断薬等)は、本発明の担体に封
入することにより血管障害部の特異的診断を可能にする
ものであり、前記診断薬も本発明の対象とすることがで
きることは言うまでもない。
【0054】本発明の薬物担体は常法によって容易に得
ることができるが、その一例を以下に示す。フラスコ内
に生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合物
及びリン脂質等の他の担体構成成分を、クロロホルム等
の有機溶媒により混合し、有機溶媒を留去後真空乾燥す
ることによりフラスコ内壁に薄膜を形成させる。次に、
当該フラスコ内に薬物を加え、激しく撹拌することによ
り、リポソーム分散液を得る。得られたリポソーム分散
液を遠心分離し、上清をデカンテーションし封入されな
かった薬物を除去することにより、薬物担体を分散液と
して得ることができる。また、上記の各構成成分を混合
し、高圧吐出型乳化機により高圧吐出させることにより
得ることもできる。
【0055】本発明の薬物担体は、静注などによって投
与可能であるが、特に好ましい方法はカテーテルを血管
内に挿入して、その先端を血管内皮損傷部位付近に導
き、当該カテーテルを通して投与する方法が好ましい。
【0056】本発明の薬物担体は、血中及び血管内皮損
傷部位での滞留性に優れており、1回の投与後、6時間
以上は血中に滞留し、3日以上は血管内皮損傷部位に安
定に滞留している。
【0057】また、本発明の薬物担体はPTCA術後な
どにより血管損傷が発生してから、特に1時間以内に投
与することが効果的である。なぜならば、血管損傷が発
生してから約1時間してから投与すると一時的に本発明
の薬物担体の血管損傷部位への集積が減少するためであ
る。これは、血小板等の血管損傷部位への付着の影響が
考えられる。したがって、本発明の薬物担体は血管損傷
が発生してから1時間以内に投与することが好ましい。
【0058】しかしながら、ある程度時間が経過すると
本発明の薬物担体の血管損傷部へ集積性は再び向上す
る。したがって、血管損傷発生後1時間以降の投与が無
効になる訳ではなく、その後の投与も有効である。
【0059】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説
明する。
【0060】(実施例1)式Iにその構造を示す6−o
−パルミトイル−メチル−D−ガラクトサミナイド(6
−o−palmitoyl−methyl−D−gal
actosaminide)を膜構成成分として含有す
るリポソームを下記の通りに調製した。
【0061】下記の3種類の膜構成成分を、それぞれク
ロロホルム溶液として容量50mlのナス型フラスコに
加え混合した。
【0062】・フォスファチジルコリン(濃度100m
M):840μl ・コレステロール(濃度100mM):240μl ・6−o−パルミトイル−メチル−D−ガラクトサミナ
イド(10mM):1200μl
【0063】
【化1】
【0064】さらに、クロロホルム10mlを加えた。
クロロホルムを留去した後、一晩真空乾燥することによ
りフラスコ内壁に脂質薄膜を形成した。次いで、100
μgのヘパリンを溶解させた300mMソルビトール/
10mM Tris−HCl緩衝液4mlをフラスコ内
に加え、激しく浸盪撹拌することにより、リポソーム
(MLV)分散液を得た。
【0065】この分散液を遠心分離(120,000
g、70分間)した。上清をデカンテーションし、未封
入のヘパリンを除去することにより、リポソームのペレ
ットを得た。このペレットを300mMソルビトール/
10mM Tris−HClに分散することにより、ヘ
パリンを封入した標記のリポソーム分散液を得た。
【0066】(参考例)本実施例に使用する6−o−パ
ルミトイル−メチル−D−ガラクトサミナイドは以下の
通りに作製した。
【0067】公知の手法に従って D−ガラクトサミナ
イドからN−ベンジルオキシカルボニル−メチル−D−
ガラクトサミナイドを得て、ピリジン(50ml)中に
当該N−ベンジルオキシカルボニル−メチル−D−ガラ
クトサミナイド(9.3g)とパルミトイルクロリド
(8ml)を加え、窒素ガス雰囲気下、室温で24時間
撹拌する。反応終了後、反応混合物を10%氷冷塩酸中
に注入し、酢酸エチルで抽出する。その後、抽出液を飽
和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、食塩水で洗浄
し、無水硫酸ナトリウム(Na2SO4)で乾燥した後、
溶媒を除去して粗生成物を得て、さらに酢酸エチル溶液
から再結晶してN−ベンジルオキシカルボニル−6−o
−パルミトイル−メチル−D−ガラクトサミナイド
(7.65g)を得た。
【0068】このN−ベンジルオキシカルボニル−6−
o−パルミトイル−メチル−D−ガラクトサミナイド
(1.35g)をメタノール(50ml)に溶解し、触
媒量の5%Pd−Cを加え、常温、常圧下で24時間接
触還元を行い、反応終了後これを濾過して溶媒を除去
し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製
して目的化合物の6−o−パルミトイル−メチル−D−
ガラクトサミナイド(874mg)を得た。このものの
下記に示すデータは式Iの構造を支持する。
【0069】m.p.:122〜124℃ 元素分析:実測値 C=64.24%,H=10.84
%,N=3.04% 計算値 C=64.00%,H=10.51%,N=3.
25%(C23436Nとしての計算値)
【0070】IR(KBr):3353cm-1,291
7cm-1,2854cm-1,1728cm-1,1462
cm-1 MS(FAB):435(M+1)
【0071】1H−NMR(DMSO-d6) δ(pp
m):5.15(n,1H),5.00(n,1H),
4.51(d,J=3.4Hz,1H),4.30(d,
J=10.6Hz,1H),4.04(dd,J=6.6
Hz,J=6.8Hz,1H),3.53(m,1H),
3.26(s,3H),3.10(m,2H),2.40
(m,1H),2.29(t,J=7.2Hz,2H),
1.51(m,2H),1.24(b,24H),0.8
6(t,J=6.0Hz,3H)。
【0072】(実施例2)6−o−パルミトイル−メチ
ル−D−ガラクトサミナイドおよび式IIにその構造を示
すポリエチレングリコール−フォスファチジルエタノー
ルアミン重合体(PEG−PE)を膜構成成分として含
有するリポソームの調製を下記の通りに調製した。
【0073】下記4種類の膜構成成分を、それぞれクロ
ロホルム溶液として容積50mlのナス型フラスコに加
え混合した。
【0074】・フォスファチジルコリン(濃度100m
M):840μl ・コレステロール(濃度100mM):240μl ・6−o−パルミトイル−メチル−D−ガラクトサミナ
イド(10mM):1200μl ・PEG−PE(濃度0.4W/V%):1000μ
l。
【0075】
【化2】
【0076】以下、上記実施例1と同様に操作し、ヘパ
リンを保持した標記のリポソーム分散液を得た。
【0077】(実施例3)式IIIにその構造を示すグル
カミンパルミトイルエステルを膜構成成分として含有す
るリポソームの調製を下記の通りに調製した。
【0078】下記4種類の膜構成成分を、それぞれクロ
ロホルム溶液として容積50mlのナス型フラスコに加
え混合した。
【0079】・フォスファチジルコリン(濃度100m
M):840μl ・コレステロール(濃度100mM):240μl ・グルカミンパルミトイルエステル(濃度10mM):
1200μl ・PEG−PE(濃度0.4W/V%):1000μ
l。
【0080】
【化3】
【0081】以下、上記実施例1と同様に操作し、ヘパ
リンを保持した標記のリポソーム分散液を得た。
【0082】(試験例1:ヘパリンの封入率の測定)実
施例1及び2において使用したヘパリンのリポソーム中
への封入率を次の様にして求めた。まず、遠心分離した
後の上清中におけるヘパリン量をカルバゾール法で定量
することにより、リポソーム中に封入されなかったヘパ
リン量を求めた。これをリポソーム調製にあたって最初
に添加したヘパリンの総量と比較することにより、リポ
ソーム中へのヘパリンの封入率を求めた。
【0083】比較のために、6−o−パルミトイル−メ
チル−D−ガラクトサミナイド及びPEG−PEを用い
ることなく上記実施例と同様の方法で調製したリポソー
ム分散液を調製した。そして、上記と同様の方法でヘパ
リンの封入率を求めた。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】以上の結果から明らかなとおり、生理的p
H範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合物、あるいは
生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合物及
び親水性高分子誘導体を含むリポソームはこれを含まな
い中性リポソームに比べて、ヘパリンの高い封入率を示
した。
【0086】また、表には記さないが本発明の他の生理
的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合物を含ん
だリポソームも同様な優れた結果を示した。
【0087】(試験例2:体内動態1)ウレタンで麻酔
されたSD雄ラットの大腿静脈より、実施例1及び2に
準じて調製されたカルボキシフルオレセイン(Carb
oxyfluorescein)100mMを封入させ
たリポソーム分散液500μlを静注した。経時的に血
液をエッペンドルフチューブに採取した。採取した血液
について蛍光強度を測定することにより、体内動態を測
定した。
【0088】また、比較のために、6−o−パルミトイ
ル−メチル−D−ガラクトサミナイド及びPEG−PE
を用いることなく、上記実施例に準じて調製されたリポ
ソーム分散液について、上記と同様の方法で体内動態を
測定した。結果を図1に示す。
【0089】図1から明らかなとおり、生理的pH範囲
で陽電荷を帯びる部位を有する化合物を膜構成成分とし
て含有せしめた本発明のリポソームは、それを含有しな
い薬リポソームに比べて、血中滞留性が高いことが確認
された。また、さらに親水性高分子(PEG−PE)に
より表面修飾されているリポソームは、生理的pH範囲
で陽電荷を帯びる部位を有する化合物のみの場合よりも
さらに血中滞留性が高いことが確認された。
【0090】また、図には記さないが本発明の他の生理
的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合物を含ん
だリポソームも同様な優れた結果を示した。
【0091】(試験例3:臓器分布1)ウレタンで麻酔
されたSD雄ラットの大腿静脈から2フレンチのバルー
ンカテーテルを挿入し、頚動脈部を5回擦過することに
より、血管内皮障害モデルを作成した。
【0092】擦過後直ちに大腿静脈より、実施例1及び
2に準じて調製されたカルボキシフルオレセイン(Ca
rboxyfluorescein)100mMを封入
させたリポソーム分散液500μlを静注した。3時間
後、16時間後、24時間後、3日後に頸動脈を採取し
た。採取した頸動脈からカルボキシフルオレスセインを
抽出し、蛍光強度を測定することにより頸動脈へのリポ
ソームの集積量を測定した。
【0093】さらに、頚動脈部を擦過しないラット大腿
静脈より、実施例1及び2に準じて調製されたカルボキ
シフルオレスイセン100mMを封入させたリポソーム
分散液500μlを静注した後、上記と同様の方法で頚
動脈へのリポソームの分布状況を測定した。
【0094】また、比較のために、6−o−パルミトイ
ル−メチル−D−ガラクトサミナイド及びPEG−PE
を用いることなく、上記実施例に準じて調製されたリポ
ソーム分散液について、上記と同様の方法で血管内皮障
害モデルの頸動脈へのリポソームの集積量を測定した。
【0095】血管内皮障害モデルにおける3時間後の実
施例1,2及び比較対照の結果を図2に、経時的に3日
間測定した実施例2の結果を図3に示す。また、図示し
ないが血管内皮が損傷していない場合の集積量は、比較
の血管内皮障害モデルの頸動脈へのリポソームの集積量
とほぼ同等であった。
【0096】以上の結果から明らかなとおり、生理的p
H範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合物、あるいは
生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合物お
よび親水性高分子誘導体を膜構成成分として含有せしめ
た本発明のリポソームは、それらを含有しないリポソー
ムに比べて血管損傷部位への集積性が高く、さらに内皮
が損傷していない血管と比べて血管損傷部位へ集積性が
高いことから血管損傷部位へのターゲッティング性に優
れている。
【0097】また、擦過後直ちに投与した場合、3日間
は血管損傷部に滞留されることが判った。
【0098】さらに同様なラットによる試験を実施例3
に準じて調製されたリポソームについて同様に行った結
果、図4に示す通り他の実施例と同様な優れた効果を示
した。
【0099】また、図には記さないが本発明の他の生理
的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合物を含ん
だ担体も同様な優れた結果を示した。
【0100】(試験例4:体内動態2)ラットの代わり
に去勢ブタ(30kg)を用いて試験例2と同様な実験
を行った。つまり、ケタミンで麻酔されたブタの大腿静
脈より、実施例2に準じて調製されたカルボキシフルオ
レセイン(Carboxyfluorescein)1
00mMを封入させたリポソーム分散液30mlを静注
した。経時的に血液を採取した。採取した血液から血漿
を得て、その血漿の蛍光強度を測定することにより体内
動態を測定した。
【0101】また、比較のために、6−o−パルミトイ
ル−メチル−D−ガラクトサミナイド及びPEG−PE
を用いることなく、上記実施例に準じて調製されたリポ
ソーム分散液について、上記と同様の方法で体内動態を
測定した。
【0102】その結果、試験例2と同様な優れた血中滞
留性を示し、本発明は大型動物であるブタにも有効であ
ることが示された。また比較対照も試験例2と同様な結
果であった。
【0103】(試験例5:臓器分布2)ケタミンで麻酔
された去勢ブタ(30kg)の大腿動脈から7.5フレ
ンチのバルーンカテーテルを挿入し、頚動脈部を5回擦
過することにより、血管内皮障害モデルを作成した。
【0104】大腿静脈より実施例2に準じて調製された
カルボキシフルオレセイン100mMを封入させたリポ
ソーム分散液30mlを静注した。3時間後にブタの頚
動脈を採取した。採取した頚動脈からカルボキシフロー
レスセンを抽出し、蛍光強度を測定することにより頚動
脈へのリポソームの分布状況を測定した。
【0105】さらに、頚動脈部を擦過しないブタについ
ても、大腿静脈より、実施例1及び2に準じて調製され
たカルボキシフルオレスセイン100mMを封入させた
リポソーム分散液30mlを静注した後、上記と同様の
方法で頚動脈へのリポソームの分布状況を測定した。
【0106】比較のために、PEG−PE、6−o−パ
ルミトイル−メチル−D−ガラクトサミナイドを用いる
ことなく上記実施例に準じて調製されたリポソーム分散
液について上記と同様の方法で頚動脈へのリポソームの
分布状況を測定した。
【0107】試験例3で行ったラットによる結果ととも
に図5に示す通り、優れた血管損傷部位へ集積性を示し
た。また、比較対照のリポソームは血管損傷部位へ集積
性は示さなかった。
【0108】以上の結果から、本発明はよりヒトに近い
血管を持つと言われ、かつ大型動物であるブタにも有効
であることが示された。また、図には記さないが本発明
の他の生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化
合物を含んだリポソームも同様な優れた結果を示した。
【0109】(試験例6:臓器集積性)ウレタンで麻酔
されたSD雄ラットの大腿動脈から2フレンチのバルー
ンカテーテルを挿入し、頚動脈部を5回擦過することに
より、血管内皮障害モデルを6群分作成した。
【0110】実施例2に準じて調製されたカルボキシフ
ルオレセイン100mMを封入させたリポソーム分散液
500μlをラット群別に大腿静脈より、擦過直後、
0.1、0.5、1、3、6、24時間後にそれぞれ静注
した。各群ともに投与後3時間後に頚動脈を採取した。
採取した頚動脈からカルボキシフルオレスセインを抽出
し、蛍光強度を測定することにより各群の頚動脈へのリ
ポソームの分布状況の変化を測定した。結果を図6に示
す。
【0111】その結果、擦過後1時間経過した付近で
は、一時的なリポソームの集積性の低下が観察される
が、それ以後はコンスタントに集積されることが判っ
た。すなわち、リポソームは血管損傷部が生じてから1
時間以内の投与が特に効果的であるが、血管損傷後1時
間の経過後においても効果があることが判った。
【0112】また、本発明の他の生理的pH範囲で陽電
荷を帯びる部位を有する化合物を含んだリポソームも同
様な結果を示した。
【0113】(試験例7:封入薬物別リポソーム製剤の
血管肥厚の抑制効果)実施例2のヘパリン入りリポソー
ムと同様にして、サイクリックAMP(cAMP)、カ
プトプリル、パパベリン、フォルスコリンを封入したリ
ポソーム製剤を作成した。コントロールには薬物未封入
のリポソームを用いた。
【0114】ウレタンで麻酔されたSD雄ラットの大腿
動脈から2フレンチのバルーンカテーテルを挿入し、頚
動脈部を4回擦過することにより、血管内皮障害モデル
を作成した。各薬物入りリポソーム製剤を尾静脈から7
日間にわたり投与した後、頚動脈を採取した。採取した
頚動脈の断面の中膜と内膜の面積比によって血管肥厚度
を求めた。算出方法を図7に示し、結果を表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】表2に示す通り、各薬物入りリポソーム製
剤は優れた血管肥厚の抑制効果を示した。
【0117】(試験例8:急性毒性)この試験の目的
は、本発明の薬物担体の毒性が、従来のものの毒性と比
較してどの程度であるかを知ることである。そのため
に、薬物未封入の状態で調製された本発明の薬物担体と
従来の薬物担体のそれぞれについて、ラットに対する致
死毒性試験を行った。
【0118】(被験液の調製) 1)6−o−パルミトイル−メチル−D−ガラクトサミ
ナイドを含有する本発明のリポソーム分散液 ヘパリンを加えなかった点を除き、実施例1と同様の方
法で、6−o−パルミトイル−メチル−D−ガラクトサ
ミナイド、PEG−PEを含有するリポソーム分散液を
得た。これを限外ろ過膜を用いて濃縮し、さらに必要に
応じて注射用滅菌蒸留水で希釈して被験液とした。
【0119】2)6−o−パルミトイル−メチル−D−
ガラクトサミナイド及びPEG−PEを含有する本発明
のリポソーム分散液 ヘパリンを加えなかった点を除き、実施例2と同様の方
法で、6−o−パルミトイル−メチル−D−ガラクトサ
ミナイド、PEG−PEを含有するリポソーム分散液を
得た。これを限外ろ過膜を用いて濃縮し、さらに必要に
応じて注射用滅菌蒸留水で希釈して被験液とした。
【0120】3)従来のリポソーム分散液 比較のために、6−o−パルミトイル−メチル−D−ガ
ラクトサミナイド、PEG−PEを用いることなく、実
施例と同様の方法で中性リポソーム分散液を得た。これ
を限外ろ過膜を用いて濃縮し、さらに必要に応じて注射
用滅菌蒸留水で希釈して被験液とした。
【0121】(方法)検疫した5週齢のSD雄性ラット
を1群3匹に区分し、腹腔内に上記の被験液2.0ml
を1回投与した。一方、溶媒対照群として、滅菌蒸留水
2.0mlを投与した。
【0122】被験液投与後、16日間にわたって少なく
とも1日1回、注意深く一般状態を観察して毒性徴候、
死亡状況を記録した。
【0123】(結果)表3に示す通りである。
【0124】
【表3】
【0125】上記の試験結果に示したように、本発明の
薬物担体については、観察期間中死亡例はなかった。し
かし、従来の薬物担体においては、投与開始後1日目か
ら体重が激減し、15日目までに表中に示した様に大半
が死亡した。これはその後の臓器所見から、従来の薬物
担体では血液中において血球成分等と会合あるいはリポ
ソーム同士の会合により、血中に凝集塊が生成され、肺
などに塞栓を形成してしまうことが原因であることが確
認された。この結果から、本発明の薬物担体は、従来公
知の薬物担体に比べて、極めて毒性が低く、安全性の高
いものであると言える。
【0126】また、表には記さないが本発明の他の生理
的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合物を含ん
だ担体も同様な優れた結果を示した。
【0127】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
薬物担体は、従来の薬物担体と比較して、中性あるいは
アニオン性の物質の封入率が高く、また、血管内皮損傷
部位へのターゲッティング性が非常に高い。また、安全
性も非常に高い。
【0128】このような特徴から、薬学的に許容し得る
薬理的活性物質、生理的活性物質または診断用物質を封
入させた本発明の新規薬物担体は、血管内皮損傷部位に
おける診断及び治療という目的に対して非常に効果的で
ある。例えば、ヘパリン、多糖類およびその硫酸化体、
ならびにテオフェリン、サイクリックAMP(cAM
P)、カプトプリル、パパベリン、フォルスコリンなど
を封入した場合は、血管内皮が損傷した部位における平
滑筋細胞の遊走を抑える血管肥厚防止薬として有用であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラットにおける本発明及び比較のリポソームの
血中滞留性を示す。
【図2】ラットにおける本発明及び比較のリポソームの
血管内皮損傷部位への集積性を示す。
【図3】ラットにおける本発明のリポソームの血管内皮
損傷部位での滞留性の経時的変化を示す。
【図4】ラットにおける本発明の他のリポソームの血管
内皮損傷部位での滞留性の経時的変化を示す。
【図5】ブタおよびラットにおける本発明及び比較のリ
ポソームの血管内皮損傷部位への集積性を示す。
【図6】血管損傷から投与までの時間と本発明のリポソ
ームの血管損傷部位への集積性を示す。
【図7】試験例7における血管肥厚度の求め方を示す。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】血管内皮損傷部位を認識する担体であっ
    て、生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位を有する化合
    物を少なくとも1つの構成成分とし、前記生理的pH範
    囲で陽電荷を帯びる部位が前記担体の表面に存在するこ
    とを特徴とする薬物担体。
  2. 【請求項2】前記担体構成成分に、さらに親水性高分子
    誘導体を含み、前記親水性高分子誘導体の親水性高分子
    部位の少なくとも一部が前記担体の表面に存在する請求
    項1に記載の薬物担体。
  3. 【請求項3】内部に血管内皮損傷部位を診断および/ま
    たは治療するための薬物を封入してなる請求項1乃至2
    に記載の薬物担体。
  4. 【請求項4】前記担体の径が0.02〜250μmの大き
    さを有する微小粒子よりなる請求項1乃至請求項3に記
    載の薬物担体。
  5. 【請求項5】前記担体が、巨大分子、微集合体、微粒
    子、微小球、ナノ小球、リポソームおよびエマルジョン
    のうちの少なくとも一つから構成される請求項1乃至請
    求項4に記載の薬物担体。
  6. 【請求項6】前記担体がリン脂質あるいはその誘導体、
    および/またはリン脂質以外の脂質あるいはその誘導
    体、および/または安定化剤、および/または酸化防止
    剤、および/またはその他の表面修飾剤を含有する請求
    項1乃至請求項5に記載の薬物担体。
  7. 【請求項7】前記生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位
    を有する化合物が、少なくとも一つ以上の脂肪族第一,
    二級アミノ基、アミジノ基、芳香族第一、二級アミノ基
    を有する化合物、及びさらに前記化合物に1つ以上の水
    酸基を有する残基と結合させた化合物からなる請求項1
    乃至請求項6に記載の薬物担体。
  8. 【請求項8】前記生理的pH範囲で陽電荷を帯びる部位
    を有する化合物が、アミノ糖である請求項1乃至請求項
    6に記載の薬物担体。
  9. 【請求項9】上記アミノ糖が、グルコサミン、ガラクト
    サミン、マンノサミン、イノラミン酸、イノラミン酸エ
    ステルなどの単糖、およびこれらの遊離型ないし各種グ
    リコシドからなる請求項8に記載の薬物担体。
  10. 【請求項10】上記アミノ糖が、キチンなどのオリゴ
    糖、多糖、およびこれらの遊離型ないし各種グリコシド
    からなる請求項8に記載の薬物担体。
  11. 【請求項11】前記親水性高分子誘導体が、ポリエチレ
    ングリコールの、長鎖脂肪族アルコール、ステロール、
    ポリオキシプロピレンアルキル、またはグリセリン脂肪
    酸エステルとの誘導体である請求項2乃至請求項11に
    記載の薬物担体。
  12. 【請求項12】前記血管内皮損傷部位を診断および/ま
    たは治療するための薬物が、電気的に中性あるいはアニ
    オン性である請求項3乃至請求項11に記載の薬物担
    体。
  13. 【請求項13】前記血管内皮損傷部位を診断および/ま
    たは治療するための薬物が、抗炎症剤、抗癌剤、酵素
    剤、抗生物質、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホルモ
    ン剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、平滑筋細胞の
    増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、ケミカルメデイ
    エーターの遊離抑制剤、あるいは血管内皮細胞の増殖ま
    たは抑制剤である請求項3乃至請求項12に記載の薬物
    担体。
  14. 【請求項14】前記血管内皮損傷部位を診断および/ま
    たは治療するための薬物が、グリコサミノグリカン及び
    その誘導体である請求項3乃至請求項12に記載の薬物
    担体。
  15. 【請求項15】前記血管内皮損傷部位を診断および/ま
    たは治療するための薬物が、オリゴおよび/または多
    糖、およびそれらの誘導体である請求項3乃至請求項1
    2に記載の薬物担体。
  16. 【請求項16】前記血管内皮損傷部位を診断および/ま
    たは治療するための薬物が、X線造影剤、放射性同位元
    素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬等の各種
    体内診断薬である請求項3乃至請求項12に記載の薬物
    担体。
  17. 【請求項17】前記血管内皮損傷部位を診断および/ま
    たは治療するための薬物が、ヘパリン、テオフェリン、
    サイクリックAMP(cAMP)、カプトプリル、パパ
    ベリン、フォルスコリンの中の少なくとも1つである請
    求項3乃至請求項12に記載の薬物担体。
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