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JPH0770794A - 複合亜鉛系電気めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

複合亜鉛系電気めっき鋼板及びその製造方法

Info

Publication number
JPH0770794A
JPH0770794A JP6136319A JP13631994A JPH0770794A JP H0770794 A JPH0770794 A JP H0770794A JP 6136319 A JP6136319 A JP 6136319A JP 13631994 A JP13631994 A JP 13631994A JP H0770794 A JPH0770794 A JP H0770794A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zinc
plating
steel plate
steel sheet
corrosion resistance
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP6136319A
Other languages
English (en)
Inventor
Masaya Kimoto
雅也 木本
Shinya Hikino
真也 引野
Yasushi Hosoda
靖 細田
Kiwamu Yoshida
究 吉田
Kiyoyuki Fukui
清之 福井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP6136319A priority Critical patent/JPH0770794A/ja
Publication of JPH0770794A publication Critical patent/JPH0770794A/ja
Pending legal-status Critical Current

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  • Chemically Coating (AREA)
  • Preventing Corrosion Or Incrustation Of Metals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 裸耐食性,塗装後の疵部耐食性や端面耐食
性,成形加工性,スポット溶接性に優れた安価な高耐食
性めっき処理鋼板及びその製造方法を提供する。 【構成】 耐食性めっき鋼板を、裸鋼板又は亜鉛系めっ
き鋼板の少なくとも片面上に“アルキン類,アルキノ−
ル類,アミン類もしくはその塩,チオ化合物,複素環化
合物,並びに芳香族カルボン酸化合物もしくはその塩か
ら選ばれた少なくとも1種の化合物を総計で 0.001〜10
wt%含有するめっき浴”から形成されたところの“C
(炭素)含有量が 0.001〜10wt%で付着量が 10mg/m2
〜 200g/m2の複合亜鉛系めっき皮膜層”を有して成る
構成とする。また、前記めっき浴を使用し、裸鋼板又は
亜鉛系めっき鋼板に対し“OFF時間が1msec 〜1se
c でデュ−ティ−比が0.5 以上であるパルス電流”での
電解、あるいは“周波数が1〜100Hzで電流変動幅が
±50%である電流波形の交流を重畳した直流電流”で
の電解にてめっきを施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、未塗装あるいは塗装
後の状態において優れた耐食性,成形加工性並びに溶接
性を示し、自動車防錆鋼板や家電製品用材料,建材等と
して好適な複合亜鉛系電気めっき鋼板及びその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】自動車をはじめ、家電製品,建
材等の分野では各種の表面処理鋼板が利用されてきた
が、近年、これら表面処理鋼板に対する防錆能力向上の
要望が一段と強くなってきており、例えば自動車用表面
処理鋼板の場合には、塩害地にて10年耐孔あき腐食や
5年耐外面錆を目標とする高耐食性が要求されている。
【0003】なお、従来の防錆鋼板としては亜鉛を主体
とするめっきを施した表面処理鋼板が一般的であった
が、このような防錆めっき鋼板はその耐食性の基本が亜
鉛の持つ犠牲防食作用にあるため、道路凍結防止用に岩
塩を散布されたような寒冷地における冬期の過酷な腐食
環境下では十分な防食性能を有しているとは言えなかっ
た。つまり、亜鉛は亜鉛単体では鋼板素地に比較して十
分に電気化学的に卑な電位を持つため、鋼板の犠牲防食
という観点からは十分であるが、逆に塩分の存在する条
件下ではその亜鉛の溶出速度が非常に速く、長期にわた
って鋼板の防錆効果を維持することができないという問
題があった。
【0004】そこで、これを改善するためZn−Fe合金や
Zn−Ni合金等のめっきを施した“Zn系合金めっき鋼板”
が使用されるようになってきた。この合金めっき皮膜
は、腐食が開始するとその電位が貴に移行する特性を有
しており、そのため素地鋼板との電位差が縮まって過酷
な腐食電流が流れるのが抑制されるので、長い防食寿命
を達成することができるわけである。しかしながら、Zn
−Fe合金電気めっき材では皮膜中のFe分が腐食する時に
赤錆を発生するという欠点があり、一方、Zn−Ni合金電
気めっき材では、皮膜中のNiが金属状態で残存するため
に腐食がある程度進行すると素地鋼板との電位関係が逆
転し、逆に素地鋼板の孔食を促進するという問題があっ
た。
【0005】これに対して、最近、防錆めっき層を2層
化することによって耐食性の更なる向上を図った複層め
っき鋼板が提案され(特開昭60−215789号公
報,特公昭58−15554号公報参照)、注目を集め
ている。しかし、近年の需要家が要求する製品性能を考
えた場合には、これらの複層めっき鋼板にも次のような
問題が指摘されていた。
【0006】即ち、前記特開昭60−215789号公
報に開示された複層めっき鋼板は、付着量が10〜30
0g/m2 のZnめっき層を下層に、Ni及び/又はCoの一方
又は両者の合計が15〜30wt%で、付着量が1〜20g/m2
のZn系合金めっき層を上層に配して成るものであるが、
この複層めっき鋼板に高い耐食性能を発揮させるために
は下層たるZnめっき層の高付着量化が必要であり、加工
性,加工後の耐食性,スポット溶接性等に問題が生じ
る。また、この複層めっき鋼板は、上層のZn系合金めっ
き層が高価なNiやCoを多く含むことから、コスト的にも
不利であった。
【0007】一方、特公昭58−15554号公報に記
載の複層めっき鋼板は、りん酸塩化成処理性や電着塗装
性を向上させる目的で上層にFe系フラッシュめっきを配
し、これに基づく塗膜密着性の向上効果による間接的な
高耐食性化を狙ったものであるが、このような複層めっ
き鋼板では裸耐食性の改善にはつながらない上、塗装後
の耐食性向上の程度も僅かでしかなく、耐食性は基本的
には下層であるZn系めっき層の特性及び付着量に依存す
るところが大きかった。
【0008】このようなことから、本発明が目的とした
のは、成形加工性やスポット溶接性の低下が起こらない
薄目付けでありながらも過酷な腐食環境に耐え、裸耐食
性,塗装後の疵部耐食性や端面耐食性等にも十分に優れ
たコストの安い高耐食性めっき処理鋼板を提供すること
である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成すべく鋭意研究を行ったところ、次のような知見
を得ることができた。 (a) 鋼板又は亜鉛系めっき鋼板を“インヒビタ−とし
て知られる腐食抑制有機化合物を含有させた亜鉛系めっ
き浴”中で電気めっきすると、その表面に形成されため
っき皮膜層には電析時に前記腐食抑制有機化合物が共析
していて“腐食抑制有機化合物が複合した亜鉛系めっき
皮膜層”となる。そして、この上層中の腐食抑制有機化
合物は複層めっき材が腐食環境に置かれて腐食する過程
でインヒビタ−として作用するため、めっき皮膜層中に
おける腐食抑制有機化合物の含有割合と該めっき皮膜層
の付着量が特定の範囲にあると著しい耐食性改善効果を
発揮し、従来の複層型めっき鋼板を凌駕する高耐食性を
確保することが可能となる。しかも、このようなめっき
鋼板は、成形加工性やスポット溶接性の点でも十分に満
足することができる。
【0010】(b) また、上記特定浴から形成された亜
鉛系電気めっき皮膜層の腐食抑制有機化合物の含有量
(共析量)は“めっき皮膜層中のC(炭素)含有量(共
析量)”と対応しており、C量によって的確に把握でき
る。
【0011】(c) 一方、電気クロムめっきやクロム系
合金電気めっきにおいて、めっき層の内部応力が緩和さ
れるようにめっきするとクラック並びにピンホ−ルが低
減されることや、めっき層の内部応力を緩和するのにパ
ルス電流の使用が有効であることは従来から知られてい
ることであるが、これまで報告のなかった亜鉛系電気め
っき鋼板(複層めっき鋼板も含む)の製造に際してこの
“パルス電流を使用するめっき法”を適用し、しかも用
いるパルス電流を波形が特定条件を満足するものとする
と、得られるめっき鋼板は著しく優れた耐食性を示すよ
うになる上、めっき皮膜の密着性,化成処理性(塗装の
前処理としてのりん酸亜鉛処理性)及び塗膜密着性、更
には成形加工性までもが大きく改善される。なお、それ
らの改善機構は明確ではないが、やはりめっき層の内部
応力の緩和が大きく寄与していると考えられる。即ち、
“プレス成形時のめっき皮膜剥離現象(パウダリン
グ)”や“衝撃によるめっき皮膜剥離現象(チッピン
グ)における皮膜の剥離”はめっき皮膜の残留応力(内
部応力)がトリガ−になっており、この内部応力を低減
させることがめっき皮膜の鋼板素地との密着力を向上さ
せることにつながって成形加工性の改善をもたらすと推
測される。また、パルス電流を使用するめっき法では、
微細な合金成分金属が均一に合金として電析するために
密着性や化成処理性が向上するものと考えられる。
【0012】(d) しかも、上述のような効果は、“パ
ルス電流を使用するめっき”においてだけでなく、“特
定の条件を満足する波形の交流を重畳した直流電流によ
るめっき”の場合にも得ることができる。
【0013】(e) 更に、前述した腐食抑制有機化合物
を含有した亜鉛系めっき浴を用いて裸鋼板又は亜鉛系め
っき鋼板に亜鉛系電気めっき層を形成させる際に上記
“パルス電流を使用するめっき法”や“交流を重畳した
直流電流を使用するめっき法”を適用すると、めっき浴
中に添加されている腐食抑制有機化合物が“パルス電解
における電流OFF時”あるいは“交流電流を重畳した
直流電流電解における低電流時”に効果的にめっき層中
へ吸着され共析するようになり、腐食抑制剤を含んだ複
合めっき構造体の形成がより安定化するため、得られる
複合めっき鋼板の耐食性がより一層優れたものとなる。
【0014】本発明は、上記知見事項等に基づいて完成
されたものであり、「耐食性めっき鋼板を、 裸鋼板又は
亜鉛系めっき鋼板の少なくとも片面上に“アルキン類,
アルキノ−ル類,アミン類もしくはその塩,チオ化合
物,複素環化合物,並びに芳香族カルボン酸化合物もし
くはその塩から選ばれた少なくとも1種の化合物を総計
で 0.001〜10wt%含有するめっき浴”から形成されたと
ころの“C(炭素)含有量が 0.001〜10wt%で付着量が
10mg/m2 〜 200g/m2 の複合亜鉛系めっき皮膜層”を
有して成る構成とすることにより、 優れた裸耐食性,塗
装後の疵部耐食性や端面耐食性,成形加工性,スポット
溶接性を兼備せしめた点」に大きな特徴を有している。
【0015】更に、本発明は、「裸鋼板又は亜鉛系めっ
き鋼板の少なくとも片面を、 “アルキン類,アルキノ−
ル類,アミン類もしくはその塩,チオ化合物,複素環化
合物,並びに芳香族カルボン酸化合物もしくはその塩の
中から選ばれた少なくとも1種の化合物を総計で0.001
〜10wt%含有する亜鉛系電気めっき浴”中にて、 “OF
F時間が1msec〜1sec でデュ−ティ−比が0.5 以上
であるパルス電流”で電解するか、 あるいは“周波数が
1〜100Hzで電流変動幅が±50%である電流波形の
交流を重畳した直流電流”で電解することにより、 優れ
た裸耐食性,塗装後の疵部耐食性や端面耐食性,成形加
工性,スポット溶接性を兼備した複合亜鉛系電気めっき
鋼板を安定して製造できるようにした点」をも大きな特
徴とするものである。
【0015】上述のように、本発明は裸鋼板あるいは亜
鉛系めっき鋼板の片面又は両面の上に有機インヒビタ−
(アルキン類等の腐食抑制有機化合物)を含有する亜鉛
系電気めっき層(有機インヒビタ−含有フラッシュめっ
き層)を設けた複合めっき鋼板に係るものであるが、母
材たる鋼板の種類は特に制限されるものではなく、通常
の鋼板や自動車車体用冷延鋼板等の何れを適用しても相
応の効果を確保することができる。また、有機インヒビ
タ−含有複合めっき皮膜層の形成に供する素材鋼板が亜
鉛系めっき鋼板の場合は、その亜鉛系めっき(亜鉛めっ
き又は亜鉛合金めっき)の種類が制限されるわけではな
く、公知の何れの亜鉛系めっき鋼板であっても良い(勿
論、 溶融めっき,電気めっきの種別も問うものではな
い)。ただ、この亜鉛系めっき素材の亜鉛系めっき皮膜
が前述のパルス電流又は交流重畳直流電流を用いて形成
されたものであれば(この場合の付着量は10mg/m2 以上
程度で十分である)、めっき皮膜密着性の点で非常に有
利であると言える。
【0016】さて、本発明に係る複合亜鉛系電気めっき
鋼板は、めっき皮膜層として、有機インヒビタ−を 0.0
01〜10wt%の割合で含有するめっき浴から生成したとこ
ろのC含有量(共析量)が0.001 〜10wt%で、付着量が
10mg/m2 〜 200g/m2 の複合亜鉛電気めっき成膜層を
有しているが、ベ−スとなる亜鉛系電気めっきの種類に
は特に制限はない。
【0017】なお、複合亜鉛系電気めっき皮膜層を形成
させるためのめっき浴組成,電解条件としては、例えば
有機インヒビタ−を共析させる亜鉛めっきの場合を例示
すると下記の通りである。 [I] めっき浴組成 ZnSO4 ・ 7H2 O: 20〜35wt%, Na2 SO4 +(NH4)2 SO4 : 5〜10wt%, 有機インヒビタ−: 0.001 〜10wt%, pH: 1〜4。 [II] 電解条件 浴温: 40〜65℃, 電流密度: 40〜150A/dm2 , 液流速: 0.5 〜3m/sec。
【0018】また、有機インヒビタ−を共析させる亜鉛
系合金めっきの場合には、上記と同様のめっき浴中に合
金元素を硫酸塩,酢酸塩,炭酸塩,モリブデン酸塩,次
亜りん酸塩,有機金属塩の形態で添加するか、あるいは
予めこれらの金属元素を溶解した状態で狙いの組成とな
るように添加しためっき浴を使用すれば良い。勿論、上
記浴組成はあくまでも例示であり、有機インヒビタ−0.
001 〜10wt%を含有する亜鉛系電気めっき浴である限
り、上記浴組成に限定されるものではない。
【0019】しかしながら、好ましくは電解電流として
「OFF時間が1msec 〜1sec でデュ−ティ−比が0.
5 以上であるパルス電流」あるいは「周波数が1〜10
0Hzで電流変動幅が±50%である電流波形の交流を重
畳した直流電流」を用いて陰極電解することが推奨され
る。また、この両条件を満たす合成波形の電流を用いて
も良い。これにより、少ない有機インヒビタ−濃度のめ
っき浴からでも多量のCを形成めっき皮膜中に共析させ
ることが可能となって特に成形加工性やスポット溶接性
の改善に有利であるが、その詳細な理由は次の通りであ
る。
【0020】即ち、電気めっき時の鋼板(素材めっき鋼
板を含む)表面には目的とする金属の電析だけでなく、
同時に水素の析出も起きてくる。この水素は、イオン状
態であったものが電子をもらって鋼板表面上で原子状水
素となり、その後更にもう一つの原子状水素と結び付い
て水素ガスとなり鋼板表面から脱離する。ところが、こ
の途中段階の原子状水素は、一部が電析金属の結晶格子
の中に取り込まれてしまう。そのため、この水素に起因
した内部応力がめっき皮膜層中に生じ、更にはめっき皮
膜を構成する合金の脆性が助長される。また、鋼板表面
近傍の電解質溶液側においては、電析によるイオンの消
費のため界面pHが上昇すると共に、合金金属イオンも
減少し、粗な析出となり、かつポロシティ−の多い不均
一析出となりがちである。しかるに、電解電流として前
記特定のパルス電流を用いてめっき時に一時的にOFF
時間を与えると、界面pHの上昇や合金金属イオンの欠
乏が目立つほどには生じなくなり、まためっき浴中に添
加した有機インヒビタ−が効果的にめっき析出層中に吸
着されて共析するようになる。そして、これらの効果
は、前記特定周波数の交流を重畳した直流電流をめっき
時に用いた場合にも同様に得ることができる。このよう
に、特定条件の電解電流を適用した場合に上述の如き効
果が得られることは、従来の技術認識では予想できない
ことであった。
【0021】なお、使用するパルス電流は、OFFタイ
ムが1msec 未満では時間が短かすぎて十分に界面pH
の上昇,合金金属イオン欠乏の回復,有機インヒビタ−
の効果的な吸着ができず、一方、OFFタイムが1sec
を超えるとめっき皮膜の溶出をもたらすことから、「O
FF時間が1msec 〜1sec であるもの」とするのが良
い。更に、この場合、パルス電流のデュ−ティ−比(1
周期中のON時間の比率)が0.5 未満であると有効な電
流効率でめっきを施すことができないおそれがあるた
め、パルス電流は「デュ−ティ−比が0.5 以上のもの」
とするのが望ましい。
【0022】また、交流重畳電流を使用する場合は、周
波数が1〜100Hzで電流変動幅が±50%である電流
波形の交流を重畳したもの以外では界面のpH,合金金
属イオン濃度,有機インヒビタ−の吸着に有効な作用が
得られないので、使用電流は「周波数が1〜100Hzで
電流変動幅が±50%である電流波形の交流を重畳した
直流電流」とすべきである。
【0023】ところで、前述したように、本発明に適用
される有機インヒビタ−はアルキン類,アルキノ−ル
類,アミン類もしくはその塩,チオ化合物,複素環化合
物,並びに芳香族カルボン酸化合物もしくはその塩のう
ちの1種以上である。このうちのアルキン類とは、炭素
−炭素三重結合を含む有機化合物のことであり、例えば
ペンチン,ヘキシン,ヘプチン,オクチン等があげられ
る。アルキノ−ル類とは上記アルキン類に1個以上の水
酸基を有する有機化合物のことであり、プロパルギルア
ルコ−ル,1−ヘキシン−3−オ−ル,1−ヘプチン−
3−オ−ル等があげられる。アミン類とは分子中に窒素
原子を1個以上含む有機化合物を意味し、脂肪族,芳香
族の何れをも含む。このようなアミン類としては、オク
チルアミン,ノニルアミン,デシルアミン,ラウリルア
ミン,トリヂシルアミン,セチルアミン等が例示され
る。
【0024】チオ化合物とは分子中に硫黄原子を1個以
上含む有機化合物を意味するが、このようなチオ化合物
としては、デシルメルカプタン,セチルメルカプタン,
チオ尿素等が例示される。
【0025】複素環化合物とは環状の分子において環の
構成元素として炭素以外の原子が含まれている有機化合
物を意味するが、このような複素環化合物としては、ピ
リジン,ベンゾチアゾ−ル,ベンゾトリアゾ−ル,キノ
リン,インド−ル等が例示される。そして、芳香族カル
ボン酸としては、安息香酸,サリチル酸,スルイル酸,
ナフタレンカルボン酸が例示される。なお、アミン及び
カルボン酸についてはその塩を用いることも可能であ
り、この場合でも同等の効果を得ることができる。
【0026】これらの化合物は、電析時に形成される亜
鉛系めっき皮膜層中に共析し、腐食過程でインヒビタ−
として作用するため、耐食性の向上に対して著しい改善
効果を発揮することは既に述べた通りであり、従来の2
層型めっき皮膜では得難い耐食性が確保される。しか
も、有機化合物の一部がC(炭素)としてめっき金属マ
トリックス中に取り込まれるため、機械的特性,電気的
特性が改善されて良好な成形性,スポット溶接性をも具
備するようになる。なお、本発明に係る表面処理鋼板で
は、C以外の有機インヒビタ−構成元素、例えばN,
O,S等がめっき皮膜中に存在することを防げるもので
はなく、それによっても十分所望を効果を確保すること
ができる。
【0027】しかし、めっき浴中に添加される有機イン
ヒビタ−の量が 0.001wt%未満であるとめっき皮膜層中
への共析量が殆どなく(C含有量で 0.001wt%を下回
る)、従って耐食性の改善に効果がない。一方、有機イ
ンヒビタ−の量が10wt%を越えると溶解度の点でめっき
浴中へ添加することが困難になる上、有機インヒビタ−
種によっては表面性状の低下が生じる。従って、めっき
浴の有機インヒビタ−含有量は 0.001〜10wt%と限定し
たが、好ましくは0.05〜10wt%に調整するのが良い。
【0028】ただ、より好ましくは、アルキン類やアル
キノ−ル類の場合には0.1 〜10wt%に、アミン類もしく
はその塩の場合には3〜10wt%に、チオ化合物では0.2
〜5wt%に、複素環化合物では1.5 〜10wt%に、芳香族
カルボン酸化合物もしくはその塩では3〜8wt%に調整
することが推奨される。
【0029】かかる有機インヒビタ−を添加しためっき
浴を使用することにより、鋼板面上にC共析量(C含有
量)が 0.001〜10wt%の亜鉛系複合めっき皮膜層を形成
させることができるが、複合めっき皮膜層中のC含有量
の確認は、複合めっき皮膜層のみを素地鋼板から機械的
に剥離し、燃焼法(ガス分析)等により定量することで
容易に可能である。
【0030】ここで、本発明めっき鋼板では、有機イン
ヒビタ−添加めっき浴にて得られる“C含有量が 0.001
〜10wt%の亜鉛系複合めっき皮膜層”の付着量は 10mg/
2〜 200g/m2 に調整される。これは、付着量が 10mg
/m2 未満では所望する前記効果が十分に発揮されず、
一方、 200g/m2 の付着量になれば十分な効果を確保で
きるからである。但し、パルス電流又は交流重畳直流電
流を使用しためっきでは薄めっきでも十分な高性能皮膜
が得られるので、めっき付着量の下限を10mg/m2 として
も差支えはないが、通常のめっき電流を適用する場合は
めっき付着量の下限を 1.0g/m2とするのが好ましいと
言える。
【0031】なお、裸鋼板又は亜鉛系めっき鋼板を有機
インヒビタ−含有亜鉛系めっき浴中で電解処理する場合
に、有機インヒビタ−としてアルキン類,アルキノ−ル
類,アミン類もしくはその塩,複素環化合物,並びに芳
香族カルボン酸化合物もしくはその塩の中から選ばれた
少なくとも1種の化合物を用い、これを亜鉛系電気めっ
き浴中に総計で0.001 〜10wt%含有させると共に、 I ≧ 40V 〔但し、 I:電流密度(A/dm2),V:めっき液の線流
速(m/sec) 〕なる式を満たす範囲で陰極電解処理する
と(電解電流の波形は特に問わない)、得られるめっき
皮膜層の黒色化が可能となり、黒色意匠性めっき鋼板と
しての用途も開ける。
【0032】また、前記有機インヒビタ−含有亜鉛系め
っき浴中で電解処理する場合、裸鋼板をチオ尿素類,有
機スルホン酸もしくはその塩並びにスルホキシド類の中
から選ばれた少なくとも1種の化合物を総計で0.001 〜
10wt%含有する亜鉛系電気めっき浴を使用し、かつ I ≧ 100× exp(−1/V) 〔但し、 I:電流密度(A/dm2),V:めっき液の線流
速(m/sec) 〕なる式を満たす範囲で陰極電解処理する
と(電解電流の波形は特に問わない)、得られるめっき
皮膜層は特に光沢の優れたものとなり、光沢剤を使用し
なくても光沢電気めっき鋼板としての要求に応じること
が可能となる。
【0033】次に、本発明の効果を実施例により更に具
体的に説明する。
【実施例】
〔実施例1〕冷延鋼板をめっき母材とすると共に、表1
に示す基本組成に各種有機インヒビタ−を添加して成る
めっき浴(比較例については有機インヒビタ−の添加な
し)を用い、同じく表1に示す電気めっき条件で各種の
亜鉛系電気めっき鋼板を作成した(なお、 比較例におけ
るZn-10%Fe合金めっき鋼板及びZn-28%Mn合金めっき鋼板
については常法通りに作成した)。
【0034】
【表1】
【0035】このようにして得られためっき鋼板のめっ
き皮膜構成を、めっき浴に添加・含有させた有機インヒ
ビタ−の種類及びめっき浴における含有割合と共に表2
及び表3に示す。そして、これらめっき鋼板について
“塗装後の疵部耐食性", "塗装後の端面耐食性", "成形
加工性”並びに“スポット溶接性”を評価し、その評価
結果も表2及び表3に併せて示した。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】なお、上記“塗装後の疵部耐食性", "塗装
後の端面耐食性", "成形加工性”及び“スポット溶接
性”は、次に示す方法で評価した。 A) 塗装後の疵部耐食性 まず、めっき鋼板から70mm×150mmの試験片を切り
出した後、この未加工の平板を脱脂剤FC4336(商
品名:日本パ−カライジング社)で脱脂し、PZT(商
品名:日本パ−カライジング社)で表面調整した後、P
B−L3080(商品名:日本パ−カライジング社)を
用いてりん酸塩処理を行い、次いで、U−80(商品
名:日本ペイント社)で厚さ20±1μmのカチオン電
着塗装を施し、175℃で25分間焼付けた。そして、
その後、自動車用アルキッド系塗料の中塗り(40μ
m),焼付け,メラミン・ポリエステル系塗料の上塗り
(40μm),焼付けを行って試料を作成した。
【0039】次いで、この試料の評価面(塗装面)側に
カッタ−ナイフで鋼板素地に達するクロスカットを入
れ、下記すサイクル設定の複合腐食試験を行った。 塩水噴霧(5%NaCl,35℃,7時間)→乾燥(50
℃,2時間)→湿潤(RH85%,50℃,15時間)
【0040】疵部耐食性の評価は、上記の腐食サイクル
試験を30サイクル実施後、クロスカット部のブリスタ
−度合いを次のような段階に区分して行った。 ◎: ブリスタ−幅<0.5mm , ○: ブリスタ−幅<1.0mm , △: ブリスタ−幅<2.0mm , ×: ブリスタ−幅<3.0mm , ××: ブリスタ−幅≧3.0mm 。
【0041】B) 塗装後の端面耐食性 まず、めっき鋼板から試験片端面のカエリが板厚の10
%となるように金型のクリアランスを調整してプレス打
抜きを行い、打ち抜いた試験片に上記と同様の電着塗
装,中塗り,上塗りを行って試料を作成した。そして、
この試験片を前記と同様の腐食サイクル試験に供した。
【0042】端面耐食性の評価は、腐食サイクル試験を
60サイクル実施後、端面の赤錆発生面積率を次のよう
な段階に区分して行った。 ◎: 赤錆発生なし, ○: 赤錆発生が5%以下, △: 赤錆発生が10%以下, ×: 赤錆発生が30%以下, ××: 赤錆発生が30%超。
【0043】C) 成形加工性 (a) 加工性 めっき鋼板から90mmφの円盤状のブランクを採取し、
これを直径が50mmφで深さが28mmの円筒状に深絞り
成形した後、その側壁面のめっき皮膜を粘着テ−プで剥
離させる試験を行い、その剥離量を目視調査して評価し
た。加工性の評価は、剥離量を次の段階に区分して行っ
た。 5: 全く剥離なし, 4: 剥離片の付着しているテ−プ面積が10%未満, 3: 剥離片の付着しているテ−プ面積が30%未満, 2: 剥離片の付着しているテ−プ面積が50%未満, 1: テ−プ全面に付着。
【0044】(b) 成形性 成形性については、上述した加工性評価を行う際の“深
絞り成形時”における母材破断の有無(有:○,無:
×)で評価した。なお、評価の結果は、 ○: 母材破断なし, ×: 母材破断あり で表示した。
【0045】D) スポット溶接性 めっき鋼板から試験片を採取し、スポット溶接の連続打
点可能数で評価した。なお、連続打点溶接条件は次の通
りであった。 電流: 10000A, 加圧力: 200kgf, 通電時間: 12cycle(at60Hz), 電極形状: ド−ム形, 溶接方法:“1点/2秒で20点連続打点溶接後、 40秒
以上の休止”というサイクルを繰り返す。100点毎に
3個のせん断試験片を採取し、引張試験後にナゲット径
を測定する。
【0046】スポット溶接性の評価は、1500点以上
を可とし、次の段階で表示した。 ◎:2000点以上, ○:1500点以上, △:1500点未満, ×:1000点未満。
【0047】表2及び表3に示される結果からも明らか
なように、本発明に係る複合亜鉛めっき鋼板は、何れも
非常に優れた塗装後の疵部耐食性,塗装後の端面耐食
性,成形加工性及び溶接性を兼備していることが分か
る。
【0048】〔実施例2〕冷延鋼板をめっき母材とする
と共に、前記表1に示す基本組成に各種有機インヒビタ
−を添加して成るめっき浴(何れも浴温は50±10℃
であるが、 比較例については有機インヒビタ−の添加な
し)を用いると共に、第4表に示す電解条件で各種の亜
鉛系電気めっき鋼板を作成した。
【0049】
【表4】
【0050】このようにして得られためっき鋼板のめっ
き皮膜構成を、めっき浴に添加・含有させた有機インヒ
ビタ−の種類及びめっき浴における含有割合,電解条件
と共に表5及び表6に示す。そして、これらめっき鋼板
について“塗装後の疵部耐食性", "塗装後の端面耐食
性", "成形加工性”並びに“スポット溶接性”を評価
し、その評価結果も表5及び表6に併せて示した。な
お、“塗装後の疵部耐食性", "塗装後の端面耐食性",
"成形加工性”並びに“スポット溶接性”の評価方法は
実施例1の場合と同様であった。
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】表5及び表6に示される結果からも、本発
明に係る方法で得られた複合亜鉛めっき鋼板は、何れも
非常に優れた塗装後の疵部耐食性,塗装後の端面耐食
性,成形加工性及び溶接性を兼備していることを確認す
ることができる。
【0054】
【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれ
ば、従来の表面処理鋼板を凌駕する非常に優れた塗装後
耐食性を示すだけでなく、ユ−ザ−での使い勝手である
溶接性や成形加工性にも優れる表面処理鋼板を安定して
提供することが可能となり、自動車,家電製品,建材等
の性能向上に大きく寄与できるなど、産業上有用な効果
がもたらされる。
フロントページの続き (72)発明者 吉田 究 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (72)発明者 福井 清之 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 裸鋼板又は亜鉛系めっき鋼板の少なく
    とも片面上に、“アルキン類,アルキノ−ル類,アミン
    類もしくはその塩,チオ化合物,複素環化合物,並びに
    芳香族カルボン酸化合物もしくはその塩の中から選ばれ
    た少なくとも1種の化合物を総計で0.001 〜10wt%含有
    するめっき浴”から形成されたところの“C含有量が0.
    001 〜10wt%で付着量が10 mg/m2 〜 200g/m2 の複合
    亜鉛系めっき皮膜層”を有して成ることを特徴とする複
    合亜鉛系電気めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 裸鋼板又は亜鉛系めっき鋼板の少なくと
    も片面を、“アルキン類,アルキノ−ル類,アミン類も
    しくはその塩,チオ化合物,複素環化合物,並びに芳香
    族カルボン酸化合物もしくはその塩の中から選ばれた少
    なくとも1種の化合物を総計で0.001 〜10wt%含有する
    亜鉛系電気めっき浴”中にて“OFF時間が1msec 〜
    1sec でデュ−ティ−比が0.5 以上であるパルス電流”
    で電解することを特徴とする複合亜鉛系電気めっき鋼板
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 裸鋼板又は亜鉛系めっき鋼板の少なくと
    も片面を、“アルキン類,アルキノ−ル類,アミン類も
    しくはその塩,チオ化合物,複素環化合物,並びに芳香
    族カルボン酸化合物もしくはその塩の中から選ばれた少
    なくとも1種の化合物を総計で0.001 〜10wt%含有する
    亜鉛系電気めっき浴”中にて“周波数が1〜100Hzで
    電流変動幅が±50%である電流波形の交流を重畳した
    直流電流”で電解することを特徴とする複合亜鉛系電気
    めっき鋼板の製造方法。
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