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JP3358468B2 - 亜鉛系複合めっき金属板およびその製造方法 - Google Patents

亜鉛系複合めっき金属板およびその製造方法

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Publication number
JP3358468B2
JP3358468B2 JP28201696A JP28201696A JP3358468B2 JP 3358468 B2 JP3358468 B2 JP 3358468B2 JP 28201696 A JP28201696 A JP 28201696A JP 28201696 A JP28201696 A JP 28201696A JP 3358468 B2 JP3358468 B2 JP 3358468B2
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JP
Japan
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plating
corrosion resistance
plating film
zinc
film
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JP28201696A
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雅也 木本
宏之 土屋
吉隆 足立
一也 石井
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP28201696A priority Critical patent/JP3358468B2/ja
Publication of JPH10130890A publication Critical patent/JPH10130890A/ja
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  • Electroplating Methods And Accessories (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、家電製
品、建材等の材料として好適な、耐食性に優れ、耐低温
衝撃性のほか、めっき皮膜の加工性や抵抗スポット溶接
性も良好な亜鉛系複合めっき金属板およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車をはじめとして、家電製品、建材
等、多様な分野で各種の表面処理金属板、特に表面処理
鋼板が利用されているが、最近、これら表面処理金属板
の防錆能力向上の要求が高まっている。
【0003】例えば自動車の外装に用いられる表面処理
鋼板には、冬季に融雪用の岩塩を道路に散布する寒冷地
での10年間の耐穴明き腐食性や、5年間の耐外面錆性が
達成できる高耐食性能が求められている。低温環境下
(−50℃〜0℃)で石跳ね等による衝撃負荷が加えられ
てもめっき皮膜の密着性が損なわれないこと(以下、
「耐低温衝撃性」と記す)や、塗膜に疵がついた部分や
塗装鋼板の端面の耐食性(以下、「塗装後耐食性」と記
す)が確保されることも必要である。
【0004】また、自動車外装用の防錆鋼板には、耐食
性以外に、鋼板を加工する時にめっき皮膜が金型に焼き
付かないことや、めっき皮膜が粉化・脱落しないこと
(以下、「めっき皮膜の加工性」と記す)、さらには、
組立工程での溶接作業性がよいこと、等も必要である。
【0005】最も一般的な防錆金属板である亜鉛めっき
鋼板の耐食性を改善するために、Zn とFe 、Ni 、C
o 、Mn 、Cr 、Al 等の中の少なくとも1種の金属と
の合金をめっきした亜鉛合金めっき鋼板が提案されてい
る。亜鉛合金めっき鋼板は、亜鉛めっき鋼板に比べて、
無塗装での耐食性(耐穴明き性)は向上するが、耐低温
衝撃性は改善されておらず、塗膜とめっき皮膜との密着
性が良くないために塗装後耐食性も十分ではない。ま
た、亜鉛めっき鋼板と同様に、付着量を多くしためっき
製品ではめっき皮膜の加工性と抵抗スポット溶接性がよ
くないことも問題である。
【0006】耐食性を改善するために、2以上のめっき
層を設けた複層亜鉛系めっき鋼板も提案されている。例
えば、特開昭60−215789号公報には、付着量10〜300 g
/m2の亜鉛めっきを施した上に、Ni 、Co などを15〜
30重量%含有する亜鉛系合金を1〜20g/m2めっきして
塗膜の密着性を改善する複層めっき鋼板が記載されてい
る。特公昭58−15554 号公報には、リン酸塩化成処理性
や電着塗装性を向上させる目的で合金化溶融亜鉛めっき
鋼板の上にFe 系フラッシュめっき皮膜を設けた複層亜
鉛系めっき鋼板が記載されている。
【0007】これらの複層めっき鋼板でも、需要家が要
求する高耐食性を発揮するには下層のZn めっき皮膜の
付着量を厚くする必要がある。そのため、めっき皮膜の
加工性、塗装後の耐食性、抵抗スポット溶接性、更には
耐低温衝撃性などで問題が生じる。また、めっき工程を
2回繰り返すために製造工程が煩雑になり、経済性も損
なう。
【0008】亜鉛合金めっき鋼板の無塗装での耐食性を
損なうことなく、めっき皮膜の加工性、抵抗スポット溶
接性、塗装後耐食性、および耐低温衝撃性を改善する提
案もされている。本発明者らのひとりは特開平7-70796
号公報で、有機物を含有するめっき浴を用いて電気めっ
きして、Fe 、Co 、Ni の1種以上とZn との合金と
Cとを共析させる方法を提案した。
【0009】この方法は、めっき皮膜の表層部にCが濃
厚に析出すること、さらに、合金量を制限して特定の配
向性を有するη相(Zn 相)を残存させること等によっ
て上記の効果を得るものであり、自動車車体用等の要求
性能の厳しい用途に適した表面処理鋼板として期待され
ている。
【0010】しかしながら、この提案でも無塗装での耐
食性についてはまだ問題が残されており、必要な場合に
はめっき付着量を多くしなければならない。このため、
経済性に欠けるうえ、めっき皮膜の加工性や抵抗スポッ
ト溶接性の改善にも限界がある。
【0011】このように、過酷な使用環境に耐え得る良
好な耐食性を保持しながら、需要家での組立工程に必要
な高水準のめっき皮膜の加工性と抵抗スポット溶接性を
具備し、更に耐低温衝撃性、塗装密着性、塗装後の疵部
および端面の耐食性に優れ、経済性にも富む表面処理金
属板は未だ実現していない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】この発明が解決しよう
とする課題は、少ない付着量のめっき皮膜で無塗装での
耐食性に優れ、塗装後耐食性、耐低温衝撃性、めっき皮
膜の加工性および抵抗スポット溶接性も改善された亜鉛
系複合めっき金属板およびその製造方法を提供すること
である。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)の亜鉛系複合めっき金属板ならびに(2)のその
製造方法にある。
【0014】(1)少なくとも片面に、Fe 、Co およ
びNi の中の1種以上を合計で0.01〜10重量%、Cを0.
001 〜10重量%含有し、残部が実質的に亜鉛からなる付
着量5〜200 g/m2のめっき皮膜を備えた亜鉛系複合め
っき金属板であって、めっき皮膜の表層部およびその内
部に1層以上の母材表面に平行なC濃化層を備え、それ
ぞれのC濃化層の厚さが0.01〜10μm であることを特徴
とする耐食性に優れた亜鉛系複合めっき金属板。
【0015】(2)デキストリンおよび/またはデキス
トラン0.01〜10重量%と、めっき皮膜中にFe 、Co お
よびNi の中の1種以上の金属を合計で0.01〜10重量%
共析させるのに十分な量の金属化合物とを含有する電気
亜鉛めっき浴と、デューティー比率が0.01〜0.8 、オフ
時間が0.001 〜50秒であるパルス状のめっき電流とを用
いて電気めっきすることを特徴とする、上記(1)に記
載の亜鉛系複合めっき金属板の製造方法。
【0016】本発明の金属板のめっき皮膜は、Fe 、C
o およびNi の中の1種以上とCとを含む亜鉛系複合め
っき皮膜であって、めっき皮膜の表層部および内部に一
定の間隔をもってC濃化層を備えているものである。本
発明では、めっき皮膜全体でのC含有量(平均の含有
量)以上のC濃度の部分を「C濃化層」と記す。このC
濃化層の厚さは、グロー放電発光分析(GDS)、イオ
ン質量分析(SIMS)、グロー放電質量分析(GDM
S)などの物理分析法により測定される。
【0017】複数のC濃化層の中の1つはめっき皮膜の
表層部にあり、他の1つ以上はめっき皮膜中にある間隔
をもって存在する。このC濃化層は、めっき皮膜中で、
母材表面に平行な平面的な広がりをもっている。このC
濃化層は腐食の進行を妨げる効果を持っていると推測さ
れる。耐食性に優れた亜鉛合金の中にC濃化層が積層し
て存在していることで、極めて優れた耐食性が発揮され
る。また、C濃化層は硬質であるので抵抗スポット溶接
時の電極を汚染する危険性が少なく、電極の寿命が長
い。更に、この硬質層が積層した構造であるので、金属
板を加工する時に金型との摺動による剥離が生じ難く、
めっき皮膜の耐剥離性が優れている。
【0018】このめっき皮膜は、Fe 、Co およびNi
源を含有する亜鉛合金めっき浴にC源を溶解し、例え
ば、パルス状のめっき電流を母材に通電して電気めっき
することで形成される。パルス状のめっき電流を1回通
電する毎にC濃化層が1層形成される。皮膜中でCの濃
度勾配が生じるのは、通電初期に金属元素が析出し、有
機物を構成するCは金属元素に遅れて、通電後期あるい
は後述するベース電流などの時期に吸着などの形態で皮
膜に形成されるためと推測される。
【0019】C源としては、めっき浴に溶解して電気め
っきできる有機物が用いられるが、なかでもデキストリ
ンあるいはデキストラン(以下、「デキストリン等」と
記す)が好適である。デキストリン等は、デンプンを加
水分解した時に得られる、種々の重合度の分解生成物が
混合した多糖類であり、デンプンをわずかに加水分解し
た高分子量のものから、ヨウ素デンプン反応を呈しない
低分子量のものまである。耐食性の改善には、このなか
で高分子量のものの添加が有効である。
【0020】デキストリンを添加して電気めっきする方
法は、特開昭60−187694号公報、特開昭59−100284号公
報などに開示されている。しかし、特開昭60−187694号
公報の方法は、デキストリンと炭酸ストロンチウムを併
用して電気亜鉛めっきを施し、めっき鋼板の摺動性を改
善する技術に関するものである。また、特開昭59−1002
84号公報に記載の方法は、Fe ―Zn 合金めっきを施す
めっき液中にデキストリンや界面活性剤を添加してめっ
き斑を防止する方法に関するものである。
【0021】いずれの方法も本発明とは目的も方法も異
なるものである。耐食性と総合性能が優れた表面処理板
は、表層と皮膜内部とにCの濃化層を有するFe 、Co
あるいはNi の中の1種以上とZn との合金めっき皮膜
を持つ場合に得られる。また、特定のめっき条件を用い
ることにより、これを容易に製造することが出来る。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳述する。なお、以下に記す合金元素、CおよびC源
(含む、デキストリン等)の含有量の%表示は重量%を
意味する。
【0023】(1)めっき皮膜 皮膜組成:無塗装での耐食性(耐穴明き性)を良好に保
つために、めっき皮膜全体の重量に対して、Fe 、Co
あるいはNi の内から選ばれる1種類以上の合金元素
を、合計で0.01%以上含有させる。金属元素としての残
余は実質的にZnである。これらの合金元素の含有量が
少ない場合には、めっき皮膜中のZn は犠牲防食性が優
れたη相の形で存在するが、これらの総量が10%を超え
るとη相が消失し、めっき皮膜の犠牲防食機能が低下し
て塗装後の端面耐食性が損なわれる。η相は展延性があ
り、また、鋼板あるいはアルミニウム合金板と結晶学的
に整合性を保っているため素地金属板との密着力に優
れ、良好な耐低温衝撃性も実現される。このため、これ
らの合金元素の合計の含有量は10%を上限とする。
【0024】これら3種類の合金元素の内では、耐食性
の観点からCo を用いるのが好ましい。その場合のCo
の含有量は、耐食性と経済性の両面から、0.4 〜2%の
範囲がより好適である。
【0025】無塗装での耐食性、めっき皮膜の加工性お
よびスポット溶接性を改善するために、めっき皮膜全体
の重量に対してCを0.001 %以上含有させる。このC含
有量が10%を超えると、亜鉛合金の防食機能が弱くなり
めっき皮膜の耐食性が損なわれる。めっき浴の粘度が高
くなってめっき作業も困難になる。このため、Cの含有
量の範囲は0.001 %以上10%以下とする。
【0026】なお、「実質的にZn である」との意味
は、上記のめっき皮膜中にAl 、Mg、Cu 、Mn 、Sn
、Pb 、In 、Zr 、Ti 、Cd 、Mo 、Nb 、V、
Cr 、W、Si 、P、B、S、等の中の1種以上が少量
含まれていても差し支えないことを意味する。また、C
源として有機物を添加してめっきするので、H、O等が
付随的にめっき皮膜に含有される場合もあるが、これも
かまわない。
【0027】めっき皮膜中のC濃化層:めっき皮膜全体
でのC含有量(平均の含有量)以上のC濃度の部分であ
るC濃化層がめっき皮膜の表層部および内部に一定の間
隔をもって存在することで無塗装での耐食性、めっき皮
膜の加工性およびスポット溶接性が改善される。この濃
化層の厚みが0.01μm に満たない場合には、これらの改
善効果が不十分である。この濃化層の厚みが10μm を超
えるとめっき皮膜が過度に硬質になって、その加工性が
損なわれる。このため、C濃化層の厚みは0.01以上10μ
m 以下とする。
【0028】C濃化層の間隔が狭すぎると層間の密着性
が低下し、逆に、過度に広くなるとC濃化層の存在効果
が弱まる。このため、C濃化層の間隔は0.05〜30μm の
範囲であることが好ましい。
【0029】めっき皮膜中に含有されるCの形態に特別
な制限はない。しかし、デキストリン等、あるいはこれ
らと同等の効果を持つ少なくとも1種の高分子量の有機
化合物、および/または、電気めっきの際に分解あるい
は重合などの反応によってこれらから生じた高分子量の
有機化合物が好ましい。特に、その分子量が103 〜109
のものが好適であり、5×103 〜107 であれば更に好ま
しい。
【0030】めっき付着量:めっき付着量が5g/m2
満たない場合には、無塗装での耐穴明き性、塗装後の疵
部や端面での耐食性などが不十分である。200 g/m2
超えると無塗装での耐食性が飽和するうえ、めっき皮膜
の加工性が損なわれ、経済性にも劣る。このため、付着
量は5〜200 g/m2の範囲とする。
【0031】本発明のめっきを施す部位は、母材の両面
でも片面でもいずれでもよい。両面にめっきする場合に
は、両方の皮膜の厚さやC濃化層の積層数が異なってい
ても構わない。
【0032】めっき皮膜中のη相の存在はX線回折測定
により確認される。また、めっき皮膜中のCの含有量
は、5%硫酸でめっき皮膜を溶解し、溶液中の高分子有
機物をグルコースに分解した後フェノール硫酸法により
グルコース量を定量して測定される。めっき皮膜表層部
および内部に存在するC濃化層の厚さはGDS分析、S
IMS分析、GDMS分析などで測定される。
【0033】Cが高分子有機物を構成している場合の分
子量は、不活性の架橋ポリマー・ゲルを充填したカラム
で分析する液クロマトグラフィーの1種であるゲル浸透
クロマトグラフィー法で測定した数平均分子量を指標に
用いる。
【0034】(2)製造方法 以下に、本発明の複合亜鉛めっき金属板の製造方法につ
いて詳述する。
【0035】母材:本発明の表面処理板に用いる母材
は、自動車、家電製品、建材等の材料として用いられる
各種の冷間圧延鋼板が主に用いられる。しかしながら、
用途に応じて熱間圧延鋼板や、車体の軽量化のためのア
ルミニウム板、あるいは、各種のめっきを施された金属
板なども選択できる。
【0036】母材にめっきを施された金属板を用いる場
合の母材のめっきの種類は、純Zn、純Al 、Zn あ
るいはAl とFe 、Co 、Ni 、Mn 、Cr 、Mg 等と
の合金めっき、さらには、Zn-Al 、Al-Ti 、Al-N
b などの合金めっきが考えられる。あるいは、これらの
めっきを数種類組み合わせて複層めっきとしたものでも
よい。本発明のめっき皮膜との密着性をよくする意味
で、純Zn 、あるいは、Zn とFe 、Co 、Ni 、Mn
、Cr 、Mg 、Al 等との合金めっきを施した母材が
好ましい。そのめっき方法は、電気めっき、溶融めっ
き、蒸着めっき等、いずれでもよい。
【0037】母材の前処理:母材として通常の鋼板を使
用する場合は、通常のアルカリ脱脂、酸洗を施して電気
めっきするのがよい。母材として電気めっき鋼板を用い
る場合には、母材の電気めっきにつづいて乾燥工程を入
れないで水洗のみを施して連続してめっきするのがよ
い。溶融めっきあるいは、蒸着めっきを施した母材を用
いる場合には、母材表面を活性化するために40〜120 g
/リットルのNaOH を含む60〜80℃の水溶液中に浸漬し、
水洗してから電気めっきするのがよい。
【0038】電気めっき浴:酸性浴(例えば、硫酸塩
浴、塩化物浴)、アルカリ性浴(例えば、シアン化物
浴)の何れでも可能である。しかし、アルカリ性浴では
金属塩が沈澱しやすく経済性でも不利であるので、酸性
浴、特に硫酸塩浴を用いるのが好ましい。
【0039】Zn およびFe 、Ni 、Co 等の合金元素
は、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、モリブデン酸塩、次亜リ
ン酸塩、有機金属塩等の金属イオンとして目標のめっき
皮膜組成とするのに必要な量をめっき浴に添加する。
【0040】また、めっき浴には、目標とするめっき皮
膜中のC含有量を得るのに必要な量のC源を添加する。
C源としては、デキストリン等の高分子有機化合物が好
適であるが、アルキン類、アルキノール類、アミン類、
チオ化合物、複素環化合物、芳香族カルボン酸等も適用
できる。これらから選んだ少なくとも1種の有機化合物
を添加した浴中で亜鉛合金めっきを施す。
【0041】C源としてデキストリン等を用いる場合に
は、亜鉛合金めっき浴にデキストリン等をめっき浴の重
量に対して0.01%以上添加するのが好ましい。添加量が
これに満たない場合には、皮膜中のC量が不足しやすく
なる。また、過剰に添加するとめっき浴の粘度が高くな
り、めっき作業が困難になる。このため、めっき浴への
デキストリン等の添加量は10%を上限とするのが好まし
い。
【0042】C源としてデキストリン等を用いる場合に
は、その分子量が103 以上109 以下のものを用いるのが
耐食性を確保するうえで好ましい。分子量が109 を超え
ても優れた耐食性能が得られるが、これらはめっき浴に
難溶性であり、めっき作業が困難である。めっき浴への
溶解性と耐食性に対する効果から、より好ましくはその
分子量が5×103 〜107 のものを用いる。
【0043】デキストリン等は、種々の重合度の分解生
成物が混合した多糖類である。デキストランのほうが分
子量のばらつきが少なく、めっき浴の管理がしやすい利
点がある。しかし、分子量のばらつきがやや大きいデキ
ストリンであっても本発明の効果が十分得られるうえ、
このほうが安価である。本発明ではいずれを用いてもか
まわない。
【0044】デキストリン等はそのままめっき浴に投入
してもよいが、デキストリン等の溶解時間を短縮するた
めにスラリー状にして添加するのがより好ましい。めっ
き浴中のデキストリン等の含有量は上述のフェノール硫
酸法で測定できる。その分子量は上述のゲル浸透クロマ
トグラフィー法で測定した数平均分子量を用いる。
【0045】めっき電流パターン:めっき皮膜中に複数
のC濃化層を形成するために、パルス状の電流を母材に
通電して電気めっきする。ここでのパルス状の電流は、
ピーク電流とベース電流が周期的に流れるものである。
パルス状の電流を母材に通電する方法としては、めっき
電源側でパルス状の電流を発生させてこれを母材に通電
するのが好適である。しかし、めっき電源には通常の直
流電源を用い、めっき装置の電極配置などを変えて母材
に流れる電流パターンを変更してめっきする方法でも可
能である。例えば、めっき槽内に設けた複数の電極同士
の間隔と母材の通板速度とを組み合わせれば、母材への
通電パターンを制御できる。
【0046】パルス状の電流は、直流が周期的に強さを
変える「パルス電流」を用いるのがが好適である。しか
しこれに限らず、直流電流が断続的に通じるもの(ベー
ス電流0に相当する)や、直流と交流を重畳させたもの
でも構わない。
【0047】パルス状の電流の繰り返しの周期(以下、
「パルス周期」と記す)は、ピーク電流が流れる時間
(以下、「パルス幅」と記す)とベース電流が流れるベ
ース継続時間あるいは無通電の時間(以下、これらを単
に「オフ時間」と記す)からなっている。本発明の製造
方法では、パルス周期に対するパルス幅の割合(以下、
「デューティー比率」と記す)を0.01以上、0.8 以下と
し、かつ、オフ時間を0.001 秒以上、50秒以下とする。
【0048】デューティー比率が0.8 を超える場合、あ
るいは、オフ時間が0.001 秒に満たない場合には耐食性
が劣る。いずれの場合も連続通電めっき状態に近くなる
のでCの吸着が不十分になり、Cの濃化層が出来にくく
なるためではないかと推測される。デューティー比率が
0.01に満たない場合や、オフ時間が50秒を超える場合に
は、この間にめっき皮膜が著しく腐食されて耐食性が損
なわれる。C濃化層の厚さおよびその間隔は、デューテ
ィー比率やパルス周期を制御して調整する。
【0049】めっきは母材である金属板の必要な面に施
せばよく、片面のみに施しても良いし、両面に施しても
良い。
【0050】代表的な連続めっき法での条件を、硫酸酸
性浴の場合について示せば以下のとおりである。
【0051】 本発明のめっき金属板は、耐食性や使い勝手が優れてい
るので、電気めっき皮膜をを施したままで、自動車、家
電製品、建材などの用途に用いることができる。しか
し、このめっき皮膜の上に防食効果があるクロメート皮
膜や、さらにはその上に、環境遮断効果がある薄い有機
樹脂皮膜などを施せば、その耐食性がより向上する。こ
のため、必要に応じて、常法によりこの様な処理を更に
施してもよい。この場合、クロメート皮膜の付着量は10
〜200 mg/m2、有機樹脂皮膜としてはその厚さが0.1 〜
2μm の範囲であればよい。
【0052】
【実施例】
(実施例1)(1)電気めっき:板厚が0.8mm のJIS G
3141に規定されている低炭素冷延鋼板を母材として用い
た。これを脱脂した後、硫酸塩浴を用いて電気めっきを
施した。めっき浴には、分子量が103 〜107 のデキスト
リンを添加した。めっき浴組成、通電パターン、電流密
度等を下記に示す範囲で種々に変えて、表1に示す高分
子有機物を含有する複合亜鉛合金めっき皮膜を母材鋼板
の片面に施した。
【0053】
【表1】
【0054】めっき条件は次の通りである。
【0055】 ZnSO4・7H2O :1〜40重量% CoSO4・7H2O :0〜40重量% NiSO4・6H2O :0〜40重量% FeSO4・7H2O :0〜40重量% Na2SO4 :5〜15重量% デキストリン:0〜40重量% pH :1.8 浴温 :50±2℃ 液流速 :1m/秒 電流密度 :20〜150 A/dm2 皮膜全体の狙い付着量 :3.6 〜360 g/m2 (2)性能評価 得られためっき鋼板の性能を以下の方法で評価した。
【0056】 無塗装での耐食性(耐穴明き性):電
気めっきしたままの試験片から、大きさ100 mm×100 mm
の供試片を採取した。これに塩水噴霧(5%−NaCl、
35℃、7時間)→乾燥(50℃、2時間)→湿潤(RH85
%、50℃、15時間)を1サイクルとする腐食サイクル試
験を300 サイクル実施後、腐食生成物を除去して腐食深
さを測定した。その中の最大腐食深さを次のような段階
に区分して評価した。
【0057】 ◎:0mm ○:0.1 mm未満 △:0.1 mm以上、0.3mm以下 ×:0.3mm超 塗装後の端面耐食性:70mm×150mm の大きさの、切
断で生じる四周の端面のカエリが板厚の10%となるよう
に調整した試験片を準備した。これらに、脱脂、表面調
整、化成処理を施した後、厚さ20±1μm のカチオン電
着塗装を施し、175 ℃で25分間焼き付けた。その後、自
動車用アルキッド系塗料の中塗り(40μm)、焼き付
け、メラミン・ポリエステル系塗料の上塗り(40μm
)、焼き付けを行なって塗装を施した。この試験片を
上記の腐食サイクル試験に供した。
【0058】無塗装での耐食性を評価したのと同じ腐食
サイクル試験を60サイクル実施後、端面の赤錆発生面積
率を次のような段階に区分して評価した。
【0059】 ◎:赤錆発生なし ○:5%以下 △:10%以下 ×:30%以下 ××:30%超 塗膜疵付き部の耐食性:塗装後の端面耐食性評価法
と同様に塗装した試験片に、カッターナイフで母材素地
に達するカット疵を付与し、上記耐穴明き性を評価した
腐食サイクル試験を300 サイクル実施した。電着塗膜と
腐食生成物を除去して腐食深さを測定し、最大腐食深さ
を次のような段階に区分して評価した。
【0060】 ◎:0mm ○:0.2 mm未満 △:0.2 mm超、0.6mm以下 ×:0.6mm超 塗装での耐食性を評価したのと同じ腐食サイクル試験を
60サイクル実施後、端面の赤錆発生面積率を次のような
段階に区分して行った。
【0061】 ◎:赤錆発生なし ○:5%以下 △:10%以下 ×:30%以下 ××:30%超 耐低温衝撃性:上述の、塗装後の端面耐食性評価と
同様の塗装を施した。これに−40℃の温度でダイヤモン
ド粒(直径約3mm)を120 km/時の速度で10箇所衝突さ
せ、暴露試験に供した。暴露試験は工業地帯で5年間実
施し、途中、一か月に一回の頻度で30分間3%NaCl水
溶液に浸漬した。5年後に衝突点での塗膜ブリスターの
最大巾を測定し、下記の区分で評価した。
【0062】 ◎:1mm未満 ○:1mm以上3mm未満 △:3mm以上5mm未満 ×:5mm以上 めっき皮膜の加工性:めっき鋼板から90mmφの円形
のブランクを採取し、50mmφ、28mm深さの円筒状に深絞
り成形し、その側壁面のめっき皮膜を粘着テープで剥離
させ、剥離片が付着しているテープの面積率を目視で判
定して下記の基準で評価した。
【0063】 ◎:全く剥離なし ○:10%未満 △:30%未満 ×:30%以上 抵抗スポット溶接性:下記の条件で、2秒毎に1打
点の割合で20打点連続溶接後40秒以上休止、を繰り返
し、100 打点毎に繰り返し数3のせん断試験を行なっ
た。せん断試験後のナゲット径が3.6 mm以上である溶接
打点数の限界を求め、下記の基準で連続打点性を評価し
た。
【0064】 電極形状:ドーム形、 電流:27000 A 加圧力:300kgf、 通電時間:6/60サイクル、 ◎:2000回以上 ○:2000回未満1500回以上 △:1500回未満1000回以上 ×:1000回未満 これらの性能評価結果を表2に示した。
【0065】
【表2】
【0066】本発明の範囲で合金元素とCを含有し、本
発明の範囲内でのパルス通電を行なってめっきした試番
1〜20は耐穴明き腐食性が優れ塗装後の端面耐食性、耐
低温衝撃性、めっき皮膜の加工性、抵抗スポット溶接の
連続打点性等が優れている。これに対し、めっき皮膜中
の合金を添加せずめっき皮膜の付着量も僅かである試番
28、あるいは、めっき皮膜中の合金の含有量が低すぎた
試番21は耐食性が劣る。めっき皮膜中の合金含有量が本
発明が規定する範囲を超える試番22はη相が消失して犠
牲防食作用が弱くなり、塗装後の耐食性が劣るうえ耐低
温衝撃性も損なわれている。
【0067】めっき皮膜の付着量が過小である試番23は
皮膜の加工性は良好であるが無塗装、塗装後共に耐食性
が不十分である。めっき皮膜の付着量が過大である試番
24は耐食性は良好であるがスポット溶接性と耐低温衝撃
性が不十分である。めっき浴中のデキストリン添加量が
不足した試番25は皮膜中へのC共析量が不足し耐食性と
スポット溶接性が不十分である。パルス電流のデューテ
ィー比率が過小である試番26はめっき皮膜が腐食されて
耐食性が劣り、パルス電流のデューティー比率が過大で
ある試番27は連続通電状態に近くなってC濃化層の生成
が不十分になり、耐食性と溶接性が劣った。
【0068】パルス通電を行わなかった試番29、あるい
は、めっき皮膜にCを共析させなかった試番30はいずれ
も無塗装での耐食性、スポット溶接性あるいはめっき皮
膜の加工性が劣る結果となった。
【0069】
【発明の効果】本発明の複合亜鉛合金めっき金属板は、
従来の表面処理金属にない優れた無塗装での耐食性を有
しており、塗装後の耐食性や、需要家での使い勝手であ
る溶接性、めっき皮膜の加工性も優れている。このた
め、高度の性能が求められる自動車、家電製品、建材な
どの用途、特に自動車外板用に用いれば有用である。こ
の金属板は、デキストリン等のC源を適量含有するめっ
き浴を用いて、パルス通電等の方法を用いれば、経済的
に、かつ、容易に製造できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石井 一也 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−97885(JP,A) 特開 平7−70794(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 15/00 - 15/02 C25D 5/26

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも片面に、Fe 、Co およびNi
    の中の1種以上を合計で0.01〜10重量%、Cを0.001 〜
    10重量%含有し、残部が実質的に亜鉛からなる付着量5
    〜200 g/m2のめっき皮膜を備えた亜鉛系複合めっき金
    属板であって、めっき皮膜の表層部およびその内部に1
    層以上の母材表面に平行なC濃化層を備え、それぞれの
    C濃化層の厚さが0.01〜10μm であることを特徴とする
    耐食性に優れた亜鉛系複合めっき金属板。
  2. 【請求項2】デキストリンおよび/またはデキストラン
    0.01〜10重量%と、めっき皮膜中にFe 、Co およびN
    i の中の1種以上の金属を合計で0.01〜10重量%共析さ
    せるのに十分な量の金属化合物とを含有する電気亜鉛め
    っき浴と、デューティー比率が0.01〜0.8 、オフ時間が
    0.001 〜50秒であるパルス状のめっき電流とを用いて電
    気めっきすることを特徴とする、請求項1に記載の亜鉛
    系複合めっき金属板の製造方法。
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