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JPH0769544B2 - 液晶素子および液晶素子配向膜用コーティング用組成物 - Google Patents

液晶素子および液晶素子配向膜用コーティング用組成物

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JPH0769544B2
JPH0769544B2 JP63009378A JP937888A JPH0769544B2 JP H0769544 B2 JPH0769544 B2 JP H0769544B2 JP 63009378 A JP63009378 A JP 63009378A JP 937888 A JP937888 A JP 937888A JP H0769544 B2 JPH0769544 B2 JP H0769544B2
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crystal device
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JP63009378A
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孝夫 青木
隆正 原田
耕吉 伊藤
浩二 岩佐
紀雄 川辺
寛幸 池内
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Publication date
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Publication of JPH0769544B2 publication Critical patent/JPH0769544B2/ja
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は液晶を用いた表示パネル、液晶シャッターなど
の電気光学素子に使用する配向膜に関する。さらに詳し
くは、液晶の配向性に優れた配向膜と、該配向膜に適し
たコーティング組成物に関する。
[従来の技術] 従来、通常の高分子では、その高い絶縁抵抗と破壊電界
が特徴の一つとされ、電子デバイスにおいて様々な用
途、目的で使用されている。その場合耐熱性を要するこ
とが多いので、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフ
ェニレンオキシド、ポリスルホンなどが実用化されてい
る。
この中で現在、信頼性が高く最も多用されているのはポ
リイミドである。ポリイミドは、半導体分野では、多層
配線絶縁膜、表面保護膜、ソフトエラー防止膜などとし
て、また液晶素子の配向膜として広く使用されている
(特開昭57-56817号公報、特開昭60-230635号公報な
ど)。
液晶配向膜に使用されるコーティング材料は、特に素子
機能上、液晶の配向性能が重要視される。ポリイミド
は、耐熱性、接着性、絶縁性、被膜形成性等の観点から
は、液晶配向膜としては好適な素材であるが、液晶の配
向性能という点では、満足すべき素材とは言えない。特
に、次世代の液晶ディスプレイとして現在開発が進めら
れている強誘電性液晶ディスプレイについては、液晶分
子がカイラル スメクチック C*という結晶に近い分子
配列をとらねばならず、ポリイミドを配向膜として用い
ても満足すべき配向状態を形成させるのが極めて難し
い。この為、、現在ポリイミドの改質を主体とした強誘
電性液晶ディスプレイ用配向膜の開発が行なわれている
(特開昭62-87939号公報、特開昭62-98327号公報な
ど)。
しかしながら、ポリイミドは、アミンとカルボン酸誘導
体との反応により高分子量の被膜を形成させるため、反
応が完全に進行しないと形成された被膜中にアミンやカ
ルボン酸などの遊離のイオン性基が残留することにな
り、液晶分子の安定な配向を妨害しやすいという欠点を
有する。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明は上記従来技術の問題点を改善するため主鎖がリ
ジッドで棒状構造(剛直構造)の特殊なポリマーを用い
ることにより、配向制御、特に液晶のコントラスト比が
高く、かつ応答速度に優れた配向膜を提供することを第
一の目的とする。
第2の目的は、液晶の配向膜に有用なコーティング材料
に関するものであり、種々の製膜方法により均一厚さの
膜を、容易に形成できるコーティング組成物を提供す
る。
[課題を解決するための手段] 上記目的を達成するため本発明は下記の構成からなる。
「1.一対の電極基板、配向膜及び液晶から少なくとも構
成される液晶素子において、配向膜が下記[I]で示さ
れる式の粘度指数αが、配向膜形成過程における少なく
とも一種の有機溶媒および温度条件下で0.85以上の値を
示し、かつ表面張力が8〜35dyn/cmの範囲であるポリマ
ーを包含するものであることを特徴とする液晶素子。
[η]=K・Mα [I] (ただし式[I]中、[η]はポリマーの溶液粘度測定
法における固有粘度、Kは定数、Mは分子量、αは粘度
指数を示す。) 2.一対の電極基板、配向膜及び液晶から少なくとも構成
される液晶素子において、配向膜が下記一般式[II]で
示される、ポリフマル酸エステルまたはこれらの共重合
体を少なくとも含むポリマーからなることを特徴とする
液晶素子。
(式中、R1、R2は同一もしくは異なる基であって、直鎖
状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、ハロ
ゲン化アルキル基、シルアルキル基、シロキサニルアル
キル基から選ばれる少なくとも一種の有機基を示す。) 3.一対の電極基板、配向膜及び液晶を包含する液晶素子
の配向膜用コーティング組成物であって、該組成物が下
記一般式[II]で示される、ポリフマル酸エステルまた
はこれれの共重合体を少なくとも含むポリマーと、含ハ
ロゲン有機溶媒からなることを特徴とする液晶素子配向
膜用コーティング用組成物。
(式中、R1、R2は同一もしくは異なる基であって、直鎖
状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、ハロ
ゲン化アルキル基、シルアルキル基、シロキサニルアル
キル基から選ばれる少なくとも一種の有機基を示
す。)」 まず第1番目の発明について説明する。
本発明において、粘度指数αが0.85以上の値であるとい
うことは、ポリマー主鎖がリジッドで棒状構造のポリマ
ーであることを示す。好ましい粘度指数αは0.90以上で
あり、特に好ましく0.95以上である。ここで、粘度指数
αは、配向膜形成過程における少なくとも一種の有機溶
媒および温度条件下におけるものをいう。ここでいう配
向膜形成過程とは、特に配向膜分子の配向状態が決定さ
れる時を指す。実際の該工程においては、一般的には、
調製された配向膜形成用溶液が基板などに塗布され、常
温または必要に応じて、蒸発を早めるために加熱などを
されて、溶媒を蒸散させる工程を経て、配向膜が形成さ
れる。したがって、それらの場合に応じて、温度条件と
しては、加熱しないのなら、塗布する瞬間の溶液温度で
あり、溶媒を蒸散させるために加熱されるときはその加
熱温度の場合で有り得るものである。または、温度変化
がある場合、その途中過程の温度であることももちろん
有り得る。
このような変化過程の事象は、溶媒にも同様のことが有
り得る。即ち、混合溶媒において途中で溶媒組成が変化
し得る場合がそうである。
これらの諸条件は、配向膜を形成する条件から求められ
る温度・溶媒を決定し、該温度・溶媒条件で、各種ポリ
マーの粘度指数αを測定して、本願の第1の発明の条件
を満たす粘度指数αを有するポリマーを決定することも
できるし、または、あるポリマーについて、様々な温度
・溶媒条件で粘度指数αを測定して、本願の第1の発明
の条件の粘度指数αを有し得る、温度・溶媒条件を決定
して、該温度・溶媒条件に従って、配向膜を形成するこ
とも自在にできる。
本発明において、粘度指数は次のMark-Houwink-Sakurad
a式[I]によって定義される。
[η]=K・Mα [I] (ただし式[I]中、[η]はポリマーの溶液粘度測定
法における固有粘度、Kは定数、Mは分子量、αは粘度
指数を示す。) 本発明における固有粘度[η]の求め方は常法による。
すなわちまずあらかじめ粘度−分子量関係式を求めてお
く。次にオストワルド型、ウベローデ型などの粘度計を
用いて、高分子の稀薄溶液の流下時間を測定して、次式
により相対粘度 (ηrel)を求める。
ηrel=t/t0 ここでt0は純溶媒の流下時間、tは高分子の稀薄溶液の
流下時間である。次に次式により比粘度(ηsp)を求め
る。
ηsp=ηrel−1 さらに還元粘度(ηred)は単位濃度あたりの比粘度で
次式で求められる。
ηred=ηsp/c(cはポリマー濃度) 固有粘度[η]はc=0に外挿した還元粘度である。
実験的には幾つかの濃度で粘度を求めることによってc
=0に外挿した固有粘度が求められる。
定数Kと粘度指数αはlog[η]とlogMnまたはlogMwを
プロットすることによって求められる。
log[η]=logK+αlogM ただし、上式のプロットを行なうためには、浸透圧、光
散乱、遠心沈降法などによって分子量(MnまたはMw)を
決定しておく必要ある。
粘度指数αが0.85以上、好ましくは0.95以上になるとポ
リマーは棒状構造になることが理論的にも立証されてい
る。とくに側鎖に大きな(かさ高い)置換基を有するポ
リマーは主鎖の自由回転が束縛され、必然的に棒状構造
となり易い。そしてかかるポリマーが何故液晶の配向性
に優れるかということについては明確な理論的立証は今
のところ困難であるが、ポリマー主鎖が棒状構造になる
と、ポリマー自体が一定方向に配向し易く、この配向方
向に沿って液晶が配向し易くなるためと考えられる。
本発明において用いられる粘度指数αが0.85以上のポリ
マーとしては、どのようなものであってよいが、好まし
くはポリフマル酸エステルたとえばフマル酸エステルの
単独重合体または共重合体、またはその誘導体、並びに
ポリ置換アセチレン、たとえば置換アセチレンの単独重
合体または共重合体、またはその誘導体などである。
本発明においてポリフマル酸エステルのエステル基とし
てはとくに限定されるものではないが、炭素数3以上の
直鎖状もしくは分岐状アルキルが好ましい。フマル酸の
2つのエステル基は同一でも異なっていてもよい。とく
にエステルとしてはイソプロピル、シクロヘキシル、シ
クロペンチルなどの第二アルキル基を有するものや、te
rt−ブチル、tert−ペンチルなどの第三アルキル基を有
するものは高分子量の重合体が得られ好ましい。
ポリフマル酸エステルの粘度指数αは、ポリフマル酸ジ
イソプロピルについては0.98という値が報告されている
(大津ら、Polymer Preprints Japan、32、1039(198
3))がエステル基がさらにかさ高くなり、分子の剛直
性が増したものについては、さらにα値が増大すると考
えられる。
さらに本発明においてポリ置換アセチレンとしては、特
に限定されるものではないが、置換アセチレンの単独重
合体としてはポリ(1−トリメリルシリル−1−プロピ
ル)、ポリ(tert−ブチルアセチレン)、ポリ(2−オ
クチン)、ポリ(1−クロロ−2−フェニルアセチレ
ン)、ポリ(1−フェニル−1−プロピン)などが好ま
しい。
これらのポリマーの粘度指数αとして0.89から1.07の値
が報告されている(増田ら、Polymer Preprints、Japa
n、33、66(1984))。
これらのポリマーは通常180℃以上の耐熱性を有してい
るので、液晶用配向膜として用いる場合、液晶の注入や
スペーサーの接着を高温で行なっても分解や劣化がおこ
りにくく、この点でも配向膜として優れている。
これらのポリマーは、いずれも近年になって見い出され
たものであり、例えば次に示した製造方法によって入手
できるものである。
ポリフマル酸エステルは、モノマーのエステル基が嵩高
くなると重合性が増すため単独重合などによって高分子
量の半屈曲性ポリマーとして形成される(大津ら、Makr
omol.Chem.、Rapid Commun.、2,725(1981)、大津ら、
ibid、279、729(1981))。
ポリ置換アセチレンは、遷移金属触媒によって単独重合
して高分子量の剛直ポリマーが得られる[増田ら、Acc.
Chem.Res.、17,51(1984)]。
上記において誘導体とは、上記重合体から反応によって
誘導された重合体の他、熱処理などを行ってポリマーを
変質したものなどをいう。たとば上記ポリフマル酸tert
−ブチルの場合、基板に塗布した後、高温で熱処理し、
側鎖のtert−ブチル基の一部または全部をカルボン酸に
したものなどである。さらに配向膜を形成後、表面改質
のため、プラズマなどによる表面処理を行ったものも含
まれる。そのほか共重合体も含む。
本発明の配向膜として用いることができる他のポリマー
としては、ポリN−置換マレイミド、ポリN,N,N′,N′
−テトラアルキルフマルアミドなどのポリフマル酸エス
テルに類似のポリマーや、ポリ(ベンジルアクリレー
ト)、オリ[1−(N−カルボエトキシ−フェニル)−
メタクリルアミド]、ポリ(ビニルサルフェート)、ポ
リ(p−ジエチルフォスフォノ−メチルスチレン−コー
スチレン)、ポリ(メチルメタクリレートーコ−p−イ
ソプロピルスチレン)、ポリ[(ブチルイミノ)カルボ
ニル][ポリ(ブチルイソシアネート)]、ポリ(1−
イソブチル−3−フェニルシルセスキオキサン)、ポリ
(3−メチルブテンシルセスキオキサン)、ポリ(フェ
ニルシルセスキオキサン)などである。
また、液晶分子の均一な配向を達成するという観点から
は、とくに強誘電性液晶素子では、液晶分子の極性部分
に対して相互作用があまり働かないことが素子の双安定
性の達成に重要であり、この点で本発明において、液晶
配向膜を形成するポリマーの表面張力は、従来のポリイ
ミドなどに比べて低い、8〜35dyn/cmの範囲に入ってい
る。この点で、塩化ビニルは、その粘度指数αが0.85程
度であるが、表面張力が41.9dyn/cm(Polymer Handbook
3rd Edition,page IV/415,John Wiley & Sons(198
9)による)であるので、本発明に用いられるポリマー
としては不適切である。また、このことはSBEタイプの
液晶素子で表示品質の向上にとって重要な液晶分子のハ
イプレチルト化(プレチルト角を高くすること。)にと
っても良好に作用する。本発明において、ポリマーの表
面張力としては、対象となるポリマーの薄膜表面での各
種液体の接触角の測定値をもとに、Zisman plot(Zisma
n,et al.,J.Colled Sci.,7,428(1952))から求めた臨
界表面張力の値や文献(Owens,et. al.,J.Appl.Polymer
Sci.,13,1711(1969):Kaelble,et al.,J.Adhesion,2,
50(1970):畑ら、日本接着協会誌、8,No.3,131 141
(1972):Panzer,J.Colloid Sci.,44,142(1973))な
どに記載の拡張Fowkes式より求めた値が使用される。
また配向膜を得る手段としては、浸漬法、スピンコート
法、印刷法、水面展開法、ラングミュアー−ブロジット
法(LB法)など公知のいかなる手段も採用できる。かか
る場合ポリマーが可溶ならば溶媒はどのようなものを用
いてもよい。
本発明で好ましいポリマーであるポリフマル酸エステル
やポリ置換アセチレンは、ベンゼンやクロロホルムなど
の一般の有機溶媒に可溶で、従来のポリイミドのように
高温での加熱縮合による環化を必要としないため、ガラ
スなどに比べて耐熱性の劣るプラスチック基板に対して
も容易に適用可能で、好適も簡略なものとなる。また省
エネルギー的にも優れる。
次に第2、3番目の発明を説明する。
本発明において、ポリフマル酸エステル類とは、 なる基本構造を主として有するポリマーで、ポリフマル
酸エステル、または共重合体、さらに他のポリマーとブ
レンドしたものなどを指す。
tert−ブチル、シクロヘキシル、イソプロピルなどの嵩
高い置換基を有するフマル酸エステルがラジカル重合し
て単独重合体や共重合体を与えることは、かつて西ドイ
ツ特許第1,176,871号公報、西ドイツ特許第1,520,702号
公報にF.Engelhardtらによって報告されている。そし
て、近年、前記した大津らによりさらに多くのフマル酸
エステル類の重合に関する検討がなされた。(T.Otsu,
N.Toyoda,Macromal.Chem.,Rapid Commun.,2,725(198
1),2,79(1981)など)。そして、フマル酸エステルが
単独重合して高分子量のポリマーとなり、そのポリマー
は屈曲性に乏しく、その剛直性ゆえに耐熱性にも優れて
いることを明らかにした。
本発明において、オリフマル酸エステルのエステル基
R1、R2としては、直鎖状または分岐状のアルキル基、シ
クロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シルアルキル
基、シロキサニルアルキル基から選ばれる少なくとも一
種の有機基が必要である。表面エネルギーを低くして、
液晶の配向を良好にするためである。さらに、一般式
[II]のR1、R2が、同一もしくは異なる基であって、少
なくとも一方が炭素数3〜9の第二アルキル基、また
は、炭素数3〜12のシクロアルキル基から選ばれるもの
は、とくに200℃以上の高い耐熱性を付与する上で好ま
しい。また、R1、R2の少なくとも一方がフッ素置換アル
キル基からなるものは、特に25dyn/cm以下の低い表面エ
ネルギーを付与する上で好ましい。フッ素置換アルキル
基の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチル基、
2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル
基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、3,3,4,4,5,
5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、1,1,2,2−テトラヒ
ドロパーフルオロオクチル基、1,1,2,2−テトラヒドロ
パーフルオロデシル基などであるが、とくにこれらに限
定されるものではない。また、R1、R2が、イソプロピ
ル、シクロヘキシル、シクロペンチルなどの第二アルキ
ル基を有するものや、tert−ブチル、tert−ペンチルな
どの第三アルキル基を有するものは高分子量の重合体が
得られて好ましい。
また、液晶分子の均一な配向を達成するという観点から
は、第一の発明の説明でさきに述べたように、ポリフマ
ル酸エステルの表面張力は、従来のポリイミドなどに比
べて低い、8〜40dyn/cmの範囲に入っていることが好ま
しい。
また、ポリフマル酸エステルの共重合体を得るためのコ
モノマーとしては、とくに限定されるものではないが、
酢酸ビニルやスチレンなどの電子供与性モノマーはとく
に容易に共重合体を形成するので好ましい。
ポリフマル酸エステル類の製造方法は、とくに限定され
るものではなく、フマル酸エステルのラジカル重合によ
っても良いし、大津らによるPolymer Bulletin,11,453
(1984)に記載されているように、マレイン酸エステル
類の異性化を経る重合法によっても良い。
これらのポリマーは、通常180℃以上の耐熱性を有して
いるので、液晶配向膜として用いる場合、液晶の注入や
スペーサーの接着を高温で行っても分解や劣化がおこり
にくい。また、ポリイミドのように遊離のイオン性基を
被膜中に生ずる可能性のほとんどないので、液晶素子と
した場合にも、長期にわたって液晶分子の安定な配向を
保つことができる。
本発明において、含ハロゲン有機溶媒とは、室温または
加熱してポリフマル酸エステル類を溶解して,均一溶液
を形成するもので、溶媒分子中にハロゲンを含むもので
あれば特に限定されるものではないが、含塩素有機溶
媒、含フッ素有機溶媒が溶媒の安定性の点で好ましい。
例えば、含塩素有機溶媒としては、クロロホルム、塩化
メチレン、トリクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロ
ロエタンなどの塩素化脂肪族炭化水素や、1−クロロナ
フタレン、1,2、4−トリクロロベンゼンなどの塩素化
芳香族炭化水素などが好ましい。また、含フッ素有機溶
媒としては、1、1、3−トリクロロトリフルオロエタ
ン、テトラクロロジフルオロエタンなどのフルオロカー
ボン類や、2、2,2−トリフルオロエタノール、1H、1
H、3H−テトラフルオロ−1−プロパノール、1H、1H、5
H−オクタフルオロ−1−ペンタノール、1H、1H、7H−
ドデカフルオロ−1−ヘプタノールなどの含フッ素アル
コールやトリフルオロ酢酸エチルなどの含フッ素エステ
ルなどが好ましい。この中でも含フッ素アルコールは、
基板への良好な濡れ性の溶媒の沸点を広い範囲で選べる
ことなどの取り扱いのしやすさから特に好ましい。
ポリフマル酸エステル類は、ケトン類やエーテル類に高
濃度で溶解すると、ゲルを生じて高粘度の溶液を調製す
ることが難しいが、これらの含ハロゲン溶媒では、ポリ
フマル酸エステル類を0.1重量%以上の低濃度から30重
量%以下の高濃度まで容易に、また均一に溶解して、低
粘度から高粘度の溶液まで自由に調製することができ
る。さらに30重量%を越える濃度であっても、条件を選
ぶことにより使用することができる。
加えて、本発明によるコーティング用組成物は、表面張
力が低く、基板表面へのコーティング用途に対して、基
板に対する濡れ性に優れており、均一でピンホールなど
の欠陥のないコーティング被膜を大面積にわたって形成
することができる。
本発明においては、本発明に記載の成分の他に、いかな
る成分を含んでも良い。例えば、表面物性の改善や機能
付与のために他のポリマーをブレンドしたり、基板との
接着性を向上させるために、シランカップリング剤など
を配合しても良い。その他、酸化防止剤、界面活性剤な
どの添加剤を含ませても良い。
本発明のコーティング用組成物を用いてコーティング被
膜を形成する方法としては、特に限定されるものではな
い。一般的には、刷毛塗り法、キャストコーティング
法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、
水面展開法、LB法、印刷法などの簡便な操作により、均
一な被膜を形成することができる。この時、コーティン
グ液の粘度や溶媒などは、採用するコーティング方法や
形成する膜厚により、適宜、最適な組成を選択すること
が望ましく、本発明の組成を用いれば、広い範囲のコー
ティング方法への適応が可能となる。さらに、上記コー
ティング操作を行った後の、溶媒の乾燥手段や乾燥温度
については、特に限定されるものではない。
本発明に用いるポリフマル酸エステル類は、従来のポリ
イミドのように高温での加熱縮合による環化を必要とし
ないために、耐熱性の劣るプラスチック基板に対しても
容易に適用可能で、工程も簡略なものとなる。
本発明のコーティング用組成物を用いて形成した被膜の
膜厚は、コーティング方法によっても異なるが、LB法に
よる単分子膜から、キャストコーティング法による1μ
m以上の膜厚まで、広い範囲の膜厚のコーティング被膜
を形成することができる。
本発明のコーティング用組成物を用いて形成した被膜に
対して種々の後処理をほどこすことについても特に限定
されるものではない。例えば、被膜形成後、高温雰囲気
で熱処理することにより、被膜中のポリフマル酸エステ
ル主鎖のパッキングを密にすることができる。熱処理の
条件については特に限定されるものではないが、130〜2
40℃で10分から180分程度の熱処理が特に好ましい。ま
た、液晶素子の配向膜として用いる場合には、ラビング
処理(布やブラシで一定方向にこする公知の処理手段)
などの配向処理をほどこすことが好ましい。さらに、ポ
リフマル酸エステルとして、ポリフマル酸tert−ブチル
などの場合には、高温で熱処理することにより側鎖のte
rt−ブチル基の一部または全部をカルボン酸にすること
ができる。このような処理にあっては、180〜250℃で10
分から180分程度の熱処理が特に好ましい。
本発明のコーティング用組成物を用いて形勢した液晶配
向膜として期待される特性としてはたとえば下記のごと
くである。
(A)液晶分子の配向性能が良いこと。
(B)基材との密着性が良いこと。
(C)吸湿性の小さいこと。
(D)透湿性が小さいこと。
(E)誘電性が大なこと。
(F)耐薬品性が良いこと。
(G)耐熱性の良いこと。
(H)ラビング性能の良いこと。
(I)低イオン性不純物であること。
(J)高耐電圧性(高電圧をかけても破壊しない性質)
であること。
(K)透光性の良いこと。
本発明のコーティング用組成物を用いて形成した被膜
は、従来、液晶配向膜として用いられているポリイミド
に比べて(A)、(C)、(I)、(K)などの点で優
れており、他の項目についても実用に際して問題となる
ような項目はない。特に、次世代の液晶ディスプレイと
して現在開発が進められている強誘電性液晶ディスプレ
イについては、液晶分子がカイラル スメクチック C*
という結晶に近い分子配列をとらねばならず、ポリイミ
ドを配向膜として用いても満足すべき配向状態を形成さ
せるのが極めて難しいが、本発明のコーティング用組成
物を用いて形成した被膜によれば、ディスプレイとして
重要な配向の均一性、コントラスト、応答速度などいず
れもポリミドに比べてレベルの高い性能を発現すること
ができる。また、ポリフマル酸エステルによる被膜とし
ても、例えば、トルエンなどのハロゲンを含まない有機
溶媒を用いた組成に比べて、本発明に示す組成によるも
のが、液晶配向膜として優れた特性を示す。
本発明のコーティング用組成物を用いて形成した被膜が
トルエンなどのハロゲンを含まない有機溶媒を用いた組
成に比べて、液晶配向膜として優れた特性を示し理由に
ついては、液晶分子の配向のマカニズムが充分に明らか
になっていないので、定かではないが、形成された被膜
の広角X線解析による分析によれば、トルエン溶液によ
る被膜に比べ、クロロホルム溶液による被膜のほうがポ
リマー主鎖のパッキングが密になっており、このことが
液晶分子の配向に適しているためと考えられる。
本発明のコーティング用組成物を用いて形成した被膜の
表面エネルギーは、用いるポリフマル酸エステルの種類
によっても異なるが、嵩高いアルキル基が主鎖を覆って
いるために、おおむね臨界表面張力35dyn/cm以下の低エ
ネルギー表面を形成する。従来、この様な低エネルギー
表面は、含フッ素ポリマーなどにより形成可能である
が、広い範囲の溶媒に可溶で、なおかつ180℃以上の耐
熱性という条件を満たすポリマーは少ない。したがっ
て、低表面エネルギーのコーティング被膜を容易に形成
できるという観点からも、本発明のコーティング用組成
物は、広い用途を提供することができる。
前記した本発明の棒状構造を有するポリマーは単独で用
いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
さらに本発明のポリマーを含むものであればいかなる成
分を含んでもよい。例えば従来から、用いられているポ
リイミドやポリエステル、ポリアミド、アラミドなどを
配合してもよい。これらの膜と多層構造にしてもよい。
また基板との接着性を向上させるため、シランカップリ
ング剤などを配合してもよい。あるいは、シランカップ
リング剤などによる接着層を介在させてもよい。その他
耐熱安定剤、酸化防止剤、界面活性剤などの添加剤を含
ませてもよい。
本発明で用いる基板の種類は制約されず、ITOなどの透
明電極を形成したガラス基板はもちろん、ポリエステル
等のプラスチック基板、さらに薄膜トランジスター・ア
レイや薄膜ダイオード・アレイなどを形成したガラス基
板、シリコーンウエハー等を有利に用いることができ
る。
次に本発明の配向膜は強誘電性液晶(SmC*)を用いた液
晶素子、TFT(薄膜トランジスタ)タイプの液晶素子、S
BE(スーパーツウィステッドバイリフリンジェンスエフ
ェクト)タイプの液晶素子、TN液晶(ツウィステッドネ
マチック液晶)を用いた液晶素子、ゲスト−ホスト方式
のタイプなどいかなる液晶素子などにも有効である。
また液晶素子の用途はポケットテレビ、壁掛けテレビ、
パソコン端末機、ワープロ表示体、液晶シャツター、自
動車などの乗物用ディスプレーなどその種類は問わな
い。
次に本発明の配向膜を用い、強誘電性液晶を用いた場合
の液晶セルの好ましい態様を図面により示す。
第1図は一部破断斜視図であり、第2図は第1図の断面
図である。図中1および3はそれぞれ所定のパターンを
有する透明電極(図示せず)、および配向膜7を表面に
形成したガラス基板で、耐熱性材料を球状又は多角形状
に成形してなる微粒子(以下スペーサ粒子と呼ぶ)2を
一様に分散させて対向方向側の間隙長を規定し、また基
板1の周縁部に配設されたシール材4及び分散配合した
潜在型硬化剤含有のエポキシ樹脂接着粒子8により加熱
接着して対向方向側へ引寄せた状態でセルに構成されて
いる。この発明については既に特願昭61-219273号で提
案しているので詳細は省略する。
このようなセル構造体にカイラルスメクチックC相を持
つ液晶物質を注入して、注入口を封止して液晶素子とす
るものである。
[実施例] 以下実施例について説明するが、本発明は実施例の記載
に限定されるものではない。
なお実施例に用いたポリマのうちポリフマル酸エステル
類は大津らの方法[Polymer Bulletin、11,453〜458(1
984)]を参考にして合成、重合を行なったものであ
り、ポリ置換アセチレン類は、増田らの方法[J.Am.Che
m.Soc.、105,7473〜7474(1983)]に従って重合を行な
ったものである。
なお液晶組成物の組成割合は重量%で示す。
下記の構造式中、*印は不整炭素を示す。
また強誘電性液晶を用いた実施例においては第1〜2図
の構成でセルを作成した。エポキシ接着粒子8は、東レ
株式会社製“トレパール"ADを用いた。
実施例1 所定のパターンの透明電極(ITO膜)が形成されたガラ
ス基板全面にポリフマル酸ジイソプロピル(Mw=25万、
粘度指数α=0.98)の0.25重量%クロロホルム溶液をス
ピンナーで塗布した。そして大気中で自然乾燥させ膜厚
約300Åの配向膜を形成させた。この配向膜を150℃で1
時間熱処理を行なった後、ラビングによる表面処理を行
なった。このようにして得られた2枚の電極基板をスペ
ーサーで固定し、基板の周囲をエポキシ系接着剤で封止
し、セルを形成した。
次いで基板間の間隙部分にピリミジン系強誘電性液晶物
質(特開昭60-260564号公報記載)を注入した。この液
晶組成物は下記のとおりである。
この液晶素子に対して、20Vの駆動電圧を与えたとこ
ろ、セル内の液晶分子は良好な双安定性を示し、コント
ラスト比が15、応答速度が60μsecという優れた結果を
得た。また顕微鏡観察による配向状態も極めて優れてい
た。
さらに理想状態に近いモノドメイン状態(1画素内で白
と黒の反転が一気に瞬間的に起る状態)が得られた。
なお従来のポリイミド配向膜の場合のコントラスト比は
5、応答速度は120μsecであった。
実施例2 所定のパターンの電極が形成されたガラス基板全面にポ
リフマル酸ジシクロヘキシル(Mw=45万)の0.25重量%
クロロホルム溶液をスピンナーで塗布し、自然乾燥させ
ることによって膜厚約200Åの配向膜を形成させた。こ
の配向膜を実施例1と同様にして熱処理、ラビングを施
した後、実施例1と同様にピリミジン系強誘電性液晶物
質を注入した液晶素子を組立てた。この液晶素子に対し
て20Vの駆動電圧を加えたところ、実施例1と同様に液
晶分子は良好な双安定性を示し、コントラスト比、応答
速度、配向状態ともに優れた値を示した。
実施例3 所定のパターンの電極が形成されたガラス基板全面にポ
リ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)(Mw=100
万、粘度指数α=1.04)の0.1重量%クロロホルム溶液
をスピンナーで塗布し、自然乾燥させることにより膜厚
約1000Åの配向膜を形成させた。この配向膜を実施例1
と同様にして熱処理、ラビングを施した後、ピリミジン
系強誘電性液晶物質を注入した液晶素子を組立てた。こ
の素子に対して20Vの駆動電圧を加えたところ、実施例
1と同様に液晶分子は良好な双安定性を示し、コントラ
スト比、応答速度、配向状態ともに優れた値を示した。
実施例4 所定のパターンの電極が形成されたガラス基板全面に、
各々ポリフマル酸ジイソプロピル、ポリフマル酸ジシク
ロヘキシル、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピ
ン)を実施例1〜3と同様に塗布し、熱処理し、ラビン
グ処理を施した後、エステル系強誘電性液晶物質を注入
し、液晶素子を組立てた。エステル系強誘電性液晶物質
の組成の一実施例を以下に示す。得られた各々の素子
は、実施例1と同様に液晶分子は良好な双安定性を示
し、コントラスト比、応答速度、配向状態ともに優れた
値を示した。
実施例5 所定のパターンの電極が形成されたガラス基板全面に、
各々ポリフマル酸ジイソプロピル、ポリフマル酸ジシク
ロヘキシル、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピ
ン)を実施例4と同様に塗布し、熱処理し、ラビング処
理を施した後、90°前後にツィストするように2枚の基
板(A,B)のラビング方向を設定し、ネマチック型の液
晶物質を注入し、液晶素子を組立てた。
得られた各々の素子は均一な配向状態を示し、良好なコ
ントラストが得られた。
実施例6 所定のパターンの電極が形成されたガラス基板全面に、
各々ポリフマル酸ジイソプロピル、ポリフマル酸ジシク
ロヘキシル、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピ
ン)を各々実施例4と同様に塗布し、熱処理し、ラビン
グ処理を施した後、170°〜270°にツィストするように
2枚の基板(A,B)のラビング方向を設定し、ネマチッ
ク型の液晶物質を注入し、液晶素子を組立てた。この素
子はSBE素子を呼ばれるものである。
得られた各々の素子は均一な配向状態を示し、良好なコ
ントラストが得られた。
実施例7 所定のパターンの電極が形成されたガラス基板全面に、
各々ポリフマル酸ジイソプロピル、ポリフマル酸ジシク
ロヘキシル、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピ
ン)を実施例4と同様に塗布し、熱処理し、ラビング処
理を施した後、ホモジニアス配向するように2枚の基板
(A,B)のラビング方向を平行に設定し、数重量%の色
素を含んだネマチック型の液晶物質を注入し、液晶素子
を組立てた。この素子はG−H型素子と呼ばれるもので
ある。
得られた各々の素子は均一な配向状態を示し、良好なコ
ントラストが得られた。
実施例8 所定のパターンの透明電極(ITO膜)が形成されたガラ
ス基板全面にポリフマル酸ジイソプロピル(Mw=25万)
の0.25重量%1,1,3−トリクロロトリフルオロエタン溶
液をスピンナーで塗布した。そして大気中で自然乾燥し
て液晶配向膜を形成させた。この配向膜を150℃で1時
間熱処理を行った後、ラビングによる表面処理を行なっ
た。このようにして得られた2枚の電極基板をスペーサ
ーで固定し、基板の周囲をエポキシ系接着剤で封止し、
セルを形成した。
次いで基板間の間隙部分に実施例1に記載のフェニルピ
リミジン系強誘電性液晶物質を注入した。
この液晶素子に対して、20Vの駆動電圧を与えたとこ
ろ、セル内の液晶分子は良好な双安定性を示し、コント
ラスト比が15、応答速度が60μsecという優れた表示性
能を示した。また、偏光顕微鏡観察による配向状態も極
めて優れていた。
実施例9 所定のパターンの電極が形成されたガラス基板全面にポ
リフマル酸ジイソプロピル(Mw=25万)の0.5重量%ト
リクロロエチレン溶液をスピンナーで塗布した。そして
大気中で自然乾燥して液晶配向膜を形成させた。この配
向膜を実施例1と同様にして熱処理、ラビングを施した
後、実施例1と同様にフェニルピリミジン系強誘電性液
晶物質を注入した液晶素子を組み立てた。この素子に対
して20Vの駆動電圧を加えたところ、実施例1と同様に
液晶分子は良好な双安定性を示し、コントラスト比、応
答速度、配向状態ともに優れた性能を示した。
実施例10 所定のパターンの電極が形成されたガラス基板全面にポ
リフマル酸ジイソプロピル(Mw=25万)の0.5重量%1
H、1H、5H−オクタフルオロ−1−ペンタノール溶液を
スピンナーで塗布した。そして140℃のホットプレート
上で乾燥して液晶配向膜を形成させた。この配向膜を実
施例1と同様にして熱処理、ラビングを施した後、実施
例1と同様にフェニルピリミジン系強誘電性液晶物質を
注入した液晶素子を組み立てた。この素子に対して20V
の駆動電圧を加えたところ、実施例1と同様に液晶分子
は良好な双安定性を示し、コントラスト比、応答速度、
配向状態ともに優れた性能を示した。
実施例11 所定のパターンの電極が形成されたガラス基板全面にポ
リフマル酸ジイソプロピル(Mw=25万)の0.25重量%ク
ロロホルム溶液を引上げ速度20mm/minでディップコーテ
ィング法によりで塗布した。そして大気中で自然乾燥し
て液晶配向膜を形成させた。この配向膜を実施例1と同
様にして熱処理、ラビングを施した後、実施例1と同様
にフェニルピリミジン系強誘電性液晶物質を注入した液
晶素子を組み立てた。この素子に対して20Vの駆動電圧
を加えたところ、実施例1と同様に液晶分子は良好な双
安定性を示し、コントラスト比、応答速度、配向状態と
もに優れた性能を示した。
実施例12 所定のパターンの電極が形成されたガラス基板全面にポ
リ(イソプロピル1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロ
デシルフマレート)の0.5重量%トリフルオロ酢酸エチ
ル溶液をスピンナーで塗布した。そして、大気中で自然
乾燥して液晶配向膜を形成させた。この配向膜を実施例
1と同様にして熱処理、ラビングを施した後、実施例1
と同様にフェニルピリミジン系強誘電性液晶物質を注入
した液晶素子を組み立てた。この素子に対して20Vの駆
動電圧を加えたところ、実施例1と同様に液晶分子は良
好な双安定性を示し、コントラスト比、応答速度、配向
状態ともに優れた性能を示した。
実施例13 所定のパターンの透明電極(ITO膜)が形成されたガラ
ス基板全面にポリフマル酸ジイソプロピル(MW=25万、
粘度指数α=0.98)の0.25重量%クロロホルム溶液をス
ピンナーで塗布した。そして、大気中で自然乾燥させ、
膜厚300Åの配向膜を形成させた。この配向膜を150℃で
1時間熱処理を行った後、ラビングによる表面処理を行
った。このようにして得られた2枚の電極基板をスペー
サで固定し、基板の周囲をエポキシ系接着剤で封止し、
セルを形成した。
次いで、基板間の間隙部分に誘電異方性が負(Δε<
0)の液晶、たとええばBDH社(Limited,Dorset,Englan
d)製SCE5乃至SCE6を注入した。この液晶素子に、直流
電界を印加し、永久双極子と電界との相互作用により高
速に反転させた後、永久双極子と電界の相互作用による
動きが追従できないような高周波の交流電圧を印加した
ところ、誘電異方性と電界の相互作用により液晶分子を
電界に対して直流に、すなわち、基板に平行にすること
ができた。この状態は、高コントラストが得られる理想
配向状態にほぼ等しい。コントラスト比を測定すると、
電圧約13V、周波数15KHzの交流電圧を反転後に印加した
場合、コントラスト比30:1であった。
一方、ポリイミドなど、従来の配向膜を使ったセルで誘
電異方性が負の液晶をこのように駆動した場合、反転後
に印加する交流電圧は、電圧60数V、周波数約30KHzと
いう高電圧、高周波が必要であった。
これは次のような理由によるものと思われる。すなわ
ち、誘電異方性によって液晶分子を基板に平行にする力
は、ΔεE2に比例するから、ポリイミド配向膜を使った
セルでは、ポリフマル酸ジイソプロピルの約16倍の力が
必要ということになる。ポリフマル酸ジイソプロピルを
使ったセルでは、初期配向状態は理想状体に近いのに対
し、ポリイミドを使ったセルではツイスト状態にあると
考えられる。この配向状態が理想配向状態に近いほど、
低電圧・低周波の交流電圧で、液晶分子を基板に平行に
できると考えられる。
なお、誘電異方性が性の強誘電性液晶の中でも、周波数
の上昇により誘電異方性が負になる強誘電性液晶につい
ては、上記負の強誘電性液晶の場合と同様の効果があ
る。
実施例14 実施例に用いたポリマーの表面張力を評価した。測定
は、各種ポリマーの溶液をガラス板上にキャストした
後、溶媒除去して得られたデンスフィルムを用いて、協
和界面科学(株)製接触角計CA−D型を用いて各種液体
との接触角を測定した。そして、文献(畑ら、日本接着
協会誌、8、No.3、131〜141(1972))の方法にしたが
って各ポリマーの表面エネルギーを算出した。結果は表
1に示した。
[発明の効果] 以上説明したように本発明によれば、液晶の配向膜とし
て棒状構造の特殊なポリマーを用いることにより、コン
トラスト比が高く画像が良好で見映えがよく、ものによ
っては理想状態に近いモノドメイン状態(1画素内で白
と黒の反転が一気に瞬間的に起る状態)が得られるとと
もに、液晶の応答速度を速くすることができるという顕
著な効果を奏する。また液晶物質の配向状態が極めて優
れた配向膜とすることができた。
さらに本発明は、ポリフマル酸エステル類と含ハロゲン
有機溶媒からなるコーティング液とすることにより、種
々の製膜方法により均一にかつ容易にコーティング被膜
を形成できる組成物を提供することができ、液晶配向膜
のような薄くてかつ均一厚さの精度に優れた膜を得るこ
とができた。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の配向膜を用い、強誘電性液晶を用いた
場合の液晶セルの好ましい態様の一部破断斜視図を示
し、第2図は第1図の断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 耕吉 東京都江東区亀戸6丁目31番1号 セイコ ー電子工業株式会社内 (72)発明者 岩佐 浩二 東京都江東区亀戸6丁目31番1号 セイコ ー電子工業株式会社内 (72)発明者 川辺 紀雄 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株 式会社滋賀事業場内 (72)発明者 池内 寛幸 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株 式会社滋賀事業場内 (56)参考文献 特開 昭60−156043(JP,A) 高分子学会編「高分子の分子設計1−分 子設計の基礎−」(昭47−11−15)培風館 P.28

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一対の電極基板、配向膜及び液晶から少な
    くとも構成される液晶素子において、配向膜が下記
    〔I〕で示される式の粘度指数αが、配向膜形成過程に
    おける少なくとも一種の有機溶媒および温度条件下で0.
    85以上の値を示し、かつ表面張力が8〜35dyn/cmの範囲
    であるポリマーを包含するものであることを特徴とする
    液晶素子。 〔η〕=K・Mα 〔I〕 (ただし式〔I〕中、〔η〕はポリマーの溶液粘度測定
    法における固有粘度、Kは定数、Mは分子量、αは粘度
    指数を示す。)
  2. 【請求項2】請求項第1項において、〔I〕で示される
    式の粘度指数αが0.95以上の値であることを特徴とする
    液晶素子。
  3. 【請求項3】請求項第1項において、ポリマーがポリ置
    換アセチレン、ポリフマル酸エステルまたはこれらの共
    重合体を少なくとも含むポリマーからなることを特徴と
    する液晶素子。
  4. 【請求項4】請求項第3項において、ポリ置換アセチレ
    ンがポリ(トリメチルシリルプロピン)、またはその誘
    導体であることを特徴とする液晶素子。
  5. 【請求項5】一対の電極基板、配向膜及び液晶から少な
    くとも構成される液晶素子において、配向膜が下記一般
    式〔II〕で示される、ポリフマル酸エステルまたはこれ
    らの共重合体を少なくとも含むポリマーからなることを
    特徴とする液晶素子。 (式中、R1、R2は同一もしくは異なる基であって、直鎖
    状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、ハロ
    ゲン化アルキル基、シルアルキル基、シロキサニルアル
    キル基から選ばれる少なくとも一種の有機基を示す。)
  6. 【請求項6】請求項第5項において、一般式〔II〕の
    R1、R2が、同一もしくは異なる基であって、少なくとも
    一方が炭素数3〜9の第2アルキル基、または炭素数3
    〜12のシクロアルキル基から選ばれることを特徴とする
    液晶素子。
  7. 【請求項7】請求項第5項において、一般式〔II〕の
    R1、R2が、同一もしくは異なる基であって、少なくとも
    一方がフッ素置換アルキル基からなることを特徴とする
    液晶素子。
  8. 【請求項8】請求項第5項において、一般式〔II〕の
    R1、R2が、イソプルピル基、シクロヘキシル基、または
    その誘導体から選ばれる一種以上であることを特徴とす
    る液晶素子。
  9. 【請求項9】請求項第5項において、ポリフマル酸エス
    テルまたはこれらの共重合体の表面張力が、8〜40dyn/
    cmの範囲であることを特徴とする液晶素子。
  10. 【請求項10】一対の電極基板、配向膜及び液晶を包含
    する液晶素子の配向膜用コーティング組成物であって、
    該組成物が下記一般式〔II〕で示される、ポリフマル酸
    エステルまたはこれらの共重合体を少なくとも含むポリ
    マーと、含ハロゲン有機溶媒からなることを特徴とする
    液晶素子配向膜用コーティング用組成物。 (式中、R1、R2は同一もしくは異なる基であって、直鎖
    状または分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、ハロ
    ゲン化アルキル基、シルアルキル基、シロキサニルアル
    キル基から選ばれる少なくとも一種の有機基を示す。)
  11. 【請求項11】請求項第10項において、含ハロゲン有機
    溶媒が、含フッ素有機溶媒であることを特徴とする液晶
    素子配向膜用コーティング用組成物。
  12. 【請求項12】請求項第10項において、ポリフマル酸エ
    ステル類の濃度が、0.1重量%〜30重量%の範囲である
    ことを特徴とする液晶素子配向膜用コーティング用組成
    物。
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