JPH07126859A - アルミニウム及びアルミニウム合金用６価クロムフリーの化成表面処理剤 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来のクロメート処理と同等以上の耐食性と
塗装との密着性を付与するアルミニウム及びアルミニウ
ム合金用６価クロムフリーの化成表面処理剤の提供。 【構成】 リンを含有する酸基を有する酸イオン（Ａ）
と３価クロムイオン、及び３価クロムを有する化合物イ
オンから選ばれる少なくとも１種のイオン（Ｂ）とフッ
化物、錯フッ化物から選ばれる少なくとも１種のフッ素
化合物（Ｃ）を含有し、且つ６価クロムイオンを含まな
いアルミニウム及びアルミニウム合金用６価クロムフリ
ーの化成表面処理剤及び前記（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｃ）
の他にさらにＺｎ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ｍｎ、Ｚｒ、Ｔｉ、Ｓ
ｎ、Ｗ及びＭｏから選ばれる少なくとも１種の金属化合
物（Ｄ）を含有し、且つ６価クロムイオンを含まないア
ルミニウム及びアルミニウム合金用６価クロムフリーの
化成表面処理剤。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はアルミニウム及びアルミ
ニウム合金を素材とする自動車ボディー、自動車部品、
熱交換器、建材、家電用部品、飲料缶等の全ての成型加
工品、鋳造品、及びシートコイルの６価クロムフリーの
化成表面処理剤に関する

【０００２】

【従来技術】アルミニウム及びアルミニウム合金用の化
成処理法に関して、クロム酸クロメート、リン酸クロメ
ート等のクロメート化成処理法が公知であり、主に素材
表面に耐食性、塗料との密着性を与えることを目的に使
われている。これら化成処理法は、反応型であるため複
雑な形状を成型物に均一な皮膜を形成させることができ
る利点があり、エアコン用熱交換器、ＤＩ缶、鋳造部品
等に適用され、優れた耐食性、塗料密着性を付与するも
のである。しかし、これらの処理液は有害性の高い６価
クロムを含有しているため、廃水処理を行う際には処理
液及び余剰の処理液を洗い落とした水洗液を還元処理す
る手間が必要である。また、クロム酸クロメート処理に
おいては形成された皮膜中にも６価クロムを含有してい
るため安全性の点であまり歓迎されない。そのため、６
価クロムを含まない処理剤が望まれ検討されている。

【０００３】クロムを含まないノンクロメート系表面処
理法に関しては、米国特許第４１４８６７０号「ジルコ
ニウム、またはチタンもしくはこれらの混合物とリン酸
塩とフッ化物を含む組成物」、米国特許第４１９１５９
６号「ポリアクリル酸、もしくはポリアクリル酸エステ
ル、フッ化ジルコニウム酸、フッ化チタン酸、もしくは
フルオロ硅酸を含む組成物」、及び特開昭５２−１３１
９３７号「ジルコニウムまたはチタン或いはこれらの混
合物、ホスフェート及びフッ化物を含むｐＨ１〜４の水
性処理液で処理する方法」等が開示されている。これら
の処理法は処理液中に６価クロムを含まない利点がある
ものの、クロメート処理法に比べて耐食性及び塗料密着
性が劣るため用途は限定されるという欠点を有してい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来のクロメート処理
は、処理液中に６価クロムを含有しているため安全性が
低く、特別な排水処理設備を必要とするという課題があ
った。本発明は、この課題を解決することを目的とした
６価クロムを含まない処理液であって、従来のクロメー
ト処理と同等レベルの耐食性と塗装との密着性を付与す
るアルミニウム、及びアルミニウム合金の表面処理剤を
提供するものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために鋭意検討した結果、リンを含有する酸
基を有する酸イオン（Ａ）と、３価クロムイオン、及び
３価クロムを有する化合物イオンから選ばれる少なくと
も１種のイオン（Ｂ）とフッ化物、錯フッ化物から選ば
れる１種または２種以上のフッ素化合物（Ｃ）を含有
し、且つ６価クロムイオンを含まない処理液、又は前記
（Ａ）（Ｂ）及び（Ｃ）の他にＺｎ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ｍ
ｎ、Ｚｒ、Ｔｉ、Ｓｎ、Ｗ及びＭｏから選ばれる少なく
とも１種の金属化合物（Ｄ）とを含有し且つ、６価クロ
ムイオンを含まない処理液でアルミニウム及びアルミニ
ウム合金の表面を化成処理することで前記課題を解決で
きることを新たに見い出し本発明を完成するに至った。

【０００６】すなわち本発明はリンを含有する酸基を有
する酸イオン（Ａ）と３価クロムイオン、及び３価クロ
ムを有する化合物イオンから選ばれる少なくとも１種の
イオン（Ｂ）とフッ化物、錯フッ化物から選ばれる少な
くとも１種のフッ素化合物（Ｃ）を含有し、且つ６価ク
ロムイオンを含まないことを特徴とするアルミニウム及
びアルミニウム合金用６価クロムフリーの化成表面処理
剤を提供する。

【０００７】また本発明はリンを含有する酸基を有する
酸イオン（Ａ）と３価クロムイオン、及び３価クロムを
有する化合物イオンから選ばれる少なくとも１種のイオ
ン（Ｂ）とフッ化物、錯フッ化物から選ばれる少なくと
も１種のフッ素化合物（Ｃ）と、Ｚｎ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ｍ
ｎ、Ｚｒ、Ｔｉ、Ｓｎ、Ｗ及びＭｏから選ばれる少なく
とも１種の金属化合物（Ｄ）とを含有し、且つ６価クロ
ムイオンを含まないことを特徴とするアルミニウム及び
アルミニウム合金用６価クロムフリーの化成表面処理剤
を提供する。

【０００８】以下、本発明の構成を詳述する。本発明に
おいて対象とするアルミニウム及びアルミニウム合金は
アルミニウム板、アルミニウム合金板及びアルミニウム
ダイキャスト材等である。

【０００９】本発明に用いられるリンを含有する酸基を
有する酸イオン（Ａ）は、リン酸イオン、亜リン酸イオ
ン、次亜リン酸イオン、ホスホン酸イオン、ホスフィン
酸イオン、ピロリン酸等の縮合リン酸イオン等であっ
て、水溶液中で解離してリンを含有する酸基を有する酸
イオンを与える化合物、例えばオルトリン酸、メタリン
酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸等の縮合リン
酸、フィチン酸等の有機リン酸、及びこれらのアルカリ
金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アミン化合物な
どの可溶性塩類によって供給される。

【００１０】３価のクロムイオン、及び３価クロムを有
する化合物イオンから選ばれる少なくとも１種のイオン
（Ｂ）は、水溶液中で解離して３価クロムイオン、もし
くは３価クロムの錯イオン、酸化物イオン、水酸化物イ
オン等の３価クロム化合物イオンを与える化合物で、硫
酸、硝酸、リン酸、フッ酸、酢酸、蟻酸等の無機酸塩、
有機酸塩等によって供給される。

【００１１】フッ素化合物（Ｃ）は、素材であるアルミ
ニウム又はアルミニウム合金のエッチング化剤であり、
水溶液中で遊離したフッ素イオンを与え得る化合物、例
えばフッ化水素酸、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素
酸、ジルコニウムフッ化水素酸、チタンフッ化水素酸、
及びこれらの水溶性塩等のフッ化物、または錯フッ化物
を用いることができる。

【００１２】Ｚｎ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ｍｎ、Ｚｒ、Ｔｉ、Ｓ
ｎ、Ｗ及びＭｏから選ばれる少なくとも１種の金属化合
物（Ｄ）は、これら金属の酸化物、水酸化物、錯化合
物、及び無機酸、有機酸の塩などであり、水溶液中で該
金属イオン、もしくは酸化物イオン、水酸化物イオン、
錯イオン等の該金属化合物イオンを与える金属化合物で
ある。これらの金属化合物の中でＺｒ、Ｔｉから選ばれ
る少なくとも１種が本発明の目的である耐食性向上に特
に好ましいものである。

【００１３】構成成分の量に関しては処理条件、目的等
によって異なるため特定はしないが、より好ましくはリ
ンを含有する酸イオン（Ａ）を０．００５〜５０ｇ／
ｌ、特に好ましくは０．０１〜２０ｇ／ｌ、３価のクロ
ムイオン、及び３価クロムを有する化合物イオンから選
ばれる少なくとも１種のイオン（Ｂ）を０．００５〜５
０ｇ／ｌ、特に好ましくは０．０１〜２０ｇ／ｌ、フッ
素化合物（Ｃ）については、ある処理条件で皮膜を析出
させるのに十分な素材のエッチングを成し得る必要量
で、処理条件等によってその必要量は異なるため限定で
きないが、遊離したフッ素イオン濃度が０．００５〜３
０ｇ／ｌにすることがより好ましく、０．０１〜１０ｇ
／ｌが特に好ましい。金属化合物（Ｄ）は該金属化合物
中の金属として０．００５〜５０ｇ／ｌ、特に好ましく
は０．０１〜２０ｇ／ｌである。また、本発明による処
理液は、酸性であることが好ましく、ｐＨで１〜４であ
ることがより好ましい。

【００１４】この他に、酸化剤等の皮膜形成の促進剤、
キレート化合物等の処理液安定化剤、エッチング促進
剤、あるいは抑制剤、浸透剤等本発明の目的や皮膜性能
を損なわない範囲で添加しても構わない。

【００１５】化成処理方法については、化成処理剤がア
ルミニウムまたはその合金と接触し、皮膜析出させるこ
とができれば構わず特に限定はしないが、通常は化成処
理剤に素材を浸漬する方法、素材に化成処理剤をスプレ
ーする方法が用いられる。化成処理液の温度、化成処理
時間についても、構成成分の濃度、目的とする皮膜量に
よってコントロールする必要があるのでとくに限定する
ものではない。しかしながら、本発明の化成処理液の溶
媒は水であり、温度については水の凝固点から沸点の間
にするのが好ましく、２０〜７０℃がより好ましくい。
時間は素材と化成処理剤が接触し素材をエッチングし皮
膜析出し始めるまでの時間は最低限必要であり、１〜６
００秒がより好ましい。

【００１６】処理工程についても化成処理条件と同様特
定しないが、前洗浄、水洗、化成処理、水洗、乾燥の工
程が基本になる。通常は本処理を行う前に素材に付着し
た油分、汚れを取り除くためアルカリ脱脂剤、または酸
性脱脂剤等で洗浄するか、湯洗、溶剤洗浄、あるいはこ
れら洗浄方法の組み合わせにより洗浄し、そのあと必要
に応じては酸などによるデスマット、表面調整を行う。
浸漬、スプレー等により本処理を行った後、蒸留水、脱
イオン水、市水、工水等によって水洗を行い、加熱乾燥
などにより付着水の除去を行う。付着水の除去は必ずし
も加熱乾燥する必要はなく、風乾、エアブローでも構わ
ない。なお、本皮膜上にシーリング、または塗装を行う
場合、水系のシーリング剤、水系塗料等を適用させる場
合は付着水の除去を行わずして連続して適用することが
できる。

【００１７】

【作用】本発明の化成処理剤は、アルミニウム合金表面
と化成反応することによって皮膜を表面に形成し、形成
された皮膜は優れた耐食性と塗料密着性をアルミニウム
素材表面に付与するものである。この機構としては、ま
ず本化成処理剤の構成成分であるフッ素化合物（Ｃ）か
ら供給されるフッ素イオンが、素材であるアルミニウム
の溶解を促す。アルミニウム溶解に伴う酸化還元反応に
よって水素ガスが発生し、このためアルミニウム界面の
ｐＨが上昇する。このｐＨにおいて、リン含有酸イオン
（Ａ）と３価のクロムイオン、及び／または３価クロム
化合物イオン（Ｂ）、及び特定の金属化合物（Ｄ）が不
溶性の塩となって析出し不働態皮膜を形成すると考えら
れる。この皮膜がアルミニウム及びアルミニウム合金表
面に優れた耐食性、及び塗料との密着性を付与すると考
えられる。

【００１８】

【実施例】次に実施例によって本発明を説明するが、本
実施例は単なる一例に過ぎず本発明を限定するものでは
ない。以下、試験片についての耐食性評価方法及び塗料
との密着性評価方法は以下の通りである。 （耐食性評価方法）試験板について、塩水噴霧試験法Ｊ
ＩＳ−Ｚ−２３７１に基づき、塩水噴霧試験５００時間
後の白錆発生面積で評価した。評価基準は以下の通りで
ある。 ○：白錆面積 １０％以下 △：白錆面積 １０を超え、５０％未満 ×：白錆面積 ５０％以上

【００１９】（塗料との密着性評価方法）試験板上にエ
ポキシ−尿素系塗料カンコート（関西ペイント（株）
製）を乾燥塗膜厚５μになるようにバーコートし２１０
℃で３分間加熱乾燥した。塗装板を沸騰した脱イオン水
中に３０分間浸漬した後、下地面に達する１ｍｍ角のゴ
バン目を１００個作り、セロテープで剥離したときの塗
膜残存数を数えた。

【００２０】実施例１ 純アルミ（Ａ−１１００，７０ｍｍ×１５０ｍｍ、厚さ
０．１１ｍｍ）を日本パーカライジング（株）製アルカ
リ脱脂剤ファインクリーナー３１５（３０ｇ／ｌ、６０
℃、４０秒間浸漬）を用いて脱脂した後、水洗し、重リ
ン酸クロム１．６ｇ／ｌ、硝酸クロム１．８ｇ／ｌ、フ
ッ化水素酸０．６ｇ／ｌ、過酸化水素０．２ｇ／ｌ、か
らなる水溶液中に５０℃で３０秒間浸漬処理し、水道水
で洗浄した後８０℃で３０秒間乾燥した。

【００２１】実施例２ 実施例１で用いた水溶液の代わりに、オルトリン酸１ｇ
／ｌ、硝酸クロム１．２ｇ／ｌ、チタンフッ化水素酸
１．１ｇ／ｌ、ホウフッ化水素酸０．５ｇ／ｌ、過酸化
水素０．２ｇ／ｌからなる水溶液を用いたこと以外は実
施例１と同様に行った。

【００２２】実施例３ Ａｌ−Ｍｎ系合金（Ａ−３００４、７０ｍｍ×１５０ｍ
ｍ、厚さ０．１５ｍｍ）を酸性脱脂剤日本パーカライジ
ング（株）製パルクリーン４００（２０ｇ／ｌ、５０
℃、２０秒間スプレー）を用いて脱脂した後、水洗し
て、重リン酸クロム５ｇ／ｌ、ジルコニウムフッ化水素
酸４ｇ／ｌ、フッ化水素酸０．５ｇ／ｌからなる水溶液
を用いて４０℃で２０秒間スプレー処理し、水道水で洗
浄した後５０℃で２分間乾燥した。

【００２３】実施例４ Ａｌ−Ｍｇ合金（Ａー５０５２、７０ｍｍ×１５０ｍ
ｍ、厚さ２ｍｍ）を日本パーカライジング（株）製アル
カリ脱脂剤ファインクリーナー３１５（３０ｇ／ｌ、６
０℃、４０秒間浸漬）を用いて脱脂した後、水洗して、
フッ化クロム０．２ｇ／ｌ、酢酸クロム０．３ｇ／ｌ、
フィチン酸１．０ｇ／ｌ、タングステン酸ナトリウム
０．１ｇ／ｌ、硅フッ化水素酸１ｇ／ｌからなる水溶液
に３０℃、２分間浸漬処理した後、水道水で水洗して風
乾した。

【００２４】実施例５ 実施例４で用いた水溶液の代わりに次亜リン酸アンモニ
ウム０．５ｇ／ｌ、ピロリン酸１．５ｇ／ｌ、硝酸クロ
ム１．０ｇ／ｌ、硝酸コバルト０．３ｇ／ｌ、フッ化水
素酸０．５ｇ／ｌ、ジルコニウムフッ化水素酸０．５ｇ
／ｌ、からなる水溶液を用いたこと以外は実施例４と同
様に行った。

【００２５】比較例１ 純アルミ（Ａ−１１００，７０ｍｍ×１５０ｍｍ、厚さ
０．１１ｍｍ）を日本パーカライジング（株）製アルカ
リ脱脂剤ファインクリーナー３１５（３０ｇ／ｌ、６０
℃、４０秒間浸漬）を用いて脱脂した後、水洗し、日本
パーカライジング（株）製クロム酸クロメート系化成処
理剤アルクロム７１３を７２ｇ／ｌに希釈した水溶液に
５０℃、９０秒間浸漬して処理を行った。処理後水道水
で水洗した後、８０℃、２分間加熱乾燥した。

【００２６】比較例２ Ａｌ−Ｍｎ系合金（Ａ３００４、７０ｍｍ×１５０ｍ
ｍ、厚さ０．１５ｍｍ）を酸性脱脂剤日本パーカライジ
ング（株）製パルクリーン４００（２０ｇ／ｌ、５０
℃、２０秒間スプレー）を用いて脱脂した後、水洗し
て、日本パーカライジング（株）製リン酸クロメート系
化成処理剤アルクロム７０２ＳＬを４７ｇ／ｌ、フッ化
水素酸０．１ｇ／ｌの水溶液を用いて４０℃で２０秒間
スプレー処理を行った。処理後水道水で水洗した後、８
０℃、２分間加熱乾燥した。

【００２７】比較例３ Ａｌ−Ｍｎ系合金（Ａ３００４、７０ｍｍ×１５０ｍ
ｍ、厚さ０．１５ｍｍ）を酸性脱脂剤日本パーカライジ
ング（株）製パルクリーン４００（２０ｇ／ｌ、５０
℃、２０秒間スプレー）を用いて脱脂した後、水洗し
て、日本パーカライジング（株）製リン酸ジルコニウム
系処理剤アロジン４０４０を２０ｇ／ｌに希釈した水溶
液を用いて５０℃で２０秒間スプレー処理を行った。処
理後水道水で水洗した後、８０℃、２分間加熱乾燥を行
った。

【００２８】表１に示した試験結果から明らかなよう
に、本発明の実施例１〜５はその処理液中に６価クロム
を含まないため安全性は高く、処理液に６価クロムを含
有する従来のクロメートである比較例１及び２と同等の
耐食性、塗料密着性を有していることが判る。従来のノ
ンクロム系化成処理である比較例３は、塗料密着性は優
れるが耐食性は劣った。

【００２９】

【発明の効果】本発明の処理剤は、処理剤中に６価クロ
ムを含まないため安全性が高く、特別な廃水処理設備を
必要とせず、本処理剤を用いた化成処理によって形成さ
れた皮膜は、優れた耐食性と塗料密着性を有しており極
めて有用である。

【００３０】

【表１】

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 リンを含有する酸基を有する酸イオン
   （Ａ）と３価クロムイオン、及び３価クロムを有する化
   合物イオンから選ばれる少なくとも１種のイオン（Ｂ）
   とフッ化物、錯フッ化物から選ばれる少なくとも１種の
   フッ素化合物（Ｃ）を含有し、且つ６価クロムイオンを
   含まないことを特徴とするアルミニウム及びアルミニウ
   ム合金用６価クロムフリーの化成表面処理剤。
2. 【請求項２】 リンを含有する酸基を有する酸イオン
   （Ａ）と３価クロムイオン、及び３価クロムを有する化
   合物イオンから選ばれる少なくとも１種のイオン（Ｂ）
   とフッ化物、錯フッ化物から選ばれる少なくとも１種の
   フッ素化合物（Ｃ）と、Ｚｎ、Ｎｉ、Ｃｏ、Ｍｎ、Ｚ
   ｒ、Ｔｉ、Ｓｎ、Ｗ及びＭｏから選ばれる少なくとも１
   種の金属化合物（Ｄ）とを含有し、且つ６価クロムイオ
   ンを含まないことを特徴とするアルミニウム及びアルミ
   ニウム合金用６価クロムフリーの化成表面処理剤。