JPH06329444A - イオンビームを用いたガラスの表面処理方法 及びガラス部材 - Google Patents
イオンビームを用いたガラスの表面処理方法 及びガラス部材Info
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- JPH06329444A JPH06329444A JP5118061A JP11806193A JPH06329444A JP H06329444 A JPH06329444 A JP H06329444A JP 5118061 A JP5118061 A JP 5118061A JP 11806193 A JP11806193 A JP 11806193A JP H06329444 A JPH06329444 A JP H06329444A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 ガラスにイオンを注入してガラス表面部の屈
折率を変化させる際、ガラス表面の荒れを防いで処理工
程を効率化する。 【構成】 ガラス8に、このガラス8を構成する元素中
の所望の元素と反応する元素を有するイオンビーム10
を照射し、イオンビーム10を構成する元素をガラス8
を構成する元素と反応させてガラス内部に注入すること
で、このガラス表面部の屈折率を変化させる。
折率を変化させる際、ガラス表面の荒れを防いで処理工
程を効率化する。 【構成】 ガラス8に、このガラス8を構成する元素中
の所望の元素と反応する元素を有するイオンビーム10
を照射し、イオンビーム10を構成する元素をガラス8
を構成する元素と反応させてガラス内部に注入すること
で、このガラス表面部の屈折率を変化させる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガラスからなる光学素
子(レンズ、プリズム等)の表面処理方法に関する。
子(レンズ、プリズム等)の表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ガラスからなる光学素子におい
て、この素子表面での光の反射を減らして透過率を増加
させたいときや表面での反射率を高めてミラーとして使
用したいときは、素子表面に薄膜を形成してこの薄膜が
反射防止膜や反射防止膜(反射膜)として機能するよう
にしていた。例えば、大気中の屈折率をno 、薄膜を形
成する物質の屈折率をn、光学素子(ガラス)の屈折率
をns とすると、この薄膜を反射防止膜として機能させ
るためには、(ns >n>no )を満たす物質からなる
薄膜を成膜すればよい。また、より反射防止効果(透過
率)を高めるために下式を満たす屈折率を有する物質か
らなる薄膜を形成したり、薄膜を厚さdが(nd=λ/
4)(λは使用する波長)を満たすように成膜する場合
もあった。
て、この素子表面での光の反射を減らして透過率を増加
させたいときや表面での反射率を高めてミラーとして使
用したいときは、素子表面に薄膜を形成してこの薄膜が
反射防止膜や反射防止膜(反射膜)として機能するよう
にしていた。例えば、大気中の屈折率をno 、薄膜を形
成する物質の屈折率をn、光学素子(ガラス)の屈折率
をns とすると、この薄膜を反射防止膜として機能させ
るためには、(ns >n>no )を満たす物質からなる
薄膜を成膜すればよい。また、より反射防止効果(透過
率)を高めるために下式を満たす屈折率を有する物質か
らなる薄膜を形成したり、薄膜を厚さdが(nd=λ/
4)(λは使用する波長)を満たすように成膜する場合
もあった。
【0003】
【数1】
【0004】さらに反射防止効果を高めるために、屈折
率の高い膜と屈折率の低い膜とを交互に積層させる場合
もあった。さらに反射防止効果を高めるために屈折率の
高い膜と低い膜とを交互に積層させる場合もあった。一
方、前記薄膜を反射膜として機能させるためには、屈折
率ns が(no <n>ns )を満たす物質からなる薄膜
を成膜していた。薄膜の厚さdが、(nd=λ/4)を満
たすようにすると反射率はより高まる。また、さらに反
射率を高めるために、反射防止膜と同様に屈折率の高い
膜と低い膜とを交互に積層させる場合もあった。
率の高い膜と屈折率の低い膜とを交互に積層させる場合
もあった。さらに反射防止効果を高めるために屈折率の
高い膜と低い膜とを交互に積層させる場合もあった。一
方、前記薄膜を反射膜として機能させるためには、屈折
率ns が(no <n>ns )を満たす物質からなる薄膜
を成膜していた。薄膜の厚さdが、(nd=λ/4)を満
たすようにすると反射率はより高まる。また、さらに反
射率を高めるために、反射防止膜と同様に屈折率の高い
膜と低い膜とを交互に積層させる場合もあった。
【0005】このような薄膜をガラスからなる光学素子
上に形成させる場合、通常は、CVD、PVD等の成膜
方法を用いていた。
上に形成させる場合、通常は、CVD、PVD等の成膜
方法を用いていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記薄膜を
形成する際に用いていた各種CVD、PVD等の成膜方
法では、薄膜形成時に水分、ガス、成膜装置構成物質等
の不純物が薄膜中に取り込まれるという問題があった。
不純物が取り込まれると薄膜の性質が変化してしまうの
で、薄膜全体が一様な性質とならず光学的特性が低下す
る。また、レンズ等の曲率を有する光学素子に薄膜を形
成する場合、膜厚が均一になるように成膜することが難
しいため膜厚ムラが生じ、これにより光学特性がばらつ
く等の問題が生じていた。また、薄膜として用いる物質
によっては、ガラスに対する密着性が低くて薄膜が剥が
れるという現象が生じていた。
形成する際に用いていた各種CVD、PVD等の成膜方
法では、薄膜形成時に水分、ガス、成膜装置構成物質等
の不純物が薄膜中に取り込まれるという問題があった。
不純物が取り込まれると薄膜の性質が変化してしまうの
で、薄膜全体が一様な性質とならず光学的特性が低下す
る。また、レンズ等の曲率を有する光学素子に薄膜を形
成する場合、膜厚が均一になるように成膜することが難
しいため膜厚ムラが生じ、これにより光学特性がばらつ
く等の問題が生じていた。また、薄膜として用いる物質
によっては、ガラスに対する密着性が低くて薄膜が剥が
れるという現象が生じていた。
【0007】そこで、ガラスにイオンビームを照射して
このイオンをガラス内に注入するイオン注入法が提案さ
れた。一般に、ガラスの元素組成が変化すると、そのガ
ラスの屈折率は変化する。このイオン注入法は、ガラス
内(表面部)にイオンを注入して元素組成を変えること
で、表面部の屈折率を変化させるようにしたもので、表
面部の屈折率が高くなるようなイオンを注入すると反射
増加効果が得られ、屈折率が低くなるようなイオンを注
入すると反射防止効果が得られる。ところが、従来のイ
オン注入法では、ガラス表面が荒れるという現象が生じ
ていた。そのため、イオン注入の後でガラス表面を平滑
化しなければならず、手間と時間がかかり効率が悪かっ
た。本発明はこのような問題を解決することを目的とす
る。
このイオンをガラス内に注入するイオン注入法が提案さ
れた。一般に、ガラスの元素組成が変化すると、そのガ
ラスの屈折率は変化する。このイオン注入法は、ガラス
内(表面部)にイオンを注入して元素組成を変えること
で、表面部の屈折率を変化させるようにしたもので、表
面部の屈折率が高くなるようなイオンを注入すると反射
増加効果が得られ、屈折率が低くなるようなイオンを注
入すると反射防止効果が得られる。ところが、従来のイ
オン注入法では、ガラス表面が荒れるという現象が生じ
ていた。そのため、イオン注入の後でガラス表面を平滑
化しなければならず、手間と時間がかかり効率が悪かっ
た。本発明はこのような問題を解決することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的のために、本発
明では、ガラスに該ガラスを構成する元素中の所望の元
素と反応する元素を有するイオンビームを照射して、該
イオンビームを構成する元素を前記ガラスを構成する元
素と反応させてガラス内部に注入することで、該ガラス
表面部の屈折率を変化させるようにした(請求項1)。
また、前記イオンビームの射出時のエネルギーを50eV〜
4keV に設定した(請求項2)。
明では、ガラスに該ガラスを構成する元素中の所望の元
素と反応する元素を有するイオンビームを照射して、該
イオンビームを構成する元素を前記ガラスを構成する元
素と反応させてガラス内部に注入することで、該ガラス
表面部の屈折率を変化させるようにした(請求項1)。
また、前記イオンビームの射出時のエネルギーを50eV〜
4keV に設定した(請求項2)。
【0009】
【作用】従来のイオン注入法では、イオンの(射出時
の)エネルギーを高く(10keV 以上)設定していたの
で、この高いイオンエネルギーによりガラス表面が荒れ
るという現象が生じていた。これに対して、本発明で
は、ガラスを形成する物質と反応し易い反応性(活性)
ガスを用いてイオンビームを発生させる。そして、この
イオンビームをガラスに照射することで、イオンビーム
に含まれる所定の元素とガラスを構成する元素とを反応
させてこのビーム中の元素をガラス内部に注入してガラ
スの表面部の屈折率を変化(低下または増加)させる。
そのため、従来のイオン注入法よりイオンのエネルギー
を低くしてもガラス内部にこのイオンビーム中の所望の
物質を注入させることができ、ガラス表面の荒れを防止
できる。
の)エネルギーを高く(10keV 以上)設定していたの
で、この高いイオンエネルギーによりガラス表面が荒れ
るという現象が生じていた。これに対して、本発明で
は、ガラスを形成する物質と反応し易い反応性(活性)
ガスを用いてイオンビームを発生させる。そして、この
イオンビームをガラスに照射することで、イオンビーム
に含まれる所定の元素とガラスを構成する元素とを反応
させてこのビーム中の元素をガラス内部に注入してガラ
スの表面部の屈折率を変化(低下または増加)させる。
そのため、従来のイオン注入法よりイオンのエネルギー
を低くしてもガラス内部にこのイオンビーム中の所望の
物質を注入させることができ、ガラス表面の荒れを防止
できる。
【0010】イオンビームをガラスに照射するとこの反
応性ガスを構成するイオンとガラスを構成する元素との
間で化学反応が生じ、ガラス内部にイオンビーム中の特
定の元素を注入することができる。そして、注入する元
素の種類に応じてガラス表面の屈折率が高くなったり低
くなったりする。例えば、石英(SiO2)系ガラスの表面
の反射防止効果を高めるときは、屈折率を低下させるた
めに誘電率の低いフッ素(F)をガラス内部に注入すれ
ばよい。この場合、F2、CF4 (フッ化炭素)、SF6 (六
フッ化イオウ)、CF4 (フロン14)、CClF3 (フロン1
3)、CHF3(フロン23)、C2F6(フロン116 )等のフッ
素系のガスを反応ガスとして使用するとよい。逆に、反
射効果を高めるときは、屈折率を高くするために誘電率
の高いゲルマニウム(Ge)をガラス内部に注入すればよ
い。この場合、GeF4(フッ化ゲルマニウム)やGeCl4
(塩化ゲルマニウム)などを反応ガスとして使用するこ
とができる。また、リン酸(P2O5)系ガラスの場合も、
フッ素系のガスを反応ガスとして使用するとガラス表面
の屈折率を低下させて反射防止効果を高めることができ
る。反応性ガスは、イオンビームを生成するのに適当
な、常温、1Torr以下のときに気体であるものが望まし
い。
応性ガスを構成するイオンとガラスを構成する元素との
間で化学反応が生じ、ガラス内部にイオンビーム中の特
定の元素を注入することができる。そして、注入する元
素の種類に応じてガラス表面の屈折率が高くなったり低
くなったりする。例えば、石英(SiO2)系ガラスの表面
の反射防止効果を高めるときは、屈折率を低下させるた
めに誘電率の低いフッ素(F)をガラス内部に注入すれ
ばよい。この場合、F2、CF4 (フッ化炭素)、SF6 (六
フッ化イオウ)、CF4 (フロン14)、CClF3 (フロン1
3)、CHF3(フロン23)、C2F6(フロン116 )等のフッ
素系のガスを反応ガスとして使用するとよい。逆に、反
射効果を高めるときは、屈折率を高くするために誘電率
の高いゲルマニウム(Ge)をガラス内部に注入すればよ
い。この場合、GeF4(フッ化ゲルマニウム)やGeCl4
(塩化ゲルマニウム)などを反応ガスとして使用するこ
とができる。また、リン酸(P2O5)系ガラスの場合も、
フッ素系のガスを反応ガスとして使用するとガラス表面
の屈折率を低下させて反射防止効果を高めることができ
る。反応性ガスは、イオンビームを生成するのに適当
な、常温、1Torr以下のときに気体であるものが望まし
い。
【0011】ガラス表面部に形成される屈折率が変化し
た層(以下、屈折率変化層という)の厚さd0 は、ガラ
スに照射するイオンビームに与えるエネルギーによって
制御できる。従って、屈折率変化層の厚さd0 を、使用
する波長λ0 に対して、(nd0 =λ0 /4)となるよう
に設定すれば、従来と同様、反射防止効果を高めること
が可能となる。
た層(以下、屈折率変化層という)の厚さd0 は、ガラ
スに照射するイオンビームに与えるエネルギーによって
制御できる。従って、屈折率変化層の厚さd0 を、使用
する波長λ0 に対して、(nd0 =λ0 /4)となるよう
に設定すれば、従来と同様、反射防止効果を高めること
が可能となる。
【0012】なお、イオンビームに与えるエネルギーが
高いほど屈折率変化層が形成され易くなるが、過度に高
くすると照射したイオンの衝撃によってガラス表面が荒
れてしまう。そのため、前記イオンビームは、射出時の
エネルギーを50eV〜4keV に設定することが望ましい。
これよりもエネルギーを高くすると前述のようにガラス
表面が荒れ、低いとエネルギーが足りないためイオンビ
ーム中の元素がガラス内部に注入され難くなる。また、
イオンビームをガラス表面に対して垂直方向から入射さ
せた方が屈折変化層が形成され易くなる。
高いほど屈折率変化層が形成され易くなるが、過度に高
くすると照射したイオンの衝撃によってガラス表面が荒
れてしまう。そのため、前記イオンビームは、射出時の
エネルギーを50eV〜4keV に設定することが望ましい。
これよりもエネルギーを高くすると前述のようにガラス
表面が荒れ、低いとエネルギーが足りないためイオンビ
ーム中の元素がガラス内部に注入され難くなる。また、
イオンビームをガラス表面に対して垂直方向から入射さ
せた方が屈折変化層が形成され易くなる。
【0013】
【実施例】図1は、本実施例で使用した処理装置の一例
を示す概略構成図である。本装置は、イオンビームを発
生させるイオン銃(イオンガン)、このイオン銃に接続
された真空容器9、真空容器9内に配置された被加工物
(石英ガラス[SiO2]からなる光学素子)8を載置するた
めのステージ7、ステージ7を移動させる移動手段6と
を備えている。前記イオン銃は、反応性ガスに対しても
使用できるECRイオン銃であり、プラズマ生成室3、
生成室3に接続されたマイクロ波発生装置1とイオン化
ガス導入手段4、グリッド(電極板)5、および生成室
3の外部を囲むように設置された電磁石2とを備えてい
る。
を示す概略構成図である。本装置は、イオンビームを発
生させるイオン銃(イオンガン)、このイオン銃に接続
された真空容器9、真空容器9内に配置された被加工物
(石英ガラス[SiO2]からなる光学素子)8を載置するた
めのステージ7、ステージ7を移動させる移動手段6と
を備えている。前記イオン銃は、反応性ガスに対しても
使用できるECRイオン銃であり、プラズマ生成室3、
生成室3に接続されたマイクロ波発生装置1とイオン化
ガス導入手段4、グリッド(電極板)5、および生成室
3の外部を囲むように設置された電磁石2とを備えてい
る。
【0014】ここで、本装置のイオン銃によるイオンビ
ームの発生過程を説明する。まず、排気手段(図示せ
ず)よりプラズマ生成室3および真空容器8内を所定の
真空度(2×10-6Torr程度)まで排気する。次に、マイ
クロ波発生装置1により周波数約2.45GHzのマイクロ波
を発生させてこのマイクロ波を生成室3内に導入する。
そして、イオン化ガス導入手段4によってイオン化させ
るガス(反応性ガス)を生成室3内に導入し、この生成
室3内のガス圧を6.0 ×10-5Torrに設定する。イオン化
ガスには SF6(6フッ化いおう)を用いた。イオン化ガ
スの導入後、電磁石2によって生成室3内に875 ガウス
の磁場をかけると、この磁場の強さに対応する共鳴周波
数のマイクロ波と前記磁場とによって、光や熱等から発
生した電子が電子サイクロトロン共鳴と呼ばれる回転振
動を起こしプラズマ(ECRプラズマ)11が生成され
る。この状態で、図示していない印加手段によりグリッ
ド5に電圧を印加すると、プラズマ11が充満した空間
に電位勾配が生じ、プラズマ11中のイオンはイオンビ
ーム10として引き出される。イオンビームに与えるエ
ネルギーは、イオンの加速電圧(グリッド5に印加する
電圧)を制御することで設定される。本実施例では、イ
オンの加速電圧が1.5keVとなるようにした。
ームの発生過程を説明する。まず、排気手段(図示せ
ず)よりプラズマ生成室3および真空容器8内を所定の
真空度(2×10-6Torr程度)まで排気する。次に、マイ
クロ波発生装置1により周波数約2.45GHzのマイクロ波
を発生させてこのマイクロ波を生成室3内に導入する。
そして、イオン化ガス導入手段4によってイオン化させ
るガス(反応性ガス)を生成室3内に導入し、この生成
室3内のガス圧を6.0 ×10-5Torrに設定する。イオン化
ガスには SF6(6フッ化いおう)を用いた。イオン化ガ
スの導入後、電磁石2によって生成室3内に875 ガウス
の磁場をかけると、この磁場の強さに対応する共鳴周波
数のマイクロ波と前記磁場とによって、光や熱等から発
生した電子が電子サイクロトロン共鳴と呼ばれる回転振
動を起こしプラズマ(ECRプラズマ)11が生成され
る。この状態で、図示していない印加手段によりグリッ
ド5に電圧を印加すると、プラズマ11が充満した空間
に電位勾配が生じ、プラズマ11中のイオンはイオンビ
ーム10として引き出される。イオンビームに与えるエ
ネルギーは、イオンの加速電圧(グリッド5に印加する
電圧)を制御することで設定される。本実施例では、イ
オンの加速電圧が1.5keVとなるようにした。
【0015】移動手段6は、被加工物8を載置するステ
ージ7を図のようにθ方向に回転ささせる回転機構と、
XYZ方向へ移動させる移動機構(共に図示せず)とを
備えている。また、ステージ7の回転軸をα、β方向に
傾けることができるように構成されている。この移動手
段6は、被加工物8の形状等に基づいて数値制御される
ように構成してもよい。
ージ7を図のようにθ方向に回転ささせる回転機構と、
XYZ方向へ移動させる移動機構(共に図示せず)とを
備えている。また、ステージ7の回転軸をα、β方向に
傾けることができるように構成されている。この移動手
段6は、被加工物8の形状等に基づいて数値制御される
ように構成してもよい。
【0016】以下、本実施例における表面処理過程を説
明する。まず、前述のようにイオン銃によってイオンビ
ーム10を発生させ、この状態で移動手段6によりステ
ージ7上の被加工物8を回転(自転)させながらXYZ
方向へ適宜移動させて、被加工物8表面にイオンビーム
10が照射されるようにした。この時、被加工物8の回
転軸を適当量傾けて、被加工物8表面にイオンビーム1
0が一様に照射されるようにした。また、被加工物8表
面にイオンビームが垂直方向から入射するようにステー
ジ7を移動させて、屈折率変化層を効率よく形成できる
ようにした。被加工物8にはイオンビームを20分程照射
した。
明する。まず、前述のようにイオン銃によってイオンビ
ーム10を発生させ、この状態で移動手段6によりステ
ージ7上の被加工物8を回転(自転)させながらXYZ
方向へ適宜移動させて、被加工物8表面にイオンビーム
10が照射されるようにした。この時、被加工物8の回
転軸を適当量傾けて、被加工物8表面にイオンビーム1
0が一様に照射されるようにした。また、被加工物8表
面にイオンビームが垂直方向から入射するようにステー
ジ7を移動させて、屈折率変化層を効率よく形成できる
ようにした。被加工物8にはイオンビームを20分程照射
した。
【0017】本実施例によれば、イオンビームに含まれ
るフッ素イオンが石英ガラスである被加工物8中のケイ
素と化学反応を起こし、石英ガラス中に取り込まれてい
く。その結果、石英ガラス表面にはフッ素を含むことで
屈折率が低下した層(以下、屈折率低下層という)が形
成される。この屈折率低下層が反射防止膜(層)として
機能する。表1は、本実施例で処理された石英ガラス表
面部の組成状態をXPS(X線光電子分光分析機)で測
定し、加工前の組成状態からの変化率を示したものであ
る。
るフッ素イオンが石英ガラスである被加工物8中のケイ
素と化学反応を起こし、石英ガラス中に取り込まれてい
く。その結果、石英ガラス表面にはフッ素を含むことで
屈折率が低下した層(以下、屈折率低下層という)が形
成される。この屈折率低下層が反射防止膜(層)として
機能する。表1は、本実施例で処理された石英ガラス表
面部の組成状態をXPS(X線光電子分光分析機)で測
定し、加工前の組成状態からの変化率を示したものであ
る。
【0018】
【表1】図2は、本実施例で処理した石英ガラスのデプ
スプロファイルをXPSで測定した結果を示すグラフで
ある。横軸は表面からの深さ、縦軸は石英ガラスの元素
組成比を示す。図2に示すように、ガラス表面から約50
nmの深さまでフッ素が注入され、この部分の組成が変化
したことがわかる。石英ガラス表面におけるフッ素の含
有率は約15%であり、フッ素を取り込んだ層(屈折率低
下層)は処理を行っていない石英ガラスに比べて屈折率
が 0.1%程低下していた。表面処理後の石英ガラスの透
過率を測定したところ、紫外線領域の波長に対しては未
処理の石英ガラスに比較して透過率が数%増加し、反射
防止効果が向上したことが確認できた。つまり、この組
成が変化した部分(屈折率変化層)が、反射防止膜
(層)として機能している。この屈折率変化層の厚さ
は、イオンビームに与えるエネルギーの大きさおよび照
射時間を変えることで制御でき、エネルギーを大きくま
たは照射時間を長くすれば層の厚さは増加する。
スプロファイルをXPSで測定した結果を示すグラフで
ある。横軸は表面からの深さ、縦軸は石英ガラスの元素
組成比を示す。図2に示すように、ガラス表面から約50
nmの深さまでフッ素が注入され、この部分の組成が変化
したことがわかる。石英ガラス表面におけるフッ素の含
有率は約15%であり、フッ素を取り込んだ層(屈折率低
下層)は処理を行っていない石英ガラスに比べて屈折率
が 0.1%程低下していた。表面処理後の石英ガラスの透
過率を測定したところ、紫外線領域の波長に対しては未
処理の石英ガラスに比較して透過率が数%増加し、反射
防止効果が向上したことが確認できた。つまり、この組
成が変化した部分(屈折率変化層)が、反射防止膜
(層)として機能している。この屈折率変化層の厚さ
は、イオンビームに与えるエネルギーの大きさおよび照
射時間を変えることで制御でき、エネルギーを大きくま
たは照射時間を長くすれば層の厚さは増加する。
【0019】図3は、本実施例で表面処理した石英ガラ
スに対して垂直方向から入射した光の波長と、この波長
に対する石英ガラスの透過率との関係を示すグラフであ
る。表面処理前の石英ガラスの屈折率を1.46、処理によ
り形成された屈折率変化層の最表面部の屈折率を1.36、
形成された屈折率変化層の厚さを50nmとしてある。ま
た、屈折率変化層においては、その屈折率は石英ガラス
の深さ方向に比例して、最表面部の1.36から未変化部
(処理前と屈折率が変化していない部分)の1.46まで直
線的に変化しているものとした。比較のために、表面処
理を施していない他は同一の条件で測定された石英ガラ
スの透過率を点線で示す。図から、本実施例の石英ガラ
スの透過率が向上(つまり、反射率が低下)し、前記屈
折率変化層が反射防止機能を有していることがわかる。
この傾向は、照射した光の波長が短いほど顕著となっ
た。
スに対して垂直方向から入射した光の波長と、この波長
に対する石英ガラスの透過率との関係を示すグラフであ
る。表面処理前の石英ガラスの屈折率を1.46、処理によ
り形成された屈折率変化層の最表面部の屈折率を1.36、
形成された屈折率変化層の厚さを50nmとしてある。ま
た、屈折率変化層においては、その屈折率は石英ガラス
の深さ方向に比例して、最表面部の1.36から未変化部
(処理前と屈折率が変化していない部分)の1.46まで直
線的に変化しているものとした。比較のために、表面処
理を施していない他は同一の条件で測定された石英ガラ
スの透過率を点線で示す。図から、本実施例の石英ガラ
スの透過率が向上(つまり、反射率が低下)し、前記屈
折率変化層が反射防止機能を有していることがわかる。
この傾向は、照射した光の波長が短いほど顕著となっ
た。
【0020】なお、本実施例では屈折率変化層が反射防
止膜として機能するようにしたが、反応性ガスの種類を
変えて(例えば、GeF4、GeCl4 )石英ガラス表面の屈折
率を高くすれば、屈折率変化層を反射膜として機能させ
ることもできる。
止膜として機能するようにしたが、反応性ガスの種類を
変えて(例えば、GeF4、GeCl4 )石英ガラス表面の屈折
率を高くすれば、屈折率変化層を反射膜として機能させ
ることもできる。
【0021】
【発明による効果】本発明では、ガラスを構成している
物質と反応し易い反応性ガスを用いてイオンビームを生
成し、このビームをガラスに照射する。そのため、従来
のイオン注入法よりイオンのエネルギーを低くしても、
ガラス内部にこのイオンビーム中の所望の物質を注入さ
せてガラスの表面部の屈折率を変化(低下または増加)
させることができる。その結果、照射されるイオンのエ
ネルギーによってガラス表面が荒れることがない。従っ
て、イオン注入後にガラス表面を平滑化する後処理が不
要となり、ガラスの表面処理を効率よく実施することが
できる。
物質と反応し易い反応性ガスを用いてイオンビームを生
成し、このビームをガラスに照射する。そのため、従来
のイオン注入法よりイオンのエネルギーを低くしても、
ガラス内部にこのイオンビーム中の所望の物質を注入さ
せてガラスの表面部の屈折率を変化(低下または増加)
させることができる。その結果、照射されるイオンのエ
ネルギーによってガラス表面が荒れることがない。従っ
て、イオン注入後にガラス表面を平滑化する後処理が不
要となり、ガラスの表面処理を効率よく実施することが
できる。
【0022】また、ガラスからなる光学素子自身の表面
に屈折率か変化した層を形成し、この層を反射膜や反射
防止膜として機能させるため、ガラス表面に薄膜を形成
してこの薄膜を反射膜や反射防止膜として機能させる必
要がなく、光学素子の耐久性が向上する。さらに、前記
屈折率変化層は、層全体が均一な性質となると共に層の
厚さも一定にできるので、光学的特性が一様となり光学
素子の信頼性が向上する。
に屈折率か変化した層を形成し、この層を反射膜や反射
防止膜として機能させるため、ガラス表面に薄膜を形成
してこの薄膜を反射膜や反射防止膜として機能させる必
要がなく、光学素子の耐久性が向上する。さらに、前記
屈折率変化層は、層全体が均一な性質となると共に層の
厚さも一定にできるので、光学的特性が一様となり光学
素子の信頼性が向上する。
【0023】本発明で得られる屈折率変化層は耐久性が
よく、レーザや短波長光のようなエネルギーの大きな光
に対して特に有用である。
よく、レーザや短波長光のようなエネルギーの大きな光
に対して特に有用である。
【図1】は、本発明に用いた処理装置の一例を示す概略
構成図である。
構成図である。
【図2】は、実施例で表面処理を行った石英ガラス表面
部の深さ方向の組成状態をXPSで測定した結果を示す
グラフである。横軸は表面からの深さ、縦軸は石英ガラ
スの元素組成比を示す。
部の深さ方向の組成状態をXPSで測定した結果を示す
グラフである。横軸は表面からの深さ、縦軸は石英ガラ
スの元素組成比を示す。
【図3】は、実施例で処理した石英ガラスに対して垂直
方向から入射した光の波長と、この波長に対する石英ガ
ラスの透過率との関係を示すグラフである。
方向から入射した光の波長と、この波長に対する石英ガ
ラスの透過率との関係を示すグラフである。
1 マイクロ波発生装置 2 電磁石 3 プラズマ生成室 4 イオン化ガス導入手段 5 グリッド 6 移動手段 7 ステージ 8 被加工物 9 真空容器 10 イオンビーム 11 プラズマ(ECRプラズマ)
Claims (3)
- 【請求項1】 ガラスに該ガラスを構成する元素中の所
望の元素と反応する元素を有するイオンビームを照射し
て、該イオンビームを構成する元素を前記ガラスを構成
する元素と反応させてガラス内部に注入することで、該
ガラス表面部の屈折率を変化させることを特徴とするイ
オンビームを用いたガラスの表面処理方法。 - 【請求項2】 前記イオンビームの射出時のエネルギー
を、50eV〜4keV に設定することを特徴とする請求項1
記載のイオンビームを用いたガラスの表面処理方法。 - 【請求項3】 請求項1または2記載の表面処理方法に
よって表面部に屈折率の変化した層が形成されているこ
とを特徴とするガラス部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5118061A JPH06329444A (ja) | 1993-05-20 | 1993-05-20 | イオンビームを用いたガラスの表面処理方法 及びガラス部材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5118061A JPH06329444A (ja) | 1993-05-20 | 1993-05-20 | イオンビームを用いたガラスの表面処理方法 及びガラス部材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06329444A true JPH06329444A (ja) | 1994-11-29 |
Family
ID=14727050
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5118061A Pending JPH06329444A (ja) | 1993-05-20 | 1993-05-20 | イオンビームを用いたガラスの表面処理方法 及びガラス部材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06329444A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006119267A (ja) * | 2004-10-20 | 2006-05-11 | Hitachi Maxell Ltd | 光導波路及び光導波路の製造方法並びに当該光導波路を用いた液晶表示装置 |
JP2006235459A (ja) * | 2005-02-28 | 2006-09-07 | Fuji Photo Film Co Ltd | マイクロレンズの製造方法及び固体撮像素子の製造方法 |
JP2016520502A (ja) * | 2013-03-28 | 2016-07-14 | ケルテック | 超親水性ガラス材料を製造するためのイオンビーム処理方法 |
-
1993
- 1993-05-20 JP JP5118061A patent/JPH06329444A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006119267A (ja) * | 2004-10-20 | 2006-05-11 | Hitachi Maxell Ltd | 光導波路及び光導波路の製造方法並びに当該光導波路を用いた液晶表示装置 |
JP4498884B2 (ja) * | 2004-10-20 | 2010-07-07 | 日立マクセル株式会社 | 光導波路及び光導波路の製造方法並びに当該光導波路を用いた液晶表示装置 |
JP2006235459A (ja) * | 2005-02-28 | 2006-09-07 | Fuji Photo Film Co Ltd | マイクロレンズの製造方法及び固体撮像素子の製造方法 |
JP2016520502A (ja) * | 2013-03-28 | 2016-07-14 | ケルテック | 超親水性ガラス材料を製造するためのイオンビーム処理方法 |
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