[go: up one dir, main page]

JP7644392B2 - フルオロポリマー水性分散液の製造方法 - Google Patents

フルオロポリマー水性分散液の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7644392B2
JP7644392B2 JP2023505634A JP2023505634A JP7644392B2 JP 7644392 B2 JP7644392 B2 JP 7644392B2 JP 2023505634 A JP2023505634 A JP 2023505634A JP 2023505634 A JP2023505634 A JP 2023505634A JP 7644392 B2 JP7644392 B2 JP 7644392B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
fluorine
mass
less
polymer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2023505634A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2022191286A5 (ja
JPWO2022191286A1 (ja
Inventor
拓哉 吉岡
絵美 山本
陽平 藤本
丈人 加藤
拓 山中
裕俊 吉田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daikin Industries Ltd
Original Assignee
Daikin Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daikin Industries Ltd filed Critical Daikin Industries Ltd
Publication of JPWO2022191286A1 publication Critical patent/JPWO2022191286A1/ja
Publication of JPWO2022191286A5 publication Critical patent/JPWO2022191286A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7644392B2 publication Critical patent/JP7644392B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F14/00Homopolymers and copolymers of compounds having one or more unsaturated aliphatic radicals, each having only one carbon-to-carbon double bond, and at least one being terminated by a halogen
    • C08F14/18Monomers containing fluorine
    • C08F14/26Tetrafluoroethene
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F4/00Polymerisation catalysts
    • C08F4/28Oxygen or compounds releasing free oxygen
    • C08F4/30Inorganic compounds
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F4/00Polymerisation catalysts
    • C08F4/28Oxygen or compounds releasing free oxygen
    • C08F4/32Organic compounds
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F6/00Post-polymerisation treatments
    • C08F6/14Treatment of polymer emulsions
    • C08F6/20Concentration
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F6/00Post-polymerisation treatments
    • C08F6/14Treatment of polymer emulsions
    • C08F6/22Coagulation
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F214/00Copolymers of compounds having one or more unsaturated aliphatic radicals, each having only one carbon-to-carbon double bond, and at least one being terminated by a halogen
    • C08F214/18Monomers containing fluorine
    • C08F214/26Tetrafluoroethene

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

本開示は、フルオロポリマー水性分散液の製造方法に関する。
特許文献1には、フッ素化ポリマーの分散液が、次の一般式:
Y’-(P-CH(Y)-(Pn’-Y” (1)
(式中:Y、Y’およびY”は、アニオンまたはノニオン基であるが、但しY、Y’またはY”の少なくとも1つはアニオン基であり、かつ残りのY、Y’またはY”の少なくとも1つはノニオン基であり;
およびPは、同一または異なって、任意に1以上の不飽和を有していてもよい、炭素数1~10、好ましくは1~6の直鎖状または分岐状のアルキレン基であり;
nおよびn’は同一または異なって、0または1である)
を有する1以上のアニオン界面活性剤を含む、
高いせん断応力安定性と組み合わせた高い凝離安定性を有し、フッ素化界面活性剤、特にフッ素化イオン界面活性剤を実質的に含まないフッ素化ポリマーの分散液の製造方法であって、
次の各工程:
- 重合によりフルオロポリマー分散液を得て、
- 任意に濃縮してそのフルオロポリマー量を増加させ、
- イオンフッ素化界面活性剤の量を実質的に減少させ、
- 式(1)の界面活性剤を添加し、
- 分散液を均質にする
を含む製造方法が記載されている。
特許文献2には、下記一般式(1)で表される単量体に基づく重合単位(1)を含む重合体(1)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーの重合を行うことによりフルオロポリマーを得る工程を含むフルオロポリマーの製造方法が記載されている。
CX=CY(-CZ-O-Rf-A) (1)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又はフルオロアルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。但し、X、Y及びZの少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
特許文献3には、下記一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)の存在下で重合して得られたフルオロポリマー(ただし、前記重合体(I)を除く)を含む処理前水性分散液に、限外濾過、精密濾過又は透析膜処理、若しくは、それらの組合せを実施する工程Aを含むことを特徴とするフルオロポリマー水性分散液の製造方法が記載されている。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
特開2005-171250号公報 国際公開第2019/168183号 国際公開第2020/218620号
本開示では、フルオロポリマー、特定の重合体および水性媒体を含有する組成物中のフルオロポリマーの濃度を速やかに高めることができるとともに、最終的にフルオロポリマーを高濃度で含有する水性分散液を得ることができ、さらには、組成物から特定の重合体を速やかに除去することができるフルオロポリマー水性分散液の製造方法を提供することを目的とする。
本開示によれば、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)、フルオロポリマー(ただし、重合体(I)を除く)、非イオン性界面活性剤、フッ素非含有アニオン性界面活性剤および水性媒体を含有する組成物の濃縮を行うことにより、前記フルオロポリマーを含有する水性分散液を得るフルオロポリマー水性分散液の製造方法が提供される。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
本開示の製造方法において、前記組成物中の前記フッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量が、前記フルオロポリマーに対して、10~10000質量ppmであることが好ましい。
本開示の製造方法において、0.1質量%の前記フッ素非含有アニオン性界面活性剤を含有する水溶液について25℃で測定する表面張力が、60mN/m以下であることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記組成物中の前記非イオン性界面活性剤の含有量が、前記フルオロポリマーに対して、1.0~40質量%であることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記非イオン性界面活性剤が、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤、および、一般式(ii)で表される非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
-O-A-H (i)
(式中、Rは、炭素数8~18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1級又は2級アルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)
-C-O-A-H (ii)
(式中、Rは、炭素数4~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、Aは、オキシエチレン基の平均繰り返し数5~20より構成されるポリオキシエチレン鎖である。)
本開示の製造方法において、前記組成物のpHが、4.0~11.5であることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
本開示の製造方法において、前記水性分散液中の前記フルオロポリマーの含有量が、前記水性分散液に対して、50質量%以上であることが好ましい。
本開示の製造方法において、重合体(I)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを重合することにより、前記フルオロポリマー、重合体(I)および水性媒体を含有する重合分散液を得た後、前記重合分散液、前記非イオン性界面活性剤および前記フッ素非含有アニオン性界面活性剤を混合することにより、前記組成物を得ることが好ましい。
本開示の製造方法において、実質的に、含フッ素界面活性剤の非存在下に、フルオロモノマーを重合することが好ましい。
本開示の製造方法において、前記重合分散液および前記組成物を、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂のいずれにも接触させることなく、前記濃縮に供することが好ましい。
本開示によれば、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)、フルオロポリマー(ただし、重合体(I)を除く)、非イオン性界面活性剤、および水性媒体を含有するフルオロポリマー水性分散液であって、重合体(I)の含有量が、前記フルオロポリマー水性分散液に対して、500質量ppm以下であり、前記フルオロポリマーの含有量が、前記フルオロポリマー水性分散液に対して、50質量%以上、70質量%以下であるフルオロポリマー水性分散液が提供される。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
本開示のフルオロポリマー水性分散液は、25℃における粘度が、5.0mPa・s以上、300mPa・s以下であることが好ましい。
本開示のフルオロポリマー水性分散液は、前記非イオン性界面活性剤の含有量が、前記フルオロポリマーに対して、4.0質量%以上、12質量%以下であることが好ましい。
本開示のフルオロポリマー水性分散液は、実質的に含フッ素界面活性剤を含まないことが好ましい。
本開示によれば、フルオロポリマー、非イオン性界面活性剤、および水性媒体を含有するフルオロポリマー水性分散液であって、実質的に含フッ素界面活性剤を含まず、25℃における粘度が、100mPa・s以下であり、前記フルオロポリマー水性分散液をガラス繊維に含浸させ380℃で焼成することにより得られる含浸繊維の色調が、CIELABカラースケールにおけるLとして、74.0以上であり、または、CIELABカラースケールにおけるaとして、1.0以下であり、前記フルオロポリマーの含有量が、前記フルオロポリマー水性分散液に対して、50質量%以上、70質量%以下であり、前記非イオン性界面活性剤の含有量が、前記フルオロポリマーに対して、4.0質量%以上、12質量%以下であるフルオロポリマー水性分散液が提供される。
本開示のフルオロポリマー水性分散液において、含フッ素界面活性剤が、アニオン性部分の分子量が800以下のフッ素を含むアニオン性含フッ素界面活性剤であることが好ましい。
本開示のフルオロポリマー水性分散液は、含フッ素界面活性剤の含有量が、100質量ppb以下であることが好ましい。
本開示のフルオロポリマー水性分散液において、前記含フッ素界面活性剤が、
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、および
Figure 0007644392000001
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)で表される化合物であることが好ましい。
本開示によれば、フルオロポリマー、特定の重合体および水性媒体を含有する組成物中のフルオロポリマーの濃度を速やかに高めることができるとともに、最終的にフルオロポリマーを高濃度で含有する水性分散液を得ることができ、さらには、組成物から特定の重合体を速やかに除去することができるフルオロポリマー水性分散液の製造方法を提供することができる。
本開示を具体的に説明する前に、本開示で使用するいくつかの用語を定義または説明する。
本開示において、フッ素樹脂とは、部分結晶性フルオロポリマーであり、フルオロプラスチックスである。フッ素樹脂は、融点を有し、熱可塑性を有するが、溶融加工性であっても、非溶融加工性であってもよい。
本開示において、溶融加工性とは、押出機及び射出成形機等の従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。従って、溶融加工性のフッ素樹脂は、後述する測定方法により測定されるメルトフローレートが0.01~500g/10分であることが通常である。
本開示において、フッ素ゴムとは、非晶質フルオロポリマーである。「非晶質」とは、フルオロポリマーの示差走査熱量測定〔DSC〕(昇温速度10℃/分)あるいは示差熱分析〔DTA〕(昇温速度10℃/分)において現われた融解ピーク(ΔH)の大きさが4.5J/g以下であることをいう。フッ素ゴムは、架橋することにより、エラストマー特性を示す。エラストマー特性とは、ポリマーを延伸することができ、ポリマーを延伸するのに必要とされる力がもはや適用されなくなったときに、その元の長さを保持できる特性を意味する。
本開示において、部分フッ素化ゴムとは、フルオロモノマー単位を含み、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%未満のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーである。
本開示において、パーフルオロゴム(パーフルオロエラストマー)とは、全重合単位に対するパーフルオロモノマー単位の含有量が90モル%以上、好ましくは91モル%以上のフルオロポリマーであって、20℃以下のガラス転移温度を有し、4.5J/g以下の融解ピーク(ΔH)の大きさを有するフルオロポリマーであり、更に、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度が71質量%以上、好ましくは71.5質量%以上であるポリマーである。本開示において、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度は、フルオロポリマーを構成する各モノマーの種類と含有量より、フルオロポリマーに含まれるフッ素原子の濃度(質量%)を計算により求めるものである。
本開示において、パーフルオロモノマーとは、分子中に炭素原子-水素原子結合を含まないモノマーである。上記パーフルオロモノマーは、炭素原子及びフッ素原子の他、炭素原子に結合しているフッ素原子のいくつかが塩素原子で置換されたモノマーであってもよく、炭素原子の他、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、硼素原子又は珪素原子を有するものであってもよい。上記パーフルオロモノマーとしては、全ての水素原子がフッ素原子に置換されたモノマーであることが好ましい。上記パーフルオロモノマーには、架橋部位を与えるモノマーは含まれない。
架橋部位を与えるモノマーとは、硬化剤により架橋を形成するための架橋部位をフルオロポリマーに与える架橋性基を有するモノマー(キュアサイトモノマー)である。
本開示において、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕は、全重合単位に対するテトラフルオロエチレン単位の含有量が99モル%以上であるフルオロポリマーであることが好ましい。
本開示において、フッ素樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)及びフッ素ゴムは、いずれも、全重合単位に対するテトラフルオロエチレン単位の含有量が99モル%未満であるフルオロポリマーであることが好ましい。
本開示において、フルオロポリマーを構成する各モノマーの含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
本開示において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、または有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO-、および、
RaNRbSO
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、または、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、Hまたは1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
また、本開示において、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、および、ジ芳香族オキシホスフィニル基を包含する。
上記脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~4のアルキル基、たとえば、メチル基、エチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、カルバモイルメチル基などが挙げられる。
上記芳香族基は、たとえば、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記芳香族基としては、炭素数6~12、好ましくは総炭素原子数6~10のアリール基、たとえば、フェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アセチルアミノフェニル基、4-メタンスルホニルフェニル基などが挙げられる。
上記ヘテロ環基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記ヘテロ環基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~10の5~6員ヘテロ環、たとえば2-テトラヒドロフリル基、2-ピリミジル基などが挙げられる。
上記アシル基は、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアシル基、たとえばアセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、3-ピリジンカルボニル基などが挙げられる。
上記アシルアミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよく、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~8のアシルアミノ基、総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などが挙げられる。
上記脂肪族オキシカルボニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族オキシカルボニル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアルコキシカルボニル基、たとえばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(t)-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
上記カルバモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、総炭素数2~9のアルキルカルバモイル基、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2~5のアルキルカルバモイル基、たとえばN-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基などが挙げられる。
上記脂肪族スルホニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族スルホニル基としては、総炭素原子数1~6、好ましくは総炭素原子数1~4のアルキルスルホニル基、たとえばメタンスルホニル基などが挙げられる。
上記芳香族スルホニル基は、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記芳香族スルホニル基としては、総炭素原子数6~10のアリールスルホニル基、たとえばベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
上記アミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。
上記アシルアミノ基は、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは総炭素原子数2~8のアシルアミノ基、より好ましくは総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などが挙げられる。
上記脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基は、たとえば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、2-ピリジンスルホンアミド基などであってもよい。
上記スルファモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記スルファモイル基としては、スルファモイル基、総炭素原子数1~9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7~13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~12のヘテロ環スルファモイル基、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1~7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3~6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6~11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~10のヘテロ環スルファモイル基、たとえば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、4-ピリジンスルファモイル基などが挙げられる。
上記脂肪族オキシ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などを有していてもよい。上記脂肪族オキシ基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~6のアルコキシ基、たとえばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などが挙げられる。
上記芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基は、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、好ましくは総炭素原子数1~4の脂肪族基、総炭素原子数1~4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1~4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2~4の脂肪族オキシカルボニル基を有していてもよい。
上記脂肪族チオ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、総炭素原子数1~8、より好ましくは総炭素原子数1~6のアルキルチオ基、たとえばメチルチオ基、エチルチオ基、カルバモイルメチルチオ基、t-ブチルチオ基などが挙げられる。
上記カルバモイルアミノ基は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイルアミノ基としては、カルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~12のヘテロ環カルバモイルアミノ基、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のヘテロ環カルバモイルアミノ基、たとえば、カルバモイルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ基、4-ピリジンカルバモイルアミノ基などが挙げられる。
本開示において、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(たとえば、1~10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。
本開示において、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(たとえば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本開示の製造方法においては、フルオロポリマー、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)、非イオン性界面活性剤、フッ素非含有アニオン性界面活性剤および水性媒体を含有する組成物の濃縮を行うことにより、フルオロポリマーを含有する水性分散液を得る。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である)
特許文献2および3には、アニオン性基を有する特定の重合体の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーの重合を行うことが記載されており、重合により得られる組成物には、特定の重合体、フルオロポリマーおよび水性媒体が含まれている。
このような組成物を種々の用途に適用し、フルオロポリマーが有する優れた特性を十分に発揮させるためには、組成物中のフルオロポリマーの濃度が高く、特定の重合体の含有量が少ない方が好ましい。また、組成物中のフルオロポリマーが沈降することなく、安定して水性媒体中に分散している方が、取り扱い性に優れる点で有利である。
本開示の製造方法は、これらの課題を解決するだけでなく、組成物中のフルオロポリマーの濃度を短い時間で高め、特定の重合体を短い時間で除去できるものである。
すなわち、本開示の製造方法は、非イオン性界面活性剤およびフッ素非含有アニオン性界面活性剤が組成物中に存在する状態で、重合体(I)、フルオロポリマーおよび水性媒体を含有する組成物の濃縮を行うことにより、フルオロポリマー水性分散液を得るものであることから、フルオロポリマーの濃度が高められた水性分散液であって、重合体(I)の含有量が驚くほど低減された水性分散液を得ることができる。また、得られるフルオロポリマー水性分散液は、沈降安定性および機械的安定性に優れている。さらには、本開示の製造方法によれば、フルオロポリマーの濃度を速やかに高めることができるとともに、最終的にフルオロポリマーを高濃度で含有する水性分散液を得ることができ、さらには、組成物から特定の重合体を速やかに除去することができるので、高い生産性で高濃度のフルオロポリマー水性分散液を製造することができる。
(フッ素非含有アニオン性界面活性剤)
本開示の製造方法においては、濃縮の際にフッ素非含有アニオン性界面活性剤を用いる。フッ素非含有アニオン性界面活性剤の存在下に濃縮を行うことによって、組成物中のフルオロポリマーの濃度が高まる速度が高くなり、組成物中の重合体(I)が除去される速度も高くなる。さらには、フッ素非含有アニオン性界面活性剤の非存在下に濃縮を行う場合と比べて、最終的に得られるフルオロポリマー水性分散液中のフルオロポリマーの濃度が高くなるとともに、得られるフルオロポリマー水性分散液の沈降安定性および機械的安定性が向上する。濃縮上がりの濃縮相の固形分濃度が高いほど、配合剤の選択肢(配合量、種類)が増えるというメリットがある。
本開示の製造方法において用いるフッ素非含有アニオン性界面活性剤は、通常、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩などの親水性部分と、アルキルなどの長鎖炭化水素部分である疎水性部分とを有する。
フッ素非含有アニオン性界面活性剤としては、その0.1質量%水溶液の表面張力が、例えば60mN/m以下、好ましくは50mN/m以下である化合物が挙げられる。表面張力は、25℃においてウィルヘルミー法で測定することができる。
フッ素非含有アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸等のアルキル硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルアリールスルホン酸、スルホコハク酸アルキルエステル及びそれらの塩等が挙げられる。上記フッ素非含有アニオン性界面活性剤は、これら化合物を1種又は2種以上組み合わせてなるものであってもよい。
スルホコハク酸アルキルエステルおよびその塩は、モノエステルであってもよいが、ジエステルであることが好ましい。
スルホコハク酸アルキルエステルおよびその塩としては、例えば、一般式:R21-OCOCH(SO21)CHCOO-R22(式中、R21及びR22は、同一又は異なって、炭素数4~12のアルキル基を表し、A21は、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはNHを表す。)で表されるスルホコハク酸アルキルエステルおよびその塩などが挙げられる。
21およびR22としては、たとえば、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシル、iso-ヘキシル、tert-ヘキシル、n-ヘプチル、iso-ヘプチル、tert-ヘプチル、n-オクチル、iso-オクチル、tert-オクチル、n-ノニル、iso-ノニル、tert-ノニル、n-デシル、2-エチルヘキシル等の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。
21としては、Na、NH等が好ましい。スルホコハク酸アルキルエステルとしては、たとえば、ジ-n-オクチルスルホコハク酸エステル、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸エステルなどが挙げられる。
フッ素非含有アニオン性界面活性剤は、酸基を有するものであってもよい。酸基としては、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基およびそれらの塩からなる群より選択されるものが好ましく、なかでも、カルボキシル基、硫酸基およびスルホン酸基、ならびに、それらの塩からなる群より選択されるものが好ましい。
フッ素非含有アニオン性界面活性剤は、上記酸基に加え、さらに、炭素数2~4のオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基、アミノ基等、その他の基を有するものであってもよい。上記アミノ基はプロトン化していないものである。
フッ素非含有アニオン性界面活性剤としては、炭化水素を主鎖として有するアニオン炭化水素界面活性剤が好ましい。炭化水素としては、たとえば、炭素数6~40、好ましくは炭素数8~20の飽和又は不飽和の脂肪族鎖を有するものが挙げられる。上記飽和又は不飽和の脂肪族鎖は、直鎖又は分岐鎖の何れであってもよく、環状構造を有するものであってもよい。上記炭化水素は、芳香族性であってもよいし、芳香族基を有するものであってもよい。上記炭化水素は、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を有するものであってもよい。
フッ素非含有アニオン性界面活性剤としては、ラウリルスルホン酸等のアルキルスルホン酸およびその塩;アルキルアリールサルフェートおよびそれらの塩;ラウリン酸等の脂肪族(カルボン)酸およびその塩;リン酸アルキルエステル、リン酸アルキルアリールエステルまたはそれらの塩;等が挙げられるが、中でも、スルホン酸及びカルボン酸並びにそれらの塩よりなる群から選択されるものが好ましく、脂肪族カルボン酸又はその塩が好ましい。上記脂肪族カルボン酸又はその塩としては、例えば、末端Hを-OHで置換したものであってもよい炭素数9~13の飽和若しくは不飽和脂肪族カルボン酸又はその塩が好ましく、該脂肪族カルボン酸としては、モノカルボン酸が好ましく、モノカルボン酸としては、デカン酸、ウンデカン酸、ウンデセン酸、ラウリン酸、ハイドロキシドデカン酸が好ましい。
フッ素非含有アニオン性界面活性剤としては、スルホコハク酸アルキルエステルおよびその塩、アルキル硫酸およびその塩、ならびに、モノカルボン酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ジオクチルスルホコハク酸、ラウリル硫酸、デカン酸およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、ジオクチルスルホコハク酸、ジオクチルスルホコハク酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウムおよびデカン酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
濃縮に供する組成物中のフッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量は、フルオロポリマーに対して、好ましくは10~10000質量ppmであり、より好ましくは5000質量ppm以下であり、さらに好ましくは1000質量ppm以下である。フッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量を上記範囲内に調整することにより、組成物中のフルオロポリマーの濃度をより一層高い速度で高めることができる。フッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量が多すぎると、濃縮を行うことにより形成される上澄相にフルオロポリマーが混入しやすくなり、フルオロポリマーの収率が悪化することがある。
組成物中のフッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量は、組成物の調製に用いたフッ素非含有アニオン性界面活性剤の添加量から計算により求めることができる。
(非イオン性界面活性剤)
本開示の製造方法において用いる非イオン性界面活性剤は、通常、帯電した基を含まず、長鎖炭化水素である疎水性部分を有する。非イオン性界面活性剤の親水性部分は、エチレンオキシドとの重合から誘導されるエチレンエーテルの鎖などの水溶性官能基を含む。
非イオン性界面活性剤としては、下記が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセロールエステル、それらの誘導体。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等。
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等。
ポリオキシエチレンアルキルエステルの具体例:ポリエチレングリコールモノラウリレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート等。
ソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等。
ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等。
グリセロールエステルの具体例:モノミリスチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール等。
上記誘導体の具体例:ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル-ホルムアルデヒド凝縮物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート等。
上記エーテル及びエステルは、10~18のHLB値を有してよい。
非イオン性界面活性剤としては、ダウ・ケミカル社製のTriton(登録商標)Xシリーズ(X15、X45、X100等)、Tergitol(登録商標)15-Sシリーズ、Tergitol(登録商標)TMNシリーズ(TMN-6、TMN-10、TMN-100等)、Tergitol(登録商標)Lシリーズ、BASF社製のPluronic(登録商標)Rシリーズ(31R1、17R2、10R5、25R4(m~22、n~23)、Iconol(登録商標)TDAシリーズ(TDA-6、TDA-9、TDA-10)等が挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤としては、フッ素を含有しない非イオン性界面活性剤であることが好ましい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル等のエーテル型非イオン性界面活性剤;エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体等のポリオキシエチレン誘導体;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル型非イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等のアミン系非イオン性界面活性剤;等が挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤において、その疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れであってもよい。
非イオン性界面活性剤としては、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤が好ましい。
-O-A-H (i)
(式中、Rは、炭素数8~18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1級又は2級アルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)
一般式(i)において、Rの炭素数は、10~16が好ましく、12~16がより好ましい。Rの炭素数が18以下であると組成物の優れた沈降安定性が得られやすい。またRの炭素数が18を超えると流動温度が高いため取扱い難い。Rの炭素数が8より小さいと組成物の表面張力が高くなり、浸透性やぬれ性が低下しやすい。
のポリオキシアルキレン鎖はオキシエチレンとオキシプロピレンとからなるものであってもよい。オキシエチレン基の平均繰り返し数5~20およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2からなるポリオキシアルキレン鎖であり、親水基である。オキシエチレン単位数は、通常提供される広いまたは狭い単峰性分布、またはブレンドすることによって得られるより広いまたは二峰性分布のいずれかを含み得る。オキシプロピレン基の平均繰り返し数が0超の場合、ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に配列しても、ランダム状に配列してもよい。組成物の粘度および沈降安定性の点からは、オキシエチレン基の平均繰り返し数7~12およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2より構成されるポリオキシアルキレン鎖が好ましい。特にAがオキシプロピレン基を平均して0.5~1.5有すると低起泡性が良好であり好ましい。
より好ましくは、Rは、(R’)(R’’)HC-であり、ここで、R’及びR’’は、同じか又は異なる直鎖、分岐鎖、又は環式のアルキル基であり、炭素原子の合計量は、少なくとも5個、好ましくは7~17個である。好ましくは、R’またはR’’のうちの少なくとも一つは、分岐鎖または環状炭化水素基である。
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、C1327-O-(CO)-H、C1225-O-(CO)-H、C1021CH(CH)CH-O-(CO)-H、C1327-O-(CO)-(CH(CH)CHO)-H、C1633-O-(CO)-H、HC(C11)(C15)-O-(CO)-H(各式中、nは1以上の整数である)等が挙げられる。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、例えば、Genapol X080(商品名)を例とするGenapol Xシリーズ(クラリアント社製)、ノイゲンTDS-80(商品名)を例とするノイゲンTDSシリーズ(第一工業製薬社製)、レオコールTD-90(商品名)を例とするレオコールTDシリーズ(ライオン社製)、ライオノール(登録商標)TDシリーズ(ライオン社製)、T-Det A138(商品名)を例とするT-Det Aシリーズ(Harcros Chemicals社製)、Tergitol(登録商標)15-Sシリーズ(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤は、平均約4~約18個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、平均約6~約12個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、またはその混合物であることも好ましい。この種類の非イオン性界面活性剤は、例えば、TERGITOL TMN-6、TERGITOL TMN-10、及びTERGITOL TMN-100X(いずれも商品名、ダウ・ケミカル社製)としても市販されている。
また、非イオン性界面活性剤の疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れかであってもよい。例えば、非イオン性界面活性剤としては、例えば、一般式(ii)
-C-O-A-H (ii)
(式中、Rは、炭素数4~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)で表される非イオン性界面活性剤が挙げられる。上記非イオン性界面活性剤として具体的には、トライトン(登録商標)X-100(商品名、ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
のポリオキシアルキレン鎖はオキシエチレンとオキシプロピレンとからなるものであってもよい。オキシエチレン基の平均繰り返し数5~20およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2からなるポリオキシアルキレン鎖であり、親水基である。オキシエチレン単位数は、通常提供される広いまたは狭い単峰性分布、またはブレンドすることによって得られるより広いまたは二峰性分布のいずれかを含み得る。オキシプロピレン基の平均繰り返し数が0超の場合、ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に配列しても、ランダム状に配列してもよい。組成物の粘度および沈降安定性の点からは、オキシエチレン基の平均繰り返し数7~12およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2より構成されるポリオキシアルキレン鎖が好ましい。特にAがオキシプロピレン基を平均して0.5~1.5有すると低起泡性が良好であり好ましい。
より好ましくは、Rは、1級若しくは2級のアルキル基であり、より好ましくは(R’)(R’’)HC-であり、ここで、R’及びR’’は、同じか又は異なる直鎖、分岐鎖、又は環式のアルキル基であり、炭素原子の合計量は、少なくとも5個、好ましくは7~17個である。好ましくは、R’またはR’’のうちの少なくとも一つは、分岐鎖または環状炭化水素基である。
上記非イオン性界面活性剤としてはポリオール化合物も挙げられる。具体的には、国際公開第2011/014715号に記載されたもの等が挙げられる。ポリオール化合物の典型例としては、ポリオール単位として1個以上の糖単位を有する化合物が挙げられる。糖単位は、少なくとも1個の長鎖を含有するように変性されてもよい。少なくとも1つの長鎖部分を含有する好適なポリオール化合物としては、例えば、アルキルグリコシド、変性アルキルグリコシド、糖エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。糖としては、単糖、オリゴ糖、及びソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。単糖としては、五炭糖及び六炭糖が挙げられる。単糖の典型例としては、リボース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アラビノース、キシロースが挙げられる。オリゴ糖としては、2~10個の同一又は異なる単糖のオリゴマーが挙げられる。オリゴ糖の例としては、サッカロース、マルトース、ラクトース、ラフィノース、及びイソマルトースが挙げられるが、これらに限定されない。
典型的に、ポリオール化合物として使用するのに好適な糖としては、4個の炭素原子と1個のヘテロ原子(典型的に、酸素又は硫黄であるが、好ましくは酸素原子)との五員環を含有する環状化合物、又は5個の炭素原子と上述のような1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子との六員環を含有する環状化合物が挙げられる。これらは、炭素環原子に結合している少なくとも2個の又は少なくとも3個のヒドロキシ基(-OH基)を更に含有する。典型的に、糖は、エーテル又はエステル結合が長鎖残基と糖部分との間に作製されるように、炭素環原子に結合しているヒドロキシ基(及び/又はヒドロキシアルキル基)の水素原子のうちの1個以上が、長鎖残基によって置換されているという点で変性されている。糖系ポリオールは、1個の糖単位又は複数の糖単位を含有してもよい。1個の糖単位又は複数の糖単位は、上述のような長鎖部分で変性されてもよい。糖系ポリオール化合物の特定の例としては、グリコシド、糖エステル、ソルビタンエステル、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
ポリオール化合物の好ましい種類は、アルキル又は変性アルキルグルコシドである。これらの種類の界面活性剤は、少なくとも1個のグルコース部分を含有する。
Figure 0007644392000002
(式中、xは、0、1、2、3、4、又は5を表し、R及びRは、独立して、H又は少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を表すが、但しR及びRのうちの少なくとも1個はHではない)によって表される化合物が挙げられる。R及びRの典型例としては、脂肪族アルコール残基が挙げられる。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。上記の式は、ピラノース形態のグルコースを示すアルキルポリグルコシドの特定の例を表すが、他の糖又は同じ糖であるが異なる鏡像異性体又はジアステレオマー形態である糖を用いてもよいことが理解される。
アルキルグルコシドは、例えば、グルコース、デンプン、又はn-ブチルグルコシドと脂肪族アルコールとの酸触媒反応によって入手可能であり、これからは、典型例に、様々なアルキルグルコシドの混合物が得られる(Alkylpolygylcoside,Rompp,Lexikon Chemie,Version 2.0,Stuttgart/New York,Georg Thieme Verlag,1999)。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。また、アルキルグルコシドは、Cognis GmbH,Dusseldorf,Germanyから商品名GLUCOPON又はDISPONILとして市販されている。
その他の非イオン性界面活性剤として、BASF社からPluronic(登録商標)Rシリーズとして供給される二官能基ブロックコポリマー、BASF社からIconol(登録商標)TDAシリーズとして供給されるトリデシルアルコールアルコキシレートが挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤としては、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤、および、一般式(ii)で表される非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤がより好ましい。
上記非イオン性界面活性剤としては、好ましくは芳香族部分を含まないものである。
濃縮に供する組成物中の非イオン性界面活性剤の含有量としては、フルオロポリマーに対して、1.0質量%以上が好ましく、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。フッ素非含有ノニオン界面活性剤の含有量が少なすぎると、濃縮が困難となることがあり、フッ素非含有ノニオン界面活性剤の含有量が多すぎると、経済性が損なわれることがある。
非イオン性界面活性剤の含有量は、試料約1g(Xg)を、110℃にて30分で加熱した加熱残分(Yg)、更に、得られた加熱残分(Yg)を300℃にて30分加熱した加熱残分(Zg)より、式:N=[(Y-Z)/X]×100(質量%)にしたがって算出される値である。
(濃縮)
濃縮方法としては、相分離濃縮、電気泳動法、イオン交換体法、膜濃縮等が挙げられる。相分離濃縮、イオン交換体法及び膜濃縮は、従来公知の処理条件で行うことができ、特に限定されないが、国際公開第2004/050719号、特表2002-532583号公報や特開昭55-120630号公報に記載の方法により行うことができる。
濃縮方法としては、相分離濃縮が好ましい。相分離濃縮は、たとえば、組成物を加熱することにより、フルオロポリマー非含有相(上澄相)とフルオロポリマー含有相(濃縮相)とに相分離させ、フルオロポリマー非含有相を除去して、フルオロポリマー含有相(濃縮相)を回収することにより行うことができる。
回収されたフルオロポリマー含有相(濃縮相)には、フルオロポリマー、非イオン性界面活性剤、フッ素非含有アニオン性界面活性剤および水性媒体が含まれるとともに、濃縮前よりも含有量が低減された重合体(I)が含まれている。
相分離濃縮の温度は、組成物に含まれる非イオン性界面活性剤の曇点を基準として選択することができる。相分離濃縮の温度は、非イオン性界面活性剤の曇点よりも10℃低い温度以上が好ましく、非イオン性界面活性剤の曇点よりも10℃高い温度以下が好ましい。
本開示の製造方法においては、相分離濃縮を繰り返し行うことも好ましい。相分離濃縮を繰り返し行うことにより、組成物中の重合体(I)の含有量を、所望の含有量まで容易に低減することができる。
繰り返し回数は、特に限定されないが、好ましくは2回以上であり、より好ましくは3回以上である。回数の上限は限定されないが、例えば、10回以下であってよい。相分離濃縮を繰り返し行うことにより、重合体(I)の含有量を一層低減することができる。
相分離濃縮を2回以上行う場合、1回目の相分離濃縮は、非イオン性界面活性剤の曇点よりも10℃低い温度以上の温度で加熱した後静置し、上澄相と濃縮相に分離するものであることが好ましい。また、2回目又は2回目以降の相分離濃縮は、非イオン性界面活性剤の曇点よりも10℃低い温度以上で加熱した後静置し、上澄相と濃縮相に分離するものであることが好ましい。
本開示の製造方法において複数回の相分離濃縮を繰り返す場合には、1回目の相分離濃縮についても、好適にはフッ素非含有アニオン性界面活性剤の存在下で行われる。1回目の相分離濃縮で用いる組成物は、2回目以降の相分離濃縮において用いる組成物よりも多くの重合体(I)を含有しているが、重合体(I)の含有量が多い状態でも、フッ素非含有アニオン性界面活性剤を存在させることにより、組成物中のフルオロポリマーの濃度を高める速度、および、組成物中の重合体(I)を除去する速度を、いずれも高めることができ、最終的に得られる水性分散液中のフルオロポリマーの濃度が高いものとなる。
複数回の相分離濃縮を繰り返す場合においては、最終回の相分離濃縮を除き、組成物中のフルオロポリマーの固形分濃度が48~52質量%に達した時点で相分離濃縮を停止し、濃縮後の組成物に水性媒体を添加し、続いて相分離濃縮を繰り返すことができる。フルオロポリマーの固形分濃度が上記範囲に達した時点で、相分離濃縮を停止することにより、各回の相分離濃縮における重合体(I)の除去効率を低下させることなく、短時間で各回の相分離濃縮を終了させることができるので、結果として、相分離濃縮に要する合計の時間を短縮することができる。
濃縮に供する組成物のpHは、好ましくは4.0~11.5であり、より好ましくは7.0以上であり、さらに好ましくは8.0以上であり、特に好ましくは9.0以上である。組成物のpHを上記範囲内に調整することにより、組成物中のフルオロポリマーの濃度を高める速度、および、組成物中の重合体(I)を除去する速度を、いずれも高めることができ、最終的に得られる水性分散液中のフルオロポリマーの濃度が高いものとなる。
(重合体(I))
本開示の製造方法において用いる重合体(I)は、単量体(I)に基づく重合単位(I)を含む重合体である。単量体(I)は、下記の一般式(I)で表される。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
としては、F、Cl、H又はCFが好ましい。また、Z及びZとしては、FまたはCFが好ましい。
本開示において、アニオン性基には、サルフェート基、カルボキシレート基などのアニオン性基に加えて、-COOHのような酸基、-COONHのような酸塩基などのアニオン性基を与える官能基が含まれる。アニオン性基としては、サルフェート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、スルホネート基、または、-C(CFOM(式中、Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)が好ましい。
本開示の製造方法において、一般式(I)で表される単量体(I)として、1種または2種以上の単量体を用いることができる。
Rは、連結基である。本開示において「連結基」は、(m+1)価連結基であり、mが1の場合は二価連結基である。連結基は、単結合であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を含むことが好ましく、炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。上限は限定されないが、たとえば、100以下であってよく、50以下であってよい。
連結基は、鎖状または分岐鎖状、環状または非環状構造、飽和または不飽和、置換または非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、および窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素およびカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。上記連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄または窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
mは1以上の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。mが2以上の整数である場合、Z、ZおよびAは、同一であっても、異なっていてもよい。
次に、一般式(I)においてmが1である場合の好適な構成について説明する。
Rは、たとえば、酸素、硫黄、窒素等のカテナリーヘテロ原子、または、2価の有機基であることが好ましい。
Rが2価の有機基である場合、炭素原子に結合する水素原子は、フッ素以外のハロゲン、たとえば塩素等で置き換えられてもよく、二重結合を含んでも含まなくてもよい。また、Rは、鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環状および非環状のいずれでもよい。また、Rは、官能基(たとえば、エステル、エーテル、ケトン(ケト基)、アミン、ハロゲン化物等)を含んでもよい。
Rはまた、非フッ素の2価の有機基であってもよいし、部分フッ素化または過フッ素化された2価の有機基であってもよい。
Rとしては、たとえば、炭素原子にフッ素原子が結合していない炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基、または、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された炭化水素基であってもよく、これらは酸素原子を含んでいてもよく、二重結合を含んでいてもよく、官能基を含んでいてもよい。
Rは、エーテル結合またはケト基を含んでいてもよい炭素数1~100の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がフッ素に置換されていてもよい。
Rとして好ましくは、-(CH-、-(CF-、-O-(CF-、-(CF-O-(CF-、-O(CF-O-(CF-、-(CF-[O-(CF-、-O(CF-[O-(CF-、-[(CF-O]-[(CF-O]-、-O[(CF-O]-[(CF-O]-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-、-[CFCF(CF)O]-、-[CF(CF)CFO]-、-(CF-O-[CF(CF)CFO]-、-(CF-O-[CF(CF)CFO]-(CF-、-[CFCF(CF)]-CO-(CF-、および、これらの組み合わせから選択される少なくとも1種である。
式中、a、b、cおよびdは独立して少なくとも1以上である。a、b、cおよびdは独立して、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。a、b、cおよびdの上限は、たとえば、100である。
Rとしては、一般式(r1):
-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)- (r1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0または1である)で表される2価の基が好ましく、一般式(r2):
-CF-O-(CX -(O)- (r2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、gは0または1である)で表される2価の基がより好ましい。
Rとして好適な具体的としては、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CH-、-CF-O-CHCF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CFCH-、-CF-O-CFCFCH-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CH-等が挙げられる。なかでも、Rは、酸素原子を含んでもよい、パーフルオロアルキレン基が好ましく、具体的には、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、または、-CF-O-CF(CF)CF-O-が好ましい。
一般式(I)の-R-CZ-としては、一般式(s1):
-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)-CZ- (s1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0または1であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基である)で表されるものが好ましく、式(s1)において、ZおよびZは、FまたはCFがより好ましく、一方がFで他方がCFであることがさらに好ましい。
また、一般式(I)において、-R-CZ-としては、一般式(s2):
-CF-O-(CX -(O)-CZ- (s2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、gは0または1であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基である)で表されるものが好ましく、式(s2)において、ZおよびZは、FまたはCFがより好ましく、一方がFで他方がCFであることがさらに好ましい。
一般式(I)の-R-CZ-としては、-CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-C(CF-、-CF-O-CF-CF-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CF-C(CF-、-CF-O-CFCF-CF-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)-CF-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、または、-CF-O-CF(CF)CF-O-C(CF-が好ましく、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、または、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-がより好ましい。
重合体(I)は、高度にフッ素化されていることも好ましい。たとえば、ホスフェート基部分(たとえば、CHOP(O)(OM))およびサルフェート基部分(たとえば、CHOS(O)OM)のようなアニオン性基(A)を除き、重合体(I)中のC-H結合の80%以上、90%以上、95%以上、または100%がC-F結合で置換されていることが好ましい。
単量体(I)および重合体(I)は、アニオン性基(A)を除いて、C-F結合を有し、C-H結合を有していないことも好ましい。すなわち、一般式(I)において、X、X、およびXの全てがFであり、Rは炭素数が1以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、上記パーフルオロアルキレン基は、鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環状および非環状のいずれでもよく、少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含んでもよい。上記パーフルオロアルキレン基の炭素数は、2~20であってよく、4~18であってもよい。
単量体(I)および重合体(I)は、部分フッ素化されたものであってもよい。すなわち、単量体(I)および重合体(I)は、アニオン性基(A)を除いて、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有し、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有することも好ましい。
アニオン性基(A)は、-SOM、-OSOM、-COOM、-SONR’CHCOOM、-CHOP(O)(OM)、[-CHO]P(O)(OM)、-CHCHOP(O)(OM)、[-CHCHO]P(O)(OM)、-CHCHOSOM、-P(O)(OM)、-SONR’CHCHOP(O)(OM)、[-SONR’CHCHO]P(O)(OM)、-CHOSOM、-SONR’CHCHOSOM、または、-C(CFOMであってよい。なかでも、-SOM、-OSOM、-COOM、-P(O)(OM)または-C(CFOMが好ましく、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOMがより好ましく、-SOM、-COOMまたは-P(O)(OM)がさらに好ましく、-SOMまたは-COOMが特に好ましく、-COOMが最も好ましい。
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。
金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、KまたはLiが好ましい。
Mとしては、-H、金属原子またはNR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR がより好ましく、-H、-Na、-K、-LiまたはNHが更に好ましく、-H、-Na、-KまたはNHが更により好ましく、-H、-NaまたはNHが特に好ましく、-Hまたは-NHが最も好ましい。
重合体(I)において、各重合単位(I)で異なるアニオン性基を有してもよいし、同じアニオン性基を有してもよい。
単量体(I)は、一般式(Ia)で示される単量体であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(Ia)で示される単量体に基づく重合単位(Ia)を含む重合体であることも好ましい。
CF=CF-O-Rf-A (Ia)
(式中、Aはアニオン性基であり、Rfは、過フッ素化されており、鎖状または分岐鎖状、環状または非環状構造、飽和または不飽和、置換または非置換であってもよく、硫黄、酸素、および窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意追加的に含有する過フッ素化二価連結基である。)
単量体(I)は、一般式(Ib)で示される単量体であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(Ib)で示される単量体に基づく重合単位(Ib)を含む重合体であることも好ましい。
CH=CH-O-Rf-A (Ib)
(式中、Aはアニオン性基であり、Rfは式Iaで定義される過フッ素化二価連結基である。)
一般式(I)において、Aはサルフェート基であることが好ましい形態の一つである。Aは、たとえば、-CHOSOM、-CHCHOSOM、または、-SONR’CHCHOSOMであり、式中、R’はH、または炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
がサルフェート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、たとえば、CF=CF(OCFCFCHOSOM)、CH=CH((CFCHOSOM)、CF=CF(O(CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)CHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOSOM)、CH=CH((CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(CFCFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(CFCFCFCHOSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
一般式(I)において、Aはスルホネート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしてはたとえば、-SOMであり、式中、Mは上記と同じである。
がスルホネート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSOM)、CH=CH(CFCFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSOM)、CH=CH((CFSOM)、CH=CH((CFSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
一般式(I)において、Aはカルボキシレート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしては、たとえばCOOMまたはSONR’CHCOOMであり、式中、R’はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。Aがカルボキシレート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)COOM)、CF=CF(OCFCF(CF)O(CFCOOM)(nは1より大きい)、CH=CH(CFCFCOOM)、CH=CH((CFCOOM)、CH=CH((CFCOOM)、CF=CF(OCFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(O(CFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH(CFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH((CFSONR’CHCOOM)、CH=CH((CFSONR’CHCOOM)等が挙げられる。上記式中、R’はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
一般式(I)において、Aはホスフェート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしては、たとえば、-CHOP(O)(OM)、[-CHO]P(O)(OM)、-CHCHOP(O)(OM)、[-CHCHO]P(O)(OM)、[-SONR’CHCHO]P(O)(OM)またはSONR’CHCHOP(O)(OM)であり、式中、R’は炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
がホスフェートである場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(O(CFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)CHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CH=CH(CFCFCHOP(O)(OM))、CH=CH((CFCHOP(O)(OM))、CH=CH((CFCHOP(O)(OM))等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
一般式(I)において、Aはホスホネート基であることも好ましい形態の一つである。Aがホスホネート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFP(O)(OM))、CF=CF(O(CFP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)P(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFP(O)(OM))、CH=CH(CFCFP(O)(OM))、CH=CH((CFP(O)(OM))、CH=CH((CFP(O)(OM))が挙げられ、式中、Mは上記と同じである。
単量体(I)は、一般式(1)で表される単量体(1)であることが好ましい。
重合体(I)は、一般式(1)で表される単量体に基づく重合単位(1)を含む重合体(1)であることが好ましい。
CX=CY(-CZ-O-Rf-A) (1)
(式中、Xは、同一または異なって、-HまたはFであり、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり、Zは、同一または異なって、-H、-F、アルキル基またはフルオロアルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)である。但し、X、YおよびZの少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
本開示の製造方法において、一般式(1)で表される単量体(1)と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(1)は、一般式(1)で表される単量体(1)の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
一般式(1)において、Xは-HまたはFである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。たとえば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
一般式(1)において、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基である。上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記Yとしては、-H、-FまたはCFが好ましく、-Fがより好ましい。
一般式(1)において、Zは、同一または異なって、-H、-F、アルキル基またはフルオロアルキル基である。上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記Zとしては、-H、-FまたはCFが好ましく、-Fがより好ましい。
一般式(1)において、上記X、YおよびZの少なくとも1つはフッ素原子を含む。たとえば、Xが-Hであり、YおよびZが-Fであってよい。
一般式(1)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、上記含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、6以下が特に好ましく、3以下が最も好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCF-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、9以下が特に好ましく、6以下が最も好ましい。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、たとえば、一般式:
Figure 0007644392000003
(式中、ZはFまたはCF;ZおよびZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CFCF(CF)OCFCF-、-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF)CF-O-CF(CF)CH-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CH-(式中、nは1~10の整数)、-CHCFCFO-CHCFCH-、-CFCFCFO-CF-、-CFCFCFO-CFCF-、-CFCFCFO-CFCFCF-、-CFCFCFO-CFCFCH-、-CFCFO-CF-、-CFCFO-CFCH-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
一般式(1)において、Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である。
としては、HまたはC1-10の有機基が好ましく、HまたはC1-4の有機基がより好ましく、HまたはC1-4のアルキル基が更に好ましい。
金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、KまたはLiが好ましい。
Mとしては、H、金属原子またはNR が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR がより好ましく、H、Na、K、LiまたはNHが更に好ましく、H、Na、KまたはNHが更により好ましく、H、NaまたはNHが特に好ましく、HまたはNHが最も好ましい。
Aとしては、-COOMまたは-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
一般式(1)で表される単量体としては、たとえば、一般式(1a):
CX=CFCF-O-(CF(CF)CFO)n5-CF(CF)-A (1a)
(式中、各Xは、同一であり、FまたはHを表す。n5は0または1~10の整数を表し、Aは、上記定義と同じ。)で表される単量体が例示される。
一般式(1a)において、n5は、一次粒子径が小さい粒子を得ることができる点で、0または1~5の整数であることが好ましく、0、1または2であることがより好ましく、0または1であることが更に好ましい。
本開示の製造方法において、一般式(1a)で表される単量体と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(1)は、一般式(1a)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
単量体(1)は、一般式(1A)で表される単量体であることが好ましい。
重合単位(1)は、一般式(1A)で表される単量体に基づく重合単位(1A)であることが好ましい。
CH=CF(-CF-O-Rf-A) (1A)
(式中、RfおよびAは前記と同じ。)
本開示の製造方法において、一般式(1A)で表される単量体と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(1)は、一般式(1A)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
式(1A)で表される単量体として具体的には、一般式
Figure 0007644392000004
(式中、ZはFまたはCF;ZおよびZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が0~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数、ただし、ZおよびZがともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない;Aは上記定義と同じ)で表される単量体が挙げられる。より具体的には、
Figure 0007644392000005
などが好ましく挙げられ、なかでも
Figure 0007644392000006
であることが好ましい。
一般式(1A)で表される単量体としては、式(1A)中のAが-COOMであることが好ましく、特に、CH=CFCFOCF(CF)COOM、および、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CH=CFCFOCF(CF)COOMがより好ましい。
また、一般式(1)で表される単量体としては、下記式で表される単量体等も挙げられる。
CF=CFCF-O-Rf-A
(式中、RfおよびAは上記と同じ)
より具体的には、
Figure 0007644392000007
等が挙げられる。
単量体(I)は、一般式(2)で表される単量体(2)であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(2)で表される単量体に基づく重合単位(2)を含む重合体(2)であることも好ましい。
CX=CY(-O-Rf-A) (2)
(式中、Xは、同一または異なって、-HまたはFであり、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、前記と同じである。)
本開示の製造方法において、一般式(2)で表される単量体(2)と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(2)は、一般式(2)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
一般式(2)において、Xは-HまたはFである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。たとえば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
一般式(2)において、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基である。アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。Yとしては、-H、-Fまたは-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
一般式(2)において、上記XおよびYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。たとえば、Xが-Hであり、YおよびZが-Fであってよい。
一般式(2)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のケト基を有する含フッ素アルキレン基である。なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
Rfの含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-、-CFCFCF-、CFCFCFCF-等が挙げられる。含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましく、分岐していない直鎖状のパーフルオロアルキレン基であることがより好ましい。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、たとえば、一般式:
Figure 0007644392000008
(式中、ZはFまたはCF;ZおよびZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CFCF(CF)OCFCF-、-CFCF(CF)OCFCF-、-CFCF(CF)OCFCFCF-、-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF)CF-O-CF(CF)CH-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CH-(式中、nは1~10の整数)、-CHCFCFO-CHCFCH-、-CFCFCFO-CF-、-CFCFCFO-CFCF-、-CFCFCFO-CFCFCF-、-CFCFCFO-CFCFCH-、-CFCFO-CF-、-CFCFO-CFCH-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。
上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CFCF(CF)CO-CF-、-CFCF(CF)CO-CFCF-、-CFCF(CF)CO-CFCFCF-、-CFCF(CF)CO-CFCFCFCF-等が挙げられる。上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
含フッ素アルキレン基中のケト基に水が付加してもよい。したがって、単量体(2)は水和物であってもよい。ケト基に水が付加した含フッ素アルキレン基としては、-CFCF(CF)C(OH)-CF-、-CFCF(CF)C(OH)-CFCF-、-CFCF(CF)C(OH)-CFCFCF-、-CFCF(CF)C(OH)-CFCFCFCF-等が挙げられる。
一般式(2)で表される単量体は、一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)および(2g)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
CF=CF-O-(CFn1-A (2a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Aは前記と同じ。)
CF=CF-O-(CFC(CF)F)n2-A (2b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFXn3-A (2c)
(式中、Xは、FまたはCFを表し、n3は、1~10の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFXO)n4-(CFn6-A (2d)
(式中、n4は、1~10の整数を表し、n6は、1~3の整数を表し、AおよびXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFCFXO)n5-CFCFCF-A (2e)
(式中、n5は、0~10の整数を表し、AおよびXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFn7-O-(CFn8-A (2f)
(式中、n7は、1~10の整数を表し、n8は、1~3の整数を表す。Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF[OCFCF(CF)]n9O(CFn10O[CF(CF)CFO]n11CF(CF)-A (2g)
(式中、n9は、0~5の整数を表し、n10は、1~8の整数を表し、n11は、0~5の整数を表す。Aは、前記定義と同じ。)
一般式(2a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。
一般式(2a)で表される単量体としては、たとえば、CF=CF-O-CFCOOM、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CFOCFSOM、CF=CFOCFCFCFSOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
一般式(2b)において、n2は、得られる組成物の分散安定性の点で、3以下の整数であることが好ましい。
一般式(2c)において、n3は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Aは、-COOMであることが好ましく、上記Mは、H、NaまたはNHであることが好ましい。
一般式(2d)において、Xは、組成物の分散安定性の点で、-CFであることが好ましく、n4は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、H、NaまたはNHであることが好ましい。
一般式(2d)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFSOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFSOM(式中、Mは、H、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
一般式(2e)において、n5は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、HまたはNHであることが好ましい。
一般式(2e)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFOCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、Na、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
一般式(2f)において、n7は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMまたは-SOMであることが好ましく、-COOMがより好ましい。Mは、H、Na、KまたはNHであることが好ましい。
一般式(2f)で表される単量体としては、たとえば、CF=CF-O-(CF-O-CF-COOM(式中、Mは、H、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
一般式(2g)において、n9は、水溶性の点で3以下の整数であることが好ましく、n10は3以下の整数であることが好ましく、n11は3以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMまたは-SOMであることが好ましく、-COOMがより好ましい。Mは、H、Na、KまたはNHであることが好ましい。
一般式(2g)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFO(CFOCF(CF)COOM、CF=CFOCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFOCF(CF)COOM、CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)COOM、CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)COOM(式中、Mは、H、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
単量体(I)は、一般式(3)で表される単量体(3)であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(3)で表される単量体に基づく重合単位(3)を含む重合体(3)であることも好ましい。
CX=CY(-Rf-A) (3)
(式中、Xは、同一または異なって、-HまたはFであり、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、前記と同じである。)
本開示の製造方法において、一般式(3)で表される単量体(3)と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(3)は、一般式(3)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
なお、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
一般式(3)において、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基であることが好ましい。一般式(3)において、XおよびYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。
一般式(3)で表される単量体は、一般式(3a):
CF=CF-(CFn1-A (3a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)で表される単量体、および、一般式(3b):
CF=CF-(CFC(CF)F)n2-A (3b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
一般式(3a)および一般式(3b)において、Aは、-SOMまたはCOOMが好ましく、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであることが好ましい。Rは、Hまたは有機基を表す。
一般式(3a)において、n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、HまたはNHであることが好ましい。
一般式(3a)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFCFCOOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
一般式(3b)において、n2は、得られる組成物の分散安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、HまたはNHであることが好ましい。
次に、一般式(I)においてmが2以上の整数である場合の好適な構成について説明する。
単量体(I)は、一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位(4)を含む重合体(4)であることも好ましい。
CF=CF-CF-O-QF1-CF(-QF2-CZ-A) (4a)
(式中、Z、ZおよびAは上記定義と同じ、QF1およびQF2は、同一又は異なって、単結合、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキレン基または炭素炭素間にエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素オキシアルキレン基である)
CF=CF-O-QF1-CF(-QF2-CZ-A) (4b)
(式中、Z、Z、A、QF1およびQF2は上記定義と同じ)
一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体としては、
Figure 0007644392000009
等が挙げられる。
単量体(I)としては、単量体(1)、単量体(2)および単量体(3)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、単量体(1)がより好ましく、単量体(1A)がさらに好ましい。
重合体(I)は、重合体(1)、重合体(2)および重合体(3)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、重合体(1)がより好ましい。
本開示の製造方法において、単量体(I)と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(I)は、重合単位(I)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(I)と、一般式(I)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。水性媒体への溶解性の観点からは、重合単位(I)のみからなる単独重合体が好ましい。重合単位(I)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(I)は、2種以上の異なる一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含んでいてもよい。
上記他の単量体としては、一般式CFR=CR(式中、Rは、独立に、H、Fまたは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である)で表される単量体が好ましい。また、他の単量体としては、炭素数2または3の含フッ素エチレン性単量体が好ましい。他の単量体としては、たとえば、CF=CF、CF=CFCl、CH=CF、CFH=CH、CFH=CF、CF=CFCF、CH=CFCF、CH=CHCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)などが挙げられる。
なかでも、共重合性が良好である点で、テトラフルオロエチレン(CF=CF)、クロロトリフルオロエチレン(CF=CFCl)およびフッ化ビニリデン(CH=CF)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。従って、上記他の単量体に基づく重合単位は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位であることが好ましい。上記他の単量体に基づく重合単位は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(I)は、2種以上の異なる他の単量体に基づく重合単位を含んでいてもよい。
上記他の単量体としては、また、一般式(n1-2):
Figure 0007644392000010
(式中、X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;XはH、F、Cl、CHまたはCF;X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;aおよびcは同じかまたは異なり0または1である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される単量体が挙げられる。
具体的には、CH=CFCF-O-Rf、CF=CF-O-Rf、CF=CFCF-O-Rf、CF=CF-Rf、CH=CH-Rf、CH=CH-O-Rf(式中、Rfは前記式(n1-2)と同じ)などが好ましく挙げられる。
上記他の単量体としては、式(n2-1):
Figure 0007644392000011
(式中、XはH、FまたはCH;Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アクリレート単量体も挙げられる。上記Rf基は、
Figure 0007644392000012
(式中、d3は1~4の整数;e3は1~10の整数)などが挙げられる。
上記他の単量体としては、式(n2-2):
CH=CHO-Rf (n2-2)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニルエーテルも挙げられる。
一般式(n2-2)の単量体として具体的には、
Figure 0007644392000013
(式中、e6は1~10の整数)などが好ましく挙げられる。
より具体的には、
Figure 0007644392000014
などが挙げられる。
その他、一般式(n2-3):
CH=CHCHO-Rf (n2-3)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アリルエーテル、一般式(n2-4):
CH=CH-Rf (n2-4)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニル単量体等も挙げられる。
一般式(n2-3)および(n2-4)で表される単量体として具体的には、
Figure 0007644392000015
などの単量体が挙げられる。
重合体(I)は、通常、末端基を有する。末端基は、重合時に生成する末端基であり、代表的な末端基は、水素、ヨウ素、臭素、鎖状または分岐鎖状のアルキル基、および、鎖状または分岐鎖状のフルオロアルキル基から独立に選択され、任意追加的に少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含有してもよい。アルキル基またはフルオロアルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。これらの末端基は、一般的には、重合体(I)の形成に使用される開始剤または連鎖移動剤から生成するか、または連鎖移動反応中に生成する。
重合体(I)において、重合単位(I)の含有量としては、全重合単位に対して、好ましい順に、1.0モル%以上、3.0モル%以上、5.0モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上である。重合単位(I)の含有量は、実質的に100モル%であることが特に好ましく、重合体(I)は、重合単位(I)のみからなることが最も好ましい。
重合体(I)において、一般式(I)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量としては、全重合単位に対して、好ましい順に、99.0モル%以下、97.0モル%以下、95.0モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、70モル%以下、60モル%以下、50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下である。一般式(I)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、実質的に0モル%であることが特に好ましく、重合体(I)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
重合体(I)の数平均分子量は、0.1×10以上が好ましく、0.2×10以上がより好ましく、0.3×10以上が更に好ましく、0.4×10以上が更により好ましく、0.5×10以上が殊更に好ましく、1.0×10以上が特に好ましく、3.0×10以上が殊更特に好ましく、3.1×10以上が最も好ましい。また、75.0×10以下が好ましく、50.0×10以下がより好ましく、40.0×10以下が更に好ましく、30.0×10以下が殊更に好ましく、20.0×10以下が特に好ましい。数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出する値である。また、GPCによる測定ができない場合には、NMR、FT-IR等により得られた末端基数から計算された数平均分子量とメルトフローレートとの相関関係により、重合体(I)の数平均分子量を求めることができる。メルトフローレートは、JIS K 7210に準拠して測定できる。
重合体(I)の重量平均分子量の下限としては、好ましい順に、0.2×10以上、0.4×10以上、0.6×10以上、0.8×10以上、1.0×10以上、2.0×10以上、5.0×10以上、10.0×10以上、15.0×10以上、20.0×10以上、25.0×10以上である。また、重合体(I)の重量平均分子量の上限としては、好ましい順に、150.0×10以下、100.0×10以下、60.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下である。
重合体(I)は、53以下のイオン交換率(IXR)を有することが好ましい。上記IXRは、イオン性基に対するポリマー主鎖中の炭素原子数と定義される。加水分解によりイオン性となる前駆体基(たとえば、-SOF)は、IXRを決定する目的ではイオン性基と見なされない。
IXRは、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、4以上が更により好ましく、5以上が殊更に好ましく、8以上が特に好ましい。また、IXRは43以下がより好ましく、33以下が更に好ましく、23以下が特に好ましい。
重合体(I)のイオン交換容量としては、好ましい順に、0.80meq/g以上、1.50meq/g以上、1.75meq/g以上、2.00meq/g以上、2.20meq/g以上、2.20meq/g超、2.50meq/g以上、2.60meq/g以上、3.00meq/g以上、3.50meq/g以上である。イオン交換容量は、重合体(I)のイオン性基(アニオン性基)の含有量であり、重合体(I)の組成から計算により求められる。
重合体(I)において、イオン性基(アニオン性基)は、典型的に、ポリマー主鎖に沿って分布している。上記重合体(I)は、ポリマー主鎖を、この主鎖に結合された繰り返し側鎖とともに含み、この側鎖はイオン性基を有することが好ましい。
重合体(I)は、10未満、より好ましくは7未満のpKaを有するイオン性基を含むことが好ましい。重合体(I)のイオン性基は、好ましくは、スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、および、ホスファートからなる群から選択される。
用語「スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、およびホスファート」は、それぞれの塩、または塩を形成し得るそれぞれの酸をいうことが意図される。塩が用いられる場合、好ましくは、その塩はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。好ましいイオン性基は、スルホナート基である。
重合体(I)は、水溶性を有していることが好ましい。水溶性とは、容易に水性媒体に溶解または分散する性質を意味する。水溶性を有する重合体(I)は、たとえば、動的光散乱法(DLS)によって、粒子径を測定できないか、または、10nm以下の粒子径が示される。
重合体(I)の水溶液の粘度は、好ましくは5.0mPa.s以上であり、より好ましくは8.0mPa.s以上であり、さらに好ましくは10.0mPa.s以上であり、特に好ましくは12.0mPa.s以上であり、最も好ましくは14.0mPa.s以上であり、好ましくは100.0mPa.s以下であり、より好ましくは50.0mPa.s以下であり、さらに好ましくは25.0mPa.s以下であり、殊更に好ましくは20.0mPa.s以下である。
重合体(I)の水溶液の粘度は、水溶液中の重合体(I)の含有量を水溶液に対して33質量%に調整し、得られた水溶液の粘度を、エー・アンド・デイ社製音叉振動式粘度計(型番:SV-10)を用いて、20℃で測定することにより、特定することができる。
重合体(I)の臨界ミセル濃度(CMC)は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
重合体(I)の臨界ミセル濃度は、表面張力を測定することで決定できる。表面張力は、例えば、協和界面化学株式会社製表面張力計CBVP-A3型により測定することができる。
重合体(I)の酸価は、好ましくは60以上であり、より好ましくは90以上であり、さらに好ましくは120以上であり、特に好ましくは150以上であり、最も好ましくは180以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは300以下である。
重合体(I)の酸価は、重合体(I)が酸型の官能基以外のアニオン性基、たとえば、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)を有している場合には、これらの基を酸型の基に変換した後、酸-塩基滴定によって測定できる。
重合体(I)として、一般式(11)で表される単量体(11)の重合体(11)であって、単量体(11)に基づく重合単位(11)の含有量が、重合体(11)を構成する全重合単位に対して、50モル%以上であり、重量平均分子量(Mw)が、38.0×10以上である重合体(11)を用いることもできる。重合体(11)は、新規な重合体である。
一般式(11):CX=CY-CF-O-Rf-A
(式中、XおよびYは、独立に、H、F、CHまたはCFであり、XおよびYのうち、少なくとも1つはFである。Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である)である。)
一般式(11)中、XおよびYは、独立に、H、F、CHまたはCFであり、XおよびYのうち、少なくとも1つはFである。Xとしては、HまたはFが好ましく、Hがより好ましい。Yとしては、HまたはFが好ましく、Fがより好ましい。
一般式(11)中のRfおよびAについては、重合体(1)を構成する単量体を表す一般式(1)中のRfおよびAと同様である。
重合体(11)は、単量体(11)に基づく重合単位(11)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(11)と、単量体(11)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。他の単量体については、上述したとおりである。重合単位(11)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(11)は、2種以上の異なる一般式(11)で表される単量体に基づく重合単位(11)を含んでいてもよい。
重合体(11)における重合単位(11)の含有量としては、重合体(11)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、99モル%以上である。重合単位(11)の含有量は、実質的に100モル%であることが特に好ましく、重合体(11)は、重合単位(11)のみからなることが最も好ましい。
重合体(11)において、単量体(11)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量としては、重合体(11)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、99.0モル%以下、97.0モル%以下、95.0モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、70モル%以下、60モル%以下、50モル%以下である。単量体(11)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、実質的に0モル%であることが特に好ましく、重合体(11)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
重合体(11)の重量平均分子量の下限としては、好ましい順に、38.0×10以上、40.0×10以上である。重合体(11)の重量平均分子量の上限としては、好ましい順に、150.0×10以下、100.0×10以下、60.0×10である。
重合体(11)の数平均分子量の下限としては、好ましい順に、5.0×10、8.0×10、10.0×10以上、12.0×10以上である。重合体(11)の数平均分子量の上限としては、好ましい順に、75.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下、30.0×10以下である。
重合体(I)として、一般式(12)で表される単量体(12)の重合体(12)であって、単量体(12)に基づく重合単位(12)の含有量が、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、50モル%以上であり、重量平均分子量(Mw)が、1.4×10以上である重合体(12)を用いることもできる。重合体(12)は、新規な重合体である。
一般式(12):CX=CX-O-Rf-A
(式中、Xは、独立に、FまたはCFであり、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である)である。)
一般式(12)中、Xは、独立に、FまたはCFである。少なくとも1以上のXがFであることが好ましく、XがいずれもFであることがより好ましい。
一般式(12)中のRfおよびAについては、重合体(2)を構成する単量体を表す一般式(2)中のRfおよびAと同様である。
重合体(12)は、単量体(12)に基づく重合単位(12)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(12)と、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。他の単量体については、上述したとおりである。重合単位(12)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(12)は、2種以上の異なる一般式(12)で表される単量体に基づく重合単位(12)を含んでいてもよい。
重合体(12)における重合単位(12)の含有量としては、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、99モル%以上である。重合単位(12)の含有量は、実質的に100モル%であることが特に好ましく、重合体(12)は、重合単位(12)のみからなることが最も好ましい。
重合体(12)において、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量としては、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、1モル%以下である。単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、実質的に0モル%であることが特に好ましく、重合体(12)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
重合体(12)の重量平均分子量(Mw)の下限としては、好ましい順に、1.4×10以上、1.7×10以上、1.9×10以上、2.1×10以上、2.3×10以上、2.7×10以上、3.1×10以上、3.5×10以上、3.9×10以上、4.3×10以上、4.7×10以上、5.1×10以上である。重合体(12)の重量平均分子量(Mw)の上限としては、好ましい順に、150.0×10以下、100.0×10以下、60.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下である。
重合体(12)の数平均分子量(Mn)の下限としては、好ましい順に、0.7×10以上、0.9×10以上、1.0×10以上、1.2×10以上、1.4×10以上、1.6×10以上、1.8×10以上である。重合体(12)の数平均分子量(Mn)の上限としては、好ましい順に、75.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下、30.0×10以下、20.0×10以下である。
重合体(12)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.4以下であり、さらに好ましくは2.2以下であり、特に好ましくは2.0以下であり、最も好ましくは1.9以下である。
重合体(12)が、重合単位(12)、および、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位を含有する場合において、単量体(12)に基づく重合単位(12)の含有量が、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、好ましくは40~60モル%、より好ましくは45~55モル%であり、他の単量体に基づく重合単位の含有量が、重合体(12)を構成する全重合単位に対して、好ましくは60~40モル%であり、より好ましくは55~45モル%である。このような構成は、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位が、一般式CFR=CRで表される単量体に基づく重合単位(M)である場合に特に好適である。
重合体(12)が、重合単位(12)、および、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位を含有する場合において、重合単位(12)と、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位との交互率は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、尚さらに好ましくは70%以上であり、特に好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。交互率は、たとえば、40~99%であってよい。このような構成は、単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位が、一般式CFR=CRで表される単量体に基づく重合単位(M)である場合に特に好適である。
重合体(12)における重合単位(12)と単量体(12)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位との交互率は、重合体(12)の19F-NMR分析により求めることができる。
重合体(I)は上記の単量体を用いること以外は従来公知の方法により製造することができる。
重合体(I)として、一般式(13)で表される単量体(13)の重合体(13)であって、単量体(13)に基づく重合単位(13)の含有量が、重合体(13)を構成する全重合単位に対して、50質量%以上である重合体(13)を用いることもできる。重合体(13)は、新規な重合体である。
一般式(13):CX=CX-O-Rf-SO
(式中、Xは、独立に、FまたはCFであり、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)
一般式(13)中、Xは、独立に、FまたはCFである。少なくとも1以上のXがFであることが好ましく、XがいずれもFであることがより好ましい。
一般式(13)中のRfおよびMについては、重合体(2)を構成する単量体を表す一般式(2)中のRfおよびAと同様である。
重合体(13)は、単量体(13)に基づく重合単位(13)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(13)と、単量体(13)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。他の単量体については、上述したとおりである。重合単位(13)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(13)は、2種以上の異なる一般式(13)で表される単量体に基づく重合単位(13)を含んでいてもよい。
重合体(13)は、単量体(13)に基づく重合単位(13)の含有量が、重合体(13)を構成する全重合単位に対して、50質量%以上である。重合体(13)における重合単位(13)の含有量は、重合体(13)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、99質量%以上である。重合単位(13)の含有量は、実質的に100質量%であることが特に好ましく、重合体(13)は、重合単位(13)のみからなることが最も好ましい。
重合体(13)において、単量体(13)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、重合体(13)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、1質量%以下である。単量体(13)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、実質的に0質量%であることが特に好ましく、重合体(13)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
重合体(13)の数平均分子量の下限は、好ましい順に、0.3×10以上、0.4×10以上、0.5×10以上、0.7×10以上、0.8×10以上、1.0×10以上、1.2×10以上、1.4×10、1.6×10以上、1.8×10以上、2.0×10以上、3.0×10以上である。重合体(13)の数平均分子量の上限は、好ましい順に、75.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下、30.0×10以下、20.0×10以下である。
重合体(13)の重量平均分子量の下限は、好ましい順に、0.4×10以上、0.5×10以上、0.6×10以上、0.8×10以上、1.0×10以上、1.2×10以上、1.4×10以上、1.7×10以上、1.9×10以上、2.1×10以上、2.3×10以上、2.7×10以上、3.1×10以上、3.5×10以上、3.9×10以上、4.3×10以上、4.7×10以上、5.1×10以上、10.0×10以上、15.0×10以上、20.0×10以上、25.0×10以上である。重合体(13)の重量平均分子量の上限は、好ましい順に、150.0×10以下、100.0×10以下、60.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下である。
重合体(13)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましい順に、3.0以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.9以下、1.7以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下である。
重合体(I)のうち、重合体(11)は、新規な重合体であり、水性媒体中で、一般式(11)で表される単量体(11)の重合を行うことにより、単量体(11)の重合体(11)を製造する重合体(11)の製造方法であって、重合の反応系中の酸素濃度を500体積ppm以下に維持する製造方法(11)により製造することができる。
製造方法(11)において、重合の反応系中の酸素濃度は、500体積ppm以下である。製造方法(11)においては、単量体(11)の重合の全期間にわたって、反応系中の酸素濃度が500体積ppm以下に維持される。反応系中の酸素濃度は、好ましくは350体積ppm以下であり、より好ましくは300体積ppm以下であり、さらに好ましくは100体積ppm以下であり、特に好ましくは50体積ppm以下である。また、反応系中の酸素濃度は、通常、0.01体積ppm以上である。
製造方法(11)において、単量体(11)の重合温度は、分子量が一層高い重合体(11)を容易に製造できることから、59℃以下であることが好ましく、57℃以下であることがより好ましく、55℃以下であることがさらに好ましく、53℃以下であることが特に好ましく、20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましく、35℃以上であることが特に好ましい。
製造方法(11)において、単量体(11)と、上述した他の単量体とを共重合してもよい。
製造方法(11)において、重合圧力は、通常、大気圧~10MPaGである。重合圧力は、使用する単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
製造方法(11)において、重合時間は、通常、1~200時間であり、5~100時間であってよい。
重合体(I)のうち、重合体(12)は、新規な重合体であり、水性媒体中で、一般式(12)で表される単量体(12)の重合を行うことにより、単量体(12)の重合体(12)を製造する重合体(12)の製造方法であって、重合の反応系中の酸素濃度を1500体積ppm以下に維持する製造方法(12)により製造することができる。
製造方法(12)において、重合の反応系中の酸素濃度は、1500体積ppm以下である。製造方法(12)においては、単量体(12)の重合の全期間にわたって、反応系中の酸素濃度が1500体積ppm以下に維持される。反応系中の酸素濃度は、好ましくは500体積ppm以下であり、より好ましくは100体積ppm以下であり、さらに好ましくは50体積ppm以下である。また、反応系中の酸素濃度は、通常、0.01体積ppm以上である。
重合体(I)のうち、重合体(13)は、新規な重合体であり、水性媒体中で、一般式(13)で表される単量体(13)の重合を行うことにより、単量体(13)の重合体(13)を製造する重合体(13)の製造方法(13)により製造することができる。
製造方法(13)において、重合の反応系中の酸素濃度は、好ましくは1500体積ppm以下であり、より好ましくは500体積ppm以下であり、さらに好ましくは100体積ppm以下であり、特に好ましくは50体積ppm以下である。また、反応系中の酸素濃度は、通常、0.01体積ppm以上である。上記の製造方法においては、単量体(13)の重合の全期間にわたって、反応系中の酸素濃度が上記範囲内に維持されることが好ましい。
製造方法(12)および製造方法(13)において、単量体(12)および単量体(13)の重合温度は、分子量が一層高い重合体(12)および重合体(13)を容易に製造できることから、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましく、55℃以下であることが特に好ましく、50℃以下であることが殊更好ましく、45℃以下であることが特に好ましく、40℃以下であることが最も好ましく、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。
製造方法(12)および製造方法(13)において、単量体(12)または単量体(13)と、上述した他の単量体とを共重合してもよい。
製造方法(12)および製造方法(13)において、重合圧力は、通常、大気圧~10MPaGである。重合圧力は、使用する単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
製造方法(12)および製造方法(13)において、重合時間は、通常、1~200時間であり、5~100時間であってよい。
製造方法(11)~(13)において、重合の反応系中の酸素濃度は、たとえば、窒素、アルゴンなどの不活性気体、または、気体状の単量体を用いる場合には当該気体状の単量体を、反応器中の液相または気相に流通させることにより、制御することができる。重合の反応系中の酸素濃度は、重合系の排ガスラインから出てきたガスを、低濃度酸素分析計で測定および分析することにより、求めることができる。
製造方法(11)~(13)において、水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、たとえば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。水性媒体として、好ましくは水である。
製造方法(11)~(13)において、単量体の重合を、重合開始剤の存在下に行うことができる。重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。重合開始剤の濃度は、単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
重合開始剤としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム)や、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独で又はこれらの混合物の形で使用することができる。また、亜硫酸ナトリウム等の還元剤と共用し、レドックス系にして用いてもよい。更に、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加し、系内のラジカル濃度を調整したりすることもできる。
重合開始剤としては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、なかでも、過硫酸塩が好ましい。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどが挙げられ、過硫酸アンモニウムが好ましい。
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱で除熱を行ないながら、反応温度を上昇させてもよい範囲であり、より好ましい上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
製造方法(11)~(13)においては、重合開始剤を重合開始時に添加するとともに、重合中にも添加することができる。重合開始時に添加する重合開始剤の添加量と、重合中に添加する重合開始剤の添加量との割合としては、好ましくは95/5~5/95であり、より好ましくは60/40~10/90であり、さらに好ましくは30/70~15/85である。重合中に添加する重合開始剤の添加方法は、特に限定されず、一回で全量を添加してもよいし、2回以上に分割して添加してもよいし、連続的に添加してもよい。
製造方法(11)~(13)においては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、重合に用いる重合開始剤の総添加量が、水性媒体に対して、0.00001~10質量%であることが好ましい。重合に用いる重合開始剤の総添加量としては、より好ましくは0.0001質量%以上であり、さらに好ましくは0.001質量%以上であり、特に好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
製造方法(11)~(13)においては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、重合に用いる重合開始剤の総添加量が、単量体に対して、0.001~10モル%であることが好ましい。重合に用いる重合開始剤の総添加量としては、より好ましくは0.005モル%以上であり、さらに好ましくは0.01モル%以上であり、殊更好ましくは0.1モル%以上であり、最も好ましくは0.5モル%以上であり、より好ましくは5モル%以下であり、さらに好ましくは2.5モル%以下であり、特に好ましくは2.2モル%以下であり、最も好ましくは2.0モル%以下である。
製造方法(11)~(13)においては、分子量が一層高い重合体を容易に製造できることから、重合開始時の単量体(11)~(13)を含有する単量体の存在量が、水性媒体の存在量に対して、30質量%以上であることが好ましい。単量体の存在量は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。単量体の存在量の上限は特に限定されないが、重合を円滑に進行させる観点から、200質量%以下であってよい。重合開始時の単量体の存在量とは、重合開始時の反応器内に存在する、単量体(11)~(13)、および、存在する場合は他の単量体の合計の存在量である。
製造方法(11)~(13)においては、pH調整剤の存在下に重合を行ってもよい。pH調整剤は、重合開始前に添加してもよいし、重合開始後に添加してもよい。
pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸アンモニウム等を用いることができる。
製造方法(11)~(13)において、単量体(11)~(13)の重合は、反応器に、水性媒体、単量体(11)~(13)のいずれか、および、必要に応じて他の単量体、必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行うことができる。重合反応開始後に、目的に応じて、単量体、重合開始剤、他の添加剤を添加してもよい。
製造方法(11)~(13)において、単量体の重合は、実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下で行うことができる。本開示において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量が10質量ppm以下であることを意味する。水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量としては、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下である。
含フッ素界面活性剤については、フルオロモノマーの重合に関する説明において後述する。
濃縮に供する組成物中の重合体(I)の含有量は、フルオロポリマーに対して、好ましくは0.20質量%超であり、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、特に好ましくは0.50質量%以下である。
組成物中の重合体(I)の含有量は、固体NMR測定より求められる。
また、国際公開第2014/099453号、国際公開第2010/075497、国際公開第2010/075496号、国際公開第2011/008381、国際公開第2009/055521号、国際公開第1987/007619号、特開昭61-293476号公報、国際公開第2010/075494号、国際公開第2010/075359号、国際公開第2012/082454号、国際公開第2006/119224号、国際公開第2013/085864号、国際公開第2012/082707号、国際公開第2012/082703号、国際公開第2012/082451号、国際公開第2006/135825号、国際公開第2004/067588号、国際公開第2009/068528号、特開2004-075978号公報、特開2001-226436号公報、国際公開第1992/017635号、国際公開第2014/069165号、特開平11-181009号公報などに、それぞれの重合体の測定方法が記載されている。重合体(I)の含有量の測定方法としては、これらに記載のそれぞれの重合体の測定方法を用いることができる。
組成物中の一般式(I)で表される単量体(I)のダイマーおよびトリマーの含有量としては、重合体(I)に対して、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、特に好ましくは0.001質量%以下であり、最も好ましくは0.0001質量%以下である。
(水性媒体)
本開示の製造方法において用いる水性媒体とは、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
(組成物)
本開示の製造方法において用いるフルオロポリマー(ただし、重合体(I)を除く)を含有する組成物は、たとえば、重合体(I)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを重合することにより、重合体(I)、フルオロポリマーおよび水性媒体を含有する重合分散液を得た後、重合分散液、非イオン性界面活性剤およびフッ素非含有アニオン性界面活性剤を混合する製造方法により、製造することができる。
フルオロモノマーとしては、二重結合を少なくとも1つ有するものが好ましい。上記フルオロモノマーとしては、テトラフルオロエチレン[TFE]、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン[VDF]、トリフルオロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、フルオロアルキルエチレン、フルオロアルキルアリルエーテル、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、一般式(100):CHX101=CX102Rf101(式中、X101およびX102は、一方がHであり、他方がFであり、Rf101は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、フッ素化ビニルヘテロ環状体、及び、架橋部位を与えるモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記フルオロアルキルビニルエーテルとしては、例えば、
一般式(110):CF=CF-ORf111
(式中、Rf111は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(120):CF=CF-OCH-Rf121
(式中、Rf121は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、
一般式(130):CF=CFOCFORf131
(式中、Rf131は炭素数1~6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(140):CF=CFO(CFCF(Y141)O)(CF
(式中、Y141はフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(150):CF=CF-O-(CFCFY151-O)-(CFY152-A151
(式中、Y151は、フッ素原子、塩素原子、-SOF基又はパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基は、エーテル性の酸素及び-SOF基を含んでもよい。nは、0~3の整数を表す。n個のY151は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y152は、フッ素原子、塩素原子又は-SOF基を表す。mは、1~5の整数を表す。m個のY152は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A151は、-SO151、-COZ151又は-POZ152153を表す。X151は、F、Cl、Br、I、-OR151又は-NR152153を表す。Z151、Z152及びZ153は、同一又は異なって、-NR154155又は-OR156を表す。R151、R152、R153、R154、R155及びR156は、同一又は異なって、H、アンモニウム、アルカリ金属、フッ素原子を含んでも良いアルキル基、アリール基、若しくはスルホニル含有基を表す。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本開示において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf111が炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
一般式(110)におけるパーフルオロ有機基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、更に、上記一般式(110)において、Rf111が炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf111が下記式:
Figure 0007644392000016
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
CFCFCF-(O-CF(CF)-CF
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
一般式(110)で表されるフルオロモノマーとしては、なかでも、
一般式(160):CF=CF-ORf161
(式中、Rf161は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマーが好ましい。Rf161は、炭素数が1~5のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(160)、(130)及び(140)で表されるフルオロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(160)で表されるフルオロモノマーとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、及び、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
一般式(130)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、及び、CF=CFOCFOCFCFOCFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(140)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)O(CFF、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFF、及び、CF=CFO(CFCF(CF)O)(CFFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(150)で表されるフルオロモノマーとしては、CF=CFOCFCFSOF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF、CF=CFOCFCF(CFCFSOF)OCFCFSOF及びCF=CFOCFCF(SOF)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、Rf101が直鎖のフルオロアルキル基であるフルオロモノマーが好ましく、Rf101が直鎖のパーフルオロアルキル基であるフルオロモノマーがより好ましい。Rf101の炭素数は1~6であることが好ましい。一般式(100)で表されるフルオロモノマーとしては、CH=CFCF、CH=CFCFCF、CH=CFCFCFCF、CH=CFCFCFCFH、CH=CFCFCFCFCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)などが挙げられ、なかでも、CH=CFCFで示される2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンが好ましい。
フルオロアルキルエチレンとしては、
一般式(170):CH=CH-(CF-X171
(式中、X171はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロアルキルエチレンが好ましく、CH=CH-C、及び、CH=CH-C13からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記フルオロアルキルアリルエーテルとしては、例えば、
一般式(180):CF=CF-CF-ORf111
(式中、Rf111は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
一般式(180)のRf111は、一般式(110)のRf111と同じである。Rf111としては、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。一般式(180)で表されるフルオロアルキルアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFがさらに好ましい。
上記フッ素化ビニルヘテロ環状体としては、一般式(230):
Figure 0007644392000017
(式中、X231及びX232は、独立に、F、Cl、メトキシ基又はフッ素化メトキシ基であり、Y231は式Y232又は式Y233である。
Figure 0007644392000018
(式中、Z231及びZ232は、独立に、F又は炭素数1~3のフッ素化アルキル基である。))で表されるフッ素化ビニルヘテロ環状体が挙げられる。
架橋部位を与えるモノマーとしては、
一般式(180):CX181 =CX182-R 181CHR181183
(式中、X181及びX182は、独立に、水素原子、フッ素原子又はCH、R 181は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロ(ポリ)オキシアルキレン基又はパーフルオロ(ポリ)オキシアルキレン基、R181は、水素原子又はCH、X183は、ヨウ素原子又は臭素原子である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(190):CX191 =CX192-R 191193
(式中、X191及びX192は、独立に、水素原子、フッ素原子又はCH、R 191は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基又はパーフルオロポリオキシアルキレン基、X193は、ヨウ素原子又は臭素原子である。)で表されるフルオロモノマー、
一般式(200):CF=CFO(CFCF(CF)O)(CF-X201
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X201は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は、-CHIである。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(210):CH=CFCFO(CF(CF)CFO)(CF(CF))-X211
(式中、mは0~5の整数、nは1~3の整数、X211は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は-CHOHである。)で表されるフルオロモノマー、及び、
一般式(220):CR221222=CR223-Z221-CR224=CR225226
(式中、R221、R222、R223、R224、R225及びR226は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。Z221は、直鎖又は分岐状で酸素原子を有していてもよい、炭素数1~18のアルキレン基、炭素数3~18のシクロアルキレン基、少なくとも部分的にフッ素化している炭素数1~10のアルキレン基若しくはオキシアルキレン基、又は、
-(Q)-CFO-(CFCFO)(CFO)-CF-(Q)
(式中、Qはアルキレン基又はオキシアルキレン基である。pは0又は1である。m/nが0.2~5である。)で表され、分子量が500~10000である(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である。)で表されるモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
183及びX193は、ヨウ素原子であることが好ましい。R 181及びR 191は炭素数が1~5のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。R181は、水素原子であることが好ましい。X201は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は、-CHIであることが好ましい。X211は、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヨウ素原子、臭素原子、又は-CHOHであることが好ましい。
架橋部位を与えるモノマーとしては、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHI、CF=CFOCFCFCHI、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CN、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOH、CH=CHCFCFI、CH=CH(CFCH=CH、CH=CH(CFCH=CH、及び、CF=CFO(CFCNからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN及びCF=CFOCFCFCHIからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
上記重合において、上記フルオロモノマーとフッ素非含有モノマーとを重合してもよい。上記フッ素非含有モノマーとしては、上記フルオロモノマーと反応性を有する炭化水素系モノマー等が挙げられる。上記炭化水素系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のアルケン類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル、ウンデシレン酸ビニル、ヒドロキシ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピオイン酸ビニル、ヒドロキシ酪酸ビニル、ヒドロキシ吉草酸ビニル、ヒドロキシイソ酪酸ビニル、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル類;エチルアリルエステル、プロピルアリルエステル、ブチルアリルエステル、イソブチルアリルエステル、シクロヘキシルアリルエステル等のアルキルアリルエステル;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ビニルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
上記フッ素非含有モノマーとしては、また、官能基含有炭化水素系モノマー(但し、架橋部位を与えるモノマーを除く)であってもよい。上記官能基含有炭化水素系モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、パーフルオロブテン酸等のカルボキシル基を有するフッ素非含有モノマー;ビニルスルホン酸などのスルホ基を有するフッ素非含有単量体;グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル等のグリシジル基を有するフッ素非含有モノマー;アミノアルキルビニルエーテル、アミノアルキルアリルエーテル等のアミノ基を有するフッ素非含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミド等のアミド基を有するフッ素非含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を有するフッ素非含有単量体等が挙げられる。
上記重合において、上記フルオロモノマーの1種又は2種以上を重合することにより、所望のフルオロポリマーの粒子を得ることができる。
上記重合における重合体(I)の添加量としては、水性媒体に対して、好ましくは0.02質量%を超え10質量%以下であり、より好ましい上限は1質量%以下である。重合体(I)の添加量を上記範囲内とすることにより、水性媒体中でのフルオロモノマーの重合を円滑に進行させることができる。重合体(I)の添加量は、上記重合において添加する重合体(I)の合計添加量である。
上記重合においては、重合体(I)を一括して添加してもよいし、重合体(I)を連続的に添加してもよい。重合体(I)を連続的に添加するとは、例えば、重合体(I)を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なく又は分割して、添加することである。上記重合においては、重合体(I)と水を含む水溶液を調製して、該水溶液を添加してもよい。
上記重合においては、水性媒体中に形成されるフルオロポリマーの固形分含有量が0.5質量%に達する前に、重合体(I)の添加を開始し、その後も重合体(I)を連続的に添加することが好ましい。重合体(I)の添加開始時期としては、好ましくはフルオロポリマーの固形分含有量が0.3質量%に達する前であり、より好ましくは0.2質量%に達する前であり、さらに好ましくは0.1質量%に達する前であり、特に好ましくは重合開始と同時である。上記固形分含有量は、水性媒体およびフルオロポリマーの合計に対するフルオロポリマーの含有量である。
上記重合においては、重合体(I)を少なくとも1種用いれば、フルオロポリマーを効率よく製造することが可能である。また、重合体(I)に包含される化合物を2種以上同時に用いてもよいし、揮発性を有するもの又はフルオロポリマーからなる成形体等に残存してもよいものであれば、重合体(I)以外のその他の界面活性能を有する化合物を同時に使用してもよい。
上記重合において、核形成剤を使用してもよい。核形成剤の添加量は、核形成剤の種類により適宜選択できる。核形成剤の添加量としては、水性媒体に対して、5000質量ppm以下であってよく、好ましくは1000質量ppm以下であり、より好ましくは500質量ppm以下であり、さらに好まくは100p質量pm以下であり、特に好ましくは50質量ppm以下であり、最も好ましくは10質量ppm以下である。
上記重合においては、重合開始前、又は、水性媒体中に形成されるフルオロポリマーの固形分含有量が5.0質量%に達する前に、核形成剤を水性媒体中に添加することが好ましい。重合初期に核形成剤を添加することによって、平均一次粒子径が小さく、安定性に優れる水性分散液を得ることができる。
重合初期に添加する核形成剤の量としては、得られるフルオロポリマーに対して、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。重合初期に添加する核形成剤の量の上限は限定されるものではないが、たとえば、2000質量%である。
核形成剤を使用することにより、上記核形成剤の非存在下で重合を行うのと比較して、小さい一次粒子径を有するフルオロポリマーが得られる。
上記核形成剤としては、ジカルボン酸、パーフルオロポリエーテル(PFPE)酸またはその塩、炭化水素含有界面活性剤等が挙げられる。上記核形成剤は、芳香環を含まないことが好ましく、脂肪族化合物であることが好ましい。
上記核形成剤は、重合開始剤の添加より前、もしくは、重合開始剤の添加と同時に加えることが好ましいが、重合途中に加えることにより、粒度分布を調整することもできる。
上記ジカルボン酸の好ましい量として、上記水性媒体に対し、1000質量ppm以下であり、より好ましい量として500質量ppm以下であり、更に好ましい量として100質量ppm以下である。
上記パーフルオロポリエーテル(PFPE)酸またはその塩は、分子の主鎖中の酸素原子が、1~3個の炭素原子を有する飽和フッ化炭素基によって隔てられる任意の鎖構造を有してよい。また、2種以上のフッ化炭素基が、分子中に存在してよい。代表的な構造は、下式に表される繰り返し単位を有する:
(-CFCF-CF-O-) (VII)
(-CF-CF-CF-O-) (VIII)
(-CF-CF-O-)-(-CF-O-) (IX)
(-CF-CFCF-O-)n-(-CF-O-) (X)
これらの構造は、Kasaiによって、J.Appl.Polymer Sci.57,797(1995)に記載されている。この文献に開示されているように、上記PFPE酸又はその塩は、一方の末端または両方の末端にカルボン酸基またはその塩を有してよい。上記PFPE酸又はその塩は、また、一方の末端または両方の末端に、スルホン酸、ホスホン酸基又はこれらの塩を有してよい。また、上記PFPE酸又はその塩は、各末端に異なる基を有してよい。単官能性のPFPEについては、分子の他方の末端は、通常、過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有してよい。上記PFPE酸又はその塩は、少なくとも2つのエーテル酸素、好ましくは少なくとも4つのエーテル酸素、さらにより好ましくは少なくとも6つのエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも1つ、より好ましくは、このようなフッ化炭素基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも50%は、2または3個の炭素原子を有する。また、好ましくは、上記PFPE酸又はその塩は、合計で少なくとも15個の炭素原子を有し、例えば、上記の繰返し単位構造中のnまたはn+mの好ましい最小値は、少なくとも5である。1つの末端または両方の末端に酸基を有する2つ以上の上記PFPE酸又はその塩が、本開示の製造方法に使用され得る。上記PFPE酸又はその塩は、好ましくは、6000g/モル未満の数平均分子量を有する。
上記炭化水素含有界面活性剤の添加量は、上記水性媒体に対して、好ましくは40質量ppm以下、より好ましくは30質量ppm以下、更に好ましくは質量20ppm以下である。上記水性媒体中に存在する親油性核形成部位のppm量は、上記添加量よりも少ないと推測される。したがって、上記親油性核形成部位の量は、それぞれ上記の40質量ppm、30質量ppm、20質量ppmよりも小さい。上記親油性核形成部位は分子として存在すると考えられるので、ごく少量の上記炭化水素含有界面活性剤でも、大量の親油性核形成部位を生成することができる。したがって、上記炭化水素含有界面活性剤を水性媒体に1質量ppm程度加えるだけでも、有益な効果が得られる。好ましい下限値は0.01質量ppmである。
上記炭化水素含有界面活性剤には、米国特許第7897682号明細書(Brothers et al.)および米国特許第7977438号明細書(Brothers et al.)に開示されるものなどのシロキサン界面活性剤を含む、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤が含まれる。
上記炭化水素含有界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、非イオン性炭化水素界面活性剤)が好ましい。すなわち、核形成剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましい。上記非イオン性界面活性剤は、好ましくは芳香族部分を含まない。
上記非イオン性界面活性剤としては、濃縮に供する組成物が含有し得る非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
上記重合において、重合体(I)とともに、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物を使用してもよい。ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物としては、後述する変性モノマー(A)と同じ化合物を使用できる。
上記重合において、重合体(I)と、所望により用いるその他の界面活性能を有する化合物に加え、各化合物を安定化するため添加剤を使用することができる。上記添加剤としては、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤などが挙げられる。
安定化助剤としては、パラフィンワックス、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイルなどが好ましい。安定化助剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。安定化助剤としては、パラフィンワックスがより好ましい。パラフィンワックスとしては、室温で液体でも、半固体でも、固体であってもよいが、炭素数12以上の飽和炭化水素が好ましい。パラフィンワックスの融点は、通常40~65℃が好ましく、50~65℃がより好ましい。
安定化助剤の使用量は、使用する水性媒体の質量基準で0.1~12質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましい。安定化助剤は十分に疎水的で、重合後に水性分散液と完全に分離されて、コンタミ成分とならないことが望ましい。
上記重合は、重合反応器に、水性媒体、上記重合体(I)、モノマー及び必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行う。重合反応開始後に、目的に応じて、モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤及び重合体(I)等を追加添加してもよい。重合体(I)を重合反応が開始した後に添加してもよい。
通常、重合温度は、5~120℃であり、重合圧力は、0.05~10MPaGである。重合温度、重合圧力は、使用するモノマーの種類、目的とするフルオロポリマーの分子量、反応速度によって適宜決定される。
上記重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、モノマーの種類、目的とするフルオロポリマーの分子量、反応速度によって適宜決定される。
上記重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル重合開始剤を使用できる。
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロバレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどのジ[パーフロロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物、t-ブチルパーマレエート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
例えば、30℃以下の低温で重合を実施する場合等では、重合開始剤として、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
上記レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩/硫酸鉄、三酢酸マンガン/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、臭素酸塩/重亜硫酸塩等が挙げられ、過マンガン酸カリウム/シュウ酸が好ましい。レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸を用いる場合、重合槽にシュウ酸を仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱で除熱を行ないながら、反応温度を上昇させてもよい範囲であり、より好ましい上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
上記水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
上記重合において、更に、目的に応じて、公知の連鎖移動剤、ラジカル捕捉剤、分解剤を添加し、重合速度、分子量の調整を行うこともできる。
上記連鎖移動剤としては、たとえばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、メタノール、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素などの各種ハロゲン化炭化水素、シクロヘキサンなどがあげられる。
連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーの重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
Br
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Rは炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用することによって、ヨウ素または臭素が重合体に導入され、架橋点として機能する。
臭素化合物又はヨウ素化合物としては、たとえば1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるフルオロモノマー全量に対して、1~50,000質量ppmであり、好ましくは1~20,000質量ppmである。
上記連鎖移動剤は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合開始後に一括して添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
重合開始剤としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム)や、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独で又はこれらの混合物の形で使用することができる。また、亜硫酸ナトリウム等の還元剤と共用し、レドックス系にして用いてもよい。更に、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加し、系内のラジカル濃度を調整したりすることもできる。
上記重合においては、重合体(I)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを重合して、フルオロポリマー粒子の水性分散液を製造し、上記フルオロポリマー粒子の水性分散液中で、フルオロモノマーをフルオロポリマー粒子にシード重合することにより、フルオロポリマーを得てもよい。
上記重合は、実質的に含フッ素界面活性剤(但し、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物を除く)の非存在下に、フルオロモノマーを重合するものであることが好ましい。従来、水性媒体中でのフルオロモノマーの重合には、含フッ素界面活性剤が使用されてきたが、本開示の製造方法によれば、含フッ素界面活性剤を使用しない場合であってもフルオロポリマーを得ることができる。
本開示において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量が10質量ppm以下であることを意味する。水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量としては、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下である。
上記含フッ素界面活性剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤等が挙げられる。上記アニオン性含フッ素界面活性剤は、例えば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよい。
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、アニオン性部分の分子量が800以下のフッ素を含む界面活性剤であってよい。
なお、上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。例えば、後述する式(I)で表されるF(CFn1COOMの場合には、「F(CFn1COO」の部分である。
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。上記LogPOWは、1-オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
上記LogPOWは、カラム;TOSOH ODS-120Tカラム(φ4.6mm×250mm、東ソー(株)製)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
上記含フッ素界面活性剤として具体的には、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003-119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、特開2007-119526号公報、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号、米国特許出願公開第2014/0228531号、国際公開第2013/189824号、国際公開第2013/189826号に記載されたもの等が挙げられる。
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N):
n0-Rfn0-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl又は及びFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分枝鎖状または環状で、一部または全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Yはアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
のアニオン性基は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-COOM、又は、-SOMであってよい。
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、例えば、Na、K又はLiである。
としては、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
Mは、H、金属原子又はNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR であってよく、H、Na、K、Li又はNHであってよい。
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
上記一般式(N)で表される化合物としては、
下記一般式(N):
n0-(CFm1-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl及びFであり、m1は3~15の整数であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn1-O-(CF(CF)CFO)m2CFXn1-Y (N
(式中、Rfn1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、m2は、0~3の整数であり、Xn1は、F又はCFであり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn2(CHm3-(Rfn3-Y (N
(式中、Rfn2は、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、m3は、1~3の整数であり、Rfn3は、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、qは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn4-O-(CYn1n2CF-Y (N
(式中、Rfn4は、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Yn1及びYn2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、pは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、及び、一般式(N):
Figure 0007644392000019
(式中、Xn2、Xn3及びXn4は、同一若しくは異なってもよく、H、F、又は、炭素数1~6のエーテル結合を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基である。Rfn5は、炭素数1~3のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yは、上記定義したものである。但し、Xn2、Xn3、Xn4及びRfn5の合計炭素数は18以下である。)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(N)で表される化合物としてより具体的には、下記一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、下記一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、下記一般式(III)で表されるパーフルオロエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、下記一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、下記一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、下記一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、下記一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、下記一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、下記一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、下記一般式(XII)で表される化合物(XII)、下記一般式(XIII)で表される化合物(XIII)などが挙げられる。
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、下記一般式(I)
F(CFn1COOM (I)
(式中、n1は、3~14の整数であり、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)で表されるものである。
上記ω-Hパーフルオロカルボン酸(II)は、下記一般式(II)
H(CFn2COOM (II)
(式中、n2は、4~15の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記パーフルオロエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III)
Rf-O-(CF(CF)CFO)n3CF(CF)COOM (III)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、下記一般式(IV)
Rf(CHn4RfCOOM (IV)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rfは、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記アルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V)
Rf-O-CYCF-COOM (V)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、下記一般式(VI)
F(CFn5SOM (VI)
(式中、n5は、3~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記ω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)は、下記一般式(VII)
H(CFn6SOM (VII)
(式中、n6は、4~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)は、下記一般式(VIII)
Rf(CHn7SOM (VIII)
(式中、Rfは、炭素数1~13のパーフルオロアルキル基であり、n7は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記アルキルアルキレンカルボン酸(IX)は、下記一般式(IX)
Rf(CHn8COOM (IX)
(式中、Rfは、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、n8は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記フルオロカルボン酸(X)は、下記一般式(X)
Rf-O-Rf-O-CF-COOM (X)
(式中、Rfは、炭素数1~6のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rfは、炭素数1~6の直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記アルコキシフルオロスルホン酸(XI)は、下記一般式(XI)
Rf-O-CYCF-SOM (XI)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状であって、塩素を含んでもよい、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記化合物(XII)は、下記一般式(XII):
Figure 0007644392000020
(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なってもよく、H、F及び炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf10は、炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yはアニオン性基である。)で表されるものである。
は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-SOM、又は、COOMであってよい(式中、Mは上記定義したものである。)。
Lとしては、例えば、単結合、炭素数1~10のエーテル結合を含みうる部分又は完全フッ素化されたアルキレン基が挙げられる。
上記化合物(XIII)は、下記一般式(XIII):
Rf11-O-(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOOM (XIII)
(式中、Rf11は、塩素を含む炭素数1~5のフルオロアルキル基であり、n9は、0~3の整数であり、n10は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。化合物(XIII)としては、CFClO(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOONH(平均分子量750の混合物、式中、n9およびn10は上記定義したものである。)が挙げられる。
上述したように上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等が挙げられる。
含フッ素界面活性剤は、1種の含フッ素界面活性剤であってもよいし、2種以上の含フッ素界面活性剤を含有する混合物であってもよい。
含フッ素界面活性剤としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。含フッ素界面活性剤は、これらの化合物の混合物であってよい。上記重合の一実施形態においては、実質的に以下の式で表される化合物の非存在下に、フルオロモノマーを重合する。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、
Figure 0007644392000021
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)
水性媒体中でのフルオロモノマーの重合により、フルオロポリマー、重合体(I)および水性媒体を含有する重合分散液が得られる。重合分散液中のフルオロポリマーの含有量(固形分濃度)は、通常、10~50質量%であり、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。
重合分散液中のフルオロポリマーの含有量は、重合分散液1gを送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、加熱残分の質量を測定し、重合分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率を算出することにより得られる値である。
重合分散液を得た後、得られた重合分散液と非イオン性界面活性剤とフッ素非含有アニオン性界面活性剤とを混合することにより、濃縮に供する組成物を調製することができる。
濃縮に供する組成物中のフルオロポリマーの含有量(固形分濃度)は、通常、8~50質量%であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。
組成物中のフルオロポリマーの含有量は、組成物1gを送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、加熱残分の質量を測定し、組成物の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率を算出することにより得られる値である。
濃縮に供する組成物の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤を含有する。組成物が含フッ素界面活性剤を含有する場合でも、濃縮を行うことによって、組成物から含フッ素界面活性剤が除去され、含フッ素界面活性剤の含有量が低減されたフルオロポリマー水性分散液を得ることができる。
濃縮に供する組成物の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない。本開示において、「含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない」とは、組成物中の含フッ素界面活性剤の含有量が、10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)による測定による、含フッ素界面活性剤が検出限界未満である。
含フッ素界面活性剤の含有量は、たとえば、組成物にメタノールを加え、抽出を行ない、得られた抽出液をLC/MS分析することにより測定できる。
さらに抽出効率を高めるために、ソックスレー抽出、超音波処理等による処理を行ってもよい。
得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素界面活性剤の構造式との一致を確認する。
その後、確認された含フッ素界面活性剤の5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描く。
そして、検量線を用いて、抽出液中の含フッ素界面活性剤のLC/MSクロマトグラムのエリア面積を、含フッ素界面活性剤の含有量に換算することができる。
本開示の製造方法によれば、濃縮により、組成物中の重合体(I)の含有量を低減することができるので、上記のようにして得られた重合分散液および組成物を、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂のいずれにも接触させることなく、濃縮に供することができる。また、実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に、フルオロモノマーを重合することにより重合分散液を製造した場合には、重合分散液および組成物のいずれにも、実質的に含フッ素界面活性剤が含まれない。この理由によっても、重合分散液および組成物を、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂に接触させることなく、濃縮に供することができる。
(フルオロポリマー水性分散液)
本開示の製造方法によれば、重合体(I)の含有量が低減されたフルオロポリマー水性分散液が得られる。本開示によれば、重合体(I)、フルオロポリマー、非イオン性界面活性剤、フッ素非含有アニオン性界面活性剤および水性媒体を含有し、重合体(I)の含有量が、フルオロポリマーに対して、1000質量ppm未満であるフルオロポリマー水性分散液(以下、第1のフルオロポリマー水性分散液ということがある)が提供される。
第1のフルオロポリマー水性分散液は、重合体(I)の含有量が低減されたものであることから、第1のフルオロポリマー水性分散液を用いて得られる成形体には、重合体(I)が含まれることによる特性への影響がない。したがって、第1のフルオロポリマー水性分散液からは、特性に優れた成形体を得ることができる。さらには、第1のフルオロポリマー水性分散液は、重合体(I)の含有量が低減されたものであるにも関わらず、フルオロポリマーの含有量が多い場合であっても、沈降安定性および機械的安定性に優れている。したがって、フルオロポリマー水性分散液中のフルオロポリマーが沈降しにくく、フルオロポリマー水性分散液の粘度も上昇しにくい。第1のフルオロポリマー水性分散液は、取り扱い性に優れており、第1のフルオロポリマー水性分散液を用いることにより、塗膜、含浸体、キャスト膜などの製品を、高効率で製造することができ、製品製造時の成形不良も生じにくい。
第1のフルオロポリマー水性分散液中の重合体(I)の含有量は、フルオロポリマーに対して、1000質量ppm未満であり、好ましくは900質量ppm以下であり、より好ましくは800質量ppm以下である。また、水性分散液中の重合体(I)の含有量は、フルオロポリマーに対して、好ましくは0.1質量ppm以上であり、より好ましくは1.0質量ppm以上であり、さらに好ましくは10.0質量ppm以上である。
水性分散液中の重合体(I)の含有量は、組成物中の重合体(I)の含有量と同じ方法により求めることができる。
濃縮を行うことにより得られるフルオロポリマー水性分散液中のフルオロポリマーの含有量、または、第1のフルオロポリマー水性分散液中のフルオロポリマーの含有量は、水性分散液に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは64質量%以上であり、尚さらに好ましくは65質量%以上であり、特に好ましくは66質量%以上であり、最も好ましくは70質量%以上である。フルオロポリマー水性分散液中のフルオロポリマーの含有量が高いほど、フルオロポリマー水性分散液に種々の添加剤を添加した場合でも、フルオロポリマーの含有量を高く保つことが容易である。
水性分散液中のフルオロポリマーの含有量は、水性分散液の固形分濃度、水性分散液中の重合体(I)の含有量、水性分散液中の非イオン性界面活性剤および水性分散液中のフッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量を測定し、組成物の固形分濃度から重合体(I)、非イオン性界面活性剤およびフッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量を減ずることにより、特定することができる。水性分散液の固形分濃度は、水性分散液1gを送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、加熱残分の質量を測定し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率を算出することにより得られる値である。非イオン性界面活性剤の測定方法は、実施例において説明するとおりであり、フッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量は水性分散液を製造するために用いた添加量から算出できる。
第1のフルオロポリマー水性分散液中の非イオン性界面活性剤の含有量は、フルオロポリマーに対して、好ましくは1.0質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2.0質量%以上であり、尚さらに好ましくは2.5質量%以上であり、特に好ましくは3.0質量%以上であり、最も好ましくは4.0質量%以上である。また、組成物中の非イオン性界面活性剤の含有量は、フルオロポリマーに対して、好ましくは12質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
第1のフルオロポリマー水性分散液中のフッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量は、フルオロポリマーに対して、好ましくは10~10000質量ppmであり、より好ましくは50質量ppm以上であり、より好ましくは8000質量ppm以下であり、さらに好ましくは5000質量ppm以下である。
第1のフルオロポリマー水性分散液の粘度は、好ましくは2.0mPa・s以上であり、より好ましくは5.0mPa・s以上であり、さらに好ましくは10.0mPa・s以上であり、特に好ましくは15.0mPa・s以上であり、好ましくは100mPa・s以下であり、より好ましくは80.0mPa・s以下であり、さらに好ましくは70.0mPa・s以下であり、特に好ましくは60.0mPa・s以下である。
水性分散液の粘度は、B型回転粘度計(東機産業社製、ローターNo.2)を用い、回転数60rpm、測定時間120秒、25℃の条件で測定する。
第1のフルオロポリマー水性分散液は、好適には、含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない。本開示において、「含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない」とは、組成物中の含フッ素界面活性剤の含有量が、10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)による測定による、含フッ素界面活性剤が検出限界未満である。
また、本開示の製造方法によれば、第2のフルオロポリマー水性分散液および第3のフルオロポリマー水性分散液を得ることもできる。
すなわち、本開示によれば、重合体(I)、フルオロポリマー(ただし、重合体(I)を除く)、非イオン性界面活性剤、および水性媒体を含有するフルオロポリマー水性分散液であって、重合体(I)の含有量が、フルオロポリマー水性分散液に対して、500質量ppm以下であり、フルオロポリマーの含有量が、フルオロポリマー水性分散液に対して、50質量%以上、70質量%以下であるフルオロポリマー水性分散液(以下、第2のフルオロポリマー水性分散液ということがある)が提供される。
第2のフルオロポリマー水性分散液中の重合体(I)の含有量は、フルオロポリマー水性分散液に対して、500質量ppm以下であり、好ましくは450質量ppm以下であり、より好ましくは400質量ppm以下であり、さらに好ましくは350質量ppm以下であり、好ましくは0.1質量ppm以上であり、より好ましくは1.0質量ppm以上であり、さらに好ましくは10.0質量ppm以上である。
第2のフルオロポリマー水性分散液中のフルオロポリマーの含有量は、フルオロポリマー水性分散液に対して、50質量%以上、70質量%以下であり、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは57質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは68質量%以下であり、より好ましくは67質量%以下であり、さらに好ましくは65質量%以下である。
第2のフルオロポリマー水性分散液の粘度は、好ましくは5.0mPa・s以上であり、より好ましくは10.0mPa・s以上であり、さらに好ましくは15.0mPa・s以上であり、尚さらに好ましくは20.0mPa・s以上であり、特に好ましくは25.0mPa・s以上であり、好ましくは300mPa・s以下であり、より好ましくは250mPa・s以下であり、さらに好ましくは200mPa・s以下であり、尚さらに好ましくは150mPa・s以下であり、特に好ましくは100mPa・s以下である。
第2のフルオロポリマー水性分散液中の非イオン性界面活性剤の含有量は、フルオロポリマーに対して、好ましくは4.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上であり、さらに好ましくは5.5質量%以上であり、好ましくは12質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは8.0質量%以下であり、尚さらに好ましくは7.0質量%以下である。
第2のフルオロポリマー水性分散液は、フッ素非含有アニオン性界面活性剤を含有してもよい。第2のフルオロポリマー水性分散液中のフッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量は、フルオロポリマーに対して、好ましくは10質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、好ましくは10000質量ppm以下であり、より好ましくは8000質量ppm以下であり、さらに好ましくは5000質量ppm以下である。
第2のフルオロポリマー水性分散液は、好適には、含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない。本開示において、「含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない」とは、組成物中の含フッ素界面活性剤の含有量が、10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)による測定による、含フッ素界面活性剤が検出限界未満である。
さらに、本開示によれば、フルオロポリマー、非イオン性界面活性剤、および水性媒体を含有するフルオロポリマー水性分散液であって、実質的に含フッ素界面活性剤を含まず、25℃における粘度が、100mPa・s以下であり、フルオロポリマー水性分散液をガラス繊維に含浸させ380℃で焼成することにより得られる含浸繊維の色調が、CIELABカラースケールにおけるLとして、74.0以上であり、または、CIELABカラースケールにおけるaとして、1.0以下であり、フルオロポリマーの含有量が、フルオロポリマー水性分散液に対して、50質量%以上、70質量%以下であり、非イオン性界面活性剤の含有量が、フルオロポリマーに対して、4.0質量%以上、12質量%以下であるフルオロポリマー水性分散液(以下、第3のフルオロポリマー水性分散液ということがある)が提供される。
第3のフルオロポリマー水性分散液の粘度は、100mPa・s以下であり、好ましくは70mPa・s以下であり、より好ましくは60mPa・s以下であり、さらに好ましくは50mPa・s以下であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、より好ましくは10.0mPa・s以上であり、さらに好ましくは15.0mPa・s以上であり、尚さらに好ましくは20.0mPa・s以上であり、特に好ましくは25.0mPa・s以上である。
第3のフルオロポリマー水性分散液の特徴の一つは、Lが大きい含浸繊維、または、aが小さい含浸繊維を与えることにある。このように、第3のフルオロポリマー水性分散液を用いて得られる含浸繊維は、色調(L、a、b)のうち、Lが大きいものであるか、または、aが小さいものであり、したがって、第3のフルオロポリマー水性分散液は、着色の少ない含浸繊維を与えることができるだけでなく、着色の少ない成形品を与えることができる。第3のフルオロポリマー水性分散液をガラス繊維に含浸させ380℃で焼成することに得られる含浸繊維が示す色調は、CIELABカラースケールにおけるLとして、74.0以上であり、または、CIELABカラースケールにおけるaとして、1.0以下である。含浸繊維が示す色調は、フルオロポリマー水性分散液中の重合体(I)の含有量などを調整することによって、所望の範囲内に調整することができる。
含浸繊維が示す色調は、
CIELABカラースケールにおけるLが、後述する下限値以上の値であることが好ましく、
CIELABカラースケールにおけるLが、後述する下限値および上限値の範囲内の値であることがより好ましい。
含浸繊維が示す色調は、
CIELABカラースケールにおけるaが、後述する上限値以下の値であることが好ましく、
CIELABカラースケールにおけるaが、後述する下限値および上限値の範囲内の値であることがより好ましい。
含浸繊維が示す色調は、CIELABカラースケールにおけるLとして、74.0以上であり、なおかつ、CIELABカラースケールにおけるaとして、1.0以下であることが好ましい。
含浸繊維が示す色調は、
CIELABカラースケールにおけるLが、後述する下限値以上の値であって、なおかつ、CIELABカラースケールにおけるaが、後述する上限値以下の値であることが好ましく、
CIELABカラースケールにおけるLが、後述する下限値および上限値の範囲内の値であって、なおかつ、CIELABカラースケールにおけるaが、後述する下限値および上限値の範囲内の値であることがより好ましい。
含浸繊維が示す色調は、CIELABカラースケールにおけるLの下限値として、好ましい順に、74.0、74.5、75.0、75.5、76.0、76.5、77.0である。
含浸繊維が示す色調は、CIELABカラースケールにおけるLの上限値は、100であってよい。
含浸繊維が示す色調は、CIELABカラースケールにおけるaの下限値として、好ましい順に、-1.5、-1.0、-0.7、-0.5、-0.3、0.0である。
含浸繊維が示す色調は、CIELABカラースケールにおけるaの上限値として、好ましい順に、1.0、0.7、0.5、0.2である。
含浸繊維が示す色調は、CIELABカラースケールにおけるbの下限値として、好ましい順に、-2.0、-1.0、0.0、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0である。
含浸繊維が示す色調は、CIELABカラースケールにおけるbの上限値として、好ましい順に、10.0、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0である。
色調を測定するための含浸繊維は、フルオロポリマー水性分散液をガラス繊維(サカイ産業社製ATE11100)に含浸させ、乾燥し、380℃で3分間焼成し、含浸繊維の質量に対するフルオロポリマーの含有割合が70~80質量%になるまで、含浸、乾燥および焼成を繰り返することにより、作製することができる。得られた含浸繊維の色調(L、a、b)は、日本電色工業(株)製のcolor meter ZE6000を用いて、JIS Z 8781-4:2013に準拠した測定方法に基づき、測定することができる。
第3のフルオロポリマー水性分散液中のフルオロポリマーの含有量は、フルオロポリマー水性分散液に対して、50質量%以上、70質量%以下であり、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは57質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは68質量%以下であり、より好ましくは67質量%以下であり、さらに好ましくは65質量%以下である。
第3のフルオロポリマー水性分散液中の非イオン性界面活性剤の含有量は、フルオロポリマーに対して、4.0質量%以上、12質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以上であり、より好ましくは5.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8.0質量%以下であり、さらに好ましくは7.0質量%以下である。
第3のフルオロポリマー水性分散液は、重合体(I)を含有してもよい。第3のフルオロポリマー水性分散液中の重合体(I)の含有量は、フルオロポリマー水性分散液に対して、好ましくは500質量ppm以下であり、より好ましくは450質量ppm以下であり、さらに好ましくは400質量ppm以下であり、尚さらに好ましくは350質量ppm以下であり、好ましくは0.1質量ppm以上であり、より好ましくは1.0質量ppm以上であり、さらに好ましくは10.0質量ppm以上である。
第3のフルオロポリマー水性分散液は、フッ素非含有アニオン性界面活性剤を含有してもよい。第3のフルオロポリマー水性分散液中のフッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量は、フルオロポリマーに対して、好ましくは10質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、好ましくは10000質量ppm以下であり、より好ましくは8000質量ppm以下であり、さらに好ましくは5000質量ppm以下である。
第3のフルオロポリマー水性分散液は、含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない。本開示において、「含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない」とは、組成物中の含フッ素界面活性剤の含有量が、10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)による測定による、含フッ素界面活性剤が検出限界未満である。
(その他の成分)
フルオロポリマー水性分散液は、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、防腐剤が挙げられる。フルオロポリマー水性分散液が防腐剤を含有することにより、フルオロポリマー水性分散液を長期間保存した場合であっても、フルオロポリマーの沈降が抑制された状態で、フルオロポリマー水性分散液の腐敗や細菌の増殖を抑制することができる。
防腐剤としては、イソチアゾロン系、アゾール系、プロノポール、クロロタロニル、メチルスルホニルテトラクロルピロジン、カルベンタジム、フルオロフォルベット、二酢酸ナトリウム、ジヨードメチルパラトリルスルホンなどが挙げられる。
フルオロポリマー水性分散液中の防腐剤の含有量としては、フルオロポリマーに対して、0.01~0.5質量%が好ましく、0.05~0.2質量%がより好ましい。
また、その他の成分としては、水溶性高分子化合物が挙げられる。水溶性高分子化合物としては、メチルセルロース、アルミナゾル、ポリビニルアルコール、カルボキシル化ビニルポリマー、ポリエチレンオキサイド(分散安定剤)、ポリエチレングリコール(分散安定剤)、ポリビニルピロリドン(分散安定剤)、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
フルオロポリマー水性分散液は、たとえば、公知の顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、成膜助剤等の配合剤を配合することにより、又は、更に他の高分子化合物を複合して、コーティング用水性塗料として用いることができる。
次に、本開示の製造方法により得られる水性分散液中のフルオロポリマー、および、本開示の水性分散液中のフルオロポリマーについて、さらに詳細に説明する。
(フルオロポリマー)
フルオロポリマーとしては、ポリマーにおけるモノマーのモル分率が最も多いモノマー(以下、「最多単量体」)がTFEであるTFE重合体、最多単量体がVDFであるVDF重合体、最多単量体がCTFEであるCTFE重合体等が挙げられる。
上記フルオロポリマーは、53より高いイオン交換率(IXR)を有することが好ましい。好ましいフルオロポリマーは、イオン性基を全く有さないか、または約100より高いイオン交換率をもたらす限られた数のイオン性基を有する。好ましいフルオロポリマーのイオン交換率は、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましい。
TFE重合体としては、好適には、TFE単独重合体であってもよいし、(1)TFE、(2)炭素原子2~8個を有する1つ又は2つ以上のTFE以外のフッ素含有モノマー、特にVDF、HFP若しくはCTFE、及び、(3)その他のモノマーからなる共重合体であってもよい。上記(3)その他のモノマーとしては、例えば、炭素原子1~5個、特に炭素原子1~3個を有するアルキル基を持つフルオロ(アルキルビニルエーテル);フルオロジオキソール;パーフルオロアルキルエチレン;ω-ヒドロパーフルオロオレフィン等が挙げられる。
TFE重合体としては、また、TFEと、1つ又は2つ以上のフッ素非含有モノマーとの共重合体であってもよい。上記フッ素非含有モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン等のアルケン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類が挙げられる。TFE重合体としては、また、TFEと、炭素原子2~8個を有する1つ又は2つ以上のフッ素含有モノマーと、1つ又は2つ以上のフッ素非含有モノマーとの共重合体であってもよい。
VDF重合体としては、好適には、VDF単独重合体[PVDF]であってもよいし、(1)VDF、(2)炭素原子2~8個を有する1つ又は2つ以上のVDF以外のフルオロオレフィン、特にTFE、HFP若しくはCTFE、及び、(3)炭素原子1~5個、特に炭素原子1~3個を有するアルキル基を持つパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる共重合体等であってもよい。
CTFE重合体としては、好適には、CTFE単独重合体であってもよいし、(1)CTFE、(2)炭素原子2~8個を有する1つ又は2つ以上のCTFE以外のフルオロオレフィン、特にTFE若しくはHFP、及び、(3)炭素原子1~5個、特に炭素原子1~3個を有するアルキル基を持つパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる共重合体であってもよい。
CTFE重合体としては、また、CTFEと、1つ又は2つ以上のフッ素非含有モノマーとの共重合体であってもよく、上記フッ素非含有モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のアルケン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類等が挙げられる。
上記フルオロポリマーは、ガラス状、可塑性又はエラストマー性であり得る。これらのものは非晶性又は部分的に結晶性であり、圧縮焼成加工、溶融加工又は非溶融加工に供することができる。
本開示の製造方法では、例えば、(I)非溶融加工性フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン重合体[TFE重合体(PTFE)]が、(II)溶融加工性フッ素樹脂として、エチレン/TFE共重合体[ETFE]、TFE/HFP共重合体[FEP]、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体[PFA、MFA等]、TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体、TFE/VDF共重合体、電解質ポリマー前駆体が、(III)フッ素ゴムとして、TFE/プロピレン共重合体、TFE/プロピレン/第3モノマー共重合体(上記第3モノマーは、VDF、HFP、CTFE、フルオロアルキルビニルエーテル類等)、TFEとフルオロアルキルビニルエーテル類とからなる共重合体;HFP/エチレン共重合体、HFP/エチレン/TFE共重合体;PVDF;VDF/HFP共重合体、HFP/エチレン共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体等の熱可塑性エラストマー;及び、特公昭61-49327号公報に記載の含フッ素セグメント化ポリマー等が好適に製造されうる。
上記フルオロポリマーとしては、フッ素樹脂が好ましく、なかでも下記式により算出されるフッ素置換率が50%以上のフッ素樹脂がより好ましく、上記フッ素置換率が50%を超えるフッ素樹脂が更に好ましく、上記フッ素置換率が55%以上のフッ素樹脂が更により好ましく、上記フッ素置換率が60%以上のフッ素樹脂が更により好ましく、上記フッ素置換率が75%以上のフッ素樹脂が更により好ましく、上記フッ素置換率が80%以上のフッ素樹脂が特に好ましく、上記フッ素置換率が90~100%のフッ素樹脂、すなわちパーフルオロ樹脂が最も好ましい。
(式)
フッ素置換率(%)=(フルオロポリマーを構成する炭素原子に結合するフッ素原子の個数)/((フルオロポリマーを構成する炭素原子に結合する水素原子の個数)+(フルオロポリマーを構成する炭素原子に結合するフッ素原子及び塩素原子の個数))×100
上記パーフルオロ樹脂としては、上記フッ素置換率が95~100%のフッ素樹脂がより好ましく、PTFE、FEP又はPFAが更に好ましく、PTFEが特に好ましい。
上記フルオロポリマーは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するフルオロポリマーとしては、例えば、粒子中に高分子量のPTFEのコアと、より低分子量のPTFE又は変性のPTFEシェルとを含む変性PTFEが挙げられる。このような変性PTFEとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるPTFEが挙げられる。
上記コアシェル構造としては、次の構造をとり得る。
コア:TFE単独重合体 シェル:TFE単独重合体
コア:変性PTFE シェル:TFE単独重合体
コア:変性PTFE シェル:変性PTFE
コア:TFE単独重合体 シェル:変性PTFE
コア:低分子量PTFE シェル:高分子量PTFE
コア:高分子量PTFE シェル:低分子量PTFE
上記コアシェル構造を有するフルオロポリマーにおいて、コアの比率の下限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1.0質量%、更に好ましくは3.0質量%、特に好ましくは5.0質量%、最も好ましくは10.0質量%である。コアの比率の上限は、好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.0質量%、更に好ましくは98.0質量%、更により好ましくは97.0質量%、特に好ましくは95.0質量%、最も好ましくは90.0質量%である。
上記コアシェル構造を有するフルオロポリマーにおいて、シェルの比率の下限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1.0質量%、更に好ましくは3.0質量%、特に好ましくは5.0質量%、最も好ましくは10.0質量%である。シェルの比率の上限は、好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.0質量%、更に好ましくは98.0質量%、更により好ましくは97.0質量%、特に好ましくは95.0質量%、最も好ましくは90.0質量%である。
上記コアシェル構造を有するフルオロポリマーにおいて、上記コア又は上記シェルを2層以上の構成とすることもできる。例えば、変性PTFEのコア中心部と、TFE単独重合体のコア外層部と、変性PTFEのシェルとを有する3層構造を有するフルオロポリマーであってよい。
上記コアシェル構造を有するフルオロポリマーとしては、また、上記フルオロポリマーの1つの粒子が複数のコアを有するものも挙げられる。
本開示の製造方法により好適に製造される上述の(I)非溶融加工性フッ素樹脂、(II)溶融加工性フッ素樹脂及び(III)フッ素ゴムは、以下の態様で製造することが好ましい。
(I)非溶融加工性フッ素樹脂
本開示の製造方法において、TFEの重合は、通常、重合温度10~150℃、重合圧力0.05~5MPaGにて行われる。例えば、重合温度は、30℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。また、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。また、重合圧力は、0.3MPaG以上がより好ましく、0.5MPaG以上が更に好ましく、また、5.0MPaG以下がより好ましく、3.0MPaG以下が更に好ましい。特に、フルオロポリマーの得量を向上させる観点からは、1.0MPaG以上が好ましく、1.2MPaG以上がより好ましく、1.5MPaG以上が更に好ましく、2.0MPaG以上がより好ましい。
一の態様において、上記重合は、攪拌機を備えた耐圧の反応容器に純水を仕込み、脱酸素後、TFEを仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して反応を開始する。反応の進行とともに圧力が低下する場合は、初期圧力を維持するように、追加のTFEを連続的又は間欠的に追加供給する。所定量のTFEを供給した時点で、供給を停止し、反応容器内のTFEをパージし、温度を室温に戻して反応を終了する。圧力が低下しないように、追加のTFEを連続的又は間欠的に追加供給してもよい。
上記TFE重合体(PTFE)の製造において、知られている各種変性モノマーを併用することもできる。本開示において、上記TFE重合体は、TFE単独重合体のみならず、TFEと変性モノマーとの共重合体であって、非溶融加工性であるもの(以下、「変性PTFE」という。)をも含む概念である。
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、フルオロモノマーおよび非フルオロモノマーが挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
非フルオロモノマーとしては、特に限定されず、一般式:
CH=CRQ1-LRQ2
(式中、RQ1は、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、単結合、-CO-O-*、-O-CO-*または-O-を表す。*はRQ2との結合位置を表す。RQ2は、水素原子、アルキル基またはニトリル基を表す。)で表されるモノマーが挙げられる。
非フルオロモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレートブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ビニルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。非フルオロモノマーとしては、なかでも、ブチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸が好ましい。
フルオロモノマーとして、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン等のパーハロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン;パーフルオロアリルエーテル等が挙げられる。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、一般式(A):
CF=CF-ORf (A)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本開示において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、一般式(A)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
Figure 0007644392000022
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
CFCFCF-(O-CF(CF)-CF
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
水素含有フルオロオレフィンとしては、CH=CF、CFH=CH、CFH=CF、CH=CFCF、CH=CHCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)などが挙げられる。
(パーフルオロアルキル)エチレン(PFAE)としては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
パーフルオロアリルエーテルとしては、例えば、
一般式:CF=CF-CF-ORf
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
上記一般式のRfは、一般式(A)のRfと同じである。Rfとしては、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。パーフルオロアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFがさらに好ましい。
上記変性モノマーとしては、モノマー反応性比が0.1~8である変性モノマー(3)も好ましく例示される。変性モノマー(3)を存在させることによって、粒子径が小さいPTFE粒子を得ることができ、分散安定性の高い水性分散液を得ることができる。
ここで、TFEとの共重合におけるモノマー反応性比とは、成長ラジカルがTFEに基づく繰り返し単位未満であるときに、該成長ラジカルがTFEと反応する場合の速度定数を、該成長ラジカルが変性モノマーと反応する場合の速度定数で除した値である。この値が低いほど、変性モノマーがTFEと高反応性であることを表す。モノマー反応性比は、TFEと変性モノマーとを共重合して開始直後の生成ポリマー中の組成を求め、ファインマン-ロスの式より算出できる。
上記共重合は、内容積6.0Lのステンレス製オートクレーブに3600gの脱イオン脱気水、上記水に対して1000質量ppmのパーフルオロオクタン酸アンモニウム、100gのパラフィンワックスを使用して、圧力0.78MPaG、温度70℃で実施する。0.05g、0.1g、0.2g、0.5g、1.0gの変性モノマーをそれぞれ反応器に加え、0.072gの過硫酸アンモニウム(対水20質量ppm)を加えて、重合圧力0.78MPaGを維持させるため、TFEを連続的に供給する。TFE仕込量が1000gに到達したとき、撹拌を停止して、反応器が大気圧になるまで脱圧を行なう。冷却後、パラフィンワックスを分離することにより、生成ポリマーを含む水性分散液が得られる。上記水性分散液を撹拌して生成ポリマーを凝析させ、150℃で乾燥させる。得られた生成ポリマー中の組成を、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出する。
モノマー反応性比が0.1~8である変性モノマー(3)としては、式(3a)~(3d)で表される変性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
CH=CH-Rf (3a)
(式中、Rfは炭素数が1~10のパーフルオロアルキル基である。)
CF=CF-O-Rf (3b)
(式中、Rfは炭素数が1~2のパーフルオロアルキル基である。)
CF=CF-O-(CFCF=CF (3c)
(式中、nは1又は2である。)
Figure 0007644392000023
(式中、X及びXはF、Cl又はメトキシ基であり、Yは式Y1又はY2である。)
Figure 0007644392000024
(式Y2中、Z及びZ’はF又は炭素数1~3のフッ素化アルキル基である。)
変性モノマー(3)単位の含有量は、PTFEの全重合単位に対して0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましい。上限としては、好ましい順に、0.90質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
上記変性モノマーとしては、一次粒子の平均一次粒子径が小さく、一次粒子のアスペクト比が小さく、安定性に優れる水性分散液を得ることができることから、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン、エチレン、及び、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する変性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。上記変性モノマーを使用することで、より平均一次粒子径が小さく、一次粒子のアスペクト比が小さく、分散安定性に優れるPTFEの水性分散液を得ることができる。また、未凝析ポリマーが少ない水性分散液を得ることができる。
上記変性モノマーは、TFEとの反応性の観点からは、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)及び(パーフルオロアルキル)エチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
より好ましくは、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロヘキシル)エチレン、及び、(パーフルオロオクチル)エチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことである。
上記ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位及び(パーフルオロアルキル)エチレン単位の合計量は、PTFEの全重合単位に対して、0.00001~1質量%の範囲であることが好ましい。上記合計量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更に好ましい。上限としては、好ましい順に、0.80質量%、0.70質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
上記変性モノマーは、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する変性モノマー(以下「変性モノマー(A)」と記載する。)を含むことも好ましい。
上記変性モノマー(A)を存在させることによって、一次粒子径が小さいPTFE粒子を得ることができ、分散安定性の高い水性分散液を得ることができる。また、未凝析ポリマー量を少なくすることもできる。更に、一次粒子のアスペクト比を小さくすることができる。
上記変性モノマー(A)の使用量は、水性媒体の0.1質量ppmに相当する量を超える量であることが好ましく、0.5質量ppmを超える量であることがより好ましく、1.0質量ppmを超える量であることが更に好ましく、5質量ppm以上であることが更により好ましく、10質量ppm以上であることが特に好ましい。上記変性モノマー(A)の使用量が少なすぎると、得られるPTFEの平均一次粒子径が小さくならないおそれがある。
上記変性モノマー(A)の使用量は、上記範囲であればよいが、例えば、上限を5000質量ppmとすることができる。また、上記製造方法では、反応中または反応後の水性分散液の安定性を向上させるために、反応途中で変性モノマー(A)を系中に追加してもよい。
上記変性モノマー(A)は水溶性が高いので、未反応の変性モノマー(A)が水性分散液中に残存したとしても、濃縮工程、あるいは凝析・洗浄工程での除去は容易である。
上記変性モノマー(A)は、重合の過程で生成ポリマー中に取り込まれるが、重合系中の変性モノマー(A)の濃度そのものが低く、ポリマーに取り込まれる量が少ないため、PTFEの耐熱性が低下したり焼成後に着色したりする問題はない。
上記変性モノマー(A)における親水基としては、例えば、-NH、-POM、-OPOM、-SOM、-OSOM、-COOM(各式において、Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が挙げられる。上記親水基としては、なかでも、-SOM又は-COOMが好ましい。R7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
上記変性モノマー(A)における「ラジカル重合で反応可能な官能基」としては、例えば、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基は、下記式:
CX=CXR-
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H、CF、CFH、CFH、又は、CHであり;Rは連結基である。)で示すことができる。Rの連結基としては後述するRとしての連結基が挙げられる。好ましくは-CH=CH、-CF=CH2、-CH=CF2、-CF=CF、-CH-CH=CH、-CF-CF=CH、-CF-CF=CF、-(C=O)-CH=CH、-(C=O)-CF=CH、-(C=O)-CH=CF、-(C=O)-CF=CF、-(C=O)-C(CH)=CH、-(C=O)-C(CF)=CH、-(C=O)-C(CH)=CF、-(C=O)-C(CF)=CF、-O-CH-CH=CH、-O-CF-CF=CH、-O-CH-CH=CF、-O-CF-CF=CF等の不飽和結合を有する基が挙げられる。
上記変性モノマー(A)は、ラジカル重合で反応可能な官能基を有するので、上記重合において使用すると、重合反応初期に含フッ素モノマーと反応し、上記変性モノマー(A)に由来する親水基を有し安定性が高い粒子が形成されると推測される。このため、上記変性モノマー(A)の存在下に重合を行うと、粒子数が多くなると考えられる。
上記重合は、上記変性モノマー(A)を1種存在させるものであってもよいし、2種以上存在させるものであってもよい。
上記重合において、上記変性モノマー(A)として、不飽和結合を有する化合物を使用することができる。
変性モノマー(A)は、一般式(4):
CX=CX-(CZ-Y (4)
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Yは、親水基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F又はCFであり、kは0又は1である)で表される化合物が好ましい。
上記親水基としては、例えば、-NH、-POM、-OPOM、-SOM、-OSOM、-COOM(各式において、Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が挙げられる。上記親水基としては、なかでも、-SOM又は-COOMが好ましい。R7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
上記変性モノマー(A)を用いることによって、より平均一次粒子径が小さく、より安定性に優れる水性分散液を得ることができる。また、一次粒子のアスペクト比をより小さくすることもできる。
上記Rは、連結基である。本開示において「連結基」は、二価連結基を指す。連結基は、単結合であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を含むことが好ましく、炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば、100以下であってよく、50以下であってよい。
上記連結基は、鎖状又は分岐状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素及びカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。上記連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄又は窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
上記Rは、例えば、酸素、硫黄、窒素等のカテナリーヘテロ原子、又は、2価の有機基であることが好ましい。
が2価の有機基である場合、炭素原子に結合する水素原子は、フッ素以外のハロゲン、例えば塩素等で置き換えられてもよく、二重結合を含んでも含まなくてもよい。また、Rは、鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよい。また、Rは、官能基(例えば、エステル、エーテル、ケトン、アミン、ハロゲン化物等)を含んでもよい。
はまた、非フッ素の2価の有機基であってもよいし、部分フッ素化又は過フッ素化された2価の有機基であってもよい。
としては、例えば、炭素原子にフッ素原子が結合していない炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された炭化水素基、-(C=O)-、-(C=O)-O-、又は、エーテル結合を含有する炭化水素基であってもよく、これらは酸素原子を含んでいてもよく、二重結合を含んでいてもよく、官能基を含んでいてもよい。
は、-(C=O)-、-(C=O)-O-、又は、エーテル結合を含んでいてもよく、カルボニル基を含んでいてもよい炭素数1~100の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素に置換されていてもよい。
として好ましくは、-(CH-、-(CF-、-O-(CF-、-(CF-O-(CF-、-O(CF-O-(CF-、-(CF-[O-(CF-、-O(CF-[O-(CF-、-[(CF-O]-[(CF-O]-、-O[(CF-O]-[(CF-O]-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH-、-(C=O)-(CF-、-(C=O)-O-(CH-、-(C=O)-O-(CF-、-(C=O)-[(CH-O]-、-(C=O)-[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF-、-(C=O)-(CH-O-(CH-、-(C=O)-(CF-O-(CF-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF-、-(C=O)-O-C-、及び、これらの組み合わせから選択される少なくとも1種である。
式中、a、b、c及びdは独立して少なくとも1以上である。a、b、c及びdは独立して、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。a、b、c及びdの上限は、例えば、100である。
として好適な具体例としては、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CH-、-CF-O-CHCF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CFCH-、-CF-O-CFCFCH-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-CF-O-CF(CF)CH-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-、-(C=O)-[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-、-(C=O)-(CF-O-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-、-(C=O)-O-C-等が挙げられる。中でも、上記Rは、具体的には、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-、又は、-(C=O)-O-C-が好ましい。
上記式中、nは1~10の整数である。
一般式(4)における-R-(CZ-としては、-CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-C(CF-、-CF-O-CF-CF-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CF-C(CF-、-CF-O-CFCF-CF-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)-CF-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-O-C(CF-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-[(CF-O]-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CF)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-(CF)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-(CF-O-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-C(CF-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-C(CF-、又は、-(C=O)-O-C-C(CF-が好ましく、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(C=O)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-C(CF-、又は、-(C=O)-O-C-C(CF-がより好ましい。
上記式中、nは1~10の整数である。
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、
Figure 0007644392000025
(式中、X及びYは上記と同じ。nは1~10の整数である。)等が挙げられる。
としては、一般式(r1):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)- (r1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1である)で表される2価の基が好ましく、一般式(r2):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -(O)- (r2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1である。)で表される2価の基も好ましい。
一般式(4)の-R-(CZ-としてはまた、下記式(t1):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)-CZ- (t1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1であり、Z及びZは、それぞれ独立して、F又はCFである)で表される2価の基も好ましく、式(t1)において、Z及びZは、一方がFで他方がCFであることがより好ましい。
また、一般式(4)において、-R-(CZ-としては、下記式(t2):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -(O)-CZ- (t2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1であり、Z及びZは、それぞれ独立して、F又はCFである)で表される2価の基も好ましく、式(t2)において、Z及びZは、一方がFで他方がCFであることがより好ましい。
一般式(4)で表される化合物は、親水基(Y)を除いて、C-F結合を有し、C-H結合を有していないことも好ましい。すなわち、一般式(4)において、X、X、及びXの全てがFであり、Rは炭素数が1以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、上記パーフルオロアルキレン基は、鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよく、少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含んでもよい。上記パーフルオロアルキレン基の炭素数は、2~20であってよく、4~18であってもよい。
一般式(4)で表される化合物は、部分フッ素化されたものであってもよい。すなわち、一般式(4)で表される化合物は、親水基(Y)を除いて、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有し、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有することも好ましい。
一般式(4)で表される化合物は、下記式(4a)で示される化合物であることも好ましい。
CF=CF-O-Rf-Y (4a)
(式中、Yは親水基であり、Rfは、過フッ素化されており、鎖状又は分岐状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってもよく、硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意追加的に含有する過フッ素化二価連結基である。)
一般式(4)で表される化合物は、下記式(4b)で示される化合物であることも好ましい。
CH=CH-O-Rf-Y (4b)
(式中、Yは親水基であり、Rfは式(4a)で定義される過フッ素化二価連結基である。)
一般式(4)において、Yは-OSOMであることが好ましい形態の一つである。Yが-OSOMである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCHOSOM)、CH=CH((CFCHOSOM)、CF=CF(O(CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)CHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOSOM)、CH=CH((CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(CFCFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
一般式(4)において、Yは-SOMであることも好ましい形態の一つである。Yが-SOMである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSOM)、CH=CH(CFCFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSOM)、CH=CH((CFSOM)、CH=CH((CFSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
一般式(4)において、Yは-COOMであることも好ましい形態の一つである。Yが-COOMである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(OCFCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)COOM)、CF=CF(OCFCF(CF)O(CFCOOM)(nは1より大きい)、CH=CH(CFCFCOOM)、CH=CH((CFCOOM)、CH=CH((CFCOOM)、CF=CF(OCFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(O(CFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH(CFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH((CFSONR’CHCOOM)、CH=CH((CFSONR’CHCOOM)等が挙げられる。上記式中、R’はH又はC1-4アルキル基であり、Mは上記と同じである。
一般式(4)において、Yは-OPOMまたは-OP(O)(OM)であることも好ましい形態の一つである。Yが-OPOMまたは-OP(O)(OM)である場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(O(CFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)CHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CH=CH(CFCFCHOP(O)(OM)、CH=CH((CFCHOP(O)(OM))、CH=CH((CFCHOP(O)(OM))等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
一般式(4)において、Yは-POMまたは-P(O)(OM)であることも好ましい形態の一つである。Yが-POMまたは-P(O)(OM)である場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFP(O)(OM))、CF=CF(O(CFP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)P(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFP(O)(OM))、CH=CH(CFCFP(O)(OM))、CH=CH((CFP(O)(OM))、CH=CH((CFP(O)(OM))等が挙げられ、式中、Mは上記と同じである。
一般式(4)で表される化合物としては、一般式(5):
CX=CY(-CZ-O-Rf-Y) (5)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される化合物、一般式(6):
CX=CY(-O-Rf-Y) (6)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される化合物、及び、一般式(7):
CX=CY(-Rf-Y) (7)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される化合物、からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
一般式(5)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
一般式(5)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Yとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
一般式(5)において、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又はフルオロアルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Zとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
一般式(5)において、上記X、Y及びZの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
一般式(5)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基としては、例えば、下記式:
Figure 0007644392000026
(式中、ZはFまたはCF;Z及びZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF)CF-O-CF(CF)CH-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CH-(式中、nは1~10の整数)、-CHCFCFO-CHCFCH-、-CFCFCFO-CFCF-、-CFCFCFO-CFCFCH-、-CFCFO-CF-、-CFCFO-CFCH-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
一般式(5)において、Yは、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)であることが好ましい。
7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。
7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Mとしては、-H、金属原子またはNR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR がより好ましく、-H、-Na、-K、-LiまたはNHが更に好ましく、-H、-Na、-KまたはNHが更により好ましく、-H、-NaまたはNHが特に好ましく、-Hまたは-NHが最も好ましい。
上記Yとしては、-COOM又は-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
一般式(5)で表される化合物は、一般式(5a)で表される化合物(5a)であることが好ましい。
CH=CF(-CF-O-Rf-Y) (5a)
(式中、Rf及びYは前記と同じ。)
一般式(5a)で表される化合物として具体的には、下記式
Figure 0007644392000027
(式中、ZはFまたはCF;Z及びZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が0~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数、Yは前記と同じ。ただし、Z及びZがともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない)で表される化合物が挙げられる。より具体的には、
Figure 0007644392000028
などが好ましく挙げられ、なかでも
Figure 0007644392000029
であることが好ましい。
一般式(5a)で表される化合物としては、式(5a)中のYが-COOMであることが好ましく、特に、CH=CFCFOCF(CF)COOM、及び、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CH=CFCFOCF(CF)COOMがより好ましい。
一般式(5)で表される化合物は、一般式(5b)で表される化合物(5b)であることが好ましい。
CX =CFCF-O-(CF(CF)CFO)n5-CF(CF)-Y
(5b)
(式中、各Xは、同一であり、F又はHを表す。n5は、0又は1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
上記式(5b)において、上記n5は、得られる水性分散液の安定性の点で0又は1~5の整数であることが好ましく、0、1又は2であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。上記Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、不純物として残留しにくく、得られた成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
上記式(5b)で表される化合物としては、例えば、CH=CFCFOCF(CF)COOM、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
また、一般式(5)で表される化合物としては、一般式(5c)で表される化合物等も挙げられる。
CF=CFCF-O-Rf-Y (5c)
(式中、Rf及びYは上記と同じ)
より具体的には、
Figure 0007644392000030
等が挙げられる。
一般式(6)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
一般式(6)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Yとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
一般式(6)において、上記X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
一般式(6)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
上記一般式(6)において、Yは、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)であることが好ましい。
7yの有機基としてはアルキル基が好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Mとしては、-H、金属原子またはNR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR がより好ましく、-H、-Na、-K、-LiまたはNHが更に好ましく、-H、-Na、-KまたはNHが更により好ましく、-H、-NaまたはNHが特に好ましく、-Hまたは-NHが最も好ましい。
上記Yとしては、-COOM又は-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
一般式(6)で表される化合物は、一般式(6a)、(6b)、(6c)、(6d)および(6e)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
CF=CF-O-(CFn1-Y (6a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFC(CF)F)n2-Y (6b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFXn3-Y (6c)
(式中、Xは、F又はCFを表し、n3は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFXO)n4-(CFn6-Y (6d)
(式中、n4は、1~10の整数を表し、n6は、1~3の整数を表し、Y及びXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFCFXO)n5-CFCFCF-Y (6e)
(式中、n5は、0~10の整数を表し、Y及びXは、前記定義と同じ。)
上記式(6a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。上記Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性を得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
上記式(6a)で表される化合物としては、例えば、CF=CF-O-CFCOOM、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(OCFCFCFCOOM)(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
上記式(6b)において、上記n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
上記式(6c)において、上記n3は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、上記Mは、分散安定性がよくなる点で、H又はNHであることが好ましい。
上記式(6d)において、上記Xは、水性分散液の安定性の点で、-CFであることが好ましく、上記n4は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、H又はNHであることが好ましい。
上記式(6d)で表される化合物としては、例えば、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
一般式(6e)において、上記n5は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、H又はNHであることが好ましい。
一般式(6e)で表される化合物としては、例えば、CF=CFOCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
一般式(7)において、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基であることが好ましい。一般式(7)において、X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。
一般式(7)で表される化合物は、一般式(7a):
CF=CF-(CFn1-Y (7a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)で表される化合物、及び、一般式(7b):
CF=CF-(CFC(CF)F)n2-Y (7b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記Yは、-SOM又は-COOMが好ましく、Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであることが好ましい。上記R7yは、H又は有機基を表す。
上記式(7a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。上記Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性を得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
上記式(7a)で表される化合物としては、例えば、CF=CFCFCOOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
上記式(7b)において、上記n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
上記変性モノマーは、変性モノマー(A)を含むことが好ましく、一般式(5a)、一般式(5c)、一般式(6a)、一般式(6b)、一般式(6c)、及び、一般式(6d)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、一般式(5a)または一般式(5c)で表される化合物を含むことがより好ましい。
変性モノマーとして変性モノマー(A)を用いる場合、変性モノマー(A)単位の含有量は、上記TFE重合体(PTFE)の全重合単位に対して、0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましい。上限としては、好ましい順に、0.90質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
上記TFE重合体の製造において、重合体(I)は、上述した本開示の製造方法における使用範囲で用いることができる。重合体(I)の濃度は、上記範囲であれば特に限定されない。添加量が多すぎるとアスペクト比の大きい針状粒子が生成し、水性分散液がゲル状となり安定性が損なわれる。重合体(I)の使用量の下限は、水性媒体に対して、好ましくは0.0001質量%、より好ましくは0.001質量%、更に好ましくは0.01質量%、特に好ましくは0.02質量%である。上記重合体(I)の使用量の上限は、水性媒体に対して、好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%である。
重合体(I)は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合開始後に一括して添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
上記TFE重合体の製造において、重合開始剤としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム)や、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独で又はこれらの混合物の形で使用することができる。また、亜硫酸ナトリウム等の還元剤と共用し、レドックス系にして用いてもよい。更に、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加し、系内のラジカル濃度を調整したりすることもできる。
上記レドックス系の重合開始剤としては、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
上記レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩/硫酸鉄、三酢酸マンガン/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、臭素酸塩/重亜硫酸塩等が挙げられ、過マンガン酸カリウム/シュウ酸が好ましい。レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸を用いる場合、重合槽にシュウ酸を仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
上記TFE重合体の製造において、連鎖移動剤としては、公知のものが使用できるが、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素、クロロメタン、ジクロロメタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、水素等が挙げられるが、常温常圧で気体状態のものが好ましい。
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるTFE全量に対して、1~10000質量ppmであり、好ましくは1~5000質量ppmである。
上記TFE重合体の製造において、更に、反応系の分散安定剤として、実質的に反応に不活性であって、上記反応条件で液状となる炭素数が12以上の飽和炭化水素を、水性媒体100質量部に対して2~10質量部で使用することもできる。また、反応中のpHを調整するための緩衝剤として、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等を添加してもよい。
TFEの重合が終了した時点で、固形分濃度が1.0~50質量%、平均一次粒子径が50~500nmの重合分散液を得ることができる。
上記固形分濃度の下限は5質量%が好ましく、8質量%がより好ましい。上限は特に限定されないが40質量%であってもよく、35質量%であってもよい。
上記平均一次粒子径の下限は100nmが好ましく、150nmがより好ましい。上限は400nmが好ましく、350nmがより好ましい。
上記平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。上記平均一次粒子径は、固形分濃度約1.0質量%に調整した水性分散液を作成し、動的光散乱法を使用して、25℃、溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・s、積算70回にて測定できる。動的光散乱法としては、例えばELSZ-1000S(大塚電子社製)が使用できる。
TFE重合体の水性分散液を凝析することによりファインパウダーを製造できる。上記TFE重合体の水性分散液は、凝析、洗浄、乾燥を経てファインパウダーとして各種用途に使用することができる。上記TFE重合体の水性分散液に対して凝析を行う場合、通常、ポリマーラテックス等の重合により得た水性分散液を、水を用いて5~20質量%のポリマー濃度になるように希釈し、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で反応中の撹拌よりも激しく撹拌して行う。上記凝析は、メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。上記凝析は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
上記凝集により生じる排水中の未凝集の上記TFE重合体濃度は、生産性の観点から低いことが好ましく、0.4質量%未満がより好ましく、0.3質量%未満が特に好ましい。
上記凝析前や凝析中に、着色のための顔料や機械的性質を改良するための各種充填剤を添加することにより、顔料や充填剤が均一に混合した顔料入り又は充填剤入りのTFE重合体ファインパウダーを得ることができる。
上記TFE重合体の水性分散液を凝析して得られた湿潤粉末の乾燥は、通常、上記湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にファインパウダー型のTFE重合体に好ましくない影響を与える。これは、この種のTFE重合体からなる粒子が小さな剪断力によっても簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。
上記乾燥は、10~300℃、好ましくは100~300℃の乾燥温度で行う。
得られるTFE重合体ファインパウダーは、成形用として好ましく、好適な用途としては、航空機及び自動車等の油圧系、燃料系のチューブ等が挙げられ、薬液、蒸気等のフレキシブルホース、電線被覆用途等が挙げられる。
TFE重合体の水性分散液は、また、非イオン性界面活性剤を加えることにより、安定化して更に濃縮し、目的に応じ、有機又は無機の充填剤を加えた組成物として各種用途に使用することも好ましい。上記組成物は、金属又はセラッミクスからなる基材上に被覆することにより、非粘着性と低摩擦係数を有し、光沢や平滑性、耐摩耗性、耐候性及び耐熱性に優れた塗膜表面とすることができ、ロールや調理器具等の塗装、ガラスクロスの含浸加工等に適している。
上記水性分散液からTFE重合体のオルガノゾルを調製することもできる。上記オルガノゾルは、上記TFE重合体及び有機溶剤を含むことができ、上記有機溶剤としては、エーテル系溶媒、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤が挙げられ、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド等を好適に使用できる。上記オルガノゾルの調製は、例えば、国際公開第2012/002038号に記載の方法により実施できる。
上記TFE重合体の水性分散液又は上記TFE重合体ファインパウダーは、加工助剤として使用することも好ましい。加工助剤として使用する場合、上記水性分散液又は上記ファインパウダーをホストポリマー等に混合することにより、ホストポリマー溶融加工時の溶融強度向上や、得られたポリマーの機械的強度、電気特性、難燃性、燃焼時の滴下防止性、摺動性を向上することができる。
上記TFE重合体の水性分散液又は上記TFE重合体ファインパウダーは、電池用結着剤、防塵用途として使用することも好ましい。
上記TFE重合体の水性分散液又は上記TFE重合体ファインパウダーは、また、TFE重合体以外の樹脂と複合させてから加工助剤として使用することも好ましい。上記水性分散液又は上記ファインパウダーは、例えば、特開平11-49912号公報、米国特許第5804654号明細書、特開平11-29679号公報、特開2003-2980号公報に記載されたPTFEの原料として好適である。上記水性分散液又は上記ファインパウダーを使用した加工助剤は、上記各刊行物に記載された加工助剤に比べてもなんら劣るものではない。
上記TFE重合体の水性分散液は、溶融加工性フッ素樹脂の水性分散液と混合して凝析させることにより、共凝析粉末とすることも好ましい。上記共凝析粉末は、加工助剤として好適である。
上記溶融加工性フッ素樹脂としては、例えば、FEP、PFA、TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体、ETFE、エチレン/TFE/HFP共重合体[EFEP]等が挙げられるが、中でも、PFAまたはFEPが好ましい。
上記水性分散液は、上記溶融加工性フッ素樹脂を含むことも好ましい。上記溶融加工性フッ素樹脂としては、例えば、FEP、PFA、TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体、ETFE、EFEP等が挙げられる。上記溶融加工性フッ素樹脂を含む上記水性分散液は、塗料として使用できる。上記溶融加工性フッ素樹脂は、上記TFE重合体の粒子同士を充分に融着させることができるので、造膜性を向上させ、得られる被膜に光沢を出すことができる。
上記共凝析粉末を添加するフッ素非含有樹脂は、パウダー状であってもよいし、ペレット状であってもよいし、エマルションであってもよい。上記添加は、各樹脂を充分に混合する点で、押出混練、ロール混練等の公知の方法により剪断力を与えながら行うことが好ましい。
上記TFE重合体の水性分散液は、塵埃抑制処理剤として使用することも好ましい。上記塵埃抑制処理剤は、発塵性物質と混合し、該混合物に20~200℃の温度で圧縮-せん断作用を施すことによりTFE重合体をフィブリル化して発塵性物質の塵埃を抑制する方法、例えば特許第2827152号公報、特許第2538783号公報等の方法において、用いることができる。
上記TFE重合体の水性分散液は、例えば、国際公開第2007/004250号に記載の塵埃抑制処理剤組成物に好適に用いることができ、国際公開第2007/000812号に記載の塵埃抑制処理方法にも好適に用いることができる。
上記塵埃抑制処理剤は、建材分野、土壌安定材分野、固化材分野、肥料分野、焼却灰及び有害物質の埋立処分分野、防爆分野、化粧品分野、猫砂に代表されるペット排泄用の砂等の塵埃抑制処理に好適に用いられる。
上記TFE重合体の水性分散液は、分散紡糸法(Dispersion Spinning method)によりTFE重合体繊維を得る原料として使用することも好ましい。上記分散紡糸法とは、上記TFE重合体の水性分散液とマトリックス高分子の水性分散液とを混合し、当該混合物を押出加工して中間体繊維構造物を形成し、該中間体繊維構造物を焼成することによって上記マトリックス高分子を分解及びTFE重合体粒子の焼結を行ってTFE重合体繊維を得る方法である。
重合により得られる高分子量PTFE粉末は、延伸性及び非溶融加工性を有し、延伸体(多孔体)の原料としても有用である。
この延伸体が膜である場合(PTFE延伸膜またはPTFE多孔膜)、公知のPTFE延伸方法によって延伸することができる。延伸することにより高分子量PTFEは容易にフィブリル化し、結節と繊維からなるPTFE多孔体(膜)となる。
好ましくは、シート状または棒状のペースト押出物を押出方向にロール延伸することで、一軸延伸膜を得ることができる。
更に、テンター等により幅方向に延伸して、二軸延伸膜も得ることができる。
延伸前に半焼成処理を行うことも好ましい。
このPTFE延伸体は、高い空孔率を持つ多孔体であり、エアフィルター、薬液フィルター等の各種精密濾過フィルターの濾材、高分子電解質膜の支持材等として好適に利用できる。
また、繊維分野、医療分野、エレクトロケミカル分野、シール材分野、空気濾過分野、換気/内圧調整分野、液濾過分野、一般消費材分野等で使用する製品の素材としても有用である。
以下に、具体的な用途を例示する。
エレクトロケミカル分野
誘電材料プリプレグ、EMI遮蔽材料、伝熱材料等。より詳細には、プリント配線基板、電磁遮蔽シールド材、絶縁伝熱材料、絶縁材料等。
シール材分野
ガスケット、パッキン、ポンプダイアフラム、ポンプチューブ、航空機用シール材等。
空気濾過分野
ULPAフィルター(半導体製造用)、HEPAフィルター(病院・半導体製造用)、円筒カートリッジフィルター(産業用)、バグフィルター(産業用)、耐熱バグフィルター(排ガス処理用)、耐熱プリーツフィルター(排ガス処理用)、SINBRANフィルター(産業用)、触媒フィルター(排ガス処理用)、吸着剤付フィルター(HDD組込み)、吸着剤付ベントフィルター(HDD組込み用)、ベントフィルター(HDD組込み用他)、掃除機用フィルター(掃除機用)、汎用複層フェルト材、GT用カートリッジフィルター(GT向け互換品用)、クーリングフィルター(電子機器筐体用)等。
換気/内圧調整分野
凍結乾燥用の容器等の凍結乾燥用材料、電子回路やランプ向けの自動車用換気材料、容器キャップ向け等の容器用途、タブレット端末や携帯電話端末等の小型端末を含む電子機器向け等の保護換気用途、医療用換気用途等。
液濾過分野
半導体液ろ過フィルター(半導体製造用)、親水性PTFEフィルター(半導体製造用)、化学薬品向けフィルター(薬液処理用)、純水製造ライン用フィルター(純水製造用)、逆洗型液ろ過フィルター(産業排水処理用)等。
一般消費材分野
衣類、ケーブルガイド(バイク向け可動ワイヤ)、バイク用衣服、キャストライナー(医療サポーター)、掃除機フィルター、バグパイプ(楽器)、ケーブル(ギター用信号ケーブル等)、弦(弦楽器用)等。
繊維分野
PTFE繊維(繊維材料)、ミシン糸(テキスタイル)、織糸(テキスタイル)、ロープ等。
医療分野
体内埋設物(延伸品)、人工血管、カテーテル、一般手術(組織補強材料)、頭頸部製品(硬膜代替)、口内健康(組織再生医療)、整形外科(包帯)等。
本開示の製造方法により、低分子量PTFEを製造することもできる。
低分子量PTFEは、重合により製造しても良いし、重合で得られた高分子量PTFEを公知の方法(熱分解、放射線照射分解等)で低分子量化して製造することもできる。
分子量60万以下の低分子量PTFE(PTFEマイクロパウダーとも呼ばれる)は、化学的安定性に優れ、表面エネルギーが極めて低いことに加え、フィブリル化が生じにくいので、滑り性や塗膜表面の質感を向上させること等を目的とした添加剤として、プラスチック、インク、化粧品、塗料、グリース、オフィスオートメーション機器部材、トナー等の製造に好適である(例えば、特開平10-147617号公報参照。)。
また、更に連鎖移動剤の存在下、水性媒体中に重合開始剤及び重合体(I)を分散させ、TFE、又は、TFEと共重合し得るモノマーとTFEを重合させることによって、低分子量PTFEを得てもよい。この場合、連鎖移動剤としては、炭素数2~4のアルカンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタンがより好ましく、エタン、プロパンが更に好ましい。この場合、連鎖移動剤の量としては、水性媒体に対して、10質量ppm以上または10質量ppm超が好ましい。
上記重合により得られる低分子量PTFEを粉末として用いる場合、上記水性分散液を凝析させることで粉末粒子とすることができる。
本開示において、高分子量PTFEとは、非溶融加工性及びフィブリル化性を有するPTFEを意味する。他方、低分子量PTFEとは、溶融加工性を有し、フィブリル化性を有しないPTFEを意味する。
上記非溶融加工性とは、ASTM D 1238及びD 2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質を意味する。
フィブリル化性の有無は、TFEの重合体から作られた粉末である「高分子量PTFE粉末」を成形する代表的な方法である「ペースト押出し」で判断できる。通常、ペースト押出しが可能であるのは、高分子量のPTFEがフィブリル化性を有するからである。ペースト押出しで得られた未焼成の成形物に実質的な強度や伸びがない場合、例えば伸びが0%で引っ張ると切れるような場合はフィブリル化性がないとみなすことができる。
上記高分子量PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。本開示において、「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
上記低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度が1×10~7×10Pa・sである。本開示において、「低分子量」とは、上記溶融粘度が上記の範囲内にあることを意味する。溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定する値である。
上記高分子量PTFEは、上記低分子量PTFEよりも溶融粘度が極めて高く、その正確な溶融粘度を測定することは困難である。他方、上記低分子量PTFEの溶融粘度は測定可能であるが、上記低分子量PTFEからは、標準比重の測定に使用可能な成形品を得ることが難しく、その正確な標準比重を測定することが困難である。従って、本開示では、上記高分子量PTFEの分子量の指標として、標準比重を採用し、上記低分子量PTFEの分子量の指標として、溶融粘度を採用する。なお、上記高分子量PTFE及び上記低分子量PTFEのいずれについても、直接に分子量を特定できる測定方法は知られていない。
上記高分子量PTFEは、ピーク温度が333~347℃であることが好ましく、335~345℃であることがより好ましい。上記低分子量PTFEは、ピーク温度が322~333℃であることが好ましく、324~332℃であることがより好ましい。ピーク温度は、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて、300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEを10℃/分の条件で昇温させることにより得られる示差熱(DTA)曲線に現れる極大値に対応する温度として、特定できる。
PTFEのピーク温度は、322~347℃であってよい。
PTFEが高分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の上限は、347℃以下、346℃以下、345℃以下、344℃以下、343℃以下、342℃以下、341℃以下、340℃以下であってよい。
PTFEが高分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の下限は、333℃以上、335℃以上であってよい。
PTFEが低分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の上限は、333℃以下、332℃以下であってよい。
PTFEが低分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の下限は、322℃以上、324℃以上であってよい。
低分子量PTFEの一次粒子の平均一次粒子径は、好ましくは10~200nmであり、より好ましくは20nm以上であり、より好ましくは140nm以下であり、さらに好ましくは150nm以下であり、特に好ましくは90nm以下である。一次粒子の比較的小さい平均一次粒子径は、たとえば、TFEの重合初期に、変性モノマーを重合系に添加することにより、得ることができる。
低分子量PTFEの一次粒子の平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。まず、ポリマー固形分濃度を約1.0質量%に調整した低分子量PTFE水性分散液を作製し、動的光散乱法を使用して、測定温度を25℃、溶媒(水)の屈折率を1.3328、溶媒(水)の粘度を0.8878mPa・s、積算回数を70回として、測定できる。動的光散乱法においては、たとえば、ELSZ-1000S(大塚電子社製)が使用できる。
上記高分子量PTFEは、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が52mJ/mg以上であることが好ましい。PTFEの融解熱量は、より好ましくは55mJ/mg以上であり、さらに好ましくは58mJ/mg以上である。
上記で得られたPTFEファインパウダーから、未焼成テープ(生テープ)を得ることもできる。
(II)溶融加工性フッ素樹脂
(1)本開示の製造方法において、FEPの重合は、重合温度10~150℃、重合圧力0.3~6.0MPaGにて行うことが好ましい。
FEPの好ましい単量体組成(質量%)は、TFE:HFP=(60~95):(5~40)、より好ましくは(85~92):(8~15)である。
TFEおよびHFPに加えて、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を重合することにより、FEPとして、TFE、HFPおよび他の単量体の共重合体を得てもよい。他の単量体としては、上述した含フッ素単量体(ただし、TFEおよびHFPを除く)およびフッ素非含有単量体が挙げられる。他の単量体として、1種または複数種を用いることができる。他の単量体としては、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が好ましい。FEPにおける他の単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、0.1~2質量%であってよい。
上記FEPの重合において、重合体(I)は、本開示の製造方法における使用範囲で用いることができるが、通常、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%の量を添加する。
上記FEPの重合において、連鎖移動剤としては、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等を使用することが好ましく、pH緩衝剤としては、炭酸アンモニウム、燐酸水素二ナトリウム等を使用することが好ましい。
本開示の製造方法で得られるFEPの水性分散液を必要に応じて濃縮等の後処理した後、乾燥、粉末にし、次いで溶融押出することによってペレットにしても良い。FEPの水性分散液中の水性媒体は、必要に応じて非イオン性界面活性剤などの添加剤を含むものであってもよいが、水溶性アルコール等の水溶性有機溶媒を含むものであってもよいし、水溶性有機溶媒を含まないものであってもよい。
また、溶融押出は、一般にペレット化可能な押出条件であれば、押出条件を適宜設定して行うことができる。
本開示の製造方法では、得られるFEPが、ポリマー主鎖及びポリマー側鎖の少なくとも一方の部位に、-CF、-CFH等の末端基を有しているものであってよいが、-COOH、-CHOH、-COF、-CF=CF-、-CONH、-COOCH等の熱的に不安定な基(以下「不安定末端基」という)は含有量が低いか、ないことが好ましい。
上記不安定末端基は、化学的に不安定であることから、樹脂の耐熱性を低下させるだけでなく、得られた電線の減衰量が増大する原因となる。
本開示の製造方法では、重合終了時のポリマーを、不安定末端基と-CFH末端基とを合計した数が炭素数1×10個当たり50個以下となるように製造することが好ましい。より好ましくは炭素原子1×10個あたり20個未満であることが好ましく、さらに好ましくは5個以下であることが好ましい。上記不安定末端基および-CFH末端基が存在せず全て-CF末端基であってもよい。
不安定末端基および-CFH末端基はフッ素化処理により-CF末端基に変換させて安定化させることができる。フッ素化処理方法は特に限定されないが、重合体を、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源にさらす方法を挙げることができる。上記フッ素ラジカル源としては、フッ素ガスや、CoF、AgF、UF、OF、N、CFOF、及び、フッ化ハロゲン、例えば、IF、ClF等が挙げられる。なかでも、フッ素ガスと本開示の製造方法によって得られるFEPを直接接触させる方法が好ましく、上記接触は、反応制御の点で、フッ素ガス濃度10~50質量%の希釈フッ素ガスを用いて行うことが好ましい。上記希釈フッ素ガスは、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスでフッ素ガスを希釈することにより得ることができる。上記フッ素ガス処理は、例えば、100~250℃の温度で行うことができる。なお、処理温度は、先の範囲に限定されることなく、状況に応じて適宜設定することができる。上記フッ素ガス処理は、希釈フッ素ガスを連続的又は間欠的に反応器内に供給して行うことが好ましい。このフッ素化処理は重合後の乾燥粉末でも溶融押出したペレットでもよい。
本開示の製造方法で得られるFEPは、成形性がよく、成形不良が生じにくいことに加え、良好な耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、絶縁性、電気特性等を有する。
上記FEPの粉末の製造方法は、上述した本開示の製造方法で得られたFEPを乾燥させて粉体化することによって粉末を得る方法である。
上記粉末は、フッ素化されていてもよい。上記のフッ素化された粉末の製造方法は、上述した粉末の製造方法で得られた粉末にフッ素ガスを供給することでフッ素化させることによってフッ素化された粉末を得る方法である。
上記FEPのペレットの製造方法は、上述した本開示の製造方法で得られたFEPをペレット化することによってペレットを得る方法である。
上記ペレットは、フッ素化されていてもよい。上記のフッ素化されたペレットの製造方法は、上述したペレットの製造方法で得られたペレットにフッ素ガスを供給することでフッ素化させることによってフッ素化されたペレットを得る方法である。
このため、このFEPは、例えば、電線、発泡電線、ケーブル、ワイヤ等の被覆材、チューブ、フィルム、シート、フィラメント等の種々の成形品の製造に供することができる。
(2)本開示の製造方法において、PFA、MFA等のTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体およびTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の重合は、通常、重合温度10~100℃、重合圧力0.3~6.0MPaGで行うことが好ましい。
TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)=(90~99.7):(0.3~10)、より好ましくは(97~99):(1~3)である。上記パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、式:CF=CFORf(式中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基)で表されるものを使用することが好ましい。
TFEおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に加えて、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を重合することにより、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体として、TFE、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)および他の単量体の共重合体を得てもよい。他の単量体としては、上述した含フッ素単量体(ただし、TFEおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)を除く)およびフッ素非含有単量体が挙げられる。他の単量体として、1種または複数種を用いることができる。TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体における他の単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、0.1~2質量%であってよい。
TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:パーフルオロアリルエーテル=(90~99.7):(0.3~10)、より好ましくは(97~99):(1~3)である。上記パーフルオロアリルエーテルとしては、式:CF=CFCFORf(式中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキル基)で表されるものを使用することが好ましい。
TFEおよびパーフルオロアリルエーテルに加えて、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を重合することにより、TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体として、TFE、パーフルオロアリルエーテルおよび他の単量体の共重合体を得てもよい。他の単量体としては、上述した含フッ素単量体(ただし、TFEおよびパーフルオロアリルエーテルを除く)およびフッ素非含有単量体が挙げられる。他の単量体として、1種または複数種を用いることができる。TFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体における他の単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、0.1~2質量%であってよい。
上記TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体およびTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の重合において、重合体(I)は、本開示の製造方法における使用範囲で用いることができるが、通常、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%の量で添加することが好ましい。
上記TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体およびTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の重合において、連鎖移動剤としてシクロヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル、メタン、エタン等を使用することが好ましく、pH緩衝剤として、炭酸アンモニウム、燐酸水素二ナトリウム等を使用することが好ましい。
本開示の製造方法で得られるPFA、MFA等のTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体およびTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の水性分散液を必要に応じて濃縮等の後処理した後、乾燥、粉末にし、次いで溶融押出することによってペレットにしても良い。上記の水性分散液中の水性媒体は、必要に応じて非イオン性界面活性剤などの添加剤を含むものであってもよいが、水溶性アルコール等の水溶性有機溶媒を含むものであってもよいし、水溶性有機溶媒を含まないものであってもよい。
また、溶融押出は、一般にペレット化可能な押出条件であれば、押出条件を適宜設定して行うことができる。
上記の共重合体は、その耐熱性を向上させ、さらに成形品の薬液透過抑制効果をさらに強化する目的でフッ素ガス処理を施すことが好ましい。
フッ素ガス処理は、フッ素ガスを共重合体に接触させることにより行なう。しかし、フッ素との反応は非常に発熱性であるから、フッ素を窒素のような不活性ガスで希釈することが好適である。フッ素ガス/不活性ガス混合物中のフッ素量は1~100質量%、好ましくは10~25質量%である。処理温度は150~250℃、好ましくは200~250℃であり、フッ素ガス処理時間は3~16時間、好ましくは4~12時間である。フッ素ガス処理のガス圧は1~10気圧の範囲であるが、好ましくは大気圧が使用される。反応器を大気圧で用いる場合、フッ素ガス/不活性ガス混合物を反応器中へ連続的に通過させればよい。その結果、上記共重合体の不安定な末端は-CF末端に転化され、熱的に安定となる。
上記共重合体およびその組成物の成形方法としては、従来のPFAと同様に圧縮成形、トランスファ成形、押出成形、射出成形、ブロー成形などの成形法が適用できる。
このような成形法により所望の成形品を得ることができるが、成形品の例をあげると、シート、フィルム、パッキン、丸棒、角棒、パイプ、チューブ、丸槽、角槽、タンク、ウェハーキャリア、ウェハーボックス、ビーカー、フィルターハウジング、流量計、ポンプ、バルブ、コック、コネクター、ナット、電線、耐熱電線などがある。
これらのうち、特に薬液の不透過性が要求される各種の化学反応装置、半導体製造装置、さらには酸系またはアルカリ系の薬液供給装置などに使用するチューブ、パイプ、タンク、コネクターなどに好適に使用できる。
更に、PFA、MFA等のTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体およびTFE/パーフルオロアリルエーテル共重合体の水性分散液に、非イオン性界面活性剤を適宜加え、必要に応じて、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミドおよび/またはポリイミド、並びに金属粉末を、有機溶媒中に溶解または分散させることで、プライマー組成物を得ることができる。このプライマー組成物を金属表面に施し、かくして形成されたプライマー層上に溶融加工性フッ素樹脂組成物を施し、プライマー層と共に溶融加工性フッ素樹脂組成物層を焼成することからなる金属表面へのフッ素樹脂の被覆方法にも用いることができる。
(3)本開示の製造方法において、ETFEの重合は、重合温度10~100℃、重合圧力0.3~2.0MPaGで行うことが好ましい。
ETFEの好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:エチレン=(50~99):(50~1)である。
エチレンおよびTFEに加えて、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を重合することにより、ETFEとして、エチレン、TFEおよび他の単量体の共重合体を得てもよい。他の単量体としては、上述した含フッ素単量体(ただし、TFEを除く)およびフッ素非含有単量体(ただし、エチレンを除く)が挙げられる。他の単量体として、1種または複数種を用いることができる。
他の単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタ-1-エン、2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(CH=CFCFCFCFH)、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン((CFCF=CH)が好ましい。
ETFEにおける他の単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、0~20質量%であってよい。好ましい質量比は、TFE:エチレン:他の単量体=(63~94):(27~2):(1~10)である。
上記ETFEの重合において、重合体(I)は、本開示の製造方法における使用範囲で用いることができるが、通常、水性媒体100質量%に対して0.0001~10質量%の量で添加する。
上記ETFEの重合において、連鎖移動剤として、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等を使用することが好ましい。
本開示の製造方法で得られるETFEの水性分散液を必要に応じて濃縮等の後処理した後、乾燥、粉末にし、次いで溶融押出することによってペレットにしても良い。上記の水性分散液中の水性媒体は、必要に応じて非イオン性界面活性剤などの添加剤を含むものであってもよいが、水溶性アルコール等の水溶性有機溶媒を含むものであってもよいし、水溶性有機溶媒を含まないものであってもよい。
また、溶融押出は、一般にペレット化可能な押出条件であれば、押出条件を適宜設定して行うことができる。
上記ETFEのシートは、押出成形してシートにすることができる。すなわち、ETFE粉末、またはペレットを溶融させ、ダイから連続的に押し出し、冷却して得られるシート状の成形品にすることができる。ETFEには添加剤が添加されていてもよい。
添加剤としては、公知のものを適宜用いることができる。具体例としては、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、赤外線吸収剤、難燃剤、難燃フィラー、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。耐候性が優れる点からは無機系添加剤が好ましい。
上記ETFEのシートにおける添加剤の含有量は、ETFEのシートの総質量に対し、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
上記ETFEのシートは、機械的強度および外観に優れることから、膜構造建築物(運動施設、園芸施設、アトリウム等)用の膜材(屋根材、天井材、外壁材、内壁材、被覆材等)として好適である。
また、膜構造建築物の膜材だけではなく、たとえば、屋外使用板材(防音壁、防風フェンス、越波柵、車庫天蓋、ショッピングモール、歩行路壁、屋根材)、ガラス飛散防止フィルム、耐熱・耐水シート、建材等(テント倉庫のテント材、日よけ用膜材、明かり取り用の部分屋根材、ガラスに替わる窓材、防炎仕切り用膜材、カーテン、外壁補強、防水膜、防煙膜、不燃透明仕切り、道路補強、インテリア(照明、壁面、ブランド等)、エクステリア(テント、看板等)等)、生活レジャー用品(釣りざお、ラケット、ゴルフクラブ、映写幕等)、自動車用材料(幌、制振材、ボディ等)、航空機材料、船舶材料、家電外装、タンク、容器内壁、フィルタ、工事用膜材、電子材料(プリント基板、配線基板、絶縁膜、離型膜等)、太陽電池モジュールの表面材料、太陽熱発電用のミラー保護材、ソーラー温水器の表面材等に有用である。
(4)本開示の製造方法を使用して、電解質ポリマー前駆体を製造することもできる。本開示の製造方法において、電解質ポリマー前駆体の重合は、重合温度10~100℃、重合圧力0.1~2.0MPaGで行うことが好ましい。電解質ポリマー前駆体とは、-SO151、-COZ151又は-POZ152153(X151、Z151、Z152およびZ153は、後述のとおりである)で表される官能基を含有するモノマーからなり、加水分解処理を経てイオン交換性ポリマーに変換しうるものである。
電解質ポリマー前駆体に用いられるモノマーとしては、
一般式(150):CF=CF-O-(CFCFY151-O)-(CFY152-A151
(式中、Y151は、フッ素原子、塩素原子、-SOF基又はパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基は、エーテル性の酸素及び-SOF基を含んでもよい。nは、0~3の整数を表す。n個のY151は、同一であってもよいし異なっていてもよい。Y152は、フッ素原子、塩素原子又は-SOF基を表す。mは、1~5の整数を表す。m個のY152は、同一であってもよいし異なっていてもよい。A151は、-SO151、-COZ151又は-POZ152153を表す。X151は、F、Cl、Br、I、-OR151又は-NR152153を表す。Z151、Z152及びZ153は、同一又は異なって、-NR154155又は-OR156を表す。R151、R152、R153、R154、R155及びR156は、同一又は異なって、H、アンモニウム、アルカリ金属、フッ素原子を含んでも良いアルキル基、アリール基、若しくはスルホニル含有基を表す。)で表される含フッ素単量体を挙げることができる。また、電解質ポリマー前駆体に用いられるモノマーとしては、国際公開第2007/013532号に記載のフルオロスルホニル基を2つ含有する化合物、国際公開第2014/175123号に記載の-SOF基およびジオキソラン環を有するペルフルオロモノマーなども挙げることができる。電解質ポリマー前駆体の好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:ビニルエーテル=(50~99):(50~1)であり、より好ましくは、TFE:ビニルエーテル=(50~93):(50~7)である。
上記電解質ポリマー前駆体は、全単量体の0~20質量%である範囲内で第3モノマーで変性させたものであってもよい。第3モノマーとしては、CTFE、フッ化ビニリデン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロブテニルビニルエーテル;パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、パーフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソール等の環状モノマー;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等を挙げることができる。
このようにして得られた電解質ポリマー前駆体は、例えば膜状に成形した後、アルカリ溶液による加水分解及び、鉱酸による処理を経て、高分子電解質膜として燃料電池や電解装置及びレドックスフロー電池等に使用することができる。
また、電解質ポリマー前駆体の分散状態を維持したまま、アルカリ溶液による加水分解を施すことにより電解質ポリマー分散液を得ることができる。
引き続き、加圧容器内で、120℃以上に加熱することで、例えば、水/アルコール混合溶媒に溶解させ、溶液状態にすることが出来る。
このようにして得られた溶液は、例えば電極のバインダーとして使用したり、種々の添加剤と複合してキャスト製膜し、例えば防汚塗膜や有機アクチュエーター等に使用することができる。
(5)TFE/VDF共重合体
本開示の製造方法において、TFE/VDF共重合体の重合温度としては特に限定されず、0~100℃であってよい。重合圧力は、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0~9.8MPaGであってよい。
TFE/VDF共重合体の好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:VDF=(5~90):(95~10)である。TFE/VDF共重合体としては、また、更に第3モノマーを用い、全単量体の0~50モル%である範囲内で変性させたものであってもよい。好ましくは、TFE:エチレン:第3モノマー=(30~85):(10~69.9):(0.1~10)である。
上記第3モノマーとしては、
式: CX1112=CX13(CX1415n1116
(式中、X11~X16は同一又は異なってH、F又はClを表し、n11は0~8の整数を表す。但し、TFE及びVDFを除く。)で示されるモノマー、又は、
式: CX2122=CX23-O(CX2425n2126
(式中、X21~X26は同一又は異なってH、F又はClを表し、n21は0~8の整数を表す。)で示されるモノマーが好ましい。
また、第3モノマーはフッ素非含有エチレン性単量体でもよい。上記フッ素非含有エチレン性単量体は、耐熱性や耐薬品性を維持する点で、炭素数6以下のエチレン性単量体から選ばれることが好ましい。例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等)、マレイン酸、イタコン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸ビニルスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
TFE/VDF共重合体の重合において、重合体(I)は、本開示の製造方法における使用範囲で用いることができるが、通常、水性媒体100質量%に対して0.0001~5質量%の量で添加する。
TFE/VDF共重合体を、アンモニア水、アンモニアガス又はアンモニアを生成しうる窒素化合物と接触させることによりアミド化処理してもよい。
上述した方法により得たTFE/VDF共重合体は、紡糸延伸方法によりTFE/VDF共重合体繊維を得る原料として使用することも好ましい。上記紡糸延伸方法とは、TFE/VDF共重合体を溶融紡糸してから冷却固化して未延伸糸を得た後、該未延伸糸を加熱筒状体中に走行させて延伸することによりTFE/VDF共重合体繊維を得る方法である。
上記TFE/VDF共重合体を、有機溶剤に溶解させて、上記TFE/VDF共重合体の溶液を得ることもできる。上記有機溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;更に、それらの混合溶剤等の低沸点の汎用有機溶剤を挙げることができる。上記溶液は、電池用結着剤として使用できる。
上記TFE/VDF共重合体の水性分散液をポリオレフィン樹脂からなる多孔性基材上にコーティングし複合多孔膜として使用することも好ましい。水性分散液に無機粒子、及びまたは有機系粒子を分散させ、多孔性基材上にコーティングし複合多孔膜として使用することも好ましい。このようにして得られた複合多孔膜はリチウム二次電池のセパレーターなどの使用することができる。
上記溶融加工性フッ素樹脂の粉末は、粉体塗料として好適に利用できる。上記溶融加工性フッ素樹脂粉末からなる粉体塗料を基材に適用すると、表面が平滑な皮膜を得ることができる。平均粒径が1μm以上100μm未満である溶融加工性フッ素樹脂粉末は、特に静電塗装に使用する粉体塗料として好適であり、平均粒径が100μm以上1000μm以下である溶融加工性フッ素樹脂粉末は、特に回転塗装又は回転成形に使用する粉体塗料として好適である。
上記溶融加工性フッ素樹脂粉末は、上述した本開示の製造方法で得られた溶融加工性フッ素樹脂を乾燥させて粉体化することによって粉末を得る方法により製造できる。上記溶融加工性フッ素樹脂粉末を製造するための製造方法も本開示の一つである。
(III)フッ素ゴム
本開示の製造方法において、上記フッ素ゴムの重合は、攪拌機を備えた耐圧の反応容器に純水及び重合体(I)を仕込み、脱酸素後、モノマーを仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して、反応を開始する。反応の進行とともに圧力が低下するので、初期圧力を維持するように、追加のモノマーを連続的又は間欠的に追加供給する。所定量のモノマーを供給した時点で、供給を停止し、反応容器内のモノマーをパージし、温度を室温に戻して反応を終了する。この場合、ポリマーラテックスを連続的に反応容器より取り出すことができる。
特に、上記フッ素ゴムとして、熱可塑性エラストマーを製造する場合、国際公開第00/01741号に開示されているように、一旦フルオロポリマー微粒子を高い上記濃度で合成してから希釈して更に重合を行うことで、通常の重合に比べて、最終的な重合速度を速くできる方法を使用することも可能である。
上記フッ素ゴムの重合は、目的とするポリマーの物性、重合速度制御の観点から適宜条件を選択するが、重合温度は通常-20~200℃、好ましくは5~150℃、重合圧力は通常0.5~10MPaG、好ましくは1~7MPaGにて行われる。また、重合媒体中のpHは、公知の方法等により、後述するpH調整剤等を用いて、通常2.5~13に維持することが好ましい。
上記フッ素ゴムの重合に用いるモノマーとしては、フッ化ビニリデンの他に、炭素原子と少なくとも同数のフッ素原子を有しフッ化ビニリデンと共重合し得る含フッ素エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。上記含フッ素エチレン性不飽和モノマーとしては、トリフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、へキサフルオロブテン、オクタフルオロブテンが挙げられる。なかでも、へキサフルオロプロペンは、それが重合体の結晶成長を遮断した場合に得られるエラストマーの特性のために特に好適である。上記含フッ素エチレン性不飽和モノマーとしては、また、トリフルオロエチレン、TFE及びCTFE等が挙げられるし、1種若しくは2種以上の塩素及び/又は臭素置換基をもった含フッ素モノマーを用いることもできる。パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)も用いることができる。TFE及びHFPは、フッ素ゴムを製造するのに好ましい。
フッ素ゴムの好ましい単量体組成(質量%)は、フッ化ビニリデン:HFP:TFE=(20~70):(30~48):(0~32)である。この組成のフッ素ゴムは、良好なエラストマー特性、耐薬品性、及び、熱的安定性を示す。
上記フッ素ゴムの重合において、重合体(I)は、本開示の製造方法における使用範囲で用いることができるが、通常、水性媒体100質量%に対して0.0001~20質量%の量で添加する。好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。
上記フッ素ゴムの重合において、重合開始剤としては、公知の無機ラジカル重合開始剤を使用することができる。上記無機ラジカル重合開始剤としては、従来公知の水溶性無機過酸化物、例えば、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムの過硫酸塩、過リン酸塩、過硼酸塩、過炭素塩又は過マンガン酸塩が特に有用である。上記ラジカル重合開始剤は、更に、還元剤、例えば、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、ハイポ亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜リン酸塩若しくはハイポ亜リン酸塩により、又は、容易に酸化される金属化合物、例えば第一鉄塩、第一銅塩若しくは銀塩により、更に活性化することができる。好適な無機ラジカル重合開始剤は、過硫酸アンモニウムであり、過硫酸アンモニウムと重亜硫酸ナトリウムと共にレドックス系において使用することが、より好ましい。
上記重合開始剤の添加濃度は、目的とするフルオロポリマーの分子量や、重合反応速度によって適宜決定されるが、モノマー全量100質量%に対して0.0001~10質量%、好ましくは0.01~5質量%の量に設定する。
上記フッ素ゴムの重合において、連鎖移動剤としては、公知のものを使用することができるが、炭化水素、エステル、エーテル、アルコール、ケトン、塩素化合物、カーボネート等を用いることができ、熱可塑性エラストマーでは、炭化水素、エステル、エーテル、アルコール、塩素化合物、ヨウ素化合物等を用いることができる。なかでも、アセトン、イソプロピルアルコールが好ましく、熱可塑性エラストマーの重合では、イソペンタン、マロン酸ジエチル及び酢酸エチルは、反応速度が低下しにくいという観点から好ましく、I(CFI、I(CFI、ICHI等のジヨウ素化合物は、ポリマー末端のヨウ素化が可能で、反応性ポリマーとして使用できる観点から好ましい。
上記連鎖移動剤の使用量は、供給されるモノマー全量に対して、通常0.5×10-3~5×10-3モル%、好ましくは1.0×10-3~3.5×10-3モル%であることが好ましい。
上記フッ素ゴムの重合において、乳化安定剤としてパラフィンワックス等を好ましく用いることができ、熱可塑性エラストマーの重合では、pH調整剤として、リン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を好ましく用いることができる。
本開示の製造方法によって得られるフッ素ゴムの水性分散液は、重合が終了した時点で、固形分濃度が1.0~40質量%、平均粒子径が0.03~1μm、好ましくは0.05~0.5μm、数平均分子量が1,000~2,000,000のものである。
本開示の製造方法によって得られるフッ素ゴムの水性分散液は、必要に応じて、炭化水素系界面活性剤等の分散安定剤の添加、濃縮等をすることにより、ゴム成形加工に適したディスパージョンにすることができる。上記ディスパージョンは、pH調節、凝固、加熱等を行い処理される。各処理は次のように行われる。
上記pH調節は、硝酸、硫酸、塩酸若しくはリン酸等の鉱酸、及び/又は、炭素数5以下でpK=4.2以下のカルボン酸等を加え、pHを2以下とすることからなる。
上記凝固は、アルカリ土類金属塩を添加することにより行われる。上記アルカリ土類金属塩としては、カルシウム又はマグネシウムの硝酸塩、塩素酸塩及び酢酸塩が挙げられる。
上記pH調節及び上記凝固は、いずれを先に行ってもよいが、先にpH調節を行うことが好ましい。
フッ素ゴムのうち、パーフルオロゴムは、重合体(I)の存在下に、水性媒体中でパーフルオロモノマーを重合することにより、得られる。
パーフルオロモノマーとしては、
テトラフルオロエチレン〔TFE〕、
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、
一般式:CF=CF-ORf13
(式中、Rf13は、炭素数1~8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロモノマー、
一般式:CF=CFOCFORf14
(式中、Rf14は炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状パーフルオロアルキル基、炭素数5~6の環式パーフルオロアルキル基、1~3個の酸素原子を含む炭素数2~6の直鎖状または分岐鎖状パーフルオロオキシアルキル基である)で表されるフルオロモノマー、および、
一般式:CF=CFO(CFCF(Y15)O)(CF
(式中、Y15はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。mは1~4の整数である。nは1~4の整数である。)で表されるフルオロモノマー
からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
また、パーフルオロモノマーの重合においては、パーフルオロモノマーとともに、架橋部位を与えるモノマーを重合させてもよい。
パーフルオロエラストマーの製造方法において用いる重合体(I)は、イオン交換容量が、1.50meq/g以上であることが好ましい。重合体(I)のイオン交換容量としては、より好ましくなる順に、1.50meq/g以上、1.75meq/g以上、2.00meq/g以上、2.40meq/g以上、2.50meq/g以上、2.60meq/g以上、3.00meq/g以上、3.50meq/g以上である。イオン交換容量は、重合体(I)のイオン性基(アニオン性基)の含有量であり、重合体(I)の組成から計算により求められる。加水分解によりイオン性となる前駆体基(たとえば、-COOCH)は、イオン交換容量を決定する目的ではイオン性基と見なされない。重合体(I)のイオン交換容量はより高い方が重合体(I)のアニオン性基が多く、安定性の高い粒子が形成される上、粒子形成力が高いため単位水量当たりの粒子数が多くなり、より高い重合速度となると推測される。重合体(I)のイオン交換容量が低すぎると、重合により生じたパーフルオロエラストマーが重合槽に付着したり、十分な重合速度が得られなかったり、発生するパーフルオロエラストマー粒子の数が少なかったりする。
重合体(I)の添加量は、水性媒体100質量%に対して、0.01~20質量%であることが好ましい。上記重合における重合体(I)の添加量(存在量)を、上記の範囲内とすることによって、パーフルオロモノマーの重合反応が円滑に進行し、パーフルオロエラストマーを効率よく製造することができる。重合体(I)の添加量が少なすぎると、十分な重合速度が得られなかったり、十分な収率が得られなかったりする。
重合体(I)の添加量としては、一層円滑にパーフルオロモノマーの重合反応が進行することから、水性媒体100質量%に対して、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、特に好ましくは0.75質量%以上であり、最も好ましくは1.0質量%以上である。
また、重合体(I)の添加量としては、添加量が多すぎると、添加量に見合った効果が得られず、経済的に不利であり、また、重合終了後の後処理が煩雑になる可能性があることから、水性媒体100質量%に対して、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
重合開始剤の存在下にパーフルオロモノマーの重合を行ってもよい。重合開始剤については、上述したとおりである。重合開始剤の添加量としては、パーフルオロモノマー100質量%に対して、好ましくは0.0001~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%である。上記重合における重合開始剤の添加量(存在量)を、上記の範囲内とすることによって、パーフルオロモノマーの重合反応が円滑に進行し、パーフルオロエラストマーを効率よく製造することができる。重合開始剤の添加量が少なすぎると、十分な重合速度が得られなかったり、十分な収率が得られなかったりする。
パーフルオロモノマーの重合を、pH調整剤の存在下に行ってもよい。pH調整剤の存在下に重合を行うことにより、重合槽へのパーフルオロエラストマーの付着を一層抑制しながら、十分な重合速度で十分な数のパーフルオロエラストマー粒子を発生させることができる。pH調整剤は、重合開始前に添加してもよいし、重合開始後に添加してもよい。
pH調整剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸アンモニウム等を用いることができる。
フッ素ゴムのうち、部分フッ素化ゴムは、重合体(I)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを重合することにより、得られる。
部分フッ素化ゴムを得るためのフルオロモノマーとしては、フッ化ビニリデン(ビニリデンフルオライド)(VdF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル、一般式:CHX=CXRf(式中、XおよびXは、一方がHであり、他方がFであり、Rfは炭素数1~12の直鎖または分岐したフルオロアルキル基)で表される含フッ素単量体(2)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
部分フッ素化ゴムの製造方法においては、フルオロモノマーとして、少なくともビニリデンフルオライドまたはテトラフルオロエチレンを重合することが好ましく、ビニリデンフルオライドを重合することがより好ましい。
重合体(I)の添加量としては、水性媒体100質量%に対して、0.01~20質量%であることが好ましい。上記重合における重合体(I)の添加量(存在量)を、上記の範囲内とすることによって、フルオロモノマーの重合反応が円滑に進行し、部分フッ素化ゴムを効率よく製造することができる。重合体(I)の添加量が少なすぎると、十分な重合速度が得られなかったり、十分な収率が得られなかったりする。
重合体(I)の添加量としては、一層円滑にフルオロモノマーの重合反応が進行することから、水性媒体100質量%に対して、より好ましくは0.0001質量%以上であり、さらに好ましくは0.0005質量%以上であり、尚さらに好ましくは0.001質量%以上であり、特に好ましくは0.005質量%以上であり、最も好ましくは0.01質量%以上である。
また、重合体(I)の添加量としては、添加量が多すぎると、添加量に見合った効果が得られず、経済的に不利であることから、水性媒体100質量%に対して、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下である。
重合開始剤の存在下にフルオロモノマーの重合を行ってもよい。重合開始剤については、上述したとおりである。重合開始剤の量は、単量体の種類、目的とする部分フッ素化ゴムの分子量、反応速度によって適宜決定される。重合開始剤の量は、目的とする部分フッ素化ゴムの分子量や、重合反応速度によって適宜決定されるが、単量体全量100質量%に対して、好ましくは0.00001~10質量%であり、より好ましくは0.0001~1質量%である。
各操作の後、フッ素ゴムと同容量の水で洗浄を行い、フッ素ゴム内に存在する少量の緩衝液や塩等の不純物を除去し、乾燥を行う。乾燥は、通常、乾燥炉内で、高温下、空気を循環させながら、約70~200℃で行われる。
上記フッ素ゴムとしては、部分フッ素化ゴムであってもよいし、パーフルオロゴムであってもよい。
部分フッ素化ゴムは、主鎖にメチレン基(-CH-)を含むことが好ましい。主鎖に-CH-を含む部分フッ素化ゴムとしては、-CH-で表される化学構造を含むものであれば特に限定されず、例えば、-CH-CF-、-CH-CH(CH)-、-CH-CH-、-CH-CF(CF)-等の構造を含む部分フッ素化ゴムが挙げられ、これらは、例えば、ビニリデンフルオライド、プロピレン、エチレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン等を重合することにより、部分フッ素化ゴムの主鎖に導入することができる。部分フッ素化ゴムにおけるテトラフルオロエチレン単位の含有量(部分フッ素化ゴムの全重合単位に対するテトラフルオロエチレンに基づく重合単位の含有量)は、40モル%未満であってよい。
部分フッ素化ゴムとしては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)および一般式:CF=CF-Rf(式中、Rfは-CFまたは-ORf(Rfは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基))で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(たとえばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)など)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体に基づく単量体単位を含有することが好ましい。部分フッ素化ゴムとしては、なかでも、VdF単位またはTFE単位を含有することが好ましい。
部分フッ素化ゴムとしては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム等が挙げられる。なかでも、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム及びテトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムは、ビニリデンフルオライド45~85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー55~15モル%とからなる共重合体であることが好ましい。より好ましくは、ビニリデンフルオライド50~80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマー50~20モル%とからなる共重合体である。
上記ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、フルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、一般式(100):CHX101=CX102Rf101(式中、X101およびX102は、一方がHであり、他方がFであり、Rf101は炭素数1~12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表されるフルオロモノマー、一般式(170):CH=CH-(CF-X171(式中、X171はH又はFであり、nは3~10の整数である。)で表されるフルオロモノマー、架橋部位を与えるモノマー等のモノマー;エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素化モノマーが挙げられる。これらをそれぞれ単独で、又は、任意に組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、TFE、HFP、フルオロアルキルビニルエーテル及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。フルオロアルキルビニルエーテルとしては、一般式(160)で表されるフルオロモノマーが好ましい。
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムの具体例としては、VdF/HFP系ゴム、VdF/HFP/TFE系ゴム、VdF/CTFE系ゴム、VdF/CTFE/TFE系ゴム、VDF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー系ゴム、VDF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴム、VDF/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕系ゴム、VDF/PMVE/TFE系ゴム、VDF/PMVE/TFE/HFP系ゴム等が挙げられる。VDF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー系ゴムとしては、VDF/CH=CFCF系ゴムが好ましく、VDF/一般式(100)で表されるフルオロモノマー/TFE系ゴムとしては、VDF/TFE/CH=CFCF系ゴムが好ましい。
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムとしては、VdF/HFP共重合体またはVdF/HFP/TFE共重合体がより好ましく、VdF/HFP/TFEの組成が(32~85)/(10~34)/(0~40)(モル%)であるものが特に好ましい。VdF/HFP/TFEの組成としては、(32~85)/(15~34)/(0~34)(モル%)がより好ましく、(47~81)/(17~32)/(0~26)(モル%)が更に好ましい。
例えば、上記VdF/HFP共重合体において、VdF/HFPの組成としては、好ましくは(45~85)/(15~55)(モル%)であり、より好ましくは(50~83)/(17~50)(モル%)であり、さらに好ましくは(55~81)/(19~45)(モル%)であり、特に好ましくは(60~80)/(20~40)(モル%)である。
上記VDF/CH=CFCF系ゴムは、VDF40~99.5モル%、及び、CH=CFCF0.5~60モル%からなる共重合体であることが好ましく、VDF50~85モル%、及び、CH=CFCF20~50モル%からなる共重合体であることがより好ましい。
上記テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムは、テトラフルオロエチレン45~70モル%、プロピレン55~30モル%、及び、架橋部位を与えるフルオロモノマー0~5モル%からなる共重合体であることが好ましい。
上記フッ素ゴムは、パーフルオロゴムであってもよい。上記パーフルオロゴムとしては、TFEを含むパーフルオロゴム、例えばTFE/一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー共重合体及びTFE/一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
その組成は、TFE/PMVE共重合体の場合、好ましくは、45~90/10~55(モル%)であり、より好ましくは、55~80/20~45であり、更に好ましくは、55~70/30~45である。
TFE/PMVE/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、45~89.9/10~54.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは、55~77.9/20~49.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは、55~69.8/30~44.8/0.2~3である。
TFE/炭素数が4~12の一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~90/10~50(モル%)であり、より好ましくは、60~88/12~40であり、更に好ましくは、65~85/15~35である。
TFE/炭素数が4~12の一般式(160)、(130)又は(140)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体の場合、好ましくは、50~89.9/10~49.9/0.01~4(モル%)であり、より好ましくは、60~87.9/12~39.9/0.1~3.5であり、更に好ましくは、65~84.8/15~34.8/0.2~3である。
これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
上記パーフルオロゴムとしては、TFE/一般式(140)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるフルオロモノマー共重合体、TFE/一般式(140)で表されるパーフルオロビニルエーテル共重合体、TFE/一般式(160)で表されるフルオロモノマー共重合体、及び、TFE/一般式(160)で表されるフルオロモノマー/架橋部位を与えるモノマー共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記パーフルオロゴムとしては、国際公開第97/24381号、特公昭61-57324号公報、特公平4-81608号公報、特公平5-13961号公報等に記載されているパーフルオロゴムも挙げることができる。
上記フッ素ゴムは、高温における圧縮永久歪みに優れる点から、ガラス転移温度が-70℃以上であることが好ましく、-60℃以上であることがより好ましく、-50℃以上であることが更に好ましい。また、耐寒性が良好であるという点から、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、-3℃以下であることが更に好ましい。
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、140℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、180以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
上記フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、100℃におけるムーニー粘度ML(1+10)が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、80以下であることが更に好ましい。
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製 ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃又は140℃、100℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
本開示の製造方法により得られるフッ素ゴムは、上記重合から得られるものであれば何れの形態にあってもよく、重合上がりの水性分散液であってもよいし、上記重合上がりの水性分散液から従来公知の方法で凝析、乾燥等することにより得られるガム(gum)又はクラム(crumb)として使用することもできる。本開示の製造方法で用いる重合体(I)は水性分散液の安定性を向上させることが可能であり、上記のように重合途中で有機パーオキサイドのような開始剤、ヨウ素または臭素化合物のような連鎖移動剤など難水溶性物質を添加する重合方法においてより好ましく使用される。
上記ガム(gum)は、フッ素ゴムからなる粒状の小さな塊であり、上記クラム(crumb)とは、フッ素ゴムが、室温でガムとして小粒状の形を保つことができず互いに融着した結果、不定形な塊状の形態となったものである。
上記フッ素ゴムは、硬化剤、充填剤等を加え、フッ素ゴム組成物に加工することができる。
上記硬化剤としては、ポリオール、ポリアミン、有機過酸化物、有機スズ、ビス(アミノフェノール)テトラアミン、又は、ビス(チオアミノフェノール)等が挙げられる。
上記フッ素ゴム組成物は、上述のフッ素ゴムからなるものであるので、乳化剤を実質的に含有せず、成形加工時に架橋し易い点で優れている。
上記フッ素ゴムを用いて成形加工することによりフッ素ゴム成形体を得ることができる。上記成形加工する方法としては、特に限定されず、上述の硬化剤を用いて行う公知の方法が挙げられる。成形方法としては、圧縮成形法、注入成形法、インジェクション成形法、押出し成形法、ロートキュアーによる成形法などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
フッ素ゴム組成物が硬化剤(架橋剤)を含有する場合、フッ素ゴム組成物を架橋することにより、フッ素ゴム成形体として、架橋物を得ることができる。架橋方法としては、スチーム架橋法、加熱による架橋法、放射線架橋法等が採用でき、なかでも、スチーム架橋法、加熱による架橋法が好ましい。限定されない具体的な架橋条件としては、通常、140~250℃の温度範囲、1分間~24時間の架橋時間内で、架橋促進剤、架橋剤および受酸剤などの種類により適宜決めればよい。
上記フッ素ゴム成形体は、シール、ガスケット、電線被覆、ホース、チューブ、積層体、アクセサリー等として好適であり、特に半導体製造装置用部品、自動車部品、等に好適である。
本開示の製造方法において、フルオロポリマーの凝析、洗浄、乾燥などを行った場合は、排水やオフガスが発生する。上記凝析、又は、洗浄により発生した排水、及び/又は、乾燥により発生するオフガスから、上記重合体(I)、上記重合体(I)から副生する上記重合体(I)の分解物や副生成物、残留モノマー等を回収し、精製することにより、上記重合体(I)、上記重合体(I)から副生する上記重合体(I)の分解物や副生成物、残留モノマー等を再利用してもよい。上記回収、及び、精製を行う方法としては特に限定されるものではないが、公知の方法により行うことができる。例えば、特表2011-520020号公報に記載の方法により、米国特許出願公開第2007/15937号明細書、米国特許出願公開第2007/25902号明細書、米国特許出願公開第2007/27251号明細書に記載の方法が挙げられ、具体的には以下の方法が挙げられる。
上記排水から重合体(I)、上記重合体(I)から副生する上記重合体(I)の分解物や副生成物、残留モノマー等を回収する方法としては、排水にイオン交換樹脂、活性炭、シリカゲル、クレイ、ゼオライト等の吸着粒子を接触させて上記重合体(I)等を吸着させた後、排水と吸着粒子とを分離する方法が挙げられる。上記重合体(I)等を吸着した吸着粒子を焼却すれば、上記重合体(I)等の環境への放出を防ぐことができる。
また、上記重合体(I)等を吸着したイオン交換樹脂粒子から公知の方法により上記重合体(I)等を脱離・溶出させて回収することもできる。例えば、イオン交換樹脂粒子が陰イオン交換樹脂粒子である場合、鉱酸を陰イオン交換樹脂に接触させるにより重合体(I)等を溶出させることができる。続いて得られる溶出液に水溶性有機溶媒を添加すると通常2相に分離するので、重合体(I)等を含む下相を回収して中和することにより、重合体(I)等を回収できる。上記水溶性有機溶媒としては、アルコール、ケトン、エーテル等の極性溶媒が挙げられる。
上記重合体(I)等をイオン交換樹脂粒子から回収する別の方法としては、アンモニウム塩と水溶性有機溶媒を使用する方法、アルコールと所望により酸とを使用する方法が挙げられる。後者の方法では重合体(I)等のエステル誘導体が生成するので、蒸留することによりアルコールと容易に分離できる。
上記排水にフルオロポリマー粒子や他の固形分が含まれる場合、排水と吸着粒子とを接触させる前にこれらを除去しておくことが好ましい。フルオロポリマー粒子や他の固形分を除去する方法としては、アルミニウム塩等を添加することによりこれらを沈殿させた後、排水と沈殿物とを分離させる方法、電気凝固法等が挙げられる。また、機械的な方法により除去してもよく、例えば、交差流ろ過法、深層ろ過法、プレコートろ過法が挙げられる。
上記排水中の未凝集の上記フルオロポリマー濃度は、生産性の観点から低いことが好ましく、0.4質量%未満がより好ましく、0.3質量%未満が特に好ましい。
上記オフガスから重合体(I)等を回収する方法としては、スクラバーを使用して、脱イオン水、アルカリ水溶液、グリコールエーテル溶媒等の有機溶媒等と接触させて、重合体(I)等を含むスクラバー溶液を得る方法が挙げられる。アルカリ水溶液として高濃度アルカリ水溶液を使用すると、重合体(I)等が相分離した状態でスクラバー溶液が回収できるので、重合体(I)等の回収と再利用が容易である。アルカリ化合物としてはアルカリ金属水酸化物、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
上記重合体(I)等を含むスクラバー溶液を逆浸透膜等を使用して濃縮してもよい。濃縮したスクラバー溶液は通常フッ素イオンを含むが、濃縮後更にアルミナを添加して該フッ素イオンを除去することにより、上記重合体(I)等の再利用を容易にすることもできる。また、スクラバー溶液に吸着粒子を接触させて重合体(I)等を吸着させて、上述した方法により重合体(I)等を回収してもよい。
上記のいずれかの方法により回収した重合体(I)等は、フルオロポリマーの製造に再利用することができる。
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
<水性分散液中のPTFE固形分濃度(含有量)>
水性分散液中のPTFE固形分濃度(P質量%)は、試料約1g(Xg)を直径5cmのアルミカップにとり、110℃にて30分で加熱した加熱残分(Yg)、更に、得られた加熱残分(Yg)を300℃にて30分加熱した加熱残分(Zg)より、式:P=[Z/X]×100(質量%)から算出した。
<非イオン性界面活性剤の含有量>
水性分散液中の非イオン性界面活性剤のPTFEに対する含有量(N質量%)は、試料約1g(Xg)を直径5cmのアルミカップにとり、110℃にて30分で加熱した加熱残分(Yg)、更に、得られた加熱残分(Yg)を300℃にて30分加熱した加熱残分(Zg)より、式:N=[(Y-Z)/Z]×100(質量%)から算出した。
<PTFE水性分散液中の重合体(I)の含有量>
各製造例で得られたPTFE水性分散液中の重合体(I)のPTFEに対する含有量(T質量%)は、製造例で反応器内に加えた水の質量、重合体(I)の質量、および得られたPTFE水性分散液中のPTFE固形分濃度から、下記式を用いて算出した。
=W/[(W×P/100)/(1-P/100)]×100(質量%)
(g):反応器内に加えた水の質量
(g):反応器内に加えた重合体(I)の質量
(質量%):PTFE水性分散液中のPTFE固形分濃度
<標準比重(SSG)>
ASTM D 4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定した。
<粉末中の重合体(I)の含有量>
PTFE粉末中に含まれる重合体(I)の含有量(質量%)は、固体19F-MAS NMR測定により得られたスペクトルから、下記式を用いて求めた。
Y=(4B/(5A+3B))×100
Y:重合体(I)の含有量(mol%)
A:-120ppmのシグナルの積分値
B:-83ppmのCFおよびCFシグナルの積分値の合計
ケミカルシフト値はPTFEの主鎖由来のシグナルのピークトップを-120ppmとした際のものを用いた。
<上澄相中の重合体(I)の含有量>
上澄相に所定量のトリフルオロ酢酸ナトリウムを加え、19F NMR測定を行なった。トリフルオロ酢酸ナトリウムおよび重合体(I)のピーク面積値から、上澄相の重合体(I)の含有量(T質量%)を求めた。
<PTFE水性分散液中の重合体(I)の含有量>
PTFE水性分散液中の重合体(I)のPTFEに対する含有量(T質量%)は、以下の式により求めた。
=T-W×T/W
(質量%):各製造例で得られたPTFE水性分散液中の重合体(I)のPTFEに対する含有量
(質量%):上澄相中の重合体(I)Dの含有量
(g) :上澄相の質量
(g) :濃縮前の水性分散液中のPTFEの質量
(即ち濃縮相中のPTFEの質量)
<粘度>
B型回転粘度計(東機産業社製、ローターNo.1)を用い、回転数60rpm、測定時間120秒の条件で、25℃における粘度を測定した。
<色調>
特開平8-269285号公報に記載の方法に準拠して、ガラス繊維(サカイ産業社製ATE11100、104.7g/m)にPTFE水性分散液を含浸させ、乾燥し、380℃で3分間焼成した。含浸、乾燥、焼成を繰り返し、PTFEを70~80質量%の割合で含有するファブリック(含浸繊維)を得た。得られた含浸繊維の色調(L、a、b)を、日本電色工業(株)製のcolor meter ZE6000を用いて、JIS Z 8781-4:2013に準拠した測定方法に基づき、測定した。
実施例で用いた界面活性剤は、次のとおりである。
界面活性剤(a):ポリオキシエチレンアルキルエーテル C1327-O-(CO)-H(曇点60℃)
界面活性剤(b):ラウリル硫酸アンモニウム(ウィルヘルミー法で測定された0.1%水溶液の25℃の表面張力:25mN/m)
界面活性剤(c):ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル C1225-O-(CO)-H(曇点65℃)
界面活性剤(d):ラウリル硫酸ナトリウム(ウィルヘルミー法で測定された0.1%水溶液の25℃の表面張力:25mN/m)
界面活性剤(e):デカン酸アンモニウム(ウィルヘルミー法で測定された0.1%水溶液の25℃の表面張力:30mN/m)
界面活性剤(f):ポリオキシエチレントリデシルアルコール C1327-O-(CO)-H(曇点>100℃)
実施例で用いた重合体(I)は、次のとおりである。
重合体D: 式:CH=CF(CFOCFCFCOOH)で表される単量体Dの単独重合体(数平均分子量14.0×10、重量平均分子量18.0×10
重合体H: 式:CH=CF(CFOCFCFCOOH)で表される単量体Dの単独重合体(数平均分子量12.2×10、重量平均分子量46.0×10
数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、東ソー社製のGPC HLC-8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF-801を1本、GPC KF-802を1本、GPC KF-806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定し、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出した。
製造例1
内容量6Lの撹拌機付きSUS製反応器に、3448gの脱イオン水、180gのパラフィンワックス、重合体Dの5.0質量%水溶液を103g入れた。アンモニア水を加えてpHを8.7に調整した。次いで反応器の内容物を70℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFEでパージして反応器内の酸素を除き、内容物を撹拌した。反応器中に2.4gのHFPを加え、0.01gのイソプロピルアルコールを入れた後、0.73MPaGの圧力となるまでTFEを加えた。20gの脱イオン水に溶解した25.1mgの過硫酸アンモニウム(APS)と537mgのジコハク酸パーオキサイド(DSP)を加えて、反応器を0.83MPaGの圧力にした。反応器内に加えた水の総量は3580gである。開始剤の注入後に圧力の低下が起こり重合の開始が観測された。反応器にTFEを加えて圧力を0.78MPaG一定となるように保った。反応で消費したTFEが約180gに達した時点でTFEの供給と撹拌を停止した。続いて反応器の圧力が0.02MPaGに達するまで反応器内のガスをゆっくりと放出した。その後、反応器の圧力が0.78MPaGになるまでTFEを供給し、再び撹拌を開始して引き続き反応を行った。反応で消費したTFEが約1470gに達した時点でTFEの供給を止め、撹拌を停止して反応を終了した。その後に、反応器内の圧力が常圧になるまで排気し、内容物を反応器から取り出して冷却した。上澄みのパラフィンワックスを取り除いて、PTFE水性分散液Aを得た。
PTFE水性分散液Aの固形分濃度は29.1質量%であった。PTFE水性分散液A中の重合体DのPTFEに対する含有量は、0.35質量%であった。
PTFE水性分散液Aを脱イオン水で固形分濃度が約10質量%となるように希釈し、高速撹拌条件下で凝固させ、得られた湿潤粉末を210℃で18時間乾燥した。得られたPTFE粉末のSSGは2.201、重合体Dの含有量は0.35質量%であった。
実施例1
PTFE水性分散液Aに、PTFE100質量部に対して界面活性剤(a)を15質量部、および界面活性剤(b)を0.015質量部になるように加えた後、さらに固形分濃度が25%となるように水を加え、蓋付き試験管に入れた。試験管を62℃の恒温水槽で加温した。試験管の内容物が62℃に到達したことを確認し、静置して濃縮を開始したところ、相分離が起こり始めた(上澄相と濃縮相にわかれた)。濃縮開始90分後のPTFEが含まれる濃縮相の固形分濃度は57質量%であり、濃縮相の固形分濃度が60質量%を超えるのに要した時間は120分であった。尚、濃縮途中の濃縮相の固形分濃度は、上澄相と濃縮相の液位から換算した値である。濃縮開始300分後に加温を終了し、上澄相と濃縮相を回収し、それぞれ上澄相1とPTFE水性分散液1を得た。得られたPTFE水性分散液1の固形分濃度は66質量%、界面活性剤(a)の含有量はPTFEに対して3.6質量%であった。また、得られた上澄相1中の重合体Dの含有量は上澄相に対して0.12質量%であった。さらに、得られたPTFE水性分散液1中の重合体Dの含有量はPTFEに対して0.06質量%(600質量ppm)であった。また、水性分散液1に対して400質量ppmであった。
実施例2
界面活性剤(b)の添加量を0.015質量部から0.035質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にした。濃縮開始90分後の濃縮相の固形分濃度は56質量%であり、濃縮相の固形分濃度が60質量%を超えるのに要した時間は180分であった。濃縮開始300分後に加温を終了し、上澄相と濃縮相を回収し、それぞれ上澄相2とPTFE水性分散液2を得た。得られたPTFE水性分散液2の固形分濃度は65質量%、界面活性剤(a)の含有量はPTFEに対して3.2質量%であった。
実施例3
界面活性剤(b)の添加量を0.015質量部から0.100質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にした。濃縮開始90分後の濃縮相の固形分濃度は59質量%であり、濃縮相の固形分濃度が60質量%を超えるのに要した時間は180分であった。濃縮開始300分後に加温を終了し、上澄相と濃縮相を回収し、それぞれ上澄相3とPTFE水性分散液3を得た。得られたPTFE水性分散液3の固形分濃度は65質量%、界面活性剤(a)の含有量はPTFEに対して2.9質量%であった。
比較例1
界面活性剤(b)を加えないこと以外は実施例1と同様にした。濃縮開始90分後の濃縮相の固形分濃度は40質量%であり、濃縮相の固形分濃度が60質量%を超えるのに要した時間は240分であった。濃縮開始300分後の濃縮相の固形分濃度は62質量%であったため、そのまま加温を600分まで継続し、上澄相と濃縮相を回収し、上澄相CとPTFE水性分散液Cを得た。得られたPTFE水性分散液Cの固形分濃度は62質量%、界面活性剤(a)の含有量はPTFEに対して3.5質量%であった。また、得られた上澄相C中の重合体Dの含有量は上澄相に対して0.10質量%であった。さらに、得られたPTFE水性分散液C中の重合体Dの含有量はPTFEに対して0.12質量%(1200質量ppm)であった。また、水性分散液Cに対して740質量ppmであった。
このことから、フッ素非含有アニオン性界面活性剤を添加することで、濃縮速度が向上し、到達した固形分濃度が高くなった。
PTFE水性分散液Cに、界面活性剤(a)をPTFEに対して5.5質量%となるように追加し、さらに界面活性剤(b)をPTFEに対して2000質量ppm添加し、さらに脱イオン水およびアンモニア水を加えて、PTFE水性分散液C-1を得た。
PTFE水性分散液C-1は、固形分濃度が60.0質量%、界面活性剤(a)の含有量がPTFEに対し5.5質量%であった。
PTFE水性分散液C-1の25℃の粘度は36.1mPa・s、ガラス繊維に含浸し380℃で焼成することにより得られた、PTFE含有量が301g/m(含浸繊維に対してPTFE含有量が74.2質量%)である含浸繊維の色調は、Lが72.6、aが1.1、bが11.6であった。
製造例2
重合体Dの5.0質量%水溶液103gを、重合体Hの5.0質量%水溶液70gに、0.01gのイソプロピルアルコールの代わりに0.001gの界面活性剤(f)に、25.1mgの過硫酸アンモニウム(APS)を32.2mgに、反応で消費したTFEが約1470gを約1540gに変更した以外は、製造例1と同様に重合を行ない、PTFE水性分散液Bを得た。
PTFE水性分散液Bの固形分濃度は30.0質量%であった。PTFE水性分散液B中の重合体HのPTFEに対する含有量は、0.23質量%であった。
製造例1と同様にPTFE水性分散液Bを凝固、乾燥した。得られたPTFE粉末のSSGは2.201、重合体Hの含有量は0.23質量%であった。
実施例4
PTFE水性分散液Aの代わりにPTFE水性分散液Bを用いたこと以外は、実施例1と同様に濃縮を行なった。濃縮開始40分後のPTFEが含まれる濃縮相の固形分濃度は54質量%であり、濃縮相の固形分濃度が60質量%を超えるのに要した時間は50分であった。濃縮開始240分後に加温を終了し、上澄相と濃縮相を回収し、それぞれ上澄相4とPTFE水性分散液4を得た。得られたPTFE水性分散液4の固形分濃度は68質量%、界面活性剤(a)の含有量はPTFEに対して3.2質量%であった。また、得られた上澄相4中の重合体Hの含有量は上澄相に対して0.07質量%であった。さらに、得られたPTFE水性分散液4中の重合体Hの含有量はPTFEに対して0.05質量%(500質量ppm)であった。また、PTFE水性分散液4に対して340質量ppmであった。
PTFE水性分散液4に、界面活性剤(a)をPTFEに対して5.5質量%となるように追加し、さらにデカン酸をPTFEに対して1500質量ppm添加し、さらに脱イオン水およびアンモニア水を加えて、PTFE水性分散液4-1を得た。
PTFE水性分散液4-1は、固形分濃度が60.0質量%、界面活性剤(a)の含有量がPTFEに対し5.7質量%であった。
PTFE水性分散液4-1の25℃の粘度は30.7mPa・s、ガラス繊維に含浸し380℃で焼成することにより得られた、PTFE含有量が314g/m(含浸繊維に対してPTFE含有量が75.0質量%)である含浸繊維の色調は、Lが77.3、aが0.1、bが5.7であった。
PTFE水性分散液4-1の試料を約5g秤量し、メタノールを10ml加え、円筒ろ紙に試料を流しいれ、抽出溶媒としてメタノールが全量で100mlになるようソックスレー抽出を行った。得られた抽出液は、適宜窒素パージで濃縮し、抽出液を得た。得られた抽出液をLC/MS測定を行なった。なお、測定における検出下限は、5質量ppbであった。以下の式で表される全ての化合物を含む含フッ素界面活性剤および単量体Dは、検出されなかった。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、
Figure 0007644392000031
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)
実施例5
界面活性剤(b)の添加量を0.015質量部から0.005質量部に変更したこと以外は実施例4と同様に濃縮した。濃縮相の固形分濃度が60質量%を超えるのに要した時間は90分であった。
実施例6
界面活性剤(b)を界面活性剤(d)に変更したこと以外は実施例4と同様に濃縮した。濃縮相の固形分濃度が60質量%を超えるのに要した時間は40分であった。濃縮開始240分後に加温を終了し、上澄相と濃縮相を回収し、それぞれ上澄相5とPTFE水性分散液5を得た。得られたPTFE水性分散液5の固形分濃度は67質量%、界面活性剤(a)の含有量はPTFEに対して2.8質量%であった。
実施例7
界面活性剤(b)0.015質量部の添加を、界面活性剤(e)0.010質量部の添加に変更したこと以外は実施例4と同様にした。濃縮開始40分後のPTFEが含まれる濃縮相の固形分濃度は44質量%であり、濃縮相の固形分濃度が60質量%を超えるのに要した時間は90分であった。濃縮開始240分後に加温を終了し、上澄相と濃縮相を回収し、それぞれ上澄相6とPTFE水性分散液6を得た。得られたPTFE水性分散液6の固形分濃度は67質量%、界面活性剤(a)の含有量はPTFEに対して2.9質量%であった。
実施例8
界面活性剤(a)を界面活性剤(c)に変更し、界面活性剤(b)の添加量を0.005質量部から0.010質量部に変更したこと以外は実施例4と同様に濃縮した。濃縮相の固形分濃度が60質量%を超えるのに要した時間は20分であった。濃縮開始60分後に加温を終了し、上澄相と濃縮相を回収し、それぞれ上澄相7とPTFE水性分散液7を得た。得られたPTFE水性分散液7の固形分濃度は67質量%、界面活性剤(c)の含有量はPTFEに対して3.3質量%であった。
比較例2
界面活性剤(b)を加えないこと以外は実施例4と同様に濃縮した。濃縮開始40分後の濃縮相の固形分濃度は41質量%であり、濃縮相の固形分濃度が60質量%を超えるのに要した時間は105分であった。濃縮開始240分後に加温を終了し、上澄相と濃縮相を回収し、それぞれ上澄相EとPTFE水性分散液Eを得た。得られたPTFE水性分散液Eの固形分濃度は66質量%、界面活性剤(a)の含有量はPTFEに対して3.5質量%であった。

Claims (11)

  1. 一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含む重合体(I)、フルオロポリマー(ただし、重合体(I)を除く)、非イオン性界面活性剤、フッ素非含有アニオン性界面活性剤および水性媒体を含有する組成物の濃縮を行うことにより、前記フルオロポリマーを含有する水性分散液を得るフルオロポリマー水性分散液の製造方法であって、重合体(I)の数平均分子量が、0.3×10以上である製造方法。
    CX=CXR(-CZ-A (I)
    (式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
  2. 前記組成物中の前記フッ素非含有アニオン性界面活性剤の含有量が、前記フルオロポリマーに対して、10~10000質量ppmである請求項1に記載の製造方法。
  3. 0.1質量%の前記フッ素非含有アニオン性界面活性剤を含有する水溶液について25℃で測定する表面張力が、60mN/m以下である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記組成物中の前記非イオン性界面活性剤の含有量が、前記フルオロポリマーに対して、1.0~40質量%である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記非イオン性界面活性剤が、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤、および、一般式(ii)で表される非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
    -O-A-H (i)
    (式中、Rは、炭素数8~18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1級又は2級アルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)
    -C-O-A-H (ii)
    (式中、Rは、炭素数4~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、Aは、オキシエチレン基の平均繰り返し数5~20より構成されるポリオキシエチレン鎖である。)
  6. 前記組成物のpHが、4.0~11.5である請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記水性分散液中の前記フルオロポリマーの含有量が、前記水性分散液に対して、50質量%以上である請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 重合体(I)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを重合することにより、前記フルオロポリマー、重合体(I)および水性媒体を含有する重合分散液を得た後、
    前記重合分散液、前記非イオン性界面活性剤および前記フッ素非含有アニオン性界面活性剤を混合することにより、前記組成物を得る請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 実質的に、含フッ素界面活性剤の非存在下に、フルオロモノマーを重合するものであって、
    前記含フッ素界面活性剤が、アニオン性部分の分子量が800以下のフッ素を含むアニオン性含フッ素界面活性剤である請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記重合分散液および前記組成物を、陰イオン交換樹脂および陽イオン交換樹脂のいずれにも接触させることなく、前記濃縮に供する請求項9または10に記載の製造方法。
JP2023505634A 2021-03-10 2022-03-10 フルオロポリマー水性分散液の製造方法 Active JP7644392B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021038770 2021-03-10
JP2021038770 2021-03-10
PCT/JP2022/010629 WO2022191286A1 (ja) 2021-03-10 2022-03-10 フルオロポリマー水性分散液の製造方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JPWO2022191286A1 JPWO2022191286A1 (ja) 2022-09-15
JPWO2022191286A5 JPWO2022191286A5 (ja) 2023-11-27
JP7644392B2 true JP7644392B2 (ja) 2025-03-12

Family

ID=83228083

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023505634A Active JP7644392B2 (ja) 2021-03-10 2022-03-10 フルオロポリマー水性分散液の製造方法

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20230416421A1 (ja)
JP (1) JP7644392B2 (ja)
CN (1) CN116940604A (ja)
WO (1) WO2022191286A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116199905B (zh) * 2022-11-11 2024-05-14 中昊晨光化工研究院有限公司 一种聚四氟乙烯浓缩分散液
WO2024248144A1 (ja) * 2023-05-31 2024-12-05 ダイキン工業株式会社 フルオロポリマー水性分散液の製造方法およびフルオロポリマー水性分散液
JP2025027470A (ja) * 2023-08-14 2025-02-27 ダイキン工業株式会社 フルオロポリマー水性分散液の製造方法およびフルオロポリマー水性分散液

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005501956A (ja) 2001-09-05 2005-01-20 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 低分子量フッ素化界面活性剤を全くまたは殆ど含まないフルオロポリマー分散
WO2006077737A1 (ja) 2004-12-28 2006-07-27 Daikin Industries, Ltd. 含フッ素ポリマー水性分散液製造方法
JP2008031446A (ja) 2006-06-29 2008-02-14 Daikin Ind Ltd フッ素樹脂水性分散液の製造方法
JP2008545873A (ja) 2005-06-10 2008-12-18 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 乳化剤としての部分フッ素化されたオリゴマーの存在下におけるフッ素化モノマーの水性エマルション重合
WO2019168183A1 (ja) 2018-03-01 2019-09-06 ダイキン工業株式会社 フルオロポリマーの製造方法
JP2020510737A (ja) 2017-03-17 2020-04-09 ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー. フルオロポリマーの製造方法
WO2020218620A1 (ja) 2019-04-26 2020-10-29 ダイキン工業株式会社 フルオロポリマー水性分散液の製造方法、排水の処理方法、及び、フルオロポリマー水性分散液

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005501956A (ja) 2001-09-05 2005-01-20 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 低分子量フッ素化界面活性剤を全くまたは殆ど含まないフルオロポリマー分散
WO2006077737A1 (ja) 2004-12-28 2006-07-27 Daikin Industries, Ltd. 含フッ素ポリマー水性分散液製造方法
JP2008545873A (ja) 2005-06-10 2008-12-18 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 乳化剤としての部分フッ素化されたオリゴマーの存在下におけるフッ素化モノマーの水性エマルション重合
JP2008031446A (ja) 2006-06-29 2008-02-14 Daikin Ind Ltd フッ素樹脂水性分散液の製造方法
JP2020510737A (ja) 2017-03-17 2020-04-09 ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー. フルオロポリマーの製造方法
WO2019168183A1 (ja) 2018-03-01 2019-09-06 ダイキン工業株式会社 フルオロポリマーの製造方法
WO2020218620A1 (ja) 2019-04-26 2020-10-29 ダイキン工業株式会社 フルオロポリマー水性分散液の製造方法、排水の処理方法、及び、フルオロポリマー水性分散液

Also Published As

Publication number Publication date
US20230416421A1 (en) 2023-12-28
WO2022191286A1 (ja) 2022-09-15
CN116940604A (zh) 2023-10-24
JPWO2022191286A1 (ja) 2022-09-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7623608B2 (ja) フルオロポリマーの製造方法
JP7522375B2 (ja) フルオロポリマーの製造方法、ポリテトラフルオロエチレンの製造方法、パーフルオロエラストマーの製造方法および組成物
JP7617462B2 (ja) フルオロポリマー水性分散液の製造方法、排水の処理方法、及び、フルオロポリマー水性分散液
JP7644392B2 (ja) フルオロポリマー水性分散液の製造方法
JP7560758B2 (ja) フルオロポリマーの製造方法、ポリテトラフルオロエチレン組成物及びポリテトラフルオロエチレン粉末
JP7492153B2 (ja) フルオロポリマーの製造方法
JP7360058B2 (ja) フルオロポリマーの製造方法
JP7518435B2 (ja) フルオロポリマー水性分散液の製造方法及びフルオロポリマー水性分散液
US20240141155A1 (en) Production method of fluoropolymer composition and fluoropolymer composition
EP3750924A1 (en) Method for manufacturing fluoropolymer, surfactant for polymerization, use for surfactant, and composition
JP2023085494A (ja) フルオロポリマー粉末の製造方法
JP7564452B2 (ja) フルオロポリマー水性分散液の製造方法
JP7648942B2 (ja) フッ素樹脂の製造方法、フッ素樹脂および水性分散液
RU2831039C2 (ru) Способ производства фторполимера, фторполимер и жидкая водная дисперсия
EP4497762A1 (en) Method for producing fluoropolymer, and composition
WO2024248144A1 (ja) フルオロポリマー水性分散液の製造方法およびフルオロポリマー水性分散液
WO2023210819A1 (ja) フルオロポリマーの製造方法
WO2023210820A1 (ja) フッ素樹脂を含有する組成物の製造方法およびフッ素樹脂を含有する組成物
WO2023277140A1 (ja) 高純度フルオロポリマー含有組成物の製造方法および高純度フルオロポリマー含有組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230901

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230901

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240903

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20241105

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20250128

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20250210

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7644392

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150