以下、本開示の第1実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態の壁掛け便器の固定構造1は、例えば集合住宅のトイレルーム100に設置されている。トイレルーム100は、建築躯体の一部であり、略直方形の空間で、長手方向がトイレルーム100の手前側の入口(図示省略)と入口に対向する奥側の背面壁101とを結ぶ前後方向D1に沿っている。本明細書において、前とは入り口側、すなわち背面壁101に対向する側を言い、後ろとは、背面壁101側を言う。上下方向D3は天地方向であり、幅方向D2はトイレルーム100の左右の側面壁102を結ぶ横方向を意味する。
トイレルーム100は、奥側の背面壁101と、背面壁101における幅方向D2の一方と他方の一対の側面壁102と、出入口用の扉が設けられた前壁(図示省略)と、床面103とを備えて構成されている。集合住宅では、背面壁101及び側面壁102は、石膏ボード等で構成されている場合が多い。図2Aに示すように、背面壁101及び側面壁102の内部には、柱材の間柱104が配置されている。図2B及び図2Cに示すように、背面壁101及び側面壁102の下方には、床面103に沿って巾木105が配置されている。
トイレルーム100では、図1に示すように、奥側の背面壁101と一体にトイレ用のキャビネット3が設けられ、キャビネット3の前パネル31から壁掛け式便器2が片持ち状態で前方に突き出すように設けられている。図1及び図2Aに示すように、壁掛け式便器2の固定構造1は、壁掛け式便器2と、支持部材4と、背面補強材5と、側面補強材6と、固定部材7と、キャビネット3と、を有する。
壁掛け式便器2は、図2A~図2Cに示すように、便器本体21と、便座22及び便蓋23と、給水部24と、排水管25と、フレーム部26と、を有する。
便器本体21は、上部が開口した凹状の容器であり、床面103から離れた位置に浮いた状態で設置される。便器本体21は、底部に汚物等を排出する排水口を備えて形成され、排水口が排水トラップを通じて便器本体21の背面側の下水管に接続されている(図示省略)。
便座22は、便器本体21の上に配置され、使用者が着座する部材である。便蓋23は、便器本体21の上部開口を覆う蓋材である。便座22及び便蓋23は、それぞれ便器本体21の後方側に配されたヒンジ部で回転可能に接続され、開閉可能に設けられている。
給水部24は、図2Bに示すように、タンク241及び給水管242を有する。タンク241には外部の給水源から水が供給されて貯水される。タンク241に貯水された洗浄水は、給水管242を通じて便器本体21へ供給される。
排水管25は、便器本体21の背面側に設けられる排水口に接続される。排水管25は、床面103の下方内部の下水管に接続される。
フレーム部26は、図1に示すように、便器本体21の後端側を接続して便器本体21を片持ち状態で支持するとともにタンク241を支持する。フレーム部26は、縦桟261と、上桟262と、下桟263と、タンク支持部材264と、連結部265と、を有する。
縦桟261は、便器本体21の幅方向D2に一方及び他方に所定の間隔をあけて一対、床面103から立設される。上桟262は、一対の縦桟261の上端に、幅方向D2に延びるように配置される。下桟263は、上桟262から間をあけて下方に配置され、一端を一方の縦桟261に、他端を他方の縦桟261に接続される。タンク支持部材264は、上桟262と下桟263の間で一対の縦桟261の間に幅方向D2に延びるように取り付けられる板材である。タンク支持部材264は、図2Bに示すように、縦桟261の背面から後方へ突出し、タンク支持部材264の上に、タンク241が取り付けられる。連結部265は、上桟262及び後述する支持部材4を連結する棒であり、前後方向D1に延びる。
支持部材4は、壁掛け式便器2の背面に配置される。支持部材4は、背面壁101の室内側面に配置され、壁掛け式便器2と背面壁101とを接続する部材の一つである。支持部材4は、幅方向D2に延びる横長の板で構成される。支持部材4は、フレーム部26の上桟262に連結部265を介して接続される。支持部材4は、連結部265を通じてフレーム部26及びフレーム部26にかかる便器本体21の荷重を受け、壁掛け式便器2を支持する。支持部材4の材質は、木材や、スチール等の金属を例示できる。
背面補強材5は、支持部材4の背面にある背面壁101に固定される板材である。図2Cに示すように、背面補強材5は、支持部材4よりも大きい略四角形の板で構成され、背面壁101に沿った面状の形状を有する。背面補強材5の上端は、支持部材4及びフレーム部26の上端よりやや上方に位置し、下端は巾木105の上端と接して配置される。背面補強材5の幅は、一対の側面壁102の一方から他方まで延びる長さを有する。背面補強材5は、例えば木材であってよい。背面補強材5は、背面壁の内部に間柱104がある位置においては、間柱104にビスで接続され、間柱104のない位置では、プラスチックプラグ等により接続される。背面補強材5の表面に支持部材4が固定されることで、背面補強材5が支持部材4を補強し、壁掛け式便器2の荷重を、支持部材4とともに背面補強材5が受ける。
側面補強材6は、背面補強材5の幅方向D2の両側から壁掛け式便器2の側面側に延び、側面壁102に固定される板材である。側面補強材6は、側面壁102に沿った面状の形状を有する。側面補強材6は、一対の側面壁102に沿って互いに対向して一対配置される。側面補強材6の幅は、後述するキャビネット3の前後方向D1の長さと同程度である。より詳細には、側面補強材6の前方側の端部は、図2Aに示すように、後述するキャビネット3の前パネル31よりもわずかに前方に配置されている。図2Aでは、後述するキャビネット3の天板32は、省略して示されている。側面補強材6の上端は、支持部材4及びフレーム部26の上端よりやや上方に位置し、下端は巾木105の上端に接して配置される。
側面補強材6及び背面補強材5は、図2Aに示すように、平面視で前方に向かって開放された略コの字状に配置される。側面補強材6は、後端が背面補強材5の表面に位置するように背面勝ちに配置される。背面補強材5の表面とは、背面補強材5の板面におけるトイレルーム100の前側の面である。側面補強材6は、背面補強材5の幅方向D2の外側の端部に接して配置される。側面補強材6及び背面補強材5は、側面補強材6が背面勝ちに配置されることで、背面補強材5が壁掛け式便器2の重さで前方側へ倒れる方向に荷重がかかっているところ、側面補強材6の後端で背面補強材5を支持する。側面補強材6は、壁掛け式便器2を側面側で支持する。
固定部材7は、支持部材4及び背面補強材5を背面壁101に固定したり、背面補強材5及び側面補強材6を側面壁102に接続したりするための金具である。固定部材7は、ビスやボルト等を含み、少なくとも支持部材4及び背面補強材5を背面壁101に固定する。固定部材7は、図3に示すように、支持部材接続部70と、背面壁側接続部71と、段部72と、角側接続部73と、添え板部74と、を有する。
支持部材接続部70は、支持部材4の前面に面接触してビスやボルト等により接続するように略平板状に形成される。支持部材接続部70には、ビス止めのための貫通孔70aが複数形成される。支持部材接続部70は、ビスが支持部材4及び背面補強材5を貫通するように取り付けられる。
背面壁側接続部71は、支持部材4の端部よりも幅方向D2外側に延び、略平板状に形成される。背面壁側接続部71は、背面壁101に接するように固定される。背面壁側接続部71には、ビス止めのための貫通孔71aが複数形成される。背面壁側接続部71は、ビスが背面補強材5を貫通するように取り付けられる。
段部72は、支持部材接続部70及び背面壁側接続部71を接続する。段部72は、支持部材4の側端部を覆うように後方に延び、略平板状に形成される。
角側接続部73は、背面壁側接続部71から幅方向D2外側に向かうに従い漸次前方側に延びる。すなわち、角側接続部73は、背面壁側接続部71から斜めに延設される略平板状の部分である。角側接続部73は、背面補強材5と側面補強材6とが接続される角に対して斜めに配置される。側面壁102と背面壁101が接合される角の内部に間柱104がある場合、角側接続部73から間柱104へビス止めを行ってもよい。
添え板部74は、角側接続部73から側面補強材6に沿って前方へ延びる部分であり、段部72に対向する面を有する。添え板部74は、側面補強材6にビス止めはされていないが、側面補強材6に面接触することによって、側面補強材6に接続され、側面補強材6を支持している。添え板部74を、側面壁102にプラスチックプラグ等により固定してもよい。
キャビネット3は、壁掛け式便器2のフレーム部26、タンク241等の給水部24及び排水管25等を収容するとともに隠蔽する空間である。キャビネット3は、図2Bに示すように、前パネル31と、天板32と、連結側板33と、間口調整材34と、を有する。
前パネル31は、フレーム部26の前面に配置され、上下方向に延びる板材である。前パネル31は、便器本体21とフレーム部26の間で背面壁101と略平行に配置される。前パネル31の幅方向D2の長さは、トイレルーム100の一対の側面壁102同士の間の距離よりも短い。前パネル31は、図1に示すように、上部前パネル311と、下部前パネル312を有する。上部前パネル311は、便器本体21の上部に配置される一枚の板材で構成される。下部前パネル312は、便器本体21の背面に3枚分割して取り付けられている。前パネル31の下端には、前パネル巾木31aが配置されている。
天板32は、所謂カウンターであり、前パネル31の上端と背面壁101との間に配置される略長方形の板である。天板32は、一対の側面補強材6の間に略水平方向に配置され、前パネル31と背面壁101との間の空間を塞ぐ。天板32は、支持部材4にヒンジ接続され、後端側を回転させることで開閉可能に取り付けられている。
連結側板33は、図2Aに示すように、前パネル31の背面側における幅方向D2の端部側に接続され、キャビネット3の内奥に向かって、前パネル31に対して略直交するように取り付けられる。連結側板33は、後述する間口調整材34とほぼ同程度の上下方向D3の長さを有する幅の細い縦長の板材である。
間口調整材34は、キャビネット3の上下方向D3に沿って延びる縦長の板材である。間口調整材34は、前パネル31よりも幅の狭い板材で構成され、前パネル31の幅方向D2の両側で、前パネル31の背面に間を空けて配置される。間口調整材34は、上端側に、幅方向D2に長い長孔330を有する。間口調整材34は、長孔330にビスを挿通させて、連結側板33の後端に連結される。間口調整材34は、トイレルーム100の正面視で、前パネル31と一対の側面壁102との間の隙間の奥に配置され、キャビネット3の内奥が見えないように配置される。トイレルーム100の幅方向D2の内寸の寸法と前パネル31の幅方向D2の寸法によって、前パネル31の幅方向の端部と側面壁102との間の距離は、施工現場ごとに異なる。そこで、長孔330に挿通させるビスの位置を変えることで、前パネル31の幅方向の端部と側面壁102との間に、間口調整材34を取り付ける位置を変更可能に構成されている。図2Cでは、連結側板33及び間口調整材34は省略して示されている。
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。壁掛け式便器の固定構造1を、トイレルーム100の床面103から離れた位置に設置される壁掛け式便器2の背面に配置され、壁掛け式便器2を支持する支持部材4と、支持部材4の背面に固定され、支持部材4を補強する背面補強材5と、壁掛け式便器2側面側で支持する側面補強材6と、少なくとも支持部材4及び背面補強材5を固定する固定部材7と、を含んで構成した。壁掛け式便器の固定構造1が、背面補強材5及び側面補強材6の両方を兼ね備えているので、壁掛け式便器2の荷重を背面側と側面側で分散して支持することができる。これにより、固定強度が向上する。背面側と側面側で支持することで、壁掛け式便器2を固定するトイレルームの壁の内部に強度の高い柱が存在しない場合でも、十分な強度で壁掛け式便器を固定できるので、施工現場によらず壁掛け式便器2を設置できることとなり、設置の自由度が広がる。
本実施形態によれば、側面補強材6の端部を、背面補強材5の前側に位置するように背面勝ちで配置させた。側面補強材6を背面補強材5に対して背面勝ちで配置することで、壁掛け式便器2から背面補強材5が前方へ倒れる方向に受けている荷重を、側面補強材6の端部が支持することができる。これにより、壁掛け式便器の固定構造1の固定強度が向上する。
本実施形態によれば、側面補強材6の下端を、巾木105の上端に接して配置させた。
側面補強材6の下端が巾木105の上端に接することで、背面補強材5に係っている荷重を支える側面補強材6を、巾木105が支持することができる。これにより、壁掛け式便器2の荷重を最終的に床面103等の設置面から支持することができるようになり、高い固定強度を実現できる。
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。以下に変形例及び他の実施形態について説明する。以降の説明において、第1実施形態と共通する構成については、同じ符号を付すとともに、説明を省略する。
第1実施形態の変形例に係る壁掛け式便器の固定構造1Aでは、図4A及び図4Bに示すように、側面補強材6Aは、前パネル31よりも後方に配置される。側面補強材6Aは、間口調整材34の背面に当接する。
第1実施形態の変形例に係る壁掛け式便器の固定構造1Aによれば、側面補強材6Aは背面補強材5を支持する力を加減しつつも、側面補強材6Aが間口調整材34よりも後方に位置することで、キャビネット3の正面視の外観をすっきりと見せることができる。
第2実施形態では、図5A及び図5Bに示すように、背面補強材5B及び側面補強材6Bの上下方向D3の長さが、第1実施形態及び第1実施形態の変形例と比べて短い点で異なっている。第2実施形態では、背面補強材5B及び側面補強材6Bは、巾木105の上端まで到達せず、背面補強材5B及び側面補強材6Bの下端は、側面壁102の巾木105より上方に配置されている。背面補強材5B及び側面補強材6Bは、支持部材4の上下方向の長さと同程度からわずかに大きい程度の寸法を有する。
第2実施形態によれば、背面補強材5B及び側面補強材6Bが小型化することで、運搬や狭いトイレルーム100B内部での移動が容易になり、施工性が向上する。
第3実施形態では、図6A~図6Cに示すように、側面補強材6Cが、板材により構成されておらず、固定部材7と一体に連続して形成される点で、第1~第2実施形態と異なる。側面補強材6Cは、固定部材7と連続することで互いに接続されている。第3実施形態では、固定部材7及び側面補強材6Cのいずれも金属で構成される。図6Aに示すように、側面補強材6Cは、側面壁当接部61と、上面部62と、を有する。
側面壁当接部61は、固定部材7の添え板部74の前方側の端部から連続して前方へ延びる略平板状の部分である。図6Bに示すように、側面壁当接部61は、添え板部74の上下方向D3の寸法と同じ上下寸法を有するとともに、添え板部74から前方へ、間口調整材34の後方まで延びる。側面壁当接部61は、側面壁102に当接するように配置され、側面壁102の内部に間柱104がある場合には間柱104にビス止めされる。間柱がなく、ビス止めが難しい場合はプラスチックプラグ等で固定される。
上面部62は、側面壁当接部61の上端からキャビネット3の幅方向D2の内側へ折り曲げられる略平板状の部分である。図6Aに示すように、上面部62は、側面壁当接部61と同じ前後方向D1の長さを有する略長方形に形成される。図6Cに示すように、側面補強材6Cは、断面視略L字状を有し、上面部62の短手方向の寸法は、側面壁当接部61の上下方向D3の寸法よりも短い。上面部62は、キャビネット3の天板32と略平行に配置されている。上面部62は、施工時や、意図せず天板32が撓んだり傾いたりして下方にずれた場合に、天板32の幅方向D2の端部を支持可能に配置されている。
第3実施形態によれば、側面補強材6Cが側面壁102に固定され、固定部材7と一体に連続して形成されている。壁掛け式便器2から背面補強材5が受ける荷重を、背面補強材5を固定している固定部材7とともに側面補強材6Cに分散させることができ、固定強度が向上する。
第3実施形態の変形例では、図7に示すように、側面補強材6Dは、固定部材7と別体に形成される。側面補強材6Dが側面壁当接部61D及び上面部62Dを有する点及び金具で構成される点は、第3実施形態と同じである。変形例では、側面壁当接部61Dの後端部が、固定部材7の添え板部74の前端部とぴったり合うように配置されて互いに接続される。側面補強材6Dは、固定部材7と別に側面壁102に固定される。側面補強材6Dが固定部材7と接続されることで、第3実施形態の場合と同様に固定強度が向上する。
第3実施形態に係る変形例によれば、固定部材7が既存の部品であった場合に、側面補強材6Dのみ製造することで、第3実施形態と同様の効果を得られるため、製造コスト低減や製造工程の簡略化等のメリットがある。
第4実施形態では、図8Aに示すように、間口調整材34Eが、第1~第3実施形態の変形例における間口調整材34よりも薄い板材で構成されている。キャビネット3の前パネル31Eにおける上部前パネル311は、幅方向D2の両外側の外側パネル313と、中央側の中央側パネル314とを有する。間口調整材34Eは、外側パネル313に対して引戸のようにスライドして開閉可能な扉として構成されている。間口調整材34Eは、壁掛け式便器2の側方に配置される扉として構成され、背面補強材5と壁掛け式便器2の背面との間を仕切る。
側面補強材6Eは、薄い間口調整材34Eの背面側に当接可能な戸当たり部63を有する。第4実施形態は、側面補強材6Eが側面壁当接部61E及び上面部62Eを有する点、固定部材7から連続する金具で構成される点は、第3実施形態と同じである。
図8Bに示すように、側面壁当接部61Eは、第3実施形態と比べて前後方向D1の寸法が大きく、壁掛け式便器2の側面側から間口調整材34Eの背面まで延びている。図8Aに示すように、戸当たり部63は、側面壁当接部61Eの前端に配置され、キャビネット3の内側に向かって略90度屈曲する略平板状の面により形成される。図8Cに示すように、戸当たり部63は、側面壁当接部61Eの前端の上下方向における下端側のみに形成される。
第4実施形態によれば、側面補強材6Eに戸当たり部63を設けることで、間口調整材34Eの形状を自由に設計することができ、例えば薄い板材で構成したり、引戸のように扉として配置したりすることが可能になる。間口調整材34Eを開閉可能な扉として構成することで、キャビネット3の内部へのアクセスが容易になる。側面補強材は、第3実施形態の変形例のように、固定部材7と別体に形成して固定部材7と接続させてもよい。
第5実施形態では、図9Aに示すように、側面補強材6Fが、床面103に接して配置されている。第1実施形態及びその変形例と同様に、側面補強材6Fが板材により構成される場合、第5実施形態では、側面壁102の巾木105を切断して取り除く。詳細には、側面壁102に沿う巾木105の後方側を、側面補強材6Fの前後方向D1に沿う寸法の分、切断する。巾木105の取り除かれた側面壁102に、側面補強材6Fの下端が床面103まで到達するように、側面補強材6Fを取り付ける。
図9Bに示すように、背面壁101では、巾木105の全体を取り除いて背面補強材5Fの下端が床面103に接するように配置する。側面補強材6F及び背面補強材5Fが床面103に接することにより、側面補強材6F及び背面補強材5Fの下端が床面103により支持される。第5実施形態によれば、壁掛け式便器2の荷重が巾木105を介さずに床面103へ分散するため、良好な壁掛け式便器の固定構造1Fの強度が得られる。
第5実施形態の変形例として、第2実施形態、第3実施形態、第3実施形態の変形例、第4実施形態のように、側面補強材6B、6C、6D、6Eが、上下方向D3の長さが短く構成され、巾木105まで到達されない形状の場合、背面補強材5Fのみを床面103に接するように配置してもよい。
第6実施形態では、図10Aに示すように、壁掛け式便器の固定構造1Gが、さらに第1床固定部材8を備える。第1床固定部材8は、壁掛け式便器2における便器本体21の背面に位置するフレーム部26に接続される。第1床固定部材8は、フレーム部26の縦桟261から後方に延びる。図10Bに示すように、第1床固定部材8は、後方延出部81と、床固定部82Gと、を有する。後方延出部81は、縦桟261における上下方向D3の中央部より下側から後方に向かって斜め下方に延出する。後方延出部81は、一対の縦桟261のそれぞれから延出する。床固定部82Gは、後方延出部81の後端且つ下端から、床面103に沿って前方へ戻るように延びる。床固定部82Gは、平坦な面を有し、床面103にボルト等で固定される。後方延出部81と床固定部82Gとは、側面視で鋭角を形成して接続される。
第1床固定部材8が便器本体21の後方に延びるように配置されて床面103に固定されることで、てこの原理により小さな力で便器本体21を支持することができる。第1床固定部材8が便器本体21を支持することにより、便器本体21及び使用時に使用者の体重等から背面壁101側にかかる荷重を小さくすることができる。また、第1床固定部材8を便器本体21の後方に延出させることで、第1床固定部材8をキャビネット3内に配置することができるので、外観に影響することもない。
第1床固定部材8を支持部材4、背面補強材5G、及び側面補強材6Gとともに用いることで、背面壁101、側面壁102、及び床面103全体で壁掛け式便器2から受ける荷重を支持することができ、固定構造の強度を向上させることができる。
第7実施形態では、図11A~図11Cに示すように、壁掛け式便器の固定構造1Hが、さらに第2床固定部材80を備える。第2床固定部材80は、背面補強材5H及び床面103に固定される。図11Aに示すように、第2床固定部材80は、壁掛け式便器の固定構造1Hの正面視で、幅方向D2の外側に一対配置されている。図11Bに示すように、第2床固定部材80は、側面視で略直角三角形の形状を有し、背面補強材接続部83と、床固定部82Hと、傾斜辺部84と、を有する。
背面補強材接続部83は、上下方向に延びる細長い平板により構成される。背面補強材接続部83は、図11Cに示すように、縦桟261よりも幅方向外側で、且つ下端が床面103につく位置で、背面補強材5Hにボルト等で固定される。
床固定部82Hは、背面補強材接続部83の下端から床面103に沿って前方へ延びる。床固定部82Hは、平坦な面を有し、床面103にボルト等で固定される。床固定部82Hと背面補強材接続部83とは、略直角に接続されている。
傾斜辺部84は、背面補強材接続部83の上端と床固定部82Hの前端を結ぶ部分である。傾斜辺部84は、図11A及び図11Cに示すように、背面補強材接続部83よりも幅が細い二本の平板が、背面補強材接続部83の幅方向D2の一方及び他方に配置されている。
便器本体21の荷重、使用時に使用者が腰かけた場合の荷重は支持部材4を介して背面補強材5Hを前方に倒す方向にかかっている。第2床固定部材80によれば、背面補強材接続部83が背面補強材5Hを押えるともに、床固定部82H及び傾斜辺部84が背面補強材5Hを支持する。これにより、背面壁101側にかかる荷重を小さくすることができる。
第8実施形態では、図12A及び図12Bに示すように、壁掛け式便器の固定構造1Iでは、背面補強材5Iが、トイレルーム100の天井106まで延びている。背面補強材5Iは、背面壁101に配置された巾木105の上端から天井106まで連続する一枚の板材により構成される。
壁掛け式便器の固定構造1Iは、さらに第1天井固定部材9を備える。第1天井固定部材9は、背面補強材5I及び天井106に固定される。図12Bに示すように、第1天井固定部材9は、側面視で略直角三角形の形状を有し、背面補強材接続部91と、天井固定部92Iと、傾斜辺部93と、を有する。
背面補強材接続部91は、上下方向D3に延びる細長い平板により構成される。背面補強材接続部91は、図12Aに示すように、縦桟261よりも幅方向外側で、且つ上端が天井106につく位置で、背面補強材5Iにボルト等で固定される。
天井固定部92Iは、背面補強材接続部91の上端から天井106に沿って前方へ延びる。天井固定部92Iは、平坦な面を有し、天井106にボルト等で固定される。天井固定部92Iと背面補強材接続部91とは、略直角に接続されている。
傾斜辺部93は、背面補強材接続部91の上端と天井固定部92Iの前端を結ぶ部分である。傾斜辺部93は、図12Aに示すように、背面補強材接続部91よりも幅が細い二本の平板が、背面補強材接続部91の幅方向D2の一方及び他方に配置されている。
便器本体21の荷重、使用時に使用者が腰かけた場合の荷重は支持部材4を介して背面補強材5Iを前方に倒す方向にかかっている。第1天井固定部材9によれば、背面補強材接続部91が背面補強材5Iを押えるともに、天井固定部92I及び傾斜辺部93が背面補強材5Iを支持する。これにより、背面壁101側にかかる荷重を小さくすることができる。
第8実施形態の場合、トイレルーム100の後方の上部に扉351のついた収納棚35が配置されていれば、第1天井固定部材9が視認されないため、外観上好ましい。収納棚35により、第1天井固定部材9を隠蔽する機能と、物品を収納する機能の両方を実現することができる。収納棚35でなく、第1天井固定部材9を隠蔽するカバーが設けられていてもよい。
第8実施形態の説明として、背面補強材5Iが連続した一枚の板材で構成された例を挙げたが、背面補強材は、複数の板材を連結して構成してもよい。
第9実施形態では、図13A及び図13Bに示すように、壁掛け式便器の固定構造1Jは、第2天井固定部材90をさらに備える。第2天井固定部材90は、便器本体21の背面に位置するフレーム部26の縦桟261から上方に延び、天井106に固定される。第2天井固定部材90は、高さ調整バー95と、天井固定部92Jと、を有する。壁掛け式便器の固定構造1Jでは、第2天井固定部材90が視認されないように、キャビネット3の前パネル31Jが天井106近傍まで延びるように設置されている。図13Aでは、第2天井固定部材90を示すため、前パネル31Jを仮想線で示している。
高さ調整バー95は、フレーム部26の縦桟261にボルト等で接続される。このとき、高さ調整バー95は、上端側が天井106に到達するように施工現場で長さを調整される。高さ調整バー95は、高さ調節部95aを有している。高さ調節部95aは、縦桟261と接続するボルトを締結する位置を変更できるように、上下方向に間を空けて配置された複数のボルト孔により構成されてよい。第9実施形態では、フレーム部26は上桟262を有していない。
天井固定部92Jは、高さ調整バー95の上端に固定されている。天井固定部92Jは、高さ調整バー95に直交する方向に延びる平板により構成される。天井固定部92Jは、高さ調整バー95の高さが調整されて天井106に当接した状態で、ボルト等により天井106に固定される。
図13Bに示すように、フレーム部26の縦桟261と高さ調整バー95とが、互いに連結されて床面103から天井106へ延び、上端にある天井固定部92Jが天井106に固定されると、フレーム部26から天井固定部92Jまで、突っ張るように第2天井固定部材90が配置される。フレーム部26には、便器本体21及び使用者の体重による荷重がかかるが、フレーム部26及び第2天井固定部材90により、荷重が床面103と天井106に分散される。よって、背面壁101にかかる荷重が低減される。
図14A~図14Cに示すように、第10実施形態では、壁掛け式便器の固定構造1Kは、背面補強材5K及び側面補強材6Kを連結する連結部材700をさらに備える。背面補強材5Kは、背面壁101に沿った面状の形状を有し、側面補強材6Kは、側面壁102に沿った面状の形状を有する。側面補強材6Kは、背面補強材5Kと別体の板状の部材により構成されている。連結部材700は、固定部材7の下端から床面103まで延びる長尺の部材である。連結部材700は、図14Aに示すように、固定部材7の下端に接するとともに、背面補強材5K及び側面補強材6Kの両方に固定される。図14Cに示すように、連結部材700は、平面視略L字型に屈曲している。連結部材700は、背面補強材連結部710と、側面補強材連結部720とを有する。図14Cでは、連結部材700の上方に位置する固定部材7を仮想線で示している。
背面補強材連結部710は、背面補強材5Kに固定される平坦な面である。側面補強材連結部720は、側面補強材6Kに固定される平坦な面である。背面補強材連結部710と側面補強材連結部720とは、略直角に接続されている。
固定部材7の構成については、第1実施形態と同様である。図3に示す第1実施形態のように、固定部材7は、支持部材4を背面補強材5Kに固定している。固定部材7の添え板部74が、背面補強材5Kに沿う背面壁側接続部71から屈曲して側面補強材6Kに沿うように当接する。添え板部74により、固定部材7は側面補強材6Kに接続されている。しかし、添え板部74自体は、側面補強材6Kにボルトやプラスチックプラグ等で固定されてはいない。連結部材700は、背面補強材5Kと側面補強材6Kとを直接固定しながら連結する。固定は、背面壁101や側面壁102の内部に間柱104が配置されていれば、間柱104にビスで固定してよい。背面壁101や側面壁102の内部に間柱104等の強度の高い部材がなく、例えば石膏ボードのような部材が配置されている場合には、プラスチックプラグにより固定してよい。この構成によれば、背面補強材5K及び側面補強材6Kを補強することができる。仮に施工現場で、トイレルーム100の背面壁101及び側面壁102自体の施工誤差や、背面補強材5K又は側面補強材6Kの製造誤差等により、側面補強材6Kの後方の端部が背面補強材5Kの幅方向D2の端部における前側の面と合わさらなかった場合でも、背面補強材5Kと側面補強材6Kとを連結することができる。背面補強材5Kと側面補強材6Kとが連結されることで、背面壁101にかかる便器本体21や使用者の荷重を、側面補強材6K側に分散させることが可能になる。
第10実施形態では、連結部材700が平面視略L字型であることを例に説明した。しかし、連結部材700は、背面補強材5Kと側面補強材6Kとを連結することができれば、平面視略L字型に限定されない。例えば、連結部材は、断面視四角形の角柱であってもよい。背面補強材5Kと側面補強材6Kとが接続される角の内側に角材を配置してボルト又はプラスチックプラグにより固定することによっても上記と同様の効果を得ることができる。
図15A~図15Cに示すように、第11実施形態では、壁掛け式便器の固定構造1Lは、タンク241を収容するタンクキャビネット27を有する。図15Bに示すように、タンクキャビネット27は、便器本体21の背面側に位置するフレーム部26と、背面補強材5Lとの間に配置される。タンクキャビネット27は、下端が床面103に接続され、後方の端面が背面補強材5Lに接続される。タンクキャビネット27は、一対の側部271と、一対の脚部272と、背面部273と、を有する。
図15Bに示すように、一対の側部271は、前パネル31の背面に当接し、前後方向D1に延びる。一対の側部271は、タンク241の幅方向D2の一方及び他方の側面を覆うように配置される。一対の脚部272は、一対の側部271の前方の下端から下方に延び、床面103に接続される部分である。図15Cに示すように、脚部272の床面103側では、脚部272の側面から突出してタンクキャビネット27の幅方向D2に延びる固定部材272aにより、脚部272が床面103に固定されている。側部271及び脚部272は、連続した一枚の板状の部材により形成される。背面部273は、一対の側部271同士の間を接続し、背面補強材5Lに接続される板状の部材である。背面部273は、背面補強材5Lの幅方向D2の略中央部側に固定される。
第11実施形態によれば、タンクキャビネット27の背面部273が背面補強材5Lに、脚部272が床面103に接続されていることで、便器本体21及び使用者から背面壁101に係る荷重を分散して低減することができる。特に、便器本体21からかかる荷重は、便器本体21の背後に位置する背面壁101の幅方向D2中央付近に集中し、背面補強材5Lの幅方向D2の中央側が、前方側に膨出するように撓む懸念がある。タンクキャビネット27の背面部273が背面補強材5Lに接続されると、背面壁101、ひいては背面補強材5Lの最も荷重がかかる位置にタンクキャビネット27の背面部273が固定されるので、背面補強材5Lの剛性が向上する。これによりさらに背面壁101にかかる荷重を低減することができる。
図15Aに示すように、第11実施形態では、タンクキャビネット27の側部271の外側に、略水平方向に延びる複数の棚板274を取り付けてもよい。背面補強材5Lと前パネル31の間に、物品を収納可能な空間が形成される。棚板274により、物品を収納可能な空間を上下に区切ることができるので、収納できる物品が増加する。棚板274は、図15Bでは、省略して示されている。
図16A~図16Bに示すように、第12実施形態の壁掛け式便器の固定構造1Mでは、側面補強材6Mは、壁掛け式便器2の前端を越えて前方へ延びる。例えば、側面補強材6Mは、背面補強材5Mの幅方向の端部からトイレルーム100の側面壁102に沿って前方まで延びる。トイレルーム100には、便器本体21の他に、カウンター110、手洗い器111、手洗いキャビネット112、手すり113等のトイレ付帯設備が配置されている。図16A及び16Bに示すように、カウンター110、手洗い器111、手洗いキャビネット112、手すり113等のトイレ付帯設備は、側面壁102に沿って配置されている。これらを配置する場合、側面壁102の内部に強度の高い建築躯体を構成する部材が配置されていないときは、壁裏補強を行う必要が生じる。しかし、側面補強材6Mを側面壁102に沿って長く延出させることで、別途の壁裏補強を行うことなく、トイレルーム100Mの関連設備を適切な強度で固定することが可能になる。
上記説明したそれぞれの実施形態は、互いに組み合わせてもよい。例えば、上下方向D3の丈の短い側面補強材6C、6D、6Eに、上面部62、62D、62Eや戸当たり部63が設けられた例を説明した。しかし、上面部や戸当たり部は、他の形状の側面補強材に設けてもよく、板状の側面補強材に設けてもよい。
第1床固定部材8、第2床固定部材80、第1天井固定部材9、第2天井固定部材90や、連結部材700は、それぞれ単独で用いられた例を説明したが、上記説明した壁掛け式便器の固定構造の実施形態及び変形例のいずれかと適宜組み合わせてもよい。
巾木105の有無は限定されない。図示した実施形態で巾木105が設けられている場合でも、背面補強材又は側面補強材が床面103に当接していてもよい。