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JP7615593B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents

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JP7615593B2 JP2020164818A JP2020164818A JP7615593B2 JP 7615593 B2 JP7615593 B2 JP 7615593B2 JP 2020164818 A JP2020164818 A JP 2020164818A JP 2020164818 A JP2020164818 A JP 2020164818A JP 7615593 B2 JP7615593 B2 JP 7615593B2
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Description

本発明は電池外装用途、医薬包装用途に好適に使用できるポリエステルフィルムに関する。
リチウム電池とは、リチウム2次電池ともいわれ、液状、ゲル状高分子、固体高分子、ポリマー電解質などを持ち、リチウムイオンの移動で電流を発生する電池であって、正極・負極活性物質が高分子からなるものを含むものである。リチウム2次電池の構成としては、正極集電材(アルミ、ニッケル)/正極活性物質層(金属酸化物、カーボンブラック、金属硫化物、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子正極材料)/電解質層(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、炭酸ジメチル、エチレンメチルカーボネート等のカーボネート系電解液、リチウム塩からなる無機固体電解質、ゲル電解質)/負極活性物質層(リチウム金属、合金、カーボン、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子負極材料)/負極集電材(銅、ニッケル、ステンレス)及びそれらを包装する外装体からなる。近年、リチウム電池はその高い体積効率、重量効率から多岐分野に渡って使用されており、パソコン、携帯端末装置(スマートフォン等)、ビデオカメラ、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星等に小型大容量電源として用いられている。
リチウム電池の外装体としては、金属をプレス加工して、円筒状または直方体状に容器化した金属製缶が代表的に挙げられる。しかしながら、金属製缶を用いると容器外壁が剛直であるために電池自体の形状が決められてしまい、ハードウエア側を電池に合わせて設計する必要があり、該電池を用いるハードウエアの寸法が電池により決定されてしまうなどデザインに制約ができてしまうという問題がある。そこで、樹脂層/アルミニウム/シーラント層から構成される構成体を角型に絞り成形加工した成形体2つをヒートシールでラミネートした外装体が好まれるようになってきている。構成体において、シーラント層はヒートシール性、アルミニウムはバリア性、樹脂層は深絞り性を担っている。最近では、バッテリー製造工程において、電解液の漏れ等による構成体を構成する樹脂層の劣化に起因した歩留まり低下が問題視されており、樹脂層には深絞り性の付与に加えて、耐電解液性が求められるようになってきている。
これまで、樹脂層として、例えばポリアミドフィルムなどが用いられている(例えば特許文献1参照)。しかしながらポリアミドフィルムは防湿性、電解液に対する安定性が十分ではなく、電池製造工程に電解液が付着した際にポリアミドフィルムが劣化してしまう場合があり、改善が求められていた。また、電池製造工程に電解液が付着した際のポリアミドフィルムの劣化を防ぐためにポリエステルを最外装に設ける構成が提案されており(特許文献2、3参照)成形性は十分であるものの、ポリエステルフィルムとポリアミドを貼り合わせるための工程が余分に必要とされるため、生産性に劣るといった課題があった。
また、ポリエステルフィルム単体での検討も行われている(例えば特許文献4、5参照)。
特開2006-236938号公報 特開2000-334891号公報 特許第6476679号公報 特開2011-204674号公報 特許第6177475号公報
しかしながら、上記ポリエステルフィルムを用いることで、深絞り成形性、耐電解液性は改良されているものの、ポリエステルフィルムとポリアミドフィルムを用いた構成に比べて深絞り成形性は不十分である。本発明は、従来のポリエステルフィルム単体構成よりも更に深絞り成形性を改良したポリエステルフィルムを提供することである。
上記課題を解決するため、本発明のポリエステルフィルムは以下の構成とする。
(1)長手方向と幅方向の加工硬化指数がともに1.6以上3.0以下、かつ長手方向と幅方向の加工硬化指数の差が0.5以下であって、固有粘度が0.66以上0.95以下、剛直非晶量が28%以上60%以下である。
(2)融点が248℃以上である。
(3)結晶化度が25%以上40%以下である。
(4)長手方向および幅方向の破断伸度がいずれも100%以上である。
(5)電池外装用に用いられる。
(6)医薬包装用に用いられる。
本発明のポリエステルフィルムはポリエステル樹脂を用いることにより耐電解液性に優れ、加工硬化指数および固有粘度、剛直非晶量を特定範囲とすることによって、ポリエステルでありながらポリアミドを用いた構成並に深絞り成形性することが可能となり、高容量化対応の電池外装用構成体、様々な形状に対応可能な包装用構成体に好適に使用することができる。
矩形状雄型、矩形状雌型から成る口金を側面からみた概略図である。 成形追従性の評価において成形できた構成体を真上からみた図である。
本発明のポリエステルフィルムは、長手方向と幅方向の加工硬化指数がともに1.6以上3.0以下である。ここで、加工硬化指数とは、後述する評価方法(11)加工硬化指数、にて定めた引張り試験から得られる伸度5%時の応力および伸度60%時の応力より算出される値のことである。電池外装に用いられるラミネート材は、最外装フィルム、金属箔、シーラント層を順に積層した構成が代表的であり、最外装フィルムは単層または複合構成で約25μm、金属箔は40μm、シーラント層は80μm程度で構成されているケースが多く、最外装フィルムは最も薄くなっている。本発明者らが鋭意検討したところ、当該構成にて絞り成形を行った際、厚み方向に掛かる応力は、各層の加工硬化状態に応じて中立軸が決定され、厚み方向のどの位置に応力が集中するか決まることを明らかにした。最外装フィルムの加工硬化状態、すなわち加工硬化指数が1.6未満である場合、中立軸は金属箔とシーラント層側に偏り、金属箔に不均一に応力が掛かりやすくなってしまい、その結果、絞り加工における金属箔の破断やピンホールを生じてしまう。このため、本発明のポリエステルフィルムは少なくとも加工硬化指数が1.6以上である必要がある。中立軸が最外装側に偏らないようにする観点から、加工硬化指数は、長手方向、幅方向のいずれの方向においても3.0以下とする必要がある。好ましくは2.0以上2.6以下である。
ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向の加工硬化指数をともに1.6以上3.0以下とするには、フィルム長手方向と幅方向の破断強度を200MPa以上にするのが好ましい方法として挙げられる。なお、ここでフィルムの長手方向と幅方向はフィルムの任意の一方向(0°)、該方向から15°、30°、45°、60°、75°、90°、105°、120°、135°、150°、165°の方向の破断強度を測定し、最も破断強度の高かった方向を幅方向とし、幅方向と直交する方向を長手方向とする。ポリエステルフィルム破断強度を200MPa以上とするには高倍率で延伸するとよい。具体的には二軸に延伸するのが最も好ましく、公知の方法で逐次または同時で面積延伸倍率を11.0倍以上として延伸すると良い。加工硬化指数が1.6未満であると絞り成形性に劣る。また、加工硬化指数は高くなるほど絞り成形時の曲げによる弾性変形が大きくなるため、成形後の反りが大きくなる傾向がある。このため、加工硬化指数は必要とされる反りの程度に応じて最低限に抑えることが重要である。
本発明では面内均一性の観点から長手方向と幅方向の加工硬化指数の差は0.5以下である。長手方向と幅方向の加工硬化指数の差が0.5を超える場合、面内均一性が低く、絞り加工した際に不均一に負荷が掛かり、局部的な変形が起こり絞り成形性に劣ったものとなる。加工硬化指数の差は好ましくは0.3以下が好ましい。
本発明において、長手方向と幅方向の破断伸度はいずれも100%以上であることが好ましい。絞り加工における材料の変形挙動の1つは伸長である。フィルムの伸度が大きい程、変形挙動のうち、伸び変形できる要素は大きくなり、絞り加工性は向上する。このため、長手方向と幅方向の破断伸度はいずれも100%以上であることが好ましい。長手方向と幅方向の破断伸度を100%以上とするには、いずれの方向の延伸倍率も4.0倍以下であることで調整可能である。延伸倍率が4.0倍を超えた方向がある場合は、加工硬化指数を大きくする上で有利であるものの、当該延伸方向の破断伸度が100%以下となり、絞り成形性が低下することがある。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム全体に対する剛直非晶量が28%以上60%以下である。ここで、剛直非晶量は後述する(9)剛直非晶量に記載の方法にて測定される値である。剛直非晶量が本範囲であることによって特に顕著な厚み方向に対する特性である突き刺し耐性を得ることができる。電池外装ラミネート材において多く行われている絞り加工は、四隅を金型で固定し、厚み方向に絞る加工である。フィルム全体に対する剛直非晶量を本範囲に制御することによって、前述の絞り加工において、優れた絞り加工特性が発現する。剛直非晶量が60%を超える場合、非晶成分がフィルムバルク構成の大半を占め、フィルムの寸法安定性が著しく低下する。一方、剛直非晶量が28%未満である場合、厚み方向に対する特性である突き刺し耐性に劣る。フィルムバルク状態については、使用原料の結晶性に加えて、製膜条件によって決定されるものであり、例えばポリエチレンテレフタレートを用いた場合、剛直非晶量を28%以上とするには、少なくともフィルムの面配向係数fnを0.165以上とすることが重要である。ここで、フィルムの面配向係数は、後述する評価方法(5)ポリエステルフィルムの面配向係数fnに記載の方法にて測定する。フィルムの面配向係数を0.165以上とするには、二軸延伸する際の面積延伸倍率を12.25倍以上とする方法などが挙げられる。この上で、逐次二軸延伸後の熱処理温度によって剛直非晶を制御することが好ましく、フィルム製膜中に掛かる最も高い温度(熱処理温度)を、200℃以下とすることが重要である。一方、熱処理温度を230℃以上にすることでも樹脂の融解が開始することに起因して、剛直非晶量は増加する傾向を示すが、熱によるフィルムの結晶化を促進させてしまうため、後述する結晶化度が多くなり、フィルムバルク構成として剛直非晶よりも結晶化度が高くなる。このため、熱処理温度は200℃以下とすることが重要である。フィルムの熱処理温度が200℃を超え、230℃未満である場合、剛直非晶量は28%未満となることがある。
本発明のポリエステルフィルムは、結晶化度が25%以上40%以下であることが好ましい。結晶化度は延伸による配向結晶化や、熱による結晶化によってフィルムの機械的強度を上昇させることが可能である。結晶化度が25%未満であるとフィルム面配向が不足し加工硬化指数を本発明の範囲に制御できないことがあり、結晶化度が35%を超える場合、剛直非晶量を本発明の範囲にすることができなくなることがある。結晶化度を25%以上40%以下とするには、例えば、ホモポリエステル樹脂を用い、フィルムの面配向係数を0.165以上、0.170以下とした上で、熱処理温度を150℃以上、200℃以下とすることで調整可能であるが、他の樹脂を混合しても構わない。
本発明のポリエステルフィルムは、固有粘度が0.66以上0.95以下である。ここで固有粘度は後述する(4)固有粘度に記載の方法にて測定される値である。固有粘度が本範囲であることによって分子鎖の絡み合いが上昇し、厚み方向に対する変形、特に突き刺し耐性を得ることができる。固有粘度が0.66未満であると分子鎖の絡み合いが不足し、充分な絞り加工性を得ることができない。一方、固有粘度が0.95を超えると溶融製膜時の濾圧が上昇することに起因して吐出量を低くせざるを得なく、生産性に劣る。固有粘度は溶融製膜に使用する原料で調整可能であり、フィルムの固有粘度を高くしたい場合はフィルム製膜時に使用する原料の固有粘度が高くすると良い。分子鎖絡み合い効果と生産性のいずれも考慮すると固有粘度は0.69以上0.88以下であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、長手方向、幅方向の150℃熱収縮率はいずれも3.5%以上14.0%以下であることが好ましい。本発明のポリエステルフィルムを使用して、加熱を伴う二次加工、例えば溶融した樹脂をフィルムに直接ラミネートする押出ラミネート工程など150℃程度の熱が掛かるラミネート工程において、押出しラミネート時のシワを抑制するにあたり、150℃熱収縮率は3.5%以上であることが好ましい。一方、ラミネート時に掛かる温度の熱収縮率が14%を超えるとラミネート時の熱収縮により、フィルムがラミネート時に変形しすぎて不具合を起こすことがある。ラミネート時のシワと熱変形を両立する観点から、本発明のポリエステルフィルムは長手方向および幅方向の150℃熱収縮率は10%以下であることが好ましい。長手方向と幅方向の150℃熱収縮率を3.5%以上14.0%以下とするためには、フィルムの面積倍率を12.25倍以上とした上、熱処理温度を160℃以上200℃以下で熱処理することで制御可能である。
本発明のポリエステルフィルムは、示差走査型熱量計から求められる融点(融解吸熱ピーク温度(Tm))が248℃以上であることが好ましい。本発明のポリエステルフィルムを電池用外装材として使用したとき、シーラント層同士をヒートシールすることによって容器化する。このため、ヒートシールの熱によって外装フィルムの溶融を抑制する必要がある。融解吸熱ピーク温度Tmが248℃未満であるとヒートシールを行う際の加熱温度を低下する必要があり、ヒートシールによって容器化するまでの所要時間が多くなった結果、量産性に劣ることがある。融解吸熱ピーク温度Tmを248℃以上とするにはホモポリエステルを用いることが最も好ましい。なお、加工性の観点からは320℃以下であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムはポリエステルを主体として構成される。ポリエステルとは主鎖における主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称である。そして、ポリエステルは、通常ジカルボン酸あるいはその誘導体とジオールあるいはその誘導体を重縮合反応させることによって得ることができ、ポリエステルを主体として構成することで耐電解液性を得ることができる。また、本発明でいう主体として構成する、は対象全体に対して、60質量%以上100質量%以下の割合で占めることを指し、ここではポリエステルフィルムに対して占める割合のことをいう。ここで、ジカルボン酸単位(構造単位)あるいはジオール単位(構造単位)とは、重縮合によって除去される部分を除かれた2価の有機基を意味し、以下の一般式で表される。
ジカルボン酸単位(構造単位): -CO-R-CO-
ジオール単位(構造単位): -O-R’―O-
(ここで、R、R’は二価の有機基。RとR’は同じであっても異なっていてもよい。)
本発明に用いるポリエステルを与える、ジオールあるいはその誘導体としては、エチレングリコール以外に、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、それらの誘導体が挙げられる。
また、本発明に用いるポリエステルを与えるジカルボン酸あるいはその誘導体としては、テレフタル酸以外には、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、並びに、それらの誘導体を挙げることができる。ジカルボン酸の誘導体としてはたとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2-ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどのエステル化物を挙げることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、単層構成であっても、2層以上の多層構成であってもよい。多層構成である場合、B層/A層/B層のように中心層を基点に対称構成であることが製膜後の反りを抑制する観点から好ましい。製膜後に反りが発生すると、その後の電池製造工程などでハンドリング性が悪化することがある。また、本発明ではB/A/B/A/Bといった5層の構成でもよい。多層構成である場合、製膜後の反りの観点からB/A/Bの3層積層構成が好ましい。本発明では分子配向が異なるA層/B層のような2層構成であると、製膜直後の時点で反りが発生することがある。ただし、本発明の効果を阻害しないのであれば、A/Bの2層構成のように非対称構成でもかまわない。
本発明のポリエステルフィルムは、絞り性向上のため、ダイス側接触面の動摩擦係数μdを0.3以下とすることが好ましい。動摩擦係数を上記範囲とすることによって絞り成形時の変形抵抗が小さくなり加工性が向上する。動摩擦係数を0.3以下とするには特に限定されないが、例えば、平均粒径0.005μm以上10μm以下の無機粒子、および/または有機粒子を0.3質量%以上、5質量%以下含有する層を最外層に有することが好ましい。より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。ただし、粒子を添加し過ぎると複合体の破断伸度を低下させることがある。このため、本発明を阻害しない範囲にて粒子を添加させることが重要である。なお、本発明において粒子として、平均一次粒径として0.005μm以上のものを用いる。ここでいう粒径とは数平均粒径のことを示し、フィルムの断面内において観察される粒子径を意味する。形状が真円でない場合には同面積の真円に変換した値を粒子径とする。ここで、数平均粒径Dnは次の(1)~(4)の手順により求めることができる。
(1)まず、ミクロトームを用いて、フィルム断面を厚み方向に潰すことなく切断し、走査型電子顕微鏡を用いて、拡大観察画像を得る。このとき、切断はフィルムTD方向(横方向)と平行方向になるよう行なう。
(2)次いで、該画像中の断面内に観察される各粒子について、その断面積Sを求め、次式にて粒径dを求める。
d=2×(S/π)1/2
(3)得られた粒径dと、樹脂粒子の個数nを用いて、次式によりDnを求める。
Dn=Σd/n
但し、Σdは観察面内における粒子の粒径の総和、nは観察面内の粒子の総数。
(4)上記(1)~(3)を、5箇所場所を変えて実施し、その平均値を粒子の数平均粒径とする。なお、観察点1箇所に付き、2500μm以上の領域にて上記評価を実施する。
無機粒子としては、例えば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミ、マイカ、カオリン、クレーなどを使用することができる。また、有機粒子としては、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物などを構成成分とする粒子を使用することができる。なかでも、湿式および乾式シリカ、アルミナ、炭酸カルシウムなどの無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする粒子を使用することが好ましい。さらに、これらの無機粒子および有機粒子は二種以上を併用してもよい。また、最大表面高さを制御するためにフィルム表面にエンボス加工、サンドブラスト加工といった凹凸加工を施すことも好ましい。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、構成体としたときの成形追従性、成形後の反りの観点から、9μm以上30μm以下であることが好ましい。最も好ましくは、12μm以上28μm以下である。必要とされる絞り深さに依存するが、9μm未満であると成形性に劣ることがあり、30μm以上であると剛性が高くなり成形後に反りが発生することがある。
本発明に用いられるポリエステルフィルムには接着層との接着性を向上させるために、表面に、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、アンカーコート層を設けるなどの表面処理を施すことも好ましい方法として挙げられる。アンカーコート層の形成方法としては、樹脂をフィルム表面に被覆(複合溶融押出法、ホットメルトコート法、水以外の溶媒、水溶性および/または水分散性樹脂からのインライン、オフラインコート法など)する方法が挙げられる。なかでも、配向結晶化が完了する前のフィルムの一方の面に被膜塗剤を塗布し、少なくとも一方向に延伸し、熱処理して、配向結晶化を完了させるインラインコーティング法が均一な被膜形成や生産性の点で好ましい。また、アンカーコート層を設ける場合、樹脂としては、特に限定されるものではないが、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ビニル系樹脂、塩素系樹脂、スチレン系樹脂、各種グラフト系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などを使用することができ、これらの樹脂の混合物を使用することもできる。密着性の観点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、またはウレタン系樹脂を用いるのが好ましい。ポリエステル系樹脂を水系塗液として用いる場合には、水溶性あるいは水分散性のポリエステル樹脂が用いられるが、このような水溶性化あるいは水分散化のためには、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合させることが好ましい。またアクリル樹脂を水性塗液として用いる場合には、水に溶解あるいは分散された状態にする必要があり、乳化剤として界面活性剤(例えば、ポリエーテル系化合物などが挙げられるが、限定されるものではない。)を使用する場合がある。また、本発明に用いられるアンカーコート層には、さらに接着性を向上させるために、樹脂に各種の架橋剤を併用することができる。架橋剤樹脂としては、メラミン系、エポキシ系、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられる。
本発明のポリエステルフィルムは、各種素材と複合化して使用することができる。例えば金属箔としては、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル、チタン、錫、銀、金、亜鉛、鉄など目的に応じて使用することができる。中でも、成形性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、強度、経済性の観点からアルミニウムを含有する層であることが好ましい。金属箔は、アルミニウム単体であってもよく、銅、亜鉛、マンガン、マグネシウム、シリコン、リチウム、鉄などが添加されたアルミニウム合金であってもよい。金属箔に対してアルミニウムの含有量が95質量%以上であることが好ましく、純アルミニウム系または、アルミニウム/鉄合金が好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムと各種素材とを複合化する方法としては、特に限定されないが、密着性の観点から接着剤からなる接着層を設けて接着させるドライラミネーションが好ましく用いられる。用いる接着剤としては、熱硬化タイプでも熱可塑タイプでも構わないが、熱硬化タイプが好ましい。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリルニトリル- ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート- ブタジエン共重合体、クロロプレン、ポリブタジェン等のゴム系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリブタジエン、あるいはこれらの樹脂のカルボキシル変性物、エポキシ系樹脂、セルロース系誘導体、エチレン酢酸ビニル系共重合体、ポリエチレンオキサイド、アクリル系樹脂、リグニン誘導体等からなる接着剤が挙げられる。ポリエステルフィルムの表面処理面と金属箔との密着性の点からは、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる接着剤が好ましい。
本発明では、ヒートシール性およびバリア性向上の観点から前記複合体にさらにシーラント層が設けられたポリエステルフィルム/接着層/金属箔/シーラント層の順に配置された構成体として使用することができる。上記構成体を電池外装用として用いることで、耐電解液性、絞り成形性に優れた電池包装材とすることができる。シーラント層としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン-ブテン共重合体等のエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、メチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル単量体と共重合し得るエチレン、プロピレン、酢酸ビニル、塩化アリル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルエーテル等と塩化ビニルとの共重合体及びこれらの混合物等の塩化ビニル系樹脂が挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは電池外装用に好ましく用いられる。電池外装には、電池性能維持のために、水蒸気の進入を防ぐ水蒸気バリア性、電解液で膨潤しない、および製造工程時の電解液漏れによる最外装が劣化しないなどの耐電解液性、高容量化へのニーズに対応する深絞り成形性が求められる。本発明のポリエステルフィルムを用いることによりポリアミドを用いた構成並に深絞り成形性に優れ、電池外装用途に適用することで工程不具合なく生産性に優れ、かつ高容量化に対応することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、医薬包装用途にも好ましく用いられる。医薬包装は、内容物の劣化を防ぐために、ガスバリア性、水蒸気バリア性が必要であり、印刷を施す仕様に対応できるように印刷適性が求められる。さらに、様々な形状な内容物に対応できるような深絞成形性へのニーズが高まっている。高度なガスバリア性、水蒸気バリア性を達成するためには、金属箔を有していることが好ましいが、金属箔は深絞り成形が困難なため、フィルムを積層させ、フィルムに追従して成形させる必要がある。本発明のポリエステルフィルムを用いることにより、各種素材を積層した複合体の深絞り成形性が良好であり、医薬包装用途に適用することで様々な形状に対応した医薬品に適用することができる。
本発明のポリエステルフィルム製造方法の概略を例示する。まずポリエステフィルムを製膜する。そのために、上述のポリエステル原料を公知の方法で溶融押出してポリエステルが結晶化しないように10℃~35℃程度に調整されたキャスティングドラム上に密着性させてキャストシートを得る。密着方法は静電印加法やエアーナイフ法など公知の方法でよい。次いで、得られたキャストシートを公知の方法で二軸に延伸して配向させる。二軸延伸は逐次二軸、同時二軸、チューブラー法など公知の方法でよい。延伸の際、場合によっては一軸延伸後にアンカーコ-ト層をコーティングしてもよい。ここで、一軸目と二軸目の延伸倍率の積である延伸面積倍率を12.25倍以上にすることは少なくともポリエステルフィルム長手方向と幅方向の加工硬化指数平均値を1.6以上にさせる上で重要である。また、同様の理由により延伸温度は樹脂のガラス転移温度以上、ガラス転移温度+15℃以下とすることが好ましい。ただし、本発明の効果が得られるのであればこの限りではない。二軸延伸後は寸法安定性などの観点から熱処理を施すことが好ましい。熱処理温度は剛直非晶量を制御する上で重要であり、200℃以下とすることが重要である。また、寸法安定性の観点から熱処理温度は150℃以上であることが好ましい。この際、熱処理時間は1秒~120秒以下の範囲で熱処理することが好ましい。熱処理をした後は各種素材との密着性など必要に応じてコロナなどの表面処理をしてポリエステルフィルムを得る。
以下において、実施例7、8、12は、参考例7、8、12と読み替えるものとする。
(評価方法)
以下の方法でポリエステルフィルム、複合体および構成体の製造、評価を行った。

(1)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H-NMRおよび13C-NMRを用いて各モノマー残基や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量した。
(2)フィルムの厚み、層厚み
フィルム全体の厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムを200mm×300mmに切り出し、各々の試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均して求めた。また、フィルム、複合体および構成体の各層厚みについては、サンプルをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出し、該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察することによって求めた。
(3)ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向
本発明では、フィルムの任意の一方向(0°)、該方向から15°、30°、45°、60°、75°、90°、105°、120°、135°、150°、165°の方向の破断強度を測定し、最も破断強度の高かった方向を幅方向とし、幅方向と直交する方向を長手方向とした。なお、破断強度は(8)ポリエステルフィルムの破断強度に示した方法により得ることができる。
(4)固有粘度
本発明のポリエステルフィルムをオルトクロロフェノール中、25℃でオストワルド粘度計を用いて溶液粘度を測定し、当該溶液粘度から算出した。固有粘度の単位は[dl/g]で示される。なお、n数は3とし、その平均値を採用した。
(5)ポリエステルフィルムの面配向係数fn
アッベ屈折率計を用いて面配向係数を測定する層(以下、測定層とする)をガラス面に密着させ、次いでナトリウムD線を光源として、a方向、b方向、厚み方向の屈折率(Nx、Ny、Nz)を測定し、下記式より測定層の面配向係数fnを求めた。
・面配向係数fn=(Nx+Ny)/2-Nz
(6)破断伸度
フィルムおよび複合体を長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。25℃、63%Rhの条件下で、引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA-100”)を用いてクロスヘッドスピード300mm/分、幅10mm、試料長50mmとしてフィルムの長手方向、幅方向について、引張試験を行い、破断した際の伸度を読み取った値を破断伸度とする。測定は5回行い、その平均を用いた。
(7)結晶化度
JIS K7122 (1999年)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置ロボットDSC-RDC220を、データ解析には“ディスクセッション”SSC/5200を用いて、フィルムサンプル5mgをアルミニウム製受け皿上で室温から300°まで昇温速度20℃/分で昇温し、300℃で5分間保持した。そのとき、測定によって得られた吸熱ピーク熱量ΔHm、冷結晶化熱量ΔHc、完全結晶PETの融解熱量ΔHm0(140.1J/g)より、下記式によって算出した。
結晶化度(%)=(ΔHm-ΔHc)/ΔHm0x100
(8)剛直非晶量
剛直非晶量は、測定によって得られた可動非晶量、結晶化度より、以下の計算式にて算出した。
剛直非晶量(%)=100-(可動非晶量+結晶化度)。
ポリエチレンテレフタレート完全非晶物の比熱差理論値=0.4052J/(g℃)
また、本発明ではポリエチレンテレフタレートの完全非晶物の比熱差理論値を参照した。
尚、可動非晶量は以下の通り測定した。
TA Instruments社製温度変調DSCを用い、試料5mgを窒素雰囲気下、0℃から150℃まで2℃/minの昇温速度、温度変調振幅±1℃、温度変調周期60秒で測定した。測定によって得られたガラス転移温度での比熱差を求め、以下の式より算出した。
可動非晶量(%)=(比熱差)/(ポリエステル完全非晶物の比熱差理論値)×100
ポリエチレンテレフタレート完全非晶物の比熱差理論値=0.4052J/(g℃)
また、本発明ではポリエチレンテレフタレートユニットが70モル%以上であるものについては、ポリエチレンテレフタレートの完全非晶物の比熱差理論値を参照した。
(9)ガラス転移温度Tg、融点(融解吸熱ピーク温度Tm)
JIS7122(1999)に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツル製EXSTAR DSC6220)を用いて、窒素雰囲気中で3mgの樹脂を30℃から300℃まで20℃/minの条件で昇温する。次いで、300℃で5分保持した後、40℃/minの条件で30℃まで降温する。さらに、30℃で5分保持した後、30℃から300℃まで20℃/minの条件で昇温する。この昇温時に得られるガラス転移温度を下記式(i)により算出した。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2・・・(i)
ここで補外ガラス転移開始温度は、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度とする。補外ガラス転移終了温度は、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度とする。また、樹脂の結晶融解に伴う吸熱ピークのピークトップを融点(融解吸熱ピーク温度Tm)とした。
(10)加工硬化指数
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。25℃、63%Rhの条件下で、引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA-100”)を用いてクロスヘッドスピード300mm/分、幅10mm、試料長50mmとしてフィルムの長手方向、幅方向について、引張試験を行い、初期長をL(mm)、5%伸長時の長さをL(mm)、5%伸長時の公称応力をP(MPa)、60%伸長時の長さをL(mm)、60%伸長時の公称応力をP(MPa)としたとき、5%伸長時の真ひずみを(1)式、60%伸長時の真ひずみを(2)式、5%伸長時の真応力を(3)式、60%伸長時の真応力(4)式よりそれぞれ得られた値とする。(1)~(4)から得られた値より、X軸を真ひずみ、Y軸を真応力としたときに成す式から得られる傾きを加工硬化指数とした。これを長手方向、幅方向につき、それぞれ5回ずつ測定したときの平均値を用いた。
5%伸長時の真ひずみ=Ln(L/L)・・・(1)
60%伸長時の真ひずみ=Ln(L/L)・・・(2)
5%伸長時の真応力=P(1+Ln(L/L))・・・(3)
60%伸長時の真応力=P(1+Ln(L/L))・・・(4)
※Ln:自然対数
(11)ポリエステルフィルム幅方向、長手方向の150℃熱収縮率
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して150℃に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し加熱処理を行った。熱処理後の標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、熱収縮率とした。測定は長手方向および幅方向に5サンプル実施して平均値で評価を行った。
(12)ポリエステルフィルムの動摩擦係数
東洋精機(株)製スリップテスターを用いて、JIS-K7125(1999年)に準じて、フィルムの両面を重ねて摩擦させた時の初期の立ち上がり後の抵抗値の安定領域を測定し、動摩擦係数μdとした。サンプルは、幅80mm、長さ200mmの長方形とし、長方形の長手方向となるようにロールから3セット(6枚)切り出した。3回測定を行い、平均値を求めた。
(13)絞り成形性
(a)構成体の作成方法
構成体は本発明のポリエステルフィルムまたはポリアミドフィルム(ここでは興人製ボニールRX25μmを用いた)と金属箔とを接着層を介して接着させることで得る。また、接着層を構成する接着剤としてウレタン系接着剤である東洋インキ製“AD502”を主剤、同社のCAT10Lを架橋剤として用いAD502、CAT10L、酢酸エチルを15:1.5:25の質量比となるように混合した塗剤をドライラミネート法にて、5g/mとなるように均一にポリエステルフィルムまたはポリアミドフィルムの表面処理を施した面に塗布し、金属箔の化成処理を施していない面とポリエステルフィルムまたはポリアミドフィルム接着剤塗布面とを80℃に加熱したロールに0.5MPaで押し付けながら加熱圧着し、巻き取った。その後、60℃で7日間エージング処理を施し、構成体を得た。
(b)複合体の作成方法
(a)で作成した構成体金属箔の上に、シーラント層としてマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂とポリプロピレンとを共押出しした2層共押出しフィルム(マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂層:20μm、ポリプロピレン樹脂層:60μm)を、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂層が化成処理を施した金属箔側と接着するようにし、ラミネーターを用いて実施例、比較例に記載の複合体と金属箔側とを加熱圧着(150℃、0.3MPa、2m/min)させることで、ポリエステルフィルムまたはポリアミドフィルム/接着層/金属箔/シーラント層となる構成体を作成した。
(b)で得られた構成体を、100mm×100mm大に切り出し、50mm×30mmの矩形状の雄型(構成体と接触する面と側面が成す角のR:2mm、図1)とこの雄型とのクリアランスが0.5mmの雌型(構成体と接触する面と側面が成す角のR:2mm、図1)からなる金型を用いて、雄型側にシーラント側がくるように雌型上に構成体をセットし、プレス成形(加圧:0.1MPa、ワンショット10秒、)を行い、下記の基準で評価を行った。尚、深絞り成形後にラミネート材にピンホールや破れが発生した場合を深絞り成形ができなかった、とした。
S:ポリアミド構成よりも1mm以上深絞り成形ができた。
A:ポリアミド構成と同等の深絞り成形ができた
B:A評価よりも1mm以内低い範囲で絞り深さが成形できた。
C:B評価よりも1mm以内低い範囲で絞り深さが成形できた。
D:C評価よりも深絞り成形に劣っていた。
(14)押出ラミネート時のシワ
(13)絞り成形性(b)複合体の作成方法に記載の方法にて得られた複合体から切り出した任意60000mm外観を目視し、以下の通り判定を行った。
○:フィルム全体にシワが見られなかった。
△:5mm以上のシワが見られた。
(ポリエステルフィルムの製造)
製膜に供したポリエステルフィルムを構成する樹脂は主原料、副原料、粒子マスターを各実施例、各比較例につき表1に記載の種類、割合で混合した。また、各実施例および各比較例に用いた主原料、副原料、粒子マスターは以下のように準備した。
・ポリエステルA
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.72)。
・ポリエステルB
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.82)。
・ポリエステルC
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.92)。
・ポリエステルD
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分として1-4,ブタンジオール成分が100モル%であるポリブチレンテレフタレート樹脂(固有粘度1.2)。
・ポリエステルE
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
・粒子マスターA
ポリエステルA中に平均粒子径1.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター。
・粒子マスターB
ポリエステルD中に平均粒子径1.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有したポリブチレンテレフタレート粒子マスター。
(塗剤A)実施例1~11、比較例1~3
・メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N-メチロールアクリルアミド=63/35/1/1質量%の共重合組成から成るアクリル樹脂: 3.00質量%
・メラミン架橋剤: 0.75質量%
・コロイダルシリカ粒子(平均粒径:80nm): 0.15質量%
・ヘキサノール: 0.26質量%
・ブチルセロソルブ: 0.18質量%
・水: 95.66質量%
(金属箔)
本発明で使用した金属箔は以下のもの用いた。
・金属箔A
金属箔の両面に化成処理としてクロム酸クロメート処理を施した厚さが40μmの日本製箔製アルミニウム“8021”。
(実施例1~12、比較例1~2)
押出機を用い、表1に記載のポリエステル種、粒子マスターをそれぞれ真空乾燥機にて180℃4時間乾燥し、水分を十分に除去した後、表1に記載のとおり押出機に主原料および副原料、粒子マスターを投入し、280℃にて溶融した。次いで押出機から溶融押出された樹脂を、口金から吐出された樹脂を25℃に冷却されたキャストドラム上に冷却固化して未延伸シートを得た。その際、Tダイのリップと冷却ドラム間の距離は35mmに設定し、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して14kVの電圧で静電印加させ、冷却ドラムに密着をさせた。また、未延伸シートの冷却ドラムの通過速度は25m/分、未延伸シートの冷却ドラムとの接触長さは、2.5mとした。
続いて、該未延伸シートを表2に記載した温度に加熱したロール群で予熱した後、表2に記載した温度に制御した加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)にそれぞれ表2に示した倍率に延伸し、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。
この一軸延伸フィルムに空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面にアンカーコート層として塗剤Aを超音波分散させながら混合し、#4メタリングバーにてキャストと接着した面に均一に塗布して表面処理を施した。次いで、一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内を表2に記載の温度に制御した予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に表2に記載した温度に保たれた加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)にそれぞれ表2に示した倍率に延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで表2に示す熱処理温度にて20秒間の熱処理を施し、さらに表2に示す弛緩温度で表2示す弛緩率にて弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷し、表1に示す厚さのポリエステルフィルムを得た。ポリエステルフィルムの特性は表3に示したとおりである。
得られたポリエステルフィルムの表面処理面側と金属箔Aが接着するようにドライラミネート法によって、ウレタン系接着剤である東洋インキ製“AD502”AD502、CAT10L、酢酸エチルを25:15:2の比率となるように混合した塗剤を接着層として用いて張り合わせた。ここで、接着剤塗布量は固形分としてポリエステルフィルム表面処理面側に5g/mとし、張り合わせ後に60℃、144時間のエージング処理をして複合体を得た。複合体の特性は表3に示したとおりである。
得られた複合体の金属箔A上に、シーラントとしてマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂とポリプロピレンとを共押出しした2層共押出しフィルム(マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂層:20μm、ポリプロピレン樹脂層:60μm)を、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂層が金属箔側に位置するようにし、ラミネーターを用いて加熱圧着(160℃、0.3MPa、2m/min)させることで積層させ、ポリエステルフィルム/接着層/アルミニウム箔/シーラントとなる構成体を作成した。得られた構成体の評価をした結果は表3に示したとおりであり、実施例1~12については絞り成形性に優れていることが確認できた。
Figure 0007615593000001
Figure 0007615593000002
Figure 0007615593000003
本発明のポリエステルフィルムは加工硬化指数、固有粘度、剛直非晶量を特定範囲とすることでポリアミドを用いた構成同等以上の絞り成形性を発現し、高容量化対応の電池外装用構成体、様々な形状に対応可能な医薬包装用構成体に好適に使用することができる。
1 構成体
2 雄型金型
3 雌型金型
4 成形体

Claims (6)

  1. 長手方向と幅方向の加工硬化指数がともに1.6以上3.0以下、かつ長手方向と幅方向の加工硬化指数の差が0.5以下であって、固有粘度が0.66以上0.95以下、剛直非晶量が28%以上60%以下であり、長手方向、幅方向の150℃熱収縮率がいずれも3.5%以上10%以下であるポリエステルフィルム(但し、「フィルム面における任意の方向を0°とし、その方向に対して時計回りに45°、90°、135°の4方向における弾性率が、いずれの方向についても2.0~3.5MPaの範囲内にあるポリエステルフィルム」を除く。)
  2. 融点が248℃以上である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. 結晶化度が25%以上40%以下である請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
  4. 長手方向および幅方向の破断伸度がいずれも100%以上である請求項1~3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  5. 電池外装用に用いられる請求項1~4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  6. 医薬包装用に用いられる請求項1~4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。

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