図1は実施例1に係る画像形成システム1Sの概略図である。本実施例の画像形成システム1Sは、画像形成装置1、画像読取装置2、原稿送り装置3及び後処理装置4によって構成される。画像形成システム1Sは、記録材であるシートに画像を形成し、必要に応じて後処理装置4によってシートに処理を施して出力する。以下、各装置の簡単な動作を説明した後、後処理装置4について詳細な説明を行う。
原稿送り装置3は、原稿トレイ18に載置された原稿を画像読取部16、19に搬送する。画像読取部16、19はそれぞれ原稿面から画像情報を読み取るイメージセンサであり、1度の原稿搬送で原稿の両面の読み取りが行われる。画像情報を読み取られた原稿は原稿排出部20に排出される。また、画像読取装置2は駆動装置17により画像読取部16を往復移動させることで、原稿台ガラスにセットされた静止原稿(ブックレット原稿などの原稿送り装置3が使用できない原稿を含む)から画像情報を読み取ることができる。
画像形成装置1は、直接転写方式の画像形成部1Bを備えた電子写真装置である。画像形成部1Bは、感光ドラム9を備えたカートリッジ8と、カートリッジ8の上方に配置されたレーザスキャナユニット15と、を備えている。画像形成動作を行う場合、回転する感光ドラム9の表面が帯電させられ、レーザスキャナユニット15が画像情報に基づいて感光ドラム9を露光することでドラム表面に静電潜像を書き込む。感光ドラム9に担持された静電潜像は帯電したトナー粒子によってトナー像に現像され、感光ドラム9と転写ローラ10とが対向する転写部にトナー像が搬送される。画像形成装置1のコントローラ(後述のプリンタ制御部100)は、画像読取部16,19によって読み取られた画像情報又は外部のコンピュータからネットワークを介して受信した画像情報に基づいて画像形成部1Bによる画像形成動作を実施する。
画像形成装置1には、記録材としてのシートを1枚ずつ所定の間隔で給送する給送装置6を複数備えている。給送装置6から給送されたシートはレジストレーションローラ7にて斜行を補正された後に転写部に搬送され、転写部において、感光ドラム9に担持されたトナー像を転写される。シート搬送方向における転写部の下流には定着ユニット11が配置されている。定着ユニット11は、シートを挟持して搬送する回転体対と、トナー像を加熱するためのハロゲンランプ等の発熱体とを有し、シート上のトナー像を加熱及び加圧することで画像の定着処理を行う。
画像形成されたシートを画像形成装置1の外部に排出する場合、定着ユニット11を通過したシートは水平搬送部14を介して後処理装置4に搬送される。両面印刷において第1面の画像形成が終了したシートの場合、定着ユニット11を通過したシートは反転ローラ12に受け渡され、反転ローラ12によってスイッチバック搬送され、再搬送部13を介して再びレジストレーションローラ7に搬送される。そして、再び転写部及び定着ユニット11を通過することで第2面に画像を形成された後、水平搬送部14を介して後処理装置4に搬送される。
上記の画像形成部1Bはシートに画像を形成する画像形成手段の一例であり、感光体に形成したトナー像を中間転写体を介してシートに転写する中間転写方式の電子写真ユニットを用いてもよい。また、インクジェット方式やオフセット印刷方式の印刷ユニットを画像形成手段として用いてもよい。
(後処理装置)
後処理装置4は、シートに綴じ処理を施す綴じ処理部4Aを有し、画像形成装置1から受け取ったシートに綴じ処理を施してシート束として排出する。また、後処理装置4は、画像形成装置1から受け取ったシートに綴じ処理を施さずに単に排出することもできる。
後処理装置4には、シートを搬送する搬送路として受入パス81、内排出パス82、第1排出パス83及び第2排出パス84が設けられており、シートを排出する排出先として上排出トレイ25及び下排出トレイ37が設けられている。受入パス81は画像形成装置1からシートを受け取って搬送する本実施例の第1搬送路であり、内排出パス82は綴じ処理部4Aへ向けてシートを搬送する本実施例の第2搬送路である。第1排出パス83はシートを上排出トレイ25に排出する搬送路であり、第2排出パス84はシートを下排出トレイ37に排出する搬送路(第3搬送路)である。
受入パス81には、入口ローラ21、バッファ前ローラ22及び入口センサ27が配置されている。第1排出パス83には反転手段としての反転ローラ24が配置されている。内排出パス82には、内排出ローラ26、中間搬送ローラ28、蹴り出しローラ29及び中間積載前センサ38が配置されている。第2排出パス84には束排出ローラ36が配置されている。入口センサ27及び中間積載前センサ38は、いずれも、シート処理装置内の搬送路における所定の検知位置でシートの通過を検知するシート検知手段の例である。入口センサ27及び中間積載前センサ38としては、後述するように、光を用いて検知位置におけるシートの有無を検出する光学センサを用いることができる。
以下、後処理装置4におけるシートの搬送経路を説明する。ただし、反転ローラ24を含むバッファ部4Bによるバッファ動作、及び綴じ処理部4Aの詳細な構成及びその動作については後述する。
画像形成装置1の水平搬送部14から排出されるシートは、入口ローラ21によって受け取られ、受入パス81を通ってバッファ前ローラ22へ向けて搬送される。入口センサ27は、入口ローラ21とバッファ前ローラ22との間の検知位置においてシートを検知する。バッファ前ローラ22は、入口ローラ21から受け取ったシートを第1排出パス83へ向けて搬送する。
なお、入口センサ27がシートの後端の通過を検知した後の所定のタイミングで、バッファ前ローラ22はシートの搬送速度を水平搬送部14における搬送速度より速い速度まで加速する。また、入口ローラ21によるシートの搬送速度を水平搬送部14よりも大きく設定し、バッファ前ローラ22よりも上流の入口ローラ21で搬送速度を加速してもよい。この場合、水平搬送部14の搬送ローラとこれを駆動するモータとの間にワンウェイクラッチを設置し、入口ローラ21によってシートが引っ張られたとしても搬送ローラが空転するように構成すると好適である。
シートの排出先が上排出トレイ25の場合、反転ローラ24はバッファ前ローラ22から受け取ったシートを上排出トレイ25に排出する。この場合、シート後端がバッファ前ローラ22を通過した後の所定のタイミングで反転ローラ24は所定の排出速度まで減速する。
シートの排出先が下排出トレイ37の場合、反転ローラ24はバッファ前ローラ22から受け取ったシートのスイッチバック搬送を行ってシートを内排出パス82に搬送する。反転ローラ24によるシートの排出方向において反転ローラ24よりも上流側で受入パス81及び内排出パス82が第1排出パス83から分岐する分岐部には、逆流防止弁23が配置されている。逆流防止弁23は、反転ローラ24によってスイッチバックされたシートが受入パス81に逆流することを規制する機能を有する。
内排出パス82に配置された内排出ローラ26、中間搬送ローラ28及び蹴り出しローラ29は、反転ローラ24から受け取ったシートを順に受け渡しながら綴じ処理部4Aに設けられた中間積載部90へ向けて搬送する。このとき、後述するドラムガイド61により、既に中間積載部90に排出された先行シートと新たに中間積載部90に排出される後続シートとの衝突が防がれる。また、中間積載前センサ38は、中間搬送ローラ28と蹴り出しローラ29との間でシートを検知する。
綴じ処理部4Aは、本実施例の綴じ手段であるステイプラ51を有し、内排出パス82から受け取った複数枚のシートを整合した後、ステイプラ51によってシート束の所定位置を綴じる。綴じ処理部4Aの詳細な構成及び動作については後述する。綴じ処理部4Aによって綴じられたシート束は、第3搬送路としての第2排出パス84を介して束排出ローラ36に受け渡され、排出手段としての束排出ローラ36によって下排出トレイ37に排出される。
上排出トレイ25及び下排出トレイ37は、いずれも後処理装置4の筐体に対して上下に移動可能である。後処理装置4は、上排出トレイ25及び下排出トレイ37におけるシートの上面位置(シートの積載高さ)を検知するシート面検知センサを備えており、いずれかのセンサがシートを検知すると、対応するトレイをA2,B2方向に下降させる。また、上排出トレイ25又は下排出トレイ37のシートが取り除かれたことをシート面検知センサによって検知すると、そのトレイをA1,B1方向に下降させる。従って、上排出トレイ25及び下排出トレイ37は、積載されたシートの上面を一定に保つように昇降制御される。
(バッファ動作)
次に、図2~図4を用いてバッファ動作の詳細な説明を行う。図2はバッファ部4Bの概略図、図3及び図4の各図はバッファ動作の様子を示している。
図2に示すように、本実施例のバッファ部4Bは、反転ローラ24(反転ローラ対)、逆流防止弁23及び内排出ローラ26(中間ローラ対)を含んでいる。また、受入パス81に配置される入口ローラ21、バッファ前ローラ22及び入口センサ27もバッファ動作に関与する。
以下、入口ローラ21とバッファ前ローラ22との間のシート搬送路(受入パス81の一部)を形成する搬送ガイドを「入口上ガイド40」及び「入口下ガイド41」とする。また、内排出ローラ26と中間搬送ローラ28との間のシート搬送路(内排出パス82の一部)を形成する搬送ガイドを「内排出上ガイド46」及び「内排出下ガイド47」とする。さらに、バッファ前ローラ22と反転ローラ24との間で、入口上ガイド40と同じ側からシートを案内する搬送ガイドを「反転上ガイド42」とする。また、反転ローラ24と内排出ローラ26との間で、内排出下ガイド47と同じ側からシートを案内する搬送ガイドを「反転下ガイド43」とする。
入口ローラ21が搬送するシートは、入口上ガイド40及び入口下ガイド41によってバッファ前ローラ22に案内される。入口上ガイド40には入口センサ27が配置されている。入口センサ27としては、受入パス81へ向けて赤外光を照射し、シートからの反射光を検出することで検知位置におけるシートの有無を判定する反射式フォトセンサを用いることができる。この場合、入口下ガイド41の入口センサ27に対向する部分には、シートが通過していない場合に赤外光が反射しないように、入口センサ27のスポット光の直径以上の大きさの穴を設ける。
バッファ前ローラ22の下流であって、第1排出パス83に対して受入パス81及び内排出パス82が分岐する部分には、逆流防止弁23が配置されている。逆流防止弁23は、内排出上ガイド46に対して回転軸23aを介して回転可能に支持されている。また、逆流防止弁23は、不図示のバネにより、回転軸23aの軸方向(シートの幅方向)から見て逆流防止弁23の先端部が反転上ガイド42と重なる位置(図2の位置)へ向けてC2方向(図中時計回り方向)に常時付勢されている。また、上記のバネのバネ定数は、バッファ前ローラ22から送り出されるシートが逆流防止弁23に当接した際に、バネの付勢力に抗して逆流防止弁23がC1方向(図中反時計回り方向)に回動する程度の大きさに設定されている。従って、逆流防止弁23は、バッファ前ローラ22から反転ローラ24へ向かって搬送されるシートの通過を許容する。その一方で、受入パス81におけるシートの後端が逆流防止弁23を通過すると、逆流防止弁23はC2方向に回動して、反転ローラ24からバッファ前ローラ22にシートが逆流することを規制する。
反転ローラ24は、反転上ローラ24a及び反転下ローラ24bによって構成される。本実施例では、反転上ローラ24a及び反転下ローラ24bの両方に駆動力が入力され、また、反転上ローラ24a及び反転下ローラ24bの回転は常時同期している。
反転ローラ24は、プランジャソレノイド45によって当接及び離間を行うことが可能に構成されている。具体的には、反転上ローラ24aのローラ軸に離間レバー44の一端が接続され、離間レバー44は反転上ガイド42に対してレバー支点軸44aを中心に回転可能に支持されている。離間レバー44の他端に設けられたソレノイド接続軸44bは、プランジャソレノイド45のプランジャに連結されている。
プランジャソレノイド45が通電されると、磁力によってプランジャがD1方向に引き付けられて離間レバー44がE1方向に回転し、反転ローラ24は離間状態(ローラ対のニップ部が開いた状態)となる。プランジャソレノイド45への通電が停止すると、反転上ローラ24aのローラ軸に接続された加圧バネ48の付勢力によって反転上ローラ24aが反転下ローラ24bに当接し、反転ローラ24は当接状態(ニップ部が閉じた状態)となる。このとき、反転上ローラ24aの移動に伴って離間レバー44はE2方向に回転し、プランジャソレノイド45のプランジャはD2方向へ移動する。
内排出ローラ26は、内排出パス82におけるシートの搬送方向において反転ローラ24に隣り合うローラ対であって、正転及び逆転が可能なローラ対である。つまり、内排出ローラ26は、反転ローラ24から綴じ処理部4Aに向かうシート搬送方向(内排出パス82の順送方向)、及び、綴じ処理部4Aから反転ローラ24に向かう逆送方向のいずれにもシートを搬送可能である。
次に、図3及び図4を用いてバッファ部4Bのバッファ動作について詳細な説明を行う。バッファ動作は、綴じ処理部4Aにおいて前の部のシート束に対する綴じ処理が完了するまでの間、次の部のシート束を構成する所定枚数のシートをバッファ部4Bで待機させる動作である。バッファ動作を行うことにより、画像形成システムは、画像形成装置1の生産性(単位時間当たりの画像出力枚数)を落とすことなく、綴じ処理を含む画像形成ジョブを実行することが可能となる。
以下、シートを区別するため、画像形成装置1から後処理装置4に受け渡される順番に、「シートS1」、「シートS2」、「シートS3」とする。また、シート搬送方向におけるシートの両端の内、入口ローラ21を先に通過するものを「第1端」とし、入口ローラ21を後から通過するものを「第2端」とする。また、画像形成装置1の水平搬送部14におけるシートの搬送速度をV1とし、後処理装置4の内部で搬送速度を加速した後の搬送速度をV2とする。
図3(a)は、受入パス81におけるシートS1の後端(第2端S1b)が入口センサ27の検知位置を通過した時点の様子を表している。入口センサ27がシートS1の第2端S1bの通過を検知すると、バッファ前ローラ22及び反転ローラ24はシートS1を速度V1から速度V2まで加速させる。このようにシートS1を加速することで後続するシートS2との間隔が広がり、反転ローラ24による反転動作(スイッチバック)に必要なシート間隔が確保される。図3(a)の時点では、反転ローラ24は反転前の回転方向R1に回転し、シートS1を上排出トレイ25に向かう方向に搬送している。
図3(b)は、受入パス81におけるシートS1の後端(第2端S1b)が逆流防止弁23を抜けた時点の様子を表している。反転ローラ24は、シートS1の後端(第2端S1b)が逆流防止弁23を抜けた後の所定のタイミングで回転を一時停止する。所定のタイミングは、入口センサ27がシートS1の後端(第2端S1b)の通過を検知したタイミングからの経過時間に基づいて決定される。
図3(c)は、反転ローラ24が反転後の回転方向である回転方向R2に回転を開始し、シートS1を内排出ローラ26に受け渡した後の様子を表している。内排出ローラ26は、回転方向R3に回転している状態でシートS1を受け取り、内排出パス82における順送方向にシートS1を搬送する。また、内排出パス82におけるシートS1の先端(第2端S1b)が逆流防止弁23の位置を通過した後に、受入パス81におけるシートS2の先端(第1端S2a)が逆流防止弁23に到達する。そのため、シートS1及びシートS2は搬送パスの分岐部においてすれ違うように搬送される。
図3(d)は、内排出パス82におけるシートS1の先端(第2端S1b)が内排出ローラ26から所定量搬送されて、内排出ローラ26が一時的に停止した時点の様子を表す。図3(c)に示す時点の後、受入パス81におけるシートS2の先端(第1端S2a)が反転ローラ24に到達する前にプランジャソレノイド45が通電される。これにより反転上ローラ24aがE1方向に移動し、反転ローラ24は離間している。シートS1は停止状態の内排出ローラ26によって保持されており、シートS1の一部は離間状態の反転ローラ24の間に位置している。そのため、バッファ前ローラ22によって受入パス81から第1排出パス83に送り込まれるシートS2は、シートS1の上を滑るようにして搬送される。なお、シートS2についても、入口センサ27がシートS2の後端(第2端S2b)の通過を検知した後にバッファ前ローラ22によって速度V1から速度V2まで加速されている。
図4(a)は、内排出ローラ26がシートS1の逆送方向への搬送を開始した後の状態を表している。内排出ローラ26は、シートS2が所定の位置まで搬送されたタイミングで回転方向R4に回転を開始し、シートS1を反転ローラ24に向かう逆送方向に搬送する。内排出ローラ26の目標速度はバッファ前ローラ22と同じく速度V2に設定されている。シートS1とシートS2の速度が略等しく(相対速度が略零に)なった後のタイミングで、プランジャソレノイド45への通電は停止される。これによって反転上ローラ24aがE2方向に移動して反転ローラ24が再び当接状態となり、シートS1とシートS2が重ねられた状態で反転ローラ24に挟持される。また、反転ローラ24は、内排出ローラ26に同期して回転方向R1の回転を開始しており、離間状態から当接状態に切替わるまでに、バッファ前ローラ22及び内排出ローラ26と等しい周速(速度V2)となるように制御される。
図4(b)は、受入パス81におけるシートS2の後端(第2端S2b)が逆流防止弁23を抜けた後の様子を表している。反転ローラ24は、シートS2の後端(第2端S2b)が逆流防止弁23を抜けた後の所定のタイミングで回転を一時停止する。このとき、重ねられた状態のシートS1,S2はいずれも移動を停止するが、シートS1の第2端S1bは、シートS2の第2端S2bに比べて、内排出パス82の順送方向に所定のずらし量kだけ突出している。このずらし量kは、図4(a)を用いて説明したように内排出ローラ26が所定のタイミングでシートS1の逆送方向への搬送を開始することで制御される。
図4(c)は、反転ローラ24が回転方向R2に回転を開始し、重ねられた状態のシートS1、S2を内排出ローラ26に受け渡した後の様子を表している。内排出ローラ26は、回転方向R3に回転している状態でシートS1、S2を受け取り、内排出パス82における順送方向にシートS1,S2を搬送する。シートS1,S2は、重ねられた状態のまま内排出パス82を介して綴じ処理部4Aに向かって搬送される。
なお、内排出パス82におけるシートS2の先端(第2端S2b)が逆流防止弁23の位置を通過した後に、3枚目のシートS3の受入パス81における先端(第1端S3a)が逆流防止弁23に到達する。そのため、シートS2及びシートS3は搬送パスの分岐部においてすれ違うように搬送される。また、シートS2が内排出ローラ26に挟持された後に反転上ローラ24aはE1方向に移動し、後続のシートS3を受け入れる準備として反転ローラ24は再び離間状態となる。
図4(d)は、反転ローラ24が離間状態から当接状態に切替わった後の様子を表している。反転ローラ24は、シートS2の第1端S2aが反転ローラ24から離脱した後に離間状態から当接状態に切替わり、シートS3を挟持する。この後、反転ローラ24がシートS3の反転動作を行い、シートS1,S2に続いてシートS3が内排出パス82を介して綴じ処理部4Aに搬送される。
(3枚以上のシートをバッファする場合)
以上の図3(a)~図4(d)では2枚のシートS1,S2をバッファする動作について説明したが、本実施例のバッファ部4Bは3枚以上のシートをバッファすることも可能である。この場合、内排出ローラ26は図4(c)に示すようにシートS1,S2を挟持している状態で停止し、3枚目のシートS3(第3シート)の第2端が入口センサ27によって検知された後の所定のタイミングでシートS1,S2を逆送方向に搬送する。そして、内排出ローラ26の搬送速度がバッファ前ローラ22の搬送速度に同期した後に反転ローラ24が当接状態となることで、反転ローラ24は重ねられた状態の3枚のシートS1,S2,S3を挟持する。このとき、内排出ローラ26が所定のタイミングでシートS1,S2の逆送を開始することにより、2枚目のシートS2の第2端は3枚目のシートの第2端に対して順送方向に所定のずらし量kだけ突出した状態となる。
また、反転ローラ24の開閉と内排出ローラ26の反転を適切な順序で繰り返すことにより、バッファ部4Bは例えば最大で5枚のシートをバッファすることが可能である。このように3枚以上のシートを重ねるバッファ機能を有することにより、後処理装置4は画像形成装置1の生産性を低下させることなくシートを処理することが可能となり、画像形成システム全体の生産性向上に貢献する。
(ローラの駆動制御)
次に、図3及び図4を用いて説明した動作を実現する制御構成について説明する。図5は、本実施例に係る画像形成システム1Sの構成を表すブロック図である。画像形成装置1にはプリンタ制御部100が搭載され、後処理装置4にはフィニッシャ制御部400が搭載されている。プリンタ制御部100及びフィニッシャ制御部400は、通信インタフェースを介して互いに接続され、協働して画像形成システム1Sの動作を制御する。
プリンタ制御部100は、中央処理装置(CPU)101と、メモリ102とを有する。CPU101は、メモリ102に格納されたプログラムを読み出して実行し、画像形成装置1を統括制御する。例えば、CPU101は、画像形成部1Bに画像形成動作を実行させる処理や、画像読取装置2に読取動作を実行させて画像情報を取得する処理を実行する。メモリ102は、読取専用メモリ(ROM)のような不揮発性の記憶媒体及びランダムアクセスメモリ(RAM)のような揮発性の記憶媒体を含み、プログラム及びデータの保管場所となると共にCPU101がプログラムを実行する際の作業スペースとなる。メモリ102は、画像形成装置を制御するためのプログラムを格納した非一過性の記憶媒体の例である。
プリンタ制御部100は、外部インタフェース(I/F)104を介してパーソナルコンピュータ又は携帯型情報機器等の外部機器に接続され、画像形成システム1Sに対する画像形成ジョブの実行指令等を受け付ける。また、プリンタ制御部100は、画像形成システム1Sのユーザインタフェースである操作表示部103に接続されている。操作表示部103は、ユーザに情報を提示する液晶パネル等の表示装置と、ユーザによる入力操作を受け付ける物理ボタン及び液晶パネルのタッチパネル機能部等の入力装置とを備える。プリンタ制御部100は、操作表示部103と通信を行うことにより、表示装置の表示内容を制御し、入力装置を介して入力された情報を受け取る。
本実施例の制御手段であるフィニッシャ制御部400は、中央処理装置(CPU)401と、メモリ402と、タイマー403とを有する。CPU401は、メモリ402に格納されたプログラムを読み出して実行し、後処理装置4を統括制御する。メモリ402は、読取専用メモリ(ROM)のような不揮発性の記憶媒体及びランダムアクセスメモリ(RAM)のような揮発性の記憶媒体を含み、プログラム及びデータの保管場所となると共にCPU401がプログラムを実行する際の作業スペースとなる。メモリ402は、後処理装置を制御するためのプログラムを格納した非一過性の記憶媒体の例である。
タイマー403は、計時機能を有する回路要素であり、RTC機能を有する集積回路や、CPU401が実行するプログラムのモジュールとして実装される。なお、タイマー403に限らず、プリンタ制御部100及びフィニッシャ制御部400が備える各機能は、ASIC等の独立したハードウェアとして制御部の回路上に実装してもよく、プログラムの機能単位としてソフトウェア的に実装してもよい。また、以下で説明するフィニッシャ制御部400の機能の一部又は全部を、プリンタ制御部100が担うようにすることもできる。
後処理装置4には、上述の入口センサ27、中間積載前センサ38、プランジャソレノイド45、ステイプラ51に加えて、シートを搬送するための駆動源又は綴じ処理部4Aの駆動源となる複数のモータ(M1~M11)が搭載されている。この内、入口モータM1は入口ローラ21を回転駆動する。バッファ前モータM2はバッファ前ローラ22を回転駆動する。反転モータM3は反転ローラ24を回転駆動する。内排出モータM4は内排出ローラ26を回転駆動する。蹴り出しモータM5は、蹴り出しローラ29を回転駆動する。主に綴じ処理部4Aによる綴じ処理及び綴じられたシート束の排出に関係する他のモータ(M6~M11)については後述する。なお、上記の各ローラはそれぞれ独立したモータ(M1~M5)によって駆動されるものとして説明したが、以下の説明に沿って各ローラの駆動状態を適切に制御可能な構成であれば、複数のローラを共通のモータによって制御することも可能である。
以下、各ローラの動作シーケンスについて、図6~図9のフローチャートに沿って説明する。フローチャートの各工程は、フィニッシャ制御部400のCPU401がメモリ402から読み出したプログラムを実行することで処理される。また、各動作シーケンスは、フィニッシャ制御部400が、下排出トレイ37をシートの排出先とする画像形成ジョブの実行を開始したことを表す通知をプリンタ制御部100から受け取った場合に開始される。
なお、以下の説明において、ローラの回転開始及び停止、並びに回転速度の変更とは、CPU401が各モータ(M1~M5)の駆動回路に対して回転速度や回転方向を指令する信号を送る処理を指している。また、「起動タイマー」や「停止タイマー」等は、タイマー403が、予め設定されている待機時間に基づいて、所定のイベントの発生時刻を基準として対象とする処理の実行タイミングをカウントダウンする機能を指す。
(入口ローラの動作シーケンス)
まず、図6を用いて、入口ローラ21の動作シーケンスを説明する。
S101では、入口ローラ21を目標速度V1で回転開始させる。S102では、入口センサ27が受入パス81におけるシート後端の通過を検知したか否かを判定しながら待機する。入口センサ27がシート後端の通過を検知すると、S103では搬送中のシートが最終シートか否かを判定し、最終シートではない場合、S102に戻って処理を継続する。S103で搬送中のシートが最終シートであった場合、S104で入口ローラ21の回転を停止して動作シーケンスを終了する。
(バッファ前ローラの動作シーケンス)
次に、図7を用いて、バッファ前ローラ22の動作シーケンスを説明する。
S201では、バッファ前ローラ22を目標速度V1で回転開始させる。S202では、入口センサ27が受入パス81におけるシート後端の通過を検知したか否かを判定しながら待機する。入口センサ27がシート後端の通過を検知すると、S203でバッファ前ローラ22を目標速度V2まで加速させる処理を開始すると共に、減速タイマーをセットする。
・減速タイマーの終了時刻は、シート後端がバッファ前ローラ22を通過する時刻又はそれ以降のタイミングとなるように設定される。
S204では、減速タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S205でバッファ前ローラ22を目標速度V1まで減速させる処理を開始する。S206では搬送中のシートが最終シートか否かを判定し、最終シートではない場合、S202に戻って処理を継続する。S206で搬送中のシートが最終シートであった場合、S207でバッファ前ローラ22の回転を停止して動作シーケンスを終了する。
(反転ローラの動作シーケンス)
次に、図8を用いて、反転ローラ24の動作シーケンスを説明する。
S301では、搬送中のシートがバッファ動作の対象になっているか否かを判定し、バッファ対象の場合はS302に進み、バッファ対象でない場合はS321に進む。バッファ動作の対象になるシートとは、綴じ処理部4Aにおいて複数部のシート束を形成する画像形成ジョブを実行する場合に、前の部のシート束に対する綴じ処理が完了する前に画像形成装置1から後処理装置4に受け渡される次の部のシートである。バッファ動作の対象となるシートの枚数は、プリンタ制御部100から通知される画像形成ジョブの内容(特に、画像形成装置1からシートが排出される間隔や、搬送方向におけるシートの長さ及びプロセス速度)に応じて予め定められている。
S302~S320は、バッファ対象のシートに対する動作の内容を表している。S302では、搬送中のシートが1枚目のシートか否かを判定し、1枚目のシートである場合はS303に進み、1枚目のシートでない場合はS307に進む。
S303では、反転ローラ24を目標速度V1、かつ、反転前の回転方向R1に回転開始させ、また、反転ローラ24をニップ部を形成する当接状態とする。S304では、入口センサ27が受入パス81におけるシート後端の通過を検知したか否かを判定しながら待機する。入口センサ27がシート後端の通過を検知すると、S305で反転ローラ24を目標速度V2まで加速させる処理を開始し、S306で各種タイマーをセットする。
・反転タイマーの終了時刻は、シートの第2端が逆流防止弁23を通過した後でかつ反転ローラを通過する前のタイミングとなるように設定される。
・離間タイマーの終了時刻は、反転ローラ24により反転されたシートの先端(シートの第2端)が内排出ローラ26に到達した後のタイミングとなるように設定される。
・停止タイマーの終了時刻は、内排出ローラ26の停止(図9のS408)と同期するように設定される。
S306の後は、搬送中のシートが1枚目のシートでない場合の処理と合流し、S313に進む。
S307では、入口センサ27が受入パス81におけるシート後端の通過を検知したか否かを判定しながら待機する。入口センサ27がシート後端の通過を検知すると、S308で各種タイマーをセットする。
・起動タイマーの終了時刻は、内排出ローラ26によるシートの逆送開始(図9のS411)と同期するように設定される。
・ニップタイマーの終了時刻は、下記のS310で回転を開始した反転ローラ24の周速が速度V2に到達した後のタイミングとなるように設定される。
・反転タイマーの終了時刻は、受入パス81におけるシートの後端が逆流防止弁23を通過した後でかつ反転ローラを通過する前のタイミングとなるように設定される。
・離間タイマーの終了時刻は、反転ローラ24により反転されたシートの先端(シートの第2端)が内排出ローラ26に到達した後のタイミングとなるように設定される。
・停止タイマーの終了時刻は、内排出ローラ26の停止(図9のS419)と同期するように設定される。
S309では、起動タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。ここで反転ローラ24が離間状態で待機している間に、搬送中のシートが反転ローラ24に到達し、内排出ローラ26によって挟持されているシートに重なる(図3(d))。カウントダウンが終了すると、S310で反転ローラ24を目標速度V1、かつ、反転前の回転方向R1に回転開始させる。S311では、ニップタイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S312でプランジャソレノイドへの通電を停止し、反転ローラ24を当接させる(図4(a))。このとき、反転ローラ24が内排出ローラ26と等しい周速で回転している状態で反転ローラ24が離間状態から当接状態に切替わる。S312の後は、搬送中のシートが1枚目のシートである場合の処理と合流し、S313に進む。
S313では、反転タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S314で反転ローラ24を一時停止させ(図4(b))、回転方向を反転前の回転方向R1から反転後の回転方向R2に切替えて、目標速度V2で再起動する。S315では、バッファ動作を継続するか(次に搬送するシートもバッファ動作の対象であるか否か)を判定し、継続の場合はS316に進む。S316では、離間タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S317でプランジャソレノイドへの通電を停止し、反転ローラ24を離間させる(図4(c))。S318では、停止タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S319で反転ローラを停止させる。S320では搬送中のシートが最終シートか否かを判定し、最終シートではない場合、S301に戻って処理を継続する。S320で搬送中のシートが最終シートであった場合、動作シーケンスを終了する。一方、S315でバッファ動作を継続しないと判定した場合、S331で停止タイマーが終了するまで待った後に、S332で停止タイマーを再セットする。再セットされた停止タイマーの終了時刻は、内排出パス82におけるシートの後端が反転ローラ24を抜けた後のタイミングに設定される。S332の後は、S318に合流して上述の処理が行われる。
S321~S329は、バッファ対象でないシートに対する動作を表している。この場合、反転ローラ24を当接状態としたまま、反転ローラ24によるシートの反転搬送が行われる。即ち、S321では、反転ローラ24を目標速度V1、かつ、反転前の回転方向R1に回転開始させ、また、反転ローラ24をニップ部を形成する当接状態とする。S322では、入口センサ27が受入パス81におけるシート後端の通過を検知したか否かを判定しながら待機する。入口センサ27がシート後端の通過を検知すると、S323で反転ローラ24を目標速度V2まで加速させる処理を開始し、S324で各種タイマーをセットする。
・反転タイマーの終了時刻は、シートの第2端が逆流防止弁23を通過した後でかつ反転ローラを通過する前のタイミングとなるように設定される。
・停止タイマーの終了時刻は、内排出パス82におけるシート後端が反転ローラ24を通過した後のタイミングとなるように設定される。
S325では、反転タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S326で反転ローラ24を一時停止させ、回転方向を反転前の回転方向R1から反転後の回転方向R2に切替えて、目標速度V2で再起動する。S327では、停止タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S328で反転ローラを停止させる。S329では搬送中のシートが最終シートか否かを判定し、最終シートではない場合、S301に戻って処理を継続する。S329で搬送中のシートが最終シートであった場合、動作シーケンスを終了する。
(内排出ローラの動作シーケンス)
次に、図9を用いて、内排出ローラ26の動作シーケンスを説明する。
S401では、入口センサ27が受入パス81におけるシート後端の通過を検知したか否かを判定しながら待機する。入口センサ27がシート後端の通過を検知すると、S402で、搬送中のシートがバッファ動作の対象になっているか否かを判定し、バッファ対象の場合はS403に進み、バッファ対象でない場合はS421に進む。S403では、搬送中のシートが綴じ処理部4Aで処理するシート束の1枚目のシートか否かを判定し、1枚目のシートである場合はS404に進み、1枚目のシートでない場合はS409に進む。
S404では、S401で入口センサ27がシート後端の通過を検知したタイミングに基づいて各種タイマーをセットする。
・起動タイマーの終了時刻は、反転ローラ24によって反転されたシートが内排出ローラ26に到達する前に内排出ローラ26が目標速度V2まで加速できるようなタイミングに設定される。
・停止タイマーの終了時刻は、内排出パス82におけるシート先端が反転ローラ24を通過して所定距離搬送されたタイミングとなるように設定される。
S405では、起動タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S406で内排出ローラ26を目標速度V2、かつ、内排出パス82における順送方向に沿った回転方向R3に回転開始させる。S407では、停止タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S408で内排出ローラ26を停止させ、S401に戻る。S408で内排出ローラ26を停止させるタイミングは、図8のS319で反転ローラ24を停止させるタイミングと同期している。また、S408で内排出ローラ26を停止させることで、バッファ対象である1枚目のシートが内排出ローラ26に保持された状態で停止する(図3(d))。
S409~S418は、バッファ対象のシート(1枚目を除く)を搬送する際の動作の内容を表している。ただし、S409~S413の実行中に内排出ローラ26が接触するのは搬送中のシートではなく、内排出ローラ26に保持された状態のシート(バッファ中のシート)であることに注意する。例えば、図3(d)~図4(c)において2枚目のシートS2を「搬送中のシート」として内排出ローラ26が動作するとき、図4(b)と図4(c)の間でシートS2の第2端S2aが内排出ローラ26に到達するまでは、内排出ローラ26は、実際にはバッファ中のシートである1枚目のシートS1を移動させている。
S409では、S401で入口センサ27がシート後端の通過を検知したタイミングに基づいて各種タイマーをセットする。
・起動タイマーの終了時刻は、下記のS411で逆送方向に搬送開始されるバッファ中のシートと、搬送中のシートとの間のずらし量が、所定のずらし量kとなるように設定される。
・反転タイマーの終了時刻は、反転ローラ24が反転後の回転方向R2に回転を開始するタイミング(図8のS314)と同期するように設定される。
・停止タイマーの終了時刻は、搬送中のシートの第2端(複数枚のシートを内排出ローラ26に保持させてバッファするときは、最上位のシートの第2端)が内排出ローラ26を通過して所定距離搬送されたタイミングとなるように設定される。
S410では、起動タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S411で内排出ローラ26を目標速度V2、かつ、内排出パス82における逆送方向に沿った回転方向R4に回転開始させる。これにより、バッファ中のシートが逆送方向に搬送され、バッファ前ローラ22から送り込まれる搬送中のシートと所定のずらし量kで重ねられた状態となる(図4(a、b))。また、内排出ローラ26が逆送方向にシートを搬送する搬送速度(V2)は、バッファ前ローラ22が反転ローラ24にシートを送り込む搬送速度に等しい。
S412では、反転タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S413で内排出ローラ26を一時停止させ、内排出ローラ26の回転方向を反転させて(R4→R3)搬送方向を逆送方向から順送方向に切替えて、目標速度V2で再起動する。この内排出ローラ26の反転動作は、反転ローラ24の反転動作(図8のS314)と同期して行われる。これにより、搬送中のシートとバッファ中のシートとが重ねられた状態で反転ローラ24から内排出ローラ26に受け渡される(図4(c))。
S414では、停止タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S415でバッファ動作を継続するか否か(次に内排出ローラ26に到達するシートもバッファ対象であるか否か)を判定する。バッファ動作を継続する場合、停止タイマーの終了に基づいてS416で内排出ローラ26を停止させ、S401に戻って処理を継続する。この場合、次のシートについてS409~S414の処理が繰り返されることで、バッファ部において3枚以上のシートが重ねられた状態となる。バッファ動作を継続しない場合、S417で停止タイマーを再セットして内排出ローラ26の回転を継続させる。再セットされた停止タイマーの終了時刻は、内排出パス82におけるシートの後端(搬送中のシートの第1端)が内排出ローラ26を通過した後のタイミングとなるように設定される。この場合、S418で停止タイマーのカウントダウンを行いながら待機し、カウントダウンが終了すると、S419で内排出ローラ26を停止させる。S420では搬送中のシートが最終シートか否かを判定し、最終シートではない場合はS401に戻って処理を継続し、最終シートであった場合は動作シーケンスを終了する。
S421~S423は、バッファ対象でないシートに対する動作を表している。この場合、内排出ローラ26は反転ローラ24から受け取ったシートを逆送方向に搬送することなく、単純に綴じ処理部4Aに向かって順送方向に搬送する。即ち、S421では、S401で入口センサ27がシート後端の通過を検知したタイミングに基づいて各種タイマーをセットする。
・起動タイマーの終了時刻は、反転ローラ24によって反転されたシートが内排出ローラ26に到達する前に内排出ローラ26が目標速度V2まで加速できるようなタイミングに設定される。
・停止タイマーの終了時刻は、内排出パス82におけるシート後端が内排出ローラ26を通過した後のタイミングとなるように設定される。
S422では起動タイマーのカウントダウンを行いながら待機し、カウントダウンが終了すると、S423で内排出ローラ26を目標速度V2、かつ、内排出パス82における順送方向に沿った回転方向R3に回転開始させる。その後、S418で停止タイマーのカウントダウンを行いながら待機し、カウントダウンが終了すると、S419で内排出ローラ26を停止させる。S420では搬送中のシートが最終シートか否かを判定し、最終シートではない場合はS401に戻って処理を継続し、最終シートであった場合は動作シーケンスを終了する。
(綴じ処理部)
次に、綴じ処理部4Aについて説明する。図10(a)は綴じ処理部4Aを示す斜視図であり、図10(b)は一部の部材(中間積載上ガイド31)を開いた状態の綴じ処理部4Aを示す斜視図である。
図10(a、b)及び図1の概略図に示すように、綴じ処理部4Aは、ステイプラ51と、中間積載上ガイド31及び中間積載下ガイド32と、縦整合基準板39と、縦整合ローラ33と、束排出ガイド34と、ガイド駆動部35とを備えている。綴じ処理部4Aは、内排出パス82から排出されて中間積載部90に積載されたシートのステイプラ51によって綴じ処理を施し、綴じられたシート束を形成する。
中間積載上ガイド31及び中間積載下ガイド32は、処理対象のシートが積載される中間積載部90を構成している。中間積載下ガイド32は、内排出パス82における最も下流側のローラである蹴り出しローラ29から排出されるシートが積載される本実施例の積載部である。
蹴り出しローラ29は、ドラム状のガイドであるドラムガイド61の内側に配置され、ドラムガイド61と共にドラムユニット60を構成している。ドラムガイド61は、中間積載部90に先に排出された先行シートの後端部を押さえて、蹴り出しローラ29によって後から排出される後続シートの先端が先行シートの後端と衝突することを防ぐ。ドラムユニット60の詳しい構成及び作用については後述する。
本実施例の移動部材である縦整合ローラ33は、中間積載下ガイド32の上方に配置されている。縦整合ローラ33は合成ゴムもしくはエラストマー樹脂等の弾性材料で成形され、外周面が所定の摩擦係数になるように調整されたローラ部33aを有する。ローラ部33aは中間積載上ガイド31に回転可能に支持される軸部33bに支持されており、ギア部33cを含む駆動伝達装置により、1回転ずつ間欠回転するように駆動される。縦整合ローラ33の外周部であるローラ部33aは、軸部33bの軸方向から見て非円形である。中間積載部90にシートが排出される前の待機状態において、縦整合ローラ33は中間積載上ガイド31からローラ部33aが露出しないような回転角度で保持される。また、縦整合ローラ33が1回転する間に、中間積載上ガイド31に設けられた開口部31aからローラ部33aが一時的に露出して、中間積載下ガイド32に積載されたシートの最上位シートの上面に接触して搬送力を付与する。縦整合ローラ33のシートに対する接触圧は、シートが縦整合基準板39に突き当たった後は縦整合ローラ33がスリップするように調整されている。
中間積載部90には可撓性のシート部材である押さえガイド56が配置されている。押さえガイド56は、中間積載下ガイド32に当接するように配置され、中間積載部90に積載されたシートの上面を所定の加圧力で押圧する。
本実施例の規制部材である縦整合基準板39は、蹴り出しローラ29によるシート排出方向に関して縦整合ローラ33よりも下流に設けられている。縦整合基準板39は、シートの端部に当接する規制部として、中間積載下ガイド32の上面から上方に突出する縦整合基準面39aを有する。また、本実施例の縦整合基準板39、39は、シート排出方向に直交する方向(シートの幅方向)における両側に2つ設けられている。
以下、綴じ処理部4Aにおいて、蹴り出しローラ29によって排出されるシートが縦整合基準板39に向かって移動する方向を「縦整合方向」とする。縦整合方向は、内排出パス82における順送方向に沿った方向であると共に、縦整合ローラ33がシートを縦整合基準板39に向けて移動させる方向である。また、縦整合方向とは反対の方向、即ち綴じ処理部4Aからシート束が排出される方向を、「束排出方向」とする。
ステイプラ51は、中間積載部90に積載され、縦整合方向及びシート幅方向に関して整合された複数枚のシートの所定位置に綴じ処理を施す。本実施例のステイプラ51は、シート幅方向において横整合基準板52と同じ側に設けられ、かつ、縦整合方向及び束排出方向に移動可能に設けられている。また、中間積載下ガイド32は、長辺送り方向(縦整合方向が長辺方向となり、シート幅方向が短辺方向となる搬送方向)に搬送されてくるA4サイズのシートを積載可能な広さを有している。従って、ステイプラ51は、中間積載部90に積載されたシート束の角部を綴じるコーナー綴じだけでなく、シート束に対して移動しながらシート束の長辺に沿った複数位置を綴じる長辺綴じ動作を行うことができる。なお、ステイプラ51は、針を用いてシートを綴じるものに限らず、針無し綴じ方式(例えば、凹凸面の間にシートを挟むことでシート同士を圧着させるものや、シートの一部をU字状にカットして折り曲げるものがある)を用いてもよい。
2つの縦整合基準板39の間には、処理済みのシートを中間積載部90から押し出す押出手段として、束排出ガイド34が配置されている。束排出ガイド34はガイド駆動部35(図1)に取り付けられ、束排出方向及び縦整合方向に移動可能である。また、中間積載下ガイド32には、束排出ガイド34の移動を案内するスライド溝32aが形成されている(図10(b))。
中間積載下ガイド32には、横整合基準板52が固定され、また、横整合ジョガー58が横整合基準板52に対してシート幅方向に移動可能に設けられている。横整合基準板52は、中間積載下ガイド32の上面から上方に突出し縦整合方向に沿って延びる基準壁52aを有し、シート幅方向に横整合ジョガー58に対向している。横整合基準板52は、中間積載部90に積載されるシートのシート幅方向の位置を整合する際の基準となる基準部材として機能する。横整合ジョガー58は、後述するように、中間積載部90に積載されるシートをシート幅方向に押圧して基準壁52aに当接させることで整合する整合部材として機能する。
中間積載上ガイド31は中間積載下ガイド32の支点部32bを中心にして、中間積載下ガイド32に対して回動可能(開閉可能)に支持されている。中間積載下ガイド32に固定された突き当て板54、57は、それぞれ中間積載上ガイド31の開閉ハンドル53及び固定板55に当接することで、中間積載下ガイド32に対して中間積載上ガイド31を位置決めする。突き当て板54、57は鉄等の着磁可能な金属で構成され、また、開閉ハンドル53及び固定板55には磁石が内包されており、磁力によって中間積載上ガイド31の移動が規制される。開閉ハンドル53は、例えば後処理装置4の筐体の正面に設けられた開閉カバーを開いた際にアクセス可能な位置に設けられている。従って、綴じ処理部4Aにおいてシートのジャムが発生した場合には、ユーザは開閉カバーを開いて開閉ハンドル53を把持し、中間積載上ガイド31を開放することで、ジャムシートを除去することができる。
なお、磁石を使った固定手段に代えて、中間積載上ガイド31及び中間積載下ガイド32の一方に樹脂材料で形成した爪形状を設け、他方のガイドに爪形状に係合する凹部を設けたスナップフィット機構を用いてもよい。また、他の固定手段の例として、中間積載上ガイド31及び中間積載下ガイド32の一方に軸状の突起(ダボ)を設け、他方のガイドにこの突起に係合するフックを設けることで中間積載上ガイド31及び中間積載下ガイド32の相対移動を規制してもよい。
図5に示すように、主に綴じ処理部4Aの動作に関与する駆動源として、後処理装置4には縦整合モータM6、ジョガー駆動モータM7、ステイプラ移動モータM8、綴じモータM9、ガイド駆動モータM10、及び束排出モータM11を備えている。縦整合モータM6は、縦整合ローラ33を1回転ずつ間欠動作させる駆動力を供給する。ジョガー駆動モータM7は、横整合ジョガー58をシート幅方向に移動させる。ステイプラ移動モータM8は、ステイプラ51を縦整合方向及び束排出方向に移動させる。綴じモータM9は、ステイプラ51にシート束を綴じる動作を行わせる。ガイド駆動モータM10は、ガイド駆動部35を駆動して束排出ガイド34をスライド移動させる。束排出モータM11は、束排出ローラ36を回転駆動する。
ドラムユニット駆動モータM12は、ドラムガイド61及び蹴り出しローラ29に対して、ドラムガイド61の回転動作及び蹴り出しローラ29によるシートの搬送を実行させるための駆動力を供給する駆動手段として設けられている。ドラム制御ソレノイド85は、ドラムユニット駆動モータM12からドラムガイド61への駆動伝達の有無を切替えることでドラムガイド61の回転動作を制御する。
(ドラムユニット)
次に、搬送ユニットの一例であるドラムユニット60の構成を詳細に説明する。ドラムユニット60は、搬送手段としての蹴り出しローラ29と、ガイド手段としてのドラムガイド61と、を有する。
図11は、蹴り出しローラ29のニップ部におけるシートの幅方向に見たドラムユニット60の断面図である。図12(a)~(c)は、ドラムユニット60を互いに異なる方向から見た斜視図である。ただし、図12(a)において後述のドラム上ガイド61bの図示は省略されている。
図11(a)に示すように、蹴り出しローラ29は、蹴り出し駆動ローラ(以下、単に駆動ローラと呼ぶ)291と、駆動ローラ291に従動回転する蹴り出し従動ローラ(以下、単に従動ローラと呼ぶ)292とによって構成される。駆動ローラ291は駆動軸290に取り付けられており、従動ローラ292は従動軸293に支持されている。駆動ローラ291は、駆動源であるドラムユニット駆動モータM12(図5)から駆動力を供給されて回転する本実施例の第1ローラである。従動ローラ292は、駆動ローラ291に当接して駆動ローラ291と共にシートを挟持して搬送するニップ部29aを形成し、駆動ローラ291に従動回転する(連れ回る)本実施例の第2ローラである。
一方、図11(a)及び図12の各図に示すように、ドラムガイド61は、蹴り出しローラ29のニップ部におけるシートの幅方向(蹴り出しローラ29の軸線方向)に延びる略円筒状のガイド部材である。ドラムガイド61は、シートの幅方向に伸びる回転軸線を中心にして回転可能である。以下、蹴り出しローラ29のニップ部におけるシートの幅方向(つまり、ドラムガイド61の回転軸線方向)を指して、ドラムユニット60の長手方向Yと呼ぶ。
ドラムガイド61は、ドラム下ガイド61aと、ドラム上ガイド61bと、ドラム下カバー61cと、ドラム上カバー61dと、を備えている。本実施例のドラムガイド61は、駆動ローラ291と同軸の回転軸線を中心にして所定の回転方向K1に回転する。この回転方向K1は、シートを搬送するときの駆動ローラ291の回転方向(ローラ駆動方向K2)とは反対方向である。
ドラム下ガイド61aは、蹴り出しローラ29によって搬送されるシートの、鉛直方向に関する下面(中間積載部90において中間積載下ガイド32に対向する面)を案内するガイド(本実施例の第1ガイド部)である。ドラム上ガイド61bは、蹴り出しローラ29によって搬送されるシートの、鉛直方向に関する上面(シートの下面を第1面とするとき、その反対の第2面)を案内するガイド(本実施例の第3ガイド部)である。ドラム下ガイド61a及びドラム上ガイド61bは、長手方向に見た状態で、ドラムユニット60の内側で蹴り出しローラ29のニップ部29aを通るドラム内搬送路を形成している。つまり、本実施例は、蹴り出しローラ29のニップ部29aが、ドラムガイド61が回転する際にドラム下カバー61cが描く回転軌跡の内側に位置する構成の一例である。
以下、図11(a)に示すようにドラムユニット60が内排出パス82からのシートを受け入れ可能となる位置を、ドラムユニット60のホームポジションとする。ドラムユニット60がホームポジションにあるとき、ドラム内搬送路の一方の開口部は、中間搬送上ガイド49及び中間搬送下ガイド50の下流端49a,50aによって形成される開口に対向する。また、ドラムユニット60がホームポジションにあるとき、ドラム内搬送路の他方の開口部は、中間積載部90の中間積載下ガイド32と中間積載上ガイド31との間の空間に対向する。
ドラム下カバー61c及びドラム上カバー61dは、駆動ローラ291の回転軸線を中心としたときのドラムガイド61の外周部を構成している。本実施例のドラム下カバー61c及びドラム上カバー61dは、いずれも駆動ローラ291の回転軸線を中心とする略円弧状に形成されており、図12(a)、(b)に示すように長手方向Yに伸びている。
ドラム下カバー61cは、ドラムユニット60がホームポジションにある状態において中間積載下ガイド32に対向するガイド(本実施例の第2ガイド部)である。ドラム下カバー61cは、ドラムユニット60の回転動作後の状態で、中間積載部90に積載されているシートの後端を上方から押さえる機能を有する。ドラム上カバー61dは、ドラムユニット60がホームポジションから回転方向K1に回転してドラム下カバー61cによってシートの上面に対向するまでの過程で、シートの上面に対向するガイド(本実施例の第4ガイド部)である。
言い換えると、ドラムユニット60がホームポジションにあるとき、ドラム下カバー61c及びドラム下ガイド61aはドラム搬送路に対して下側(図中左下方)に位置する。また、ドラムユニット60がホームポジションにあるとき、ドラム上カバー61d及びドラム上ガイド61bはドラム内搬送路に対して上側(図中右上方)に位置する。
図12(a、b)に示すように、長手方向Yにおけるドラムユニット60の両端部には側板61e,61fが設けられている。ドラム下ガイド61a、ドラム下カバー61c、ドラム上ガイド61b及びドラム上カバー61dは、側板61e、61fに支持されている。また、各側板61e,61fには、駆動軸290が貫通する軸受61gが設けられている。即ち、ドラムガイド61は、軸受61gを介して駆動軸290に対して回転可能に支持されている。言い換えると、ドラム下ガイド61a、ドラム下カバー61c、ドラム上ガイド61b及びドラム上カバー61dは、保持部としての側板61e、61fにより、本実施例の回転軸線である駆動軸290の軸心を中心にして回転可能に保持されている。
側板61e,61fは、下流側切欠き61e1,61f1及び上流側切欠き61e2,61f2を有している。下流側切欠き61e1,61f1は、ドラムガイド61の長手方向(回転軸線方向)に見たとき、蹴り出しローラ29のシート搬送方向の下流側から上流側に向かって凹んだ凹形状(第1の凹部)である。上流側切欠き61e2,61f2は、ドラムガイド61の長手方向(回転軸線方向)に見たとき、蹴り出しローラ29のシート搬送方向の上流側から下流側に向かって凹んだ凹形状(第2の凹部)である。下流側切欠き61e1,61f1及び上流側切欠き61e2,61f2の作用については、下記の実施例4で詳しく説明する。下流側切欠き61e1,61f1及び上流側切欠き61e2,61f2を無視した場合、本実施例の側板61e,61fはドラムガイド61の回転軸線を中心とする略円板状の部材である。
一方、従動軸293(図11(a))は、ドラム下ガイド61aに設けられた不図示の軸受によって回転可能に支持されている。従って、従動ローラ292は、ドラムユニット60が1回転する際に駆動ローラ201の周りを1回転する構成となっている。
ドラムユニット60の長手方向に見たとき、駆動ローラ291が取り付けられている駆動軸290は、ドラム上ガイド61bとドラム上カバー61dによって囲まれた空間に配置されている。駆動ローラ291の外周部の一部は、ドラム上ガイド61bに形成された開口部を介してドラム内搬送路に露出している。同様に、ドラムユニット60の長手方向に見たとき、従動ローラ292が取り付けられている従動軸293は、ドラム下ガイド61aとドラム下カバー61cによって囲まれた空間に配置されている。従動ローラ292の外周部の一部は、ドラム下ガイド61aに形成された開口部を介してドラム内搬送路に露出し、駆動ローラ291に当接している。
(ドラムガイドの詳細)
ドラムガイド61の詳細な形状について説明する。以下、ドラムガイド61を構成する各部の形状や位置関係は、図11(a)、(b)に示すようにドラムユニット60がホームポジションにある状態を基準にして説明する。
図11(a)、(b)に示すように、ドラム下ガイド61a及びドラム上ガイド61bは、ドラムユニット60の長手方向に見たとき、搬送方向Xの上流端に向かってドラム内搬送路の幅が広がるように配置されている。即ち、ドラムユニット60の回転軸線よりも搬送方向Xの上流側において、ドラム内搬送路の上流端に向かうほど、搬送方向Xに交差する方向(シートの蹴り出しローラ29の軸間方向)におけるドラム下ガイド61aとドラム上ガイド61bとの間隔が広がる。このようにドラム内搬送路の上流部を広げることで、内排出パス82から排出されるシートの先端がドラム下カバー61cやドラム上カバー61dに引っかかる可能性を低減できる。
同様に、ドラム下ガイド61a及びドラム上ガイド61bは、搬送方向Xの下流端に向かってドラム内搬送路の幅が広がるように配置されている。即ち、ドラムユニット60の回転軸線よりも搬送方向Xの下流側において、ドラム内搬送路の下流端に向かうほど、搬送方向Xに交差する方向におけるドラム下ガイド61aとドラム上ガイド61bとの間隔が広がる。このようにドラム内搬送路の下流部を広げることで、後述するドラムユニット60の回転動作においてシートの後端をドラムガイド61の内側から外側へスムーズに離脱させることができる。
また、ドラム上ガイド61bは、ドラムユニット60の回転軸線よりも搬送方向Xの下流側において、ドラムユニット60の回転軸線を通る直線Lに対して傾斜した方向に延びている。このドラム上ガイド61bの傾斜の方向は、ドラムユニット60の回転軸線から径方向の外側に向かうにつれてドラムユニット60の回転方向K1における上流側に向かう方向である。ドラム上ガイド61bの下流部にこのような傾斜を設けることで、後述するドラムユニット60の回転動作においてドラム上ガイド61bにシートの後端が引っかかることなく、シートをドラムガイド61の内側から外側へスムーズに離脱させることができる。
さらに、ドラム上ガイド61bの下流端61b2は、下流端61b2における回転方向K1の接線方向に見てドラム上カバー61dの下流端61d2を覆う位置まで、ドラムユニット60の外周側に延びている。これにより、ドラムユニット60が回転方向K1に回転する際に、ドラム上ガイド61bの下流端61b2とドラム上カバー61dの下流端61d2との間の隙間G2にシートの後端が入り込んでドラムガイド61にシートが巻き込まれる可能性を低減できる。
これに対し、ドラム上カバー61dの上流端61d1は、ドラム上ガイド61bの上流端61b1よりも外周側において、ドラム上ガイド61bの上流端61b1と略同じ位置まで回転方向K1の上流に延びている。これにより、ドラムユニット60が回転方向K1に回転する際に、ドラム上ガイド61bの上流端61b1とドラム上カバー61dの上流端61d1との間の隙間G3にシートの後端が入り込んでドラムガイド61にシートが巻き込まれる可能性を低減できる。
同様の構成は、ドラム下ガイド61aとドラム下カバー61cとの間にも当てはまる。即ち、ドラム下ガイド61aの上流端61a1は、上流端61a1における回転方向K1の接線方向に見て、ドラム下カバー61cの上流端61c1を覆う位置までドラムユニット60の外周側に延びている。また、ドラム下カバー61cの下流端61c2は、ドラム下ガイド61aの下流端61c2よりも外周側において、ドラム下ガイド61aの下流端61a2と略同じ位置まで回転方向K1の上流に延びている。これにより、ドラムユニット60が回転方向K1に回転する際に、ドラム下ガイド61aとドラム下カバー61cとの間の隙間G4、G5にシートの後端が入り込んでドラムガイド61にシートが巻き込まれる可能性を低減できる。
ここで、図12(a、b)に示すように、本実施例のドラム下ガイド61a、ドラム上ガイド61b及びドラム下カバー61cは、長手方向(シートの幅方向)に延びる面として形成されている。これらの面の長手方向の長さY0は、後処理装置4が綴じ処理部4Aを介して搬送可能なシートのうちで最大幅のシートが通過する範囲を包含するように設定されている。ドラム下ガイド61a及びドラム上ガイド61bが上記の長さY0を有することで、ドラムガイド61はシートのサイズに関わらずドラム内搬送路を搬送されるシートを安定して案内することができる。また、ドラム下カバー61cが上記の長さY0を有することで、シートのサイズに関わらず、或いはカールによってシートの幅方向の端部が持ち上がっていたとしても、中間積載部90に積載されたシートの後端を押さえることができる。ドラム下カバー61cがシートの後端を押さえる作用については後に詳しく説明する。
これに対し、本実施例のドラム上カバー61dは、ドラムユニット60の長手方向Yに関して、上述の横整合基準板52と同じ側(横整合ジョガー58と反対側)の端部に設けられた長さY1の領域にのみ設けられている。また、長さY1の領域は、後処理装置4が綴じ処理部4Aを介して搬送可能なシートのうち、幅が最も小さいシートの側端位置よりも幅方向の内側まで延びている。ドラム上カバー61dについては、ドラム下カバー61cと同等の長さY0を持たせずとも、後述するようにドラムガイド61の回転動作と横整合ジョガー58による整合動作を円滑に並行できるからである。
なお、図14に示す変形例のように、ドラム上カバー61dにも長手方向に関してドラム下カバー61cと同等の長さ(ドラムユニット60の略全長の長さ)を持たせてもよい。
図11(a)及び図12(b)に示すように、ドラム下カバー61cには、ドラムガイド61の外周側に向かって突出し、ドラムユニット60の周方向に伸びる複数のリブ61rが設けられている。これらのリブ61rは、中間積載部90に積載されて必要に応じて綴じ処理が行われたシート束が束排出ローラ36(図1)に向けて束排出方向Xrに搬送される際に、シート束を第2排出パス84に円滑に受け渡すためのガイドとして機能する。なお、上述した通り、中間積載部90に積載されたシート又はシート束は、押出手段としての束排出ガイド34によって中間積載部90から束排出方向Xrに押し出される。
ドラムユニット60がホームポジションにあるとき(図11(a))、リブ61rは、第2排出パス84の上側ガイド84aに対して第2排出パス84におけるシートの束排出方向Xrにおける上流側に位置する。また、ドラムユニット60の長手方向に見たとき、リブ61rがドラム下カバー61cと上側ガイド84aとの間の隙間G1よりも下側に設けられていることで、リブ61rは束排出方向Xrにおけるシート束の先端が隙間G1に入り込むことを防ぐ。
なお、ドラムユニット60が回転する際のリブ61rの回転軌跡r1が上側ガイド84aと交差するようにリブ61rの突出量を設定し、上側ガイド84aにリブ61rの通過を許容する切欠きを設けると好適である。これにより、隙間G1にシート束の一部が入り込む可能性をさらに低減可能である。
(ドラムユニットの駆動構成)
次に、ドラムユニット60の駆動構成について説明する。上述した通り、ドラムユニット60を構成するドラムガイド61と蹴り出しローラ29の駆動ローラ291は同軸上に配置されており、ドラムガイド61は駆動ローラ291に対して相対回転可能である。本実施例では、共通の駆動源であるドラムユニット駆動モータM12によってドラムガイド61及び駆動ローラ291を駆動する構成を採用している。
図12(c)は、ドラムユニット60がドラムユニット駆動モータM12からの駆動力を受け取るための駆動入力構成を示す斜視図である。駆動ローラ291の駆動軸290には、ドラムユニット60の長手方向における端部に、長手方向に交差する方向に係合ピン29pが挿通されている。また、ドラムガイド61の一方の側板61fには、キー係合を行うためのキー61kが形成されている。係合ピン29p及びキー61kは、長手方向に関してドラムユニット60の同じ側の端部に設けられている。
図13は、後処理装置4に搭載されるドラムユニット60のための駆動伝達機構を示す斜視図であり、(a)はドラムユニット60の長手方向に関して外側から見た様子、(b)は長手方向に関して内側(ドラムユニット60と同じ側)から見た様子である。
図13(b)に示すように、この駆動伝達機構は、ドラムユニット駆動モータM12からの駆動力を出力する出力部材として、第1出力ギア72及び第2出力ギア93を備えている。第1出力ギア72は、駆動軸290の係合ピン29pと係合する係合溝72aを有し、係合溝72a及び係合ピン29pが係合した状態で駆動軸290と一体的に回転する。第2出力ギア93は、ドラムガイド61のキー61kと係合するキー溝93aを有し、キー61kとキー溝93aが係合した状態でドラムガイド61と一体的に回転する。第1出力ギア72及び第2出力ギア93は、出力軸72c(図13(a))に支持されて同軸上に設けられており、相対回転することが可能である。
なお、ドラムガイド61の側板61fの外周部に突起61j,61jを設けることで、ドラムユニット60を長手方向Yに動かして後処理装置4に組み付ける際にキー61kとキー溝93aを位置合わせするための目印とすることができる。一方、係合溝72aは放射状に複数本形成されており、係合ピン29pの位置合わせを行わずに組み付けを行えても係合ピン29pと係合溝72aとが円滑に係合するように構成されている。
図13(a、b)において、ドラムユニット駆動モータM12の駆動力は、モータ出力軸M12aから入力ギア79に伝達された後、第1出力ギア72に向かう伝達経路と第2出力ギア93に向かう伝達経路とに分岐して伝達される。
まず、入力ギア79と第1出力ギア72との間の伝達経路(第1伝達部)について説明する。入力ギア79は、第1アイドラギア71と噛み合っており、第1アイドラギア71は第1出力ギア72と噛み合っている。従って、ドラムユニット駆動モータM12の回転は、入力ギア79及び第1アイドラギア71を介して伝達され、第1出力ギア72をローラ駆動方向K2に回転させる。そして、係合溝72aと係合ピン29p(図12(c))の係合部を介して、蹴り出しローラ29の駆動ローラ291がローラ駆動方向K2に回転する。なお、ドラムユニット駆動モータM12から第1出力ギア72に至る上記ギア列のギア比は、駆動ローラ291の周速が内排出パス82におけるシートの搬送速度(上記の速度V2)と等しくなるように設定される。
次に、入力ギア79と第2出力ギア93との間の伝達経路(第2伝達部)について説明する。入力ギア79は、第1アイドラギア71に加えて第2アイドラギア91と噛み合っており、第2アイドラギア91は回転制御ギアユニット92の第1ギア部92b及び第2ギア部92bと噛み合い可能である。回転制御ギアユニット92は、第1ギア部92b及び第2ギア部92cを介して受け取った回転を、第3ギア部92dを介して第2出力ギア93に伝達する。
ここで、回転制御ギアユニット92は、ドラム制御ソレノイド85によって始動タイミングを制御され、ドラムユニット駆動モータM12が回転している状態でドラム制御ソレノイド85が通電されるたびに1回転するように構成されている。
具体的に、第1ギア部92b及び第2ギア部92cは欠歯ギアとして構成されており、ドラムユニット60のホームポジションに対応する図13(a、b)の位置(初期位置)では第2アイドラギア91と噛み合っていない。第1ギア部92b及び第2ギア部92cは所定角度まで相対回転可能であり、第1ギア部92bは不図示のバネによって矢印K3方向の付勢力を受けている。また、第1ギア部92bにはドラム制御ソレノイド85のフック部85bに係合される係合部92aが設けられている。フック部85bはソレノイド本体85aによって吸着される金属板で構成され、復帰バネ85cによって係合部92aと係合する方向に付勢されている。
第3ギア部92dは第2ギア部92cと一体に回転する部材であり、位置決め部材96に当接する当接面92eを有している。当接面92eは第3ギア部92dの回転軸線を中心とする円周の一部がDカットされた面であり、ドラムユニット60のホームポジションに対応する位相に設けられている。位置決め部材96は、第3ギア部93dの当接面92eに当接する位置決め部96aを有し、位置決めバネ96bに付勢されて位置決め部96aを当接面92eに押し付けることで第3ギア部92dの回転を制限する。
ドラムユニット60の回転動作を行わない場合、ドラム制御ソレノイド85への通電は行われない。この場合、図13(a)に示すようにフック部85bが係合部92aに係合することで、第1ギア部92bは初期位置に係止されて矢印K3方向への回転を規制されている。これにより、第2アイドラギア91が第1ギア部92b及び第2ギア部92cの欠歯部に対向している状態が維持され、第2出力ギア93への駆動伝達は遮断される。また、位置決め部材96が第3ギア部92dの当接面92eを押圧することで第3ギア部92dの回転が制限されることから、第2出力ギア93は回転しない。つまり、ドラム制御ソレノイド85への通電が遮断されている期間中は、ドラムユニット60はホームポジションに維持される。
ドラムユニット60の回転動作を開始するとき、後処理装置4のフィニッシャ制御部400(図5)は、ドラムユニット駆動モータM12を回転させている状態でドラム制御ソレノイド85に対して短時間の通電を実施する。すると、ソレノイド本体85aにフック部85bが吸着されてフック部85bが係合部92aから離脱し、第1ギア部92bの係止が解除される。第1ギア部92bは、不図示のバネの付勢力によって矢印K3方向に回転し始め、第2アイドラギア91に噛み合うことで続けて回転する。さらに、第2ギア部92cに対して第1ギア部92bが所定角度まで回転すると、第1ギア部92b及び第2ギア部92cに設けられたストッパーが係合して第1ギア部92b及び第2ギア部92cが矢印K3方向に一体に回転し始める。第2ギア部92cは、第2アイドラギア91に噛み合うことで続けて回転する。
このような第2ギア部92cの回転に伴って、第3ギア部92dは、位置決めバネ96bの付勢力に抗して位置決め部材96を持ち上げながら回転する。これにより、第2出力ギア93が回転方向K1に回転し、キー溝93aとキー61k(図12(c))の係合を介してドラムユニット60が回転方向K1に回転する。
その後、第1ギア部92bが1回転して初期位置に戻ると、既に通電が終了しているドラム制御ソレノイド85のフック部85bに係合部92aが係合することで、第1ギア部92bは初期位置に再び係止される。続いて第2ギア部92cが初期位置に戻ると、第1ギア部92b及び第2ギア部92cの両方が、第2アイドラギア91との噛み合いが外れた状態となる。また、位置決め部材96が再び第3ギア部92dの当接面92eに当接することで、ドラムユニット60がホームポジションに位置決めされる。
このように、本実施例では共通の駆動源であるドラムユニット駆動モータM12の駆動力をドラムガイド61及び駆動ローラ291を駆動する構成を採用している。しかしながら、ドラムガイド61を回転させるためのモータと蹴り出しローラ29を回転させるためのモータを別個に配置してもよい。また、ドラムユニット60が1回転ずつ回転するように駆動伝達を制御する機構としては上記のものに限らず、例えばステッピングモータ等の回転量を高い精度で制御できるモータを用いてモータに指示する回転量によって1回転ずつの回転を実現してもよい。
(ドラムユニットの動作)
次に、図15及び図16を用いて、中間積載部90にシートを排出して積載する際のドラムユニット60の動作について説明する。
図15(a)は、中間積載部90に対して1枚目のシートS1が排出され始めたときの様子を表している。このとき、ドラムユニット60はホームポジションであり、蹴り出しローラ29はシートS1の受け入れ前から回転駆動されている。内排出パス82を構成する中間搬送上ガイド49及び中間搬送下ガイド50に導かれてドラムユニット60に到達したシートS1の先端は、蹴り出しローラ29によって搬送方向Xに搬送される。これにより、図のようにシートS1の先端がドラムユニット60のドラム内搬送路から中間積載部90に向けて送り出され、中間積載下ガイド32に摺接しながら縦整合基準板39へ向けて搬送される。ただし、搬送方向Xとは、蹴り出しローラ29によって送り出されるシートが中間積載下ガイド32に沿って移動する方向を指す。
図15(b)は、搬送方向XにおけるシートS1の後端が、蹴り出しローラ29のニップ部29aを抜けた直後の様子を示している。この時点では、ドラムユニット60はまだ回転動作を開始していない。
ここで、図中のX1は、縦整合基準板39がシート先端に当接する面である縦整合基準面39aから蹴り出しローラ29のニップ部29aまでの距離を表している。一方、X2は、蹴り出しローラ29のニップ部29aを基準としたシートS1の長さを表している。本実施例において、縦整合基準面39aから蹴り出しローラ29のニップ部29aまでの距離X1がシート長さX2よりも大きくなるように縦整合基準板39及び蹴り出しローラ29の配置がなされている。そのため、図15(b)の状態では、シートS1の後端は、ドラムガイド61のドラム下ガイド61aによって下面を支持された状態でドラム内搬送路に留まっている。また、シートS1の先端と縦整合基準面39aとの間にX3=X1-X2で表される隙間X3が生じている。
その後、シートS1の後端がニップ部29aが通過する時刻から所定のマージン時間が経過したタイミングでドラム制御ソレノイド85が通電され、ドラムユニット60の回転動作が開始される。シートS1の後端がニップ部29aが通過する時刻は、例えば中間積載前センサ38がシートS1の通過を検知したタイミングと、蹴り出しローラ29によるシートS1の搬送速度とに基づいて判断可能である。
図15(c)は、ドラムユニット60がホームポジションから図中時計回り方向の回転方向K1に90°回転した状態を示している。ドラムガイド61が回転することで、シートS1の後端はドラム上ガイド61bによって下方に押されて、ドラム上カバー61dと中間積載下ガイド32との間に移動する。また、ドラムガイド61の回転と共に蹴り出しローラ29のニップ部29aの向きも変化するが、シートS1の後端は既にニップ部29aを通過しているから、ドラム上ガイド61bに押圧されることでドラム内搬送路から抜け出ることが可能である。
上述した通り、ドラム上ガイド61bはドラムガイド61の回転軸線(駆動ローラ291の軸線)を通る平面に対して径方向外側に向かって回転方向K1の上流側に流れるように傾斜している。このため、シート後端はドラム上ガイド61bに引っかかることなくスムーズに下方に移動する。また、ドラム上カバー61dは、長手方向に見て回転軸線を中心とする略円弧状に形成されているから、シート後端がドラム上カバー61dに引きずられてシートS1が搬送方向Xの上流側に移動することが避けられる。さらに、ドラム上ガイド61b及びドラム上カバー61dの継ぎ目が上述した配置関係であることから、隙間G2、G3(図11(b))にシート後端が入り込むことが防がれる。
また、ドラムユニット60の回転動作の開始後、回転量が所定角度を超えるタイミングで横整合ジョガー58(図10(b))の移動が開始する。この所定角度とは、シートS1の後端がドラム内搬送路から抜け出るのに十分な回転量として設定されており、例えば60°に設定される。このように、ドラムユニット60の回転動作と横整合ジョガー58によるシートS1の幅方向の整合動作とを少なくとも部分的に並列して実施することにより、綴じ処理部4Aのスループットを向上可能である。
ところで、本実施例のドラム上カバー61dは、幅方向の一部の領域にのみ設けられている(図10(b))。ドラム上カバー61dを省略することも可能であるが、その場合、シートS1のカールの程度等によってはドラムユニット60の回転動作と横整合ジョガー58の整合動作とを並列して実施する際にシートの挙動が不安定となる懸念がある。具体的には、横整合ジョガー58がシートS1を横整合基準板52に向かって移動させる際に、シートの角部(後端と横整合基準板52側の側端の角部)が回転中のドラムガイド61の側板61eに接触する可能性がある。このとき、シートの角部が軸受61gや側板61eとドラム上ガイド61bの継ぎ目61t(図12(b)参照)等に巻き込まれると、シートのダメージや積載不良が生じる懸念がある。
これに対し、本実施例のドラム上カバー61dは横整合基準板52と同じ側の端部領域に設けられているから、ドラムユニット60の回転動作の実行中に横整合ジョガー58を移動させてもシートの角部が軸受61gや継ぎ目61tに接触しない。従って、ドラムユニット60の回転動作と横整合ジョガー58の整合動作とを並列させてスループットの向上を図りつつ、シートの挙動を安定させることが可能となる。また、ドラム上カバー61dを幅方向の全長に亘って形成する変形例(図14)に比べて、コスト低減が可能である。
図16(a)は、図15(c)の状態からドラムユニット60がさらに270°回転してホームポジションに戻った状態を示している。ドラムユニット60が1回転してホームポジションに戻ったことで、ドラムユニット60はシートS1に後続する後続シートをドラム内搬送路に受け入れ可能な状態となる。
ここで、ドラムユニット60は、回転動作後の状態でドラム下カバー61cがシートS1の後端に対して上方側からオーバーラップするように構成されている。つまり、ドラムユニット60がホームポジションにあるとき、搬送方向Xにおけるドラム下ガイド61aの下流端61a3(ドラム下カバー61cの下流端)から縦整合基準面39aまでの距離X4が、シート長さX2よりも小さく設定されている。言い換えると、このような長さの関係(X4<X2)を満たすようにドラムユニット60及び縦整合基準板39が配置されている。このため、ドラムユニット60の回転動作後の図16(a)の状態では、距離X4とシート長さX2の差分である長さX5の分、シートS1の後端部とドラムガイド61がオーバーラップする。このため、シートS1の後端の浮き上がりがより確実に規制される。
図16(b)は、ドラムユニット60の回転動作が終了した後に縦整合ローラ33の回転が開始し、図中反時計回り方向に90°回転したときの状態を示している。この時点で、縦整合ローラ33の外周面を構成するローラ部33aがシートS1と接触し、シートS1が縦整合ローラ33から受ける搬送力によって縦整合基準面39aに向けて移動させられる。また、内排出パス82からは後続のシートS2がドラムユニット60に向けて搬送されてきている。
図16(c)は、図16(b)に示す状態から縦整合ローラ33がさらに180°回転し、ローラ部33aがシートS1から離間する直前の状態を表している。通常、この時点までに、搬送方向XにおけるシートS1の先端は縦整合基準面39aに突き当てられて縦方向の整合が完了している。この後、縦整合ローラ33がさらに90°回転することで、縦整合ローラ33は待機位置である図15(a)の位置に戻る。
図16(c)の時点では、後続のシートS2の先端が蹴り出しローラ29のニップ部29aを通過して中間積載部90に向けて送り出されている。このとき、先行シートであるシートS1の後端がドラム下カバー61cによって押さえられた状態で、後続シートであるシートS2が下面をドラム下ガイド61aによって案内されながら搬送される。即ち、先行シートの後端が存在している領域(ドラム下カバー61cと中間積載下ガイド32との間)と、後続シートの先端が通過する経路(ドラム下ガイド61aの上側)とが、ドラムガイド61によって仕切られている。
このため、シートS2の先端は、シートS1の後端に衝突することなく円滑に中間積載部90に移動し、シートS1の上面に着地する。このようにシート同士の衝突が防がれることで、例えばシートS2に押されてシートS1の位置が乱れてシートの整列性が低下したり、シートS1の後端又はシートS2の先端に角折れ等のダメージが生じたりすることが回避される。
なお、シートS2の後端が蹴り出しローラ29のニップ部29aを通過すると、再びドラムユニット60の回転動作が実施される。これにより、シートS2の後端がドラム上ガイド61bによってドラム内搬送路から下方に押し出され、最終的にドラム下カバー61cと中間積載下ガイド32との間に保持される。この状態で、内排出パス82から搬送されてくる3枚目のシートの下面がドラム下ガイド61aに案内されることで、シートS2の後端と3枚目のシートの先端との衝突が回避される。
これ以降、蹴り出しローラ29のニップ部29aを1枚のシートが通過する度にドラムユニット60の回転動作が1回行われる。これにより、内排出パス82を続けて搬送される2枚のシートについて、先行シートの後端と後続シートの先端の衝突を回避することが可能となる。なお、上述のバッファ部4Bによるバッファ動作によって重ねられた状態のバッファシートを中間積載部90に積載する場合は、最後のシートの後端が蹴り出しローラ29のニップ部29aを通過した後にドラムユニット60の回転動作が行われるものとする。
(綴じ処理部の動作シーケンス)
上述の動作を実現する綴じ処理部の動作シーケンスを、図17のフローチャートに沿って説明する。フローチャートの各工程は、フィニッシャ制御部400(図5)のCPU401がメモリ402から読み出したプログラムを実行することで処理される。また、本動作シーケンスは、フィニッシャ制御部400が、綴じ処理部4Aによる綴じ処理を要求する画像形成ジョブの実行を開始したことを表す通知をプリンタ制御部100から受け取った場合に開始される。
S501では、中間積載前センサ38が内排出パス82におけるシートの通過を検知したか否かを判定しながら待機する。中間積載前センサ38がシートを検知すると、S502では、ドラム回転タイマー、ジョガータイマー及び縦整合タイマーをセットする。
・ドラム回転タイマーの終了時刻は、搬送方向Xにおけるシートの後端が蹴り出しローラ29のニップ部を通過した後のタイミングとなるように設定される。
・ジョガータイマーの終了時刻は、ドラムユニット60の回転動作の開始後の回転量が所定角度(例えば60°)となるタイミング(つまり、ドラム回転タイマーの終了時刻に所定の時間を加算した時刻)に設定される。
・縦整合タイマーの終了時刻は、ジョガータイマーの終了時刻より後で、横整合ジョガー58による整合動作の完了後となるように設定される。
S503では、ドラム回転タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S504でドラム制御ソレノイド85に短時間の通電を行う。これによりドラムユニット駆動モータM12の駆動力がドラムガイド61に伝達され、ドラムユニット60の回転動作が開始される。S505では、ジョガータイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S506で横整合ジョガー58を待機位置から横整合基準板52に向けて移動を開始させ、横方向の整合動作を開始する。S507では、縦整合タイマーのカウントダウンを行いながら待機する。カウントダウンが終了すると、S508で縦整合ローラ331を1回転させて縦方向の整合動作を開始させる。
S509では、今回のシートが最終シートか否か(綴じ処理後のシート束を構成するシートの中で最後に中間積載部90に積載されるシートか否か)を判定する。今回のシートが最終シートではない場合、S500で横整合ジョガー58を待機位置に向けて移動を開始させた後、S501に戻って上記の処理を繰り返す。今回のシートが最終シートであった場合、S510に進む。
S510では、ステイプラ51によりシート束の綴じ動作を行う。シート束の長辺綴じを行う場合、ステイプラ移動モータM8によってステイプラ51を長辺方向に移動させながら、シート束の側端に沿った複数個所をステイプラ51によって綴じる。綴じ動作が終了すると、S511で横整合ジョガー58を待機位置に復帰させる戻り動作を開始し、S512で束排出ガイド34を束排出方向に移動させる。このとき、ドラムユニット60は既にホームポジションに戻っており、ドラム下カバー61cに設けられた上述のリブ61r(図11(a))によって束排出方向Xrにおけるシート束の先端が第2排出パス84に円滑に案内される。
束排出方向におけるシート束SBの先端が離間状態の束排出ローラ36を通過すると、束排出ガイド34を一時停止させ、S513で上ローラ36aを下降させて束排出ローラ36にシート束SBを挟持させる。そして、S514で束排出ローラ36の回転を開始させて、シート束SBを下排出トレイ37に排出させる。
S515でシート束SBの排出が完了するまで待機した後、S516で上ローラ36aを上昇させて束排出ローラ36を再び離間させる。また、S517で束排出ガイド34を縦整合方向に移動させて待機位置に復帰させる。束排出ガイド34が待機位置に戻ると、動作シーケンスが完了する。
(本実施例のまとめ)
以上説明した通り、本実施例では、先行シートの後端が搬送手段としての蹴り出しローラ29のニップ部29aを通過した後にガイド手段としてのドラムユニット60の回転動作を実施する。そして、ドラムユニット60の回転動作後の状態で、ドラム下カバー61cと中間積載下ガイド32との間に先行シートの後端を保持させる一方で、後続シートの下面をドラム下ガイド61aによって案内可能な状態とする。つまり、本実施例は、先行シートの後端が搬送手段のニップ部を通過した後にガイド手段を回転させることで、第2ガイド部と積載部との間に先行シートの後端を位置させると共に、後続シートの下面を第1ガイド部が案内可能な状態となる構成を採用している。これにより、例えばシートのカールによって先行シートの後端が積載部から浮き上がろうとする場合であっても、先行シートの後端と後続シートの先端の衝突をより確実に回避して、シートを積載部に円滑に積載することが可能となる。
ところで、積載部に排出されたシートの後端部を押さえる代替構成として、ローラ対のニップ部よりも上方に設けられた回動軸からニップ部の下方に垂れ下がったレバー状の押さえ部材が知られている。このような押さえ部材は、ニップ部からシートが送り出されるときは回動軸を中心にして上方側に退避し、シート後端がニップ部を抜けると自重やバネの力によって下方に回動してシートの上面を押さえる。しかしながら、シートのカールが大きい場合には、押さえ部材が持ち上げられることで積載部に積載された先行シートの後端が浮き上がり、ニップ部から送り出される後続シートの先端と衝突する可能性があった。
特に、積載部に多くのシートを積載しようとするほど、多数のシートのカールにより押さえ部材が持ち上げられやすくなる。その対策として押さえ部材を上方に持ち上げる負荷が大きくなるように構成すると、シートに押さえ部材の擦れ跡が残る懸念があった。また、他の対策として積載部に対するニップ部の高さ(積載部に積載されるシートの厚さ方向の距離)を大きくすると、シートの落下距離が大きくなることで、積載部におけるシートの整列性が乱れたり、装置の大型化につながる懸念があった。
これに対し、本実施例では、回転するガイド手段によって先行シートの後端が存在している領域と後続シートの先端が通過する経路とを仕切る構成を実現した。これにより、レバー状の押さえ部材に比べてより確実にシート同士の衝突を回避し、さらには積載枚数の増加や装置の小型化といった利点を得ることが可能となった。
なお、本実施例ではドラムユニット60が蹴り出しローラ29の一方のローラの回転軸である駆動軸290を中心に回転する構成を説明したが、他の構成を用いてもよい。例えば、ドラムユニット60が蹴り出しローラ29のニップ部29aを中心にして回転するようにしてもよい。また、蹴り出しローラ29の従動ローラ292が後処理装置4の枠体によって回転可能に支持され、ドラムガイド61が回転しても従動ローラ292の位置が変化しない構成としてもよい。
また、本実施例では、シートの後端が蹴り出しローラ29のニップ部29aを通過した後のタイミングでドラムユニット60の回転が開始するように構成されている(図15(b、c)及び図17のS502~S504の説明を参照)。しかしながら、シートの後端が蹴り出しローラ29のニップ部29aを通過する前にドラムユニット60の回転を開始させることで、スループットのさらなる向上を図ってもよい。この変形例は、図17のS502において、ドラム回転タイマーの終了時刻をシートの後端が蹴り出しローラ29のニップ部を通過する前のタイミングとなるように設定することで実現される。
本実施例ではドラムユニット60が回転した後も蹴り出しローラ29の回転駆動が継続される。そのため、ドラムユニット60の回転開始後にシート後端がニップ部29aを抜けることで、最終的に図16(a)のようにシート後端がドラム下カバー61cによって押さえられた状態が実現される。なお、シートの巻き込みを防ぐため、ドラムユニット60の回転開始からシート後端がニップ部29aを抜けるまでの回転角度が所定角度(例えば30度)以下となるように設定すると好適である。