図1は、本発明の一実施例としてのエンジン装置21を搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。図2は、エンジン装置21の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図1に示すように、エンジン装置21と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、バッテリ50と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70とを備える。ここで、エンジン装置21は、エンジン22と、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24とを有する。
エンジン22は、例えばガソリンや軽油などの燃料を用いて吸気、圧縮、膨張(爆発燃焼)、排気の4行程により動力を出力する4気筒の内燃機関として構成されている。図2に示すように、エンジン22は、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁126と、筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁127とを有する。エンジン22は、ポート噴射弁126と筒内噴射弁127とを有することにより、ポート噴射モードと筒内噴射モードと共用噴射モードとのうちの何れかで運転可能となっている。ポート噴射モードでは、エアクリーナ122により清浄された空気を吸気管123に吸入してスロットルバルブ124やサージタンク125を通過させると共に、吸気管123のサージタンク125よりも下流側のポート噴射弁126から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。そして、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室129に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、シリンダボア131内でそのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト23の回転運動に変換する。筒内噴射モードでは、ポート噴射モードと同様に空気を燃焼室129に吸入し、吸気行程や圧縮行程において筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。共用噴射モードでは、空気を燃焼室129に吸入する際にポート噴射弁126から燃料を噴射すると共に吸気行程や圧縮行程において筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。これらの噴射モードは、エンジン22の運転状態に基づいて切り替えられる。燃焼室129から排気バルブ133を介して排気管134に排出される排気は、浄化装置135を介して外気に排出される。浄化装置135は、排気中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)135aを有する。
エンジン22は、エンジンECU24により運転制御されている。エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。
エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。エンジンECU24に入力される信号としては、例えば、エンジン22のクランクシャフト23の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランク角θcrや、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Twを挙げることができる。吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトの回転位置や排気バルブ133を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカム角θci,θcoも挙げることができる。スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ124aからのスロットル開度THや、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられたエアフローメータ123aからの吸入空気量Qa、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられた温度センサ123tからの吸気温Ta、サージタンク125に取り付けられた圧力センサ125aからのサージ圧Psも挙げることができる。排気管134の浄化装置135よりも上流側に取り付けられたフロント空燃比センサ137からのフロント空燃比AF1や、排気管134の浄化装置135よりも下流側に取り付けられたリヤ空燃比センサ138からのリヤ空燃比AF2も挙げることができる。
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力される。エンジンECU24から出力される信号としては、例えば、スロットルバルブ124への制御信号や、ポート噴射弁126への制御信号、筒内噴射弁127への制御信号、点火プラグ130への制御信号を挙げることができる。
エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのエンジン22のクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算する。また、エンジンECU24は、エアフローメータ123aからの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算する。さらに、エンジンECU24は、水温センサ142からの冷却水温Twとエンジン22の回転数Neおよび負荷率KLとに基づいて浄化装置135の浄化触媒135aの温度Tcatを推定する。
エンジンECU24は、基本的には、エンジン22の回転数Neと負荷率KLと冷却水温Twとに基づいてエンジン22のピストン132の頂面温度Tptを推定すると共に、エンジン22の冷却水温Twに所定値を加えてエンジン22のシリンダボア131の壁面温度Tcbを推定する。
図1に示すように、プラネタリギヤ30は、シングルピニオンタイプの遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、ダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト23が接続されている。
モータMG1は、例えば同期発電電動機として構成されており、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、例えば同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸36に接続されている。インバータ41,42は、モータMG1,MG2の駆動に用いられると共に電力ライン54を介してバッテリ50に接続されている。モータMG1,MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。モータECU40に入力される信号としては、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置センサからのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2や、モータMG1,MG2の各相に流れる相電流を検出する図示しない電流センサからのモータMG1,MG2の各相の相電流Iu1,Iv1,Iu2,Iv2を挙げることができる。モータECU40からは、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力される。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU40は、回転位置センサからのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の電気角θe1,θe2や回転数Nm1,Nm2を演算する。
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、上述したように、電力ライン54を介してインバータ41,42に接続されている。このバッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52により管理されている。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。バッテリECU52に入力される信号としては、例えば、バッテリ50の端子間に取り付けられた図示しない電圧センサからのバッテリ50の電圧Vbや、バッテリ50の出力端子に取り付けられた図示しない電流センサからのバッテリ50の電流Ib、バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからのバッテリ50の温度Tbを挙げることができる。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。バッテリECU52は、電流センサからのバッテリ50の電流Ibの積算値に基づいてバッテリ50の蓄電割合SOCを演算する。蓄電割合SOCは、バッテリ50の全容量に対するバッテリ50から放電可能な電力の容量の割合である。
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。HVECU70に入力される信号としては、例えば、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。また、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速V、外気温センサ89からの外気温度Toutも挙げることができる。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40との協調制御により、エンジン22の運転を伴って走行するハイブリッド走行モード(HV走行モード)やエンジン22の運転停止を伴って走行する電動走行モード(EV走行モード)で走行する。このとき、アクセル開度Accおよび車速Vに基づく駆動軸36に要求される走行用トルクTd*が駆動軸36に出力されるようにエンジン22およびモータMG1,MG2を制御する。
ここで、HVECU70とエンジンECU24との協調制御によるエンジン22の運転制御について説明する。最初に、走行用トルクTd*と、駆動軸36の回転数Nd(モータMG2の回転数Nm2)と、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づく充放電要求パワーPb*と、に基づいてエンジン22の仮目標パワーPetmpを設定する。続いて、エンジン22の暖機が完了しているときには、エンジン22の仮目標パワーPetmpを目標パワーPe*に設定し、エンジン22の暖機が完了していないときには、エンジン22の仮目標パワーPetmpを所定パワーPe1で制限(上限ガード)した値を目標パワーPe*に設定する。所定パワーPe1としては、エンジン22からの粒子状物質の排出量(粒子状物質数(PN:Particulate Number))を抑制可能なパワー範囲の上限が用いられる。そして、エンジン22の目標パワーPe*に基づいて吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御などを行なう。吸入空気量制御は、スロットルバルブ124の開度を制御することにより行なわれる。燃料噴射制御は、ポート噴射モードや筒内噴射モード、共用噴射モードでポート噴射弁126や筒内噴射弁127からの燃料噴射量を制御することにより行なわれる。点火制御は、点火プラグ130の点火時期を制御することにより行なわれる。以下、エンジン22について、仮目標パワーPetmpを目標パワーPe*に設定して行なう制御を「通常制御」といい、仮目標パワーPetmpを所定パワーPe1で制限した値を目標パワーPe*に設定して行なう制御を「PN抑制制御」という。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、エンジン22の間欠停止からの再始動以降にエンジン22の暖機の完了の有無を判定する処理について説明する。図3は、HVECU70により実行される再始動以降の暖機判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、エンジン22の間欠停止からの再始動時に実行される。なお、実施例では、各トリップで最初にエンジン22を始動したときには、冷却水温Twが閾値Twref以上に至ったときや、エンジン22の始動からの吸入空気量Qaの積算値Qasが閾値Qasref以上に至ったときなどに、エンジン22の暖機が完了したと判定するものとした。
図3の再始動以降の暖機判定ルーチンが実行されると、HVECU70は、最初に、ピストン132の頂面温度Tptやシリンダボア131の壁面温度Tcbを入力する(ステップS100)。ここで、エンジン22の再始動以降のピストン132の頂面温度Tptは、エンジンECU24により実行される図4の再始動以降の頂面温度推定ルーチンにより推定された値がエンジンECU24から通信により入力される。シリンダボア131の壁面温度Tcbは、エンジンECU24により実行される図5の再始動以降の壁面温度推定ルーチンにより推定された値がエンジンECU24から通信により入力される。図3の再始動以降の暖機判定ルーチンの説明を中断し、図4の再始動以降の頂面温度推定ルーチンや図5の再始動以降の壁面温度推定ルーチンについて説明する。図4や図5のルーチンは、図3のルーチンと同様に、エンジン22の間欠停止からの再始動時に実行される。
図4の再始動以降の頂面温度推定ルーチンについて説明する。このルーチンが実行されると、エンジンECU24は、最初に、エンジン22の再始動時水温Twstや間欠停止時間Tsp、ピストン132の停止前頂面温度Tptspを入力する(ステップS200)。ここで、再始動時水温Twstは、エンジン22の再始動時に水温センサ142により検出された値が入力される。間欠停止時間Tspは、エンジン22の間欠停止の開始から終了(再始動)までを計時するタイマにより計時された時間が入力される。ピストン132の停止前頂面温度Tptspは、エンジン22の間欠停止直前にエンジン22の回転数Neと負荷率KLと冷却水温Twとに基づいて推定されたピストン132の頂面温度Tptが入力される。なお、ピストン132の停止前頂面温度Tptspは、簡単のために、一定値が入力されるものとしてもよい。
こうしてデータを入力すると、再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspに基づいて、エンジン22の間欠停止中のピストン132の頂面温度Tptの低下量ΔTpt1を推定し(ステップS210)、ピストン132の停止前頂面温度Tptspから低下量ΔTpt1を減じて、エンジン22の再始動時のピストン132の頂面温度Tptを推定する(ステップS220)。
ここで、エンジン22の間欠停止中のピストン132の頂面温度Tptの低下量ΔTpt1は、再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspと低下量ΔTpt1との実験や解析により予め定めた関係に再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspを適用して推定することができる。図6は、再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspと低下量ΔTpt1との関係の一例を示す説明図である。図示するように、低下量ΔTpt1は、再始動時水温Twstが低いほど大きく且つ間欠停止時間Tspが長いほど大きくなるように推定される。
続いて、エアフローメータ123aからの吸入空気量Qaを入力し(ステップS230)、入力した吸入空気量Qaに補正係数kptを乗じて、エンジン22の再始動以降の運転中のピストン132の頂面温度Tptの上昇量ΔTpt2を推定し(ステップS240)、ピストン132の前回の頂面温度(前回Tpt)に上昇量ΔTpt2を加えて、ピストン132の頂面温度Tptを推定する(ステップS250)。ここで、吸入空気量Qaは、単位時間当たりの空気量[g]であり、補正係数kptは、空気量の1g当たりのピストン132の頂面温度Tptの変化量である。
そして、エンジン22の暖機が完了したか否かを判定する(ステップS260)。この処理は、図3の再始動以降の暖機判定ルーチンによる判定結果をHVECU70から通信により入力して行なわれる。エンジン22の暖機が完了していないと判定したときには、ステップS230に戻り、エンジン22の暖機がしたと判定したときには、本ルーチンを終了する。本ルーチンを終了すると、その後は、上述したように、エンジン22の回転数Neと負荷率KLと冷却水温Twとに基づいてピストン132の頂面温度Tptを推定する。そして、エンジン22の間欠停止直前に推定したピストン132の頂面温度Tptが、次回に本ルーチンが実行されたときにステップS200で停止前頂面温度Tptspとして入力される。
次に、図5の再始動以降の壁面温度推定ルーチンについて説明する。このルーチンが実行されると、エンジンECU24は、最初に、エンジン22の再始動時水温Twstや間欠停止時間Tsp、シリンダボア131の停止前壁面温度Tcwspを入力する(ステップS300)。ここで、再始動時水温Twstや間欠停止時間Tspの入力方法については上述した。シリンダボア131の停止前壁面温度Tcwspは、エンジン22の間欠停止直前に冷却水温Twに所定値を加えて推定されたシリンダボア131の壁面温度Tcwが入力される。
こうしてデータを入力すると、再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspに基づいて、エンジン22の間欠停止中のシリンダボア131の壁面温度Tcwの低下量ΔTcw1を推定し(ステップS310)、シリンダボア131の停止前壁面温度Tcwspから低下量ΔTcw1を減じて、エンジン22の再始動時のシリンダボア131の壁面温度Tcwを推定する(ステップS320)。
ここで、エンジン22のの間欠停止中のシリンダボア131の低下量ΔTcw1は、再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspと低下量ΔTcw1との実験や解析により予め定めた関係に再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspを適用して推定することができる。再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspと低下量ΔTcw1との関係は、上述の再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspと低下量ΔTpt1との関係(図6参照)と同様である。
続いて、エアフローメータ123aからの吸入空気量Qaを入力し(ステップS330)、再始動時水温Twstに基づいて補正係数kcwを推定する(ステップS340)。そして、吸入空気量Qaを補正係数kcwで除して、エンジン22の再始動以降の運転中のシリンダボア131の壁面温度Tcwの上昇量ΔTcw2を推定し(ステップS350)、シリンダボア131の前回の壁面温度(前回Tcw)に上昇量ΔTcw2を加えて、シリンダボア131の壁面温度Tcwを推定する(ステップS360)。
ここで、吸入空気量Qaは、単位時間当たりの空気量[g]であり、補正係数kcwは、シリンダボア131の壁面温度Tcwが1℃上昇するのに要する空気量(「空気量の1g当たりのシリンダボア131の壁面温度Tcwの変化量」の逆数)である。補正係数kcwは、再始動時水温Twstと補正係数kcwとの実験や解析により予め定めた関係に再始動時水温Twstを適用して推定することができる。図7は、再始動時水温Twstと補正係数kcwとの関係の一例を示す説明図である。図示するように、補正係数kcwは、再始動時水温Twstが低いほど大きくなるように推定される。
そして、エンジン22の暖機が完了したか否かを判定する(ステップS370)。この処理は、図3の再始動以降の暖機判定ルーチンによる判定結果をHVECU70から通信により入力して行なわれる。エンジン22の暖機が完了していないと判定したときには、ステップS330に戻り、エンジン22の暖機がしたと判定したときには、本ルーチンを終了する。本ルーチンを終了すると、その後は、上述したように、エンジン22の冷却水温Twに所定値を加えて、シリンダボア131の壁面温度Tcwを推定する。そして、エンジン22の間欠停止直前に推定したシリンダボア131の壁面温度Tcwが、次回に本ルーチンが実行されたときにステップS300で停止前壁面温度Tcwspとして入力される。
図4の再始動以降の頂面温度推定ルーチンや図5の再始動以降の壁面温度推定ルーチンについて説明した。図3の再始動以降の暖機判定ルーチンの説明に戻る。ステップS100でピストン132の頂面温度Tptやシリンダボア131の壁面温度Tcwを入力すると、ピストン132の頂面温度Tptが閾値Tptref以上であるか否かを判定すると共に(ステップS110)、シリンダボア131の壁面温度Tcwが閾値Tcwref以上であるか否かを判定する(ステップS120)。ここで、閾値Tptrefや閾値Tcwrefは、エンジン22の暖機が完了しているか否かを判定するのに用いられる閾値であり、エンジン22の仕様に基づいて定められる。閾値Tptrefとしては、例えば、130℃~150℃程度が用いられ、閾値Tcwrefとしては、例えば、50℃~70℃程度が用いられる。
ステップS110でピストン132の頂面温度Tptが閾値Tptref未満であると判定したときや、ステップS120でシリンダボア131の壁面温度Tcwが閾値Tcwref未満であると判定したときには、エンジン22の暖機が完了していないと判定して(ステップS130)、ステップS100に戻る。エンジン22の暖機が完了していないと判定しているときには、エンジン22について上述のPN抑制制御を行なう。
ステップS110でピストン132の頂面温度Tptが閾値Tptref以上であると判定すると共にステップS120でシリンダボア131の壁面温度Tcwが閾値Tcwref以上であると判定したときには、エンジン22の暖機が完了していると判定して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。エンジン22の暖機が完了していると判定したときには、エンジン22について上述の通常制御を行なう。
実施例では、エンジン22の間欠停止からの再始動以降には、ピストン132の頂面温度Tptおよびシリンダボア131の壁面温度Tcwを用いてエンジン22の暖機の完了の有無を判定する。これにより、エンジン22の間欠停止からの再始動以降に、エンジン22の再始動からの経過時間やエンジン22の再始動からの吸入空気量Qaの積算値(積算空気量)を用いてエンジン22の暖機の完了の有無を判定するものに比して、エンジン22の状態(特に、粒子状物質の排出量に影響を与える燃焼室129付近の温度)をより適切に考慮して、エンジン22の暖機の完了の有無を判定することができる。具体的には、エンジン22の間欠停止時間Tspが短いときなど、エンジン22の再始動以降のピストン132の頂面温度Tptやシリンダボア131の壁面温度Tcwが比較的高いときに、エンジン22の暖機が完了していないと判定するのを抑制することができる。この結果、PN抑制制御を無駄に実行するのを抑制することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20が備えるエンジン装置21では、エンジン22の暖機が完了していないときには、エンジン22についてPN抑制制御を実行し、エンジン22の暖機が完了しているときには、エンジン22について通常制御を実行する。この場合において、エンジン22の間欠停止からの再始動以降には、ピストン132の頂面温度Tptおよびシリンダボア131の壁面温度Tcwを用いてエンジン22の暖機の完了の有無を判定する。これにより、エンジン22の状態(特に、粒子状物質の排出量に影響を与える燃焼室129付近の温度)をより適切に考慮して、エンジン22の暖機の完了の有無を判定することができる。この結果、PN抑制制御を無駄に実行するのを抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20が備えるエンジン装置21では、エンジン22の間欠停止からの再始動以降には、ピストン132の頂面温度Tptおよびシリンダボア131の壁面温度Tcwを用いてエンジン22の暖機の完了の有無を判定するものとした。しかし、エンジン22の間欠停止からの再始動以降には、ピストン132の頂面温度Tptおよびシリンダボア131の壁面温度Tcwのうちの何れか1つを用いてエンジン22の暖機の完了の有無を判定するものとしてもよい。また、エンジン22の間欠停止からの再始動以降には、ピストン132の頂面温度Tptおよびシリンダボア131の壁面温度Tcwのうちの何れか1つに加えて、エンジン22の再始動からの経過時間やエンジン22の再始動からの吸入空気量Qaの積算値(積算空気量)などを用いてエンジン22の暖機の完了の有無を判定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20が備えるエンジン装置21では、エンジン22の間欠停止中のピストン132の頂面温度Tptの低下量ΔTpt1を、再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspに基づいて推定するものとした。しかし、この低下量ΔTpt1を、間欠停止時間Tspだけに基づいて推定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20が備えるエンジン装置21では、エンジン22の間欠停止中のシリンダボア131の壁面温度Tcwの低下量ΔTcw1を、再始動時水温Twstおよび間欠停止時間Tspに基づいて推定するものとした。しかし、この低下量ΔTcw1を、間欠停止時間Tspだけに基づいて推定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20が備えるエンジン装置21では、エンジン22の再始動以降の運転中のシリンダボア131の壁面温度Tcwの上昇量ΔTcw2の推定に用いる補正係数kcwを、再始動時水温Twstに基づいて推定するものとした。しかし、補正係数kcwとして、一定値を用いるものとしてもよい。
実施例では、エンジン装置21は、エンジン22とプラネタリギヤ30とモータMG1,MG2とを備えるハイブリッド自動車20に搭載されるものとした。しかし、図8に示すように、エンジン装置21は、駆動輪39a,39bに連結された駆動軸36に変速機230を介してモータMGを接続すると共にモータMGにクラッチ228を介してエンジン22を接続したハイブリッド自動車220に搭載されるものとしてもよい。また、図9に示すように、エンジン装置21は、駆動輪39a,39bに連結された駆動軸36に変速機330を介してエンジン22を接続すると共にアイドルストップが可能な自動車320に搭載されるものとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、エンジンECU24が「制御装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。