図1は、本発明の一実施例としてのエンジン装置21を搭載するハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、エンジン装置21の構成の概略を示す説明図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図1に示すように、エンジン装置21と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、バッテリ50と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70とを備える。ここで、エンジン装置21は、エンジン22と、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24とを有する。
エンジン22は、ガソリンや軽油などの燃料を用いて吸気、圧縮、膨張(爆発燃焼)、排気の4行程により動力を出力する4気筒の内燃機関として構成されている。図2に示すように、エンジン22は、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁126と、筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁127とを有する。エンジン22は、ポート噴射弁126と筒内噴射弁127とを有することにより、ポート噴射モードと筒内噴射モードと共用噴射モードとのうちの何れかで運転可能となっている。ポート噴射モードでは、エアクリーナ122により清浄された空気を吸気管123に吸入してスロットルバルブ124やサージタンク125を通過させると共に、吸気管123のサージタンク125よりも下流側のポート噴射弁126から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。そして、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室129に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト23の回転運動に変換する。筒内噴射モードでは、ポート噴射モードと同様に空気を燃焼室129に吸入し、吸気行程の途中および/または圧縮行程に至ってから筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。共用噴射モードでは、空気を燃焼室129に吸入する際にポート噴射弁126から燃料を噴射すると共に吸気行程や圧縮行程で筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。これらの噴射モードは、エンジン22の運転状態に基づいて切り替えられる。燃焼室129から排気バルブ133を介して排気管134に排出される排気は、浄化装置135を介して外気に排出される。浄化装置135は、排気中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)135aを有する。浄化触媒135aは、酸素を吸蔵および脱離可能に構成されている。
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24により運転制御されている。エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。
エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。エンジンECU24に入力される信号としては、例えば、エンジン22のクランクシャフト23の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランク角θcrや、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Twを挙げることができる。吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトの回転位置や排気バルブ133を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカム角θci,θcoも挙げることができる。スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ124aからのスロットル開度THや、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられたエアフローメータ123aからの吸入空気量Qa、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられた温度センサ123tからの吸気温Ta、サージタンク125に取り付けられた圧力センサ125aからのサージ圧Psも挙げることができる。排気管134の浄化装置135よりも上流側に取り付けられたフロント空燃比センサ137からのフロント空燃比AF1や、排気管134の浄化装置135よりも下流側に取り付けられたリヤ空燃比センサ138からのリヤ空燃比AF2も挙げることができる。
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力される。エンジンECU24から出力される信号としては、例えば、スロットルバルブ124への制御信号や、ポート噴射弁126への制御信号、筒内噴射弁127への制御信号、点火プラグ130への制御信号を挙げることができる。
エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのエンジン22のクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算する。また、エンジンECU24は、エアフローメータ123aからの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算する。さらに、エンジンECU24は、水温センサ142からの冷却水温Twとエンジン22の回転数Neおよび負荷率KLとに基づいて浄化装置135の浄化触媒135aの温度Tcを推定する。また、エンジンECU24は、フロント空燃比センサ137からのフロント空燃比AF1および/またはリヤ空燃比センサ138からのリヤ空燃比AF2と吸入空気量Qaとに基づいて浄化装置135の浄化触媒135aの酸素吸蔵量OSを推定する。
図1に示すように、プラネタリギヤ30は、シングルピニオンタイプの遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、ダンパ28を介してエンジン22のクランクシャフト23が接続されている。
モータMG1は、例えば同期発電電動機として構成されており、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、例えば同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸36に接続されている。インバータ41,42は、モータMG1,MG2の駆動に用いられると共に電力ライン54を介してバッテリ50に接続されている。モータMG1,MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。モータECU40に入力される信号としては、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置センサからのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2や、モータMG1,MG2の各相に流れる相電流を検出する図示しない電流センサからのモータMG1,MG2の各相の相電流Iu1,Iv1,Iu2,Iv2を挙げることができる。モータECU40からは、インバータ41,42の図示しない複数のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力される。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU40は、回転位置センサからのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の電気角θe1,θe2や回転数Nm1,Nm2を演算する。
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、上述したように、電力ライン54を介してインバータ41,42に接続されている。このバッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52により管理されている。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。バッテリECU52に入力される信号としては、例えば、バッテリ50の端子間に取り付けられた図示しない電圧センサからのバッテリ50の電圧Vbや、バッテリ50の出力端子に取り付けられた図示しない電流センサからのバッテリ50の電流Ib、バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからのバッテリ50の温度Tbを挙げることができる。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。バッテリECU52は、電流センサからのバッテリ50の電流Ibの積算値に基づいてバッテリ50の蓄電割合SOCを演算する。蓄電割合SOCは、バッテリ50の全容量に対するバッテリ50から放電可能な電力の容量の割合である。
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。HVECU70に入力される信号としては、例えば、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。また、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速V、外気温センサ89からの外気温度Toutも挙げることができる。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40との協調制御により、エンジン22の回転を伴って走行するハイブリッド走行モード(HV走行モード)や、エンジン22の回転停止を伴って走行する電動走行モード(EV走行モード)で走行する。
また、ハイブリッド自動車20では、エンジン22を運転する際には、エンジン22の目標パワーPe*に基づいて吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御などを行なう。吸入空気量制御は、スロットルバルブ124の開度を制御することにより行なわれる。燃料噴射制御は、ポート噴射モードや筒内噴射モード、共用噴射モードでポート噴射弁126や筒内噴射弁127からの燃料噴射量を制御することにより行なわれる。点火制御は、点火プラグ130の点火時期を制御することにより行なわれる。
さらに、ハイブリッド自動車20では、HV走行モードで燃料カット条件が成立したときには、エンジン22の燃料カットを実行すると共にモータMG1によりエンジン22をモータリングする。燃料カット条件としては、例えば、HV走行モードでバッテリ50の蓄電割合SOCが比較的大きいときにアクセルオフされた条件などが用いられる。
加えて、ハイブリッド自動車20では、エンジン22の始動完了時に排気制限制御の実行が要求される場合や、エンジン22の燃料カットからの復帰時(燃料噴射の再開時)に排気制限制御の実行が要求される場合には、排気制限制御を実行する。ここで、排気制限制御は、エミッションの悪化の抑制などのためにエンジン22の排気量を制限する制御である。実施例では、排気制限制御において、エンジン22の燃焼安定性などを考慮して、筒内噴射モードで燃料噴射制御を行なうものとした。また、実施例では、排気制限制御の実行が要求される場合として、浄化触媒135aの温度Tcが閾値Tcref未満である(浄化触媒135aが未活性である)ことにより触媒暖機制御の実行が要求される場合を考えると共に、排気制限制御として触媒暖機制御を実行するものとした。触媒暖機制御は、浄化触媒135aの暖機を促進させるために、エンジン22の点火時期を最適点火時期(MBT:Minimum advance for Best Torque)よりも遅くしてエンジン22を制御する制御である。以下、エンジン22の始動後の触媒暖機制御を「第1触媒暖機制御」といい、エンジン22の燃料カットからの復帰後の触媒暖機制御を「第2触媒暖機制御」という場合がある。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、触媒暖機制御(第1触媒暖機制御や第2触媒暖機制御)の詳細について説明する。図3は、エンジンECU24により実行される触媒暖機制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、エンジン22の始動完了時に触媒暖機制御の実行が要求される場合や、エンジン22の燃料カットからの復帰時に触媒暖機制御の実行が要求される場合に実行される。
図3の触媒暖機制御ルーチンが実行されると、エンジンECU24は、最初に、第1触媒暖機制御および第2触媒暖機制御のうちの何れを実行する場合であるかを判定する(ステップS100)。そして、第1触媒暖機制御を実行する場合であると判定したときには、第1触媒暖機制御における触媒用リーン制御を実行する(ステップS100~S114)。ここで、触媒用リーン制御は、エンジン22の点火時期が最適点火時期よりも遅くなると共に当量比が値1よりも小さくなる(空燃比がリーンになる)ようにエンジン22を制御する制御である。当量比は、理論空燃比/空燃比であり、目標当量比は、当量比の目標値である。
第1触媒暖機制御における触媒用リーン制御では、最初に、第1水温Tw1や第1積算空気量Qas1を入力する(ステップS110)。続いて、入力した第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定する(ステップS112)。そして、設定した目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を用いてエンジン22を制御する(ステップS114)。
ここで、第1水温Tw1は、第1触媒暖機制御の開始時(例えば、エンジン22の始動完了時)に水温センサ142により検出された冷却水温Twが入力される。第1積算空気量Qas1は、エアフローメータ123aにより検出された吸入空気量Qaの第1触媒暖機制御の開始時からの積算値として演算された値が入力される。
第1触媒暖機制御の触媒用リーン制御における目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*は、例えば、第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1と、目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*と、の関係として予め定めた第1マップに第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1を適用することにより推定される。目標パワーPe*は、第1水温Tw1が高いほど大きくなり且つ第1積算空気量Qas1が大きいほど大きくなるように設定される。目標当量比φ*は、第1水温Tw1が高いほど値1に対して小さくなり且つ第1積算空気量Qas1が大きいほど値1に対して小さくなるように設定される。目標点火時期IT*は、最適点火時期よりも遅い範囲内で、第1水温Tw1が高いほど遅くなり且つ第1積算空気量Qas1が大きいほど遅くなるように設定される。これらの傾向は、エンジン22の燃焼安定性や浄化触媒135aの浄化性能などを考慮したものである。
続いて、第1移行条件が成立したか否かを判定する(ステップS116)。ここで、第1移行条件は、第1触媒暖機制御において触媒用リーン制御から後述の触媒用リッチ制御に移行するための条件であり、例えば、第1積算空気量Qas1が閾値Qasref1以上に至った条件などが用いられる。
ステップS116で第1移行条件が成立していないと判定したときには、ステップS110に戻る。このようにして第1触媒暖機制御における触媒用リーン制御を継続する。こうしてステップS110~S116の処理を繰り返し実行して、ステップS116で第1移行条件が成立したと判定すると、第1触媒暖機制御における触媒用リッチ制御を実行する(ステップS120~S124)。ここで、触媒用リッチ制御は、エンジン22の点火時期が最適点火時期よりも遅くなると共に当量比が値1よりも大きくなる(空燃比がリッチになる)ようにエンジン22を制御する制御である。
第1触媒暖機制御における触媒用リッチ制御では、最初に、ステップS110の処理と同様に第1水温Tw1や第1積算空気量Qas1を入力する(ステップS120)。続いて、入力した第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定する(ステップS122)。そして、設定した目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を用いてエンジン22を制御する(ステップS124)。
ここで、第1触媒暖機制御の触媒用リッチ制御における目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*は、例えば、第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1と、目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*と、の関係として予め定めた第2マップに第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1を適用することにより推定される。目標パワーPe*は、第1水温Tw1が高いほど大きくなり且つ第1積算空気量Qas1が大きいほど大きくなるように設定される。目標当量比φ*は、第1水温Tw1が高いほど値1に対して大きくなり且つ第1積算空気量Qas1が大きいほど値1に対して大きくなるように設定される。目標点火時期IT*は、最適点火時期よりも遅い範囲内で、第1水温Tw1が高いほど遅くなり且つ第1積算空気量Qas1が大きいほど遅くなるように設定される。これらの傾向は、第1マップの傾向と同様の理由に基づく。
続いて、第1終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS126)。ここで、第1終了条件は、第1触媒暖機制御(第1触媒暖機制御における触媒用リッチ制御)を終了するための条件であり、例えば、第1触媒暖機制御の触媒用リッチ制御で筒内噴射弁127から燃料噴射を行なった気筒数である第1噴射気筒数Nc1が閾値Ncref1以上に至った条件や、第1積算空気量Qas1が上述の閾値Qasref1よりも大きい閾値Qasref2以上に至った条件、浄化触媒135aの温度Tcが上述の閾値Tcref以上に至った条件などが用いられる。
ステップS126で第1終了条件が成立していないと判定したときには、ステップS120に戻る。このようにして第1触媒暖機制御における触媒用リッチ制御を継続する。こうしてステップS120~S126の処理を繰り返し実行して、ステップS126で第1終了条件が成立したと判定すると、第1触媒暖機制御(第1触媒暖機制御における触媒用リッチ制御)を終了して、本ルーチンを終了する。
なお、実施例では、浄化触媒135aの温度Tcが閾値Tcref以上に至る付近で第1終了条件が成立して第1触媒暖機制御を終了するように、第1触媒暖機制御の触媒用リーン制御や触媒用リッチ制御における目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*、第1移行条件、第1終了条件を設定するものとした。
ステップS100で第2触媒暖機制御を実行する場合であると判定したときには、第2触媒暖機制御における触媒用リーン制御を実行する(ステップS210~S214)。第2触媒暖機制御における触媒用リーン制御では、最初に、第2水温Tw2や第2積算空気量Qas2を入力する(ステップS210)。続いて、入力した第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定する(ステップS212)。そして、設定した目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を用いてエンジン22を制御する(ステップS214)。
ここで、第2水温Tw2は、第2触媒暖機制御の開始時(例えば、エンジン22の燃料カットからの復帰時)に水温センサ142により検出された冷却水温Twが入力される。第2積算空気量Qas2は、エアフローメータ123aにより検出された吸入空気量Qaの第2触媒暖機制御の開始時からの積算値として演算された値が入力される。
第2触媒暖機制御の触媒用リーン制御における目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*は、例えば、第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2と、目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*と、の関係として予め定めた第3マップに第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2を適用することにより推定される。目標パワーPe*は、第2水温Tw2が高いほど大きくなり且つ第2積算空気量Qas2が大きいほど大きくなるように設定される。目標当量比φ*は、第2水温Tw2が高いほど値1に対して小さくなり且つ第2積算空気量Qas2が大きいほど値1に対して小さくなるように設定される。目標点火時期IT*は、最適点火時期よりも遅い範囲内で、第2水温Tw2が高いほど遅くなり且つ第2積算空気量Qas2が大きいほど遅くなるように設定される。これらの傾向は、第1マップの傾向と同様の理由に基づく。
続いて、第2移行条件が成立したか否かを判定する(ステップS216)。ここで、第2移行条件は、第2触媒暖機制御において触媒用リーン制御から触媒用リッチ制御に移行するための条件であり、例えば、第2積算空気量Qas2が閾値Qasref3以上に至った条件などが用いられる。閾値Qasref3としては、例えば、上述の閾値Qasref1と同一の値が用いられる。
ステップS216で第2移行条件が成立していないと判定したときには、ステップS210に戻る。このようにして第2触媒暖機制御における触媒用リーン制御を継続する。こうしてステップS210~S216の処理を繰り返し実行して、ステップS216で第2移行条件が成立したと判定すると、第2触媒暖機制御における触媒用リッチ制御を実行する(ステップS220~S224)。
第2触媒暖機制御における触媒用リッチ制御では、最初に、ステップS210の処理と同様に第2水温Tw2や第2積算空気量Qas2を入力する(ステップS220)。続いて、入力した第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定する(ステップS222)。そして、設定した目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を用いてエンジン22を制御する(ステップS224)。
ここで、第2触媒暖機制御の触媒用リッチ制御における目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*は、例えば、第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2と、目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*と、の関係として予め定めた第4マップに第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2を適用することにより推定される。目標パワーPe*は、第2水温Tw2が高いほど大きくなり且つ第2積算空気量Qas2が大きいほど大きくなるように設定される。目標当量比φ*は、第2水温Tw2が高いほど値1に対して大きくなり且つ第2積算空気量Qas2が大きいほど値1に対して大きくなるように設定される。目標点火時期IT*は、最適点火時期よりも遅い範囲内で、第2水温Tw2が高いほど遅くなり且つ第2積算空気量Qas2が大きいほど遅くなるように設定される。これらの傾向は、第1マップの傾向と同様の理由に基づく。
続いて、第2終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS226)。ここで、第2終了条件は、第2触媒暖機制御(第2触媒暖機制御における触媒用リッチ制御)を終了するための条件であり、例えば、第2触媒暖機制御の触媒用リッチ制御で筒内噴射弁127から燃料噴射を行なった気筒数である第2噴射気筒数Nc2が閾値Ncref2以上に至った条件や、第2積算空気量Qas2が上述の閾値Qasref3よりも大きい閾値Qasref4以上に至った条件、浄化触媒135aの温度Tcが上述の閾値Tcref以上に至った条件などが用いられる。閾値Ncref2としては、例えば、上述の閾値Ncref1と同一の値が用いられる。閾値Qasref4としては、例えば、上述の閾値Qasref2と同一の値が用いられる。
ステップS226で第2終了条件が成立していないと判定したときには、ステップS220に戻る。このようにして第2触媒暖機制御における触媒用リッチ制御を継続する。こうしてステップS220~S226の処理を繰り返し実行して、ステップS226で第2終了条件が成立したと判定すると、第2触媒暖機制御(第2触媒暖機制御における触媒用リッチ制御)を終了して、本ルーチンを終了する。
なお、実施例では、浄化触媒135aの温度Tcが閾値Tcref以上に至る付近で第2終了条件が成立して第2触媒暖機制御を終了するように、第2触媒暖機制御の触媒用リーン制御や触媒用リッチ制御における目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*、第2移行条件、第2終了条件を設定するものとした。
このように、実施例では、第1触媒暖機制御において、第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御を実行し、第2触媒暖機制御において、第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいて触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御を実行する。ここで、エンジン22を始動後に、浄化触媒135aが低温であることにより触媒暖機制御(第1触媒暖機制御)を実行し、その後に燃料カットを実行し、燃料カットからの復帰後に、燃料カット中の浄化触媒135aの温度低下により再び触媒暖機制御(第2触媒暖機制御)を実行するときを考える。このとき、燃料カット前のエンジン22の運転状態や燃料カット時間などにより、第1水温Tw1と第2水温Tw2とに比較的大きい乖離が生じている場合がある。このため、第2触媒暖機制御において、第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御を実行すると、そのときのエンジン22の状態を適切に反映していないために、目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を適切に設定することができずに、エンジン22を適切に制御できない可能性がある。これに対して、実施例では、第2触媒暖機制御において、第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいて触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御を実行することにより、そのときのエンジン22の状態をより適切に反映して目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定してエンジン22を制御することができるから、エンジン22をより適切に制御することができる。この結果、第2触媒暖機制御をより適切に実行することができる。
図4は、エンジン22の回転数Neや燃料カットの実行の有無、浄化触媒135aの温度Tc、触媒暖機制御の実行の有無、冷却水温Tw、第1積算空気量Qas1、第2積算空気量Qas2、目標パワーPe*、目標当量比φ*、目標点火時期IT*の様子の一例を示す説明図である。図示するように、エンジン22の始動完了時に(時刻t11)、浄化触媒135aの温度Tcが閾値Tcref未満である場合、第1触媒暖機制御において、第1触媒暖機制御の開始時の冷却水温Tw(第1水温Tw1)および第1積算空気量Qas1に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定して触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御を実行する。そして、浄化触媒135aの温度Tcが閾値Tcref以上に至る付近で第1終了条件が成立すると(時刻t12)、第1触媒暖機制御を終了する。その後にエンジン22の燃料カットを実行し(時刻t13~t14)、エンジン22の燃料カットからの復帰時に(時刻t14)、浄化触媒135aの温度Tcが閾値Tcref未満である場合、第2触媒暖機制御において、第2触媒暖機制御の開始時の冷却水温Tw(第2水温Tw2)および第2積算空気量Qas2に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定して触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御を実行する。そして、浄化触媒135aの温度Tcが閾値Tcref以上に至る付近で第2終了条件が成立すると(時刻t15)、第2触媒暖機制御を終了する。これにより、第1触媒暖機制御および第2触媒暖機制御の何れでも第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御を実行するものに比して、第2触媒暖機制御において、そのときのエンジン22の状態をより適切に反映してエンジン22を制御することができるから、エンジン22をより適切に制御することができる。この結果、第2触媒暖機制御をより適切に実行することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置21では、第1触媒暖機制御(エンジン22の始動後の触媒暖機制御)において、第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいてエンジン22を制御し(触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御を実行し)、第2触媒暖機制御(エンジン22の燃料カットからの復帰後の触媒暖機制御)において、第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいてエンジン22を制御する。これにより、第2触媒暖機制御をより適切に実行することができる。
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置21では、第1触媒暖機制御において、第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいてエンジン22を制御し、第2触媒暖機制御において、第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいてエンジン22を制御するものとした。しかし、第1触媒暖機制御において、第1積算空気量Qas1を考慮せずに第1水温Tw1に基づいてエンジン22を制御し、第2触媒暖機制御において、第2積算空気量Qas2を考慮せずに第2水温Tw2に基づいてエンジン22を制御するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置21では、第1触媒暖機制御において、第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定し、第2触媒暖機制御において、第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定するものとした。しかし、第1触媒暖機制御において、第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*のうちの1つを設定すると共にこの1つに基づいて残余の2つを設定するものとしてもよい。また、第2触媒暖機制御において、第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*のうちの1つを設定すると共にこの1つに基づいて残余の2つを設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置21では、第1触媒暖機制御において、第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定し、第2触媒暖機制御において、第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定するものとした。しかし、第1触媒暖機制御ついては、目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*のうちの少なくとも1つを第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて設定するものであればよい。また、第2触媒暖機制御については、目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*のうちの少なくとも1つを第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいて設定するものであればよい。
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置21では、第1触媒暖機制御において、第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定し、第2触媒暖機制御において、第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいて目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*を設定するものとした。しかし、第1触媒暖機制御において、目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*のうちの少なくとも1つに加えて、燃料噴射制御における噴射モード(ポート噴射モード、筒内噴射モード、共用噴射モードのうちの何れか)や噴射時期、噴射回数(複数回に分けて噴射する場合)、筒内噴射弁127の供給燃圧、吸気バルブ128や排気バルブ133の開閉タイミング(エンジン22が吸気バルブ128や排気バルブ133の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング装置を備える場合)などのうちの少なくとも1つを第1水温Tw1および第1積算空気量Qas1に基づいて設定するものとしてもよい。また、第2触媒暖機制御において、目標パワーPe*や目標当量比φ*、目標点火時期IT*のうちの少なくとも1つに加えて、燃料噴射制御における噴射モードや噴射時期、噴射回数、筒内噴射弁127の供給燃圧、吸気バルブ128や排気バルブ133の開閉タイミング(可変バルブタイミング装置を備える場合)などのうちの少なくとも1つを第2水温Tw2および第2積算空気量Qas2に基づいて設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置21では、第1終了条件の閾値Ncref1や閾値Qasref2、第2終了条件の閾値Ncref2や閾値Qasref4として、一定値が用いられるものとした。しかし、閾値Ncref1や閾値Qasref2は、第1水温Tw1に基づく値、例えば、第1水温Tw1が高いほど小さくなる値が用いられるものとしてもよい。また、閾値Ncref2や閾値Qasref4は、第2水温Tw2に基づく値、例えば、第2水温Tw2が高いほど小さくなる値が用いられるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置21では、触媒暖機制御(第1触媒暖機制御や第2触媒暖機制御)において、触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御をこの順に実行するものとした。しかし、触媒暖機制御は、エンジン22の点火時期を最適点火時期よりも遅くしてエンジン22を制御する制御を実行するものであればよく、これに限定されるものではない。例えば、触媒暖機制御として、触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御に対して目標当量比φ*に値1を設定する点で異なる制御を実行するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置21では、排気制限制御の実行が要求される場合として、浄化触媒135aの温度Tcが閾値Tcref未満であることにより触媒暖機制御の実行が要求される場合を考えると共に、排気制限制御として触媒暖機制御を実行するものとした。しかし、触媒暖機制御の実行が要求される場合とは異なる理由(例えば、第1水温Tw1が極低温または極高温であるなどの理由)により排気制限制御の実行が要求される場合、排気制限制御として、触媒暖機制御とは異なる制御を実行するものとしてもよい。この場合、排気制限制御として、例えば、触媒用リーン制御および触媒用リッチ制御に対して目標点火時期IT*に最適点火時期を設定する点で異なる制御を実行するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置21では、4気筒のエンジン22を用いるものとした。しかし、6気筒や8気筒、12気筒などのエンジンを用いるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52とHVECU70とを備えるものとした。しかし、これらのうちの少なくとも2つを単一の電子制御ユニットとして構成するものとしてもよい。
実施例では、エンジン22とプラネタリギヤ30とモータMG1,MG2とを備えるハイブリッド自動車20に搭載されるエンジン装置の形態とした。しかし、エンジンと1つのモータとを備えるいわゆる1モータハイブリッド自動車に搭載されるエンジン装置の形態としてもよい。また、走行用のモータを備えずにエンジンからの動力だけを用いて走行する自動車に搭載されるエンジン装置の形態としてもよい。さらに、建設設備などの移動しない設備に搭載されるエンジン装置の形態としてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、浄化触媒135aが「浄化触媒」に相当し、エンジンECU24が「制御装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。