以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本実施の形態による解析システム1の構成の一例を概略的に示す図である。解析システム1は、PCRによる遺伝子の増幅を経時的(リアルタイム)に測定して解析する処理を全自動で行なうことができる装置である。以下では、図1に示すように、鉛直方向(図1においては上下方向)に沿う方向を「Z軸方向」、鉛直方向に垂直であってかつ互いに直交する方向をそれぞれ「X軸方向」および「Y軸方向」とも称する。
解析システム1は、解析装置2と、解析装置2と通信可能な端末3とを含む。端末3は、作業者によって操作される、ディスプレイを備えた一般的なパーソナルコンピュータである。
解析装置2は、検査装置10と、制御装置20と、温調装置30と、移動装置4,5とを含む。温調装置30は、複数の容器50等を保持可能に構成される保持装置(ホルダ)40を含む。保持装置40は、ペルチェ素子などによる温調機能(加熱機能および冷却機能)を有する温調部41と、温調機能を有さない保持部42とを含む。
移動装置4は、検査装置10を水平方向(XY軸方向)に移動させるアクチュエータ(図示せず)を含む。移動装置5は、保持装置40を水平方向(XY軸方向)に移動させるアクチュエータ(図示せず)を含む。移動装置4,5のアクチュエータは、制御装置20からの指令によって動作する。移動装置4,5によって検査装置10および保持装置40の少なくとも一方を水平方向に移動させることによって、検査装置10と保持装置40との水平方向の相対距離を調整することができる。なお、移動装置4,5のどちらか一方を省略するようにしてもよい。
検査装置10は、光学ユニット11と、分注ユニット12と、開閉ユニット14と、照射ユニット16とを含む。
分注ユニット12には、Z軸方向に延在するノズル13aが先端に取り付けられたシリンジ13が備えられる。ノズル13aの内部には、Z軸方向に沿って移動可能なプランジャ(図示せず)が備えられる。シリンジ13は、プランジャのZ軸正方向のストローク量に応じた量の液体を吸引し、プランジャのZ軸負方向のストローク量に応じた量の液体を排出するように構成される。分注ユニット12は、シリンジ13をZ軸方向に移動させるためのアクチュエータ(図示せず)と、ノズル13a内のプランジャをZ軸方向にストロークさせるためのアクチュエータ(図示せず)とを備える。これらのアクチュエータは、制御装置20からの指令によって動作する。
開閉ユニット14は、保持装置40に保持されている容器50の蓋に触れて容器50の蓋を自動開閉するための突起部を有する開閉機構を備える。開閉ユニット14は、制御装置20からの指令によって動作する。
照射ユニット16は、開閉ユニット14が容器50の蓋を開閉する際に開閉ユニット14の突起部に検体が付着して次の検体に混入(コンタミネーション)するおそれがあることに鑑み、開閉ユニット14の突起部周辺にUV光(紫外線)を照射することによってコンタミネーションを予防する。
光学ユニット11は、励起用の光を容器50内の検体に照射したときに検体から放出される蛍光を検出することによって、検体に含まれる感染症ウィルスあるいは遺伝子を解析する装置である。光学ユニット11は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの波長に対する蛍光検出をそれぞれ行ない、その結果を制御装置20に出力する。光学ユニット11には、光源(発行ダイオードなど)、光源からの光を検体に照射したり検体の蛍光を集めたりするためのレンズ、検体から放射される蛍光を検出し解析可能なデジタルデータに変換するフォトダイオードなどが含まれる。なお、光学ユニット11については公知の構成を採用することができる。
制御装置20は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力バッファ等を含んで構成される。制御装置20は、分析開始指令を端末3から受けると、解析装置2の各部(検査装置10内の各ユニット、移動装置4,5、温調装置30の温調部41)を予め決められた手順に沿って制御することによって、検体に含まれる感染症ウィルスあるいは遺伝子を解析する。制御装置20は、解析装置2による解析結果を端末3のディスプレイに表示させる。
図2は、容器50が設置された状態の保持装置40をZ軸に沿う方向から視た図である。保持装置40は、XY平面に沿って延在し、複数の容器50が2次元状に配列される配列面を有している。検査装置10および保持装置40は、移動装置4,5によって、保持装置40の配列面に沿って2次元状に相対移動可能に構成される。
保持装置40の配列面に配列される容器50には、サーマルサイクルの対象となる液体(各試薬が添加された検体)が入るPCR容器(反応容器)51と、各試薬の入った試薬容器52と、検体単体が入った検体容器54とが含まれる。
PCR容器51は、X軸方向に沿って1次元状に配列される4つのPCR容器51a,51b,51c,51dを1セットとして、Y軸方向に4セット配置される。
試薬容器52は、X軸方向に沿って1次元状に配列される4つの試薬容器52a,52b,52c,52dを1セットとして、Y軸方向に4セット配置される。試薬容器52aには、検体処理液が予め入れられている。試薬容器52bには、反応液が予め入れられている。試薬容器52cには、プライマー/プローブ液(プライマーとプローブとを含む液)が予め入れられている。試薬容器52dには、酵素液が予め入れられている。なお、4つの試薬容器52a,52b,52c,52dは、少なくとも1検体の分析に必要な量の試薬が予め封入された状態で1セットで試薬キットとして提供(市販)されている。
検体容器54は、Y軸方向に沿って1次元状に4つ配列される。本実施の形態による解析装置2においては、Y軸方向に配列された4つの検体容器54にそれぞれ異なる検体を入れておくことによって、1度に4つの検体を分析することができる。
保持装置40における、各容器50(PCR容器51、試薬容器52、検体容器54)が配置される箇所には、各容器50の一部をZ軸方向に沿って挿入可能な段差(穴あるいは窪み)が形成されている。各容器50が対応する段差に挿入されることによって、各容器50のX軸方向およびY軸方向の位置が固定される。
また、保持装置40における試薬容器52と検体容器54との間の領域には、検体および試薬を分注するための分注チップ53も配置される。分注チップ53は、シリンジ13のノズル13aに取り付けられて使用される。
本実施の形態においては、分注チップ53として、検体容器54に用いられるロングチップ53aと、PCR容器51および試薬容器52に用いられるショートチップ(微量チップ)53bとが含まれる。ショートチップ53bの深さは、ロングチップ53aの深さよりも浅い。また、ショートチップ53bの先端の開口径は、ロングチップ53aの先端の開口径よりも小さい。分注チップ53は、X軸方向に沿って1次元状に配列される1つのロングチップ53aおよび2つのショートチップ53bを1セットとして、Y軸方向に4セット配置される。
サーマルサイクルの対象となるPCR容器51は温調機能を有する温調部41に配置され、その他の試薬容器52、分注チップ53、検体容器54は温調機能を有さない保持部42に配置される。
さらに、保持装置40には、使用済みの分注チップ53を廃棄するためのチップ廃棄部43が備えられる。
なお、図2には示されていないが、各容器50は、蓋と容器本体とが一体となった樹脂成型品であり、蓋の開閉が可能に構成される。
図3は、容器50が設置された状態の保持装置40をY軸に沿う方向から視た断面図である。図2にも示したように、保持装置40には、検体容器54、ロングチップ53a、2つのショートチップ53b、試薬容器52a,52b,52c,52d、PCR容器51a,51b,51c,51dが、X軸方向に沿ってこの順に配列されている。
PCR容器51および試薬容器52には同じ形状およびサイズの汎用性のある容器が用いられており、PCR容器51および試薬容器52の高さ(Z軸方向の寸法)Z1は同じ値(たとえば20mm程度)である。一方、検体容器54にはPCR容器51および試薬容器52よりも大きいサイズの容器が用いられている。そのため、検体容器54の高さZ4は、PCR容器51および試薬容器52の高さZ1よりも大きい値(たとえば70mm程度)に設定されている。
検体が検体容器54に入っている場合、検体容器54の70mm程度の高さZ1に対して検体が検体容器54の底から10~20mm程度上方の位置までの範囲にあることが想定される。そのため、高さ20mm程度のショートチップ53bでは、ショートチップ53bが検体容器54の中に深く入り込み、分注時の飛沫がショートチップ53bだけでなくノズル13aに付着する可能性が高まり、感染や混入の可能性が高まる。
その対策として、本実施の形態においては、PCR容器51および試薬容器52に対しては、ショートチップ53bが使用される。ショートチップ53bの高さ(Z軸方向の寸法)Z2は、PCR容器51および試薬容器52の高さZ1よりも大きい値に設定される。一方、検体容器54に対しては、ロングチップ53aが使用される。ロングチップ53aの高さ(Z軸方向の寸法)Z3は、検体容器54の高さZ4よりも大きい値に設定される。
さらに、本実施の形態によるシリンジ13のノズル13aは、ショートチップ53bおよびロングチップ53aの双方を取付可能に構成される。
図4は、シリンジ13のノズル13aにロングチップ53aを取り付けて、ロングチップ53aを検体容器54に挿入している状態を示す図である。図5は、シリンジ13のノズル13aにショートチップ53bを取り付けて、ショートチップ53bを試薬容器52aに挿入している状態を示す図である。
図4に示すように、ノズル13aには、ロングチップ53aの末端の開口径に嵌合するようにサイズ調整された径D1を有する部分が設けられる。ノズル13aにロングチップ53aを取り付ける際には、ロングチップ53aの開口部がノズル13aの径D1を有する部分に位置するまでノズル13aをロングチップ53aに挿入することによって、ノズル13aとロングチップ53aとが嵌合される。
さらに、図5に示すように、ノズル13aにおける径D1を有する部分よりも先端側には、ショートチップ53bの末端の開口径に嵌合するようにサイズ調整された径D2(D2<D1)を有する部分が設けられる。ノズル13aにショートチップ53bを取り付ける際には、ショートチップ53bの開口部がノズル13aの径D2を有する部分に位置するまでノズル13aをショートチップ53bに挿入することによって、ノズル13aとショートチップ53bとが嵌合される。
なお、ノズル13aに嵌合されたロングチップ53aあるいはショートチップ53bをノズル13aから取り外す際には、ロングチップ53aあるいはショートチップ53bの上端をチップ廃棄部43の凹部下面に引っかけた状態でノズル13aを上方に移動させることによって、ノズル13aからロングチップ53aあるいはショートチップ53bが取り外されて廃棄される。
<解析処理>
作業者が、各容器50(PCR容器51、試薬容器52および検体容器54)および分注チップ53(ロングチップ53aおよびショートチップ53b)を保持装置40にセットし、分析を開始するための分析開始指令を端末3に入力すると、解析装置2による解析処理が開始される。
図6は、解析装置2による解析処理の各工程を模式的に示す図である。解析処理においては、工程S1~S6がこの順に実行される。
まず、工程S1では、検体5μLをPCR容器51bに分注する処理(サンプル注入)が行なわれる。
図7は、工程S1において検体5μLをPCR容器51bに分注する処理の流れを示す図である。制御装置20は、まず、シリンジ13のノズル13aにロングチップ53aを装着する。そして、制御装置20は、図7の線L1に示すように、検体容器54から検体25μLを採取してPCR容器51aへ検体25μLを分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
次いで、制御装置20は、ロングチップ53aをチップ廃棄部43にて廃棄するように分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
次いで、制御装置20は、シリンジ13のノズル13aに1つ目のショートチップ53bを装着する。そして、制御装置20は、図7の線L2に示すように、PCR容器51aから検体5μLを採取してPCR容器51bへ検体5μLを分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
工程S1において、ロングチップ53aで検体を25μL採取して一時的にPCR容器51aに分注しておき、その後にショートチップ53bに替えてPCR容器51aから検体5μLを採取してPCR容器51bに分注するのは、検体5μLを正確にPCR容器51bに分注するためである。すなわち、シリンジ13のノズル13aの内部に備えられるプランジャは基本的に微量の分注を行うショートチップ53bに対応させているために細く、同じストローク量では、ロングチップ53aの使用時において分注精度が低下し正確な結果が得られない場合が生じ得る。そこで、本実施の形態においては、ロングチップ53aで一度検体を採取してPCR容器51bとは別のPCR容器51aに5μLよりも多い25μLを分注しておき、その後にショートチップ53bに替えてPCR容器51aから正確に5μLを採取してPCR容器51bへ分注する。これにより、5μLの微量の検体を正確にPCR容器51bに分注することができる。
次の工程S2では、検体処理液5μLをPCR容器51bに添加する処理が行なわれる。
図8は、工程S2において検体処理液5μLをPCR容器51bに添加する処理の流れを示す図である。制御装置20は、まず、図8の線L3に示すように、試薬容器52aから検体処理液5μLを採取してPCR容器51bへ検体処理液5μLを分注する。
この際、試薬容器52aに検体処理液5μLのみを入れておくと空気が混入される「空吸い」が生じ得ることに鑑み、試薬キットとして提供(市販)される試薬容器52aには、使用量5μLに空吸い防止用の余分量3μLを加えた合計8μLの検体処理液が封入されている。これにより、PCR容器51bへ検体処理液5μLを精度よく分注することができる。
その後、制御装置20は、図8の線L4に示すように、シリンジ13の往復(上下動作)によってPCR容器51b内を攪拌するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
次いで、制御装置20は、1つ目のショートチップ53bをチップ廃棄部43にて廃棄するように分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
図6に戻って、次の工程S3について説明する。工程S3では、PCR容器51bを加熱および急冷する処理が行なわれる。具体的には、制御装置20は、PCR容器51bを加熱してPCR容器51b内の検体温度を90℃に5分維持し、その後、PCR容器51bを急冷してPCR容器51b内の検体温度を20℃(常温)に戻すように、温調部41を制御する。
次の工程S4では、各試薬をPCR容器51bに添加する処理が行なわれる。
図9は、工程S2において各試薬をPCR容器51bに添加する処理の流れを示す図である。制御装置20は、まず、シリンジ13のノズル13aに2つ目のショートチップ53bを装着する。そして、制御装置20は、図9の線L5に示すように、試薬容器52bから反応液7.8μLを採取して、酵素液2.4μLが予め入っている試薬容器52dへ分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
次いで、制御装置20は、図9の線L6に示すように、試薬容器52cからプライマ/プローブ液7.8μLを採取して、反応液7.8μLおよび酵素液2.4μLが入った試薬容器52dへ分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。そして、制御装置20は、図9の線L7に示すように、シリンジ13の往復(上下動作)によって試薬容器52d内を攪拌するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。この時点での試薬容器52dに入っている試薬混合液の量は18μLとなる。試薬容器52dに入っている試薬混合液18μLの内訳は、反応液7.8μL、プライマ/プローブ液7.8μL、酵素液2.4μLである。
次いで、制御装置20は、図9の線L8に示すように、試薬容器52dに入っている試薬混合液18μLにうちから15μLを採取し、PCR容器51bへ試薬混合液15μLを分注する。PCR容器51bへ分注された試薬混合液15μLの内訳は、反応液6.5(=7.8×15/18)μL、プライマ/プローブ液6.5(=7.8×15/18)μL、酵素液2.0(=2.4×15/18)μLである。
その後、制御装置20は、図9の線L9に示すように、シリンジ13の往復(上下動作)によってPCR容器51b内を攪拌するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
上述のように、工程S4においては、検体5μLおよび検体処理液5μLの入ったPCR容器51bに対して、反応液6.5μL、プライマ/プローブ液6.5μL、酵素液2.0μLが添加されることになる。すなわち、検体5μLおよび検体処理液5μLに対して反応液、プライマ/プローブ液、酵素液の必要量は、それぞれ6.5μL、6.5μL、2.0μL(合計15μL)である。
試薬容器52dから試薬混合液15μLをショートチップ53bで吸引する際に、試薬容器52dに試薬混合液15μLのみを入れておくと、空吸いが生じ得る。そこで、本実施の形態においては、必要量15μLに余分量3.0μLを加えた合計18μLの試薬混合液を試薬容器52dに分注しておき、試薬容器52d内の試薬混合液18μLにうちから15μLを採取して、PCR容器51bへ分注する。これにより、試薬容器52dからPCR容器51bへ試薬混合液15μLをより正確に分注することができる。
さらに、本実施の形態においては、反応液6.5μL、プライマ/プローブ液6.5μL、酵素液2.0μLを含む合計15μLの試薬混合液と同じ混合比率の試薬混合液18μLを得るために、反応液7.8μL、プライマ/プローブ液7.8μL、酵素液2.4μLを使用している。
この際、反応液、プライマ/プローブ液、酵素液のなかで酵素液の製造コストが最も高いことに鑑み、本実施の形態においては、酵素液の使用量を低減するための工夫が施されている。具体的には、試薬容器52b,52cから反応液およびプライマ/プローブ液をそれぞれ7.8μLずつ吸引して、酵素液2.4μLが入った試薬容器52dへ分注するようにしている。
その上で、試薬キットとして提供(市販)される試薬容器52bには、使用量7.8μLに空吸い防止用の余分量3.0μLを加えた合計10.8μLの反応液が予め封入されているとともに、試薬容器52cには、使用量7.8μLに空吸い防止用の余分量3.0μLを加えた合計10.8μLのプライマ/プローブ液が予め封入されている。これにより、試薬容器52b,52cから反応液およびプライマ/プローブ液を吸引して試薬容器52dへ分注する際の空吸いが防止される。さらに、試薬キットとして提供(市販)される試薬容器52dには、酵素液の余分量は含まれておらず、使用量2.4μLのみの酵素液が予め封入されている。これにより、最も高額な酵素液の使用量を低減することができる。
図10は、試薬キットとして提供される4つの試薬容器52a,52b,52c,52dに予め封入されている各試薬の量を示す図である。
試薬容器52aには、使用量5.0μLに空吸い防止用の余分量3.0μLを加えた8.0μLの検体処理液が予め封入されている。試薬容器52bには、使用量7.8μLに空吸い防止用の余分量3.0μLを加えた10.8μLの反応液が予め封入されている。試薬容器52cには、使用量7.8μLに空吸い防止用の余分量3.0μLを加えた10.8μLのプライマ/プローブ液が予め封入されている。
一方、試薬容器52dには、空吸い防止用の余分量は封入されておらず、使用量2.4μLのみの酵素液が予め封入されている。
検体処理液、反応液、プライマ/プローブ液、および酵素液の必要量は、それぞれ5.0μL、6.5μL、6.5μL、2.0μLである。そのため、各試薬とも必要量よりも過剰に封入されていることになるが、本実施の形態においては、最も高額な酵素液の余分量(=0.4μL)が、他の試薬の余分量よりも低く抑えられていることが分かる。
図11は、試薬キットの外観を模式的に示す図である。この試薬キットには、図11に示すように、1次元状に配列され、互いに隣接する容器同士が繋がった状態の4つの試薬容器52a,52b,52c,52dが、梱包材55に梱包された状態で提供される。4つの試薬容器52a,52b,52c,52dの各蓋部は閉じられた状態である。なお、梱包材55は、紙製の箱であってもよいし、樹脂製の袋であってもよい。
図10に示したように、試薬容器52aには8.0μLの検体処理液が予め封入され、試薬容器52bには10.8μLの反応液が予め封入され、試薬容器52cには10.8μLのプライマ/プローブ液が予め封入され、試薬容器52dには2.4μLの酵素液が予め封入されている。
このような試薬キットを用いることで、作業者は効率よく解析処理を開始することができる。すなわち、互いに切り離され試薬容器52a,52b,52c,52dをそれぞれ保持装置40にセットするのではなく、1次元状に連結された試薬容器52a,52b,52c,52dを梱包材55から取り出して保持装置40にセットするだけで試薬容器52のセット作業を完了させることができる。
また、他の消耗品として、4連のPCR容器51、および分注チップ53(ロングチップ53aおよびショートチップ53b)を組み合わせて販売するようにしてもよい。
なお、図11には、互いに隣接する容器同士が繋がった4つの試薬容器52a,52b,52c,52d(4連のPCRチューブ)が試薬キットとして提供されるが、4つの試薬容器52a,52b,52c,52dを2セット分組み合わせた8連のPCRチューブを試薬キットとして提供するようにしてもよい。
図6に戻って、次の工程S5について説明する。工程S5では、PCR容器51bのサーマルサイクル処理が行なわれる。具体的には、制御装置20は、PCR容器51b内の液温度を42℃に10分維持して逆転写反応を生じさせ、その後、PCR容器51b内の液温度を95℃に1分維持して酵素を活性させるように、温調部41を制御する。
次いで、制御装置20は、PCR容器51b内の液温度を95℃に5秒間維持した後にPCR容器51b内の液温度を60℃に30秒間維持して遺伝子を増幅させる増幅処理を行なうように、温調部41を制御する。なお、この増幅処理は45サイクル実施される。
次の工程S6では、3波長蛍光検出が行なわれる。具体的には、制御装置20は、増幅処理後に、PCR容器51b内の液温度を60℃にした状態で、PCR容器51b内の液に対して3波長蛍光検出を行なうように、温調部41および光学ユニット11を制御する。なお、3波長蛍光検出は、増幅処理が行なわれる毎に実施される。3波長蛍光検出の結果(解析装置2による解析処理の結果)は、端末3のディスプレイに表示される。
上述した解析処理の各工程S1~S6において、各容器50から液体を採取したり各容器50に液体を分注したりする毎に、各容器50の開栓動作(蓋を開く動作)および閉栓動作(蓋を閉じる動作)が行なわれる。本実施の形態による解析装置2は、上述したように、各容器50の蓋に触れて容器50の蓋を自動開閉するための突起部を有する開閉機構を備える開閉ユニット14を備える。制御装置20は、各工程S1~S6において、各容器50の開栓および閉栓が必要となるタイミングで、各容器50の蓋を自動開閉するように開閉ユニット14を制御する。
以上のように、本実施の形態による解析装置2においては、分注ユニット12のノズル13aが、ロングチップ53aと、ロングチップ53aよりも深さの浅いショートチップ53bとが着脱可能に構成される。そして、ノズル13aにロングチップ53aが装着された状態で検体容器54から検体が必要量5μLよりも多い25μLだけ吸引されて一時的にPCR容器51aに分注される。これにより、ノズル13aにショートチップ53bが装着された状態で検体容器54から検体を採取する場合に比べて、ノズル13aの位置を高く維持できるため、ノズル13aに検体が付着し難くすることができる。
その後、ノズル13aに装着される分注チップをロングチップ53aからショートチップ53bに切り替え、その状態でPCR容器51aから検体が必要量5μLだけ吸引されてPCR容器51bに分注される。そのため、ノズル13aにロングチップ53aが装着された状態で必要量5μLの検体を分注する場合に比べて、検体の分注精度を向上させることができる。
その結果、分注ユニット12のノズル13aに検体が付着し難くしつつ、検体の分注精度を向上させることができる。
<分注チップの衝突検出機構>
上述のように、本実施の形態による解析装置2においては、解析処理の各工程S1~S6において、各容器50の蓋が開閉ユニット14によって自動開閉される。
しかしながら、開閉ユニット14の故障など何らかの要因で、容器50の蓋を開栓すべきタイミングであるにも関わらず、容器50の蓋を自動開栓できない場合も想定される。シリンジ13のノズル13aに取り付けられた分注チップ53が検体や試薬を吸引するために容器50に向けて降下された時に、仮に容器50の蓋が閉じたままであると、分注チップ53の先端が容器50の蓋に衝突することになる。
本実施の形態による解析装置2においては、分注チップ53の先端が何らかの他の物体に衝突したことを検出するための衝突検出機構が分注ユニット12に備えられている。
図12は、蓋の開いた容器50に向けて分注チップ53が降下した場合における、分注ユニット12の内部状態を示す図である。なお、図12には、分注チップ53としてショートチップ53bが用いられ、容器50として試薬容器52が用いられる例が示されいている。
分注ユニット12は筐体12aで覆われている。その筐体12aの内部に、シリンジ13と衝突検出センサ80とが収容されている。
シリンジ13は、分注チップ53が装着されるノズル13aと、Z軸方向に沿って移動可能なプランジャ(図示せず)を内部に備えるシリンダ13bと、シリンダ13bに固定されるプレート13c,13dとを備える。
分注ユニット12は、筐体12aの底壁に固定されるシリンジホルダ12bと、シリンジホルダ12bとシリンジ13(より詳しくはシリンジ13のシリンダ13bに固定されるプレート13c)との間に弾性力を付勢するバネ12cとを備える。シリンジホルダ12bは、シリング13をZ軸方向に沿って移動可能に支持する。シリンジ13は、バネ12cによる弾性力によって、シリンジホルダ12bに対して鉛直下方向(Z軸負方向)に付勢されている。
衝突検出センサ80は、筐体12aの側壁に固定されている。衝突検出センサ80は、一対の発光部81および受光部82を含む。衝突検出センサ80は、発光部81が光を発している状態において、受光部82の受光強度を示す信号を制御装置20に出力する。
制御装置20は、衝突検出センサ80から取得した受光部82の受光強度に基づいて、分注チップ53の先端が他の物体に衝突しているか否かを判定する。
シリンジ13に固定されているプレート13dは、根元部分がシリンジ13に固定され、先端部分がL字状に形成される。プレート13dの先端部分は、分注チップ53の先端が他の物体に衝突していない状態において、衝突検出センサ80の発光部81と受光部82との間であって、かつ発光部81から受光部82への光路を妨げない位置に配置されている。したがって、図12に示すように、分注チップ53が蓋の開いた容器50に向けて降下した場合、分注チップ53は容器50の蓋に衝突せず、発光部81から受光部82への光路が確保される。これにより、受光部82の受光強度は、発光部81からの光を受光部82が受光しているときの強度となる。
図13は、蓋の閉じた容器50に向けて分注チップ53が降下した場合における、分注ユニット12の内部状態を示す図である。なお、図13においても、図12と同様に、分注チップ53としてショートチップ53bが用いられ、容器50として試薬容器52が用いられる例が示されいている。
分注チップ53が蓋の閉じた容器50に向けて降下した場合、分注チップ53が容器50の蓋に衝突(当接)する。この状態で分注チップ53がさらに降下した場合、バネ12cの弾性力に抗してシリンジ13がシリンジホルダ12bに対して鉛直上方向(Z軸正方向)に変位する。これにより、シリンジ13に固定されているプレート13dの先端部分が鉛直上方向に変位して、発光部81から受光部82への光路を妨げる。これにより、受光部82の受光強度は、発光部81からの光を受光部82が受光しているときの強度よりも低下する。
以上のような衝突検出機構を分注ユニット12が備えることに鑑み、本実施の形態による制御装置20は、受光部82の受光強度がしきい値未満である場合に、分注チップ53の先端が他の物体に衝突していると判定する。ここで、「しきい値」は、たとえば発光部81からの光を受光部82が受光しているときの受光部82の受光強度よりも所定値だけ低い値に設定することができる。
図14は、制御装置20が分注チップ53の衝突検出を行なう際に実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、制御装置20は、衝突検出センサ80から、受光部82の受光強度を示す信号を取得する(ステップS10)。
次いで、制御装置20は、受光部82の受光強度がしきい値未満であるか否かを判定する(ステップS12)。受光部82の受光強度が上述のしきい値以上である場合(ステップS12においてNO)、制御装置20は、分注チップ53は他の物体に衝突していないと判定する(ステップS14)。その後、制御装置20は、処理をリターンに移す。
一方、受光部82の受光強度がしきい値未満である場合(ステップS12においてYES)、制御装置20は、分注チップ53が他の物体に衝突していると判定する(ステップS16)。この場合、何らかの要因で容器50の自動開栓を行えず解析処理を正常に行なえない状況であることが想定されるため、制御装置20は、以降の解析処理を停止する(ステップS18)。
なお、分注チップ53をチップ廃棄部43の下に設けられる廃棄ボックス(図示せず)に向けて降下している際に分注チップ53の衝突が検出された場合には、廃棄済みの分注チップ53あるいは分注チップ53を保持するチップホルダが廃棄ボックスに残っていることを検出することができる。
<解析処理の工程S1の変形例>
上述の実施の形態による解析処理の工程S1(サンプル注入)においては、ロングチップ53aで検体25μLを吸引して一時的にPCR容器51aに分注しておき、その後にショートチップ53bに替えてPCR容器51aから検体5μLを吸引してPCR容器51bに分注する。すなわち、必要量5μLの検体の吸引および分注を最終的にはショートチップ53bを用いて行なうことによって、5μLという微量の検体を正確にPCR容器51bに分注している。
しかしながら、検体が唾液等の粘性の高い液体である場合、当該検体をショートチップ53bを用いて吸引すると、ショートチップ53bの先端の開口径が小さいことに起因して検体を吸引できなかったり吸引量が不足したりすることがあり、その影響で必要量5μLの検体を正確に吸引できない可能性がある。また、上述の実施の形態で説明した解析処理においては、最終的に検体が適正に分注できたかどうかを確認することが難しい。
上記の点に鑑み、本変形例においては、ロングチップ53aの先端の開口径がショートチップ53bの先端の開口径よりも大きいことに着目して、必要量5μLの検体の吸引および分注を、ショートチップ53bではなく、ロングチップ53を用いて行なう。
図15は、本変形例の一態様による工程S1aにおいて検体5μLをPCR容器51bに分注する処理(第1サンプル注入処理)の流れを示す図である。制御装置20は、まず、シリンジ13のノズル13aにロングチップ53aを装着する。
そして、制御装置20は、図15の線L11に示すように、ロングチップ53aを用いて検体容器54から必要量5μLの検体を吸引してPCR容器51bに分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
このように、本変形例による工程S1aにおいては、必要量5μLの検体の吸引および分注を、ショートチップ53bよりも開口径の大きいロングチップ53を用いて行なう。そのため、必要量5μLの検体の吸引および分注をショートチップ53bを用いて行なう場合に比べて、唾液等の粘性の高い検体を吸引できなかったり吸引量が不足したりすることが抑制される。その結果、検体が唾液等の粘性の高い液体である場合であっても、必要量5μLの検体をより適正に吸引することができる。
次いで、制御装置20は、図7の線L12に示すように、ロングチップ53aを用いてPCR容器51aから目視確認用の検体25μLを吸引してPCR容器51aに分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
このように、本変形例による工程S1aにおいては、目視確認用の検体25μLをPCR容器51aに分注しておく。これにより、解析処理の全工程の終了後に、作業者がPCR容器51aの検体量を目視で確認することで、検体が適正に分注できているかどうかを確認することができる。すなわち、本変形例による工程S1aにおいては、必要量5μLは微量であり目視することは難しいことに鑑み、必要量5μLよりも多い25μLの検体が目視確認用の検体としてPCR容器51aに分注される。そのため、目視確認用の検体を微量の5μLとする場合に比べて、作業者がPCR容器51aの検体量を目視で確認し易くすることができる。
なお、解析処理の全工程の終了後にPCR容器51aの検体量が25μLであることを目視する手法としては、たとえば、PCR容器51aの壁に容量25μLの目印を付けておき、この目印とPCR容器51a内の検体量とを比較する方法が想定される。他の手法としては、PCR容器51aに隣接するPCR容器51b内の試薬混合液の量が25μLであることに鑑み、PCR容器51b内の試薬混合液の量とPCR容器51a内の検体量とを比較する方法が想定される。
そして、解析処理の全工程の終了後にPCR容器51aの検体量が25μLであることを目視で確認できた場合には、PCR容器51bに5μLの検体が適正に分注できていると推認することができる。
目視確認用の検体25μLをPCR容器51aに分注した後、制御装置20は、次の工程S2に備えて、ロングチップ53aをチップ廃棄部43にて廃棄し、シリンジ13のノズル13aに1つ目のショートチップ53bを装着するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。工程S2以降の処理については、上述の実施の形態と同じである。
図16は、本変形例の他の態様による工程S1bにおいて検体5μLをPCR容器51bに分注する処理(第2サンプル注入処理)の流れを示す図である。制御装置20は、まず、シリンジ13のノズル13aにロングチップ53aを装着する。
そして、制御装置20は、図16の線L21に示すように、ロングチップ53aを用いて検体容器54から必要量5μLと目視確認用の25μLとの合計量30μLの検体を吸引する。
そして、制御装置20は、ロングチップ53aに吸引された合計量30μLの検体のうち、図16の線L22に示すように必要量5μLの検体をPCR容器51bに分注し、図16の線L23に示すように残りの目視確認用の25μLをPCR容器51aに分注するように、分注ユニット12および移動装置4,5を制御する。
このような工程S1bにおいても、上述の工程S1aと同様の作用効果を奏することができる。
なお、工程S1a,S1bにおいては必要量5μLの検体をPCR容器51bに分注した後に目視確認用の検体25μLをPCR容器51aに分注する例を示したが、目視確認用の検体25μLをPCR容器51aに分注した後に必要量5μLの検体をPCR容器51bに分注するようにしてもよい。
[態様]
上述した実施の形態およびその変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項) 本開示による解析装置は、液体の分注に用いられるチップと、チップが着脱可能に構成されたノズルを含み、ノズルに装着されたチップを介して複数の容器に対して液体を分注する分注装置と、分注装置を制御する制御装置とを備える。チップは、第1チップと、第1チップよりも深さの浅い第2チップとを含む。複数の容器には、検体が入れられる検体容器と、検体容器よりも深さの浅い第1反応容器および第2反応容器とが含まれる。制御装置は、検体容器に検体が入っている状態において、ノズルに第1チップが装着された状態で検体容器から検体を第1量よりも多い第2量だけ吸引して第1反応容器に分注し、ノズルに第2チップが装着された状態で第1反応容器の検体を第1量だけ吸引して第2反応容器に分注するように、分注装置を制御する。
第1項に記載の解析装置によれば、分注装置のノズルが、第1チップ(ロングチップ)と、第1チップよりも深さの浅い第2チップ(ショートチップ)とが着脱可能に構成される。そして、ノズルに第1チップ(ロングチップ)が装着された状態で検体容器から検体が第1量(たとえば必要量)よりも多い第2量だけ吸引されて第1反応容器に分注される。これにより、ノズルに第2チップ(ショートチップ)が装着された状態で検体容器から検体を吸引する場合に比べて、ノズルの位置を高く維持できるため、ノズルに検体が付着し難くすることができる。
その後、ノズルに第2チップ(ショートチップ)が装着された状態で第1反応容器から第1量(たとえば必要量)の検体が吸引されて第2反応容器に分注される。そのため、ノズルに第1チップ(ロングチップ)が装着された状態で第1量の検体を吸引する場合に比べて、検体の分注精度を向上させることができる。
その結果、分注装置のノズルに検体が付着し難くしつつ、検体の分注精度を向上させることができる。
(第2項) 第1項に記載の解析装置においては、第1チップは、第1径を有する第1開口部を有し、第2チップは、第1径よりも小さい第2径を有する第2開口部を有する。ノズルは、第1チップの第1開口部に嵌合する径を有する第1部分と、第1部分よりも先端側に設けられ、第2チップの第2開口部に嵌合する径を有する第2部分とを有する。
第2項に記載の解析装置によれば、第1チップに嵌合する第1部分と第2チップに嵌合する第2部分とをノズルに設けることによって、第1チップと第2チップとを着脱可能なノズルを構成することができる。
(第3項) 第1項または第2項に記載の解析装置においては、複数の容器の各々は、開閉可能な蓋部を有する。解析装置は、容器を開栓する開栓装置をさらに備える。制御装置は、開栓装置によって開栓された容器に対して液体を分注するように分注装置を制御する。
第3項に記載の解析装置によれば、作業者の手作業に依らずに、液体の分注および容器の開栓を行なうことができる。
(第4項) 第1~3項のいずれかに記載の解析装置においては、複数の容器には、第1使用量と第1余分量とを含む量の第1試薬が入った第1試薬容器と、第2使用量と第2余分量とを含む量の第2試薬が入った第2試薬容器と、第3使用量と第3余分量とを含む量の第3試薬が入った第3試薬容器と、第4使用量と第1~第3余分量よりも少ない余分量とを含む第4試薬が入った第4試薬容器とが含まれる。制御装置は、第1試薬容器から第1使用量の第1試薬を吸引して第2反応容器に分注し、第2試薬容器から第2使用量の第2試薬を吸引して第4試薬容器に分注し、第3試薬容器から第3使用量の第3試薬を吸引して第4試薬容器に分注し、第4試薬容器から第2試薬、第3試薬、第4試薬を含む混合液を吸引して第2反応容器に分注するように、分注装置を制御する。
第4項に記載の解析装置によれば、第1~第4試薬容器の各々から第1~第4試薬をそれぞれ吸引する際の空吸いを防止しつつ、第4試薬容器に入っている第4試薬の使用量を低減することができる。
(第5項)第1~4項のいずれかに記載の解析装置においては、分注装置は、チップが他の物体に衝突したことを検出するための衝突検出機構を備える。
第5項に記載の解析装置によれば、チップが他の物体に衝突したことを検出することができる。
(第6項) 第1~5項のいずれかに記載の解析装置においては、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて遺伝子の解析を行なう。
第6項に記載の解析装置によれば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いた遺伝子解析において、分注装置のノズルに検体が付着し難くしつつ、検体の分注精度を向上させることができる。
(第7項) 本開示による試薬キットは、第1~5項のいずれかに記載の解析装置に適用可能な試薬キットであって、複数の容器と、複数の容器を梱包する梱包材とを備える。複数の容器は、第1使用量と空吸い防止用の第1余分量とを含む量の第1試薬が入った第1試薬容器と、第2使用量と空吸い防止用の第2余分量とを含む量の第2試薬が入った第2試薬容器と、第3使用量と空吸い防止用の第3余分量とを含む量の第3試薬が入った第3試薬容器と、第4使用量と第1~第3余分量よりも少ない余分量とを含む第4試薬が入った第4試薬容器とを含んた状態で提供される。
第7項に記載の試薬キットによれば、第1~第4試薬容器の各々から第1~第4試薬をそれぞれ吸引する際の空吸いを防止しつつ、第4試薬容器に入っている第4試薬の使用量を低減することができる。
(第8項) 本開示による解析装置は、液体の分注に用いられるチップと、チップが着脱可能に構成されたノズルを含み、ノズルに装着されたチップを介して複数の容器に対して液体を分注する分注装置と、分注装置を制御する制御装置とを備える。チップは、第1チップと、第1チップよりも先端の開口径の小さい第2チップとを含む。複数の容器には、検体が入れられた検体容器と、検体容器よりも深さの浅い第1反応容器および第2反応容器とが含まれる。制御装置は、第1チップを用いて検体容器から吸引された検体を第1量だけ第2反応容器に分注し、第1チップを用いて検体容器から吸引された検体を第1量よりも多い第2量だけ第1反応容器に分注するように、分注装置を制御する。
(第9項) 第8項に記載の解析装置においては、制御装置は、第1チップを用いて検体容器から検体を第1量だけ吸引して第1量の検体を第2反応容器に分注し、第1チップを用いて検体容器から検体を第2量だけ吸引して第2量の検体を第1反応容器に分注するように、分注装置を制御する。
(第10項) 第8項に記載の解析装置においては、制御装置は、第1チップを用いて検体容器から検体を第1量と第2量との合計量を吸引し、第1チップに吸引された合計量の検体のうち、第1量の検体を第2反応容器に分注し、第2量の検体を第1反応容器に分注するように、分注装置を制御する。
第8~10項に記載の解析装置によれば、検体が唾液等の粘性の高い液体である場合であっても、第1量(たとえば必要量)の検体を適切に第2反応容器に分注することができる。さらに、第2量(たとえば目視可能な量)の検体が第1反応容器には入っているか否かを目視で確認することで、検体が適正に分注できているかどうかを確認することができる。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。