以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。なお、以降の説明では、便宜上、図中Z軸方向を、上下方向とし、図中X軸方向を、前後方向とし、図中Y軸方向を、左右方向とする。但し、X軸正方向を前方向とし、Y軸正方向を右方向とし、Z軸正方向を上方向とする。これらは、装置内の相対的な位置関係を示すものであり、装置の設置方向や操作方向を限定するものではなく、装置内の相対的な位置関係が同等なものは、設置方向や操作方向が異なっているものも全て、本発明の権利範囲に含まれるものである。
(回転入力装置100の概要)
図1は、一実施形態に係る回転入力装置100の外観斜視図である。図2は、一実施形態に係る回転入力装置100の側面図である。
図1に示す回転入力装置100は、自動車等の車両の車内において、運転席の近傍に設置される。回転入力装置100は、いわゆる「ロータリシフタ」であり、車両に搭載された変速機のシフトチェンジを行うために、車両の運転者によって回転操作される。回転入力装置100は、運転者による操作に応じた制御信号を外部に出力することによって、車両の変速機を電気的に制御する。すなわち、回転入力装置100は、いわゆるシフトバイワイヤ方式を採用している。
なお、回転入力装置100は、車両の変速機のシフトチェンジ以外の目的に用いられてもよい。例えば、回転入力装置100は、自動車の車両以外の機器(例えば、航空機、鉄道車両、ゲーム機、リモコン等)に用いられてもよい。また、回転入力装置100は、実際には、シフト操作に応じた電気信号を出力するための電気的な構成を有しているが、本実施形態では、この電気的な構成についての図示および説明を省略する。
図1に示すように、回転入力装置100の最上部には、回転操作可能な円柱状のノブ110が設けられている。ノブ110の外周側面は、ノブ110の上面111とは別部材である、円筒状のダイアル部112となっている。上面111は、回転できないようになっている。一方、ダイアル部112は、「回転操作可能なノブ」の一例であり、上方(Z軸正方向)からの平面視において、回転中心軸AXを回転中心として、反時計回り方向(図1に示す矢印D1方向)および時計回り方向(図2に示す矢印D2方向)の各々に、回転可能である。車両の運転者は、ダイアル部112を回転操作することにより、車両に搭載された変速機のシフトポジションを、複数のシフトポジション(例えば、"P"(駐車)、"R"(後退),"N"(ニュートラル),"D"(ドライブ)等)の間で切り替えることができる。
回転入力装置100は、ダイアル部112が所定の角度回転する毎に、変速機のシフトポジションを切り替えることができるとともに、カム機構100B(図7参照)によって、ダイアル部112を所定の保持位置で保持し、ダイアル部112の回転を規制することができる。また、回転入力装置100は、ダイアル部112が所定の角度回転する毎に、カム機構100Bによって、車両の運転者に対してクリック感を呈示することができる。これにより、回転入力装置100は、車両の運転者に対して、シフトポジションの切り替えが確実になされたことを、触覚的に把握させることができる。また、回転入力装置100は、電磁ブレーキユニット190によって、ダイアル部112の回転を制動することができる。これにより、回転入力装置100は、車両の運転者によって意図しないシフトポジションの切り替えがなされないようにすることができる。
(回転入力装置100の構成)
図3は、一実施形態に係る回転入力装置100のA-A断面線(図1参照)による断面図である。図4は、一実施形態に係る回転入力装置100の上方から見た分解斜視図である。図5は、一実施形態に係る回転入力装置100の下方から見た分解斜視図である。
図3~図5に示すように、回転入力装置100は、ノブ110、回転筒体120、カムユニット130、および本体部100Aを備える。
ノブ110は、既に説明したとおり、上面111およびダイアル部112を有する、樹脂製且つ円柱状(具体的には、上部が閉じた円筒状)の部材である。ダイアル部112の内周面には、当該内周面に沿って複数のフック113が、ダイアル部112と一体的に設けられている。複数のフック113の各々は、ダイアル部112の内周面から下方に突出して設けられており、回転筒体120が備える複数の爪部121の各々に係合する。
回転筒体120は、ノブ110の下側に配置される、樹脂製且つ概ね円筒状の部材である。回転筒体120の筒内には、回転筒体120の下側開口から、本体部100Aが備えるケース150の軸部151が挿し込まれる。回転筒体120は、軸部151に対して回転可能に軸支される。
回転筒体120の上部の外周面には、当該外周面に沿って複数の爪部121が形成されている。複数の爪部121の各々には、ダイアル部112に設けられた複数のフック113の各々が係合する。これにより、回転筒体120は、その上部においてダイアル部112に固定され、ダイアル部112に対する回転操作がなされたときに、ダイアル部112ともに一体で回転する。
回転筒体120の内周面には、当該内周面の全周に亘って、カム面122が形成されている。カム面122は、複数のカム山122Aが連なった構成を有する。
回転筒体120の内周面におけるカム面122の下側には、当該内周面の全周に亘って、内歯車123が形成されている。内歯車123は、ケース150の軸部151の最上部に設けられた遊星歯車機構140が有する3つの遊星歯車142の各々と噛み合う。これにより、回転筒体120は、自身が回転したときに、3つの遊星歯車142の各々を回転させることができる。すなわち、内歯車123は、ダイアル部112および回転筒体120の回転を、遊星歯車機構140に伝達することができる。
カムユニット130は、ホルダ131および複数の当接部材132を有する。ホルダ131は、薄型の円柱状を有する樹脂製の部材であり、複数の当接部材132を内部で保持する。複数の当接部材132の各々は、先端部が半球状に形成された円筒状を有しており、半球状の先端部の一部が、ホルダ131の外周側面から外側に突出している。カムユニット130は、ケース150の軸部151の最上部に固定され、当該軸部151が回転筒体120の筒内に挿し込まれることによって、回転筒体120のカム面122の内側に配置される。カムユニット130は、カム面122とともに、「カム機構100B」を構成する。カムユニット130は、複数の当接部材132の各々がカム面122に当接および摺動することにより、ダイアル部112の回転を所定の保持位置で保持したり、ダイアル部112の回転操作に対してクリック感を呈示したりすることができる。なお、「カム機構100B」の詳細については、図7を用いて後述する。
(本体部100Aの構成)
続いて、図6を参照して、本体部100Aの構成について説明する。図6は、一実施形態に係る回転入力装置100が備える本体部100Aの分解斜視図である。図6に示すように、本体部100Aは、ケース150、遊星歯車機構140、電磁ブレーキユニット190、ラバーシート160、基板170、およびカバー180を備える。
ケース150は、概ね直方体をなす樹脂製且つ箱状の部材である。ケース150の上部には、概ね円筒状の軸部151が一体的に設けられている。上述した通り、軸部151は、回転筒体120の下側開口から、回転筒体120の筒内に挿入される。軸部151の筒内には、遊星歯車機構140が備える太陽歯車141および電磁ブレーキユニット190が配置される。また、軸部151の上面には、3つの支持軸152が立設されている。3つの支持軸152は、遊星歯車機構140が備える3つの遊星歯車142を回転可能に支持する。また、軸部151の筒内の天井面の中央(回転中心軸AX上)には、支持軸153が垂下して設けられている。支持軸153は、遊星歯車機構140が備える太陽歯車141を回転可能に支持する。
遊星歯車機構140は、回転筒体120の回転を、電磁ブレーキユニット190に伝達する。遊星歯車機構140は、回転筒体120の内周面に形成されている内歯車123、太陽歯車141、3つの遊星歯車142、および太陽歯車基部143を有する。太陽歯車141は、回転中心軸AX上、且つ、ケース150の軸部151の筒内の上端部に配置される。3つの遊星歯車142は、太陽歯車141の周囲(回転中心軸AXを中心とする同一円周上)に等間隔(120°間隔)で配置されている。3つの遊星歯車142の各々は、ケース150の軸部151の上面から上方に突出して設けられた支持軸152によって、回転(自転)可能に支持される。よって、3つの遊星歯車142の各々は、自転はするが太陽歯車141の周囲を公転しないようになっている。これにより、遊星歯車機構140は、隣接する2つの遊星歯車142の間に、FPC(Flexible Printed Circuits)等の配線部材を通すことができるようになっている。3つの遊星歯車142の各々は、ケース150の軸部151において太陽歯車141との間の壁部に形成されている開口部151Aを介して、太陽歯車141に噛み合っている。また、3つの遊星歯車142の各々は、ケース150の軸部151が回転筒体120の筒内に挿入されたとき、回転筒体120の内周面に形成されている内歯車123と噛み合うようになっている。これにより、3つの遊星歯車142の各々は、回転筒体120の内歯車123とともにその場で自転し、内歯車123の回転を内歯車123より小さな歯数の太陽歯車141に伝達して、回転筒体120の回転を増速させて太陽歯車141を回転させることができる。太陽歯車基部143は、太陽歯車141の下側に設けられており、太陽歯車141および電磁ブレーキユニット190が備えるアーマチュア191よりも大径であり、上部が閉じた薄型の筒状部材である。太陽歯車基部143は、太陽歯車141と一体的に形成されており、太陽歯車141と一体に回転するようになっている。太陽歯車基部143の筒内には、アーマチュア191が配置され、アーマチュア191がねじ止め固定される。これにより、太陽歯車基部143は、アーマチュア191と一体的に回転するようになっている。太陽歯車141および太陽歯車基部143の中心には、当該太陽歯車141の上下方向から貫通孔141Aが形成されている。貫通孔141Aの上側からは、回転中心軸として支持軸153が挿入されている。また、貫通孔141Aの下側からは、電磁ブレーキユニット190が備える回転軸部材197の上端部が、スプライン結合、すなわち、軸方向には自由度を有し、回転方向には形状的に回転規制されて嵌め込まれる。これにより、太陽歯車141は、アーマチュア191とヨーク192の吸着を妨げない状態で、回転軸部材197と一体的に回転するようになっている。
電磁ブレーキユニット190は、ケース150の軸部151の筒内において、遊星歯車機構140が備える太陽歯車基部143の下側に配置される。電磁ブレーキユニット190は、ダイアル部112の回転を制動することが可能な装置である。具体的には、電磁ブレーキユニット190は、最上部にアーマチュア191を有している。アーマチュア191は、遊星歯車機構140の太陽歯車基部143の筒内の天井面にねじ止め固定される。これにより、アーマチュア191は、ダイアル部112の回転に伴って、回転中心軸AXを回転中心として、回転筒体120、3つの遊星歯車142、太陽歯車141、および太陽歯車基部143とともに回転する。そして、電磁ブレーキユニット190は、電磁ブレーキ190Aによって、アーマチュア191の回転を制動することにより、回転筒体120、3つの遊星歯車142、太陽歯車141、太陽歯車基部143、およびダイアル部112の回転を制動することができる。なお、電磁ブレーキユニット190の詳細な構成については、図10および図11を用いて後述する。
例えば、電磁ブレーキユニット190は、所定のロック条件に合致するときに、電磁ブレーキ190Aを作動させて、アーマチュア191の回転を制動することにより、ダイアル部112による回転操作ができないようにすることができる。これにより、電磁ブレーキユニット190は、所定のロック条件に合致するときに、意図しない不適切なシフトポジションの切り替えがなされないようにすることができる。所定のロック条件とは、例えば、シフトポジションが「P」にあり、且つ、ブレーキペダルが踏まれていないとき、または、車両が前進している状態で、シフトポジションを「R」に切り替えようとする回転操作がなされたとき、等である。
ラバーシート160は、基板170の上面170Aに重ねて設けられる、シート状の部材である。ラバーシート160は、弾性素材(例えば、シリコンゴム等)が用いられて形成される。ラバーシート160は、基板170の上面170Aを全域に亘って覆うことにより、ケース150の内部に水が浸入した場合であっても、基板170の上面170Aが被水してしまうことを抑制することができる。
基板170は、平板状の部品である。基板170は、平面視において四角形状を有する。基板170は、ケース150の内部において、XY平面に対して水平な姿勢で、カバー180の上面に固定的に設置される。基板170としては、例えば、PWB(Printed Wiring Board)が用いられる。基板170の上面170Aには、「回転角度検出部」の一例として、磁気式の回転角度検出センサ171が実装されている。回転角度検出センサ171は、電磁ブレーキユニット190が備える回転軸部材197の直下となる位置に設けられており、回転軸部材197の下端面に設けられた磁石198と対向する。回転角度検出センサ171は、磁石198の回転に伴う磁束方向の変化を検出することにより、回転軸部材197の回転角度を検出することができる。そして、回転角度検出センサ171は、検出された回転角度を示す回転角度信号を、カバー180に設けられたコネクタ182を介して、制御装置200へ出力することができる。なお、回転軸部材197は、太陽歯車141およびアーマチュア191と一体に回転するため、回転角度検出センサ171によって検出される回転軸部材197の回転角度は、太陽歯車141およびアーマチュア191の回転角度でもある。制御装置200は、回転筒体120の内歯車123の歯数と、太陽歯車141の歯数とに応じたギヤ比を用いて、回転筒体120の回転角度を算出することができる。算出された回転筒体120の回転角度は、回転筒体120と一体に回転するダイアル部112による回転操作の回転角度として検知され、その検知結果に応じて、シフトポジションの切り替え信号を出力する目的や、電磁ブレーキユニット190の動作を制御する目的、等で利用される。なお、一実施形態に係る回転入力装置100は、回転角度を検出するための「センサ」の一例として、磁気式の回転角度検出センサ171(GMRセンサ)を用いている。但し、これに限らず、回転入力装置100は、回転角度を検出するための「センサ」の他の一例として、その他の方式(例えば、光学式、機械式、静電式、抵抗式等)のセンサを用いてもよい。
カバー180は、ケース150の下側開口部を閉塞する、樹脂製且つ平板状の部品である。カバー180は、平面視において四角形状を有する。カバー180は、当該カバー180の4隅の各々を貫通する4本のねじ181によって、ケース150にねじ止め固定される。カバー180の底面には、四角筒状のコネクタ182(図5参照)が下方に突出して設けられている。コネクタ182の内部には、基板170の下面から下方に垂下して設けられた複数のコネクタピン(図示省略)が配置される。コネクタ182は、外部のコネクタ(図示省略)が嵌め込まれることにより、複数のコネクタピンを、外部のコネクタに電気的に接続させる。
(カム機構100Bの構成)
図7は、一実施形態に係る回転入力装置100のB-B断面線(図2参照)による断面図である。図7は、上述した回転筒体120のカム面122の高さ位置における、回転入力装置100の断面を表す。
図7に示すように、回転筒体120の内周面に形成されているカム面122の内側には、平面視において円形状のホルダ131が配置されている。ホルダ131における外周側面の内側には、90°間隔に4つの当接部材132が配置されている。4つの当接部材132の各々は、半径方向における外側に向かって延在する円筒状を有しており、その先端部が半球状に形成されている。また、4つの当接部材132の各々は、その半球状の先端部が、ホルダ131の外周側面から外側に突出している。また、4つの当接部材132の各々は、コイルスプリング133によって、半径方向における外側に向かって付勢されている。これにより、4つの当接部材132の各々は、回転筒体120のカム面122に押し当てられ、当該カム面122を押圧する。
回転筒体120は、ダイアル部112と一体に回転する。一方、ホルダ131は、ケース150の軸部151に固定されているため、回転しない。4つの当接部材132の各々は、ダイアル部112および回転筒体120の回転に伴って、カム面122に沿って摺動する。また、4つの当接部材132の各々は、ダイアル部112および回転筒体120の回転に伴って、カム面122に沿って摺動しつつ、コイルスプリング133を伸縮させながら、軸部151の径方向に沿って移動可能である。また、4つの当接部材132の各々は、ダイアル部112および回転筒体120が所定角度回転する毎に、隣接する2つのカム山122Aの間の保持位置である谷部122Bで保持される。
各当接部材132は、隣接する2つのカム山122Aの間の保持位置である谷部122Bで保持されている状態から、回転筒体120およびダイアル部112の回転に伴って、回転方向のカム山122Aの頂部に至るまでの間は、当該カム山122Aによって回転中心軸AX方向に徐々に押圧される。これにより、回転筒体120およびダイアル部112の回転に係る逆方向に戻そうとする負荷は、徐々に増加する。
一方、各当接部材132は、回転筒体120およびダイアル部112の回転に伴って、回転方向のカム山122Aの頂部を乗り越えると、コイルスプリング133の弾性力により、径方向における外側に移動する。そして、各当接部材132は、カム山122Aを介して回転筒体120およびダイアル部112の回転を回転方向に付勢しつつ、次の谷部122Bに滑り込む。このとき、回転筒体120およびノブ110の回転に係る負荷は、急激に減少する。そして、各当接部材132は、次の谷部122Bに達すると、回転筒体120の回転を停止させ、回転筒体120をその位置で保持する。
カム機構100Bは、このように回転筒体120およびダイアル部112に係る回転負荷を変化させることにより、ダイアル部112の回転操作に対して操作感(いわゆるクリック感)を呈示することができるとともに、ダイアル部112の回転操作が終了したときに、ダイアル部112を、最寄りの2つのカム山122Aの間の保持位置である谷部122Bまで回転駆動し、その最寄りの保持位置で保持することができる。
(遊星歯車機構140の構成)
図8は、一実施形態に係る回転入力装置100のC-C断面線(図2参照)による断面図である。図8は、上述した回転筒体120の内歯車123の高さ位置における、回転入力装置100の断面を表す。
図8に示すように、回転筒体120の内周面に形成されている内歯車123は、遊星歯車機構140が備える3つの遊星歯車142の各々に噛み合う。これにより、内歯車123は、ダイアル部112および回転筒体120の回転操作による回転に伴って、3つの遊星歯車142の各々をその場で回転させることで、3つの遊星歯車142の各々に噛み合っている太陽歯車141を回転させることができる。また、内歯車123は、電磁ブレーキユニット190によって太陽歯車141の回転に対して制動力が加わったときに、当該制動力を回転筒体120に伝達することにより、ダイアル部112および回転筒体120を回転しないようにすることができる。
ここで、図8に示すように、内歯車123の歯数は、太陽歯車141の歯数よりも多い。これにより、本実施形態の回転入力装置100は、電磁ブレーキユニット190によって太陽歯車141の回転に対して制動力が加わったときに、当該制動力を増幅して回転筒体120およびダイアル部112に伝達することができる。また、ダイアル部112による回転操作がなされたときに、当該回転操作における回転角度を増幅して、電磁ブレーキユニット190が備える回転軸部材197を回転動作させることができるようになっている。すなわち、本実施形態の回転入力装置100は、ダイアル部112によって、比較的小さい回転角度の回転操作がなされた場合であっても、その回転角度を増幅することにより、その回転操作が行われたことを、基板170に実装された回転角度検出センサ171によって、より確実に検出することができるようになっている。
(回転入力装置100の電気的構成)
図9は、一実施形態に係る回転入力装置100の電気的構成を示す図である。図9に示すように、回転入力装置100は、回転角度検出センサ171、電磁ブレーキ190A、および制御装置200を備える。
制御装置200は、基板170に実装された回転角度検出センサ171と、電磁ブレーキ190Aとに接続される。制御装置200は、回転角度算出部201、回転規制部202、自動解除制御部203、および判定部204を備える。なお、回転規制部202および自動解除制御部203は、「制動制御部」の一例である。
回転角度算出部201は、回転角度検出センサ171の検出信号が示す回転角度と、回転筒体120の内歯車123の歯数と、3つの遊星歯車142の各々の歯数と、太陽歯車141の歯数とに応じたギヤ比を用いて、回転筒体120の回転角度をダイアル部112の回転角度として算出する。
判定部204は、回転角度検出センサ171の検出信号が示す回転角度、または、回転角度算出部201によって算出されたダイアル部112の回転角度に基づいて、現在のシフトポジションを算出し判定する。
回転規制部202は、判定部204にて算出された現在のシフトポジションの判定結果に基づいて、所定のロック条件を満たすと判断したとき(例えば、シフトポジションが「P」にあり、且つ、ブレーキペダルが踏まれていないとき、または、車両が前進している状態で、シフトポジションを「R」に切り替えようとする回転操作がなされたとき)、電磁ブレーキ190Aを通電するように制御することにより、ダイアル部112の回転を規制する。
自動解除制御部203は、判定部204にて算出された現在のシフトポジションの判定結果に基づいて、所定のロック解除条件を満たすと判断したとき(例えば、シフトポジションが「P」にあり、且つ、ブレーキペダルが踏まれたとき、または、ダイアル部112の過回転方向とは反対方向の回転を検出したとき)、電磁ブレーキ190Aの通電を解除するように制御することにより、ダイアル部112の回転の規制を解除する。
なお、制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成されている。上記した制御装置200の各機能は、例えば、制御装置200において、ROMに記憶されているプログラムを、CPUが実行することによって実現される。
(電磁ブレーキユニット190の構成)
図10は、一実施形態に係る電磁ブレーキユニット190の外観斜視図である。図11は、一実施形態に係る電磁ブレーキユニット190の分解斜視図である。図10および図11に示すように、電磁ブレーキユニット190は、電磁ブレーキ190A、ヨーク保持部材194、3つの板バネ195、ヨーク対向部材196、回転軸部材197、および磁石198を備える。
なお、一実施形態ではヨーク保持部材194をヨーク192とは別体としているが、ヨーク保持部材194をヨーク192と一体にして設けるようにして部品点数や組立工数を減らしてもよい。
また、一実施形態ではヨーク対向部材196をケース150とは別体としているが、ヨーク対向部材196をケース150と一体にして設けるようにして部品点数や組立工数を減らしてもよい。
電磁ブレーキ190Aは、アーマチュア191、ヨーク192、およびコイル193を有する。
アーマチュア191は、電磁ブレーキユニット190の最上部に配置される、円盤状の部材である。アーマチュア191は、遊星歯車機構140の太陽歯車基部143の筒内の天井面にねじ止め固定される。これにより、アーマチュア191は、遊星歯車機構140の太陽歯車141および太陽歯車基部143と一体に回転することができる。例えば、アーマチュア191は、電磁ブレーキ190Aが発生する磁力によって吸着可能なように、磁性体(例えば、鉄)から形成される。アーマチュア191の中央(回転中心軸AX上)には、当該アーマチュア191を上下方向に貫通する貫通孔191Aが形成されている。貫通孔191Aには、回転軸部材197が挿通される。
ヨーク192は、アーマチュア191の下側に配置される、円柱状の部材である。ヨーク192は、その上面から下方に円筒状に凹んだ形状の凹部192Aが形成されている。また、ヨーク192の中央(回転中心軸AX上)には、当該ヨーク192を上下方向に貫通する貫通孔192Bが形成されている。貫通孔192Bには、回転軸部材197が挿通される。ヨーク192は、磁性体(例えば、鉄)から形成される。
コイル193は、ヨーク192の凹部192Aにおいて、電線が多重に巻かれることによって円筒状に形成される。
電磁ブレーキ190Aは、コイル193が通電されることにより、電磁力を発生する。電磁ブレーキ190Aは、この電磁力により、コイル193への通電時にアーマチュア191をヨーク192に吸着し、アーマチュア191の回転方向の負荷を高めて、アーマチュア191と一体に回転する太陽歯車141の回転を制動することにより、太陽歯車141と連動して回転するダイアル部112および回転筒体120の回転を制動することができる。
ヨーク保持部材194は、ヨーク192の底面にねじ止め固定されることによりヨーク192を保持する、樹脂製且つ円盤状の部材である。ヨーク保持部材194の中央(回転中心軸AX上)には、当該ヨーク保持部材194を上下方向に貫通する貫通孔194Aが形成されている。貫通孔194Aには、回転軸部材197が挿通される。ヨーク保持部材194は、ヨーク192を保持した状態で、ヨーク192とともに、ヨーク対向部材196の外周壁部196Aに囲まれた空間196B内に、回転軸部材197の周りで回転可能に配置される。ヨーク保持部材194の外周側面には、半径方向における外側に向かって突出した、4つの突起部194Bが90°間隔で設けられている。4つの突起部194Bの各々の上面には、カム面194Cが形成されている。
3つの板バネ195の各々は、金属製且つ帯状の弾性部材である。3つの板バネ195の各々は、ヨーク対向部材196の開口部196Dの外側において、水平な姿勢で配置される。3つの板バネ195の各々は、ヨーク対向部材196の保持部196Eによって保持される(「ヨーク保持部材およびヨーク対向部材のいずれか一方に設けられた板バネ」の一例)。3つの板バネ195の各々は、その下側に配置される、ヨーク保持部材194の突起部194Bのカム面194Cに当接して押圧する(「ヨーク保持部材およびヨーク対向部材のいずれか他方に設けられたカム面」の一例)。
ヨーク対向部材196は、上部が開口し、且つ、下部が閉塞された円筒状を有する樹脂製の部材である。ヨーク対向部材196は、基板170の上面170Aにねじ止め固定される。ヨーク対向部材196は、円筒状の外周壁部196Aを有する。外周壁部196Aの内径は、ヨーク192およびヨーク保持部材194の外径よりも大きい。これにより、ヨーク対向部材196は、外周壁部196Aに囲まれた空間196Bにおいて、ヨーク192およびヨーク保持部材194を回転可能に支持することができる。ヨーク対向部材196(空間196Bの内底面)の中央(回転中心軸AX上)には、当該ヨーク対向部材196を上下方向に貫通する貫通孔196Cが形成されている。貫通孔196Cには、ヨーク192およびヨーク保持部材194を回転可能に軸支する回転軸部材197が挿通される。
ヨーク対向部材196の外周壁部196Aには、90°間隔で4つの開口部196Dが形成されている。各開口部196Dには、ヨーク保持部材194の突起部194Bが配置される。
また、ヨーク対向部材196は、4つの開口部196Dの各々に対して設けられた、4つの保持部196Eを有する。保持部196Eは、開口部196Dよりも半径方向における外側に突出して設けられている。保持部196Eは、板バネ195をカム面194Cに当接した水平状態で保持する。
回転軸部材197は、回転中心軸AX上において、上下方向に延在する概ね丸棒状の部材である。回転軸部材197は、ヨーク対向部材196、ヨーク保持部材194、ヨーク192、およびアーマチュア191を貫通する。回転軸部材197の上端部は、太陽歯車141の貫通孔141Aに嵌め込まれる。これにより、回転軸部材197は、回転中心軸AXを回転中心として、太陽歯車141と一体に回転するようになっている。また、回転軸部材197は、ヨーク保持部材194およびヨーク192を、回転可能に軸支する。
磁石198は、回転軸部材197の底面に、回転角度検出センサ171と対向して配置される。これにより、磁石198は、回転角度検出センサ171による回転軸部材197の回転角度の検出を可能にする。
(弾性機構190Bの構成)
図12は、一実施形態に係る回転入力装置100が備える弾性機構190Bの構成を示すD-D断面線(図10参照)による断面図の一部拡大図である。弾性機構190Bは、ヨーク保持部材194に設けられたカム面194Cと、ヨーク対向部材196に設けられた板バネ195とを有して構成される。
図12に示すように、ヨーク対向部材196の外周壁部196Aに形成されている開口部196Dは、ヨーク対向部材196の半径方向と直交する方向に幅W1を有する。図12に示すように、幅W1は、ヨーク保持部材194の突起部194Bの幅W2よりも大きい。これにより、ヨーク保持部材194はヨーク192と共に、ヨーク保持部材194の突起部194Bが開口部196Dの内縁部に当接するまで、時計回り方向および反時計回り方向の双方向に、所定の角度だけ回転可能になっている。なお(W1-W2)÷2の距離に相当する回転角度は「ヨークが回転可能に保持されている所定の角度」の一例である。
また、図12に示すように、ヨーク保持部材194の突起部194Bの上面には、カム面194Cが形成されている。カム面194Cは、その幅方向における中央部が最も低い位置となるように、V字状に傾斜している。
カム面194Cの上側には、板バネ195が、水平な姿勢で配置されている。板バネ195は、ヨーク保持部材194の半径方向と直交する方向を延在方向として延在する、金属製且つ帯状の部材である。図12に示すように、板バネ195は、その延在方向における両端部が、ヨーク対向部材196の保持部196Eによって保持されている。また、図12に示すように、板バネ195は、その延在方向における中央部に、下方に向かって凸状の凸部195Aを有する。図12に示すように、凸部195Aは、その頂部において、カム面194Cを押圧する。
このように構成された弾性機構190Bは、ダイアル部112の過回転操作がなされていないとき、図12に示すように、板バネ195の凸部195Aによる、カム面194Cへの押圧力により、板バネ195の凸部195Aが、カム面194Cの中央保持部194Caに嵌まり込んだ状態を保持する。すなわち、弾性機構190Bは、ヨーク192およびヨーク保持部材194を、ヨーク対向部材196に対して容易に回転してしまわないように保持する。
そして、電磁ブレーキ190Aによってダイアル部112の回転が規制されている状態で、ダイアル部112の回転操作が継続して行われる過回転操作がなされたとき、電磁ブレーキ190Aによってアーマチュア191がヨーク192に吸着されているため、ヨーク192およびヨーク保持部材194が、ダイアル部112とともに回転する。これにより、ヨーク保持部材194の突起部194Bが、ヨーク対向部材196の開口部196D内で回動(円周方向に移動)する。
この際、突起部194Bのカム面194Cが、その徐々に高さ位置が高くなる斜面によって、板バネ195の凸部195Aを徐々に上方に押し上げる。これにより、板バネ195は、弾性変形することによって反発力が発生し、当該反発力によって、カム面194Cへの押圧力が高まり、当該押圧力によってカム面194Cの斜面を押圧することで、ヨーク保持部材194に対し、過回転方向とは反対方向への回転駆動力を発生する。
この回転駆動力により、ヨーク192およびヨーク保持部材194は、ダイアル部112の過回転操作が解除されたとき、過回転方向とは反対方向へ回転する。そして、ヨーク保持部材194は、板バネ195の凸部195Aが、カム面194Cの中央保持部194Caに嵌まり込むことによって、反対方向への回転が停止し、図12に示す元の状態(容易に回転してしまわないように弾性機構190Bによって保持された状態)に復帰する。
ヨーク保持部材194およびヨーク192が過回転方向とは反対方向へ回転するとき、電磁ブレーキ190Aによってアーマチュア191がヨーク192に吸着されているため、アーマチュア191に直結されているダイアル部112は、過回転方向とは反対方向へ回転する。このダイアル部112の過回転方向とは反対方向へ回転が、回転角度検出センサ171によって検出されると、制御装置200の自動解除制御部203は、電磁ブレーキ190Aの通電を解除することにより、ダイアル部112の回転の規制を解除する。
なお、一実施形態に係る回転入力装置100は、ヨーク192の外周に沿って等間隔(90°)間隔で配置された3つ(「複数設けられている」の一例)の弾性機構190Bを有する。これら3つの弾性機構190Bは、図12を用いて説明した一連の動作を、同時に行う。これにより、一実施形態に係る回転入力装置100は、3つの弾性機構190Bにより、均等な作用(保持および付勢)をもたらすことができる。
以上説明したように、一実施形態に係る回転入力装置100は、ダイアル部112とアーマチュア191とが、回転筒体120および遊星歯車機構140を介して直結されている。すなわち、一実施形態に係る回転入力装置100は、弾性機構190Bが、ヨーク対向部材196とヨーク192との間に設けられており、ダイアル部112とアーマチュア191と間の回転力の伝達経路上に、弾性機構を有さない。
これにより、一実施形態に係る回転入力装置100は、電磁ブレーキ190Aによるダイアル部112の回転が規制されていない状態において、ダイアル部112による回転操作を行った際に、ダイアル部112によるダイレクトな回転操作感を得ることができる。
また、一実施形態に係る回転入力装置100は、ヨーク192およびヨーク保持部材194が、ヨーク対向部材196に対して所定の回転角度だけ、僅かに回転可能となっている。
これにより、一実施形態に係る回転入力装置100は、電磁ブレーキ190Aによってダイアル部112の回転が規制されている状態で、ダイアル部112による過回転操作がなされたときに、ヨーク192およびヨーク保持部材194がヨーク対向部材196に対して僅かに回転することにより、ダイアル部112がヨーク192およびヨーク保持部材194と一体に過回転できるようになっている。
また、一実施形態に係る回転入力装置100は、ヨーク192が、樹脂製のヨーク保持部材194によって保持され、弾性機構190Bは、ヨーク保持部材194とヨーク対向部材196との間に設けられている。
これにより、一実施形態に係る回転入力装置100は、樹脂製のヨーク保持部材194を設けたことによって、弾性機構190Bのヨーク192側の構成部品(実施形態では、突起部194B)の加工が容易になるため、弾性機構190Bの多様な構成を容易に実現することができる。
また、一実施形態に係る回転入力装置100は、弾性機構190Bが、ヨーク保持部材194に設けられたカム面194Cと、ヨーク対向部材196に設けられた板バネ195とを有する。
これにより、一実施形態に係る回転入力装置100は、比較的小さな設置スペースにて、弾性機構190Bを実現することができる。
また、一実施形態に係る回転入力装置100は、弾性機構190Bが、ヨーク192の外周に沿った方向に、複数(実施形態では、3つ)設けられている。
これにより、一実施形態に係る回転入力装置100は、3つの弾性機構190Bの各々の弾性力を1つである場合に比べて小さくすることができ、摩耗を抑えて耐久性を向上することができる。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
本実施形態では、ノブ110の一部(ダイアル部112)が回転する構成としているが、ノブ110の全体が回転する構成としてもよい。なお、本書における「ノブの回転」は、ノブの一部が回転する構成と、ノブの全体が回転する構成との双方を含む。
また、例えば、上記実施形態の回転入力装置100において、弾性機構190Bの構成は、実施形態で説明した構成に限定されない。例えば、板バネ195を、ヨーク保持部材194に設けて、カム面194Cを、ヨーク対向部材196に設けるようにしてもよい。
また、例えば、上記実施形態では、板バネ195とカム面194Cとが上下方向において対向する構成としているが、これに限らず、板バネ195とカム面194Cとが半径方向において互いに対向する構成としてもよい。
また、例えば、上記実施形態では、ヨーク対向部材196とヨーク保持部材194との間に弾性機構を設けているが、これに限らず、例えば、ヨーク保持部材194を設けずに、ヨーク対向部材196とヨーク192との間に弾性機構を設けるようにしてもよい。
また、例えば、上記実施形態では、弾性機構190Bが備える弾性体として板バネ195を用いているが、これに限らず、その他の弾性体(例えば、ゴム、コイルスプリング等)を用いてもよい。