以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
1.電気光学装置
図1は、従来の電気光学装置1の構成例である。電気光学装置1は、表示ドライバー2とコネクター3とフレキシブル基板4と電気光学パネル5と基板6とを含む。
電気光学パネル5は液晶表示パネルであり、液晶表示パネルのガラス基板にフレキシブル基板4の一端が接続される。基板6はプリント基板であり、表示ドライバー2及びコネクター3が設けられる。フレキシブル基板4の他端がコネクター3に接続されることで、フレキシブル基板4上の配線を介して表示ドライバー2と電気光学パネル5とが電気的に接続される。
表示ドライバー2が出力するデータ電圧信号と制御信号は、フレキシブル基板4の配線により伝送され、電気光学パネル5に入力される。表示ドライバー2は、各画素に対応した階調電圧を順次に出力し、その時系列の階調電圧がデータ電圧信号として電気光学パネル5に入力される。そして、制御信号により順次に選択される画素に対して、その選択される各画素に対応した階調電圧が書き込まれる。
図2は、電気光学装置1におけるデータ電圧信号の波形例である。図2には、フレキシブル基板4を通過した後の、即ち電気光学パネル5の入力におけるデータ電圧信号の波形例を示す。
実線で示す波形において、TGAは1画素を駆動する期間に相当する。フレキシブル基板4の配線には寄生容量及び寄生抵抗が存在し、また電気光学パネル5の入力には静電保護用の抵抗が存在するため、データ電圧信号の波形に歪みが生じる。ここでの歪みは、表示ドライバー2が出力した信号の元の波形に対して、電気光学パネル5に到達した信号の波形が変形していることを意味する。どのように波形が歪むのかは、伝送経路の周波数特性によって決まるが、図2には一例として矩形波の高周波成分が低減した場合の波形を示す。
高品質な表示を行うためには画素に正確な階調電圧を書き込む必要があるが、画素に正確な階調電圧を書き込むためには、少なくとも期間TGAの終了時点においてデータ電圧信号が目標電圧に到達している必要がある。例えば表示ドライバー2の駆動アンプ数を変えずに電気光学パネル5の画素数を2倍にした場合、TGBに示すように、1画素を駆動する期間はTGAの半分になる。高画素化又は高フレームレート化が進むほど、期間TGBは短くなるので、期間TGBの終了時点においてデータ電圧信号が目標電圧に到達しない可能性が高くなる。波形の歪みは伝送経路の周波数特性によって決まってしまうため、期間TGBを短くすることには限界がある。即ち、高画素化又は高フレームレート化又はそれら両方に伴ってデータ電圧信号の転送レートを上げる必要が生じるが、フレキシブル基板4等に起因した波形の歪みによって転送レートの向上が困難になる。
図3は、本実施形態における電気光学装置10の第1構成例である。電気光学装置10は、表示ドライバー12とコネクター13とフレキシブル基板14と電気光学パネル15と基板16と回路装置100とを含む。
基板16は、集積回路装置等の回路部品を実装可能な回路基板であり、例えばプリント基板である。基板16には、表示ドライバー12及びコネクター13が実装される。基板16には、表示ドライバー12を制御する表示コントローラー等が更に設けられてもよい。表示ドライバー12は、電気光学パネル15を駆動するためのデータ電圧信号及び制御信号を表示データに基づいて生成し、そのデータ電圧信号及び制御信号を出力する。表示ドライバー12は、例えば集積回路装置である。表示ドライバー12とコネクター13は、基板16上に設けられた配線によって電気的に接続されている。その基板16上に設けられた配線は、コネクター13を介して、フレキシブル基板14上に設けられた配線に接続される。
フレキシブル基板14は、FPCとも呼ばれ、柔軟性があるため曲げることが可能な回路基板である。FPCは、Flexible Printed Circuitsの略である。フレキシブル基板14上には、回路装置100が実装される。回路装置100の入力端子は、フレキシブル基板14上に設けられた配線に接続され、コネクター13に電気的に接続される。
回路装置100は、例えば、ICと呼ばれる集積回路装置である。回路装置100は、半導体プロセスにより製造されるICであり、半導体基板上に回路素子が形成された半導体チップである。回路装置100の入力端子には、表示ドライバー12から出力されたデータ電圧信号及び制御信号が、基板16上に設けられた配線、コネクター13及びフレキシブル基板14上に設けられた配線を介して入力される。
回路装置100は、入力されたデータ電圧信号の波形歪みを調整し、その歪み調整後のデータ電圧信号を出力する。また、回路装置100は、入力された制御信号をレベルシフトし、そのレベルシフト後の制御信号を出力する。回路装置100から出力された歪み調整後のデータ信号およびレベルシフト後の制御信号は、フレキシブル基板14上に設けられた配線を介して電気光学パネル15に入力される。
図3に示したように、回路装置100は、フレキシブル基板14上において、表示ドライバー12よりも電気光学パネル15に近い位置に配置されている。回路装置100は、回路装置100と電気光学パネル15との間の配線により、歪み調整後のデータ電圧信号に、波形歪みの影響が出ないように、回路装置100と電気光学パネル15との間の配線長が所定の長さ以下になるように配置されている。回路装置100と電気光学パネル15との間の配線長は、電気光学パネルで表示する画像の解像度およびフレームレートに応じて必要となるデータ電圧信号の転送レートに応じた所定の長さ以下になるように設定されている。具体的には、フルハイビジョン(2K×1Kドット)の画像をフレームレート120fps(1画素を駆動する期間は約72ns)で電気光学パネル15に表示する場合のデータ電圧信号の転送レートが約3.6Gbpsである場合は、電気光学パネル15と回路装置100との間の配線長は、7cm以下にすることが好ましい。また、フルハイビジョン(2K×1Kドット)の画像をフレームレート2倍の240fps(1画素を駆動する期間が約36ns)で電気光学パネル15に表示する場合のデータ電圧信号の転送レートが2倍の約7.2Gbpsである場合は、電気光学パネル15と回路装置100との間の配線長は2分の1の3.5cm以下にすることが好ましい。また、解像度フルハイビジョン(2K×1Kドット)の画像をフレームレート4倍の480fps(1画素を駆動する期間が約18ns)で電気光学パネル15に表示する場合のデータ電圧信号の転送レートが4倍の約14.4Gbpsである場合は、電気光学パネル15と回路装置100との間の配線長は約4分の1の1.75cm以下にすることが好ましい。また、解像度4倍の4K(4K×2Kドット)の画像をフレームレート120fps(1画素を駆動する期間が約72ns)で電気光学パネル15に表示する場合のデータ電圧信号の転送レートが4倍の約14.4Gbpsである場合は、電気光学パネル15と回路装置100との間の配線長は約4分の1の1.75cm以下にすることが好ましい。
電気光学パネル15の入力端子は、フレキシブル基板14上に設けられた配線によって回路装置100の出力端子に接続されている。電気光学パネル15は、回路装置100が波形成型したデータ電圧信号及び回路装置100がレベルシフトした制御信号に基づいて、画像表示を行う。電気光学パネル15は表示パネルとも呼ばれ、例えば液晶表示パネルである。液晶表示パネルは、ガラス基板と、ガラス基板上に形成される画素アレイと、を含む。また液晶表示パネルは、ガラス基板上に形成され且つTFTにより構成された回路と、回路と画素アレイを接続し且つガラス基板上に形成される透明電極配線と、を含むことができる。TFTはThin Film Transistorの略である。電気光学装置10がプロジェクターに適用された場合、光源と投影光学系の間に電気光学パネル15が挿入され、電気光学パネル15を透過した光が投影光学系によりスクリーンに結像されることで、スクリーンに画像が投影される。なお電気光学装置10はプロジェクターに限らず、種々の表示装置に適用可能である。また電気光学パネル15は液晶表示パネルに限定されず、有機EL表示パネル等であってもよい。
図4は、表示ドライバー12、回路装置100及び電気光学パネル15の回路構成例である。表示ドライバー12は、制御回路21とD/A変換回路DAC1~DACnとアンプ回路AM1~AMnと出力端子TD1~TDn、TSとを含む。nは2以上の整数である。回路装置100は、波形成形回路HSC1~HSCnとレベルシフター190と入力端子TI1~TIn、TISと出力端子TQ1~TQn、TQSとを含む。電気光学パネル15は、スイッチ回路51と画素アレイ52と入力端子TP1~TPn、TPSとを含む。
以下、相展開駆動方式を例に動作を説明するが、これに限定されず、例えば電気光学装置10はデマルチプレクス駆動方式を採用してもよい。
制御回路21は、第1~第n表示データをD/A変換回路DAC1~DACnに出力する。また制御回路21は、スイッチ回路51を制御する制御信号を出力端子TSに出力する。D/A変換回路DAC1~DACnは、第1~第n表示データを第1~第n電圧にD/A変換する。アンプ回路AM1~AMnは、第1~第n電圧をバッファリング又は増幅することで第1~第nデータ電圧信号を出力する。第1データ電圧信号を例にとると、スイッチ回路51の切り替えタイミングに同期して第1表示データの階調値が変化し、その時系列の階調値に対応した時系列の階調電圧が第1データ電圧信号としてアンプ回路AM1から出力されることになる。
出力端子TD1~TDn、TSは、基板16、コネクター13及びフレキシブル基板14を介して回路装置100の入力端子TI1~TIn、TISに電気的に接続される。入力端子TI1~TInに入力された第1~第nデータ電圧信号は、波形成形回路HSC1~HSCnに入力される。波形成形回路HSC1~HSCnは、アンプ回路AM1~AMnが出力した元の第1~第nデータ電圧信号の波形に近づくように第1~第nデータ電圧信号の波形歪みを調整し、調整後の第1~第nデータ電圧信号を出力端子TQ1~TQnに出力する。また入力端子TISに入力された制御信号はレベルシフター190に入力される。レベルシフター190は、スイッチ回路51を構成するTFTの動作電圧に制御信号をレベルシフトし、レベルシフト後の制御信号を出力端子TQSに出力する。
回路装置100の出力端子TQ1~TQn、TQSは、フレキシブル基板14を介して電気光学パネル15の入力端子TP1~TPn、TPSに電気的に接続される。入力端子TP1~TPnに入力された第1~第nデータ電圧信号、及び入力端子TPSに入力された制御信号は、スイッチ回路51に入力される。画素アレイ52は第1~第mデータ線を有し、その第1~第mデータ線はスイッチ回路51に電気的に接続される。mは2n以上の整数である。第1~第mデータ線は、その順に水平走査方向に並ぶものとする。以下、ある水平走査期間において選択されている走査線を選択走査線と呼ぶ。スイッチ回路51は、制御信号に基づいて入力端子TP1~TPnと第1~第nデータ線を接続する。このとき、選択走査線及び第1~第nデータ線に接続された画素にデータ電圧信号が書き込まれる。次に、スイッチ回路51は、制御信号に基づいて入力端子TP1~TPnと第n+1~第2nデータ線を接続する。このとき、選択走査線及び第n+1~第2nデータ線に接続された画素にデータ電圧信号が書き込まれる。これが第mデータ線まで繰り返されることで、1つの走査線の画素に階調電圧が書き込まれる。
2.波形成形回路
回路装置100の波形成形回路HSC1~HSCnの詳細を説明する。以下、HSCiに関する構成のみを図示及び説明する。iは1以上n以下の任意の整数である。
図5は、回路装置100の第1詳細構成例である。回路装置100は、波形成形回路HSCiと記憶部180と入力端子TIiと出力端子TQiとを含む。波形成形回路HSCiは、歪み調整回路130と第1耐圧バッファー回路110と第2耐圧バッファー回路120と容量C3とを含む。
容量C3は、入力端子TIiに対する静電保護回路の容量である。容量C3の一端はデータ電圧信号入力ノードNAに接続され、他端はグランドノードNGに接続される。データ電圧信号入力ノードNAは入力端子TIiに接続される。容量C3は、静電保護回路に含まれるキャパシター、又は静電保護回路の寄生容量、又はそれらの両方を合わせたものである。
歪み調整回路130には、表示ドライバーからフレキシブル基板上の配線を介してデータ電圧信号DVSが入力され、そのデータ電圧信号DVSの波形歪みを調整して調整後信号TGSを出力する。歪み調整回路130は、電圧分割回路105と第1キャパシターC1と第2キャパシターC2とを含む。
電圧分割回路105は、データ電圧信号DVSが入力されるデータ電圧信号入力ノードNAと、グランドノードNGとの間に設けられる。具体的には、電圧分割回路105は第1抵抗R1と第2抵抗R2とを含む。第1抵抗R1はデータ電圧信号入力ノードNAと電圧分割ノードNBとの間に設けられる。即ち、第1抵抗R1の一端がデータ電圧信号入力ノードNAに接続され、他端が電圧分割ノードNBに接続される。第2抵抗R2は、電圧分割ノードNBとグランドノードNGとの間に設けられる。即ち、第2抵抗R2の一端が電圧分割ノードNBに接続され、他端がグランドノードNGに接続される。
第1キャパシターC1は、データ電圧信号入力ノードNAと電圧分割ノードNBとの間に設けられる。即ち、第1キャパシターC1の一端はデータ電圧信号入力ノードNAに接続され、他端は電圧分割ノードNBに接続される。第2キャパシターC2の容量値は可変であり、第2キャパシターC2は電圧分割ノードNBとグランドノードNGとの間に設けられる。即ち、第2キャパシターC2の一端は電圧分割ノードNBに接続され、他端はグランドノードNGに接続される。第2キャパシターC2は、例えば容量設定データに基づいて容量値が可変に制御される可変容量回路である。可変容量回路は、キャパシターアレイとスイッチアレイとを含む。スイッチアレイは、キャパシターアレイを構成する複数のキャパシターのうち、容量設定データが指示する1又は複数のキャパシターを選択する。これにより、選択された1又は複数のキャパシターが電圧分割ノードNBとグランドノードNGの間に並列に接続される。
記憶部180は容量設定データを記憶し、その容量設定データを第2キャパシターC2に出力する。記憶部180はレジスター又はメモリーである。メモリーはRAM又は不揮発性メモリー等である。記憶部180は、表示コントローラー等の外部装置から不図示のインターフェース回路を介してアクセス可能に構成されてもよい。この場合、外部装置から記憶部180に容量設定データが書き込まれる。記憶部180は、波形成形回路HSC1~HSCnの各々に設けられてもよい。或いは、記憶部180は、全ての波形成形回路HSC1~HSCnに対して共通に設けられてもよい。この場合、容量設定データは、波形成形回路HSC1~HSCnの各々に対して個別に設定可能であってもよい。
電圧分割ノードNBは、第1耐圧バッファー回路110の入力ノードである第1入力ノードに接続される。即ち、歪み調整回路130は、電圧分割ノードNBの信号を調整後信号TGSとして第1耐圧バッファー回路110に出力する。この調整後信号TGSは、データ電圧信号DVSの波形歪みが調整された信号となっている。この点について以下に説明する。なお以下では、第1入力ノードにも符号NBを用いる。
図5には、フレキシブル基板に寄生する寄生抵抗RP及び寄生容量CP1、CP2を示す。RP1及びCP1は、表示ドライバー12の出力端子TDiと回路装置100の入力端子TIiとの間に発生する寄生抵抗及び寄生容量である。CP2は、出力端子TDiとグランドとの間に発生する寄生容量である。
図6は、回路装置100における信号波形例である。ここでは一例として、アンプ回路AMiが、1画素分の駆動期間に対応したパルス幅の矩形波のデータ電圧信号を出力する例を示す。
図6の上段図に示すように、歪み調整回路130に入力されるデータ電圧信号DVSは、フレキシブル基板の寄生抵抗RP及び寄生容量CP1、CP2と、静電保護回路の容量C3と、によって歪む。図6には一例として矩形波の高周波成分が低減した場合の波形を示す。図6の中段図に示すように、歪み調整回路130が出力する調整後信号TGSは、データ電圧信号DVSよりも振幅が小さく、且つデータ電圧信号DVSよりも歪みが低減されている。
具体的には、電圧分割回路105の分圧比によって調整後信号TGSの振幅が決まる。また、電圧分割回路105の分圧比と、第1キャパシターC1及び第2キャパシターC2の容量比とによって、歪み調整回路130の周波数特性が決まり、その周波数特性によってデータ電圧信号DVSの波形歪みが調整される。分圧比と容量比とが同じになるように第2キャパシターC2の容量値が設定されることで、歪みが補正された調整後信号TGSが得られる。
より具体的には、フレキシブル基板等の寄生抵抗及び寄生容量を含めた分圧比と容量比とが同じになるように第2キャパシターC2の容量値が設定されることで、歪みが補正された調整後信号TGSが得られる。ここで、RP、R1、R2の抵抗値をrp、r1、r2とし、CP1、C1、C2の容量値をcp1、c1、c2とする。寄生抵抗及び寄生容量を含めた分圧比はrp+r1:r2であり、容量比はcp1+c1:c2である。これらの比が同じになるように、第2キャパシターC2の容量値が設定される。rp、cp1は未知なので、例えば実際に波形を測定した結果、又は回路シミュレーション結果に基づいて、第2キャパシターC2の容量値を決めてもよい。或いは、後述するように回路装置100にモニター回路を内蔵し、そのモニター結果に基づいて第2キャパシターC2の容量値が自動的に設定されてもよい。なお、上記の分圧比と容量比は厳密に同一である必要はない。即ち、データ電圧信号DVSの歪みが適切に調整されていれば、分圧比と容量比が異なっていてもよい。
本実施形態によれば、歪み調整回路130を設けたことで、フレキシブル基板等により伝送されることで波形歪みが生じたデータ電圧信号DVSの歪みを調整できる。これにより、回路装置100を設けない場合にはフレキシブル基板で伝送できないような高速なデータ電圧信号を、回路装置100を設けたことで伝送可能になり、電気光学パネル15の高画素化に対応できるようになる。
また本実施形態によれば、電圧分割回路105を設けたことで、分圧比rp+r1:r2と容量比cp1+c1:c2を同じにすることが可能となっている。定性的には、アンプ回路AMiの出力ノードから歪み調整回路130の電圧分割ノードNBまでの経路において、分圧比rp+r1:r2により低周波数帯域のゲインが決まり、容量比cp1+c1:c2により高周波数帯域のゲインが決まる。分圧比と容量値が同じとき、低周波数帯域のゲインと高周波数帯域のゲインが同じになり、上記経路における周波数特性がフラットに近くなる。これにより、歪みの少ない調整後信号TGSが得られる。なお、第2キャパシターC2の容量値を大きくすると、相対的に調整後信号TGSの高周波成分が低下し、第2キャパシターC2の容量値を小さくすると、相対的に調整後信号TGSの高周波成分が増加する。
本実施形態では、歪み調整回路130の入力インピーダンスは、第2出力信号QS2が入力される電気光学パネル15の入力端子TPiの入力インピーダンスよりも低い。歪み調整回路130の入力インピーダンスは、入力端子TIiから見た歪み調整回路130の入力インピーダンスである。第2出力信号QS2は、第2耐圧バッファー回路120の出力信号である。このようにすれば、回路装置100を設けない場合において電気光学パネル15に入力されるデータ電圧信号の波形歪みよりも、回路装置100を設けた場合において電気光学パネル15に入力されるデータ電圧信号の波形歪みの方が、小さくなる。本実施形態では、このデータ電圧信号が更に歪み調整回路130により歪み調整されるので、高速なデータ電圧信号の伝送が可能となっている。
次に図5の第1耐圧バッファー回路110及び第2耐圧バッファー回路120について説明する。
第1耐圧バッファー回路110は、第1耐圧のトランジスターで構成され、調整後信号TGSをバッファリングして第1出力信号QS1を出力する。具体的には、第1耐圧バッファー回路110は、第1耐圧のトランジスターで構成された演算増幅器ABF1を含む。
第1耐圧バッファー回路110は、演算増幅器ABF1により構成されたボルテージフォロア回路である。即ち、演算増幅器ABF1の非反転入力ノードは第1入力ノードNBに接続される。演算増幅器ABF1の反転入力ノードは演算増幅器ABF1の出力ノードに接続される。演算増幅器ABF1の出力ノードは第1耐圧バッファー回路110の出力ノードであり、これを第1出力ノードNCとする。第1出力ノードNCは、第2耐圧バッファー回路120の入力ノードである第2入力ノードに接続される。以下、第2入力ノードにも符号NCを用いる。
第2耐圧バッファー回路120は、第1耐圧より高い第2耐圧のトランジスターで構成され、第1出力信号QS1を増幅して第2出力信号QS2を電気光学パネル15に出力する。図6の下段図に示すように、第2耐圧バッファー回路120は、1より大きいゲインを有し、第1出力信号QS1の振幅を増加させて第2出力信号QS2として出力する。例えば、第2耐圧バッファー回路120は、第2出力信号QS2の振幅がデータ電圧信号DVSの振幅と同程度となるようなゲインを有する。第2耐圧バッファー回路120のゲインは、電圧分割回路105の分圧比の逆数程度である。具体的には、第2耐圧バッファー回路120は、第2耐圧のトランジスターで構成された演算増幅器ABF2と、抵抗RBF1、RBF2とを含む。
第2耐圧バッファー回路120は、正転アンプ回路である。即ち、演算増幅器ABF2の非反転入力ノードは第2入力ノードNCに接続される。演算増幅器ABF2の出力ノードは抵抗RBF1の一端に接続され、演算増幅器ABF2の反転入力ノードは抵抗RBF1の他端及び抵抗RBF2の一端に接続される。抵抗RBF2の他端はグランドノードNGに接続される。演算増幅器ABF2の出力ノードは第2耐圧バッファー回路120の出力ノードであり、これを第2出力ノードNDとする。第2出力ノードNDは、出力端子TQiに接続される。
トランジスターの耐圧は、トランジスターの端子に印加可能な最大定格電圧であり、例えば半導体プロセスによって規定される。トランジスターの耐圧は、ゲート酸化膜の厚さ、不純物領域の不純物濃度、及び電界緩和構造によって決まっている。即ち、第1耐圧のトランジスターと第2耐圧のトランジスターは、ゲート酸化膜の厚さ、不純物領域の不純物濃度、及び電界緩和構造のうち少なくとも1つが異なっている。例えば高耐圧と低耐圧の2種類のトランジスターを有するプロセスが用いられた場合、第1耐圧は低耐圧に対応し、第2耐圧は高耐圧に対応する。或いは、高耐圧と中耐圧と低耐圧の3種類のトランジスターを有するプロセスが用いられた場合、第1耐圧は低耐圧に対応し、第2耐圧は中耐圧又は高耐圧に対応する。又は、第1耐圧は中耐圧に対応し、第2耐圧は高耐圧に対応する。
本実施形態によれば、歪み調整回路130が電圧分割を行うことで、第1耐圧バッファー回路110を、第2耐圧より低い第1耐圧のトランジスターで構成可能となっている。第2耐圧としては、電気光学パネル15を駆動するために必要な耐圧が必要である。この第2耐圧より低い第1耐圧のトランジスターで第1耐圧バッファー回路110が構成されることで、第1耐圧バッファー回路110の小規模化、高速化、低消費電力化が可能となっている。
3.モニター回路
図7は、回路装置100の第2詳細構成例である。図7では回路装置100は更にモニター回路140を含む。なお、既に説明した構成要素には同一の符号を付し、その構成要素についての説明を適宜に省略する。
モニター回路140は、第1出力信号QS1と基準信号RFQとの比較を行い、その比較の結果に基づいて歪み調整回路130に歪み調整信号TYSを出力する。歪み調整回路130は、歪み調整信号TYSに基づいて、データ電圧信号DVSの波形歪みを調整する。具体的には、モニター回路140は、調整コントローラー141とコンパレーター143とリファレンス出力回路144とを含む。
リファレンス出力回路144は、基準信号RFQを出力する。コンパレーター143は、第1出力信号QS1と基準信号RFQとの比較を行う。具体的には、コンパレーター143の第1入力ノードに第1出力信号QS1が入力され、コンパレーター143の第2入力ノードに基準信号RFQが入力される。図7には、第1入力ノードが非反転入力ノードであり、第2入力ノードが反転入力ノードである例を示す。調整コントローラー141は、コンパレーター143の出力信号CPQに基づいて歪み調整信号TYSを出力する。
調整コントローラー141は、容量設定データを記憶する記憶部180を含み、その容量設定データに基づく歪み調整信号TYSを出力する。歪み調整信号TYSは、デジタル信号又はアナログ信号のいずれであってもよい。例えば調整コントローラー141は容量設定データを歪み調整信号TYSとして出力してもよい。この場合、第2キャパシターC2は、図5で説明した構成である。或いは調整コントローラー141は、容量設定データをD/A変換し、そのD/A変換後の電圧を歪み調整信号TYSとして出力してもよい。この場合、第2キャパシターC2はMOSキャパシター又は可変容量ダイオード等である。
モニター回路140は、第2キャパシターC2の容量値を決定する調整モードと、調整モードで設定された容量値に固定する固定モードと、を有する。例えば、電気光学装置10の起動時、又は電気光学パネル駆動における帰線期間等において、調整モードが設定され、電気光学パネル駆動において画素駆動が行われる期間において、固定モードが設定される。
調整モードにおいて、調整コントローラー141は容量設定データの設定値を変更していき、各設定値におけるコンパレーター143の出力信号CPQに基づいて、容量設定データを決定し、その決定した容量設定データを記憶部180に記憶させる。固定モードにおいて、調整コントローラー141は、調整モードにおいて記憶部180に記憶された容量設定データに基づいて歪み調整信号TYSを第2キャパシターC2に出力する。
図8及び図9は、モニター回路140の動作を説明する第1波形例である。この例では、リファレンス出力回路144はパルス波形の基準信号RFQを出力する。表示ドライバー12は、基準信号RFQに同期したパルス波形のデータ電圧信号を出力する。波形が歪まない場合の理想的な第1出力信号QS1のパルス波形が、基準信号RFQのパルス波形に一致するように、表示ドライバーがデータ電圧信号を出力する。例えば、調整コントローラー141が同期信号をリファレンス出力回路144と表示ドライバー12に出力し、その同期信号に基づいてリファレンス出力回路144が基準信号RFQを出力し、表示ドライバー12がデータ電圧信号を出力する。
図8は、理想的な第1出力信号QS1に対して、実際の第1出力信号QS1の高周波成分が過多である場合の波形例である。この場合、基準信号RFQの立ち上がりにおいてコンパレーター143の出力信号CPQがハイレベルとなり、基準信号RFQの立ち下がりにおいてコンパレーター143の出力信号CPQがローレベルとなる。
図9は、理想的な第1出力信号QS1に対して、実際の第1出力信号QS1の高周波成分が過小である場合の波形例である。この場合、基準信号RFQの立ち上がりにおいてコンパレーター143の出力信号CPQがローレベルとなり、基準信号RFQの立ち下がりにおいてコンパレーター143の出力信号CPQがハイレベルとなる。
調整コントローラー141は、図8の状態と図9の状態が切り替わるときの容量設定データを、最終的な容量設定データに決定する。例えば調整コントローラー141は、第2キャパシターC2の容量値を最小設定値から徐々に大きくする。最初は図8の状態から開始し、第1出力信号QS1の高周波成分が減少していき、ある容量値となったときに図9の状態に切り替わる。この切り替わったとき、あるいはその直前の容量設定データが、最終的な容量設定データとして採用される。
図10は、モニター回路140の動作を説明する第2波形例である。この例では、リファレンス出力回路144は一定の基準電圧を基準信号RFQとして出力する。表示ドライバー12は、パルス波形のデータ電圧信号を出力する。リファレンス出力回路144は、波形が歪まない場合の理想的な第1出力信号QS1のパルス波形よりも、少しだけ高い基準電圧を出力する。
図10は、理想的な第1出力信号QS1に対して、実際の第1出力信号QS1の高周波成分が過多である場合の波形例である。この場合、第1出力信号QS1の立ち上がりにおいてコンパレーター143の出力信号CPQがハイレベルとなる。理想的な第1出力信号QS1に対して、実際の第1出力信号QS1の高周波成分が過小である場合には、コンパレーター143の出力信号CPQはローレベルのままである。
調整コントローラー141は、図10の状態と、コンパレーター143の出力信号CPQがローレベルのままの状態とが切り替わるときの容量設定データを、最終的な容量設定データに決定する。例えば調整コントローラー141は、第2キャパシターC2の容量値を最小設定値から徐々に大きくする。最初は図10の状態から開始し、第1出力信号QS1の高周波成分が減少していき、ある容量値となったときに、コンパレーター143の出力信号CPQがローレベルのままの状態に切り替わる。この切り替わったとき、あるいはその直前の容量設定データが、最終的な容量設定データとして採用される。
図11は、回路装置100の第3詳細構成例である。図11ではモニター回路140は調整コントローラー141とコンパレーター143とを含む。なお、既に説明した構成要素には同一の符号を付し、その構成要素についての説明を適宜に省略する。
モニター回路140は、データ電圧信号DVSと第2出力信号QS2との比較を行い、その比較の結果に基づいて歪み調整回路130に歪み調整信号TYSを出力する。具体的には、コンパレーター143は、データ電圧信号DVSと第2出力信号QS2との比較を行う。コンパレーター143の第1入力ノードに第2出力信号QS2が入力され、コンパレーター143の第2入力ノードにデータ電圧信号DVSが入力される。図11には、第1入力ノードが非反転入力ノードであり、第2入力ノードが反転入力ノードである例を示す。調整コントローラー141は、コンパレーター143の出力信号CPQに基づいて歪み調整信号TYSを出力する。
調整モード及び固定モードにおける動作は、第2詳細構成例の図7~図9で説明した動作と同様である。即ち、図7~図9の基準信号RFQを図11のデータ電圧信号DVSに読み替え、図7~図9の第1出力信号QS1を図11の第2出力信号QS2に読み替えればよい。
図5で説明したように、歪み調整回路130の入力インピーダンスは、第2出力信号QS2が入力される電気光学パネル15の入力端子TPiの入力インピーダンスよりも低い。これにより、回路装置100を設けない場合において電気光学パネル15に入力されるデータ電圧信号の波形歪みよりも、回路装置100を設けた場合において回路装置100に入力されるデータ電圧信号の波形歪みの方が、小さくなっている。従って、第2出力信号QS2の波形をデータ電圧信号DVSの波形と同程度に調整できれば、回路装置100を設けない場合よりも、電気光学パネル15に入力されるデータ電圧信号の波形歪みが改善される。本実施形態では、モニター回路140は、データ電圧信号DVSと第2出力信号QS2とが同程度となるように、第2キャパシターC2の容量値を設定する。
4.カップリング補正
フレキシブル基板14において隣り合う配線間で生じたカップリングを補正する場合の実施形態を説明する。図12は、カップリング補正を行う場合の回路装置100の構成例である。回路装置100は、入力端子TI1~TI3と歪み調整回路131~133と反転増幅回路151~153とカップリング回路161~163、172、173と第1耐圧バッファー回路111~113と第2耐圧バッファー回路121~123と出力端子TQ1~TQ3とを含む。図12には図4の波形成形回路HSC1~HSC3に相当する構成のみを図示しているが、同様の構成が波形成型回路HSCnまで繰り返される。
歪み調整回路131には入力端子TI1からデータ電圧信号DVS1が入力される。同様に、歪み調整回路132、133には入力端子TI2、TI3からデータ電圧信号DVS2、DVS3が入力される。歪み調整回路131~133の各々は歪み調整回路130と同様の構成であり、第1耐圧バッファー回路111~113の各々は第1耐圧バッファー回路110と同様の構成であり、第2耐圧バッファー回路121~123の各々は第2耐圧バッファー回路120と同様の構成であるため、これらの回路構成について説明を省略する。第2耐圧バッファー回路121は、出力信号QS21を出力端子TQ1に出力する。同様に、第2耐圧バッファー回路122、123は、出力信号QS22、QS23を出力端子TQ2、TQ3に出力する。但し、歪み調整回路131の電圧分割ノードと第1耐圧バッファー回路111の入力ノードとの間にカップリング回路CPL1が接続される。カップリング回路CPL1は、並列接続されたキャパシターと抵抗である。同様に、歪み調整回路132、133の電圧分割ノードと第1耐圧バッファー回路112、113の入力ノードとの間にカップリング回路CPL2、CPL3が接続される。
反転増幅回路151は、歪み調整回路131からの調整後信号を反転増幅し、その反転増幅後の信号を出力信号HZQ1として出力する。同様に、反転増幅回路152、153は、歪み調整回路132、133からの調整後信号を反転増幅し、その反転増幅後の信号を出力信号HZQ2、HZQ3として出力する。反転増幅回路151~153の各々は、演算増幅器と入力抵抗と帰還抵抗により構成される。
カップリング回路161は、反転増幅回路151の出力ノードと第1耐圧バッファー回路112の入力ノードと間に設けられる。カップリング回路161は例えばキャパシターであり、そのキャパシターの一端は反転増幅回路151の出力ノードに接続され、他端は第1耐圧バッファー回路112の入力ノードに接続される。同様に、カップリング回路162は、反転増幅回路152の出力ノードと第1耐圧バッファー回路113の入力ノードと間に設けられる。
カップリング回路172は、反転増幅回路152の出力ノードと第1耐圧バッファー回路111の入力ノードと間に設けられる。カップリング回路172は例えばキャパシターであり、そのキャパシターの一端は反転増幅回路152の出力ノードに接続され、他端は第1耐圧バッファー回路111の入力ノードに接続される。同様に、カップリング回路173は、反転増幅回路153の出力ノードと第1耐圧バッファー回路112の入力ノードと間に設けられる。
図13~図15は、カップリング補正を説明する波形図である。図13にはデータ電圧信号DVS1~DVS3を示す。パルスPA1~PA3は、表示ドライバー12が出力した本来のデータ電圧信号に対応する。パルスCA12、CA21、CA23、CA32は、フレキシブル基板14等の伝送経路におけるカップリングにより生じる。具体的には、パルスCA12、CA21は、入力端子TI1、TI2に接続された配線間のクロストークであり、パルスCA23、CA32は、入力端子TI2、TI3に接続された配線間のクロストークである。
図14には、反転増幅回路152の出力信号HZQ1~HZQ3を示す。出力信号HZQ1~HZQ3は、データ電圧信号DVS1~DVS3が反転された信号となる。なお、図13と図14においてパルスの振幅が同じとなるように図示しているが、実際には図13と図14においてパルスの振幅は異なってもよい。具体的には、図14におけるパルスの振幅は、歪み調整回路131~133の分圧比及び反転増幅回路151~153のゲインに応じて決まる。
図15には、第2耐圧バッファー回路121~123の出力信号QS21~QS23を示す。図12の構成によれば、第1耐圧バッファー回路111はデータ電圧信号DVS1に対して反転増幅回路152の出力信号HZQ2を加算する。また第1耐圧バッファー回路112はデータ電圧信号DVS2に対して反転増幅回路151、153の出力信号HZQ1、HZQ3を加算する。また第1耐圧バッファー回路113はデータ電圧信号DVS3に対して反転増幅回路152の出力信号HZQ2を加算する。これにより、出力信号QS21~QS23において、伝送経路のカップリングによるパルスが低減され、本来のデータ電圧信号に対応したパルスが残ることになる。
第1耐圧バッファー回路111~113における加算比は、伝送経路のカップリングによるパルスが低減されるように設定されればよい。図13のパルスCA12を例にとると、図13のパルスPA1に対応した図14のHZQ1のパルスによって、図13のパルスCA12がキャンセルされるように、加算比が設定されればよい。この加算比は、例えば反転増幅回路151~153のゲインによって設定される。
なお、本実施形態において例えば歪み調整回路130が第1歪み調整回路であり、歪み調整回路が第2歪み調整回路である。この場合、第1耐圧バッファー回路112が第2の第1耐圧バッファー回路であり、第2耐圧バッファー回路122が第2の第2耐圧バッファー回路である。但し、回路装置100に含まれる複数の歪み調整回路のうち任意の1つを第1歪み調整回路としてもよい。その第1歪み調整回路の隣りの歪み調整回路が第2歪み調整回路である。
5.レベルシフター
図16はレベルシフター190の詳細構成例である。図16には、回路装置100の製造プロセスが低耐圧プロセス、中耐圧プロセス及び高耐圧プロセスを有する場合を例に図示している。
レベルシフター190は、第1レベルシフターLS1と第2レベルシフターLS2とを含む。電源電圧VDLは低耐圧プロセスの回路に供給される電源電圧である。電源電圧VDMは中耐圧プロセスの回路に供給される電源電圧であり、電源電圧VDLより高い。電源電圧VDHは高耐圧プロセスの回路に供給される電源電圧であり、電源電圧VDMより高い。第1レベルシフターLS1は、入力端子TISからの制御信号CTIをVDLからVDMにレベルシフトし、そのレベルシフト後の制御信号LSQ1を出力する。第2レベルシフターLS2は、制御信号LSQ1をVDMからVDHにレベルシフトし、そのレベルシフト後の制御信号CTQを出力端子TQSに出力する。
6.電気光学装置の第2構成例
図17は、電気光学装置10の第2構成例である。電気光学装置10は、表示ドライバー12とコネクター13と電気光学パネル15と基板16と細線同軸ケーブル群17とコネクター18と回路装置100とを含む。なお、既に説明した構成要素には同一の符号を付し、その構成要素についての説明を適宜に省略する。
細線同軸ケーブル群17は複数の細線同軸ケーブルを含み、その一端がコネクター13に接続され、その他端がコネクター18に接続される。表示ドライバー12の1出力に対して1本の細線同軸ケーブルが設けられる。細線同軸ケーブルは、非常に細い同軸ケーブルであり、例えばケーブル外径が1mm以下の同軸ケーブルである。
コネクター18はフレキシブル基板19の一端に実装される。フレキシブル基板19の他端は電気光学パネル15に接続され、フレキシブル基板19には回路装置100が実装される。表示ドライバー12が出力したデータ電圧信号及び制御信号は細線同軸ケーブル群17及びフレキシブル基板19を介して回路装置100に入力されることになる。回路装置100の構成及び動作は上述した通りである。
7.電子機器
図18は、回路装置100を含む電子機器300の構成例である。電子機器300は、電気光学装置10、処理装置310、表示コントローラー320、記憶部330、通信部340、操作部360を含む。電気光学装置10は、表示ドライバー12、回路装置100、電気光学パネル15を含む。
電子機器300の具体例としては、例えばプロジェクターやヘッドマウントディスプレイ、携帯情報端末、車載装置、携帯型ゲーム端末、情報処理装置等の、表示装置を搭載する種々の電子機器を想定できる。車載装置は、例えばメーターパネル、カーナビゲーションシステム等である。
操作部360は、ユーザーからの種々の操作を受け付けるユーザーインターフェースである。例えば、ボタンやマウスやキーボード、電気光学パネル15に装着されたタッチパネル等である。通信部340は、画像データや制御データの入出力を行うデータインターフェースである。通信部340は、例えば無線LANや近距離無線通信等の無線通信インターフェース、或いは有線LANやUSB等の有線通信インターフェースである。記憶部330は、例えば通信部340から入力されたデータを記憶したり、或いは、処理装置310のワーキングメモリーとして機能したりする。記憶部330は、例えばRAMやROM等のメモリー、或いはHDD等の磁気記憶装置、或いはCDドライブ、DVDドライブ等の光学記憶装置等である。表示コントローラー320は、通信部340から入力された或いは記憶部330に記憶された画像データを処理して表示ドライバー12に転送する。表示ドライバー12は、表示コントローラー320から転送された画像データに基づいてデータ電圧信号及び制御信号を出力する。回路装置100は、データ電圧信号の歪み調整及び制御信号のレベルシフトを行い、それらを電気光学パネル15に出力する。これにより、電気光学パネル15に画像が表示される。処理装置310は、電子機器300の制御処理及び、種々の信号処理等を行う。処理装置310は、例えばCPUやMPU等のプロセッサー、或いはASIC等である。
例えば電子機器300がプロジェクターである場合、電子機器300は更に光源と光学系とを含む。光学系は、例えばレンズ、プリズム、ミラー等である。電気光学パネル15が透過型である場合、光学装置が光源からの光を電気光学パネル15に入射させ、電気光学パネル15を透過した光をスクリーンに投影させる。電気光学パネル15が反射型である場合、光学装置が光源からの光を電気光学パネル15に入射させ、電気光学パネル15から反射された光をスクリーンに投影させる。
以上に説明した本実施形態の回路装置は、歪み調整回路と第1耐圧バッファー回路と第2耐圧バッファー回路とを含む。歪み調整回路は、表示ドライバーからデータ電圧信号が入力され、データ電圧信号の波形歪みを調整して調整後信号を出力する。第1耐圧バッファー回路は、第1耐圧のトランジスターで構成され、調整後信号をバッファリングして第1出力信号を出力する。第2耐圧バッファー回路は、第1耐圧より高い第2耐圧のトランジスターで構成され、第1出力信号を増幅して第2出力信号を電気光学パネルに出力する。
このようにすれば、フレキシブル基板等により伝送されることで波形歪みが生じたデータ電圧信号の歪みを、歪み調整回路が調整できる。これにより、回路装置を設けない場合にはフレキシブル基板で伝送できないような高速なデータ電圧信号を、回路装置を設けたことで伝送可能になる。高速なデータ電圧信号が伝送可能となることで、電気光学パネルの高画素化に対応できるようになる。
また本実施形態では、歪み調整回路は電圧分割回路を有してもよい。電圧分割回路は、データ電圧信号が入力されるデータ電圧信号入力ノードと、グランドノードとの間に設けられてもよい。電圧分割回路の電圧分割ノードが、第1耐圧バッファー回路の第1入力ノードに接続されてもよい。
このようにすれば、表示ドライバーの出力から歪み調整回路の電圧分割ノードまでの経路において、データ電圧信号に対する分圧比と容量比を同じにすることが可能となる。分圧比と容量値が同じとき、低周波数帯域のゲインと高周波数帯域のゲインが同じになり、上記経路における周波数特性がフラットに近くなる。これにより、歪みの少ない調整後信号が得られる。
また本実施形態では、歪み調整回路は第1キャパシターと第2キャパシターとを有してもよい。第1キャパシターは、データ電圧信号入力ノードと電圧分割ノードとの間に設けられてもよい。第2キャパシターは、電圧分割ノードとグランドノードとの間に設けられ、容量値が可変であってもよい。
このようにすれば、第2キャパシターの容量値が調整されることで、上述の容量比が調整される。これにより、表示ドライバーの出力から歪み調整回路の電圧分割ノードまでの経路において、データ電圧信号に対する分圧比と容量比を同じにすることが可能となる。
また本実施形態では、電圧分割回路は、第1抵抗と第2抵抗とを有してもよい。第1抵抗は、データ電圧信号入力ノードと電圧分割ノードとの間に設けられてもよい。第2抵抗は、電圧分割ノードとグランドノードとの間に設けられてもよい。
このようにすれば、第1抵抗と第2抵抗によりデータ電圧信号を分圧できる。フレキシブル基板等の伝送経路の寄生抵抗と、第1抵抗と、第2抵抗とによって、上述の分圧比が決まる。
また本実施形態では、歪み調整回路の入力インピーダンスは、第2出力信号が入力される電気光学パネルの入力端子の入力インピーダンスよりも低くてもよい。
このようにすれば、回路装置を設けない場合において電気光学パネルに入力されるデータ電圧信号の波形歪みよりも、回路装置を設けた場合において回路装置に入力されるデータ電圧信号の波形歪みの方が、小さくなる。本実施形態では、このデータ電圧信号が更に歪み調整回路により歪み調整されるので、高速なデータ電圧信号の伝送が可能となっている。
また本実施形態では、回路装置はモニター回路を含んでもよい。モニター回路は、第1出力信号と基準信号との比較を行い、比較の結果に基づいて歪み調整回路に歪み調整信号を出力してもよい。歪み調整回路は、歪み調整信号に基づいて、データ電圧信号の波形歪みを調整してもよい。
このようにすれば、モニター回路が第1出力信号と基準信号との比較を行うことで、その比較結果に基づいて、歪み調整回路が波形歪みを適切に低減できるような歪み調整信号を決定できる。
また本実施形態では、モニター回路は、リファレンス出力回路とコンパレーターと調整コントローラーとを有してもよい。リファレンス出力回路は、基準信号を出力してもよい。コンパレーターは、第1出力信号と基準信号との比較を行ってもよい。調整コントローラーは、コンパレーターの出力信号に基づいて歪み調整信号を出力してもよい。
このようにすれば、コンパレーターが第1出力信号と基準信号との比較を行い、調整コントローラーがコンパレーターの出力信号に基づいて歪み調整信号を出力することで、モニター回路が歪み調整信号を出力できる。
また本実施形態では、回路装置はモニター回路を含んでもよい。モニター回路は、データ電圧信号と第2出力信号との比較を行い、比較の結果に基づいて歪み調整回路に歪み調整信号を出力してもよい。歪み調整回路は、歪み調整信号に基づいて、データ電圧信号の波形歪みを調整してもよい。
このようにすれば、モニター回路がデータ電圧信号と第2出力信号との比較を行うことで、その比較結果に基づいて、歪み調整回路が波形歪みを適切に低減できるような歪み調整信号を決定できる。
また本実施形態では、モニター回路は、コンパレーターと調整コントローラーとを有してもよい。コンパレーターは、データ電圧信号と第2出力信号との比較を行ってもよい。調整コントローラーは、コンパレーターの出力信号に基づいて歪み調整信号を出力してもよい。
このようにすれば、コンパレーターがデータ電圧信号と第2出力信号との比較を行い、調整コントローラーがコンパレーターの出力信号に基づいて歪み調整信号を出力することで、モニター回路が歪み調整信号を出力できる。
また本実施形態では、データ電圧信号は、複数の階調電圧が時系列に出力された信号であってもよい。
このようなデータ電圧信号では、転送レートが上がると、1つの階調電圧が出力されている期間の長さが短くなる。このため波形歪みの影響を受けやすくなる。本実施形態によれば、歪み調整回路がデータ電圧信号の波形歪みを調整するので、データ電圧信号の転送レートを高速化できる。
また本実施形態では、回路装置は、第2歪み調整回路と第2の第1耐圧バッファー回路と第2の第2耐圧バッファー回路と反転増幅回路とカップリング回路とをふくんでもよい。第2歪み調整回路は、表示ドライバーからの第2データ電圧信号が入力され、第2データ電圧信号の波形歪みを調整して第2調整後信号を出力してもよい。第2の第1耐圧バッファー回路は、第1耐圧のトランジスターで構成され、第2調整後信号をバッファリングして第3出力信号を出力してもよい。第2の第2耐圧バッファー回路は、第2耐圧のトランジスターで構成され、第3出力信号をバッファリングして第4出力信号を電気光学パネルに出力してもよい。反転増幅回路は、第2調整後信号を反転増幅してもよい。カップリング回路は、反転増幅回路の出力ノードと第1耐圧バッファー回路の第1入力ノードとの間に設けられてもよい。
伝送経路におけるカップリングによって、データ電圧信号と第2データ電圧信号の間にクロストークが生じている。本実施形態によれば、歪み調整回路が出力する調整後信号に対して、反転増幅回路の出力信号が加算される。即ち、歪み調整回路が出力する調整後信号から、第2歪み調整回路が出力する第2調整後信号が減算される。これにより、データ電圧信号に含まれるクロストークの成分が低減される。
また本実施形態の電気光学装置は、上記のいずれかに記載の回路装置と、表示ドライバーと、電気光学パネルと、を含む。
また本実施形態では、電気光学装置はフレキシブル基板を含んでもよい。フレキシブル基板には回路装置が設けられ、フレキシブル基板は電気光学パネルに接続されてもよい。
また本実施形態の電子機器は、上記のいずれかに記載の回路装置を含む。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、表示ドライバー、電気光学パネル、電気光学装置及び電子機器の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。