以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。以下、各実施形態の説明において、加熱装置を備えた装置の例として、用紙上のトナーを熱により定着させる定着装置を説明する。
図1に示すモノクロの画像形成装置1には、感光体ドラム10が設けられている。感光体ドラム10は、表面上に現像剤としてのトナーを担持可能なドラム状の回転体であり、図の矢印方向に回転する。感光体ドラム10の周囲には、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる帯電ローラ11と、感光体ドラム10の表面にトナーを供給する現像ローラ7等を備えた現像装置12と、感光体ドラム10の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード13等で構成されている。
感光体ドラム10の上方には露光部が配置されている。露光部が画像データに基づいて発したレーザ光Lbが、ミラー14を介して感光体ドラム10の表面に照射される。
また、感光体ドラム10に対向する位置に配置され、転写チャージャを備えた転写手段15が配置されている。転写手段15は、感光体ドラム10表面上の画像を用紙Pに転写する。
画像形成装置1の下部には給紙部4が位置しており、記録媒体あるいはシートとしての用紙Pを収容した給紙カセット16や、給紙カセット16から用紙Pを搬送路5へ搬出する給紙ローラ17等からなっている。給紙ローラ17の搬送方向下流側にはレジストローラ18が配置されている。
定着装置9は、後述する加熱部材によって加熱される定着ベルト20、その定着ベルト20を加圧可能な加圧ローラ21等を有している。
以下、図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
印刷動作(画像形成動作)が開始されると、まず感光体ドラム10が帯電ローラ11によってその表面を帯電される。そして、画像データに基づいて露光部からレーザービームLbが照射され、照射された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体ドラム10には、現像装置12から表面部分にトナーが供給され、トナー画像(現像剤像)として可視像化される。そして、転写後の感光体ドラム10に残されたトナー等は、クリーニングブレード13によって取り除かれる。
一方、印刷動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部4の給紙ローラ17が回転駆動することによって、給紙カセット16に収容された用紙Pが搬送路5に送り出される。
搬送路5に送り出された用紙Pは、レジストローラ18によってタイミングを計られ、感光体ドラム10表面上のトナー画像と向かい合うタイミングで転写手段15と感光体ドラム10との対向部である転写部へ搬送され、転写手段15による転写バイアス印加によりトナー画像が転写される。
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、加熱されている定着ベルト20と加圧ローラ21とによって加熱および加圧されて、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ベルト20から分離され、定着装置9の下流側に設けられた搬送ローラ対によって搬送され、装置外側に設けられた排紙トレイへと排出される。
続いて、定着装置9のより詳細な構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、筒状部材あるいは定着部材としての定着ベルト20と、定着ベルト20の外周面に接触して定着ニップNを形成する、対向部材あるいは加圧部材としての加圧ローラ21と、定着ベルト20を加熱する加熱ユニット19と、を備えた加熱装置80を有する。また、加熱ユニット19は、加熱体としてのヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータホルダ23と、ヒータホルダ23を支持する支持部材としてのステー24とを有する。定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、および、ステー24は、図2の紙面に直交する方向(図3の両矢印B方向参照)に延在しており、以下、この方向を各部材の長手方向、あるいは、加熱ユニット19や定着装置9の長手方向と呼ぶ。
定着ベルト20は、無端状のベルト部材で構成され、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmで、定着ベルト20の弾性層よりもその厚みが大きい。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
加圧ローラ21は、後述する加圧機構によって定着ベルト20の側へ加圧され、定着ベルト20に圧接されている。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に、ニップ部としての定着ニップNが形成される。また、加圧ローラ21は、画像形成装置本体に設けられた駆動手段から駆動力が伝達されて回転駆動する駆動ローラとして機能する。一方、定着ベルト20は、加圧ローラ21の回転に伴って従動回転するように構成されている。定着ベルト20が回転すると、定着ベルト20はヒータ22に対して摺動するため、定着ベルト20の摺動性を高めるために、ヒータ22と定着ベルト20との間にオイルやグリースなどの潤滑剤を介在させてもよい。
ヒータ22は、加圧ローラ21に対応する位置で定着ベルト20の内周面に接触している。ヒータ22は、被加熱部材としての定着ベルト20を加熱し、定着ベルト20を所定の定着温度まで加熱するための部材である。
本実施形態とは異なり、発熱部60を基材50の定着ベルト20側とは反対側(ヒータホルダ23側)に設けてもよい。その場合、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、本実施形態に係るヒータ22の構成において、さらに基材50の定着ベルト20とは反対側(ヒータホルダ23側)の面に、絶縁層を設けてもよい。
ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触する場合であってもよいが、定着ベルト20への熱伝達効率を高めるには、本実施形態のように、ヒータ22を定着ベルト20に対して直に接触させる方が好ましい。また、ヒータ22を定着ベルト20の外周面に接触させることもできるが、定着ベルト20の外周面がヒータ22との接触により傷付くと定着品質が低下する虞があるため、ヒータ22が接触する面は定着ベルト20の内周面とすることが望ましい。
ヒータホルダ23およびステー24は、定着ベルト20の内側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側壁部に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23のヒータ22側とは反対側の面が支持されていることで、ヒータ22およびヒータホルダ23は加圧ローラ21の加圧力に対して大きく撓むことなく保たれ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。
なお、ステー24は、加圧ローラ21の加圧方向(図2の左右方向で、矢印FC参照)に延在した部分、あるいは、厚みを持った部分を、ヒータホルダ23に対して、加圧ローラ21と反対側(図2の左側)から当接させることで、ヒータホルダ23を支持する。これにより、加圧ローラ21からの加圧力によるヒータホルダ23の撓み(本実施形態では、特に長手方向の撓み)を抑制することができる。
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することができる。
印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることで、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(定着ニップN)に搬送される(図2の矢印A方向参照)ことで、未定着トナー画像が加熱および加圧されて用紙Pに定着される。このように、用紙Pは定着装置9(あるいは定着ベルト20)によって加熱される被加熱物である。
図3は、定着装置の斜視図、図4は、その分解斜視図である。
図3および図4に示すように、定着装置9の装置フレーム40は、一対の側壁部28と前壁部27とから成る第1装置フレーム25と、後壁部29から成る第2装置フレーム26と、を備えている。一対の側壁部28は、長手方向の一端部側と他端部側とに配置されており、両側壁部28によって、定着ベルト20、加圧ローラ21および加熱ユニット19の両端部側が支持される。各側壁部28には、複数の係合突起28aが設けられ、各係合突起28aが後壁部29に設けられた係合孔29aに係合することで、第1装置フレーム25と第2装置フレーム26とが組み付けられる。
また、各側壁部28は、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、後壁部29側で開口し、これとは反対側では開口しない突き当て部となっている。加圧ローラ21の回転軸には、軸部を支持する軸受30が設けられている。それぞれの軸受30は、各挿通溝28bに挿入される。これにより、加圧ローラ21が両側壁部28によって回転可能に支持される。
また、各軸受30には、加圧機構としての一対のバネ33が当接している。各バネ33によって加圧ローラ21が定着ベルト20側に付勢されることで、加圧ローラ21が定着ベルト20に押し当てられ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップが形成される。
また、加圧ローラ21の回転軸の一端部側には、第1のギヤ31が設けられている。第1のギヤ31は、加圧ローラ21が両側壁部28に支持された状態で、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載された際、第1のギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤと連結し、後述する駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。なお、加圧ローラ21の回転軸の他端部側は、軸受30を介して側壁部28に支持されており、他端部側にギヤは設けられていない。
加熱ユニット19の長手方向の両端部には、定着ベルト20やヒータホルダ23、ステー24などを支持する一対のフランジ32が設けられている。各フランジ32には、ガイド溝32aが設けられている。このガイド溝32aを側壁部28の挿通溝28bの縁に沿って進入させることで、フランジ32が側壁部28に対して組み付けられる。
また、図4に示すように、第2装置フレーム26を構成する後壁部29の長手方向の一端部側には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体の長手方向の位置決めがなされる。なお、後壁部29の孔部29bが設けられた端部側とは反対の端部側には、位置決め部は設けられていない。これにより、温度変化に伴う定着装置本体の長手方向の伸縮が拘束されないようにしている。
図5は、加熱ユニット19の斜視図、図6は、その分解斜視図である。
図5および図6に示すように、ヒータホルダ23の定着ベルト側の面(図5および図6における手前側の面)には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状およびサイズに形成されているが、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このように、収容凹部23aがヒータ22よりも若干長く形成されていることで、熱膨張によりヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとが干渉しないように構成されている。また、ヒータ22は、この収容凹部23a内に収容された状態で、給電部材としての後述のコネクタによってヒータホルダ23と一緒に挟まれて保持される。
一対のフランジ32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触して長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23およびステー24の両端部側が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その両端部側にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時においては基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力は生じない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
図5および図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向一端部側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、図5および図6の左側に示されるフランジ32の嵌合部32eが嵌合することで、ヒータホルダ23とフランジ32との長手方向の位置決めがなされる。一方、図5および図6の右側に示されるフランジ32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。このように、フランジ32に対するヒータホルダ23の位置決めを長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴ってヒータホルダ23が長手方向へ伸縮したとしても、その伸縮が拘束されないようにしている。
また、図6に示すように、ステー24の長手方向の両端部側には、各フランジ32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aはフランジ32に突き当たることでフランジ32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、フランジ32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aがフランジ32に対して隙間を介して配置されることで、温度変化に伴ってステー24が長手方向に伸縮したとしても、その伸縮が拘束されないようにしている。
図7は、ヒータ22の平面図、図8は、その分解斜視図である。
図8に示すように、ヒータ22は、基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた発熱部60などを有する導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、を有している。本実施形態では、定着ベルト20側(定着ニップN側)に向かって、基材50、第1絶縁層51、導体層52(発熱部60)、第2絶縁層53の順で積層されており、発熱部60から発された熱は、第2絶縁層53を介して定着ベルト20へと伝達される(図2参照)。
基材50は、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成された長手状の板材である。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度むらが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
各絶縁層51,53は、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成されている。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミド(PI)等を用いてもよい。
導体層52は、複数の抵抗発熱体(面状の発熱体)59を有する発熱部60と、複数の電極部61と、これらを電気的に接続する複数の、導電体としての給電線62と、で構成されている。各抵抗発熱体59は、基材50上に設けられた複数の給電線62を介して3つの電極部61のいずれか2つに対して電気的に並列接続されている。本実施形態では、7つの抵抗発熱体59が長手方向に並設されている。
抵抗発熱体59は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成される。抵抗発熱体59の材料として、これら以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。本実施形態では、各抵抗発熱体59が同じ面積で設けられ、その発熱量が同じになるように設定されている。
給電線62は、抵抗発熱体59よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。給電線62や電極部61の材料としては、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)などを用いることができ、このような材料をスクリーン印刷するなどによって給電線62や電極部61が形成されている。
図9は、ヒータ22にコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
図9に示すように、給電部材としてのコネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、を有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成され、給電用のハーネス73が接続されている。
図9に示すように、コネクタ70は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。この状態で、各コンタクト端子72の先端に設けられた接触部72aが、それぞれ対応する電極部61に弾性的に接触(圧接)することで、コネクタ70を介して発熱部60と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から発熱部60へ電力が供給可能な状態となる。なお、各電極部61は、コネクタ70との接続を確保するため、少なくとも一部が第2絶縁層53に被覆されておらず、露出した状態になっている(図7参照)。
図10に示すように、本実施形態の導体層52には、基材50の長手方向に並ぶ複数の抵抗発熱体59と、電極部61として、第1の電極部61A、第2の電極部61B、および、第3の電極部61Cと、給電線62として、第1の給電線62Aと、第2の給電線62Bと、第3の給電線62Cと、第4の給電線62Dと、を備える。各給電線62は、電極部61と抵抗発熱体59とを電気的に接続する。
図10に示す領域Cが、ヒータ22の長手方向の加熱領域である。ヒータ22の加熱領域とは、ヒータ22に設けられた抵抗発熱体59が発熱する領域である。位置C0は加熱領域Cの長手方向中央位置であり、後述する第4ブロックの長手方向中央位置と一致する。
基材50の長手方向に並ぶ複数の抵抗発熱体59のうち、両端以外の各抵抗発熱体59で構成される第1の発熱部60Aと、両端の各抵抗発熱体59で構成される第2の発熱部60Bとは、それぞれ独立して発熱制御可能に構成されている。具体的に、第1の発熱部60Aを構成する両端以外の各抵抗発熱体59は、それぞれ基材50の長手方向の一端部側に設けられた第3の電極部61Cに対して第3の給電線62Cを介して接続されている。一方、第2の発熱部60Bを構成する両端の各抵抗発熱体59は、基材50の長手方向の一端部側に設けられた(第3の電極部61Cとは別の)第1の電極部61Aに対して第1の給電線62Aまたは第4の給電線62Dを介して接続されている。また、第1の電極部61Aおよび第3の電極部61Cとは反対側の端部に第2の電極部61Bが設けられる。各抵抗発熱体59は、第2の給電線62Bを介して第2の電極部61Bに接続されている。言い換えると、各抵抗発熱体59から伸びる給電線62が合流して第2の電極部61Bに接続される。
また、それぞれの電極部61A~61Cは、前述のコネクタ70を介して電源64に接続され、電源64から電力を供給される。第1の電極部61Aは、電源64との間に、切替え部としてのスイッチ65Aが設けられており、スイッチ65AのONOFFにより、電圧の印加の有無を切り替えることができる。同様に、第3の電極部61Cは、電源64との間に、切替え部としてのスイッチ65Cが設けられており、スイッチ65CのONOFFにより、電圧の印加の有無を切り替えることができる。さらに、これらのスイッチ65A,65CのONOFFやヒータ22への電力供給のタイミングは制御回路66によって制御されている。また制御回路66は、画像形成装置内の各種センサーの検知結果に基づいて、これらの制御を行う。例えば、定着ニップNの入口や出口に設けられたセンサーの検知結果に基づいて用紙の通紙タイミングを判断し、ヒータ22への電力の供給の有無やスイッチ65A,65Cの切り替えを行うことができる。なお、制御回路66は画像形成装置に設けられていても良いし、加熱装置や定着装置に設けられていても良い。
第3の電極部61Cおよび第2の電極部61Bに電圧を印加した場合は、両端以外の各抵抗発熱体59が通電することで、第1の発熱部60Aのみが発熱する。一方、第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bに電圧を印加した場合は、両端の各抵抗発熱体59が通電することで、第2の発熱部60Bのみが発熱する。また、全ての電極部61A~61Cに電圧を印加すれば、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bの両方の(全ての)抵抗発熱体59を発熱させることができる。例えば、A4サイズ(通紙幅:210mm)以下の比較的小さい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aのみを発熱させ、A4サイズ(通紙幅:210mm)を超える比較的大きい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aに加え第2の発熱部60Bも発熱させることで、用紙幅に応じた発熱領域とすることができる。
ところで、画像形成装置や定着装置のさらなる小型化を図るにあたっては、定着ベルトの内側に配置される部材の一つであるヒータの小型化が重要である。すなわち、ヒータをその短手方向(図10中の矢印Y方向:ヒータ22の発熱部60A,60Bが設けられている面に沿って長手方向と交差する方向、あるいは、ヒータ22の長手方向に直交する方向で、図10の紙面に直交する方向であるヒータ22の厚み方向とは異なる方向)に小さくすることで、定着ベルトを小径化することができ、ひいては定着装置および画像形成装置の小型化を実現できるようになる。具体的に、ヒータを短手方向に小さくする方法として、例えば次の方法が挙げられる。
その方法とは給電線を短手方向に小さくする方法である。ただし、給電線を短手方向に小さくすると、給電線の抵抗値が大きくなるため、ヒータの導電経路上で意図しない分流が発生する虞がある。特に、画像形成装置の高速化に対応すべく発熱部の発熱量を増大させるために、発熱部の抵抗値を小さくすると、給電線の抵抗値と発熱部の抵抗値が相対的に近づくため、意図しない分流が発生しやすくなる。従って、ヒータの短手方向の小型化を実現するには、抵抗値が上昇するのを見越したうえで給電線を短手方向に小さくし、これに伴って発生し得る意図しない分流に対しては別途対策を講じる必要がある。
以下、上述のヒータ22と同じレイアウトのヒータを例に、意図しない分流と、これによる弊害について説明する。
図11に示すヒータ22において、第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59のみを発熱させるために、第3の電極部61Cと第2の電極部61Bとに電圧を印加すると、通常、電流は、第3の給電線62Cに流れ、両端以外の各抵抗発熱体59を通過して、第2の給電線62Bに流れる。
しかしながら、上述の小型化に伴う給電線の抵抗値の増大や、発熱量向上に伴う発熱部の抵抗値の低下によって、給電線と発熱部のそれぞれの抵抗値の差が小さくなると、図12に示すように、意図しない経路の分流が発生する。すなわち、図12における左から2番目の抵抗発熱体59を通過した電流の一部が、その先の第2の給電線62Cの分岐部Xにて第2の電極部61B側とは反対側に流れる。そして、分流した電流は、図12における左端の抵抗発熱体59を通過し、さらに、第1の給電線62A、第1の電極部61A、第4の給電線62D、右端の抵抗発熱体59を順に通過した後、第2の給電線62Bに合流する。
このように、図12に示すヒータ22において、第2の給電線62Bのうち分岐部Xから図の左側に伸びる部分と、第2の発熱部60Bを構成する両端の各抵抗発熱体59と、第1の電極部61Aと、第1の給電線62Aおよび第4の給電線62Dを含む部分は、意図しない経路で電流を流す分岐導電経路E3を構成する。
また、このような意図しない分流は、ヒータ22の導電経路が、第1の発熱部60Aと第3の電極部61Cとを接続する第1の導電部E1と、第1の発熱部60Aからヒータ22の長手方向のうち第1の方向S1(図12の右側)に伸びて第2の電極部61Bに接続される第2の導電部E2と、第2の導電部E2から第1の方向S1とは反対の第2の方向S2(図12の左側)に分岐して第1の導電部E1を介さずに第2の導電部E2または第2の電極部61Bに接続される分岐導電経路E3と、を少なくとも有する構成であれば、第1の発熱部60Aに通電した際に生じ得る。言い換えると、「1つ目の電極部(第1の電極部61A)が長手方向両端の抵抗発熱体59に接続される」、「2つ目の電極部(第3の電極部61C)が長手方向中央側の抵抗発熱体59に接続される」、「各抵抗発熱体59から伸びる給電線が合流して3つ目の電極部(第2の電極部61B)に接続される」という3つの条件により、第1の発熱部60Aに通電した際に上記の分流が生じ得る。本実施形態では、分岐導電経路E3上に、第2の発熱部60Bと第1の電極部61Aとが設けられているが、第2の発熱部60Bおよび第1の電極部61Aが設けられていない導電経路や、これら以外の導電部材が設けられた導電経路であっても、意図しない分流は生じる可能性がある。
そして、意図しない分流が生じた場合、これまで想定されていなかった経路で電流が流れるため、給電線の発熱によりヒータ22の温度分布にばらつきが発生する。例えば、図13に示すヒータ22において、第3の電極部61Cから第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59へ電流が20%ずつ均等に流れ、このうち図の左から2番目の抵抗発熱体59を通過する電流が、その先の分岐部Xにおいて5%分流した場合、抵抗発熱体59ごとに区画された各ブロック内で発生する給電線の発熱量は、同図中の表に示すようになる。
ここでは、各給電線のヒータ22の短手方向に伸びる部分は短く、その部分における発熱量はわずかであることからその発熱量は無視し、各給電線のヒータ22の長手方向に伸びる部分で発生する発熱量のみを算出している。具体的には、第4の給電線62Dと、第3の給電線62Cと、第2の給電線62Bとの、それぞれのヒータ22の長手方向に伸びる部分で発生する発熱量を算出している。また、発熱量(W)は下記式(1)で表されることから、図13の表に示す発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流(I)の二乗として算出している。よって、図13の表に示す発熱量の数値は、あくまで簡易的に算出された値であり、実際の発熱量とは異なるものである。
図13に基づき、発熱量の算出方法について具体的に説明すると、第1ブロックにおいては、第4の給電線62Dに流れる電流が5%、第3の給電線62Cに流れる電流が100%であるので、それぞれの二乗の合計値である10025(25+10000)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第4の給電線62Dに流れる電流が5%、第3の給電線62Cに流れる電流が80%、第2の給電線62Bに流れる電流が5%であるので、これらの二乗の合計値である6450(25+6400+25)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
そして、図13の表に示す各ブロックの合計発熱量をその下にグラフ化している。各ブロックの合計発熱量は、上記の意図しない分流の影響により、発熱領域中央の第4ブロックを基準に左右非対称となる。より詳細には、第1ブロックの側である長手方向一方側の発熱量が、第7ブロックの側である長手方向他方側の発熱量よりも大きくなっている。
また全ての発熱部に通電した場合にも、給電線に流れる電流の大きさの差から、ヒータ22の長手方向の発熱量が左右非対称になる。具体的には、図14に示すように、全ての発熱部に通電した場合、左右両端の抵抗発熱体59、および、これに接続された給電線62A,62Dにも20%の電流が流れる点が前述の場合と異なる。対して、給電線62Cに流れる電流の値は先ほどと同様である。この場合、第1ブロックにおいては、第4の給電線62Dに流れる電流が20%、第3の給電線62Cに流れる電流が100%であるので、それぞれの二乗の合計値である10400(400+10000)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第4の給電線62Dに流れる電流が20%、第3の給電線62Cに流れる電流が80%、第2の給電線62Bに流れる電流が20%であるので、これらの二乗の合計値である7200(400+6400+400)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
そして、図14の表およびグラフに示すように、各ブロックの合計発熱量は、発熱領域中央の第4ブロックを基準に左右非対称となる。特に、全ての抵抗発熱体59に接続された第2の給電線62Bが、その下流側、つまり第7ブロックで電流値が120%と大きくなり、左右の発熱量に差が生じている。より詳細には、第7ブロックの側である長手方向他方側の発熱量が、第1ブロックの側である長手方向一方側の発熱量よりも大きくなっている。なお、ヒータ22の発熱量を実測する際には、例えばヒータ22単体での発熱量を測定し、抵抗発熱体59や給電線62を含めたヒータ22全体の発熱量が測定される。
また、長手方向の給電線の発熱量に一方側と他方側とで温度偏差を生じるヒータ22として、上記のヒータ22と異なるヒータについて説明する。
図15に示すように、本実施形態のヒータ22は、複数の抵抗発熱体59と、電極部61として、第1の電極部61A、および、第2の電極部61Bと、給電線として、第1の給電線62A、および、第2の給電線62Bとを備える。本実施形態では、長手方向に5つの抵抗発熱体59が並設されている。
第1の電極部61Aは、第1の給電線62Aを介して各抵抗発熱体59に接続される。また、第2の電極部61Bは、第2の給電線62Bを介して各抵抗発熱体59に接続される。本実施形態は、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bの各抵抗発熱体59に対する接続位置G1,G2が、各抵抗発熱体59の長手方向中央位置Qaよりも一方側(図の左側)に配置される。
前述のヒータ22と異なる点として、抵抗発熱体59は、ヒータ22の長手方向Uに往復するように、短手方向の両側の曲げ部を介して複数回(本実施形態では3回)折り返した線部からなる。また、全ての抵抗発熱体59が、長手方向一方側で同一の電極部61Aに接続されており、単一の発熱部によって構成される。
以上のヒータ22においても、図16に示すように、長手方向一方側と他方側とで給電線の発熱量に温度偏差が生じる。具体的には、第1ブロックの発熱量が6800となり、第5ブロックの発熱量10000より小さくなる等、長手方向他方側の発熱量が大きくなっている。
以上のような左右非対称になる給電線の発熱量のばらつきは、ヒータ22の長手方向に渡る温度のばらつきの原因となる。そして、ヒータ22の温度が長手方向に渡ってばらつくと、定着ベルト20に長手方向の温度むらが生じる。用紙に定着される画像が温度の高い部分で光沢度が高く、温度の低い部分では反対に光沢度が低くなるので、定着ベルト20の温度むらにより用紙に光沢むらが発生し、画質の低下につながる虞がある。なお、本実施形態では、小サイズ紙と大サイズ紙を均等に加熱できるように、各ブロックの長さは同じに設けている。
発熱量については、以下の実験により検証できる。まず、ヒータ単体を、抵抗発熱体を上方に向けた状態で、両端を支持させて配置する。そのうえで、ヒータの両端側の電極部に、オムロン社製温度コントローラー「E5EN」から交流電圧(100V)あるいは直流電圧(20~80V)を供給し、ヒータを稼働し、所定の温度に発熱する。 そして、ヒータの温度を、ヒータの上方に設置したフリアシステムズ社製 赤外線サーモグラフィ FLIR T620により測定する。測定された温度に偏差が現れることにより発熱量の偏差を確認することが可能となる。上記いずれかの条件で偏差が生じれば、本願の効果がより顕著に発揮できる。
次に、上記のヒータ22の発熱量の長手方向のばらつきによる定着ベルト20の温度むらを抑制するための本実施形態の構成について説明する。
図17に示すように、定着装置9には、第1のギヤ31と、第2のギヤ41と、駆動源としてのモータ42とが設けられる。
第1のギヤ31は加圧ローラ21の回転軸21dの一端側に取り付けられている。言い換えると、第1のギヤ31は、長手方向で、加熱領域の中央位置C0(図10参照)よりも一方側(図の右側)に設けられる。
第2のギヤ41は、第1のギヤ31に噛み合っている。モータ42は第2のギヤ41に接続され、第2のギヤ41に駆動力を伝達する。なお、モータ42は第2のギヤ41に直接駆動力を伝達してもよいし、第2のギヤ41とモータ42との間に他の駆動伝達部材が設けられていてもよい。
本実施形態では、第2のギヤ41は、定着装置9の後壁部29に対して回転可能に取り付けられている。第2のギヤ41を定着装置9のフレーム部分に取り付けることで、第1のギヤ31と第2のギヤ41とのギヤ間精度を高めることができる。従って、第1のギヤ31と第2のギヤ41との噛み合い不良による振動の発生、ひいては、モータ42のコネクタの接触不良を抑制できる。ただし、第2のギヤ41やモータ42が定着装置9の外側、例えば、画像形成装置のフレームに設けられた構成であってもよい。
加圧ローラ21は、定着装置9内で、定着ベルト20に対する接離方向に移動することができる。加圧ローラ21は、回転軸21dの両側をバネ33によって定着ベルト20に接近する方向へ付勢され、定着ベルト20に圧接される。なお、定着ベルト20は定着装置9に対してその接離方向に多少のガタを設けた構成であってもよく、定着ベルト20が定着装置9に、接離方向に対して完全に固定される必要はない。
本実施形態のように、加圧ローラ21側を定着ベルト20に対して接離方向に移動させる構成とすることで、定着ベルト20側を移動させる構成と比較して以下のような利点がある。
1つ目の利点として、定着ベルト20と加圧ローラ21とによって形成される定着ニップNの位置(図17の上下方向の位置)がずれにくく、定着ニップNの位置精度を高めることができる。つまり、定着ベルト20を接離させる構成の場合、加圧ローラ21の外径の寸法誤差や加圧ローラ21の熱膨張によって定着ニップNの上記位置が変化してしまう。特に本実施形態の加圧ローラ21の弾性層21b(図2参照)を構成するシリコーンゴムは、線膨張係数が大きく、定着ニップNの上記位置の誤差が生じやすい。例えば、本実施形態のように加圧ローラ21の外径が25mmで弾性層21bの厚みが3.5mmの構成の定着装置においては、定着装置9の立ち上げ直後と小サイズ紙連続通紙中とで定着ニップNの上記位置に0.3mmの差が生じる。一方、本実施形態の構成の場合、加圧ローラ21の側が移動するため、加圧ローラ21の寸法誤差や熱膨張によって定着ニップN位置がほとんど変化しない。また、定着ベルト20の熱膨張による位置の誤差はわずかである。前述のように、定着ベルト20に設ける弾性層の厚みは50~500μmに設定されており、仮に弾性層の厚みを200μmとすると、熱膨張による定着ニップNの上記位置のずれは10μm程度に過ぎない。このように、本実施形態の構成により、定着ニップNの位置精度を高めることができ、定着ニップNの形成位置のずれによって用紙にしわができたり、定着ニップNで用紙のジャムが発生することを抑制できる。なお、定着ベルト20に弾性層を設けない構成の場合、定着ニップNの位置精度をより高めることができる。
また2つ目の利点として、加圧ローラ21の側を接離させる構成とすることで、定着装置9の駆動時における定着ベルト20のガタ(加圧ローラ21の加圧方向のガタ)が生じにくい。つまり、定着ベルト20の側が加圧ローラ21に対して接離する構成の場合、加圧ローラ21の回転動作時の振れ回りにより、定着ベルト20が上記加圧方向に振動する。本実施形態の構成により、定着ベルト20の振動を抑制し、この振動によってヒータ22とコネクタの電気接点が摺動して摩耗し、ヒータ22とコネクタの接続不良が生じることを防止できる。
モータ42の駆動力が、第2のギヤ41、そして、第1のギヤ31を介して加圧ローラ21に伝達される。これにより、加圧ローラ21は回転軸21dを中心に回転する。また、加圧ローラ21に圧接された定着ベルト20は、加圧ローラ21に従動回転する。
次に、第2のギヤ41が第1のギヤ31および加圧ローラ21に加える力について、図18および図19を用いて説明する。なお、図18等では、便宜上、第1のギヤ31を加圧ローラ21よりも小さく表示しているが、図17に示すように、第1のギヤ31の歯先円直径は、加圧ローラ21の直径よりも大きい(詳しくは後述する)。
図18に示すように、第2のギヤ41が矢印D2方向へ回転して、第2のギヤ41と噛み合う第1のギヤ31にモータの駆動力を伝達する。この際、第2のギヤ41の歯が第1のギヤ31の歯に力Fを加える。
この力Fの方向は、図19に示すように、第2のギヤ41の歯面が第1のギヤ31の歯面に対して加える力の方向であり、第1のギヤ31と第2のギヤ41との接線L(より詳しくは、両方のギヤの噛み合い位置を通過する接線L)の方向に対して、第1のギヤ31の圧力角αだけ傾いた方向である。本実施形態では、第1のギヤ31の圧力角αは20度に設定される。圧力角は、歯面の1点において、その半径線と、歯形への接線とのなす角度のことであり、日本工業規格(JIS B 0102)に則ったものである。
図18に示すように、第1のギヤ31が第2のギヤ41から受ける力Fのうち、加圧ローラ21の定着ベルト20に対する接離方向(図の左右方向)の分力Faは、定着ベルト20の側を向いている。つまり、本実施形態の第1のギヤ31は、第2のギヤ41からモータの駆動力を伝達されると共に、定着ベルト20に接近する方向の力を受けることになる。なお、上記の加圧ローラ21の定着ベルト20に対する接離方向とは、言い換えると、加圧ローラ21の定着ベルト20に対する加圧方向およびその反対の方向でもある。
本実施形態では、回転軸21dの長手方向一方側、つまり、加熱領域の中央位置C0(図10参照)よりも長手方向一方側に第1のギヤ31が設けられている。従って、長手方向一方側では、加圧ローラ21は、バネ33の付勢力に加えて分力Faを受け、定着ベルト20に圧接されることになる。一方、長手方向他方側では、加圧ローラ21は、バネ33の付勢力のみにより、定着ベルト20に圧接される。このように、分力Faにより、加圧ローラ21の定着ベルト20に対する加圧力は、その長手方向一方側が他方側に比べて大きくなる。
ところで、第1のギヤ31が第2のギヤ41から受ける分力Faの方向は、第2のギヤ41が第1のギヤ31に噛み合う位置によって変化する。例えば、第2のギヤ41が第1のギヤ31に対して図20に示す位置に配置された場合には、図20に示すように、第1のギヤ31は第2のギヤ41から矢印F方向の力を受け、その分力Faは、定着ベルト20から離間する方向(図の右方向)になる。
そして、この分力Faの方向が変化する境界位置が、図20に示す基準線H1である。つまり、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置が、基準線H1よりも図の上側(定着ニップNの用紙が出ていく側で、定着ニップNの出口側)に配置される場合には、図20のように、分力Faは定着ベルト20から離間する方向になる。一方、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置が、基準線H1よりも図の下側(定着ニップNの用紙侵入側で、定着ニップNの出口側と反対側である入口側)に配置される場合には、図18のように、分力Faは定着ベルト20に接近する方向になる。
上記の基準線H1について説明する。
基準線H1は、加圧ローラ21の軸線方向に垂直な平面上(図20の紙面上)において、第1のギヤ31の回転中心31aを通り、かつ、加圧ローラ21の加圧方向に平行な直線H0(以下、水平線H0と呼ぶ)に対して、加圧ローラ21の回転方向D1と反対方向(図20の反時計回りの方向)へ圧力角αだけ傾けた線である。第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置が基準線H1上にある場合には、分力Faは0になり、この位置が分力Faの作用方向の境界位置になる。
基準線H1の求め方について説明する。
仮に、第2のギヤ41と第1のギヤ31とがギヤでなく、円形状をなしている場合、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する力の方向Fは両者の接線方向になり、境界線は水平線H0になる。しかし、ギヤ同士の噛み合いにより、前述のように、第2のギヤ41が第1のギヤ31に対して加える力の方向Fは、接線方向から圧力角αだけ傾くことになる。従って、基準線H1は、水平線H0から圧力角αだけ傾いた線になる。
このように、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置を変更することで、分力Faの方向を加圧ローラ21の加圧方向と同じ方向か、その反対方向かを設定することができる。
上記の噛み合い位置と、加熱領域の中央位置C0(図10参照)に対して、第1のギヤ31を長手方向の一方側、あるいは他方側のいずれの側に設けるか、との組み合わせにより、加圧ローラ21に対する定着ベルト20の加圧力を、長手方向の一方側か他方側、いずれの側で相対的に大きくするかを変更することができる。
以上の組み合わせをまとめたのが図21である。
図21に示すように、第1のギヤ31の配置を長手方向の一方側にするか、あるいは他方側にするか、そして、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置は基準線H1に対して上側か下側か、の組み合わせにより、加圧ローラ21の定着ベルト20に対する加圧力を、長手方向一方側と他方側とでどちら側を大きくするかが変化する。このように本実施形態では、加圧ローラ21を定着ベルト20に対して接離可能に設け、加圧ローラ21(あるいは第1のギヤ31)に対して駆動力を伝達する第2のギヤ41の分力Faを利用することで、加圧ローラ21の定着ベルト20に対する加圧力を、長手方向の任意の側で相対的に大きくすることができる。つまり、加圧ローラ21の加圧力を調整するための機構を別途設けることなく、加圧ローラ21の加圧力に長手方向一方側と他方側とで偏差を持たせることができる。従って、定着ニップNのニップ圧やニップ幅を、長手方向の任意の側で相対的に大きくすることができる。なお、図21の基準線H1よりも上側とは、例えば図20において、基準線H1に対して、定着ニップNの出口Nb側と同じ側であり、図21の基準線H1よりも下側とは、定着ニップNの出口Nb側と反対側である。またニップ幅とは、図20の上下方向で用紙搬送方向の定着ニップNの幅のことである。
そして、前述の図13あるいは図14で示したように、ヒータ22の給電線の発熱量に長手方向で偏差が生じる等して定着ベルト20の温度が長手方向の一方側と他方側とで偏差が生じる構成において、上記の加圧力の偏差を利用することにより、この温度偏差に起因する不具合(具体的には、用紙の画像むらや光沢むら)を抑制することができる。つまり、図21の「他方側の加圧力が大」になる組み合わせの構成を採用することで、図13のように、長手方向一方側の発熱量が他方側よりも大きい場合に、長手方向他方側で、定着ニップNのニップ圧やニップ幅を相対的に大きくすることができる。従って、長手方向の一方側と他方側とのヒータ22の温度偏差に起因する不具合、具体的には、用紙の画像むらや光沢むらを抑制することができる。またこれとは逆に、図21の「一方側の加圧力が大」になる組み合わせの構成を採用することで、図14や図16のように、長手方向他方側の発熱量が一方側よりも大きい場合に、長手方向一方側で、定着ニップNのニップ圧やニップ幅を相対的に大きくすることができる。これにより、ヒータ22の発熱量が相対的に小さい側で、定着ニップNのニップ圧やニップ幅を相対的に大きくすることができる。従って、長手方向の一方側と他方側とのヒータ22の温度偏差に起因する不具合、具体的には、用紙の画像むらや光沢むらを抑制することができる。本実施形態では特に、上記のように加圧力を調整する機構を別途設けることなく、加圧ローラ21を定着ベルト20に対して接離させる構成を利用して加圧力の偏差を設けており、簡易な構成により、用紙の画像むらや光沢むらを抑制する効果を得ることができる。
上記の説明では、加圧力の偏差を利用する例として、ヒータ22の発熱量に左右偏差を生じる場合を示したが、本発明はこれに限らない。例えば、画像形成装置の機内の気流の関係で定着ベルト20の長手方向の一方が冷やされることで、定着ベルト20の温度が長手方向の一方側と他方とで偏差を生じた場合にも、上記の本実施形態の構成を利用することにより、定着ベルト20の温度偏差に起因する不具合、具体的には、用紙の画像むらや光沢むらを抑制することができる。
また、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置は、水平線H0から離れた位置に配置することが好ましい。例えば図22に示すように、加圧ローラ21の軸線方向に垂直な平面上(図22の紙面上)において、水平線H0を加圧ローラ21の回転方向D1へ角度βだけ傾けた線を第2の基準線H2とし、回転方向D1と反対方向へ角度βだけ傾けた線を第3の基準線H3とする。そして、第1のギヤ31の周方向において、この第2の基準線H2および第3の基準線H3によって区画された4つの領域のうち、水平線H0を含まない領域J1,J2に、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置を設定することが好ましい。
つまり、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置を、領域J3、J4に設けると以下の不具合が生じる。
まず、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置を、水平線H0に近い位置で、定着ベルト20側の範囲J3内に配置した場合、加圧ローラ21を定着ベルト20に圧接した際に、加圧ローラ21が狙いの位置よりも図の右側に配置された場合、例えば、加圧ローラ21の剛性が高く、加圧ローラ21が十分に定着ベルト20の側に食い込まなかった場合に、第1のギヤ31と第2のギヤ41とが離れてしまい、両者がうまくかみ合わなくなってしまう。これとは逆に、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置を、水平線H0に近い位置で、定着ベルト20側とは反対側の範囲J4内に配置した場合、加圧ローラ21が定着ベルト20に食い込み過ぎた場合、同じく第1のギヤ31と第2のギヤ41とが離れてしまい、両者がうまく噛み合わなくなってしまう。このように、水平線H0に近い位置で両者を噛み合わせた場合、加圧ローラ21の配置の誤差により、第1のギヤ31と第2のギヤ41との噛み合いに対する影響が大きくなってしまう。従って、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置は、水平線H0から離れた位置に配置することが好ましく、範囲J1あるいは範囲J2に配置することが好ましい。βは30度に設定することが好ましい。
また、加圧ローラ21を定着ベルト20に対して接離させるために、加圧ローラ21の接離方向の移動領域を確保する必要があるが、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置を範囲J4内に設定した場合には、この移動領域が確保することが難しくなるため、この観点でも、第2のギヤ41の第1のギヤ31に対する噛み合い位置を範囲J4の外側に設定することが好ましい。
また図19に示す第1のギヤ31の歯先円直径M1は、図2に示す加圧ローラ21の直径M2より大きく、加圧ローラ21の直径M2と定着ベルト20の直径M3の和よりも小さいことが好ましい。以下、第1のギヤ31の直径と第1のギヤ31が定着ベルト20に与える力の大きさとの関係について説明する。
まず、第1のギヤ31の加えられる駆動力Fは、次式(2)で表すことができる。駆動力Fは、第1のギヤ31の駆動トルクFAに比例して大きくなり、第1のギヤ31の大きさ(式2ではピッチ円直径)が大きくなるほど小さくなる。
そして、駆動トルクFAは、次式(3)に示すように、摩擦力FBと加圧ローラの直径M2とに比例して大きくなる。
また、摩擦力FBは次式(4)で表される。ここで、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にグリースなどの潤滑剤が介在した状態での摩擦係数μは約0.1になるので、式(4)から、摩擦力FBは定着荷重FCの約10%の大きさになる。
従って、第1のギヤ31のピッチ円直径M1’が加圧ローラ21の直径M2よりも大きい場合、式(2)~式(4)より、次式(5)となり、第2のギヤ41が第1のギヤ31に加える力Fを定着荷重の10%以下の値にすることができる。ただし本実施形態では、第1のギヤ31のピッチ円直径M1’に代えて、第1のギヤ31の歯先円直径M1を加圧ローラ21の直径M2よりも大きくしている。
第2のギヤ41が第1のギヤ31に加える力Fが大きくなりすぎると、加圧ローラ21から定着ベルト20に対する加圧力の長手方向の偏差が大きくなりすぎて、定着ベルト20が片側に寄りやすくなって破損を生じるおそれがある。本実施形態では、第1のギヤ31の歯先円直径M1を加圧ローラ21の直径M2よりも大きくすることで、定着ベルト20の寄りによる破損を防止できる。また、第1のギヤ31の歯先円直径M1を加圧ローラ21の直径M2と定着ベルト20の直径M3の和よりも小さくすることで、定着装置9が大型化したり、第1のギヤ31が不要にコストアップしてしまうことを防止できる。
本実施形態の構成により、左右のバネ33(図17参照)の付勢力にのみ偏差を持たせて加圧ローラ21の定着ベルト20に対する左右の加圧力を調整する方法に比して、加圧ローラ21の定着ベルト20に対する左右の加圧力に微小な偏差を持たせることが可能になる。
また、第2のギヤ41とモータ42との間に、第3のギヤを設けてもよい。例えば図23に示すように、第2のギヤ41と噛み合い、モータ42から駆動力を伝達される第3のギヤ43が設けられる。
第3のギヤ43を設けることで、第1のギヤ31に伝達される駆動力を調整することができる。つまり、第3のギヤ43は、第2のギヤ41と噛み合って矢印D3方向へ回転することで、第2のギヤ41に対して力F’を加える。この力F’の分力Fa’は、第2のギヤ41が第1のギヤ31に加える力Fの分力Faの逆方向である。つまり、分力Fa’が分力Faを小さくする方向に作用する。従って、分力Faが設計上大きくなりすぎるような場合に、第3のギヤ43を設けることで、分力Faが大きくなりすぎることを防止し、定着ベルト20の破損を防止できる。なお、上記の配置は一例であり、必要な分力Fa’の大きさに応じて、適宜、第3のギヤ43の第2のギヤ41に対する噛み合い位置や、第3のギヤ43の歯先円半径を設定することができる。
また本実施形態では、加圧ローラ21を定着ベルト20に対して接離させる際に、第3のギヤ43を中心にして第1のギヤ31および第2のギヤ41が回転する。言い換えると、第3のギヤ43の回転中心43aを中心にして、第1のギヤ31(および加圧ローラ21)は両矢印K1方向へ回転し、第2のギヤ41は両矢印K2方向へ移動する。つまり、第1のギヤ31、第2のギヤ41、そして、第3のギヤ43の、それぞれのギヤ同士の相対的な位置関係を変更せずに、加圧ローラ21を定着ベルト20に対して接離させることができる。従って、それぞれのギヤが噛み合い可能な位置を維持したまま、加圧ローラ21を定着ベルト20に対して接離させることができる。従って、加圧ローラ21を定着ベルト20に圧接させた際に、加圧ローラ21の剛性の大きさの誤差等により、加圧ローラ21の配置の誤差が生じた場合でも、それぞれのギヤを精度良く噛み合わせることができる。
なお、本実施形態では第3のギヤ43が設けられる場合を例示したが、これに限らない。例えば図18等のように、第1のギヤ31と第2のギヤ41のみが設けられた構成において、第2のギヤ41の回転中心41aを中心にして、第1のギヤ31(および加圧ローラ21)を両矢印K1方向へ回転させてもよい。この場合でも、第1のギヤ31と第2のギヤ41の相対的な位置関係を変えることなく、加圧ローラ21を定着ベルト20に対して接離させることができる。
また図24に示すように、加圧ローラ21を、その長手方向中央側の直径が端部側よりも小さいつづみ形状にすることもできる。これにより、用紙Pの搬送性を向上させ、定着ニップを通過時に用紙Pにシワが発生することを抑制できる。
しかし一方で、上記のように加圧ローラ21をつづみ形状にすることで、長手方向中央側で加圧ローラ21と定着ベルト20とのニップ圧が小さくなってしまう。これに対して、図24のように、ステー24の支持部24bの、ヒータホルダ23を支持する支持面24b1を、その長手方向中央部が端部よりもヒータホルダ23側へ突出した凸形状とする。支持部24bとは、ステー24のうち、ヒータホルダ23(ヒータ22を直接支持する構成ではヒータ22)に当接してヒータホルダ23を支持する部分である。これにより、長手方向中央側での加圧ローラ21と定着ベルト20とのニップ圧を大きくすることができ、長手方向中央側での定着ニップNの温度を高めることができる。従って、上記の加圧ローラ21をつづみ形状にすることによるニップ圧低下の影響を相殺し、定着ベルト20あるいは定着ニップNの長手方向の温度むらを抑制できる。
特に、断面二次モーメントは、加圧方向の長さの3乗に比例して大きくなるため、ステー24の、加圧ローラ21の加圧方向(図の上下方向)に対する長さを大きくすることで、ステー24の加圧ローラ21の加圧方向に対する剛性を効果的に高めることができる。
また、図25に示すように、ヒータホルダ23のうち、ヒータ22を保持する、保持部としての収容凹部23aを、その長手方向中央側の厚みが端部よりも大きい凸形状とすることもできる。より詳しくは、収容凹部23aのヒータ22に当接する面23a1で、図の上下方向の底面をその長手方向中央側が端部よりもヒータ22の側へ突出した凸形状とする。これにより、前述のステー24の場合と同様、長手方向中央側での加圧ローラ21と定着ベルト20とのニップ圧を大きくすることができ、長手方向中央側での定着ニップNの温度を高めることができる。従って、定着ベルト20の長手方向の温度むらを抑制できる。
特に、熱伝導率が(ステー24等と比べて)低いヒータホルダ23の長手方向中央部の厚みを大きくすることで、長手方向中央側において、ヒータ22とステー24との距離を大きくすることができる。従って、長手方向中央側において、ヒータ22からステー24の側へ流出する熱量を小さくすることができ、長手方向中央側での定着ニップNの温度を高めることができる。従って、定着ベルト20あるいは定着ニップNの長手方向の温度むらを抑制できる。
加圧ローラ21の加圧方向(図の上下方向)において、図24に示すように、上記の支持部24bのヒータ22側への突出量、つまり、支持面24b1の長手方向中央の、長手方向端部に対するヒータ22側への突出量を突出量R1、あるいは、図25に示すように、上記のヒータホルダ23の収容凹部23aの底面23a1の、凸形状のヒータ22側への突出量、つまり、底面23a1の長手方向中央の、長手方向端部に対するヒータ22側への突出量を突出量R1とし、加圧ローラ21の長手方向端部の半径と中央の半径との差をつづみ量R2とすると、突出量R1は、つづみ量R2よりも大きく、ヒータ22の厚みR3より小さいことが好ましい。突出量R1をつづみ量R2よりも大きくすることで、長手方向中央側のニップ圧を効果的に高め、長手方向中央側での定着ニップNの温度を適切に高めることができる。一方、突出量R1をヒータ22の厚みR3よりも小さくすることで、ヒータ22に対する加圧力が大きくなりすぎてヒータ22が破損することを防止できる。
また、ステー24とヒータホルダ23の双方に上記凸形状を設けてもよい。この場合、上記突出量R1は両部材の突出量の和とし、この突出量R1がつづみ量R2よりも大きく、ヒータ22の厚みR3より小さいことが好ましい。
また、図24および図25のように、定着ベルト20あるいは定着ニップNの長手方向の温度むらを抑制する観点から、加圧ローラ21のつづみ形状とステー24あるいはヒータホルダ23の凸形状を共に設ける方がより好ましい。しかし、どちらか一方の構成だけを設けてもよい。
ところで、本発明が適用されるヒータは、図10や図15等で示した配置のヒータ22に限らない。発熱量がその長手方向一方側と他方側とで偏差が生じるヒータ22に本発明を適用することで、この温度偏差に起因する不具合を抑制できる。そこで、以下の説明では、電極部や給電線の配置が図10や図15とは異なり、長手方向一方側と他方側とで温度偏差が生じるヒータ22について、順に例示する。
以下の説明では、ヒータ22の構成を簡略化して説明する。一例として、図26は図10と電極部等の配置が基本的に同じ構成のヒータである。
図26に示すように、ヒータ22の長手方向に、第1の抵抗発熱体群69Aと第2の抵抗発熱体群69Bと第3の抵抗発熱体群69Cとが並設されている。それぞれの抵抗発熱体群は、1つの抵抗発熱体59A~59Cであってもよいし、複数の抵抗発熱体59が長手方向に並設されたものであってもよい。例えば、図10のヒータ22を図26に当てはめると、図26の第1の抵抗発熱体群69Aおよび第3の抵抗発熱体群69Cは、図10の両端のそれぞれ1つの抵抗発熱体59で構成されるのに対して、第2の抵抗発熱体群69Bは中央側の5つの抵抗発熱体59によって構成される。以下の説明では、その説明の簡略化のために、これらの第1~第3の抵抗発熱体群69A~69Cが、それぞれ、単一の抵抗発熱体59A~59C(第1の発熱体59A~第3の発熱体59C)であるものとして説明する。
以下、ヒータ22の長手方向において、各抵抗発熱体59A~59Cに対応する位置を第1群~第3群と称するものとする。それぞれの抵抗発熱体59A~59Cには10%の大きさの電流が流れるものとし、第1群~第3群の発熱量は、便宜的に、各給電線に流れる電流(I)の二乗として算出している。例えば全ての抵抗発熱体59に通電した場合に、図26のように、第1群の合計の発熱量は200(100+100)、第2群の合計の発熱量は200(100+100)、第3群の合計の発熱量は400となり、長手方向他方側の発熱量が一方側と比較して大きくなる。このように、それぞれの抵抗発熱体群を構成する抵抗発熱体が単一の場合も複数の場合も同様に、長手方向の一方側と他方側との給電線の発熱量に偏差が生じる。なお、図26では、第1の給電線62A、第3の給電線62C、第4の給電線62Dは、対応する抵抗発熱体59に対して、その長手方向中央位置Qaよりも一方側で各抵抗発熱体59に接続される。また、第2の給電線62Bは、対応する抵抗発熱体59に対して、その長手方向中央位置Qaよりも他方側で各抵抗発熱体59に接続される。
また以下の説明では、全ての抵抗発熱体59A~59Cから伸びる給電線が合流して接続される電極部を第2の電極部61Bと称し、第2の電極部61Bと異なる側で第1の抵抗発熱体59に接続される電極を第1の電極部61Aと称する。なお、図26の矢印で示すように、第2の電極部61Bから第1の電極部61Aあるいは第3の電極部61Cの側へ電流を流すとした場合に、第3の抵抗発熱体59Cは、第1の抵抗発熱体59Aあるいは第2の抵抗発熱体59Bよりも電流方向の上流側に配置される抵抗発熱体である。
図27に示すヒータ22は、第1の電極部61Aが、第1の給電線62Aを介して第1の抵抗発熱体59Aおよび第2の抵抗発熱体59Bに接続される。また第3の電極部61Cが、第3の給電線62Cを介して第3の抵抗発熱体59Cに接続される。本実施形態のヒータ22としては、例えば、図の左端揃えで用紙を搬送する定着装置に適用可能である。この場合、小サイズの用紙を通紙する場合には、第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bに通電して第1の抵抗発熱体59Aおよび第2の抵抗発熱体59Bが発熱し、大サイズの用紙を通紙する場合には、全ての電極部61A~61Cに通電して全ての抵抗発熱体59A~59Cを発熱させる。
本実施形態においても、図27の下側の表に示すように、全ての抵抗発熱体59に通電した場合に、長手方向他方側(第3群)の発熱量400が、一方側(第1群)の発熱量200に比べて大きく、ヒータ22の発熱量に長手方向の偏差が生じる。なお、本実施形態では、第1の給電線62Aの第1の抵抗発熱体59Aおよび第2の抵抗発熱体59Bに対する接続位置、および、第3の給電線62Cの第3の抵抗発熱体59Cに対する接続位置は、対応する抵抗発熱体59の長手方向中央位置Qaよりも一方側に配置される。第2の給電線62Bの各抵抗発熱体59に対する接続位置は、対応する抵抗発熱体59の長手方向中央位置Qaよりも他方側に配置される。
さらに図28に示すヒータ22は、第1の電極部61Aが、第1の給電線62Aを介して第1の抵抗発熱体59Aに接続される。また第3の電極部61Cが、第3の給電線62Cを介して第2の抵抗発熱体59Bおよび第3の抵抗発熱体59Cに接続される。本実施形態のヒータ22としては、例えば、図の右端揃えで用紙を搬送する定着装置に適用可能である。この場合、小サイズの用紙を通紙する場合には、第3の電極部61Cおよび第2の電極部61Bに通電して第2の抵抗発熱体59Bおよび第3の抵抗発熱体59Bが発熱し、大サイズの用紙を通紙する場合には、全ての電極部61A~61Cに通電して全ての抵抗発熱体59A~59Cを発熱させる。
本実施形態においても、図28の下側の表に示すように、長手方向他方側(第3群)の発熱量500が、一方側(第1群)の発熱量400に比べて大きく、ヒータ22の発熱量に長手方向の偏差が生じる。なお、本実施形態では、第1の給電線62Aの第1の抵抗発熱体59Aに対する接続位置は、第1の抵抗発熱体59Aの長手方向中央位置Qaよりも一方側に配置される。第2の給電線62Bの各抵抗発熱体59に対する接続位置は、対応する抵抗発熱体59の長手方向中央位置Qaよりも他方側に配置される。第3の給電線62Cの第2の抵抗発熱体59Bに対する接続位置は、対応する抵抗発熱体59の長手方向中央位置Qaよりも一方側、第3の給電線62Cの第3の抵抗発熱体59Cに対する接続位置は、対応する抵抗発熱体59の長手方向中央位置Qaよりも他方側に配置される。
なお、以上の各給電線62の各抵抗発熱体59に対する接続位置のパターンは一例である。給電線62の発熱量は、接続される抵抗発熱体59の違い等によっても変化するし、給電線62の抵抗発熱体59に対する接続位置が、抵抗発熱体59の中央位置Qaに対して一方側に配置されるか他方側に配置されるかの組み合わせによっても変化する。従って、上記のヒータ22と接続位置が異なるヒータ22について、その長手方向の発熱量に偏差が生じるヒータ22に本発明を適用できることはもちろんである。
また、図15で示した、電極部が2つ設けられた構成のヒータ22について、それぞれ異なる接続位置のもののうち、給電線の発熱量に長手方向の偏差が生じるヒータ22を列挙する。
一例として、図29に示すヒータ22は、第1の給電線62Aの第1の抵抗発熱体59A、および、第2の発熱体59Bに対する接続位置は、各抵抗発熱体59の長手方向中央位置Qaよりも一方側、第1の給電線62Aの第3の抵抗発熱体59Cに対する接続位置は他方側、第2の給電線62Bの各抵抗発熱体59に対する接続位置は他方側に配置された例である。
この場合でも、図29の下側の表に示すように、長手方向他方側(第3群)の発熱量500が、一方側(第1群)の発熱量400に比べて大きく、ヒータ22の発熱量に長手方向の偏差が生じる。
また、図30(a)~(e)に示すように、それぞれの接続位置の場合について、給電線の発熱量が長手方向他方側で一方側よりも大きくなる。なお、各図の一番下に記載した数値が各群の給電線の合計発熱量を示している。さらに、上記と異なる接続位置として、図31(a)~(f)に示すように、各接続位置の場合について、給電線の発熱量が長手方向一方側で他方側よりも大きくなる。このように、接続位置の変化によって給電線の各群における発熱量が変化し、発熱量が大きくなる側も変化する。なお、図示していないが、これらの接続位置の組み合わせによっては、長手方向一方側と他方側との発熱量が等しくなる場合も存在する。なお、図30および図31の左側を一方側、右側を他方側としたときに、一方側から延びる給電線には第一の電極部が、他方側に延びる給電線には第二の電極部が接続されている。
具体的にそれぞれの場合の接続位置を説明すると、図30(a)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側(より詳しくは抵抗発熱体の長手方向中央位置よりも一方側。以下も同じ)に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の他方側(より詳しくは抵抗発熱体の長手方向中央位置よりも他方側。以下も同じ)に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されているものである。
図30(b)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の他方側に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されているものである。
図30(c)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の他方側に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されているものである。
図30(d)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されているものである。
図30(e)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されているものである。
図31(a)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の他方側に接続されているものである。
図31(b)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の他方側に接続されているものである。
図31(c)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されているものである。
図31(d)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の他方側に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の他方側に接続されているものである。
図31(e)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の他方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の他方側に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の他方側に接続されているものである。
図31(f)は、一方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一の電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の一方側に接続されており、他方側最端部の抵抗発熱体に接続される給電線の内、第一電極部に接続される給電線は、抵抗発熱体の一方側に接続され、第二の電極部に接続される給電線は抵抗発熱体の他方側に接続されているものである。
以上の図29、図30、図31の各実施形態において、一方側の最端部の抵抗発熱体と他方側の最端部の抵抗発熱体の間にある抵抗発熱体の給電線に対する接続形態はどのような形態であってもよい。
さらに、各抵抗発熱体59を図15に示すように、線部の折り返しによって構成する場合において、図15のように各抵抗発熱体59を平行四辺形状にしてもよいし、図32に示すように、矩形状としてもよい。また、その折り返し回数は、必要なヒータ22の短手方向の幅や給電線の抵抗発熱体に対する接続位置に応じて、適宜選択することができる。図15のように平行四辺形状とする場合、つまり、ヒータ22の長手方向Uと交差する方向の線部を、短手方向Yに対して傾斜させた構成の方が、抵抗発熱体59同士の隙間を小さくすることができるため、よりヒータ22の発熱量を長手方向に均一化できる。
また、図33に示すように、各給電線62の各抵抗発熱体59に接続される部分を、ヒータ22の短手方向に対して傾斜させてもよい。さらに、図34に示すように、この給電線62の接続される部分を、抵抗発熱体59に置き換えることもできる。
また、図10に示す構成のヒータ22について、全ての電極部を長手方向の同じ側に配置することもできる。例えば、図35に示すヒータ22は、図10のヒータ22と比較すると、第2の電極部61Bが長手方向一方側に設けられる点が異なる。また、図35に示すように、第2の電極部61Bが長手方向一方側に設けられるため、第2の電極部61Bに直に接続される給電線が長手方向他方側まで延在して折り返し、各抵抗発熱体59に接続されている。本実施形態では、これらの第2の電極部61Bと各抵抗発熱体59を接続する給電線のうち、各抵抗発熱体59に接続される部分から長手方向他方側の折り返し部分までを第2の給電線62Bと称し、折り返し部分に連続した長手方向一方側へ延在する部分から第2の電極部61Bまでの部分を第5の給電線(導電体)62Eと称する。
このようなヒータ22においても、第1の発熱部60Aのみに通電した場合、そして、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bに通電した場合のそれぞれについて、前述したような長手方向の温度偏差が生じる。
また、以上で説明したヒータの構成を適宜組み合わせてもよい。例えば、図35のように長手方向一方側に全ての電極部61を配置した構成において、図32のように抵抗発熱体59を矩形状としたり、図33のように各給電線62の各抵抗発熱体59に接続される部分を、ヒータ22の短手方向に対して傾斜させてもよい。
以上の各ヒータ22において、長手方向の発熱量が相対的に小さい側において、加圧力が相対的に大きくなる組み合わせの構成(図21参照)を採用する。これにより、長手方向の発熱量が小さい側で、定着ニップNにおけるニップ圧あるいはニップ幅を大きくすることができる。従って、長手方向の発熱量の偏差によって生じる不具合、具体的には、用紙P上に形成された画像の長手方向の光沢むらや定着むらを抑制できる。
また本発明は、小型化のために特に短手方向寸法を小さくしたヒータに適用されることでより大きな効果を期待できる。具体的には、図36において、ヒータ22(基材50)の短手方向寸法をWa、抵抗発熱体59の短手方向寸法をWbとすると、ヒータ22の短手方向寸法Waに対する抵抗発熱体59の短手方向寸法Wbの比(Wb/Wa)が25%以上となるヒータ22に対して本発明を適用した場合、大きな効果を期待できる。なお、抵抗発熱体59の短手方向寸法Wbは、折り返されるように形成された抵抗発熱体59の1つの線状の部分の太さではなく、抵抗発熱体59全体の短手方向寸法を意味する。さらに、前記短手方向の寸法比(Wb/Wa)が40%以上となるヒータ22であれば、本発明を適用することによる効果はより大きくなる。
次に、上記の短手方向寸法の比(Wb/Wa)を変化させた場合の、ヒータ22の長手方向中央側と端部側との間に生じる温度偏差の実験結果について説明する。実験では、前述した構成のヒータ22について、上記の短手方向寸法比(Wb/Wa)が、20%以上25%未満、25%以上40%未満、40%以上70%未満、70%以上80%未満のものをそれぞれ用意し、ヒータ単体の条件下でヒータの全ての抵抗発熱体に所定の電圧で通電し、ヒータの長手方向中央および端部のそれぞれの表面温度をフリアシステムズ社製の赤外線サーモグラフィ FLIR T620を用いて測定した。以上の実験結果を表1に示す。表1の結果は、中央側と端部側の温度差が2℃未満のものを〇、2℃以上5℃未満のものを△、5℃以上のものを×とした。なお、短手方向寸法の比(Wb/Wa)を80%以上とすると、ヒータの短手方向寸法を極端に大きくする等しない限り、給電線を配置するスペースがなくなるため、実験の対象にはしていない。
表1に示すように、短手方向寸法の比(Wb/Wa)が大きくなるほど、ヒータの中央と端部の温度差も大きくなった。具体的には、20%以上25%未満では〇であるのに対して、25%以上40%未満では△に変化し、40%以上70%未満、および、70%以上80%未満では×に変化した。この結果からもわかるように、ヒータの長手方向の温度むらは、短手方向寸法の比(Wb/Wa)が25%以上で顕著になり、40%以上で特に顕著になる。従って、このような寸法比のヒータに対して、本実施形態の上記構成を適用してその温度偏差に起因する不具合を抑制することが好適である。
図36に示す例では、ヒータ22の基材50が長方形であるため、ヒータ22の短手方向寸法Waはどの長手方向位置でも同じ寸法であるが、図36に示す例のように、基材50の縁に凹凸がある場合は、長手方向位置によって短手方向寸法Lbが変化する。このような場合は、全ての抵抗発熱体59が配置されている発熱領域内で、ヒータ22が短手方向Yに最小となる寸法を、上記ヒータ22の短手方向寸法Waとする。
また、本発明は、ヒータ22の長手方向寸法Laに対するヒータ22の短手方向寸法Waの比(Wa/La)が、1.5%より大きく、6%未満となるヒータ22や、ヒータ22の短手方向寸法Waに対する給電線62A,62Bの短手方向寸法Wcの比(Wc/Wa)が、2%より大きく、20%未満となるヒータ22に対しても、適用可能である。なお、図37に示す例のように、基材50の長手方向寸法がその部分によって異なる場合は、ヒータ22が長手方向Uに最大となる寸法を、上記ヒータ22の長手方向寸法Laとする。また、給電線62A,62Bの短手方向寸法Wcは、給電線62A,62Bがヒータ22の長手方向Uに伸びる線状部分の太さを意味し、抵抗発熱体59に接続するためにヒータ22の短手方向Yに折れ曲がった部分を含まない。また、図37に示すように、給電線62A,62Bの太さがヒータ22の長手方向位置によって変化する場合は、発熱領域Lb内での第1の給電線62Aまたは第2の給電線62Bの最小の短手方向寸法を、給電線62A,62Bの短手方向寸法Wcとする。
また、本発明に係る実施形態において、ヒータの長手方向に渡る温度のばらつきをより一層抑制するために、PTC特性を有する抵抗発熱体を用いてもよい。PTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。PTC特性を有する発熱部とすることで、低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる。例えば、PTC特性のTCR係数を300~4000ppm/度程度にすれば、ヒータに必要な抵抗値を確保しながら、低コスト化を図れる。より好ましくは、TCR係数を500~2000ppm/度とするのがよい。
抵抗温度係数(TCR)は、下記式(6)を用いて算出することができる。式(6)中のT0は基準温度、T1は任意温度、R0は基準温度T0における抵抗値、R1は任意温度T1における抵抗値である。例えば、図10に示す上述のヒータ22において、第1の電極部61Aと第2の電極部61Bとの間の抵抗値が、25℃(基準温度T0)で10Ω(抵抗値R0)であり、125℃(任意温度T1)で12Ω(抵抗値R1)であった場合は、式(6)から抵抗温度係数は2000ppm/℃となる。
また、ヒータ22の基材50上に配置される電極部等のレイアウトについても、上記の実施形態に限らず、給電線の発熱量が長手方向に不均一になるヒータに対して本発明を適用することができる。
また、本発明は、前述の定着装置のほか、図38、図39に示すような定着装置にも適用可能である。以下、図38、図39に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
まず、図38に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されており、この押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んで定着ニップNを形成している。
図38に示す定着装置9においても、前述の実施形態で説明したように、加圧ローラ21を加圧して定着ベルト20に押し付ける加圧機構を設けると共に、加圧ローラ21に駆動力を伝達する前述の第1のギヤおよび第2のギヤを長手方向のいずれかの側に設ける。そして、ギヤの長手方向の配置、および、第1のギヤに対する第2のギヤの噛み合い位置の組み合わせを図21に示す組み合わせで設定することにより、長手方向の任意の側の加圧力を大きくして加圧力に偏差を持たせることができる。また、ヒータ22の長手方向の発熱量がその一方側と他方側とで偏差が生じる場合には、発熱量が小さい側の加圧力を相対的に大きくすることで、定着ニップNにおける、発熱量が小さい側のニップ圧やニップ幅を相対的に大きくすることができる。したがって、ヒータ22の長手方向の一方側と他方側の温度偏差に起因する不具合を抑制することができる。つまり、長手方向一方側と他方側とでの定着性の差を抑制、および、長手方向での光沢偏差を抑制することができる。従って、用紙の画像むらや光沢むらを抑制することができる。
次に、図39に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、図39に示す定着装置9と同じ構成である。本構成の定着装置9にも、上記の本発明を適用することにより、上記効果を得ることができる。
また、本発明の加熱装置を有する装置の例として、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインク等の液体を乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータ等の被覆装置や、被加熱物としての包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置であってもよい。このような装置にも本発明を適用することで、加熱体の長手方向の発熱量の偏差に起因する不具合を抑制することができる。
記録媒体(あるいは被加熱物あるいはシート)としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
以上の説明では、加熱体の例として、面状の発熱体である抵抗発熱体を基板上に設けた構成のものを例示したが本発明はこれに限らない。例えば、ハロゲンヒータやIH、カーボンヒータ等を用いることも可能である。
以上の説明では、加圧ローラを定着ベルト側へ加圧する加圧機構としてバネを採用する場合を例示したが、これに限らない。例えば、加圧レバーを加圧機構として採用してもよい。