JP7464817B2 - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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[1] 化学組成が質量%で、
C :0.030%以下、
Si:0.1~1.0%、
Mn:0.2~2.0%、
P :0.01~0.04%、
S :0.01%以下、
Cr:15.0~25.0%、
Ni:9.0~18.0%、
N:0.06~0.25%、
Nb:0.2~1.0%、
Cu:2.0超~4.0%、
Mo:0.1~2.0%、
B :0.0005~0.008%、
Sol.Al:0.0005~0.080%、
V :0~1.0%、
Co:0~1.0%、
Y :0~1.0%、
Zr:0~1.0%、
Hf:0~0.20%、
Ta:0~0.2%、
W :0~1.5%、
Ca:0~0.010%、
Mg:0~0.010%、
希土類元素:0~0.10%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
粒界におけるB濃度が母相でのB濃度に比較して500倍以上であり、
平均結晶粒径が粒度番号で5.0~9.6である、オーステナイト系ステンレス鋼。
[2] 更に、質量%で、
V :0.1~1.0%、
Co:0.1~1.0%、
Y :0.1~1.0%、
Zr:0.1~1.0%、
Hf:0.01~0.20%、
Ta:0.01~0.2%、
W :0.1~1.5%、
Ca:0.0005~0.010%、
Mg:0.0005~0.010%、
希土類元素:0.0005~0.10%のうちの1種または2種以上を含有する、[1]に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
[3] 下記式(1)を満たす、[1]または[2]に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
F1=0.2×Mo+5×Nb+500×B+5×Y+5×Zr>2.0 …(1)
ただし、式(1)中のMo、Nb、B、Y及びZrは、それぞれの元素の質量%であり、YまたはZrを含有量しない場合はそれぞれ0を代入する。
上記式(1)中のMo、Nb、B、Y及びZrは、それぞれの元素の質量%であり、YまたはZrを含有量しない場合はそれぞれ0を代入する。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼は、以下に説明する化学組成を有し、粒界におけるB濃度が母相でのB濃度に比較して500倍以上であり、平均結晶粒径が粒度番号で5.0~11.0のオーステナイト系ステンレス鋼である。また、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼は、上記式(1)を満たしていてもよい。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は、不可避に含有される。Cは600℃以上の高温腐食環境下で本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼を使用中において、粒界にCr-richなM23C6型炭化物を生成し、耐ポリチオン酸粒界応力腐食割れ性を低下させる。したがって、C含有量は0.030%以下である。好ましいC含有量は0.025%以下であり、さらに好ましくは0.020%以下である。C含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、上述の通り、Cは不可避に含有されるため、工業生産上、Cは少なくとも、0.0001%は含有され得る。そのため、C含有量は0.0001%以上でもよい。
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Siはさらに、鋼の耐酸化性及び耐水蒸気酸化性を高める。Si含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、鋼中にシグマ相(σ相)が析出し、鋼の靱性およびクリープ強度が低下する。したがって、Si含有量は0.1~1.0%である。好ましいSi含有量は0.75%以下であり、さらに好ましくは0.50%以下である。
マンガン(Mn)は、鋼を脱酸する。Mnはさらに、オーステナイトを安定化して、クリープ強度を高める。Mn含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、鋼のクリープ強度が低下する。したがって、Mn含有量は0.2~2.0%である。好ましいMn含有量は0.3%以上であり、さらに好ましくは0.4%以上である。また、好ましいMn含有量は1.7%以下であり、さらに好ましくは1.6%以下である。
燐(P)は、鋼の熱間加工性及び靱性を低下させる。一方で、Pの含有量が低すぎると、優れたクリープ延性が得られない。したがって、P含有量は0.01~0.04%である。好ましいP含有量は0.035%以下であり、さらに好ましくは0.032%以下である。また、P含有量は0.012%以上でもよい。
硫黄(S)は不純物である。Sは鋼の熱間加工性及びクリープ延性を低下させる。したがって、S含有量は0.01%以下である。S含有量は0.008%以下でもよい。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、Sは不可避に含有され、工業生産上、Sは少なくとも0.0001%は含有され得る。そのため、S含有量は0.0001%以上であってもよい。
クロム(Cr)は、鋼の耐ポリチオン酸粒界応力腐食性を高める。Crはさらに、耐酸化性、耐水蒸気酸化性、耐高温腐食性等を高める。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、鋼のクリープ強度および靱性が低下する。したがって、Cr含有量は15.0~25.0%である。Cr含有量は、16.0%以上でもよく、16.5%以上でもよく、17.0%以上でもよい。また、Cr含有量は24.0%以下でもよく、23.0%以下でもよい。
ニッケル(Ni)は、オーステナイトを安定化して、クリープ強度を高める。Ni含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば上記効果が飽和し、さらに、製造コストが高くなる。したがって、Ni含有量は9.0~18.0%である。Ni含有量は10.0%以上でもよく、10.5%以上でもよい。また、Ni含有量は17.5%以下でもよく、17.0%以下でもよい。
窒素(N)は、マトリクス(母相)に固溶してオーステナイトを安定化して、クリープ強度を高める。Nはさらに、粒内に微細な炭窒化物を形成し、鋼のクリープ強度を高める。つまり、Nは、固溶強化及び析出強化の両方でクリープ強度に寄与する。N含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、N含有量が高すぎれば、粒界でCr窒化物が形成され、溶接熱影響部(HAZ)での耐ポリチオン酸粒界応力腐食割れ性が低下する。N含有量が高すぎればさらに、鋼の加工性が低下する。したがって、N含有量は0.06~0.25%である。N含有量は0.07%以上でもよい。また、N含有量は0.23%以下でもよく、0.20%以下でもよい。
ニオブ(Nb)は、高温腐食環境下での使用中において、MX型炭窒化物を形成し、鋼中の固溶C量を低減する。これにより、鋼の耐ポリチオン酸SCC性が高まる。生成した炭窒化物やZ相はまた、クリープ強度を高める。Nb含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、δフェライトが生成し、鋼の長時間クリープ強度、靱性、及び溶接性が低下する。したがって、Nb含有量は0.2~1.0%である。Nb含有量は0.25%以上でもよい。また、Nb含有量は0.9%以下でもよく、0.8%以下でもよい。
銅(Cu)は、高温環境下での使用中において、粒内に微細なCu相として析出し、クリープ強度を向上させる。一方で、Cu含有量が高すぎれば、クリープ延性が低下する。したがって、Cu含有量は2.0超~4.0%である。Cu含有量は2.2%以上でもよい。また、Cu含有量は3.8%以下でもよく、3.7%以下でもよい。
モリブデン(Mo)は、粒界にM23C6型炭化物が生成するのを抑制し、耐ポリチオン酸粒界応力腐食割れ性を向上させる。さらにMoは、固溶強化によって材料のクリープ強化に寄与する。Mo含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方で、Mo含有量が高すぎれば、オーステナイトの安定性が低下する。したがって、Mo含有量は0.1~2.0%である。Mo含有量は0.2%以上でもよい。また、Mo含有量は1.8%以下でもよく、1.5%以下でもよい。
ボロン(B)は、高温腐食環境下での使用中において、粒界に偏析し、粒界強度を高める。その結果、クリープ延性、およびクリープ強度を高める。B含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、B含有量が高すぎれば、溶接性及び熱間加工性が低下する。したがって、B含有量は0.0005~0.008%である。B含有量は0.0007%以上でもよく、0.0009%以上でもよい。また、B含有量は0.006%以下でもよく、0.005%以下でもよい。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Al含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、鋼の清浄度が低下し、鋼の加工性及び延性が低下する。したがって、Al含有量は0.0005~0.080%である。Al含有量は0.0010%以上でもよく、0.0020%以上でもよい。また、Al含有量は0.060%以下でもよく、0.050%以下でもよい。本実施形態においてAl含有量は、酸可溶Al(sol.Al)の含有量を意味する。
以下、上記の任意元素に関して詳しく説明する。
バナジウム(V)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Vは、高温腐食環境下での使用中において、Cと結合して炭窒化物を生成して、固溶Cを低減し、鋼の耐ポリチオン酸SCC性を高める。生成したV炭窒化物はまた、クリープ強度を高める。しかしながら、V含有量が高すぎれば、δフェライトが生成し、鋼のクリープ強度、靭性、及び溶接性が低下する。したがって、V含有量は0~1.0%である。耐ポリチオン酸SCC性及びクリープ強度をさらに有効に高めるためのV含有量は0.1%以上である。また、V含有量は0.9%以下でもよく、0.8%以下でもよい。
コバルト(Co)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Coはオーステナイトを安定化して、クリープ強度を高める。しかしながら、Co含有量が高すぎれば、原料コストが高まる。したがって、Co含有量は0~1.0%である。Co含有量は0.1%以上でもよく0.2%以上でもよい。
イットリウム(Y)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、YはBの粒界偏析を促進し、鋼のクリープ強度およびクリープ延性を高める。一方で、Y含有量が高すぎると、酸化物などの介在物が多くなり、加工性や溶接性が損なわれる。したがって、Y含有量は0~1.0%である。Y含有量は0.1%以上でもよい。また、Y含有量は0.9%以下でもよく、0.8%以下でもよい。
ジルコニウム(Zr)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Zrは炭素や窒素と結合し、鋼の強度を高める。Zrはまた、Bの粒界偏析を助長し、クリープ強度を高める。一方で、Zr含有量が高すぎれば、クリープ延性が低下する。したがって、Zr含有量は0~1.0%である。Zr含有量は0.1%以上であってもよい。また、Zr含有量は0.9%以下でもよく、0.8%以下でもよい。
ハフニウム(Hf)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Hfは、高温腐食環境下での使用中において、Cと結合して炭窒化物を生成して、固溶Cを低減し、鋼の耐ポリチオン酸SCC性を高める。生成したHf炭窒化物はまた、クリープ強度を高める。しかしながら、Hf含有量が高すぎれば、δフェライトが生成し、鋼のクリープ強度、靭性、及び溶接性が低下する。したがって、Hf含有量は0~0.20%である。Hf含有量の好ましい下限は0.01%以上であり、さらに好ましくは0.02以上%である。
タンタル(Ta)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Taは、高温腐食環境下での使用中において、Cと結合して炭窒化物を生成して、固溶Cを低減し、鋼の耐ポリチオン酸SCC性を高める。生成したTa炭窒化物はまた、クリープ強度を高める。しかしながら、Ta含有量が高すぎれば、δフェライトが生成し、鋼のクリープ強度、靭性、及び溶接性が低下する。したがって、Ta含有量は0~0.2%である。耐ポリチオン酸SCC性及びクリープ強度をさらに有効に高めるためのTa含有量は0.01%以上であり、さらに好ましくは0.02%以上である。
タングステン(W)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、W含有量は0%であってもよい。Wが含有される場合、Wは鋼材に固溶して、高温環境において鋼材のクリープ強度を高める。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、W含有量が5.0%を超えれば、原料コストが高くなる。したがって、W含有量は0~5.0%である。W含有量は0%超でもよく、0.1%以上でもよく、0.2%以上でもよく、0.3%以上でもよい。また、W含有量は4.5%以下でもよく、4.0%以下でもよく、3.5%以下でもよい。
カルシウム(Ca)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。Caが含有される場合、Caは、O(酸素)及びS(硫黄)を介在物として固定し、鋼の熱間加工性及びクリープ延性を高める。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性及びクリープ延性を低下する。したがって、Ca含有量は0~0.010%である。Ca含有量は0.0005%以上でもよく、0.0010%以上でもよい。また、Ca含有量は0.008%以下でもよく、0.006%以下でもよい。
マグネシウム(Mg)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。Mgが含有される場合、Mgは、O(酸素)及びS(硫黄)を介在物として固定し、鋼の熱間加工性及びクリープ延性を高める。しかしながら、Mg含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性及び長時間クリープ延性を低下する。したがって、Mg含有量は0~0.010%である。Mg含有量は0.0005%以上でもよく、0.0010%以上でもよい。また、Mg含有量は0.0080%以下でもよく、0.0060%以下でもよい。
希土類元素(REM)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。REMが含有される場合、REMは、O(酸素)及びS(硫黄)を介在物として固定し、鋼の熱間加工性及びクリープ延性を高める。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、鋼の熱間加工性及び長時間クリープ延性を低下する。したがって、REM含有量は0~0.10%である。REM含有量は0.0005%以上でもよく、0.0010%以上でもよく0.0020%以上でもよい。また、REM含有量は0.08%以下でもよく、0.06%以下でもよい。なお、本実施形態における希土類元素とは、Scと、原子番号57~71のランタノイド元素をいう。REMは、これらの元素の2種以上の混合物でもよい。
溶体化時点での粒界におけるBの偏析量が大きいほど、クリープ延性およびクリープ強度が向上する。したがって、粒界におけるB濃度は母相でのB濃度に比較して500倍以上とする。粒界におけるBの濃度は、600倍以上でもよく、650倍以上でもよい。
溶体化時点での平均結晶粒径が大きいほど、すなわち粒界面積が小さいほど、粒界における平均B濃度が高くなり、クリープ延性が向上する。一方で、平均結晶粒径が大きすぎれば、溶体化での急冷時の拡散距離が足らず、粒界における平均B濃度が低くなる。また、高温クリープ変形において材料が脆化し、クリープ延性が低下する。したがって、平均結晶粒径は粒度番号で5.0~11.0とする。平均結晶粒径は粒度番号で5.1以上でもよい。また、平均結晶粒径は粒度番号で10.9以下でもよい。
平均結晶粒径はたとえば次の方法で測定する。溶体化後の鋼からサンプルを採取する。光学顕微鏡により断面を観察し、JIS G0551:2013で規定される切断法にて粒度番号を求め、これを平均結晶粒径とする。
Nb、Mo、Zr、Yは、Bの粒界偏析を促進し、クリープ延性およびクリープ強度を向上させる。さらに下記式(1)を満たす場合、より優れたクリープ延性を示すようになる。F1値は2.5以上でもよく、2.8以上でもよい。
ただし、上記式(1)中のMo、Nb、B、Y及びZrは、それぞれの元素の質量%であり、YまたはZrを含有量しない場合はそれぞれ0を代入する。
上述の化学組成を満たす溶鋼を製造する。たとえば、電気炉やAOD(Argon Oxygen Decarburization)炉、VOD(Vacuum Oxygen Decarburization)炉を用いて、上記溶鋼を製造する。製造された溶鋼に対して、必要に応じて周知の脱ガス処理を実施する。脱ガス処理を実施した溶鋼から、素材を製造する。素材の製造方法はたとえば、連続鋳造法である。連続鋳造法により、連続鋳造材(素材)を製造する。連続鋳造材はたとえば、スラブ、ブルーム及びビレット等である。溶鋼を造塊法によりインゴットにしてもよい。
準備された素材(連続鋳造材又はインゴット)を熱間加工して、オーステナイト系ステンレス鋼材を製造する。たとえば、素材を熱間圧延して鋼板や棒鋼、線材を製造する。また、熱間押出や熱間穿孔圧延等によりオーステナイト系ステンレス鋼管を製造する。熱間加工の具体的な方法は特に限定されず、最終製品の形状に応じた熱間加工を実施すればよい。熱間加工の加工終了温度はたとえば、1050℃以上である。ここでいう加工終了温度とは、最終の熱間加工が完了した直後の鋼材の表面温度を意味する。
熱間加工後のオーステナイト系ステンレス鋼材に対して、必要に応じて、冷間加工を実施してもよい。オーステナイト系ステンレス鋼材が棒鋼、線材、鋼管である場合、冷間加工はたとえば、冷間引抜や冷間圧延である。オーステナイト系ステンレス鋼材が鋼板である場合、冷間圧延等である。冷間加工工程は省略してもよい。
熱間加工後、又は冷間加工後に、溶体化処理を実施する。溶体化処理工程では、組織の均一化、及び炭窒化物の固溶を行い、さらに粒径およびB偏析量を調整する。溶体化条件は次のとおりである。
加熱開始から1000℃に達するまでの平均昇温速度が0.5℃/sec以上であれば、結晶粒径が大きくなりすぎず、高いクリープ延性が保たれる。また、平均昇温速度が10℃/sec以下であれば、材料外表面と材料内部での温度のばらつきが小さくなり、均一な金属組織が得られ、良好なクリープ特性が得られる。
溶体化処理温度が1000℃以上であれば、Nbの炭窒化物やボライドが十分に固溶し、また結晶粒が十分に大きくなるため、クリープ強度がさらに高まる。溶体化処理温度が1250℃以下であれば、Cの過剰な固溶を抑制でき、耐ポリチオン酸SCC性がさらに高まる。また、結晶粒が大きくなりすぎず、高いクリープ延性が保たれる。溶体化処理時における上記溶体化処理温度での保持時間は特に限定されないが、たとえば2分~60分である。
平均冷却速度が遅すぎると、Bが十分に拡散し粒界の偏析量が低下する。一方で、平均冷却速度が速すぎても、拡散距離が足らずBの粒界偏析量は低下する。したがって、900℃から500℃までの間の平均冷却速度を15~500℃/secの範囲とする。
製造された鋼板の板厚をt(mm)と定義し、表面からt/4深さの任意の位置のサンプルを用いて、周知の成分分析法(C及びSについては燃焼-赤外線吸収法、Nについては高温離脱ガス分析法、その他の合金元素についてはICP分析法)を実施した。その結果、各試験番号のオーステナイト系ステンレス鋼板の化学組成は、表1と一致した。
粒界におけるBの濃度比は、TEM-EELSを用いて測定した。測定には、鋼板の板厚中心部から採取した薄膜試料を用いた。観察面に粒界を露出させた薄膜試料において、粒界に対して垂直に交差する分析線を設定し、この分析線においてBの線分析を実施した。このとき、粒界が分析線の中央位置となるようにした。線分析を行うと、粒界位置でB濃度がピークを示した。そこで、ピークの頂点を粒界におけるBの濃度をBgbとした。一方、結晶粒内では、B濃度はほぼ一定の値を示した。結晶粒内の任意の4点でのB濃度の平均値をBfccとした。そして、母相のB濃度に対する粒界におけるB濃度の倍数を、Bgb÷Bfccとして算出した。粒界におけるBの濃度比は5箇所で測定し、その平均値を採用した。
平均結晶粒径の測定は次の通りとした。溶体化後の鋼板の板厚中心部からサンプルを採取した。そして、光学顕微鏡により断面を観察し、JIS G0551:2013で規定される切断法にて粒度番号を求め、これを平均結晶粒径とした。
各試験番号の鋼板から、JIS Z2271(2010)に準拠したクリープ破断試験片を作製した。クリープ破断試験片の軸方向に垂直な断面は円形であり、クリープ破断試験片の外径は6mmであり、平行部は30mmであった。平行部は鋼板の圧延方向と平行であった。作製されたクリープ破断試験片を用いて、JIS Z2271:2010に準拠したクリープ破断試験を実施した。具体的には、クリープ破断試験片を700℃で加熱した後、クリープ破断試験を実施した。試験応力は80MPaとし、クリープ破断時間(時間)及びクリープ破断絞り(%)を求めた。
表2に試験結果を示す。
Claims (3)
- 化学組成が質量%で、
C :0.030%以下、
Si:0.1~1.0%、
Mn:0.2~2.0%、
P :0.01~0.04%、
S :0.01%以下、
Cr:15.0~25.0%、
Ni:9.0~18.0%、
N:0.06~0.25%、
Nb:0.2~1.0%、
Cu:2.0超~4.0%、
Mo:0.1~2.0%、
B :0.0005~0.008%、
Sol.Al:0.0005~0.080%、
V :0~1.0%、
Co:0~1.0%、
Y :0~1.0%、
Zr:0~1.0%、
Hf:0~0.20%、
Ta:0~0.2%、
W :0~1.5%、
Ca:0~0.010%、
Mg:0~0.010%、
希土類元素:0~0.10%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
粒界におけるB濃度が母相でのB濃度に比較して500倍以上であり、
平均結晶粒径が粒度番号で5.0~9.6である、オーステナイト系ステンレス鋼。 - 更に、質量%で、
V :0.1~1.0%、
Co:0.1~1.0%、
Y :0.1~1.0%、
Zr:0.1~1.0%、
Hf:0.01~0.20%、
Ta:0.01~0.2%、
W :0.1~1.5%、
Ca:0.0005~0.010%、
Mg:0.0005~0.010%、
希土類元素:0.0005~0.10%のうちの1種または2種以上を含有する、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。 - 更に、下記式(1)を満たす、請求項1または請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
F1=0.2×Mo+5×Nb+500×B+5×Y+5×Zr>2.0 …(1)
ただし、式(1)中のMo、Nb、B、Y及びZrは、それぞれの元素の質量%であり、YまたはZrを含有量しない場合はそれぞれ0を代入する。
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